IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 神鋼検査サービス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-管アダプタ 図1
  • 特許-管アダプタ 図2
  • 特許-管アダプタ 図3
  • 特許-管アダプタ 図4
  • 特許-管アダプタ 図5
  • 特許-管アダプタ 図6
  • 特許-管アダプタ 図7
  • 特許-管アダプタ 図8
  • 特許-管アダプタ 図9
  • 特許-管アダプタ 図10
  • 特許-管アダプタ 図11
  • 特許-管アダプタ 図12
  • 特許-管アダプタ 図13
  • 特許-管アダプタ 図14
  • 特許-管アダプタ 図15
  • 特許-管アダプタ 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-23
(45)【発行日】2023-03-31
(54)【発明の名称】管アダプタ
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/22 20060101AFI20230324BHJP
【FI】
G01N29/22
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022144596
(22)【出願日】2022-09-12
【審査請求日】2023-02-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】594126159
【氏名又は名称】神鋼検査サービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】福島 盛弘
(72)【発明者】
【氏名】中島 聡文
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-47045(JP,A)
【文献】特開2002-82100(JP,A)
【文献】特開2014-142259(JP,A)
【文献】実開昭62-71559(JP,U)
【文献】中国実用新案第204679455(CN,U)
【文献】中国実用新案第216640703(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/72 - G01N 27/9093
G01N 29/00 - G01N 29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水流の力を利用して送り出される超音波探傷用のプローブが挿入されて超音波探傷される被検査管に取り付けられる管アダプタであって、
前記被検査管へ前記プローブを案内する導入管の先端部に取り付けられるカプラと、
前記カプラを前記被検査管に連結するように、前記カプラが基端側から挿入可能であるとともに先端側から前記被検査管が挿入可能に構成された連結部と、
前記連結部が前記被検査管を外側から締め付けるように前記連結部に締結力を付与する締結部と、
前記カプラの先端と前記被検査管との間に配置されたインナーリングと、を備え、
前記インナーリングは、前記カプラの前記先端との継ぎ目及び前記被検査管との継ぎ目で段差が発生することを抑制するように形成された内周面を有している、管アダプタ。
【請求項2】
前記インナーリングと交換可能な他のインナーリングを更に備え、
前記他のインナーリングは、前記カプラ側の一端において前記インナーリングと同じ内径を有している一方で、他端において前記インナーリングの内径よりも小さな又は大きな内径を有している、請求項1に記載の管アダプタ。
【請求項3】
前記カプラは、前記被検査管と前記カプラの前記先端とで前記インナーリングを軸方向に圧縮する位置まで前記連結部に螺合可能であり、
前記インナーリングは、軸方向に圧縮された状態で、前記カプラの前記先端との前記継ぎ目及び前記被検査管との前記継ぎ目からの漏水を抑制するシール機能を発揮するように構成されている、請求項1又は2に記載の管アダプタ。
【請求項4】
前記連結部は、弾性材料により形成されている、請求項1又は2に記載の管アダプタ。
【請求項5】
前記締結部は、前記連結部を締め付けるように構成されたリングクランプを含んでいる、請求項4に記載の管アダプタ。
【請求項6】
前記連結部は、前記カプラに固定された固定筒部と、前記被検査管の周方向において間隔を空けて互いに対向している両端部を有しているとともに、前記被検査管を周方向に囲むように形成されたクランプ部と、を有しており、
前記締結部は、前記クランプ部の前記両端部の間隔を狭めて前記クランプ部を径方向に収縮させる締結ネジを含んでいる、請求項1又は2に記載の管アダプタ。
【請求項7】
前記連結部は、前記カプラに固定された固定筒部と、前記被検査管が嵌入した状態で前記固定筒部と前記被検査管とを連結可能に構成された弾性リングと、を有しており、
前記固定筒部の先端面には、前記弾性リングを収容する環状凹部が形成されており、
前記締結部は、前記被検査管に沿って移動可能な状態で前記固定筒部との間で前記弾性リングを軸方向に挟むように前記被検査管が挿入された押圧部と、前記押圧部を前記弾性リングに押し付けるように前記押圧部に軸方向の力を付与するように構成された力付与部と、を有しており、
前記弾性リングは、前記押圧部と前記固定筒部とにより軸方向に圧縮変形されて前記環状凹部と前記被検査管の外周面とに圧接されることにより、前記固定筒部と前記被検査管とを連結する、請求項1又は2に記載の管アダプタ。
【請求項8】
前記力付与部は、作業者によって操作される頭部が前記カプラの基端側に向いた姿勢で前記被検査管及び前記カプラの外側で前記固定筒部に挿通されているとともに前記押圧部に螺合する締結ネジを含んでいる、請求項7に記載の管アダプタ。
【請求項9】
前記押圧部は、前記固定筒部から軸方向に離間した位置で前記被検査管に取り付けられた端押圧部と、前記端押圧部と前記固定筒部との間の位置で前記被検査管に取り付けられた中間押圧部と、を有しており、
前記管アダプタは、前記端押圧部と前記中間押圧部とによって軸方向に挟まれる位置で前記被検査管に取り付けられた弾性変形可能なシールリングを更に備えており、
前記中間押圧部は、前記力付与部の軸方向の力により、前記弾性リングを軸方向に圧縮するとともに前記シールリングを前記端押圧部との間で軸方向に圧縮し、前記端押圧部、前記中間押圧部及び前記被検査管に前記シールリングを圧接させる、請求項7に記載の管アダプタ。
【請求項10】
前記押圧部は、前記固定筒部から軸方向に離間した位置で前記被検査管に取り付けられた端押圧部と、前記端押圧部と前記固定筒部との間で軸方向に並ぶように前記被検査管に取り付けられた複数の中間押圧部と、を有しており、
前記管アダプタは、前記端押圧部と前記端押圧部に隣り合う位置にある中間押圧部とに挟まれる位置で前記被検査管に取り付けられたシールリングと、互いに隣り合う中間押圧部に挟まれる位置で前記被検査管に取り付けられた他のシールリングと、を更に備えており、
前記固定筒部に隣り合う位置にある中間押圧部は、前記力付与部の軸方向の力により、前記弾性リングを軸方向に圧縮し、
前記端押圧部に隣り合う位置にある中間押圧部は、前記力付与部の軸方向の力により、前記シールリングを軸方向に圧縮し、当該中間押圧部、前記端押圧部及び前記被検査管に前記シールリングを圧接させ、
前記互いに隣り合う中間押圧部は、前記力付与部の軸方向の力により、前記他のシールリングを軸方向に圧縮し、前記互いに隣り合う中間押圧部及び前記被検査管に前記他のシールリングを圧接させる、請求項7に記載の管アダプタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水流の力を利用して送り出される超音波探傷用のプローブが挿入されて超音波探傷される被検査管に取り付けられる管アダプタに関する。
【背景技術】
【0002】
ボイラの熱交換管といった被検査管を超音波探傷するための様々な技術が開発されている(特許文献1を参照)。特許文献1では、図15に示すように、水流の力を利用して超音波探傷用のプローブ900を検査対象の被検査管901へ送り込む送り装置902が用いられている。
【0003】
プローブ900は、超音波を出射するとともに超音波の反射波を受信するように構成されている。また、プローブ900は、受信した反射波に応じた電気信号を生成するように構成されている。プローブ900からはこの電気信号を伝達するためのケーブル903が延設されており、ケーブル903は、電気信号を解析可能に構成されたコンピュータ904に接続されている。ケーブル903には、水流による送り出し効果を高めるために複数の浮子905が間隔を空けて取り付けられている。
【0004】
送り装置902は、貯水部910と、ケーブル903の一部が内部に収容されているケーブル収容部911と、貯水部910内の水をケーブル収容部911内へ吐出するポンプ912と、ケーブル収容部911から延設された導入管913と、を有している。導入管913は、被検査管901へプローブ900を案内するためのものであり、被検査管901の端部に接続されている。ケーブル903は、導入管913を通して被検査管901内に送り込まれる。
【0005】
導入管913には、ケーブル903を被検査管901に送り込むための送出機914が設けられている。また、ケーブル903の送り込み方向において送出機914の下流側には、導入管913に水を導入するための導水部915が導入管913に取り付けられている。導水部915は、中継管917によってケーブル収容部911に接続されており、ケーブル収容部911から流出した水がケーブル903の送込方向に流れる水流になるように構成されている。
【0006】
送出機914がケーブル903を被検査管901に送り込んでいる間、ポンプ912は大きな吐出量で水を吐出する。この結果、導入管913内では、被検査管901に向かう強い水流が生成され、プローブ900は、水流の力によって被検査管901内を進行する。水流の力が強くなればなるほど、被検査管901と導入管913との接続部916に作用する力が大きくなる。したがって、接続部916には、水流の力に抗して被検査管901と導入管913との接続状態を維持することが求められる。
【0007】
特許文献2では、図16に示すように、検査対象に導入管913を取り付けるための管アダプタ920が用いられている。管アダプタ920は、導入管913の先端部に取り付けられており、導入管913を通じて検査対象側に移動するプローブ900が挿通可能に構成されている。また、管アダプタ920は、検査対象に取り付け可能に構成されている。
【0008】
検査対象側には、互いに間隔を空けて配置された少なくとも3本の被検査管921が含まれ、これらの被検査管921の先端部分は、管板922に溶接されている。管板922には、被検査管921に対応する位置に貫通孔923が形成されており、管アダプタ920は、貫通孔923に嵌入可能な先端部924を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2012-211829号公報
【文献】実開平1-66069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図16に示す接続構造では、管アダプタ920を貫通孔923に嵌入するときに、管アダプタ920の先端部924が貫通孔923を拡径するように管板922を微小変形させる。この管板922の拡径変形に応じた復元力により、管アダプタ920の先端部924が締め付けられ、管アダプタ920は、管板922に強い力で接続される。
【0011】
管アダプタ920の先端部924に対する締付力は、たとえば、管板922及び/又は管アダプタ920の製作上の誤差によって変わる。この場合、検査現場で管アダプタ920を取り付けても、必要な締付力を得られず、管アダプタ920を通じて被検査管901に流入する水圧により、管アダプタ920が管板922から外れる可能性がある。
【0012】
また、図16に示す接続構造では、管アダプタ920の先端部924の先端面は、管板922の貫通孔923内で段差を生じさせる。この段差は、被検査管921の検査が終わりプローブ900を被検査管921から引き出す作業の妨げになり得る。すなわち、プローブ900が段差に引っ掛かり、プローブ900又はケーブル903を損傷させる虞がある。
【0013】
さらに、貫通孔の径において異なる他の管板に接続された被検査管に対して超音波探傷を行おうとすれば、この管板用に作成された他の管アダプタを用意する必要がある。
【0014】
本発明は、被検査管に強い力で接続可能であるとともに接続部分に段差が生ずることを抑制する汎用性の高い管アダプタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一局面に係る管アダプタは、水流の力を利用して送り出される超音波探傷用のプローブが挿入されて超音波探傷される被検査管に取り付け可能に構成されている。管アダプタは、被検査管へプローブを案内する導入管の先端部に取り付けられるカプラと、カプラを被検査管に連結するように、カプラが基端側から挿入可能であるとともに先端側から被検査管が挿入可能に構成された連結部と、連結部が被検査管を外側から締め付けるように連結部に締結力を付与する締結部と、カプラの先端と被検査管との間に配置されたインナーリングと、を備えている。インナーリングは、カプラの先端との継ぎ目及び被検査管との継ぎ目で段差が発生することを抑制するように形成された内周面を有している。
【発明の効果】
【0016】
上述の管アダプタは、接続部分に段差を生じさせることなく被検査管に強い力で接続可能であるとともに高い汎用性を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】探傷システムの概略図である。
図2】第1実施形態の管アダプタの概略的な断面図である。
図3】第2実施形態の管アダプタの概略的な断面図である。
図4】管アダプタの連結部の概略的な断面図である。
図5】第3実施形態の管アダプタの概略的な断面図である。
図6】第3実施形態の管アダプタが被検査管に加える圧接力を表す模式図である。
図7】第1実施形態の管アダプタが被検査管に加える圧接力を表す模式図である。
図8】他の管アダプタの概略的な断面図である。
図9】他の管アダプタの概略的な断面図である。
図10】第4実施形態の管アダプタの概略的な断面図である。
図11】第5実施形態の管アダプタの概略的な断面図である。
図12】他の管アダプタの概略的な断面図である。
図13図12に示す管アダプタを被検査管に取り付けた状態を示す図である。
図14図12に示す管アダプタを被検査管に取り付けた状態を示す図である。
図15】従来の探傷システムの概略図である。
図16】従来の管アダプタの概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施形態>
<探傷システムの全体的な構造>
図1は、検査対象の被検査管200に超音波探傷用のプローブ110を挿入して超音波探傷するための探傷システム100の概略図である。
【0019】
プローブ110は、超音波を発するとともに反射波(被検査管200によって反射された超音波)を受信するように構成されている。また、プローブ110は、受信した反射波を表す電気信号を生成するように構成されている。この電気信号を伝達するために、プローブ110からはケーブル111が延設されている。ケーブル111は、データ収集機112に接続されており、反射波に関するデータがデータ収集機112に収集される。
【0020】
ケーブル111には、複数の浮子113が間隔を空けて取り付けられている。これらの浮子113は、水流の力を利用して、プローブ110を被検査管200内で移動させることを補助するために設けられている。
【0021】
プローブ110及びケーブル111を被検査管200内に送り込むために、探傷システム100は、送り装置120と、導入管130と、貯水部122と、ポンプ123と、を有している。
【0022】
送り装置120は、手動式にケーブル111を送り出すように構成された送出機124を有している。送出機124へケーブル111を案内するために、送出機124には、上流管部125が取り付けられている。また、送出機124によって送り出されたケーブル111を案内するための下流管部126も送出機124に取り付けられている。送出機124は、ハンドル127を有しており、作業者がハンドル127を回すと、ケーブル111は、上流管部125を通じて送出機124に引き込まれるとともに、下流管部126を通じて送り装置120から送出される。
【0023】
ケーブル111の送出を補助するための水流を生成するために、下流管部126には、導水管部128が接続されている。導水管部128は、給水管129を通じて貯水部122に接続されており、給水管129には、ポンプ123が取り付けられている。貯水部122内には水が貯められており、貯水部122内の水は、ポンプ123によって吸い出され、給水管129及び導水管部128を通じて下流管部126に供給される。
【0024】
送り装置120から被検査管200へプローブ110及びケーブル111を案内するために、導入管130が下流管部126の下流端に接続されている。導入管130は、プローブ110が通過することを許容する内径を有している管部材である。導入管130は、可撓性を有してもよく、この場合、送り装置120と被検査管200との位置関係によらず、送り装置120から被検査管200へプローブ110及びケーブル111を案内することができる。
【0025】
導入管130は、被検査管200の上側の端部に管アダプタ300を介して取り付けられる。被検査管200の下側の端部にも、管アダプタ300と同じ構造を有している他の管アダプタ301が取り付けられており、この管アダプタ301には、排水管131が接続されている。排水管131は、貯水部122に延設されている。
【0026】
<管アダプタの構造>
管アダプタ300は、プローブ110の通過を許容する内径を有している一方で、管アダプタ301の内径は、プローブ110が管アダプタ301に到達したときにプローブ110を停止させるような大きさを有していてもよい。すなわち、管アダプタ301の内径は、管アダプタ300の内径よりも小さくてもよい。内径を除いて、管アダプタ300,301は、互いに同じ構造を有しているので、ここでは、管アダプタ300の構造について、図2を参照して説明する。
【0027】
管アダプタ300は、導入管130の先端部に取り付けられたカプラ310と、カプラ310と被検査管200とを連結する管状の連結部320と、を有している。
【0028】
カプラ310は、互いに嵌合するように構成された雌カプラ管311及び雄カプラ管312により構成されている。雌カプラ管311は、雄カプラ管312に対して基端側、すなわち、導入管130側に配置されており、雄カプラ管312は、雌カプラ管311に対して先端側、すなわち、被検査管200側に配置されている。
【0029】
雌カプラ管311の基端側の部分の内径は、導入管130の外径と略等しくなっており、導入管130は、雌カプラ管311の基端側の部分に嵌入された状態で固定されている。雌カプラ管311の先端側の部分の内周面には、周方向に間隔を空けて配列された複数の係合球313が設けられている。
【0030】
雄カプラ管312の基端側の部分の外周面には、環状凹溝314が形成されている。雄カプラ管312の基端側の部分が雌カプラ管311の先端側の部分に嵌入されると、雌カプラ管311の係合球313が嵌まり込む。この結果、雄カプラ管312は、雌カプラ管311に連結された状態になる。
【0031】
係合球313が環状凹溝314に嵌まり込んだ状態では、雄カプラ管312の基端面は、雌カプラ管311内の導入管130の先端面に当接している。雄カプラ管312の内径は、導入管130の内径に等しくなっており、雄カプラ管312と導入管130との継ぎ目において段差は生じていない。また、導入管130の内径は、上述の如く、プローブ110が挿通することを許容する大きさになっているので、導入管130の内径と等しい内径を有している雄カプラ管312も、プローブ110が挿通することを許容する。なお、雄カプラ管312の内径は、導入管130の内径に合わせられればよく、被検査管200の内径に一致させる必要はない。本実施形態では、雄カプラ管312の内径は、被検査管200の内径よりも大きくなっている。
【0032】
雄カプラ管312は、管アダプタ300が接続される被検査管200の端面(以下、「接続端210」と称する)に対して、雄カプラ管312の先端面が接続端210から離間した状態で被検査管200と略同軸に配置されている。被検査管200の接続端210と雄カプラ管312との間には、インナーリング340が配置されている。言い換えると、インナーリング340は、被検査管200の接続端210と雄カプラ管312とによって軸方向に挟まれている。インナーリング340の内周面は、雄カプラ管312の先端から被検査管200の接続端210までの区間において、段差が生じないように構成されている。
【0033】
詳細には、インナーリング340の基端面は、雄カプラ管312の先端に当接しており、インナーリング340は、基端において、雄カプラ管312の内径と等しい内径を有している。このため、インナーリング340と雄カプラ管312との継ぎ目において、段差は生じていない。また、インナーリング340の先端面は、被検査管200の接続端210に当接しており、インナーリング340は、先端において、被検査管200の内径と等しい内径を有している。このため、インナーリング340と被検査管200との継ぎ目においても、段差は生じていない。インナーリング340の内径は、先端よりも基端において大きくなっており、インナーリング340は、雄カプラ管312から被検査管200に向けて狭まる流路を形成している。
【0034】
インナーリング340を介して、雄カプラ管312は、被検査管200と略同軸に並んでいる。この状態で、雄カプラ管312を被検査管200に連結するために、連結部320が設けられている。連結部320は、弾性材料から形成された管部材であり、雄カプラ管312の先端部分は、連結部320の基端側から連結部320に挿入される。また、被検査管200の端部は、連結部320の先端側から連結部320に挿入される。
【0035】
連結部320の先端部分を被検査管200に固定するために、締結部330が設けられている。また、連結部320の基端部分を雄カプラ管312に固定するために、他の締結部331が設けられている。これらの締結部330,331は、複数のリングクランプ332から構成されている。連結部320には、これらのリングクランプ332が外側から取り付けられている。これらのリングクランプ332は、作業者の操作により、連結部320を径方向に締め付けたり、この締め付けを緩めたりすることが可能になるように構成されている。これらのリングクランプ332を締め付ける作業を作業者が実行すると、リングクランプ332は、連結部320を外側から径方向に収縮させる締結力を生じさせる。
【0036】
<探傷システムの使用準備及び動作>
作業者は、ケーブル111が接続されていない状態のプローブ110を被検査管200の接続端210の開口部に挿通し、被検査管200へのプローブ110の挿通が可能か否かを確認する。その後、作業者は、被検査管200の内径を測定するとともに、プローブ110の挿通を許容するカプラ310とプローブ110の挿通を許容しないカプラ310とを用意する。プローブ110の挿通を許容するカプラ310は、被検査管200の接続端210に取り付けられる管アダプタ300用である。一方、プローブ110の挿通を許容しないカプラ310は、被検査管200の反対側の端部に取り付けられる管アダプタ301用である。また、作業者は、インナーリング340を用意する。このインナーリング340は、先端側の内径が被検査管200の内径に一致し、基端側の内径が、管アダプタ300用のカプラ310の雄カプラ管312の内径に一致するものである。
【0037】
作業者は、管アダプタ300用のカプラ310の雄カプラ管312を連結部320に基端側から嵌入し、締結部331を構成しているリングクランプ332でこれらの嵌合部分を締め付ける。この結果、連結部320は、雄カプラ管312に固定される。その後、作業者は、インナーリング340を連結部320内に入れる。なお、このとき、インナーリング340の基端は、雄カプラ管312の先端に当接した状態になっている。
【0038】
その後、作業者は、連結部320の先端部分を被検査管200と嵌合させる。このとき、作業者は、インナーリング340が雄カプラ管312の先端と被検査管200の接続端210とによって挟まれる程度まで連結部320を被検査管200側に押し込む。この結果、雄カプラ管312と被検査管200との間で段差がない流路が形成される。この状態で、作業者は、締結部330を構成しているリングクランプ332で連結部320を締め付ける。この結果、連結部320及び雄カプラ管312は、被検査管200に固定される。また、作業者は、被検査管200に固定された雄カプラ管312に雌カプラ管311を嵌合させる。これにより、管アダプタ300用のカプラ310は、被検査管200に取り付けられる。また、作業者は、被検査管200に対する管アダプタ300用のカプラ310の取付方法と同様の方法で、管アダプタ301用のカプラ310を被検査管200の反対側の端部に取り付けることができる。
【0039】
被検査管200に管アダプタ300,301を取り付けた後、作業者は、送り装置120側でセットアップ作業を行ってもよい。具体的には、作業者は、給水管129を用いて、送り装置120の導水管部128をポンプ123に接続する。なお、このとき、送り装置120には、導入管130は、まだ接続されていない。この状態で、作業者は、ケーブル111を送り装置120の上流管部125に挿入し、ケーブル111が下流管部126に送り出されるように送り装置120のハンドル127を回す。
【0040】
作業者は、ケーブル111の先端が下流管部126の端部から出るまで、ハンドル127を回し続ける。その後、作業者は、下流管部126の端部から出たケーブル111の先端にプローブ110を接続する。また、作業者は、導入管130の内径が雄カプラ管312の内径と等しいことを確認した上で、ケーブル111に接続されたプローブ110を、この導入管130に挿入する。
【0041】
プローブ110が導入管130に挿入された状態を維持しつつ、作業者は、導入管130を下流管部126と管アダプタ300用のカプラ310の雌カプラ管311とに接続する。また、作業者は、排水管131を、管アダプタ301用のカプラ310の雌カプラ管311と、貯水部122と、に取り付ける。この状態で、作業者は、貯水部122内の水が導水管部128に流入するようにポンプ123を作動させる。導水管部128を通じて供給された水は、導入管130、被検査管200及び排水管131を通過し、貯水部122に戻る。このような水流が生じている状態で、作業者は、ハンドル127を回し、導水管部128内のプローブ110を被検査管200に送り込む。
【0042】
このとき、雄カプラ管312の内径は、導入管130の内径に等しくなっているので、雄カプラ管312と導入管130との継ぎ目に、段差は形成されていない。このため、ケーブル111に設けられた浮子113が雄カプラ管312と導入管130との継ぎ目に引っ掛かることはない。
【0043】
また、インナーリング340は、基端において雄カプラ管312の内径と等しい内径を有し、先端において被検査管200と等しい内径を有している。このため、インナーリング340と雄カプラ管312との継ぎ目及びインナーリング340と被検査管200との継ぎ目にも、段差は形成されていない。このため、プローブ110及び浮子113がこれらの継ぎ目に引っ掛かることもない。
【0044】
プローブ110は、ハンドル127に対する操作に応じて、被検査管200内を移動する。この間、プローブ110は、超音波を出射するとともに、反射波を受信する。プローブ110は、受信した反射波を表す電気信号を生成し、この電気信号は、ケーブル111を通じて、データ収集機112に伝達される。このため、データ収集機112には、反射波のデータが蓄積される。このデータを解析することにより、被検査管200の傷の有無が分かる。
【0045】
被検査管200に対する超音波探傷を終えた後、作業者は、他の被検査管に対して超音波探傷を実行してもよい。この場合、被検査管200に対する超音波探傷時とは逆向きの水流が生ずるように、作業者は、ポンプ123を操作する。その後、作業者は、ハンドル127を逆転させて、プローブ110を被検査管200から引き出す。プローブ110が被検査管200から引き出された後、作業者は、雄カプラ管312から雌カプラ管311を取り外す。また、作業者が締結部330のリングクランプ332を緩めることにより、雄カプラ管312は、連結部320ごと被検査管200から取り外される。
【0046】
被検査管200から雄カプラ管312を取り外した後、作業者は、他の被検査管の内径を測定する。この内径が被検査管200の内径とは相違していれば、作業者は、連結部320内のインナーリング340を、内周面の形状においてインナーリング340とは相違している他のインナーリングに交換する。たとえば、他の被検査管の内径が被検査管200の内径よりも小さければ、先端における内径がインナーリング340の先端における内径よりも小さくなっている他のインナーリングが利用され得る。逆に、他の被検査管の内径が被検査管200の内径よりも大きければ、先端における内径がインナーリング340の先端における内径よりも大きくなっている他のインナーリングが利用され得る。なお、他のインナーリングの基端(カプラ310側の端部)における内径は、インナーリング340の基端における内径と同じである。
【0047】
インナーリング340を他のインナーリングに交換した後、作業者は、連結部320の先端部分を他の被検査管に嵌合させる。その後、作業者が、締結部330のリングクランプ332を締めれば、雄カプラ管312は、他の被検査管に固定される。この状態で、使用者が、雄カプラ管312に雌カプラ管311を嵌合させることにより、導入管130が他の被検査管に連結された状態が得られる。
【0048】
仮に、他の被検査管の外径が被検査管200の外径とは相違していても、被検査管200に対する管アダプタ300の取付力と同程度の取付力で、管アダプタ300を他の被検査管に取り付けることが可能である。すなわち、他の被検査管の外径が被検査管200の外径よりも小さければ、作業者は、締結部330のリングクランプ332の締付量を増せばよい。逆に、他の被検査管の外径が被検査管200の外径よりも大きければ、作業者は、締結部330のリングクランプ332の締付量を減らせばよい。このように、管アダプタ300は、検査対象側の物理的な特性によらず、強い力で検査対象の被検査管に接続され得る。このため、検査対象が変わっても、水流の力で管アダプタ300が検査対象から外れることは生じにくい。
【0049】
なお、他の被検査管の外径が被検査管200の外径よりも大きい場合においても、被検査管200に対する超音波探傷に用いられた連結部320を利用可能である。すなわち、連結部320は、弾性材料から形成されているので、被検査管200よりも外径において大きな他の被検査管が検査対象になっている場合には、連結部320を拡径変形させて、連結部320を他の被検査管に嵌合することが許容される。
【0050】
また、弾性材料で形成された連結部320をリングクランプ332で締め付けることにより、締付部分において高いシール性能が得られる。このため、インナーリング340と雄カプラ管312との継ぎ目及びインナーリング340と被検査管200との継ぎ目から漏れ出た水に対するシール機能が得られる。
【0051】
図2に示す被検査管200の接続端210は、横向きに開口している。代替的に、被検査管200の接続端210が上向きに開口している場合においても、管アダプタ300は、被検査管200に取り付けられ得る。この場合には、作業者は、被検査管200の接続端210上にインナーリング340を載置した状態で、連結部320と被検査管200とを嵌合してもよい。
【0052】
<第2実施形態>
第1実施形態では、連結部320とリングクランプ332とにより漏水を防止するシール機能が得られている。代替的に、インナーリング340にシール性能を発揮させるために、インナーリング340は、弾性材料から形成されてもよい。この場合、連結部320は、図3に示すように構成され得る。
【0053】
図3に示す連結部320は、基端側(カプラ310側)において、カプラ310に固定された円筒形状の固定筒部321を有しており、固定筒部321内にインナーリング340が配置されている。また、連結部320は、先端側においてクランプ部322を有している。クランプ部322と固定筒部321との間において、クランプ部322の略半周分の長さに亘ってスリット323が形成されている。このため、クランプ部322は、固定筒部321に対して部分的に接続された状態になっている。
【0054】
固定筒部321の内周面には、基端面(カプラ310側の端面)から所定の長さに亘って雌ネジが形成されている。カプラ310の雄カプラ管312の先端部分の外周面には、この雌ネジに螺合する雄ネジが形成されている。このため、固定筒部321は、雄カプラ管312と螺合した状態で雄カプラ管312に固定され得る。なお、雄カプラ管312の雄ネジの形成部分は、シールテープが巻かれた状態で固定筒部321の雌ネジに螺合されており、雄カプラ管312と固定筒部321との間からの漏水が防止されている。
【0055】
固定筒部321及び雄カプラ管312の螺合長さは、雄カプラ管312を固定筒部321に締め込んだときに、固定筒部321内のインナーリング340が雄カプラ管312と被検査管200とにより軸方向に圧縮されるように設定されている。弾性材料から形成されたインナーリング340が軸方向に圧縮されれば、インナーリング340は、シール性能を発揮し、インナーリング340と雄カプラ管312との継ぎ目及びインナーリング340と被検査管200との継ぎ目からの漏水が抑制される。
【0056】
クランプ部322は、図4に示すように、軸方向に見て略C字型の形状を有している。詳細には、クランプ部322は、スリット323によって固定筒部321から分離された部分において、被検査管200の周方向に互いに間隔を空けて対向した端部324,325を有している。また、クランプ部322は、被検査管200を周方向に囲むように形成されている。
【0057】
端部324には、被検査管200の軸に対して直角の方向に延びる貫通孔326が形成されており、端部325には、この貫通孔326と略同軸のネジ孔327が形成されている。この場合、貫通孔326に挿通されてネジ孔327に螺合する締結ネジが締結部330として利用される。
【0058】
図3及び図4に示す管アダプタ300は、以下のように、被検査管200及び雄カプラ管312に取り付けられる。
【0059】
作業者は、第1実施形態と同様の作業を経て、被検査管200に適したプローブ110及びインナーリング340を用意する。その後、作業者は、雄カプラ管312にシールテープを巻き付けて、雄カプラ管312を連結部320の固定筒部321に螺合する。この状態で、作業者は、インナーリング340を連結部320内に入れる。
【0060】
その後、作業者は、連結部320の先端部分を被検査管200に嵌合させる。このとき、作業者は、インナーリング340が雄カプラ管312の先端と被検査管200の接続端210とによって挟まれる程度まで連結部320を被検査管200側に押し込む。この結果、雄カプラ管312と被検査管200との間で段差がない流路が形成される。この状態で、作業者は、締結部330(締結ネジ)を締める。この結果、スリット323によって固定筒部321から分離した部分において、クランプ部322は、両端部324,325間の距離が縮まるように径方向に収縮する。これにより、クランプ部322は、被検査管200を締め付けた状態になり、連結部320は、被検査管200に固定される。作業者は、連結部320を被検査管200に固定した後、雄カプラ管312を増し締めする。この結果、インナーリング340が軸方向に圧縮された状態が得られる。軸方向におけるインナーリング340の圧縮の結果、インナーリング340はシール性能を発揮し、インナーリング340と雄カプラ管312との継ぎ目及びインナーリング340と被検査管200との継ぎ目からの漏水が抑制される。この状態で、雌カプラ管311が雄カプラ管312に取り付けられて、被検査管200への管アダプタ300の接続が完了する。
【0061】
図3に示すインナーリング340は、全体的に、弾性材料により形成されている。代替的に、インナーリング340の基端部分及び先端部分のみが弾性材料に形成されており、残りの部分が弾性変形しない材料(金属又は樹脂)により形成されてもよい。このようにインナーリング340が構成されても、シール機能が得られる。
【0062】
図3に示す被検査管200の接続端210は、横向きに開口している。代替的に、被検査管200の接続端210が上向きに開口している場合においても、管アダプタ300は、被検査管200に取り付けられ得る。この場合には、作業者は、被検査管200の接続端210上にインナーリング340を載置した状態で、連結部320と被検査管200とを嵌合してもよい。
【0063】
<第3実施形態>
ボイラなどの装置では、複数の被検査管が間隔を空けて略平行に配置されていることがある。これらの被検査管を超音波探傷する場合、検査対象の被検査管200に隣り合う他の被検査管が管アダプタ300の取り付けに邪魔になることがある。たとえば、第2実施形態の連結部320を被検査管200に固定するために締結部330(締結ネジ)を締めようとするときに、締結部330を締める工具を入れるための空間が、検査対象の被検査管200と他の被検査管との間に存在しない場合が想定される。このように、検査対象の被検査管200に他の被検査管が狭い間隔で隣り合っている場合において、検査対象の被検査管200に容易に取り付け可能な管アダプタ300を、図5を参照して説明する。
【0064】
図5に示す管アダプタ300は、被検査管200の接続端210と雄カプラ管312の先端面との間で軸方向に挟まれたインナーリング340を有している。インナーリング340は、基端側で雄カプラ管312の内径と等しい内径を有しているとともに先端側で被検査管200の内径と等しい内径を有しているリング本体341と、リング本体341と一体的に形成された位置決めリング342と、を有している。位置決めリング342は、リング本体341の先端において、リング本体341の外周面から径方向外側に突出している。このため、位置決めリング342の外径は、被検査管200の接続端210の外径よりも大きくなっており、位置決めリング342は、被検査管200の接続端210に対して径方向に突出している。この位置決めリング342は、連結部320を軸方向に位置決めするために利用される。
【0065】
連結部320は、雄カプラ管312に固定された固定筒部351と、固定筒部351を被検査管200に固定するための弾性変形可能な弾性リング352と、を有している。弾性リング352には、被検査管200の端部が嵌入されている。
【0066】
固定筒部351の内周面には、固定筒部351の基端面(カプラ310側の端面)から所定の長さに亘って雌ネジが形成されている。また、この雌ネジに螺合する雄ネジが、カプラ310の雄カプラ管312の先端部分の外周面に形成されている。固定筒部351の雌ネジに雄カプラ管312の雄ネジを螺合させることにより、固定筒部351は、雄カプラ管312に固定される。なお、雄カプラ管312は、雄ネジの形成部分にシールテープが巻かれた状態で固定筒部351に螺合されており、雄カプラ管312と固定筒部351との間からの漏水が生じにくくなっている。
【0067】
雄カプラ管312は、雄カプラ管312の先端面と被検査管200の接続端210とによってインナーリング340が挟まれるまで固定筒部351に螺合される。この状態において、被検査管200の端部は、固定筒部351の先端部分に挿入された状態になっている。固定筒部351の先端部分には、被検査管200の端部が嵌入された弾性リング352を収容する環状凹部353が固定筒部351の先端面から軸方向に窪むように形成されている。環状凹部353は、雄カプラ管312とは反対向きに開口している。この環状凹部353内には、インナーリング340の位置決めリング342が入り込んでおり、位置決めリング342は、軸方向において環状凹部353の壁面に係合する。
【0068】
固定筒部351には、雄カプラ管312が螺合された部分に対して径方向の外側の位置において、複数の貫通孔354が軸方向に穿設されている。これらの貫通孔354は、周方向に互いに間隔を空けて形成されている。
【0069】
締結部330は、弾性リング352と軸方向に当接する押圧部355と、押圧部355を弾性リング352に押し付けるように押圧部355に軸方向の力を付与するように構成された力付与部356と、を有している。力付与部356は、固定筒部351の複数の貫通孔354に挿通された複数の締結ネジ371を含んでいる。
【0070】
押圧部355には、被検査管200が挿通されており、押圧部355は、被検査管200に沿って移動可能になっている。押圧部355と固定筒部351との間に弾性リング352が配置されており、弾性リング352は、押圧部355と固定筒部351とによって軸方向に挟まれている。押圧部355が固定筒部351側に移動すれば、弾性リング352は、軸方向に圧縮される。
【0071】
押圧部355は、端押圧部357及び2つの中間押圧部358,359を有している。端押圧部357は、固定筒部351から先端側に離間した位置に配置されており、端押圧部357と固定筒部351との間には、中間押圧部358,359が配置されている。端押圧部357及び中間押圧部358,359は、被検査管200に沿って移動可能になっている。
【0072】
中間押圧部358は、固定筒部351に対して先端側に隣り合う位置に配置されており、円板部361と、円板部361から固定筒部351に向けて突出した突出部362と、を有している。
【0073】
中間押圧部358の円板部361には、被検査管200の外周面を周方向に囲む環状の空間を形成している環状凹部363が形成されている。環状凹部363は、中間押圧部359及び端押圧部357側に開口しており、環状凹部363内には、被検査管200が嵌入された状態の弾性変形可能なシールリング364が収容されている。環状凹部363は、このシールリング364の外周面に当接するように形成されている。また、環状凹部363に加えて、円板部361には、固定筒部351の複数の貫通孔354と略同軸の複数の貫通孔365が形成されている。
【0074】
中間押圧部358の突出部362の端面は、固定筒部351の環状凹部353の開口を通じて弾性リング352に接触している。突出部362は、中間押圧部358が固定筒部351に接近したときに、固定筒部351の環状凹部353内に入り込むように形成されている。
【0075】
中間押圧部359は、中間押圧部358と端押圧部357との間に配置されており、中間押圧部358と同じ形状を有している。中間押圧部359の環状凹部363には、シールリング366が収容されている。また、中間押圧部359の突出部362は、中間押圧部359,358間の軸方向の距離が縮まったときに、中間押圧部358の環状凹部363内に入り込むように形成されている。
【0076】
端押圧部357は、中間押圧部359に対して先端側に配置されており、円板部367と、円板部367から中間押圧部359側に突出した突出部368と、を有している。突出部368は、端押圧部357が中間押圧部359に接近したときに、中間押圧部359の環状凹部363内に入り込むように形成されており、シールリング366は、中間押圧部359と突出部368とによって軸方向に挟まれている。円板部367には、固定筒部351の複数の貫通孔354と略同軸の複数のネジ孔369が形成されている。
【0077】
締結ネジ371は、締結ネジ371の頭部370がカプラ310の基端側に向いた姿勢で、固定筒部351及び中間押圧部358,359の貫通孔354,365に挿通されて、端押圧部357のネジ孔369に螺合される。被検査管200の接続端210に対してカプラ310側には、カプラ310を取り付けるための空間があるから、この空間を利用して、作業者は、締結ネジ371の頭部370を操作することにより、締結ネジ371をネジ孔369に螺合することができる。
【0078】
作業者が締結ネジ371を締めると、端押圧部357は、被検査管200に沿って固定筒部351側に移動する。一方、固定筒部351は、インナーリング340の位置決めリング342と係合しているので、固定筒部351と被検査管200との間の位置関係は変わらない。固定筒部351側への端押圧部357の移動の結果、端押圧部357は、中間押圧部359,358を固定筒部351側に押すので、中間押圧部359,358も固定筒部351に接近する。
【0079】
端押圧部357、中間押圧部359,358及び固定筒部351間の距離が縮まった状態では、端押圧部357及び中間押圧部359,358の突出部368,362は、環状凹部363,353に入り込む。このとき、これらの環状凹部363,353内のシールリング366,364及び弾性リング352は、突出部368,362によって軸方向に圧縮される。このとき、弾性リング352は、突出部362により力を受けて雄カプラ管312側に押し出されようとするが、雄カプラ管312側への弾性リング352の変位は、位置決めリング342によって妨げられる。このため、弾性リング352が被検査管200の接続端210から雄カプラ管312側にはみ出すことが防止される。
【0080】
弾性リング352は、軸方向の圧縮により、固定筒部351の環状凹部353内で圧縮変形して環状凹部353と被検査管200の外周面とに圧接される。この結果、弾性リング352と固定筒部351との間及び弾性リング352と被検査管200との間に強い静止摩擦力が生ずる。この静止摩擦力により、固定筒部351が被検査管200の軸方向に移動することが抑制される。すなわち、固定筒部351は、弾性リング352を介して、被検査管200に固定された状態になる。
【0081】
弾性リング352は、固定筒部351の環状凹部353と被検査管200の外周面とに密着しているので、インナーリング340と被検査管200との継ぎ目から漏れ出た水に対してある程度のシール機能を発揮する。しかしながら、被検査管200に流入する水の圧力が高ければ、弾性リング352を越えて中間押圧部358,359及び端押圧部357側に流れる水が生じうる。このような水に対するシール機能を、シールリング364,366は、以下のように発揮する。
【0082】
すなわち、シールリング364は、隣り合う中間押圧部358,359により軸方向に圧縮される。この軸方向の圧縮により、シールリング364は、中間押圧部358の環状凹部363内で弾性変形し、この環状凹部363、被検査管200の外周面及び中間押圧部359の突出部362の端面に密着する。
【0083】
また、シールリング366は、中間押圧部359と端押圧部357とにより軸方向に圧縮される。この軸方向の圧縮により、シールリング366は、中間押圧部359の環状凹部363内で弾性変形し、この環状凹部363、被検査管200の外周面及び端押圧部357の突出部368の端面に密着する。
【0084】
シールリング364,366が、これらの周囲にある部分に密着した状態が得られるので、弾性リング352を越えて漏出した水に対するシール機能が得られる。また、シールリング366と被検査管200の外周面との間には強い静止摩擦力が作用しているので、被検査管200に向けて流れる水の圧力によって管アダプタ300が被検査管200から抜け出ることも同時に防止され得る。
【0085】
また、第3実施形態の管アダプタ300,301は、第1実施形態及び第2実施形態の管アダプタ300,301と比較して、以下の点で有利である。
【0086】
すなわち、第3実施形態の管アダプタ300,301の突出部362は、弾性リング352の環状の端面全体を押圧する。このため、弾性リング352は、図6の矢印で示すように、被検査管200の外周面に対して略均一な圧接力を加えることができる。この結果、弾性リング352は、高いシール機能を発揮し得るし、高い水圧に抗して管アダプタ300,301が被検査管200から抜けることを抑制することができる。
【0087】
これに対して、第1実施形態において被検査管200を締め付けるリングクランプ332は、その構造によっては、図7の矢印で示すように、被検査管200に対して局所的に強い圧接力を生じさせ得るが、他の部分における圧接力が弱くなることもあり得る。また、第2実施形態において被検査管200を締め付けるクランプ部322の両端部324,325の間には、図4に示すように空間が形成されており、この空間に対応する位置における圧接力は、弱くなりやすい。このように、第1実施形態及び第2実施形態では、圧接力が弱くなる部分を生じ得るが、第3実施形態の管アダプタ300,301は、このような欠点を改善している。
【0088】
上述の如く、第3実施形態の管アダプタ300,301は、第1実施形態及び第2実施形態の管アダプタ300,301と比べて、被検査管200を強い力で締め付けることができ、被検査管200から抜けにくくなっている。このため、被検査管200が長く、ポンプ123に対して高い送水圧が要求されるような検査現場には、第3実施形態の管アダプタ300,301は、好適に利用可能である。特に、長い被検査管200が上下方向に延設している場合、被検査管200の下端に取り付けられる管アダプタ301には、比較的大きな水頭圧がかかる。しかし、第3実施形態の管アダプタ301は、この水頭圧に抗して、被検査管200に取り付けられた状態を維持することができる。
【0089】
また、第3実施形態の管アダプタ300,301は、被検査管200から抜けにくくなっているが、管アダプタ300,301が耐え得る水圧以上の水圧が被検査管200にかかる検査現場もあり得る。このような場合、被検査管200を切断することによって、いくつかの検査対象部分に分け、これらの検査対象部分それぞれについて、超音波探傷が行われ得る。すなわち、被検査管200をいくつかの検査対象部分に分けることによって、超音波探傷の際に必要とされるポンプ123の送水圧を下げることができる。
【0090】
超音波探傷の際には、各検査対象部分の両端部に第3実施形態の管アダプタ300,301が取り付けられ得る。これらの管アダプタ300,301は、上述の如く、比較的高い水圧に抗することができるので、各検査対象部分にある程度高い水圧の水流を流し込むことが許容される。言い換えると、各検査対象部分がある程度長くなる結果、第3実施形態の管アダプタ300,301にかかる水圧が高くなっても、これらの管アダプタ300,301は、このような水圧に抗して各検査対象部分に取り付けられた状態を維持することができる。このため、各検査対象部分をある程度長くすることが許容され、被検査管200における切断箇所を減らすことができる。この結果、超音波探傷作業の労力が低減される。
【0091】
第1実施形態乃至第3実施形態の管アダプタ300,301のいずれが用いられるかは、ポンプ123の送水圧に基づいて決定されていてもよい。たとえば、検査時の水圧があまり高くなければ、第1実施形態又は第2実施形態の管アダプタ300,301が用いられてもよい。特に、第2実施形態の管アダプタ300,301は、被検査管200への取付に際して操作される部分(すなわち、締結部330)は、1カ所であり、被検査管200への管アダプタ300,301の取付にかかる労力を低減できる点で有利である。
【0092】
図5に示す管アダプタ300は、端押圧部357と固定筒部351との間に2つの中間押圧部358,359及びシールリング364,366が配置されている。代替的に、端押圧部357と固定筒部351との間には、3以上の中間押圧部と3以上のシールリングとが設けられてもよい。中間押圧部及びシールリングを増やせば増やすほど、弾性リング352を越えて漏れ出る水に対するシール機能及び被検査管200からの管アダプタ300の抜け出し防止機能が向上する。
【0093】
被検査管200に流入する水流の圧力が小さければ、図8に示すように、単一の中間押圧部358と単一のシールリング364とが設けられてもよい。また、弾性リング352で漏水を十分に抑制でき、且つ、被検査管200から管アダプタ300が抜け出さなければ、図9に示すように、中間押圧部及びシールリングは、省略されてもよい。
【0094】
<第4実施形態>
第1実施形態の管アダプタ300は、上述の如く、リングクランプ332の性能によっては、被検査管200に対する圧接力が不均一になり得る。このため、締結部330,331としてリングクランプ332以外の部品が用いられてもよい。たとえば、図10に示すように、締結部330は、雄ネジ管体335と、一対の螺合管体336,337と、一対のスリーブ338,339と、を有していてもよい。なお、図10に示す管アダプタ300において、カプラ310、連結部320及びインナーリング340は、第1実施形態の管アダプタ300のカプラ310、連結部320及びインナーリング340と同一である。
【0095】
雄ネジ管体335は、連結部320の軸方向の中央部分に取り付けられている。詳細には、雄ネジ管体335は、この中央部分において連結部320の径方向外側に配置されている。雄ネジ管体335の外周面には、雄ネジ管体335の全長に亘って雄ネジが形成されている。
【0096】
スリーブ338,339は、雄ネジ管体335を連結部320の軸方向に挟むように連結部320に対して外嵌されている。詳細には、スリーブ338は、被検査管200に径方向に重なる位置で、連結部320の先端側部分に対して外嵌されている。また、スリーブ339は、カプラ310に径方向に重なる位置で、連結部320の基端側に対して外嵌されている。
【0097】
これらのスリーブ338,339及び連結部320は、螺合管体336,337が取り付けられる前においては直管状である。螺合管体336,337がこれらのスリーブ338,339を介して連結部320に対して外嵌されると、これらのスリーブ338,339及び連結部320は、図10に示すように、螺合管体336,337の内部形状に合わせて変形可能である。
【0098】
螺合管体336,337は、図10において左右対称的に連結部320に取り付けられている。螺合管体336は、連結部320を被検査管200に圧接するために設けられている一方で、螺合管体337は、連結部320をカプラ310に圧接するために設けられている。螺合管体336,337は、互いに同じ構造を有しているので、螺合管体336についてのみ、以下に説明する。
【0099】
螺合管体336は、雄ネジ管体335の雄ネジに螺合可能に形成された雌ネジを内周面に有している螺合変位部372と、連結部320の軸方向において螺合変位部372と一体的に形成された締結環部373と、を有している。なお、締結環部373の内周面には、雌ネジは形成されていない。
【0100】
螺合変位部372は、雄ネジ管体335に締め込まれると、連結部320の基端方向(カプラ310側)に変位するように構成されている。締結環部373は、螺合変位部372と一体的に形成されているので、螺合変位部372が雄ネジ管体335に締め込まれると、螺合変位部372と一体的に連結部320の基端方向(カプラ310側)に変位する。この締結環部373の内径は、締結環部373と螺合変位部372との接続部分の近くにおいて大きく、この接続部分とは反対側の端部に近づくにつれて徐々に小さくなっている。このため、締結環部373は、螺合変位部372の変位に伴って、連結部320の外周面を径方向外側から押圧する。
【0101】
締結環部373は、螺合変位部372と一体的に形成されているので、螺合変位部372が雄ネジ管体335に締め付けられるときに、締結環部373は、螺合変位部372とともに連結部320回りに回転する。このとき、仮に、締結環部373が連結部320に強い摩擦力を作用させれば、連結部320の捩れ変形を引き起こし得る。この捩れ変形を抑制するために、締結環部373の内周面と連結部320の外周面との間にスリーブ338が配置されている。
【0102】
締結環部373は、螺合変位部372との接続部の近くにおいて、非圧縮状態のスリーブ338の外径よりも大きな内径を有しているが、この部分を除いて、締結環部373の内径は、非圧縮状態のスリーブ338の外径よりも小さくなっている。このため、この小さな内径部分にスリーブ338が嵌合すると、スリーブ338は、連結部320とともに径方向内方に締結環部373によって圧縮変形される。スリーブ338において締結環部373によって圧縮変形される部分は、締結環部373から強い圧接力を受けるため、スリーブ338は、締結環部373との間で生ずる摩擦力ができるだけ小さくなるように形成されていることが好ましい。詳細には、締結環部373及びスリーブ338は、締結環部373の内周面とスリーブ338の外周面との間の摩擦力がスリーブ338の内周面と連結部320の外周面との間の摩擦力よりも小さくなるように形成されている。
【0103】
管アダプタ300を被検査管200に取り付けるときには、まず、螺合管体336が被検査管200側に配置される。その後、被検査管200、連結部320及びカプラ310の接続作業が行われる。このとき、連結部320は、雄ネジ管体335及びスリーブ338,339が取り付けられた状態でカプラ310及び被検査管200に接続される。なお、カプラ310及び被検査管200に対する連結部320の取付手順は、雄ネジ管体335及びスリーブ338,339が連結部320に取り付けられた状態になっていることを除いて、第1実施形態で説明したものと同じである。
【0104】
その後、螺合管体336の螺合変位部372が雄ネジ管体335に対して先端側から螺合される。また、螺合管体337の螺合変位部372が雄ネジ管体335に対して基端側から螺合される。この結果、螺合管体336,337は、互いに接近するように、連結部320の軸方向に変位する。
【0105】
このとき、螺合管体336,337の締結環部373は、螺合変位部372と一体的に形成されているので、螺合変位部372とともに連結部320回りに回転しながら連結部320の軸方向に変位する。この軸方向の変位の結果、締結環部373は、スリーブ338を介して連結部320に対して外嵌された状態になり、連結部320の外周面を径方向外側から押圧する。
【0106】
また、螺合変位部372と雄ネジ管体335との螺合長さが大きくなるにつれて、締結環部373とスリーブ338との嵌合長さも大きくなる。この嵌合長さが大きくなるにつれて、スリーブ338及び連結部320の圧縮変形量が徐々に増加する。この結果、連結部320は、被検査管200に強い力で圧接される。また、連結部320の基端側部分は、螺合管体337の締結環部373によって、カプラ310に強い力で圧接される。
【0107】
なお、螺合変位部372が雄ネジ管体335に螺合されるとき、スリーブ338と締結環部373との間の摩擦力は比較的小さくなっているので、締結環部373は、スリーブ338の外周面上を滑りながら回転することができる。このため、連結部320の捩れ変形は、抑制され得る。
【0108】
図10に示す管アダプタ300は、連結部320を被検査管200及びカプラ310に周方向において略均一な圧接力で圧接させることができる。このため、被検査管200に供給される水流が高い圧力を有していても、管アダプタ300は、この高い圧力に抗して、被検査管200に取り付けられた状態を維持することができる。
【0109】
第4実施形態では、スリーブ338,339を用いて、連結部320の捩れ変形が抑制されている。代替的に、連結部320の捩れ変形の問題が生じなければ、スリーブ338,339は、省略されてもよい。
【0110】
<第5実施形態>
第4実施形態の管アダプタ300は、被検査管200への取付時における連結部320の捩れ変形を抑制するために、スリーブ338,339を有している。代替的に、連結部320の捩れ変形を抑制するために、管アダプタ300は、図11に示すように構成されてもよい。図11に示す管アダプタ300は、連結部320に接触する部分(すなわち、締結環部374,375)が連結部320回りに回転しないように構成されている。
【0111】
締結環部374は、連結部320の先端側部分を圧縮するために設けられており、他方の締結環部375は、連結部320の基端側部分を圧縮するために設けられている。雄ネジ管体335は、連結部320との間で、締結環部374,375を径方向に挟むように構成されている。言い換えると、雄ネジ管体335は、連結部320の外径よりも大きな内径を有しており、連結部320との間に環状空間379を形成している。この環状空間379に、締結環部374,375が差し込まれている。なお、雄ネジ管体335は、雄ネジ管体335の基端部分が径方向においてカプラ310の先端部分に重なるように配置されている。
【0112】
締結環部374は、環状空間379に連結部320の先端側から挿入され、他の締結環部375は連結部320の基端側から環状空間379に挿入される。このとき、締結環部374は、被検査管200に径方向において重なる位置に配置されている。一方、締結環部375は、カプラ310の先端部分に径方向において重なる位置に配置されており、締結環部374に対して図11において左右対称的になっている。
【0113】
締結環部374は、取付時において、連結部320の基端方向に変位される。締結環部374は、この変位に伴って、連結部320を径方向内方に徐々に圧縮するように構成されている。詳細には、締結環部374の内径は、連結部320の基端側から先端側に向かう方向において徐々に小さくなっている。
【0114】
連結部320の基端側における締結環部374の端部は、非圧縮状態の連結部320の外径に略等しい内径を有しており、環状空間379に差し込まれる。一方、残りの部分の内径は、非圧縮状態の連結部320の外径よりも小さくなっている。この小さな内径の部分が連結部320と嵌合した状態になると、連結部320は、締結環部374によって径方向内方に圧縮された状態になる。なお、図11に示す状態では、締結環部374は、全長に亘って連結部320と嵌合した状態になっている。
【0115】
締結環部374,375を環状空間379に連結部320の軸方向に押し込むために、螺合変位部376,377が締結環部374,375とは別体に設けられている。螺合変位部376の内周面には、雄ネジ管体335の先端側部分に螺合する雌ネジが形成されている。また、螺合変位部376の端部(連結部320の先端側の端部)は、締結環部374の端部(連結部320の先端側の端部)と係合可能に形成されている。螺合変位部377は、螺合変位部376とは、図11において左右対称的な構造を有している。
【0116】
管アダプタ300を被検査管200に取り付けるときには、雄ネジ管体335に対する螺合変位部376,377の螺合を緩めた状態で、連結部320、被検査管200及びカプラ310が連結される。なお、カプラ310及び被検査管200に対する連結部320の取付手順は、雄ネジ管体335,締結環部374,375及び螺合変位部376,377が連結部320に取り付けられた状態になっていることを除いて、第1実施形態で説明したものと同じである。
【0117】
連結部320、被検査管200及びカプラ310の連結が完了すると、螺合変位部376,377が雄ネジ管体335に締め付けられる。この結果、螺合変位部376は、連結部320の基端方向に変位する一方で、螺合変位部377は、連結部320の先端方向に変位する。螺合変位部376,377は、締結環部374,375の端部に係合しているので、締結環部374,375は、螺合変位部376,377とともに連結部320の軸方向に変位して環状空間379に押し込まれる。締結環部374,375が環状空間379に押し込まれるにつれて、連結部320は、締結環部374,375によって径方向内方に圧縮される。このとき、連結部320は、全周に亘って締結環部374,375に接触した状態になっており、締結環部374,375から略均一な圧接力で圧接される。このため、被検査管200に供給される水流が高い圧力を有していても、管アダプタ300は、この高い圧力に抗して、被検査管200に取り付けられた状態を維持することができる。
【0118】
図11に示す管アダプタ300の締結環部374,375は、管アダプタ300の取付に際して、連結部320回りに回転することなく、連結部320の軸方向に変位する。このため、連結部320の捩れ変形は生じにくくなっている。したがって、第4実施形態の管アダプタ300のスリーブ338,339に相当する部品は設けられていない。なお、連結部320の軸方向における締結環部374,375の変位を容易にするために、スリーブ338,339に相当する部品が締結環部374,375と連結部320との間に介挿されてもよい。
【0119】
連結部320の軸方向に部品を変位させつつ、連結部320を締め付ける構造として、図12に示す管アダプタ300も考えられる。
【0120】
図12に示す管アダプタ300は、雄ネジ管体335、螺合変位部376、内環状楔部381、外環状楔部382及び抑制リング383を有している。内環状楔部381は、外環状楔部382に対して径方向内側に配置されており、外環状楔部382を伴って楔構造を形成している。抑制リング383は、外環状楔部382の拡径変形を抑制するために設けられている。
【0121】
内環状楔部381は、連結部320に対して外嵌されており、雄ネジ管体335に対して基端側に並んで配置されている。また、内環状楔部381は、外環状楔部382から径方向において内方の外力を受けて縮径変形可能に構成されている。内環状楔部381の外径は、連結部320の基端側ほど大きくなっている。言い換えると、内環状楔部381の肉厚は、連結部320の基端側ほど大きくなっている。
【0122】
抑制リング383は、雄ネジ管体335に螺合した螺合変位部376に対して基端側に隣接した位置において、雄ネジ管体335の径方向外側に配置され、これらを周方向に囲んでいる。詳細には、抑制リング383の内径は、雄ネジ管体335の外径よりも大きくなっており、抑制リング383と、内環状楔部381と、の間に環状空間379が形成されている。抑制リング383の内径は、抑制リング383の全長に亘って略一定であるのに対して、内環状楔部381の外径は、連結部320の基端側に向けて大きくなっているので、環状空間379は、連結部320の基端側に向けて狭くなっている。
【0123】
外環状楔部382は、円筒部385と、円筒部385の先端に設けられた端部384と、を有している。端部384は、螺合変位部376に対して基端側に隣接して配置されているとともに螺合変位部376と係合可能に形成されている。円筒部385は、略一定の肉厚を有している円筒状の部分であり、端部384とは反対側の基端部は、図12に示される状態において、環状空間379内に入り込んでいる。また、円筒部385の残りの部分(円筒部385の基端部を除く部分)は、雄ネジ管体335と抑制リング383とによって径方向に挟まれている。
【0124】
雄ネジ管体335、螺合変位部376、内環状楔部381、外環状楔部382及び抑制リング383によって図12に示すように構成された環状構造体は、図13に示すように2つ用意されて、被検査管200に取り付けられてもよい。
【0125】
これらの環状構造体のうち1つは、連結部320の基端部分をカプラ310に圧接させるために用いられる。この管アダプタ300の螺合変位部376は、雄ネジ管体335に対して締め付けられると、連結部320の基端側に向けて変位する。このとき、螺合変位部376は、抑制リング383及び外環状楔部382を基端側に押し出し、外環状楔部382は、環状空間379内で基端側に変位する。この結果、外環状楔部382と内環状楔部381との嵌合長さが徐々に増していく。環状空間379は、基端側に向けて狭くなっているので、上述の嵌合長さが増えるにつれて、外環状楔部382は、強い力で内環状楔部381を径方向外側から押圧し、内環状楔部381は、径方向において内方に外力を受けて縮径変形する。この縮径変形により、内環状楔部381は、連結部320の外周面を径方向外側から押圧し、連結部320は、カプラ310に圧接される。このとき、抑制リング383は、外環状楔部382に対して外嵌された状態になっているので、内環状楔部381からの反力による外環状楔部382の拡径変形は、抑制リング383によって抑制される。
【0126】
他方の環状構造体は、連結部320の先端部分を被検査管200に圧接させるために用いられる。この管アダプタ300は、図13において、基端側の管アダプタ300とは反対向きに取り付けられているが、基端側の管アダプタ300と同じ向きに取り付けられていてもよい。
【0127】
なお、被検査管200へ導入される水流が高い場合、図13に示す管アダプタ300よりも高い圧接力を被検査管200に加えることが要求されることも考えられる。この場合には、図14に示すように、多数の環状構造体が被検査管200に取り付けられてもよい。
【0128】
図12乃至図14に示す管アダプタ300は、抑制リング383を有している。しかし、この抑制リング383は、外環状楔部382の剛性が内環状楔部381からの反力に抗して拡径変形しない程度に高ければ省略可能である。
【0129】
第1実施形態乃至第5実施形態において、インナーリング340は、被検査管200との継ぎ目及びカプラ310との継ぎ目に段差が生じないように形成されているが、ある程度の大きさの段差は、許容され得る。すなわち、被検査管200へのプローブ110の導入及び被検査管200からのプローブ110の引き抜きを阻害しない程度の大きさの段差は許容され得る。したがって、インナーリング340は、被検査管200との継ぎ目及びカプラ310との継ぎ目における段差を、プローブ110の導入及び引き抜きを阻害しない程度まで抑制するように形成されればよい。
【0130】
(効果等)
上述の実施形態に係る管アダプタ300,301は、以下の特徴を有しているとともに、以下の効果を奏する。
【0131】
上述の実施形態の一局面に係る管アダプタは、水流の力を利用して送り出される超音波探傷用のプローブが挿入されて超音波探傷される被検査管に取り付け可能に構成されている。管アダプタは、被検査管へプローブを案内する導入管の先端部に取り付けられるカプラと、カプラを被検査管に連結するように、カプラが基端側から挿入可能であるとともに先端側から被検査管が挿入可能に構成された連結部と、連結部が被検査管を外側から締め付けるように連結部に締結力を付与する締結部と、カプラの先端と被検査管との間に配置されたインナーリングと、を備えている。インナーリングは、カプラの先端との継ぎ目及び被検査管との継ぎ目で段差が発生することを抑制するように形成された内周面を有している。
【0132】
上述の構成によれば、カプラが連結部にその基端側から挿入され、被検査管が連結部にその先端側から挿入された状態で、締結部が連結部に締結力を付与すると、連結部は、被検査管を外側から締め付ける。連結部が被検査管を外側から締め付けることにより、被検査管に連結部が取り付けられるので、締結部の締結力が増せば増すほど、被検査管に対する連結部の取付強度は高くなり、水圧により被検査管から管アダプタが外れることが防止される。このため、外径においてある程度相違している他の管体に対しても、管アダプタを取り付けることが許容される。すなわち、被検査管ごとに専用の管アダプタを用意する必要はない。したがって、管アダプタは、高い汎用性を有している。
【0133】
被検査管の内径が、カプラの内径と相違している場合には、仮に、被検査管にカプラの先端が当接された状態でこれらが連結されれば、これらの内径差によって段差が生じ得る。この段差は、カプラから被検査管へのプローブの挿入又は被検査管からカプラへのプローブの引き抜きを妨げ得る。このような段差の発生を抑制するために、インナーリングが被検査管とカプラの先端との間に配置されている。インナーリングの内周面は、カプラの先端との継ぎ目及び被検査管との継ぎ目で段差が発生することを抑制するように形成されているので、被検査管とカプラとの間でのプローブの挿入及び引き抜きが円滑に行われ得る。
【0134】
上述の構成に関して、管アダプタは、インナーリングと交換可能な他のインナーリングを更に備えていてもよい。他のインナーリングは、カプラ側の一端においてインナーリングと同じ内径を有している一方で、他端においてインナーリングの内径よりも小さな又は大きな内径を有していてもよい。
【0135】
複数の被検査管に対して超音波探傷を行う場合において、これらの被検査管の内径が相違していることが想定される。この場合、一の被検査管について被検査管の接続端との間で段差を生じないインナーリングであっても、このインナーリングがこの被検査管よりも小さな又は大きな内径を有している他の被検査管に用いられた場合には段差が生じうる。このため、上述の構成では、他のインナーリングが利用可能になっている。他のインナーリングは、カプラ側の端部では、カプラとの継ぎ目で段差が発生することを抑制するインナーリングと同じ内径を有しているので、他のインナーリングも、カプラとの継ぎ目では段差を生じにくい。また、この端部とは反対側では、他のインナーリングは、インナーリングの内径よりも小さな又は大きな内径を有しているので、比較的小さな又は大きな内径を有している他の被検査管に他のインナーリングが連結されたときには大きな段差を生じにくい。このため、インナーリングを交換するだけで、大きな段差を生ずることなく管アダプタを他の被検査管に取り付けることが可能になる。
【0136】
上述の構成に関して、カプラは、被検査管とカプラの先端とでインナーリングを軸方向に圧縮する位置まで連結部に螺合可能であってもよい。インナーリングは、軸方向に圧縮された状態で、カプラの先端との継ぎ目及び被検査管との継ぎ目からの漏水を抑制するシール機能を発揮するように構成されていてもよい。
【0137】
上述の構成によれば、カプラは、被検査管とカプラの先端とでインナーリングを軸方向に圧縮する位置まで連結部に螺合される。インナーリングが軸方向に圧縮された状態では、インナーリングの両端は、カプラの先端と被検査管とに圧接され、インナーリングは、カプラの先端との継ぎ目及び被検査管との継ぎ目からの漏水、ひいては、探傷作業時における水の浪費を抑制することができる。
【0138】
上述の構成に関して、連結部は、弾性材料により形成されていてもよい。
【0139】
上述の構成によれば、連結部は、弾性材料により形成されているので、連結部の内径が被検査管の外径よりも小さくとも、連結部を拡径変形させて被検査管に取り付けることが許容され得る。
【0140】
上述の構成に関して、締結部は、連結部を締め付けるように構成されたリングクランプを含んでいてもよい。
【0141】
上述の構成によれば、リングクランプで連結部を締め付けることにより、この締め付け部分では、連結部は、径方向に収縮し、被検査管に固定される。また、リングクランプが緩められれば、連結部は、弾性材料により形成されているので復元する。このため、他の被検査管に対して超音波探傷を行う場合には、連結部を交換することなく管アダプタを他の被検査管に取り付けることが許容される。
【0142】
上述の構成に関して、締結部は、外周面に雄ネジが形成されており、連結部の径方向外側に配置される雄ネジ管体と、雄ネジ管体の雄ネジに螺合される雌ネジを有し、雌ネジが雄ネジに締め込まれることによって連結部の軸方向に変位する螺合変位部と、連結部の軸方向における螺合変位部の変位に伴って連結部の軸方向に変位しながら連結部の外周面を径方向外側から押圧する締結環部と、を有していてもよい。
【0143】
上述の構成によれば、雄ネジ管体の外周面に形成された雄ネジに螺合変位部の雌ネジが締め付けられると、螺合変位部は、連結部の軸方向に変位する。螺合変位部のこの変位に伴って、締結環部も連結部の軸方向に変位する。このとき、締結環部は、連結部の外周面を径方向外側から押圧するので、連結部は、径方向に圧縮され、被検査管に圧接される。
【0144】
上述の構成に関して、締結環部は、螺合変位部と一体的に形成されていてもよい。
【0145】
上述の構成によれば、締結環部は、螺合変位部と一体的に形成されているので、螺合変位部が雄ネジ管体に締め付けられると、締結環部は、螺合変位部とともに連結部の軸方向に変位することができる。また、螺合変位部及び締結環部は、2つの部品ではなく、単一の部品を構成するので、管アダプタの構成部品は少なくなる。
【0146】
上述の構成に関して、連結部と締結環部との間にスリーブが配置されていてもよい。スリーブは、スリーブの内周面と連結部の外周面との間の摩擦力よりもスリーブの外周面と締結環部の内周面との間の摩擦力が小さくなるように形成されていてもよい。締結環部は、スリーブを介して連結部の外周面を径方向外側から押圧してもよい。
【0147】
上述の構成によれば、締結環部が螺合変位部と一体的に形成されているので、螺合変位部が雄ネジ管体に締め付けられるときには、締結環部は、連結部回りに回転しながら、スリーブを介して連結部の外周面を径方向外側から押圧する。このとき、スリーブの内周面と連結部の外周面との間の摩擦力よりもスリーブの外周面と締結環部の内周面との間の摩擦力が小さくなっているので、締結環部は、スリーブの外周面上で滑りながら連結部回りに回転し得る。このため、連結部の捩れ変形が抑制される。
【0148】
上述の構成に関して、締結環部は、螺合変位部と別体に形成されているとともに、螺合変位部が雄ネジ管体に締め込まれたときに螺合変位部の変位方向に螺合変位部によって押されるように螺合変位部と係合していてもよい。雄ネジ管体は、変位方向における締結環部の端部が差し込まれる環状空間を連結部との間に形成するように構成されていてもよい。締結環部は、螺合変位部によって環状空間に押し込まれて連結部の外周面を径方向外側から押圧してもよい。
【0149】
上述の構成によれば、締結環部は、螺合変位部と別体に形成されており、螺合変位部によって螺合変位部の変位方向(すなわち、連結部の軸方向)に押されるように螺合変位部と係合している。このため、締結環部は、連結部回りに回転することなく、連結部の軸方向に変位することができる。この変位方向における締結環部の端部は、雄ネジ管体と連結部との間の環状空間に差し込まれており、この環状空間に締結環部が押し込まれるにつれて、連結部は、締結環部によって径方向に圧縮されて、被検査管に圧接される。
【0150】
上述の構成に関して、締結部は、外周面に雄ネジが形成されており、連結部の径方向外側に配置される雄ネジ管体と、雄ネジ管体の雄ネジに螺合される雌ネジを有し、雌ネジが雄ネジに締め込まれることによって連結部の軸方向に変位する螺合変位部と、螺合変位部が連結部の軸方向に変位しているときに螺合変位部によって押圧されて連結部の軸方向に変位する外環状楔部と、外環状楔部が連結部の軸方向に変位しているときに、外環状楔部によって径方向外側から押圧されながら連結部の外周面を径方向外側から押圧する内環状楔部と、を有していてもよい。
【0151】
上述の構成によれば、雄ネジ管体への螺合変位部の締め付けによって螺合変位部が連結部の軸方向に変位すると、外環状楔部は、螺合変位部によって押圧されて外環状楔部も連結部の軸方向に変位する。このとき、外環状楔部は、内環状楔部を径方向外側から押圧し、内環状楔部を縮径変形させる。この結果、内環状楔部は、連結部の外周面を径方向外側から押圧し、連結部は、被検査管に圧接される。
【0152】
上述の構成に関して、管アダプタは、外環状楔部の径方向外側に配置されて、外環状楔部の拡径変形を抑制する抑制リングを更に備えていてもよい。
【0153】
上述の構成によれば、外環状楔部は、内環状楔部からの反力により拡径変形しようとするが、この拡径変形は、抑制リングによって抑制される。このため、内環状楔部を縮径変形させる外環状楔部の能力が上がる。
【0154】
上述の構成に関して、連結部は、カプラに固定された固定筒部と、被検査管の周方向において間隔を空けて互いに対向している両端部を有しているとともに、被検査管を周方向に囲むように形成されたクランプ部と、を有していてもよい。締結部は、クランプ部の両端部の間隔を狭めてクランプ部を径方向に収縮させる締結ネジを含んでいてもよい。
【0155】
上述の構成によれば、作業者が締結ネジを締めると、クランプ部の両端部の間隔が狭められる。この結果、クランプ部は、径方向に収縮するように変形し、被検査管を締め付けるので、連結部は、強い力で被検査管に取り付けられる。このとき、連結部の固定筒部にはカプラの先端が固定されているので、カプラと被検査管とが連結された状態が得られる。締結ネジが緩められれば、被検査管に対するクランプ部の締め付けがなくなるので、管アダプタは、被検査管から容易に取り外される。
【0156】
上述の構成に関して、連結部は、カプラに固定された固定筒部と、被検査管が嵌入した状態で固定筒部と被検査管とを連結可能に構成された弾性リングと、を有していてもよい。固定筒部の先端面には、弾性リングを収容する環状凹部が形成されていてもよい。締結部は、被検査管に沿って移動可能な状態で固定筒部との間で弾性リングを軸方向に挟むように被検査管が挿入された押圧部と、押圧部を弾性リングに押し付けるように押圧部に軸方向の力を付与するように構成された力付与部と、を有していてもよい。弾性リングは、押圧部と固定筒部とにより軸方向に圧縮変形されて環状凹部と被検査管の外周面とに圧接されることにより、固定筒部と被検査管とを連結してもよい。
【0157】
上述の構成によれば、固定筒部がカプラに固定されている一方で、弾性リングは、被検査管が嵌入した状態で固定されている。弾性リングは、固定筒部に設けられた環状凹部に収容されており、固定筒部と押圧部とにより軸方向に挟まれている。力付与部が軸方向の力を押圧部に付与すると、弾性リングは、固定筒部と押圧部とにより軸方向に圧縮変形される。この圧縮変形量分だけ、弾性リングは、軸方向以外の方向に膨張しようとするため、弾性リングを収容している環状凹部及び被検査管の外周面に圧接された状態になる。この状態では、弾性リングと環状凹部との間及び弾性リングと被検査管との間で高い摩擦力が生ずる。この摩擦力によって、固定筒部が被検査管に対して軸方向に移動することが妨げられる。言い換えると、固定筒部は、弾性リングを介して、被検査管に固定される。また、弾性リングは、被検査管の外周面と固定筒部とに圧接された状態になっているので、被検査管とインナーリングとの継ぎ目から漏れ出た水に対してシール機能を発揮し得る。
【0158】
上述の構成に関して、力付与部は、作業者によって操作される頭部がカプラの基端側に向いた姿勢で被検査管及びカプラの外側で固定筒部に挿通されているとともに押圧部に螺合する締結ネジを含んでいてもよい。
【0159】
上述の構成によれば、作業者が締結ネジの頭部を操作して締結ネジを締めることにより、弾性リングを押圧部と固定筒部とにより軸方向に圧縮することができる。この作業において、締結ネジは、カプラの基端側に向いているので、作業者は、カプラを配設するために設けられた作業空間内で締結ネジを締める作業を行うことができる。このため、仮に、被検査管の隣で被検査管と平行に他の管体が延設されていたとしても、作業者は、この管体に妨げられることなく、締結ネジを締めることができる。
【0160】
上述の構成に関して、押圧部は、固定筒部から軸方向に離間した位置で被検査管に取り付けられた端押圧部と、端押圧部と固定筒部との間の位置で被検査管に取り付けられた中間押圧部と、を有していてもよい。管アダプタは、端押圧部と中間押圧部とによって軸方向に挟まれる位置で被検査管に取り付けられた弾性変形可能なシールリングを更に備えていてもよい。中間押圧部は、力付与部の軸方向の力により、弾性リングを軸方向に圧縮するとともにシールリングを端押圧部との間で軸方向に圧縮し、端押圧部、中間押圧部及び被検査管にシールリングを圧接させていてもよい。
【0161】
上述の構成によれば、力付与部が軸方向の力を付与すると、中間押圧部は、弾性リングを軸方向に圧縮し、弾性リングは、固定筒部と被検査管とに圧接されてこれらを連結する。このとき、シールリングも、中間押圧部及び端押圧部によって軸方向に圧縮され、端押圧部、中間押圧部及び被検査管に圧接される。この状態では、シールリングは、被検査管から漏出した水に対してシール機能を発揮し得る。
【0162】
上述の構成に関して、押圧部は、固定筒部から軸方向に離間した位置で被検査管に取り付けられた端押圧部と、端押圧部と固定筒部との間で軸方向に並ぶように被検査管に取り付けられた複数の中間押圧部と、を有していてもよい。管アダプタは、端押圧部と端押圧部に隣り合う位置にある中間押圧部とに挟まれる位置で被検査管に取り付けられたシールリングと、互いに隣り合う中間押圧部に挟まれる位置で被検査管に取り付けられた他のシールリングと、を更に備えていてもよい。固定筒部に隣り合う位置にある中間押圧部は、力付与部の軸方向の力により、弾性リングを軸方向に圧縮してもよい。端押圧部に隣り合う位置にある中間押圧部は、力付与部の軸方向の力により、シールリングを軸方向に圧縮し、端押圧部、中間押圧部及び被検査管にシールリングを圧接させてもよい。互いに隣り合う中間押圧部は、力付与部の軸方向の力により、他のシールリングを軸方向に圧縮し、互いに隣り合う中間押圧部及び被検査管に他のシールリングを圧接させてもよい。
【0163】
上述の構成によれば、端押圧部と固定筒部との間に複数の中間押圧部があるので、隣り合う中間押圧部の間に他のシールリングを配置することができる。他のシールリングは、力付与部の軸方向の力により、軸方向に圧縮されて、互いに隣り合う中間押圧部及び被検査管に圧接される。この状態では、他のシールリングも、被検査管から漏出した水に対してシール機能を発揮し得る。
【産業上の利用可能性】
【0164】
上述の管アダプタは、被検査管の超音波探傷に好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0165】
110・・・・・・・・・・・・・プローブ
130・・・・・・・・・・・・・導入管
200・・・・・・・・・・・・・被検査管
300,301・・・・・・・・・管アダプタ
310・・・・・・・・・・・・・カプラ
320・・・・・・・・・・・・・連結部
321,351・・・・・・・・・固定筒部
322・・・・・・・・・・・・・クランプ部
330・・・・・・・・・・・・・締結部
331・・・・・・・・・・・・・締結部
332・・・・・・・・・・・・・リングクランプ
335・・・・・・・・・・・・・雄ネジ管体
340・・・・・・・・・・・・・インナーリング
352・・・・・・・・・・・・・弾性リング
353・・・・・・・・・・・・・環状凹部
355・・・・・・・・・・・・・押圧部
356・・・・・・・・・・・・・力付与部
357・・・・・・・・・・・・・端押圧部
358,359・・・・・・・・・中間押圧部
363・・・・・・・・・・・・・環状凹部
364,366・・・・・・・・・シールリング
370・・・・・・・・・・・・・頭部
371・・・・・・・・・・・・・締結ネジ
372・・・・・・・・・・・・・螺合変位部
373,374,375・・・・・締結環部
376,377・・・・・・・・・螺合変位部
379・・・・・・・・・・・・・環状空間
381・・・・・・・・・・・・・内環状楔部
382・・・・・・・・・・・・・外環状楔部
【要約】
【課題】検査対象側の物理的な特性によらず検査対象の被検査管に強い力で接続可能であるとともに接続部分に段差を生じさせない管アダプタを提供することを目的とする。
【解決手段】本出願は、超音波探傷される被検査管に取り付けられる管アダプタを開示する。管アダプタは、被検査管へ超音波探傷用のプローブを案内する導入管の先端部に取り付けられたカプラと、カプラ及び被検査管が挿入可能に形成されてカプラと被検査管とを連結する連結部と、連結部が被検査管を締め付けるように連結部に締結力を付与する締結部と、カプラの先端と被検査管の接続端との間に配置されてカプラと被検査管とによって軸方向に挟まれるインナーリングと、を備えている。インナーリングは、カプラとの間及び被検査管との間で段差を生じないように形成された内周面を有している。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16