(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-23
(45)【発行日】2023-03-31
(54)【発明の名称】ナイフ研ぎ装置
(51)【国際特許分類】
B24B 3/36 20060101AFI20230324BHJP
B24B 3/54 20060101ALI20230324BHJP
【FI】
B24B3/36 N
B24B3/54
(21)【出願番号】P 2020524857
(86)(22)【出願日】2018-11-26
(86)【国際出願番号】 EP2018000535
(87)【国際公開番号】W WO2019120600
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-09-16
(31)【優先権主張番号】102017011680.6
(32)【優先日】2017-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】519253661
【氏名又は名称】ツヴィリング ヨット アー ヘンケルス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【氏名又は名称】今井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】マーダー セバスティアン
【審査官】大光 太朗
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公告第00474100(GB,A)
【文献】中国実用新案第2747014(CN,Y)
【文献】特開2002-224937(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0077299(US,A1)
【文献】米国特許第02249218(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 3/36
B24B 3/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの研磨ストリップホルダ(6、7)を有するナイフ研ぎ装置であって、
前記研磨ストリップホルダはそれぞれ研磨ストリップ(4、5)を保持し、かつ、筐体(1)内で互いに隣接して移動可能に配置され、2つの交差する前記研磨ストリップ(4、5)がV字型で可動の研ぎスロット(10)を形成するナイフ研ぎ装置において、
一端が前記筐体(1)の上部にヒンジで取り付けられている4つの振り子ロッド(13~16)を備え、
前記研磨ストリップホルダ(6、7)
は、それぞれそれらの下部が、下部ジョイントによって2つの振り子ロッド(13~16)
の他端にヒンジ結合されていることを特徴とするナイフ研ぎ装置。
【請求項2】
前記各研磨ストリップホルダ(6、7)は、板状部材によって形成され、2つの前記板状部材は互いに隣接して
平行に配置されていることを特徴とする
請求項1に記載のナイフ研ぎ装置。
【請求項3】
前記各研磨ストリップホルダ(6、7)の上部は、前記筐体(1)内で案内されることを特徴とする
請求項1又は2に記載のナイフ研ぎ装置。
【請求項4】
前記各研磨ストリップホルダ(6、7)は、その上部に、前記筐体の上部(19)の長手方向スロット(21)に挿入される少なくとも1つの突起(20)を有することを特徴とする
請求項3に記載のナイフ研ぎ装置。
【請求項5】
前記各研磨ストリップホルダ(6、7)の下部は、前記筐体(1)内で案内されることを特徴とする
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のナイフ研ぎ装置。
【請求項6】
前記各研磨ストリップホルダ(6、7)は、その下部に、前記筐体の下部の長手方向スロット(23)に挿入される少なくとも1つの突起(22)を有することを特徴とする
請求項5に記載のナイフ研ぎ装置。
【請求項7】
前記2つの研磨ストリップホルダ(6、7)には、少なくとも1つのばね要素(24)によりばね荷重がかけられることを特徴とする
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のナイフ研ぎ装置。
【請求項8】
前記ばね要素(24)は、前記研磨ストリップホルダ(6、7)の
下側で、横方向の突起(22)の間か、又は前記筐体の一端に取り付けられた引張ばねであり、
前記ばね要素は、前記研磨ストリップホルダ(6、7)の前記突起(22)と前記筐体(1)の間に取り付けられていることを特徴とする
請求項7に記載のナイフ研ぎ装置。
【請求項9】
前記各研磨ストリップ(4、5)は、それらの長手方向軸を中心とした回転によって
異なる部分を作用できることを特徴とする
請求項1乃至8のいずれか一項に記載のナイフ研ぎ装置。
【請求項10】
前記各研磨ストリップ(4、5)は、少なくとも2つの長手方向に配置された粗さの異なる部分を有することを特徴とする
請求項1乃至9のいずれか一項に記載のナイフ研ぎ装置。
【請求項11】
前記研磨ストリップ(4、5)はそれぞれ、前記研磨ストリップホルダ(6、7)の端面(8、9)の長手方向溝に、
取り外し及び/又は回転できるように取り付けられることを特徴とする
請求項9又は10に記載のナイフ研ぎ装置。
【請求項12】
前記研磨ストリップ(4、5)は、前記研磨ストリップホルダ(6、7)の取り付け部の上部に引き出すことができ、そのため、交換できることを特徴とする
請求項1乃至11のいずれか一項に記載のナイフ研ぎ装置。
【請求項13】
アダプタストリップ(30)は、前記研磨ストリップホルダ(6、7)のいずれかに取り外し可能に取り付けられ、前記研磨ストリップ(4、5)を保持し、
前記アダプタストリップ(30)と前記研磨ストリップホルダ(6、7)の
間に、確実な接続が存在し、及び、前記アダプタストリップ(30)と前記研磨ストリップホルダ(6、7)の間に、スナップ接続が存在することを特徴とする
請求項1乃至12のいずれか一項に記載のナイフ研ぎ装置。
【請求項14】
前記アダプタストリップ(30)は、前記研磨ストリップホルダ(6、7)に接触する第1側縁部(30a)と、前記研磨ストリップ(4、5)を運ぶ第2側縁部(30b)とを有し、前記2つの側縁部は、それらの間に下向きに広がる鋭角(β)を形成することを特徴とする
請求項13に記載のナイフ研ぎ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの研磨ストリップホルダを有し、それぞれが1つの研磨ストリップを保持するナイフ研ぎ装置に関する。研磨ストリップホルダは、筐体内で互いに隣接して移動可能に配置され、2つの交差する研磨ストリップが可動でV字型の研ぎスロットを形成する。
【背景技術】
【0002】
このようなナイフ研ぎ器は、特許文献1から知られている。手の込んだ大きな構造のこの研ぎ器で、2つの研磨ブロックは継ぎ手に取り付けられているため、ナイフが引き抜かれると、研磨ブロックが傾斜して研ぎ角が変化する。したがって、ブレードで異なるウェッジ角度が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、最初に言及したタイプの刃研ぎ装置を改良し、小型で簡単な構造で最適な研ぎ効果を達成することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、本発明によれば、研磨ストリップホルダがそれぞれ、それら下部を下部ジョイントによって2つの振り子ロッドにヒンジ結合されることで達成される。
【0006】
ナイフの刃が研ぎスロットを通して上から引き下げられると、この振り子式サスペンションと、両方の研磨ストリップホルダの平行な案内により、傾斜することなく研磨ストリップホルダの均一な横移動となる。むしろ、2つの研磨ストリップホルダの研ぎ角は常に同じなので、刃の全長にわたって変わらないくさび状角度が得られる。これにより、十分に長い研磨状態が確保される。この振り子式サスペンションは、シンプルな構造で、高い機能信頼性と長寿命を備える。それはまた、ナイフ研ぎ装置の特に滑らかな作動をもたらす。
【0007】
シンプルで安全な構造は、振り子ロッドが筐体の上部でヒンジ結合されている場合に達成される。
【0008】
好ましくは、各研磨ストリップホルダは、板状部材により形成され、それら2つの板状部材は互いに平行で、特に垂直に配置されることが提案される。このプレート構成により、シンプルで安定した構造が実現するだけでなく、小さい外形寸法の特にコンパクトな設計となる。
【0009】
各研磨ストリップホルダの上部が筐体内で案内されると、非妨害動作が実現される。この効果のために、各研磨ストリップホルダは、好ましくは、筐体上部の長手方向スロットに挿入される少なくとも1つの突起を有する。
【0010】
研磨ストリップホルダの案内は、各研磨ストリップホルダの下部が筐体内に案内されるという点で、さらに改善されている。この効果のために、各研磨ストリップホルダは、好ましくは、その底面に少なくとも1つの突起を有し、その突起は筐体底部の長手方向スロットに挿入される。
【0011】
2つの研磨ストリップホルダは、それぞればね要素の影響を受ける。そのばね要素は、好ましくは、複数の研磨ストリップホルダの底部突起の間の引張りばねであり、そこに取り付けられている。別の方法として、ばね要素を研磨ストリップホルダの突出部と筐体との間に取り付けることが提案される。
【0012】
各研磨ストリップホルダは、研磨ストリップが取り付けられる端面を有する。
この点において、
-研磨ストリップが、その長手軸を中心に回転できる場合、
-各研磨ストリップが、長手方向に配置された粗さの異なる少なくとも2つの部分(例えば、ホーニング部分と研磨部分)を有する場合、
-2つの研磨ストリップがそれぞれ、研磨ストリップホルダの端面の長手方向溝に保持され、特に回転によって調整できるように保持されている場合、
-長手方向溝が、少なくとも底部で研磨ストリップと部分的に係合する場合、
-研磨ストリップホルダの固定から研磨ストリップを上に引き出し、交換できる場合、
それは有利である。
【0013】
研削ストリップの特に容易な作動を可能にするために、各研磨ストリップの上端に、筐体の上部から突き出るハンドルを取り付けることが提案される。研磨ストリップホルダは、ハンドルのスナップ位置を形成できる。
【0014】
研磨ストリップホルダの両方について、異なる研ぎスロット角度を調整するために、複数の上部ヒンジの一方の位置をそれぞれ垂直方向に、特に回転スライドによって、調整できることが特に有利である。
【0015】
好ましくは、各研磨ストリップホルダの振り子ロッドが、互いに平行に配置されることが提案される。
【0016】
第3実施形態では、研磨ストリップを保持するアダプタストリップが、研磨ストリップホルダのいずれかに取り外し可能に取り付けられる。この実施形態では、研ぎ角は、アダプタストリップによって決定することができ、後に選択することもできる。
【0017】
この場合、アダプタストリップは、研磨ストリップホルダに、特に底部ガイドによって確実に保持され、アダプタストリップと研磨ストリップホルダの間にスナップ接続がある。
【0018】
アダプタストリップは、研磨ストリップホルダに接触する第1側縁部と、研磨ストリップを保持する第2側縁部とを有し、2つの側縁は共に、底部に向かって広がる鋭角を形成する。
【0019】
好ましくは、2つの研磨ストリップホルダに取り付けられたアダプタストリップのペアとは別に、もう一つのアダプタストリップのペアがある。それは、アダプタストリップの第1ペアによって形成される角度とは異なる鋭角を形成する。このために装置は、アダプタストリップの第2ペアを保管する少なくとも1つの区画を有する。その保管部分は、装置の下側ベース部に配置してよい。
【0020】
本発明の3つの実施形態が、斜視図に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】前壁が除去され、側壁のない第1実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
ナイフ研ぎ装置は、直方体の筐体1を有し、その高さHは幅Bよりも大きく、幅Bは深さTよりも大きい。垂直前壁及び垂直後壁2はそれぞれ垂直挿入スロット3を有し、それは研磨ストリップ4、5によって及びそれらの間に形成されたV字形研ぎスロット10に対応する。
【0023】
筐体1内には、2つの板状の研磨ストリップホルダ6、7が、移動可能に取り付けられ、それらの垂直板は、前壁及び後壁2に対し平行に配置されている。両方の研磨ストリップホルダは狭端面8、9を有し、それぞれが上から下に斜めに伸び、かつ、それぞれが1つの研磨ストリップ4、5を保持している。端面8、9は、研磨ストリップ4、5と共に、V字形の可動研ぎスロット10としての角度αを形成している。
【0024】
ナイフがその刃先を下にして前壁及び後壁の2つの垂直スロット3に通されると、その刃は研ぎスロット10と2つの研磨ストリップ4、5に接触するため、刃先をさらに下に動かすと、2つの研磨ストリップ4、5は離れるように促される。これにより、2つの研磨ストリップホルダ6、7も反対方向に離れて動かされる(矢印11、12)。
【0025】
両方の研磨ストリップホルダ6、7は、それぞれ2つの振り子ロッド13、14、15、16にヒンジ結合されているため、ナイフを引っ張ると、2つの研磨ストリップホルダは両方向にスムーズに移動できる。各々の研磨ストリップホルダの振り子ロッドは、互いに平行に配置されており、振り子ロッド13、14又は15、16のペアの下端は、それぞれ下部ジョイントUGによって、それぞれ研磨ストリップホルダ6、7の下部17又は18にヒンジ結合されている。
【0026】
振り子ロッド13~16の上端は、上部ジョイントOGによって筐体1に取り付けられ、前壁及び後壁2又は筐体上部19に取り付けられている。その下端において、各研磨ストリップホルダは、筐体底部の長手方向スロット23に挿入される2つの棒状の突起22を有する。これにより、研磨ストリップホルダ6、7は、その動きにおいて、確実に互いに平行に案内される。
【0027】
両方の研磨ストリップホルダ6、7の2つの突起22の間に、2つの研磨ストリップホルダを初期位置に引っ張るばね要素、特にらせん状の引張りばね24が取り付けられている。この初期位置で、2つの研磨ストリップホルダは最大限に重なり、したがって研ぎスロット10はその最上位置にある。この初期位置は図に示されており、ナイフがまだ挿入されていない状態である。この方法で取り付けられたばね24は、両方の研磨ストリップホルダが同じ力でばね荷重を受け、研ぎスロット10の中央は常に、前壁及び後壁の垂直スロット3の中央に対応することを保証する。
【0028】
代替案として、各研磨ストリップホルダ6、7は、側方突出部、特に突出ピンを有し、そこに引張りばねの一端が取り付けられる一方、引張りばねの他端が筐体に取り付けられる。
【0029】
2つの研磨ストリップホルダ6、7は、他の種類のばね要素によって、特に2つの別個のばねによってばね荷重をかけられてもよい。
【0030】
研磨ストリップ4、5の形状と固定は、大きく変更できる。
図1に示すバージョンでは、研磨ストリップは複数の平棒で形成され、研磨ストリップホルダ6、7の端面8、9にさまざまな方法で固定されている。
図2から
図4に示す第2実施形態では、端面8、9はそれぞれ長手方向溝を形成し、その中に1つの研磨ストリップ4、5がそれぞれ挿入され、研磨ストリップの一部がスロット21を通って突出している。この場合、長手方向溝は、少なくとも底部で研磨ストリップ4、5に部分的に係合する。
【0031】
第2実施形態では、各研磨ストリップ4、5は円形又は多角形の断面を有し、長手方向の溝は対応する断面を有し、その結果、研磨ストリップは、長手方向溝内の棒として長手方向軸の周りで回転調整できる。棒状の研磨ストリップはそれぞれ、好ましくは異なる粗さの部分を有する1つ又は複数の側面領域を有し、それらは、それらの長手方向軸の周りで研磨ストリップを回転させることによって作用させることができる。一部分はホーニング部分であり、他の部分は研磨部分であり得る。
【0032】
研磨ストリップ4、5は、長手方向溝から上に引き出し、それらを交換するために上から再び挿入できる。特に棒状の研磨ストリップのそれぞれは、その上端に筐体1の上部から突出するハンドル28を有し、それは、研磨ストリップを回転及び調整、引き出し、及び/又は再挿入するために用いられる。研磨ストリップホルダ6、7の上部の突出部分とハンドル28の間には、ラチェット及び爪機構27(両面正拘束)があり、研磨ストリップをハンドルで手動にて回転し、目的の粗さの領域が研ぎスロット10に面する位置にできる。
【0033】
両方の研磨ストリップホルダ6、7について、2つの上部ヒンジ(ジョイントOG)の1つは垂直方向に調整可能であり、それによって研ぎスロットの角度αを調整できる。この効果のために、筐体1の内側の円筒形の回転スライド29が、筐体の一方の端面に設けられている。回転スライドの一方側が、1つの研磨ストリップホルダ6のジョイントOGに結合され、回転スライドの反対側が、他の研磨ストリップホルダ7のジョイントOGに結合されている。回転スライド29を一方向に回転させると、一方の研磨ストリップホルダのジョイントが上昇し、他方の研磨ストリップホルダのジョイントが下降し、それにより2つの研磨ストリップホルダ6、7が同じ角度で反対方向に旋回する。これにより、研ぎスロットが対称的に拡大又は縮小される。
【0034】
図5に示す別の実施形態では、アダプタストリップ30が、研磨ストリップホルダ6、7のいずれかに取り外し可能に取り付けられている。これらのアダプタストリップはそれぞれ、研磨ストリップホルダと研磨ストリップ4、5の間の接続部材を形成する。少なくとも1つのガイド31との確実な接続が、少なくとも下部で確立される。安全な保持はまた、スナップ接続によっても提供される。
【0035】
アダプタストリップ30は、研磨ストリップホルダ6、7に接触する第1側縁部30aと、研磨ストリップ4、5を運ぶ第2側縁部30bとを有し、2つの側縁部は、それらの間に下向きに広がる鋭角βを形成する。アダプタストリップによって形成される鋭角βに応じて、2つの研磨ストリップ4、5の間に、より広い又はより狭い鋭研磨角αが形成される。
【0036】
異なる要件を満たすために、研ぎ装置には、少なくとも1つの別のアダプタストリップのペアを付属させてもよい。この追加のペアのアダプタストリップ32は、装置のベース部の1つ又は2つの保管部分33に収容できる。
【符号の説明】
【0037】
1 筐体
2 後壁
3 垂直スロット
4、5 研磨ストリップ
6、7 研磨ストリップホルダ
8、9 端面
10 研ぎスロット
13、14、15、16 振り子ロッド
17 下部
19 筐体上部
21 スロット
22 突起
23 長手方向スロット
24 引張りばね
27 ラチェット及び爪機構
28 ハンドル
29 回転スライド
30、32 アダプタストリップ
30a 第1側縁部
30b 第2側縁部
31 ガイド
33 保管部分
OG 上部ジョイント
UG 下部ジョイント
α 鋭研磨角
β 鋭角