(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-23
(45)【発行日】2023-03-31
(54)【発明の名称】ピクセルごとの暗基準ボロメータ
(51)【国際特許分類】
G01J 1/02 20060101AFI20230324BHJP
G01J 1/42 20060101ALI20230324BHJP
H04N 5/33 20230101ALI20230324BHJP
【FI】
G01J1/02 C
G01J1/02 Q
G01J1/42 B
H04N5/33
(21)【出願番号】P 2021507980
(86)(22)【出願日】2019-04-29
(86)【国際出願番号】 US2019029615
(87)【国際公開番号】W WO2020040826
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-02-16
(32)【優先日】2018-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503455363
【氏名又は名称】レイセオン カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ケネディ,アダム エム.
(72)【発明者】
【氏名】ゴードン,エリ,イー.
(72)【発明者】
【氏名】ブーヴィル,エリック,ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ボッシュ,ライアン,ポール
(72)【発明者】
【氏名】ハマース,ジェフリー,ケー.
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-045641(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0320241(US,A1)
【文献】特開昭58-162072(JP,A)
【文献】特開平07-260579(JP,A)
【文献】特表2011-529572(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0016762(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0226613(US,A1)
【文献】特表2004-522162(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/00-1/60
G01J 5/00-5/90
H04N 5/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リードアウト集積回路(ROIC)基板と、
前記ROIC基板に配置され、2次元配列で並べられた複数の検出器要素を含み、各検出器要素が、
見られているシーンから赤外線放射を受け、該赤外線放射を受けことに応答して、各々の検出器要素における熱雑音に起因して生じた成分を含むイメージ信号を生成するよう構成されるイメージングマイクロボロメータであり、前記ROIC基板の上に浮かされた熱感知材の層
及び前記熱感知材の層を支持する支持層を含む前記イメージングマイクロボロメータと、
前記赤外線放射を受けることから保護され、前記熱雑音を示す基準信号を生成するよう構成される基準マイクロボロメータであり、前記熱感知材から作られた基準抵抗を含み、前記イメージングマイクロボロメータの前記熱感知材の層の下にそれと位置合わせされて置かれた前記ROIC基板の表面に配置されている前記基準マイクロボロメータと
、
前記基準抵抗の上に配置され、前記赤外線放射を受けることから前記基準マイクロボロメータを保護するよう構成された赤外線反射材の層と
を含
み、前記支持層及び前記赤外線反射材の層は、それらの間に共振空洞が形成されるように選択された距離だけ互いから間隔をあけられる、マイクロボロメータアレイと、
前記ROIC基板に形成され、各検出器要素について、前記基準マイクロボロメータと前記マイクロボロメータアレイとの間に直列に接続された第1トランジスタ及び該第1トランジスタのタイプと相補的なタイプである第2トランジスタの対を有し、各検出器要素について前記基準信号を前記イメージ信号から減じて補正イメージ信号を生成し、前記複数の検出器要素からの前記補正イメージ信号に基づいて、前記見られているシーンのイメージを生成するよう構成される回路と
を有するサーマルイメージングデバイス。
【請求項2】
前記熱感知材は、酸化バナジウムである、
請求項1に記載のサーマルイメージングデバイス。
【請求項3】
前記基準マイクロボロメータは、前記イメージングマイクロボロメータのジオメトリを模倣するジオメトリで構成される、
請求項1に記載のサーマルイメージングデバイス。
【請求項4】
前記基準抵抗は、前記イメージングマイクロボロメータの前記熱感知材の層の抵抗値に等しい抵抗値を有する、
請求項1に記載のサーマルイメージングデバイス。
【請求項5】
前記赤外線反射材は、アルミニウムである、
請求項
1に記載のサーマルイメージングデバイス。
【請求項6】
前記支持層は、前記イメージングマイクロボロメータのイメージング性能に影響を及ぼさないようなサイズの複数の穴を含む、
請求項1に記載のサーマルイメージングデバイス。
【請求項7】
前記支持層は、窒化ケイ素である、
請求項
1乃至6のうちいずれか一項に記載のサーマルイメージングデバイス。
【請求項8】
前記赤外線放射は、8から12マイクロメートルの範囲にある波長を有する、
請求項1乃至
7のうちいずれか一項に記載のサーマルイメージングデバイス。
【請求項9】
リードアウト集積回路(ROIC)基板と、
前記ROIC基板に配置され、複数の検出器要素の2次元配列を含むマイクロボロメータアレイであり、各検出器要素が、
前記ROIC基板の第1表面に形成され、熱感知材から形成され、前記検出器要素における熱雑音を表す基準信号を生成するよう構成される基準抵抗と、
前記基準抵抗及び前記ROIC基板の前記第1表面の上に配置され、赤外線反射材から形成され、前記マイクロボロメータアレイによって見られているシーンから赤外線放射を受けることから前記基準抵抗を保護するよう構成される反射体と、
前記反射体の上に浮かされ、熱絶縁レッグの対によって前記ROIC基板から熱的に分離されているイメージングマイクロボロメータであり、支持層によって支持された前記熱感知材の層を含み、前記見られているシーンから8から12マイクロメートルの範囲を有する前記赤外線放射を受け、該受けた赤外線放射及び前記検出器要素における熱雑音に基づいてイメージ信号を生成するよう構成される前記イメージングマイクロボロメータと
を含む、前記マイクロボロメータアレイと、
前記ROIC基板に形成され、各検出器要素について、前記基準抵抗と前記マイクロボロメータアレイとの間に直列に接続された第1トランジスタ及び該第1トランジスタのタイプと相補的なタイプである第2トランジスタの対を有し、各検出器要素について前記基準信号を前記イメージ信号から減じて補正イメージ信号を生成し、前記複数の検出器要素からの前記補正イメージ信号に基づいて、前記見られているシーンのイメージを生成するよう構成される回路と
を有
し、
前記支持層及び前記反射体は、それらの間に共振空洞が形成されるように選択された距離だけ互いから間隔をあけられる、サーマルイメージングデバイス。
【請求項10】
前記熱感知材は、酸化バナジウムである、
請求項
9に記載のサーマルイメージングデバイス。
【請求項11】
前記基準抵抗は、前記イメージングマイクロボロメータにおける前記熱感知材の前記層の抵抗値に等しい抵抗値を有する、
請求項
9に記載のサーマルイメージングデバイス。
【請求項12】
前記支持層は、窒化ケイ素である、
請求項
9に記載のサーマルイメージングデバイス。
【請求項13】
前記ROIC基板へ結合され、前記マイクロボロメータアレイを覆って空洞を設けるよう構成されるリッドウェハを更に有し、該リッドウェハは、赤外線放射が前記マイクロボロメータアレイで受け取られることを可能にするよう前記赤外線放射に対して光学的に透過である領域を含む、
請求項
9に記載のサーマルイメージングデバイス。
【請求項14】
前記赤外線反射材は、アルミニウムである、
請求項
9に記載のサーマルイメージングデバイス。
【請求項15】
前記支持層は、複数の穴を含む、
請求項
9に記載のサーマルイメージングデバイス。
【請求項16】
マイクロボロメータアレイの複数の検出器要素の夫々のイメージングマイクロボロメータで、見られているシーンから赤外線放射を受けることと、
前記複数の検出器要素の夫々に含まれている前記イメージングマイクロボロメータにより、前記受け取られた赤外線放射と各々の検出器要素における熱雑音との組み合わせからイメージ信号を生成することと、
前記複数の検出器要素の夫々に含まれており、前記赤外線放射を受け取ることから
反射体によって保護されている基準マイクロボロメータにより、前記熱雑音に基づいて基準信号を生成することと、
各検出器要素について設けられている、前記基準マイクロボロメータと前記イメージングマイクロボロメータとの間に直列に接続された第1トランジスタ及び該第1トランジスタのタイプと相補的なタイプである第2トランジスタの対を用いて、各検出器要素について、前記基準信号を前記イメージ信号から減じて補正イメージ信号を生成することと、
前記複数の検出器要素からの前記補正イメージ信号に基づいて、前記見られているシーンのイメージを生成することと
を有
し、
前記イメージングマイクロボロメータは、前記複数の検出器要素が配置されているリードアウト集積回路(ROIC)基板の上に浮かされた熱感知材の層及び前記熱感知材の層を支持する支持層を含み、前記支持層及び前記反射体は、それらの間に共振空洞が形成されるように選択された距離だけ互いから間隔をあけられる、サーマルイメージング方法。
【請求項17】
前記赤外線放射は、8から12マイクロメートルの範囲にある波長を有する、
請求項
16に記載のサーマルイメージング方法。
【請求項18】
サーマルイメージングデバイスであって、
リードアウト集積回路(ROIC)基板と、
前記ROIC基板に配置され、2次元配列で並べられた複数の検出器要素を含み、各検出器要素が、イメージングマイクロボロメータ及び基準マイクロボロメータを含み、前記イメージングマイクロボロメータが、見られているシーンから電磁放射を受け、該電磁放射を受けたことに応答してイメージ信号を生成するよう構成され、前記イメージ信号が、各々の検出器要素における熱雑音に起因して生じた成分を含み、前記基準マイクロボロメータが、前記電磁放射を受けることから
反射体によって保護され、前記熱雑音を示す基準信号を生成するよう構成され、各検出器要素が、基準信号を前記イメージ信号から減じて補正イメージ信号を生成するよう構成される回路を更に含み、前記回路が、前記基準マイクロボロメータと前記イメージングマイクロボロメータとの間に直列に接続された第1トランジスタ及び該第1トランジスタのタイプと相補的なタイプである第2トランジスタの対を含む、マイクロボロメータアレイと
を有し、
前記イメージングマイクロボロメータは、前記ROIC基板の上に浮かされた熱感知材の層及び前記熱感知材の層を支持する支持層を含み、前記支持層及び前記反射体は、それらの間に共振空洞が形成されるように選択された距離だけ互いから間隔をあけられ、
当該サーマルイメージングデバイスは、前記複数の検出器要素からの前記補正イメージ信号から、前記見られているシーンのイメージを生成するよう構成される、
サーマルイメージングデバイス。
【請求項19】
各検出器要素の前記基準マイクロボロメータは、前記熱感知材から作られた基準抵抗を含む、
請求項
18に記載のサーマルイメージングデバイス。
【請求項20】
前記熱感知材は、酸化バナジウムである、
請求項
19に記載のサーマルイメージングデバイス。
【請求項21】
前記基準抵抗は、前記熱感知材の層の抵抗値に等しい抵抗値で構成される、
請求項
19に記載のサーマルイメージングデバイス。
【請求項22】
前記基準抵抗は、前記ROIC基板に配置され、各検出器要素は
前記反射体を含み、
前記反射体は、前記基準抵抗の上に配置され、前記電磁放射を受けることから前記基準マイクロボロメータを保護するよう構成された赤外線反射材の層
を含む、
請求項
19に記載のサーマルイメージングデバイス。
【請求項23】
前記ROIC基板に実装され、前記マイクロボロメータアレイへ結合されたROICを更に有し、該ROICは、前記見られているシーンの前記イメージを生成するように、前記複数の検出器要素からの前記イメージ信号及び前記基準信号を処理するよう構成される、
請求項
18に記載のサーマルイメージングデバイス。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
様々なタイプの赤外線センサが開発されており、多種多様なサーマルイメージングアプリケーションのために使用されている。MEMSに基づくマイクロボロメータは、一般に、焦点面アレイ(Focal Plane Array;FPA)が載置された基板を含み、FPAは、センサによって生成されたイメージ内の各々のピクセルに夫々対応する複数の検出器要素を含む。従って、個々の検出器要素は、一般に、ピクセルとここでは呼ばれることがある。MEMSに基づくマイクロボロメータが動作することができる真空環境を設けるように、赤外線を通すカバー、又はリッド構造が、FPAを覆って置かれ、基板へ取り付けられる。このようなリッドは、反射特性を弱め、リッドの赤外線透過特性を高めるように、反射防止コーティングでしばしばコーティングされる。基板は、検出器要素へ電気的に結合される集積回路を含み、集積回路は、リードアウト集積回路(Read Out Integrated Circuit;ROIC)として広く知られており、各ピクセルからの信号を積分し、適切な信号調整及び処理によりチップからの信号を多重化するために使用される。各ピクセルは、熱絶縁を容易にするために、基板の上表面の上に間隔をあけて配置された位置に浮いている膜を含む。膜は、アモルファスシリコン(a-Si)又は酸化バナジウム(VOx)などの熱感知材を含む。膜はまた、2つの電極を含み、電極は夫々、熱感知材へ結合され、更には、基板内のROICへも結合される。熱感知材の温度が変化するにつれて、熱感知材の抵抗も変化し、基板内のROICは、ピクセルの対応する抵抗変化を検知することによって、そのピクセルで受け取られた熱エネルギの量を決定することができる。
【0002】
マイクロボロメータが、入来する電磁放射に対してより敏感になるにつれて、それらはまた、自己発熱の影響にも敏感になる。これは、アレイのピクセルからの強度出力の変化を引き起こす。強度出力の変化は、アレイの多くの検出器要素にわたって非一様である傾向があり、同じ入力放射を受け取る異なるピクセルに異なる出力を生成させ、画像における雑音に寄与する。
【0003】
無冷却マイクロボロメータアレイにおける不均一性補正(Non-Uniformity Correction;NUC)に対する1つのアプローチは、画像の不均一性補正が計算されることを可能にするように数秒間FPAを周期的に閉じる(又は入射電磁放射の焦点をFPA上に合わせるレンズを閉じる)ことである。能動的な温度安定化の使用なしで周囲温度で動作するいくつかの従来の無冷却赤外線マイクロボロメータは、NUCのために使用され得る基準測定を提供するよう入射赤外線放射を吸収しない赤外線光遮断基準ピクセルを使用する。これらの赤外線光遮断基準ピクセルは、焦点面アレイの動作温度に対する焦点面アレイの較正に必要とされる焦点面の周囲温度を決定するために使用される。これは、例えば、イメージング焦点面アレイにおいて、周囲温度ドリフト効果について画像を補正するために、アクティブな検出器要素へのいずれかの所与の温度(基準ピクセルによって検知される。)でのゲイン及びオフセット補正アルゴリズムの実装を伴う。基準ピクセルは、一般に、行ごと又は列ごとの不均一性を連続的に正規化することによって不均一性を補償するようFPAの行又は列の両側に置かれる。しかし、不均一性は、行及び列の中でも起こり、シャッターを用いて画像を補正する必要がある。不均一性補正の他の方法は、シーンに基づくNUCとして知られており、これは、見られているシーンを変更する必要があり、複雑な画像処理を伴う場合がある。
【発明の概要】
【0004】
無冷却マイクロボロメータアレイに存在する実質的な不均一性は、アレイによって生成される信号からローカルノイズを取り除くことを難しくする。上述されたように、様々な不均一性補正(NUC)アプローチは、アレイの行の端又は列の端のどちらかに位置付けられた基準ピクセルを使用してきた。更に、NUCアプローチは、アレイ又はその部分にわたって分散している基準ピクセルを使用してきた。しかし、従来のアプローチは、限界があり、特定のアプリケーションにとって望ましいノイズ改善性能を必ずしももたらさない。従って、態様及び実施形態は、ピクセル後に実装可能なNUCを対象とし、従って、従来のアプローチに対して改善された性能及び/又は他の利点(例えば、可動シャッターの必要性を取り除くこと)をもたらし得る。
【0005】
一実施形態に従って、サーマルイメージングデバイスは、リードアウト集積回路(ROIC)基板と、ROIC基板に配置され、2次元配列で並べられた複数の検出器要素を含むマイクロボロメータアレイとを有する。各検出器要素は、イメージングマイクロボロメータ及び基準マイクロボロメータを含み、イメージングマイクロボロメータは、見られているシーンから電磁放射を受け、電磁放射を受けことに応答してイメージ信号を生成するよう構成され、イメージ信号は、各々の検出器要素における熱雑音に起因して生じた成分を含み、基準マイクロボロメータは、電磁放射を受けることから保護され、熱雑音を示す基準信号を生成するよう構成される。サーマルイメージングデバイスは、複数の検出器要素からのイメージ信号及び基準信号の組み合わせに基づいて、見られているシーンのイメージを生成するよう構成される。
【0006】
一例では、各検出器要素のイメージングマイクロボロメータは、ROIC基板の上に浮かされた熱感知材の層を含み、各検出器要素の基準マイクロボロメータは、熱感知材から作られた基準抵抗を含む。熱感知材は、例えば、酸化バナジウム又はアモルファスシリコンであってよい。一例では、基準マイクロボロメータは、イメージングマイクロボロメータのジオメトリを模倣するジオメトリで構成される。他の例では、基準抵抗は、ROIC基板に配置され、各検出器要素は、基準抵抗の上に配置され、電磁放射を受けることから基準マイクロボロメータを保護するよう構成された赤外線反射材の層を更に含む。他の例では、各検出器要素は、基準信号をイメージ信号から減じて補正イメージ信号を生成するよう構成された回路を更に含み、サーマルイメージングデバイスは、各検出器要素からの補正イメージ信号から、見られているシーンのイメージを生成するよう構成される。一例では、回路は、基準マイクロボロメータとイメージングマイクロボロメータとの間に直列に接続された相補型トランジスタの対を含む。一例では、電磁放射は、8から12マイクロメートルの範囲にある波長を有する赤外線放射である。サーマルイメージングデバイスは、ROIC基板に実装され、マイクロボロメータアレイへ結合されたROICを更に有してよく、ROICは、見られているシーンのイメージを生成するように、複数の検出器要素からのイメージ信号及び基準信号を処理するよう構成される。
【0007】
他の実施形態は、サーマルイメージング方法を対象とする。サーマルイメージング方法は、マイクロボロメータアレイの複数の検出器要素の夫々のイメージングマイクロボロメータで、見られているシーンから電磁放射を受ける動作と、複数の検出器要素の夫々に含まれているイメージングマイクロボロメータにより、受け取られた赤外線放射と各々の検出器要素における熱雑音との組み合わせからイメージ信号を生成する動作と、複数の検出器要素の夫々に含まれており、電磁放射を受け取ることから保護されている基準マイクロボロメータにより、熱雑音に基づいて基準信号を生成する動作と、各検出器要素について、基準信号をイメージ信号から減じて補正イメージ信号を生成する動作と、複数の検出器要素からの補正イメージ信号に基づいて、見られているシーンのイメージを生成する動作とを有してよい。
【0008】
方法の一例では、見られているシーンから電磁放射を受けることは、8から12マイクロメートルの範囲にある波長を有する赤外線放射を受けることを含む。
【0009】
他の実施形態に従って、サーマルイメージングデバイスは、リードアウト集積回路(ROIC)基板と、ROIC基板に配置され、検出器要素の2次元配列を含むマイクロボロメータアレイとを有する。各検出器要素は、ROIC基板の第1表面に形成され、熱感知材から形成され、検出器要素における熱雑音を表す基準信号を生成するよう構成される基準抵抗と、基準抵抗及びROIC基板の第1表面の上に配置され、赤外線反射材から形成され、マイクロボロメータアレイによって見られているシーンから電磁放射を受けることから基準抵抗を保護するよう構成される反射体と、反射体の上に浮かされ、熱絶縁レッグの対によってROIC基板から熱的に分離されており、支持層によって支持された前記熱感知材の層を含み、見られているシーンから電磁放射を受け、受けた赤外線放射及び検出器要素における熱雑音に基づいてイメージ信号を生成するよう構成されるイメージングマイクロボロメータとを含む。サーマルイメージングデバイスは、ROIC基板に形成され、マイクロボロメータアレイへ結合され、各検出器要素について基準信号をイメージ信号から減じて補正イメージ信号を生成し、複数の検出器要素からの補正イメージ信号に基づいて、見られているシーンのイメージを生成するよう構成される回路を更に含む。
【0010】
一例では、熱感知材は、酸化バナジウムである。他の例では、サーマルイメージングデバイスは、ROIC基板へ結合され、マイクロボロメータアレイを覆って空洞を設けるよう構成されたリッドウェハを更に有する。リッドウェハは、電磁放射がマイクロボロメータアレイで受け取られることを可能にするよう電磁放射に対して光学的に透過である領域を含んでよい。一例では、電磁放射は、8から12マイクロメートルの範囲にある波長を有する赤外線放射である。他の例では、赤外線反射材は、アルミニウムである。
【0011】
これらの例となる態様及び実施形態の更なる他の態様、実施形態、及び利点は、以下で詳細に説明される。本明細書で開示されている実施形態は、本明細書で開示されている原理の少なくとも1つと一致する如何なる様態でも他の実施形態と組み合わされてよく、「実施形態」、「いくつかの実施形態」、「代替の実施形態」、「様々な実施形態」、「一実施形態」などとの言及は、必ずしも相互排他的ではなく、記載されている特定の特徴、構造、又は特性が少なくとも1つの実施形態に含まれ得ることを示すよう意図される。本明細書中のそのような用語の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態に言及しているわけではない。
【0012】
少なくとも1つの実施形態の様々な態様は、実寸通りであるよう意図されない添付の図を参照して、以下で説明される。図は、本明細書で開示されている様々な態様及び実施形態の実例及び更なる理解をもたらすために含まれており、本明細書に組み込まれてその部分を構成するが、本発明の限定の定義として意図されない。図中、様々な図で表されている各同じ又は略同じコンポーネントは、同じ番号によって示される。明りょうさのために、あらゆるコンポーネントがあらゆる図でラベルを付されているわけではないことがある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の態様に従うマイクロボロメータの一例の略断面ブロック図である。
【
図2】特定の態様に従って
図1のマイクロボロメータを含み得るマイクロボロメータアレイの一例の略斜視図である。
【
図3】本発明の態様に従って
図2のマイクロボロメータアレイに含まれ得る検出器要素の一例の図である。
【
図4】本発明の態様に従う基準抵抗を示す
図3の検出器要素の部分の図である。
【
図5】本発明の態様に従うサーマルイメージングデバイスの一例の回路図である。
【
図6】本発明の態様に従うサーマルイメージングデバイスの他の例の回路図である。
【
図7】本発明の態様に従うサーマルイメージングデバイスの他の例の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
上述されたように、実質的な不均一性が、無冷却マイクロボロメータアレイに存在する。このような不均一性は、アレイによって生成された関心のある信号からローカルノイズを取り除くことを相当に難しくする可能性がある。ピクセル応答における不均一性を補償する様々な方法があるが、多くのアプローチは、それらを特定のアプリケーションで望ましくないものとするか、又はそれらの有効性を制限する付随した欠点を有している。例えば、アレイの個々のピクセルごとに連続的なバイアス電圧を印加することを伴う能動的な不均一性補正(NUC)は、多くのアプリケーションで過度な電力を必要とする場合がある。上述されたように、NUCに対するいくつかの従来アプローチは、アレイの列または行の端に置かれた光遮断基準ピクセルを使用するが、これらは、個々のピクセル抵抗の変化を十分に追跡しない。各ピクセルを構成するために使用される熱感知材の抵抗又は性能は、アレイにわたってピクセルごとに、ウェハにわたって(ダイごとの変動)、ウェハごとに、及びウェハロットごとに大きく変化する可能性があり、この変動は、追跡するのが困難である場合がある。態様及び実施形態は、ピクセル応答におけるシーンに基づかない不均一性(すなわち、ノイズ)がピクセルごとに測定され得る方法及び装置を提供し、それによって、マイクロボロメータアレイのイメージング性能の実質的な改善をもたらす。
【0015】
以下で詳細に説明されるように、特定の実施形態に従って、アレイ内の各ピクセルは、イメージング検出器要素及び光遮断基準要素の両方を含む。基準要素は、それらがシーン画像を“見ない”ように、それらを覆う物理的なシールドを備えており、従って、それらの出力が熱雑音にのみ応答するので、基準としての役割を果たすことができる。基準要素は、対応するイメージング検出器要素と同じ熱感知材から構成され、かつ、同じ又は極めて類似した寸法を有することができ、それにより、それらの抵抗値は、対応する検出器要素のそれと基本的に同じであり、受け取られた熱雑音に対するそれらの応答は、従って、対応するイメージング検出器要素の応答と極めて類似している。このようにして、基準要素は、温度及び抵抗の両方の変化に局所的に良好な一致を提供し、行ごと又は列ごとだけでなくピクセルごとに局所的な影響を画像から除くことを可能にする。
【0016】
当然ながら、本明細書で説明されている方法及び装置の実施形態は、以下の記載で説明されているか又は添付の図面に表されているコンポーネントの構成及び配置の詳細に本願において限定されない。方法及び装置は、他の実施形態での実施、及び様々な方法で実施又は実行されることが可能である。具体的な実施の例は、もっぱら実例のために本明細書で与えられており、限定であるよう意図されない。また、本明細書で使用されている表現及び用語は、説明のためであって、限定として見なされるべきではない。「含む」(including)、「有する」(comprising)、「持っている」(having)、「含む」(containing)、「伴う」(involving)及びそれらの変形の本明細書中の使用は、その前に挙げられているアイテム及びその同等物並びに追加のアイテムを包含するよう意図される。「又は」(or)への言及は、「又は」を用いて記載されている如何なる項目も、記載されている項目の1つ、1つよりも多く、及び全てのいずれかを示し得る。前(front)及び後ろ(back)、左(left)及び右(right)、上(top)及び下(bottom)、上方(upper)及び下方(lower)、並びに垂直(vertical)及び水平(horizontal)への如何なる言及も、記載の便宜上であって、本システム及び方法又はそれらのコンポーネントを如何なる1つの位置的又は空間的姿勢に限定しないよう意図される。
【0017】
図1は、赤外線センサ100の一例の略断面ブロック図であり、赤外線センサ100は、マイクロボロメータアレイを含み、熱エネルギを検出し、その検出された熱エネルギの2次元イメージを表す電気信号を出力するために使用され得る。表されている例では、赤外線センサ100は、リード
アウト集積回路(ROIC)ウェハ又は基板120に配置された焦点面アレイ(FPA)110を含む。ROIC170は、
当業者によって理解されるように様々な電子部品を含んでよく、ROIC基板120に実装されている。
図2に示されるように、FPA110は、複数の熱センサ又は検出器要素112を含んでよい。検出器要素112は、2次元(n×m)配列で並べられており、各検出器要素112は、赤外線センサ100によって生成された各イメージ内の各々ピクセルに対応する。
図2は、約140個の検出器要素112しか図式的に表さないが、当業者に明らかなように、FPA110における検出器要素112の総数は、より多くても又はより小さくてもよい。いくつかの実施で、FPA110は、熱赤外線スペクトル領域の少なくとも一部において電磁放射を受け検出するよう構成された無冷却マイクロボロメータアレイである。例えば、長波赤外線スペクトル帯域にあるか、又はFPA110は、約8から12μmの範囲にある波長を有している電磁放射を検知可能であってよい。
【0018】
図1を参照すると、FPA110は、見られているシーンから、光透過リッドウェハ又は窓140を介して、電磁放射130を受ける。リッドウェハ140は、ROIC基板120とリッドウェハ140との間に空洞160が形成されるように、支持構造体150によってFPA110の上に浮かされてROIC基板120へ結合されている。特定の実施形態では、空洞160は、FPA110が動作し得る真空環境を提供可能である。ROIC基板120は、シリコンから成り、真空の又は密閉された囲いのために、次いで、密封ボンドが、ROIC基板120と支持構造体150との間に形成される。更に、密封ボンドは、支持構造体150と窓140との間に形成されてもよい。光透過シリコンウェハがリッドウェハ140に用いられてよいが、如何なる他の適切な赤外線透過リッドウェハ材(例えば、ゲルマニウム、セレン亜鉛、又は硫酸亜鉛、など)も代替的に使用されてよい。特定の例では、リッドウェハ140は、その高い屈折率及び分散によりゲルマニウムから成る。
【0019】
FPA110は、見られているシーンから電磁放射130を受け、それからイメージを生成する。特に、各検出器要素112は、それが受ける電磁放射を、処理のためにROIC170へ出力される電気信号に変換する。ROIC170は、焦点面アレイ110内の各検出器要素(ピクセル)112からの熱的に誘導された電気信号を積分し、適切な信号調整及び処理によりアレイから信号を多重化する。
図1に示される例では、ROIC170は、ROIC基板120に含まれる。特定の例では、ヒートシンクなどの熱管理部品が、ROIC基板120と一体化されてよく、あるいは、ROIC基板120へ結合された基板175又は他の構造体において設けられてよい。
【0020】
FPA110の検出器要素112は、電磁放射130を検知可能である(すなわち、見られているシーンのイメージを生成するために使用される電磁放射130を受けることに応答して信号を生成する)が、上述されたように、他の場所から受け取られた熱放射も検知可能であり、イメージにおいてノイズを生じさせることがある。例えば、ROIC170のコンポーネント、又は行及び/若しくは列増幅器などの、検出器要素112に関連した電気コンポーネントは、動作中に加熱して、検出器要素112によって受け取られる更なる熱放射を引き起こす可能性がある。上述されたように、検出器要素112は、より良いサーマルイメージング性能を可能にするようますます感度を高くされるので、それらは、ノイズ、特に、自己発熱によって引き起こされたノイズにもより敏感になる。検出器要素112は、それら自体の熱に非常に敏感であり、いくつかの設計では、それらが入射電磁放射130を測定するよりも何倍もそれら自体の温度を測定する場合がある。更に、温度の極めて小さい変化、例えば、ほんのミリケルビンの熱放射が、検出器要素112のイメージング性能に大きな影響を及ぼすことがある。FPA110によって生成されたイメージの信号対雑音比に大きな影響を及ぼすこの問題に加えて、アレイ内の全ての検出器要素112が同じ熱雑音放射を受け取り、同じ速度で加熱し、及び/又はそれら自体の温度を同じ精度で測定するわけではない、という事実がある。よって、見られているシーンからの受け取られた入射電磁放射130に無関係である検出器要素112の光応答の不均一性がある。
【0021】
従って、態様及び実施形態は、熱雑音がピクセルごとに検出及び軽減され得るように各ピクセル112がイメージング検出器要素及び参照要素の両方を含むサーマルイメージングデバイスのためのピクセル構造を提供する。ノイズ応答を検出し、各個別のピクセル112の出力から減じることによって、FPA110のイメージング性能に対するノイズ応答の不均一性の影響は、NUCがピクセルのいくつかの集合体に対して行われる従来の設計と比較して大幅に低減される。
【0022】
図3及び4を参照すると、埋め込まれた基準要素(
図4に図示)を含むピクセル112の例が表されている。
図3は、ピクセル112のイメージングコンポーネントを示す。一実施形態に従って、ピクセル112のイメージング検出器要素は、比較的に長い熱絶縁レッグによって浮かされてROIC基板120から熱的に分離された赤外線吸収検出器要素を備えた低熱質量マイクロボロメータアレイを含む。浮かされているイメージングマイクロボロメータは、支持層220によって支持されている熱感知材210を含んでよい。支持層220は、例えば、窒化ケイ素から作られてよい。特定の例では、支持層220は、支持層の熱質量を低減するよう複数の小さい穴222を含む。穴222は、それらがイメージングマイクロボロメータのイメージング性能に影響を及ぼさないように、関心のある電磁放射130の波長よりもずっと小さいサイズにされる。例えば、長波赤外線スペクトル帯域(Long-Wave InfraRed spectral band;LWIR)(約8から12μmの波長)で撮像するよう構成されたFPA110の場合に、長さL及び幅Wは、夫々約120μmであってよく、よって、穴222は、1μmほどの寸法(長さ及び幅)を有してよい。熱感知材210は、例えば、酸化バナジウム(VOx)又はアモルファスシリコン(a-Si)であってよい。
【0023】
図4に及び部分的に
図3に示されるように、基板120は、その上面に、間隔をあけられた2つの電気接点230を備えてよい。電気接点230は、上述されたようにROIC基板175及び/又はROIC基板120内に実装され得るROIC170へ電気的に結合されている(図示せず)。ROIC基板120の上面は、関心のあるスペクトル帯域に少なくともある赤外線放射を反射する材料の層(反射体240)を載置されている。イメージングマイクロボロメータは、支持体250及び熱絶縁レッグ255によって反射体240の上に浮いており、それにより、支持層220と反射体240との間に空間又はギャップがある。特定の例では、支持層220と反射体240との間の距離は、関心のある放射130が熱感知材210によって吸収可能であるまで放射130を電気的にトラップする共振空洞を形成するように、関心のある放射130の波長の約4分の1であるよう選択される。他の例では、支持層220と反射体240との間の距離は、関心のある電磁放射130の波長の4分の1の奇数倍におおよそ等しいといったように、何らかの他の適切な距離である。反射体240は、例えば、アルミニウムなどの如何なる赤外線反射材からも作られてよい。
【0024】
イメージングマイクロボロメータはまた、支持体250及び熱絶縁レッグ255を介して電気接点230へ電気的に接続されている。よって、電磁放射130を受けたことに応答してイメージングマイクロボロメータによって生成された信号は、処理のためにROIC170へ運ばれ得る。支持体250は、例えば、チタニウム、アルミニウム又はチタニウム-タングステン(TiW)などの如何なる適切な導電材料から作られてもよい。
図3に示されるように、特定の実施形態では、熱絶縁レッグ255は、比較的に小さい面積/体積で長い長さを達成するよう蛇行又は類似した形状を有する。特定の例では、熱絶縁レッグ255の長さは、例えば、12μm又は12μよりも長いレッグ長さなど、検出器要素112の1つ以上の辺長さ(例えば、L又はW)におおよそ等しいか又はそれよりも長い。一般に、より長いレッグ255は、更なる熱絶縁、ひいては、FPA110のより良い感度をもたらす。特定の例では、L又はWの2から3倍である熱絶縁レッグ255は、検出器要素112の感度を改善するために使用されてよい。
【0025】
特定の実施形態に従って、遮蔽された(光遮断)マイクロボロメータが各検出器要素112に含まれており、それにより、各検出器要素112は、イメージングマイクロボロメータ(イメージングピクセル)及び基準要素/ピクセルの両方を含む。
図4を参照すると、一実施形態において、基準要素は、同じ熱感知材210から作られている基準抵抗260を含む。基準抵抗260は、反射体240の下で覆い隠されており、ROIC基板120に熱を吸収される。基準抵抗260は、シーンからの入来電磁放射130から反射体240によって保護されている。よって、
図3及び4を参照すると、基準抵抗260は、反射体240とROIC基板120との間に“挟まれている”。基準抵抗260は、熱感知材210の層のそれと基本的に等しい抵抗値を有するよう設計され得る。この構造は、シーン応答がない(すなわち、電磁放射130に応答して生じる信号がない)が、ROIC基板120及び検出器要素112の温度が変化するにつれて基準抵抗260の抵抗の変化が熱感知材210の層の抵抗の変化を追跡する基準ピクセルを提供する。基準抵抗260のジオメトリは、ピクセル構造の非遮蔽(イメージング)部分におけるジオメトリを模倣するよう構成され得る。これは、温度及び抵抗の両方の変化に局所的によりずっと良い一致があるピクセル112を提供し得る。
【0026】
特定の例では、基準抵抗260は、それが熱感知材の層の真下に位置付けられ、ROIC基板120でおおよそ同じ“フットプリント”を有するように、熱感知材210の層と整列され得る。
図4に示されるように、2つのパッド270が基準抵抗260へ結合される。これらのパッド270は、導電性であって、ROIC170へ電気的に結合されてよく、それにより、基準抵抗260によって生成された基準信号は、イメージングマイクロボロメータからの信号とともに、処理のためにROIC170へ供給され得る。特定の例では、パッド270は、支持体250と位置合わせされてもよいが、他の例では、異なる幾何配置が実装されてもよい。基準抵抗260及び関連するコンポーネント(例えば、パッド270)の厳密なジオメトリは、ジオメトリ及び材料が、基準抵抗260がイメージングマイクロボロメータと同じではないにしても非常に類似した抵抗を有し、かつ、イメージングマイクロボロメータと同じでないにしても非常に類似した温度変化に対する応答を有するようなものであるという条件で、検出器要素112の設計にとって重要でない場合がある。特に、同じ熱感知材210(例えば、酸化バナジウム)から基準抵抗260を形成することは、熱雑音による抵抗の変化に正確に適合させることにとって重要であり得る。ピクセルごとのNUCを提供しようと試みるいくつかの設計は、イメージングピクセルに関連付けられた固定抵抗を一次参照として利用することがあるが、このアプローチは、ピクセルにおける熱雑音の変化を十分に追跡しない。酸化バナジウムなどの熱感知材の抵抗は、温度とともに大きく変化し得るので、固定基準抵抗値はあまり有用でない。
【0027】
上述されたように、基準抵抗/マイクロボロメータによって生成された基準信号は、各検出器要素112においてイメージングマイクロボロメータによって生成された信号から熱雑音成分を除くために使用され得る。
図5から7は、この機能を実行するよう構成され得る回路の様々な例の回路図である。
【0028】
図5を参照すると、サーマルイメージングデバイス300は、回路320へ結合された熱センサ310を含む。サーマルイメージングデバイス300は、FPA110にける各検出器要素112に対応する。熱センサ310は、イメージングマイクロボロメータ312(
図3及び4を参照して上述されたイメージング構造に対応)と、基準マイクロボロメータ314(
図3及び4を参照して上述された少なくとも基準抵抗260に対応)とを含む。上述されたように、イメージングマイクロボロメータ312及び基準マイクロボロメータ314は、それらの抵抗値R
bolo,sig及びR
bolo,darkが夫々基本的に同じであるように構成され得る。更に、上述されたように、イメージングマイクロボロメータ312は、見られているシーンから入射電磁放射130を受ける。基準マイクロボロメータ314は、電磁放射130を受けることから、反射体240によって保護されている。基準マイクロボロメータ314は、電圧源V
ddへ接続されており、検出器要素112における熱雑音を表す信号I
darkを生成する。イメージングマイクロボロメータ312は、シーン応答を表す成分、すなわち、関心のある信号(I
sig)、及び熱雑音に起因する成分(I
dark)の両方を含む信号I
sig+I
darkを生成する。上述されたように、イメージングマイクロボロメータ312及び基準マイクロボロメータ314は、ノイズ応答(I
dark)が両方のデバイスから基本的に同じであるように構成される。
図5に示される例では、回路320は、一緒に接続されたトランジスタ322、324の対を含む。表されている例では、第1トランジスタ322は、そのソースで印加されている電圧V
dd-V
biasを有するpチャネル電界効果トランジスタ(FET)であり、第2トランジスタ324は、そのソースで電圧V
biasを有するnチャネルFETである。しかし、当業者には容易に理解されるように、回路320は、第1トランジスタ322がnチャネルFETであり、第2トランジスタ324がpチャネルFETであるように、あるいは、他のタイプ及び/又は構成のトランジスタが使用されるように、変更されてもよい。第1トランジスタ322は、基準マイクロボロメータ314から基準信号I
darkを受信し、第2トランジスタ324は、イメージングマイクロボロメータ312から複合信号I
sig+I
darkを受信する。トランジスタ322、324は、基準信号I
darkが複合信号I
sig+I
darkから減じられるように接続され、関心のある信号(シーン応答)I
sigが出力接点326で供給される。出力接点326からは、関心のある信号I
sigが、ROIC170のコンポーネント又は外部デバイスへ供給され得る。回路320は、検出器要素112の部分として、ROIC基板120において、ROIC170の部分として、又はそれらの組み合わせで実装されてよい。
【0029】
図6を参照すると、サーマルイメージングデバイスの他の例300aが表されている。この例では、サーマルイメージングデバイス300aは、回路330へ結合されている熱センサの変形310aを含む。熱センサ310aでは、イメージングマイクロボロメータ312が、信号線316と接地との間に接続され、基準マイクロボロメータ314が、電圧源V
ddと信号線316との間に接続されている。上述されたように、イメージングマイクロボロメータ312及び基準マイクロボロメータ314は、それらの抵抗値R
bolo,sig及びR
bolo,darkが夫々基本的に同じであるように構成され得る。従って、信号線316での電圧は、約V
dd/2であることができる。
図6に示される例では、回路330は、示されるように、信号線316へ接続された1つの端子を備えるコンパレータ332を含む。よって、関心のある信号I
sigは、コンパレータ332へ供給される。コンパレータ332は、その他の端子で、集約基準デバイス340から集約基準信号を受信し、関心のある信号I
sigと集約基準信号との間の差に対応する出力を出力接点338で供給する。一例では、集約基準デバイス340は、FPA110のための行ごとの抵抗であるが、他の例では、集約基準デバイス340は、FPA110のための列ごとの基準であってもよい。集約基準デバイス340は、熱センサ310aで見られるように、Vddと接地との間に直列に接続されているイメージングマイクロボロメータ312及び基準マイクロボロメータ314を含む。
【0030】
図6に示される例では、回路330は、信号線316と出力接点338との間でコンパレータ332にわたって接続された積分キャパシタ334を更に含む。スイッチ336が、積分キャパシタ334と並列に接続され、制御接点352を介して受信された制御信号によって制御される(開状態と閉状態との間で切り替えられる)。積分キャパシタ334は、検出器要素112の積分サイクル中に信号線316で受け取られた電荷(関心のある信号I
sigに対応)を積分し、スイッチ336が開いているときに出力接点338で積分信号を出力してよい。
図5を参照して説明された回路320の場合と同様に、回路330は、検出器要素112の部分として、ROIC基板120において、ROIC170の部分として、又はそれらの組み合わせで実装されてよい。特定の例では、回路330は、FPA110における検出器要素112ごとに繰り返されるが、集約基準デバイス340は、複数の検出器要素の間で共有される。
【0031】
図7は、サーマルイメージングデバイスの他の変形300bを表す。この例では、熱センサ310bは、
図6の熱センサ310aと同じであり、回路360は、
図6に示される回路330の構成と類似しているが、信号線316(及びコンパレータ332の端子)へ及び基準マイクロボロメータ314へ接続されたトランジスタ362を更に含む。基準信号I
darkは、先と同じく、イメージングマイクロボロメータ312からの複合応答(I
sig+I
dark)から減じられ、結果として得られる関心のある信号I
sigは、コンパレータ332へ供給される。サーマルイメージングデバイス300bの動作は、他の点では、
図6に示されるサーマルイメージングデバイス300aを参照して説明された通りである。
【0032】
よって、態様及び実施形態は、ピクセルごとのNUCを組み込む無冷却赤外線イメージングセンサアーキテクチャ及び実施を提供する。上述されたように、態様及び実施形態は、アレイの各ピクセルが、見られているシーンから電磁放射を受けるイメージングマイクロボロメータと、シーンエネルギから保護される基準要素との両方を含むマイクロボロメータアレイを含む。従って、これらの基準要素からの如何なる出力も、如何なる入射電磁放射からでもなく、イメージングシステムの内在的なノイズ(例えば、ピクセルの自己発熱からの熱雑音)によってのみ生成されるので、NUC信号を生成するために使用され得る。特定の実施形態に従って、基準要素は、ピクセルのイメージングコンポーネントで使用されるトランスデューサ材料と同じトランスデューサ(熱感知)材料、例えば、酸化バナジウム又はアモルファスシリコンから作られる。更に、基準要素のジオメトリは、イメージングコンポーネントのジオメトリを模倣するよう構成されてよい。上述されたように、基準要素は、反射層によってシーンエネルギから保護されかつROIC基板に熱を吸収される熱感知材の層を含んでよい。これらの特徴は、基準マイクロボロメータがシーン応答を生成しないピクセルを提供し得るが、基準マイクロボロメータからの熱雑音に対する応答は、イメージングマイクロボロメータからの熱雑音に対する応答を密に追跡するので、温度及び抵抗の両方の変化に局所的に優れた一致をもたらす。これは、列又は行ごとよりもむしろピクセルごとに、極めて局所的な影響が補償されることを可能にし、マイクロボロメータアレイの改善された性能(例えば、改善された信号対雑音比)を提供する。
【0033】
少なくとも1つの実施形態のいくつかの態様について上述されているが、当然ながら、様々な変更、修正、及び改善が当業者に容易に想到可能である。そのような変更、修正、及び改善は、本開示の部分であるよう意図され、本発明の範囲内にあるよう意図される。従って、上記の説明及び図面は、単なる一例であって、発明の範囲は、添付の特許請求の範囲及びその均等の適切な構成から決定されるべきである。