(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-23
(45)【発行日】2023-03-31
(54)【発明の名称】シリコーン感圧性接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09J 183/07 20060101AFI20230324BHJP
C09J 183/05 20060101ALI20230324BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20230324BHJP
【FI】
C09J183/07
C09J183/05
C09J11/06
(21)【出願番号】P 2020511488
(86)(22)【出願日】2018-08-16
(86)【国際出願番号】 KR2018009370
(87)【国際公開番号】W WO2019039789
(87)【国際公開日】2019-02-28
【審査請求日】2021-07-07
(31)【優先権主張番号】10-2017-0108149
(32)【優先日】2017-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ホチン
(72)【発明者】
【氏名】キム、スンヒ
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ミンチョル
【審査官】水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-214303(JP,A)
【文献】特開平05-214316(JP,A)
【文献】特開平08-209104(JP,A)
【文献】特開昭63-008470(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン感圧性接着剤組成物であって、
(A)分子当たり2~12個の炭素原子を有する、平均で少なくとも0.5個のアルケニル基を有する、20~40質量部の量のジオルガノポリシロキサンと、
(B)R
1
3SiO
1/2単位およびSiO
4/2単位で構成される、オルガノポリシロキサンであって、式中各R
1が、1~12個の炭素原子を有する一価炭化水素基を表し、0.6~1.7のモル比(R
1
3SiO
1/2単位)/(SiO
4/2単位)を有し、1700~3000の標準ポリスチレンに換算される数平均分子量(Mn)を有し、構成成分(A)と(B)との合計量が、100質量部である、60~80質量部の量のオルガノポリシロキサンと、
(C)分子当たり平均で少なくとも2つのケイ素結合水素原子を有するオルガノ水素ポリシロキサンであって、構成成分(A)および(B)中の前記アルケニル基当たりの、構成成分(C)中の前記ケイ素結合水素原子のモル比が、2
5~50になるような量である、オルガノ水素ポリシロキサンと、
(D)前記本組成物のヒドロシリル化を促進するのに十分な量のヒドロシリル化触媒と、を含む、シリコーン感圧性接着剤組成物。
【請求項2】
構成成分(A)および(B)の100質量部当たり0.001~5質量部の量の阻害剤(E)をさらに含む、請求項1に記載のシリコーン感圧性接着剤組成物。
【請求項3】
構成成分(A)~(D)の100質量部当たり5~400質量部の量の溶剤をさらに含む、請求項1に記載のシリコーン感圧性接着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーン感圧性接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル系感圧性接着剤組成物と比較して、シリコーン感圧性接着剤組成物は、電気絶縁特性、耐熱性、耐霜性、および様々な基材への接着性において、前者よりも優れている。したがって、シリコーン感圧性接着剤組成物は、耐熱性接着テープ、電気絶縁性接着テープ、ヒートシールテープ、金属メッキ用マスキングテープなどの製品の製造における用途が見られる。シリコーン感圧性接着剤組成物は、硬化のメカニズムの観点において、付加反応、縮合反応、または有機過酸化物の使用を伴うラジカル反応によって硬化性の組成物に分類することができ、これらのうち、付加反応によって硬化性のシリコーン感圧性接着剤組成物は、硬化を促進するために、それらを単に室温に保持するか、あるいは加熱することによって硬化することができるため、より一般的な用途が見られる。これらの組成物の別の利点は、副生成物を形成しないことである。
【0003】
米国特許第5,248,739号は、付加反応-シリコーン感圧性接着剤組成物が、ポリオレフィンおよびポリテトラフルオロエチレンなどの低表面エネルギー基材に高い粘着性および引き剥がし接着性を提供することを開示しており、硬化性シリコーン感圧性接着剤組成物が、(A)約950~1,600の数平均分子量(Mn)値を有し、本質的にR3SiO1/2シロキサン単位およびSiO4/2シロキサン単位からなる、60~90重量部のオルガノポリシロキサン樹脂であって、式中、各Rが、一価炭化水素基を表し、オルガノポリシロキサン中、1.1~1.4の値の、R3SiO1/2シロキサン単位対SiO4/2シロキサン単位のモル比を有する、オルガノポリシロキサン樹脂と、(B)分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有する、10~40重量部のジオルガノポリシロキサンと、(C)構成成分(A)および(B)の合計中のアルケニル基当たり、すなわちSiH/アルケニル基比1~30、好ましくは1~10のケイ素結合水素原子を提供するのに十分な量で、分子当たり平均で少なくとも2つのケイ素結合水素原子を有するオルガノ水素ポリシロキサンと、(D)触媒量の白金属元素含有触媒と、を含む。
【0004】
米国特許第5,248,739号はまた、比較オルガノポリシロキサン樹脂として、3のSiH/アルケニル基比を有する、例えば、樹脂M(Mn=1,832)、樹脂N(Mn=1,841)、および樹脂O(Mn=2,322)の、1,700~3,000のMnを有するオルガノポリシロキサン樹脂を含む、シリコーン感圧性接着剤組成物についても開示しており、これは、基材への高い粘着性および引き剥がし接着性を提供することができない。
【0005】
しかしながら、1,700~3,000のMnを有するオルガノポリシロキサン樹脂は、ガラス、ポリカーボネート(PC)、およびポリエチレンテレフタレート(PET)などの一般的な基材に良好な引き剥がし接着性および高い粘着性を有する、高いSiH/アルケニル基比を有する感圧性接着剤組成物を提供することができることが見出された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、剥離ライナーに対する良好な剥離力、ガラス、PC、およびPETなどの一般的な基材に対する高い粘着性および高い引き剥がし接着性を有する感圧性接着剤に硬化することができる、シリコーン感圧性接着剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のシリコーン感圧性接着剤組成物は、
(A)分子当たり2~12個の炭素原子を有する、平均で少なくとも0.5個のアルケニル基を有する、20~40質量部の量のジオルガノポリシロキサンと、
(B)R1
3SiO1/2単位およびSiO4/2単位で構成される、オルガノポリシロキサンであって、式中各R1が、1~12個の炭素原子を有する一価炭化水素基を表し、0.6~1.7のモル比(R1
3SiO1/2単位)/(SiO4/2単位)を有し、1700~3000の標準ポリスチレンに換算される数平均分子量(Mn)を有し、構成成分(A)と(B)との合計量が、100質量部である、60~80質量部の量のオルガノポリシロキサンと、
(C)分子当たり平均で少なくとも2つのケイ素結合水素原子を有するオルガノ水素ポリシロキサンであって、構成成分(A)および(B)中のアルケニル基当たりの、構成成分(C)中のケイ素結合水素原子のモル比が、20~50になるような量である、オルガノ水素ポリシロキサンと、
(D)本組成物のヒドロシリル化を促進するのに十分な量のヒドロシリル化触媒と、を含む。
【0009】
シリコーン感圧性接着剤組成物は、構成成分(A)および(B)の100質量部当たり0.001~5質量部の量の阻害剤(E)を含んでもよい。
【0010】
シリコーン感圧性接着剤組成物は、構成成分(A)~(D)の100質量部当たり5~400質量部の量の溶剤を含んでもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のシリコーン感圧性接着剤組成物は、剥離ライナーに対する良好な剥離力、ガラス、PCおよびPETなどの一般的な基材に対する高い粘着性および高い引き剥がし接着性を有する感圧性接着剤に硬化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のシリコーン感圧性接着剤組成物について詳細に説明する。
【0013】
構成成分(A)は、本組成物の主要な硬化性構成成分であり、その硬化は、構成成分(D)の触媒活性下で構成成分(C)との付加反応によって進行する。構成成分(A)は、分子当たり2~12個の炭素原子を有する、平均で少なくとも0.5個のアルケニル基を有する必要がある。構成成分(A)中のアルケニル基は、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、およびヘキセニル基によって例示される。アルケニル基は、好ましくはビニル基である。構成成分(A)中のアルケニル基以外のケイ素結合基は限定されないが、しかしながら脂肪族不飽和結合を含まない、1~12個の炭素原子を有する一価炭化水素基によって例示される。一価炭化水素基は、メチル基、エチル基、プロピル基、または同様のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、または同様のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、または同様のアラルキル基;および3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、または同様のハロゲン化アルキル基によって例示される。さらに、構成成分(A)中のケイ素原子は、本発明の目的を損なわない範囲内で、メトキシ基またはエトキシ基などの少量のヒドロキシル基またはアルコキシ基を有してもよい。
【0014】
構成成分(A)の分子構造は直鎖であるが、しかしながら部分的に分岐してもよい。構成成分(A)の25℃での粘度は限定されないが、しかしながら好ましくは少なくとも50Pa・s、好ましくは少なくとも100Pa・sである。一般に、それは高粘度シリコーンオイルまたはシリコーンガムと呼ばれる。
【0015】
構成成分(A)は、単一のオルガノポリシロキサン、または2つ以上のタイプのオルガノポリシロキサンの混合物であってもよい。かかる構成成分(A)の例としては、両方の分子末端がジメチルビニルシロキシ基でキャップされたジメチルポリシロキサン、両方の分子末端がジメチルビニルシロキシ基でキャップされたジメチルシロキサン-メチルビニルシロキサンコポリマー、両方の分子末端がジメチルビニルシロキシ基でキャップされたジメチルシロキサン-メチルフェニルシロキサンコポリマー、両方の分子末端がジメチルビニルシロキシ基でキャップされたメチルフェニルポリシロキサン、両方の分子末端がトリメチルシロキシ基でキャップされたジメチルシロキサン-メチルビニルシロキサンコポリマー、両方の分子末端がトリメチルシロキシ基でキャップされたジメチルシロキサン-メチルビニルシロキサン-メチルフェニルシロキサンコポリマー、両方の分子末端がジメチルビニルシロキシ基でキャップされたジメチルポリシロキサンの混合物、および一方の末端がジメチルビニルシロキシ基で、別の分子末端がジメチルヒドロキシシロキシ基でキャップされたジメチルポリシロキサン、両方の分子末端がジメチルビニルシロキシ基でキャップされたジメチルポリシロキサンの混合物、および両方の分子末端がジメチルヒドロキシシロキシ基でキャップされたジメチルポリシロキサン、および2つ以上のタイプのそれらの混合物が挙げられる。しかしながら、構成成分(A)は、分子当たり平均で少なくとも0.5個のアルケニル基を有する必要がある。
【0016】
本組成物中の構成成分(B)は、硬化した感圧性接着剤に粘着性を付与するオルガノポリシロキサン樹脂である。構成成分(B)のシロキサン単位についての上式では、各R1は、1~12個の炭素原子を有する一価炭化水素基を表す。一価炭化水素基は、メチル基、エチル基、プロピル基、または同様のアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、または同様のアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、または同様のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、または同様のアラルキル基;および3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、または同様のハロゲン化アルキル基によって例示される。好ましくは、すべてのR1が、メチル基である。構成成分(B)は、構成成分(B)を調製するために使用される反応性シランの加水分解から生じる、残留シラノール基を有し得る。
【0017】
構成成分(B)中のR1
3SiO1/2単位対SiO4/2単位のモル比は、0.6~1.7の範囲内、好ましくは0.6~1.5の範囲にある。これは、モル比が先述の範囲の下限以上であると、感圧性接着剤の粘着性が改善され、モル比が先述の範囲の上限以下であると、凝集強度が改善されるためである。
【0018】
構成成分(B)は、1,700~3,000、好ましくは1,700~2,800の標準ポリスチレンに換算される数平均分子量(Mn)を有する。これは、数平均分子量が先述の範囲の下限以上であると、感圧性接着剤の剥離力が改善され、数平均分子量が先述の範囲の上限以下であると、感圧性接着剤の引き剥がし力が改善されるためである。
【0019】
かかるオルガノポリシロキサンを合成するための方法は既知である。米国特許第2,676,182号および同第3,284,406号の開示は、本組成物中の構成成分(B)として好適である、オルガノポリシロキサンの調製を示すために参照により本明細書に組み込まれる。
【0020】
構成成分(A)は、20~40質量部の量で添加され、構成成分(B)は、60~80質量部の量で添加され、構成成分(A)と(B)との合計量は、100質量部である。これは、構成成分(B)の含有量が、先述の範囲の下限以上であると、感圧性接着剤の粘着性が改善され、構成成分(B)の含有量が、先述の範囲の上限以下であると、凝集強度が改善されるためである。
【0021】
本組成物中の構成成分(C)は、構成成分(A)の、または構成成分(A)および(B)の架橋剤硬化剤として機能する構成成分である。硬化は、構成成分(D)の触媒活性下で、この構成成分中のケイ素結合水素原子と、構成成分(A)中のアルケニル基との付加反応によって進行する。
【0022】
構成成分(C)は、分子当たり平均で少なくとも2つのケイ素結合水素原子を有する、現在既知のオルガノ水素ポリシロキサンのうちのいずれかであってよい。構成成分(C)の分子構造は限定されず、必要に応じて、環状、線状、分岐状、および/または網状であってよい。水素原子以外のケイ素結合基は、脂肪族不飽和結合を含まない一価炭化水素基であってもよい。一価炭化水素基は、メチル基、エチル基、プロピル基、または同様のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、または同様のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、または同様のアラルキル基;および3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、または同様のハロゲン化アルキル基によって例示される。
【0023】
構成成分(C)の量は、構成成分(A)および(B)中のアルケニル基当たり、20~50個のケイ素結合水素原子を提供する量である。好ましくは、その下限は、構成成分(A)および(B)中のアルケニル基当たり25個のケイ素結合水素原子であり、その上限は、構成成分(A)および(B)中のアルケニル基当たり45、40、35、または30個のケイ素結合水素原子である。構成成分(C)の含有量が先述の範囲内であると、本組成物を十分に硬化させることができるためである。
【0024】
構成成分(D)は、白金含有触媒であり、構成成分(A)と構成成分(C)の付加反応を促進する。構成成分(D)は、塩化白金酸、塩化白金酸-オレフィン錯体、塩化白金酸-ビニルシロキサン錯体、およびアルミナなどの微粒子担体に担持された白金によって例示される。
【0025】
構成成分(D)は、本組成物のヒドロシリル化反応を向上するのに十分な量で、好ましくは、構成成分(A)~(C)の組み合わせた量の100万質量部ごとに0.1~1000、好ましくは1~300質量部の白金を与えるのに十分な量で添加される。架橋反応は、0.1質量部未満では不十分であり、したがって凝集強度は低減する一方で、1,000質量部を超えると、結果として使用時間が短くなりコストが高くなるため不利である。
【0026】
構成成分(A)~(D)に加えて、当該技術分野で既知の阻害剤(E)を本組成物に添加してもよい。構成成分(E)は、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オール、1-エチニル-1-シクロヘキサノール、3-フェニル-1-ブチン-3-オール、もしくは同様のアルキンアルコール;3-メチル-3-ペンテン-1-イン、3,5-ジメチル-1-ヘキセン-3-イン、もしくは同様のエン-イン化合物;1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン、もしくは同様のメチルアルケニルシロキサン化合物;アルキルおよび置換アルキルマレエート、もしくは同様の不飽和エステル;またはベンゾトリアゾールによって例示される。
【0027】
構成成分(E)の含有量は限定されないが、構成成分(A)および(B)の100質量部当たり0.001~5質量部の量であり得る。
【0028】
加えて、本組成物はまた、構成成分(A)~(D)を溶解するための溶剤を含有することができるため、本組成物は、様々な基材に容易に適用することができる。溶剤は限定されないが、しかしながら芳香族溶剤、および少なくとも3個の炭素原子を有する脂肪族アルコール、または脂肪族エステルで構成されてもよい。芳香族溶剤は、トルエン、キシレン、およびそれらの混合物によって例示される。脂肪族アルコールは、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、およびそれらの混合物によって例示される。脂肪族アルコールは、好ましくはイソプロピルアルコールである。脂肪族エステルは、酢酸メチル、酢酸エチル、およびそれらの混合物によって例示される。
【0029】
溶剤の含有量は限定されないが、組成物を基材に適用するのに十分な量で添加することができる。構成成分(A)~(D)の100質量部当たり25~400質量部、または50~200質量部の量が好ましい。これは、含有量が先述の範囲の下限以上であると、本組成物の粘度が低減され、含有量が先述の範囲の上限以下であると、基材上に厚いシリコーン感圧性接着剤層を形成することができるためである。
【0030】
さらに、本組成物への少量の補助構成成分の添加は、許容可能である。かかる補助構成成分は、例えば、様々な酸化防止剤、顔料、安定剤、充填剤などである。
【0031】
本組成物は、テープ様またはシート様の基材上に適用され、比較的低い温度、具体的には50℃~100℃の範囲の温度で加熱することによって硬化され、それにより先述の基板上に感圧性接着剤層が形成される。基材は、単一の板紙、段ボール、粘土コート紙、ポリオレフィンラミネート紙、具体的にはポリエチレンラミネート紙、合成樹脂フィルム、天然繊維ウェブ、合成繊維ウェブ、人工皮革、または金属箔などの異なるな材料から作製されていてもよい。最も好ましい基材は、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、またはナイロンなどの合成フィルムである。耐熱特性が不可欠なときは、ポリイミド、ポリエーテル-エーテル-ケトン(PEEK)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリアリレート、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルスルホン(PES)、または同様の耐熱性合成樹脂から作製されたフィルムの形態の基材を使用することが好ましい。
【実施例】
【0032】
以下、本発明のシリコーン感圧性接着剤組成物について、実施例および比較例を使用して詳述する。しかしながら、本発明は、以下に列挙する実施例の説明によって限定されない。粘度は、25℃で測定した。
【0033】
[実施例1~7および比較例1~4]
表1に示されるシリコーン感圧性接着剤組成物は、以下に記載の構成成分を使用して調製した。さらに、表1では、「SiH/Vi」は、構成成分(A)および(B)中の合計ビニル基1モル当たりの構成成分(C)中のケイ素結合水素原子の合計モル数を表し、「R/P」は、構成成分(A)当たりの構成成分(B)の質量比を表す。
【0034】
次の構成成分を、構成成分(A)として使用した。
構成成分(a-1):ガム様のジメチルビニルシロキシ末端および部分的にジメチルヒドロキシシロキシ末端のジメチルポリシロキサンの25質量%トルエン溶液(ビニル基含有量:0.01質量%)
【0035】
次の構成成分を、構成成分(B)として使用した。
構成成分(b-1):1.1のモル比[(CH3)3SiO1/2単位]/[SiO4/2単位]を有し、1,800の標準ポリスチレンに換算される数平均分子量(Mn)を有する、(CH3)3SiO1/2単位およびSiO4/2で構成されるオルガノポリシロキサンの71質量%のキシレン溶液。
【0036】
構成成分(b-2):1.1のモル比[(CH3)3SiO1/2単位]/[SiO4/2単位]を有し、7,000の標準ポリスチレンに換算される数平均分子量(Mn)を有する、(CH3)3SiO1/2単位およびSiO4/2で構成されるオルガノポリシロキサンの75質量%のキシレン溶液。
【0037】
次の構成成分を、構成成分(C)として使用した。
構成成分(c-1):両方の分子末端がトリメチルシロキシ基でキャップされ、5mPa・sの粘度を有するメチル水素シロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー(ケイ素結合水素原子含有量:0.77 質量%)
【0038】
次の構成成分を、構成成分(D)として使用した。
構成成分(d-1):白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体の1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン溶液(質量単位でのこの構成成分中の白金金属含有量=およそ5,300ppm)
【0039】
次の構成成分を、構成成分(E)として使用した。
構成成分(e-1):1-エチニル-シクロヘキサン-1-オール
【0040】
実施例で報告される特性は、次の方法によって測定した。
[単板表への剥離力の測定]
シリコーン感圧性接着剤組成物の溶液を、十分な量で、アプリケーターを用いてフルオロ-シリコーン剥離フィルムに適用して、厚さ50μmの硬化層を生成し、次いで組成物を70℃で2分間乾燥させ、150℃で2分間加熱することによって硬化させ、このようにシリコーン感圧性接着剤を形成した。接着性層に空気を封入することなく、厚さ50μmを有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムにシリコーン感圧性接着剤を結合した。
【0041】
PETフィルムを伴うシリコーン感圧性接着剤は、50mm×150mmのサイズに切断した。シリコーン感圧性接着剤のPETフィルムは、両面接着テープによって引張試験機に結合した。次いで、フルオロ-シリコーン剥離フィルムを180°で除去したときの、25℃での引き剥がし力を測定した。本明細書では、引き剥がし速度は、300mm/分に設定した。
【0042】
[ガラスまたはPCでの180°引き剥がし接着性の測定]
剥離力の評価について説明した方法と同じ方法を使用して、PETフィルムを伴うシリコーン感圧性接着剤を調製した。PETフィルムを伴うシリコーン感圧性接着剤は、25mm×150mmのサイズに切断した。フルオロ-シリコーン剥離フィルムの引き剥がし後、2kgのゴムローラーを使用することによって、シリコーン感圧性接着性をガラスまたはポリカーボネート(PC)に接着した。30分後、引張試験機によって180°引き剥がし接着性を測定した。本明細書では、引き剥がし速度は、300mm/分に設定した。
【0043】
[PETでのT型引き剥がし接着性の測定]
剥離力の評価について説明した方法と同じ方法を使用して、PETフィルムを伴うシリコーン感圧性接着剤を調製した。PETフィルムを伴うシリコーン感圧性接着剤は、25mm×150mmのサイズに切断した。フルオロ-シリコーン剥離フィルムの引き剥がし後、2kgのゴムローラーを使用することによって、シリコーン感圧性接着剤を別の2mmのPETフィルムに接着した。30分後、引張試験機によって180°引き剥がし接着性を測定した。本明細書では、引き剥がし速度は、300mm/分に設定した。
【0044】
[プローブタックの測定]
剥離力の評価について説明した方法と同じ方法を使用して、PETフィルムを伴うシリコーン感圧性接着剤を調製した。シリコーン感圧性接着剤の25℃での粘着力は、ASTM D 2979「Standard Test Method for Pressure-Sensitive Tack of Adhesives Using an Inverted Probe Machine」に従って、プローブタック試験機(ChemInsturuments, Inc.製モデルPT-1000)を使用して測定した。測定条件は、次のとおりである。
-引き剥がし速度:1cm/分
-ロッド:直径3mmのステンレス鋼ロッド
-負荷:100g
-滞留時間:1秒
【0045】
[レオロジーの測定]
引き剥がし力の評価について説明した方法と同じ方法を使用して、PETフィルムを伴うシリコーン感圧性接着剤を調製した。シリコーン感圧性接着剤の25℃でのガラス転移点(Tg)および貯蔵弾性率(G’)を、次の条件下でレオメーター(TA Instruments Ltd.製AR-G2磁気ベアリングレオメーター)を使用して測定した。
【0046】
-直径8mmを有するディスク
-60~120°Cで5℃/分のランプレート
-6.28rad/秒(1Hz)の周波数
-ひずみ0.05%
-0.5~1.0mmの試験片の厚さ
【表1】
【表2】
【0047】
表1の結果に基づいて、同じR/P比では、1,800のMnを有する(CH3)3SiO1/2単位およびSiO4/2で構成されるオルガノポリシロキサンは、剥離ライナーに対する良好な剥離力、ガラス、ポリカーボネート(PC)、およびポリエチレンテレフタレート(PET)などの一般的な基材に対する高い粘着性および高い引き剥がし接着性を、シリコーン感圧性接着剤に提供することが見出された。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明のシリコーン感圧性接着剤組成物は、感圧テープ、ラベル、エンブレム、および他の装飾的または情報標識などの物品の調製に有用である。