(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-24
(45)【発行日】2023-04-03
(54)【発明の名称】フローティングコネクタ及びそれを用いた電気接続構造
(51)【国際特許分類】
H01R 13/631 20060101AFI20230327BHJP
H01R 13/73 20060101ALI20230327BHJP
H01R 13/639 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
H01R13/631
H01R13/73 D
H01R13/639 Z
(21)【出願番号】P 2020040599
(22)【出願日】2020-03-10
【審査請求日】2021-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000102500
【氏名又は名称】SMK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】林 耕平
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-091755(JP,A)
【文献】特開平09-259973(JP,A)
【文献】特開2016-100224(JP,A)
【文献】実開平07-043729(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R13/56-13/72
H01R13/72-13/73
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラグコンタクトを有するプラグコネクタと、ソケットコンタクトを有するソケットコネクタとを備え、
前記ソケットコネクタは、前記ソケットコンタクトを保持する保持部材
とケースを有し、
前記保持部材は、
前記ケース内で嵌合方向と直交する
上下方向にフローティングするフローティング構造を
有し、
前記保持部材は、ソケットハウジングとソケットホルダーとからなり、
前記ソケットハウジングは、少なくとも部分的に前記ソケットホルダーの内側に収容され、
前記ソケットホルダーが前記ケース内で上下方向に弾性支持部材にて支持されたフローティング構造になっていることを特徴とするフローティングコネクタ。
【請求項2】
前記ソケットハウジングとソケットホルダーとの間は左右方向の相対的な位置ズレを許容する空間を有していることを特徴とする請求項1記載のフローティングコネクタ。
【請求項3】
前記プラグコネクタと前記ソケットコネクタとが互いに嵌合すると、
前記ソケットハウジングは、前記プラグコンタクトを保持するプラグハウジングを少なくとも部分的に受容し、少なくとも嵌合方向に沿って相対的に位置ズレするのを許容する第2位置ズレ許容手段を有することを特徴とする請求項
2に記載のフローティングコネクタ。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれかのフローティングコネクタを用いた第1部材と第2部材との電気接続構造であって、
前記第1部材と第2部材のうち、一方に前記プラグコネクタを有し、他方に前記ソケットコネクタを有し、
前記第1部材と第2部材とを相互に所定の位置に突き合せて電気接続した後に、一方の部材を突き合せ方向と直交する方向に移動可能であることを特徴とする電気接続構造。
【請求項5】
前記プラグコネクタとソケットコネクタとの間、又は、前記第1部材と第2部材との間に、相互に離間するのを防止する抜止手段を有していることを特徴とする請求項
4に記載の電気接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部材や部品間等を電気接続するためのフローティングコネクタ及びそれを用いた接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電気電子機器間あるいは電源側等と電気接続するのにコネクタが広く採用されている。
この種のコネクタは、一方のプラグと他方のソケットを突き合せ嵌合するのが一般的であり、上下左右の相互のズレを許容する範囲が狭く、寸法精度の低い大きなパネル型部材や箱型部材、部品間を直接電気接続するには適していない。
特に、複数の部材や部品とを相互にスライド連結する場合には、従来のコネクタでは直接電気接続できなかった。
【0003】
特許文献1には、コンタクト部材をばね部材で支持した電気コネクタについて開示する。
しかし、同公報に開示する電気コネクタはレセプタクルコネクタの構造が複雑であり、電子部品のように小型なものを電気接続するのには適してはいるが、相互の位置合せ精度が低い大型なものには適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、構造がシンプルであり、かつ部材や部品間を電気接続した際に相互のコネクタの位置ズレによるストレスを軽減するのに効果的なフローティングコネクタ及びその電気接続構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るフローティングコネクタは、プラグコンタクトを有するプラグコネクタと、ソケットコンタクトを有するソケットコネクタとを備え、前記ソケットコネクタは、前記ソケットコンタクトを保持する保持部材を有し、前記保持部材は、嵌合方向と直交する方向にフローティングするフローティング構造を有することを特徴とする。
ここで嵌合方向とはプラグコネクタとソケットコネクタとが突き合う方向をいい、嵌合方向と直交する方向とは嵌合方向におよそ直交する上下又は左右方向をいう。
【0007】
本発明において、前記ソケットコネクタは、前記保持部材を嵌合方向と直交する方向に沿って移動させる弾性支持部材を有していてもよい。
これにより、上下又は左右方向に沿って保持部材が弾性的に移動、すなわちフローティングする。
【0008】
本発明において、前記保持部材は、ソケットハウジングとソケットホルダーとからなり、前記ソケットハウジングは、少なくとも部分的に前記ソケットホルダーの内側に収容され、前記ソケットホルダーは、少なくとも嵌合方向と直交する方向に沿って前記ソケットハウジングが相対的に位置ズレするのを許容する第1位置ズレ許容手段を有しているのが好ましい。
また、前記プラグコネクタと前記ソケットコネクタとが互いに嵌合すると、前記ソケットハウジングは、前記プラグコンタクトを保持するプラグハウジングを少なくとも部分的に受容し、少なくとも嵌合方向に沿って相対的に位置ズレするのを許容する第2位置ズレ許容手段を有していてもよい。
【0009】
このようにすると、ソケットコネクタは、上下又は左右方向の位置ズレを保持部材にて吸収し、嵌合方向の位置ズレをハウジングにて吸収する。
【0010】
本発明に係る電気接続構造は、上記のフローティングコネクタを用いた第1部材と第2部材との電気接続構造であって、前記第1部材と第2部材のうち、一方に前記プラグコネクタを有し、他方に前記ソケットコネクタを有し、前記第1部材と第2部材とを相互に所定の位置に突き合せて電気接続した後に、一方の部材を突き合せ方向と直交する方向に移動可能であることを特徴とする。
【0011】
本発明において、前記プラグコネクタとソケットコネクタとの間、又は、前記第1部材と第2部材との間に、相互に離間するのを防止する抜止手段を有しているのが好ましい。
このようにすると、電気接続した後の部材や部品同士が突き合せ方向とおよそ直交する方向に移動可能としながらも互いに外れる方向に離間するのを防止する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るフローティングコネクタは、プラグコネクタとソケットコネクタとを備え、ソケットコネクタが有する保持部材は、嵌合方向と直交する方向にフローティングするフローティング構造を有する。
これにより、保持部材に保持されたソケットコンタクトにプラグコンタクトが嵌合した後においても保持部材の相対的な移動が可能となる。
また、保持部材であるソケットホルダーとソケットハウジングとが位置ズレを許容するための第1手段、第2手段を有することで、嵌合方向や嵌合方向と直交する方向の位置ズレの吸収も可能となる。
本発明に係るフローティングコネクタはシンプルな構造でありながら、プラグコネクタとソケットコネクタとを固定した部材や部品間を連結する際に、プラグコネクタとソケットコネクタとの相対的な位置の移動を大きく許容でき、現場での作業性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係るフローティングコネクタの外観図を示し、(a)はプラグコネクタとソケットコネクタの嵌合前の状態を、(b)は嵌合した状態を示す。
【
図2】(a)、(b)はソケットコネクタの斜面図を示す。
【
図4】
図1(b)のU-U線断面を示し、(a)は斜視図を、(b)は拡大図を示す。
【
図6】フローティングコネクタを部材に固定した実施例を示す。
【
図7】(a)~(c)は、部材間の連結及び電気接続の方法例を示す。
【
図8】(a)~(c)は、プラグコネクタとソケットコネクタの嵌合状態を説明するための断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係るフローティングコネクタの構造例を以下、図に基づいて説明する。
フローティングコネクタは
図1に示すように、プラグコネクタ10とソケットコネクタ20とからなる。
図1(a)はプラグコネクタ10とソケットコネクタ20の嵌合前の状態を、(b)は嵌合した状態を示す。
【0015】
プラグコネクタ10は、プラグコンタクト11と、そのプラグコンタクト11を収容した樹脂製のプラグハウジング12とからなる。
プラグコンタクト11は、ピン形状で、必要に応じてメッキ処理を施した銅合金等の金属製からなる。
プラグハウジング12は、断面が略ロ字形状の突出部12aを有し、この突出部12aの内側にプラグコンタクト11を配設してある。
突出部12aは、
図4に示すように後述するソケットハウジング26の凹部26bに部分的に受容される。
便宜上、凹部26bに受容される部分を凸部12bとする。
プラグハウジング12は、ソケットハウジング26に少なくとも部分的に受容されるのであれば特に形状は限定されず、プラグコネクタ10は
図1に示すような直角方向に折り曲げたプラグの他、ストレートタイプのプラグ等連結形状に合せて設計される。
【0016】
ソケットコネクタ20の構造例として、
図2に斜視図を、
図3にその分解図を示す。
また、
図1(b)に示したフローティングコネクタのU-U線断面図を
図4に、R-R線端面図を
図5に示す。
ソケットコネクタ20は
図3の分解図に示すように、ソケット部24,ケース25,保持部材28,弾性支持部材29及びカバー30で構成されている。
図3,
図4(b)に示すように、ソケット部24は先端側のソケットコンタクト21と、その後端側に接続端子21eを有し、ケーブル22の芯線22aが連結されている。
ケーブル22は、ケーブル22を保護する保護部材23にて被覆されていてもよい。
保持部材28は、樹脂製からなるソケットハウジング26と金属製からなるソケットホルダー27とからなり、ソケットハウジング26はソケットホルダー27の内側に収容されている。
ソケットコネクタ20は、ソケットコンタクト21を保持する保持部材28(ソケットハウジング26及びソケットホルダー27を合せて単に保持部材28と称する。)を上下方向にフローティングさせるために、
図4(a)に示すようにソケットホルダー27の上方にバネやゴム等の弾性支持部材29を配設した状態で、その外側を金属製からなる長方形状のケース25とカバー30とで保護している。
弾性支持部材29は、
図7及び
図8に示すようにケース25内で伸縮することによって、保持部材28を上下方向にフローティング可能に保持する。
例えば、
図7(b)に示すようにプラグコネクタ10と嵌合しているソケットコネクタ20を、(c)に示すように単独で下方向に移動した場合、相対的にプラグコネクタ10(プラグハウジング12)はソケットコネクタ20(ソケットハウジング26)を押し上げる方向に力を加える。
弾性支持部材29がこの力を受けて縮むことで、
図8(b)に示すようにプラグコンタクト11と嵌合しているソケットコンタクト21が、
図8(c)に示すように保持部材28とともに上方向に弾性的に移動する。
空間Fは、保持部材28が上方向に移動することでケース25内に形成される。
ここで、弾性支持部材29は保持部材28が移動した状態を保持できればよく、弱い付勢力でよい。
ケース25とカバー30は、保持部材28と弾性支持部材29を収容保護するためのものである。
ケース25は、ソケット部24と連結されたソケットハウジング26の上下移動を許容する開口部25aを有し、カバー30は、保持部材28の上下移動を許容する開口部30aを有する。
ここでソケットホルダー27内にソケットハウジング26を収容する際に、
図4(a)に示すような上下方向の空間Aや、
図5に示すような左右方向の空間Bを少なくとも一カ所以上、第1位置ズレ許容手段として設けることで、上下又は左右方向に沿ってソケットハウジング26がソケットホルダー27内で相対的に位置ズレするのを許容する。
【0017】
ソケットコンタクト21は、
図4に示すように、例えばスズメッキ処理を施した銅合金製からなり、本実施例では左右の側壁21d、21dと上下壁21c、21cにて断面略ロ字形状に成形し、上下壁21c、21cを内側に折り返してコンタクト溝部21aを形成し、プラグコンタクト11を弾性狭持するようになっている。
なお、このコンタクト溝部21aは左右の側壁21d、21d側に設けてもよい。
プラグコンタクト11に当接し易いように先端部が山形に形成されている弾性部21bは左右方向に幅広形状であり、その撓みによってプラグコンタクト11の上下方向と左右方向の位置ズレを吸収する。
ここで、ソケットハウジング26は
図4(b)に示すように、内側に保持するソケットコンタクト21のコンタクト溝部21aの位置に合せてハウジング溝部26aを有する。
また、ソケットハウジング26は内側に保持するソケットコンタクト21の上方と下方のそれぞれに凹部26bを有し、嵌合の際にプラグハウジング12の凸部12bを受容する。
嵌合の際に凹部26bと凸部12bとで形成される空間Cや、ハウジング溝部26a側で形成される空間Dを第2位置ズレ許容手段として設けることで、嵌合方向に沿ってソケットハウジング26とプラグハウジング12が相対的に位置ズレするのを許容する。
空間C、Dを設けて嵌合するために、プラグコンタクト11とソケットコンタクト21のコンタクト溝部21aとは、ともに嵌合方向に幅広形状であることが好ましい。
【0018】
図6に、本発明に係るフローティングコネクタを第1部材1と第2部材2とに固定した実施例を示す。
第1部材1と第2部材2とが対向する面をそれぞれ対向面1a、2aとし、本実施例においては、対向面2aの内側にソケットコンタクト21が位置するようにソケットコネクタ20を固定し、対向面1aの外側に突出部12aが位置するようにプラグコネクタ10を固定する。
本実施例においては、
図6、
図7に示すように、対向面1aの外側に突出部12aが位置するように第1部材1の上側に切り抜きを施し、その切り抜きに沿ってプラグコネクタ10を上方から挿入した後、キャップ1bを被せてプラグコネクタ10を固定している。
ソケットコネクタ20は、対向面2aに固定するためにケース25のケース突出部25bにソケット固定孔25cを設け、第2部材2の取付孔201に固定部材202により固定してある。
図7は、第1部材1と第2部材2との連結及び電気接続の方法例を、
図8には、
図7におけるプラグコネクタ10とソケットコネクタ20との嵌合状態を説明するための断面図を示す。
図7(b)に示すように、本発明に係るフローティングコネクタを固定した第1部材1と第2部材2とは、プラグコネクタ10とソケットコネクタ20とが嵌合することにより連結及び電気接続される。
また、
図7(c)に示すように、ソケットコネクタ20の保持部材28がフローティングすることで、電気接続した後にソケットコネクタ20を固定した第2部材2を突き合せ方向と直交する下方向に移動できる。
ここで、電気接続した第1部材1と第2部材2とが相互に離間するのを防止するために抜止手段を有するのが好ましい。
本実施例においては、第2部材2に設けたフック等の抜止部200を第1部材1に設けた抜止孔部102に係止するが、プラグコネクタ10又は/及びソケットコネクタ20に直接抜止手段を有してもよい。
例えば、プラグコネクタ10のプラグハウジング12に抜止孔部を設け、ソケットコネクタ20のカバー30等に抜止部を設けてもよい。
図7(b)に示すように、プラグコネクタ10とソケットコネクタ20とが嵌合することにより第2部材2に設けた抜止部200が第1部材1に設けた抜止孔部102に挿入され、次に、
図7(c)に示すように、部材同士を上下方向に移動し抜止部200が抜止孔部102に係止されることでプラグコネクタ10とソケットコネクタ20との電気接続が外れる方向に離間するのを防ぐことができる。
【0019】
本実施例では、第1部材と第2部材との間を連結しつつ電気接続する例を示したが、例えば、3以上の部材同士を連結しつつ電気接続する場合も含め、様々な部材、部品間の接続に応用できる。
【符号の説明】
【0020】
1 第1部材
2 第2部材
10 プラグコネクタ
11 プラグコンタクト
12 プラグハウジング
20 ソケットコネクタ
21 ソケットコンタクト
24 ソケット部
25 ケース
26 ソケットハウジング
27 ソケットホルダー
28 保持部材
29 弾性支持部材