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特許7250144ロストモーションを選択的にリセットするエンジンバルブ機構部品
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-23
(45)【発行日】2023-03-31
(54)【発明の名称】ロストモーションを選択的にリセットするエンジンバルブ機構部品
(51)【国際特許分類】
   F01L 1/18 20060101AFI20230324BHJP
   F01L 13/00 20060101ALI20230324BHJP
   F01L 1/24 20060101ALI20230324BHJP
   F01L 1/255 20060101ALI20230324BHJP
【FI】
F01L1/18 L
F01L13/00 301N
F01L1/24
F01L1/255 F
F01L1/18 A
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2021540798
(86)(22)【出願日】2020-01-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-04
(86)【国際出願番号】 US2020013633
(87)【国際公開番号】W WO2020150316
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2021-07-14
(31)【優先権主張番号】62/792,507
(32)【優先日】2019-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505413266
【氏名又は名称】ジェイコブス ビークル システムズ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バルトラッキ、ジャスティン、ディー.
【審査官】竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-051116(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0298795(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0025018(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0006231(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 1/00-1/32
F01L 1/36-1/46
F01L 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運動源からの運動を内燃エンジン内のバルブ機構内の少なくとも1つのエンジンバルブに伝達するためのバルブ作動システムであって、
ウジングと、
前記運動源から前記ハウジングへ運動を選択的に伝達するために前記ハウジング内に配置されたロストモーション構成要素であって、ロストモーション状態で前記運動源から提供される運動を吸収するように配置および適合されたロストモーション構成要素と、
前記ロストモーション構成要素を前記ロストモーション状態にリセットするように配置および適合されたリセット構成要素と、
前記ロストモーション構成要素のリセットを選択的に防止するように配置および適合されたリセットブロック構成要素と、
を備える、バルブ作動システム。
【請求項2】
前記ロストモーション構成要素への作動流体の流れを制御するために、前記ハウジング内に少なくとも部分的に画定される作動流体回路をさらに備える、請求項1に記載のバルブ作動システム。
【請求項3】
前記作動流体回路は、作動流体供給源と、前記ロストモーション構成要素から前記作動流体供給源への作動流体の逆流を防止する逆流防止構成要素と、をさらに備える、請求項2に記載のバルブ作動システム。
【請求項4】
前記逆流防止構成要素は、前記作動流体回路に配置された逆止弁である、請求項3に記載のバルブ作動システム。
【請求項5】
前記作動流体回路は、前記リセット構成要素からの作動流体の流量を制御するための流量制御構成要素をさらに備える、請求項2に記載のバルブ作動システム。
【請求項6】
前記運動源は、バルブ閉鎖運動を前記バルブ機構に与えるためのバルブ閉鎖プロファイルを含み、前記バルブ機構のバルブ閉鎖運動の少なくとも一部を吸収するために、前記リセット構成要素は、前記ロストモーション構成要素をリセットするように配置される、請求項1に記載のバルブ作動システム。
【請求項7】
前記リセット構成要素は、リセット弁を備える、請求項1に記載のバルブ作動システム。
【請求項8】
前記リセットブロック構成要素は、リセット遮断弁を含む、請求項1に記載のバルブ作動システム。
【請求項9】
前記ハウジングはロッカーアームであり、前記リセット構成要素およびリセットブロック構成要素は前記ロッカーアームに一体化されている、請求項1に記載のバルブ作動システム。
【請求項10】
前記ハウジングは、ロッカーシャフトに取り付けられたロッカーアームであり、前記リセット構成要素は、前記ロッカーシャフトに対する前記ロッカーアームの角度位置に基づいて前記ロストモーション構成要素をリセットするように配置される、請求項1に記載のバルブ作動システム。
【請求項11】
前記リセット構成要素はリセットピストンを含み、前記リセットブロック構成要素は前記リセットピストンと協働するスリーブを含む、請求項1に記載のバルブ作動システム。
【請求項12】
内燃エンジンをさらに備え、前記内燃エンジンは、接触面をさらに備え、前記ハウジングは、前記接触面に対して移動するように配置され、前記リセット構成要素は、前記ハウジングが前記接触面に対して移動すると前記接触面に係合するように適合されている、請求項1に記載のバルブ作動システム。
【請求項13】
前記ハウジングはロッカーアームを含み、前記バルブ作動システムは前記ロッカーアームを付勢するためのロッカーアーム付勢構成要素をさらに備える、請求項1に記載のバルブ作動システム。
【請求項14】
前記ロストモーション構成要素は、アクチュエータピストンと、前記アクチュエータピストンを伸張位置に向かって付勢するためのロストモーション付勢構成要素と、をさらに備える、請求項1に記載のバルブ作動システム。
【請求項15】
前記ロストモーション構成要素のストロークを設定するためのラッシュ調整構成要素をさらに備える、請求項14に記載のバルブ作動システム。
【請求項16】
前記リセット構成要素およびリセットブロック構成要素は、前記作動流体回路の一部を形成する、請求項2に記載のバルブ作動システム。
【請求項17】
前記作動流体回路は、エンジン負荷、エンジン速度、エンジン温度、および排気温度を含む少なくとも1つのエンジンパラメータに基づいて前記ロストモーション構成要素を制御するための作動流体回路制御構成要素をさらに備える、請求項2に記載のバルブ作動システム。
【請求項18】
前記リセットブロック構成要素を作動させる少なくとも1つのブロック構成要素アクチュエータをさらに備える、請求項1に記載のバルブ作動システム。
【請求項19】
前記ロストモーション構成要素は、アクチュエータピストンと、前記アクチュエータピストンの動きを制限するための動き制限部とをさらに備える、請求項1に記載のバルブ作動システム。
【請求項20】
内燃エンジン内のバルブ作動システムにおけるバルブの動きを制御する方法であって、前記バルブ作動システムは、運動源と、ハウジングと、前記ハウジング内に配置されたロストモーション構成要素であって、前記運動源から前記ハウジングへ運動を選択的に伝達するように配置および適合され、且つロストモーション状態で前記運動源から提供される運動を吸収するように配置および適合されたロストモーション構成要素と、前記ロストモーション構成要素を前記ロストモーション状態にリセットするように配置および適合されたリセット構成要素と、前記ロストモーション構成要素のリセットを選択的に防止するように配置および適合されたリセットブロック構成要素と、を備え、
前記方法は、
前記リセット構成要素を作動させて、前記ロストモーション構成要素に前記運動源からの運動を少なくとも部分的に吸収させることと、
前記リセットブロック構成要素を作動させて、前記リセット構成要素からの流れをブロックし、それにより前記ロストモーション構成要素のリセットをブロックすることと、
を含む、方法。
【請求項21】
前記リセット構成要素を作動させるステップは、前記運動源によって提供される後期バルブ閉鎖運動を吸収することを含み、前記リセットブロック構成要素を作動させるステップは、後期バルブ閉鎖運動を生じさせる、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照および優先権の主張)
本出願は、2019年1月15日に出願された、「LOST MOTION SELECTIVE RESETTING ROCKER ARM(ロストモーションを選択的にリセットするロッカーアーム)」という名称の米国仮特許出願第62/792,507号の優先権を主張するものである。この仮出願の主題は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して、内燃エンジン内の1つ以上のエンジンバルブを作動させるためのシステムおよび方法に関する。より具体的には、本開示は、カムなどの運動源と1つ以上のエンジンバルブとの間の動作関係を変化させて、例えば、プッシュロッドエンジンまたはスペースに制約のあるエンジンにおける吸気バルブの可変バルブ作動(VVA)を提供し、例えば、第1位置が通常のバルブ閉鎖であってもよく、第2位置が後期バルブ閉鎖であってもよい、2位置吸気バルブリフトを提供するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
内燃エンジンは、輸送機関およびトラック輸送を含む、多数の用途および業界において遍在的に利用されている。内燃エンジンで使用するバルブ作動システムは、当技術分野でよく知られている。そのようなシステムは、典型的には、バルブ作動運動をバルブ作動運動源(例えば、カム)から1つ以上のエンジンバルブに伝達する1つ以上の介在構成要素を含み、介在構成要素は、バルブ機構を構成する。これらのバルブ作動システムは、主に、エンジンシリンダが燃焼プロセスにより動力を発生させる正動力動作モードを容易にし得る。標準的な燃焼サイクルと関連付けられた吸気バルブおよび排気バルブの作動運動は、典型的に、「主事象」運動と称される。既知のエンジンバルブ作動システムは、早期または後期吸気バルブ閉鎖などの、修正された主事象のバルブの動きを提供し得る。
【0004】
内燃エンジンは、ミラーサイクルとして知られる熱力学的サイクルを利用する場合がある。これには、通常、望ましい性能と排出量の目標を達成するために吸気バルブ(LIVC)の後期閉鎖が含まれる。LIVCは、特定の動作条件の下で、排出量と燃料消費を改善するために、エンジンの圧縮比を低下させる場合がある。ただし、すべてのエンジン動作条件でLIVCが望ましいとは限らない。例えば、始動条件などの過渡条件の間、ターボチャージャーからの吸気チャージまたは圧力が不十分となり得る場合、システムは最大圧縮比で動作する必要がある場合がある。一方、定常状態または通常の運転中に、適切なターボチャージャーのブースト圧が利用できる場合、LIVCはNOx排出量を削減し、燃料消費を改善することができる。このように、当技術分野における過去の努力は、広範囲の速度、負荷、およびディーゼルおよびその他のエンジンの典型的な動作環境を特徴付けるその他の動作パラメータにわたって、LIVCによって提供される利点を完全に実現するために、必要に応じて、通常の閉鎖サイクルから後期閉鎖サイクルに迅速かつ確実に移行できるバルブ作動システムを提供しようとした。
【0005】
上記の必要性に対処しようとした先行技術のシステムとしては、ロストモーションをリセットするロッカーブレーキシステム、またはブリッジブレーキが挙げられる。例えば、Jacobs Vehicle Systems社によって開発された従来技術のシステムは、米国特許第7,905,208号に記載されているようなリセットするブリッジブレーキを含み、その主題は参照により本明細書に組み込まれる。これらのシステムは、ブレーキロッカーアームに供給されるオイルの流れおよび/または圧力の制御に基づいて、運動を追加したり、運動を失ったり(リセット)することができる。既知の先行技術のシステムは、多くのエンジン環境に容易に適応できない、より大きな実装コストとパッケージングによって特徴付けられる。例えば、プッシュロッドエンジンでは、カムローブとロッカーアームを追加して、必要な変更された主事象バルブの閉鎖動作を提供することができない場合がある。運動は、単一のカムローブとプッシュロッドから発生する必要がある。オーバーヘッドカムエンジンによっては、バルブ機構に追加のロッカー用の十分なスペースがない場合があり、ロストモーション吸気が2位置VVA/ロストモーションを提供するための最良のオプションである場合がある。
【0006】
一部の用途では、通常のバルブ閉鎖と後期バルブ閉鎖などの2つの代替バルブ閉鎖プロファイルを容易にし得る選択的リセットを行うことが望ましい場合がある。このリセットは、例えば、エンジン負荷、エンジン速度、またはエンジン温度等のエンジンパラメータに基づく。このシステムは、通常の開度を提供するために開弁中は常にオイルを保持しているため、いずれかの動作モードでも吸気バルブの開度を変更することは望ましくない場合がある。主事象の開始時にオイルの可用性を利用でき、閉鎖時にオイルを充填するか、閉鎖時にオイルを排出するかのいずれかを選択的にリセットできるシステムを提供することが望ましいであろう。エンジンが始動し、油圧が利用できない場合、そのようなロストモーションシステムは、後期開弁および通常閉鎖の主事象を提供する機械式リフトをデフォルトとする場合がある。後期開弁は空気の流れにわずかな影響を及ぼし、通常の閉弁はエンジンを始動するための通常の圧縮比を提供する。デフォルトのリフトとして早期に閉鎖する他のシステムは、始動時の圧縮比が低い可能性があるため、エンジンの低温始動が困難になる。よって、主事象吸気開弁プロファイルの吸気運動プロファイルはそのままに、2つの異なる主事象の吸気閉鎖プロファイル間の切り替えを可能にするシステムが望まれる。
【0007】
したがって、従来技術における上述した欠点およびその他に対処するシステムおよび方法を提供することが有利である。
【発明の概要】
【0008】
従来技術における前述の課題に対応して、本開示は、ロストモーションシステムをリセットする様々な実施形態を提供し、それは、上記課題に対応し、改善された動作特性および性能を提供する。
【0009】
上述の問題点は、本明細書に開示される様々な実施形態に反映される態様に基づいて克服され得る。開示された進歩は、変更されていない開弁および変更された閉鎖を行う主事象動作を容易にするロッカーアーム構成要素を提供する上で特に有利であり、リセット構成要素とリセットブロック構成要素を一体化したコンパクトなパッケージを提供する。
【0010】
本明細書で使用される「構成要素」という用語は、構成要素に関連する動作結果を達成するための、単一の要素または部分、または要素または部分の組み合わせのいずれかを含む構造を意味する。
【0011】
本開示による実装は、ロッカーアームまたは他のバルブ機構構成要素におけるリセットするロストモーション機能を提供し、バルブ機構構成要素の外部に配置され得る複雑なリセット制御構成要素の必要性を排除する。油圧制御回路をロッカーアームに組み込んでもよい。有利には、ロストモーション構成要素のリセットを実行するリセット構成要素、およびリセット構成要素のブロックまたはブロック解除を実行し得る制御構成要素、およびこれらの構成要素を接続するすべての油圧通路は、コンパクトかつロッカーアーム内部に一体化、パッケージ化されてもよい。
【0012】
本開示による実施形態はまた、ロッカーアームなどのバルブ機構構成要素に、リセットするロストモーション構成要素、および選択的に「オン」および「オフ」にされて、それぞれ通常のバルブ閉鎖または後期バルブ閉鎖を提供し得る関連するリセットシステムを提供する。そのようなシステムは、既存のエンジン作動流体分配システム(ロッカーシャフトおよびジャーナル通路)を通じて提供されるオイルなどの油圧作動流体の一定の供給を利用することができる。さらに、リセットシステムに関連するすべての動的(可動)部品は、ロッカーアームに一体化され、スペースに制約のあるエンジンオーバーヘッド環境に適したコンパクトなパッケージを提供し得る。一体化されたリセット構成要素は、リセットピストンを係合するように配置された単純な接触面または点(一体化されるバルブ機構構成要素(ロッカーアーム)から延在してもよい)など、エンジンのオーバーヘッド環境にある固定された物体/表面によるリセットを容易にし得る。本明細書に記載の実施形態は、複雑な外部リセットトリガー構成要素の必要性を排除する。
【0013】
本開示の一態様によれば、内燃エンジンのバルブ機構内の少なくとも1つのエンジンバルブに運動源から運動を伝達するためのバルブ作動システムが提供され、当該システムは、システムの構成要素を支持するように構成されたハウジングと、運動源からハウジングへ運動を選択的に伝達するためにハウジング内に配置されたロストモーション構成要素であって、ロストモーション状態で運動源から提供される運動を吸収するように構成されたロストモーション構成要素と、ロストモーション構成要素をロストモーション状態にリセットするためのリセット構成要素と、ロストモーション構成要素のリセットを選択的に防止するリセットブロック構成要素と、を備える。
【0014】
さらなる態様によれば、リセット構成要素は、リセットピストンを備えてもよく、ブロック構成要素は、ブロックピストンを備えてもよい。非リセット動作モードでは、ブロックピストンは、リセットピストンの位置に関係なく、リセット通路内の流れをブロックする。リセット動作モードでは、ブロックピストンにより、リセットピストンによるロストモーション構成要素のリセットが可能になる。リセットピストンは、ロッカーアームが所定の回転位置に移動したときに、リセットピストンが固定された反作用または接触面に係合するようにロッカーアームハウジングから延在して、アクチュエータピストンにおけるリセットまたは運動損失を容易にすることができる。
【0015】
さらなる態様によれば、リセット構成要素は、リセットピストンを備えてもよく、リセットブロック構成要素は、リセットピストンに対して同心に配置されたブロックスリーブを備えてもよい。非リセット動作モードでは、ブロックスリーブは、リセットピストンの位置に関係なく、リセット通路内の流れをブロックする。リセット動作モードでは、ブロックスリーブにより、リセットピストンによるロストモーション構成要素のリセットが可能になる。
【0016】
さらなる態様によれば、システムは、逆止弁などの供給および逆流防止構成要素をさらに備え得る作動流体回路を備えてもよく、作動流体回路は、ロストモーション構成要素への流体の流れを制御するためにハウジング内に少なくとも部分的に画定される。
【0017】
さらなる態様によれば、内燃エンジン内のバルブ作動システムにおけるバルブの動きを制御する方法が提供され、当該バルブ作動システムは、運動源と、ハウジングと、運動源からハウジングへ運動を選択的に伝達するためにハウジング内に配置されたロストモーション構成要素であって、ロストモーション状態で運動源から提供される運動を吸収するように構成されたロストモーション構成要素と、ロストモーション構成要素をロストモーション状態にリセットするためのリセット構成要素と、ロストモーション構成要素のリセットを選択的に防止するためのリセットブロック構成要素と、を備え、当該方法は、リセット構成要素を作動させて、ロストモーション構成要素に運動源からの運動を少なくとも部分的に吸収させることと、リセットブロック構成要素を作動させて、ロストモーション構成要素のリセットをブロックすることと、を含む。
【0018】
本開示の他の態様および効果は、以下の詳細な説明から当業者に明らかになり、上記の態様は、包括的または制限的であるとみなされるべきでない。上記の一般的な説明および以下の詳細な説明は、本開示の発明的態様の実施例を提供することを意図しており、決して、添付の特許請求の範囲で定義された範囲を制限または拘束するものと解釈されるべきでない。
【0019】
上記および他の本発明の付随する効果および特徴は、全体を通して同じ参照符号が同じ要素を表す添付図面とともに、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。説明および実施形態は、本開示の態様に従う例示的な実施例を意図しており、また、本明細書に添付された特許請求の範囲に記載された本発明の範囲に限定されることを意図していないことが理解されるであろう。以下の図の説明において、すべての図解は、別途注記のない限り、本開示の態様による実施例である特徴に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】一体化されたロストモーションリセット構成要素を有する第1の例のロッカーアームの分解斜視図である。
【0021】
図2図1のロッカーアームの組立て正面斜視図である。
【0022】
図3図1のロッカーアームの組立て後面斜視図である。
【0023】
図4図1のロッカーアームの縦断面における断面図である。
【0024】
図5図1の例示的なロッカーアームの例の横断面における断面図であり、リセットの発生が可能なリセット位置または状態にあるブロックピストンを示す。この図の面は、ブロックピストンの軸と一致している。
【0025】
図6図1の例示的なロッカーアームの横断面における断面図であり、リセットの発生が不可である非リセット位置または状態にあるブロックピストンを示す。この図の面は、ブロックピストンの軸と一致している。
【0026】
図7図1の例示的なロッカーアームの横断面における断面図であり、基礎円の位置または状態にあるリセットピストンを示す。この図の面は、リセットピストンの軸と一致している。
【0027】
図8図1の例示的なロッカーアームの横断面における断面図であり、リセット動作開始に対応する位置または状態にあるリセットピストンを示す。この図の面は、リセットピストンの軸と一致している。
【0028】
図9図1の例示的なロッカーアームの横断面における断面図であり、ピークリフト位置または状態に対応する位置または状態にあるリセットピストンを示す。この図の面は、リセットピストンの軸と一致している。
【0029】
図10】左から右へ、抑制された流体供給、アクチュエータピストン、ブロックピストン、およびリセットピストンを含む、例示的な作動流体回路の一部の概略図である。
【0030】
図11】異なるエンジン回転速度(rpm)でのクランクシャフト回転(度)に応じた例示的なバルブリフト(mm)を示すグラフである。この図は、動作の例示的なリセットモードを示す。
【0031】
図12】異なるエンジン回転速度(rpm)でのクランクシャフト回転(度)に応じた例示的なバルブリフト(mm)を示すグラフである。この図は、例示的な後期閉鎖または非リセット動作モードを示す。
【0032】
図13】リセット接触面を有するエンジン環境に設置された、図1の例示的なロッカーアームを示す上面斜視図である。
【0033】
図14】リセット接触面を有するエンジン環境に設置された、図1の例示的なロッカーアームを示す側面斜視図である。
【0034】
図15】左から右へ、抑制された流体供給、アクチュエータピストン、リセットピストン、およびブロックピストンを含む、図10の代替例である例示的な作動流体回路の一部の概略図である。
【0035】
図16】リセットピストンとブロックピストンが同心円状に単一ボア内に配置されたロッカーアーム構成の代替例を示す斜視図である。
【0036】
図17図16の例示的なロッカーアームの分解斜視図である。
【0037】
図18】リセットブロック位置または状態にあるリセットピストンおよびブロックスリーブを示す、図16の例示的なロッカーアームの横断面における断面図である。この図の面は、リセットピストンおよびブロックスリーブの軸と一致している。
【0038】
図19】リセット位置または状態にあるリセットピストンおよびブロックスリーブを示す、図16の例示的なロッカーアームの横断面における断面図である。この図の面は、リセットスリーブおよびブロックピストンの軸と一致している。
【0039】
図20】リセットピストンが基礎円に配置され、リセットがまだ発生していない、リセット有効位置または状態にあるリセットピストンおよびブロックスリーブを示す、図16の例示的なロッカーアームの横断面における断面図である。この図の面は、図19の面に直交し、リセットピストン上の縦方向の通路を示しており、リセットピストンとブロックスリーブの軸と一致している。
図21】リセット通路がスリーブの環状部から底部にオイルを排出するピークリフト位置にあるリセットを示す、図20と同様の視点からの断面図である。
【0040】
図22図1および図16の構成に対する代替例のロッカーアームの断面図である。
【0041】
図23】代替実施形態による例示的なロッカーアームの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1図10は、本開示の態様による、ロッカーアーム10の形態の第1の例のバルブ機構構成要素を示す。特に図1および図2を参照すると、ロッカーアーム10は、通常、中央ジャーナル部分102を有するハウジングまたはロッカーアーム本体100を含むことができる。運動源(すなわち、カム)から運動を受けることができる運動受容部分106および運動伝達端108は、中央ジャーナル部分102から反対方向に延在することができる。運動伝達端は、バルブブリッジと係合するための調整可能なeフットまたはスイベルフットアセンブリ180を含むことができる。運動受容端106は、プッシュロッドなどの他のバルブ機構構成要素を介して運動源から運動を受けるために、その中に収容されたアクチュエータピストンアセンブリ200を含むことができる。本開示の態様によれば、ロッカーアーム本体100は、アクチュエータピストンアセンブリ200、リセットピストンアセンブリ300、およびブロックピストンアセンブリ400を収容および一体化することができる。アクチュエータピストンボアまたはキャビティ120は、アクチュエータピストンアセンブリ200を収容することができる。リセットピストンボアまたはキャビティ130は、リセットピストンアセンブリ300を収容することができ、ブロックピストンボアまたはキャビティ140は、ブロックピストンアセンブリ400を収容することができる。逆止弁510を、逆止弁ボアまたはキャビティ150内に配置することができ、これは、ロッカーシャフトジャーナルまで延在することができ、ねじ付き逆止弁ボアプラグ512によって塞ぐことができる。ロッカージャーナルブッシングとオイルガイド104をロッカージャーナルに配置して、摩耗と摩擦を減らし、エンジンオイルをロッカーシャフト内のオイル通路からチャネル105を介して1つまたは複数のポート107に、さらにはロッカーアーム本体100内の対応するポートに導き、後述するように、その中に組み込まれた様々な構成要素に作動流体を提供することができる。
【0043】
より詳細には、図1図2、および図4を参照すると、アクチュエータピストンアセンブリ200は、アクチュエータピストンボアまたはキャビティ120内を摺動し、実質的に密封係合するサイズのアクチュエータピストン210を含むことができる。アクチュエータピストンは、コイルばね220などのバイアス要素を収容し得るキャビティ212を有する中空要素として形成されてもよい。コイルばね220は、プッシュロッドまたは他のバルブ機構構成要素(カム運動源と協働するカムフォロアなど)の慣性を管理するために、アクチュエータピストン210を延在方向に(そのボアの外へと)付勢し得る。例えば、システムにオイルが充填されている場合、ばねはアクチュエータピストン、プッシュロッド、カムフォロア、およびカムシャフト間の接触を維持し得る。ばねクリップ保持部240は、アクチュエータピストンおよびばね220をアクチュエータピストンキャビティ120内に固定することができる。図4に最もよく見られるように、アクチュエータピストン210は、ピストンアクチュエータボア120とともに拡張可能なアクチュエータピストン室を画定することができる。ロッカーアーム本体100内の供給通路152は、ロッカーシャフト供給部から逆止弁510を通ってアクチュエータピストン室への作動流体(エンジンオイル)の一定の流れを提供することができる。アクチュエータピストン210は、ロッカーアーム10と運動源(カム)との間のバルブ機構のラッシュ(隙間)を変化させるように機能することができる。さらに説明するように、アクチュエータピストンアセンブリ200の動きは、一体化されたリセット構成要素300およびブロック構成要素400を介して制御され、バルブの動きの変化(ロストモーション)を選択的に提供し、後期吸気バルブ閉鎖などの望ましい動作を容易にする。
【0044】
特に図5および図6に示すように、アクチュエータピストンのリセットは、ロッカーアーム本体100内に画定されたアクチュエータピストンリセット(または排出)通路160を介してオイルを選択的に排出することにより制御することができる。リセット通路160は、アクチュエータピストンボア120からブロックピストンボア140まで延びる第1の部分162と、ブロックピストンボア140からリセットピストンボア130まで延びる第2の部分164と、ブロックピストンボア140から排出オリフィス610まで延びる第3の部分166とを含み得る。排出オリフィス610は、リセット通路160から外部エンジンオーバーヘッド環境(ロッカーアームの外部)への作動流体の流れを制御し得る。リセット通路160内のオイルの流れの制御は、ブロック構成要素400およびリセット構成要素300と、リセット通路との相互作用によって制御することができる。さらに図7および図8を参照すると、リセット構成要素は、リセット通路160内の流れを制御することができ、リセットピストンアセンブリ300を備えてもよい。リセットピストンアセンブリ300は、リセットピストン310と、リセットピストンばね320と、リセットピストンばね保持部330と、リセットピストン保持部340とを備えてもよい。リセットピストンは、リセットピストンボア130内でスライドする寸法であり、リセットピストンボア130の表面と密閉部を形成することができる。環状溝またはチャネル312は、環状溝312がリセット通路160と位置合わせされるとき、リセットピストン310の周りの流れを提供する。ピストン保持リング316は、ピストン310をロッカーアーム本体100に保持する。リセットピストンばね320と係合して支持するために、ばね保持肩部314がリセットピストン310の端部に形成されてもよい。リセットピストンばね320の反対側の端は、ロッカーアーム本体100の溝に係合して拡張するCクリップタイプのリセットピストン保持部340で所定の位置に保持されるばね保持部330と係合する。リセットピストン310の外端318は、ロッカーアーム本体100から延在し、リセットピストンばね320によって延在方向に付勢され得る。本明細書でさらに説明するように、リセットピストン310をロッカー本体に対してリセット状態または位置に移動させるために、外端318は、ロッカーアームの外部にあり、エンジンヘッドに対して固定された反応面と係合することができる。
【0045】
再び図5および図6を参照すると、リセットブロック構成要素は、ブロックピストン410、ブロックピストンばね420、ばね保持部430、およびブロックピストン保持部440を含み得るブロックピストンアセンブリ400を含むことができる。ブロックピストン410は、ブロックピストンボアまたはキャビティ140内を摺動し、これとシール係合を形成するような寸法であってもよい。ブロックピストン410は、後述するように、環状溝412がロッカーアーム内の流路と位置合わせされたときにブロックピストンを通過する流れを可能にする内部に画定された環状溝またはチャネル412を有することができる。ブロックピストンばね420は、ブロックピストンの内部のばねレセプタクル412内に延在することができ、その中でばねレセプタクルショルダー414と係合することができる。こうして、ブロックピストンばね420は、ロッカーアームジャーナル102に向かう方向にブロックピストンを付勢することができる。ロッカーアームブッシング/オイルガイド104上のオイルポート107は、制御ソレノイドの命令に従って、ブロックピストンボア140の底部にオイルを選択的に供給し、ブロックピストン410をリセットブロック位置に移動させる。
【0046】
図5において、ブロックピストンは、リセットが可能な「リセット位置」で示されている。ブロックピストン環状通路412は、リセット通路160と整列しており、アクチュエータピストンボア120からの高圧オイルがリセット通路部分164を通過してリセットピストンボア130に入ることを可能にする。ロッカーがリセット位置に移動すると、リセットピストンは油圧回路からオイルを排出できる。
【0047】
図6では、ブロックピストン410が「非リセット」位置で示されている。オイルは、ロッカーシャフト(図示せず)からロッカーアームブッシュ内の通路107を介してピストンのボアに供給される。油圧はブロックピストンばね420のプリロードを超え、ブロックピストンは、高圧リセット通路部分162をアクチュエータピストンボア140から隔離する位置に移動する。したがって、高圧オイルが回路から漏れることができず、リセットまたはモーションロスが発生しない。したがって、このリセットの阻止によって、吸気バルブの後期閉鎖吸気動作を提供することができる。有利なことに、この構成により、高圧容積および漏れ経路の数が最小限に抑えられる。ブロックピストン410の動作は、エンジン速度、負荷、排気、または油温を含む1つまたは複数のエンジンパラメータに基づいて制御され得る。このような制御は、エンジンコントローラと通信し得、エンジンコントローラによって駆動される制御ソレノイドを使用して実行され、オイルを通路107に選択的に供給して、エンジン運転パラメータに基づいて、必要に応じて、ミラーサイクルと通常のバルブ閉鎖であり得る動作モードを切り替える。
【0048】
図7は、カム基礎円に対応する位置または状態にあるリセットピストン310を示す。この位置または状態では、リセットピストン310は、リセット通路部分164からリセット通路部分166へのオイルの流れを阻止することによってリセット通路160をブロックし、したがって、ブロックピストン410の位置に関係なく、オイルがロッカーアーム本体100から漏れるのを防ぐ。この位置では、リセットピストンの外端318は、リセットピストンばね320によって、シリンダヘッド上の固定構成要素と接触して保持され得る(例えば、図13および図14を参照)。
【0049】
図8は、バルブリセット高さの開始点に対応する位置にあるリセットピストン310を示す。示されるように、リセットピストン310は、環状通路312をリセット通路160と整列させ始めることにより、リセット通路160を開くために移動している。ブロックピストン410が「リセット位置」にある場合、アクチュエータピストン室からのオイルは、ブロックピストン410の周りを流れ、リセットピストン環状部312を通ってロッカーアームから大気に排出することができる。リセット通路排出オリフィスは、2つの動作状態間の移行を円滑にするためにリセット速度を調整することができる。
【0050】
図9は、ピークバルブリフトに対応する位置にあるリセットピストンを示す。ロッカーがその主事象リフト全体を移動するとき、リセットピストン環状部312はさらにリセット通路と位置合わせされ、主事象バルブリフト内のすべてのアクチュエータピストンオイルを排出するのに十分な流れ領域を提供する。排出オリフィスは、主事象中にオイルを排出するのに十分速いが、アクチュエータピストンとアクチュエータピストンボアの底部との間の衝撃によって引き起こされる可能性のあるバルブ機構を介した衝撃負荷を防ぐために十分遅いリセットレートを提供できる。
【0051】
本開示から認識されるように、ブロックピストン410の構成は、異なる動作特性を達成するために修正され得る。例えば、上記の例では、ブロックピストンは、環状通路がリセット通路160と整列し、作動流体の供給が中断されたときにリセット通路を通るオイルの流れを可能にする「通常リセット」モード用に構成されているが、これに代えて、ブロックピストンは、例えば、作動流体の供給が中断されたときにブロックピストンがリセット通路を通るオイルをブロックする「通常リセットなし」モード用に、環状の溝またはチャネルを適切に再配置して構成することもできる。例えば、「通常リセット」または「通常リセットなし」などの動作モードは、オイルの消費を最小限に抑えるために、これらの2つの動作モードの適切なデューティサイクルに基づいて選択することができる。
【0052】
したがって、上述のように、リセット通路を横切って接続する2つのピストンがある。すなわち、リセットピストンボア130内を往復して、ロッカーアームがその主事象リフトを通って動くときにリセット通路を開閉することができるリセットピストン310と、オイルがボアに選択的に供給されたときにピストンを動かすことができるブロックピストン供給通路によって制御される2つの位置を有することができるブロックピストン410である。ある位置では、リセットピストンは自由に作動流体と連通し、リセット通路を介して作動流体を排出することができる。別の位置では、リセット通路はブロックピストンによってブロックされ、したがって、リセットピストンは、リセット通路を介した作動流体との連通および作動流体の排出を妨げる。
【0053】
図10は、図1図10に示す実施形態による作動流体(すなわち油圧)回路の概略図である。本開示から認識されるように、構成要素の通路および構成要素は、ロッカーアーム内のコンパクトなパッケージに一体化されている。供給通路152は、エンジンオイル供給源(例えば、ロッカーシャフト通路)から逆止弁510および逆止弁ボア150を介してアクチュエータピストンアセンブリ200にオイルを供給し得る。リセット通路部分162は作動流体をブロックピストンアセンブリ400に運び、リセット通路部分164は作動流体をリセットピストンアセンブリ300に運ぶ。通路部分166は、作動流体をリセットピストンアセンブリから周囲エンジン環境に運び、これは排出オリフィス(図10には不図示)を介して運ばれる可能性がある。
【0054】
この配置は、有利なパッケージング、漏れの可能性の低減、および油圧容積の利点のために好ましい場合がある。しかしながら、本開示から、本開示の発明の範囲から逸脱することなく、構成要素の他の配置が提供され得ることが理解されるであろう。例えば、図15に概略的に示すように、リセットピストンアセンブリとブロックピストンアセンブリの位置を入れ替えることができる代替の配置も可能である。本開示から認識されるように、構成要素の配置は、油の流れ経路、および特定の構成の油の流れおよび圧力要求によるシステム損失を最小化することを十分考慮して最適化することができる。例えば、ブロックピストンが図10の概略図に示されているように配置されている場合、システムから高圧オイルが漏れる可能性のある漏れ経路が、ブロックピストンとブロックピストンボアの間の隙間の1つしかない。したがって、この構成では、オイル漏れはブロックピストンでのみ発生する。一方、図15の構成では、他の利点を提供するが、リセットピストンボアの隙間とブロックピストンボアの隙間の両方を通過する高圧オイルの漏れの影響を受けやすい場合がある。ブロックピストンをアクチュエータピストンに近接して配置することにより、環状通路およびドリル穴の一部をなくすことができる。
【0055】
図11は、「リセットモード」にある、図1図10のロッカーアームの動作を示すグラフ表示である。本開示から認識されるように、動作の「リセットモード」は、通常のバルブ閉鎖プロファイルに対応する。示されている理想的なバルブリフトは、バルブ機構のたわみがない動的バルブリフトである。実際のバルブリフトは、1500、1900、2300RPMで示されている。実際のバルブリフトには、システムの機械的および油圧的なたわみによるたわみが含まれる。この特定の構成では、8.5mmのバルブリフト高さで、ロッカーアームは、リセットピストンが外部接触面と係合し得る回転位置にある亜場合があり、これにより、リセットピストンの環状チャネルがリセット通路と整合し得、アクチュエータピストンからオイルを放出(「排出」)し始める。その結果、バルブの動きは高リフトから下降し、正のパワーに対する通常の閉鎖角を特徴とする「理想的なリフトリセット」曲線に従うように「リセット」する。したがって、このプロットは、動作のリセットモードにあるときに、圧縮比「ミラーサイクル」を変更せずに正のパワー動作で通常提供される通常の開弁角度および閉鎖角度を提供するシステムの能力を示す。これは、完全な圧縮比に必要なリフトカーブである。
【0056】
図12は、関連するバルブの「後期閉鎖」サイクルに対応する非リセット動作モードを示す。示されている理想的なバルブリフトは、油圧または機械的な対応なしで動的である。実際のバルブの動きは、1500、1900、2300rpmでシミュレートされる。この実際の動きには、理想に比べてリフトを減少させる機械的および油圧的コンプライアンスが含まれる。開いた部分は、この対応によるリフトのわずかな減少とタイミングの遅れを示す。この図の「リセット」はブロックピストンによって無効化されており、オイルがアクチュエータピストンから排出されることはない。ピークリフトが上昇し、後期閉鎖リフトと後期タイミングがリフトカーブに追加された。後期閉鎖は、燃料消費を改善し、特定のエンジン動作条件に望ましい排気温度を上昇させるためにより低い圧縮比を提供する。
【0057】
リセット動作モードと非リセット動作モードとの間の移行は、ブロックピストンをリセット状態からブロック状態に移動させるために、オイルフロー制御ソレノイドまたは他の構成要素によって制御されることができる。例えば、制御ソレノイドは、エンジン制御ユニット(ECU)によって動作されて、オイルを選択的に供給して、ミラーサイクルと通常のサイクル動作との間で切り替わるように必要に応じてブロックピストンを動かしてもよい。ECUは、速度や負荷などのエンジン動作パラメータに応じて異なる様々な制御戦略を実装できる。
【0058】
図13および図14は、リセット位置を設定し、リセットの高さを制御するための調整機能710を含むことができるリセットピストン接触アセンブリ700を有するエンジンオーバーヘッド環境に設置されている、上述の図1から図10のロッカーアーム10を示す。認識されるように、ロッカーシャフトなどのエンジン環境のいくつかの特徴は、明確にするために図13および14から省略されている。さらに、1つの調整機能710が示されているが、コンタクトアセンブリ700は、複数のシリンダ環境におけるそれぞれの関連するロッカーに対して複数の調整機能を含むことができることが認識されるであろう。機能710は、適切なゲージ(厚さ)の金属スタンピングから形成され、シリンダヘッド、またはロッカーアームに対して固定されているオーバーヘッド環境にある物体に穴730を貫通するねじ付きボルト(不図示)で固定され得るL字型ブラケット720のねじ付きボアを通って延びる、止めねじまたは他のねじ付き固定具712を含むことができる。止めねじ712の端は、リセットピストン310の外端318と係合するための反作用面を提供する。ロッキングナット714は、止めねじ720を正確なロック位置に維持する。ロッカーが移動する(ロッカーシャフト上で回転する)と、リセットピストンはこの反応面に接触し、ロッカーアームに対して内側に移動して、アクチュエータピストンをリセットし、これにより、アクチュエータピストンによって伝達される可能性のある動きの損失をロッカーアームの正確な回転位置で生じる。
【0059】
接触アセンブリおよび調整機能の向きを変更できることは、本開示によって認識されるであろう。例えば、ブラケット720は、水平、垂直、または任意の向きに延在する表面を含むことができる。さらに、ロッカーアームが反作用面から離れるとき、リセットピストンが後退位置に維持され(すなわち、リセットピストンボア内に移動され)、ボアから伸張できるように、反作用面位置を変更することができる。
【0060】
図16図21は、上述の図1図16の例の代替としてのロッカーアーム構成の別の例を示す。この変形例は、ロッカーアームの単一のボアまたはキャビティ内にブロック構成要素とリセット構成要素を提供するために同心に配置された要素を備えてもよく、ロッカーアームに関する機械加工のコストと複雑さを軽減する。この構成は、本質的にスプールバルブ内のスプールバルブとみなすことができる。
【0061】
特に分解斜視図である図17を参照すると、ロッカーアーム1010は、図1図16の実施形態と同様の特徴を有し得、ロッカーアームジャーナル1102と、一端にスイベルフットアセンブリ1180とを有するロッカーアーム本体100を備えることができる。アクチュエータピストンアセンブリ1200は、ロッカーアーム本体1100のアクチュエータピストンボア1120に配置された、アクチュエータピストン1210と、アクチュエータピストンばね1220と、保持部1240と、を備えることができる。逆止弁1510は、逆止弁ボアプラグ1512によって塞がれ得る、逆止弁ボア1150内に配置されてもよい。リセット構成要素はリセットピストンアセンブリ1300を備えてもよく、ブロック構成要素はブロックスリーブアセンブリ1400を備えてもよく、その詳細は後述する。この例の利点によれば、リセットピストンアセンブリ1300およびブロックスリーブアセンブリ1400は、ロッカーアーム本体1100の単一のボア1130内に配置することができる。
【0062】
リセットピストンアセンブリ1300は、1つまたは複数の長手方向に延びるチャネルまたは溝1312を有するリセットピストン1310と、リセットピストンばね1320および一対のリセットピストンばね保持部1330および1332を含むリセットピストン付勢アセンブリと、を備えることができる。一対のピストン保持クリップ1340および1342は、後述するように、リセットピストン1310の端部の保持スロットに係合して、リセットピストン1310およびリセットアセンブリ1300およびブロックアセンブリ1400の他の要素を所定の位置に保持することができる。
【0063】
ブロックスリーブアセンブリ1400は、1つまたは複数の半径方向に延びるブロックスリーブポート1412を有するブロックスリーブ1410と、ブロックスリーブばね1420と、ブロックばね保持部1430と、ブロックスリーブ移動制限部1450と、を備えることができる。図17の要素の組立てられたバージョンを示す図18を特に参照すると、ブロックスリーブ1410は、リセットピストン1310と同心にボア1130内に配置される。ブロックスリーブばね1420は、ブロックスリーブ1410の一端に当接し、ロッカーアーム本体1100のチャネル内に固定されたブロックスリーブばね保持部1430によって、別の端の位置に保持される。したがって、ブロックスリーブ1410は、ブロックスリーブばね1420によって、図18において上向きに付勢される。ブロックスリーブ移動制限部1450は、ブロックスリーブ1410の上限移動制限を定める。リセットピストン1310は、ブロックスリーブ1410およびブロックスリーブばね1420を通って延在し、リセットピストン保持部1342によって一(下)端で保持される。同様に、上部リセットピストン保持部1340は、他の要素に対するリセットピストン1310の位置を保持する。リセットピストンばね1320は、リセットばね保持部1330および1332の間に支持され、リセットピストン1310に対して同心に配置される。リセットピストンばねは、リセットピストン1310に上向きの付勢力を提供する。リセットピストン1310の外端1318は、ロッカーアーム本体から延在し、動作中に外部反応面と係合することができる。
【0064】
図18は、リセットブロック位置にある機構を示す。リセット通路は、ロッカーアーム本体1100に形成され、リセットピストン1310およびブロックスリーブ1410と同心の環状チャネル1160を含むことができる。環状チャネル1160は、オイルの流れおよびリセットを可能にするために、アクチュエータピストン室と流体連通することができる。図18において、ブロックスリーブ1410は、環状チャネル1160をブロックするために下方位置に配置される。ブロックスリーブ1410は、選択的にオイルを供給して、環状ブロックスリーブ1410、ロッカーアーム室ボア1130、リセットピストン1310、およびスリーブ移動制限部1450によって画定される上部室1170を加圧することによって、ブロックスリーブばね1420の付勢力に抗して、下方に移動することができる。この室1170は、ロッカーシャフト通路に接続されたオイル通路と流体連通するオイル制御ソレノイドによって選択的に加圧され得る。オイル制御ソレノイドは、エンジンECUによって制御されてもよい。
【0065】
図19は、リセット作動位置にある機構を示す。ブロックスリーブ1410は、上方に移動して、スリーブポート1412をリセット通路環状部1160とインデックスし、アクチュエータピストンボア1120とリセットピストン縦方向チャネル1312との間の流体連通を提供する(図20および図21を参照)。ただし、図19および図20では、リセットピストンは基礎円の位置に示されている。したがって、この位置では、リセットピストン1310は、オイルがアクチュエータピストン室から放出されるのを防ぐ。
【0066】
図21は、ピークバルブリフトにおけるリセットピストン1310と、リセットアクティブ位置にあるブロックピストン1410とを示す。この位置では、リセットピストン1310の縦方向のチャネル1312は、ブロックスリーブポート1412をボア1130の下部に接続するように配置され、アクチュエータピストン室オイルを周囲に排出し、アクチュエータピストンのリセットを可能にする。
【0067】
上述の実施形態では、アクチュエータピストンばねの付勢力を、プッシュロッドやフォロワなどのバルブ機構構成要素に適用すると、ロッカーアームブッシングや、常時負荷がかかっているときに適切に潤滑されない可能性のある他の構成要素に過度の摩耗が生じる可能性がある。図22は、ストローク制限および正確なストローク制御を提供し得るアクチュエータピストン2210の代替構成を使用することにより、そのような問題に対処するための調整システムを示す。このバージョンでは、アクチュエータピストン2210の外向きの移動は、保持リング2240によって制限され得る。アクチュエータピストン2210の内部に配置された付勢ばね2220は、外向き(伸張)方向に付勢力を加える。アクチュエータピストン2210の上方への移動は、調整ねじ2230によって制御され得、ジャムナット2232が追加されて、製造ばらつきを考慮してアクチュエータピストンのストロークを正確に設定する。あるいは、本開示から認識されるように、一致適合および非常に高いレベルの精度により、または様々な厚さのシムを追加することにより、ラッシュ設定ねじなしでアクチュエータのピストンストロークを制御することが可能であり得る。カムが基礎円上にあるとき、ピストン2210の移動は保持リング2240によって停止される。基礎円上で、ロッカーアーム2100は、アクチュエータピストンストロークによって占有されないバルブ機構内にラッシュスペース2250を有することができる。この構成では、約0.4mmのラッシュよりも大きいカムリフト部分の間のみ、アクチュエータピストンがプッシュロッドにばね負荷をかける。アクチュエータピストンからボアの底部までの距離は、ロストモーションに必要なストロークよりも長いことが好ましい。
【0068】
図22のシステムは、アクチュエータピストンのストロークがロッカーアームの運動受容端に配置された単一の調整ねじによって設定されるという簡単な構成を提供する。ストロークの設定は、eフットの下に適切な厚さの隙間ゲージを使用して簡単に行うことができる。例えば、アクチュエータピストンがボアの底部に達するまで調整する。ストロークの設定は、運動受容端のねじ2232で行うことができ、移動を測定する固定具を使用して工場で設定し、無期限にロックすることができる。エンジンの公差と経年摩耗に対応するために、運動を与える側のねじでラッシュを設定できる。エンドユーザーによってストロークが変更されないように、改ざん防止方法を使用することができる。
【0069】
図23は、ロッカーアーム内のリセットピストンおよび別個のブロックピストンの代替パッケージ構成を示す。内部の構成要素は、上述の図1図16に図示されたものと同様である。しかしながら、この構成では、リセットピストン端部2318が下向きになるようにリセットピストン2310の向きが逆である。この構成により、ロッカーアームの動きは、ロッカーアームボアに対してリセットピストンを拡張することができる。これは、スタンピングを取り付けるための十分なオーバーヘッドスペースがない一部のエンジンや、ロッカーアームに隣接する接触面がすでにあるシステムでは、より適している場合がある。リセットピストンの下にあるリセット面(図23には不図示)は、ピストン2310の下面2318に作用することができる。基礎円上では、ピストン2310は、ロッカーアーム2320に対して上方に変位する。主事象リフト中、ロッカーアーム2320は、回転して反作用面に対して上向きに移動し、ピストン2310は、反作用面に対して下方に留まり、ロッカーアーム2320のボアに対して外向きに移動する。しかしながら、リセットピストンは、静止反応面と本質的に接触したままであり得、ロッカーが往復するとロッカーアームに対して移動し得る。
【0070】
本実装は、特定の例示的な実施形態を参照して説明されてきたが、特許請求の範囲に記載されているようなより幅の広い本発明の趣旨および範囲を逸脱しない範囲で、様々な変更および変形がこれらの実施形態に行われ得ることが明らかになるであろう。したがって、明細書および図面は、限定的ではなく例示的なものであるとみなされるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23