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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-23
(45)【発行日】2023-03-31
(54)【発明の名称】蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/653 20140101AFI20230324BHJP
   H01G 2/08 20060101ALI20230324BHJP
   H01G 2/10 20060101ALI20230324BHJP
   H01G 11/12 20130101ALI20230324BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20230324BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20230324BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20230324BHJP
   H01M 10/6567 20140101ALI20230324BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20230324BHJP
【FI】
H01M10/653
H01G2/08 A
H01G2/10 C
H01G11/12
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/647
H01M10/6567
H01M50/204 401H
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020175796
(22)【出願日】2020-10-20
(65)【公開番号】P2022067208
(43)【公開日】2022-05-06
【審査請求日】2021-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森下 大樹
(72)【発明者】
【氏名】岡田 渉
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-500574(JP,A)
【文献】特開2012-204040(JP,A)
【文献】特開2007-257843(JP,A)
【文献】国際公開第2019/187940(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/038240(WO,A1)
【文献】特開2010-146883(JP,A)
【文献】特開2010-218853(JP,A)
【文献】特開2016-146298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G2/00
H01G2/08-2/12
H01G2/22-2/24
H01G11/00-11/86
H01M10/52-10/667
H01M50/20-50/298
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数の蓄電セルを含む蓄電モジュールと、
前記蓄電モジュールを収納する内部空間を有する密閉ケースと、
前記密閉ケースの前記内部空間に充填され、前記蓄電モジュールに直接触れる絶縁性液体とを備え、
前記蓄電セルは、筐体を含む角型セルであり、
前記密閉ケースは、上側に位置する上面と、前記上面と対向し下側に位置する底面と、前記蓄電セルの前記筐体からの押圧力を受ける側面とを有し、前記側面は、前記押圧力に対する前記側面からの反力により前記蓄電セルを積層方向に拘束して前記蓄電モジュールを支持する支持部を構成し、前記支持部を構成する前記密閉ケースの前記側面に空洞が設けられ、
前記絶縁性液体は、前記上面と前記底面とが並ぶ上下方向の全体にわたって同じ素材からなる、蓄電装置。
【請求項2】
前記絶縁性液体は、前記内部空間を完全に満たすように充填される、請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記絶縁性液体は、前記内部空間の一部に充填される、請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記内部空間の壁面に凹凸部が形成された、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の蓄電装置。
【請求項5】
前記密閉ケースは、前記上面に設けられた開口と、前記開口を閉塞する栓とを含み、
前記上下方向に沿って延在する凹凸部が前記内部空間の壁面に形成された、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の蓄電装置。
【請求項6】
前記絶縁性液体の熱伝導係数比は、空気よりも大きく水よりも小さい、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の蓄電装置。
【請求項7】
前記複数の蓄電セルはリチウムイオン電池セルである、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電装置の一例として電池パックが挙げられる。従来の電池パック構造として、たとえば、特開2010-272378号公報(特許文献1)、特開2009-134901号公報(特許文献2)、国際公開第2012/133708号(特許文献3)、特表2015-520480号公報(特許文献4)、および特開2012-28321号公報(特許文献5)に記載のものが挙げられる。
【0003】
電池パックにおいては、ケース内に電池セルが収納される。ケース内に収納された電池セルは発熱するため、冷却機構が必要とされる。特開2010-272378号公報(特許文献1)に記載の電池パックにおいては、空冷方式の冷却機構が採用されている。特開2009-134901号公報(特許文献2)に記載の電池パックにおいては、水冷方式の冷却機構が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-272378号公報
【文献】特開2009-134901号公報
【文献】国際公開第2012/133708号
【文献】特表2015-520480号公報
【文献】特開2012-28321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電池セルを収納したケースを外側から冷却する場合、電池セルの積層体とケース内面との接触状態の違い(密着面および非密着面の違い)により、冷却効率が不均一となり得る。冷却効率の不均一性は、電池の出力パフォーマンスに影響し得る。
【0006】
特許文献1~5に記載の構造は、上述の課題を解決する観点から、必ずしも十分なものではない。また、電池以外の蓄電装置においても、同様の課題が生じ得る。本開示の目的は、冷却効率の高い蓄電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る蓄電装置は、積層された複数の蓄電セルを含む蓄電モジュールと、蓄電モジュールを収納する内部空間を有する密閉ケースと、密閉ケースの前記内部空間に充填され、蓄電モジュールに直接触れる絶縁性液体とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、冷却効率の高い蓄電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】電池パックの構成を示す分解斜視図である。
図2】電池モジュールに含まれる電池セルを示す図である。
図3】電池パックのケース内部を示す断面図(その1)である。
図4】電池パックのケース内部を示す断面図(その2)である。
図5】電池パックのケース内部を示す斜視図である。
図6】電池パックのケース内部における熱の流れを示す図である。
図7】絶縁性液体の熱伝導係数を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示の実施の形態について説明する。以下に説明する実施の形態において、個数、量等に言及する場合、特に記載がある場合を除き、本開示の範囲は必ずしもその個数、量等に限定されない。また、以下の実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本開示にとって必ずしも必須のものではない。
【0011】
図1は、電池パック1の構成を示す分解斜視図である。電池パック1は、電池モジュール100と、ケース200(密閉ケース)と、熱伝導材300とを含む。
【0012】
電池モジュール100(蓄電モジュール)は、Y軸方向(積層方向)に沿って積層された複数の電池セル(蓄電セル)を含む。
【0013】
ケース200は、ケース本体210と、蓋部材220と、開口230と、閉止部材240とを含む。ケース本体210は、ケース200の底面および側面を構成する。蓋部材220は、ケース200の上面を構成する。ケース本体210は、複数の電池セル110の上側(図2に示す電極端子111側)に開口を有する。蓋部材220は、ケース本体210の開口上に設けられる。開口230は、ケース200の上面を構成する蓋部材220上に設けられる。閉止部材240は、開口230を塞ぐように取付られる。
【0014】
ケース200は、電池モジュール100を収納する内部空間を有する。ケース本体210および蓋部材220は、たとえばアルミニウム、マグネシウムなどの金属材からなる鋳造部品(ダイキャスト材)であってもよいし、カーボン含有素材からなるプレス成型部品であってもよい。ケース200は上記の態様に限定されず、強度、放熱性、熱伝導性などの点において、所定の特性を満たすものであればよい。たとえば樹脂製のケース本体210および蓋部材220である場合もあり得る。
【0015】
ケース本体210と蓋部材220との接合部は、ゴム等のシール材、接着剤、およびホットメルト材などを用いて密閉されるか、超音波溶着、レーザ溶着などにより両者が接合されてもよい。これにより、ケース本体210および蓋部材220からなるケース200の内部に密閉空間が形成される。
【0016】
熱伝導材300は、電池モジュール100とケース200のケース本体210との間に設けられ、電池モジュール100において発生した熱のケース200への伝達を促進する。
【0017】
電池パック1は、車両に搭載され得る。電池パック1が車両に搭載されるとき、典型的には、ケース本体210に対して蓋部材220が上側に位置する。本件明細書では、Z軸方向を「上下方向」と称し、Z軸方向におけるケース本体210側を「下側」、蓋部材220側を「上側」と称する場合がある。
【0018】
図2は、電池モジュール100に含まれる電池セル110を示す図である。図2に示すように、電池セル110は、電極端子111と、収容ケース112(筐体)とを含む。電極端子111は、正極端子111Aと、負極端子111Bとを含む。電極端子111は、収容ケース112上に形成されている。収容ケース112には、図示しない電極体および電解液が収容されている。
【0019】
収容ケース112は、平坦面状の直方体形状に形成されている。すなわち、電池セル110は角型セルである。収容ケース112は、Y軸方向に直交するX-Z平面に沿って延びる主面112Aを有する。
【0020】
一例として、電池セル110は、リチウムイオン電池である。電池セル110はニッケル水素電池など他の電池であってもよい。また、本開示において「蓄電モジュール」は電池モジュール100に限定されず、電池セル110に代えて、たとえばキャパシタが「蓄電セル」として用いられてもよい。
【0021】
図3図4は、電池パックのケース内部を示す断面図である。図3図4に示すようにケース200の内部空間に絶縁性液体400が充填されている。絶縁性液体400は、電池モジュール100に直接触れるようにケース200の内部空間に充填される。絶縁性液体400は、典型的な一例においては、ケース200の開口230の外側から絶縁性液体400が見える位置まで、ケース200の内部空間を完全に満たすように充填される。このようにすることで、外部振動(たとえば電池パック1を車両に搭載したときの車両の振動)による影響を低減することができる。
【0022】
ただし、絶縁性液体400は、ケース200の内部空間の一部に充填されてもよい。絶縁性液体400をケース200の内部空間の一部に充填し、ケース200内に空間を残した場合、ケース200内における絶縁性液体400の対流が促進され、冷却効率が高まる場合があり得る。
【0023】
絶縁性液体400としては、たとえば、シリコーンオイル、トランス油、およびフロリナート(登録商標)などのフッ素系不活性液体を使用することが可能である。
【0024】
電池モジュール100に直接触れるように絶縁性液体400を充填することにより、絶縁性液体400を介して電池モジュール100の熱をケース200に伝達することができる。この結果、電池モジュール100とケース200の内面との接触状態とは関係なく、電池モジュール100の冷却効率を向上させることが可能となる。また、ケース200内を絶縁性液体400で満たすことにより、電池セル110の熱暴走の伝播抑制の効果も得られる。
【0025】
電池モジュール100の高出力化を図ろうとすると、冷却が不十分になりやすい傾向にある。また、急速充電の要請から、バスバーの発熱を抑制することも求められる。このような状況下において、電池モジュール100の冷却効率を向上させることが求められる。本実施の形態に係る電池パック1によれば、かかる要求に応え得る構造が得られる。
【0026】
図5は、電池パックのケース200の内部を示す斜視図である。図5に示すように、ケース200のケース本体210は、フィン211と、凹部212と、支持部213とを有する。
【0027】
フィン211は、ケース本体210の内側壁面に設けられる。フィン211が設けられることにより、ケース200の内部空間の壁面に凹凸部が形成される。図5の例において、フィン211は、ケース200の上面から底面に向かう上下方向(Z軸方向)に沿って延在している。ただし、フィン211の延在方向は上下方向に限定されない。
【0028】
凹部212は、ケース本体210の底面に設けられる。凹部212内には熱伝導材300が収納される。
【0029】
支持部213は、ケース本体210のY軸方向の両端部に設けられる。支持部213は、電池モジュール100のY軸方向の両端部に位置する電池セル110の主面112Aに直接当接し、電池モジュール100をY軸方向に沿って支持する。
【0030】
支持部213は、それ自体が若干変形することにより、Y軸方向に沿って電池モジュール100を付勢可能である。支持部213を構成するケース本体210にたとえば空洞(図示せず)を設け、支持部213を薄肉化し、Y軸方向に変形させやすくしてもよい。
【0031】
電池モジュール100をケース本体210に挿入するとき、Y軸方向に沿って電池モジュール100に圧縮力が加えられる。このとき、たとえば各電池セル110間に圧縮可能な素材をセパレータとともに設けることなどにより、電池モジュール100が全体としてY軸方向に圧縮され得る。電池モジュール100がケース本体210に挿入された後、上記圧縮力が徐荷されると、圧縮された電池モジュール100のY軸方向の長さが元に戻り、この結果、電池モジュール100がケース本体210の内面をY軸方向に押圧する。この押圧力に対する反力が、ケース本体210が電池モジュール100を支持する支持力となる。
【0032】
電池モジュール100の使用時に、電池セル110の収容ケース112内における電解液のガス化等の要因により、収容ケース112が膨張することがある。この膨張に起因する電池モジュール100からケース本体210への押圧力、およびその反力も、ケース本体210による電池モジュール100の支持に寄与し得る。
【0033】
電池セル110の主面112Aをケース本体210に直接に当接させてY軸方向に拘束することで、エンドプレートおよび拘束部材を設けることなく複数の電池セル110をY軸方向に拘束することができる。この結果、電池パック1の小型化が図られる。
【0034】
図6は、電池パックのケース内部における熱の流れを示す図である。図6を参照して、発熱領域αは、電池セル110の電極体113に対応する位置にある。発熱領域αの熱を吸収した絶縁性液体400は、矢印Aの方向に上昇し、冷却領域βにおいて蓋部材220に伝熱する。このように、絶縁性液体400が電池セル110から吸収した熱は、絶縁性液体400を介してケース200に伝熱され、ケース200から放熱される。
【0035】
絶縁性液体400は、電極体113から離れた位置において、矢印B方向に下降する。このように、絶縁性液体400は矢印A方向、矢印B方向に沿って対流しながら電池セル110の冷却を促進する。
【0036】
このとき、温度の高い電池セル110の周辺の方が、矢印A方向、矢印B方向に沿った対流が促進され、冷却が促進されやすい。このように、絶縁性液体400を用いた冷却機構においては、特別な制御を行うことなく、冷却の要請がより強い電池セル110の冷却効率を向上させることができる。
【0037】
図7は、絶縁性液体の熱伝導係数を示す図である。図7中の「A」はシリコーンオイルの熱伝導係数を示し、「B」はトランス油の熱伝導係数を示し、「C1」は気相のフロリナート(登録商標)の熱伝導係数を示し、「C2」は液相のフロリナート(登録商標)の熱伝導係数を示す。図7に示すように、絶縁性液体400の熱伝導係数比は、空気よりも大きく水よりも小さい。同じ素材(フロリナート(登録商標))であっても、気相の状態よりも液相状態の方が熱伝達係数が高く、結果として冷却効率が高くなることが理解される。
【0038】
本実施の形態に係る上述の例では、Z軸方向に沿って電池モジュール100をケース200に挿入する方式(縦挿入方式)について説明したが、ケース200をX軸方向に向けて開口させ、X軸方向に沿って電池モジュール100をケース200に挿入する方式(横挿入方式)が採用されてもよい。
【0039】
以上、本開示の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0040】
1 電池パック、100 電池モジュール、110 電池セル、111 電極端子、111A 正極端子、111B 負極端子、112 収容ケース、112A 主面、113 電極体、200 ケース、210 ケース本体、211 フィン、212 凹部、213 支持部、220 蓋部材、230 開口、240 閉止部材、300 熱伝導材、400 絶縁性液体、α 発熱領域、β 冷却領域。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7