(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-23
(45)【発行日】2023-03-31
(54)【発明の名称】クロマトグラフィーカートリッジおよびその生産方法
(51)【国際特許分類】
G01N 30/60 20060101AFI20230324BHJP
【FI】
G01N30/60 A
G01N30/60 P
(21)【出願番号】P 2020512432
(86)(22)【出願日】2018-08-29
(86)【国際出願番号】 EP2018073215
(87)【国際公開番号】W WO2019043050
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2021-07-21
(32)【優先日】2017-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】502307209
【氏名又は名称】バイオタージ・アクチボラゲット
【氏名又は名称原語表記】BIOTAGE AB
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エサラ,ユハ
(72)【発明者】
【氏名】ノーレン,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ノルマン,ペール
【審査官】中村 直子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0060535(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0228792(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00-30/96
B01J 20/281-20/292
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロマトグラフィーカートリッジ(10)であって、
キャップ(40)で封止された少なくとも1つの端を有するバレル(20)を含み、前記バレル(20)は、前記バレル(20)の円筒外面上に配置されたねじ山(23)を含み、前記キャップ(40)は、前記キャップ(40)の円筒内面上に嵌合ねじ山(43)を含み、前記キャップ(40)は入口端(45)と開放端(47)とを有し、
前記バレル(20)は、前記円筒外面上で、前記キャップ(40)によって封止された前記端からの方向において前記バレル(20)の前記ねじ山(23)より下に配置された少なくとも1つの突起(24)を含み、前記突起(24)は、前記バレル(20)の前記円筒外面から実質的に径方向外側に延在し、
前記キャップ(40)は、前記キャップ(40)の前記入口端(45)からの方向において前記キャップ(40)の前記
嵌合ねじ山(43)より下に配置された円筒状のフランジ(44)を含み、前記フランジ(44)は前記突起(24)を収容し、少なくとも1つのロック部材(46)が、前記フランジ(44)の円筒内面上に設けられ、実質的に径方向内側に延在し、
前記カートリッジ(10)は、前記キャップ(40)の前記ロック部材(46)と前記バレル(20)の前記突起(24)とによって形成された機械的接続部を
含み、
前記ロック部材(46)は、前記キャップ(40)の前記フランジ(44)における凹みである、クロマトグラフィーカートリッジ(10)。
【請求項2】
前記ロック部材(46)は、前記フランジ(44)の局所的変形部であり、前記局所的変形部は、前記キャップ(40)が前記バレル(20)上に取付けられた後で前記フランジに設けられたものである、請求項1に記載のクロマトグラフィーカートリッジ(10)。
【請求項3】
前記凹み(46)の少なくとも一部は塑性変形されている、請求項
1または2に記載のクロマトグラフィーカートリッジ(10)。
【請求項4】
前記凹み(46)は、少なくとも部分的に塑性変形された前記凹み(46)をもたらすパンチ動作によって形成されたものである、請求項
3に記載のクロマトグラフィーカートリッジ(10)。
【請求項5】
径方向における前記突起(24)と前記凹み(46)との重複が、前記突起(24)が前記バレル(20)の前記外面から延在する長さの3分の1を上回る、請求項
1~
4のいずれか1項に記載のクロマトグラフィーカートリッジ(10)。
【請求項6】
前記凹み(46)は、ねじ方向において前記突起(24)の後ろに配置され、前記突起(24)に当接する、請求項
5に記載のクロマトグラフィーカートリッジ(10)。
【請求項7】
前記ロック部材(46)は、前記キャップ(40)の前記フランジ(44)における溶融構造であり、前記溶融構造は、前記フランジ(44)の一部の局所的溶融によって形成されたものである、請求項2に記載のクロマトグラフィーカートリッジ(10)。
【請求項8】
前記突起(24)と前記ロック部材(46)とによって形成された前記機械的接続部は、第1の予め定められたトルクに耐え、第2の予め定められたトルクで壊れるように構成され、前記第1および第2の予め定められたトルクは、ねじ方向とは反対の方向に与えられる、請求項1~
7のいずれか1項に記載のクロマトグラフィーカートリッジ(10)。
【請求項9】
前記第1の予め定められたトルクは、ユーザが自分の手を使って前記キャップ(40)を手動でねじってゆるめることによって達成可能なトルクに対応しており、前記第2の予め定められたトルクは、前記第1の予め定められたトルクの1.3~2倍の範囲にある、請求項
8に記載のクロマトグラフィーカートリッジ(10)。
【請求項10】
複数の対の突起(24)およびロック部材(46)が、前記バレル(20)および前記フランジ(44)上にそれぞれ設けられる、請求項1~
9のいずれか1項に記載のクロマトグラフィーカートリッジ(10)。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれか1項に記載の閉鎖されたクロマトグラフィーカートリッジを製造する方法であって、前記カートリッジは少なくとも、バレル(20)と、キャップ(40)と、クロマトグラフィー培地とを含み、前記キャップ(40)は、予め定められたねじ方向において前記バレル(20)上にねじ込まれるように適合され、前記バレルは、前記バレル(20)の円筒外面上に配置された少なくとも1つの突起(24)を含み、前記キャップ(40)には、前記バレル(20)上の取付け位置にある前記突起(24)を収容するように適合されたフランジ(44)が設けられ、
前記方法は、
- 少なくともクロマトグラフィー培地がパックされたバレルを提供するステップと、
- 少なくとも1つのパンチ(32)を含むパンチ機器に前記バレルを位置付け、前記パンチ(32)が前記ねじ方向において予め定められた距離だけ前記突起(24)の後ろに位置付けられるように前記バレル(20)の前記突起(24)を整列させるステップと、
- 前記バレル(20)の上部に前記キャップ(40)を施すステップと、
- 予め定められた位置まで、および/または予め定められたトルクで、前記キャップおよび/または前記バレルをねじ込むステップと、
- 少なくとも1つの凹み(46)を生成するために、前記キャップ(40)の前記フランジ(44)をパンチするステップとを含む、方法。
【請求項12】
前記位置付けるステップは、前記バレル(20)上に設けられた整列手段を、前記パンチ機器の支持構造上に設けられた対応する整列手段と嵌合させるステップを含む、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
前記バレル(20)には複数の突起(24)が設けられ、前記方法はさらに、第1の突起での第1のパンチするステップの後で、前記バレル(20)を回転させ、前記パンチ(32)に対して第2の突起を整列させ、前記パンチするステップを繰り返すステップを含む、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
前記パンチするステップは、凹み(46)を各々生成する複数のパンチ(32)を用いてパンチするステップを含み、前記複数のパンチを用いてパンチするステップは、バランスのとれた動作を有するために同時に起こる、請求項
11に記載の方法。
【請求項15】
前記パンチするステップは、少なくとも部分的に塑性変形された凹み(46)を生成する、請求項
11~
14のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明はクロマトグラフィーに関し、より特定的には、高い圧力にとって好適であるプレパッククロマトグラフィーカートリッジと、そのようなプレパックカートリッジの生産方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
クロマトグラフィーとは、分離されるべき物質が固定相と移動相との間で異なるやり方で分布されるという事実を利用する化学的分離手法である。固定相、すなわち分離培地は、典型的には吸着培地、イオン交換体材料、ゲル、または表面修飾固体材料であるが、通常、カラムにパックされる。培地床の上部に施された試料における異なる成分が、たとえばそれらのサイズと、液体がカラムを通過する際に固定相に引き寄せられる度合いとに依存して、異なる速度でカラムを通って移動するであろう。液体クロマトグラフィーは、研究および産業において、化学分析のために、および予備分離のために広範に使用されている。
【0003】
伝統的なクロマトグラフィーでは、液体または溶媒は、重力によってカラムを通過する。したがって、液体がカラムを通過する速度は比較的遅い。クロマトグラフィープロセスの速度を上げるために、液体は、正の圧力の印加によって強制的にカラムを通される。これは、HPLC(high performance liquid chromatography:高性能液体クロマトグラフィー)などでのようにカラムを通して液体を汲み出すことによって、または、フラッシュクロマトグラフィーなどでのように正の気圧を印加することによって、遂行され得る。現代のフラッシュクロマトグラフィーは典型的には、プラスチック製の使い捨てのプレパックカラムまたはカートリッジを使用しており、ほとんどの変形では、液体は、カラムまたはカートリッジを通して汲み出される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フラッシュクロマトグラフィーに使用される使い捨てカートリッジは通常、経済性を念頭において製造され、それは、安価なプラスチックのカートリッジを製造することと、カラムを容易に組立てられるように設計することとを伴う。それは、カラムの本体に所望のパッキングを充填し、通常、フリットプラグをパッキングの各端で用いてパッキングを適所に保持し、次に、カラムの開放端を端部またはキャップによって、たとえばそれらをカラム端にねじ込むかスナップ嵌合することによって閉鎖することによる。端部はまた、たとえばスピン溶接または熱板溶接によってカラムに接着または溶接されてもよい。現代のフラッシュクロマトグラフィーは、カートリッジが漏れないこと、および、この特性が繊細な取扱いを必要とすることなくプロセス全体にわたって維持されることを大いに要求する。妥当なコストでの量産に適し、しかも十分に剛性があって漏れない使い捨てカートリッジを提供するために、相当な努力がなされてきた。
【0005】
フラッシュクロマトグラフィー用のカートリッジの大多数は、閉鎖されたプレパック製品としてエンドユーザに提供される。しかしながら、用途によっては、試料をカラムに直接装填すること、またはカラムを修正することが望ましい。これらの目的のために、いわゆる開放カートリッジが提供される。典型的には、そのようなカートリッジには、ねじまたはスナップキャップが設けられる。開放カートリッジに対する要望により、製造業者は、2つの別々のタイプのカートリッジを製造し保管することを強いられ、それは、取扱いおよび保管という双方の見地からの経済的観点から、ならびに、カートリッジの生産のために複数の金型が必要とされるということから、望ましくない。
【0006】
今日のさらに別の要件は、カートリッジが高価な措置を講じることなくリサイクル可能であるべきであるということである。リサイクルは典型的には、この段階では典型的には残留液体を含むパックされた材料を、プラスチックカートリッジから分離することを必要とする。最も一般的である、永続的に閉鎖されたカートリッジは、効率的なリサイクルにあまり適していない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
この発明の目的は、先行技術のカートリッジおよび製造手法の欠点を克服する、フラッシュクロマトグラフィー用の使い捨てカートリッジを提供することである。これは、請求項1に定義されるようなカートリッジ、請求項12に定義されるようなバレル、請求項13に定義されるようなキット、および請求項14に定義されるようなカートリッジを製造する方法によって達成される。
【0008】
この発明に従ったクロマトグラフィーカートリッジは、キャップで封止された少なくとも1つの端とねじ山とを有するバレルを含み、ねじ山は、バレルの円筒外面上に配置され、バレル上に取付けられているキャップの円筒内面上の嵌合ねじ山に係合される。バレルには、円筒外面上で、キャップによって封止された端からの方向においてねじ山より下に配置された少なくとも1つの突起が設けられる。突起は、バレルの円筒外面から実質的に径方向外側に延在する。キャップには、入口端からの方向においてキャップのねじ山より下に配置された円筒状のフランジが設けられる。フランジは突起を収容するべきである。少なくとも1つのロック部材が、フランジ上に配置され、フランジの円筒内面から実質的に径方向内側に延在する。バレルの突起とともに、ロック部材は機械的接続部を形成し、それは、少なくとも、ユーザが自分の素手を使うことによって達成可能な力/トルクでキャップをねじってバレルから外すことができないことを保証する。
【0009】
この発明の一局面によれば、ロック部材は、フランジの局所的変形部であり、局所的変形部は、キャップがバレル上に取付けられた後でフランジに設けられたものである。局所的変形部は、たとえば、フランジへのパンチ動作の結果である凹み、または、フランジの局所的溶融の結果である溶融構造の形をとってもよい。
【0010】
この発明の別の局面によれば、凹みは、パンチ動作の結果、少なくとも部分的に塑性変形されていてもよい。好ましくは、突起がバレルの外面から延在する長さの3分の1を上回る、径方向における突起と凹みとの重複がある。好ましくは、凹みは、ねじ方向において突起の後ろに配置され、突起に当接する。
【0011】
この発明の一局面によれば、突起とロック部材とによって形成された機械的接続部は、第1の予め定められたトルクに耐え、第2の予め定められたトルクで壊れるように構成され、第1および第2の予め定められたトルクは、ねじ方向とは反対の方向、キャップをねじってバレルから外す方向に与えられる。第1の予め定められたトルクは、ユーザが自分の素手を使ってキャップをねじってゆるめることによって達成可能なトルクに関連するべきであり、第2の予め定められたトルクは、第1の予め定められたトルクの1.3~2倍の範囲にあるべきである。よって、ツールまたは機械の助けがなければユーザがカートリッジを開放できないことが、余裕を持って保証されるべきである。しかも、レバーを提供する好適なツールまたは機械を用いて、カートリッジの完全な破壊なくカートリッジを開放することが可能であるべきである。
【0012】
さらに別の局面によれば、複数の対の突起およびロック部材が、バレルおよびフランジ上にそれぞれ設けられる。
【0013】
この発明に従ったクロマトグラフィーカートリッジ用のバレルであって、バレルは、キャップで封止されるように配置された少なくとも1つの端とねじ山とを有し、ねじ山は、バレルの外面上に配置され、キャップの円筒内面上の対応するねじ山と係合されるように適合される。バレルには、円筒外面上で、キャップによって封止されるために適合された端からの方向においてねじ山より下に配置された少なくとも1つの突起が設けられる。突起は、バレルの円筒外面から実質的に径方向外側に延在し、キャップのフランジの円筒内面から実質的に径方向内側に延在するロック部材と機械的接続部を形成するように適合されている。
【0014】
この発明に従った、上記に従ったバレルとキャップとを含むプレパッククロマトグラフィーカートリッジを製造する方法は、
- 少なくともクロマトグラフィー培地を有するバレルを提供するステップと、
- 少なくとも1つのパンチを含むパンチ機器にバレルを位置付け、パンチがねじ方向において予め定められた距離だけ突起の後ろに位置付けられるようにバレルの突起を整列させるステップと、
- バレルの上部にキャップを施すステップと、
- 予め定められた位置まで、および/または予め定められたトルクで、キャップをねじ込むステップと、
- 少なくとも1つの凹みを生成するために、キャップのフランジをパンチするステップとを含み、そのため、凹みは、パンチ動作の後で突起に当接するであろう。
【0015】
一局面によれば、この発明の方法は、位置付けるステップにおいて、バレル上に設けられた整列手段を、パンチ機器の支持構造上に設けられた対応する整列手段と嵌合させるステップを含む。
【0016】
この発明の一局面によれば、パンチのパンチ深さ/力は、少なくとも部分的に塑性変形された凹みを与えるように選択される。
【0017】
別の局面によれば、パンチするステップは、凹みを各々生成する複数のパンチを用いてパンチするステップを含み、複数のパンチを用いてパンチするステップは、バランスのとれた動作を有するために同時に起こる。
【0018】
この発明により、開放カートリッジおよび閉鎖カートリッジのために同じバレルが使用可能であるカートリッジが提供される。閉鎖カートリッジは、パックされたカートリッジにおける培地などに対して優しく、コスト効率が良い態様で、組立てプロセスにおける最後のステップまたは最後の複数のステップのうちの1つとしてロックされる。
【0019】
この発明の1つの利点は、カートリッジが、偶然、または誤まって、またはユーザが通常の手段によってカートリッジを開放しようとしても、開放されないように設計可能であるということである。これは、カートリッジの中身がそのままであること、および、クロマトグラフ機器が間違った使用によって破損されないこと、もしくは、無効のまたは疑わしい結果が生じないことを保証する。同時に、正しいツールが使用される場合、カートリッジは、たとえば、リサイクルする目的のために内部の培地をプラスチック部品から分離するために、制御されたやり方で開放され得る。
【0020】
この発明に従った方法は、コスト効率良く、培地または他の内部部品に損傷を与えないやり方で、ロック機能を提供することを可能にする。複数のパンチが同時のアクションで使用される場合、カートリッジをパンチ間に再び整列させる必要はなく、カートリッジが体験する、結果として生じる力はより少ない。それは、慎重にパックされた培地床に影響を与えるリスクがより少ないことを意味する。
【0021】
下記において、添付図面を参照して、この発明を、その非限定的な実施形態に関して、単なる一例としてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1(a)】本発明に従ったクロマトグラフィーカートリッジの一実施形態の概略分解斜視図である。
【
図1(b)】本発明に従ったクロマトグラフィーカートリッジの一実施形態の封止されたカートリッジの斜視図である。
【
図1(c)】本発明に従ったクロマトグラフィーカートリッジの一実施形態の断面図である。
【
図2】この発明に従った方法のフローチャートである。
【
図3a】この発明に従った方法のステップのうちの1つの概略図である。
【
図3b】この発明に従った方法のステップのうちの1つの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
詳細な説明
「上部」、「底部」、「上方」、「下方」などの用語は、図面に示すこの発明の実施形態の形状寸法を参照して使用されているに過ぎず、この発明をいかなる態様によっても限定するよう意図されない。
【0024】
背景の章で説明されたように、フラッシュクロマトグラフィーカートリッジは典型的には、閉鎖されたプレパック構成で流通されるが、開放カートリッジも提供される。開放とは典型的には、エンドユーザがカートリッジの上部筐体を開放し、準備後、カートリッジを再び閉鎖することができることを意味する。プレパックカートリッジは典型的には、バレルの底部を底部キャップで閉鎖し、内部部品を取付け、上部キャップで閉鎖することによって生産される。ほとんどの部品は典型的には、自動成型プロセスで事前作製される。生産は、非常に単純化されると、2段階プロセスとして説明され得る。第1の段階では、プラスチック部品が作製され、第2の段階では、カートリッジがパックされ封止される。第2の段階は典型的には、さまざまな最終用途、顧客要求などにより適合可能である。
【0025】
本発明に従ったカートリッジ10を、
図1a~cに概略的に示す。
図1aは分解図であり、
図1bは、カートリッジ10の入口部分のクローズアップであり、
図1cは、カートリッジ10の入口部分の断面図である。カートリッジ10は、典型的には円筒状のプラスチックチューブであるバレル20を含む。バレル20には、一端でバレル20を閉鎖して出口31を提供するように配置された出口端部30が設けられる。キャップ40は、その入口端45に入口41が設けられており、他端であるその開放端47で、バレル20の入口端上に配置される。キャップ40および端部30も典型的には、プラスチック材料、通常、バレル20と同じプラスチック材料でできている。それに代えて、出口端部30は、バレル20に完全に一体化される。当業者であれば理解するように、フラッシュクロマトグラフィー用のカートリッジは、入口および出口フリット、たとえばシリカなどのクロマトグラフィー培地、ならびにさまざまな支持構造といった、カートリッジ内に含まれる多くの他の機能部品を含む。明確にするために、これらの形状構成は図示されない。同様に、カートリッジには、カートリッジをクロマトグラフィ装置上に、またはクロマトグラフィ装置内に取付けるための支持構造または取付構造が設けられてもよい。明確にするために、そのような外部構造も図示または説明されない。
【0026】
この発明によれば、キャップ40と係合するであろうバレル20の入口端には、その円筒外面上に、ねじ山23が、バレル20の入口端に隣接して設けられる。バレル20およびキャップ40には、典型的には予め定められた圧力仕様通りにカートリッジを封止するための整合する封止手段(図示せず)が設けられる。ねじ山23は好ましくは、
図1aに矢印で示された時計回りのねじ方向を与える通常の右ねじ山である。バレル20の入口端からの方向においてねじ山23より下に、少なくとも1つの突起24が設けられる。突起24は、バレル20の外面から実質的に径方向外側方向に、好ましくはバレル20の表面から0.5~5mmの高さで延在する。バレル20の突起24は、キャップ40の事後作製ロック部材46と相互作用して機械的接続部を形成するように適合される。機械的接続部は、カートリッジが最終的に組立てられ、次にキャップ40のロック部材46が設けられた後に、キャップ40がねじってゆるめられることを防止するであろう。ロック部材46はたとえば、フランジ44における凹み、溶融構造、またはフランジ44への追加材料であってもよく、それらは、この発明の異なる実施形態を表わす。下記においては、凹みは、例示的な一例として使用される。当業者であれば理解するように、他のタイプのロック部材についても、要件および特徴は該当する。
【0027】
一実施形態によれば、ロック部材46は、最終組立て中に局所的溶融によってキャップ40に設けられた溶融構造である。
【0028】
以下にさらに説明されるように、突起24は、バレル20へのキャップ40のロック機能を提供するように、キャップ40におけるロック部材と相互作用するべきである。キャップ40のロック部材との相互作用が、確実なロックが保証されるようなものである限り、突起24の設計は比較的自由に変更可能である。一実施形態によれば、ねじ方向とは反対の方向に面する突起の側は、バレル20の外面に実質的に垂直である。一実施形態によれば、突起は、フック形状の設計を形成するように、ねじ方向とは反対の方向に面する平面を含み、バレル20の外面に対して90度未満の角度を形成する。
【0029】
突起24の両側は、バレル20の円筒表面に向かって湾曲または傾斜していてもよい。特に、ねじ方向に面する突起24の側は、突起の安定性を高めるように傾斜していてもよい。
【0030】
キャップ40は、カートリッジ10の入口部分を形成する入口41が設けられた閉鎖端と、バレル20を受けるための開放端とを有する。キャップ40には、バレル20のねじ山23と整合する雌ねじ山43が設けられる。キャップ40のねじ山43より下に、円筒状のフランジ44が、キャップ40の出口端から見えるように、キャップ40の開放端に隣接して配置され、それは、キャップ40の開放端においてキャップ40を終了させる。フランジ44の内径は、バレル20上へのキャップ40の円滑な取付けを提供するために、フランジ44が、バレル20の突起24に接触することなく、またはわずかに接触するだけで、突起24を収容できるようになっている。突起24とフランジ44の内面との間の最大数ミリメートル程度の遊びが、許容可能であってもよい。フランジ44は好ましくは連続面を有するが、切欠きを有していてもよい。収容されるとは、各突起24がフランジ部分によって覆われることであると理解されるべきである。
【0031】
キャップ40のフランジ44には、キャップ40のフランジ44の円筒内面から実質的に径方向内側に延在する少なくとも1つの事後作製ロック部材46が設けられる。この発明の一実施形態によれば、ロック部材46は凹みである。遊びが存在する場合、凹み46は、遊びを実質的に上回る距離だけ内面から延在する。好ましくは、径方向における突起24と凹み46との重複が、突起24がバレル20の外面から延在する長さの少なくとも3分の1を上回ってもよい。非限定的な例として、200gのサイズのカートリッジについては、凹み46は約2~5mmであってもよく、より小さいサイズのカートリッジについては、約1~3mmであってもよい。それに代えて、突起24と凹み46との間の関係を、バレル20の径方向において重複しているとして説明してもよく、重複は約1~5mmである。
【0032】
凹み46は、ねじ方向において凹み46が突起24の後ろにあり、かつ突起24に隣接するように、突起24に対して位置付けられるべきである。好ましくは、凹み46は突起24に当接する。これはキャップ40の確実なロックを与え、そのため、それをねじってバレル20から外すことはできず、ユーザがキャップ40をねじってバレル20から外そうとしている場合に遊びは存在しない。突起24に対する凹み46の位置はさらに、キャップ40の完全に閉鎖された位置で凹み46がキャップをロックするように関連するべきである。ここで、完全にロックされるとは、キャップが予め定められたトルクまでねじ込まれて、漏れない筐体を提供することであると理解されるべきである。
【0033】
「事後作製される凹み」という用語は、プレパックカートリッジ10の最終組立てに関連して、キャップ40がバレル20上にねじ込まれた後で、ロック部材、たとえば凹み46が設けられ、それはたとえば成型プロセスによって与えられた構造ではない、ということを示すために使用される。凹み46は典型的には、および好ましくは、プレパックカートリッジ10を完成させる際の最後のステップまたは最後の複数のステップのうちの1つにおいて、パンチを用いて予め定められた衝撃およびパンチ深さでフランジ44の外面をパンチすることによって、フランジに設けられたものである。パンチすることは典型的には、フランジ44の局所的塑性変形、すなわち非可逆性変形をもたらす。この発明の一実施形態によれば、凹み46は、塑性変形されている少なくとも一部を含む。
【0034】
キャップ40のロックの1つの目的は、カートリッジがそのままの状態でエンドユーザに提供されることを保証することである。これは、ユーザがうっかりまたは故意にカートリッジを開放することを妨げることを含む。したがって、ロックされたカートリッジは、予め定められたトルクに耐えるべきである。予め定められたトルクは、人間がカートリッジの寸法などのパラメータを考慮して自分の手を使ってキャップ-バレルに加えるであろうトルクに関連するべきである。ユーザによって与えられる典型的なトルクは、ユーザの力だけでなく、キャップの形状、特にサイズにも依存して、3~10Nmに及び得る。この発明の一実施形態によれば、凹み46および突起24は、予め定められたトルクに耐えるように相互作用する。
【0035】
上述のように、凹み46と突起24との組合せによって提供されたロックは、カートリッジ10の内部へのアクセスを防止することを目的とする。しかしながら、状況によっては、アクセスを有することが好まれる。使用後、カートリッジは通常、廃棄されるべきである。しかしながら、現代のリサイクル要件は典型的には、カートリッジなどのプラスチック廃棄物が、内部からの注入された化学物質から分離されることを必要とする。この発明の一実施形態によれば、凹み46および突起24は、第1の予め定められたトルクに耐えるように相互作用するが、第2の予め定められたトルクで壊れるように構成される。第1の予め定められたトルクは、典型的には人間の手によって達成可能なトルクに関連するべきであり、ユーザが自分の素手でカートリッジを開放することを防止する。第2のトルクは、第1のトルクよりも著しく高いものの、レバーを提供するツールの助けを借りてまたは機械によってキャップが開放されることに関連するトルクよりも下であるべきである。典型的には、および好ましくは、突起24は凹み46よりも高い安定性を有しており、第2の予め定められたトルクを上回る場合に凹み46が壊れるようにし、またはフランジ44が外側に曲がるようにする。通常の取扱いのすべてに耐えるものの、正しい開放機器が使用される場合に比較的容易に壊れるロック機構を有する、この発明によって提供される可能性は、カートリッジの効率的なリサイクルを保証する。第2のトルクを印加することは好ましくは、凹み46を永続的に変形させ、それにより、開放されたカートリッジの無断の再使用を防止するべきである。
【0036】
この発明の一実施形態によれば、バレル20および/またはキャップ40には、突起24に対して凹み46を形成するパンチの正しい位置付けを容易にするためのそれぞれの整列手段28、48が設けられる。整列手段28、48は、たとえば視覚的マーク、隆起、またはノブであってもよい。それに代えて、バレルには、カートリッジをクロマトグラフに取付けるという第2の目的を有する支持構造が設けられ、その支持構造は加えて、パンチプロセスにおいてバレル20を位置付けて整列させるために使用される。したがって、キャップ40のみが、たとえば視覚的マークまたはノブといった整列手段48を必要とする。
【0037】
この発明の一実施形態によれば、カートリッジ10には、互いに近接して対となって配置された複数の突起24および凹み46が設けられる。好ましくは、突起と凹みとの対の数は2~6であり、さらにより好ましくは3または4である。突起と凹みとの対の数は、開放アクションが実行される場合に突起と凹みとの各対にかかる力に影響を与える。トルクならびに予め定められた第1および第2のトルクは、バレル20に対してキャップ40にかかる、耐えるかまたは壊れるための総トルクとしてそれぞれ理解されるべきである。当業者であれば、必要とされるトルクに適合するために、突起24と凹み46との各対の設計を、対の選択された数に対して適合させること、または逆も同様であることを理解するであろう。設計パラメータは、径方向における突起24と凹み46との重複、突起/凹みの面積、突起24および凹み46の材料特性を含むものの、これらに限定されない。
【0038】
トルクは、トルクレンチで測定されてもよい。それに代えて、トルクτは、回転軸からのユークリッド距離rに対して垂直に作用する力Fを測定することによって確立される。トルクは、以下のように計算される:
【0039】
【0040】
第1および第2の予め定められたトルクを確立する作業では、バレル20が固定され、動力計が設けられれたレバーがキャップ40に取付けられた。表1は、異なるサイズのカートリッジからキャップ40をねじって外すために必要とされるトルクを列挙する。これらの値は、それぞれのサイズについての適切な第2の予め定められたトルクを表わす。人間が自分の素手を使う際に典型的である3~10nmのトルク範囲と比較すると、小さいサイズ(5/10g)については、適用可能であるのはこの範囲の下方部分(約3nm)である。なぜなら、そのようなカートリッジ用のキャップは小さいためである。好ましくは、第2の予め定められたトルクは、第1の予め定められたトルクよりも1.3~2倍高い。代表する検査員による手動の検査によって、検査員が自分の手でカートリッジを開放できなかったことが確認された。
【0041】
【0042】
キャップ40とバレル20とがねじ山を用いて接合されたカートリッジ10が上述されてきた。ここで、「ねじ山」とは、たとえばバヨネットカップリングといった、ひねるかねじる動きを利用するあらゆるタイプの接合機構を含むように解釈されるべきである。
【0043】
クロマトグラフィーカートリッジの入口端上にキャップを有し、出口端上に一体型の端部を有することは、フラッシュクロマトグラフィーにおける一般的なバージョンを表わす。たとえば、ともに上述のロック機構を利用するキャップをバレルの両端に有するといった、他の代替例も想定され得る。それに代えて、カートリッジの出口端のみにキャップが設けられ、キャップにはロック機構が設けられる。当業者であれば、ここでの教示を考慮して、本発明に従って機能するために異なる部品をどのように適合させるかを知っているであろう。
【0044】
突起24は、たとえば円筒形状の中空構造であり、凹み46は、それが突起24の中空内へ延在するように位置付けられる。突起24はまた、ねじ方向に垂直な方向に延在する2つの隆起として実現されてもよく、それら2つの隆起の間に凹み46が延在してもよい。
【0045】
図2のフローチャートおよび
図3a~
bの図面に示す、この発明に従った、パンチ機
械を用いる閉鎖されたクロマトグラフィーカートリッジの最終組立ての方法は、以下のステップを含む:
20:クロマトグラフィー培地、内部支持構造、フリットなどがパックされたバレルを提供するステップ;
22:少なくとも1つのパンチ32を含むパンチ機器にバレルを位置付け、パンチ32がねじ方向において予め定められた距離だけ突起24の後ろに位置付けられるようにバレル20の突起24を整列させるステップ。位置付けて整列させるステップは、たとえばバレルの整列手段28を使用して、単一のアクションで行なわれてもよい。それに代えて、バレル20はまず支持
体に配置され、順次整列される;
24:バレル20の上部にキャップ40を施すステップ;
26:予め定められたトルクでキャップ40をねじ込むステップ。バレル20がパンチ32に対して正しく整列された場合、カートリッジ10が適切に閉鎖されていることを保証することのみが必要である。なぜなら、パンチは、キャップ40のフランジ44上のあらゆる位置に配置され得るためである。それに代えて、位置は、キャップ40およびバレル20のそれぞれの整列手段を互いに整列させることによって定められる;
27:少なくとも1つの凹み46を生成するために、キャップ40のフランジ44をパンチ32を用いてパンチするステップ。パンチ32は典型的には、および好ましくは、予め定められたパンチ深さおよび/またはパンチ力に設定され得る空気圧シリンダ
ーによって動作される。
図3aの概略図から分かるように、パンチは、突起
24に当接する凹みを生成するようにキャップ40のフランジ44に当たるべきである。パンチ深さは、パンチがバレル20の外面に触れないように調節されるべきである;
28:オプションのステップで、カートリッジ10はパンチ32に対して回転され、パンチするステップ27が繰り返される。3つ以上の凹み46が設けられることになっている場合、パンチするステップ27と回転させるステップ28とが繰り返される。
【0046】
位置付けて整列させるステップ22における予め定められた距離は、パンチ32がバレル20の突起24に当接するキャップ40の凹み46を生じさせるように選択されるべきである。当業者であれば、その要件を考慮して、有限の一連の検査により、好適な予め定められた距離を定めるであろう。同様に、正しいパンチ深さ/力が好ましくは、検査によって定められる。この発明の一実施形態によれば、パンチ深さ/力は、少なくとも部分的に塑性変形された凹み46を与えるように選択される。
【0047】
代替的な一実施形態によれば、パンチするステップ27と回転させるステップ28とは、単一のマルチパンチステップ29に置換えられる。パンチ機械には、パンチ動作時に凹み46を各々生成する複数のパンチ32およびそれぞれの空気圧シリンダー33が設けられる。好ましくは、複数の異なるパンチのパンチングは、バランスのとれた動作を有するために同時に起こる。複数のパンチを利用することは、時間を節約し、カートリッジをパンチ間に再び整列させる必要性を減少させるとともに、カートリッジにかかる力を減少させる。これは、パンチ対称性が、慎重にパックされた培地床に影響を与えるリスクがより少ないことを意味するためである。
【0048】
ロック部材が溶融構造である場合、パンチ機械は、たとえばピンまたはタップ状の抵抗ヒーターまたはレーザーヒーターといった、局所的溶融のための機器と置換えられる。整列に関する要件および手順は同じであろう。
【0049】
最終組立てとはここでは、カートリッジに培地が充填されて閉鎖される前に多くの製造ステップが起こり得ることを認識することとして理解されるべきである。そのような製造ステップは、バレル、キャップ、および内部構造を生成するステップと、培地を準備するステップとを含むものの、それらに限定されない。製造プロセスがどのように実現されるかに依存して、最終組立ては、ここに説明されたものよりも多い、または少ないステップを含んでいてもよい。当業者であれば、異なる製造プロセスに準拠するためにこの発明に従った方法をどのように適合させるかを知っているであろう。
【0050】
本発明は、上述の実施形態に限定されない。さまざまな代替例、修正、および均等物が使用されてもよい。したがって、上述の実施形態は、請求項によって定義されるこの発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきでない。