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特許7250173呼吸停止検知システム、呼吸停止の検知方法、コンピューティング機器、回帰モデルの構築方法、及び計算機が読み取り可能な記録媒体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-23
(45)【発行日】2023-03-31
(54)【発明の名称】呼吸停止検知システム、呼吸停止の検知方法、コンピューティング機器、回帰モデルの構築方法、及び計算機が読み取り可能な記録媒体
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/08 20060101AFI20230324BHJP
   A61B 5/113 20060101ALN20230324BHJP
【FI】
A61B5/08
A61B5/113
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021566529
(86)(22)【出願日】2019-05-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-13
(86)【国際出願番号】 CN2019086435
(87)【国際公開番号】W WO2020227856
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2021-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】516309844
【氏名又は名称】匯嘉健康生活科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】徐 ▲銘▼▲鴻▼
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼ 淑▲貞▼
(72)【発明者】
【氏名】▲チャン▼ ▲曉▼▲龍▼
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲復▼台
(72)【発明者】
【氏名】方 ▲識▼▲欽▼
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ ▲ユ▼仁
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 智桓
【審査官】山口 裕之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第07371220(US,B1)
【文献】特開2011-104248(JP,A)
【文献】国際公開第2017/185128(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/08
A61B 5/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピューティング機器を含む呼吸停止検知システムであって、
前記コンピューティング機器はユーザの睡眠期間に収集された呼吸信号を取得するために用いられ、
前記呼吸信号に対して第1のプリセット間隔のデータセグメントに分割することにより、n個の連続した第1の信号セグメントを取得し、前記nは正の整数であり、
前記コンピューティング機器は、各前記第1の信号セグメントをh個の第2の信号セグメントに均等に分割し、前記h個の第2の信号セグメントの各々に対応する呼吸強度を計算し、前記hは1より大きい正の整数であり、
前記コンピューティング機器は、各前記第1の信号セグメント対応する一つの部分閾値を取得、各前記第1の信号セグメントから、連続する時間の長さがr秒より長く、且つ、それぞれの呼吸強度が対応する前記部分閾値よりも低い複数の前記第2の信号セグメントから構成される第3の信号セグメントを選別し、前記rは0<r<10の条件を満たし、
前記コンピューティング機器は全ての前記第3の信号セグメントの合計時間が、前記呼吸信号の合計時間において占める比率を計算するためにも用いられ、呼吸停止の割合を取得し、
前記呼吸停止の割合を事前にトレーニングした回帰モデルに入力することにより、前記呼吸信号が対応する睡眠時の無呼吸低呼吸指数を取得し、
前記回帰モデルは前記呼吸停止の割合に基づいて対応する前記睡眠時の無呼吸低呼吸指数を計算する
ことを特徴とする呼吸停止検知システム。
【請求項2】
前記コンピューティング機器は、
各前記第2の信号セグメントが対応する呼吸強度を計算し、
経験的モード分解を利用して各前記第2の信号セグメントを複数の経験的モード関数に分解するためにも用いられ、
前記複数の経験的モード関数から前記ユーザと対応する一つ又は複数の経験的モード関数を選別し、
選別された一つ又は複数の経験的モード関数に基づいて、h個の前記第2の信号セグメントがそれぞれ対応する呼吸強度を計算する
ことを特徴とする請求項1に記載の呼吸停止検知システム。
【請求項3】
各前記第1の信号セグメントが対応する一つの部分閾値を取得することには、
前記呼吸信号に対して第2のプリセット間隔のデータセグメントに分割し、m個の第4の信号セグメントを取得し、前記第1のプリセット間隔の長さは前記第2のプリセット間隔の長さより長く、前記mは正の整数であり、
前記m個の前記第4の信号セグメントに基づいて、前記呼吸信号が対応する全体の呼吸変動の程度を計算し、
各前記第1の信号セグメントが対応するh個の呼吸強度と前記全体の呼吸変動の程度に基づいて、各前記第1の信号セグメントがそれぞれ対応する前記部分閾値を計算することが含まれる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の呼吸停止検知システム。
【請求項4】
前記呼吸信号に対して第2のプリセット間隔のデータセグメントに分割することにより、前記m個の第4の信号セグメントを取得することには、
前記呼吸信号に対して間隔を前記第2のプリセット間隔として、重複比率がs%のデータセグメントで分割し、前記m個の前記第4の信号セグメントを取得することが含まれ、 前記sは0<s<100の関係を満たす
ことを特徴とする請求項3に記載の呼吸停止検知システム。
【請求項5】
前記m個の前記第4の信号セグメントに基づいて、前記呼吸信号が対応する全体の呼吸変動の程度を計算することには、
各前記第4の信号セグメントが対応する複数の呼吸強度を計算することにより、各前記第4の信号セグメントが対応する呼吸強度の中央値を選別し、
取得した前記m個の呼吸強度の中央値に基づいて、各前記第4の信号セグメントが対応する一つの呼吸低下率を計算することにより、前記m個の前記呼吸低下率の中央値を選別し、前記全体の呼吸変動の程度を取得することが含まれる
ことを特徴とする請求項3に記載の呼吸停止検知システム。
【請求項6】
各前記第1の信号セグメントが対応する前記h個の呼吸強度と前記全体の呼吸変動の程度に基づいて、各前記第1の信号セグメントがそれぞれ対応する前記部分閾値を計算することには、
前記第1の信号セグメントが対応する前記h個の呼吸強度の中央値と前記全体の呼吸変動の程度の積を計算することにより、前記第1の信号セグメントが対応する前記部分閾値を取得することが含まれる
ことを特徴とする請求項3に記載の呼吸停止検知システム。
【請求項7】
前記呼吸信号は鼻口気流信号、胸壁運動信号、頭と首の運動信号、及び胸と背中の運動信号における任意の一種又は複数種の信号であり、
前記コンピューティング機器は、接触式センサー又は非接触式センサーを含み、
前記接触式センサーは前記ユーザの睡眠期間の鼻口気流信号と胸壁運動信号のうちの少なくとも1つを収集するために用いられ、
前記非接触式センサーはユーザの睡眠期間の頭と首の運動信号と胸と背中の運動信号のうちの少なくとも1つを収集するために用いられる
ことを特徴とする請求項1に記載の呼吸停止検知システム。
【請求項8】
前記呼吸信号は鼻口気流信号、胸壁運動信号、頭と首の運動信号、及び胸と背中の運動信号における任意の一種又は複数種の信号であり、接触式センサー又は非接触式センサーを更に含み、
前記接触式センサーは前記ユーザの睡眠期間の鼻口気流信号と胸壁運動信号のうちの少なくとも1つを収集し、この収集した前記鼻口気流信号と胸壁運動信号のうちの少なくとも1つを前記コンピューティング機器に送信するために用いられ、
前記非接触式センサーはユーザの睡眠期間の頭と首の運動信号と胸と背中の運動信号のうちの少なくとも1つを収集し、この収集した前記頭と首の運動信号と胸と背中の運動信号のうちの少なくとも1つを前記コンピューティング機器に送信する
ことを特徴とする請求項1に記載の呼吸停止検知システム。
【請求項9】
表示装置を更に備え、
前記コンピューティング機器は更に睡眠時の無呼吸低呼吸指数を表示装置に送信するために用いられ、
前記表示装置は取得した睡眠時の無呼吸低呼吸指数を出力するように表示するために使用される
ことを特徴とする請求項1に記載の呼吸停止検知システム。
【請求項10】
前記コンピューティング機器はモニターを含み、
前記モニターは睡眠時の無呼吸低呼吸指数を出力するように表示するために用いられる
ことを特徴とする請求項1に記載の呼吸停止検知システム。
【請求項11】
前記呼吸信号は頭と首の運動信号と胸と背中の運動信号を含み、
前記コンピューティング機器は前記頭と首の運動信号と前記胸と背中の運動信号にそれぞれ対応した前記第3の信号セグメントに基づき、前記頭と首の運動信号と前記胸と背中の運動信号がそれぞれ対応する呼吸低下率を計算するように用いられ、
前記呼吸低下率に基づいて、前記ユーザが対応する睡眠時無呼吸のタイプを識別する
ことを特徴とする請求項1に記載の呼吸停止検知システム。
【請求項12】
コンピューティング機器を利用した呼吸停止の検知方法であって、
前記コンピューティング機器は、
ユーザの睡眠期間に収集された呼吸信号を取得し、前記呼吸信号に対して第1のプリセット間隔のデータセグメントに分割し、n個の連続した第1の信号セグメントを取得し、前記nは正の整数であり、
各前記第1の信号セグメントをh個の第2の信号セグメントに均等に分割し、前h個の第2の信号セグメントの各々に対応する呼吸強度を計算し、前記hは1より大きい正の整数であり、
各前記第1の信号セグメントに対応する一つの部分閾値を取得し、各前記第1の信号セグメントから、連続する時間の長さがr秒より長く、且つ、それぞれの呼吸強度が対応する前記部分閾値よりも低い複数の前記第2の信号セグメントから構成される第3の信号セグメントを選別し、前記rは0<r<10の条件を満たし、
全ての前記第3の信号セグメントの合計時間が、前記呼吸信号の合計時間において占める比率を計算し、
呼吸停止の割合を取得し、前記呼吸停止の割合を事前にトレーニングした回帰モデルに入力することにより、前記呼吸信号が対応する睡眠時の無呼吸低呼吸指数を取得し、
前記回帰モデルは前記呼吸停止の割合に基づいて対応する前記睡眠時の無呼吸低呼吸指数を計算するために用いられる
ことを特徴とする呼吸停止の検知方法。
【請求項13】
取得した各前記第1の信号セグメントの部分閾値取得し、前記部分閾値は、前記呼吸信号に対して第2のプリセット間隔のデータセグメントに分割し、m個の第4の信号セグメントを取得し、前記第1のプリセット間隔の長さは前記第2のプリセット間隔の長さより長く、前記mは正の整数であり、
前記m個の前記第4の信号セグメントに基づいて、前記呼吸信号が対応する全体の呼吸変動の程度を計算し、
各前記第1の信号セグメントが対応する前記h個の呼吸強度と前記全体の呼吸変動の程度に基づいて、各前記第1の信号セグメントがそれぞれ対応する前記部分閾値を計算する
ことを特徴とする請求項12に記載の呼吸停止の検知方法。
【請求項14】
メモリ、プロセッサを含んだコンピューティング機器であって、
前記メモリには前記プロセッサで実行できるコンピュータが読み取り可能な命令が記録されており、前記プロセッサが前記コンピューティング機器で読み取り可能な命令を実行して、
ユーザの睡眠期間中に収集した呼吸信号を取得し、前記呼吸信号を第1のプリセット間隔のデータセグメントに分割して、n個の連続する第1の信号セグメントを取得し、前記nは正の整数であり、
各前記第1の信号セグメントをh個の第2の信号セグメントに均等に分割し、前h個の第2の信号セグメントの各々に対応する呼吸強度を計算し、前記hは1より大きい正の整数であり、
各前記第1の信号セグメントに対応する部分閾値を取得し、各前記第1の信号セグメントから、連続する時間の長さがr秒より長く、且つ、それぞれの呼吸強度が対応する前記部分閾値よりも低い複数の前記第2の信号セグメントから構成される第3の信号セグメントを選別し、前記rは0<r<10の条件を満たし、
全ての前記第3の信号セグメントの合計時間が、前記呼吸信号の合計時間において占める比率を計算することにより、
呼吸停止の割合を取得し、前記呼吸停止の割合を事前にトレーニングした回帰モデルに入力することにより、前記呼吸信号が対応する睡眠時の無呼吸低呼吸指数を取得し、
前記回帰モデルは前記呼吸停止の割合に基づいて対応する前記睡眠時の無呼吸低呼吸指数を計算するために用いられるステップを実行する
ことを特徴とするコンピューティング機器。
【請求項15】
前記呼吸信号は鼻口気流信号、胸壁運動信号、頭と首の運動信号、及び胸と背中の運動信号における任意の一種又は複数種の信号であり、
前記コンピューティング機器は、接触式センサー又は非接触式センサーを含み、ユーザの睡眠期間に収集した呼吸信号を取得することには、
前記接触式センサーが前記ユーザの睡眠期間の鼻口気流信号と胸壁運動信号のうちの少なくとも1つを収集するように制御し、或いは、
前記非接触式センサーが前記ユーザの睡眠期間の頭と首の運動信号、及び胸と背中の運動信号のうちの少なくとも1つを収集するように制御することが含まれる
ことを特徴とする請求項14に記載のコンピューティング機器。
【請求項16】
各前記第1の信号セグメントが対応する一つの部分閾値を取得することには、
前記呼吸信号に対して第2のプリセット間隔のデータセグメントに分割し、m個の第4の信号セグメントを取得し、前記第1のプリセット間隔の長さは前記第2のプリセット間隔より長く、前記mは正の整数であり、
前記m個の前記第4の信号セグメントに基づいて、前記呼吸信号が対応する全体の呼吸変動の程度を計算し、
各前記第1の信号セグメントが対応するh個の呼吸強度と前記全体の呼吸変動の程度に基づいて、各前記第1の信号セグメントがそれぞれ対応する前記部分閾値を計算する
ことを特徴とする請求項14又は請求項15に記載のコンピューティング機器。
【請求項17】
前記m個の前記第4の信号セグメントに基づいて、前記呼吸信号が対応する全体の呼吸変動の程度を計算することには、
各前記第4の信号セグメントが対応する複数の呼吸強度を計算することにより、各前記第4の信号セグメントが対応する呼吸強度の中央値を選別し、
取得した前記m個の呼吸強度の中央値に基づいて、各前記第4の信号セグメントが対応する一つの呼吸低下率を計算し、前記m個の前記呼吸低下率の中央値を選別し、前記全体の呼吸変動の程度を取得することが含まれる
ことを特徴とする請求項16に記載のコンピューティング機器。
【請求項18】
各前記第1の信号セグメントが対応する前記h個の呼吸強度と全体の呼吸変動の程度に基づいて、各前記第1の信号セグメントが対応する前記部分閾値を計算することには、
前記第1の信号セグメントが対応する前記h個の呼吸強度の中央値と前記全体の呼吸変動の程度の積を計算し、前記第1の信号セグメントが対応する前記部分閾値を得ることが含まれる
ことを特徴とする請求項16に記載のコンピューティング機器。
【請求項19】
コンピューティング機器を利用した回帰モデルの構築方法であって、
前記コンピューティング機器は、
複数のテストユーザの睡眠期間に収集した呼吸信号を取得し、前記呼吸信号に対して第1のプリセット間隔のデータセグメントに分割し、n個の連続した第1の信号セグメントを取得し、前記nは正の整数であり、
各前記第1の信号セグメントをh個の第2の信号セグメントに均等に分割し、前h個の第2の信号セグメントの各々が対応する呼吸強度を計算し、前記hは1より大きい正の整数であり、
各前記第1の信号セグメント対応する一つの部分閾値を取得し、各前記第1の信号セグメントから、連続した時間の長さがr秒より長く、且つそれぞれの呼吸強度が対応する前記部分閾値より小さい複数の前記第2の信号セグメントから構成される第3の信号セグメントを選別し、前記rは0<r<10の条件を満たし、
全ての前記第3の信号セグメントの合計時間が、前記呼吸信号の合計時間に占める比率を計算することにより、各テストユーザの対応する一つの呼吸停止の割合を取得し、
各前記テストユーザの呼吸信号が対応する睡眠時の無呼吸低呼吸指数を取得し、複数のテストユーザが対応する呼吸停止の割合と睡眠時の無呼吸低呼吸指数に基づいて、線形回帰方程式の構築を行い、トレーニングした回帰モデルを取得する
ことを特徴とする回帰モデルの構築方法。
【請求項20】
計算機が読み取り可能な命令を記録した計算機が読み取り可能な記録媒体であって、
前記計算機が読み取り可能な命令はプロセッサによって、
ユーザの睡眠期間に収集した呼吸信号を取得し、前記呼吸信号に対して第1のプリセット間隔のデータセグメントに分割し、n個の連続した第1の信号セグメントを取得し、前記nは正の整数であり、
各前記第1の信号セグメントをh個の第2の信号セグメントに均等に分割し、前h個の第2の信号セグメントの各々に対応する信号強度を計算し、前記hは1より大きい正の整数であり、
各前記第1の信号セグメント対応する一つの部分閾値を取得し、各前記第1の信号セグメントから、連続した時間の長さがr秒より長く、且つ、それぞれの呼吸強度が対応する前記部分閾値より小さい複数の前記第2の信号セグメントから構成される第3の信号セグメントを選別し、前記rは0<r<10の条件を満たし、
全ての前記第3の信号セグメントの合計時間が前記呼吸信号の合計時間に占める比率を計算することにより、呼吸停止の割合を取得し、前記呼吸停止の割合を事前にトレーニングした回帰モデルに入力することにより、前記呼吸信号が対応する睡眠時の無呼吸低呼吸指数を取得し、
前記回帰モデルは前記呼吸停止の割合に基づいて対応する前記睡眠時の無呼吸低呼吸指数を計算するために用いられる
ことを特徴とする計算機が読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は呼吸停止検知システム、呼吸停止の検知方法、コンピューティング機器、回帰モデルの構築方法、及び計算機が読み取り可能な記録媒体に関し、特に睡眠時の無呼吸を検知することができる呼吸停止検知システム、呼吸停止の検知方法、コンピューティング機器、回帰モデルの構築方法、及び計算機が読み取り可能な記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
睡眠時の無呼吸(睡眠時無呼吸、睡眠時の呼吸停止)とは、睡眠中に呼吸が止まるか、完全には止まらないにせよ大幅に減少することを意味する。そして、睡眠時無呼吸は、次の3種のカテゴリに分類できる。
【0003】
第1に、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(Obstructive Sleep Apnea,OSA)が挙げられる。この症状は、喉の近くの柔らかい組織が緩むことによって上側の気道が閉塞されてしまうことにより生じ、気道が狭くなると睡眠中に呼吸が停止してしまうものである。
【0004】
第2に、中枢型睡眠時無呼吸(Central Sleep Apnea,CSA)が挙げられる。この症状は、脳卒中や外傷等によって中枢神経系が損傷した場合によって生じる場合があり、脳からの通常の呼吸指令の伝達ができずに、睡眠時に無呼吸となる機能的な障害が引き起こされるものである。
【0005】
第3に、複数の理由によって引き起こされる睡眠時無呼吸(Mixed Apnea)が挙げられる。この複数の理由の組み合わせによって引き起こされる睡眠障害は、たとえば、第1に挙げた閉塞性睡眠時無呼吸症候群と第2に挙げた中枢型睡眠時無呼吸の両方に苦しんでいる患者の場合が挙げられる。
【0006】
このような患者の場合には、睡眠中の呼吸の量が大幅に減少してしまい、その状態が10秒以上もその状態が続いてしまう。更に、睡眠時に目を覚ましてしまう場合もあり、血液中の酸素濃度が低下してしまう現象もみられる。
【0007】
実際に上述した睡眠時の無呼吸を評価する際は、一般には睡眠時無呼吸低呼吸指数(Apnea Hypopnea Index, AHI)を用いて、ユーザの睡眠時無呼吸を評価する。ここで、AHIは、患者の睡眠中(睡眠期間)に測定された「1時間毎の呼吸停止数」及び「1時間毎の低呼吸数」の総和として定義される。
【0008】
一般的に、正常な人のAHI値は5より小さく、AHI値が5~15の間を示す場合には、軽微ではあるが睡眠時に無呼吸の状態があることを示す。そして、AHIが16~30の値を示す場合には中程度の睡眠時の無呼吸が生じていることを意味する。更に、AHIが30を超えた場合には重度の睡眠時の無呼吸が発生していることを意味する。なお、国が異なる場合や地域が異なる場合には採用されている基準も異なる場合がある。よって、上述した数値の例示は必ずしも世界共通のものではなく、国や地域毎に前後する場合がある。
【0009】
一方、患者(使用者、ユーザ)の睡眠中のAHIの検出を実現するためには、従来の技術では、使用者は睡眠検査室で眠る必要があり、睡眠ポリグラフ生理学モニター(Polysomnography instrument)を使用して使用者の睡眠ポリグラフ(Polysomnography,PSG)を取得して、対応するAHIを処理計算することが行われていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、PSG検出ではセンサーを使用者の体のさまざまな部分に取り付ける必要があるため、PSG検出を行う医療機関への負担も多くなりがちである。更に、PSG検出では一般に操作が面倒であり、現場で作業を行う医療関係者にも多くの手間がかかるばかりか、この検査を受けるユーザにとっても体のあちらこちらにセンサーが取り付けられるので寝心地が悪く、検査を行う医療機関で普段と同じような自然な睡眠をとるのが難しいという問題があった。
【0011】
本発明は、上述の複数の問題に鑑みて、医療現場における手間が少なく、効率良く検査できる呼吸停止検知システム、呼吸停止の検知方法、コンピューティング機器、回帰モデルの構築方法、及び計算機が読み取り可能な記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の問題に鑑みて本発明は以下の構成を備える。
【0013】
コンピューティング機器を含む呼吸停止検知システムであって、
前記コンピューティング機器はユーザの睡眠期間に収集された呼吸信号を取得するために用いられ、
前記呼吸信号に対して第1のプリセット間隔のデータセグメントに分割することにより、n個の連続した第1の信号セグメントを取得し、前記nは正の整数であり、
前記コンピューティング機器は、各前記第1の信号セグメントを均しくh個の第2の信号セグメントに分割し、前記hは1より大きい正の整数であり、
前記コンピューティング機器は、各前記第1の信号セグメントが対応する一つの部分閾値を取得するためにも用いられ、各前記第1の信号セグメントにおいて、連続する時間の長さがr秒より長く、且つ、対応する呼吸強度が均しく対応する前記部分閾値よりも低い複数の前記第2の信号セグメントから構成される第3の信号セグメントを選別し、前記rは0<r<10の条件を満たし、
前記コンピューティング機器は全ての前記第3の信号セグメントの合計時間が、前記呼吸信号の合計時間において占める比率を計算するためにも用いられ、呼吸停止の割合を取得し、
前記呼吸停止の割合を事前にトレーニングした回帰モデルに入力することにより、前記 呼吸信号が対応する睡眠時の無呼吸低呼吸指数を取得し、
前記回帰モデルは前記呼吸停止の割合に基づいて対応する前記睡眠時の無呼吸低呼吸指数を計算する。
【0014】
また、前記コンピューティング機器は、
各前記第2の信号セグメントが対応する呼吸強度を計算し、
経験的モード分解を利用して各前記第2の信号セグメントを複数の経験的モード関数に分解するためにも用いられ、
前記複数の経験的モード関数から前記ユーザと対応する一つ又は複数の経験的モード関数を選別し、
選別された一つ又は複数の経験的モード関数に基づいて、h個の前記第2の信号セグメントがそれぞれ対応する呼吸強度を計算する。
【0015】
また、各前記第1の信号セグメントが対応する一つの部分閾値を取得することには、
前記呼吸信号に対して第2のプリセット間隔のデータセグメントに分割し、m個の第4の信号セグメントを取得し、前記第1のプリセット間隔の長さは前記第2のプリセット間隔の長さより長く、前記mは正の整数であり、
前記m個の前記第4の信号セグメントに基づいて、前記呼吸信号が対応する全体の呼吸変動の程度を計算し、
【0016】
各前記第1の信号セグメントが対応するh個の呼吸強度と前記全体の呼吸変動の程度に基づいて、各前記第1の信号セグメントがそれぞれ対応する前記部分閾値を計算することが含まれる。
【0017】
また、前記呼吸信号に対して第2のプリセット間隔のデータセグメントに分割することにより、前記m個の第4の信号セグメントを取得することには、
前記呼吸信号に対して間隔を前記第2のプリセット間隔として、重複比率がs%のデータセグメントで分割し、前記m個の前記第4の信号セグメントを取得することが含まれ、前記sは0<s<100の関係を満たす。
【0018】
また、前記m個の前記第4の信号セグメントに基づいて、前記呼吸信号が対応する全体の呼吸変動の程度を計算することには、
各前記第4の信号セグメントが対応する複数の呼吸強度を計算することにより、各前記第4の信号セグメントが対応する呼吸強度の中央値を選別し、
取得した前記m個の呼吸強度の中央値に基づいて、各前記第4の信号セグメントが対応する一つの呼吸低下率を計算することにより、前記m個の前記呼吸低下率の中央値を選別し、前記全体の呼吸変動の程度を取得することが含まれる。
【0019】
また、各前記第1の信号セグメントが対応する前記h個の呼吸強度と前記全体の呼吸変動の程度に基づいて、各前記第1の信号セグメントがそれぞれ対応する前記部分閾値を計算することには、
前記第1の信号セグメントが対応する前記h個の呼吸強度の中央値と前記全体の呼吸変動の程度の積を計算することにより、前記第1の信号セグメントが対応する前記部分閾値を取得することが含まれる。
【0020】
また、前記呼吸信号は鼻口気流信号、胸壁運動信号、頭と首の運動信号、及び胸と背中の運動信号における任意の一種又は複数種の信号であり、
前記コンピューティング機器は、接触式センサー又は非接触式センサーを含み、
前記接触式センサーは前記ユーザの睡眠期間の鼻口気流信号と胸壁運動信号のうちの少なくとも1つを収集するために用いられ、
前記非接触式センサーはユーザの睡眠期間の頭と首の運動信号と胸と背中の運動信号のうちの少なくとも1つを収集するために用いられる。
【0021】
また、前記呼吸信号は鼻口気流信号、胸壁運動信号、頭と首の運動信号、及び胸と背中の運動信号における任意の一種又は複数種の信号であり、接触式センサー又は非接触式センサーを更に含み、
前記接触式センサーは前記ユーザの睡眠期間の鼻口気流信号と胸壁運動信号のうちの少なくとも1つを収集し、この収集した前記鼻口気流信号と胸壁運動信号のうちの少なくとも1つを前記コンピューティング機器に送信するために用いられ、
前記非接触式センサーはユーザの睡眠期間の頭と首の運動信号と胸と背中の運動信号のうちの少なくとも1つを収集し、この収集した前記頭と首の運動信号と胸と背中の運動信号のうちの少なくとも1つを前記コンピューティング機器に送信する。
【0022】
更に、表示装置を更に備え、
前記コンピューティング機器は更に睡眠時の無呼吸低呼吸指数を表示装置に送信するために用いられ、
前記表示装置は取得した睡眠時の無呼吸低呼吸指数を出力するように表示するために使用される。
【0023】
また、前記コンピューティング機器はモニターを含み、
前記モニターは睡眠時の無呼吸低呼吸指数を出力するように表示するために用いられる。
【0024】
また、前記呼吸信号は頭と首の運動信号と胸と背中の運動信号を含み、
前記コンピューティング機器は前記頭と首の運動信号と前記胸と背中の運動信号にそれぞれ対応した前記第3の信号セグメントに基づき、前記頭と首の運動信号と前記胸と背中の運動信号がそれぞれ対応する呼吸低下率を計算するように用いられ、
前記呼吸低下率に基づいて、前記ユーザが対応する睡眠時無呼吸のタイプを識別する。
【0025】
また、コンピューティング機器を利用した呼吸停止の検知方法であって、
前記コンピューティング機器は、
ユーザの睡眠期間に収集された呼吸信号を取得し、前記呼吸信号に対して第1のプリセット間隔のデータセグメントに分割し、n個の連続した第1の信号セグメントを取得し、前記nは正の整数であり、
各前記第1の信号セグメントを均しくh個の第2の信号セグメントに分割し、各前記第2の信号セグメントに対応する呼吸強度を計算し、前記hは1より大きい正の整数であり、
各前記第1の信号セグメントに対応する一つの部分閾値を取得し、各前記第1の信号セグメントにおいて、連続する時間の長さがr秒より長く、且つ、対応する呼吸強度が均しく対応する前記部分閾値よりも低い複数の前記第2の信号セグメントから構成される第3の信号セグメントを選別し、前記rは0<r<10の条件を満たし、
全ての前記第3の信号セグメントの合計時間が、前記呼吸信号の合計時間において占める比率を計算し、
呼吸停止の割合を取得し、前記呼吸停止の割合を事前にトレーニングした回帰モデルに入力することにより、前記呼吸信号が対応する睡眠時の無呼吸低呼吸指数を取得し、
前記回帰モデルは前記呼吸停止の割合に基づいて対応する前記睡眠時の無呼吸低呼吸指数を計算するために用いられる。
【0026】
また、取得した各前記第1の信号セグメントの部分閾値取得し、前記部分閾値は、前記呼吸信号に対して第2のプリセット間隔のデータセグメントに分割し、m個の第4の信号セグメントを取得し、前記第1のプリセット間隔の長さは前記第2のプリセット間隔の長さより長く、前記mは正の整数であり、
前記m個の前記第4の信号セグメントに基づいて、前記呼吸信号が対応する全体の呼吸変動の程度を計算し、
各前記第1の信号セグメントが対応する前記h個の呼吸強度と前記全体の呼吸変動の程度に基づいて、各前記第1の信号セグメントがそれぞれ対応する前記部分閾値を計算する。
【0027】
また、メモリ、プロセッサを含んだコンピューティング機器であって、
前記メモリには前記プロセッサで実行できるコンピュータが読み取り可能な命令が記録されており、前記プロセッサが前記コンピューティング機器で読み取り可能な命令を実行して、
ユーザの睡眠期間中に収集した呼吸信号を取得し、前記呼吸信号を第1のプリセット期間のデータセグメントに分割して、n個の連続する第1の信号セグメントを取得し、前記nは正の整数であり、
各前記第1の信号セグメントを均しくh個の第2の信号セグメントに分割し、各前記第2の信号セグメントが対応する呼吸強度を計算し、前記hは1より大きい正の整数であり、
各前記第1の信号セグメントに対応する部分閾値を取得し、各前記第1の信号セグメントから、連続する時間の長さがr秒より長く、且つ、対応する呼吸強度が均しく対応する前記部分閾値よりも低い複数の前記第2の信号セグメントから構成される第3の信号セグメントを選別し、前記rは0<r<10の条件を満たし、
全ての前記第3の信号セグメントの合計時間が、前記呼吸信号の合計時間において占める比率を計算することにより、
呼吸停止の割合を取得し、前記呼吸停止の割合を事前にトレーニングした回帰モデルに入力することにより、前記呼吸信号が対応する睡眠時の無呼吸低呼吸指数を取得し、
前記回帰モデルは前記呼吸停止の割合に基づいて対応する前記睡眠時の無呼吸低呼吸指数を計算するために用いられるステップを実行する。
【0028】
また、前記呼吸信号は鼻口気流信号、胸壁運動信号、頭と首の運動信号、及び胸と背中の運動信号における任意の一種又は複数種の信号であり、
前記コンピューティング機器は、接触式センサー又は非接触式センサーを含み、ユーザの睡眠期間に収集した呼吸信号を取得することには、
前記接触式センサーが前記ユーザの睡眠期間の鼻口気流信号と胸壁運動信号のうちの少なくとも1つを収集するように制御し、或いは、
前記非接触式センサーが前記ユーザの睡眠期間の頭と首の運動信号、及び胸と背中の運動信号のうちの少なくとも1つを収集するように制御することが含まれる。
【0029】
また、各前記第1の信号セグメントが対応する一つの部分閾値を取得することには、
前記呼吸信号に対して第2のプリセット間隔のデータセグメントに分割し、m個の第4の信号セグメントを取得し、前記プリセット間隔の長さは前記第2のプリセット間隔より長く、前記mは正の整数であり、
【0030】
前記m個の前記第4の信号セグメントに基づいて、前記呼吸信号が対応する全体の呼吸変動の程度を計算し、
各前記第1の信号セグメントが対応するh個の呼吸強度と前記全体の呼吸変動の程度に基づいて、各前記第1の信号セグメントがそれぞれ対応する前記部分閾値を計算する。
【0031】
また、前記m個の前記第4の信号セグメントに基づいて、前記呼吸信号が対応する全体の呼吸変動の程度を計算することには、
各前記第4の信号セグメントが対応する複数の呼吸強度を計算することにより、各前記第4の信号セグメントが対応する呼吸強度の中央値を選別し、
取得した前記m個の呼吸強度の中央値に基づいて、各前記第4の信号セグメントが対応する一つの呼吸低下率を計算し、前記m個の前記呼吸低下率の中央値を選別し、前記全体の呼吸変動の程度を取得することが含まれる。
【0032】
また、各前記第1の信号セグメントが対応する前記h個の呼吸強度と全体の呼吸変動の程度に基づいて、各前記第1の信号セグメントが対応する前記部分閾値を計算することには、
前記第1の信号セグメントが対応する前記h個の呼吸強度の中央値と前記全体の呼吸変動の程度の積を計算し、前記第1の信号セグメントが対応する前記部分閾値を得ることが含まれる。
【0033】
また、コンピューティング機器を利用した回帰モデルの構築方法であって、
前記コンピューティング機器は、
複数のテストユーザの睡眠期間に収集した呼吸信号を取得し、前記呼吸信号に対して第1のプリセット間隔のデータセグメントに分割し、n個の連続した第1の信号セグメントを取得し、前記nは正の整数であり、
【0034】
各前記第1の信号セグメントを均しくh個の第2の信号セグメントに分割し、各前記第2の信号セグメントが対応する呼吸強度を計算し、前記hは1より大きい正の整数であり、
各前記第1の信号セグメントが対応する一つの部分閾値を取得し、各前記第1の信号セグメントにおいて、連続した時間の長さがr秒より長く、且つ対応する呼吸強度が均しく対応する前記部分閾値より小さい複数の前記第2の信号セグメントから構成される第3の信号セグメントを選別し、前記rは0<r<10の条件を満たし、
全ての前記第3の信号セグメントの合計時間が、前記呼吸信号の合計時間に占める比率を計算することにより、各テストユーザの対応する一つの呼吸停止の割合を取得し、
各前記テストユーザの呼吸信号が対応する睡眠時の無呼吸低呼吸指数を取得し、複数のテストユーザが対応する呼吸停止の割合と睡眠時の無呼吸低呼吸指数に基づいて、線形回帰方程式の構築を行い、トレーニングした回帰モデルを取得する。
【0035】
更に、計算機が読み取り可能な命令を記録した計算機が読み取り可能な記録媒体であって、
前記計算機が読み取り可能な命令はプロセッサによって、
ユーザの睡眠期間に収集した呼吸信号を取得し、前記呼吸信号に対して第1のプリセット間隔のデータセグメントに分割し、n個の連続した第1の信号セグメントを取得し、前記nは正の整数であり、
各前記第1の信号セグメントを均しくh個の第2の信号セグメントに分割し、各前記第2の信号セグメントが対応する信号強度を計算し、前記hは1より大きい正の整数であり、
各前記第1の信号セグメントが対応する一つの部分閾値を取得し、各前記第1の信号セグメントにおいて、連続した時間の長さがr秒より長く、且つ対応する呼吸強度が均しく対応する前記部分閾値より小さい複数の前記第2の信号セグメントから構成される第3の信号セグメントを選別し、前記rは0<r<10の条件を満たし、
全ての前記第3の信号セグメントの合計時間が前記呼吸信号の合計時間に占める比率を計算することにより、呼吸停止の割合を取得し、前記呼吸停止の割合を事前にトレーニングした回帰モデルに入力することにより、前記呼吸信号が対応する睡眠時の無呼吸低呼吸指数を取得し、
前記回帰モデルは前記呼吸停止の割合に基づいて対応する前記睡眠時の無呼吸低呼吸指数を計算するために用いられる。
【発明の効果】
【0036】
本発明は、呼吸信号をセグメント化すると共に、対応する適切な部分閾値を設定することにより、対応する部分閾値に基づいて信号セグメントに対して呼吸強度と持続時間で選別を行い、呼吸停止特性を有する信号セグメントを識別する。
【0037】
そして、呼吸停止特性を有するこれらの信号セグメントの合計持続時間と呼吸信号の合計持続時間に基づいて、呼吸停止の合計持続時間のパーセンテージ(なお、パーセンテージは全体を100%とした「割合」のことを言うので、以下単に「割合」ともいう。)を計算する。つまり、呼吸が中断している時間のパーセンテージを計算する。
このため、睡眠期間におけるユーザの呼吸停止の重症度を、効果的に定量化することができ、最終に、予め実験して推定された呼吸停止のパーセンテージとAHIの回帰モデルに基づいて最終的なAHIを計算する。
【0038】
また、呼吸停止のパーセンテージの判断は、呼吸が中断している場合又は浅い呼吸である場合を検出することと(要は呼吸停止の特性を持っている状態)、正常に呼吸ができている場合の合計時間の両者を考慮して決定する。そして、呼吸停止であると判断されたとき(呼吸停止イベントが発生したともいう。)、呼吸停止の特性を持った信号セグメントに対応する呼吸強度の持続時間の閾値はより低く設定される。
【0039】
すなわち、判断時間の長さはより緩く設定されることとなる。このため、本願の実施形態の認識効果が保証されると共に、センサーの応答時間による影響が少なく、センサーのタイプへの依存が少なくなる。
【0040】
つまり、呼吸信号を測定するために接触式センサーを使用する必要もなく、更に呼吸が浅く不十分な状態を識別するために血液中の酸素濃度を検出する必要もない。
【0041】
そのため、検出時の環境要件、即ち医療機関の医療関係者への負担を軽くでき、更に、ユーザの体に多くのセンサーを取り付ける必要がないため、従来技術による検査よりも医療機器の操作負担についても、人手がかかる点についても大幅に簡素化することができ、検出効率が大幅に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明による実施形態1によって提供される呼吸停止検知システムにおいてコンピューティング機器によって実行されるフローチャートである。
図2】本発明による実施形態2によって提供される呼吸停止検知システムにおいて呼吸強度を計算するフローチャートである。
図3】本発明による実施形態3によって提供される呼吸停止検知システムにおいて部分閾値を計算するフローチャートである。
図4】本発明による実施形態4によって提供される呼吸停止検知システムにおいて部分閾値を計算するフローチャートである。
図5】本発明による実施形態5によって提供される呼吸停止検知システムにおいて睡眠時無呼吸のタイプを識別する。
図6】本発明による実施形態6によって提供される回帰モデルの構築方法のフローチャートである。
図7】本発明の第6の実施形態によって提供されるAHIブランド-アルトマンチャートである。
図8】本発明の第8の実施形態によって提供される呼吸停止検知方法のフローチャートである。
図9A】本発明の第9の実施形態によって提供されるコンピューティング機器のブロック図であると共に、本発明による呼吸停止検知システムのハードウェア資源のブロック図である。
図9B】本発明の第9の実施形態によって提供されるコンピューティング機器が呼吸停止を検出するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本願の実施形態を理解する際に、従来技術の理解が必要なものについては従来技術の概要についても適宜簡単に説明する。また、以下の実施形態における説明は本発明の実施形態を説明するものである。また、当業者が本願発明に簡単な付加や変更を加えたものについても、特許請求の範囲の発明特定事項を全て備えるものであれば本発明の権利範囲に属するものとする。
【0044】
以下の説明は、本発明の技術的範囲を、以下の実施形態で示した範囲に限定する主旨ではなく、本発明を実施するための形態を例示するものにすぎない。また、本発明の実施形態をより容易に理解するため、特定のシステム構造と技術等については細部に至る内容についてまで説明している。一方、本発明を説明するにあたり、特定の細部の内容についてまでは説明せずとも、当業者であれば当然に実施できると考えられる場合には、つまり、当業者であれば説明するまでもなく当然に知りえるシステム、デバイス、電気回路、及びこれらを用いた睡眠時無呼吸の検出方法については説明を適宜省略する場合がある。
【0045】
本発明の理解を容易にするため、以下の実施形態では本発明の課題を解決するための一例を説明する。ここで、従来技術のポリソムノグラフィー(Polysomnography:PSG)検査は、対応するセンサーをユーザの体の複数の所定の部位に貼り付け又は取り付ける必要があるため、センサーを取り付ける際の作業が煩雑であり、医療従事者に負担がかかる。
【0046】
更に、ユーザにとっては体のいたるところにセンサーが取り付けられるため、実際に睡眠をとって検査を受けようにも、寝心地が悪く自然な睡眠をとるのは困難である。結果的に、従来の技術を用いて睡眠時無呼吸をAHIで検出する方法は医療従事者に負荷がかかるだけでなく、自然な睡眠を妨げてしまうため、正確なデータを取得するのが困難であった。
【0047】
センサーの装着に係る医療機関への負担を軽減し、AHI検出の効率を改善するために、本発明の実施形態では、一晩の睡眠期間(睡眠中)にユーザによって収集された呼吸信号は、先ずはセグメント化される。そして、各セグメントに適切な部分閾値を設定し、この部分閾値に基づいて、各信号セグメントに対して呼吸強度と持続時間について別々に選別(スクリーニング)することにより、呼吸停止の特徴を備えた信号セグメントを識別する。
【0048】
また、呼吸停止の特徴を備えたこれらの信号セグメントの合計持続時間と呼吸信号の合計時間に基づいて、呼吸が停止してしまっている合計時間のパーセンテージ(つまり、睡眠時に無呼吸となってしまっている時間のパーセンテージ)を計算することにより、睡眠時無呼吸症候群の患者であるユーザがどの程度まで重症化しているのかを効果的に定量化する。そして、最後に事前に実験することにより得られた睡眠時無呼吸のパーセンテージとAHIの回帰モデルに基づいて最終的なAHIを計算する。
睡眠時無呼吸(即ち呼吸が中断)の割合は、睡眠時に無呼吸となっている状態に加えて完全には無呼吸とはなっていないものの呼吸量が不十分な状態と、呼吸が正常に行われている(無呼吸でもなく浅い呼吸でもない)時間の合計時間の双方を判断材料として決定される。
【0049】
そして、呼吸が中断し又は不十分と決定されると、呼吸停止又は呼吸が不十分であるとの特徴を備えた信号セグメントに対応して呼吸強度の持続時間の閾値が以下のように設定される。すなわち、呼吸停止の特性を備えた信号セグメントに対応する呼吸強度の持続時間の閾値は、より小さく設定される一方で、睡眠時に無呼吸となっている又は呼吸が不十分となっていると判断するための時間・期間は比較的余裕をもって長めに設定される。よって、本発明の実施形態によれば睡眠時の無呼吸を認識することができる効果はそのままに、更に判断に要する期間を長めに設定しているので、センサーの応答時間による影響はほとんど影響せず、センサーのタイプへの依存が少ない。
【0050】
また、呼吸信号を測定するために接触式センサーを使用する必要がなく、呼吸が浅い即ち呼吸が不十分な状態を識別するために血液中の酸素飽和度の低下を検出する必要もない。
【0051】
したがって、検出する際に必要とされる医療機関の準備の負担はそれほどかからず、ユーザの体に多くのセンサーを取り付ける必要もないため、従来の技術と比較して、操作が大幅に簡素化され、更に検出の効率も大幅に向上する。
【0052】
次に、図1図9Aを参照して本発明の第1の実施形態を説明する。ここで、図1は本発明による実施形態1によって提供される呼吸停止検知システムにおいてコンピューティング機器9によって実行されるフローチャートである。また、図9Aにはコンピューティング機器9の機能ブロック図が示されている。
【0053】
図9Aのコンピューティング機器9は、主に、本発明の実施形態において必要となる最終的なAHIを得るために、一晩の睡眠中(睡眠期間)に睡眠状態にあるユーザの呼吸信号のデータ分析を実行するために使用される。このため、本発明の図9Aに示した実施形態におけるコンピューティング機器9は、呼吸信号を処理し計算することができる機能があれば足りる。
【0054】
たとえば、コンピューティング機器9は、クラウドサーバー等の大規模な処理装置や、パソコンや、携帯端末等の小規模な処理装置等の中からニーズに応じてエンジニア(以下「技術者」ともいう。)が選んで処理内容を設定するが、これには限定されない。
【0055】
また、本発明の実施形態におけるコンピューティング機器9Aの更なる理解を容易にするために、本発明の第9の実施形態で示したコンピューティング機器9のブロック図が参考となる。そこで、図9Aの構成についても説明する。コンピューティング機器9はプロセッサ90、メモリ91、メモリ91に記録されたコンピューティングプログラム92(単に「プログラム」ともいう。)を備え、本発明の第1の実施形態の実施にも適用することができる。なお、図9のハードウェア資源は第2の実施形態以降の発明を実施する際にも必要とされるが、第2の実施形態以降については説明を適宜省略する。
【0056】
本発明の実施形態では、呼吸停止検知システムを使用して、睡眠期間(睡眠中)のユーザの呼吸信号を収集してこの収集したデータを処理して、睡眠中のユーザのAHIデータを取得する。
【0057】
したがって、本発明の実施形態では、呼吸停止検知システムに含まれる全ての装置、並びに全ての装置間のデータ送受信と組み合わせの関係が、睡眠中におけるユーザの呼吸信号を収集し、更にこの収集した呼吸信号を処理できる要件を満たすことが必要とされる。このようにして、睡眠中のAHIデータに対するユーザの要求を取得する。
【0058】
このようにして、睡眠中のデータを取得すべく、機器のコストの要件や異なるニーズに応じてデータを取得し又は送信制限を行う等、エンジニアは、呼呼吸停止検知システムに含まれる特定の機器を自分で選択して設計できる。
ただし、データの送受信とデバイス間の組み合わせにとどまらず、本発明の実施形態によれば、最終的に設計された呼呼吸停止検知システムがハードウェア資源であるコンピューティング機器9を含むことが必要となる。
【0059】
本発明による呼呼吸停止検知システムを実施するために必要となる複数の装置の選択の組み合わせとしては以下の組み合わせが考えられる。
【0060】
組み合わせ1:データを収集し、このデータを処理するための一体型の呼吸停止検知システムとしてのコンピューティング機器9のみを含むこと。
【0061】
このとき、呼吸信号の取得と処理を実現するために、本発明の実施形態におけるコンピューティング機器9は、データ取得機能とデータ処理機能の両方を備えている必要がある。ここで、データ収集機能は、コンピューティング機器9に1つ又は複数のセンサー(図示せず)を接続するように取り付けることによって実現し得る。
【0062】
このとき、センサーは有線又は無線接続によってコンピューティング機器9に接続できる。そして、センサーを使用する場合には、ユーザの体に直接又はユーザ(の近くの)環境内の特定の場所にセンサーを設置し、呼吸信号を収集して処理する。
【0063】
組み合わせ2:独立したセンサーとコンピューティング機器9を備えるケースである。例えば接触式センサー又は非接触式センサーに加えて、スマートフォン等のスマート端末又はサーバーを備えるケースである。
【0064】
このとき、独立したセンサー(図示せず)がユーザの呼吸信号を収集し、コンピューティング機器9が収集した呼吸信号を処理してAHIを計算する。
また、データの伝送は、無線通信又は有線通信でセンサーとコンピューティング機器の間で行われる。
【0065】
また、データ送信のためのWi-Fi(登録商標)接続やセルラーネットワーク等を利用したリモート通信方法を使用する。
【0066】
また、これらに換えて、データ送信にBluetooth(登録商標)やUSB等の短距離の通信方法を使用しても差し支えない。
【0067】
このとき、独立したセンサーには対応する通信モジュールが含まれている必要がある。なお、データはストレージデバイスを使用してセンサーで取得したデータを転送しても良い。たとえば、SDカードの保存機能とコピー機能を利用して、独立したセンサーの呼吸信号データをコンピューティング機器9に転送しても良い。
【0068】
組み合わせ3:独立したセンサー+トランシーバ+コンピューティング機器9の組み合わせの場合である。たとえば、接触式センサー又は非接触式センサー+信号のトランシーバ+スマート端末又はサーバーの組み合わせが挙げられる。
【0069】
この組み合わせの場合、一般に独立したセンサーのリモート通信モジュールのコストが高くなりがちで、更に消費電力もが高くなる傾向にある。特に、複数のユーザの呼吸信号を同一の工程にて測定して処理する必要がある場合、対応するリモート通信モジュールがそれぞれ独立したセンサーに設置されているケースでは複数個分の独立したセンサーのコストが加算されることとなるため、一般にコスト高となり易い。
【0070】
したがって、組み合わせ3のパターンを利用して、独立したセンサーとコンピューティングデバイスとの間に独立したセンサーによるデータ収集と転送専用のトランシーバを設け、独立したセンサーでは、低コストで低消費電力の短距離通信モジュールのみを必要とする。
【0071】
ブルートゥース(登録商標)(Bluetooth)等、呼吸信号が収集された後、それは短距離通信モジュールを介してトランシーバに送信され、次いで、1人又は複数のユーザから受信された呼吸信号は、トランシーバによってコンピューティング機器9に転送される。
【0072】
組み合わせ4:上記の3つの組み合わせに基づいて、独立したデータ出力デバイスを追加する。つまり、組み合わせ1/組み合わせ2/組み合わせ3に加えて、独立したデータ出力デバイスを追加する。たとえば、組み合わせ2に適用した場合を例にとると、接触式センサー/非接触式センサー+サーバー+モバイル端末/パーソナルコンピューター/プリンターとなる。
【0073】
最終的なAHIデータ又はAHIデータの高度な処理に基づいて取得されたその他のデータは、すべて技術担当者またはユーザに送信して確認する必要がある。
【0074】
また、本発明による実施形態では、独立したデータ出力デバイスを呼吸停止検知システムに追加することも可能である。このような本発明による実施形態における呼吸停止検知システムは、独立したデータ出力機能を有する。
【0075】
この時、コンピューティング機器9はAHIの計算を完了した後に、AHI関連データを独立したデータ出力デバイスに直接送信して表示することができる。
【0076】
たとえば、コンピューティング機器9としてのサーバーがAHIの計算を完了すると、AHIデータをユーザの携帯電話に送信する。ユーザは内容確認のために自身の携帯電話で表示されるか、当該AHIデータを図示しないプリンターで打ち出して内容を確認する。
【0077】
携帯電話やタブレット等のスマート端末やパソコン等のディスプレイを備えた端末機器等の多くのコンピューティング機器9自体が実際には表示機能をも備えていることが多いので、上述した組み合わせ1~組み合わせ3の各組み合わせにそれぞれ対応可能である。
【0078】
したがって、本発明による実施形態では、独立したデータ出力デバイスを組み合わせ1~3に追加するのではなく、ディスプレイ出力用のディスプレイ機能を備えたコンピューティング機器9を直接使用することも可能である。
【0079】
上記の複数の組み合わせは、本発明の第1の実施形態の呼吸停止検知システムのうちの任意の組み合わせの一例にすぎず、上述した実施形態は特許請求の範囲の記載された発明を実施例に記載した範囲のものに限定する主旨ではない。
【0080】
これらの組み合わせに加えて、技術者は、呼吸停止検知システムが本発明の第1の実施形態にコンピューティング機器9を含む限り、実際のニーズに基づいてより多くの組み合わせを設定することもできる。そのため、本実施形態に記載されていない他の多くの組み合わせであっても、本発明の特許請求の範囲に記載された発明特定事項を備えていれば、本発明の権利範囲に属する。
【0081】
同時に、本発明のすべての実施形態において、センサー(本発明の実施形態における接触式センサー及び非接触式センサーのいずれをも含むがこれらに限定されない)は、データ収集機能のみを有するセンサーヘッドを特に指すものではない。また、センサーヘッドやその他のハードウェアと統合されたモジュール又はデバイスであっても差し支えない。
【0082】
例えば、センサーヘッド、マイクロプロセッサー、及び通信回路を1つに統合するウェアラブルデバイスも本発明の実施形態におけるセンサーの範囲に属する。
更に、本発明による実施形態は、センサーのタイプとデバイス計については特に制限を受けず、技術者は、異なる実際の要求に基づいて、当該要求に適応するために、技術者自身で設定を選択することができる。
【0083】
たとえば、ウェアラブルデザインとして設計されている場合には、接触式センサー又は非接触式センサーのいずれかを使用できる。ブレスレットとして設計されている場合は、ユーザの体に配置したり、ユーザの睡眠環境の特定の部分に配置したりしても良い。たとえば、非接触式センサーはユーザの枕とベッドシーツの下に配置しても良い。
【0084】
呼吸停止検知を実行する場合、図9Aのコンピューティング機器9は次の操作を実行する。
【0085】
S101,ユーザの睡眠中に収集された呼吸信号を取得し、呼吸信号を最初のプリセット期間のデータセグメントに分割して、n個の連続する第1の信号セグメントを取得する。ここで、nは正の整数である。
【0086】
本発明の全ての実施形態における呼吸信号は、ユーザが睡眠状態にあるときに生成される呼吸信号を指すことに留意されたい。非睡眠状態の呼吸信号については、例えば、夜間に一定時間目覚める(要は寝ている最中にトイレに行きたくなり一時的に目が覚める等)ユーザによって生成される呼吸信号は、本発明の実施形態における睡眠状態にあるときの呼吸信号には属さない。
【0087】
また、睡眠状態の呼吸信号を取得する方法は、少なくとも以下に紹介する方法を含むが、これらに限定されるものではなく、実際の要求に基づいて技術者が適宜設定することができる。技術者は、ユーザの実際の起床時間に基づいて干渉信号を除去するか、対応する睡眠状態検出方法を事前に設定して、睡眠状態を検出して睡眠状態信号の抽出を実行する。
【0088】
同時に、本発明の実施形態では、呼吸信号は、鼻口気流信号、胸壁運動信、頭と首の運動信号、胸と背中の運動信号等の信号のうちいずれか1つ又は複数であっても良い。具体的には、技術者によって選択されたセンサータイプと収集方法に基づいて決められるが、その他の方法によって利用するべき呼吸信号の種類を決めても差し支えない。
【0089】
また、上記の説明から、本発明による実施形態では、呼吸信号の収集は、コンピューティング機器9と独立したセンサーによって完成することができ、具体的には技術者がどのように設定するかによるが、設定内容はここでは説明しない。
【0090】
呼吸信号の取得が完了した後、コンピューティング機器9は、その後の分析のために、完全な呼吸信号をn個の連続した固定期間の第1の信号セグメントに分割する。ここで、第1のプリセット期間の特定の値は、技術者自身によって設定される。
ただし、その後の呼気停止検出の有効性を確保するには、通常の状況での呼気停止と判断される期間よりも10秒間程長くする必要がある。
【0091】
nの特定の値は、呼吸信号の合計持続時間と第1のプリセット持続時間によって決定される。
【0092】
本発明の好ましい実施形態として、第1の信号セグメントは、本発明の実施形態において呼吸停止を検出するための単位として使用される。また、各第1の信号セグメントの呼吸停止を検出する際の検出精度を向上させるために、各第1の信号セグメントには適切な部分閾値が設定される。
【0093】
したがって、第1の信号セグメントに対応する第1のプリセット期間の設定は非常に重要である。一方、設定した期間が短すぎるために呼吸停止が検出できない事態を防ぐために、一般には設定する際には呼吸停止を通常検出できる期間よりも更に10秒間ほど長くマージンを取る必要がある。
【0094】
他方、部分閾値を大きく高く設定しすぎると有効性が低下するので、検出精度が低下してしまう。したがって、本発明の実施形態では、好ましくは、第1のプリセット期間は、150秒から400秒までの任意の値に設定することができ、例えば、300秒に設定することができる。
【0095】
S102,各第1の信号セグメントをh個の第2の信号セグメントに分割し、各第2の信号セグメントに対応する呼吸強度を計算する。ここで、hは1より大きい正の整数である。
【0096】
各第1の信号セグメントの呼吸停止検知を分析するために、本発明の実施形態では、各第1の信号セグメントをさらに分割し、短期間の第2の信号セグメントにサンプリングする。
【0097】
第2の信号セグメントの数は、第2の信号セグメントの事前に設定されたサンプリングウィンドウ長、及び各ウィンドウの変位ステップ長によって決定される。
【0098】
たとえば、第1の信号セグメントの持続時間が300秒で、第2の信号セグメントのサンプリングウィンドウ長が1秒間に設定され、ウィンドウの変位ステップ長が1秒間であるとする。
【0099】
このとき、第1の信号セグメントは300個の期間に分割され、これら300個の期間の長さがそれぞれ1秒間である第2の信号セグメントに分割される。なお、各ウィンドウの変位ステップ長がウィンドウの長さよりも小さくなるように設定することもできる。
【0100】
このとき、データセグメントが重複している2番目の信号セグメントをサンプリングできる。サンプリングウィンドウ長が1秒に設定されている場合、ウィンドウの変位ステップ長は0.5秒(つまり、ウィンドウが重複(オーバーラップ)している率が50%)となる。
【0101】
第1の信号セグメントのセグメンテーションが完了した後、本発明の実施形態では、各第2の信号セグメントの呼吸強度を1つずつ計算する。ここで、呼吸強度は、特定の期間におけるユーザの呼吸周波数、及び呼吸振幅データを指す。
【0102】
本発明の実施形態は、例えば、第2の信号セグメントにおける呼吸強度と周波数の平均値の計算を含む。ただし、これらに限定されるものではなく、技術者が設定するようにしても良い。
【0103】
技術者による設定には、例えば、第2の信号セグメントにおける呼吸強度と周波数の平均値の計算、又はフィルタリング等の信号処理方法の使用が含まれるが、これらに限定されるものではなく、後述する本発明の第2の実施形態を参考に処理を行っても良い。
【0104】
S103,各第1の信号セグメントに対応する部分閾値値を取得し、各第1の信号セグメントから、連続する時間の長さがr秒より長く、対応する呼吸強度が均しく対応する部分閾値よりも小さい複数の第2の信号セグメントから構成される第3の信号セグメントを選別する。ここで、前記rは0<r<10の条件を満たす。
【0105】
呼吸信号のセグメンテーションを完了し、分離された第1の信号セグメントのそれぞれの呼吸強度データを計算した後、本発明の実施形態は、これらのデータに基づいて呼吸信号に含まれる呼吸が停止したことを検出するイベント(すなわち、呼吸停止イベント)を更に決定する。
【0106】
また、呼吸停止イベントが発生すると、対応する呼吸信号セグメントの呼吸強度は大幅に減少するが、この減少の大きさ又は比率は、ユーザの体調によって異なる。つまり、呼吸強度の減少又は比率の変動については必ずしも同じ結果とはならず、期間によっても変動する場合があり、発生する呼吸停止イベントの種類と重症度によっても差異が生ずる場合がある。
【0107】
したがって、呼吸強度が低すぎるか否かを判断する際に、呼吸信号全体に一定の閾値のみを設定した場合、ユーザの呼吸停止の検出の適応性が下がり、検出精度が下がってしまう。
【0108】
そのため、ユーザの呼吸停止を検出する精度を高めるべく、本発明の実施形態では、各第1の信号セグメントに対応する部分閾値を設定する。
【0109】
すなわち、本発明の実施形態では、理論的にはn個の部分閾値が存在する。ここで、これらのn個の部分閾値は異なる可能性が非常に高いが、部分的に同じにも成り得る。
【0110】
特に、具体的には、本発明の実施形態は、部分閾値の設定方法を特定のものに限定するものではない。勿論、部分閾値の設定の仕方については、人の睡眠サイクル(睡眠周期)の一般的な法則に加えて、患者の過去の睡眠の特徴に基づいて技術者が部分閾値の設定値を上下させることも含まれるが、これらの要素に加えて他の要素を勘案して複数の部分閾値を設定しても良い。このときは各検査で得られた第1の信号セグメントの数を正確に予想することは困難である。
【0111】
このため、部分閾値を設定すると、いくつかのレベル部分閾値を設定することができ、第1の信号セグメントの呼吸信号における大体の位置に基づいて対応する部分閾値のレベルを割り当てることができる。
【0112】
更に、全体の第1の信号セグメントと呼吸信号を分析して、各第1の信号セグメントの適切な部分閾値を決定することも可能である。ここで、部分閾値については、本発明の実施形態3に関する説明が参考となるが、実施形態3については後述するのでここでは説明を省略する。
【0113】
各第1の信号セグメントに対応する部分閾値が決定された後、本発明の実施形態では、部分閾値を使用して、第1の信号セグメントの瞬間呼吸強度の識別フィルタリングを行い、呼吸強度が対応する部分閾値よりも小さい第2の信号セグメントを探し出す。次に、連続持続時間がr秒を超える2番目の信号セグメントで構成される3番目の信号セグメントを選別する。このようにして、呼吸停止の特徴を備えた第1の信号セグメントを見つけることができる。
【0114】
なお、rの具体的な値は技術者が設定でき、0より大きく且つ10より小さいという条件を満たす必要がある。とりわけ5に設定することが好ましい。
【0115】
本発明の実施形態では、特定の各呼吸停止イベントを検出しないが、呼吸停止特性を具備する信号セグメントの全体的な状況をカウントすることに特に留意すべきである。
【0116】
そして、呼吸停止の特徴を具備する全体的な状況における呼吸信号の合計時間のパーセンテージに基づいて対応するAHIを計算する。ここで、もし現在の呼吸停止と低呼吸イベント(要するに呼吸が浅いか、又は呼吸が不十分である状況を意味する)の判断基準が呼吸停止イベントを識別するための時間が10秒である場合、閾値を下回る呼吸強度の持続時間が10秒未満であれば、AHIエラーが生じてデータ統計の欠落を引き起こす可能性があるが、本発明の実施形態では、rの値は10未満に設定され、これは、本出願の実施形態における識別の精度および有効性を改善することができる。
【0117】
S104,呼吸信号の合計持続時間に対する全ての第3の信号セグメントの合計持続時間の比率を計算することにより、呼吸停止率を取得する。
【0118】
そして、呼吸信号に対応する睡眠時の無呼吸低呼吸指数を取得するために、事前にトレーニングされた回帰モデルに呼吸停止率を入力する。ここで、事前にトレーニングした回帰モデルは、無呼吸である状態のパーセンテージに基づいて対応する睡眠時の無呼吸低呼吸指数を計算するために使用される。
【0119】
各第1の信号セグメントにおいてそれぞれ含まれる第3の信号セグメントを選別した後、本発明の実施形態は、これらの第3の信号セグメントの持続時間の合計を計算し、併せて呼吸情報の総持続時間に対する第3の信号セグメントの合計持続時間のパーセンテージを計算ことにより、本発明の実施形態における呼吸停止のパーセンテージを取得する。なお、本発明は、特定の呼吸停止イベントを特定する必要は無いが、大雑把な合計期間を使用して、呼吸停止イベントを取り扱う。最後に、事前に設定された呼吸停止のパーセンテージとAHIの回帰モデルに基づいて、睡眠中のユーザのAHIデータを取得する。
【0120】
また、この回帰モデルは、実験に基づいて技術者によって収集された睡眠中の複数のユーザの呼吸信号に対応する呼吸停止のパーセンテージと睡眠中のユーザの実際のAHI評価によって得られたデータに基づいて、線形回帰分析を行って適合するか検証して得られるものである。
【0121】
そして、センサーや医療現場等の環境への依存度を減らし、AHI検出の効率を向上させるべく、本発明の実施形態では、一晩の睡眠期間(睡眠中)にユーザから収集した呼吸信号を先ずセグメント化する。そして、各セグメントに適切な部分閾値を設定し、次に各信号セグメントを部分閾値に基づいて呼吸強度と持続時間でスクリーニング(選別)し、呼吸停止特性を具備する信号セグメントを特定すると共に、これらの呼吸停止特性を具備した信号セグメントの合計持続時間と呼吸信号の合計持続時間を計算し、呼吸が停止している期間を合計したパーセンテージ(つまり、呼吸が停止している時間のパーセンテージ)を計算する。このようにして、本発明では、睡眠中の呼吸停止の重症度を効果的に定量化する。
【0122】
人に対する実験により、呼吸停止のパーセンテージ(割合)はAHIと強い相関関係があることが既に証明されている。したがって、本発明の実施形態における回帰モデルは、実験的な呼吸停止率と対応するAHIに基づいて事前に構築することができる。そして、本発明の実施形態では、最終的なAHIは、対応する回帰モデルに基づいて計算される。
【0123】
また、無呼吸の割合は、無呼吸又は呼吸が浅く不十分である場合の検出と睡眠状態の呼吸の合計期間を考慮に入れているため、無呼吸イベントが起きたと判断されると、呼吸停止特性を具備する信号セグメントに対応する呼吸強度の持続時間の閾値は、より小さく設定される。つまり、判定時間がより緩く設定されることとなるので、本発明の実施形態の認識効果が保証される。
【0124】
また、センサーの応答時間の影響を受けにくく、センサーの種類への依存度も低く、呼吸信号を測定するために必ずしも接触式センサーを使用する必要がなく、換気が不十分である場合を特定するために血中酸素飽和度の低下を検出する必要もない。
【0125】
したがって、検出の際に医療機関にかかる負担が減り、ユーザの体に多くのセンサーを設置する必要がない。このため、従来技術と比較して、操作を大幅に簡素化でき、検出効率が大幅に向上する。
【0126】
本発明の第1の実施形態における呼吸強度を計算する特定の実施形態としては、図2に示す第2の実施形態があり、図2に示すとおり第2の実施形態は以下のステップを含む。
【0127】
S201,経験的モード関数を使用して、各第2の信号セグメントを複数の経験的モード関数に分解する。経験的モードへの分解は、信号を複数の「固有モード関数(Intrinsic Mode Function,IMF)」の組み合わせに分解することである。これにより、スクリーニング(選別)手順を繰り返すことにより、固有モード関数IMFを徐々に検出できる。信号x(t)を例にとると、分解手順の概要は次の通りである。
【0128】
r1(t)=x(t)-h1(t)……IMF1
【0129】
r1(t)が固有のモード関数(モーダル関数)IMFの条件を満たしているかどうかを確認する。そして、条件が満たされていない場合には、一つ前の手順に戻り、r1(t)を第2のスクリーニングの元の信号として使用する。
【0130】
r2(t)=r1(t)-h2(t) ……IMF2
r3(t)=r2(t)-h3(t) ……IMF3
r4(t)=r3(t)-h4(t) ……IMF4
...
rm(t)=rm-1(t)-hm(t) ……IMFm
【0131】
最後に、x(t)はm個の固有のモード関数IMFと一つの剰余r(t)に分解できる。
【0132】
【数1】
【0133】
次に、固有のモード関数IMFから呼吸関連の成分が選択され、呼吸数を推定する。
【0134】
S202,複数の経験的モード関数から、ユーザに対応する1つ又は複数の経験的モード関数を選別する。
【0135】
S203,選択した1つ又は複数の経験的モード関数に基づいて、h秒の信号セグメントに対応する呼吸強度を計算する。
【0136】
IMF1には、呼吸信号の最も基本的な情報が含まれている。信号振幅はIMF2からより高いモードに急速に減少する。したがって、最初(先頭から)の方の幾つかのIMFは呼吸強度の計算に適している。具体的には、最初の方の幾つかのIMFは、技術者自身によって選択できるが、他の方法でも差し支えない。また、好ましくは、呼吸強度を計算するために先頭からの4つのIMFのみを選択することができる。この場合、先頭から4つのIMFの点毎の強度I(t)の平方根をとることができる。最初の4つを取得すると、呼吸強度IRIは次のようなヒルベルト変換式に対応する。
【0137】
【数2】
【0138】
同様に、最初のn項目を選択すると、上記の式の合計の項の上限をnに変更できる。図3に示すように、本発明の第1の実施形態における第1の信号セグメントの実際の状況に基づいて対応する適切な部分閾値を計算する特定の実施方法として、本発明の第3の実施形態は以下の内容を含む。
【0139】
S301,呼吸信号を第2のプリセット期間のデータセグメントに分割して、m個の第4の信号セグメントを取得する。第1のプリセット期間は第2のプリセット期間よりも長く、ここで、mは正の整数である。
【0140】
本発明の実施形態では、第4の信号セグメントの主たるユーザは、呼吸信号の各部分の変動を計算し、次に、呼吸信号の全体的な呼吸変動度を決定する。
【0141】
したがって、第2のプリセット期間の値は大きすぎてはならず、更に、変動状況を分析する分解能は第1の信号セグメントのそれよりも大きいので、第1の信号セグメントの分析の有効性は低下する。つまり、本発明の実施形態では、第2のプリセット期間は第1のプリセット期間よりも短い期間であることが必要である。
【0142】
具体的には、第2のプリセット期間は第1のプリセット期間よりも短いことを前提としている。また、第2のプリセット期間の値は、実際の状況に基づいて技術者によって設定される。また、第2のプリセット期間は好ましくは30秒から90秒の間の任意の値に設定することができ、例えば、60秒に設定することができる。
【0143】
本発明の好ましい実施形態には、呼吸信号に対して時間の長さを第2のプリセット期間とし、重複比率をs%としたデータセグメントで重複するように分割し、m個の第4の信号セグメントを取得することを含む。ここで、前記sは0<s<100の要件を満たすことが必要である。
【0144】
本発明の実施形態では、第4の信号セグメントが分割されるとき、呼吸信号の各部分に対する変動をスムーズ且つ確実にするために、重複分割が採用される。ここで、前記sの特定の値は技術者自身によって設定されるが、好ましくは50に設定することである。
【0145】
S302,m個の第4の信号セグメントに基づいて、呼吸信号に対応する全体的な呼吸変動度を計算する。本発明の第4の実施形態として、図4に示されるように、全体的な呼吸変動の程度を計算するための具体的な方法は、以下のように行われる
【0146】
S401,各第4の信号セグメントに対応する複数の呼吸強度を計算し、各第4の信号セグメントに対応する呼吸強度の中央値と最小呼吸強度を選別する。
【0147】
S402,得られたm個の呼吸強度の中央値と呼吸強度の最小値に基づいて、各第4の信号セグメントに対応する一つの呼吸低下率を計算し、m個の呼吸低下率の中央値を選別し、全体的な呼吸変動度を取得する。
【0148】
本発明の実施形態によれば、各第4の信号セグメントは、そこに含まれる複数の呼吸強度を計算するための単位として使用される。ただし、呼吸強度に対応する信号セグメントの分割方法と計算方法については、本発明の第1の実施形態と本発明の第2の実施形態にて既に述べたのでここでは再度の説明を省略する。
【0149】
呼吸信号の変動によって引き起こされる偏差を回避するために、信号のノイズが最大値又は最小値が含まれる場合、本発明の実施形態では、全ての第4の信号セグメントに対応する呼吸強度の中央値を計算し、各第4の信号セグメントの信号変動の基準値とする。
【0150】
各第4の信号セグメントに対応する呼吸強度の中央値を決定した後、本発明の実施形態では、各第4の信号セグメントにおける呼吸変動の減少率の状況を判断する。
【0151】
具体的には、第4の信号セグメントにおける呼吸強度の中央値と最小呼吸強度との差異がどのような値になるか計算され、第4の信号セグメントの呼吸強度の中央値に対する差異の比が以下のように計算される。
【0152】
DR= (medIRI - minIRI)/ medIRI
【0153】
ここで、DRはn番目の第4の信号セグメントに対応する呼吸低下率である。medIRIは、n番目の第4の信号セグメントの呼吸強度の中央値である。minIRIは、n番目の第4の信号セグメントの最小呼吸強度である。ここで、nはn∈[1、m]の条件を満たす。
【0154】
各第4の信号セグメントの呼吸低下率が得られた後、本発明の実施形態では、呼吸低下率の中央値を、呼吸信号の全体的な呼吸変動度として使用する。同様に、中央値を選択すると、呼吸信号の変動によって引き起こされる偏差、及び信号のノイズによって引き起こされる最大値と最小値の影響を回避できる。全体的な呼吸変動の程度は0~1まで変化し、正常から異常までの呼吸変動の全体的な明確性を示す。
【0155】
一般的に言えば、通常どおり呼吸をしているユーザは、睡眠時に無呼吸が発生する睡眠時無呼吸症候群の状態を伴うユーザよりも全体的な呼吸の変動が少ない。このとき、本発明の実施形態は、睡眠期間中のユーザの全体的な呼吸変動の適応定量化を実現する。
【0156】
また、本発明の第4の実施形態を、第4の信号セグメントの上記の重複する分割と組み合わせると、得られる呼吸強度をより滑らかにすることができる。つまり、組み合わせることにより呼吸数の時間分解能がより高く、より正確で効果的となり、最終的な部分閾値の効果が更に改善する。
【0157】
S303,各第1信号セグメントに対応するh個の呼吸強度と呼吸変動の全体的な程度に基づいて、各第1の信号セグメントに対応する部分閾値を計算する。
【0158】
ユーザの睡眠中の全体的な呼吸変動の定量化された結果を取得した後、本出願の実施形態は、この変動状況と各第1の信号セグメントの特定の呼吸強度に基づいて、各第1の信号セグメントに対応する部分閾値を決定する。部分閾値値の適応設定を実現する。
【0159】
具体的には、第1の信号セグメントに対応する部分閾値は、第1の信号セグメントに対応するh個の呼吸強度の最頻値(データや確率分布で頻度(度数、確率)が最大の値のこと)と全体的な呼吸変動度との積を計算することによって得ることができる。
【0160】
或いは、第1の信号セグメントに対応する部分閾値は、第1の信号セグメントに対応するh個の呼吸強度の中央値と全体的な呼吸変動度との積を計算することによっても得ることができる。同様に、中央値を選択すると、呼吸信号の変動によって引き起こされる偏差、及び信号のノイズによって引き起こされる最大値と最小値の影響を回避できる。
【0161】
また、部分閾値を計算する特定の方法は、技術者が設定できる。本発明の実施形態では、好ましくは、部分閾値は、h個の呼吸強度の中央値と全体的な呼吸変動の程度との積を使用して計算される。
【0162】
一部の呼吸イベントの呼吸強度の局所的(部分的)な中央値は低いが、呼吸を停止した被験者の全体的な呼吸変動度は高く、部分閾値を適切な値に調整できる。逆に、呼吸停止イベントがない部分では、呼吸強度の部分的な中央値は高くなるが、正常な呼吸をしている被験者の全体的な呼吸変動は低くなる。このため、両者の積によって計算された部分閾値は、第1の信号セグメントに含まれる呼吸停止の機能を使用して信号セグメントから適切に選別でき、部分閾値の設定の適応性が保証される。
【0163】
たとえユーザが異なり体調が異なる場合であっても、又は睡眠中のユーザの睡眠姿勢の変化があった場合であっても、本発明の実施形態における部分閾値は十分に動的な設定に適応することができ、部分閾値の精度と有効性を保証できる。
【0164】
本発明の第1の実施形態における呼吸停止検知システムの構成方法として、本発明の実施形態では、コンピューティング機器9は、本発明の第1の実施形態で述べた組み合わせ1等の接触式センサー又は非接触式センサーを含む。
【0165】
本発明の上記の実施形態の分析から、以下の事項を理解できる。即ち、本発明は、呼吸停止のパーセンテージを使用して、睡眠期間(睡眠中)の呼吸停止の重症度を効果的に定量化する。また、特定の呼吸停止イベントを識別する必要もない。
【0166】
したがって、センサーの種類や収集される呼吸信号の種類に大きく依存することがない。このため、本発明の実施形態では、呼吸信号は、鼻口気流信号、胸壁運動信、頭と首の運動信号、及び胸と背中の運動信号のうちの任意の1つ又は複数であり得る。コンピューティング機器9の接触式センサーと非接触式センサーの場合以下の構成を含む。
【0167】
接触式センサーは睡眠中のユーザの鼻口気流信号、胸壁運動信のうちの少なくとも一つを収集するために使用される。非接触式センサーは、睡眠中のユーザの頭と首の運動信号、胸と背中の運動信号のうちの少なくとも一つを収集するために使用される。
【0168】
また、接触式センサーには、光ファイバーの鼻口ステッカーや、鼻と口に付着させて使用する熱センサー又は気流検知タイプのセンサー等が含まれまるが、これらには限定されない。
【0169】
腹部と胸部を測定するために、抵抗性又は誘導性のストラップが胸部、腹部に取り付けられる。
【0170】
非接触式センサーには、光ファイバーセンサー、エアバッグ、圧電フィルム、ロードセル、静電容量センシング等が含まれるが、これらの中からニーズに応じて技術者が選択して設定する。
【0171】
これらの接触式センサーは、ユーザの特定の体の部位に取り付け、対応するタイプの呼吸信号を測定する。たとえば、鼻と口に取り付けて鼻口気流信号を測定し、胸部と腹部取り付けることで胸部と腹部を測定し、胸壁運動信を測定することができる。
【0172】
非接触式センサーは、ユーザの環境内の特定の場所に設定され、必要なタイプの呼吸信号を測定する。たとえば、枕にセットして頭と首の運動信号を測定し、又はベッドシーツやベッドの下に置いて胸と背中の運動信号を測定する。
【0173】
本発明の第1の実施形態における呼吸停止検知システムの他の構成方法としては、本発明の実施形態では、呼吸停止検知システムは、本発明の第1の実施形態で述べた組み合わせ2、及び組み合わせ3等、コンピューティング機器9から独立した接触式センサー又は非接触式センサーを更に含む。
【0174】
本発明の上記の実施形態における分析から、本発明は睡眠中に呼吸が停止しているパーセンテージを使用して、睡眠時の無呼吸の重症度を効果的に測定し得る。また、特定の呼吸停止イベントを識別する必要もない。また、センサーの種類や収集される呼吸信号の種類に大きく依存することもない。
【0175】
本発明の実施形態において呼吸信号は鼻口気流信号、胸壁運動信、頭と首の運動信号、及び胸と背中の運動信号のうのいずれか一つ又は複数であり得る。コンピューティング機器9から独立している接触式センサーと非接触式センサーは以下の構成を含む。
【0176】
接触式センサーは、睡眠中のユーザの鼻口気流信号と胸壁運動信のうちの少なくとも一つを収集するために使用される。そして、得られた鼻口気流信号と胸壁運動信のうちの少なくとも一つをコンピューティング装置9に送信する。
【0177】
非接触式センサーは、睡眠中のユーザの頭と首の運動信号と胸と背中の運動信号のうの少なくともいずれか一つを収集するために使用される。そして、得られた頭と首の運動信号と胸と背中の運動信号のうの少なくともいずれか一つをコンピューティング装置9に送信する。
【0178】
接触式センサー及び非接触式センサーに関連する説明については、本発明の上述の実施形態における説明を参照すれば足りるので、ここでは繰り返し説明しない。本発明の実施形態では、センサーはコンピューティング機器9から独立しており、より柔軟にデータ収集を実現できるため、ユーザの睡眠時無呼吸を検出し得る態様が増える。
【0179】
たとえば、接触式センサーと非接触式センサーはブレスレット等といったウェアラブルデバイスとして設計できる。そして、本発明の実施形態によれば、ユーザの呼吸信号の取得並びに検出を行う場合に、複雑なセンサーの配置が必要ないので、操作がより簡単で効率的となる。
【0180】
本発明の他の実施形態として、高感度な光ファイバーセンサーを利用して、多くの人に対して行った実験を通じて、枕に光ファイバーセンサーを取り付け、光ファイバーセンサーの変形によって生ずる頭と首に現れる呼吸振動を捉えることができることが知られている。
【0181】
頭と首の光ファイバーセンサーの変形の減少幅は、それぞれ66.6%から40.2%、24.9%、0.01%であり、これらはそれぞれCSA、OSA、hypo及び正常呼吸である。一方、マットレスの光ファイバーセンサーの変形は胸壁の動きを捉えることができる。
【0182】
CSA、OSA、hypo及び正常呼吸の減少の程度は、それぞれ73.1%、27.3%、19.4%、及び0.01%であり、胸部に関する帯域の信号の減少の仕方と共通する統計学的意義があった。
【0183】
したがって、本発明の実施形態では、光ファイバーセンサーをユーザの枕の中に加えてベッドシーツの下にも配置する2つの方法が採用され、このようにしてユーザの頭と首の動作信号と胸と背中の運動信号を収集する。なお、光ファイバーセンサーは、コンピューティング機器9から独立した機器、又はコンピューティング機器9のハードウェアの一部であり得る。
【0184】
とりわけ、4次の非因果的なバターワースハイパスフィルターを光ファイバーセンサーに設定して、0.1Hzのカットオフ周波数で信号を更に増強することができる。また、6次の非因果的なバターワースローパスフィルターの場合には、1Hzのカットオフ周波数で信号を更に増強する。
【0185】
本発明の第1の実施形態における呼吸停止検知システムの他の実施形態としては、呼吸停止検知システムは、コンピューティング機器9とは独立した表示装置(図示せず)を更に含む。
【0186】
本発明の第1の実施形態で述べたように、組み合わせ4は以下の構成を含む。コンピューティング機器9は、睡眠時無呼吸低呼吸指数を表示装置に送信するためにも使用される。表示装置は、受信した睡眠時無呼吸低呼吸指数を出力するように表示する。
【0187】
本発明の実施形態では、コンピューティング機器9を使用して呼吸信号を処理しAHIを計算するので、ディスプレイ出力を必要とせず、ユーザに直接表示する必要がなく、コンピューティング機器9のポータビリティ性の要件が大幅に低下する。
【0188】
結果として、本発明の実施形態におけるコンピューティング機器9は、呼吸信号の処理を実行する際に、より速く且つより効率的に処理が行えるクラウドサーバー等からなる強力な処理機能を備えた機器(デバイス)である。また、複数のユーザの呼吸信号を同時に処理したり、異なる表示装置に送信してレポートを表示したりすることもできるため、処理効率が高い。
【0189】
本発明の第1の実施形態における呼吸停止検知システムの他の実施形態としての構成方法としては、コンピューティング機器9は、以下を含むディスプレイを更に含む。ディスプレイは、睡眠時無呼吸低呼吸指数を出力し表示するために使用される。
【0190】
本発明の実施形態では、コンピューティング機器9は、得られたAHIと他のデータを直接表示することができるので、本発明の実施形態は、エンドユーザにより適している。たとえば、ユーザの携帯電話、タブレット端末、その他のスマート端末を直接使用して呼吸信号を処理して報告できる。これにより、ユーザはリモートサーバーにアクセスせずに呼吸停止を検出し確認できる。
【0191】
本発明の第5の実施形態として、睡眠時無呼吸のタイプを判断するために、本発明の実施形態における呼吸信号は、頭と首の運動信号と胸と背中の運動信号を含み、具体的には図5に示されるように、以下の構成を含む。
【0192】
S501,コンピューティング機器9は、頭と首の運動信号と胸と背中の運動信号にそれぞれ対応する第3の信号セグメントに基づいて、頭と首の運動信号と胸と背中の運動信号にそれぞれ対応する呼吸低下率を計算する。
【0193】
S502,呼吸低下率に基づいて、ユーザに対応する睡眠時無呼吸のタイプを特定する。
【0194】
OSAとCSAの両方がユーザの呼吸を停止させることを考慮すると、OSAの原理から、胸と背中の動きの振幅に対応する変化は、CSAのそれよりもはるかに大きいことが分かる。
したがって、第3の信号セグメントに対応する呼吸停止の特徴を有する事象(イベント)に基づいて、ユーザの呼吸停止が発生したときのユーザの頭と首、胸と背中の運動の振幅が決定され、2種類の睡眠時無呼吸の区別が明確に行える。
【0195】
具体的には、本発明の実施形態は、第3の信号セグメントで、それぞれ頭と首の運動信号と胸と背中の運動信号に対応する呼吸降下率を計算する。そして、2種類の信号に対応する呼吸低下率が事前に設定された閾値よりも大きいかどうかを判断する。
【0196】
もし両方とも大きい場合は、ユーザの胸と背中の動きも大きく変化していることを意味し、CSAに属する。一方、頭と首の運動信号の呼吸数は大きいが、胸と背中の運動信号の呼吸数が小さい場合は、OSAに属していることを意味する。ここで、特定のプリセット閾値の値は、技術者自身が設定できる。
【0197】
さらに、2種類の呼吸低下率を計算して比率の大きさを決定することができ、比率が小さい場合は2種類の呼吸低下率が近似していることを意味し、CSAである。一方、比率が大きい場合は、2種類の呼吸低下率は異なることを意味し、OSAを意味する。
【0198】
本発明の任意の実施形態として、本発明の上記の実施形態に基づいて、呼吸停止検知システムは、睡眠時の無呼吸が検出されたときに複数の呼吸関連治療機器に接続することができる。そして、ユーザのAHI状態が高い場合、システムは時間内に応答でき、ユーザの安全を確保するために治療を行う。
【0199】
たとえば、呼吸停止検知システムをバイブレーターやCPAP等の呼吸器に接続し、計算されたAHIが高すぎる場合は、呼吸治療装置を起動してユーザを治療することができる。
【0200】
センサーやサイト環境への依存を減らし、AHI検出の効率を向上させるために、本発明の実施形態では、一晩の睡眠期間(睡眠中)にユーザによって収集された呼吸信号が先ずはセグメント化される。一方で、最適な部分閾値は、各信号に対して適応するように計算される。
【0201】
一方、部分閾値に基づいて、各信号セグメントの呼吸強度と持続時間が別々に選別(スクリーニング)され、呼吸停止特性を有する信号セグメントが識別される。
【0202】
また、睡眠時無呼吸の特性を備えたこれらの信号セグメントの合計持続時間と呼吸信号の合計持続時間に基づいて、呼吸停止の合計持続時間のパーセンテージ(つまり、全体の中で呼吸が中断しているパーセンテージ)を計算することで、睡眠中にユーザに発生する睡眠時無呼吸の重症度を効果的に定量化する。
【0203】
そして、最終的なAHIは、事前実験とAHIから導出された呼吸停止率の回帰モデルに基づいて計算される。
【0204】
また、呼吸強度は呼吸低下率を考慮するために使用されるため、呼吸停止又は呼吸が浅く不十分である特性を備えた信号セグメントの合計持続時間が計算される。また、呼吸停止イベントを決定する際には、呼吸停止特性を有する信号セグメントに対応する呼吸強度の持続時間閾値を小さく設定して、判定する持続時間の長さをより緩やかに設定する。このように設定することにより、本発明の実施形態の認識効果が保証される。
【0205】
このように設定することにより、センサーの応答時間による影響が少なく、センサーのタイプへの依存度が低く、呼吸信号を測定するために接触式センサーを使用する必要も、低呼吸イベントを識別するために低酸素血症を検出する必要もない。よって、検出する際に医療機関に要求される環境的な問題及び人的な問題を低減でき、ユーザの体に非常に多くのセンサーを設置する必要もない。
【0206】
また、適応した部分閾値の計算が各第1の信号セグメントに対して実行され、ユーザ毎に実際には体調が異なる場合でも、又は睡眠中のユーザの睡眠姿勢の変化が生じた場合でも、本発明の実施形態の部分閾値は、部分閾値の精度と適格性を保証する動的な適応した設定を可能とし、計算されたAHIの結果が効果的であることが実験によって証明されている。
【0207】
したがって、従来技術と比較して、本発明の実施形態の動作が大幅に簡素化され、検出効率も大幅に改善される。
【0208】
本発明の第6の実施形態として、睡眠時の無呼吸のパーセンテージに基づいて対応する睡眠時無呼吸低換気指数を計算することができる回帰モデルを得られる実施形態を説明する。まず、上記の実施形態の無呼吸検知システムの検出ユーザのAHIを計算する前に、本発明の実施形態では、図6に示すように、まず回帰モデルを構築する。
【0209】
S601,複数のテストをしたユーザが睡眠中に収集した呼吸信号を取得し、呼吸信号を第1のプリセット期間のデータセグメントに分割して、n個の連続する第1の信号セグメントを取得する。ここで、nは正の整数である。
【0210】
S602,各第1の信号セグメントをh個の第2の信号セグメントに分割し、各第2の信号セグメントに対応する呼吸強度を計算する。ここで、hは1より大きい正の整数である。
【0211】
S603,各第1の信号セグメントに対応する部分閾値を取得し、各第1の信号セグメントから、連続した時間の長さがr秒を超え、且つ対応する呼吸強度が均しく対応する部分閾値よりも小さい複数の第2の信号セグメントから構成される第3の信号セグメントを選別(スクリーニング)する。なおrの条件は0<r<10を満たすことが必要である。
【0212】
S604,呼吸信号の合計持続時間に対する全ての第3の信号セグメントの合計持続時間の比率を計算し、各テストするユーザに対応する呼吸停止率を取得する。
【0213】
S605,各テストしたユーザの呼吸信号に対応する睡眠時無呼吸低呼吸指数を取得する。また、複数のテストユーザに対応する睡眠時無呼吸と睡眠時無呼吸時の低換気指数のパーセンテージに基づいて、線形回帰方程式を作成し、トレーニング(訓練)された回帰モデルを取得する。
【0214】
ここで、ステップS601からS604において、動作の基本原理は、本発明の上記の実施形態1から本発明の実施形態5、並びに他の関連する実施形態と同様である。よって、詳細については、上記の他の実施形態の説明を参照すれば足りるので、ここでは新たに説明しない。
【0215】
本実施形態では、先ず、複数のテストユーザが呼吸信号を収集するために集められる。そして、一方では呼吸信号は、発明の第1の実施形態から本発明の第5の実施形態、並びに他の関連する実施形態と同様に処理されて、各テストユーザに対応する呼吸が停止したパーセンテージを取得する。
【0216】
他方、睡眠の専門家は、呼吸信号を評価して、各テストユーザに対応する実際の睡眠時無呼吸低換気指数を取得する。そして、2種類のデータに基づいて、線形回帰方程式をシミュレートして構築し、睡眠時無呼吸の低換気指数を計算できる回帰モデルを取得する。
【0217】
使用される呼吸信号のタイプと量に応じて、本発明の実施形態において最終的に得られる回帰モデル方程式も異なる。呼吸の中断を検出するために1種類の呼吸信号のみを利用する場合には、回帰モデル方程式の一般式は次のとおりとなる。
【0218】
AHI=α PTDPD+β
【0219】
呼吸停止を検出するために2種類の呼吸信号を使用する場合には、回帰モデル方程式の一般式は次のとおりとなる。
【0220】
AHI=α1 PTDPD1+α2 PTDPD2+β1
【0221】
より多くの種類の呼吸信号の使用についてもこれを類推して適用するべきである。PTDPDは呼吸停止のパーセンテージであり、α、α1、α2、β、及びβ1はすべて線形回帰フィッティングによって得られた定数係数である。
【0222】
表1は、実験を行う環境でユーザから種々のタイプの呼吸信号を収集するための物であり、頭と首用の光ファイバーセンサー、胸と背中用の光ファイバーセンサー、鼻用の熱センサー、胸部ストラップ、又はそれらを組み合わせて使用する場合を想定している。そして、線形回帰のセッティング(装着)を実行して、呼吸停止のパーセンテージのAHI回帰方程式を取得する。
【0223】
【表1】
【0224】
ここで、各実験環境の相違やユーザの相違やデータ処理の誤差を考慮すると、異なる実験から得られた回帰方程式データには、データ不一致の可能性があることを考慮しなければならないが、多少の誤差が有っても、本発明の特許請求の範囲に記載した発明特定事項をすべて満たしていれば、本発明の技術的範囲に属するものとする。
【0225】
また、表1の定数項係数が最適値を取得する際に計算を行う睡眠の専門家とAHIとの間の一致性を検証するために、出願人は上記の表1の回帰方程式に基づいて、図7に示すように、ブランドアルトマン分析を実施した。
【0226】
鼻口気流信号に関連する鼻口気流(a、c)に基づくモデルでは、LOA範囲が最も狭くなる。これは、睡眠の専門家によって評価されたAHIと推定されたAHIの間に一致性があることを意味し、理想的な状態である。頭と首用の光ファイバーセンサー(d)と比較して、胸と背中用の光ファイバーセンサー(e)のAHI回帰により、LOA範囲が狭くなる。
【0227】
図7では、表1で説明されている回帰モデルの睡眠エキスパートスコアAHIのブランドアルトマン図と推定AHI(AHI*)が示されている。平均差(AHI-AHI*)は、3本の線うち2番目の線で表され、一貫性の95%の上限と下限は1本目の線と3本目の線で表される。
【0228】
この実験研究のブランド-アルトマン図の一貫性限界の判断によると、本発明の実施形態は、呼吸停止率のAHI計算に基づいていることが分かる。また、異なるタイプのセンサーとの互換性に基づいて、得られたAHIの結果は睡眠の専門家によって評価されたAHIと一致していることも分かる。
【0229】
このように、ユーザのAHIの効果的な検出と評価を達成することができる。同時に、呼吸信号の振幅は仰向けの姿勢に依存するが、本発明の実施形態は、種々の体の姿勢の変化が生じても問題なく評価できるようにするために、150秒から400秒毎に部分閾値を再度計算して、呼吸の低下を正確に検出できる。そして、その効果は、特定の呼吸停止のイベントを検出するための従来技術の効果よりも更に優れている。
【0230】
非干渉測定は、家庭環境に適した便利で快適な制約のない監視を提供し得る。特に、心血管疾患と脳卒中のリスクが高い人は、重度の睡眠時無呼吸の症状を患っているケースと関連している場合がある。心血管の機能障害と脳卒中を患っている患者は通常、呼吸器系の問題を抱えている。中枢性睡眠時無呼吸の発生は、心不全患者の心室性不整脈、心房性不整脈、及び臨床転帰と関連する。
【0231】
自動選別(スクリーニング)方法と種々のタイプと互換性のあるセンサーは、病気の進行や潜在的に生命を脅かす危険性のある不整脈の早期発見並びに警告に加えて、予防に役立つ。
【0232】
全てのセンサーには応答時間がある。たとえば、熱センサーの応答は圧力センサーの応答よりも遅い。睡眠の専門家は、睡眠時無呼吸に関連するイベントを認識するために必要な呼吸信号を検討判断する。
【0233】
ただし、本発明に関連する研究では、睡眠時無呼吸の重症度を呼吸低下の持続時間のパーセンテージで定量化し、各呼吸信号の独立した分析を実行した。このため、本発明を利用した睡眠時無呼吸の検出方法はセンサーの応答時間の影響をほぼ受けない。
【0234】
従来技術では、呼吸停止又は呼吸が浅く睡眠時の呼吸が足りていない低呼吸時に発生し得る発作の検出は、通常、判別規則又はネットワークを必要とする。呼吸信号の全体的な定量化は、無呼吸又は呼吸が浅く睡眠時の呼吸が足りていない低呼吸イベントの継続的な検出を必要とせず、睡眠時の無呼吸を評価するための代替方法を提供する。
【0235】
本発明では、睡眠時の無呼吸の持続時間、すなわち呼吸が一時的に停止している割合に基づいて、種々の状況での検出方法を提案する。本発明の検出方法は、無呼吸又は呼吸が浅く睡眠時の呼吸が足りていない状況の検出と睡眠時無呼吸を検出するイベント期間を考慮に入れている。
【0236】
また、本発明は睡眠時無呼吸の重症度を評価するための指標としても優れている。これは、睡眠の専門家によって評価されたAHIとの間で強い相関関係が見受けられることからも明らかである。
【0237】
また、呼吸の低下は、被験者ごとに異なる場合があり、更に、時間の経過とともに変化する場合もある。したがって、各々の短期間の呼吸低下を検出するために、被験者に適応したデータ駆動型(要するに環境の変化に合わせて部分閾値を適宜変更するという意味)の閾値を採用する。
【0238】
短期閾値は、150~400秒の呼吸強度の中央値と全体的な呼吸変動の程度の積として設定される。呼吸強度の中央値は、短期的な閾値の基礎となる。
【0239】
一般的には、正常な呼吸をしているセグメントの呼吸強度の中央値は、睡眠時無呼吸を伴うセグメントよりも高くなる。この差異(偏差)は、基本的な閾値に、0(通常の呼吸)から1(睡眠時の呼吸)まで変化し得る全体的な呼吸変動の程度を掛け算することによって減らすことができる。
【0240】
図8は、本発明の第8の実施形態の呼吸停止を検知する方法を実施するためのフローチャートを示し、具体的には以下の通りである。
【0241】
S801,ユーザの睡眠中に収集された呼吸信号を取得し、呼吸信号を第1のプリセット期間のデータセグメントに分割して、n個の連続する第1の信号セグメントを取得する。ここで、nは正の整数である。
【0242】
S802,各第1の信号セグメントをh個の第2の信号セグメントに分割し、各第2の信号セグメントに対応する呼吸強度を計算する。ここで、hは1より大きい正の整数である。
【0243】
S803,各第1の信号セグメントに対応する部分閾値を取得し、各第1の信号セグメントから、連続期間がr秒を超え、且つ対応する呼吸強度が対応する部分閾値よりも均しく小さい複数の第2の信号セグメントから構成される第3の信号セグメントを選別(スクリーニング)する。ここでrは0<r<10の条件を満たす。
【0244】
S804,呼吸信号の合計持続時間に対する全ての第3の信号セグメントの合計持続時間の比率を計算して、呼吸停止率を取得する。そして、呼吸信号に対応する睡眠時無呼吸低換気指数を取得するために、事前にトレーニングされた回帰モデルに呼吸停止率を入力する。ここで、回帰モデルは、無呼吸のパーセンテージに基づいて、対応する睡眠時無呼吸低換気指数を計算するために使用される。
【0245】
本発明の第8の実施形態における呼吸強度を計算する特定の実施方法としては以下の手順(ステップ)を含む。
【0246】
経験的モード分解は、各第2の信号セグメントを複数の経験的モード関数に分解するために使用される。ユーザに対応する1つ又は複数の経験的モード関数は、複数の経験的モード関数から選び出される。
【0247】
選択した1つ又は複数の経験的モード関数に基づいて、それぞれh秒の信号セグメントに対応する呼吸強度を計算する。
【0248】
本発明の第8の実施形態としては、第1の信号セグメントの状況に基づいて対応する適切な部分閾値を計算するが、その方法は以下のステップを含む。
【0249】
呼吸信号は、m個の第4の信号セグメントを取得するために第2のプリセット期間のデータセグメントに分割される。ここで、第1のプリセット期間は第2のプリセット期間よりも長く、前記mは正の整数である。
【0250】
本発明の好ましい実施形態として、呼吸信号に対する時間の長さを第2のプリセット期間とし、重複比率がs%のデータセグメントで重複するよう分割して、m個の第4の信号セグメントを取得することを含む。ここで、前記sは0<s<100の条件を満たす。
【0251】
m個の第4の信号セグメントに基づいて、呼吸信号に対応する全体的な呼吸変動度が計算される。本発明において全体的な呼吸変動の程度を計算する方法としては、以下の工程が含まれる。
【0252】
各第4の信号セグメントに対応する複数の呼吸強度を計算し、各第4の信号セグメントに対応する呼吸強度の中央値を選別する。
【0253】
得られたm個の呼吸強度の中央値に基づいて、各第4の信号セグメントに対応する呼吸低下率を計算し、m個の呼吸低下率の中央値を選別して、全体的な呼吸変動度を取得する。
【0254】
各第1の信号セグメントに対応するh個の呼吸強度及び全体的な呼吸変動の程度に基づいて、各第1の信号セグメントに対応する部分閾値が計算される。
【0255】
具体的には、第1の信号セグメントに対応するh個の呼吸強度の中央値と全体的な呼吸変動度の積を計算して、第1の信号セグメントに対応する部分閾値を得ることができる。
【0256】
睡眠時無呼吸のタイプの識別するために、本発明の実施形態における呼吸信号は、頭と首の運動信号と胸と背中の運動信号を含み、これらの信号は以下の内容を含む。
【0257】
頭と首の運動信号、及び胸と背中の運動信号にそれぞれ対応する第3の信号セグメントに基づいて、頭と首の運動信号、及び胸と背中の運動信号に対応した呼吸降下率が計算される。
【0258】
呼吸低下率に基づいて、ユーザに対応する睡眠時無呼吸のタイプを特定する。
【0259】
本発明の実施形態において、呼吸信号は鼻口気流信号、胸壁運動信号、頭と首の運動信号、及び胸と背中の運動信号における任意の1種又は複数の種類の信号である。
【0260】
本発明の実施形態では、睡眠中のユーザの鼻口気流信号、胸壁運動信号のうちの少なくとも何れか1つを収集するための制御接触式センサーも備える。
【0261】
または、非接触式センサーを制御して、睡眠中のユーザの頭と首の運動信号、胸と背中の運動信号のうちの少なくとも何れか1つを収集する。
【0262】
本発明の実施形態として、さらに、睡眠時無呼吸低呼吸指数を出力し表示することを含む。
【0263】
本発明の第8の実施形態の呼吸停止検知方法、及び他の実施形態を実施するには、呼吸停止検知システムに関連する本発明のコンピューティング機器9(第1の実施形態から第5の実施形態)を使用することに留意されたい。
【0264】
更に、呼吸停止検知「方法」の実施の原理は、呼吸停止検知「システム」の関連する実施形態におけるコンピューティング機器9による呼吸停止検知の実施の原理と同じである。したがって、呼吸停止検知「方法」に関連する動作原理はここでは説明せず、呼吸停止検知「システム」に関連する本発明の実施形態の内容を参照することによって理解されたい。
【0265】
図9Aは、本発明の実施形態によって提供されるコンピューティング機器9の概略図である。図9Aに示されるように、この実施形態のコンピューティング機器9は、プロセッサ90、メモリ91を備える。そして、メモリ91には、プロセッサ90で実行することができるコンピュータで可読可能なコンピューティングプログラム92が記憶されている。
【0266】
図9Bに示されるように、プロセッサ90がコンピューティングプログラム92を実行するとき、以下のステップが実行される。
【0267】
S901,ユーザの睡眠中に収集された呼吸信号を取得し、呼吸信号を第1のプリセット期間のデータセグメントに分割して、n個の連続する第1の信号セグメントを取得する。ここで、nは正の整数である。
【0268】
S902,各第1の信号セグメントをh個の第2信号セグメントに分割し、各第2信号セグメントに対応する呼吸強度を計算する。ここで、hは1より大きい正の整数である。
【0269】
各第1の信号セグメントに対応する一つの部分閾値を獲得し、各第1の信号セグメントにおいて、連続した時間の長さがr秒より長く且つ対応する呼吸強度が均しく部分閾値より小さい複数の第2の信号セグメントから構成される第3の信号セグメントを選出する。ここで前記rは0<r<10の条件を満たす。
【0270】
S904,呼吸信号の合計持続時間に対する、全ての第3の信号セグメントの合計持続時間の比率を計算して、呼吸停止のパーセンテージを取得する。そして、呼吸信号に対応する睡眠時無呼吸低換気指数を取得するために、事前にトレーニングされた回帰モデルに呼吸停止率を入力する。ここで、回帰モデルは、無呼吸のパーセンテージに基づいて、対応する睡眠時無呼吸低換気指数を計算するために使用される。
【0271】
本発明の第9の実施形態における呼吸強度を計算する他の実施としては以下の工程を含む。経験的モード分解は、各第2の信号セグメントを複数の経験的モード関数に分解するために使用される。
【0272】
ユーザに対応する1個又は複数個の経験的モード関数は、複数の経験的モード関数から選択される。そして、選択された1個又は複数個の経験的モード関数に基づいて、それぞれh秒の信号セグメントに対応する呼吸強度を計算する。
【0273】
本発明の第9の実施形態のように、第1の信号セグメントの状態に基づいて対応する適切な部分閾値を計算する方法には以下の工程が含まれる。
【0274】
呼吸信号に対して、第2のプリセット期間のデータセグメントに分割し、m個の第4の信号セグメントを取得する。ここで、第1のプリセット期間は第2のプリセット期間よりも長く、mは正の整数である。
【0275】
本発明の好ましい実施形態としては以下の工程が含まれる。呼吸信号に対する時間の長さを第2のプリセット期間とし、重複率がs%のデータセグメントで重複するように分割して、m個の第4の信号セグメントを取得する。ここで、前記sは0<s<100の条件を満たす。
【0276】
m個の第4の信号セグメントに基づいて、呼吸信号に対応する全体的な呼吸変動度が計算される。本発明の実施形態における全体的な呼吸変動の程度を計算するための方法としては次のステップが含まれる。
【0277】
各第4の信号セグメントに対応する複数の呼吸強度を計算し、各第4の信号セグメントに対応する呼吸強度の中央値を選別する。
【0278】
得られたm個の呼吸強度の中央値に基づいて、各第4の信号セグメントに対応する呼吸低下率を計算する。そして、m個の呼吸低下率の中央値を選別し、全体的な呼吸変動度を取得する。
【0279】
各第1の信号セグメントに対応するh個の呼吸強度と全体的な呼吸変動の程度に基づいて、各第1の信号セグメントに対応する部分閾値を計算する。
具体的には、第1の信号セグメントに対応するh個の呼吸強度の中央値と全体的な呼吸変動度の積を計算して、第1の信号セグメントに対応することにより部分閾値を得ることができる。
【0280】
睡眠時無呼吸のタイプの認識するために、本発明の実施形態における呼吸信号は頭と首の運動信号、及び胸と背中の運動信号を含み、具体的には以下のステップを含む。
【0281】
頭と首の運動信号、及び胸と背中の運動信号にそれぞれ対応する第3の信号セグメントに基づいて、頭と首の運動信号と胸と背中の運動信号に対応する呼吸降下率が計算される。
【0282】
呼吸低下率に基づいて、ユーザに対応する睡眠時無呼吸のタイプを特定する。
【0283】
本発明の実施形態として、呼吸信号は、鼻口気流信号、胸壁運動信号、頭と首の運動信号、及び胸と背中の運動信号のうちの任意の1つ又は複数である。
【0284】
本出願の実施形態では、コンピューティング機器9は接触式センサーおよび非接触式センサーを備えていても良い。
【0285】
更に本発明の実施形態では以下のように制御される。
【0286】
接触式センサーは、睡眠中のユーザの鼻口気流信号、胸壁運動信号の少なくとも何れかを収集するように使用される。また、非接触式センサーを制御して、睡眠中のユーザの頭と首の運動信号、胸と背中の運動信号のうちの少なくとも何れか1つを収集する。
【0287】
本発明の前述の実施形態9、及び他のコンピューティング機器9の実施形態は、呼吸停止検知システム(本発明の第1から第5の実施形態等)に関連する本発明の実施形態におけるコンピューティング機器9であることに留意されたい。
【0288】
さらに、コンピューティング機器9による呼吸停止検知の動作原理は、呼吸停止検知システムのこれらの関連する実施形態におけるコンピューティン機器9による呼吸停止検知の動作原理と同様である。したがって、コンピューティング機器9の呼吸停止検知の関連する動作原理についてはここでは繰り返し説明せず、上記の呼吸停止検知システムに関連する本発明の実施形態を参照されたい。
【0289】
なお、コンピューティング機器9は、デスクトップコンピュータ、ノートPC、モバイル端末、パームトップコンピュータ、クラウドサーバー、又はデータコンピューティング処理機能を備えた他のコンピューティング機器であっても良い。
【0290】
コンピューティング機器9は、プロセッサ90とメモリ91を備えるがその他のハードウェアを備えていても差し支えない。
【0291】
図9はコンピューティング機器9の単なる例示であり、当業者であればコンピューティング機器9の構成がこれには限られないことを当然に理解できるはずである。例えば、図示しないコンポーネント、又は特定のコンポーネント、又は異なるコンポーネントを含んでいても良く、図9の構成には、例えば、入出力装置、ネットワークアクセス装置、バスなどを更に含んでいても良い。
【0292】
プロセッサ90は中央処理ユニット(Central Processing Unit,CPU)その他の処理機や、デジタルシグナルプロセッサー(Digital Signal Processor,DSP)、専用の集積回路(Application Specific Integrated Circuit,ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field-Programmable Gate Array,FPGA)、又はその他のプログラマブルロジックデバイス、ディスクリートゲート若しくはトランジスタロジックデバイス、ディスクリートハードウェアコンポーネント等であっても良い。更に、汎用プロセッサは、マイクロプロセッサーや任意の従来のプロセッサ等であっても良い。
【0293】
メモリ91は、コンピューティング装置9のハードディスク又はメモリ等のコンピューティング機器9の内部ストレージユニットであり得る。メモリ91はコンピューティング機器9の外部ストレージデバイスであり得る。例えば、コンピューティング機器9に装備されたプラグインハードドライブ、スマートメディアカード(Smart Media (登録商標) Card,SMC)、セキュアデジタル(Secure Digital,SD)カード、フラッシュカード(Flash Card)等であり得る。
【0294】
さらに、メモリ91はコンピューティング機器9の内部ストレージユニットと外部ストレージ機器の両方を含み得る。メモリ91は、計算装置が必要とするコンピュータが可読可能な命令、他のプログラム、又はデータ等を格納するために使用される。メモリ91は、送信されたデータ又は送信しようとするデータを一時的に格納するために使用することもできる。
【0295】
本発明の第1から第5の実施形態におけるコンピューティング機器9および睡眠時の無呼吸を検知するシステムにおける他の関連する実施形態に対応すべく、本発明の実施形態のコンピューティング機器に含まれるハードウェアモジュール又はその他の機能についても必要に応じて適応当該機能を発揮し得るように変更しても差し支えない。
【0296】
たとえば、センサーやディスプレイ等のモジュールをコンピューティング機器9にインストールしたり、部分閾値を計算する機能を追加したりしても差し支えない。そして、このような変更を施したものについても、本発明の特許請求の範囲に記載した発明特定事項を備えていれば当然に本発明の技術的範囲に含まれる。
【0297】
上述の実施形態における各ステップのシーケンス番号のサイズは、実施の順序を意味するものではないことに留意されたい。各プロセスの実行シーケンスは、その機能と内部のロジックによって決定されるべきであり、本発明の実施形態の実施のプロセスに対しては如何なる制限も課せられない。
【0298】
なお、「第1の」、「第2の」等といった表現が本発明の特許請求の範囲及び明細書に使用されているが、これは例えば「第1の信号セグメント」は「第2の信号セグメント」と別の物であるという趣旨であって、「第5の」であろうが、「第6の」であろうが区別ができれば良いという趣旨である。
【0299】
つまり、これらの用語は、ある要素を別の要素と区別するためにのみ使用されるものである。たとえば、第1のテーブルと呼ぶところを第2のテーブルという名前で呼んでも差し支えなく、2種類以上の間で区別ができれば足りる。
【0300】
同様に、第2のテーブルは、記載された様々な実施形態の範囲から逸脱することなく、第1のテーブルと呼ぶこともできる。
【0301】
さらに、本発明の様々な実施形態における機能ユニットは、1つの処理ユニットに統合される態様でも良く、または各ユニットが物理的に単独で存在する態様でも良く、又は2つ以上のユニットが1つのユニットに統合されていても差し支えない。
【0302】
上記の統合ユニットは、ハードウェア又はソフトウェアの機能によって実現しても良く、要するに機能的に役割を果たせれば差し支えない。
【0303】
統合されたモジュール/ユニットがソフトウェアの機能によってユニットが実装され、独立した製品として販売又は使用される場合、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体に保存できる。
【0304】
このような理解に基づいて、本発明は上記の実施形態及び方法におけるプロセスの全部又は一部を実現し、又は、コンピュータが読み取り可能な命令を実行させることによって関連するハードウェアに命令する信号を出力することによって実現することもできる。コンピュータが読み取り可能な命令は、コンピュータに記憶することができる。ここで、コンピュータが読み取り可能な命令がプロセッサによって実行されることによって、前述の方法の実施形態のステップ(工程)を実施することができる。
【0305】
ここで、コンピュータが読み取り可能な命令は、コンピュータが読み取り可能な命令コードを含み、コンピュータが読み取り可能な命令コードは、ソースコード、オブジェクトコード、実行可能ファイル、又は複数の中間形式等であり得る。
【0306】
また、コンピュータが読み取り可能な記録媒体には、以下が含まれ得る。例えば、コンピュータが読み取り可能な命令コードを運ぶことができる任意のエンティティ又はデバイス、記録媒体、Uディスク、モバイルハードディスク、磁気ディスク、光ディスク、コンピュータメモリ、読み取り専用メモリ(Read-Only Memory,ROM)、ランダムアクセスメモリ(Random Access Memory,RAM)、電気キャリア信号、通信信号、ソフトウェア配布媒体等である。
【0307】
上記の実施形態は、本発明の技術的な理解を助けるために記載されたものであり、上記の実施形態に特許請求の範囲を制限するものではない。
【0308】
また、本発明は上述した実施形態を参照して詳細に説明したが、当業者が上述の実施形態に変更又は修正を加えたとしても、本発明の特許請求の範囲の発明特定事項を備えていれば尚も変更又は修正後の発明は本発明の技術的範囲に属するものとする。また、これらの変更又は置換を行ったとしても、変更又は置換後の発明も、本発明の精神から逸脱しない限り本発明の技術的範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0309】
9 コンピューティング機器
90 プロセッサ
91 メモリ
92 コンピューティングプログラム(プログラム)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7(a)】
図7(b)】
図7(c)】
図7(d)】
図7(e)】
図7(f)】
図8
図9A
図9B