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特許7250130光学ガラス、ガラスプリフォーム、光学素子及び光学機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-23
(45)【発行日】2023-03-31
(54)【発明の名称】光学ガラス、ガラスプリフォーム、光学素子及び光学機器
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/068 20060101AFI20230324BHJP
   G02B 1/00 20060101ALI20230324BHJP
【FI】
C03C3/068
G02B1/00
【請求項の数】 29
(21)【出願番号】P 2021528467
(86)(22)【出願日】2019-10-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-20
(86)【国際出願番号】 CN2019111159
(87)【国際公開番号】W WO2020103607
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-05-20
(31)【優先権主張番号】201811391994.9
(32)【優先日】2018-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】512264046
【氏名又は名称】成都光明光▲電▼股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHENGDU GUANG MING GUANG DIAN GLASS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.359,Sec.3,Chenglong Avenue,Long quan yi District,Chengdu,Sichuan China
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】毛 露路
(72)【発明者】
【氏名】匡 波
(72)【発明者】
【氏名】呉 徳林
(72)【発明者】
【氏名】周 ▲せん▼▲せん▼
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-140925(JP,A)
【文献】国際公開第2018/066577(WO,A1)
【文献】特開2018-172261(JP,A)
【文献】特開2018-172262(JP,A)
【文献】特表2013-519610(JP,A)
【文献】特開昭60-042245(JP,A)
【文献】特開2000-128568(JP,A)
【文献】特開平05-058669(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106746597(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00-14/00
G02B 1/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiO2、B2O3、La2O3、RO、Rn2Oを含有し、R0がMgO、CaO、SrO、BaOの1種以上であり、Rn20がLi2O、K2O、Na2Oの1種以上であり、
その組成を重量%で表すと、SiO2:4~20%、B2O3:10~30%、La2O3:10~35%、BaO:10~38%を含有し、
ガラスの屈折率が1.65~1.73、アッベ数が47~55、屈折率温度係数が0以下であることを特徴とする光学ガラス。
【請求項2】
その組成を重量%で表すと、SrO:0~15%、CaO:0~10%、MgO:0~5%、Li2O:0~5%、K2O:0~6%、Na2O:0~8%、Gd2O3:0~8%、Y2O3:0~5%、ZrO2:0~3%、Al2O3:0~3%、TiO2:0~3%、Nb2O5:0~5%、WO3:0~2%、ZnO:0~5%、清澄剤0~2%をさらに含有することを特徴とする、請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項3】
その組成を重量%で表すと、SiO2:4~20%、B2O3:10~30%、La2O3:10~35%、BaO:10~38%、SrO:0~15%、TiO 2 :0~3%、Nb 2 O 5 :0~5%であり、屈折率温度係数が0以下であることを特徴とする光学ガラス。
【請求項4】
CaO:0~10%、MgO:0~5%、Li2O:0~5%、K2O:0~6%、Na2O:0~8%、Gd2O3:0~8%、Y2O3:0~5%、ZrO2:0~3%、Al2O3:0~3%、WO3:0~2%、ZnO:0~5%、清澄剤0~2%をさらに含有することを特徴とする請求項3に記載の光学ガラス。
【請求項5】
その組成を重量%で表すと、SiO2:4~20%、B2O3:10~30%、La2O3:10~35%、BaO:10~38%、SrO:0~15%、CaO:0~10%、MgO:0~5%、Li2O:0~5%、K2O:0~6%、Na2O:0~8%、Gd2O3:0~8%、Y2O3:0~5%、ZrO2:0~3%、Al2O3:0~3%、TiO2:0~3%、Nb2O5:0~5%、WO3:0~2%、ZnO:0~5%のみを含有し、屈折率温度係数が0以下であることを特徴とする光学ガラス。
【請求項6】
その組成を重量比で表すと、SiO2/B2O3が0.4~1.3であり、更に/又はBaO/La2O3が0.6~2であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の光学ガラス。
【請求項7】
その組成を重量比で表すと、SiO2/B2O3が0.45~1.2であり、更に/又はBaO/La2O3が0.65~1.9であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の光学ガラス。
【請求項8】
その組成を重量比で表すと、SiO2/B2O3が0.5~1.1であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の光学ガラス。
【請求項9】
その組成を重量比で表すと、CaO/(BaO+SrO)が0~0.5であり、更に/又はZnO/(CaO+SrO+BaO)が0~0.3であり、更に/又は(CaO+SrO+BaO)/(La2O3+Gd2O3+Y2O3)が0.7~2.5であり;更に/又は(CaO+SrO+BaO)/(Al2O3+ZrO2+TiO2)が8より大きく;更に/又はSrO含有量≧CaO含有量であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の光学ガラス。
【請求項10】
その組成を重量比で表すと、CaO/(BaO+SrO)が0.01~0.4であり、更に/又はZnO/(CaO+SrO+BaO)が0~0.2であり、更に/又は(CaO+SrO+BaO)/(La2O3+Gd2O3+Y2O3)が0.8~2.3;更に/又は(CaO+SrO+BaO)/(Al2O3+ZrO2+TiO2)が10より大きく;更に/又はBaO含有量≧SrO含有量≧CaO含有量であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の光学ガラス。
【請求項11】
その組成を重量比で表すと、CaO/(BaO+SrO)が0.02~0.3であり、更に/又はZnO/(CaO+SrO+BaO)が0~0.15であり、更に/又は(CaO+SrO+BaO)/(La2O3+Gd2O3+Y2O3)が0.9~2.1であり;更に/又は(CaO+SrO+BaO)/(Al2O3+ZrO2+TiO2)が12より大きいことを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の光学ガラス。
【請求項12】
Li2O+Na2O+K2Oが0~8%であり、更に/又はLi2O/(K2O+Na2O)が0~0.5であり、更に/又はNa2O/K2Oが0.2~5.0であり、更に/又はTiO2/Nb2O5が1以下であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の光学ガラス。
【請求項13】
Li2O+Na2O+K2Oが0~6%であり、更に/又はLi2O/(K2O+Na2O)が0~0.4であり、更に/又はNa2O/K2Oが0.3~4.0であり、更に/又はTiO2/Nb2O5が0.8以下であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の光学ガラス。
【請求項14】
Li2O+Na2O+K2Oが0~5%であり、更に/又はLi2O/(K2O+Na2O)が0~0.3であり、更に/又はNa2O/K2Oが0.4~3.0であり、更に/又はTiO2/Nb2O5が0.5以下であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の光学ガラス。
【請求項15】
その組成を重量%で表すと、SiO2:6~18%、及び/又はB2O3:12~25%、及び/又はLa2O3:12~30%、及び/又はBaO:12~35%、及び/又はSrO:0.5~15%、及び/又はCaO:0~8%、及び/又はGd2O3:1~6%、及び/又はY2O3:0~3%、及び/又はZrO2:0.1~3%、及び/又はAl2O3:0~2%、及び/又はTiO2:0~2%、及び/又はNb2O5:0.1~5%、及び/又はWO3:0~1%、及び/又はZnO:0~3%、及び/又はMgO:0~3%、及び/又は Li2O:0~3%、及び/又はK2O:0.3~4%、及び/又はNa2O:0.5~6%を含有することを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の光学ガラス。
【請求項16】
その組成を重量%で表すと、SiO2:8~16%、及び/又はB2O3:15~22%、及び/又はLa2O3:15~28%、及び/又はBaO:15~32%、及び/又はSrO:1~12%、及び/又はCaO:0~6%、及び/又はGd2O3:1~4%、及び/又はY2O3:1~3%、及び/又はZrO2:0.1~2%、及び/又はAl2O3:0.1~1%、及び/又はTiO2:0~1%、及び/又はNb2O5:0.5~4%、及び/又はK2O:0.5~3%、及び/又はNa2O:1~3%を含有することを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の光学ガラス。
【請求項17】
その組成を重量%で表すと、ZrO2:0.1~1%、及び/又はNb2O5:1~3%、及び/又はSrO:1.5~10%を含有することを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の光学ガラス。
【請求項18】
ガラスの屈折率が1.65~1.73であり、アッベ数は47~55であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の光学ガラス。
【請求項19】
ガラスの屈折率が1.67~1.72であり、アッベ数は48~52であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の光学ガラス。
【請求項20】
屈折率温度係数が≦-0.5であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の光学ガラス。
【請求項21】
屈折率温度係数が≦-1.0であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の光学ガラス。
【請求項22】
屈折率温度係数が≦-2.0であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の光学ガラス。
【請求項23】
ガラスの耐水安定性が、クラス4以上であり、更に/又は気泡度がレベルA以上であり、更に/又はストリークは、レベルC以上であり、更に/又は波長400nmにおける透過率の低下が10%以下である日射に対する安定性を有する請求項1~5のいずれかに記載の光学ガラス。
【請求項24】
ガラスの耐水安定性が、クラス3以上であり、更に/又は気泡度がレベルA0以上であり、更に/又はストリークは、レベルB以上であり、更に/又は波長400nmにおける透過率の低下が8%以下である日射に対する安定性を有する請求項1~5のいずれかに記載の光学ガラス。
【請求項25】
ガラスの耐水安定性が、クラス2以上であり、更に/又は気泡度がレベルA00以上であり、更に/又はストリークは、レベルA以上であり、更に/又は波長400nmにおける透過率の低下が5%以下である日射に対する安定性を有する請求項1~5のいずれかに記載の光学ガラス。
【請求項26】
請求項1~25のいずれかに記載の光学ガラスを用いて作製されたガラスプリフォーム。
【請求項27】
請求項1~25のいずれかに記載の光学ガラス又は請求項26に記載のガラスプリフォームを用いて製造された光学素子。
【請求項28】
請求項1~25のいずれかに記載の光学ガラス又は請求項27に記載の光学素子を用いて製造された光学機器。
【請求項29】
請求項1~25のいずれかに記載の光学ガラス又は請求項27に記載の光学素子の車載への適用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学ガラスに関し、特に、屈折率が1.65~1.73、アッベ数が47~55であるランタン含有光学ガラス、この光学ガラスからなるガラスプリフォーム、光学素子及び光学機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術では、屈折率が1.65~1.73であり、アッベ数が47~55であるガラスは中屈折率ガラスであり、各種レンズに多く応用されている。近年、車載レンズ設備は盛んに発展しており、一般的な撮影などの応用と比べて、車載レンズの品質は安全と密接な関係があるため、車載レンズは設備の信頼性をより強調しており、特に車体の外部に露出しているバックカメラ、フロントカメラ、バックミラー補助カメラなどの場合は、過酷な作業環境に耐える必要がある。
【0003】
過酷な作業環境に適合するように設計された車載レンズは、構造はできるだけシンプルにし、構造が複雑であればあるほど信頼性が低下する。このため、過酷な作業環境に対応できる車載レンズの長寿命(10年以上)の設計上の要求を満たすために、光学設計にはズームレンズよりもレンズ数が少なく、ズーム駆動構造がない固定焦点レンズ設計が一般的であり、ズームレンズよりも信頼性が大幅に向上される。
【0004】
しかし、固定焦点レンズは信頼性に優れているが、車載システムに適用すると、レンズの温度ドリフトを補正するのが非常に難しいという致命的な弱点がある。レンズの温度ドリフトとは、砂漠地域で昼夜の温度差が60℃に達したり、熱帯から寒帯に向かって自動車が走行したりするなど、温度差が非常に大きい環境において温度が急激に変化した場合に、レンズの焦点距離が変化して結像がぼやけてしまうことを指す。自動車にとっては安全性が第一であるため、車載カメラは急激な温度変化においても鮮明な結像を維持する必要がある。
【0005】
光学設計では、温度ドリフトの問題を解決するために、より多くの異なるタイプのレンズの組み合わせとズームシステムを使用することができる。しかし、車載システムの信頼性が要求されるため、レンズ数が少ない(3枚もある)固定焦点結像システムで温度ドリフトの問題を解決する必要があり、特定温度屈折率係数を持つ光学ガラスの開発が必要となり、時代の流れと共に光学設計や光学材料研究に新たな課題となっている。
【0006】
従来技術の屈折率1.65~1.73、アッベ数47~55の光学ガラスは、20~40℃の範囲で屈折率温度係数値、すなわちd線dn/dt relative(10-6/℃)が1.0~3.0(10-6/℃)程度である(下表1参照)。屈折率温度係数が0を下回り、さらには-1.0を下回り、上記の光性にあるランタノクラウンガラスを開発することができれば、設計において上記の温度ドリフトの問題を効果的に解決することができる。
【0007】
表1:一部屈折率1.65~1.73、アッベ数47~55の範囲のガラスの屈折率温度係数
【0008】
【表1】
【0009】
しかし、上述の屈折率とアッベ数のランタノクラウンガラスは、屈折率温度係数が0を下回る必要があり、成分設計上従来とは異なる必要があり、ガラスの結晶化抵抗性が悪く、ストリーク状気泡が除去されにくいなどの問題を生産上もたらすことが多い。
【0010】
もしガラスの結晶化抵抗性が悪いと、まずガラスブランクの生産難度を増加して、歩留まりが下がり、より深刻な場合は正常に生産することができない。次に、二次モールディングの過程で結晶析出(晶析)が発生しやすく、歩留まりが低下し、二次モールディングさえできなくなる。車載分野に応用されているガラス材料については、ガラスの生産歩留まりが低く、二次モールディングはできず、冷間加工で製作されるとコストが上がり、受入れがたくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする技術的課題は、中屈折率で屈折率温度係数の低い光学ガラスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)その組成を表すと、SiO2、B2O3、La2O3、RO及びRn2Oを含有し、R0がMgO、CaO、SrO及びBaOの1種以上であり、Rn20がLi2O、K2O及びNa2Oの1種以上であり、ガラスの屈折率が1.65~1.73、アッベ数が47~55、屈折率温度係数が0以下である光学ガラス。
【0013】
(2)その組成を重量%で表すと、SiO2:4~20%、B2O3:10~30%、La2O3:10~35%、BaO:10~40%、SrO:0~15%、CaO:0~10%、MgO:0~5%、Li2O:0~5%、K2O:0~6%、Na2O:0~8%、Gd2O3:0~8%、Y2O3:0~5%、ZrO2:0~3%、Al2O3:0~3%、TiO2:0~3%、Nb2O5:0~5%、WO3:0~2%、ZnO:0~5%、清澄剤0~2%を含有する(1)記載の光学ガラス。
【0014】
(3)その組成を重量%で表すと、SiO2:4~20%、B2O3:10~30%、La2O3:10~35%、BaO:10~40%、SrO:0~15%を含有する光学ガラス。
【0015】
(4)CaO:0~10%、MgO:0~5%、Li2O:0~5%、K2O:0~6%、Na2O:0~8%、Gd2O3:0~8%、Y2O3:0~5%、ZrO2:0~3%、Al2O3:0~3%、TiO2:0~3%、Nb2O5:0~5%、WO3:0~2%、ZnO:0~5%、清澄剤0~2%をさらに含有する(3)記載の光学ガラス。
【0016】
(5)その組成を重量%で表すと、SiO2:4~20%、B2O3:10~30%、La2O3:10~35%、BaO:10~40%、SrO:0~15%、CaO:0~10%、MgO:0~5%、Rn20:0~8%、Gd2O3:0~8%、Y2O3:0~5%、ZrO2:0~3%、Al2O3:0~3%、TiO2:0~3%、Nb2O5:0~5%、WO3:0~2%、ZnO:0~5%であり、Rn20がLi2O、K2O、Na2Oの1種以上である光学ガラス。
【0017】
(6)その組成を重量比で表すと、SiO2/B2O3が0.4~1.3、好ましくは0.45~1.2、より好ましくは0.5~1.1である(1)~(5)のいずれかに記載の光学ガラス。更に/又はBaO/La2O3が0.6~2、好ましくは0.65~1.9、より好ましくは0.7~1.8である。
【0018】
(7)その組成を重量比で表すと、CaO/(BaO+SrO)が0~0.5、好ましくは0.01~0.4、より好ましくは0.02~0.3更に/又はZnO/(CaO+SrO+BaO)が0~0.3、好ましくは0~0.2、より好ましくは0~0.15である。更に/又は(CaO+SrO+BaO)/(La2O3+Gd2O3+Y2O3)が0.7~2.5、好ましくは0.8~2.3、より好ましくは0.9~2.1である。更に/又は(CaO+SrO+BaO)/(Al2O3+ZrO2+TiO2)が8より大きく、好ましくは10より大きく、より好ましくは12より大きく、更に/又はSrO含有量≧CaO含有量、好ましくはBaO含有量≧SrO含有量≧CaO含有量である、(1)~(6)のいずれかに記載の光学ガラス。
【0019】
(8)その組成を重量%及び重量比で表すと、Li2O+Na2O+K2Oが0~8%、好ましくは0~6%、より好ましくは0~5%であり、更に/又はLi2O/(K2O+Na2O)が0~0.5、好ましくは0~0.4、より好ましくは0~0.3であり、更に/又はNa2O/K2Oが0.2~5.0、好ましくは0.3~4.0、より好ましくは0.4~3.0であり、更に/又はTiO2/Nb2O5が1以下、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.5以下である、(1)~(7)のいずれかに記載の光学ガラス。
【0020】
(9)その組成を重量%で表すと、SiO2:6~18%、及び/又はB2O3:12~25%、及び/又はLa2O3:12~30%、及び/又はBaO:12~35%、及び/又はSrO:0.5~15%、及び/又はCaO:0~8%、及び/又はGd2O3:1~6%、及び/又はY2O3:0~3%、及び/又はZrO2:0.1~3%、及び/又はAl2O3:0~2%、及び/又はTiO2:0~2%、及び/又はNb2O5:0.1~5%、及び/又はWO3:0~1%、及び/又はZnO:0~3%、及び/又はMgO:0~3%、及び/又はLi2O:0~3%、及び/又はK2O:0.3~4%、及び/又はNa2O:0.5~6%を含有する(1)~(8)のいずれかに記載の光学ガラス。
【0021】
(10)その組成を重量%で表すと、SiO2:8~16%、及び/又はB2O3:15~22%、及び/又はLa2O3:15~28%、及び/又はBaO:15~32%、及び/又はSrO:1~12%、及び/又はCaO:0~6%、及び/又はGd2O3:1~4%、及び/又はY2O3:1~3%、及び/又はZrO2:0.1~2%、及び/又はAl2O3:0.1~1%、及び/又はTiO2:0~1%、及び/又はNb2O5:0.5~4%、及び/又はK2O:0.5~3%、及び/又はNa2O:1~3%を含有する(1)~(9)のいずれかに記載の光学ガラス。
【0022】
(11)その組成を重量%で表すと、ZrO2:0.1~1%、及び/又はNb2O5:1~3%、及び/又はSrO:1.5~10%を含有する組成を有する(1)~(10)のいずれかに記載の光学ガラス。
【0023】
(12)ガラスの屈折率が1.65~1.73、好ましくは1.67~1.72であり、アッベ数は47~55、好ましくは48~52である、(1)~(11)のいずれかに記載の光学ガラス。
【0024】
(13)屈折率温度係数が≦0、好ましくは≦-0.5、より好ましくは≦-1.0、さらに好ましくは≦-2.0である(1)~(12)のいずれかに記載の光学ガラス。
【0025】
(14)ガラスの耐水安定性がクラス4以上、好ましくはクラス3以上、より好ましくはクラス2以上であり、更に/又は気泡度がクラスA以上、好ましくはレベルA0以上、より好ましくはレベルA00であり、更に/又はストリークは、レベルC以上、好ましくはレベルB以上、より好ましくはレベルAであり、更に/又は波長400nmにおける透過率の低下が10%以下、好ましくは8%以下、さらに好ましくは5%以下である日射に対する安定性を有する(1)~(13)のいずれかに記載の光学ガラス。
【0026】
(15)(1)~(14)のいずれかに記載の光学ガラスを用いたガラスプリフォーム。
【0027】
(16)(1)~(14)のいずれかに記載の光学ガラス又は(15)に記載のガラスプリフォームを用いた光学素子。
【0028】
(17)(1)~(14)のいずれかに記載の光学ガラス又は(16)に記載の光学素子を用いた光学機器。
【0029】
(18)(1)~(14)のいずれかに記載の光学ガラス又は(16)に記載の光学素子の車載への適用。
【発明の効果】
【0030】
本発明の有益な効果は、合理的な成分設計により、本発明の光学ガラスが中屈折率及び低い屈折率温度係数を有し、量産プロセス性能が良好であることである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の光学ガラスの各成分の組成範囲について説明する。本明細書では、特に明記されていない限り、各成分の含有量は、酸化物の組成に換算されたガラス物質全体に対する重量%で示されている。ここで、前記「酸化物に換算した組成」とは、本発明の光学ガラスの構成成分の原料として使用される酸化物、複合塩及び水酸化物等が溶融時に分解して酸化物に変化する場合に、当該酸化物の物質総量を100%とすることをいう。
【0032】
特に明記されていない限り、本明細書に記載されている数値の範囲は上限値と下限値を含み、「以上」と「以下」はエンドポイント値であり、その範囲内のすべての整数と分数を含み、範囲が限定された場合に記載されている具体的な値に限定されるものではない。本明細書で使用される用語「約」は、レシピ、パラメータ、及び他の数量及び特徴が正確ではなくともよく、あるいは必ずしも正確でなくともよいが、必要に応じて近似値でもよく、更に/又はより大きくてもより小さくてもよく、公差、換算係数、及び測定誤差などを反映できることを意味する。本明細書で「更に(及び)/又は」とは包含的であり、例えば「A更に(及び)/又はB」は、Aのみ、又はBのみ、あるいはAとBの両方を意味する。
【0033】
本発明の光学ガラスは、SiO2、B2O3、La2O3、RO(R0はMgO、CaO、SrO、BaOの1種以上。以下同じ。)、Rn2O(Rn2OはLi2O、K2O、Na2Oの1種以上。以下同じ。)を主成分とする。合理的なグループ配分比により屈折率1.65~1.73、アッベ数47~55の光学ガラスを形成し、20~40℃の温度範囲で屈折率温度係数(d線dn/dt relative(10-6/℃))が低く、結晶化抵抗性に優れ、長期使用で透過率が著しく低下することがなく、車載レンズ用途に非常に適している。
【0034】
SiO2とB2O3は本発明のガラスを構成するネットワーク形成体であり、ガラス形成の基礎であり、その含有量はガラスのガラス形成の安定性、結晶化抵抗性、屈折率とアッベ数などの重要な指標と密接に関係している。その中で、もしSiO2の含有量が20%を超えると、ガラスは溶けにくくなり、同時にガラスの安定性が低下し、結晶化抵抗性が急激に低下し、ガラスの屈折率とアッベ数は設計要求に達しない。SiO2の含有量が4%を下回ると、ガラスの化学的安定性、特に耐水作用安定性が低下し、ガラスの結晶化抵抗性が低下する。これにより、SiO2の含有量を4~20%、好ましくは6~18%、より好ましくは8~16%とする。いくつかの実施形態では、約4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%のSiO2であってもよい。
【0035】
B2O3の含有量が30%を超えると、ガラスの化学的安定性が低下し、アッベ数が設計予想より高くなる。B2O3の含有量が10%を下回ると、ガラスの結晶化抵抗性は急速に低下し、ガラスのアッベ数は設計期待に達しない。これにより、B2O3の含有量を10~30%、好ましくは12~25%、より好ましくは15~22%とする。いくつかの実施形態では、約10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%のB2O3であってもよい。
【0036】
SiO2とB2O3の相対含有量はある程度の上でB2O3がガラスの中の構造状態を决定することができて、B2O3の構造状態はガラスの屈折率の温度係数と化学の安定性に対して比較的に大きい影響を発生することができて、SiO2とB2O3の比SiO2/B2O3が1.3より大きい時、ガラスの屈折率の温度係数は急速に高くなって、設計の要求に達しない可能性がある。SiO2/B2O3が0.4より小さい場合、ガラスの化学的安定性、特に耐水性が急速に低下し、過酷な条件での使用要件を満たすことができません。したがって、本発明では、SiO2/B2O3の値を0.4~1.3とすることが好ましい。加えて、いくつかの実施形態では、SiO2/B2O3の値が0.45より小さい場合、成形時のガラスの高温粘度は非常に小さく、ガラス内部にレベルC以下のストリークが発生しやすく、ガラスを要求の高い画像形成システムに適用することができず、SiO2/B2O3の値が1.2より大きい場合、ガラスの気泡を除去することが困難である。したがって、いくつかの実施形態において、SiO2/B2O3の値は、0.45~1.2であることがより好ましく、0.5~1.1であることがより好ましい。いくつかの実施形態では、SiO2/B2O3の値は、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、0.95、1.0、1.05、1.1、1.15、1.2、1.25、1.3であってもよい。
【0037】
La2O3は本発明のガラスの重要な構成成分であり、ガラスに添加することにより、ガラスの屈折率を急速に上昇させることができ、ガラスに高屈折率低分散の性能を実現することができる。しかし、その含有量が35%を超えると、ガラスの結晶化抵抗性が急激に低下し、さらに深刻なのは、発明者の研究により、La2O3に強い凝集効果(集積効果)があり、含有量が35%を超えると、ガラスの屈折率温度係数が急速に上昇することが発見され、これはガラスの屈折率温度係数を低減しようとする本発明の目標に反する。その含有量が10%を下回ると、ガラスの屈折率と分散は設計要件を満たしておらず、同時にガラスの化学的安定性、特に耐水性が低下する。これにより、La2O3の含有量を10~35%、好ましくは12~30%、より好ましくは15~28%とする。いくつかの実施形態では、約10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%のLa2O3であってもよい。
【0038】
La2O3の含有量が比較的高い場合でもガラスが良好な結晶化抵抗性を維持するために、発明者は、一定量のGd2O3、Y2O3、ZrO2、TiO2、Al2O3等を添加することでガラスの結晶化抵抗性を高めることができることを発見した。
【0039】
具体的には、Gd2O3の屈折率や分散に対する作用はLa2O3と類似しているが、含有量が8%を超えるとガラスの屈折率温度係数が急速に上昇し、コストが急速に上がってしまい、ガラスの結晶化抵抗性が逆に低下するため、その含有量は0~8%、好ましくは1~6%、より好ましくは1~4%に限定されている。いくつかの実施形態では、約0%でもよく、0%より大きくてもよく、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%のGd2O3であってもよい。
【0040】
La2O3の代わりに少量のY2O3をガラスに添加しても、ガラスの屈折率と分散が大きく変化することはないが、その含有量が5%を超えると、ガラスの屈折率温度係数が急速に上昇し、ガラスの結晶化抵抗性が低下する。そのため、その含有量を0~5%、好ましくは0~3%、さらに好ましくは1~3%とする。いくつかの実施形態では、Y2O3は、約0%でもよく、0%より大きくてもよく、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%であってもよい。
【0041】
ZrO2は、本発明において任意成分であるが、ガラスの中に少量に加えることで、ガラスの結晶化抵抗性を高めることができ、ガラスの化学的安定性を著しく高めることができ、同時に少量のZrO2を添加することにより、製造におけるガラス液による耐火物の浸食を大幅に低減することができ、炉体の寿命を向上させ、炉体のメンテナンスコストと廃棄物排出を低減することができる一方、耐火物中の不純物のガラスへの侵入を大幅に抑制し、ガラスの透過率と結晶化に対する安定性を向上させることができる。しかし、ZrO2は本システムのガラスにおいてガラスの屈折率温度係数を下げるのに有害であり、その含有量が3%を超えるとガラスの屈折率温度係数が急速に上昇して設計要求に達することはなく、同時にガラスが非常に融解しにくくなり、結晶化抵抗性が急速に低下するので、本発明におけるZrO2の含有量は3%以下に限定される。ZrO2の含有量が0.1%を下回ると、ガラスによる耐火物への浸食は明らかに上昇する。したがって、本発明におけるZrO2の含有量は0.1~3%であることが好ましく、さらに好ましくは0.1~2%であり、さらに好ましくは0.1~1%である。いくつかの実施形態では、約0%でもよく、0%より大きくてもよく、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2%、2.1%、2.2%、2.3%、2.4%、2.5%、2.6%、2.7%、2.8%、2.9%、3%のZrO2であってもよい。
【0042】
少量のAl2O3をガラスに添加することにより、ガラスの結晶化抵抗性を向上させることができるとともに、ガラス液による坩堝(るつぼ)材料の腐食能力を低下させることができる。しかし、その添加量が3%を超えると、ガラスの屈折率温度係数が上昇し、同時にガラスの融解性能が低下し、屈折率も急速に低下する。そのため、その含有量を3%以下、好ましくは2%以下、より好ましくは0.1~1%とする。いくつかの実施形態では、約0%でもよく、0%より大きくてもよく、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2%、2.1%、2.2%、2.3%、2.4%、2.5%、2.6%、2.7%、2.8%、2.9%、3%のAl2O3であってもよい。
【0043】
ガラスに少量のTiO2を添加することにより、ガラスの耐日射安定性が向上し、特に車載レンズが高原などの強い紫外線環境に長期間さらされるために重要である。また、少量のTiO2はガラスの結晶化抵抗性を向上させる。しかし、TiO2は本システムのガラスにとって屈折率温度係数の低下に有害である。発明者の大量の試験研究の結果、その含有量が3%を超えると、ガラスの屈折率温度係数は設計要求に達しないことがわかったので、本発明におけるTiO2の含有量は3%以下、好ましくは0~2%、より好ましくは0~1%である。いくつかの実施形態では、約0%でもよく、0%より大きくてもよく、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2%、2.1%、2.2%、2.3%、2.4%、2.5%、2.6%、2.7%、2.8%、2.9%、3%のTiO2であってもよい。
【0044】
Nb2O5、WO3は高屈折高分散酸化物であり、ガラスに添加することでガラスの屈折率と分散を調節し、同時にガラスの化学的安定性を高めることができる。発明者の研究により、本システムのガラスにおいて、この2種類の酸化物は、TiO2、Bi2O3、Ta2O5、PbO等のように、ガラスの屈折率温度係数を高める能力が他の高屈折・高分散酸化物よりも遅い(劣る)ことがわかった。これら2つの高分散酸化物は、本発明のガラス屈折率温度係数を低減するという観点から、ガラス分散を増大させる理想的な酸化物である。Nb2O5の含有量が5%を超えると、ガラスのアッベ数が急速に低下して設計要求に達することはなく、ガラスの結晶化抵抗性も急速に低下するので、本発明ではNb2O5の含有量を5%以下に限定する。Nb2O5の含有量が0.1%を下回ると、WO3又は上記の他の高分散酸化物をより多く添加する必要があり、ガラスの透過率が低下したり、屈折率温度係数が急速に上昇したりすることを意味するので、Nb2O5の含有量は0.1~5%、より好ましくは0.5~4%、さらに好ましくは1~3%である。いくつかの実施形態では、約0%でもよく、0%より大きくてもよく、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2%、2.1%、2.2%、2.3%、2.4%、2.5%、2.6%、2.7%、2.8%、2.9%、3%のNb2O5であってもよい。
【0045】
WO3はNb2O5の代わりに少量で使用できるが、その含有量が2%を超えるとガラスの透過率が著しく低下する。そのため、その含有量を2%以下、好ましくは1%以下とし、さらに好ましくは導入しないようにする。いくつかの実施形態では、約0%でもよく、0%より大きくてもよく、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2%のWO3であってもよい。
【0046】
さらに、本発明に係るガラスは、主に車載レンズ、セキュリティレンズ等の屋外の過酷な環境下で使用され、特に高原地域において長期にわたって日光にさらされる。従来の光学ガラスは撮影機材向けに設計されており、通常、長期日焼け後のガラス透過率の低下は考慮されていない。したがって、ガラスの耐日射安定性をどのように向上させるかは、本発明のガラスが注目する重点問題の1つである。
【0047】
発明者が何度も実験した結果、いくつかの実施形態では、Nb2O5とTiO2を同時に使用することは、TiO2を個別で使用するよりもガラスの耐日射安定性を高める効果が顕著であることがわかった。しかし、TiO2とNb2O5の比TiO2/Nb2O5が1より大きい場合、ガラスの耐日射安定性は向上しないが、屈折率温度係数の上昇が速く、より低い屈折率温度係数を得るという目標に反する。これにより、屈折率温度係数がより低く、日射に対する安定性が強いガラスを得るために、TiO2/Nb2O5の値が1以下、好ましくは0.8以下、さらに好ましくは0.5以下である。いくつかの実施形態では、TiO2/Nb2O5の値は、0、0.05、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、0.95、1であってもよい。
【0048】
本発明のシステムのガラスでは、ガラスにZnOを添加することにより、ガラスの化学的安定性を向上させ、ガラスの高温粘度を低下させ、ガラスの製造難度を低下させることができる。しかし、発明者の研究により、ZnOの含有量が5%を超えると、ガラスの屈折率温度係数が急速に低下することがわかった。そのため、その含有量を5%以下、好ましくは3%以下とし、さらに好ましくは導入しないようにする。いくつかの実施形態では、約0%でもよく、0%より大きくてもよく、0.1%、0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%のZnOであってもよい。
【0049】
BaO、CaO、SrO、MgOはいずれもアルカリ土類金属酸化物であり、ガラスに添加することにより、ガラスの屈折率と分散を調節することができ、ガラスの安定性を高め、ガラスの結晶化抵抗性を高めることができる。一般的な技術文献は、このようなガラスにおける同族酸化物の作用は基本的に同じであると考えている。しかし、発明者は複数回の実験を通じて、本システムのガラスが最も注目する屈折率温度係数、化学的安定性、結晶化抵抗性について、これらのアルカリ土類金属酸化物の作用には非常に大きな違いがあることを発見した。
【0050】
BaOはガラスの屈折率温度係数を下げる能力が最も強いので、その含有量を10%以上に限定してこそ、発明の所望の屈折率温度係数を達成することができる。しかし、その含有量が40%を超えると、ガラスの化学的安定性、特に耐水性が急速に低下し、ガラスの結晶化抵抗性も急速に低下します。したがって、その含有量を10~40%、好ましくは12~35%、さらに好ましくは15~32%とする。いくつかの実施形態では、約10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%のBaOであってもよい。
【0051】
SrOはガラスの屈折率温度係数を下げる能力はCaOより強いがBaOより弱く、それはガラスに添加してガラスの化学的安定性を破壊する能力はBaOより弱く、もしSrOの含有量が15%を超えると、ガラスの結晶化抵抗性はかえって急速に悪化し、同時にガラスの屈折率温度係数は急速に上昇するので、その含有量は15%以下である。一方、多くの実験研究により、BaOが15%より高い場合には、0.5%以上のSrOを添加することでガラスの耐水性と結晶化安定性を明らかに向上させることができ、同時にガラスの屈折率温度係数は明らかに上昇しないことがわかった。したがって、本発明においては、SrO含有量が0.5~15%であることが好ましく、1~12%であることがより好ましく、1.5~10%であることがより好ましい。いくつかの実施形態では、約0%でもよく、0%より大きくてもよく、0.1%、0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%、10%、10.5%、11%、11.5%、12%、12.5%、13%、13.5%、14%、14.5%、15%のSrOであってもよい。
【0052】
一般的に、CaOはランタノクラウンガラスに不可欠な成分であり、それをガラスに添加することで、ガラスの屈折率と分散を高めることができ、ガラスの密度を大幅に下げることができ、レンズを軽量化することができ、ガラスの高温粘度と表面張力を下げ、ガラスの製造難度を下げることができます。しかし、本発明系のガラスでは、CaOはBaOやSrOに比べてガラスの屈折率温度係数を低下させる能力が低いため、屈折率温度係数を低下させる観点からは導入しないことが好ましい。しかし、CaOは上記3種類のアルカリ土類金属酸化物の中で耐水性を破壊する能力が最も弱いため、ガラスの耐水性向上の観点からも適量添加することができる。これにより、CaO含有量を0~10%、好ましくは0~8%、さらに好ましくは0~6%とする。いくつかの実施形態では、約0%でもよく、0%より大きくてもよく、0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%、10%のCaOであってもよい。
【0053】
本発明のシステムのガラスでは、MgOはガラスの屈折率温度係数を低下させるのに有害であるが、少量の添加はガラスの耐水性及び安定性を向上させることができる。もしその含有量が5%を超えると、ガラスの屈折率温度係数は設計要求に達することはなく、同時にガラスの結晶化抵抗性は急速に低下する。そのため、その含有量を5%以下、好ましくは3%以下とし、さらに好ましくは導入しないようにする。いくつかの実施形態では、約0%でもよく、0%より大きくてもよく、0.1%、0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%のMgOであってもよい。
【0054】
さらに重要なのは、発明者の研究によると、いくつかの実施形態では、BaO、CaO、SrOの3種類のアルカリ土類金属酸化物をすべて添加すると、ガラスは複雑な相乗作用を起こし、単一物質の添加に伴って性能が直線的に変化することはなく、CaO/(BaO+SrO)の値が0.5を超えると、ガラスの化学的安定性はある程度向上するが、ガラスの屈折率温度係数は急速に上昇し、ガラスの結晶化抵抗性は急速に低下するので、本発明におけるCaO/(BaO+SrO)の値は0~0.5であることが好ましい。いくつかの実施形態では、CaO/(BaO+SrO)の値が0.01~0.4であることがより好ましく、さらに好ましくは0.02~0.3である場合、ガラスの屈折率温度係数、化学的安定性、結晶化抵抗性のいずれも設計上の期待を達成することができる。いくつかの実施形態では、CaO/(BaO+SrO)の値は、0、0より大きく、0.01、0.02、0.05、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5であってもよい。
【0055】
いくつかの実施形態では、より低い温度屈折率係数を得るためには、BaO含有量≧CaO含有量、さらにはSrO含有量≧CaO含有量、さらにはBaO含有量≧SrO含有量≧CaO含有量を満足することが好ましい。
【0056】
ガラス系にZnOを添加してガラスの化学的安定性を高めるには、ZnO添加による屈折率温度係数の上昇を考慮しなければならない。発明者らは、いくつかの実施形態において、ZnO/(CaO+BaO+SrO)の値が屈折率温度係数及びガラスの化学的安定性に影響を与えることを発見した。ZnO/(CaO+BaO+SrO)の値が0.3より大きい場合、ガラスの化学的安定性はほとんど向上しないが、ガラスの屈折率温度係数は急激に上昇する。したがって、化学的安定性に優れ、屈折率温度係数の低いガラスを得るためには、ZnO/(CaO+BaO+SrO)の値が0.3以下であることが好ましく、0.2以下であることがより好ましく、0.15以下であることがより好ましい。いくつかの実施形態では、ZnO/(CaO+BaO+SrO)の値は0、0より大きく、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.2、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、0.3であってもよい。
【0057】
Li2O、Na2O、K2Oはいずれもアルカリ金属酸化物であり、適切な量の添加はガラスの屈折率温度係数を低下させるが、ガラスの化学的安定性、結晶化抵抗性は急速に低下する。発明者は多くの実験を通じて次のことを発見した。
【0058】
1)本発明系ガラスでは、ガラスの屈折率温度係数はアルカリ金属酸化物の成長に伴って直線的に低下するのではなく、極値になると屈折率温度係数は低下しないが、この極値にてアルカリ金属酸化物を添加し続けるとガラスの結晶化抵抗性が急激に低下する。いくつかの実施形態では、Li2O、Na2O及びK2Oの含有量の和であるLi2O+Na2O+K2Oの値が8%を超えると、ガラスの屈折率温度係数はもはや低下せず、結晶化抵抗性及び耐水性は大幅に低下する。
【0059】
生産の角度から言えば、清澄時の高温粘度が低いほど気泡の排出に有利であることが期待されるので、ガラスの屈折率温度係数、耐水性と結晶化抵抗性が設計要求に達した場合には、上述のアルカリ金属酸化物を8%以下添加することで、ガラスの高温粘度を高め、量産時のガラスの気泡度レベルを高めることができる。これにより、Li2O+Na2O+K2Oの合計量を8%以下、好ましくは6%以下、さらに好ましくは5%以下とする。いくつかの実施形態では、Li2O+Na2O+K2Oの合計量は、約0%でもよく、0%より大きくてもよく、0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%であってもよい。
【0060】
2)上記の3つのアルカリ金属酸化物が共に存在する場合、相乗効果が生じ、いくつかの実施形態では、Li2O/(K2O+Na2O)の値が0.5より大きい場合、ガラスの屈折率温度係数は実質的に変化しないが、ガラスの結晶化抵抗性と化学的安定性は大幅に低下するので、Li2O/(K2O+Na2O)の値は0.5より小さく、より好ましくは0.4より小さく、さらに好ましくは0.3より小さい。いくつかの実施形態では、Li2O/(K2O+Na2O)の値は、約0であってもよく、0より大きくてもよく、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5であってもよい。
【0061】
発明者の研究によると、屈折率温度係数を下げる観点から言えば、K2OとNa2Oはその働きが強く、Li2Oがそれに次ぐことがわかった。ガラスの化学的安定性を破壊するという観点から言えば、K2OとNa2Oはその働きが強く、Li2Oがそれに次ぐ。ガラスの結晶化抵抗性を破壊するという観点ではLi2Oはその働きが最も強く、K2OとNa2Oがそれに次ぐ。そのため、設計の期待を満たす屈折率温度係数、化学安定性及び結晶化抵抗性を獲得するために、どのように適切な種類と適切な量のアルカリ金属酸化物を選択するかは、大量の試験研究によって確定する必要がある。単一成分のアルカリ金属酸化物から言えば、Na2Oの含有量が8%を超えると、ガラスの結晶化抵抗性及び化学的安定性が大幅に低下するので、いくつかの実施形態では、その含有量は0~8%、好ましくは0.5~6%、さらに好ましくは1~3%に限定される。いくつかの実施形態では、K2Oの含有量が6%を超えると、ガラスの結晶化抵抗性及び化学的安定性が急速に低下するので、その含有量は0~6%、好ましくは0.3~4%、さらに好ましくは0.5~3%に限定される。いくつかの実施形態では、Li2Oの含有量が5%を超えると、ガラスの結晶化抵抗性は急速に低下するので、好ましくは5%より小さく、より好ましくは3%より小さく、さらに好ましくは導入されない。いくつかの実施形態では、Li2Oの含有量は、約0%でもよく、0%より大きくてもよく、0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%であってもよい。いくつかの実施形態では、Na2Oの含有量は、約0%でもよく、0%より大きくてもよく、0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%であってもよい。いくつかの実施形態では、K2Oの含有量は、約0%でもよく、0%より大きくてもよく、0.3%、0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%であってもよい。
【0062】
発明者の大量の研究によると、いくつかの実施形態では、ガラス中のNa2O/K2Oの割合はガラスの気泡度と耐水性と比較的大きな関連があり、Na2O/K2Oの値が5.0より大きい場合、ガラスの耐水性が急激に低下することがわかった。Na2O/K2Oの値が0.2より小さい場合、ガラスの気泡度は急速に低下する。したがって、Na2O/K2Oの値が0.2~5.0、好ましくは0.3~4.0、さらに好ましくは0.4~3.0の間であれば、優れた気泡度と耐水性を得ることができる。いくつかの実施形態では、Na2O/K2Oの値は、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.2、1.4、1.5、1.6、1.8、2.0、2.2、2.4、2.5、2.6、2.8、3.0、3.2、3.4、3.5、3.6、3.8、4.0、4.2、4.4、4.5、4.6、4.8、5.0であってもよい。
【0063】
本発明のガラスのシステムでは、BaO、SrO、CaOなどのアルカリ土類金属酸化物の合計含有量とLa2O3、Gd2O3、Y2O3の合計含有量との比がガラスの屈折率温度係数、結晶化抵抗性及び耐水性と大きく関係している。いくつかの実施形態では、(BaO+SrO+CaO)/(La2O3+Gd2O3+Y2O3)の値が2.5より大きい場合、ガラスの屈折率温度係数はもはや低下せず、ガラスの耐水性は急速に低下する。(BaO+SrO+CaO)/(La2O3+Gd2O3+Y2O3)が0.7より小さい場合、ガラスの耐水性は向上するが、ガラスの屈折率温度係数は急速に上昇し、ガラスの結晶化抵抗性は急速に低下する。したがって、屈折率温度係数が低く、耐水性が設計要件を満たし、かつ結晶化抵抗性に優れたガラスを得るためには、(BaO+SrO+CaO)/(La2O3+Gd2O3+Y2O3)の値が0.7~2.5、好ましくは0.8~2.3、さらに好ましくは0.9~2.1である必要がある。いくつかの実施形態では、(BaO+SrO+CaO)/(La2O3+Gd2O3+Y2O3)の値は、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5であってもよい。
【0064】
本発明のガラスのシステムでは、BaOとLa2O3が主成分であり、その比がガラスの屈折率温度係数とガラスの耐水性及び結晶化抵抗性との間に大きな相関関係があることがわかった。いくつかの実施形態では、BaO、La2O3含有量の比BaO/La2O3が2より大きい場合、ガラスの屈折率温度係数はもはや低下しないが、ガラスの耐水性は急激に低下する。BaO/La2O3の値が0.6より小さい場合、ガラスの耐水性は大幅に向上するが、ガラスの屈折率温度係数は設計要求に達することはなく、ガラスの結晶化抵抗性は大幅に低下し、溶融中にも晶析が発生する。これにより、BaO/La2O3の値を0.6~2、好ましくは0.65~1.9、さらに好ましくは0.7~1.8とする。いくつかの実施形態では、BaO/La2O3の値は、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、0.95、1.0、1.05、1.1、1.15、1.2、1.25、1.3、1.35、1.4、1.45、1.5、1.55、1.6、1.65、1.7、1.75、1.8、1.85、1.9、1.95、2.0であってもよい。
【0065】
発明者らは、いくつかの実施形態において、(CaO+BaO+SrO)/(Al2O3+ZrO2+TiO2)の値とガラスの屈折率温度係数との間に大きな相関関係があることを発見した。(CaO+BaO+SrO)/(Al2O3+ZrO2+TiO2)の値が8より小さい場合、ガラスの化学的安定性及び結晶化抵抗性はわずかに改善するものの、ガラスの屈折率温度係数は急激に上昇し、設計要件を満たすことができない。したがって、(CaO+BaO+SrO)/(Al2O3+ZrO2+TiO2)の値は8より大きく、好ましくは10より大きく、さらに好ましくは12より大きくする。
【0066】
清澄剤としては、Sb2O3、SnO2、SnO及びCeO2の1種又は数種を添加することができ、Sb2O3、SnO2、CeO2の成分を少量添加することでガラスの清澄効果を高めることができるが、Sb2O3の含有量が2%を超えると清澄性が低下する傾向があり、同時に強い酸化作用により成形型の劣化が促進されるため、本発明のSb2O3の添加量は2%以下、好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下である。清澄剤としてSnO2、SnOを添加することもできるが、その含有量が2%を超えるとガラスに色が付き、またガラスを加熱、軟化させてモールドプレス成形などで再成形するとSnが結晶核生成の起点となって失透する傾向を有する。このため、本発明のSnO2、SnOの含有量はそれぞれ2%以下、好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下であり、さらに好ましくは導入しない。CeO2の作用及び添加量比はSnO2と一致し、その含有量は2%以下、好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下であり、さらに好ましくは導入しない。いくつかの実施形態では、上記4つの清澄剤のうちの1種以上複数の含有量は、約0%でもよく、0%より大きくてもよく、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2.0%であってもよい。
【0067】
いくつかの実施形態では、清澄剤としてAs2O3、Clの化合物、Brの化合物等を用いてもよく、その含有量はそれぞれ2%以下、好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下であるが、環境保護等の観点からAs2O3を導入しないことが好ましい。いくつかの実施形態では、上記3つの清澄剤のうちの1種以上の含有量は、約0%でもよく、0%より大きくてもよく、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2.0%であってもよい。
【0068】
[含有してはならない成分について]
【0069】
本発明のガラス特性を損害しない範囲において、必要に応じて、上記において言及していないそのた成分を添加することができる。しかし、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ag及びMoなどの遷移金属成分は、単独又は複合的にガラスに少量含有される場合でも着色が生じ、さらに可視光領域の特定の波長に吸収を生じ、それによって本発明の可視光透過率向上効果の性質が弱められるため、特に可視光領域の波長の透過率が要求される光学ガラスには実質的に含有されないことが好ましい。
【0070】
Pb、Th、Cd、Tl、Os、Be及びSeの陽イオンは、近年以来、有害化学物質として取り扱いを制限する傾向がある。ガラスの製造工程だけではなく、加工工程及び製品化後の処置まで、環境保護対策が必要である。そのため、環境への影響を重要視する状況においては、不可欠に混入する以外は、含有しないのが好ましい。したがって、光学ガラスは、実際には環境汚染物質を含まないことになる。そのため、特殊の環境対策を取らなくても、本発明の光学ガラスは製造、 加工及び廃棄が可能となる。
【0071】
ここに記載する「導入しない」、「含まない」、「0%」とは、当該化合物、分子又は元素等を意図的に原料として本発明の光学ガラスに添加していないことをいう、ただし、光学ガラスを製造する原材料及び/又は装置として、意図的に添加されたものではない不純物又は成分が存在し、最終的な光学ガラスに少量又は微量に含まれることがあり、このような状況も本発明特許の保護範囲内にある。
【0072】
以下、本発明の光学ガラスの性能について説明する。
【0073】
[屈折率とアッベ数]
【0074】
光学ガラスの屈折率(nd)とアッベ数(νd)は、GB/T 7962.1-2010に規定された方法で試験される。
【0075】
本発明の光学ガラスは、屈折率(nd)が1.65~1.73の範囲であり、好ましくは1.67~1.72の範囲である。本発明のガラスのアッベ数(νd)は47~55の範囲であり、好ましくは48~52の範囲である。
【0076】
[屈折率温度係数]
【0077】
GB/T 7962.4-2010に規定された方法により、20-40℃の範囲で光学ガラスの屈折率温度係数(d線dn/dt relative(10-6/℃))を測定した。
【0078】
本発明の光学ガラスは、屈折率温度係数(dn/dt)が≦0、好ましくは≦-0.5、より好ましくは≦-1.0、さらに好ましくは≦-2.0である。
【0079】
[耐水作用安定性]
【0080】
光学ガラスの耐水作用安定性Dw(粉末法)はGB/T 17129に規定された方法で試験した。
【0081】
本発明の光学ガラスは、耐水作用安定性Dwが4種以上、好ましくは3種以上、より好ましくは2種以上である。
【0082】
[気泡度]
【0083】
光学ガラスの気泡度はGB/T7962.8-2010に規定された方法で試験した。
【0084】
本発明の光学ガラスは、気泡度がクラスA以上、好ましくはクラスA0以上、より好ましくはクラスA00である。
【0085】
[ストリーク]
【0086】
本発明のガラスのストリークは、MLL-G-174Bに規定された方法で測定される。かかる方法は点光源とレンズからなるストリークメータを用いる。ストリークが最も見えやすい方向から標準試料と比較検査し、A、B、C、Dの4レベルに分け、レベルAは所定の検出条件にて肉眼で見えないストリーク、レベルBは所定の検出条件で細かく分散したストリーク、レベルCは所定の検出条件で軽微な平行ストリーク、レベルDは所定の検出条件で粗いストリークである。
【0087】
本発明の光学ガラスのストリークは、レベルC以上、好ましくはレベルB以上、より好ましくはレベルAである。
【0088】
[耐日射性能]
【0089】
光学ガラスの耐日射安定性はJOGIS04-1994標準条件で10mm厚試料を4時間照射し、照射前と照射後の分光透過率曲線を比較することにより400nm帯でのガラスの減衰状況を決定する。ガラスの分光透過率曲線は分光光度計を用いて測定される。
【0090】
本発明の光学ガラスは、波長400nmにおける透過率の低下が10%以下、好ましくは8%以下、さらに好ましくは5%以下である耐日射安定性を有する。
【0091】
[結晶化抵抗性]
【0092】
光学ガラスの結晶化抵抗性試験方法は、試料ガラスを20×20×10mm規格に切断し、Tg+230℃のマッフル炉に入れて30分間保温し、取り出した後、保温綿に入れて徐冷し、冷却後に表面の晶析状況を観察した。
【0093】
本発明の光学ガラスは、試料ガラスを20×20×10mm規格に切断し、Tg+230℃のマッフル炉に入れて30分間保温し、取り出した後、保温綿に入れて徐冷したが、表面に顕著な結晶析出はなかった。本発明にいう表面に明らかな晶析がないとは、表面に晶析斑がないか、又は表面に晶析斑があるが、その面積が全面積の5%以下であり、かつ晶析深さが0.5mmを超えないことをいう。
【0094】
以下、本発明のガラスプリフォーム及び光学素子について説明する。
【0095】
本発明のガラスプリフォーム及び光学素子は、本発明の光学ガラスから形成されている。本発明のガラスプリフォームは、中屈折率及びより低い屈折率温度係数特性を有する。本発明の光学素子は、中屈折率及び低屈折率温度係数特性を有し、光学的価値の高い各種レンズ、プリズム等の光学素子を提供することができる。
【0096】
レンズの例として、レンズ面が球面又は非球面の凹面のメニスカスレンズ、凸面のメニスカスレンズ、両凸レンズ、両凹レンズ、平凸レンズ、平凹レンズ等各種レンズがある。
【0097】
また、プリズムは屈折率が相対的に高いため、撮像光学系に組み合わせることにより、光路を所望の方向に曲げることで、コンパクトで広角な光学系を実現することができる。
【0098】
本発明の光学ガラスにより形成された光学素子は、例えば、カメラ、撮影装置、表示装置、監視装置等の光学機器を作製することができる。
【0099】
本発明の光学ガラスは優れた化学的安定性及び低い屈折率温度係数等の性能を有するので、車載、監視安全等の分野への応用に特に適している。
【0100】
本発明の技術的解決手段をさらに理解するために、以下に本発明の光学ガラスの実施形態を説明する。これらの実施例は、本発明の範囲を限定しないことに留意されたい。
【0101】
[光学ガラス実施例]
【0102】
表2~3に示す光学ガラス(実施例1~20)は、ガラス用の通常の原料(例えば、酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩等)を、表に示す各実施例の比で計量混合したもので、混合原料を白金の坩堝(るつぼ)に入れて1300~1350℃で2.5~4時間融解し、清澄化、攪拌、均質化を行った後、気泡や未溶解物のない均質な溶融ガラスを得て、この溶融ガラスを型内で型枠し、アニールして製造する。
【0103】
実施例1~20の各列は光学ガラス組成と屈折率(nd);アッベ数(νd);20~40℃の範囲における、屈折率温度係数(d線dn/dt relative(10-6/℃))(dn/dt);粉末法の耐水作用安定性(Dw)を示す。サンプルガラスを20×20×10mm規格に切断し、温度Tg+230℃のマッフル炉に入れて30分間保温し、取り出した後、保温綿に入れて徐冷し、冷却した後、表面の晶析状況を観察し、明らかな晶析は「A」とし、明らかな晶析は「B」とした。気泡度、ストリーク度は標准の規定に基づいて表示する。耐日射安定性試験後の波長400nmでの透過率低下率を「ΔT(%)」と示す。
【0104】
SiO2/B2O3の値はK1で表される。TiO2/Nb2O5の値はK2で表される。CaO/(BaO+SrO)の値はK3で表される。ZnO/(CaO+BaO+SrO)の値をK4とする。Li2O+Na2O+K2Oの合計量をK5とする。Li2O/(K2O+Na2O)の値はK6である。Na2O/K2O値はK7で表される。(BaO+SrO+CaO)/(La2O3+Gd2O3+Y2O3)の値をK8とする。BaO/La2O3の値はK9で示す。((CaO+BaO+SrO)/(Al2O3+ZrO2+TiO2)の値をK10とする。
【0105】
【表2】
【0106】
【表3】
【0107】
[ガラスプリフォームの実施形態]
【0108】
表2の実施例1~10で得られた光学ガラスを所定の大きさに切断し、表面に離型剤を均一に塗布した後、これを加熱、軟化させて加圧成形し、凹メニスカスレンズ、凸メニスカスレンズ、両凸レンズ、両凹レンズ、平凸レンズ、平凹レンズなど各種レンズ、プリズムのプリフォームを製作する。
【0109】
[光学素子実施例]
【0110】
上記実施形態のガラスプリフォームから得られたこれらの母材をアニールし、屈折率等の光学特性が所望の値になるようにガラス内部の変形を低減しながら微調整する。
【0111】
次に、各プレハブを研削、研磨して、凹面のメニスカスレンズ、凸面のメニスカスレンズ、両凸レンズ、双凹レンズ、平凸レンズ、平凹レンズ等各種レンズ、プリズムを制作する。得られる光学素子の表面には反射防止フィルムを塗布することができる。