IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許-電子機器 図1
  • 特許-電子機器 図2
  • 特許-電子機器 図3
  • 特許-電子機器 図4
  • 特許-電子機器 図5
  • 特許-電子機器 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-23
(45)【発行日】2023-03-31
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
   G06F 1/20 20060101AFI20230324BHJP
   G06F 1/16 20060101ALI20230324BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20230324BHJP
【FI】
G06F1/20 C
G06F1/20 B
G06F1/16 312E
H05K7/20 G
H05K7/20 H
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021149411
(22)【出願日】2021-09-14
【審査請求日】2021-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北村 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】真下 峻典
(72)【発明者】
【氏名】尾上 祐介
【審査官】征矢 崇
(56)【参考文献】
【文献】特許第6846547(JP,B1)
【文献】特開2011-238063(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F1/16;1/20
H05K7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラムシェル型の電子機器であって、
底板と、前記底板の縁部から起立するように設けられた立壁とを有し、内部に発熱体を搭載した第1筐体と、
前記第1筐体に対してヒンジを用いて相対的に回動可能に連結され、ディスプレイを搭載した第2筐体と、
前記第1筐体の上面側に設けられたキーボード装置と、
前記第1筐体内で前記底板の上側、且つ前記キーボード装置の下側となる位置に設けられると共に、下面に第1吸気口が形成され、上面に第2吸気口が形成され、第1側面に排気口が形成され、前記第1側面と隣り合う第2側面が前記立壁と対向するファン装置と、
前記底板に形成されて前記第1吸気口と対向し、前記第1筐体の下部から前記第1吸気口へと空気を通過させる第1開口部と、
前記キーボード装置を貫通して前記第2吸気口と対向し、前記キーボード装置の上部から前記第2吸気口へと空気を通過させる第2開口部と、
前記立壁に形成されて前記ファン装置の前記第2側面と対向し、前記第1筐体の側部から前記第2吸気口へと空気を通過させる第3開口部と、
を備え
さらに、前記ファン装置の上面と、前記キーボード装置の下面又は該下面の下方に設置された部材との間に介在する止水材を備え、
前記止水材は、前記第2吸気口を囲むように設けられると共に、前記第3開口部と対向する部分に切欠部を有し、
前記第3開口部と前記第2吸気口とは、前記切欠部を通して連通しており、
さらに、前記ファン装置の前記第2側面と前記立壁の内面との間に介在するシール材を備え、
前記第3開口部から前記切欠部を通して前記第2吸気口まで連通する空気経路は、前記シール材及び前記止水材によってダクト状に構成されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項に記載の電子機器であって、
前記シール材は、上下方向に延び、前記切欠部を跨ぐように設けられた一対の縦材を有する
ことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項に記載の電子機器であって、
前記シール材は、さらに、前記一対の縦材の下部同士を繋ぐように設けられ、前記縦材と直交する方向に延びた横材を有する
ことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファン装置を備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、ノート型PCのような電子機器において、キーボード装置を上下に貫通する開口部と、筐体の底板に設けた開口部とを備え、これら上下の開口部を通して筐体の上下から外気を吸気する構成を提案している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6846547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような電子機器は、ディスプレイ筐体を閉じて外部ディスプレイを利用した使用モードで用いられる場合がある。このような使用モードは、リッドクローズモードやクラムシェルモードと呼ばれる。ところが、リッドクローズモードでは、キーボード装置がディスプレイ筐体で覆われるため、キーボード装置の開口部からの吸気ができない。その結果、電子機器は、筐体の高温化やパフォーマンス低下等の問題を生じる懸念がある。
【0005】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、筐体の高温化やパフォーマンス低下等を抑制することができる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係る電子機器は、クラムシェル型の電子機器であって、底板と、前記底板の縁部から起立するように設けられた立壁とを有し、内部に発熱体を搭載した第1筐体と、前記第1筐体に対してヒンジを用いて相対的に回動可能に連結され、ディスプレイを搭載した第2筐体と、前記第1筐体の上面側に設けられたキーボード装置と、前記第1筐体内で前記底板の上側、且つ前記キーボード装置の下側となる位置に設けられると共に、下面に第1吸気口が形成され、上面に第2吸気口が形成され、第1側面に排気口が形成され、前記第1側面と隣り合う第2側面が前記立壁と対向するファン装置と、前記底板に形成されて前記第1吸気口と対向し、前記第1筐体の下部から前記第1吸気口へと空気を通過させる第1開口部と、前記キーボード装置を貫通して前記第2吸気口と対向し、前記キーボード装置の上部から前記第2吸気口へと空気を通過させる第2開口部と、前記立壁に形成されて前記ファン装置の前記第2側面と対向し、前記第1筐体の側部から前記第2吸気口へと空気を通過させる第3開口部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、筐体の高温化やパフォーマンス低下等を抑制する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態に係る電子機器を上から見下ろした模式的な平面図である。
図2図2は、第1筐体の内部構造を模式的に示す平面図である。
図3図3は、キーボード装置を取り外した第1筐体を斜め上方から見た斜視図である。
図4図4は、ファン装置及び冷却フィンの斜視図である。
図5図5は、第1筐体の側面におけるファン装置と隣接する部分を拡大した側面図である。
図6図6は、図5中のVI-VI線に沿う模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る電子機器について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
図1は、一実施形態に係る電子機器10を上から見下ろした模式的な平面図である。図1に示すように、電子機器10は、第1筐体12と第2筐体14とをヒンジ16で相対的に回動可能に連結したクラムシェル型のノート型PCであり、例えばモバイルワークステーションと呼ばれるものである。
【0011】
第2筐体14は、薄い扁平な箱体である。第2筐体14には、ディスプレイ18が搭載されている。ディスプレイ18は、例えば有機ELや液晶で構成される。
【0012】
以下、第1筐体12及びこれに搭載された各要素について、図1に示すキーボード装置20を操作する姿勢を基準として、手前側を前、奥側を後、幅方向を左右、高さ方向(第1筐体12の厚み方向)を上下、と呼んで説明する。
【0013】
第1筐体12は、薄い扁平な箱体である。第1筐体12は、上面12aを形成するカバー部材21と、下面12b及び四周の側面12c~12fを形成するカバー部材22とを有する。
【0014】
下側のカバー部材22は、第1筐体12の下面12bを形成する底板22aと、底板22aの四周縁部から起立して側面12c~12fを形成する4枚の立壁22b~22eとで構成されている。これによりカバー部材22は、上面が開口した略バスタブ形状を有する。上側のカバー部材21は、略平板形状を有し、カバー部材22の上面開口を閉じる蓋板となる。カバー部材21,22は、厚み方向に重ね合わされて互いに着脱可能に連結される。カバー部材21がバスタブ形状を有し、カバー部材22が平板形状を有してもよい。この場合、立壁22b~22eは上側のカバー部材21に設けるとよい。
【0015】
第1筐体12の上面12aには、キーボード装置20及びタッチパッド24が設けられている。キーボード装置20は、上面12aの大部分を覆っている。第1筐体12は、後端部がヒンジ16を用いて第2筐体14と連結されている。
【0016】
図2は、第1筐体12の内部構造を模式的に示す平面図であり、第1筐体12をキーボード装置20の少し下で切断した模式的な平面断面図である。図3は、キーボード装置20を取り外した第1筐体12を斜め上方から見た斜視図である。
【0017】
図2に示すように、第1筐体12の内部には、冷却モジュール26と、マザーボード28と、サブボード29と、バッテリ装置33とが設けられている。第1筐体12の内部には、さらに各種の電子部品や機械部品等が設けられる。
【0018】
マザーボード28は、電子機器10のメインボードである。マザーボード28は、CPU(Central Processing Unit)30の他、通信モジュール、メモリ、接続端子等の各種電子部品が実装されたプリント基板である。マザーボード28は、キーボード装置20の下に配置され、キーボード装置20の裏面やカバー部材21の内面にねじ止めされている。マザーボード28は、上面がカバー部材21に対する取付面となり、下面がCPU30等の実装面となる。CPU30は、電子機器10の主たる制御や処理に関する演算を行う処理装置である。
【0019】
サブボード29は、マザーボード28よりも小さな外形を有する拡張カードである。サブボード29は、GPU(Graphics Processing Unit)31の他、パワーコンポーネント等の各種電子部品が実装されたプリント基板である。サブボード29は、マザーボード28の実装面に積層され、マザーボード28とコネクタ接続されている。サブボード25は、上面がマザーボード28の実装面に対する取付面となり、下面がGPU31等の実装面となる。GPU31は、3Dグラフィックス等の画像描写に必要な演算を行う処理装置である。サブボード29は省略し、GPU31はマザーボード28に実装してもよい。
【0020】
バッテリ装置33は、電子機器10の電源となる充電池である。バッテリ装置33は、マザーボード28の前方に配置され、第1筐体12の前端部に沿って左右に延在している。
【0021】
CPU30及びGPU31は、電子機器10に搭載されたデバイス中で最大級の発熱体である。冷却モジュール26は、CPU30及びGPU31が発生する熱を吸熱して輸送し、第1筐体12外へと排出する装置である。冷却モジュール26は、CPU30及びGPU31以外の半導体チップ等が発生する熱も第1筐体12外に排出可能である。冷却モジュール26は、マザーボード28及びサブボード29の下面(CPU30やGPU31の実装面の下)に積層される。
【0022】
図3に示すように、第1筐体12の上面12aを形成するカバー部材21は、浅いバスタブ状の凹部32が形成されている。凹部32は、キーボード装置20が配置される部分であり、キーボード装置20をほとんど隙間なく収納可能な形状である。キーボード装置20は、その下面20aが凹部32の底面32aに載置され(図6参照)、ねじ止め固定される。これによりキーボード装置20は、第1筐体12の上面12aに設置される。カバー部材21は、凹部32に代えて、キーボード装置20を下から上に挿入し、上面12aに露出させる開口を有する構成としてもよい。
【0023】
キーボード装置20は、複数のキースイッチ34を有する。キーボード装置20は、各キースイッチ34の操作面となるキートップ34aの周囲をフレーム35で仕切ったアイソレーション型のキーボード装置である。フレーム35は、樹脂や金属等で形成されている。フレーム35は、網目状の枠体である。フレーム35は、カバー部材21と一体成形されてもよい。フレーム35は、各キートップ34aが上下動可能に挿入された複数の孔部35aを有する。
【0024】
次に、冷却モジュール26及びその周辺の構成を説明する。
【0025】
図2に示すように、冷却モジュール26は、一対のベーパーチャンバ36,37と、一対のヒートパイプ38,39と、一対の冷却フィン40,41と、一対のファン装置42,43と、を備える。
【0026】
ベーパーチャンバ36,37は、プレート型の熱輸送デバイスである。ベーパーチャンバ36,37は、2枚の薄い金属プレートの間に密閉空間を形成し、この密閉空間に作動流体を封入したものである。ベーパーチャンバ36,37は、作動流体が密閉空間内で相変化を生じながら移動して高効率な熱輸送を行うものであり、公知の構成でよい。一方のベーパーチャンバ36は、例えばCPU30を覆うように配置されている。他方のベーパーチャンバ37は、例えばGPU31を覆うように配置されている。図2中の参照符号46,47は、ベーパーチャンバ36,37の変形防止用のフレームである。
【0027】
ヒートパイプ38,39は、パイプ型の熱輸送デバイスである。ヒートパイプ38,39は、それぞれ1本又は2本以上の組で用いられている。ヒートパイプ38,39は、金属パイプを薄く扁平に潰して断面楕円形状に形成したものであり、金属パイプ内に形成された密閉空間に作動流体が封入されている。ヒートパイプ38,39は、作動流体が密閉空間内で相変化を生じながら移動して高効率な熱輸送を行うものであり、公知の構成でよい。ヒートパイプ38,39は、ベーパーチャンバ36,37及び冷却フィン40,41の下面側で適宜カーブしながら延在している。一方のヒートパイプ38は、例えば吸熱部がCPU30とオーバーラップした位置に配置され、放熱部が各冷却フィン40,41と接続されている。他方のヒートパイプ39は、例えば吸熱部がGPU31とオーバーラップした位置に配置され、放熱部が冷却フィン41と接続されている。
【0028】
冷却フィン40,41は、複数のプレート状の金属フィンをプレートの表面で左右方向に等間隔に並べた構造である。各フィンは、上下方向に起立し、前後方向に延在している。隣接するフィンの間には、ファン装置42,43から送られた空気が通過する隙間が形成されている。一方の冷却フィン40は、第1筐体12の左後角部付近に配置され、左右方向に沿って延在している。他方の冷却フィン41は、第1筐体12の右後角部付近に配置され、左右方向に沿って延在している。
【0029】
図4は、ファン装置42及び冷却フィン40の斜視図である。図5は、第1筐体12の側面12eにおけるファン装置42と隣接する部分を拡大した側面図である。図6は、図5中のVI-VI線に沿う模式的な断面図である。図4及び図5は、左側のファン装置42及びその周辺部の構成を図示したものであるが、右側のファン装置43及びその周辺部の構成は図4及び図5に示すものと形状や大きさが多少異なる以外、基本的には左右対称構造である。
【0030】
図2図4及び図6に示すように、ファン装置42,43は、それぞれファン筐体50と、回転部51と、インペラ52とを備える。ファン装置42,43は、回転部51がモータによって回転することで、その外周側に設けられたインペラ52が回転する遠心ファンである。一方のファン装置42は、第1筐体12の左後角部付近に配置された冷却フィン40の直前に配置されている。他方の冷却フィン41は、第1筐体12の右後角部付近に配置された冷却フィン41の直前に配置されている。
【0031】
ファン筐体50は、回転部51及びインペラ52を収納する扁平な箱体である。ファン筐体50は、下板50Aと、上板50Bと、側板50Cとを有する。各板50A~50Cは、金属板或いは樹脂板である。
【0032】
下板50Aは、矩形板の一側を円形状に形成した略弾丸形状の薄板である。下板50Aは、ファン装置42,43の下面50aを形成する。下板50Aには、第1吸気口54が形成されている。第1吸気口54は、例えば円形状、ドーナツ形状、又は複数の楕円を周方向に並べた形状の貫通孔である。
【0033】
上板50Bは、下板50Aと同一の外形形状を有する薄板である。上板50Bは、ファン装置42,43の上面50bを形成する。上板50Bには、第2吸気口55が形成されている。第2吸気口55は、第1吸気口54と同一又は同様な形状でよい。吸気口54,55は、インペラ52の回転によってファン筐体50の外部の空気を内部へと取り込むための開口である。
【0034】
側板50Cは、下板50Aと上板50Bとの間に形成されるファン筐体50の内部空間の側部を覆う湾曲板である。本実施形態の側板50Cは、上板50Bと一体に構成されている。側板50Cは、下板50Aと一体に構成されてもよいし、下板50A及び上板50Bと別体に構成されてもよい。
【0035】
ファン装置42,43は、冷却フィン40,41側を向いたファン筐体50の第1側面50cには側板50Cを設けていないか又は側板50Cに開口を形成している。これにより、第1側面50cは、ファン装置42,43の排気口56となる。
排気口56は、冷却フィン40,41と対向配置される。冷却フィン40,41は、ヒートパイプ38,39を介してCPU30やGPU31と熱的に接続されている。ファン装置42,43は、ヒートパイプ38,39によって運ばれたCPU30等の熱を排気口56からの送風によって外部に排出する。第1筐体12の後側の側面12dは、冷却フィン40,41と対向する位置にそれぞれ排気口56からの送風が排出される開口部が有する。
【0036】
図6に示すように、ファン装置42,43は、下面12bを形成する底板22aの内面22a1と、キーボード装置20の下面20aとの間に収容されている。本実施形態の場合、キーボード装置20の直下にはカバー部材21(凹部32の底面32aを形成するプレート)が配置されている。このため、ファン装置42,43は、より具体的にはカバー部材21と底板22aとの間に配置されていることになる。なお、凹部32の代わりにキーボード装置20が挿入される開口を設けた構成の場合は、ファン装置42,43は実質的にも底板22aとキーボード装置20との間に挟まれた配置となる。
【0037】
図6に示すように、底板22aには、第1開口部58が形成されている。第1開口部58は、第1筐体12の下部から第1筐体12内に空気A1を導入するための開口である。第1開口部58は、例えば複数本のスリット状の孔部を並列した構成である。第1開口部58は、平面視でファン装置42,43の第1吸気口54とオーバーラップした位置に設けられ、これと対向している。
【0038】
図6に示すように、キーボード装置20は、複数のキースイッチ34と、積層板60とを備える。
【0039】
各キースイッチ34は、キートップ34aがガイド機構34b及びラバードームで支持されて上下動する。ガイド機構34bは、キートップ34aの下面と積層板60の上面との間を連結するシザー機構である。ラバードームは、シリコーンゴム等の可撓性を有する弾性材料で形成されたドーム形状部材である。ラバードームは、ガイド機構34bの中央に配置され、キートップ34aと積層板60との間に介在している。
【0040】
積層板60は、例えば金属製のベースプレートと、ベースプレートの上面に積層されたメンブレンシートと、ベースプレートの下面に積層された導光板又は防水シートとを有する。メンブレンシートは、例えば押圧された場合に接点が閉じる三層構造のスイッチシートである。キートップ34aが押し下げされた際に圧縮されるラバードームによって接点が閉じられる。導光板は、下面20aに取り付けられた光源が発する光を左右方向に導き、光反射面で反射して各キートップ34aを裏面から照射するための透明な樹脂板である。
【0041】
図6に示すように、電子機器10は、キーボード装置20の上部から第2吸気口55へと空気A2を流入させるための第2開口部62を備える。
【0042】
第2開口部62は、キーボード装置20を上下方向に貫通した孔部62aと、カバー部材21の凹部32の底面32aを貫通した孔部62bとを有する。孔部62a,62bは、互いに上下方向でオーバーラップしている。第2開口部62は、平面視でファン装置42,43の第2吸気口55とオーバーラップした位置に設けられ、これと対向している。
【0043】
孔部62aは、上から下に向かって順に、隣接するキートップ34a,34a間の隙間と、切欠状凹部35bと、孔部60aとが連通することで形成されている。切欠状凹部35bは、フレーム35の下面側を切り欠くことで空気A2の流路を形成したものである。孔部60aは、積層板60に貫通形成されている。
【0044】
孔部62bは、キーボード装置20が載置される凹部32の底面32aに形成されている。孔部62bは、第1筐体12の内外を貫通する貫通孔である。孔部62bは、キーボード装置20の孔部62aとファン装置42,43の第2吸気口55とを連通させる。なお、キーボード装置20の下にカバー部材21が設置されない構成とした場合は、第2開口部62は孔部62aのみで構成される。
【0045】
従って、図6に示すように、ファン装置42,43は、第1筐体12の下側の空気A1を底板22aの第1開口部58から第1吸気口54を介して吸気する。同時に、ファン装置42,43は、第1筐体12の上側の空気A2を第2開口部62から第2吸気口55を介して吸気する。ファン装置42,43は、各吸気口54,55から吸い込んだ空気A1,A2を排気口56から第1筐体12外に排出する際、冷却フィン40,41を空冷する(図2参照)。これによりファン装置42,43は、第1筐体12の上下面から十分に空気を取り込むことができ、高い冷却効率が得られる。
【0046】
ところで、クラムシェル型の電子機器10は、第1筐体12の上面12aに第2筐体14を重ねて閉じた状態で外部ディスプレイを利用する使用モード、いわゆるリッドクローズモードで使用される場合がる。
【0047】
ところが、このようなリッドクローズモードでは、キーボード装置20の上面が第2筐体14で覆われる(図6中に2点鎖線で示す第2筐体14参照)。この場合、電子機器10は、第2開口部62がほぼ機能せず、ファン装置42,43には第1開口部58からの空気A1のみが導入されることとなる。その結果、冷却モジュール26は、冷却性能が著しく低下するため、第1筐体12が高温化し、CPU30やGPU31のパフォーマンスが低下する懸念がある。
【0048】
そこで、本実施形態の電子機器10は、リッドクローズモードにおいてもファン装置42,43が十分な吸気量を確保するための構造を有する。すなわち電子機器10は、ファン装置42,43と隣接する側面12e,12fにそれぞれ第3開口部64を備えている。
【0049】
図2図6に示すように、第3開口部64は、ファン装置42の第2側面50dと近接して対向する立壁22dと、ファン装置43の第2側面50dと近接して対向する立壁22eとにそれぞれ貫通形成されている。第3開口部64は、例えば複数本のスリット状の孔部を並列した構成である。
【0050】
ここで、左側のファン装置42は、第1筐体12の左後角部に配置されるため、排気口56となる第1側面50cと隣接する左側の第2側面50dが立壁22dと面する。右側のファン装置43は、第1筐体12の右後角部に配置されるため、排気口56となる第1側面50cと隣接する右側の第2側面50dが立壁22eと面する。そこで、第3開口部64は、立壁22d,22eの第2側面50dと対向する位置に形成されている。第3開口部64は、第1筐体12の側部から空気を導入するための開口である。第3開口部64は、ファン装置42,43の上面50bに形成された第2吸気口へと連通する空気A3の導入経路を形成する(図2及び図6参照)。
【0051】
すなわち第3開口部64は、ファン装置42,43の第2側面50dに面している。このため第3開口部64から導入された空気A3は、ファン装置42,43の上面50bと凹部32の底面32aを形成するカバー部材21の下面32bとの間の隙間Gへと円滑に流通する(図6参照)。そこで第3開口部64は、少なくとも隙間Gと対向する位置に形成されていると、空気A3をより円滑に第2吸気口55へと導入することができる。また第3開口部64は、ファン装置42,43の第2側面50dと対向している。このため空気A3は、第2側面50dに沿って流通し、より円滑に隙間Gに流入する。
【0052】
その結果、当該電子機器10は、第2開口部62が閉塞されたリッドクローズモードにおいても、第3開口部64を介してファン装置42,43の第2吸気口55を有効利用することができる。このため電子機器10は、リッドクローズモードであっても冷却モジュール26の性能低下を抑制でき、使用モードに関わらず、第1筐体12の高温化とパフォーマンスの低下を抑制できる。
【0053】
ところで、第2開口部62は、電子機器10の上面12aを貫通している。このため、例えばユーザが誤ってキーボード装置20上に飲料等の液体をこぼした場合、第2開口部62が液体流路となって第1筐体12の内部が浸水する懸念がある。そこで電子機器10は、第1筐体12内のボード28,29やその他の電子部品への浸水を防止する防水構造として、止水材66,67を備える構成としてもよい。
【0054】
止水材66,67は、所定の止水効果を発揮すれば材質は問わないが、柔軟な材質であることが好ましい。本実施形態では、止水材66,67として、例えばEPDM等の発泡体の一面に粘着テープを貼り付けた気密防水パッキンと呼ばれるスポンジ状の部材を用いている。
【0055】
図6に示すように、止水材66は、ファン装置42,43の下面50aと、底板22aの内面22a1との間に介在し、両面に密着する。これにより止水材66は、第1筐体12の内部において、第1開口部58及び第1吸気口54とマザーボード28等との間に止水壁を形成する。具体的には、止水材66は、第1開口部58及び第1吸気口54の外周縁部を囲むリング状に形成されている。これにより止水材66は、ファン筐体50の内部から第1吸気口54を通過した液体を第1開口部58へと円滑に排出し、この液体が第1筐体12内に漏れることを防止する。
【0056】
止水材67は、ファン装置42,43の上面50bと、凹部32の下面32bとの間に介在し、両者に密着する。なお、凹部32の代わりにキーボード装置20が挿入される開口を設け、キーボード装置20の下にカバー部材21が設置されない構成とした場合、止水材67は、上面50bと、キーボード装置20の下面20aとの間に介在し、両面に密着する。これにより止水材67は、第1筐体12の内部において、第2開口部62及び第2吸気口55と、マザーボード28等との間に止水壁を形成する。具体的には、止水材67は、第2開口部62及び第2吸気口55の外周縁部を囲むリング状に形成されている。これにより止水材67は、第2開口部62を通して第1筐体12内に流入した液体を第2吸気口55へと円滑に導き、この液体が第1筐体12内へと漏れることを防止する。
【0057】
ところが、この止水材67は、ファン装置42,43の第2吸気口55の周囲を完全に囲んでしまうと、第3開口部64から第2吸気口55への空気A3の流通を阻害することになる。第3開口部64から第2吸気口55への経路が遮断されるためである。そこで止水材67は、第2吸気口55を囲む部分の一部を切り欠いた切欠部67aを有する。
【0058】
図4及び図6に示すように、切欠部67aは、止水材67の第3開口部64と対向する部分を切り欠いた形状を有する。つまり止水材67は、第2吸気口55を囲む部分が完全なリング形状ではなく、略C字形状となっている。これにより第3開口部64からの空気A3は、切欠部67aを通過して円滑に第2吸気口55へと導入される。一方、第2開口部62から第1筐体12内に流入した液体は、仮に切欠部67aを通過したとしても、その直前にある第3開口部64を通して円滑に第1筐体12外へと排出される。
【0059】
図2図4及び図6に示すように、本実施形態の電子機器10は、さらにファン装置42,43の第2側面50dにシール材70を備える構成としてもよい。シール材70は、第3開口部64からの空気A3の導入効率を向上させる機能と、さらに第3開口部64への液体の排出効率を向上させる機能とを有する。シール材70は、止水材66,67と同一又は同様な性質のスポンジ等で構成すればよい。
【0060】
シール材70は、ファン装置42,43の第2側面50dと立壁22d,22eの内面との間に介在し、両者に密着する。シール材70は、一対の縦材70a,70bと、横材70cとを有する。図4に示すように、縦材70a,70bは、上下方向に延びた棒状に構成され、切欠部67aを跨ぐように配置されている。横材70cは、縦材70a,70bの下部同士を繋ぐように設けられ、縦材70a,70bと直交する前後方向に延びている。このためシール材70は、全体として略U字形状を成している。
【0061】
従って、電子機器10は、第3開口部64から切欠部67aを通して第2吸気口55まで連通する空気A3の経路が、止水材67及びシール材70によってダクト状に構成される。その結果、第3開口部64から第2吸気口55への空気A3の導入が一層円滑なものとなる。このダクトは、より具体的には、第3開口部64と、シール材70と、ファン装置42,43の第2側面50dと、切欠部67aが形成された止水材67と、カバー部材21(又はキーボード装置20の下面20a)とで構成される。
【0062】
また、第2開口部62から第1筐体12内に流入した液体は、仮に切欠部67aを通過したとしても、このダクトを通して第3開口部64から円滑に排出される。なお、図4及び図6から明らかな通り、第1筐体12内の構造によっては、立壁22d,22e及び第2側面50dがシール材70の横材70cの代わりとなる。このため、シール材70は、少なくとも縦材70a,70bを有していればよい。
【0063】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0064】
例えばファン装置42,43は、一方のみを備える構成としてもよい。この場合、第3開口部64はファン装置の第2側面50dと対向する立壁22d,22eの一方のみに形成すればよい。また、ファン装置42,43は、排気口56(第1側面50c)を左右の立壁22d,22eに対向させた横向き配置としてもよい。この場合、第3開口部64は、第2側面50dが対向する後側の立壁22cに形成すればよい。
【符号の説明】
【0065】
10 電子機器
12 第1筐体
14 第2筐体
18 ディスプレイ
20 キーボード装置
22a 底板
22b~22e 立壁
26 冷却モジュール
30 CPU
31 GPU
42,43 ファン装置
50d 第2側面
54 第1吸気口
55 第2吸気口
58 第1開口部
62 第2開口部
64 第3開口部
66,67 止水材
67a 切欠部
70 シール材
【要約】
【課題】筐体の高温化やパフォーマンス低下等を抑制することができる電子機器を提供する。
【解決手段】クラムシェル型の電子機器は、第1筐体と、第2筐体と、第1筐体の上面側に設けられたキーボード装置と、第1筐体内で底板の上側、且つキーボード装置の下側となる位置に設けられると共に、下面に第1吸気口が形成され、上面に第2吸気口が形成され、第1側面に排気口が形成され、第1側面と隣り合う第2側面が立壁と対向するファン装置とを備える。さらに電子機器は、底板に形成されて第1吸気口と対向する第1開口部と、キーボード装置を貫通して第2吸気口と対向する第2開口部と、立壁に形成されてファン装置の第2側面と対向する第3開口部とを備える。
【選択図】図6
図1
図2
図3
図4
図5
図6