IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士機械製造株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-シェイプデータ共有システム 図1
  • 特許-シェイプデータ共有システム 図2
  • 特許-シェイプデータ共有システム 図3
  • 特許-シェイプデータ共有システム 図4
  • 特許-シェイプデータ共有システム 図5
  • 特許-シェイプデータ共有システム 図6
  • 特許-シェイプデータ共有システム 図7
  • 特許-シェイプデータ共有システム 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-23
(45)【発行日】2023-03-31
(54)【発明の名称】シェイプデータ共有システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20230324BHJP
【FI】
G06Q50/10
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020570667
(86)(22)【出願日】2019-02-04
(86)【国際出願番号】 JP2019003845
(87)【国際公開番号】W WO2020161764
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 秀一郎
(72)【発明者】
【氏名】大池 博史
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 幹也
【審査官】松田 岳士
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-016011(JP,A)
【文献】特開2014-116532(JP,A)
【文献】特開2003-234900(JP,A)
【文献】特開平06-043921(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品の形状に関連する情報を含みかつ前記部品の装着作業に使用された使用実績のあるシェイプデータであって、データ提供者が有する前記シェイプデータに、前記部品を特定するための部品特定情報、および前記装着作業を実施した部品装着機に関する機器情報を付加した登録データを提供するデータ提供部と、
前記データ提供部から提供された前記登録データをデータベース上で管理するデータ管理部と、
前記シェイプデータ、前記部品特定情報、および前記機器情報の少なくとも一部分を含む検索条件であって、データ利用者に設定された前記検索条件を用いて、前記データベース上で前記登録データを検索するデータ検索部と、
前記データ検索部の検索によって抽出された前記登録データを前記データ利用者に利用可能に供給して、前記シェイプデータを前記データ提供者と前記データ利用者との間で共有させるデータ共有化部と、を備え
前記データ提供部は、前記シェイプデータに含まれる情報のうち前記形状に関連せずかつ前記データ提供者が公開を希望しない情報を前記登録データから削除する、
シェイプデータ共有システム。
【請求項2】
前記データ提供部は、規定数以上の前記使用実績が有る前記部品の前記シェイプデータのみを対象とする、請求項1に記載のシェイプデータ共有システム。
【請求項3】
部品の形状に関連する情報を含みかつ前記部品の装着作業に使用された使用実績のあるシェイプデータであって、データ提供者が有する前記シェイプデータに、前記部品を特定するための部品特定情報、および前記装着作業を実施した部品装着機に関する機器情報を付加した登録データを提供するデータ提供部と、
前記データ提供部から提供された前記登録データをデータベース上で管理するデータ管理部と、
前記シェイプデータ、前記部品特定情報、および前記機器情報の少なくとも一部分を含む検索条件であって、データ利用者に設定された前記検索条件を用いて、前記データベース上で前記登録データを検索するデータ検索部と、
前記データ検索部の検索によって抽出された前記登録データを前記データ利用者に利用可能に供給して、前記シェイプデータを前記データ提供者と前記データ利用者との間で共有させるデータ共有化部と、を備え
前記データ提供部は、規定数以上の前記使用実績が有る前記部品の前記シェイプデータのみを対象とする、
シェイプデータ共有システム。
【請求項4】
前記データ提供部は、前記装着作業が実施されたときの作業信頼性に関する信頼性情報を前記シェイプデータに付加して前記登録データとする、請求項1~3のいずれか一項に記載のシェイプデータ共有システム。
【請求項5】
部品の形状に関連する情報を含みかつ前記部品の装着作業に使用された使用実績のあるシェイプデータであって、データ提供者が有する前記シェイプデータに、前記部品を特定するための部品特定情報、および前記装着作業を実施した部品装着機に関する機器情報を付加した登録データを提供するデータ提供部と、
前記データ提供部から提供された前記登録データをデータベース上で管理するデータ管理部と、
前記シェイプデータ、前記部品特定情報、および前記機器情報の少なくとも一部分を含む検索条件であって、データ利用者に設定された前記検索条件を用いて、前記データベース上で前記登録データを検索するデータ検索部と、
前記データ検索部の検索によって抽出された前記登録データを前記データ利用者に利用可能に供給して、前記シェイプデータを前記データ提供者と前記データ利用者との間で共有させるデータ共有化部と、を備え
前記データ提供部は、前記装着作業が実施されたときの作業信頼性に関する信頼性情報を前記シェイプデータに付加して前記登録データとし、
前記データ提供部は、前記信頼性情報が所定の登録基準を満たさない前記登録データを提供せず、または、前記データ管理部は、前記信頼性情報が所定の登録基準を満たさない前記登録データの提供を受け付けない、
シェイプデータ共有システム。
【請求項6】
前記データ提供部は、前回の前記装着作業の前記信頼性情報と比較して今回の前記装着作業の前記信頼性情報が改善された場合に、今回の前記装着作業の前記信頼性情報を付加した前記登録データを提供し、改善されなかった場合に、前記登録データを提供しない、請求項5に記載のシェイプデータ共有システム。
【請求項7】
部品の形状に関連する情報を含みかつ前記部品の装着作業に使用された使用実績のあるシェイプデータであって、データ提供者が有する前記シェイプデータに、前記部品を特定するための部品特定情報、および前記装着作業を実施した部品装着機に関する機器情報を付加した登録データを提供するデータ提供部と、
前記データ提供部から提供された前記登録データをデータベース上で管理するデータ管理部と、
前記シェイプデータ、前記部品特定情報、および前記機器情報の少なくとも一部分を含む検索条件であって、データ利用者に設定された前記検索条件を用いて、前記データベース上で前記登録データを検索するデータ検索部と、
前記データ検索部の検索によって抽出された前記登録データを前記データ利用者に利用可能に供給して、前記シェイプデータを前記データ提供者と前記データ利用者との間で共有させるデータ共有化部と、を備え
前記データ提供部は、前記装着作業が実施されたときの作業信頼性に関する信頼性情報を前記シェイプデータに付加して前記登録データとし、かつ、前回の前記装着作業の前記信頼性情報と比較して今回の前記装着作業の前記信頼性情報が改善された場合に、今回の前記装着作業の前記信頼性情報を付加した前記登録データを提供し、改善されなかった場合に、前記登録データを提供しない、
シェイプデータ共有システム。
【請求項8】
前記データ管理部は、前記部品特定情報が同一である前記登録データ、または、前記部品特定情報および前記機器情報が同一である前記登録データが規定数を超えて提供された場合に、前記信頼性情報に基づいて前記規定数を超えた分の前記登録データを前記データベースから削除する、請求項4~のいずれか一項に記載のシェイプデータ共有システム。
【請求項9】
部品の形状に関連する情報を含みかつ前記部品の装着作業に使用された使用実績のあるシェイプデータであって、データ提供者が有する前記シェイプデータに、前記部品を特定するための部品特定情報、および前記装着作業を実施した部品装着機に関する機器情報を付加した登録データを提供するデータ提供部と、
前記データ提供部から提供された前記登録データをデータベース上で管理するデータ管理部と、
前記シェイプデータ、前記部品特定情報、および前記機器情報の少なくとも一部分を含む検索条件であって、データ利用者に設定された前記検索条件を用いて、前記データベース上で前記登録データを検索するデータ検索部と、
前記データ検索部の検索によって抽出された前記登録データを前記データ利用者に利用可能に供給して、前記シェイプデータを前記データ提供者と前記データ利用者との間で共有させるデータ共有化部と、を備え
前記データ提供部は、前記装着作業が実施されたときの作業信頼性に関する信頼性情報を前記シェイプデータに付加して前記登録データとし、
前記データ管理部は、前記部品特定情報が同一である前記登録データ、または、前記部品特定情報および前記機器情報が同一である前記登録データが規定数を超えて提供された場合に、前記信頼性情報に基づいて前記規定数を超えた分の前記登録データを前記データベースから削除する、
シェイプデータ共有システム。
【請求項10】
前記信頼性情報は、部品装着具が部品供給装置から前記部品を適正に採取できた確率を示す採取成功率、および、前記部品装着具が前記装着作業に成功した確率を示す装着成功率の少なくとも一方を表す情報を含む、請求項4~のいずれか一項に記載のシェイプデータ共有システム。
【請求項11】
部品の形状に関連する情報を含みかつ前記部品の装着作業に使用された使用実績のあるシェイプデータであって、データ提供者が有する前記シェイプデータに、前記部品を特定するための部品特定情報、および前記装着作業を実施した部品装着機に関する機器情報を付加した登録データを提供するデータ提供部と、
前記データ提供部から提供された前記登録データをデータベース上で管理するデータ管理部と、
前記シェイプデータ、前記部品特定情報、および前記機器情報の少なくとも一部分を含む検索条件であって、データ利用者に設定された前記検索条件を用いて、前記データベース上で前記登録データを検索するデータ検索部と、
前記データ検索部の検索によって抽出された前記登録データを前記データ利用者に利用可能に供給して、前記シェイプデータを前記データ提供者と前記データ利用者との間で共有させるデータ共有化部と、を備え
前記データ提供部は、前記装着作業が実施されたときの作業信頼性に関する信頼性情報を前記シェイプデータに付加して前記登録データとし、
前記信頼性情報は、部品装着具が部品供給装置から前記部品を適正に採取できた確率を示す採取成功率、および、前記部品装着具が前記装着作業に成功した確率を示す装着成功率の少なくとも一方を表す情報を含む、
シェイプデータ共有システム。
【請求項12】
前記データ提供部は、前記シェイプデータを使用する前記装着作業の繰り返しが終了した時点ごと、前記シェイプデータの使用回数が所定回数だけ増加した時点ごと、および所定期間が経過した時点ごとのうち少なくとも一つの時点ごとに動作する、請求項1~11のいずれか一項に記載のシェイプデータ共有システム。
【請求項13】
前記部品特定情報は、前記部品の型式および製造者の少なくとも一方を表す情報を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のシェイプデータ共有システム。
【請求項14】
前記機器情報は、前記部品を供給する部品供給装置、前記装着作業において前記部品供給装置から前記部品を採取して保持する部品装着具、前記部品装着具を保持して移動する装着ヘッド、および、前記部品装着具に保持された前記部品を撮像するカメラ装置の少なくとも一つを表す情報を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のシェイプデータ共有システム。
【請求項15】
前記データベースは、前記データ提供者および前記データ利用者がアクセス可能なクラウドサーバに設けられる、請求項1~14のいずれか一項に記載のシェイプデータ共有システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、部品装着機の装着作業に用いられる部品のシェイプデータを共有化するシェイプデータ共有システム、およびシェイプデータ共有方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線が施された基板に対基板作業を実施して、基板製品を量産する技術が普及している。対基板作業を実施する対基板作業機の代表例として、部品の装着作業を実施する部品装着機がある。一般的に、部品装着機は、使用する部品の種類ごとに作成された部品データを使用して装着作業を進める。部品データには、部品の形状に関連する情報を含むシェイプデータが含まれる。この種のシェイプデータの管理に関する一技術例が、特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1には、部品情報(シェイプデータ)の提供者および利用者のコンピュータがホストコンピュータに接続された管理システムであって、部品装着機に用いられる部品ライブラリデータを管理する管理システムが開示されている。この管理システムは、提供者および利用者の登録を受け付ける手段と、部品情報を一般化して記憶した部品ライブラリ管理データベースと、このデータベースを検索して部品情報を利用者に公開する検索エンジンとを備える。そして、自工場での装着テストを終えた検証済みの部品情報が部品ライブラリ管理データベースに登録される。これによれば、部品を使用するメーカに部品情報を開放し、再利用を進めることで、これらのメーカが新たなサービスを提供できる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-323487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1では、基板製品を生産するメーカに検証済みのシェイプデータを開放している。しかしながら、検証済みというだけでは、実用的に十分な信頼性が得られるとは限らない。例えば、装着作業を実施する部品装着機の構造が相違し、あるいは装着作業に使用されるフィーダや吸着ノズルの種類が相違すると、装着作業の信頼性は変化する。このため、検証に用いられた特定の部品装着機において良好な装着作業が実施されたとしても、そのときのシェイプデータを他の部品装着機に適用できるとは限らない。したがって、使用実績のあるシェイプデータと、装着作業を実施した部品装着機に関する機器情報とを対応付けて共有化を図ることが好ましい。
【0006】
一方、各メーカが有するシェイプデータは、部品の用途の情報や社内管理のための情報を含んでいる場合が多い。換言すると、シェイプデータは、各メーカが公開を希望しない情報を含んでいる。これにより、シェイプデータの共有化が阻害され、メーカごとに個別にシェイプデータが作成される。したがって、シェイプデータの作成、検証、および修正などが非効率となる。さらには、装着作業の開始までに時間を要し、また、装着作業の開始後にもシェイプデータの調整が必要となる。
【0007】
本明細書では、信頼性の高いシェイプデータの共有化を可能にするシェイプデータ共有システム、およびシェイプデータ共有方法を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書は、部品の形状に関連する情報を含みかつ前記部品の装着作業に使用された使用実績のあるシェイプデータであって、データ提供者が有する前記シェイプデータに、前記部品を特定するための部品特定情報、および前記装着作業を実施した部品装着機に関する機器情報を付加した登録データを提供するデータ提供部と、前記データ提供部から提供された前記登録データをデータベース上で管理するデータ管理部と、前記シェイプデータ、前記部品特定情報、および前記機器情報の少なくとも一部分を含む検索条件であって、データ利用者に設定された前記検索条件を用いて、前記データベース上で前記登録データを検索するデータ検索部と、前記データ検索部の検索によって抽出された前記登録データを前記データ利用者に利用可能に供給して、前記シェイプデータを前記データ提供者と前記データ利用者との間で共有させるデータ共有化部と、を備えるシェイプデータ共有システムを開示する。
【0009】
また、本明細書は、部品の形状に関連する情報を含みかつ前記部品の装着作業に使用された使用実績のあるシェイプデータであって、データ提供者が有する前記シェイプデータに、前記部品を特定するための部品特定情報、および前記装着作業を実施した部品装着機に関する機器情報を付加した登録データを提供するデータ提供ステップと、前記データ提供ステップで提供された前記登録データをデータベース上で管理するデータ管理ステップと、
前記シェイプデータ、前記部品特定情報、および前記機器情報の少なくとも一部分を含む検索条件であって、データ利用者に設定された前記検索条件を用いて、前記データベース上で前記登録データを検索するデータ検索ステップと、前記データ検索ステップの検索によって抽出された前記登録データを前記データ利用者に利用可能に供給して、前記シェイプデータを前記データ提供者と前記データ利用者との間で共有させるデータ共有化ステップと、を備えるシェイプデータ共有方法を開示する。
【発明の効果】
【0010】
本明細書で開示するシェイプデータ共有システムやシェイプデータ共有方法において、データ提供者が有して使用実績があるシェイプデータに、部品特定情報および部品装着機に関する機器情報を付加した登録データが提供され、データベース上で管理される。そして、検索によりデータベースから抽出された登録データがデータ利用者に供給され、シェイプデータが共有される。したがって、使用実績のある信頼性の高いシェイプデータが共有化される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態のシェイプデータ共有システムが適用される部品装着機の構成例を模式的に示す平面図である。
図2】実施形態のシェイプデータ共有システムの構成を示すブロック図である。
図3】登録データのデータ構成を簡易に示した図である。
図4】実施形態のシェイプデータ共有システムにおける登録データの提供に関する動作フローの図である。
図5図4の動作フロー中の登録データの作成の詳細を説明する詳細フローの図である。
図6】実施形態のシェイプデータ共有システムにおける登録データの利用に関する動作フローの図である。
図7】登録データを検索するときの検索画面の一例の図である。
図8】登録データの検索結果を表示した画面の一例の図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.部品装着機1の構成例
まず、シェイプデータ74(図2参照)を使用する部品装着機1の構成例について、図1を参考にして説明する。部品装着機1は、部品を基板Kに装着する装着作業を実施する。図1の紙面左側から右側に向かう方向が基板Kを搬送するX軸方向、紙面下側(前側)から紙面上側(後側)に向かう方向がY軸方向となる。部品装着機1は、基板搬送装置2、複数のフィーダ3、部品移載装置4、カメラ装置5、および制御装置6などが基台10に組み付けられて構成される。図2に示されるように、シェイプデータ74は、管理コンピュータ7の記憶装置71に記憶されて管理され、部品装着機1からのアクセスが可能となっている。
【0013】
基板搬送装置2は、一対のガイドレール21、22、一対のコンベアベルト、および基板クランプ機構などで構成される。コンベアベルトは、基板Kを載置した状態でガイドレール21、22に沿って輪転することにより、基板Kを作業実施位置まで搬入する。基板クランプ機構は、作業実施位置の基板Kを押し上げてクランプし、位置決めする。部品の装着作業が終了すると、基板クランプ機構は基板Kを解放する。続いて、コンベアベルトは、基板Kを搬出する。
【0014】
複数のフィーダ3は、基台10上のパレット部材11に設けられた複数の溝形状のスロットに着脱可能に装備される。フィーダ3は、本体部31の前側にテープリール39が装填される。本体部31の後側寄りの上部に、部品を供給する所定の供給位置32が設定される。テープリール39には、多数のキャビティにそれぞれ部品を収納したキャリアテープが巻回されている。フィーダ3は、図略のテープ送り機構によりキャリアテープを間欠的に送り、部品を供給位置32にセットする。これにより、フィーダ3は、部品の供給動作を順次行う。
【0015】
部品移載装置4は、基板搬送装置2やフィーダ3よりも上方に配設される。部品移載装置4は、フィーダ3から部品を採取して基板Kに装着する。部品移載装置4は、ヘッド駆動機構40、移動台44、装着ヘッド45、吸着ノズル46、およびマークカメラ47などで構成される。ヘッド駆動機構40は、一対のY軸レール41、42、Y軸スライダ43、および図略の駆動モータを含んで構成される。Y軸レール41、42は、Y軸方向に延び、相互に離隔して平行配置される。X軸方向に長いY軸スライダ43は、両方のY軸レール41、42にまたがって装架され、Y軸方向に移動する。移動台44は、Y軸スライダ43に装架され、X軸方向に移動する。ヘッド駆動機構40は、Y軸スライダ43をY軸方向に駆動するとともに、Y軸スライダ43上の移動台44をX軸方向に駆動する。
【0016】
移動台44は、装着ヘッド45およびマークカメラ47を保持する。装着ヘッド45は、1本または複数本の吸着ノズル46を下側に保持するとともに、ヘッド駆動機構40に駆動されて水平二方向に移動する。吸着ノズル46は、図略の昇降駆動部に駆動されて昇降動作する。吸着ノズル46は、供給位置32の上方から下降し、負圧の供給により部品の吸着動作を行う。また、吸着ノズル46は、基板Kの上方に駆動され、正圧の供給により部品の装着動作を行う。装着ヘッド45や吸着ノズル46は、複数種類あり、自動または手動で交換される。なお、吸着ノズル46に代えて、部品を挟持するチャックが用いられてもよい。マークカメラ47は、位置決めされた基板Kに付設された位置マークを撮像して、基板Kの正確な作業実施位置を検出する。
【0017】
カメラ装置5は、基板搬送装置2とフィーダ3との間の基台10の上面に、上向きに設けられる。カメラ装置5は、移動台44がフィーダ3から基板Kに移動する途中で、吸着ノズル46が吸着している状態の部品を撮像する。取得された画像データは、画像処理され、画像処理結果として部品の吸着姿勢が取得される。画像処理結果は、吸着ノズル46の装着動作に反映される。
【0018】
制御装置6は、基台10に組み付けられており、その配設位置は特に限定されない。制御装置6は、CPUを有してソフトウェアで動作するコンピュータ装置により構成される。なお、制御装置6は、複数のCPUが機内に分散配置されて構成されてもよい。制御装置6は、管理コンピュータ7から受け取ったジョブデータ72にしたがい、部品の装着作業を制御する。ジョブデータ72は、生産する基板製品の種類ごとに異なる。
【0019】
2.シェイプデータ74
次に、実施形態のシェイプデータ共有システム9が共有化を図るシェイプデータ74について説明する。部品装着機1は、吸着装着サイクルを繰り返して装着作業を実施する。吸着装着サイクルとは、装着ヘッド45がフィーダ3の上方に移動して吸着ノズル46が部品を吸着し、装着ヘッド45がカメラ装置5の上方に移動してカメラ装置5が撮像を行い、装着ヘッド45が基板Kの上方に移動して吸着ノズル46が部品を基板Kに装着する、という一連の作業を言う。シェイプデータ74は、カメラ装置5によって取得された画像データが画像処理されるとき、および吸着ノズル46の装着動作時に参照される。
【0020】
シェイプデータ74は、部品の形状に関連する情報、例えば、部品の縦横高さのサイズ、サイズの許容誤差、リードの位置、外観色などの情報を含んでいる。シェイプデータは、カメラ装置5によって撮像されるときのシャッタスピード等の撮像条件や照明条件を含んでもよい。適正なシェイプデータ74が画像処理に用いられることにより、吸着ノズル46に吸着された部品の有無、種類の誤りなどが正しく判定され、部品の吸着姿勢が高い精度で取得される。さらに、吸着ノズル46の装着動作時にシェイプデータ74が参照されて、部品の吸着姿勢の誤差が補正される。
【0021】
なお、一種類の部品に対して、複数種類のシェイプデータ74が作成されることがある。例えば、電気的特性および外形形状が一致する同一種類の部品であっても、基板製品の種類ごとに異なるシェイプデータ74が作成されることがある。また例えば、複数の部品製造者から同一種類の部品が調達されている場合に、部品製造者ごとに異なるシェイプデータ74が作成されることがある。
【0022】
シェイプデータ74は、部品データ73の一部分となっている。部品データ73は、シェイプデータ74以外に、部品のハンドリング方法を記述したハンドリングデータや、部品の梱包形態を記述した梱包データなどで構成される。ハンドリングデータが参照されることにより、装着ヘッド45の移動速度や吸着ノズル46の昇降速度などが適正に制御される。また、梱包データ中の梱包数が参照されることにより、フィーダ3における部品切れが予告される。
【0023】
オペレータは、使用実績が無い新規の部品を使用するときに、シェイプデータ74および部品データ73を作成する必要がある。従来技術において、オペレータは、部品製造者から入手した仕様書(データシート)、適用される規格、当該の部品を実測した測定結果などに基づいて、部品の理想形状を志向したシェイプデータ74を作成する。この後、シェイプデータ74は、検証されて、実際の使用に提供される。
【0024】
しかしながら、新規に作成されたシェイプデータ74では、画像処理エラーの発生頻度が高くなって部品の廃棄率が高くなる場合がある。例えば、吸着ノズル46の吸着動作が正常に行われても、カメラ装置5の撮像条件に応じて画像データは変化するため、画像内の部品の形状とシェイプデータ74の理想形状との間に差異が生じて、画像処理エラーが生じる。この場合、オペレータは、シェイプデータ74の修正や調整を行う。すると、オペレータの手間がかかるとともに、基板製品の生産が中断してしまう。これらの問題点の対策として、実施形態のシェイプデータ共有システム9が用いられる。
【0025】
3.実施形態のシェイプデータ共有システム9の構成
図2に示されるように、1台以上の部品装着機1を管理する目的で管理コンピュータ7が設けられる。管理コンピュータ7は、基板製品の生産ラインを構成する部品装着機1以外の対基板作業機を併せて管理する。管理コンピュータ7には、記憶装置71が付属されている。管理コンピュータ7は、複数種類の基板製品のジョブデータ72、およびシェイプデータ74を含む部品データ73を記憶装置71に記憶して管理する。シェイプデータ共有システム9は、複数の管理コンピュータ7、およびクラウドサーバ8が組み合わせられて構成される。
【0026】
複数の管理コンピュータ7は、相違する複数の企業にそれぞれ設けられてもよく、同一企業の複数の工場にそれぞれ設けられてもよい。各企業ないしは各工場は、データ提供者およびデータ利用者のどちらにでもなり得る。各管理コンピュータ7は、クラウドサーバ8に通信接続される。接続方法として、公衆無線回線を利用したインターネット接続や、専用有線回線を使用した接続などが用いられる。
【0027】
クラウドサーバ8は、利用許諾契約が結ばれた利用者のアクセスを許容するコンピュータ装置である。クラウドサーバ8は、管理コンピュータ7に接続されるクラウド制御部81、および各種データを管理可能なデータベース82を含む。クラウドサーバ8は、他のコンピュータ装置、例えば、部品装着機1の製造者が保有するサーバに置き換えられてもよい。クラウドサーバ8が用いられることにより、コンピュータ装置のイニシャルコストが不要となり、かつランニングコストも低廉化される。
【0028】
シェイプデータ共有システム9は、各管理コンピュータ7に設けられたデータ提供部91およびデータ検索部93、ならびに、クラウド制御部81に設けられたデータ管理部92およびデータ共有化部94を含んで構成される。データ提供部91、データ検索部93、データ管理部92、およびデータ共有化部94は、ソフトウェアで実現される機能部である。四つの機能部は、システム内のどこに配置されてもよい。さらに、四つの機能部は、機能の一部が相互に重なり合ってもよく、または、機能の一部を補完しあうように構成されてもよい。
【0029】
データ提供部91は、シェイプデータ74に部品特定情報75および機器情報76を付加した登録データ83を提供する。図3に示されるように、登録データ83は、シェイプデータ74に部品特定情報75、機器情報76、および信頼性情報77が付加され、さらにデータ名79が付与されて構成される。シェイプデータ74は、部品の装着作業に使用された実績のあるデータであって、かつデータ提供者が公開を認めたデータに限定される。
【0030】
部品特定情報75は、部品の種類を特定するための情報であり、データ提供者以外の者に理解される必要がある。したがって、データ提供者が独自に設定した企業内呼称などは、部品特定情報75に該当しない。部品特定情報75として、部品の製造者名、製造者によって付与された型式、および規格上の呼称などを例示できる。さらに、部品の外形形状を撮像して取得した画像データが部品特定情報75とされてもよい。
【0031】
機器情報76は、装着作業を実施した部品装着機1に関する情報である。機器情報76は、例えば、部品装着機1の製造者名や型式、仕様、および性能などの情報、ならびに、部品装着機1を構成する装置の名称、型式、仕様、および性能などの情報である。部品装着機1を構成する装置には、部品供給装置としてのフィーダ3、部品装着具としての吸着ノズル46、装着ヘッド45、およびカメラ装置5などが含まれる。
【0032】
また、データ提供部91は、規定数以上の使用実績が有る部品のシェイプデータ74のみを対象とする。例えば、データ提供部91は、1000個以上の部品の装着作業に使用されたシェイプデータ74のみを提供する。これによれば、使用実績が少なくて確実性が十分でないシェイプデータ74は、提供されない。同様に、問題点を内包して短期間のうちに修正され、または使用中止になったシェイプデータ74は、提供されない。したがって、提供されるシェイプデータ74の品質が向上する。
【0033】
さらに、データ提供部91は、装着作業が実施されたときの作業信頼性に関する信頼性情報77をシェイプデータ74に付加して、登録データ83とする。信頼性情報77は、採取成功率および装着成功率の少なくとも一方を表す情報を含む。採取成功率は、吸着ノズル46が吸着動作を適正に実施できた確率を示すものである。装着成功率は、吸着ノズル46が装着動作に成功した確率を示すものである。採取成功率および装着成功率の基になる動作回数および成功回数のデータは、信頼性情報77に含まれても、含まれなくてもよい。
【0034】
データ提供部91は、信頼性情報77が所定の登録基準を満たさない登録データ83を提供しない。登録基準として、装着成功率99%を例示できる。つまり、データ提供部91は、装着成功率が99%未満の登録データ83を提供しない。これによれば、装着作業の信頼性を向上できる優良なシェイプデータ74が選択的に提供される。
【0035】
さらに、データ提供部91は、前回の装着作業と比較して今回の装着作業の信頼性情報77が改善された場合に、登録データ83を提供する。例えば、或る種類の部品の前回の装着作業の装着成功率A、今回の装着作業の装着成功率Bとする。データ提供部91は、A<Bである場合に、今回使用したシェイプデータ74と、装着成功率Bという信頼性情報77とを対応付けた登録データ83を提供する。また、データ提供部91は、A≧Bである場合に、登録データ83を提供しない。これによれば、シェイプデータ74の改善の経過が公開されるとともに、現時点で最も優良なシェイプデータ74が提供可能となるので、データ利用者にとって好ましい。
【0036】
さらに、データ提供部91は、シェイプデータ74に含まれる情報のうち形状に関連せずかつデータ提供者が公開を希望しない情報を登録データ83から削除する。公開を希望しない情報は、データ提供者の企業内での便宜を図るなどの目的で、シェイプデータ74に付与されたものである。公開を希望しない情報として、データ提供者の営業的な情報や、ノウハウに関する情報がある。
【0037】
例えば、部品が装着された基板製品の製品名や生産依頼者名は、営業的に公開されないことが好ましい。また、部品の管理に関する情報、具体的には部品の調達ルートや社内保管基準などの情報は、データ提供者のノウハウに関する情報であり、公開されないことが好ましい。部品の形状に関連しないこれらの情報が公開されなくても、データ利用者は、シェイプデータ74の形状に関連する部分を利用することができる。
【0038】
なお、シェイプデータ74のデータ名自体が公開を希望しない情報を含んでいる場合がある。例えば、シェイプデータ74のデータ名に、基板製品の型式や製品名の略号などが含まれている場合がある。この場合、データ提供部91は、シェイプデータ74のデータ名と異なる登録データ83のデータ名79を付与する。これにより、シェイプデータ74のデータ名の公開が回避される。
【0039】
また、シェイプデータ74のデータ名を公開してよい場合、データ提供部91は、シェイプデータ74のデータ名をそのまま登録データ83のデータ名79としてもよい。さらに、データ提供部91は、公開の可否に関係なく、分かりやすいデータ名79を新たに付与してもよい。分かりやすいデータ名79として、例えば、部品の種類の略号と通し番号が組み合わされて、コネクタ部品に「CN***」のデータ名79、抵抗部品に「R***」のデータ名79が用いられる(***は三桁の通し番号)。
【0040】
データ管理部92は、データ提供部91から提供された登録データ83をデータベース82上で管理する。詳述すると、データ管理部92は、複数の管理コンピュータ7のどのデータ提供部91から提供された登録データ83でも、原則的にはデータベース82に蓄積してゆく。ここで、複数のデータ提供者から提供される登録データ83は、部品特定情報75や機器情報76の様式が完全に一致しているとは限らない。そこで、データ管理部92は、複数の登録データ83を対比して、部品特定情報75や機器情報76の様式を整合させ、一元的な管理を行う。
【0041】
例えば、第1のデータ提供者は、部品の製造者名および型式からなる部品特定情報75を使用し、第2のデータ提供者は、部品の製造者名、電気特性値、および公称寸法からなる部品特定情報75を使用する場合が想定される。この場合、データ管理部92は、両者の部品特定情報75を対比して実質的に同一であるか否かを判定し、すなわち部品の種類の異同を判定する。そして、実質的に同一である場合に、データ管理部92は、両者を包含した部品の製造者名、型式、電気特性値、および公称寸法からなる部品特定情報75を一元的に使用する。
【0042】
さらに、データベース82の記憶容量に制約があるため、データ管理部92は、信頼性の低い過剰な登録データ83を削除する。具体的には、データ管理部92は、部品特定情報75が同一である登録データ83について、信頼性情報77が高い順番に規定数までの登録データ83を蓄積する。そして、部品特定情報75が同一である登録データ83が規定数を超えて提供された場合に、データ管理部92は、規定数を超えた分の信頼性情報77が低い登録データ83をデータベース82から削除する。
【0043】
つまり、一種類の部品についてむやみに多数の登録データ83を蓄積しても意味が無いので、データ管理部92は、信頼性が高くて模範となる登録データ83を規定数だけ蓄積する。これにより、データベース82の記憶容量が節約されるとともに、優良なシェイプデータ74が選択的に蓄積される。
【0044】
なお、データ管理部92は、部品特定情報75および機器情報76が同一である登録データ83が規定数を超えて提供された場合に、信頼性情報77に基づいて規定数を超えた分の登録データ83をデータベース82から削除してもよい。別の見方をすると、機器情報76が相違する別種の部品装着機1は、装着作業の性能自体が相違する。このため、データ提供者およびデータ利用者は、部品装着機1の機種ごとにシェイプデータ74を分けて考えてもよい。
【0045】
データ検索部93は、シェイプデータ74、部品特定情報75、および機器情報の76少なくとも一部分を含む検索条件であって、データ利用者に設定された検索条件を用いて、データベース82上で登録データ83を検索する。データ利用者となる企業または工場のオペレータは、管理コンピュータ7を用いて、新規の部品の形状に対応する検索条件や、新規の部品を特定する検索条件や、保有する部品装着機1に対応する検索条件を設定することができる。さらに、オペレータは、複数の検索条件の論理積や論理和を設定することができる。データ検索部93は、通信を介してデータベース82上で検索処理を実行し、検索条件に適合する登録データ83を抽出する。
【0046】
データ共有化部94は、データ検索部93の検索によって抽出された登録データ83をデータ利用者に利用可能に供給する。抽出された登録データ83は、クラウドサーバ8から管理コンピュータ7へとダウンロードされる。データ利用者は、ダウンロードされた登録データ83内のシェイプデータ74を使いやすく編集して、自己のシェイプデータ74とする。あるいは、データ利用者は、ダウンロードされたシェイプデータ74をそのまま自己のシェイプデータ74としてもよい。
【0047】
シェイプデータ74を編集する例として、部品サイズの許容誤差の表記方法がデータ提供者では絶対値表記とされ、データ利用者ではパーセント表記とされている場合がある。この場合、データ利用者は、絶対値表記の許容誤差をパーセント表記に換算する編集を行って、自己のシェイプデータ74とする。また例えば、部品の外観色の輝度が256段階で表示されたり、1024段階で表示されたりして統一されていない場合に、シェイプデータ74の編集が必要となる。さらに、シェイプデータ74のデータ名を付け替えることも、編集に相当する。データ共有化部94により、シェイプデータ74は、データ提供者とデータ利用者との間で共有される。四つの機能部の各機能については、次の動作フローの中でも説明する。
【0048】
4.実施形態のシェイプデータ共有システム9の動作
次に、シェイプデータ共有システム9の動作について説明する。図4に示される登録データの提供に関する動作フローのうち、ステップS1からステップS3までは部品装着機1の通常時の稼働に関するステップであり、オペレータの操作を伴う。ステップS4以降は、シェイプデータ共有システム9の動作に関するステップである。
【0049】
ステップS1で、オペレータは、まず生産予定の基板製品の情報を取得して、新規の部品の有無を調査する。新規の部品が無い場合、動作フローの実行は、ステップS2にスキップされる。新規の部品が有る場合、オペレータは、当該の部品のシェイプデータ74および部品データ73を作成する。作成方法は、前述した従来技術の方法、および後述する実施形態の方法のどちらが適用されてもよい。
【0050】
次のステップS2で、オペレータは、生産予定の基板製品のジョブデータ72を作成する。当該の基板製品の生産実績が有る場合、ジョブデータ72は既に作成されている。この場合、オペレータは、必要に応じてジョブデータ72を修正するだけでよい。ステップS2の終了により、装着作業の準備が整う。次のステップS3で、部品装着機1は、装着作業を繰り返して実施し、複数の基板製品を生産する。
【0051】
複数回の装着作業が終了すると、シェイプデータ共有システム9が起動する。つまり、シェイプデータ共有システム9のデータ提供部91は、シェイプデータ74を使用する装着作業の繰り返しが終了した時点ごとに動作する。これによれば、装着作業の区切りことに最新の信頼性情報77が取得され、提供条件を満たすか否かの判定が行われる。なお、これに限定されず、データ提供部91は、シェイプデータ74の使用回数が所定回数だけ増加した時点ごとに動作してもよい。あるいは、データ提供部91は、所定期間が経過した時点ごとに動作してもよい。
【0052】
シェイプデータ共有システム9は、装着された部品の種類ごとにステップS4からステップS10までを繰り返す。詳述すると、ステップS5で、データ提供部91は、第1の種類の部品が提供条件を満たすか否か判定する。提供条件は、前述した3条件であり、次に再掲されている。
1)規定数以上の使用実績の条件
2)信頼性情報77が所定の登録基準を満たす条件
3)今回の装着作業の信頼性情報77が改善された条件
【0053】
提供条件が満たされた場合のステップS6で、データ提供部91は、登録データ83を作成する。ステップS6の詳細は、図5の詳細フローに示されている。図5のステップS21で、データ提供部91は、シェイプデータ74に部品特定情報75および機器情報76を付加する。次のステップS22で、データ提供部91は、シェイプデータ74に信頼性情報77を付加する。次のステップS23で、データ提供部91は、公開を希望しない情報を削除し、データ名79を付与して登録データ83を完成させる。この後、動作フローの実行は、図4のステップS7に進められる。ステップS7で、データ提供部91は、通信を介して登録データ83をデータ管理部92に送信する。
【0054】
次のステップS8で、データ管理部92は、提供された登録データ83が登録条件を満たすか否か判定する。登録条件は、前述した過剰な登録データ83に該当しないことである。登録条件が満たされた場合のステップS9で、データ管理部92は、登録データ83をデータベース82に登録する。
【0055】
ステップS9の終了後、ステップS8で登録条件が満たされていない場合、およびステップS5で提供条件が満たされていない場合、第1の種類の部品に対する動作は終了する。この後、動作フローの実行はステップS5に戻される。2回目のステップS5で、データ提供部91は、第2の種類の部品を対象にして動作する。以降は、第1の種類の部品のときと同様の動作が繰り返される。
【0056】
次に、図6に示される登録データの利用に関する動作フローは、データ利用者となる企業または工場で新規の部品を使用する際、使用に先行して実行される。この動作フローは、オペレータの入力操作による設定を伴う。ステップS31で、データ検索部93は、管理コンピュータ7の表示装置に検索画面D1を表示する。図7に例示される検索画面D1では、検索条件を設定する5項目の検索項目欄が設けられている。具体的な検索項目欄は、部品の型式の欄、装着成功率の欄、部品の縦方向サイズXの最小値および最大値の欄、部品の横方向サイズYの最小値および最大値の欄、ならびに、部品のリード数の欄である。
【0057】
次のステップS32で、オペレータは、各検索項目欄に検索条件を設定する。図7の例で、オペレータは、新規の部品の縦方向サイズXおよび横方向サイズYの公称値が600μmおよび300μmであることに着目し、50μmのマージンを考慮して設定を行っている。これにより、縦方向サイズXの最小値550μmおよび最大値650μm、横方向サイズYの最小値250μmおよび最大値350μmが設定される。また、オペレータはその他の検索項目欄にワイルドカード「*」を設定している。ワイルドカード「*」は、その検索項目欄の検索条件に制約を設けないことを意味する。なお、設定が省略された検索項目欄は、ワイルドカード「*」が設定されたと見做される。
【0058】
オペレータは、設定を終了した後に、検索画面D1の右下の「検索」スイッチをクリック操作する。これにより、次のステップS33で、データ検索部93は、設定された検索条件を用いて、データベース82上で登録データ83を検索する。次のステップS34で、データ検索部93は、管理コンピュータ7の表示装置に検索結果の画面D2を表示する。図8に例示される画面D2では、検索によって抽出された3個の登録データ83の一部の内容が表示されている。
【0059】
すなわち、画面D2の左側から右側へと順番に、抽出された登録データ83の番号、装着成功率(信頼性情報77)、縦方向サイズXおよび横方向サイズY(シェイプデータ74)、部品の型式(部品特定情報75)、およびリード数(シェイプデータ74)が表示されている。また、画面D2の上側から下側へと装着成功率の高い順番に、番号1~3の3個の登録データ83が並んで表示されている。
【0060】
例えば、番号1の登録データ83の装着成功率は99.99%、縦方向サイズXは601μm、横方向サイズYは301μm、部品の型式は「 ABC_0603」、リード数は「-」、と表示されている。なお、リード数の「-」は、リードを持たないチップ部品であることを示している。
【0061】
画面D2を確認したオペレータは、画面D2の下部の「選択」の設定欄に番号1~3のいずれかを設定する。これにより、次のステップS35で、データ共有化部94は、設定された番号の登録データ83を管理コンピュータ7にダウンロードして、データ利用者に供給する。なお、データ共有化部94は、抽出された3個の登録データ83の全部をデータ利用者に供給してもよい。供給された登録データ83は、画面D2に表示されていない詳細なシェイプデータ74の内容を含む。
【0062】
次のステップS36で、データ利用者は、供給された登録データ83内のシェイプデータ74を使いやすく編集して、自己のシェイプデータ74とする。あるいは、データ利用者は、シェイプデータ74をそのまま自己のシェイプデータ74とする。図6の動作フローは、実施形態のシェイプデータ74の作成方法を示しており、図4のステップS1に適用される。
【0063】
実施形態のシェイプデータ共有システム9において、データ提供者が有して使用実績があるシェイプデータ74に、部品特定情報75および部品装着機1に関する機器情報76を付加した登録データ83が提供され、データベース82上で管理される。そして、検索によりデータベース82から抽出された登録データ83がデータ利用者に供給され、シェイプデータ74が共有される。したがって、使用実績がある信頼性の高いシェイプデータ74が共有化される。
【0064】
これにより、データ利用者の側でシェイプデータ74の作成や検証、修正の手間が簡素化され、省力化が達成される。また、シェイプデータ74の品質が向上するので、部品の廃棄率や生産中断などの問題点が軽減される。さらに、複数の企業や工場がデータ提供者およびデータ利用者の役割を相互に演じることにより、互恵関係が築かれる。したがって、シェイプデータ共有システム9は、基板製品を生産する業界全体の発展に貢献することができる。
【0065】
5.実施形態のその他の応用および変形
なお、実施形態のシェイプデータ共有システム9は、実施形態のシェイプデータ共有方法を実施している。また、図4に示された動作フローでは、部品の種類ごとに登録データ83の作成、送信、および登録が順番に行なわれているが、複数種類の部品の登録データ83が作成された後に、まとめて送信および登録が行われるようにしてもよい。さらに、データ提供部91は、信頼性情報77が所定の登録基準を満たさない登録データ83を提供しないが、別法もある。別法において、データ提供部91は、登録基準を満たすか否かに関係なく登録データ83を送信し、データ管理部92は、登録基準を満たさない登録データ83の提供を受け付けない。
【0066】
また、図7の検索画面D1は一例であり、検索画面D1と相違する検索項目、例えば、機器情報76に関する検索項目や、部品特定情報75としての部品の画像データなどによる検索が行われてもよい。加えて、検索条件の設定方法として、データ検索部93が検索条件の複数の選択肢を表示し、オペレータがいずれかを選択設定する方法を採用することができる。さらに、図8の検索結果の画面D2は一例であり、表示項目が変更され、あるいは表示様式が変形されてもよい。
【0067】
また、規定数以上の使用実績が有ること、信頼性情報77が登録基準を満たすこと、および部品特定情報75が同一である登録データ83は規定数以下であること、という3種類の制限条件は必須でない。つまり、これらの制限条件の一部または全部が設定されなくてもよい。また、データ提供者およびデータ利用者が同一企業や同一の企業グループに所属する閉じたシェイプデータ共有システム9では、ステップS23が省略されてもよい。その他にも、実施形態は、様々な応用や変形が可能である。
【符号の説明】
【0068】
1:部品装着機 2:基板搬送装置 3:フィーダ 4:部品移載装置 45:装着ヘッド 46:吸着ノズル 5:カメラ装置 6:制御装置 7:管理コンピュータ 72:ジョブデータ 73:部品データ 74:シェイプデータ 75:部品特定情報 76:機器情報 77:信頼性情報 79:データ名 8:クラウドサーバ 81:クラウド制御部 82:データベース 83:登録データ 91:データ提供部 92:データ管理部 93:データ検索部 94:データ共有化部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8