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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-24
(45)【発行日】2023-04-03
(54)【発明の名称】棒状化粧料繰り出し容器
(51)【国際特許分類】
   A45D 40/04 20060101AFI20230327BHJP
   A45D 40/20 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
A45D40/04 Z
A45D40/20 G
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020034723
(22)【出願日】2020-03-02
(65)【公開番号】P2021137093
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000140915
【氏名又は名称】株式会社カツシカ
(72)【発明者】
【氏名】湯下 大樹
【審査官】東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-230428(JP,A)
【文献】実開昭56-108808(JP,U)
【文献】特開昭58-198307(JP,A)
【文献】韓国公開実用新案第20-2015-0001172(KR,U)
【文献】特表2017-536139(JP,A)
【文献】特開2006-342874(JP,A)
【文献】実開昭54-045858(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 40/00 - 40/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転筒()とスリーブ()の相対回転により棒状化粧料()を保持した紅皿()を繰り上げ下げする回転繰り出し機構(61~65)を内装した繰り出し機構部()と、該繰り出し機構部()の回転筒()を連結した繰り出し操作部()とから成り、
繰り出し機構部()の回転筒()後部中央に、磁性体若しくは磁石から成る吸着部材()を止着し、
繰り出し操作部()の底部に、前記繰り出し機構部()の吸着部材()に吸着して繰り出し機構部()を保持する磁石(11)を設け、
前記繰り出し操作部()から回転繰り出し機構(61~65)に加わる必要以上の回転トルクを、磁石(11)と吸着部材()の間で空転することにより吸収することを特徴とする棒状化粧料繰り出し容器。
【請求項2】
前記繰り出し機構部()の吸着部材()の周囲に上側ラチェット(44)を設け、前記繰り出し操作部()の磁石(11)の周囲に下側ラチェット(92)を設け、前記吸着部材()と磁石(11)の吸着時、上側ラチェット(44)と下側ラチェット(92)が当接し、
前記繰り出し操作部()から回転繰り出し機構(61~65)に加わる必要以上の回転トルクを、上側ラチェット(44)と下側ラチェット(92)の間で空転することにより吸収することを特徴とする請求項1記載の棒状化粧料繰り出し容器
【請求項3】
前記上側ラチェット(44)の下面全周に、複数の下向き頂点の両側に斜面を有した略三角形状をした下向き歯(441)を凹凸状に設け、下側ラチェット(92)の上面に、前記下向き歯(441)の間の凹部分の形状に倣った形状の上向き歯(921)を少なくとも1個設け、前記吸着部材()と磁石(11)の吸着力の及ぶ範囲で、下向き歯(441)と上向き歯(921)を乗り越え可能に噛み合わせた事を特徴とする請求項2記載の棒状化粧料繰り出し容器。
【請求項4】
前記下側ラチェット(92)の上面全周に、複数の上向き頂点の両側に斜面を有した略三角形状をした上向き歯(921)を凹凸状に設け、上側ラチェット(44)の下面に、前記上向き歯(921)の間の凹部分の形状に倣った形状の下向き歯(441)を少なくとも1個設け、前記吸着部材()と磁石(11)の吸着力の及ぶ範囲で、下向き歯(441)と上向き歯(921)を乗り越え可能に噛み合わせた事を特徴とする請求項2記載の棒状化粧料繰り出し容器。
【請求項5】
前記繰り出し機構部()の吸着部材()の下方に連結穴(45)を設け、繰り出し操作部()に、該連結穴(45)に侵入、嵌合する侵入部(91)を突設し、該侵入部(91)の先端に磁石(11)を止着し、前記下向き歯(441)と上向き歯(921)の乗り越え時も嵌合状態を維持することを特徴とする請求項3または請求項4いずれかの項記載の棒状化粧料繰り出し容器。
【請求項6】
前記吸着部材()と磁石(11)の吸着力を、前記繰り出し機構部()の着脱に利用したことを特徴とする請求項1ないし請求項5いずれかの項記載の棒状化粧料繰り出し容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口紅などの棒状化粧料を収容した棒状化粧料繰り出し容器の改良に関し、繰り出し機構の保護に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、棒状化粧料の上昇、若しくは下降の進退限で、さらに繰り上げ操作若しくは繰り下げ操作をした場合、棒状化粧料を上下動させる繰り出し機構に無理な力が加わり、棒状化粧料を保持した紅皿と、紅皿を上下動させる螺旋との螺合が外れたり、最悪の場合繰り出し機構が破損したりして容器が使用不能となる可能性があった。
【0003】
そこで、特許文献1及び特許文献2に於いて、棒状化粧料の上昇限若しくは下降限に於いて、繰り出し機構に無理な力が加わった場合、空転するトルクリミッター機能を設けた構成が提案されている。この構成は、繰り出し操作部と繰り出し機構部の間の部材間を弾性により押し当て、この摩擦力により繰り出し操作部のトルクを繰り出し機構部に伝達していた。ここで、必要以上のトルクが繰り出し機構部にかかった場合、この部材間が空転し、繰り出し機構部を保護していた。また、この部材間の当接面に、それぞれに噛み合うW字状歯のラチェットを設け、空転時に歯部を乗り越える感触及びノッチ音が使用者に伝えて、不必要な回転操作を防ぐラチェット機能も付加されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-230428号公報
【文献】特開2012-96009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このトルクリミッター機能の要となる部材間を押し付ける押圧力は、部材に切り欠いて成形されたばね片の弾性を利用していた(引用文献1の図21、引用文献2の図7参照)。そのため、この部材自体の構造が複雑になってしまい、結果的にこの部材を、クリープ性(形状が変形しやすい)を有する樹脂で成形せざるを得なかった。したがって、それぞれのラチェット機能もラチェット歯が乗り越える寸前で係止した状態で長時間放置された場合、ばね片がなじんで(変形して)しまい、弾性力が低下してしまう可能性があった。この場合、初期の空転開始トルク値よりも空転開始トルク値が下がり、最悪の場合ラチェット機能が動作しなくなってしまう可能性もあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
回転筒とスリーブの相対回転により棒状化粧料を保持した紅皿を繰り上げ下げする回転繰り出し機構61~65を内装した繰り出し機構部と、この繰り出し機構部の回転筒を連結した繰り出し操作部とから成り、繰り出し機構部の回転筒後部中央に、磁性体若しくは磁石から成る吸着部材を止着し、繰り出し操作部の底部に、前記繰り出し機構部の吸着部材に吸着して繰り出し機構部を保持する磁石11を設け、前記繰り出し操作部から回転繰り出し機構61~65に加わる必要以上の回転トルクを、磁石11と吸着部材の間で空転することにより吸収させる。
【0007】
この繰り出し機構部の吸着部材の周囲に上側ラチェット44を設け、繰り出し操作部の磁石11の周囲に下側ラチェット92を設け、前記吸着部材と磁石11の吸着時、上側ラチェット44と下側ラチェット92が当接し、繰り出し操作部から回転繰り出し機構61~65に加わる必要以上の回転トルクを、上側ラチェット44と下側ラチェット92の間で空転させる。
【0008】
上記構成に於いて、上側ラチェット44の下面全周に、複数の下向き頂点の両側に斜面を有した略三角形状をした下向き歯441を凹凸状に設け、下側ラチェット92の上面に、前記下向き歯441の間の凹部分の形状に倣った形状の上向き歯921を少なくとも1個設け、前記吸着部材と磁石11の吸着力の及ぶ範囲で、下向き歯441と上向き歯921を乗り越え可能に噛み合わせる。
【0009】
または、下側ラチェット92の上面全周に、複数の上向き頂点の両側に斜面を有した略三角形状をした上向き歯921を凹凸状に設け、上側ラチェット44の下面に、前記上向き歯921の間の凹部分の形状に倣った形状の下向き歯441を少なくとも1個設け、前記吸着部材と磁石11の吸着力の及ぶ範囲で、下向き歯441と上向き歯921を乗り越え可能に噛み合わせる。
【0010】
更に、繰り出し機構部の吸着部材の下方に連結穴45を設け、繰り出し操作部に、連結穴45に侵入、嵌合する侵入部91を突設し、侵入部91の先端に磁石11を止着し、前記下向き歯441と上向き歯301~305の乗り越え時も嵌合状態を維持させてもよい。
【0011】
また、前記吸着部材と磁石11の吸着力を、繰り出し機構部の着脱に利用してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明は以上のように、トルクリミッター機能の要となる、繰り出し機構部と繰り出し操作部の部材間を押し当てる押圧力に、吸着部材と磁石11の吸着力を利用しているため、押し当てる特別な構成必要なしに単純な構造でトルクリミッター機能を提供できる。また、本発明のトルクリミッター機能は、押圧力に磁力を利用しているため、この押圧力は減退せずに半永久的に利用できる。
【0013】
また、吸着部材と磁石11の周囲に、上側ラチェット44及び下側ラチェット92を設け、この上側ラチェット44及び下側ラチェット92にそれぞれが噛み合う下向き歯441及び上向き歯921を設ければ、簡単にラチェット機能を付加できる。
【0014】
また、繰り出し機構部の吸着部材の下方に連結穴45を設け、繰り出し操作部に、連結穴45に侵入、嵌合する侵入部91を突設し、侵入部91の先端に磁石11を止着し、前記下向き歯441と上向き歯921の乗り越え時、ラチェット機能作動時も嵌合状態を維持させれば、ラチェット機能作動時も繰り出し機構部と繰り出し操作部の安定した連結が継続できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明実施例1の棒状化粧料繰り出し容器の正面断面図である。
図2】本発明実施例1の棒状化粧料繰り出し容器の繰り下げ降下限での、トルクリミッター機能、ラチェット機能作動時の正面断面図である。
図3】本発明実施例1の棒状化粧料繰り出し容器の、繰り出し機構部単体の正面断面図である。
図4】本発明実施例1の棒状化粧料繰り出し容器の、繰り出し機構部単体の斜視図である。
図5】本発明実施例1の棒状化粧料繰り出し容器の、繰り出し操作部単体の部分断面斜視図である。
図6】本発明実施例2の棒状化粧料繰り出し容器の正面断面図である。
図7】本発明実施例2の棒状化粧料繰り出し容器の繰り下げ降下限での、トルクリミッター機能、ラチェット機能作動時の正面断面図である。
図8】本発明実施例2の棒状化粧料繰り出し容器の、繰り出し機構部単体の正面断面図である。
図9】本発明実施例2の棒状化粧料繰り出し容器の、繰り出し操作部単体の正面断面図である。
図10】本発明その他の実施例1の棒状化粧料繰り出し容器の正面断面図である。
図11】本発明その他の実施例2の棒状化粧料繰り出し容器の正面断面図である。
図12】本発明その他の実施例3の棒状化粧料繰り出し容器の正面断面図である。
【実施例1】
【0016】
本発明実施例1を、図によって説明する。本発明実施例1の棒状化粧料繰り出し容器は、棒状化粧料及び棒状化粧料の回転繰り出し機構61を収納した繰り出し機構部と、この繰り出し機構部を装着して外部に露出する繰り出し操作部より成っている。図1及び図2は繰り出し機構部と繰り出し操作部の合体時、図3及び図4は、繰り出し機構部単体、図5は繰り出し操作部単体をそれぞれ示す。
【0017】
先ず繰り出し機構部の構造について図3により説明する。この繰り出し機構部内には、紅皿、中間ネジ筒、回転筒、及びスリーブより成る回転繰り出し機構61を内蔵している。棒状化粧料の下端を収嵌保持する紅皿は、外側壁に回動防止片21を突設し、スリーブ内に上下摺動可能に内装されている。この紅皿の下端よりは、ネジ棒22が垂下している。このネジ棒22の外周には、棒雄ネジ221を螺設している。この棒雄ネジ221は下端に終端を有している。このネジ棒22は、中間ネジ筒に挿入されている。
【0018】
この中間ネジ筒の上部内壁には、前記ネジ棒22の棒雄ネジ221が螺合する突起状の中間雌ネジ31を設けている。このネジ棒22と中間ネジ筒は、中間雌ネジ31が棒雄ネジ221の終端に当接して脱落しないようになっている。中間ネジ筒の外壁には、中間雄ネジ32を螺設している。この中間雄ネジ32も棒雄ネジ221と同様に、下端に終端を有している。この中間ネジ筒は、回転筒に挿入されている。
【0019】
この回転筒は上下端に開口したパイプ状をしており、上部内壁には、前記中間ネジ筒の中間雄ネジ32が螺合する突起状の回転雌ネジ41を設けている。この中間ネジ筒と回転筒は、回転雌ネジ41が中間雄ネジ32の終端に当接して脱落しないようになっている。この回転筒の外周壁には連結溝42を刻設し、この連結溝42下方外周壁には鍔部43が設けられている。この回転筒の下端面には、図4に示す、上側ラチェット44を設けている。この上側ラチェット44は、複数の下向き頂点の両側に斜面を有した略三角形状をした下向き歯441の組み合わせからなる凹凸状に刻設している。
【0020】
更に、回転筒の下端よりは、下端開口部を塞ぐように吸着部材が挿入止着され、吸着部材下方に連結穴45を構成している。この吸着部材は、鉄などの強磁性体より成っている。この回転筒は、スリーブ下端より回転自在に挿入され、スリーブ下端が鍔部43に当接している。
【0021】
このスリーブの内壁には、前記紅皿の回動防止片21が係合して回動不能に摺動自在に案内する案内溝51を軸線方向に刻設している。また、スリーブ下端内周壁には、前記回転筒の連結溝42に係合してスリーブと回転筒を回動自在に脱落不能に連結する連結凸部52を突設している。本発明実施例1の繰り出し機構部は以上構成である。
【0022】
次に、この繰り出し機構部を装着する繰り出し操作部について図1図2及び図5により説明する。この繰り出し操作部は、外筒、嵌合筒、連結部材及びキャップ10とより成り、外筒、嵌合筒、連結部材が脱落不能に組付けられている。外筒は、有底筒状であり、底部に連結部材を止着している。嵌合筒は両端が開口したパイプ状をしており、外筒内に圧入止着されている。この嵌合筒の下端は、連結部材に当接しており、連結部材を押さえている。この嵌合筒の先端部分は、外筒より上方に突出してキャップ10が抜脱可能に嵌合する嵌合部81になっている。
【0023】
連結部材は、中央部分に侵入部91が突出し、侵入部91の周囲に下側ラチェット92を構成している。この侵入部91及び下側ラチェット92は、図1に示すように、繰り出し操作部に繰り出し機構部を装着した際、侵入部91が繰り出し機構部の連結穴45に侵入し、下側ラチェット92が繰り出し機構部の上側ラチェット44に当接するようになっている。
【0024】
この侵入部91の先端面には、前記繰り出し機構部の吸着部材と吸着する磁石11上面を露出させて埋設している。また、下側ラチェット92には、前記上側ラチェット44の下向き歯441に噛み合う上向き歯921を突設している。この上向き歯921の形状は、上向き頂点の両側に斜面を有した略三角形状で、かつ前記上側ラチェット44の下向き歯441の間の凹部分の形状に倣った形状になっている。この上向き歯921の歯数は、前記下向き歯441と同数になっている。この下向き歯441と上向き歯921の高さは、上側ラチェット44と下側ラチェット92が空転し、下向き歯441と上向き歯921が乗り越える時、吸着部材と磁石11の間がある程度離間するが、この離間の幅は、磁石11の吸着力の及ぶ範囲とする。なお、この吸着部材と磁石11の位置関係は、前記上側ラチェット41と下側ラチェット92の下向き歯441と上向き歯921が当接して完全に噛み合った時、若干の隙間が生じる位置が望ましい。
【0025】
本発明実施例1の棒状化粧料繰り出し容器は以上構成であり、繰り出し機構部を繰り出し操作部に装着すると、図1に示すように繰り出し機構部の吸着部材に繰り出し操作部の侵入部91の磁石11が吸着し、前記上側ラチェット44と下側ラチェット92の下向き歯441と上向き歯921が完全に噛み合い、繰り出し操作部の回動を繰り出し機構部の回転筒に伝達できるようになる。その結果、繰り出し機構部のスリーブと繰り出し操作部の外筒を相対回転すると、繰り出し操作部に連動する繰り出し機構部の回転筒が外筒と同期回転し、スリーブと同期回転する紅皿のネジ棒22に設けられた棒雄ネジ221と回転筒内壁に設けられた回転雌ネジ41間の中間ネジ筒の中間雌ネジ31及び中間雄ネジ32の螺合作用により紅皿が上下摺動するようになっている。
【0026】
更に、図2に示すように、紅皿の上昇限の時、若しくは下降限の時、前記上側ラチェット44と下側ラチェット92の下向き歯441と上向き歯921の噛み合い抵抗を超えて繰り上げ操作、若しくは繰り下げ操作を行うと、下向き歯441と上向き歯921が乗り越え、上側ラチェット44と下側ラチェット92が空転を始める。その結果、繰り出し機構部に破壊的なトルクが加わる前に空転をはじめ、繰り出し機構部を保護する。この時、下向き歯441と上向き歯921が乗り越える感触、乗り越えるノッチ音が使用者に伝わり、棒状化粧料が上昇限、若しくは下降限に達したサインとなる。
【0027】
また、前記繰り出し機構部の連結穴45と、この連結穴45に侵入、嵌合する繰り出し操作部の侵入部91は、ラチェット機能作動時、つまり前記下向き歯441と上向き歯921の乗り越え時も嵌合状態を維持される。そのため、ラチェット機能作動時も繰り出し機構部と繰り出し操作部の安定した連結が継続できる。
【実施例2】
【0028】
次に、本発明実施例2を図によって説明する。本発明実施例2の棒状化粧料繰り出し容器は、図6及び図7に示すように、棒状化粧料を収納した繰り出し機構部と、この繰り出し機構部を装着する繰り出し操作部より成っている。
【0029】
まず、繰り出し機構部について図8によって説明する。この繰り出し機構部内には、紅皿、回転筒、及び螺旋筒12より成る回転繰り出し機構62を内蔵している。棒状化粧料の下端を収嵌保持する紅皿は、外側壁に螺合凸部23を突設し、回転筒内に摺動可能に内装されている。
【0030】
この回転筒は、上下に開口したパイプ状をしており、内壁には、前記紅皿の螺合凸部23が貫通し紅皿を上下摺動自在に回動不能に案内する案内溝51を軸線に長く穿設している。この回転筒の下部外周壁には連結溝42を刻設し、この連結溝42下方外周壁には鍔部43が設けられている。この回転筒の下端面には、上側ラチェット44を設けている。この上側ラチェット44は、複数の下向き頂点の両側に斜面を有した略三角形状をした下向き歯441の組み合わせからなる凹凸状になっている。更に、回転筒の下端よりは、吸着部材が挿入止着され、吸着部材下方に連結穴45を構成している。この吸着部材は、鉄などの強磁性体より成っている。この回転筒の案内溝51の設けられた部位外周に、螺旋筒12を回動自在に保持している。
【0031】
この螺旋筒12の内壁には、前記回転筒の案内溝51を貫通した螺合凸部23が螺合する螺旋溝121を内壁に螺設している。この螺旋筒12は、スリーブ内に脱落不能に止着されている。
【0032】
このスリーブの下端は、前記回転筒の鍔部43に当接している。また、スリーブ下端内周壁には、前記回転筒の連結溝42に係合してスリーブと回転筒を回動自在に脱落不能に連結する連結凸部52を突設している。本発明実施例2の繰り出し機構部は以上構成である。
【0033】
次に、この繰り出し機構部を装着する繰り出し操作部について図9により説明する。この繰り出し操作部は、外筒、嵌合筒、連結部材及びキャップ10とより成り、外筒、嵌合筒、連結部材が脱落不能に組付けられている。外筒は、有底筒状であり、底部に連結部材を止着している。嵌合筒は両端が開口したパイプ状をしており、外筒内に圧入止着されている。この嵌合筒の下端は、連結部材に当接しており、連結部材を押さえている。この嵌合筒の先端部分は、外筒より上方に突出してキャップ10が抜脱可能に嵌合する嵌合部81になっている。
【0034】
連結部材は、中央部分に侵入部91が突出し、侵入部91の周囲に下側ラチェット92を構成している。この侵入部91及び下側ラチェット92は、繰り出し操作部に繰り出し機構部を装着した際、侵入部91が繰り出し操作部の連結穴45に侵入し、下側ラチェット92が繰り出し機構部の上側ラチェット44に当接するようになっている。
【0035】
この侵入部91の先端面には、前記繰り出し機構部の吸着部材と吸着する磁石11を埋設している。また、下側ラチェット92には、前記上側ラチェット44の下向き歯441に噛み合う上向き歯921を突設している。この上向き歯921の形状は、上向き頂点の両側に斜面を有した略三角形状で、かつ前記上側ラチェット44の下向き歯441の間の凹部分の形状に倣った形状になっている。この上向き歯921の歯数は、前記下向き歯441と同数になっている。この下向き歯441と上向き歯921の高さは、図7に示すように、上側ラチェット44と下側ラチェット92が空転し、下向き歯441と上向き歯921が乗り越える時、吸着部材と磁石11の間がある程度離間するが、この離間の幅は、磁石11の吸着力の及ぶ範囲とする。なお、この吸着部材と磁石11の位置関係は、図6に示すように、前記上側ラチェット44と下側ラチェット92の下向き歯441と上向き歯921が当接して完全に噛み合った時、若干の隙間が生じる位置が望ましい。
【0036】
本発明実施例2の棒状化粧料繰り出し容器は以上構成であり、図6に示すように、繰り出し機構部の吸着部材に繰り出し操作部の侵入部91の磁石11が吸着し、前記上側ラチェット44の下向き歯441と下側ラチェット92の上向き歯921が完全に噛み合い、繰り出し操作部の回動を繰り出し機構部の回転筒に伝達できるようになる。その結果、繰り出し機構部のスリーブと繰り出し操作部の外筒を相対回転すると、繰り出し操作部に連動する繰り出し機構部の回転筒が外筒と同期回転し、回転筒と同期回転する紅皿の螺合凸部23とスリーブ内に止着された螺旋筒12内壁に設けられた螺旋溝121の螺合作用により紅皿が上下摺動するようになっている。
【0037】
更に、図7に示すように、紅皿22の上昇限の時、若しくは下降限の時、前記上側ラチェット44と下側ラチェット92の下向き歯441と上向き歯921の噛み合い抵抗を超えて繰り上げ操作、若しくは繰り下げ操作を行うと、下向き歯441と上向き歯921が乗り越え、上側ラチェット44と下側ラチェット92が空転を始める。その結果、繰り出し機構部に破壊的なトルクが加わる前に空転を始め、繰り出し機構部を保護する。この時、下向き歯441と上向き歯921が乗り越える感触、乗り越えるノッチ音が使用者に伝わり、棒状化粧料が上昇限、若しくは下降限に達したサインとなる。
【0038】
また、前記繰り出し機構部の連結穴45と、この連結穴45に侵入、嵌合する繰り出し操作部の侵入部91は、ラチェット機能作動時、つまり前記下向き歯441と上向き歯921の乗り越え時、ラチェット機能作動時も嵌合状態を維持させれば、ラチェット機能作動時も繰り出し機構部と繰り出し操作部の安定した連結が継続できる
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、上記実施例1及び実施例2に述べた回転繰り出し機構61、62に限定されるものではない。例えば図10図12に示したような紅皿、回転筒、スリーブなどからなる回転繰り出し機構63~65に於いても実施可能である。以下、簡潔に説明する。なお、各図には明細書に記載の番号以外の番号も採番されているが、これは実施例1及び実施例2の図面に記載された番号に準じている。
【0040】
図10に示したその他の実施例1の回転繰り出し機構63は、図1図4に示した本発明実施例1の回転繰り出し機構61より、中間ネジ筒を除去し、棒雄ネジ221と回転雌ネジ41を螺合させたものである。結果、棒状化粧料1を繰り出すネジは棒雄ネジ221のみとなり、紅皿2のネジ棒22及び棒雄ネジ221は、棒状化粧料1のストロークに応じて長くなっている。
【0041】
図11に示したその他の実施例2の回転繰り出し機構64は、図10に示したその他の実施例1の回転繰り出し機構63の、棒雄ネジ221と回転雌ネジ41の配置を逆にしたものである。回転筒は、外周に棒雄ネジ221を螺設したネジ棒22を立ち上げる。棒状化粧料を保持した紅皿の下端よりは、前記ネジ棒22を挿入する脚筒24を垂下する。この脚筒24の下端内側壁に前記ネジ棒22の棒雄ネジ221が螺合する回転雌ネジ41を螺設し、下端外側壁に回動防止片21を突設する。スリーブの下部内壁には、紅皿の回動防止片21が係合して紅皿をスリーブ内で回動不能に上下摺動自在に案内する案内溝51を穿設する。
【0042】
図12に示したその他の実施例3の回転繰り出し機構65は、図6図9に示した本発明実施例2の回転繰り出し機構62の螺旋溝121を、スリーブの内面に螺設し、螺旋筒12を除去したものである。この螺旋溝121は、スリーブの内面全周に浅く無数条ローレット状に設けられている。そして、このローレット状の螺旋溝121に螺合する紅皿の螺合凸部23の先端面は、隣り合った複数条の螺旋溝121に螺合している。
【0043】
なお、本発明実施例の項目に於いて、磁石11と磁性体(吸着部材6)吸着力を利用したトルクリミット機能、ラチェット機能を説明したが、磁石11の吸着力を利用している関係で、吸着力以上の力が繰り出し機構部に加わった場合、切り出し機構部が脱落してしまう可能性もあるが、磁石11の吸着力が及ぶ範囲、例えば繰り出し機構部が繰り出し操作部に装着され、キャップ10を嵌合した状態であれば、再度吸着して問題なく使用できる。
【0044】
また、本発明実施例に於いては、繰り出し機構部の上側ラチェット44及び繰り出し操作部の下側ラチェット92の、下向き歯441及び上向き歯921は、全周に同数設けた構成を説明したが、下向き歯441及び上向き歯921のどちらか一方を全周設ければ、他方は少なくとも1個設ければよい。この場合、下向き歯441及び上向き歯921の形状は、それぞれが噛み合う形状である必要がある。
【0045】
なお、上側ラチェット44と下側ラチェット92が空転を始めるトルク値は、磁石11と吸着部材の吸着力、噛み合っている下向き歯441と上向き歯921の高さ、及び下向き歯441と上向き歯921の頂角の角度の組み合わせにより調節できる。また、下向き歯441と上向き歯921の、頂点より両側の斜面の角度を別個に調整すれば、棒状化粧料の繰り上げ時の空転トルク、繰り下げ時の空転トルクと別個に調整できる。
【0046】
本発明実施例では、磁石11に吸着する部材(吸着部材)を鉄などの強磁性体として説明したが、これを磁石に置き換えることも可能である。この場合、磁石11と吸着部材の吸着力は更に向上する。
【0047】
また、本発明は、磁石11の吸着力以上で繰り出し機構部を引き抜けば抜取ることが可能である。これを利用して、繰り出し機構部5を着脱、交換可能なカートリッジに、繰り出し操作部をホルダーとしたカートリッジ式棒状化粧料繰り出し容器として利用可能である。
【符号の説明】
【0048】
棒状化粧料
紅皿
回転筒
スリーブ
吸着部材
11 磁石
44 上側ラチェット
45 連結穴
61~ 65 回転繰り出し機構
91 侵入部
92 下側ラチェット
441 下向き歯
921 上向き歯
繰り出し機構部
繰り出し操作部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12