IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローランド株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-録音再生装置 図1
  • 特許-録音再生装置 図2
  • 特許-録音再生装置 図3
  • 特許-録音再生装置 図4
  • 特許-録音再生装置 図5
  • 特許-録音再生装置 図6
  • 特許-録音再生装置 図7
  • 特許-録音再生装置 図8
  • 特許-録音再生装置 図9
  • 特許-録音再生装置 図10
  • 特許-録音再生装置 図11
  • 特許-録音再生装置 図12
  • 特許-録音再生装置 図13
  • 特許-録音再生装置 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-23
(45)【発行日】2023-03-31
(54)【発明の名称】録音再生装置
(51)【国際特許分類】
   G10H 1/00 20060101AFI20230324BHJP
【FI】
G10H1/00 101C
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021530406
(86)(22)【出願日】2019-07-09
(86)【国際出願番号】 JP2019027194
(87)【国際公開番号】W WO2021005724
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2021-12-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000116068
【氏名又は名称】ローランド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】脇山 光弘
【審査官】中村 天真
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-112679(JP,A)
【文献】特開2009-300904(JP,A)
【文献】特開2016-180947(JP,A)
【文献】特開2015-075661(JP,A)
【文献】特開2016-071031(JP,A)
【文献】特開2013-050530(JP,A)
【文献】特開2002-221964(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10H 1/00-7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された音声を記憶する録音手段と、
記憶された音声を再生する再生手段と、
順次取得した指示をトリガとしてタイミングを決定する決定手段と、
第一のタイミングから第二のタイミングまでの間に入力された音声を第一音声として録音し、かつ、第三のタイミングから第四のタイミングまでの間に入力された音声を第二音声として録音する録音制御手段と、
前記第一音声のループ再生を、前記第二のタイミングから開始すると共に前記第三のタイミングで停止し、かつ、前記第二音声のループ再生を、前記第四のタイミングから開始する再生制御手段と、
を有し、
前記再生制御手段は、第五のタイミングで、前記第二音声のループ再生を停止し、かつ、前記第一音声のループ再生を開始する
ことを特徴とする、録音再生装置。
【請求項2】
前記決定手段は、ユーザが操作子に対して行った操作を前記指示として取得する
ことを特徴とする、請求項1に記載の録音再生装置。
【請求項3】
前記録音制御手段は、前記第一音声のループ再生中に入力された音声を、少なくとも前記第一音声のループ再生が一回行われるまで間、第三音声として録音する
ことを特徴とする、請求項1または2に記載の録音再生装置。
【請求項4】
所定長の第一のフレーズ音声を予め記憶し、
前記決定手段は、前記取得した指示と、前記第一のフレーズ音声の長さと、に基づいて前記第一のタイミングを決定する
ことを特徴とする、請求項1からのいずれかに記載の録音再生装置。
【請求項5】
所定長の第二のフレーズ音声を予め記憶し、
前記再生制御手段は、前記第三のタイミングにおいて、前記第二のフレーズ音声の再生を開始する
ことを特徴とする、請求項1からのいずれかに記載の録音再生装置。
【請求項6】
前記再生制御手段は、前記第三のタイミングから前記第四のタイミングまでの時間間隔よりも、前記第二のフレーズ音声の長さの方が短い場合に、少なくとも前記第四のタイミングが到来するまでの間、前記第二のフレーズ音声をループ再生する
ことを特徴とする、請求項に記載の録音再生装置。
【請求項7】
前記決定手段は、前記第一ないし第四のタイミングを決定する指示のいずれとも異なる指示があった場合にエンドタイミングを決定し、
前記再生制御手段は、前記エンドタイミングにおいて前記ループ再生を停止する
ことを特徴とする、請求項1からのいずれかに記載の録音再生装置。
【請求項8】
第三のフレーズ音声を予め記憶し、
前記再生制御手段は、前記エンドタイミングにおいて、前記第三のフレーズ音声の再生を開始する
ことを特徴とする、請求項に記載の録音再生装置。
【請求項9】
前記決定手段は、前記第三のタイミングを決定する指示と前記エンドタイミングを決定する指示とを、ユーザが行った一の操作子に対する操作から取得し、当該一の操作子への操作態様に基づいて、前記第三のタイミングまたは前記エンドタイミングのいずれかを決定する
ことを特徴とする、請求項7または8に記載の録音再生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、楽音を録音および再生する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
演奏した楽音を録音し、当該楽音を再生しながら新たに音を重ねていくことで、いわゆるサウンド・オン・サウンド効果が得られるルーパー・エフェクター(以下、ルーパー)が知られている。ルーパーは、一人で多重録音やジャムセッションを楽しむことができることから人気が高まっている。
これに関する技術として、例えば、特許文献1には、ループごとに楽音信号を異なる記憶領域に記録し、演奏後に自由に選択することができる録音再生装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3827820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の録音再生装置は、所定の記憶領域内において複数のフレーズを録音することができる。
一方、既存のルーパーでは、一つのセクションに対する録音および再生しか行うことができないため、ヴァース-コーラス形式のように、異なるセクションを含んで構成される楽曲を演奏することができなかった。
【0005】
本発明は上記の課題を考慮してなされたものであり、多重録音が可能な録音再生装置において多彩な表現を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる録音再生装置は、入力された音声の録音と再生を、ユーザが行った指示に基づいて制御する装置である。
具体的には、入力された音声を記憶する録音手段と、記憶された音声を再生する再生手段と、順次取得した指示をトリガとしてタイミングを決定する決定手段と、第一のタイミングから第二のタイミングまでの間に入力された音声を第一音声として録音し、かつ、第三のタイミングから第四のタイミングまでの間に入力された音声を第二音声として録音する録音制御手段と、前記第一音声のループ再生を、前記第二のタイミングから開始すると共に前記第三のタイミングで停止し、かつ、前記第二音声のループ再生を、前記第四のタイミングから開始する再生制御手段と、を有することを特徴とする。
【0007】
本発明に係る録音再生装置は、ユーザが行った操作に基づいて、第一ないし第四のタイミングを生成し、当該タイミングによって、録音を行うフェーズと、再生を行うフェーズとを切り替える。
第一および第三のタイミングが録音を開始するタイミングで、第二および第四のタイミングがループ再生を開始するタイミングである。第一および第二のタイミングでは、第一音声の録音/再生を開始し、第三および第四のタイミングでは、第二音声の録音/再生を開始する。このように、第一音声と第二音声を分離し、それぞれに対して録音開始および再生開始のタイミングを指示可能にすることで、ヴァースとブリッジ、ヴァースとコーラスなど、異なるセクションを有する楽曲を録音し、再生することが可能になる。
【0008】
なお、前記決定手段は、ユーザが操作子に対して行った操作を前記指示として取得してもよい。操作子は、例えば、楽器の演奏を行いながら操作が可能なフットペダル等であることが好ましいが、この限りでない。
【0009】
また、前記再生制御手段は、第五のタイミングで、前記第二音声のループ再生を停止し、かつ、前記第一音声のループ再生を開始することを特徴としてもよい。
かかる構成によると、ヴァース部とコーラス部など、異なるセクションを往復することが可能になる。
【0010】
また、前記録音制御手段は、前記第一音声のループ再生中に入力された音声を、少なくとも前記第一音声のループ再生が一回行われるまでの間、第三音声として録音することを特徴としてもよい。
第一音声の再生と同期して第三音声の録音を行うことで、音声の重ね合わせを行うことが可能になる。録音した第三音声は、第一音声と混合してループ再生させてもよい。
【0011】
また、所定長の第一のフレーズ音声を予め記憶し、前記決定手段は、前記取得した指示と、前記第一のフレーズ音声の長さと、に基づいて前記第一のタイミングを決定することを特徴としてもよい。
【0012】
第一のフレーズ音声は、例えば、打楽器等によって演奏されるリズムパターンであるが、これに限られない。
第一のフレーズ音声をイントロとして演奏を開始する場合、第一のフレーズ音声の長さに基づいて第一のタイミングを決定することで、イントロの再生が完了し、メインフレーズが始まるタイミングで録音をスタートさせるといった動作が可能になる。
【0013】
また、所定長の第二のフレーズ音声を予め記憶し、前記再生制御手段は、前記第三のタイミングにおいて、前記第二のフレーズ音声の再生を開始することを特徴としてもよい。
また、前記再生制御手段は、前記第三のタイミングから前記第四のタイミングまでの時間間隔よりも、前記第二のフレーズ音声の長さの方が短い場合に、少なくとも前記第四のタイミングが到来するまでの間、前記第二のフレーズ音声をループ再生することを特徴としてもよい。
第二のフレーズ音声の長さが、ユーザによって指定されたループの長さと一致するとは限らない。この場合、ユーザの指示を優先させて全体のループ長を設定することで、よりユーザの意図に沿った演奏を行うことができる。
【0014】
また、前記決定手段は、前記第一ないし第四のタイミングを決定する指示のいずれとも異なる指示があった場合にエンドタイミングを決定し、前記再生制御手段は、前記エンドタイミングにおいて前記ループ再生を停止することを特徴としてもよい。
また、第三のフレーズ音声を予め記憶し、前記再生制御手段は、前記エンドタイミングにおいて、前記第三のフレーズ音声の再生を開始することを特徴としてもよい。
かかる構成によると、任意のタイミングで演奏を終了させることができる。第三のフレーズ音声は、例えば、エンディングに対応するフレーズとすることができる。
【0015】
また、前記決定手段は、前記第三のタイミングを決定する指示と前記エンドタイミングを決定する指示とを、ユーザが行った一の操作子に対する操作から取得し、当該一の操作子への操作態様に基づいて、前記第三のタイミングまたは前記エンドタイミングのいずれかを決定することを特徴としてもよい。
操作態様とは、例えば、シングルプッシュ、ダブルプッシュ、長押しなどであるが、これらに限られない。異なる態様によって操作を区別することで、単一のインタフェースで複数の指示を行うことが可能になる。
【0016】
なお、本発明は、上記手段の少なくとも一部を含む録音再生装置して特定することができる。また、前記録音再生装置が実行する方法として特定することもできる。また、前記方法を実行させるためのプログラムや、当該プログラムが記録された非一時的記憶媒体として特定することもできる。上記処理や手段は、技術的な矛盾が生じない限りにおいて、自由に組み合わせて実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】ユーザが行った操作と、処理の遷移タイミングとの関係を説明する図。
図2】録音再生装置が扱うリズムトラックとユーザトラックの関係を示した図。
図3】装置に記憶されたリズムパターンを説明する図。
図4】実施形態に係る録音再生装置のハードウェア構成図。
図5】録音再生装置100の外観を示す図。
図6】制御部101が有する機能ブロックを説明する図。
図7】リズムトラック制御部が行うリズムトラックの再生処理を説明する図。
図8】リズムトラック制御部が行う処理のフローチャート。
図9】ユーザトラック制御部が行う処理のフローチャート。
図10】録音および再生中におけるバッファの状態を説明する図。
図11】リズムトラックとユーザトラックとの同期処理を説明するフロー図。
図12】ユーザが指定したループ長とリズムパターンとの関係を説明する図。
図13】リズムトラックとユーザトラックとの同期処理を説明するフロー図。
図14】リズムトラックとユーザトラックとの同期処理を説明するフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第一の実施形態)
本実施形態に係る録音再生装置100は、入力された楽音信号を記録し、再生する装置である。また、録音再生装置100は、ユーザ(奏者)による操作に基づいてループ区間を設定し、当該ループ区間に対して、楽音信号の録音と再生を繰り返し行う。録音は、新規に行うこともでき、記録された楽音信号に対して新たな楽音信号を重ねる(ミックス,オーバーダビング等とも呼ぶ)こともできる。
【0019】
また、本実施形態に係る録音再生装置100は、入力された楽音信号の録音および再生を行うルーパーとしての機能と、予め記録されたリズムパターンをループ再生するリズムマシンとしての機能の双方を有している。ルーパーが利用するトラック(入力された楽音信号の録音および再生を行うトラック)をユーザトラック、リズムマシンが利用するトラック(リズムパターンを再生するトラック)をリズムトラックと称する。録音再生装置100は、ユーザトラックの進行とリズムトラックの進行を同期させることで、多彩な演奏を可能にした装置である。
【0020】
具体的な説明に入る前に、リズムトラックとユーザトラックの関係について説明する。
図2は、本実施形態に係る録音再生装置100が扱うリズムトラックとユーザトラックの関係を示した図である。
リズムトラックは、パーカッション等によって構成されるリズムパターンを再生するトラックである。リズムトラックは、図示したように、イントロ部、ヴァース部、コーラス部、エンディング部のいずれかに対応するリズムパターンを再生する(図中の矢印は遷移方向を表す)。録音再生装置100は、図3に示したように、各セクションに対応するリズムパターン(具体的にはMIDIデータ)を複数記憶しており、ユーザによって選択されたパターンを再生する。
【0021】
ユーザトラックは、ユーザによって演奏された楽音を録音し、ループ再生するトラックである。ユーザトラックでは、ヴァース部およびコーラス部の二つをそれぞれ独立して録音および再生することができる。
本実施形態に係る録音再生装置100は、ユーザが指示したタイミングに基づいて、セクション間の遷移、および、トラック間の同期を行う。詳細な動作については後述する。
【0022】
図4は、本実施形態に係る録音再生装置100のハードウェア構成図である。本実施形態に係る録音再生装置100は、制御部101、補助記憶装置102、主記憶装置103、入出力部104、音源ユニット105、音声出力部106、音声入力部107を有して構成される。
【0023】
制御部101は、録音再生装置100が行う制御を司る演算装置(CPU)である。具体的には、リズムトラックのループ再生を行う制御と、ユーザトラックの録音およびループ再生を行う制御、リズムトラックとユーザトラックの進行を同期させる制御などを実行する。制御部101は、録音手段、再生手段、決定手段、録音制御手段、再生制御手段に相当する。
【0024】
補助記憶装置102は、書き換え可能な不揮発性メモリである。補助記憶装置102には、制御部101において実行される制御プログラムや、当該制御プログラムが利用するデータが記憶される。また、補助記憶装置102には、録音再生装置100が取得した楽音信号が記録される。当該楽音信号は、制御部101の指示によって読み出され、再生される。
【0025】
主記憶装置103は、制御部101によって実行される制御プログラムや、当該制御プログラムが利用するデータが展開されるメモリである。補助記憶装置102に記憶されたプログラムが主記憶装置103にロードされ、制御部101によって実行されることで、以降に説明する処理が行われる。また、主記憶装置103は、録音再生装置100が取得した楽音信号を一時的に記憶する。
【0026】
入出力部104は、ユーザに対して情報を提示し、また、ユーザからの操作を受け付ける複数のインタフェース装置を含む。入出力部104は、操作子に相当する手段を含む。
入出力部104は、例えば、装置の状態に関する情報を出力する表示装置を含んで構成される。また、入出力部104は、例えば、音量やテンポの指定、リズムトラックにおいて再生するリズムパターンの選択などを行う入力装置を含んで構成される。
さらに、入出力部104は、ユーザが装置に対してタイミングを指示するためのインタフェース(例えば、フットスイッチ等)を含んで構成される。
【0027】
図5は、本実施形態に係る録音再生装置100の外観を示した図である。
本実施形態では、入出力部104は、ループスイッチ104A、リズムスイッチ104B、表示部104C、操作ボタン104D、ループインジケータ104E、リズムインジケータ104Fを含んで構成される。
ループスイッチ104Aおよびリズムスイッチ104Bは、ユーザが足で操作するフットスイッチであり、それぞれ、ユーザトラックおよびリズムトラックに対する制御を行うために利用される。詳細な制御の内容については後述する。
【0028】
表示部104Cは、現在の設定内容を表示する液晶ディスプレイである。表示部104Cには、例えば、選択されたリズムセットの名称、設定された拍子やテンポ等に関する情報などが表示される。
操作ボタン104Dは、各種設定を行うための物理キーである。
【0029】
ループインジケータ104Eは、現在のユーザトラックの状態を表すインジケータである。ループインジケータ104Eは、録音/再生を行っているセクション(ヴァース/コーラス)を表すランプと、ループ中における現在位置を表すランプを含んで構成される。
リズムインジケータ104Fは、現在のリズムトラックの状態を表すインジケータである。リズムインジケータ104Fは、再生を行っているセクション(イントロ/ヴァース/コーラス/エンディング)を表すランプと、ループ中における現在位置を表すランプを含んで構成される。
【0030】
図3に戻り、説明を続ける。
音源ユニット105は、MIDIデータを楽音信号に変換して出力するユニットである。音源ユニット105で生成された楽音信号は、音声出力部106へ供給される。
音声出力部106は、楽音信号の出力を行うインタフェースである。制御部101から出力されたデジタル信号は、D/Aコンバータによってアナログ信号に変換され、アンプやスピーカ等を介して放音される。
音声入力部107は、楽音信号の入力を行うインタフェースである。入力された楽音信号は、A/Dコンバータによってデジタル信号に変換され、制御部101に供給される。
【0031】
次に、図6を参照しながら、制御部101が有する機能ブロックについて説明する。
制御部101は、リズムトラック制御部1011、ユーザトラック制御部1012、同期制御部1013の各機能ブロックを有して構成される。これらの機能ブロックは、対応するプログラムモジュールがCPUにおいて実行されることで実現されてもよい。
【0032】
リズムトラック制御部1011は、リズムトラックの再生を行う。リズムトラック制御部1011は、リズムマシンに相当する。具体的には、ユーザによって選択されたリズムセットに対応するMIDIデータを補助記憶装置102から取得し、事前に設定された内容(テンポ等)に従って、音源ユニット105を用いて楽音の再生を行う。
【0033】
ユーザトラック制御部1012は、ユーザトラックの録音および再生を行う。ユーザトラック制御部1012は、ルーパーに相当する。具体的には、ユーザによって指定されたタイミングに基づいてループ区間を設定し、当該ループ区間を対象として、入力された楽音の録音または再生を繰り返し行う。録音は複数回行うことができ、録音された複数のフレーズは個別に保持される。これにより、録音した複数のフレーズをミックスしてループ再生することが可能になる。
また、ユーザトラック制御部1012は、ヴァース部およびコーラス部の二つに対して、それぞれ独立して録音/再生処理を行うことができる。すなわち、ユーザトラック制御部1012は、二つの論理的なルーパーを包含しており、ユーザの指示に基づいてそれらを切り替えることができる。
【0034】
同期制御部1013は、リズムトラックの進行とユーザトラックの進行を同期させる。具体的には、リズムトラック制御部1011から、セクション間の遷移タイミングに関する情報(タイミング情報)を取得し、ユーザトラック制御部1012に通知する。これにより、双方のトラックにおいて、演奏を行うセクションを同期させることが可能になる。
また、同期制御部1013は、ユーザトラック制御部1012から、ユーザによって指定されたループ長に関する情報(ループ長情報)を取得し、リズムトラック制御部1011に通知する。これにより、ユーザが所望するループ長に合わせてリズムフレーズを再生することが可能になる。
【0035】
次に、リズムトラック制御部1011が行う、リズムトラックの再生方法について説明する。
図7は、リズムトラックにおけるセクションの遷移を説明する図である。リズムトラック制御部1011は、図示した流れによって、イントロ部、ヴァース部、コーラス部、エンディング部に対応するMIDIデータの再生を順次行う。
なお、テンポの設定、リズムセットの選択等は、事前に完了しているものとする。以降の説明においては、スイッチを一回押下する操作を第一アクション、スイッチを長押しする操作を第二アクション、所定の時間内にスイッチを二回押下する操作を第三アクションと称するが、操作を区別することができれば、操作内容は例示したもの以外であってもよい。
【0036】
図8は、リズムトラック制御部1011が実行する処理のフローチャートである。
リズムトラック制御部1011は、リズムスイッチ104Bの第一アクションが検出された場合に、指定されたリズムセットに対応するMIDIデータを読み込み、設定されたパラメータ(テンポ等)に従って、音源ユニット105によってイントロ部の再生を開始する(ステップS11)。
イントロ部の再生が完了すると、リズムトラック制御部1011は、ヴァース部の再生を自動的に開始する(ステップS12)。
ヴァース部の再生中において、リズムトラック制御部1011は、ユーザによってリズムスイッチ104Bの操作があったか否かを監視する(ステップS13)。
ヴァース部の再生中に、ユーザによるリズムスイッチ104Bの操作が行われなかった場合、リズムトラック制御部1011は、再生ポインタをヴァース部の先頭に戻し、再生を継続する。すなわち、ユーザが操作を行わなかった場合、ヴァース部がループ再生される。
【0037】
ヴァース部の再生中に、リズムスイッチ104Bの第二アクションが検出された場合、リズムトラック制御部1011は、ヴァース部の再生完了を待って、コーラス部の再生を開始する(ステップS14)。
【0038】
コーラス部の再生中において、リズムトラック制御部1011は、ユーザによってリズムスイッチ104Bの操作があったか否かを監視する(ステップS15)。
コーラス部の再生中に、ユーザによるリズムスイッチ104Bの操作が行われなかった場合、リズムトラック制御部1011は、再生ポインタをコーラス部の先頭に戻し、再生を継続する。すなわち、ユーザが操作を行わなかった場合、コーラス部がループ再生される。
【0039】
コーラス部の再生中に、リズムスイッチ104Bの第二アクションが検出された場合、リズムトラック制御部1011は、コーラス部の再生完了を待って、ヴァース部の再生を開始する。すなわち、処理をステップS12へ遷移させる。
【0040】
ヴァース部またはコーラス部の再生中に、リズムスイッチ104Bの第三アクションが検出された場合、リズムトラック制御部1011は、ヴァース部またはコーラス部の再生完了を待って、エンディング部の再生を開始する。すなわち、処理をステップS16へ遷移させる。
エンディング部の再生が完了すると、リズムトラック制御部1011は、リズムトラックの再生を停止する。
【0041】
次に、ユーザトラック制御部1012が行う、ユーザトラックの録音/再生方法について個別に説明する。
図9は、ユーザトラック制御部1012が実行する処理のフローチャートである。また、図10は、録音および再生中におけるバッファの状態を説明する図である。
なお、前述したように、ユーザトラック制御部1012は、ヴァース部およびコーラス部の二つに対して、それぞれ独立して録音/再生処理を行うことができるが、説明を簡単にするため、ここでは、共通する動作のみを説明する。
【0042】
ユーザトラック制御部1012は、開始トリガを検知すると、録音を行うフェーズを開始し、音声入力部107から楽音信号の取得を開始する(ステップS21)。取得した楽音信号は、図10(A)に示したように、主記憶装置内に随時蓄積される。
録音中において、ユーザトラック制御部1012は、ユーザによってループスイッチ104Aの操作があったか否かを監視する(ステップS22)。
【0043】
録音中において、ループスイッチ104Aの第一アクションが検出された場合、ユーザトラック制御部1012は、取得した楽音信号を保存する。図10に示した例の場合、録音された楽音信号がバッファ1に保存される。ループ区間ごとに保存された楽音信号を、演奏データとも称する。
次に、ユーザトラック制御部1012が、ループスイッチ104Aの第一アクションを検出したタイミングに基づいてループ区間を設定する(ステップS23)。図示した例の場合、t1の長さを持つループ区間が設定される。
なお、ループ区間を設定する際に、クォンタイズを行ってもよい。例えば、事前に設定されたテンポ情報に基づき、拍が到来するタイミングを決定し、ループスイッチ104Aの第一アクションがあった後で到来する拍のタイミングまでをループ区間としてもよい。
【0044】
楽音信号がバッファに保存されると、ユーザトラック制御部1012は、保存したバッファの内容を再生するフェーズに移行する(ステップS24)。これによりユーザは、図10(B)に示したように、直前に行った演奏の内容を確認することができる。
再生中において、ユーザトラック制御部1012は、ユーザによってループスイッチ104Aの操作があったか否かを監視する(ステップS25)。
【0045】
再生中において、ユーザによるループスイッチ104Aの操作が行われなかった場合、ユーザトラック制御部1012は、再生ポインタをバッファの先頭に戻し、再生を継続する。すなわち、ユーザが操作を行わなかった場合、バッファ1の内容がループ再生される。
【0046】
再生中において、ループスイッチ104Aの第一アクションが検出された場合、ユーザトラック制御部1012は、現在再生されているバッファの再生完了を待って、処理をステップS21へ遷移させ、オーバーダビングを開始する。
【0047】
オーバーダビングとは、記録された楽音に対して新たな楽音を重ねる処理を指す。
2回目のステップS21の処理において、ユーザトラック制御部1012は、録音済みのバッファ(バッファ1)の内容を再生しながら、新たな楽音信号を記録する(図10(C))。オーバーダビングにおいては、図10(A)と同様に、取得した楽音信号が主記憶装置内に随時蓄積されるが、1回目のループで録音したバッファの内容は変更されない。
オーバーダビング中においても、ユーザトラック制御部1012は、ユーザによってループスイッチ104Aの操作があったか否かを監視する(ステップS22)。
【0048】
オーバーダビング中において、ループスイッチ104Aの第一アクションが検出された場合、ユーザトラック制御部1012は、記憶した楽音信号を新規のバッファ(バッファ2)に保存し、再生フェーズ(ステップS24)へ移行する。
なお、二回目以降のループ(オーバーダビングを行うフェーズ)では、ステップS23の処理はスキップされる。
【0049】
複数のバッファが存在する状態で再生フェーズ(ステップS24)が開始された場合、ユーザトラック制御部1012は、当該複数のバッファの内容を混合して出力する。図10(D)の例では、一回目の録音で記録されたバッファ1の内容と、二回目の録音で記録されたバッファ2の内容が混合されて出力する。
【0050】
このように、ユーザトラック制御部1012は、設定したループ区間に対して、楽音を重ねて録音し再生することができる。
【0051】
以上、リズムトラック制御部1011が行うリズムトラックの再生方法、および、ユーザトラック制御部1012が行うユーザトラックの録音/再生方法について説明した。
【0052】
リズムトラック制御部1011およびユーザトラック制御部1012は、前述した処理をそれぞれ独立して行うことができる。
これに加え、本実施形態に係る録音再生装置は、図6に示したように、同期制御部1013が、リズムトラックとユーザトラックを同期させる処理を行う。
【0053】
同期制御部1013は、セクションの遷移タイミングを、リズムトラック制御部1011とユーザトラック制御部1012との間で共有させる役割を果たす。例えば、リズムトラックがイントロ部からヴァース部に遷移するタイミングを、ユーザトラック制御部1012に通知することで、リズムパターン(ヴァース部)の再生が始まるタイミングでユーザトラックの録音を開始させることができる。
【0054】
さらに、同期制御部1013は、リズムトラックとユーザトラックとの間でループ長を一致させる役割を果たす。ユーザトラックでは、ユーザが所望する長さを持つループを作成することができるため、ユーザトラックとリズムトラックを同時に再生する場合、リズムパターンの長さを、ユーザが指定したループ長と一致させる必要があるためである。
【0055】
図1を参照して、リズムトラックとユーザトラックの同期、および、ユーザが行った操作と各トラックにおける動作の関係を説明する。以下の説明では、リズムトラック制御部1011およびユーザトラック制御部1012は、同期制御部1013と連携して動作する。連携の方法は、図11~14を参照して後述し、ここでは概要を述べる。
【0056】
前述したように、ユーザトラック制御部1012は、ヴァース部とコーラス部の双方について図9に示した処理を個別に実行できる。ヴァース部に対応するバッファのセットと、コーラス部に対応するバッファのセットは、メモリ上の異なる領域にそれぞれ保持される(第一の領域および第二の領域)。これにより、ユーザが指定したタイミングで、ヴァース部とコーラス部を互いに遷移することができる。
【0057】
図中のt1~t7は、ユーザの操作が行われたタイミングを表す。
t1は、ユーザが第一の操作を行ったタイミングである。当該タイミングでは、リズムトラック制御部1011が、イントロ部の再生を開始する。イントロ部の再生が終わると、ユーザトラック制御部1012が、ヴァース部の録音を開始する。当該タイミングが、第一のタイミングである。すなわち、第一のタイミングは、第一の操作に基づいて設定されたタイミングであるといえる。
なお、図1において、数字が書かれたマスは拍子を表す。黒い背景のマスは録音動作を表し、白い背景のマスは再生動作を表す。
【0058】
ヴァース部の録音を行うフェーズ(第一のフェーズ)は、第一のタイミングから、第二のタイミングまで継続する。第二のタイミングは、第二の操作(t2)に基づいて設定されたタイミングであり、本実施形態では、ステップS22で説明したように、ループスイッチの第一アクションをトリガとして設定される。
第二のタイミングが到来すると、ユーザトラック制御部1012は、第一のタイミングから第二のタイミングまでに取得された楽音信号(ヴァース部に対応するバッファ)を、メモリ内の第一の領域に記憶させる。
【0059】
第二のタイミングからは、ヴァース部の再生を行うフェーズ(第二のフェーズ)が開始される。第二のフェーズでは、第一の領域に記憶されたバッファのセットを対象として、ステップS24で説明したように、ループ再生を開始する。
第二のフェーズは第三のタイミングまで継続する。第三のタイミングは、第三の操作(t3)に基づいて設定されたタイミングであり、本実施形態では、ステップS25で説明したように、ループスイッチの第一アクションをトリガとして設定される。第三のタイミングが到来すると、ヴァース部に対する再生が終了し、コーラス部に対する録音を行うフェーズ(第三のフェーズ)が開始される。この際、バッファのセットが読み書きされる領域が、第一の領域から第二の領域に切り替わる。
【0060】
なお、オーバーダビングを行う場合、第二のフェーズから第一のフェーズに戻ってもよい。この場合、第一の操作に基づいて第一のタイミングが設定される。第一のタイミングが到来すると、ヴァース部に対する再生が終了し、ヴァース部に対する録音を行うフェーズ(第一のフェーズ)が開始される。
【0061】
コーラス部の録音を行うフェーズ(第三のフェーズ)は、第四のタイミングまで継続する。第四のタイミングは、第四の操作(t4)に基づいて設定されたタイミングであり、本実施形態では、ステップS22で説明したように、ループスイッチの第一アクションをトリガとして設定される。第四のタイミングが到来すると、第三のタイミングから第四のタイミングまでに取得された楽音信号(コーラス部に対応するバッファ)を、メモリ内の第二の領域に記憶させる。
【0062】
第四のタイミングからは、コーラス部の再生を行うフェーズ(第四のフェーズ)が開始される。第四のフェーズでは、第二の領域に記憶されたバッファのセットを対象として、ステップS24で説明したように、ループ再生を開始する。
第四のフェーズにおいて第五の操作(t5)があった場合、ユーザトラック制御部1012は、第一のタイミングを設定する。
第四のフェーズにおいて第一のタイミングが到来すると、コーラス部に対するループ再生が終了し、ヴァース部に対する録音を行うフェーズ(第一のフェーズ)が開始される。この際、バッファのセットが読み書きされる領域が、第二の領域から第一の領域に切り替わる。
【0063】
なお、オーバーダビングを行う場合、第四のフェーズから第三のフェーズに戻ってもよい。この場合、第三の操作に基づいて第三のタイミングが設定される。第三のタイミングが到来すると、コーラス部に対する再生が終了し、コーラス部に対する録音を行うフェーズ(第三のフェーズ)が開始される。
【0064】
また、第一および第三のフェーズで、メモリ内の対象の領域に既に楽音信号が記録されている場合、録音をスキップし、再生を開始してもよい。すなわち、第一のフェーズをスキップして第二のフェーズを開始してもよく、第三のフェーズをスキップして第四のフェーズを開始してもよい。
図示したt5のタイミングでは、ユーザトラック制御部1012は、第二のフェーズ、すなわち、ヴァース部のループ再生を開始する。その後、第三の操作(t6)があると、ユーザトラック制御部1012は、第四のフェーズ、すなわち、コーラス部のループ再生を開始する。
演奏を終了する操作(t7)があると、ユーザトラック制御部1012は再生を停止し、これと同期したタイミングで、リズムトラック制御部1011がエンディング部を再生し、演奏は終了する。
【0065】
以上に説明した処理を、より詳細に説明する。
図11図14は、リズムトラック制御部1011およびユーザトラック制御部1012と、同期制御部1013との関係を示した図である。リズムトラック制御部1011およびユーザトラック制御部1012が実行するステップは、図8および図9において説明したものに対応する。
【0066】
ユーザが、リズムスイッチ104Bを押下する(第一の操作を行う)と、同期制御部1013がこれを検出し(ステップS31)、リズムトラック制御部1011に対して、リズムスイッチ104Bの第一アクションがあった旨を通知する(ステップS32)。通知を受信したリズムトラック制御部1011は、図8に示した処理を開始し、イントロ部の再生を開始する(ステップS11)。
【0067】
次に、リズムトラック制御部1011が、イントロ部からヴァース部への遷移が発生する旨を通知する情報であって、ヴァース部の開始タイミングを含む情報(タイミング情報)を、同期制御部1013を介してユーザトラック制御部1012に送信する(ステップS33)。
ヴァース部の録音を開始するタイミングは、イントロ部の演奏が終了するタイミングに基づいて決定することができる。タイミングは、例えば、制御部101が生成し、リズムトラック制御部1011とユーザトラック制御部1012によって共有されるクロックによって指定することができる。
【0068】
次に、リズムトラック制御部1011が、ヴァース部のループ再生を開始する(ステップS12)。また、これと同期したタイミングで、ユーザトラック制御部1012が、ヴァース部における録音を開始する(ステップS21)。同期したタイミングとは、各トラックにおける拍のタイミングが一致していることを意味する。なお、録音中においては、予め設定されたテンポに合わせてメトロノーム音を出力してもよい。
【0069】
ユーザトラックにおける録音が開始されると、ユーザトラック制御部1012は、ステップS22において説明した通り、ループスイッチ104Aの操作を待つ。
【0070】
ループスイッチ104Aの第一アクションを検出すると、ユーザトラック制御部1012は、ループ区間の長さt1を確定する(ステップS23)。この際、ユーザトラック制御部1012は、確定したループの長さt1を示す情報(ループ長情報)を、同期制御部1013を介してリズムトラック制御部1011に送信する(ステップS34)。
【0071】
ここで、ループ長について説明する。
同期モードにおいては、リズムトラックとユーザトラックが同時に進行する。すなわち、双方のトラックでループの長さを同一にする必要がある。しかし、リズムトラックにおいて再生されるリズムパターンの長さと、ユーザが所望するループの長さが必ずしも一致するとは限らない。
【0072】
図12は、リズムトラックにおいて再生されるリズムパターンと、ユーザトラックの録音時においてユーザが指定したループ長との関係を説明する図である。
図12(A)は、ループ再生されるリズムパターンが4拍であり、ユーザによって指定されたループ長が4拍分の長さであるケースを示した図である。この場合、双方の長さが同一であるため、リズムトラック制御部1011は、4拍のパターンをそのままループ再生すればよい。
【0073】
図12(B)は、ループ再生されるリズムパターンが2拍であり、ユーザによって指定されたループ長が6拍分の長さであるケースを示した図である。この場合、リズムトラックは、2拍のパターンを3セットずつ反復すればよい。すなわち、リズムトラック制御部1011は、6拍を一単位としてリズムパターンのループ再生を行う。
【0074】
図12(C)は、ループ再生されるリズムパターンが8拍であり、ユーザによって指定されたループ長が6拍分の長さであるケースを示した図である。この場合、リズムトラックは、8拍のパターンを途中でカットし、6拍を一単位としてリズムパターンのループ再生を行う。
【0075】
このように、本実施形態では、リズムトラック制御部1011は、ユーザによって指定されたループ長に基づいて、リズムパターンのループ長を変更する。
ユーザによって指定されたループ長が、リズムパターンのループ長と一致していなかった場合、リズムトラック制御部1011は、指定されたループ長に基づいて、リズムパターンのループ長を変更する。これにより、ユーザ(奏者)の意図に沿った演奏を行うことが可能になる。
【0076】
なお、ユーザによって指定されたループ長が、リズムパターンのループ長と略一致していた場合、リズムパターンのループ長は変更しなくてもよい。
いずれの場合においても、ユーザトラックが、リズムトラックによって表される音楽的なタイミング(例えば、拍と一致したタイミング)を待ってループするよう、ループ区間の長さを確定する際にクォンタイズを実施してもよい。
【0077】
ステップS34で送信されたループ長情報を受信したリズムトラック制御部1011は、当該ループ長情報に基づいて、ヴァース部に対応するリズムパターンのループ長を変更する(ステップS12A)。これにより、双方のトラックにおけるループ長を一致させることができる。
【0078】
ユーザトラック制御部1012は、ループ長情報の送信が完了すると、処理をステップS24へ遷移させる。
ステップS24においてループ再生が開始されると、ユーザトラック制御部1012は、前述した通り、ループスイッチ104Aの操作を待つ。
ループスイッチ104Aの第一アクションを検出すると、ユーザトラック制御部1012は、前述した通り、処理をステップS21へ遷移させる。これにより、オーバーダビングが開始される。
なお、二回目以降の録音(オーバーダビング)を行う場合、ステップS23,S34,S12Aの処理はスキップされる。ループ区間の長さが既に確定しているためである。
また、ステップS21において、既にヴァース部に対応する楽音信号が記録されている場合、処理をステップS24へ遷移させ、ループ再生から開始してもよい。
【0079】
次に、ヴァース部とコーラス部の切り替えを行う処理について、図13を参照して説明する。
同期制御部1013が、リズムスイッチ104Bの第二アクション(すなわち、ヴァース部とコーラス部の切り替えを行う操作)を検出した場合(ステップS35)、同期制御部1013は、当該操作があった旨をリズムトラック制御部1011に通知する(ステップS36)。これにより、リズムトラック制御部1011は、ステップS13の判定を経て、コーラス部のループ再生を開始する(ステップS14)。
【0080】
これと同期して、リズムトラック制御部1011は、ヴァース部からコーラス部への遷移が発生する旨を通知する情報であって、コーラス部の開始タイミングを含む情報(タイミング情報)を、同期制御部1013を介してユーザトラック制御部1012に送信する(ステップS37)。
コーラス部の開始タイミングは、ヴァース部の演奏が終了するタイミングに基づいて決定することができる。タイミングの指定方法は、ステップS33と同様であってもよい。
【0081】
ユーザトラック制御部1012は、リズムトラックがコーラス部に遷移するタイミングと同期したタイミングで、コーラス部の録音を開始する(ステップS21B)。
なお、ステップS21Bにおいて、既にコーラス部に対応する楽音信号が記録されている場合、処理をステップS24Bへ遷移させ、ループ再生から開始してもよい。
【0082】
このように、本実施形態に係る録音再生装置は、リズムスイッチ104Bの第二アクションがあった場合に、リズムトラックによって表される音楽的なタイミング(例えば、拍と一致したタイミング)を待って、リズムトラックとユーザトラックのそれぞれについて、セクション間の遷移を行う。
【0083】
なお、ステップS21B~ステップS25Bにおける処理は、対象がヴァース部ではなくコーラス部であるという点を除いて、ステップS21~S25と同一であるため、詳細な説明は省略する。
【0084】
以上、ヴァース部からコーラス部への切り替えについて説明したが、コーラス部からヴァース部への切り替えについても、図13と同一のフローによって行われる。この場合、「コーラス部」という記載を「ヴァース部」に置き換えればよい。
【0085】
次に、演奏を終了する処理について、図14を参照して説明する。
コーラス部の録音/再生中において、同期制御部1013が、リズムスイッチ104Bの第三アクション(すなわち、演奏終了を指示する操作)を検出した場合(ステップS38)、同期制御部1013は、ユーザトラック制御部1012に対して、演奏終了を通知する(ステップS39)。これにより、ユーザトラック制御部1012は、図9に示した処理を中断し、ループの終了を待って、処理を終了させる(ステップS26)。
【0086】
また、同期制御部1013は、当該操作があった旨をリズムトラック制御部1011に通知する(ステップS40)。これにより、リズムトラック制御部1011は、ステップS15の判定を経て、コーラス部の再生完了後に、エンディング部の再生を開始する(ステップS16)。
【0087】
以上に説明したように、本実施形態に係る録音再生装置100は、リズムトラックとユーザトラックのそれぞれについて、ヴァース部とコーラス部の遷移を可能にし、かつ、互いの開始タイミングを同期させる。これにより、従来のルーパーにリズム機能を付与することができ、多彩な演奏を行うことが可能になる。
さらに、ユーザによって指定されたループ長をリズムトラックにも適用する。これにより、奏者の意図に沿って楽曲を進行させることが可能になる。
【0088】
(変形例1)
第一の実施形態では、リズムスイッチ104Bの第三アクションを検出した場合に、リズムトラック制御部1011が、コーラス部におけるループ再生の完了を待ってエンディング部の再生を行った。しかし、演奏形態によっては、ループの再生完了を待つことなくエンディング部へ遷移させたい場合がある。これに対応するため、エンディング部へ遷移するタイミングを変更してもよい。
【0089】
コーラス部からエンディング部への遷移タイミングとして、例えば、以下のようなものが挙げられる。
(1)第三アクションを検出後、すぐにエンディング部へ遷移する
(2)第三アクションを検出後、次の拍が到来するタイミングでエンディング部へ遷移する
(3)第三アクションを検出後、ループ再生が完了したタイミングでエンディング部へ遷移する
これらの選択肢をユーザに提供し、入出力部104を介して、いずれの動作を行うかを指定させるようにしてもよい。
【0090】
(変形例2)
第一の実施形態では、リズムスイッチ104Bの第一アクションを、演奏開始を指示する操作としたが、演奏開始後において、リズムスイッチ104Bの第一アクションを別の機能に割り当ててもよい。例えば、ヴァース部またはコーラス部の再生中においてリズムスイッチ104Bの第一アクションを検出した場合に、事前に記憶された即興的なリズムパターン(フィルイン)を挿入するようにしてもよい。
【0091】
(変形例3)
さらに、リズムスイッチ104Bの第一アクション、第二アクション、第三アクション(第一ないし第四の操作)を、ユーザの嗜好によって、任意の機能に自由に割り当て可能にしてもよい。例えば、各アクションについて、「フィルインの再生」「ヴァース部/コーラス部の切り替え」「エンディング部への遷移」といった機能をそれぞれ割り当てられるようにしてもよい。
【0092】
また、ループスイッチ104Aについても、第一アクション、第二アクション、第三アクションのそれぞれについて、任意の機能を割り当てられるようにしてもよい。例えば、第一アクションを「ヴァース部/コーラス部の切り替え」とし、第二アクションを「アンドゥ/リドゥ」としてもよい。録音再生装置100は、図10に示したように、複数の演奏データを異なるバッファに保持しているため、任意のタイミングでバッファを消去し、演奏をやり直すことができる。
【0093】
(他の変形例)
上記の実施形態はあくまでも一例であって、本発明はその要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施しうる。
例えば、本開示において説明した処理や手段は、技術的な矛盾が生じない限りにおいて、自由に組み合わせて実施することができる。
【0094】
また、実施形態の説明では、同期制御部1013によってリズムトラックとユーザトラックを同期させたが、同期制御部1013の動作を休止し、各トラックを独立して制御してもよい。例えば、リズムトラックとユーザトラックを同期させるモード(同期モード)と、同期を行わないモード(非同期モード)を設け、モードを切り替え可能にしてもよい。
同期モードと非同期モードの切り替えは、ユーザに行わせてもよい。例えば、入出力部104(104D)を介して行った操作に基づいて、同期モードと非同期モードを切り替えてもよい。
【0095】
また、1つの装置が行うものとして説明した処理が、複数の装置によって分担して実行されてもよい。あるいは、異なる装置が行うものとして説明した処理が、1つの装置によって実行されても構わない。コンピュータシステムにおいて、各機能をどのようなハードウェア構成(サーバ構成)によって実現するかは柔軟に変更可能である。
【0096】
本発明は、上記の実施形態で説明した機能を実装したコンピュータプログラムをコンピュータに供給し、当該コンピュータが有する1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出して実行することによっても実現可能である。このようなコンピュータプログラムは、コンピュータのシステムバスに接続可能な非一時的なコンピュータ可読記憶媒体によってコンピュータに提供されてもよいし、ネットワークを介してコンピュータに提供されてもよい。非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、例えば、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクドライブ(HDD)等)、光ディスク(CD-ROM、DVDディスク・ブルーレイディスク等)など任意のタイプのディスク、読み込み専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、磁気カード、フラッシュメモリ、光学式カード、電子的命令を格納するために適した任意のタイプの媒体を含む。
【符号の説明】
【0097】
100:録音再生装置
101:制御部
102:補助記憶装置
103:主記憶装置
104:入出力部
105:音源ユニット
106:音声出力部
107:音声入力部
1011:リズムトラック制御部
1012:ユーザトラック制御部
1013:同期制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14