(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-24
(45)【発行日】2023-04-03
(54)【発明の名称】封止用接着剤
(51)【国際特許分類】
C09J 163/00 20060101AFI20230327BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20230327BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20230327BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20230327BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
C09J163/00
C09J11/04
C09J11/06
H01L23/30 R
(21)【出願番号】P 2020507756
(86)(22)【出願日】2019-03-15
(86)【国際出願番号】 JP2019010872
(87)【国際公開番号】W WO2019181789
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-02-15
(31)【優先権主張番号】P 2018056530
(32)【優先日】2018-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】黒主 将司
【審査官】田名部 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-031461(JP,A)
【文献】特開2001-114992(JP,A)
【文献】特開平11-286594(JP,A)
【文献】特開2007-224167(JP,A)
【文献】特開2005-290111(JP,A)
【文献】特開2005-281624(JP,A)
【文献】特開平06-224239(JP,A)
【文献】特開2011-063715(JP,A)
【文献】特開2008-255217(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 163/00
C09J 11/04
C09J 11/06
H01L 23/29
H01L 23/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤
(アルケニル基を有するフェノール系硬化剤を除く)、(C)無機フィラーおよび(D)トリアジンチオール化合物、を含有
し、
前記(A)エポキシ樹脂が液状エポキシ樹脂を含み、
前記(C)無機フィラーの平均粒径が5μm以上であり、
前記(D)トリアジンチオール化合物の含有量が、接着剤の不揮発成分を100質量%として1質量%以上である、封止用接着剤。
【請求項2】
前記(C)無機フィラーが鱗片状フィラーを含む、請求項1に記載の接着剤。
【請求項3】
前記(C)無機フィラーの平均粒径が
6μm以上である、請求項1又は2に記載の接着剤。
【請求項4】
前記(C)無機フィラーの含有量が、接着剤の不揮発成分を100質量%として5~40質量%である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の接着剤。
【請求項5】
前記(C)無機フィラーの含有量が、接着剤の不揮発成分を100質量%として10~35質量%である、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の接着剤。
【請求項6】
前記(D)トリアジンチオール化合物の含有量が、接着剤の不揮発成分を100質量%として
1~20質量%である、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の接着剤。
【請求項7】
前記(B)硬化剤が、潜在性硬化剤を含む、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の接着剤。
【請求項8】
(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤
(アルケニル基を有するフェノール系硬化剤を除く)、(C)無機フィラーおよび(D)トリアジンチオール化合物、を混合する工程を有する、封止用接着剤の製造方法
であって、
前記(A)エポキシ樹脂が液状エポキシ樹脂を含み、
前記(C)無機フィラーの平均粒径が5μm以上であり、
前記(D)トリアジンチオール化合物の含有量が、接着剤の不揮発成分を100質量%として1質量%以上である、封止用接着剤の製造方法。
【請求項9】
第1部材上に、請求項1乃至7のいずれか1項に記載された接着剤を供給する工程と、 前記供給された接着剤上に、第2部材を配置する工程と、
前記第2部材を配置する工程の後に、前記供給された接着剤を硬化させる工程と、
を有する、接着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止用樹脂組成物に関し、より詳しくは、封止性能に優れ、密着性にも優れる封止用接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置、太陽電池、高輝度LED(light emitting diode)、LCD(liquid crystal display)、EL(electro-luminescence)素子及び有機TFT(thin film transistor)等の光半導体素子を有する光回路部品、並びにHDD(ハードディスクドライブ)等などの電子部品には、素子や部品等の被封止体を被覆しつつ、かつ部材同士を接着するために、封止用接着剤が用いられる場合がある。そのような封止用接着剤に対しては、接着機能に加えて、被封止体を外気から遮断する機能が求められる。あるいは、ヘリウムガス等で充填されたHDDにおいては、充填されたガスの漏洩を防止するために、接着剤に対して、優れたガスバリア性が要求される場合がある。
【0003】
上記のような封止用接着剤に関連して、エポキシ樹脂を使用したものが知られている。例えば、特許文献1(特開2013-157205号公報)には、硬化性樹脂と、ゲル化剤と、無機微粒子と、熱硬化剤とを含有し、硬化性樹脂として常温で液状のエポキシ樹脂及び常温で固体のエポキシ樹脂を含有する、有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤が開示されている。また、特許文献1には、板状のタルク等の無機微粒子が、封止剤の耐湿性を向上させる点も記載されている。
【発明の概要】
【0004】
本発明者らは、エポキシ樹脂を使用した封止用接着剤において、封止性能(ガスバリア性又は水蒸気バリア性)を向上させるため、無機フィラーを比較的多量に使用することを検討している。しかしながら、封止性能向上のため無機フィラーの含有量を増加させると、高温高湿環境下で接着強度(以下、高温高湿耐性という)が大きく低下する傾向がみられ、封止性能と高温高湿耐性とを両立することが困難であった。従って、本発明の課題は、封止性能と高温高湿耐性のバランスに優れた封止用接着剤を提供する点にある。
【0005】
また、封止用接着剤に対しては、保存安定性(例えば、粘度の経時変化が少ないこと)も求められる。従って、高温高湿耐性等の特性を向上させる際には、保存安定性を損なうことなく特性が向上できることも求められている。すなわち、本発明の他の課題は、保存安定性を損なうことなく、高温高湿耐性を高めることができる封止用接着剤を提供する点にある。
【0006】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意研究した結果、以下の発明に至った。
(1)(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)無機フィラーおよび(D)トリアジンチオール化合物、を含有する封止用接着剤。
(2)(C)無機フィラーが鱗片状フィラーを含む、(1)に記載の接着剤。
(3)(C)無機フィラーの平均粒径が5μm以上である、(1)又は(2)に記載の接着剤。
(4)(C)無機フィラーの含有量が、接着剤の不揮発成分を100質量%として5~40質量%である、(1)乃至(3)のいずれか1項に記載の接着剤。
(5)(C)無機フィラーの含有量が、接着剤の不揮発成分を100質量%として10~35質量%である、(1)乃至(4)のいずれか1項に記載の接着剤。
(6)(D)トリアジンチオール化合物の含有量が、接着剤の不揮発成分を100質量%として0.1~20質量%である、(1)乃至(5)のいずれか1項に記載の接着剤。
(7)(B)硬化剤が、潜在性硬化剤を含む、(1)乃至(6)のいずれか1項に記載の接着剤。
(8)(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)無機フィラーおよび(D)トリアジンチオール化合物、を混合する工程を有する、封止用接着剤の製造方法。
(9)第1部材上に、(1)乃至(7)のいずれか1項に記載された接着剤を供給する工程と、前記供給された接着剤上に、第2部材を配置する工程と、前記第2部材を配置する工程の後に、前記供給された接着剤を硬化させる工程とを有する、接着方法。
【0007】
本発明によれば、封止性能と高温高湿耐性とのバランスに優れた封止用接着剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1:封止用接着剤
本発明の実施形態に係る封止用接着剤は、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)無機フィラー及び(D)トリアジンチオール化合物を含有する。本実施形態によれば、トリアジンチオール化合物を含有することによって、無機フィラーを含有しているのにもかかわらず、高温高湿耐性を維持することができる。従って、封止性能と高温高湿耐性とのバランスに優れた封止用接着剤が実現される。
【0009】
(A):エポキシ樹脂
エポキシ樹脂としては、分子内に少なくとも1つのエポキシ基を有するものであれば特に限定されるものではない。好ましくは、エポキシ樹脂としては、平均して1分子当り2以上のエポキシ基を有する樹脂が用いられる。
エポキシ樹脂として、例えば、多価フェノール(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、カテコール及びレゾルシノールなど)、または、多価アルコール(グリセリン及びポリエチレングリコールなど)と、エピクロロヒドリンとを反応させて得られるポリグリシジルエーテル;ヒドロキシカルボン酸(例えば、p-ヒドロキシ安息香酸及びβ-ヒドロキシナフトエ酸)とエピクロロヒドリンとを反応させて得られるグリシジルエーテルエステル;ポリカルボン酸(フタル酸及びテレフタル酸等)とエピクロロヒドリンとを反応させて得られるポリグリシジルエステル;エポキシ化フェノールノボラック樹脂;エポキシ化クレゾールノボラック樹脂;エポキシ化ポリオレフィン;環式脂肪族エポキシ樹脂;並びに、その他ウレタン変性エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0010】
これらの中でも、エポキシ樹脂としては、高耐熱性及び低透湿性を保つ等の観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、芳香族グリシジルアミン型エポキシ樹脂、及びジシクロペンタジエン構造を有するエポキシ樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、及びジシクロペンタジエン構造を有するエポキシ樹脂、からなる群から選ばれる少なくとも一種がより好ましい。
【0011】
エポキシ樹脂は、液状であっても、固形状であっても、液状樹脂と固形状樹脂の両方を用いてもよい。ここで、「液状」及び「固形状」とは、25℃でのエポキシ樹脂の状態である。塗工性、加工性、接着性の観点から、使用するエポキシ樹脂全体の少なくとも10質量%以上が液状であるのが好ましく、少なくとも30質量%以上が液状であるのがより好ましく、少なくとも50質量%以上が液状であるのがさらに好ましく、少なくとも80質量%以上が液状であるのが特に好ましく、90質量%以上が液状であるのが最も好ましい。
【0012】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、例えば、50~1000g/eq、好ましくは100~500g/eq、より好ましくは150~300g/eqである。ここで、エポキシ当量とは、1当量のエポキシ基あたりのエポキシ樹脂の質量であり、JIS K7236(2009)に準拠して測定することができる。
【0013】
液状エポキシ樹脂の具体例として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「jER828EL」、「jER827」)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「jER807」)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「jER152」)、ナフタレン型2官能エポキシ樹脂(DIC社製「HP-4032」、「HP-4032D」)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂/ビスフェノールF型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学社製「ZX-1059」)、水素添加された構造のエポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX-8000」)、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂(ダイセル化学工業社製「PB-3600」)などが挙げられる。
また、固形エポキシ樹脂の具体例として、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂(DIC社製「HP-4700」)、ジシクロペンタジエン型多官能エポキシ樹脂(DIC社製「HP-7200」)、ナフトール型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学社製「ESN-475V」)、ビフェニル構造を有するエポキシ樹脂(日本化薬社製「NC-3000H」、「NC-3000L」、三菱ケミカル社製「YX-4000」)などが挙げられる。
【0014】
エポキシ樹脂の含有量は、封止用接着剤の不揮発成分を100質量%とした場合に、例えば、5~95質量%、好ましくは10~90質量%、より好ましくは20~80質量%、特に好ましくは30~70質量%、最も好ましくは50~60質量%である。
【0015】
好ましい一態様では、エポキシ樹脂として、エポキシ当量が150~300g/eqである液状のビスフェノール型エポキシ樹脂と、エポキシ当量が150~300g/eqである液状のフェノールノボラック型エポキシ樹脂との混合物が用いられる。液状のビスフェノール型エポキシ樹脂としては、より好ましくは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂との混合物が挙げられる。この態様において、液状のビスフェノール型エポキシ樹脂の含有量は、封止用接着剤の不揮発成分を100質量%として、例えば20~45質量%、好ましくは25~40質量%である。また、液状のフェノールノボラック型エポキシ樹脂の含有量は、封止用接着剤の不揮発成分を100質量%として、例えば10~30質量%、好ましくは15~25質量%である。
【0016】
(B):硬化剤
硬化剤としては、エポキシ樹脂を硬化させる機能を有するものであれば使用可能であるが、好ましくは、潜在性硬化剤が使用される。潜在性硬化剤は、封止用接着剤が一液型の樹脂組成物である場合に使用される成分であり、常温(20℃±15℃(JISZ8703))ではエポキシ樹脂の硬化に寄与せず、加熱時(例えば100℃以下)にエポキシ樹脂の硬化反応に寄与する機能を有する添加剤である。
【0017】
潜在性硬化剤としては、液状潜在性硬化剤、固体分散型潜在性硬化剤のどちらでも使用可能であるが、固体分散型潜在性硬化剤がより好ましく使用される。
【0018】
液状潜在性硬化剤とは常温でエポキシ樹脂に可溶な液体であり、常温では活性はないが、加熱することでエポキシ樹脂の硬化剤として機能する添加剤である。液状潜在性硬化剤としては、例えば、イオン液体が挙げられるがこれに限定されるものではない。イオン液体を構成するカチオンとしては、例えば、イミダゾリウムイオン、ピペリジニウムイオン、ピロリジニウムイオン、ピラゾニウムイオン、グアニジニウムイオン、ピリジニウムイオン等のアンモニウム系カチオン;テトラアルキルホスホニウムカチオン等のホスホニウムカチオン;トリエチルスルホニウムイオン等のスルホニウムカチオン等が挙げられる。またイオン液体を構成するアニオンとしては、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のハロゲン化物系アニオン:メタンスルホンイオン等のアルキル硫酸系アニオン:トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ヘキサフルオロホスホン酸イオン、トリフルオロトリス(ペンタフルオロエチル)ホスホン酸イオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン、トリフルオロ酢酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン等の含フッ素化合物系アニオン:フェノールイオン、2-メトキシフェノールイオン、2,6-ジ-tert-ブチルフェノールイオン等のフェノール系アニオン:アスパラギン酸イオン、グルタミン酸イオン等の酸性アミノ酸イオン:グリシンイオン、アラニンイオン、フェニルアラニンイオン等の中性アミノ酸イオン:N-ベンゾイルアラニンイオン、N-アセチルフェニルアラニンイオン、N-アセチルグリシンイオン、N-アセチルグリシンイオン等のN-アシルアミノ酸イオン:ギ酸イオン、乳酸イオン、酒石酸イオン、馬尿酸イオン、N-メチル場尿酸、安息香酸イオン等のカルボン酸系アニオンが挙げられる。
【0019】
固体分散型潜在性硬化剤とは、常温ではエポキシ樹脂に不溶の固体であり、加熱することにより可溶化し、エポキシ樹脂の硬化剤として機能する添加剤である。固体分散型潜在性硬化剤として、例えば、常温で固体のイミダゾール化合物、および固体分散型アミンアダクト系潜在性硬化剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
常温で固体のイミダゾール化合物としては、例えば、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-ベンジル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-(2-メチルイミダゾリル-(1))-エチル-S-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-(2′-メチルイミダゾリル-(1)′)-エチル-S-トリアジン・イソシアヌール酸付加物、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール-トリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール-トリメリテイト、N-(2-メチルイミダゾリル-1-エチル)-尿素、N,N′-(2-メチルイミダゾリル-(1)-エチル)-アジボイルジアミド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
固体分散型アミンアダクト系潜在性硬化剤の好適な例としては、アミン化合物のエポキシアダクト、アミン化合物の尿素アダクト、及びエポキシアダクトの水酸基にイソシアナート化合物を付加反応させた化合物、からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0020】
前記アミン化合物のエポキシアダクトの製造原料の一つとして用いられるエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、カテコール、レゾルシノールなど多価フェノール、またはグリセリンやポリエチレングリコールのような多価アルコールとエピクロロヒドリンとを反応させて得られるポリグリシジルエーテル;p-ヒドロキシ安息香酸、β-ヒドロキシナフトエ酸のようなヒドロキシカルボン酸とエピクロロヒドリンとを反応させて得られるグリシジルエーテルエステル;フタル酸、テレフタル酸のようなポリカルボン酸とエピクロロヒドリンとを反応させて得られるポリグリシジルエステル;4,4′-ジアミノジフェニルメタンやm-アミノフェノールなどとエピクロロヒドリンとを反応させて得られるグリシジルアミン化合物;更にはエポキシ化フェノールノボラック樹脂、エポキシ化クレゾールノボラック樹脂、エポキシ化ポリオレフィンなどの多官能性エポキシ化合物やブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレートなどの単官能性エポキシ合物;等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0021】
前記固体分散型アミンアダクト系潜在性硬化剤の製造原料として用いられるアミン化合物は、エポキシ基と付加反応しうる活性水素を分子内に1以上有し、かつ1級アミノ基、2級アミノ基および3級アミノ基の中から選ばれた官能基を少なくとも分子内に1以上有するものであればよい。このような、アミン化合物としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、n-プロピルアミン、2-ヒドロキシエチルアミノプロピルアミン、シクロヘキシルアミン、4,4′-ジアミノ-ジシクロヘキシルメタンのような脂肪族アミン類;4,4′-ジアミノジフェニルメタン、2-メチルアニリンなどの芳香族アミン化合物;2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾリン、2,4-ジメチルイミダゾリン、ピペリジン、ピペラジンなどの窒素原子が含有された複素環化合物;等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
また、この中で特に分子内に3級アミノ基を有する化合物は、優れた硬化機能を有する潜在性硬化剤を与える原料であり、そのような化合物の例としては、例えば、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジ-n-プロピルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノエチルアミン、ジエチルアミノエチルアミン、N-メチルピペラジンなどのアミン化合物や、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾールなどのイミダゾール化合物のような、分子内に3級アミノ基を有する1級もしくは2級アミン類;2-ジメチルアミノエタノール、1-メチル-2-ジメチルアミノエタノール、1-フェノキシメチル-2-ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、1-ブトキシメチル-2-ジメチルアミノエタノール、1-(2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル)-2-メチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピル)-2-メチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル)-2-フェニルイミダゾリン、1-(2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピル)-2-メチルイミダゾリン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N-β-ヒドロキシエチルモルホリン、2-ジメチルアミノエタンチオール、2-メルカプトピリジン、2-ベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、4-メルカプトピリジン、N,N-ジメチルアミノ安息香酸、N,N-ジメチルグリシン、ニコチン酸、イソニコチン酸、ピコリン酸、N,N-ジメチルグリシンヒドラジド、N,N-ジメチルプロピオン酸ヒドラジド、ニコチン酸ヒドラジド、イソニコチン酸ヒドラジドなどのような、分子内に3級アミノ基を有するアルコール類、フェノール類、チオール類、カルボン酸類およびヒドラジド類;等が挙げられる。
【0023】
前記のエポキシ化合物とアミン化合物を付加反応せしめ潜在性硬化剤を製造する際に、さらに分子内に活性水素を2以上有する活性水素化合物を添加することもできる。このような活性水素化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ヒドロキノン、カテコール、レゾルシノール、ピロガロール、フェノールノボラック樹脂などの多価フェノール類、トリメチロールプロパンなどの多価アルコール類、アジピン酸、フタル酸などの多価カルボン酸類、1,2-ジメルカプトエタン、2-メルカプトエタノール、1-メルカプト-3-フェノキシ-2-プロパノール、メルカプト酢酸、アントラニル酸、乳酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
前記固体分散型アミンアダクト系潜在性硬化剤の製造原料として用いられるイソシアネート化合物としては、例えば、n-ブチルイソシアネート、イソプロピルイソシアネート、フェニルイソシアネート、ベンジルイソシアネートなどの単官能イソシアネート化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、トルイレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4′-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネートなどの多官能イソシアネート化合物;更には、これら多官能イソシアネート化合物と活性水素化合物との反応によって得られる、末端イソシアネート基含有化合物;等も用いることができる。このような末端イソシアネート基含有化合物の例としては、トルイレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの反応により得られる末端イソシアネート基を有する付加化合物、トルイレンジイソシアネートとペンタエリスリトールとの反応により得られる末端イソシアネート基を有する付加化合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
また、前記固体分散型アミンアダクト系潜在性硬化剤の製造原料として用いられる尿素化合物として、例えば、尿素、チオ尿素などが挙げられるが、これらに限定されるものでない。
【0026】
固体分散型潜在性硬化剤は、例えば、上記の製造原料を適宜混合し、常温から200℃の温度において反応させた後、冷却固化してから粉砕するか、あるいは、メチルエチルケトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の溶媒中で反応させ、脱溶媒後、固形分を粉砕することにより容易に得ることが出来る。
【0027】
固体分散型潜在性硬化剤として市販されている代表的な例としては、例えば、アミン-エポキシアダクト系(アミンアダクト系)としては、「PN-23」(味の素ファインテクノ社製)、「アミキュアPN-H」(味の素ファインテクノ社製)、「ハードナーX-3661S」(エー・シー・アール社製)、「ハードナーX-3670S」(エー・シー・アール社製)などが挙げられ、また、尿素型アダクト系としては、「FXR-1081」(T&K TOKA社製)、「フジキュアFXR-1000」(T&K TOKA社製)、「フジキュアFXR-1030」(T&K TOKA社製)などが挙げられる。また、イミダゾール変性マイクロカプセル体である「ノバキュアHX-3721」(旭化成社製)、「HX-3722」(旭化成社製)、「ノバキュアHX-3742」(旭化成社製)も挙げられる。
【0028】
また、好適な硬化剤として、特許第4752131号に記載されるエポキシ樹脂用潜在性硬化剤も挙げられる。このエポキシ樹脂用潜在性硬化剤は、重合性2重結合を有するモノマーのラジカル重合物で分子内に3級アミノ基を有する化合物;及び、(i)エポキシ樹脂と(ii)アミン化合物及び多価フェノール化合物から選択された活性水素化合物の重付加反応物である分子内に水酸基を有するポリマーの2成分を必須成分とする25℃で固体の固溶体からなるエポキシ樹脂用潜在性硬化剤である。
【0029】
(B)成分である硬化剤の含有量は、(A)成分であるエポキシ樹脂の含有量を100質量部とした場合に、0.1~100質量部であることが好ましく、0.5~50質量部であることがより好ましく、1~30質量部であることがさらに好ましく、5~25質量部であることが特に好ましい。
【0030】
(C):無機フィラー
無機フィラーとしては、封止性能を向上させる機能を有する材料であれば使用可能であり、特に限定されるものでない。
具体的には、無機フィラーとして、マイカ、タルク、シリカ(ヒュームドシリカを含む)、炭酸カルシウム、アルミナ、バリウム、クレー、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、酸化チタン、窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、炭酸マグネシウム、硫酸、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、燐酸カルシウム、酸化マグネシウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、酸化鉄、酸化亜鉛、珪藻土、ドロマイト、石膏、焼成クレー、アスベスト、ケイ酸カルシウム、ベントナイト、ホワイトカーボン、カーボンブラック、鉄粉、アルミニウム粉、石粉、高炉スラグ、フライアッシュ、セメント、及びジルコニア粉等が挙げられる。
これらの中でも、封止性能の観点から、マイカ、タルク、及びシリカが好ましく、マイカ及びタルクがより好ましい。
【0031】
無機フィラーの平均粒径は、例えば5μm以上、好ましくは6μm以上、より好ましくは7μm以上であり、例えば50μm以下、好ましくは40μm以下、より好ましくは30μm以下である。ここで、平均粒径とは、レーザー回折散乱法に基づいて測定された粒度分布におけるメジアン径を示す。
【0032】
無機フィラーの含有量は、封止用接着剤の不揮発成分を100質量%とした場合に、例えば、5~40質量%、好ましくは10~35質量%、より好ましくは15~30質量%である。
【0033】
好ましくは、無機フィラーは、鱗片状フィラーを含むことが好ましい。鱗片状フィラーを用いることにより、封止性能がより向上する。鱗片状フィラーとしては、例えば、マイカ及びタルク等が挙げられる。
【0034】
鱗片状フィラーとしては、平均アスペクト比が2以上のものが好ましく、5~100のものがより好ましい。
アスペクト比とは、粒子の「最長径/厚み」を意味する。
平均アスペクト比は、無作為に選択された50個の粒子のアスペクト比の平均値である。粒子の厚みは、例えばAFM(原子間力顕微鏡)により測定できる。粒子の最長径は、例えば、TEMにより測定できる。
【0035】
(D):トリアジンチオール化合物
トリアジンチオール化合物は、トリアジン環及び少なくとも1つのチオール基を有する化合物又はその塩を指す。トリアジンチオール化合物としては、高温高湿耐性を高める機能を有するものであれば、特に限定されない。
【0036】
好ましいトリアジンチオール化合物としては、例えば、下記式(1)で表される化合物又はその塩が挙げられる。
式(1)中、Rは、-SH又は-N(R
1R
2)を示す。
R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~6の炭化水素基、又は、置換基を有していてもよい3~8員のヘテロ環基を示す。
より好ましいトリアジンチオール化合物は、式(1)において、Rが-SHである化合物であるか、又は、Rが-N(R
1R
2)であって、R
1及びR
2が、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基である化合物である。
【0037】
特に好ましいトリアジンチオール化合物としては、2,4,6-トリメルカプト-s-トリアジン及び2-ジブチルアミノ-4,6-ジメルカプト-s-トリアジンが挙げられる。
【0038】
トリアジンチオール化合物として使用可能な市販品としては、例えば、三協化成社製「ジスネットF」(2,4,6-トリメルカプト-s-トリアジン)、同社製「ジスネットDB」(2-ジブチルアミノ-4,6-ジメルカプト-s-トリアジン)、同社製「ジスネットAF」(2-アニリノ-4,6-ジメルカプト-s-トリアジン)、同社製「サンチオールN-1」(2,4,6-トリメルカプト-s-トリアジンモノナトリウム塩)、及び同社製「サンチオールN-W」(2,4,6-トリメルカプト-s-トリアジントリナトリウム塩)などが挙げられる。
【0039】
トリアジンチオール化合物の含有量は、封止用接着剤の不揮発成分を100質量%とした場合に、例えば、0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは4質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上である。トリアジンチオール化合物の上限値は特に限定されないが、本発明の封止用接着剤の粘度を適切な範囲に調整し易くする観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0040】
(E):安定剤
本実施形態に係る封止用接着剤は、さらに、優れた保存安定性を実現させるために、ホウ酸エステル化合物、チタン酸エステル化合物、アルミネート化合物、ジルコネート化合物、イソシアネート化合物、カルボン酸、酸無水物及びメルカプト有機酸から選ばれる1種以上の安定剤を含有することが好ましい。
【0041】
ホウ酸エステル化合物としては、例えば、トリメチルボレート、トリエチルボレート、トリ-n-プロピルボレート、トリイソプロピルボレート、トリ-n-ブチルボレート、トリペンチルボレート、トリアリルボレート、トリヘキシルボレート、トリシクロヘキシルボレート、トリオクチルボレート、トリノニルボレート、トリデシルボレート、トリドデシルボレート、トリヘキサデシルボレート、トリオクタデシルボレート、トリス(2-エチルヘキシロキシ)ボラン、ビス(1,4,7,10-テトラオキサウンデシル)(1,4,7,10,13-ペンタオキサテトラデシル)(1,4,7-トリオキサウンデシル)ボラン、トリベンジルボレート、トリフェニルボレート、トリ-o-トリルボレート、トリ-m-トリルボレート、トリエタノールアミンボレート等が挙げられる。
【0042】
チタン酸エステル化合物としては、例えば、テトラエチルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトライソプロプルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラオクチルチタネート等が挙げられる。
【0043】
アルミネート化合物としては、例えば、トリエチルアルミネート、トリプロピルアルミネート、トリイソプロピルアルミネート、トリブチルアルミネート、トリオクチルアルミネート等が挙げられる。
【0044】
ジルコネート化合物としては、例えば、テトラエチルジルコネート、テトラプロピルジルコネート、テトライソプロピルジルコネート、テトラブチルジルコネート等が挙げられる。
【0045】
イソシアネート化合物としては、例えば、n-ブチルイソシアネート、イソプロピルイソシアネート、2-クロロエチルイソシアネート、フェニルイソシアネート、p-クロロフェニルイソシアネート、ベンジルイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2-エチルフェニルイソシアネート、2,6-ジメチルフェニルイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネート、トルイレンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4‘-ジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート等が挙げられる。
【0046】
カルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、カプリル酸等の飽和脂肪族一塩基酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和脂肪族一塩基酸、モノクロル酢酸、ジクロル酢酸等のハロゲン化脂肪酸、グリコール酸、乳酸等の一塩基性オキシ酸、グリオキザル酸、ブドウ酸などの脂肪族アルデヒド酸及びケトン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸等の脂肪族多塩基酸、安息香酸、ハロゲン化安息香酸、トルイル酸、フェニル酢酸、けい皮酸、マンデル酸等の芳香族一塩基酸、フタル酸、トリメシン酸等の芳香族多塩基酸等が挙げられる。
【0047】
酸無水物としては、例えば、無水コハク酸、無水ドデシニルコハク酸、無水マレイン酸、メチルシクロペンタジエンと無水マレイン酸の付加物、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸等の脂肪族又は脂肪族多塩基酸無水物等、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロリメリット酸等の芳香族多塩基酸無水物等が挙げられる。
【0048】
メルカプト有機酸としては、例えば、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、メルカプト酪酸、メルカプトコハク酸、ジメルカプトコハク酸などのメルカプト脂肪族モノカルボン酸、ヒドロキシ有機酸とメルカプト有機酸とのエステル化反応によって得られるメルカプト脂肪族モノカルボン酸、メルカプト安息香酸などのメルカプト芳香族モノカルボン酸等が挙げられる。
【0049】
安定剤としては、これらのうち、汎用性・安全性が高く、保存安定性を向上させる観点より、ホウ酸エステル化合物が好ましく、トリエチルボレート、トリ-n-プロピルボレート、トリイソプロピルボレート、トリ-n-ブチルボレートがより好ましく、トリエチルボレートがさらに好ましい。
【0050】
E成分の含有量は、封止用接着剤の保存安定性が高まりさえすれば特に制限は無いが、(A)成分であるエポキシ樹脂の含有を100質量部とした場合に、例えば0.001~50質量部、好ましくは0.05~30質量部、より好ましくは0.1~10質量部である。
【0051】
(F)その他の成分
本実施形態の封止用接着剤には、必要に応じて、本発明の分野で常用されている他の成分を加えることができる。
他の成分としては、例えば、有機フィラー、希釈剤、溶剤、顔料、可撓性付与剤、カップリング剤、酸化防止剤、チクソトロピー性付与剤、及び分散剤等が挙げられる。
有機フィラーとしては、例えば、ポリメタクリル酸メチル及び/又はポリスチレンにこれらを構成するモノマーと共重合可能なモノマーとを共重合させた共重合体等からなる有機フィラーなどが挙げられ、好ましくは、ポリメタクリル酸エステル系微粒子(アイカ工業社製 「ゼフィアック F351」)などが挙げられる。
【0052】
本実施形態に係る封止用接着剤は、「一液型」の熱硬化性樹脂組成物であることが好ましい。「一液型」の熱硬化性樹脂組成物とは、硬化剤とエポキシ樹脂とが予め混合された組成物であって、熱を加えることによって硬化する性質を有する組成物を意味する。
【0053】
封止用接着剤は、好ましくは、常温で液状である。
封止用接着剤の粘度(25℃、20rpm、E型粘度計での値)は、例えば1~50Pa・s、好ましくは10~40Pa・sである。
【0054】
2:封止用接着剤の製造方法
本実施形態に係る封止用接着剤の製造方法は、特に制限はなく、例えば、上記の(A)乃至(F)成分を、例えばヘンシェルミキサーなどの混合機を用いて混合することにより、得ることができる。
【0055】
3:封止用接着剤の使用方法
本実施形態に係る封止用接着剤は、封止機能(水蒸気バリア機能又はガスバリア機能)及び接着機能が要求される用途に使用される。例えば、そのような用途として、半導体装置、太陽電池、LCD、高輝度LED、EL素子及び有機TFT等の光半導体素子を有する光部品、並びにヘリウムガス等のガスにより充填されたHDD等において、素子や部品を被覆し、かつ部材同士を接着するために使用される用途が挙げられる。好ましくは、本実施形態に係る封止用接着剤は、ヘリウムガス等のガスにより充填されたHDDにおいて、ガスが充填された領域を密閉するための部材同士を接着するために使用される。
【0056】
本実施形態に係る封止用接着剤は、例えば、以下のようにして使用される。
まず、第1部材上に、封止用接着剤を供給する。次に、供給された接着剤上に、第2部材を配置する。続いて、前記供給された接着剤を硬化させる。例えば室温以上の温度で封止用接着剤を加熱することで、封止用接着剤を硬化させることができる。加熱温度は、例えば、70~150℃、好ましくは75~130℃、より好ましくは80~120℃の温度である。加熱時間は、例えば、1分~3時間、好ましくは、10分から1.5時間である。
【実施例】
【0057】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の記載において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0058】
[封止用接着剤樹脂組成物の調製]
表1は、実施例及び比較例に係る封止用接着剤の組成を示す。
(実施例1)
ビスフェノール型エポキシ樹脂(新日鐵住金化学社製「ZX1059」、エポキシ当量約169g/eq、ビスフェノールA型とビスフェノールF型の1:1混合品)35部に、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(三菱化学社製「jER152」、エポキシ当量約177g/eq )20部を加えた。次に、ポリメタクリル酸エステル系有機微粒子(アイカ工業社製「F351」)6部、フュームドシリカ(日本アエロジル社製「アエロジル#200」)1部、トリアジンチオール化合物(三協化成社製「ジスネットDB」)1部、及びマイクロマイカ(Imerys Mica Kings Mountain, Inc.社製「C-1000」、平均粒径25μm)24部を加えた。混合物を、「シンキー社製 あわとり練太郎」を用いて均一に撹拌した。そのあと、三本ロールミル(井上製作所社製)を用いて、固形分を均一に分散し、エポキシ樹脂組成物を得た。
得られたエポキシ樹脂組成物に、硬化剤(T&K TOKA社製「FXR1081」、芳香族ウレア系潜在性硬化剤)12部、及び安定化剤(東京化成社製「TEB」、トリエチルボレート)1部を加えて撹拌し、実施例1に係る封止用接着剤を得た。
【0059】
(実施例2)
実施例1において、トリアジンチオール化合物(三協化成社製「ジスネットDB」1部を3部に変えた。以上の事項以外は実施例1と同様にして、実施例2に係る封止用接着剤を得た。
【0060】
(実施例3)
実施例1において、トリアジンチオール化合物(三協化成社製「ジスネットDB」1部を6部に変えた。以上の事項以外は実施例1と同様にして、実施例3に係る封止用接着剤を得た。
【0061】
(実施例4)
実施例1において、マイクロマイカ(Imerys Mica Kings Mountain, Inc.社製「C-1000」、平均粒径25μm)24部に代えて、タルク(日本タルク社製「タルクK-1」,平均粒子径8.0μm)24部を用いた。また、トリアジンチオール化合物(三協化成社製「ジスネットDB」1部を6部に変えた。以上の事項以外は実施例1と同様にして、実施例4に係る封止用接着剤を得た。
【0062】
(実施例5)
実施例1において、トリアジンチオール化合物(三協化成社製「ジスネットDB」1部をトリアジンチオール化合物(三協化成社製「ジスネットF」6部に変えた。以上の事項以外は実施例1と同様にして、実施例5に係る封止用接着剤を得た。
【0063】
(比較例1)
実施例1において、トリアジンチオール化合物(三協化成社製「ジスネットDB」)1部に代えて、チオール化合物(淀化学工業社製「TMTP」、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオナート)、分子量398、3官能)6部を用いた。以上の事項以外は実施例1と同様にして、比較例1に係る封止用接着剤を得た。
【0064】
(比較例2)
実施例1において、トリアジンチオール化合物(三協化成社製「ジスネットDB」)1部を未添加とした。以上の事項以外は実施例1と同様にして、比較例2に係る封止用接着剤を得た。
【0065】
(比較例3)
実施例1において、トリアジンチオール化合物(三協化成社製「ジスネットDB」)1部及びマイクロマイカ(Imerys Mica Kings Mountain, Inc.社製「C-1000」、平均粒径25μm)24部を未添加とした。以上の事項以外は実施例1と同様にして、比較例3に係る封止用接着剤を得た。
【0066】
(保存安定性)
各実施例及び各比較例に係る封止用接着剤の温度を、25±2℃に保ち、E型粘度計(東機産業社製「RE-80U」、1°34’×R24コーン、回転数は20rpm)を用いて、初期粘度を測定した。
各封止用接着剤を、プラスティック製密閉容器に入れ、25℃にて7日間保管した。保管後に粘度を測定した。保管後の粘度の初期粘度からの倍数、すなわち(保管後の粘度/初期粘度)の値を、保存安定性の結果とした。
【0067】
(水蒸気透過率の測定)
厚さ38μmの離形PETフィルム上に、各封止用接着剤を、厚さ200μmで塗布し、熱循環オーブンで100℃、60分間熱硬化させた。
得られた硬化物サンプルから離形PETを剥離し、φ70mmの円形カッターを用いて、硬化物サンプルを円形に切り出した。
円形に切り出したサンプルを水蒸気透過率測定用のカップにセットし、JIS Z0208に基づいて、65℃、90%RH環境下、24hr水蒸気透過率試験を行った。
水蒸気透過率(g/m2・24hr)を、試験前後の塩化カルシウムの重量変化より算出した。
【0068】
(接着強度の測定)
被着面を紙やすり(#120)で研磨した軟鋼板(SPCC)を用意した。用意した軟鋼板上に、封止用接着剤を塗布した。接着領域が2.5mm×1.2mmとなるように、別の軟鋼板を重ねあわせた。重ねあわせた部分をクリップで固定し、テストピースを作成した。その後、100℃で60分間、熱循環オーブンで、封止用接着剤を硬化させた。
硬化後に、テストピースを、テンシロン(TSE社製テンシロン「AC-50KN-CM」)を用いて、25℃の環境下、5mm/secの速度で、上下に引張り、硬化させた封止用接着剤の引張りせん断接着強度を測定した。この操作を3回行い、その平均値を接着強度として求めた。
【0069】
(高温高湿耐性)
接着強度の測定用と同様にしてテストピースを作成した。作成したテストピースを、高温高湿槽に入れ、PCT(Pressure Cooker Test)試験(121℃、100%、24hr)を行った。
得られたPCT試験後のテストピースを、テンシロン(TSE社製テンシロン「AC-50KN-CM」)を用いて、25℃の環境下、5mm/secの速度で、上下に引っ張ることで、硬化させた封止用接着剤の引張りせん断接着強度を測定した。この操作を3回行い、その平均値を、高温高湿耐性の結果として求めた。
【0070】
表2に、保存安定性、水蒸気透過率、接着強度(PCT試験前接着強度)、及び高温高湿耐性(PCT試験後接着強度)の結果を示す。
【0071】
表2に示されるように、比較例2と比較例3とを比較すると、比較例2の方が水蒸気透過率が低く、高温高湿耐性が低い。すなわち、無機フィラーを添加することにより、封止性能(水蒸気バリア性)が高まるものの、高温高湿耐性が低下することが理解できる。
【0072】
一方、実施例1乃至5を比較例2と比較すると、実施例1乃至5の方が高温高湿耐性が高く、そのほかの特性はほとんど変わらない。すなわち、トリアジンチオール化合物を添加することにより、高温高湿耐性が向上し、封止性能と高温高湿耐性とを両立できることが理解できる。
【0073】
また、比較例1と比較例2とを比較すると、比較例1の方が保存安定性の値が大きく(保存安定性が悪い)、高温高湿耐性も低かった。すなわち、単にチオール化合物を添加したとしても、保存安定性を劣化させることなく高温高湿耐性を向上させることはできなかった。この結果から、実施例1乃至5において示された効果は、他のチオール化合物では得られない効果であり、トリアジンチオール化合物に特有の効果であることが理解できる。
【0074】
【0075】