(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-23
(45)【発行日】2023-03-31
(54)【発明の名称】アトピー性皮膚炎の治療及び/または予防のためのIL-31のペプチド免疫原ならびにその製剤
(51)【国際特許分類】
C07K 14/54 20060101AFI20230324BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20230324BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230324BHJP
A61K 47/65 20170101ALI20230324BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230324BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20230324BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20230324BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230324BHJP
【FI】
C07K14/54 ZNA
A61K39/39
A61K39/395 D
A61K47/65
A61P17/00
A61P17/04
A61P37/08
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2020550063
(86)(22)【出願日】2018-12-11
(86)【国際出願番号】 US2018065025
(87)【国際公開番号】W WO2019118512
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-11-17
(32)【優先日】2017-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520205970
【氏名又は名称】ユービーアイ アイピー ホールディングス
【氏名又は名称原語表記】UBI IP HOLDINGS
(74)【代理人】
【識別番号】100094640
【氏名又は名称】紺野 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100103447
【氏名又は名称】井波 実
(74)【代理人】
【識別番号】100111730
【氏名又は名称】伊藤 武泰
(74)【代理人】
【識別番号】100180873
【氏名又は名称】田村 慶政
(72)【発明者】
【氏名】ワン、チャン イ
【審査官】福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/186813(WO,A1)
【文献】特表2002-518463(JP,A)
【文献】特表2016-513638(JP,A)
【文献】国際公開第2016/198470(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-90
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
SwissProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペプチド免疫原構築物が、配列番号43~90及び配列番号99~105からなる群から選択される
、IL-31ペプチド免疫原構築物。
【請求項2】
a.請求項
1に記載のIL-31ペプチド免疫原構築物
;及び
b.薬学的に許容される送達ビヒクル及び/またはアジュバント
;
を含む、医薬組成物。
【請求項3】
前記IL-31ペプチド免疫原構築物が、CpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)と混合されて安定化免疫刺激性複合体を形成している、請求項
2に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年12月11日に出願された米国仮特許出願第62/597,130号の利益を主張するPCT国際出願であり、参照によりその全体を本明細書に援用する。
【0002】
発明の分野
本開示は、アトピー性皮膚炎の治療及び/または予防のための、インターロイキン31(IL-31)を標的とするペプチド免疫原構築物及び医薬組成物としてのその製剤に関する。
【背景技術】
【0003】
アトピー性皮膚炎(AD)は、アメリカ獣医皮膚科大学対策部によって「特徴的な臨床特性を有する遺伝的に罹患しやすい炎症性及び掻痒性のアレルギー性皮膚疾患」と定義されている(Olivry 2001)。委員会はさらに、イヌの疾患がアレルゲン特異的IgEに関連付けられたことを認めた(Olivry 2001, Marsella & Olivry 2003)。重度の掻痒症は、副次的な脱毛症及び紅斑と併せてペット所有者にとって最も顕著な懸念症候である(米国特許第8,790,651号)。
【0004】
アトピー性皮膚炎の有病率は、疫学的データが乏しく一貫性を欠いているために正確には分からないが、イヌ個体群全体の10%であると見積もられる(Marsella & Olivry 2003, Scott 2002, Hillier 2001)。世界的には約450万匹のイヌがこの慢性的な生涯にわたる症状に罹患する。発症率は上昇しているとみられる。血統及び性別の偏りが疑われてきたが、地理的地域によって大きく変化することがある(Hillier 2001, Picco 2008)。
【0005】
アレルギー性皮膚炎に関与する潜在的因子はいくつもあり、あまり理解されていない。食物中成分(Picco, 2008)、ならびに環境中のアレルゲン、例えば、ハエ、チリダニ、ブタクサ、植物抽出物などがアトピー性皮膚炎の誘因となっている可能性がある。遺伝的因子も重要な役割を果たしている。血統による予測に確証はないが、ある遺伝様式がアトピー性皮膚炎に対する罹患しやすさを増大させると考えられる(Sousa & Marsella 2001, Schwartzman 1971)。
【0006】
インターロイキン31(IL-31)は、2004年にクローニングされたサイトカインである。それは主に、活性化されたTヘルパー(Th)2細胞によって産生されるが(Dillon 2004)、マスト細胞及びマクロファージでも産生される。IL-31は、IL-31受容体A(IL-31RA)及びオンコスタチンM受容体(OSMR)からなる共受容体に結合する(Dillon 2004、及びBilsborough 2006)。受容体活性化は、JAK受容体(複数可)によるSTATのリン酸化をもたらす。共受容体の発現はマクロファージ、角化細胞及び後根神経節において示されている。近年、IL-31が皮膚炎、掻痒性皮膚病変、アレルギー及び気道過敏症に関与していることが判明した。
【0007】
抗CD3及び抗CD28抗体によるT細胞の刺激はIL-31 mRNA発現を即座に上方制御する(Dillon 2004)。マイクロアレイ分析から、IL-31が特定の走化性遺伝子、例えば、CXCL1、CLL17(胸腺及び活性化によって調節されるケモカイン(TARC))、CCL19(マクロファージ炎症性タンパク質(MIP)3β)、CCL22(単球由来ケモカイン(MDC)、CCL23(MIP3)及びCCL4(MIPβ))を誘導することが示された(Dillon 2004)。
【0008】
IL-31を過剰発現させる遺伝子導入マウスは、皮膚炎症、掻痒症、重度の皮膚炎及び脱毛症を示す(Dillon 2004)。マウスへのIL-31の皮下注射は、炎症性細胞、好中球、好酸球、リンパ球及びマクロファージによる炎症の誘因となり、表皮肥厚及び皮膚有棘層肥厚を生じさせる。自然の原因によるアトピー性皮膚炎(AD)を有するNC/Ngaマウスにおいて、IL-31は皮膚病変部に過剰発現し、掻痒症と相関している(Takaoka 2005、Takaoka 2006)。また、マウスモデルにおいてIL-31は掻痒症の急速な発症を誘導することが示された(Raap 2008)。
【0009】
さらなる試験は、ヒトにおいてIL-31がアトピー性皮膚炎誘発性皮膚炎症及び掻痒症に関連していることを示した。ヒトAD患者では、IL-31 mRNAの発現が非病変皮膚よりも皮膚病変部においてかなり強く、非病変皮膚における発現は健常患者からの正常皮膚におけるよりも強い(Sonkoly 2006)。別の試験は、AD患者の皮膚においてCD45RO+(メモリー)皮膚リンパ球抗原(CLA)陽性T細胞がIL-31 mRNA及びタンパク質を発現させることを報告した(Bilsborough 2006)。また、患者の皮膚またはアレルギー性接触皮膚炎におけるIL-31 mRNA過剰発現はIL-4及びIL-13 mRNA発現と相関しているがインターフェロン(IFN)-γ mRNA発現とは相関していない、ということも報告された(Neis 2006)。さらに、慢性特発性蕁麻疹を有するヒト患者ではIL-31血清レベルが上昇すること、及びADを有する患者ではよりいっそうこうなることが示された(Raap 2010)。また、ヒトにおいてADの重症度と血清IL-31レベルとの相関性が認められた(Rapp 2008)。アトピーの個体ではマスト細胞において、IgE架橋後に、及びブドウ球菌スーパー抗原への応答として、IL-31分泌が増強されることも示された。加えて、IL-31はヒト腸筋線維芽細胞においてIL-6、IL-8、CXCL1、CC17及び複数のメタロプロテアーゼを含めたいくつかの炎症促進性伝達物質の産生を刺激することも示された(Yagi 2007)。
【0010】
環境アレルゲンに対するI型過敏症はイヌADの主要な機序であると考えられており、Th2媒介性サイトカイン、例えばIL-4のレベルは、ADを有するイヌの皮膚病変部において上昇する(Nuttall 2002)。さらに、炎症性細胞、リンパ球及び好中球による浸潤は、皮膚病変部の悪化の根底にある重要な機序であり、走化性遺伝子、例えば、CCL17/TARC、CCR4及びCCL28/粘膜関連上皮ケモカイン(MEC)の過剰発現は、ADを有するイヌにおける皮膚病変部の悪化の原因となる(Maeda 2005、Maeda 2002、及びMaeda 2008)。
【0011】
近年の証拠は、アレルギー性炎症、及びアレルギー性喘息に特徴的な気道上皮応答の促進にIL-31が関与している可能性があることを示唆している(Chattopadhyay 2007、Wai 2007)。
【0012】
これらの観察結果は、掻痒性及びアレルギー性症状の両方においてIL-31が重大な役割を果たしているという仮説を支持する。イヌ、ネコ及び/またはヒトにおける掻痒性症状及び/またはアレルギー性症状、例えばアトピー性皮膚炎を治療するのに有用な、IL-31に対する抗体を誘発することができるペプチド免疫原を提供することが望ましかろう。
【0013】
参考文献:
1. BAMMERT, et al., 米国特許第8,790,651号(2014年7月29日発行)
2. BILSBOROUGH, et al., J Allergy Clin Immunol., 117(2): 418-25(2006)
3. CHATTOPADHYAY, et al., J Biol Chem, 282: 3014-26(2007)
4. LENG, et al., 米国特許第8,426,163号(2013年4月23日発行)
5. DILLON, et al., Nat Immunol, 5:752-60(2004)
6. HILLIER, Veterinary Immunology and Immunopathology, 81: 147-151(2001)
7. MAEDA, et al., Vet. Immunol. Immunopathol., 90, 145-154;(2002)
8. MAEDA, et al., Vet. Immunol. Immunopathol., 103, 83-92;(2003)
9. MAEDA, et al., J. Vet. Med. Sci., 70, 51-55(2008)
10. MARSELLA & OLIVRY, Clinics in Dermatology, 21:122-133(2003)
11. NEIS, et al., J. Allergy Clin. Immunol., 118, 930-937(2006)
12. NUTTALL, et al., Vet. Immunol. Immunopathol., 87, 379-384(2002)
13. OLIVRY, et al., Veterinary Immunology and Immunopathology, 81:143-146(2001)
14. PICCO, et al., Vet Dermatol., 19: 150-155(2008)
15. RAAP, et al., J Allergy Clin Immunol., 122(2):421-3(2008)
16. RAAP, et al., Exp Dermatol., 19(5): 464-6(2010)
17. SCHWARTZMAN, et al., Clin. Exp. Immunol., 9: 549-569(2971)
18. SCOTT, et al., Canadian Veterinary Journal, 43: 601-603(2002)
19. SONKOLY, et al., J Allergy Clin Immunol., 117: 411-7(2006)
20. SOUSA, et al., Veterinary Immunology and Immunopathology, 81:153-157(2001)
21. TAKAOKA, et al., Eur J. Pharmacol., 516, 180-181(2005)
22. TAKAOKA, et al., Exp. Dermatol., 15, 161-167(2006)
23. WAI, et al., Immunology, 122, 532-541(2007)
24. WALKER, et al., 米国特許第6,361,966号(2002年3月26日発行)
25. YAGI, et al., International Journal of Molecular Medicine, 19(6): 941-946(2007)
26. “Atopic Dermatitis”, Wikipedia, The Free Encyclopedia, website address: en.wikipedia.org/wiki/Atopic_dermatitis (2017年12月8日アクセス)。
27. “Interleukin 31”, Wikipedia, The Free Encyclopedia, website address: en.wikipedia.org/wiki/Interleukin_31 (2017年12月8日アクセス)。
【発明の概要】
【0014】
本開示は、掻痒性症状及び/またはアレルギー性症状、例えばアトピー性皮膚炎の治療及び/または予防のための、インターロイキン31(IL-31)タンパク質の一部を標的とする個々のペプチド免疫原構築物に関する。本開示はさらに、ペプチド免疫原構築物を含有する組成物、ペプチド免疫原構築物を製造及び使用する方法、ならびにペプチド免疫原構築物によって生成する抗体に関する。
【0015】
本開示のペプチド免疫原構築物は、約25アミノ酸以上を含有する。ペプチド免疫原構築物は、イヌIL-31タンパク質(GenBank:BAH97742.1)の一部からのB細胞エピトープを含有する。イヌ及びbヒトIL-31タンパク質の完全長アミノ酸配列を表1のそれぞれ配列番号1及び配列番号2に示す。B細胞エピトープは、病原体タンパク質に由来する異種Tヘルパー細胞(Th)エピトープに任意選択の異種スペーサーによって結合し得る。本開示のペプチド免疫原構築物は、IL-31を指向する高特異性抗体の生成を刺激する。本開示のペプチド免疫原構築物は、掻痒性症状及び/またはアレルギー性症状、例えばアトピー性皮膚炎に罹患している動物のための免疫療法として使用され得る。
【0016】
ペプチド免疫原構築物のB細胞エピトープ部分は、完全長イヌIL-31タンパク質(配列番号1)または完全長ヒトIL-31タンパク質(配列番号2)からのアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、B細胞エピトープは、表1に示される配列番号1~13及び配列番号93~98のいずれかを含有する配列を有する。
【0017】
本開示のペプチド免疫原構築物は、表2に示される、病原性タンパク質に由来する異種Thエピトープアミノ酸配列(例えば配列番号14~42)を含有し得る。特定の実施形態では、異種Thエピトープは、天然の病原体、例えば、ジフテリア毒素(配列番号18)、Plasmodium Falciparum(配列番号19)、コレラ毒素(配列番号21)に由来するものである。他の実施形態では、異種Thエピトープは、麻疹ウイルス融合タンパク質(MVF1~5)またはB型肝炎表面抗原(HBsAg1~3)に由来し単一の配列か組み合わせた配列かのどちらかの形態にある理想人工Thエピトープ(例えば配列番号25、24及び26)である。
【0018】
いくつかの実施形態では、ペプチド免疫原構築物は、任意選択の異種スペーサーによって異種Tヘルパー細胞(Th)エピトープに結合された、IL-31からのB細胞エピトープを含有する。特定の実施形態では、ペプチド免疫原構築物は、病原性タンパク質に由来する異種Thエピトープ(配列番号14~42)に任意選択の異種スペーサーによって結合された、IL-31からのアミノ酸配列(例えば配列番号1~13及び配列番号93~98)を有するB細胞抗原性部位を含有する。いくつかの実施形態では、任意選択の異種スペーサーは、2つのアミノ酸及び/またはペプチドを一緒に結合できる分子または化学構造である。特定の実施形態では、スペーサーは、天然に存在するアミノ酸、天然に存在しないアミノ酸またはその組合せである。具体的な実施形態では、ペプチド免疫原構築物は、表3に示される配列番号43~90及び配列番号99~105のアミノ酸配列を有する。
【0019】
本開示はさらに、IL-31ペプチド免疫原構築物を含有する組成物に関する。いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、1つより多いIL-31ペプチド免疫原構築物を含有する。特定の実施形態では、組成物は、対象の広範な遺伝的背景を対象範囲に含めるためにIL-31ペプチド免疫原構築物の混合物(例えば、配列番号43~90及び配列番号99~105の任意の組合せ)を含有する。ペプチド免疫原構築物の混合物を含有する組成物は、単一のペプチド免疫原構築物のみを含有する組成物と比較して、掻痒性症状及び/またはアレルギー性症状、例えばアトピー性皮膚炎の治療のために免疫したときの奏効者率のより高い百分率につながり得る。
【0020】
本開示はさらに、掻痒性症状及び/またはアレルギー性症状、例えばアトピー性皮膚炎の治療及び/または予防のための医薬組成物に関する。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、CpGオリゴマーと、ペプチド免疫原複合体を含有する組成物とを混合することで静電会合によって形成された安定化免疫刺激性複合体の形態で本開示のペプチド免疫原構築物を含有する。そのような安定化免疫刺激性複合体は、ペプチド免疫原構築物の免疫原性をさらに増強することができる。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、アジュバント、例えば、ミョウバンゲル(ALHYDROGEL)、リン酸アルミニウム(ADJUPHOS)を含めた無機塩、またはMONTANIDE ISA50V2、ISA51もしくはISA720を含めた油中水エマルションを含有する。
【0021】
本開示はさらに、本開示のIL-31ペプチド免疫原構築物を指向する抗体に関する。特に、本開示のペプチド免疫原構築物は、対象に投与されると、IL-31アミノ配配列(配列番号1~13)に関して交差反応性である高特異性抗体の生成を刺激することができる。ペプチド免疫原構築物によって生成する高特異性抗体は、組換えIL-31含有タンパク質に関して交差反応性である。本開示の抗体は、免疫原性増強のために採用される異種Thエピトープを指向することがあったとしてもあまりなく、高い特異性でIL-31に結合するが、このことは、そのようなペプチド抗原性増強のために使用される従来のタンパク質または他の生物学的担体とは極めて対照的である。
【0022】
本開示には、本開示のペプチド免疫原構築物及び/またはペプチド免疫原構築物を指向する抗体を使用して掻痒性症状及び/またはアレルギー性症状、例えばアトピー性皮膚炎を治療及び/または予防する方法も含まれる。いくつかの実施形態では、掻痒性症状及び/またはアレルギー性症状、例えばアトピー性皮膚炎を治療及び/または予防する方法は、本開示のペプチド免疫原構築物を含有する組成物を宿主に投与することを含む。特定の実施形態では、方法において利用される組成物は本開示のペプチド免疫原構築物を、CpGオリゴマーなどの負に帯電したオリゴヌクレオチドとの静電会合による安定な免疫刺激性複合体の形態で含有し、この複合体には任意選択的に、アジュバントとしての無機塩または油が、掻痒性症状及び/またはアレルギー性症状、例えばアトピー性皮膚炎を有する対象への投与のためにさらに補充されている。本開示の方法はさらに、投薬計画、剤形、ならびに掻痒性症状及び/またはアレルギー性症状、例えばアトピー性皮膚炎の危険性があるまたはそれを有する宿主にペプチド免疫原構築物を投与するための投与経路を含む。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1A~
図1B- 構造的及び機能的特徴を強調したイヌIL-31タンパク質のアミノ酸配列(配列番号1)(A)、ならびに完全長イヌIL-31タンパク質に対する配列アラインメント及び本開示で使用される抗原性部位の位置特定(B)。
【
図2】
図2- アジュバントISA50V2中にIL-31ペプチド免疫原を含有する様々な製剤をモルモットに免疫した後の組換えイヌIL-31タンパク質に関する抗IL-31ポリクローナル抗体価(Log
10)を示すグラフ。注射後週数(wpi)3、6、9、12及び15の時に試料を分析した。
【
図3】
図3A~
図3D- 哺乳動物細胞(Expi293F)における発現のためのC末端にHisタグを有するイヌIL-31のプラスミドマップ(
図3A)、ならびに細胞溶解物及び培養培地から得られた、抗Hisタグ抗体をプローブとするウェスタンブロット(
図3B)。Hisタグ付きIL-31タンパク質発現のクーマシーブルー染色、及び12%ビストリスSDS PAGEで行った精製(
図3C)。抗Hisタグ抗体をプローブとする、Cに示されるSDS-PAGEゲルのウェスタンブロット(
図3D)。
【
図4】
図3A~
図3D- 哺乳動物細胞(Expi293F)における発現のためのC末端にHisタグを有するイヌIL-31のプラスミドマップ(
図3A)、ならびに細胞溶解物及び培養培地から得られた、抗Hisタグ抗体をプローブとするウェスタンブロット(
図3B)。Hisタグ付きIL-31タンパク質発現のクーマシーブルー染色、及び12%ビストリスSDS PAGEで行った精製(
図3C)。抗Hisタグ抗体をプローブとする、Cに示されるSDS-PAGEゲルのウェスタンブロット(
図3D)。
【
図5】
図3A~
図3D- 哺乳動物細胞(Expi293F)における発現のためのC末端にHisタグを有するイヌIL-31のプラスミドマップ(
図3A)、ならびに細胞溶解物及び培養培地から得られた、抗Hisタグ抗体をプローブとするウェスタンブロット(
図3B)。Hisタグ付きIL-31タンパク質発現のクーマシーブルー染色、及び12%ビストリスSDS PAGEで行った精製(
図3C)。抗Hisタグ抗体をプローブとする、Cに示されるSDS-PAGEゲルのウェスタンブロット(
図3D)。
【
図6】
図4A~
図4B- IL-31抗体を使用した試験管内でのIL-31誘導シグナル伝達機能阻害アッセイを示す模式図(
図4A)。アッセイステップの拡大図を
図4Bに示す。
【
図7】
図4A~
図4B- IL-31抗体を使用した試験管内でのIL-31誘導シグナル伝達機能阻害アッセイを示す模式図(
図4A)。アッセイステップの拡大図を
図4Bに示す。
【
図8】
図5A~
図5B- expi293細胞から産生されたイヌIL-31によって誘導されるイヌDH82単球におけるSTAT3のリン酸化レベルを測定する試験管内での機能アッセイの確立を示すグラフ。
図5Aは、イヌIL-31によって用量依存的にpSTAT3が誘導されたことを示す。
図5Bは、イヌIL-31によって時間依存的にpSTAT3が誘導されたことを示す。
【
図9】
図6A~
図6B- 初回免疫後週数(wpi)12(
図6A)及び15wpi(
図6B)のときに示す、IL-31ペプチド免疫原構築物(配列番号43、47、51、55及び59)から得られる抗IL-31抗体によるイヌDH82単球におけるイヌIL-31(1μg/mL)誘導pSTAT3シグナル伝達の阻害を示すグラフ。
【
図10】
図7- 注射後週数(wpi)15の時の、IL-31ペプチド免疫原構築物p4751kb(配列番号43)及びp4752(配列番号47)から得られる抗IL-31抗体によるイヌDH82単球におけるイヌIL-31(1μg/mL)誘導pSTAT3シグナル伝達の阻害を示すグラフ。下のパネルは、組換えイヌIL-31タンパク質誘導pSTATシグナル伝達に対する阻害(IC
50)を報告する。
【
図11】
図8- アジュバントISA50V2中にIL-31ペプチド免疫原(配列番号63、68、71、76、80、84)を含有する製剤をモルモットに免疫した後の組換えイヌIL-31タンパク質に関する抗IL-31ポリクローナル抗体価(Log
10)を示すグラフ。免疫後週数(wpi)3、6、9、12及び15の時に試料を分析した。
【
図12】
図9A~
図9B- 初回免疫後週数(wpi)6及び12のときに示す、本開示のIL-31ペプチド免疫原構築物(配列番号63、68、71、76、80及び84)から得られる抗IL-31抗体によるイヌDH82単球におけるイヌIL-31(1μg/mL)誘導pSTAT3シグナル伝達のリン酸化率(
図9A)及び阻害率(
図9B)を示すグラフ。
【
図13】
図9A~
図9B- 初回免疫後週数(wpi)6及び12のときに示す、本開示のIL-31ペプチド免疫原構築物(配列番号63、68、71、76、80及び84)から得られる抗IL-31抗体によるイヌDH82単球におけるイヌIL-31(1μg/mL)誘導pSTAT3シグナル伝達のリン酸化率(
図9A)及び阻害率(
図9B)を示すグラフ。
【
図14】
図10A~
図10B- 初回免疫後週数(wpi)9及び12のときに示す、本開示のIL-31ペプチド免疫原構築物(配列番号63、68、71及び64)から得られる抗IL-31抗体によるイヌDH82単球におけるイヌIL-31(1μg/mL)誘導pSTAT3シグナル伝達のリン酸化率(
図10A)及び阻害率(
図10B)を示すグラフ。
【
図15】
図10A~
図10B- 初回免疫後週数(wpi)9及び12のときに示す、本開示のIL-31ペプチド免疫原構築物(配列番号63、68、71及び64)から得られる抗IL-31抗体によるイヌDH82単球におけるイヌIL-31(1μg/mL)誘導pSTAT3シグナル伝達のリン酸化率(
図10A)及び阻害率(
図10B)を示すグラフ。
【
図16】
図11A~
図11B- 初回免疫後週数(wpi)6、9及び12の時の、IL-31ペプチド免疫原構築物p4854kb(配列番号63)及びp4859(配列番号84)から得られる抗IL-31抗体によるイヌDH82単球におけるイヌIL-31(1μg/mL)誘導pSTAT3シグナル伝達のリン酸化率(
図11A)及び阻害率(
図11B)を示す棒グラフ。
【
図17】
図11A~
図11B- 初回免疫後週数(wpi)6、9及び12の時の、IL-31ペプチド免疫原構築物p4854kb(配列番号63)及びp4859(配列番号84)から得られる抗IL-31抗体によるイヌDH82単球におけるイヌIL-31(1μg/mL)誘導pSTAT3シグナル伝達のリン酸化率(
図11A)及び阻害率(
図11B)を示す棒グラフ。
【
図18】
図12- 初回免疫後週数(wpi)6、9及び12の時の、IL-31ペプチド免疫原構築物p4854kb(配列番号63)及びp4859(配列番号84)から得られる抗IL-31抗体によるイヌDH82単球におけるイヌIL-31(1μg/mL)誘導pSTAT3シグナル伝達のリン酸化率(A)及び阻害率(B)を示す曲線グラフ。下のパネルは、組換えイヌIL-31タンパク質誘導pSTATシグナル伝達に対する阻害(IC
50)を報告する。
【
図19】
図13- イヌIL-31ペプチド免疫原構築物(配列番号84)を使用するビーグル犬の免疫付与プロトコール。
【
図20】
図14- ビーグル犬におけるB細胞エピトープペプチドに対するヒトIL-31ペプチド免疫原構築物(配列番号84)の免疫原性(Log
10)(第2Ab:ヤギ抗イヌIgG HRP)の評価。
【
図21】
図15- 初回免疫後日数(DPI)21及び41の時の、IL-31ペプチド免疫原構築物(配列番号84)を用いたrcIL-31タンパク質に対するイヌ血清抗体価(Log10)(第2Ab:ウサギ抗イヌIgG HRP)。
【
図22】
図16- 初回免疫後日数(DPI)21及び41の時の、IL-31ペプチド免疫原構築物(配列番号84)を用いたrcIL-31タンパク質に対するイヌ血清抗体価(Log10)(第2Ab:プロテインA/G-HRP)。
【
図23】
図17A~
図17B- イヌ免疫血清(代表的試料1~10)からの精製IgGによるイヌDH82単球におけるイヌIL-31誘導pSTATシグナル伝達のリン酸化率(
図17A)及び阻害率(
図17B)を示すグラフ。
【
図24】
図17A~
図17B- イヌ免疫血清(代表的試料1~10)からの精製IgGによるイヌDH82単球におけるイヌIL-31誘導pSTATシグナル伝達のリン酸化率(
図17A)及び阻害率(
図17B)を示すグラフ。
【
図25】
図18A~
図18B- Cytopoint(抗IL-31mAb)によるイヌDH82単球におけるイヌIL-31誘導pSTATシグナル伝達のリン酸化率(
図18A)及び阻害率(
図18B)を示すグラフ-IC
50:3.21μg/mL。
【
図26】
図19A~
図19C- 様々なIL-31ペプチド免疫原構築物(配列番号83及び配列番号85)で免疫されるモルモットの免疫付与及び採血のスケジュールを示す模式図を
図19Aに示す。それぞれ6及び15wpiのモルモット免疫血清からの精製IgGによるイヌDH82単球におけるイヌIL-31誘導pSTATシグナル伝達のリン酸化率(
図19B)及び阻害率(
図19C)を示すグラフ。
【
図27】
図19A~
図19C- 様々なIL-31ペプチド免疫原構築物(配列番号83及び配列番号85)で免疫されるモルモットの免疫付与及び採血のスケジュールを示す模式図を
図19Aに示す。それぞれ6及び15wpiのモルモット免疫血清からの精製IgGによるイヌDH82単球におけるイヌIL-31誘導pSTATシグナル伝達のリン酸化率(
図19B)及び阻害率(
図19C)を示すグラフ。
【
図28】
図20A~
図20B- モルモットにおける様々なヒトIL-31ペプチド免疫原構築物(配列番号87、99、100及び101)の免疫原性を示すグラフ(
図20A)であり、併せて各構築物のLogEC
50のまとめ(
図20B)を示す。
【
図29】
図21- IL-31ペプチド免疫原構築物(配列番号87、99、100及び101)に対するモルモット免疫血清からのIL-31反応性ポリクローナル抗体による、IL-31とIL-31Rαとの相互作用の阻害を示すグラフであり、併せて各構築物のIC
50のまとめを示す。
【
図30】
図22- IL-31ペプチド免疫原構築物(配列番号87及び101)に対するモルモット血清からのIL-31反応性ポリクローナル抗体による、U87MG細胞でのIL-31誘導STAT3リン酸化の抑制。
【
図31】
図23- IL-31ペプチド免疫原構築物(配列番号87及び101)に対するモルモット血清からのIL-31反応性ポリクローナル抗体による、HaCaT細胞でのIL-31誘導IL-20発現の抑制。
【
図32】
図24A~
図24B- 様々な多成分製剤の中の代表的ヒトIL-31ペプチド構築物(配列番号101)の免疫原性を示すグラフ(
図24A)であり、併せて各製剤のLogEC
50のまとめ(
図24B)を示す。
【
図33】
図25A~
図25B- ヒトIL-31ペプチド免疫原構築物(配列番号101)に対するモルモット免疫血清からのIL-31反応性ポリクローナル抗体による、IL-31とIL-31αとの相互作用の阻害を示すグラフ(A)であり、併せて各製剤のIC
50のまとめ(B)を示す。
【
図34】
図26- 様々な製剤の中のIL-31ペプチド免疫原構築物(配列番号101)に対するモルモット血清からのIL-31反応性ポリクローナル抗体による、HaCaT細胞でのIL-31誘導IL-20発現の抑制。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本開示は、掻痒性症状及び/またはアレルギー性症状、例えばアトピー性皮膚炎の治療及び/または予防のための、インターロイキン31(IL-31)タンパク質の一部を標的とする個々のペプチド免疫原構築物に関する。本開示はまた、ペプチド免疫原構築物を含有する組成物、ペプチド免疫原構築物を製造及び使用する方法、ならびにペプチド免疫原構築物によって生成する抗体に関する。
【0025】
本開示のペプチド免疫原構築物は約25アミノ酸以上を含有する。ペプチド免疫原構築物は、イヌIL-31タンパク質(GenBank:BAH97742.1)の一部からのB細胞エピトープを含有する。イヌ及びヒトIL-31タンパク質の完全長アミノ酸配列はそれぞれ表1中の配列番号1及び配列番号2に示される。B細胞エピトープは、病原体タンパク質に由来する異種Tヘルパー細胞(Th)エピトープに任意選択の異種スペーサーによって結合され得る。本開示のペプチド免疫原構築物は、IL-31を指向する高特異性抗体の生成を刺激する。本開示のペプチド免疫原構築物は、掻痒性症状及び/またはアレルギー性症状、例えばアトピー性皮膚炎に罹患している動物のための免疫療法として使用され得る。
【0026】
ペプチド免疫原構築物のB細胞エピトープ部分は、完全長イヌIL-31タンパク質(配列番号1)または完全長ヒトIL-31タンパク質(配列番号2)からのアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、B細胞エピトープは、表1に示される配列番号1~13及び配列番号93~98のいずれかを含有する配列を有する。
【0027】
本開示のペプチド免疫原構築物は、表2に示される、病原性タンパク質に由来する異種Thエピトープアミノ酸配列(例えば配列番号14~42)を含有し得る。特定の実施形態では、異種Thエピトープは、天然の病原体、例えば、ジフテリア毒素(配列番号18)、Plasmodium Falciparum(配列番号19)、コレラ毒素(配列番号21)に由来するものである。他の実施形態では、異種Thエピトープは、麻疹ウイルス融合タンパク質(MVF1~5)またはB型肝炎表面抗原(HBsAg1~3)に由来し単一の配列か組み合わせた配列かのどちらかの形態にある理想人工Thエピトープ(例えば配列番号25、24及び26)である。
【0028】
いくつかの実施形態では、ペプチド免疫原構築物は、任意選択の異種スペーサーによって異種Tヘルパー細胞(Th)エピトープに結合された、IL-31からのB細胞エピトープを含有する。特定の実施形態では、ペプチド免疫原構築物は、病原性タンパク質に由来する異種Thエピトープ(配列番号14~42)に任意選択の異種スペーサーによって結合された、IL-31からのアミノ酸配列(例えば配列番号1~13及び配列番号93~98)を有するB細胞抗原性部位を含有する。いくつかの実施形態では、任意選択の異種スペーサーは、2つのアミノ酸及び/またはペプチドを一緒に結合できる分子または化学構造である。特定の実施形態では、スペーサーは、天然に存在するアミノ酸、天然に存在しないアミノ酸またはその組合せである。具体的な実施形態では、ペプチド免疫原構築物は、表3に示される配列番号43~90及び配列番号99~105のアミノ酸配列を有する。
【0029】
本開示はさらに、IL-31ペプチド免疫原構築物を含有する組成物に関する。いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、1つより多いIL-31ペプチド免疫原構築物を含有する。特定の実施形態では、組成物は、対象の広範な遺伝的背景を対象範囲に含めるためにIL-31ペプチド免疫原構築物の混合物(例えば、配列番号43~90及び配列番号99~105の任意の組合せ)を含有する。ペプチド免疫原構築物の混合物を含有する組成物は、単一のペプチド免疫原構築物のみを含有する組成物と比較して、掻痒性症状及び/またはアレルギー性症状、例えばアトピー性皮膚炎の治療のために免疫したときの奏効者率のより高い百分率につながり得る。
【0030】
本開示はさらに、掻痒性症状及び/またはアレルギー性症状、例えばアトピー性皮膚炎の治療及び/または予防のための医薬組成物に関する。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、CpGオリゴマーと、ペプチド免疫原複合体を含有する組成物とを混合することで静電会合によって形成された安定化免疫刺激性複合体の形態で本開示のペプチド免疫原構築物を含有する。そのような安定化免疫刺激性複合体は、ペプチド免疫原構築物の免疫原性をさらに増強することができる。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、アジュバント、例えば、ミョウバンゲル(ALHYDROGEL)、リン酸アルミニウム(ADJUPHOS)を含めた無機塩、またはMONTANIDE ISA50V2、ISA51もしくはISA720を含めた油中水エマルションを含有する。
【0031】
本開示はさらに、本開示のIL-31ペプチド免疫原構築物を指向する抗体に関する。特に、本開示のペプチド免疫原構築物は、対象に投与されると、IL-31アミノ配配列(配列番号1~13及び配列番号93~98)に関して交差反応性である高特異性抗体の生成を刺激することができる。ペプチド免疫原構築物によって生成する高特異性抗体は、組換えIL-31含有タンパク質に関して交差反応性である。本開示の抗体は、免疫原性増強のために採用される異種Thエピトープを指向することがあったとしてもあまりなく、高い特異性でIL-31に結合するが、このことは、そのようなペプチド抗原性増強のために使用される従来のタンパク質または他の生物学的担体とは極めて対照的である。
【0032】
本開示には、本開示のペプチド免疫原構築物及び/またはペプチド免疫原構築物を指向する抗体を使用して掻痒性症状及び/またはアレルギー性症状、例えばアトピー性皮膚炎を治療及び/または予防する方法も含まれる。いくつかの実施形態では、掻痒性症状及び/またはアレルギー性症状、例えばアトピー性皮膚炎を治療及び/または予防する方法は、本開示のペプチド免疫原構築物を含有する組成物を宿主に投与することを含む。特定の実施形態では、方法において利用される組成物は本開示のペプチド免疫原構築物を、CpGオリゴマーなどの負に帯電したオリゴヌクレオチドとの静電会合による安定な免疫刺激性複合体の形態で含有し、この複合体には任意選択的に、アジュバントとしての無機塩または油が、掻痒性症状及び/またはアレルギー性症状、例えばアトピー性皮膚炎を有する対象への投与のためにさらに補充されている。本開示の方法はさらに、投薬計画、剤形、ならびに掻痒性症状及び/またはアレルギー性症状、例えばアトピー性皮膚炎の危険性があるまたはそれを有する宿主にペプチド免疫原構築物を投与するための投与経路を含む。
【0033】
本明細書中で使用される節の見出しは、単なる構成上の目的のためのものにすぎず、記載されている主題を限定していると解釈すべきでない。本願中で引用される全ての参考文献または参考文献の一部は、参照によりそれらの全体があらゆる目的のために本明細書に明示的に援用される。
【0034】
特に説明がない限り、本明細書中で使用する全ての科学技術用語は、本発明が属する分野の当業者に一般的に理解されるのと同じ意味を有する。単数形「a」、「an」及び「the」には複数形の意味が含まれており、但し、そうでないことが文脈によって明らかに示されている場合を除く。同様に、「または」という単語には「及び」を含むことを意図しており、但し、そうでないことが文脈によって明らかに示されている場合を除く。したがって、「AまたはBを含む」は、A、またはB、またはAとBを含むことを意味する。さらに、ポリペプチドに対して与えられる全てのアミノ酸サイズ及び全ての分子量または分子質量値がおおよそのものであり説明のために提供されていることは理解される。本明細書に記載のものと類似するまたは等価である方法及び材料を本開示の方法の実施または検査に使用することはできるが、以下では好適な方法及び材料が記載されている。本明細書中で言及される全ての刊行物、特許出願、特許及び他の参考文献は参照によりそれらの全体が本明細書に援用される。対立がある場合には用語の説明を含めて本明細書が優先されることになる。加えて、材料、方法及び実施例は例示であるにすぎず、限定を意図していない。
【0035】
IL-31ペプチド免疫原構築物
本開示は、直接、または任意選択の異種スペーサーによって、異種Tヘルパー細胞(Th)エピトープに共有結合された、IL-31からのアミノ酸配列を有するB細胞エピトープを含有する、ペプチド免疫原構築物を提供する。
【0036】
「IL-31ペプチド免疫原構築物」または「ペプチド免疫原構築物」という語句は、本明細書中で使用される場合、(a)イヌIL-31(配列番号1)またはヒトIL-31(配列番号2)の完全長配列からの約15アミノ酸残基以上を有するB細胞エピトープ;(b)異種Thエピトープ;及び(c)任意選択の異種スペーサーを含有する、ペプチドを指す。
【0037】
特定の実施形態では、IL-31ペプチド免疫原構築物は、式:
(Th)m-(A)n-(IL-31断片)-X
または
(IL-31断片)-(A)n-(Th)m-X
〔式中、
Thは異種Tヘルパーエピトープであり、
Aは異種スペーサーであり、
(IL-31断片)は、配列番号1または配列番号2からの約15~約75アミノ酸残基を有するB細胞エピトープであり、
Xはアミノ酸のα-COOHまたはα-CONH2であり、
mは1~約4であり、
nは0~約10である〕
で表すことができる。
【0038】
本開示のIL-31ペプチド免疫原構築物の様々な構成要素について以下に説明する。
【0039】
a.IL-31断片
本開示のペプチド免疫原構築物は、合計約25アミノ酸以上を含有し、約15アミノ酸がIL-31タンパク質からのものである。ペプチド免疫原構築物は、表1に示される配列番号1のアミノ酸配列を有するイヌIL-31タンパク質(GenBank:BAH97742.1)または表1に示される配列番号2のアミノ酸配列を有するヒトIL-31タンパク質(GenBank:AAS86448.1)からの、B細胞エピトープを含有する。B細胞エピトープは、病原体タンパク質に由来する異種Tヘルパー細胞(Th)エピトープに任意選択の異種スペーサーによって結合され得る。本開示のペプチド免疫原構築物は、IL-31を指向する高特異性抗体の生成を刺激する。本開示のペプチド免疫原構築物は、掻痒性症状及び/またはアレルギー性症状、例えばアトピー性皮膚炎を有する対象のための免疫療法として使用され得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、B細胞エピトープは、表1に示される配列番号1~13及び配列番号93~98のいずれかを含有する配列を有する。表1に示されるIL-31断片は例示的なものであり、本開示には、配列番号1及び配列番号2のそれぞれ完全長イヌIL-31タンパク質またはヒトIL-31タンパク質の他の任意の断片が含まれる。
【0041】
b.異種Tヘルパー細胞エピトープ(Thエピトープ)
本開示は、直接、または任意選択の異種スペーサーによって、異種Tヘルパー細胞(Th)エピトープに共有結合された、IL-31からのB細胞エピトープを含有する、ペプチド免疫原構築物を提供する。
【0042】
IL-31ペプチド免疫原構築物中の異種ThエピトープはIL-31断片の免疫原性を増強し、これが、合理的なデザインによって最適化された標的B細胞エピトープ(すなわち、IL-31断片)を指向する特異的な高力価抗体の生成を促進する。
【0043】
本明細書中で使用する「異種」という用語は、IL-31の野生型配列の一部でないまたはそれと相同的でないアミノ酸配列に由来するアミノ酸配列を指す。したがって、異種Thエピトープは、IL-31中に天然に認められないアミノ酸配列に由来するThエピトープである(つまり、ThエピトープはIL-31に対して自家ではない)。ThエピトープはIL-31に対して異種であるため、異種ThエピトープをIL-31断片に共有結合される場合にIL-31の天然アミノ酸配列はN末端側またはC末端側のどちらの方向にも伸長されない。
【0044】
本開示の異種Thエピトープは、IL-31中に天然に認められるアミノ酸配列を有さない任意のThエピトープであり得る。Thエピトープは、任意の種(例えば、ヒト、ブタ、ウシ、イヌ、ラット、マウス、モルモットなど)に由来するアミノ酸配列を有し得る。Thエピトープは、複数の種のMHCクラスII分子に対する無差別的結合モチーフを有する場合もある。特定の実施形態では、Tヘルパー細胞を最大限に活性化させて免疫応答の開始及び調節をもたらすべく、Thエピトープは複数の無差別的MHCクラスII結合モチーフを含む。Thエピトープは好ましくはそれ自体では免疫サイレントであり、つまり、IL-31ペプチド免疫原構築物によって生成した抗体のうちThエピトープに向かって指向することになるものがあったとしてもほとんどなく、それゆえ、標的とするIL-31断片のB細胞エピトープを指向する非常に集中的な免疫応答が可能になる。
【0045】
本開示のThエピトープとしては、限定されないが、表2中に例示されているような外来病原体に由来するアミノ酸配列(配列番号14~42)が挙げられる。さらに、エピトープには、理想人工Thエピトープ及び混成理想人工Thエピトープ(例えば配列番号15及び配列番号22~28)が含まれる。混成配列(例えば配列番号23~26)として提示される異種Thエピトープペプチドは、その特定ペプチドの相同体の可変残基を基準としてペプチドの枠組み内での特定位置に表されるアミノ酸残基の混合物を含有する。混成ペプチドの組立体は、合成工程中に1つの特定のアミノ酸の代わりに指定の保護されたアミノ酸の混合物を特定位置に加えることによって1工程で合成され得る。そのような混成異種Thエピトープペプチド組立体は、多様な遺伝的背景を有する動物に対する広いThエピトープ対象範囲を可能にすることができる。異種Thエピトープペプチドの代表的な混成配列としては、表2に示される配列番号23~26が挙げられる。本発明のエピトープペプチドは、遺伝的に多様な個体群からの動物及び患者に対して広範な反応性及び免疫原性を示す。
【0046】
Thエピトープを含むIL-31ペプチド免疫原構築物は、IL-31断片と一緒に単一の固相ペプチド合成において同時に製造される。Thエピトープには、Thエピトープの免疫学的類縁体も含まれる。免疫学的Th類縁体としては、免疫増強性類縁体、交差反応性類縁体、及びIL-31断片に対する免疫応答を増強または刺激するのに十分なこれらのThエピトープのいずれかのセグメントが挙げられる。
【0047】
Thエピトープペプチドの機能性免疫学的類縁体も有効であり、本発明の一部として含まれる。機能性免疫学的Th類縁体は、ThエピトープのTh刺激機能を本質的に変化させないThエピトープにおける1~約5アミノ酸残基の保存的置換、追加、欠失及び挿入を含み得る。保護的置換、追加及び挿入は、IL-31断片について上述した天然または非天然アミノ酸を使用して成し遂げられ得る。表2には、Thエピトープペプチドの機能性類縁体の別の変形形態が特定されている。特にMvF1及びMvF2 Thの配列番号15及び配列番号22は、各々N及びC末端における2つのアミノ酸の欠失(配列番号15及び配列番号22)または包含(配列番号25及び配列番号27)によってアミノ酸フレームに差異があるという点で、MvF4及びMvF5の配列番号25及び配列番号27の機能性類縁体である。これらの2つの類似配列系列間での差異は、これらの配列の中に含まれているThエピトープの機能に影響を与えないものである。したがって、機能性免疫学的Th類縁体には、麻疹ウイルス融合タンパク質MvF1~4 Th(配列番号15、22、23、25及び27)に由来する及び肝炎表面タンパク質HBsAg1~3 Th(配列番号24、26及び28)に由来するThエピトープのいくつかの変異型が含まれる。
【0048】
IL-31ペプチド免疫原構築物中のThエピトープは、IL-31ペプチドのNまたはC末端側において共有結合し得る。いくつかの実施形態では、ThエピトープはIL-31ペプチドのN末端側に共有結合している。他の実施形態では、ThエピトープはIL-31ペプチドのC末端側に共有結合している。特定の実施形態では、1つより多いThエピトープがIL-31断片に共有結合している。1つより多いThエピトープがIL-31断片に結合している場合、各Thエピトープは同じアミノ酸配列または異なるアミノ酸配列を有し得る。加えて、1つより多いThエピトープがIL-31断片に結合している場合にThエピトープは任意の順序で配置できる。例えば、Thエピトープが連続的にIL-31断片のN末端側に結合し得るか、もしくは連続的にIL-31断片のC末端側に結合し得るか、または1つのThエピトープがIL-31断片のN末端側に共有結合し得るが、一方で別のThエピトープがIL-31断片のC末端側に共有結合する。IL-31断片と関連するThエピトープの並び方に制限はない。
【0049】
いくつかの実施形態では、Thエピトープは直接IL-31断片に共有結合している。他の実施形態では、Thエピトープは、以下にさらに詳しく説明する異種スペーサーによってIL-31断片に共有結合している。
【0050】
c.異種スペーサー
本開示のIL-31ペプチド免疫原構築物は、任意選択で、IL-31からのB細胞エピトープを異種Tヘルパー細胞(Th)エピトープに共有結合する異種スペーサーを含有する。
【0051】
上に述べたとおり、「異種」という用語は、IL-31の野生型配列の一部でない、またはそれと相同的でないアミノ酸配列に由来するアミノ酸配列を指す。したがって、異種スペーサーをIL-31からのB細胞エピトープに共有結合する場合、スペーサーがIL-31配列に対して異種であるためIL-31の天然アミノ酸配列はN末端側またはC末端側のどちらの方向にも伸長されない。
【0052】
スペーサーは、2つのアミノ酸及び/またはペプチド同士を結合することができる任意の分子または化学構造である。スペーサーは用途によって長さまたは極性が様々であり得る。スペーサーの結合は、アミドまたはカルボニル結合によるものであり得るが、他の官能性も同様に可能である。スペーサーは化合物、天然に存在するアミノ酸、または天然に存在しないアミノ酸を含み得る。
【0053】
スペーサーはIL-31ペプチド免疫原構築物に構造的特徴を提供することができる。構造的にスペーサーはThエピトープとIL-31断片のB細胞エピトープとの物理的に分離する。スペーサーによる物理的分離は、ThエピトープをB細胞エピトープと結合することによって作り出される何らかの人工的二次構造を妨害することができる。加えて、スペーサーによるエピトープの物理的分離はTh細胞及び/またはB細胞応答間の干渉をなくすことができる。さらに、スペーサーを、ペプチド免疫原構築物の二次構造を作り出すまたは改変するように設計することができる。例えば、ThエピトープとB細胞エピトープとの分離を強化するために、柔軟なヒンジとして機能するようにスペーサーを設計できる。柔軟なヒンジスペーサーは、提示されたペプチド免疫原と適切なTh細胞及びB細胞とのより効率的な相互作用を可能にしてThエピトープ及びB細胞エピトープに対する免疫応答を強化することもできる。屈曲性ヒンジをコードする配列の例は免疫グロブリン重鎖ヒンジ領域にみられ、これはプロリンに富むことが多い。スペーサーとして使用することができる特に有用な1つの屈曲性ヒンジは、配列Pro-Pro-Xaa-Pro-Xaa-Pro(配列番号92)によって提供され、式中、Xaaは任意のアミノ酸、好ましくはアスパラギン酸である。
【0054】
スペーサーはIL-31ペプチド免疫原構築物に機能的特徴も提供することができる。例えば、スペーサーは、ペプチド免疫原構築物の溶解性に影響を与え得るものであるIL-31ペプチド免疫原構築物の全体電荷を変更させるように設計され得る。加えて、IL-31ペプチド免疫原構築物の全体電荷を変更させることで他の化合物及び試薬とのペプチド免疫原構築物の結合能力に影響を及ぼす可能性がある。以下にさらに詳しく述べているが、IL-31ペプチド免疫原構築物から静電結合によってCpGオリゴマーなどの高荷電オリゴヌクレオチドとの安定な免疫刺激性複合体を形成することができる。IL-31ペプチド免疫原構築物の全体電荷は、これらの安定な免疫刺激性複合体の形成にとって重要である。
【0055】
スペーサーとして使用することができる化合物としては、限定されないが、(2-アミノエトキシ)酢酸(AEA)、5-アミノ吉草酸(AVA)、6-アミノカプリン酸(Ahx)、8-アミノ-3,6-ジオキサオクタン酸(AEEA、ミニ-PEG1)、12-アミノ-4,7,10-トリオキサドデカン酸(ミニ-PEG2)、15-アミノ-4,7,10,13-テトラオキサペンタ-デカン酸(ミニ-PEG3)、トリオキサトリデカン-スクシンアミド酸(Ttds)、12-アミノ-ドデカン酸、Fmoc-5-アミノ-3-オキサペンタン酸(O1Pen)などが挙げられる。
【0056】
天然に存在するアミノ酸としては、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン及びバリンが挙げられる。
【0057】
天然に存在しないアミノ酸としては、限定されないが、ε-Nリジン、β-アラニン、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、サイロキシン、γ-アミノ酪酸、ホモセリン、シトルリン、アミノ安息香酸、6-アミノカプリン酸(Aca;6-アミノヘキサン酸)、ヒドロキシプロリン、メルカプトプロピオン酸(MPA)、3-ニトロ-チロシン、ピログルタミン酸などが挙げられる。
【0058】
IL-31ペプチド免疫原構築物中のスペーサーは、Thエピトープ及びIL-31ペプチドのNまたはC末端側のどちらかに共有結合し得る。いくつかの実施形態では、スペーサーはThエピトープのC末端及びIL-31ペプチドのN末端側に共有結合している。他の実施形態では、スペーサーはIL-31ペプチドのC末端側及びThエピトープのN末端側に共有結合している。特定の実施形態では、例えば1つ以上のThエピトープがペプチド免疫原構築物中に存在する場合に、1つより多いスペーサーが使用され得る。1つより多いスペーサーを使用する場合、各スペーサーは互いに同じものまたは異なるものであってよい。加えて、1つより多いThエピトープがペプチド免疫原構築物中に存在する場合、Thエピトープはスペーサーで分離することができ、Thエピトープは、ThエピトープをB細胞エピトープから分離するために使用されるスペーサーと同じまたは異なるものであってよい。ThエピトープまたはIL-31断片に関するスペーサーの配置に制限はない。特定の実施形態では、異種スペーサーは、天然に存在するアミノ酸または天然に存在しないアミノ酸である。他の実施形態では、スペーサーは天然に存在するまたは天然に存在しないアミノ酸を1つより多く含有する。具体的な実施形態では、スペーサーは、Lys-、Gly-、Lys-Lys-Lys-、(α,ε-N)Lys、またはε-N-Lys-Lys-Lys-Lys(配列番号91)である。
【0059】
d.IL-31ペプチド免疫原構築物の具体的な実施形態
特定の実施形態では、IL-31ペプチド免疫原構築物は、式:
(Th)m-(A)n-(IL-31断片)-X
または
(IL-31断片)-(A)n-(Th)m-X
〔式中、
Thは異種Tヘルパーエピトープであり、
Aは異種スペーサーであり、
(IL-31断片)は、配列番号1または配列番号2からの約15~約75アミノ酸残基を有するB細胞エピトープであり、
Xはアミノ酸のα-COOHまたはα-CONH2であり、
mは1~約4であり、
nは0~約10である〕
で表すことができる。
【0060】
特定の実施形態では、IL-31ペプチド免疫原構築物中の異種Thエピトープは、表2に示される配列番号14~42及びその組合せのいずれかから選択されるアミノ酸配列を有する。具体的な実施形態では、Thエピトープは、配列番号22~28のいずれかから選択されるアミノ酸配列を有する。特定の実施形態では、IL-31ペプチド免疫原構築物は、1つより多いThエピトープを含有する。
【0061】
特定の実施形態では、任意選択の異種スペーサーは、Lys-、Gly-、Lys-Lys-Lys-、(α,ε-N)Lys、ε-N-Lys-Lys-Lys-Lys(配列番号91)及びその組合せのいずれかから選択される。具体的な実施形態では、異種スペーサーはε-N-Lys-Lys-Lys-Lys(配列番号91)である。
【0062】
特定の実施形態では、IL-31断片は配列番号1または配列番号2からの約15~約65アミノ酸残基を有する。具体的な実施形態では、IL-31断片は、表1に示される配列番号1~13及び配列番号93~98で表されるアミノ酸配列を有する。
【0063】
特定の実施形態では、IL-31ペプチド免疫原構築物は、表3に示される配列番号43~90及び配列番号99~105のいずれかから選択されるアミノ酸配列を有する。
【0064】
e.変異体、相同体及び機能性類縁体
IL-31タンパク質の望ましいエピトープに対する抗体を誘導する及び/またはそれと交差反応する上記免疫原性ペプチドの変異体及び類縁体を使用することもできる。対立形質に関する、種に関する及び誘導される変異体を含めて類縁体は、しばしば保存的置換によって、1つ、2つまたはいくつかの位置において天然に存在するペプチドとは異なっているのが典型的である。類縁体は典型的には天然ペプチドとの少なくとも80%または90%の配列同一性を呈する。いくつかの類縁体は、1つ、2つまたはいくつかの位置に非天然アミノ酸またはNもしくはC末端アミノ酸の改変も含む。
【0065】
機能性類縁体である変異体は、アミノ酸位置での保存的置換;全体電荷の変更;別の部分との共有結合;またはアミノ酸の付加、挿入もしくは欠失;及び/またはその任意の組合せを有し得る。
【0066】
保存的置換とは、1つのアミノ酸残基が、類似する化学的性質を有する別のアミノ酸残基の代わりに用いられている場合をいう。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸には、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン及びメチオニンが含まれ、極性中性アミノ酸には、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン及びグルタミンが含まれ、正に帯電した(塩基性)アミノ酸には、アルギニン、リジン及びヒスチジンが含まれ、負に帯電した(酸性)アミノ酸には、アスパラギン酸及びグルタミン酸が含まれる。
【0067】
特定の実施形態では、機能性類縁体は、元のアミノ酸配列との少なくとも50%の同一性を有する。別の実施形態では、機能性類縁体は、元のアミノ酸配列との少なくとも80%の同一性を有する。さらに別の実施形態では、機能性類縁体は、元のアミノ酸配列との少なくとも85%の同一性を有する。さらに別の実施形態では、機能性類縁体は、元のアミノ酸配列との少なくとも90%の同一性を有する。
【0068】
変異体には、リン酸化された残基に対する変形形態も含まれる。例えば、変異体はリン酸化ペプチド内に異なる残基を含み得る。変異体である免疫原性IL-31ペプチドには、偽リン酸化ペプチドも含まれ得る。偽リン酸化ペプチドは、IL-31ペプチドのリン酸化されたセリン、スレオニン及びチロシン残基のうちの1つ以上を酸性アミノ酸残基、例えばグルタミン酸及びアスパラギン酸で置き換えることによって生成する。
【0069】
組成物
本開示はさらに、本開示のIL-31免疫原構築物を含む組成物を提供する。
【0070】
a.ペプチド組成物
本開示のIL-31ペプチド免疫原構築物を含有する組成物は、液体または固体の形態であり得る。液体組成物は、水、緩衝剤、溶媒、塩及び/またはIL-31ペプチド免疫原構築物の構造的もしくは機能的特性を変化させない他の任意の許容される試薬を含み得る。ペプチド組成物は、本開示のIL-31ペプチド免疫原構築物の1つ以上を含有し得る。
【0071】
b.医薬組成物
本開示はさらに、本開示のIL-31ペプチド免疫原構築物を含有する医薬組成物に関する。
【0072】
医薬組成物は、薬学的に許容される送達システムの中に担体及び/または他の添加物を含有し得る。したがって、医薬組成物は、薬学的有効量のIL-31ペプチド免疫原構築物と共に、薬学的に許容される担体、アジュバント及び/または他の賦形剤、例えば、希釈剤、添加剤、安定化剤、保存剤、可溶化剤、緩衝剤などを含有し得る。
【0073】
医薬組成物は、何ら特異的抗原作用を自ら有することなくIL-31ペプチド免疫原構築物に対する免疫応答を加速させる、延長するまたは増強させるように作用する1つ以上のアジュバントを含有し得る。医薬組成物に使用されるアジュバントには、油、油エマルション、アルミニウム塩、カルシウム塩、免疫刺激性複合体、細菌派生体及びウイルス派生体、ビロソーム、炭水化物、サイトカイン、ポリマー微粒子が含まれ得る。特定の実施形態では、アジュバントは、ミョウバン(リン酸アルミニウムカリウム)、リン酸アルミニウム(例えば、ADJU-PHOS(登録商標))、水酸化アルミニウム(例えばALHYDROGEL(登録商標))、リン酸カルシウム、不完全フロイントアジュバント(IFA)、フロイント完全アジュバント、MF59、アジュバント65、Lipovant、ISCOM、リポシン、サポニン、スクアレン、L121、EMULSIGEN(登録商標)、モノホスホリルリピドA(MPL)、Quil A、QS21、MONTANIDE(登録商標)ISA35、ISA50V、ISA50V2、ISA51、ISA206、ISA720、リポソーム、リン脂質、ペプチドグリカン、リポ多糖(LPS)、ASO1、ASO2、ASO3、ASO4、AF03、親油性リン脂質(リピドA)、ガンマイヌリン、アルガムリン、グルカン、デキストラン、グルコマンノン、ガラクトマンナン、レバン、キシラン、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDA)ならびにその他のアジュバント及び乳化剤から選択され得る。
【0074】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、MONTANIDE(商標)ISA51(油中水エマルションの製造のための植物油及びモノオレイン酸マンニドからなる油系アジュバント組成物)、TWEEN(登録商標)80(ポリソルベート80またはポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエートとしても知られる)、CpGオリゴヌクレオチド及び/またはその任意の組合せを含有する。他の実施形態では、医薬組成物は、EMULSIGENまたはEMULSIGEN Dをアジュバントとする水中油中水型(すなわちw/o/w)エマルションである。
【0075】
医薬組成物は、薬学的に許容される添加剤または賦形剤を含むこともある。例えば、医薬組成物は、酸化防止剤、結合剤、緩衝剤、増量剤、担体、キレート剤、着色剤、希釈剤、崩壊剤、乳化剤、フィラー、ゲル化剤、pH緩衝剤、保存剤、可溶化剤、安定化剤などを含有し得る。
【0076】
医薬組成物は、即放性または持続放出性製剤として製剤化され得る。加えて、医薬組成物は、免疫原捕捉及び微粒子との共投与によって全身の、または局所粘膜の免疫性を誘導するために製剤化され得る。そのような送達システムは当業者によって容易に決定される。
【0077】
医薬組成物は、液体溶液か懸濁液かのどちらかとしての注射剤として調製され得る。IL-31ペプチド免疫原構築物を含有する液体ビヒクルを注射前に調製することもできる。医薬組成物は、任意の好適な適用様式、例えば、i.d.、i.v.、i.p.、i.m.、鼻腔内、経口、皮下などで、及び任意の好適な送達装置で投与され得る。特定の実施形態では、医薬組成物は、静脈内、皮下、皮内または筋肉内投与のために製剤化される。経口及び鼻腔内適用を含めた他の投与様式に適した医薬組成物を調製することもできる。
【0078】
医薬組成物はまた、好適な単位剤形で製剤化され得る。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、体重1kgあたり約0.5μg~約1mgのIL-31ペプチド免疫原構築物を含有する。医薬組成物の有効量は、投与手段、標的部位、患者の生理的状態、患者がヒトであるのかまたは動物であるのか、投与される他の医薬、及び治療が予防的であるのかまたは治療的であるのかを含めた多種多様な因子によって様々である。通常、患者はヒトであるが、遺伝子導入哺乳動物を含めた非ヒト哺乳動物を治療することもできる。医薬組成物は、多回用量で送達される場合、便宜的に単位剤形ごとに適切な量に分割されてもよい。投与する投薬量は、治療分野でよく知られているように対象の年齢、体重及び全身の健康によって決まるであろう。
【0079】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は1つより多いIL-31ペプチド免疫原構築物を含有する。1つより多いIL-31ペプチド免疫原構築物の混合物を含有する医薬組成物は、構築物の免疫効果の相乗的増強を可能にする。1つより多いIL-31ペプチド免疫原構築物を含有する医薬組成物は、MHCクラスII対象範囲が広いのでより大きな遺伝的個体群においてより有効であり得、したがってIL-31ペプチド免疫原構築物に対する免疫応答の改善をもたらすことができる。
【0080】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、配列番号43~90及び配列番号99~105(表3)ならびにその相同体、類縁体及び/または組合せから選択されるIL-31ペプチド免疫原構築物を含有する。具体的な実施形態では、医薬組成物は、配列番号43~90及び配列番号99~105(表3)ならびにその組合せから選択されるIL-31ペプチド免疫原構築物を含有する。
【0081】
IL-31ペプチド免疫原構築物を含有する医薬組成物は、投与時に宿主において免疫応答を引き出し抗体を生成するために使用され得る。
【0082】
c.免疫刺激性複合体
本開示はさらに、IL-31ペプチド免疫原構築物をCpG1(配列番号108)、CpG2(配列番号109)またはCpG3(配列番号110)などのCpGオリゴヌクレオチドとの免疫刺激性複合体の形態で含有する医薬組成物に関する。そのような免疫刺激性複合体は、アジュバントとして及びペプチド免疫原安定化剤として作用するのに特に適合している。免疫刺激性複合体は微粒子の形態にあり、これがIL-31ペプチド免疫原を免疫系の細胞に効率的に提示して免疫応答を生むことができる。免疫刺激性複合体を非経口投与のための懸濁液として製剤化してもよい。また、非経口投与後に宿主の免疫系の細胞へIL-31ペプチド免疫原を効率的に送達するために、免疫刺激性複合体を、無機塩または系中でゲル化するポリマーと組み合わせた懸濁液としてのw/oエマルジョンの形態で製剤化してもよい。
【0083】
IL-31ペプチド免疫原構築物と、アニオン性分子、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたはその組合せとを静電会合によって複合化させることによって、安定化免疫刺激性複合体を形成することができる。安定化免疫刺激性複合体を免疫原送達システムとしての医薬組成物の中に組み込んでもよい。
【0084】
特定の実施形態では、IL-31ペプチド免疫原構築物は、5.0~8.0の範囲のpHにおいて正に帯電しているカチオン性部分を含有するように設計される。IL-31ペプチド免疫原構築物または構築物の混合物のカチオン性部分の正味の電荷は、配列内でリジン(K)、アルギニン(R)またはヒスチジン(H)の各々に電荷a+1を割り当て、アスパラギン酸(D)またはグルタミン酸(E)に電荷a-1を割り当て、他のアミノ酸に0の電荷を割り当てることによって算出される。電荷をIL-31ペプチド免疫原構築物のカチオン性部分の中で加算し、正味の平均電荷として表す。好適なペプチド免疫原は、正味の平均正電荷が+1であるカチオン性部分を有する。好ましくは、ペプチド免疫原は+2よりも大きい範囲の正味の正電荷を有する。いくつかの実施形態では、IL-31ペプチド免疫原構築物のカチオン性部分は異種スペーサーである。特定の実施形態では、IL-31ペプチド免疫原構築物のカチオン性部分は、スペーサー配列が(α,ε-N)Lys、ε-N-Lys-Lys-Lys-Lys(配列番号91)である場合に+4の電荷を有する。
【0085】
本明細書に記載の「アニオン性分子」は、5.0~8.0の範囲のpHにおいて負に帯電している任意の分子を指す。特定の実施形態では、アニオン性分子はオリゴマーまたはポリマーである。オリゴマー上またはポリマー上の正味の負電荷は、オリゴマー中のホスホジエステルまたはホスホロチオエート基の各々に電荷a-1を割り当てることによって算出される。好適なアニオン性オリゴヌクレオチドは、8~64ヌクレオチド塩基を有する一本鎖DNA分子であり、CpGモチーフの繰り返し回数が1~10の範囲である。好ましくは、CpG免疫刺激性一本鎖DNA分子は18~48ヌクレオチド塩基を含有し、CpGモチーフの繰り返し回数が3~8の範囲である。
【0086】
より好ましくは、アニオン性オリゴヌクレオチドは式:5’X1CGX23’で表され、式中、C及びGはメチル化されておらず、X1は、A(アデニン)、G(グアニン)及びT(チミン)からなる群から選択され、X2はC(シトシン)またはT(チミン)である。あるいは、アニオン性オリゴヌクレオチドは式:5’(X3)2CG(X4)23’で表され、式中、C及びGはメチル化されておらず、X3は、A、TまたはGからなる群から選択され、X4はCまたはTである。
【0087】
得られる免疫刺激性複合体は、大きさが典型的には1~50ミクロンの範囲である粒子の形態にあり、相対電荷化学量論及び相互作用種の分子量を含めた多くの因子の関数である。微粒子化された免疫刺激性複合体は、生体内での特異的免疫応答のアジュバント化及び上方制御をもたらすという利点を有する。加えて、安定化免疫刺激性複合体は、油中水エマルション、無機塩懸濁液及びポリマーゲルを含めて様々なプロセスで医薬組成物を調製するのに適している。
【0088】
抗体
本開示はさらに、IL-31ペプチド免疫原構築物によって誘発される抗体を提供する。
【0089】
IL-31断片、異種Thエピトープ及び任意選択の異種スペーサーを含む、本開示のIL-31ペプチド免疫原構築物は、宿主に投与された場合に免疫応答及び抗体の産生を誘発することができる。IL-31ペプチド免疫原構築物のデザインは、自己IL-31に対する寛容を壊すことができ、線状エピトープではなく立体構造エピトープを認識する部位特異的な抗体の産生を誘発することができる。
【0090】
IL-31ペプチド免疫原構築物によって生成する抗体は、単量体、二量体、三量体及びオリゴマーの形態にあるIL-31を認識してそれに結合する。
【0091】
本発明のIL-31ペプチド免疫原構築物で免疫された動物から得られる免疫応答は、IL-31に応答する強力な部位特異的抗体を生成する構築物の能力を実証した。
【0092】
方法
本開示はまた、IL-31ペプチド免疫原構築物、組成物及び医薬組成物を製造及び使用する方法に関する。
【0093】
a.IL-31ペプチド免疫原構築物を製造する方法
本開示のIL-31ペプチド免疫原構築物は、当業者によく知られている化学合成法によって作ることができる(例えば、Fields et al., Chapter 3 in Synthetic Peptides: A User’s Guide, ed. Grant, W. H. Freeman & Co., New York, NY,1992, p.77を参照されたい)。IL-31ペプチド免疫原構築物は、例えばApplied Biosystemsペプチド合成装置モデル430Aまたは431において側鎖保護アミノ酸を使用して、t-BocかF-mocかのどちらかの化学で保護されたα-NH2による固相合成の自動Merrifield技術を用いて合成され得る。Thエピトープのためのコンビナトリアルライブラリーペプチドを含むIL-31ペプチド免疫原構築物の調製は、所与の可変位置での結合のための代替アミノ酸の混合物を提供することによって成し遂げられ得る。
【0094】
所望のIL-31ペプチド免疫原構築物の完全な組立て後に、樹脂からペプチドを切り離すための標準的手順に従って樹脂を処理することができ、アミノ酸側鎖上の官能基をデブロッキングすることができる。遊離ペプチドをHPLCで精製することができ、生化学的に、例えばアミノ酸分析または配列決定によって、特性評価することができる。ペプチドのための精製及び特性評価の方法は当業者によく知られている。
【0095】
この化学プロセスによって生成するペプチドの質を制御及び規定することができ、その結果、IL-31ペプチド免疫原構築物の再現性、免疫原性及び収率を保証することができる。固相ペプチド合成によるIL-31ペプチド免疫原構築物の製造についての詳細な説明は実施例1に示される。
【0096】
意図する免疫学的活性の保持を可能にする構造可変性の範囲は、低分子薬による特異的薬物活性、または生物由来薬物と共に生成する大型分子に認められる所望の活性及び不要な毒性の保持のために許容される構造可変性の範囲よりもはるかに順応性があることが見出された。それゆえ、ペプチド類縁体は、意図的に設計されたものであっても、合成プロセスの誤りによって意図したペプチドに類似するクロマトグラフィー上及び免疫学上の特性を有する欠失配列副生成物の混合物として不可避的に生成したものであっても、所望のペプチドの精製された調製物と同じくらい有効であることが多い。設計された類縁体及び意図しない類縁体混合物は、これらのペプチドを採用する最終製品の再現性及び有効性を保証すべく製造プロセスと生成物評価プロセスとの両方を監視するために鑑識的品質管理手順が展開される限りにおいて、有効である。
【0097】
核酸分子、ベクター及び/または宿主細胞を含む組換えDNA技術を用いてIL-31ペプチド免疫原構築物を作ることもできる。したがって、IL-31ペプチド免疫原構築物及びその免疫学的機能性類縁体をコードする核酸分子も本発明の一部として本開示に包含される。同様に、核酸分子を含んでいる発現ベクターを含めたベクター、及びベクターを含有する宿主細胞も本発明の一部として本開示に包含される。
【0098】
様々な例示的実施形態は、IL-31ペプチド免疫原構築物及びその免疫学的機能性類縁体を製造する方法も包含する。例えば、方法は、IL-31ペプチド免疫原構築物及び/またはその免疫学的機能性類縁体をコードする核酸分子を含有する発現ベクターを含有する宿主細胞を、ペプチド及び/または類縁体が発現する条件の下でインキュベートするステップを含み得る。より長い合成ペプチド免疫原をよく知られている組換えDNA技術で合成することができる。そのような技術は、よく知られている標準的マニュアルに詳細なプロトコールと共に示されている。本発明のペプチドをコードする遺伝子を構築するには、アミノ酸配列を逆翻訳して、好ましくは遺伝子を発現させる生物に最適なコドンを有するアミノ酸配列をコードする核酸配列を得る。次に、合成遺伝子を、典型的にはペプチド及び必要に応じた任意の調節エレメントをコードするオリゴヌクレオチドを合成することによって作る。合成遺伝子を好適なクローニングベクターに挿入し、宿主細胞にトランスフェクトする。その後、選択された発現システム及び宿主に適した好適な条件の下でペプチドを発現させる。ペプチドは、精製され、標準的方法で特徴づけられる。
【0099】
いくつかの実施形態では、米国特許第8,426,163号に記載されているようにIL-31リポタンパク質を作るための脂質化を可能にする特定のE.coli株でIL-31ペプチド免疫原構築物を発現させることができ、参照によりその全体を本明細書に援用する。特定の実施形態では、使用するE.coli株は、外来タンパク質、特に膜タンパク質の過剰発現によって誘導される毒性作用に対して耐性である。そのようなE.coli株は、米国特許第6,361,966号に記載されている方法で同定/生成することができ、参照によりその全体を本明細書に援用する。脂質化形態のリポタンパク質を産生することができるE.coli株の例としては、限定されないが、C43(DE3)(ECCC B96070445)、C41(DE3)(ECCC B96070444)、C0214(DE3)、DK8(DE3)S(NCIMB40885)及びC2014(DE3)(NCIMB40884)が挙げられる。上記E.coli株の1つにおいてIL-31の脂質化形態を従来の組換え技術によって発現させることができる。手短に述べると、IL-31をコードするDNA断片をその天然供給源から例えばPCR増幅によって得、任意選択的に改変してE.coliにおけるコドン使用を最適化する。その後、DNA断片をE.coli発現ベクターに挿入して発現プラスミドを産生させる。好ましくは、例えばIPTGによって誘導可能となり得る強力なプロモーター、例えばT7、T5、T3またはSP6によってIL-31リポタンパク質の発現を促す。その後、選択されたE.coli株に発現プラスミドを導入し、陽性形質転換体をタンパク質発現に適した条件の下で培養する。こうして発現したリポタンパク質はE.coli細胞から単離することができ、その脂質化状態を当技術分野で知られている方法、例えば抗リポタンパク質抗体によるイムノブロッティングまたは質量分析で確認することができる。
【0100】
b.免疫刺激性複合体を製造する方法
様々な例示的実施形態は、IL-31ペプチド免疫原構築物とCpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)分子とを含んでいる免疫刺激性複合体を製造する方法も包含する。安定化免疫刺激性複合体(ISC)は、IL-31ペプチド免疫原構築物のカチオン性部分とポリアニオン性CpG ODN分子とに由来する。自己組織化システムは電荷の静電中和によって推し進められる。アニオン性オリゴマーに対するIL-31ペプチド免疫原構築物のカチオン性部分の分子電荷比率の化学量論によって会合の程度が決まる。IL-31ペプチド免疫原構築物とCpG ODNとの非共有結合性静電会合は完全に再現可能なプロセスである。ペプチド/CpG ODN免疫刺激性複合体は凝集するが、これが免疫系の「プロフェッショナル」抗原提示細胞(APC)への提示を促し、かくして複合体の免疫原性がさらに増強される。これらの複合体は、製造中の品質管理のために特徴づけするのが簡単である。ペプチド/CpG ISCは生体内で十分に許容される。CpG ODNとIL-31断片由来のペプチド免疫原構築物とを含むこの新規微粒子システムは、CpG ODN使用に関連する全般的なB細胞分裂促進性を活用しながらも均衡のとれたTh-1/Th-2型応答を増進するように設計された。
【0101】
本開示の医薬組成物の中のCpG ODNは、相反する電荷の静電中和によって媒介されるプロセスにおいて免疫原に100%結合してミクロンサイズの微粒子を形成している。微粒子形態は、CpG投薬量を従来のCpGアジュバント使用と比較して著しく低減し、有害な自然免疫応答の可能性をより低くし、抗原提示細胞(APC)を含む代替の免疫原プロセシング経路を促進する。結果としてそのような製剤は概念上新規なものであり、代替機序による免疫応答の刺激を促進することによる潜在的利点を提供する。
【0102】
c.医薬組成物を製造する方法
様々な例示的実施形態は、IL-31ペプチド免疫原構築物を含有する医薬組成物も包含する。特定の実施形態では、医薬組成物は、油中水エマルション及び無機塩との懸濁を使用する。
【0103】
IL-31凝集の防止も投与のための目標の一部としながら医薬組成物を大きな個体群によって使用されるものにするためには、安全性はもう1つの考慮すべき重要な因子となる。臨床試験中の多くの製剤のためにヒトにおいて油中水エマルションが使用されているとはいえ、ミョウバンはその安全性ゆえに製剤に使用するための主要なアジュバントであり続けている。それゆえ、ミョウバン及びその無機塩であるリン酸アルミニウム(ADJUPHOS)は臨床応用のための配合物においてアジュバントとして頻繁に使用される。
【0104】
他のアジュバント及び免疫刺激剤としては、3脱-O-アシル化モノホスホリルリピドA(MPL)または3-DMP、多量体型または単量体型アミノ酸、例えばポリグルタミン酸またはポリリジンが挙げられる。そのようなアジュバントは、他の特異的免疫刺激剤、例えばムラミルペプチド(例えば、N-アセチルムラミル-L-スレオニル-D-イソグルタミン(thr-MDP)、N-アセチル-ノルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン(nor-MDP)、N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミニル-L-アラニン-2-(1’-2’ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ヒドロキシホスホリルオキシ)-エチルアミン(MTP-PE)、N-アセチルグルコサミニル-N-アセチルムラミル-L-Al-D-イソグル-L-Ala-ジパルミトキシプロピルアミド(DTP-DPP)Theramide(商標)または他の細菌細胞壁成分と共に使用することもできるし、またはそれなしで使用することもできる。水中油エマルションとしては、5%のスクアレンと0.5%のTWEEN80と0.5%のSpan85とを含有し(場合によって様々な量のMTP-PEを含有し)マイクロフルイダイザーを使用してサブミクロン粒子に製剤化したものであるMF59(Van Nest et al.のWO90/14837を参照されたく、これをもって参照によりその全体を援用する);10%のスクアレンと0.4%のTWEEN80と5%のプルロニックブロックポリマーL121とthr-MDPとを含有しサブミクロンのエマルションに微小流体化したかあるいはボルテックスに掛けてより大きな粒径のエマルションを生成したものであるSAF;及び2%のスクアレンと0.2%のTWEEN80と、モノホスホリピドA(MPL)、トレハロースジミコラート(TDM)及び細胞壁骨格(CWS)、好ましくはMPL+CWS(Detox(商標))からなる群から選択される1つ以上の細菌細胞壁成分とを含有する、Ribi(商標)アジュバントシステム(RAS)(Ribi ImmunoChem,Hamilton,Mont.)が挙げられる。他のアジュバントとしては、完全フロイントアジュバント(CFA)、不完全フロイントアジュバント(IFA)ならびにサイトカイン、例えば、インターロイキン(IL-1、IL-2及びIL-12)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)及び腫瘍壊死因子(TNF)が挙げられる。
【0105】
アジュバントの選択は、アジュバントを含有する免疫原性製剤の安定性、投与経路、投薬スケジュール、ワクチン接種する種におけるアジュバントの有効性によって決まり、ヒトにおいて薬学的に許容されるアジュバントは、関係する規制機関によってヒトへの投与が承認されているまたは承認されるものである。例えば、ミョウバン、MPLまたは不完全フロイントアジュバント(Chang et al.,Advanced Drug Delivery Reviews 32:173-186(1998)、これをもって参照によりその全体を援用する)は、単独で、または場合によってそのあらゆる組合せがヒト投与に適している。
【0106】
組成物は、動物またはヒトへの投与のための医薬組成物を製剤化するために一般的に使用されるビヒクルとして定義される薬学的に許容される無毒性の担体または希釈剤を含み得る。希釈剤は、合剤の生物学的活性に影響を及ぼさないように選択される。そのような希釈剤の例は、蒸留水、生理リン酸緩衝食塩水、リンガー液、デキストロース溶液及びハンクス液である。加えて、医薬組成物または製剤は、他の担体、アジュバント、または無毒性の非治療的非免疫原性安定化剤などをさらに含んでもよい。
【0107】
医薬組成物はさらに、大きなゆっくりと代謝される巨大分子、例えば、タンパク質、キトサンのような多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸及びコポリマー(例えば、ラテックス官能化セファロース、アガロース、セルロースなど)、多量体型アミノ酸、アミノ酸コポリマー、ならびに脂質凝集物(例えば油滴またはリポソーム)を含み得る。加えて、これらの担体は免疫刺激剤(すなわちアジュバント)として機能し得る。
【0108】
本発明の医薬組成物はさらに、好適な送達ビヒクルを含み得る。好適な送達ビヒクルとしては、限定されないが、ウイルス、細菌、生分解性微小球、微粒子、ナノ粒子、リポソーム、コラーゲン、ミニペレット及び渦巻体(cochleates)が挙げられる。
【0109】
d.医薬組成物を使用する方法
本開示には、IL-31ペプチド免疫原構築物を含有する医薬組成物を使用する方法も含まれる。
【0110】
特定の実施形態では、IL-31ペプチド免疫原構築物を含有する医薬組成物を掻痒性症状及び/またはアレルギー性症状、例えばアトピー性皮膚炎の治療及び/または予防のために使用することができる。
【0111】
具体的な実施形態
(1)IL-31ペプチド免疫原構築物は式:
(Th)m-(A)n-(IL-31断片)-X
または
(IL-31断片)-(A)n-(Th)m-X
〔式中、
Thは異種Tヘルパーエピトープであり、
Aは異種スペーサーであり、
(IL-31断片)は、配列番号1または配列番号2からの約15~約75アミノ酸残基を有するB細胞エピトープであり、
Xはアミノ酸のα-COOHまたはα-CONH2であり、
mは1~約4であり、
nは0~約10である〕
で表すことができる。
【0112】
(2)前記IL-31断片が、配列番号1~13及び配列番号93~98からなる群から選択される、(1)に記載のIL-31ペプチド免疫原構築物。
【0113】
(3)前記Thエピトープが、配列番号14~42からなる群から選択される、(1)または(2)のいずれかに記載のIL-31ペプチド免疫原構築物。
【0114】
(4)前記ペプチド免疫原構築物が、配列番号43~90及び配列番号99~105からなる群から選択される、(1)に記載のIL-31ペプチド免疫原構築物。
【0115】
(5)配列番号1または配列番号2の完全長IL-31タンパク質配列からの約15~約75アミノ酸残基を含むB細胞エピトープ、
配列番号14~42からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むTヘルパーエピトープ、ならびに
アミノ酸Lys-、Gly-、Lys-Lys-Lys-、(α,ε-N)Lys、及びε-N-Lys-Lys-Lys-Lys(配列番号91)からなる群から選択される任意選択の異種スペーサー
を含む、IL-31ペプチド免疫原構築物であって、
前記B細胞エピトープが直接、または前記任意選択の異種スペーサーによって、前記Tヘルパーエピトープに共有結合している、前記IL-31ペプチド免疫原構築物。
【0116】
(6)前記B細胞エピトープが、配列番号1~13及び配列番号93~98からなる群から選択される、(5)に記載のIL-31ペプチド免疫原構築物。
【0117】
(7)前記Tヘルパーエピトープが、配列番号14~42からなる群から選択される、(5)に記載のIL-31ペプチド免疫原構築物。
【0118】
(8)前記任意選択の異種スペーサーが、(α,ε-N)Lys、またはε-N-Lys-Lys-Lys-Lys(配列番号91)である、(5)に記載のIL-31ペプチド免疫原構築物。
【0119】
(9)前記Tヘルパーエピトープが前記B細胞エピトープのアミノ末端に共有結合している、(5)に記載のIL-31ペプチド免疫原構築物。
【0120】
(10)前記Tヘルパーエピトープが前記任意選択の異種スペーサーによって前記B細胞エピトープのアミノ末端に共有結合している、(5)に記載のIL-31ペプチド免疫原構築物。
【0121】
(11)(1)~(4)のいずれかに記載のペプチド免疫原構築物を含む組成物。
【0122】
(12)a.(1)~(4)のいずれかに記載のペプチド免疫原構築物と、
b.薬学的に許容される送達ビヒクル及び/またはアジュバントと
を含む、医薬組成物。
【0123】
(13)a.前記IL-31ペプチド免疫原構築物が、配列番号43~90及び配列番号99~105からなる群から選択され、
b.前記IL-31ペプチド免疫原構築物が、CpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)と混合されて安定化免疫刺激性複合体を形成している、
(12)に記載の医薬組成物。
【0124】
(14)(1)~(10)のいずれかに記載のIL-31ペプチド免疫原構築物の前記B細胞エピトープに特異的に結合する、単離された抗体またはそのエピトープ結合性断片。
【0125】
(15)前記IL-31ペプチド免疫原構築物に結合している、(14)に記載の単離された抗体またはそのエピトープ結合性断片。
【0126】
(16)(1)~(10)のいずれかに記載のIL-31ペプチド免疫原構築物の前記B細胞エピトープに特異的に結合する、単離された抗体またはそのエピトープ結合性断片。
【0127】
(17)(14)~(16)のいずれかに記載の単離された抗体またはそのエピトープ結合性断片を含む、組成物。
【実施例】
【0128】
実施例1
IL-31関連ペプチドの合成及びその製剤の調製
a.IL-31断片
IL-31ペプチド免疫原構築物の開発努力に含まれるデザイナーIL-31断片を合成する方法について記載する。ペプチドを血清学アッセイならびに実験室試験研究及び現場研究に有用な小スケール量で合成したが、これらは医薬組成物を分析するのに有用である。有効なIL-31ペプチド免疫原構築物における使用に最も適するペプチド構築物のスクリーニング及び選択のために、長さ約15~約75アミノ酸の配列を有する広いレパートリーのIL-31関連抗原性ペプチド(表1)を設計した。
【0129】
完全長イヌIL-31(配列番号1)(
図1のA)及びヒトIL-31(配列番号2)タンパク質からのアミノ酸配列を使用した。様々な血清学アッセイにおいてエピトープマッピングのために採用したIL-31断片は表1(配列番号3~13及び配列番号93~98)で特定され、完全長配列のIL-31断片の相対配列アライメントは
図1のBに示される。選択されたIL-31断片(配列番号3~13及び配列番号93~98)を、表2で特定されるUBITh(登録商標)1及びUBITh(登録商標)2(それぞれ配列番号26及び25)を含む病原体タンパク質に由来する注意深く設計されたヘルパーT細胞(Th)エピトープに合成的に結合することによってIL-31ペプチド免疫原構築物を作った。Thエピトープを単一配列(UBITh(登録商標)1)かコンビナトリアルライブラリー(UBITh(登録商標)3)かのどちらかに使用してそれらの各々のIL-31ペプチド免疫原構築物の免疫原性を増強した。
【0130】
代表的なIL-31ペプチド免疫原構築物は表3(配列番号43~90及び配列番号99~105)で特定される。合成及び評価したIL-31ペプチド免疫原構築物を、同定されるペプチドコードと共に表3に示す。
【0131】
b.ペプチドの典型的合成
抗IL-31抗体の検出及び/または測定のための免疫原性試験または関連する血清学検査のために使用されるペプチドは、典型的にはApplied BioSystems Models 430A、431及び/または433のペプチド合成装置によってF-moc化学を用いて小スケールで合成される。各ペプチドは独立した合成によって固相担体上で、N末端のF-moc保護及び三官能性アミノ酸の側鎖保護基を有して製造される。完成したペプチドを固体担体から切り離し、側鎖保護基を90%のトリフルオロ酢酸(TFA)で除去する。合成ペプチド調製物をマトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間(MALDI-TOF)質量分析で評価して、アミノ酸が正しく含まれていることを確認する。各合成ペプチドを逆相HPLC(RP-HPLC)でも評価して合成プロファイル及び調製物の濃度を確認する。合成プロセスの厳密な制御(カップリング効率のステップごとの追跡を含む)にもかかわらず、アミノ酸の挿入、欠失、置換及び中途停止を含めた伸長サイクル中の意図しない事象のためにペプチド類縁体も生成する。このため、合成された調製物は典型的には目的とするペプチドと一緒に複数のペプチド類縁体を含む。そのような意図しないペプチド類縁体を含んでいるにもかかわらず、得られる合成されたペプチド調製物はなおも、免疫診断(抗体捕捉抗原として)及び医薬組成物(ペプチド免疫原として)を含めた免疫学的用途における使用に適している。典型的にはそのようなペプチド類縁体は、意図的に設計されたものであっても、副生成物の混合物として合成プロセスによって生成したものであっても、これらのペプチドを採用する最終製品の再現性及び有効性を保証すべく製造プロセスと生成物評価プロセスとの両方を監視するために鑑識的品質管理手順が展開される限りにおいて、所望のペプチドの精製された調製物と同じくらい有効であることが多い。数百~数千グラム量での大スケールペプチド合成を、カスタマイズされた自動ペプチド合成装置UBI2003などで15~150ミリモルスケールで行う。活性成分が臨床試験のための最終医薬組成物に使用されるためには、IL-31ペプチド構築物を分取RP-HPLCによって浅い溶離勾配の下で精製し、MALDI-TOF質量分析、アミノ酸分析及びRP-HPLCによって純度及び同一性に関して特性評価する。
【0132】
実施例2
免疫原性評価のためのIL-31ペプチド免疫原構築物によるモルモットの免疫付与
a.動物
モルモット(体重300~350g)を免疫付与のために使用して代表的なデザイナーイヌIL-31ペプチド免疫原構築物(配列番号43、47、51、55及び59)の免疫原性を評価した。表4にまとめるように、15匹のモルモットを1群あたり動物3匹の群に分け、400μgのペプチドによる初回免疫を行い、続いて初回免疫後週数(wpi)3、6、9及び12の時に100μgの追加免疫を4回行った。0、3、6、9、12及び15wpiの時に血液試料を、抗IL-31抗体価測定のため及び対応する免疫血清の中に存在する抗体の他の機能的特性の評価のために採取した。
【0133】
b.製剤
総じて、免疫付与のために使用した製剤は以下を含有していた:
1. 400μgのIL-31ペプチド免疫原構築物
2. 0.7:1のペプチド:CpG比でのCpG
3. 0.2%のTWEEN80
【0134】
c.ELISAによる血清抗IL-31抗体の力価測定
IL-31ペプチド免疫原構築物によって引き出される血清抗IL-31抗体の力価測定を以下のプロトコールに従って評価した:
【0135】
96ウェルプレートのウェルを、イヌIL-31組換えタンパク質(rcIL-31)100μl(50ng/ウェル)、または0.2μg/0.1mL/ウェルのIL-31 Bエピトープペプチド(配列番号3~13及び配列番号93~98)で被覆してpH9.6、50mMの炭酸-重炭酸緩衝液中1μg/mlとして37℃で1時間経過させた。
【0136】
rcIL-31被覆ウェルをPBS中1%のBSA200μlと共に37℃で1時間インキュベートして非特異的なタンパク質結合をブロッキングし、続いて0.05%のTWEEN20を含有するPBSで3回洗浄し、その後乾燥させた。免疫されたモルモットからの段階希釈血清試料100マイクロリットル(100μl)を各ウェルに加えて37℃で1時間反応させた。その後、0.05%のTWEEN20を含有するPBSでウェルを5回洗浄し、乾燥させた。1%のBSA及び0.05%のTWEEN20を含有するPBSで調製した最適に希釈されたペルオキシダーゼ標識ヤギ抗モルモットIgGの100μlを各ウェルに加え、37℃で1時間インキュベートした。インキュベート後、0.05%のTWEEN20を含有するPBSでウェルを6回洗浄し、もう15分間100μlのTMB基質と反応させた。2NのH2SO4で反応を停止させ、450nmでの吸光度を決定した。
【0137】
IL-31ペプチド系ワクチン製剤を与えたモルモットにおける抗体価の決定では、代表的な標的「IL-31」Bエピトープペプチドに対する初回スクリーニングのために1:100以上からの血清の10倍段階希釈を実施し、力価をLog10で表した。組換えイヌIL-31と交差反応性である血清のさらなる分析では、ELISAにおいて1:100から1:54,248,800まで血清の2倍段階希釈を実施し、力価をLogEC50で表した。
【0138】
d.結果
標的IL-31 Bエピトープペプチド(配列番号43、47、51、55及び59)に対する各々の力価に関する免疫原性評価からの結果を表5に示す。
【0139】
各IL-31ペプチド免疫原構築物について、組換えイヌIL-31に対する抗体価(Log
10EC
50)を表6及び
図2に示す。
【0140】
これらの注意深く設計されたイヌIL-31ペプチド免疫原構築物では高い免疫原性が認められ、1回の単回投与で3wpiの時に、配列番号3~7が含んでいるAA90~AA144(配列番号8)のIL-31領域に対する高力価抗体が引き出された。注意深く設計されたIL-31ペプチド免疫原構築物(配列番号43、47、51、55及び59)によって誘発された抗体によるイヌrIL-31に対する高い交差反応性が認められた。
【0141】
実施例3
生物学的アッセイに使用するためのイヌIL-31の製造、精製及び特性評価
a.発現構築物
イヌIL-31の配列はNCBIsゲノムリソース(ウェブサイト:ncbi.nlm.nih.gov)を用いて同定した。検出及び精製のためのC末端側の6-Hisタグを含有する完全長イヌIL-31ゲノムによって発現構築物を作出した(
図3のA及びBを参照のこと)。配列が確認されたプラスミドを使用してExpi293細胞にトランスフェクトし、発現したIL-31は培養培地中に分泌されることとなった。トランスフェクションから72時間後に培地を回収し、ニッケルコバルト樹脂を使用して組換えタンパク質の精製を行った。分泌形態のIL-31を含有する培地を樹脂に結合させた後、pH8.0、50mMのトリス緩衝液と500mMのNaClと20mMのイミダゾールとを含有する洗浄用緩衝液でカラムを3回、カラム容積の10倍以内で洗浄した。pH8.0、50mMのトリス緩衝液と500mMのNaClと250mMのイミダゾールとを含有する溶離用緩衝液で組換えIL-31をカラム容積の5倍で溶離させた。溶離画分をSDS-PAGE、及び抗His抗体をプローブとするウェスタンブロットによって分析した。
【0142】
b.結果
Hisタグ付きIL-31タンパク質発現のクーマシーブルー染色、及び12%ビストリスSDS PAGEで行った精製(
図3のC)。抗Hisタグ抗体をプローブとする、Cに示されるSDS-PAGEゲルのウェスタンブロット(
図3のD)。培地中に分泌されたこの21.1KDのタンパク質を、以下のアッセイでの使用、ならびに免疫原性及び交差反応性評価の基準タンパク質としての使用のために同定及び精製した。
【0143】
実施例4
細胞に基づくアッセイにおけるIL-31媒介pSTAT3シグナル伝達
a.アッセイ
IL-31ペプチド免疫原構築物によって引き出されたIL-31抗体を使用する試験管内でのIL-31誘導シグナル伝達機能阻害アッセイを
図4A及び
図4Bならびに
図5のA及びBに示す。
【0144】
b.IL-31媒介pSTAT3シグナル伝達
15%の加熱不活化ウシ胎仔血清と2mmol/LのGlutaMaxと1mmol/Lのピルビン酸ナトリウムと50mg/Lのゲンタマイシンと20ng/mLのイヌインターフェロン-γとを含有するMEM成長培地の中のDH-82細胞を96ウェル平底細胞培養プレートにウェル1つあたり1×10
5細胞の密度で播種して、5%のCO
2を補充した加湿空気の中で37℃で16時間経過させた。IL-31受容体発現を増加させるために、IL-31処理前に2時間、細胞を血清枯渇させた。前処理後、組換えイヌIL-31を種々の用量(0.0001~10ng/mL)で添加して5分経過させたか(
図5のA)または1μg/mLで添加して0、3、5、10及び15分経過させた(
図5のB)。播種後、細胞を20%の最終体積のCell Lysis Mix(5X)で溶解させ、300rpmで37℃で10分間振盪した。細胞溶解物50μlを使用してpSTAT3を評価した。ペルオキシダーゼ標識抗pSTAT3(y705)またはペルオキシダーゼ標識抗STAT3抗体50μlを検査ウェルに加えて37℃で1時間反応させた。その後、0.05%のTWEEN20を含有するPBSでウェルを5回洗浄し、もう15分間100μlのTMB基質と反応させた。2NのH
2SO
4で反応を停止させ、450nmでの吸光度を決定した。
【0145】
c.結果
図5のA及びBは、expi293細胞から産生されたイヌIL-31によって誘導されるイヌDH-82単球におけるpSTAT3シグナル伝達のグラフを示す。
図5のAは、イヌIL-31によって用量依存的にpSTAT3のリン酸化が誘導されたことを示し、アッセイ評価のためのリン酸化レベルを評価するために1μg/mLの最適濃度を選択した。
図5のBは、イヌIL-31によって時間依存的にpSTAT3が誘導されたことを示し、抗IL-31抗体の阻害力価を評価するために以下の実施例に記載の阻害アッセイのための時間点として5分を選択した。
【0146】
実施例5
細胞に基づくアッセイにおけるIL-31媒介PSTAT3シグナル伝達の阻害
a.IL-31媒介pSTAT3シグナル伝達
15%の加熱不活化ウシ胎仔血清と2mmol/LのGlutaMaxと1mmol/Lのピルビン酸ナトリウムと50mg/Lのゲンタマイシンと20ng/mLのイヌインターフェロン-γとを含有するMEM成長培地の中のDH-82細胞を96ウェル平底細胞培養プレートにウェル1つあたり1×105細胞の密度で播種して、5%のCO2を補充した加湿空気の中で37℃で16時間経過させた。IL-31受容体発現を増加させるために、IL-31処理前に2時間、細胞を血清枯渇させた。枯渇中に、モルモット免疫血清からのプロテインA樹脂で精製した段階希釈抗体試料100μlと、1μg/mLのイヌIL-31とをよく混合し、37℃で1時間、共インキュベートした。前処理後、組換えイヌIL-31と精製血清試料との混合物50μlを添加して5分経過させた。播種後、細胞を20%の最終体積のCell Lysis Mix(5X)で溶解させ、300rpmで37℃で10分間振盪した。細胞溶解物50μlを使用してpSTAT3を評価した。ペルオキシダーゼ標識抗pSTAT3(y705)またはペルオキシダーゼ標識抗STAT3抗体50μlを検査ウェルに加えて37℃で1時間反応させた。その後、0.05%のTWEEN20を含有するPBSでウェルを5回洗浄し、もう15分間100μlのTMB基質と反応させた。2NのH2SO4で反応を停止させ、450nmでの吸光度を決定した。
【0147】
b.結果
図6A及び
図6Bは、初回免疫後週数(wpi)12(
図6A)及び15wpi(
図6B)の時に示される、本開示のIL-31ペプチド免疫原構築物(配列番号43、47、51、55及び59)から得られる抗IL-31抗体によるイヌDH82単球におけるイヌIL-31誘導pSTAT3シグナル伝達の阻害を示すグラフである。
【0148】
図7は、初回免疫後週数(wpi)15の時の、IL-31ペプチド免疫原構築物p4751kb(配列番号43)及びp4752(配列番号47)から得られる抗IL-31抗体によるイヌDH82単球におけるイヌIL-31誘導pSTAT3シグナル伝達の阻害に関する追加の詳細を示すグラフを含む。
図7はさらに、組換えイヌIL-31タンパク質誘導pSTATシグナル伝達に対する阻害(IC
50)を報告する。
【0149】
実施例6
モルモットにおける免疫原性評価のためのイヌIL-31ペプチド免疫原構築物のさらなる改良
a.動物
合計18匹のモルモット(体重300~350g)を免疫付与のために使用した。表7に示すように、18匹のモルモットを1群あたり動物3匹の6群に分け、400μgのペプチド(配列番号63、68、71、76、80及び84)による初回免疫を行い、続いて初回免疫後週数(wpi)3、6、9及び12の時に追加免疫を4回行った。それらに対応するIL-31ペプチド免疫原構築物による抗IL-31抗体の力価のために0、3、6、9、12及び15wpiの時に血液試料を採取した。
【0150】
b.製剤
総じて、免疫付与のために使用した製剤は以下を含有していた:
1. 400μgのIL-31ペプチド免疫原構築物
2. 0.7:1のペプチド:CpG比でのCpG
3. 0.2%のTWEEN80
【0151】
c.ELISAによる血清抗IL-31抗体の力価測定
IL-31ペプチド免疫原構築物によって引き出される血清抗IL-31抗体の力価測定を以下のプロトコールに従って評価した:
【0152】
96ウェルプレートのウェルを、イヌIL-31組換えタンパク質100μl(50ng/ウェル)、またはそれぞれのIL-31 Bエピトープペプチド(0.2μg/100μL/ウェル)で被覆してpH9.6、50mMの炭酸-重炭酸緩衝液中1μg/mlとして37℃で1時間経過させた。
【0153】
rcIL-31またはそれぞれのIL-31 Bエピトープペプチド(配列番号9または12)で被覆されたウェルをPBS中1%のBSA200μlと共に37℃で1時間インキュベートして非特異的なタンパク質結合をブロッキングし、続いて0.05%のTWEEN20を含有するPBSで3回洗浄し、その後乾燥させた。免疫されたモルモットからの段階希釈血清試料100マイクロリットル(100μl)を各ウェルに加えて37℃で1時間反応させた。その後、0.05%のTWEEN20を含有するPBSでウェルを5回洗浄し、乾燥させた。1%のBSA及び0.05%のTWEEN20を含有するPBSで調製した最適に希釈されたペルオキシダーゼ標識ヤギ抗モルモットIgGの100μlを各ウェルに加え、37℃で1時間インキュベートした。インキュベート後、0.05%のTWEEN20を含有するPBSでウェルを6回洗浄し、もう15分間100μlのTMB基質と反応させた。2NのH2SO4で反応を停止させ、450nmでの吸光度を決定した。
【0154】
IL-31ペプチド系ワクチン製剤を与えたモルモットにおける抗体価の決定では、代表的な標的「IL-31」Bエピトープペプチドに対する初回スクリーニングのために1:100以上からの血清の10倍段階希釈を実施し、力価をLog10で表した。組換えイヌIL-31と交差反応性である血清のさらなる分析では、ELISAにおいて1:100から1:54,248,800まで血清の2倍段階希釈を実施し、力価をLog10EC50で表した。
【0155】
d.結果
免疫原性評価からの結果を表8に示す。
【0156】
各IL-31ペプチド免疫原構築物(配列番号63、68、71、76、80及び84)について、組換えIL-31に対する抗体価(LogEC
50)を表9及び
図8に示す。
【0157】
これらの注意深く設計されたイヌIL-31ペプチド免疫原構築物では高い免疫原性が認められ、1回の単回投与でさえ3wpiの時に高力価抗体が誘発された。注意深く設計されたIL-31ペプチド免疫原構築物(配列番号63、68、71、76、80及び84)によって誘発された抗体によるイヌrIL-31に対する高い交差反応性が認められた。
【0158】
実施例7
細胞に基づくアッセイにおけるモルモット免疫血清からの抗IL-31抗体によるIL-31媒介PSTAT3シグナル伝達の阻害
a.IL-31媒介pSTAT3シグナル伝達
15%の加熱不活化ウシ胎仔血清と2mmol/LのGlutaMaxと1mmol/Lのピルビン酸ナトリウムと50mg/Lのゲンタマイシンと20ng/mLのイヌインターフェロン-γとを含有するMEM成長培地の中のDH-82細胞を96ウェル平底細胞培養プレートにウェル1つあたり1×105細胞の密度で播種して、5%のCO2を補充した加湿空気の中で37℃で16時間経過させた。IL-31受容体発現を増加させるために、IL-31処理前に2時間、血清枯渇させた。その間に、6及び12WPIの免疫されたモルモットからのプロテインA樹脂で精製した段階希釈血清試料100μlと、1μg/mLのイヌIL-31とをよく混合し、37℃で1時間、共インキュベートした。前処理後、組換えイヌIL-31と精製血清試料との混合物50μlを添加して5分経過させた。播種後、細胞を20%の最終体積のCell Lysis Mix(5X)で溶解させ、300rpmで37℃で10分間振盪した。細胞溶解物50μlを使用してpSTAT3を評価した。ペルオキシダーゼ標識抗pSTAT3(y705)またはペルオキシダーゼ標識抗STAT3抗体50μlを検査ウェルに加えて37℃で1時間反応させた。その後、0.05%のTWEEN20を含有するPBSでウェルを5回洗浄し、もう15分間100μlのTMB基質と反応させた。2NのH2SO4で反応を停止させ、450nmでの吸光度を決定した。
【0159】
b.結果
図9のA及びBは、初回免疫後週数(wpi)6及び12の時に示される、本開示のIL-31ペプチド免疫原構築物(配列番号63、68、71、76、80及び84)によってモルモット免疫血清から得られる抗IL-31抗体の存在下でのイヌDH82単球でのイヌIL-31誘導pSTAT3シグナル伝達によるリン酸化%(
図9のA)及びSTAT3リン酸化の阻害(
図9のB)を示すグラフを含んでいる(
図9のA)。
【0160】
図10のA及びBは、初回免疫後週数(wpi)9及び12の時に示される、本開示のIL-31ペプチド免疫原構築物(配列番号63、68、71、84)によって得られたモルモット免疫血清から得られる抗IL-31抗体によるイヌDH82単球におけるイヌIL-31誘導pSTAT3シグナル伝達のリン酸化%(
図10のA)及びSTAT3リン酸化の阻害(
図10のB)を示すグラフを含んでいる。
【0161】
総じて、これらの注意深く設計されたIL-31ペプチド免疫原構築物によって引き出された抗IL-31反応性抗体について用量依存的に、イヌDH82単球におけるIL-31誘導pSTAT3シグナル伝達の顕著な阻害が認められた。
【0162】
実施例8
細胞に基づくアッセイにおけるIL-31媒介PSTAT3シグナル伝達の阻害
a.IL-31媒介pSTAT3シグナル伝達
15%の加熱不活化ウシ胎仔血清と2mmol/LのGlutaMaxと1mmol/Lのピルビン酸ナトリウムと50mg/Lのゲンタマイシンと20ng/mLのイヌインターフェロン-γとを含有するMEM成長培地の中のDH-82細胞を96ウェル平底細胞培養プレートにウェル1つあたり1×105細胞の密度で播種して、5%のCO2を補充した加湿空気の中で37℃で16時間経過させた。IL-31受容体発現を増加させるために、IL-31処理前に2時間、血清枯渇させた。その間に、6、9及び12WPIの免疫されたモルモットからのプロテインA樹脂で精製した段階希釈血清試料100μlと、1μg/mLのイヌIL-31とをよく混合して37℃で1時間、共インキュベートした。前処理後、組換えイヌIL-31と精製血清試料との混合物50μlを添加して5分経過させた。播種後、細胞を20%の最終体積のCell Lysis Mix(5X)で溶解させ、300rpmで37℃で10分間振盪した。細胞溶解物50マイクロリットル(50μl)を使用してpSTAT3を評価した。ペルオキシダーゼ標識抗pSTAT3(y705)またはペルオキシダーゼ標識抗STAT3抗体50マイクロリットル(50μl)を検査ウェルに加えて37℃で1時間反応させた。その後、0.05%のTWEEN20を含有するPBSでウェルを5回洗浄し、もう15分間100μlのTMB基質と反応させた。2NのH2SO4で反応を停止させ、450nmでの吸光度を決定した。
【0163】
b.結果
図11A及び
図11Bは、初回免疫後週数(wpi)6、9及び12の時の、IL-31ペプチド免疫原構築物p4854kb(配列番号63)及びp4859(配列番号84)によって得られたモルモット免疫血清から得られる抗IL-31抗体の存在下でのイヌDH82単球におけるイヌIL-31誘導pSTAT3シグナル伝達のリン酸化率(
図11A)及び阻害率(
図11B)を示す棒グラフを含む。
【0164】
図12は、初回免疫後週数(wpi)6、9及び12の時の、IL-31ペプチド免疫原構築物p4854kb(配列番号63)及びp4859(配列番号84)によって得られたモルモット免疫血清から得られる抗IL-31抗体によるイヌDH82単球におけるイヌIL-31誘導pSTAT3シグナル伝達のリン酸化率を示す曲線近似のグラフを示す。下のパネルは、組換えイヌIL-31タンパク質誘導pSTATシグナル伝達に対する対応する阻害(IC
50)を報告する。
【0165】
総じて、これらの注意深く設計されたIL-31ペプチド免疫原構築物によって引き出された抗IL-31反応性抗体について用量依存的に、イヌDH82単球におけるIL-31誘導pSTAT3シグナル伝達の顕著な阻害が認められた。
【0166】
実施例9
E.COLIにおける脂質化タンパク質の産生
脂質化を可能とする特定のE.coli株においてIL-31ペプチド免疫原構築物を発現させてリポタンパク質を作ることができ、アトピー性皮膚炎の治療のための免疫原として使用することができる。
【0167】
このプロセスは米国特許第8,426,163号に記載されており、参照によりその全体を本明細書に援用する。
【0168】
実施例10
概念実証治験における機能的免疫原性評価のための選択されたIL-31ペプチド免疫原構築物(配列番号84)によるイヌの免疫付与
a.動物
合計15匹のビーグル犬を免疫付与のために使用した。イヌを2つの群に分け、イヌ8匹の1群を油中水エマルション製剤で試験し、他方のイヌ7匹の群をサポニン混合ミョウバン製剤について試験した。配列番号84を有するIL-31ペプチド免疫原構築物100μgによる初回免疫に続いて、初回免疫後日数(DPI)21の時に別の追加免疫を同じ用量の同じ製剤で行った。0、21及び41DPIの時に血液試料を、抗IL-31抗体の力価の測定のため及び対応する免疫血清の中に存在する抗体の他の機能的特性の評価のために採取した。免疫付与プロトコールを
図13に示す。
【0169】
b.IL-31 Bエピトープペプチドまたは組換えイヌIL-31タンパク質に対する血清抗IL-31抗体のELISAによる力価測定
IL-31ペプチド免疫原構築物(配列番号84)によって引き出された血清抗IL-31抗体の力価測定を以下のプロトコールに従って評価した:
【0170】
96ウェルプレートのウェルを、イヌIL-31組換えタンパク質100μl(50ng/ウェル)または0.2μg/0.1mL/ウェルのIL-31 Bエピトープペプチド(配列番号84)で被覆してpH9.6、50mMの炭酸-重炭酸緩衝液中1μg/mlとして37℃で1時間経過させた。抗原被覆ウェルをPBS中1%のBSA200μlと共に37℃で1時間インキュベートして非特異的なタンパク質結合をブロッキングし、続いて0.05%のTWEEN20を含有するPBSで3回洗浄し、その後乾燥させた。免疫されたイヌからの段階希釈血清試料100マイクロリットル(100μl)を各ウェルに加えて37℃で1時間反応させた。その後、0.05%のTWEEN20を含有するPBSでウェルを5回洗浄し、乾燥させた。1%のBSA及び0.05%のTWEEN20を含有するPBSで調製した最適に希釈されたペルオキシダーゼ標識ウサギ抗イヌIgGまたはペルオキシダーゼ標識組換えプロテインA/G(Pierce(商標))100マイクロリットル(100μl)を各ウェルに加え、37℃で1時間インキュベートした。インキュベート後、0.05%のTWEEN20を含有するPBSでウェルを6回洗浄し、もう15分間100μlのTMB基質と反応させた。2NのH2SO4で反応を停止させ、450nmでの吸光度を決定した。IL-31ペプチド系ワクチン製剤を与えたビーグル犬における抗体価の決定では、ELISAにおいて1:100から1:54,248,800まで血清の2倍段階希釈を実施し、力価をLog10で表した。
【0171】
c.細胞に基づくアッセイにおけるIL-31媒介pSTAT3シグナル伝達の阻害
15%の加熱不活化ウシ胎仔血清と2mmol/LのGlutaMaxと1mmol/Lのピルビン酸ナトリウムと50μg/Lのゲンタマイシンと20ng/mLのイヌインターフェロン-γとを含有するMEM成長培地の中のDH-82細胞を96ウェル平底細胞培養プレートにウェル1つあたり1×105細胞の密度で播種して、5%のCO2を補充した加湿空気の中で37℃で16時間経過させた。IL-31受容体発現を増加させるために、IL-31処理前に2時間、血清枯渇させた。枯渇中に、免疫されたビーグルからのプロテインA樹脂で精製した段階希釈抗体試料100μlと、1μg/mLのイヌIL-31とをよく混合して37℃で1時間、共インキュベートした。前処理後、組換えイヌIL-31と精製血清試料との混合物50μlを添加して5分経過させた。播種後、STAT3リン酸化を市販のキット(InstantOne(商標)ELISAキット、Thermo)で決定した。細胞を20%の最終体積のCell Lysis Mix(5X)で溶解させ、300rpmで37℃で10分間振盪した。細胞溶解物50μlを使用してpSTAT3を評価し、調製したペルオキシダーゼ標識抗pSTAT3(y705)またはペルオキシダーゼ標識抗STAT3抗体50μlを検査ウェルに加えて37℃で1時間反応させた。その後、0.05%のTWEEN20を含有するPBSでウェルを5回洗浄し、もう15分間100μlのTMB基質と反応させた。2NのH2SO4で反応を停止させ、450nmでの吸光度を決定した。
【0172】
d.結果
標的IL-31 Bエピトープペプチド(配列番号84)に対するそれぞれの力価を有する種々の製剤による免疫原性評価からの結果を
図14に示す。各イヌについて21DPI及び41DPIの時の組換えイヌIL-31に対する抗体価(Log
10EC
50)を
図15及び
図16に示すが、第2追跡子としてはウサギ抗イヌIgG HRP(
図15)またはプロテインA/G HRP(
図16)を使用した。
【0173】
配列番号84を有する代表的なイヌIL-31ペプチド免疫原構築物によって高い免疫原性が認められ、単回投与によって21DPIの時にIL-31 Bエピトープペプチドに対する高力価抗体が引き出され(
図14)、これはイヌrIL-31に対する交差反応性が高かった(
図15及び
図16)。
【0174】
この製剤試験では、アジュバントサポニンの存在下でミョウバンが油中水エマルション製剤に比べてより良好な免疫増強を示したことが明らかである。どちらの追跡子も類似する結合プロファイル及び同程度の力価を示した。イヌにおけるこの免疫原性試験の別の重要な知見は、自己IL-31配列が自己タンパク質の大部分に本来備わっている免疫寛容を突破する/またはそれに打ち克つのを専売薬UBITh(登録商標)-Tヘルパーペプチドが支援することができたということである。
【0175】
総じて、ミョウバン/サポニン製剤を含んでいるどちらの製剤でも、この注意深く設計されたIL-31ペプチド免疫原構築物によって引き出された抗イヌIL-31反応性抗体について(500ugから250、100、75、50、12.5、6.25ugまで)用量依存的に、イヌDH82単球におけるIL-31誘導pSTAT3シグナル伝達の顕著な阻害が認められ、IL-31誘導pSTAT3シグナル伝達リン酸化の約40~60%の阻害を示し、エマルジョン製剤では約35~50%の阻害を示し、これと比較してモノクローナル抗IL-31(Cytopoint)は同程度に50~75%の阻害を示した。
図18のA及びBに示すように、イヌIL-31に対するモノクローナル抗体「Cytopoint」は、IC
50=3.21μg/mLのシグナル伝達阻害力価を有する。
【0176】
関連するモルモット免疫原性試験では、2回の免疫付与の後の6wpiの免疫血清からの抗体はそのようなpSTAT3シグナル伝達においてよりはるかに低い阻害%を有し、15wpiの免疫血清からの抗体はより高い用量依存的総シグナル伝達阻害%を示した(
図19のA~Cを参照のこと)。これらのデータは、2回より多い注射によるイヌの免疫付与がよりいっそう良好なシグナル伝達阻害をもたらすことを示唆している。かくして、そのようなイヌIL-31ペプチド免疫原構築物は、イヌにおいて有効なポリクローナル抗体を誘導してイヌにおけるアトピー性皮膚炎を引き起こし得るIL-31の刺激の影響を軽減/抑制/阻害するその可能性及び能力を実証した。
【0177】
実施例11
モルモットにおける機能的免疫原性評価のためのヒトIL-31ペプチド免疫原構築物の設計のさらなる改良
a.イヌIL-31類縁体の拡張としてのヒトIL-31関連ペプチド免疫原構築物の設計
IL-31は、IL-6サイトカインファミリーに属する4ヘリックスバンドルサイトカインである。IL-31は、活性化CD4+ TH2細胞によって、及び皮膚リンパ球関連抗原陽性皮膚帰巣性CD45RO+(メモリー)T細胞によって、優先的に産生される。IL-4は、ヒトTH2細胞からのIL-31タンパク質の遺伝子発現及び放出を誘導し、IL-33はIL-4誘導IL-31放出をさらに強める。
【0178】
IL-31受容体(IL-31R)は、IL-31受容体α鎖(IL-31Rα)とオンコスタチンM受容体β(OSMRβ)との異種二量体からなる。異種二量体型IL-31Rは、マクロファージ、樹状細胞、好塩基球、皮膚ニューロン、及び角化細胞を含めた上皮細胞において発現する。IL-31Rαは、皮膚感覚ニューロンの細胞体が位置している後根神経節において最も豊富に発現する。近年の研究は、IL-31がIL-31Rによって感覚神経に直接連絡している可能性があり、T細胞媒介炎症性掻痒感を生じさせるためのTh2細胞と感覚ニューロンとの間の極めて重要な神経免疫連結としての役割を果たしている可能性があることを示唆している。OSMRβは、IL-31Rのサブユニットであるだけでなく、gp130との相互作用もして、OSMに結合したII型受容体複合体を形成する。OSMRβは脈管系、心臓、肺、脂肪組織、皮膚、膀胱、乳腺組織、副腎及び前立腺に広範囲にわたって発現する。
【0179】
IL-31は主としてIL-31Rαに結合するが、IL-31R複合体中のOSMRβには結合しない。しかしながら、結合時にOSMRβはIL-31Rを高親和性受容体に転換し、IL-31結合を増強する。IL-31とIL-31Rα/OSMRβ受容体複合体との相互作用は、Jak/シグナル伝達兼転写活性化因子(STAT)、ホスホイノシチド3-キナーゼ(PI3K)/AKTシグナル伝達及びマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)経路の活性化を誘導する。
【0180】
IL-31またはIL-31/IL-31Rα複合体のX線構造データは未だ入手可能でない。しかしながら、部位特異的変異導入法は、ヒトIL-31の部位IIとIL-31Rαとの相互作用及び部位IIIとOSMRβとの相互作用を示唆している。特に、ヘリックスA中のE22及びヘリックスC中のE83/H87が部位IIを形成し、ヘリックスDのN末端にあるK111は部位IIIの必須部分である。I-TASSERによって生成されたヒトIL-31のAb initioモデリングは、上-上下-下のトポロジーを有するIL-31サイトカインファミリーの古典的な4ヘリックスバンドルフォールドを示した。IL-31Rα相互作用に肝要な3つの残基、E22、E83及びH87は、予測される部位IIを示して空間的に塊になっている。
【0181】
IL-31ペプチド免疫原構築物のヒトIL-31B細胞エピトープは、IL-31分子上のIL-31Rα結合領域を標的とするようにさらに設計された。溶媒に曝露されるE83及びH87の側鎖の立体配座を維持するために、ヘリックスCを近傍のヘリックスによって3つの異なる方法で拘束した:(1)ヘリックスC-ループ-ヘリックスD(配列番号13)、(2)ヘリックスB-ループ-ヘリックスC(配列番号95)、及び(3)ヘリックスB-C-D(配列番号93)。31~64アミノ酸残基のB細胞エピトープペプチドは、L75-S122、S62-I92またはA64-L127に由来していた。E83及びH87の側鎖は同一方向を向いており、p5095kb(配列番号101)内のヘリックスCエピトープをヘリックスBでヘリックス-ヘリックス相互作用及び人工ジスルフィド結合の導入によって拘束した。Bエピトープとして単なるヘリックスC(配列番号94)を有するペプチド構築物p5094kb(配列番号100)も試験した。
【0182】
b.抗体特異性分析のためのIL-31に基づくELISA試験
被覆用緩衝液(1.5g/LのNa2CO3、2.9g/LのNaHCO3、pH9.6)中の組換えヒトIL-31タンパク質(Sino Biological Inx.)または個々のヒトIL-31Bエピトープペプチド(配列番号13、94、95及び93)を、組換えヒトIL-31タンパク質については50ng/ウェルとして、または各ヒトIL-31 Bエピトープペプチドについては200ng/ウェルとしてマイクロタイタープレート上に固定し、4℃で一晩インキュベートした。プレートを200μL/ウェルの洗浄用緩衝液(0.05%のTWEEN-20を含むPBS)で3回洗浄した。被覆されたウェルを200μL/ウェルのアッセイ用希釈剤(PBS中0.5%のBSA、0.05%のTWEEN-20、0.01%のProClin300)で室温で1時間ブロッキングした。プレートを200μL/ウェルの洗浄用緩衝液で3回洗浄した。100μLの抗血清(1:100から1:4.19×108まで4倍段階希釈、合計12回希釈)または抗体希釈液(100mg/mLから0.0238ng/mLまで4倍段階希釈、合計12回希釈)を被覆ウェルに加えた。インキュベーションを室温で1時間行った。全てのウェルを吸引し、200μL/ウェルの洗浄用緩衝液で5回洗浄した。プレートをHRP複合ヤギ抗モルモットIgG(H+L)抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories)の1:10,000希釈液と共に1時間インキュベートした(100μL/ウェル)。その後、全てのウェルを200μL/ウェルの洗浄用緩衝液で5回洗浄した。最後に、ウェルを100μL/ウェルのNeA-Blue TMB基質(Clinical Science Products)で発色させ、100μL/ウェルの1MのH2SO4の添加によって反応を停止させた。吸光度をOD450でELISAマイクロプレートリーダー(Molecule Devices)で測定した。Log10力価またはLog10(EC50)として表した抗血清の固有力価を、Prismソフトウェア(GraphPad)において非線形回帰解析を用いることによって4パラメータ曲線に対する最大吸光度の50%を与えるlog表示での試料希釈度として決定した。精製したポリクローナルIgG抗体の反応性を、Prismソフトウェアを用いて非線形回帰解析を用いることによって4パラメータ曲線に対する半数効果濃度(EC50)として表した。
【0183】
c.IL-31ペプチド免疫原構築物及びその製剤によって引き出された抗体の機能的特性の動物における評価
免疫血清、または免疫するワクチンの中の精製抗IL-31ポリクローナル抗体を、それらが(1)IL-31とその受容体IL-31Rαとの相互作用を遮断する、(2)U87MG神経膠腫でのIL-31誘導STAT3リン酸化を抑制する、及び(3)IL-31RαをトランスフェクトされたHaCaT細胞株でのIL-20発現を阻害する能力についてさらに検査した。
【0184】
1.細胞
5%のCO2を含む加湿された37℃のインキュベータの中でU87MG細胞株を、10%の仔ウシ血清と1%のペニシリン/ストレプトマイシンとが補充されたEMEMの中に維持した。
【0185】
5%のCO2を含む加湿された37℃のインキュベータの中で、IL-31Rαを過剰発現させるHaCaTトランスフェクタントを、10%のFBSと1%のペニシリン/ストレプトマイシンと1mMのピルビン酸ナトリウムと200μg/mLのヒグロマイシンB(Gibco)とが補充されたDMEM培地(高グルコース、Gibco)の中に維持した。
【0186】
2.IL-31Rα鎖に対するIL-31の結合
先に種々のIL-31ペプチド免疫原構築物を免疫したモルモットのプールした免疫血清からの精製IgGポリクローナル抗体を、IL-31Rαに対するIL-31の結合を阻害するそれらの相対的能力についてELISAで検査した。96ウェルプレートのウェルを個々に、被覆用緩衝液(15mMのNa2CO3、35mMのNaHCO3、pH9.6)中の50ngの抗Hisモノクローナル抗体(GenScript)で被覆し、4℃で一晩インキュベートした。被覆したウェルを200μL/ウェルのアッセイ用希釈剤(PBS中1%のBSA、0.05%のTWEEN-20及び0.01%のProClin300)で室温で1時間ブロッキングした。プレートを200μL/ウェルの洗浄用緩衝液(0.05%のTWEEN-20及び0.01%のProClin300を含むPBS)で3回洗浄した。100ngの組換えHisタグ付きヒトIL-31Rαタンパク質(R&D systems)を抗His表面に室温で1時間固定した。洗浄後、10ng/mLのヒトIL-31(GenScript)と種々の濃度の精製モルモットIgGポリクローナル抗体との混合物100μLを室温で1時間、予備インキュベートし、その後、被覆ウェルに加えた。インキュベーションを室温で1時間行った。全てのウェルを吸引し、200μL/ウェルの洗浄用緩衝液で3回洗浄した。捕捉されたIL-31を100μL/ウェルの0.25μg/mLのビオチン標識ウサギ抗IL-31抗体(PeproTech Inc.)で室温で1時間検出した。その後、結合しているビオチン標識抗体を、ストレプトアビジンポリ-HRP(1:10,000希釈、Thermo Fisher Scientific)を使用して1時間検出した(100μL/ウェル)。全てのウェルを吸引し、200μL/ウェルの洗浄用緩衝液で3回洗浄した。最後に、ウェルを100μL/ウェルのOptEIA TMB基質(BD Biosciences)で発色させ、100μL/ウェルの1MのH2SO4の添加によって反応を停止させた。比色吸光度をVersaMax ELISAマイクロプレートリーダー(Molecular Devices)で測定し、Prism6ソフトウェア(GraphPad Software)で半数阻害濃度(IC50)を算出するための4パラメータロジスティック曲線近似を用いて反応性曲線を生成した。
【0187】
3.IL-31誘導STAT3リン酸化アッセイ
精製IgGがU87MG細胞におけるIL-31誘導STAT3リン酸化を阻害することができるか否かを調査するために、細胞を12ウェルプレートに播種し(2×105/ウェル)、低血清培地(EMEM中1%の仔ウシ血清)中で16時間枯渇させた。その後、総体積500μLの低血清培地の中でモルモットポリクローナル抗体の存在下で細胞を10ng/mLの終濃度のIL-31と共に同時に37℃、5%CO2で30分間インキュベートした。抗IL-31モノクローナル抗体MT313(Mabtech AB)も試験対照として含めた。リン酸化STAT3レベルをPathScan p-Stat3 ELISAキット(細胞シグナル伝達)で測定した。手短に述べると、1%のホスファターゼ阻害薬カクテル3(Sigma-Aldrich)が補充された30μLの細胞溶解用緩衝液(細胞シグナル伝達)中に細胞を懸濁させるとともに細胞残屑を12,000xgで4℃で10分間の遠心分離によって除去することによって細胞溶解物を調製した。透明な細胞溶解物のうちの10マイクログラム(10μ)を使用してリン酸化STAT3の含有量を販売者の説明書に従って測定した。比色吸光度をVersaMax ELISAマイクロプレートリーダー(Molecular Devices)によって測定した。
【0188】
4.IL-31誘導IL-20発現
HaCaTは、成人皮膚由来の自発的に形質転換される異数性不死化角化細胞株である。IL-31誘導IL-20発現の検査を容易にするために、ヒトIL-31Rαを過剰発現させる安定なHaCaTクローンを作製した。IL-31依存性IL-20発現は、本開示のIL-31ペプチド免疫原構築物によって引き出される抗IL-31抗体によって調節される可能性がある。アッセイは、4×105個の細胞と、10ng/mLの終濃度のヒト組換えIL-31と、種々の濃度の精製モルモットIgGポリクローナル抗体とをウェル1つあたり総体積1,000μLの培養培地の中で37℃、5%CO2で1時間インキュベートすることによって実施した。抗IL-31モノクローナル抗体MT313(Mabtech AB)も試験対照として含めた。RNAをPureLink RNAミニキット(Thermo Fisher Scientific Inc.)によって製造者の説明に従って抽出し、残存するゲノムDNAをSuperScript(商標)III/RNaseOUT酵素ミックス(Thermo Fisher Sceientific Inc.)によって除去した。合計1μgのRNAをSuperScript III First-Strand Synthesis SuperMixキット(Thermo Fisher Sceientific Inc.)によってcDNAに逆転写し戻し、得られたcDNAを、Applied Biosystems7500リアルタイムPCRシステム(Thermo Fisher Sceientific Inc.)を使用して定量的リアルタイムPCRによって分析した。リアルタイムPCR反応をPower SYBRGreen PCR Master Mixキット(Thermo Fisher Sceientific Inc.)で実施した。IL-20のためのQuantiTectプライマー対(Hs_IL20_1_SG)をQuiagenから購入し、HPRTのためのプライマー対(順方向:5’-TGACACTGGCAAAACAATGCA-3’(配列番号106)、逆方向:5’-GGTCCTTTTCACCAGCAAGCT-3’(配列番号107))を合成した。全ての測定は二重化して実施した。相対的定量は、比較サイクル閾値法を用いることで計算し、HPRTに対して正規化した。各抗体処理群の相対IL-20発現レベルを未処理群のそれに対して正規化した。
【0189】
d.結果
設計、スクリーニング、同定、機能特性の評価、及び代表的なヒトIL-31ペプチド免疫原構築物を組み込んだ他成分ワクチン製剤の最適化
【0190】
1.ヒトIL-31 B細胞エピトープペプチド配列の選択
IL-31のヘリックスCをB細胞エピトープペプチド設計のために選択した、というのも、2つの肝要な残基E83及びH87はこの領域においてIL-31Rαと相互作用することが分かっているからである。モルモットにおける400μg/1mLでの初回免疫及び100μg/0.25mLでの追加免疫(3、6及び9wpi)のために、UBITh1 Tヘルパーペプチド(配列番号27)と、短いリンカーεKとに連結されたヘリックスCに基づくペプチド構築物をISA51及びCpGと共に製剤化した。モルモットにおける免疫原性を検査するために、ELISAアッセイを1:100から1:4.19×10
8まで4倍段階希釈したモルモット免疫血清と共に用いた。ELISAプレートをウェル1つあたり50ngの組換えヒトIL-31タンパク質で被覆した。検査した血清のLogEC
50として表される力価をA450nmの4パラメータ非線形回帰解析によって算出した。ELISA結果は4つのペプチド免疫原構築物が対応するIL-31 Bエピトープペプチド(表10(配列番号87)、表11(配列番号100及び101;及び表13の群3(配列番号99)に対する高い免疫原性力価を誘導しただけでなく、ヒトIL-31タンパク質に対する中等度~高度の交差反応性を誘導したことを示した(
図20のA及びB)。
【0191】
2.ヒトIL-31ペプチド免疫原構築物の免疫原性の、IL-31とIL-31Rαとの相互作用を阻害するそれらの抗体に関する評価
モルモットにおいて生成したIL-31ペプチド免疫原構築物からの抗体が、IL-31とIL-31Rαとの相互作用を遮断すべくIL-31を中和することができるか否かを判定する試験を実施した。具体的には、4つの各々の候補IL-31ペプチド免疫原構築物(配列番号87、99、100及び101)によって免疫したモルモットの免疫血清からの精製モルモットIgGをELISAアッセイに採用したが、これに関して、抗His抗体で被覆された固相上にヒトIL-31Rαタンパク質を固定した。
図21に示すように、各々のIL-31ペプチド免疫原構築物で免疫したモルモットの免疫血清から精製した代表的な抗体は、競合的にIL-31とIL-31Rαとの相互作用を用量依存的に(10E-3~10E2μg/mL)阻害した。
【0192】
3.抗IL-31抗体によるIL-31誘導STAT3リン酸化の抑制
IL-31シグナル伝達経路は、最初に細胞膜上でのIL-31Rα/OSMRβの複合体形成、及びそれに続く下流での細胞質におけるタンパク質STAT3リン酸化に関与する。U87MG細胞株を使用して、IL-31ペプチド免疫原構築物で免疫したモルモットの免疫血清に由来する精製抗IL-31抗体の能力を、IL-31誘導STAT3リン酸化を抑制するそれらの能力に関して評価した。
【0193】
まず、培養細胞をIL-31(10ng/mL)及び種々の濃度の精製IgGで同時に処理した。抗IL-31モノクローナル抗体MT313を陽性対照として含めた。
図22にみられるように、MT313に加えて、代表的な免疫原(配列番号87及び配列番号101)によって引き出された抗IL-31 IgGは、STAT3リン酸化を用量依存的に低減することができた。
【0194】
4.IL-31誘導IL-20発現の抑制
IL-20は構造的に、IL-10、及び炎症への自身の関与を調節する角化細胞のオートクリン因子に関係する。IL-31は角化細胞の細胞株HaCaTにおいてIL-20発現を誘導することができる。IL-31ペプチド免疫原構築物によってモルモットにおいて引き出された抗IL-31抗体が、IL-31Rα過剰発現HaCaTトランスフェクタントにおけるIL-31依存性IL-20発現を抑制することができるか否かを調査するために、全ての細胞培養群を10ng/mLの濃度のIL-31で30分間、IL-20遺伝子転写の誘導のために処理した。候補IL-31ペプチド免疫原構築物(配列番号87及び配列番号101)によって引き出されたモルモットの免疫血清からの精製IgGの代表的調製物を検査群に種々の濃度で添加し、陽性対照としてMT313も含めた。抗体を添加せずIL-31のみの存在下での細胞培養物を陰性対照として用意した。
図23に示すように、配列番号87及び配列番号101を有する代表的候補ペプチド構築物によって引き出された精製IgG抗体で処理した群においてIL-20発現の抗体濃度依存的抑制が認められた。
【0195】
上記の生体外での機能試験は、ヘリックス-ヘリックス相互作用及び人工ジスルフィド結合の導入によってヘリックスBで束縛されたヘリックスCからなるIL-31ペプチド免疫原がIL-31-IL-31Rα相互作用の遮断及びIL-31誘導シグナル伝達カスケードの抑制を実証したことを示唆している。
【0196】
5.種々の他成分製剤の中の代表的ヒトIL-31ペプチド構築物(配列番号101)の機能的免疫原性の評価
合計27匹のモルモット(体重300~350g)を免疫付与のために使用した。表15に示すとおり、27匹のモルモットを、群1つあたり動物3匹の9つの群に分け、400μgのペプチドによる初回免疫ならびにそれに続く2回の初回免疫後週数(wpi)3及び6の時の追加免疫を行った。対応するIL-31 Bエピトープペプチド(配列番号95)による抗IL-31抗体の力価のために0、3、6、9、12及び15wpiの時に血液試料を採取した。9つの群は、表15に示すように、(PBSによる)プラセボ、CPG1、CpG3、ISA51VG、ADJUPHOS、ISA51VG+CpG1、ADJUPHOS+CpG1、ISA51VG+CpG3、及びADJUPHOS+CpG3であった。血清抗IL-31抗体の力価測定を、上記のようにIL-31 Bエピトープペプチド(配列番号95)を使用してELISAによって実施し、力価は表15に示すように(0、3、6、9、12及び15wpiでの)Log
10で表した。0、3、6及び9wpiでの免疫原性データを
図24の上パネルにプロットした。各製剤群についての詳細な平均力価を
図24の下パネルにLog
10で示した。
【0197】
この免疫原性試験の結果は、油中水エマルションとしてのISA51及びCpGを使用する製剤の高い力価が、アジュバントとしてADJUPHOSを使用するものよりも良い成績であったことを示す。したがって、デザイナーIL-31ペプチド免疫原構築物の免疫原性は最適な製剤化によってさらに増強された。
【0198】
図25に示すように、IL-31ペプチド免疫原構築物(配列番号101)に対するこれらの9wpiのモルモット免疫血清からの精製ポリクローナル抗体を様々な配合組成でIL-31とIL-31Rαとの結合相互作用のアッセイにおいてさらに検査した。
図25に示すように、各製剤について詳細なIC
50(μg/mL)値を算出した。またしても、これらの抗体のうちで最も強力な阻害剤はISA51/CpG1またはISA51/CpGであり、IC
50がそれぞれ0.2036及び0.1965μg/mLであった。
【0199】
さらに、IL-31ペプチド免疫原構築物(配列番号101)に対するこれらの9wpiのモルモット免疫血清からの精製ポリクローナル抗体を、これらの抗IL-31抗体によってIL-31誘導IL-20発現及びIL-31誘導STAT3リン酸化を抑制するそれらの能力について、様々な配合組成で生体外モードで検査した。
【0200】
図25及び
図26に示すとおり、代表的製剤中の代表的候補ペプチド免疫原構築物(配列番号101)によって引き出された精製抗体による処置群では抗体濃度に依存した抑制が認められた(群1~9)。またしても、油エマルションとしてのISA51+CPG1またはCpG3での配合組成は、
図25に示すとおりIL-20発現の最も強い抑制を生じ(1μg/mLのときの対照の0.3または0.4倍から、10及び100μg/mLで検査したときのゼロまで)、STAT3リン酸化についても同様であった(
図26)。
【0201】
実施例12
イヌ、マウス及びヒトIL-31ペプチド免疫原構築物の中での異なる種をまたいだ免疫原性の交差反応性のさらなる評価
a.抗体特異性分析のためのIL-31に基づくELISA検査
被覆用緩衝液(1.5g/LのNa2CO3、2.9g/LのNaHCO3、pH9.6)中の個々のイヌ、マウス及びヒトIL-31Bエピトープペプチド(配列番号12、93、96、97または98)を、各IL-31 Bエピトープペプチドについて200ng/ウェルとしてマイクロタイタープレート上に固定し、4℃で一晩インキュベートした。プレートを200μL/ウェルの洗浄用緩衝液(0.05%のTWEEN-20を含むPBS)で3回洗浄した。被覆されたウェルを室温で1時間、200μL/ウェルのアッセイ用希釈剤(PBS中0.5%のBSA、0.05%のTWEEN-20、0.01%のProClin300)でブロッキングした。プレートを200μL/ウェルの洗浄用緩衝液で3回洗浄した。抗体希釈剤中の抗血清(10倍段階希釈)100μLを被覆ウェルに加えた。インキュベーションを室温で1時間行った。全てのウェルを吸引し、200μL/ウェルの洗浄用緩衝液で5回洗浄した。プレートをHRP複合ヤギ抗モルモットIgG(H+L)抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories)の1:10,000希釈液と共に1時間インキュベートした(100μL/ウェル)。その後、全てのウェルを200μL/ウェルの洗浄用緩衝液で5回洗浄した。最後に、ウェルを100μL/ウェルのNeA-Blue TMB基質(Clinical Science Products)で発色させ、100μL/ウェルの1MのH2SO4の添加によって反応を停止させた。吸光度をOD450でELISAマイクロプレートリーダー(Molecule Devices)で測定した。Log10力価として表した抗血清の固有力価を決定した。
【0202】
b.結果
免疫原性評価試験からの結果を表13及び表14に示す。
【0203】
表13に示すとおり、モルモット免疫血清のなかではIL-31 Bエピトープペプチド(配列番号12及び93)との妥当な交差反応性がイヌ(配列番号83及び配列番号85)及びヒト種(配列番号99)のどちらからの対応ペプチド類縁体に対しても認められた。しかしながら、イヌ種からの対応ペプチド免疫原構築物類縁体(配列番号102及び配列番号103)と併せてマウスIL-31ペプチド免疫原構築物(配列番号104及び配列番号105)に対してモルモット免疫血清を差し向ける場合、それらと対応するIL-31 Bエピトープペプチド(イヌでは配列番号96、これに対してマウスでは配列番号97及び配列番号98)との結合の交差反応性に限りがあることが認められた。イヌIL-31ペプチド免疫原構築物(配列番号102及び103)と併せてそれらの対応マウスIL-31 Bエピトープペプチド類縁体(配列番号97及び配列番号98)に対してモルモット免疫血清を差し向ける場合、表14に示すように、交差反応性は認められなかった。したがって、イヌモデルをヒトへの適用のための概念実証試験のために使用することができる。
【0204】
実施例13
アジュバントを含むまたは含まない様々な配合組成での組換えイヌIL-31タンパク質及びUBITH1結合を含有するリポタンパク質のモルモットにおける免疫原性評価
組換え完全長イヌIL-31タンパク質(FL-イヌIL-31)、及び免疫原性増強のためのIL-31タンパク質のN末端側に配置されたUBITh(登録商標)1配列を含む組換え完全長イヌIL-31タンパク質(FL-イヌIL-31リポタンパク質)をどちらも相対免疫原性の比較のためのアジュバントを含まないものとADJUPHOSを含むものとの2種類の製剤として調製し、アジュバント不含製剤は50μg/0.5mL/用量/IMと25μg/0.5mL/用量/IMとの2つの高及び低投薬量で検査した一方、ADJUPHOSをアジュバント製剤として含むものは50μg/0.5mL/用量/IMの高投薬量でのみ検査し、プロトコールは表12に示す。
【0205】
a.抗体特異性分析のためのIL-31に基づくELISA検査
被覆用緩衝液(1.5g/LのNa2CO3、2.9g/LのNaHCO3、pH9.6)中の組換え完全長(FL)イヌIL-31タンパク質を、50ng/ウェルとしてマイクロタイタープレート上に固定し、4℃で一晩インキュベートした。プレートを200μL/ウェルの洗浄用緩衝液(0.05%のTWEEN-20を含むPBS)で3回洗浄した。被覆されたウェルを室温で1時間、200μL/ウェルのアッセイ用希釈剤(PBS中0.5%のBSA、0.05%のTWEEN-20、0.01%のProClin300)でブロッキングした。プレートを200μL/ウェルの洗浄用緩衝液で3回洗浄した。抗体希釈剤中の抗血清(10倍段階希釈)100μLを被覆ウェルに加えた。インキュベーションを室温で1時間行った。全てのウェルを吸引し、200μL/ウェルの洗浄用緩衝液で5回洗浄した。プレートをHRP複合ヤギ抗モルモットIgG(H+L)抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories)の1:10,000希釈液と共に1時間インキュベートした(100μL/ウェル)。その後、全てのウェルを200μL/ウェルの洗浄用緩衝液で5回洗浄した。最後に、ウェルを100μL/ウェルのNeA-Blue TMB基質(Clinical Science Products)で発色させ、100μL/ウェルの1MのH2SO4の添加によって反応を停止させた。吸光度をOD450でELISAマイクロプレートリーダー(Molecule Devices)で測定した。Log10力価として表した抗血清の固有力価を決定した。
【0206】
b.結果
上記2つの組換えタンパク質の免疫原性評価試験からの結果を表12に示す。
【0207】
イヌIL-31リポタンパク質(群1~3)及び通常のイヌIL-31タンパク質(群4~6)はどちらも、そのようなタンパク質の免疫原性がN末端側に結合したUBITh(登録商標)1によって増強される場合、アジュバントの非存在下(群1、2、4及び5)においてさえ免疫原性であることが分かった。全体的にIL-31リポタンパク質(群1~3)の免疫原性は、同じ製剤の並列比較で通常のIL-31非リポタンパク質(群4~6)よりも良好であることが分かり、それらのリポタンパク質群はたった1度の免疫付与で大いに免疫原性であることが分かった。通常のタンパク質で免疫した群(群4~6)は、さらなる追加免疫によって、それらの対応する免疫原性に追い付き始め、8wpiの免疫血清採血によって示されるように2回の追加免疫の後に等価な免疫原性に到達した。
【0208】
【0209】
【0210】
【0211】
【0212】
【0213】
【0214】
【0215】
【0216】
【0217】
【0218】
【0219】
【0220】
【0221】
【0222】
【0223】
【0224】
【配列表】