(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-23
(45)【発行日】2023-03-31
(54)【発明の名称】自動車キャニスタ用活性炭素繊維シート
(51)【国際特許分類】
F02M 25/08 20060101AFI20230324BHJP
B01J 20/20 20060101ALI20230324BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20230324BHJP
C01B 32/30 20170101ALI20230324BHJP
【FI】
F02M25/08 311D
B01J20/20 B
B01J20/30
C01B32/30
(21)【出願番号】P 2021540981
(86)(22)【出願日】2020-08-20
(86)【国際出願番号】 JP2020031503
(87)【国際公開番号】W WO2021033752
(87)【国際公開日】2021-02-25
【審査請求日】2022-02-03
(31)【優先権主張番号】P 2019151378
(32)【優先日】2019-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113398
【氏名又は名称】寺崎 直
(72)【発明者】
【氏名】今井 大介
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 佳英
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 由生
(72)【発明者】
【氏名】小沢 駿介
(72)【発明者】
【氏名】芳田 千恵
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-265461(JP,A)
【文献】特開昭58-091360(JP,A)
【文献】特開2001-240407(JP,A)
【文献】特開昭57-071620(JP,A)
【文献】特開2008-138580(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 25/08
B01J 20/20
B01J 20/30
C01B 32/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車キャニスタ用活性炭素繊維シートであって、
前記シートの比表面積が1100~2300m
2/gであり、
前記シートの密度が0.010~0.200g/cm
3以下であり、
前記シートの厚みが0.10~100.00mmであり、
前記シートの繊維径が、13.0μm以上である、
前記シート。
【請求項2】
前記活性炭素繊維シートのフラジール通気度が、150.0cm
3/cm
2/s以上である、請求項1に記載の自動車キャニスタ用活性炭素繊維シート。
【請求項3】
全細孔容積が0.50~1.20cm
3/gである、請求項1または2に記載の自動車キャニスタ用活性炭素繊維シート。
【請求項4】
細孔径が0.7nmより大きく2.0nm以下である細孔の細孔容積が、0.20~1.20cm
3/gである、請求項1~3のいずれか一項に記載の自動車キャニスタ用活性炭素繊維シート。
【請求項5】
細孔径が2.0nm以下である細孔の細孔容積に占める、細孔径が0.7nm以下である細孔の細孔容積の存在比率R
0.7/2.0が、15%以上、25%未満である、請求項1~4のいずれか一項に記載の自動車キャニスタ用活性炭素繊維シート。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の自動車キャニスタ用活性炭素繊維シートを複数重ね合わされた積層体である、自動車キャニスタの吸着材室に収納用の吸着積層体。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載の自動車キャニスタ用活性炭素繊維シートを備えた自動車キャニスタ。
【請求項8】
複数の前記活性炭素繊維シートが重ね合わされた積層体が、前記自動車キャニスタの吸着材室内に充填されており、前記積層体は、前記積層体を通過する流体の流通方向が前記シートの主面に対して略平行になるように配置される、請求項7に記載の自動車キャニスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性炭素繊維シートに関し、詳しくは、自動車のキャニスタ用途に適した活性炭素繊維シートおよびその製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
ガソリン車では外気温変化等に伴い燃料タンク内の圧力が変動し、燃料タンク内に充満した蒸散燃料ガスが燃料タンクから放出される。放出される蒸散燃料ガスは、PM2.5や光化学スモッグの原因物質のひとつとされており、これを大気中に放出することを防ぐために、活性炭などの吸着材を備えたキャニスタが設けられている。(以下、本明細書では、自動車に搭載されるキャニスタのことを、「自動車キャニスタ」または単に「キャニスタ」と略称する場合がある。)
【0003】
近年の環境保全意識の高まりに伴い、ガスの排出規制は年々強化される傾向にあるため、キャニスタについても、より高い吸着性能が求められている。また、アイドリングストップ等の普及により、自動車の吸気能力は抑制される傾向にあるため、キャニスタ内の吸着材に吸着したガソリンが脱着しづらい傾向にある。そのため、キャニスタに用いられる吸着材のさらなる高性能化が求められている。キャニスタに用いられる吸着材としては活性炭が用いられており、その形状としては粒状、粉状、又はハニカム形状に成型されたものなどが提案されている(例えば、特許文献1など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
古くからある粉状、粒状、又はペレット状の活性炭に対して、活性炭素繊維(または繊維状活性炭)は、第三の活性炭と呼ばれる場合がある。活性炭素繊維は、広義の活性炭の中でも、比較的、高比表面積で吸着容量が大きく、吸脱着速度が早い傾向を有すると言われている。しかしながら、活性炭素繊維はキャニスタに実用化されるに至っておらず、どのような特性を有する活性炭素繊維がキャニスタの実用に適しているのかは、未だ十分に研究、開発が進んでいない。
【0006】
本発明者らは、自動車キャニスタの吸着体として、活性炭素繊維を実用化することを目指し、鋭意研究を進めたところ、自動車運転時の振動等で吸着材が摩耗しないように固定する必要があることや、取扱いの容易性等の観点から、活性炭素繊維で形成されたシートが実用的に好適であることを見出した。しかし、従来同様に炭化および賦活化をして得た活性炭素繊維シートを、吸着材を収納する室内に、隙間を設けることなく充填すると、キャニスタの圧力損失が大きくなってしまうという課題に直面した。
【0007】
上記のような状況に鑑み、本発明が解決しようとする課題の1つは、活性炭素繊維を用いた吸着材であって、自動車キャニスタ用に適しており、圧力損失が抑制された吸着材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、鋭意検討を進めた結果、従来よりも繊維径の大きい繊維を用いて活性炭素繊維材料を作製することにより、通気性が向上し、圧力損失を抑制でき、自動車用キャニスタに好適な吸着材を得られることを見出し、係る知見に基づき本発明を完成させるに至った。本発明は、多様な面から把握しうるところ、課題を解決するための手段として、例えば下記のものを含む。
【0009】
〔1〕 自動車キャニスタ用活性炭素繊維シートであって、
前記シートの比表面積が1100~2300m2/gであり、
前記シートの密度が0.010~0.200g/cm3以下であり、
前記シートの厚みが0.10~100.00mmであり、
前記シートの繊維径が、13.0μm以上である、
前記シート。
〔2〕 前記活性炭素繊維シートのフラジール通気度が、150.0cm3/cm2/s以上である、上記〔1〕に記載の自動車キャニスタ用活性炭素繊維シート。
〔3〕 全細孔容積が0.50~1.20cm3/gである、上記〔1〕または〔2〕に記載の自動車キャニスタ用活性炭素繊維シート。
〔4〕 細孔径が0.7nmより大きく2.0nm以下である細孔の細孔容積が、0.20~1.20cm3/gである、上記〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の自動車キャニスタ用活性炭素繊維シート。
〔5〕 細孔径が2.0nm以下である細孔の細孔容積に占める、細孔径が0.7nm以下である細孔の細孔容積の存在比率R0.7/2.0が、15%以上、25%未満である、上記〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の自動車キャニスタ用活性炭素繊維シート。
〔6〕 上記〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の自動車キャニスタ用活性炭素繊維シートを複数重ね合わされた積層体である、自動車キャニスタの吸着材室に収納用の吸着積層体。
〔7〕 上記〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の自動車キャニスタ用活性炭素繊維シートを備えた自動車キャニスタ。
〔8〕 複数の前記活性炭素繊維シートが重ね合わされた積層体が、前記自動車キャニスタの吸着材室内に充填されており、前記積層体は、前記積層体を通過する流体の流通方向が前記シートの主面に対して略平行になるように配置される、上記〔7〕に記載の自動車キャニスタ。
〔9〕 自動車キャニスタ用活性炭素繊維シートの製造方法であって、
リン酸系触媒若しくは有機スルホン酸系触媒のいずれか一方または双方を保持させた前駆体繊維シートを、炭化及び賦活化することを含み、
前記前駆体繊維シートはセルロース系繊維を含み、前記繊維の繊維径が4.0dtex以上である、
前記製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様において、圧力損失を抑制することができる、自動車のキャニスタ用として好適な活性炭素繊維材料を提供することができる。
また、本発明の一態様において、取扱いが容易で、低濃度での吸脱着性能が高い活性炭素繊維シートとすることができる。さらに、本発明の一態様において、低濃度での吸脱着性能に優れた自動車キャニスタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、複数の活性炭素繊維シートが重ね合わされて成る吸着積層体の一実施形態と、当該吸着積層体を通過する流体の流れ方向の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、特に断らない限り、数値範囲に関し、「AA~BB」という記載は、「AA以上BB以下」を示すこととする(ここで、「AA」および「BB」は任意の数値を示す)。また、下限および上限の単位は、特に断りない限り、後者(すなわち、ここでは「BB」)の直後に付された単位と同じである。
【0013】
1.自動車キャニスタ用活性炭素繊維シート
本発明の自動車キャニスタ用活性炭素繊維シートは、賦活化された炭素繊維で形成されているシート状の成形物であり、自動車に搭載されるキャニスタに収納する吸着材として好適に用いられる。(なお、以下、本発明の自動車キャニスタ用活性炭素繊維シートを、本発明の活性炭素繊維シートと略称する場合がある。)
【0014】
本発明の一実施形態において、活性炭素繊維シートは所定の通気性を有することが好適である。通気性は、例えば、フラジール通気度を用いて規定しうる。
フラジール通気度は、通常、測定機器が許容する任意の厚みにて測定しうるが、本発明の一実施形態においては、例えば、フラジール通気度を測定するために用いられるシートの厚みが1~4mmの場合における数値として示しうる。ここで「シートの厚みが1~4mmの場合」とは、フラジール通気度を測定するために用いられるシートの厚みを1~4mmの範囲内になるように調製した物を試験用サンプルとして測定を行った場合という意味である。
【0015】
フラジール通気度の下限は、上記のようないずれの実施形態においても、好ましくは100cm3/cm2/s以上、より好ましくは、120cm3/cm2/s以上、更に好ましくは、130、140、150cm3/cm2/s以上でありうる。
フラジール通気度の上限は、上記のようないずれの実施形態においても、好ましくは300cm3/cm2/s以下、より好ましくは290cm3/cm2/s以下、さらに好ましくは280cm3/cm2/s以下でありうる。
なお、「シートの厚みが1~4mmの場合」の好ましいフラジール通気度については、厚さ1~4mmの範囲内すべてにおいて上記の下限または上限を満たしていなければ好ましいとは言えないというわけではなく、厚さ1~4mmの範囲内における少なくとも1点で上記の下限または上限を満たすことが好ましいとの意味である。
【0016】
フラジール通気度が上記のような下限を満たすことによって、圧力損失を抑制することができ、自動車キャニスタの吸着材として好適なものとすることできる。他方、フラジール通気度が上記のような上限を満たすことによって、吸脱着量が十分多い吸着材としうる。
【0017】
本発明の活性炭素繊維シートは、さらに下記の所定の項目のうちの少なくとも1つ又は任意の2つ以上の条件を満たすことにより、より好ましい実施形態としうる。
【0018】
<比表面積>
本発明の活性炭素繊維シートの比表面積の下限は、好ましくは1100m2/g以上、より好ましくは1200m2/g以上、更に好ましくは1300、1400、1500、1600、1700、又は1800m2/g以上でありうる。
本発明の活性炭素繊維シートの比表面積は、一般に広い方が吸着性能の観点からは好ましいが、活性炭素繊維シートの場合、比表面積の上限は、概ね2400、2300、2200、又は2100m2/g以下でありうる。
比表面積を上記のような範囲とすることによって、蒸散燃料ガスに対する吸脱着性能について、より優れたシートとすることができる。また、本発明の一形態において、上記のようなキャニスタに用いられる吸着材料としては広めの比表面積を維持しつつ、キャニスタでの圧力損失の低減を達成しうる。
【0019】
<全細孔容積>
本発明の活性炭素繊維シートの全細孔容積の下限は、好ましくは0.50cm3/g以上、より好ましくは0.60cm3/g以上、更に好ましくは0.70、0.80、又は0.90cm3/g以上でありうる。
本発明の活性炭素繊維シートの全細孔容積の上限は、好ましくは1.20cm3/g以下、より好ましくは1.10cm3/g以下、更に好ましくは1.00cm3/g以下でありうる。
全細孔容積を上記のような範囲とすることによって、蒸散燃料ガスに対する吸脱着性能についてより優れたシートとすることができる。
【0020】
<平均細孔径(平均細孔直径)>
本発明に関し、「細孔径」との用語は、特に明示しない限り、細孔の半径ではなく、細孔の直径又は幅のことを意味する。
本発明の活性炭素繊維シートの平均細孔径の下限は、好ましくは1.69nm以上、より好ましくは1.70nm以上、更に好ましくは1.72、1.75、1.78、又は1.80nm以上でありうる。
本発明の活性炭素繊維シートの平均細孔径の上限は任意でありうるが、好ましくは4.00nm以下、より好ましくは3.50nm以下、更に好ましくは3.00nm以下でありうる。
平均細孔径を上記のような範囲とすることによって、蒸散燃料ガスに対する吸脱着性能についてより優れたシートとすることができる。
【0021】
<ウルトラマイクロ孔容積:V0.7>
本発明において「ウルトラマイクロ孔」との用語は、細孔径が0.7nm以下の細孔を意味する。
本発明の活性炭素繊維シートのウルトラマイクロ孔容積の下限は、好ましくは0.05cm3/g以上、より好ましくは0.10cm3/g以上、更に好ましくは0.12、又は0.14cm3/g以上でありうる。
本発明の活性炭素繊維シートのウルトラマイクロ孔容積の上限は、好ましくは0.30cm3/g以下、より好ましくは0.29cm3/g以下、更に好ましくは0.26、0.24、0.22、又は0.20cm3/g以下でありうる。
ウルトラマイクロ孔容積を上記のような範囲とすることによって、蒸散燃料ガスに対する吸脱着性能についてより優れたシートとすることができる。
【0022】
<マイクロ孔容積:V2.0>
本発明において「マイクロ孔」との用語は、細孔径が2.0nm以下の細孔を意味する。
本発明の活性炭素繊維シートのマイクロ孔容積の下限は、好ましくは0.50cm3/g以上、より好ましくは0.60cm3/g以上、更に好ましくは0.65、又は0.70cm3/g以上でありうる。
本発明の活性炭素繊維シートのマイクロ孔容積の上限は、好ましくは1.00cm3/g以下、より好ましくは0.90cm3/g以下、更に好ましくは0.80cm3/g以下でありうる。
マイクロ孔容積を上記のような範囲とすることによって、蒸散燃料ガスに対する吸脱着性能についてより優れたシートとすることができる。
【0023】
<細孔径が0.7nmより大きく2.0nm以下の細孔の細孔容積:V0.7-2.0>
細孔径が0.7nmより大きく2.0nm以下の細孔の細孔容積V0.7-2.0は、ウルトラマイクロ孔容積の値aとマイクロ孔容積の値bとを用い、下記式1によって求めることができる。
V0.7-2.0=b-a ・・・式1
【0024】
本発明の活性炭素繊維シートにおいて、細孔径が0.7nmより大きく2.0nm以下の細孔の細孔容積V0.7-2.0の下限は、好ましくは0.20cm3/g以上、より好ましくは0.30cm3/g以上、更に好ましくは0.36、0.40、0.45、又は0.50cm3/g以上でありうる。
本発明の本発明の活性炭素繊維シートにおいて、細孔径が0.7nmより大きく2.0nm以下の細孔の細孔容積V0.7-2.0の上限は、好ましくは1.20cm3/g以下、より好ましくは1.00cm3/g以下、更に好ましくは、0.90、0.80、0.75、0.70、0.65、又は0.60cm3/g以下でありうる。
当該細孔容積V0.7-2.0を上記のような範囲とすることによって、蒸散燃料ガスに対する吸脱着性能についてより優れたシートとすることができる。
【0025】
<マイクロ孔の容積に占めるウルトラマイクロ孔の容積の存在比率:R0.7/2.0>
細孔径が2.0nm以下であるマイクロ孔の細孔容積に占める、細孔径が0.7nm以下であるウルトラマイクロ孔の細孔容積の存在比率R0.7/2.0は、ウルトラマイクロ孔容積の値aとマイクロ孔容積の値bとを用い、下記式2によって求めることができる。
R0.7/2.0=a/b×100(%) ・・・式2
【0026】
本発明の活性炭素繊維シートにおいて、マイクロ孔容積に占めるウルトラマイクロ孔容積の存在比率R0.7/2.0の下限は、好ましくは15.0%以上、より好ましくは18%以上、更に好ましくは19%以上でありうる。
本発明の活性炭素繊維シートにおいて、マイクロ孔容積に占めるウルトラマイクロ孔容積の存在比率R0.7/2.0の上限は、好ましくは60%以下、より好ましくは50%以下、更に好ましくは40、30、又は25%以下でありうる。
当該ウルトラマイクロ孔容積の存在比率R0.7/2.0を上記のような範囲とすることによって、蒸散燃料ガスに対する吸脱着性能についてより優れたシートとすることができる。
【0027】
<坪量(単位面積重量)>
本発明の活性炭素繊維シートの坪量の下限は、好ましくは50.0g/m2以上、より好ましくは60.0g/m2以上、更に好ましくは70.0又は80.0g/m2以上でありうる。
本発明の活性炭素繊維シートの坪量の上限は、好ましくは2000.0g/m2以下、より好ましくは1900.0g/m2以下、更に好ましくは1800.0、1700.0、1600.0、又は1500.0g/m2以下でありうる。
坪量を上記のような範囲とすることによって、キャニスタ内に収納できる吸着材の容量の範囲内において、キャニスタ用に要求される吸脱着性能についてより優れたシートとすることができる。
【0028】
<シート厚み>
本発明の活性炭素繊維シートの厚みの下限は、好ましくは0.10mm以上、より好ましくは0.50mm以上、さらに好ましくは1.00、1.50、2.00、又は2.50mm以上でありうる。
本発明の活性炭素繊維シートの厚みの上限は、好ましくは100.00mm以下、より好ましくは70.00mm以下、さらに好ましくは50.00、40.00、30.00、20.00、又は10.00mm以下でありうる。
シート厚みを上記のような範囲とすることによって、キャニスタ内に収納できる吸着材の容量の範囲内において、キャニスタ用に要求される吸脱着性能についてより優れたシートとすることができる。
【0029】
<シート密度>
本発明の活性炭素繊維シートの密度の下限は、好ましくは0.010g/cm3以上、より好ましくは0.015g/cm3以上、更に好ましくは0.020g/cm3以上でありうる。
本発明の活性炭素繊維シートの密度の上限は、好ましくは0.200g/cm3以下、より好ましくは0.100g/cm3以下、更に好ましくは0.080、又は0.050g/cm3以下でありうる。
【0030】
シート密度を上記のような範囲とすることによって、キャニスタ内に収納できる吸着材の容量の範囲内において、キャニスタ用に要求される体積当たりの吸脱着性能についてより優れたシートとすることができる。また、上記の下限以上とすることにより、シートの機械的特性(例えば、強度など)が低下することを避けることができる。また、シート密度は、シートの厚みなど他の要件と併せて調製することにより、活性炭素繊維シートの圧力損失を抑制できることができる。
【0031】
活性炭素繊維シートの厚みおよび密度は、前駆体の繊維の種類や、原料シートの厚み、密度などを調整したり、活性炭素繊維シートを押圧するなどの処理によって、調整することができる。
【0032】
<活性炭素繊維シートの繊維径>
本発明の活性炭素繊維シートを構成する繊維径の下限は、好ましくは13.0μm以上、より好ましくは14.0以上、更に好ましくは15.0、16.0、17.0、18.0、19.0、又は20.0以上でありうる。
本発明の活性炭素繊維シートを構成する繊維径の上限は、任意でありうるが、例えば、60.0μm以下、好ましくは50.0μm以下、より好ましくは45.0、40.0、又は35.0μmでありうる。
活性炭素繊維シートを構成する繊維の繊維径が上記の範囲であると、より圧力損失を抑制できる活性炭素繊維シートとすることができる。
【0033】
<引張強度(MD:Machine Direction)>
本発明の活性炭素繊維シートの引張強度(MD)の下限は、好ましくは0.005kN/m以上、より好ましくは0.007kN/m以上、より好ましくは0.009kN/m以上でありうる。
本発明の活性炭素繊維シートの引張強度(MD)の上限は、特に制限はなく任意でありうるが、好ましくは2.50kN/m以下、より好ましくは2.00kN/m以下、さらに好ましくは1.25、1.00、0.75、又は0.50kN/m以下でありうる。
引張強度(MD)を上記のような範囲とすることによって、フレキシブル性を有するシートとすることができる。そのため、加工性に優れ、破損しにくく、キャニスタへの収納作業などにおける取扱いが容易な吸収材とすることができる。
【0034】
<引張強度(CD:Cross Direction)>
本発明の活性炭素繊維シートの引張強度(CD)の下限は、好ましくは0.005kN/m以上、より好ましくは0.008kN/m以上、更に好ましくは0.009kN/m以上でありうる。
本発明の活性炭素繊維シートの引張強度(CD)の上限は、特に制限はなく任意でありうるが、好ましくは2.50kN/m以下、より好ましくは2.00kN/m以下、さらに好ましくは1.25、1.00、0.75、又は0.50kN/m以下でありうる。
引張強度(CD)を上記のような範囲とすることによって、フレキシブル性を有するシートとすることができる。そのため、加工性に優れ、破損しにくく、キャニスタへの収納作業などにおける取扱いが容易な吸収材とすることができる。
【0035】
<水分含有量>
本発明の活性炭素繊維シートは、所定の水分含有量を有するものが好適である。例えば、23℃、相対湿度50%の条件下における水分含有量の下限は、好ましくは1.0%以上、より好ましくは2.0%以上、更に好ましくは3.0%以上でありうる。
また23℃、相対湿度50%の条件下における水分含有量の上限は、好ましくは25.0%以下、より好ましくは20.0%以下、さらに好ましくは10.0又は8.0%以下でありうる。
上記の条件下における水分含有量を上記のような範囲とすることによって、自動車キャニスタ用の吸着材としてより優れたシートとすることができる。
【0036】
<メチレンブルー吸着性能>
本発明の活性炭素繊維シートは、吸着材として、所定のメチレンブルー吸着性能を有することが好ましい。メチレンブルー吸収性能は、活性炭素繊維シート重量当たりのメチレンブルー吸着量として示すことができる。本発明の活性炭素繊維シートが有するメチレンブルー吸着性能は、好ましくは100ml/g以上であり、より好ましくは150ml/g以上、さらに好ましくは200、250、280、又は300ml/g以上でありうる。
【0037】
<n-ブタン吸脱着性能>
本発明の活性炭素繊維シートは、吸着材として、所定のn-ブタン吸脱着性能を有することが好ましい。n-ブタン吸脱着性能は、蒸散ガスの吸脱着性能の指標となるため、n-ブタンの吸脱着性能が優れるものは、自動車キャニスタ用途に好適である。n-ブタン吸脱着性能は、n-ブタンを十分に吸収破過させた後、所定の脱着条件下に置いたときに吸着材から脱離させた後、吸着を繰り返す際の吸着量を、活性炭素繊維シート重量当たりのn-ブタンの有効吸着量として示すことができる。
【0038】
本発明の活性炭素繊維シートの好ましい形態としては、下記実施例において示した測定方法に従って求められるn-ブタンの有効吸脱着量(1回目の吸着量)は、好ましくは8.00wt%以上、より好ましくは10.00wt%以上でありうる。
【0039】
本発明の活性炭素繊維シートの好ましい形態としては、下記実施例において示した測定方法に従って求められるn-ブタンの有効吸脱着量(2回目の吸着量、脱着量の平均)が、好ましくは6.00wt%以上、より好ましくは6.25wt%以上、さらに好ましくは6.50、6.75、又は7.00wt%以上でありうる。
【0040】
また、本発明の活性炭素繊維シートの好ましい形態としては、下記実施例において示した測定方法に従って求められるn-ブタンの有効吸脱着率が、好ましくは25.0%以上、より好ましくは30.0%以上、さらに好ましくは35.0、40.0、又は45.0%でありうる。
【0041】
<好適な条件の組合せ>
本発明の活性炭素繊維シートは、圧力損失を抑制することができるものであり、一実施形態として、所定の通気度(例えば、フラジール通気度)を有するものでありうる。本発明の好ましい実施形態としては、上記の物性又は性能に係る項目のうちの1つ又は任意の2つ以上を条件をさらに満たす実施形態を挙げることができる。好ましい実施形態の例を以下に示す。なお、本発明の活性炭素繊維シートは下記の組合せの例に限定されるものではない。
【0042】
<実施形態1のシート>
以下の(1)~(4)の要件を満たす自動車キャニスタ用活性炭素繊維シート。
(1)活性炭素繊維シートの比表面積が1100~2300m2/gである。
(2)活性炭素繊維シートの密度が0.010~0.200g/cm3である。
(3)活性炭素繊維シートの厚みが0.10~100.00mmである。
(4)前記シートの繊維径が、13.0μm以上である。
【0043】
上記のような(1)比表面積、(2)シート密度、(3)シート厚み、且つ(4)繊維径の要件を満たすことにより、圧力損失が少ない活性炭素繊維シートとしうる。
【0044】
2.吸着積層体
本発明の他の実施形態として、自動車キャニスタの吸着材室に収納用の吸着積層体が提供されうる。当該吸着積層体は、上記の活性炭素繊維シートが複数重ね合わされた積層体である。
【0045】
本発明の吸着積層体としては、圧力損失が抑制されたものが好ましい。圧力損失の上限は、好ましくは1.50kPa以下、より好ましくは1.20kPa以下、さらに好ましくは1.10、1.00、0.90、0.80、又は0.70kPa以下でありうる。圧力損失は低いほど好ましいというわけではなく、本来の目的である吸着性などの観点から、圧力損失の下限は、好ましくは、0.05kPa以上、より好ましくは0.10kPa以上、さらに好ましくは0.15kPa以上でありうる。
【0046】
図1に、本発明の吸着積層体の一実施形態を示す。なお、シートの長さ、厚みなどの寸法は模式的に表現されており、これに限定されるわけではない。またシートの枚数は、例として4枚としているがこれに限定されるわけではない。
【0047】
図1に示す吸着積層体1は、4枚の活性炭素繊維シート10を重ね合わせて成る積層体である。活性炭素繊維シート10は、シートの主面10aを相互に重ね合わせて形成されている。
【0048】
吸着積層体1を、キャニスタ内にどのように収納するかは任意である。好ましい一実施形態としては、シートの引張強度が強い方向をガスの流れに沿うように配置する形態が挙げられる。また、より具体的に、好ましい一実施形態を例示すると、蒸散ガスなどの流体Fの流れ方向に対して、活性炭素繊維シートの主面10aが直交する方向ではないように配置することが好ましく、より好ましくは、
図1に示すように、主面aが蒸散ガスなどの流体Fの流れ方向に対して略平行になるように配置しうる。主面aが蒸散ガスなどの流体Fの流れ方向に対して略平行になるように配置することにより、複数の活性炭素繊維シートの側端面10bが流体Fの流れ方向に対して対面するように配置されている。このように配置することにより、圧力損失を軽減しうる。
図1において、長さが短い側端面10bが流体Fの流れ方向に対面するが、これに限定はされず、長い側端面10cが流体Fの流れ方向に対面するようにしてもよい。
【0049】
また、吸着積層体は全体として、直方体形状であっても、立方体形状であってもよい。また、活性炭素繊維シートを収納する吸着材室の形状に合わせたり、活性炭素繊維シートを丸めて、吸着積層体を円筒状にしてもよい。このように本発明の活性炭素繊維シートは、容易に様々な形状に加工または成形することができ、取扱い性に優れた材料である。
【0050】
3.キャニスタ
本発明の活性炭素繊維シートは、自動車キャニスタに収納される吸着材として好適である。すなわち、本発明は、他の一実施形態として、自動車キャニスタも提供することができる。
【0051】
本発明の自動車キャニスタは、吸着材として活性炭素繊維シートを搭載したものである。自動車キャニスタの構造については、特に制限はなく、一般的な構造のものを採用しうる。例えば、自動車キャニスタとしては、以下のような構造を有するものが挙げられる。
【0052】
筐体と、
筐体内において吸着材を収納する吸着材室と、
吸着材室とエンジンとの間をガスが移動可能に連通するための第1の開口部と、
吸着材室と燃料タンクとの間をガスが移動可能に連通するための第2の開口部と、
吸着材室または外気から所定の圧力が負荷されたときに開口し、吸着材室と外気との間をガスが移動可能に連通するための第3の開口部と、
を備えるキャニスタ。
【0053】
本発明のキャニスタには、吸収材として上記本発明の活性炭素繊維シートを用いうる。上記のとおり、上記本発明の活性炭素繊維シートは圧力損失を少なくすることができるため、隙間なく充填しても、従来の活性炭素繊維シートの場合よりも圧力損失を抑制することができる。
【0054】
第1、第2、および第3の各開口部は、ガスが出たり入ったりする送出入口である。ガスの送出入口である各開口部の配置は、特に制限はないが、外気の送出入口である第3の開口部は、第1および/または第2の開口部との間でガスが移動する際に、ガスが吸着材を十分に通過する位置に配置されることが好ましい。例えば、第1および第2の開口部を、筐体の第1の側面部に設け、第3の開口部を第1の側面部の対面に位置する第2の側面部に設けるなどの実施形態を採りうる。
【0055】
吸着材室は、複数の室に分けて設けてもよい。例えば、吸着材室は、隔壁により2又はそれ以上の区画に区分けされていてもよい。隔壁としては、通気性のある多孔板などを用いうる。また、第1の筐体とは別に外付けの第2筐体を設け、第1の筐体と第2の筐体とをガス通路を介して連通するようにして、吸着材室を追加装備してもよい。このように複数の区画または筐体が設けられる場合、好ましい一実施形態として、各区画又は筐体単位で、エンジン又は燃料タンクからガスが流入する第1又は第2の開口部から、第3の開口部側へ向かって、吸着容量が順次小さくなるように、吸着材または吸着材室を配置しうる。
【0056】
具体的な一例として、本体キャニスタ(第1の筐体)とこれに対し外気の取り入れ口側に付加された第2のキャニスタ(第2の筐体)とを備えた複合キャニスタを例示しうる。このように複数の区画または筐体を設ける場合、エンジン又は燃料タンクから最初に蒸散ガスが流入する区画又は筐体を、最も収納容積が大きな本体(第1区画または第1筐体)とし、当該本体には従来の廉価な活性炭を収納させる一方、相対的に収納容積の小さい第2区画又は第2筐体以後に、本発明の低濃度の吸脱着性能に優れた活性炭素繊維シートを収納することにより、コストを抑えつつ、高性能なキャニスタとすることも可能である。
【0057】
複数の吸着材室がある場合、エンジン又は燃料タンクからみてより後段に位置する吸着材室(すなわち、外気の送出入口により近い位置に配置される吸着材室)では、前層から流入してくる蒸散燃料ガスの濃度は、より薄くなる。そのため、0.2%程度の低濃度でのn-ブタン吸着能力が高い本発明の活性炭素繊維シートは、エンジン又は燃料タンクからみてより後段に位置する第2区画若しくは第2筐体又はそれよりさらに後段の吸着材室に収納する吸着材として好適である。また、本発明の活性炭素繊維シートを外気の取り入れ口により近い吸着材室に用いる場合、本発明の活性炭素繊維シートは、パージによる有効吸脱着量が高いため、自動車を長時間停車した場合の蒸散燃料ガスのリーク量を低減することができるという点でも自動車キャニスタに用いる吸着材として好適である。
【0058】
したがって、好ましいキャニスタの一実施形態として、例えば、以下のような形態を挙げることができる。
吸着材室を2つ又はそれ以上有する自動車用キャニスタであって、
エンジン又は燃料タンクから最初にガスが流入する第1の吸着材室よりも、より後段に配置された第2又はそれ以降の吸着材室に、本発明の活性炭素繊維シートが収納されている自動車用キャニスタ。
【0059】
上記の形態において、吸着材室は2つでもよいし、それ以上の数であってもよい。また、吸着材室が3つ以上ある場合には、本発明の活性炭素繊維シートは、第2の吸着材室以後の少なくとも1つの吸着材室に収納されていればよい。
【0060】
4.活性炭素繊維シートの製造方法
上記本発明の活性炭素繊維シートは、所定の繊維径を有する繊維を炭化、賦活化して製造することができる。なお、炭化、賦活化する前の繊維のことを、前駆体繊維といい、前駆体繊維で形成されているシートのことを、前駆体繊維シートという。本発明に関し、「繊維径」との用語は、特に明示しない限り、繊維の半径ではなく、繊維の直径又は幅のことを意味する。また、「繊維径」との用語は、炭化、賦活化後の活性炭素シートの繊維に対して主に用いる。
【0061】
本発明の活性炭素繊維シートの製造方法の好ましい一実施形態として、例えば、以下の方法が挙げられる。
リン酸系触媒若しくは有機スルホン酸系触媒のいずれか一方または双方を保持させた前駆体繊維シートを、炭化及び賦活化することを含み、
前記前駆体繊維シートはセルロース系繊維を含み、前記繊維の繊維径が4.0~60.0dtexである、
方法。
【0062】
前駆体となる繊維の繊維径(繊度として)の下限は、好ましくは4.0dtex以上、より好ましくは5.0dtex以上、さらに好ましくは8.0、10.0、12.0、又は15.0dtex以上でありうる。
前駆体となる繊維の繊維径(繊度として)の上限は、好ましく60.0dtex以下、より好ましくは50.0dtex以下、さらに好ましくは40.0、又は30.0dtex以下でありうる。
前駆体となる繊維の繊維径が上記の範囲であると、より圧力損失を抑制できる活性炭素繊維シートとすることができる。
【0063】
本発明の活性炭素繊維シートの製造方法は、下記の情報を参照して実施しうる。
【0064】
4-1.原料シート(前駆体繊維シート)の調製
<繊維の種類>
原料シートを構成する繊維としては、例えば、セルロース系繊維、ピッチ系繊維、PAN系繊維、フェノール樹脂系繊維などが挙げられ、好ましくはセルロース系繊維が挙げられる。
【0065】
<セルロース系繊維>
セルロース系繊維とは、セルロース及び/又はその誘導体を主成分として構成される繊維である。セルロース、セルロース誘導体は、化学合成品、植物由来、再生セルロース、バクテリアが産生したセルロースなど、その由来はいずれであってもよい。セルロース系繊維として好ましくは、例えば、樹木などから得られる植物系セルロース物質で形成された繊維、および、植物系セルロース物質(綿、パルプなど)に化学処理を施して溶解させて得られる長い繊維状の再生セルロース系物質から構成された繊維などを用いうる。また、この繊維には、リグニンやヘミセルロースなどの成分が含まれていても構わない。
【0066】
セルロース系繊維(植物系セルロース物質、再生セルロース物質)の原料としては、例えば、綿(短繊維綿、中繊維綿、長繊維綿、超長綿、超・超長綿など)、麻、竹、こうぞ、みつまた、バナナ、および被嚢類などの植物性セルロース繊維;銅アンモニア法レーヨン、ビスコース法レーヨン、ポリノジックレーヨン、竹を原料とするセルロースなどの再生セルロース繊維;有機溶剤(NメチルモルフォリンNオキサイド)紡糸される精製セルロース繊維;並びに、ジアセテートやトリアセテートなどのアセテート繊維、などが挙げられる。これらの中では、入手のし易さから、キュプラアンモニウムレーヨン、ビスコース法レーヨン、精製セルロース繊維から選ばれる少なくとも一種類であることが好ましい。
【0067】
セルロース系繊維の形態は、特に限定されるものではなく、目的に合わせて、原糸(未加工糸)、仮撚糸、染色糸、単糸、合撚糸、カバリングヤーン等に調製したものを用いることができる。また、セルロース系繊維が2種以上の原料を含む場合には、混紡糸、混撚糸等としてもよい。さらに、セルロース系繊維として、上記した各種形態の原料を、単独でまたは2種以上組み合わせて使用してもよい。これらの中では、複合材料の成型性や機械強度の両立から無撚糸であることが好ましい。
【0068】
<繊維シート>
繊維シートは、多数の繊維を薄く広いシート状に加工したもののことをいい、織物、編み物、および不織布などが含まれる。
【0069】
セルロース系繊維を製織する方法について特に制限はなく、一般的な方法を用いることができ、また、その織地の織組織も、特に制限はなく、平織、綾織、朱子織の三原組織を用いうる。
【0070】
セルロース系繊維で形成された織物は、セルロース系繊維の経糸及び緯糸同士の隙間が、好ましくは0.1~0.8mm、より好ましくは0.2~0.6mm、さらに好ましくは0.25~0.5mmでありうる。さらに、セルロース系繊維からなる織物の目付は、好ましくは50~500g/m2、より好ましくは100~400g/m2でありうる。
【0071】
セルロース系繊維及びセルロース系繊維からなる織物を上記範囲とすることにより、この織物を加熱処理して得られる炭素繊維織物は、強度に優れたものとすることができる。
【0072】
不織布の製造方法も、特に限定されないが、例えば、適当な長さに切断された前述の繊維を原料とし乾式法または湿式法などを用いて繊維シートを得る方法や、エレクトロスピニング法などを用いて溶液から直接繊維シートを得る方法などが挙げられる。さらに不織布を得た後に繊維同士を結合させる目的でレジンボンド、サーマルボンド、スパンレース、ニードルパンチ等による処理を加えてもよい。
【0073】
4-2.触媒
製法実施形態1では、上記のようにして用意された原料シートに、触媒を保持させる。原料シートに触媒を保持させて炭化処理を行い、さらに水蒸気や二酸化炭素、空気ガス等を用いて賦活化し、多孔質の活性炭素繊維シートを得ることができる。触媒としては、例えば、リン酸系触媒、有機スルホン酸系触媒などを用いうる。
【0074】
<リン酸系触媒>
リン酸系触媒としては、例えば、リン酸、メタリン酸、ピロリン酸、亜リン酸、ホスホン酸、亜ホスホン酸、ホスフィン酸等のリンのオキシ酸、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ジメチルホスホノプロパンアミド、ポリリン酸アンモニウム、ポリホスホニトリルクロライド、およびリン酸、テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウム塩またはトリス(1-アジリジニル)ホスフィンオキサイドと尿素、チオ尿素、メラミン、グアニン、シアナミツド、ヒドラジン、ジシアンジアミドまたはこれらのメチロール誘導体との縮合物などが挙げられ、好ましくはリン酸水素二アンモニウムが挙げられる。リン酸系触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。リン酸系触媒を水溶液として用いる場合、その濃度は、好ましくは0.05~2.0mol/L、より好ましくは0.1~1.0mol/Lでありうる。
【0075】
<有機スルホン酸系触媒>
有機スルホン酸としては、1又は複数のスルホ基を有する有機化合物を用いることができ、例えば脂肪族系、芳香族系など種々の炭素骨格にスルホ基が結合した化合物が利用可能である。有機スルホン酸系触媒としては、取扱いの観点から、低分子量のものが好ましい。
【0076】
有機スルホン酸系触媒としては、例えば、R-SO3H(式中、Rは炭素原子数1~20の直鎖/分岐鎖アルキル基、炭素原子数3~20のシクロアルキル基、または、炭素原子数6~20のアリール基を表し、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基はそれぞれアルキル基、水酸基、ハロゲン基で置換されていても良い。)で表される化合物が挙げられる。有機スルホン酸系触媒としては、例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、1-ヘキサンスルホン酸、ビニルスルホン酸、シクロヘキサンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、p-フェノールスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、カンファースルホン酸などが挙げられる。このうち、好ましくは、メタンスルホン酸を用いうる。また、有機スルホン酸系触媒は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用してもよい。
【0077】
有機スルホン酸を水溶液として用いる場合、その濃度は、好ましくは0.05~2.0mol/L、より好ましくは0.1~1.0mol/Lでありうる。
【0078】
<混合触媒>
上記、リン酸系触媒および有機スルホン酸系触媒は、混合して、混合触媒として用いてもよい。混合比は適宜調整してよい。
【0079】
<触媒の保持>
原料シートに対し触媒を保持させる。ここで「保持」とは、触媒が原料シートに接触した状態を保つことを意味し、付着、吸着、含浸などの諸形態でありうる。触媒を、保持させる方法には特に制限はないが、例えば、触媒を含む水溶液に浸漬する方法、触媒を含む水溶液を原料シートに対して振りかける方法、気化した触媒蒸気に接触させる方法、触媒を含む水溶液に原料シートの繊維を混ぜて抄紙する方法などが挙げられる。
【0080】
十分に炭化させる観点から、好ましくは、触媒を含む水溶液に原料シートを浸漬し、繊維内部まで触媒を含浸させる方法を用いることができる。触媒を含む水溶液に浸漬する際の温度は特に制限されないが、室温が好ましい。浸漬時間は、好ましくは10秒~120分間、より好ましくは20秒~30分間である。浸漬により、原料シートを構成する繊維に、例えば1~150質量%、好ましくは5~60質量%の触媒が吸着する。浸漬後、原料シートを取り出して、乾燥させることが好ましい。乾燥方法としては、例えば室温で放置、乾燥機に導入する、などのいずれの方法であってもよい。乾燥は、触媒を含む水溶液から取り出した後、余分の水分が蒸発して試料重量の変化がなくなるまで行えばよい。例えば室温乾燥では、乾燥時間は0.5日以上放置すればよい。乾燥により質量変化が殆どなくなった後、触媒を保持した原料シートを炭化する工程へと進む。
【0081】
4-3.炭化処理
触媒を保持させた原料シートを用意した後、それを炭化処理する。活性炭素繊維シートを得るための炭化処理は、一般的な活性炭の炭化方法に沿って行うことができるが、好ましい実施形態として、以下のようにして行うことができる。
【0082】
炭化処理は、通常、不活性ガス雰囲気中で行う。本発明において、不活性ガス雰囲気とは、炭素が燃焼反応しにくく炭化する無酸素又は低酸素雰囲気のことを意味し、好ましくは、例えば、アルゴン、窒素などのガス雰囲気でありうる。
【0083】
触媒を保持させた原料シートは、上述の所定のガス雰囲気中で、加熱処理し、炭化させる。
【0084】
加熱温度の下限は、好ましくは300℃以上、より好ましくは350℃以上、さらに好ましくは400℃以上又は750℃以上でありうる。
加熱温度の上限は、好ましくは1400℃以下、より好ましくは1300℃以下、さらに好ましくは1200℃以下又は1000℃以下でありうる。
このような加熱温度設定とすることにより、繊維形態が維持された炭素繊維シートを得ることができる。加熱温度が上記の下限以下であると、炭素繊維の炭素含有量が80%以下で炭化が不十分となりやすい。
【0085】
加熱処理時間の下限は、昇温の時間も含め、好ましくは10分以上、より好ましくは11分以上、さらに好ましくは12分以上、より好ましくは30分以上でありうる。
加熱処理時間の上限は任意でありうるが、好ましくは180分以下、より好ましくは160分、さらに好ましくは140分以下でありうる。
原料シートに十分に触媒を含浸させ、上記の好適な加熱温度に設定し、加熱処理時間を調整することにより、細孔形成の進行程度を調整することができ、比表面積、各種細孔の容積、平均細孔直径などの多孔体としての物性を調整することができる。
加熱処理時間が上記の下限より少ないと、炭化が不十分となりやすい。
【0086】
また加熱処理としては、上記のような加熱処理(一次加熱処理という場合がある)後に、さらに所定のガス雰囲気中で、更に再加熱処理を行うこともできる。すなわち、炭化処理は、温度などの条件が異なる加熱処理を複数の段階に分けて行ってもよい。所定の条件で一次加熱処理と再加熱処理を行うことにより、物性を調整し、炭化、後の賦活化をより良好に進行させ、吸脱着性に優れた活性炭素繊維シートを得ることができる場合がある。
【0087】
4-4.賦活化処理
本発明における賦活化処理としては、例えば上記加熱処理後に連続して、水蒸気を供給し適切な賦活温度で所定時間保持することで行うことができ、活性炭素繊維シートを得ることができる。
【0088】
賦活温度の下限は、好ましくは300℃以上、より好ましくは350℃以上、更に好ましくは、400又は750℃以上でありうる。
他方、賦活温度の上限は、好ましくは1400℃以下、より好ましくは1300℃以下、さらに好ましくは1200又は1000℃以下でありうる。
なお、加熱処理後に連続して賦活処理を行う場合、加熱処理温度と同等程度に調整することが望ましい。
【0089】
賦活時間の下限は、好ましくは1分以上、より好ましくは5分以上でありうる。
賦活時間の上限は任意でありうるが、好ましくは180分以下、より好ましくは160分以下、さらに好ましくは140分以下、100分以下、50分以下、30分以下でありうる。
【実施例】
【0090】
以下に実施例を挙げて本発明についてより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲が下記の実施例に限定されるものではない。
【0091】
活性炭素繊維シートおよび粒状活性炭の物性および性能に関する各種項目について、下記に示す方法により、測定および評価を行った。なお、本発明を規定する各種の数値は以下の測定方法および評価方法により求めることができる。
【0092】
<繊維径>
繊維径は走査電子顕微鏡JSM-IT300 InTouchScope(日本電子株式会社製)を用い、500倍の画像から10本の繊維を無作為に抽出し測定の上、平均値より求めた。
【0093】
<比表面積>
活性炭素繊維シートを約30mg採取し、200℃で20時間真空乾燥して秤量し、高精度ガス/蒸気吸着量測定装置BELSORP-maxII(マイクロトラック・ベル社)を使用して測定した。液体窒素の沸点(77K)における窒素ガスの吸着量を相対圧が10-8オーダー~0.990の範囲で測定し、試料の吸着等温線を作成した。この吸着等温線を、解析相対圧範囲を吸着等温線I型(ISO9277)の条件で自動的に決定したBET法により解析し、重量当たりのBET比表面積(単位:m2/g)を求め、これを比表面積(単位:m2/g)とした。
【0094】
<全細孔容積>
上記比表面積の項で得られた等温吸着線の、相対圧0.990での結果より1点法での全細孔容積(単位:cm3/g)を算出した。
【0095】
<平均細孔径(平均細孔直径)>
次式3により算出した。
平均細孔直径(単位:nm)=4×全細孔容積×103÷比表面積 ・・・式3
【0096】
<ウルトラマイクロ孔容積>
上記比表面積の項で得られた等温吸着線を、高精度ガス/蒸気吸着量測定装置BELSORP-maxII(マイクロトラック・ベル社)付属の解析ソフトBELMasterを用いて、解析設定を「スムージング(細孔分布の解析全点で前後1点を使用した移動平均処理)」、「分布関数:No-assumption」、「細孔径の定義:Solid and Fluid Def. Pore Size」、「Kernel:Slit-C-Adsorption」としたGCMC法によって解析し、得られた吸着時の細孔分布曲線の結果から、0.7nmの積算細孔容積を読み取り、ウルトラマイクロ孔容積(単位:cm3/g)とした。
【0097】
<マイクロ孔容積>
上記比表面積の項で得られた等温吸着線を、高精度ガス/蒸気吸着量測定装置BELSORP-maxII(マイクロトラック・ベル社)付属の解析ソフトBELMasterを用いて、解析設定を「スムージング(細孔分布の解析全点で前後1点を使用した移動平均処理)」、「分布関数:No-assumption」、「細孔径の定義:Solid and Fluid Def. Pore Size」、「Kernel:Slit-C-Adsorption」としたGCMC法によって解析し、得られた吸着時の細孔分布曲線の結果から、2.0nmの積算細孔容積を読み取り、マイクロ孔容積(単位:cm3/g)とした。
【0098】
<シート坪量>
活性炭素繊維シートを、温度23±2℃、相対湿度50±5%の環境下で12時間以上静置し、重量と縦横の寸法からシート坪量(単位:g/m2)を求めた。
【0099】
<シート厚み>
活性炭素繊維シートを、温度23±2℃、相対湿度50±5%の環境下で12時間以上静置し、デジタル小型側厚器FS-60DS(大栄科学精器製作所社)を用いて、0.3kPaの荷重をかけた際のシート厚さ(単位:mm)を測定した。
【0100】
<シート密度>
次式4により算出した。
シート密度(単位:g/cm3)=シート坪量÷シート厚み÷103 ・・・式4
【0101】
<引張強度(MD)、引張強度(CD)>
試料を、温度23±2℃、相対湿度50±5%の環境下で12時間以上静置し、Machine Direction(MD)方向及びこれと直行するCross Direction(CD)方向から、それぞれ試験片(幅15mm、長さ50~60mm)を各方向が長さとなるように切り取り、テンシロン万能試験機RTG-1210(エー・アンド・デイ社)を用いて、つかみ間隔40mm、引っ張り速度100mm/分で引っ張り、次式5により引張強度を算出した。
【0102】
<式5>
引張強度(単位:kN/m)=試験中に加わった最大荷重(単位:N)÷15mm
【0103】
<水分含有量>
活性炭素繊維シートを、温度23±2℃、相対湿度50±5%の環境下で12時間以上静置後、試料を0.5~1.0g採取し、乾燥機で115±5℃3時間以上乾燥させた際の重量変化から、水分(単位:%)を求めた。
【0104】
<メチレンブルー吸着性能>
日本水道協会規格水道用粉末活性炭(JWWA K113)のメチレンブルー脱色力(単位:ml/g)に従って測定した結果を、メチレンブルー吸着性能(単位:ml/g)とした。
【0105】
<フラジール通気度>
日本工業規格織物及び編物の生地試験方法(JIS L1096:2010)の通気性A法(フラジール形法)に従って、フラジール・パーミヤメータ型式FP2(株式会社東洋精機製作所社)を使用し測定した結果を、フラジール通気度(cm3/cm2/s)とした。
【0106】
<n-ブタン吸脱着性能>
米国試験材料協会規格Standard Test Method for Determination of Butane Working Capacity of Activated Carbon(ASTM D5228-16)を参考に、n-ブタンガスの濃度、流量、脱着させる空気の流量を独自に設定し、試験した。
【0107】
吸着体試料を乾燥機で115±5℃3時間以上乾燥し、冷却後に乾燥重量を測定した。空の試験管(内径1.47cm、断面積1.67cm2、試料充填長さ10cm、試料充填容積16.7mlのガラス管)の質量を測定してから、吸着体試料を吸着管へ16.7ml充填した。例えば活性炭素繊維シートは、シート厚み×長さ10cm×幅=16.7mlになるようにカットし、丸めて充填した。
【0108】
次いで、試験管を流通装置の中に設置して、試験温度25℃で、空気で0.2%濃度に希釈したn-ブタンガス500ml/分を試験管に流しn-ブタンを吸着させる。試験管を流通装置から取り外し、質量を測定する。この0.2%濃度n-ブタンガスの流通を、一定質量が達成されるまで、すなわち吸着量が飽和するまで繰り返した。
試験管を流通装置に再設置し、試験温度25℃で空気4.0L/分を3分48秒間試験管に流し、n-ブタンを脱着させた。試験管を流通装置から取り外し、質量を測定した。
【0109】
この吸着と脱着の操作を計2回繰り返し、次式6、7および8を用いて、1回目吸着量、有効吸脱着量、有効吸脱着率を算出した。
【0110】
<式6>
1回目吸着量=1回目n-ブタン吸着量÷吸着体試料乾燥重量×100
なお、各数値の単位は次のとおりである。
1回目吸着量(単位:wt%)
1回目n-ブタン吸着量(単位:g)
吸着体試料乾燥重量(単位:g)
【0111】
【0112】
なお、各数値の単位は次のとおりである。
有効吸脱着量(単位:wt%)
2回目n-ブタン吸着量(単位:g)
2回目n-ブタン脱着量(単位:g)
吸着体試料乾燥重量(単位:g)
【0113】
<式10>
有効吸脱着率=有効吸脱着量÷1回目吸着量×100
なお、各数値の単位は次のとおりである。
有効吸脱着率(単位:%)
有効吸脱着量(単位:wt%)
1回目吸着量(単位:wt%)
【0114】
<実施例1>
レーヨン繊維(17.0dtex、繊維長76mm)からなる坪量300g/m2のニードルパンチ不織布に6~10%リン酸水素二アンモニウム水溶液を含浸し、絞液後、乾燥して、8~10重量%付着させた。得られた前処理不織布を窒素雰囲気中、900℃まで50分で昇温し、この温度で4分保持した。引き続きその温度で露点71℃の水蒸気を含有する窒素気流中で18分間賦活処理を行った。
【0115】
<実施例2>
レーヨン繊維(7.8dtex、繊維長51mm)からなる坪量300g/m2のニードルパンチ不織布を用いたこと以外は、実施例1と同じ方法で、実施例2の活性炭素繊維シートを作製した。
【0116】
<実施例3>
レーヨン繊維(17.0dtex、繊維長76mm)からなる坪量300g/m2のニードルパンチ不織布に4~8%メタンスルホン酸水溶液を含浸し、絞液後、乾燥して、6~8重量%付着させた。得られた前処理不織布を窒素雰囲気中、900℃まで40分で昇温し、この温度で3分保持した。引き続きその温度で露点71℃の水蒸気を含有する窒素気流中で16分間賦活処理を行った。
【0117】
<比較例1>
レーヨン繊維(3.3dtex、繊維長76mm)からなる坪量300g/m2のニードルパンチ不織布に6~10%リン酸水素二アンモニウム水溶液を含浸し、絞液後、乾燥して、8~10重量%付着させた。得られた前処理不織布を窒素雰囲気中、900℃まで50分で昇温し、引き続きその温度で露点60℃の水蒸気を含有する窒素気流中で13分間賦活処理を行った。
【0118】
<比較例2>
レーヨン繊維(1.7dtex、繊維長40mm)からなる坪量300g/m2のニードルパンチ不織布を用いたこと以外は、比較例1と同じ方法で、比較例2の活性炭素繊維シートを作製した。
【0119】
<比較例3:粒状活性炭>
市販のキャニスタに充填された粒状活性炭を取り出し、比較例2の吸着材として用いた。市販のキャニスタとして、品番:14950-01FOA(日産自動車)のキャニスタを用いた。
【0120】
実施例1および2、並びに比較例1~3について物性および性能を測定した結果を表1に示す。
【0121】
【0122】
<圧力損失の測定>
実施例1、2、比較例1、2の活性炭素繊維シートを重ね合わせて、それぞれ積層体を用意した。比較例3の粒状活性炭はそのまま用いた。
【0123】
積層体を収納する容器として、立方体状の容器であって一の面およびその対面が通風可能に開口している枠体(枠容器)を用意した。枠容器は、一面の縦横が3.8×3.8cmのものを用意した。
【0124】
用意した積層体または粒状活性炭を、枠容器のサイズに合わせて、枠容器の内側に充填し、圧力損失を測定するための試験サンプルとした。各枠容器の寸法は表2に記載のとおりである。
【0125】
圧力損失は、以下のようにして測定した。上記のとおり用意した試験サンプルに60L/分の空気を流通させ、testo 510差圧計(株式会社テストー社)を用いて試験サンプル出入り口の差圧を測定した結果を、圧力損失(kPa)とした。
圧力損失の測定結果を、表2に示す。
【0126】
【符号の説明】
【0127】
1 吸着積層体、10 活性炭素繊維シート、10a 活性炭素繊維シートの主面、
10b 活性炭素繊維シートの側端面、10c 活性炭素繊維シートの側端面、F ガスの流れ方向