(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-24
(45)【発行日】2023-04-03
(54)【発明の名称】直流電流遮断装置
(51)【国際特許分類】
H01H 33/59 20060101AFI20230327BHJP
【FI】
H01H33/59 D
(21)【出願番号】P 2022114453
(22)【出願日】2022-07-19
【審査請求日】2022-09-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】714003922
【氏名又は名称】嶋田 隆一
(73)【特許権者】
【識別番号】520032099
【氏名又は名称】株式会社シグマエナジー
(74)【代理人】
【識別番号】100114269
【氏名又は名称】五十嵐 貞喜
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 隆一
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-115173(JP,A)
【文献】特開2017-126544(JP,A)
【文献】国際公開第2017/018147(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0126098(US,A1)
【文献】特開2020-36307(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2022/0115863(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 9/54 - 9/56
H01H 33/28 - 33/59
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源と負荷との間に挿入される直流電流遮断装置であって、前記直流電流遮断装置は、
前記直流電源側に接続される第一の端子と前記負荷側に接続される第二の端子とを備え、前記第一の端子と前記第二の端子の間には、a接点である金属接点が接続され、
前記金属接点と並列に、複数の絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(以下「IGBT」問いう。)が、前記各IGBTのコレクタが前記第一の端子に、前記各IGBTのエミッタが分流抵抗を介して前記第二の端子にそれぞれ接続され、
前記各IGBTのゲートはゲート抵抗を介してゲート制御回路に接続され、さらに、前記ゲート制御回路には前記金属接点と連動するb接点である補助接点が接続され、
前記ゲート制御回路が、前記補助接点が開極されると、前記各IGBTのゲート抵抗を介して前記各IGBTのゲートに前記IGBTをオンする電圧を供給し、その後に連動する前記金属接点が閉極して前記金属接点に電流を流し、
前記金属接点が開極すると、前記金属接点に流れている電流を前記各IGBTに転流させ、その後に連動する前記補助接点が閉極すると、前記ゲート制御回路が前記各IGBTのゲートに前記各IGBTをオフする電圧を供給して前記各IGBTをオフすることにより、前記第一の端子と前記第二の端子の間に流れる電流を遮断することを特徴とする直流電流遮断装置。
【請求項2】
前記ゲート制御回路が、
コンデンサ(10)と抵抗(11)と逆流防止ダイオード(13)と直流の絶縁電圧源(14)との直列接続回路を備えるとともに、
前記コンデンサ(10)と前記抵抗(11)との接続点が前記ゲート抵抗(6)に接続され、かつ、
前記抵抗(11)と前記ダイオード(13)のカソードとの接続点が前記補助接点の一端に接続され、前記補助接点の他端が前記絶縁電圧源(14)の負側に接続されているものであって、
前記補助接点が開極されると前記絶縁電圧源(14)から前記各IGBTのゲート抵抗(6)を介して前記各IGBTのゲートに前記IGBTをオンする電圧を供給し、前記補助接点が閉極すると、前記絶縁電圧源(14)を短絡して、前記各IGBTのゲートに前記各IGBTをオフする電圧を供給することを特徴とする請求項1に記載の直流電流遮断装置。
【請求項3】
前記金属接点と並列に、コンデンサと抵抗からなるCRサージアブソーバとバリスタを接続し、前記金属接点の開極後の再起電圧の上昇率を抑えて、さらに該再起電圧を前記バリスタのブレークダウン電圧に抑えて、前記電流を前記バリスタに流して減流する請求項1に記載の直流電流遮断装置。
【請求項4】
さらに、前記IGBTのゲート電圧をPWM制御するPWM制御回路を備え、該PWM制御回路によって前記ゲート電圧をPWM制御することにより、電源投入時の突入電流や負荷電圧を制御して電流を減流する請求項1から3までのいずれかに記載の直流電流遮断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電流の遮断装置に関し、特に、金属接点と半導体スイッチを並列接続したハイブリッドスイッチ構成において、半導体スイッチを複数並列に接続して大電流の直流電流の遮断を可能にした直流電流遮断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、金属接点スイッチは通電損失の無いが、直流電流の遮断時(金属接点の開極時)にアークが発生して電流の遮断が困難であるので、遮断時のみ半導体スイッチに接点電流を転流して遮断するハイブリッド開閉装置に関する。
【0003】
半導体スイッチで大電流を制御するには、半導体スイッチを並列接続することになるが、MOSFETを用いる場合は、導通時、直線的な純抵抗の電圧電流特性であるので並列は容易であるが、比較的大電流には向かない。そこで大電流通電が可能な半導体スイッチである絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(以下「IGBT」という。)を用いることになるが、IGBTの特性は、温度が上がるとスレッショルド電圧が下がり、所謂、熱暴走と呼ばれる並列分流が困難な性質がある。
【0004】
従来の直流のハイブリッド開閉装置は、絶縁ゲートを持ったパワー用MOSFETやIGBT等の半導体スイッチを単独で使用して、開極時の接点間のアーク電圧で自動的にアーク電流を半導体スイッチに転流した後、半導体スイッチのゲートで電流を遮断することが可能であったが、大電流を制御するために半導体スイッチを並列駆動するためには、並列接続されたIGBTの均等な電流分流を確保する必要がある。
【0005】
本発明は金属接点とMOSFET等の半導体スイッチのハイブリッド開閉装置を、さらに大電流の直流に適用するために、大電流通電可能だが、非線形な順方向特性を持つIGBTを並列接続して直流大電流の遮断装置へ応用しようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【文献】放電ハンドブック出版委員会編「放電ハンドブック」電気学会編6.4.5「接点アーク」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1に開示された金属接点と半導体スイッチの並列の直流電流の開閉装置は、a接点が閉極する前にb接点の開極で半導体スイッチが通電を開始して、a接点が閉極すると、通電はa接点で行い、接点抵抗が十分低いので、半導体スイッチには電流が流れない。
特に、IGBTはオン状態ではスレッショルド電圧が1Vから2V程度あるが、金属接点間の電圧はこれより低いのでIGBTには電流が流れない。
次に、遮断の場合は、まずa接点が開極すると、その時すでに半導体スイッチがオン状態であるので、半導体スイッチに電流が流れ、金属接点間電圧は半導体スイッチによって決まる。非特許文献1によると、金属接点間にアークが発生するには、10V~20V程度の接点間電圧と数A以上の電流が大気圧中でのアークプラズマを維持するために必要である。
電流が半導体スイッチに流れて、半導体スイッチ回路が10V以下の電圧では、電流は半導体スイッチに、短時間、インダクタンス×電流÷10Vの時間で転流が完了、結局、アークは維持できずに短時間に消滅する。
その後、a接点の開極が進んで数msから10ms後、a接点の開極完了のタイミングとして(連動する)b接点の閉極によって、半導体スイッチをゲート電圧減にして、直流電流を遮断することができる。
【0009】
図2に、IGBTのゲート電圧V
GEに対するコレクタ電流Icの特性を示すが、IGBTは温度特性が負特性であるため並列接続には工夫が必要である。電流が大きくなると通電発熱でスレッショルド電圧が下がり、そこに電流が集中して温度が上がるとスレッショルド電圧がさらに下がって、ますます電流が集中するという特性(所謂「熱暴走」)があって、一般には、IGBTを並列で利用するには強力な熱除去に工夫が必要となる。
【0010】
本発明は、上記の点に鑑みなされたものであり、金属接点と半導体スイッチを並列接続したハイブリッドスイッチ構成において、半導体スイッチであるIGBTを複数並列に接続して大電流の直流電流の遮断を可能にした直流電流遮断装置を提供することを目的にする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、直流電源と負荷との間に挿入される直流電流遮断装置に関し、本発明の上記目的は、前記直流電源側に接続される第一の端子と前記負荷側に接続される第二の端子とを備え、前記第一の端子と前記第二の端子の間には、a接点である金属接点が接続され、前記金属接点と並列に、複数の絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(以下「IGBT」という。)が、前記各IGBTのコレクタが前記第一の端子に、前記各IGBTのエミッタが分流抵抗を介して前記第二の端子にそれぞれ接続され、前記各IGBTのゲートはゲート抵抗を介してゲート制御回路に接続され、さらに、前記ゲート制御回路には前記金属接点と連動するb接点である補助接点が接続され、
前記ゲート制御回路が、前記補助接点が開極されると、前記各IGBTのゲート抵抗を介して前記各IGBTのゲートに前記IGBTをオンする電圧を供給し、その後に連動する前記金属接点が閉極して前記金属接点に電流を流し、前記金属接点が開極すると、前記金属接点に流れている電流を前記各IGBTに転流させ、その後に連動する前記補助接点が閉極すると、前記ゲート制御回路が前記各IGBTのゲートに前記各IGBTをオフする電圧を供給して前記各IGBTをオフすることにより、前記第一の端子と前記第二の端子の間に流れる電流を遮断することを特徴とする直流電流遮断装置によって達成される。
【発明の効果】
【0012】
金属接点と半導体スイッチを用いた直流電流遮断装置に、短時間通電耐量が大きいIGBTを並列に用いて、大電流接点の閉極に先立って導通を開始して、開極時の遮断アークの発生を抑えることで、接点の損耗を防ぎ、並列接続したIGBTに金属接点の電流を短時間に転流して、最終的に直流電流をIGBTのゲート制御で同時遮断することで大電流高電圧の遮断が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明のIGBTを並列に複数接続した直流電流遮断装置の構成図である。
【
図2】半導体スイッチIGBTの通電電流特性(温度特性)を示す図である。
【
図3】本発明の直流電流遮断装置の投入と遮断の時間シーケンスを示す図である。
【
図4】IGBTのゲート電圧をパラメータにコレクタ電圧とコレクタ電流の特性を示す図である。
【
図5】本発明の直流電流遮断装置のゲート制御回路の一実施例である。
【
図6】本発明の直流電流遮断装置を複数個直列接続した応用例である。
【
図7】本発明の直流電流遮断装置を用いて突入電流共振を回避する実施例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明に係る直流電流遮断装置の構成例を示す図である。直流電流遮断装置は、直流電源の正側に接続される第一の端子(正端子)と、負荷の正側に接続される第二の端子(負端子)を備える。
正端子と負端子の間には、a接点である金属接点1が配置されるとともに、金属接点1と並列にIGBT4が、コレクタ側を正端子に、エミッタ側が分流抵抗(以下「エミッタ抵抗」という。)5を介して負端子に接続されている。また、IGBT4のゲートは、ゲート抵抗6を介してゲート制御回路9に接続されている。同様にして複数のIGBT4が金属接点1に並列に接続されている。
なお、並列接続した各IGBT4のエミッタに直列接続したエミッタ抵抗5は、その抵抗に生じた電圧降下をゲート電圧に負帰還させることで並列IGBTの電流分流を補正する役目を果たす。
【0015】
また、ゲート制御回路9には、b接点である補助接点2が備えられ、補助接点2の開閉信号を受けて、ゲート制御回路9がIGBT4のゲートに印加される電圧を制御する。
エミッタ抵抗5の抵抗値は低いのが好ましく、スレッショルド電圧が温度によって変化する以上の電圧を抵抗で加える。概ね、変化は1Vである。なお、エミッタ抵抗5の抵抗値は、概ね0.01Ωから0.1Ωであるが、設計に応じて変更可能である。
金属接点1の例として、ここでは、2点切の遮断器の構造を示すが、それは遮断時のアーク電圧が2直列になり、アーク電圧によるIGBT4への転流が確実になるとともに、遮断後の耐電圧の回復が早くなる効果と、開極スピードが実質2倍になる効果がある。
【0016】
また、金属接点1と補助接点2は開閉動作が連動機構3(不図示)によって連動しており、その動作については後述のとおりである。
さらに、金属接点1には、抵抗とコンデンサとからなるCRサージアブソーバ7と、バリスタ8が並列に接続されている。バリスタ8は、ある一定電圧で急に電流が流れ出す電圧-電流特性(電流非直線性)を持つ素子である。金属接点1にバリスタ8とコンデンサと抵抗からなるCRサージアブソーバ7を並列接続して、金属接点1の遮断後の再起電圧の上昇率を抑えて、さらに再起電圧をバリスタ8のブレークダウン電圧に抑えて、遮断電流をバリスタ8に流して、直列接続時の過電圧を抑えて減流することができる。
なお、ハイブリッドスイッチでは通電時間が短く、かつ、繰り返しは無いと思われるのでIGBT4とエミッタ抵抗5は、ヒートシンクなどの熱除去対策は不要であるのが特徴である。
そのIGBTは大電流通電耐量のある構造のゲート制御で自己消弧能力はあるが、温度特性が負特性のIGBTを多数並列接続してハイブリッド開閉装置に適用するに、金属接点から転流するのにアーク電圧に対してオン電圧が低ければ良く、短時間通電のIGBTのエミッタに、従来では考えられない大きな分流抵抗を付加することが可能で、エミッタ抵抗で負帰還をするゲート駆動にして大電流の直流ハイブリッド遮断装置を提供する。
すなわち、半導体スイッチ回路は、約10ms程度の短時間の通電とアーク電圧10V以下であれば良いので、数Vを分担するエミッタ抵抗を入れても、発熱問題も無く、均等な分流の安定化が可能である。
【0017】
図3は、本発明の直流電流遮断装置の電流投入(回路接続)と遮断の時間シーケンスを示す図である。
電流を流すには、金属接点1の閉極を開始すると、まず、連動する補助接点2から開極を開始する。その補助接点2が開極する電気信号をゲート制御回路9に送ると、ゲート制御回路9がIGBT4をオンする。そこで、電流はIGBT4とエミッタ抵抗5を介して正端子から負端子へと流れる。やがて数msから10ms程度の後、連動機構3が金属接点1に到達し、金属接点1の接点間の電圧が金属接触短絡状態となると、IGBT4の電流はIGBTのオン電圧と直列のエミッタ抵抗5の電圧が5V程度あるので停止する。IGBT4のゲート電圧はその後の期間は無くてもよいが、有ってもIGBT4のゲートはオン状態を維持するが電流は流れず、接点の発熱は少ないので冷却の必要はない。
【0018】
遮断時は、金属接点1の開極開始後、開極ギャップ長が得られるまでの遷移時間である約数msから10msの後、補助接点2が閉極するまでの間、IGBTのゲート制御回路9からゲート電圧が供給されてIGBTがオンになっているので、分流のためのエミッタ抵抗5の電圧数Vが加わっても金属接点1の2直列のアーク電圧より低いので、金属接点1の電流は、並列IGBT4に転流する。補助接点2が閉極することでゲート電圧がダウンしてIGBT4がオフするまでの数msから10ms程度の間、並列接続のIGBT4が全電流を通電する。
【0019】
本発明に係る直流電流遮断装置で電流を遮断するには、最初に、金属接点1が開極を開始するが、既にIGBT4のゲートがオン状態であり、IGBT4のオン電圧は5V程度とアーク電圧より小さい。大気中の直流アーク電圧は、上記特許文献1にあるが、ギャップ長によらず10Vから20Vで、アーク電流が10Aから数kAでも変わらない。アーク電流は発生と当時にIGBT4へと短時間(数μs)以内に転流する。金属接点1のアークはアーク維持電流以下となって自然に消滅して、その後、アーク無しに開極する。金属接点1の開極動作に数ms~10ms程度かかり、補助接点2が閉極するとゲート制御装置9はその信号を受けて並列接続されたIGBT4の全ゲート電圧をゼロにして全電流が遮断される。
【0020】
最終的に電流遮断するには、並列接続のIGBT4に金属接点1の電流を転流するが、事故などで大きくなった電流をIGBT4で減流するには、ゲート制御回路9はゲート電圧を低くして、IGBT4による定電流特性を利用して減流することも考えられる。その場合、IGBT4の限界を超え、IGBT4のジャンクションの溶断の可能性があるが、バリスタ8も動作を開始して電流を停止する。バリスタ8は酸化亜鉛(ZnO)半導体素子で、数kJのエネルギー吸収量もあり、その動作電圧でIGBT4から転流して減流する。事故電流の遮断器として減流遮断の能力も期待できる。
【0021】
図4は、IGBT「RJH60F6DKP」ルネサスエレクトロニクス(株)の600V-85Aのゲート電圧をパラメータにコレクタ電流とコレクタ電圧の関係を示す図であるが、例えばゲート電圧を9Vにすれば、100Aで定電流特性を示して電流が飽和しているのが分かる。IGBTのゲート電圧の制御で事故電流を減流遮断することが可能である。
【0022】
〔ゲート制御回路の実施例:
図5〕
図5は本発明に係るゲート制御回路9の実施例を示す図である。
IGBT4のコレクタの電圧をコンデンサ10は、実施例として0.05μFでIGBTのゲートにゲート抵抗6、ここでは実施例としてRg=100Ωを介して接続してあるが、IGBT4によって適宜選択される。さらに抵抗11、ここではRs=100Ωで、補助接点2を介してゲート電圧を短絡する。補助接点2には逆流防止ダイオード13を介して直流電源14(絶縁電圧源)が接続されている。出力電流制限抵抗15(1kΩ)と絶縁電圧源14でIGBT4の共通エミッタに繋いである。連動する補助接点2の閉極によって絶縁電圧源14が短絡されて、コンデンサ10の静電容量Csと抵抗11の抵抗値Rsの時定数CRでコレクタ電圧がCRの時定数で上昇することでゲート電圧をゼロにすることが出来る。すなわち補助接点2の閉極でゲート電圧はほぼゼロになる。
【0023】
コレクタに接続されたコンデンサ10と抵抗11は、IGBT4のゲート電圧の積分回路となって補助接点2が閉極となってゲート遮断されるとき、積分時定数CRでIGBTの電圧が上昇する。これは遮断後の直流電流遮断装置の再起電圧の上昇率を決定するもので、直流電流遮断装置を複数直列接続した場合、直列遮断のタイミングのバラツキに対しての分圧の差を小さくする効果を奏する。
【0024】
〔第2実施形態:
図6〕
図6は本発明の直流電流遮断装置を一つのユニットとして、これを直列多段に接続して高電圧化した実施例である。
直列多段接続で高電圧化する場合、投入・遮断タイミングの同時性が重要で、1つでも遅れると電圧分担が乱れる。バリスタ8の存在で一つのユニットが先に遮断した場合、バリスタ電圧に維持して過電圧から保護しているが、他の直列されたユニットが遮断するのを待たねばならない。その間、バリスタのエネルギー吸収量が大きくなるのを考慮して選択するが、その時間は接点開閉器の機械動作の変動幅、すなわちジッターがあるので不確実性がある。
図6では、各直流電流遮断装置のb接点信号を受けて、そのNAND信号によって全直流電流遮断装置のゲート電圧を同時に制御するシーケンス制御装置16を備え、IGBTのゲートに、外部からの通信を介して、シーケンス制御装置16が直列接続された全てのユニットのb接点の閉/開状態を確認して、その後に同時に全ての直列接続された直流電流遮断装置の半導体スイッチ(IGBT)にゲート信号を出すことで、接点のジッターの影響なしに、電流の同時開閉が可能になる。その結果、バリスタ8の耐熱容量、吸収エネルギー量が削減できる。
【0025】
〔第3実施形態:
図7〕
図7に、直流配電系統の投入時の突入電流を回避する概念図を示すが、配電ルートが数kmになると線路のインダクタンスが数mHになって共振が現れ、供給側の電圧が50%以下になって停止する問題がある。電源投入時にシーケンス制御装置(不図示)が電流を計測して、過電流になる場合、IGBTのゲートの制御で電流を断続してパルス状に供給することで、負荷側のコンデンサとの共振を回避することができる。
【0026】
直流配電系統では、400V程度の直流電圧で数kmの直流配電線を介して双方に数千μFの電解コンデンサを有した電源を開閉器で接続するが、数千μFのコンデンサと配電線の数mHのインダクタンスで電位振動を起こして供給側の電圧が低下して運転停止になる問題がある。所謂、突入電流である。
投入時、金属接点1が閉極するのに先立って、IGBT4をPWM(パルス幅変調)制御回路(不図示)で数kHzでオン・オフして、突入電流の振動を止めることができる。実質的に抵抗投入と同じ電流波形が可能である。振動の周波数は配電線が4kmとしても50Hz程度であるので10ms程度の間、PWM制御することで階段状の電流波形にすることができる。
【0027】
金属接点1の閉極指令で金属接点1の駆動電磁コイルに電圧を印加して、閉極するまで10msから30msの時間がかかるので、この間IGBT4がPWM制御で導通すれば、金属接点1が閉極して全電流が金属接点1に流れるまでに突入電流は減衰して、最終的に電流はIGBT4からオン電圧の低い金属接点1側に転流する。
【0028】
このように、電流を投入・遮断する際に、半導体スイッチであるIGBT4のオン・オフを高速にPWM制御すれば、負荷電圧、電流を制御することができる。電源投入時のラッシュ電流を、直列ハイブリッドスイッチのゲート電圧のPWM制御で回避することができる。多段のハイブリッドスイッチのIGBT4をプログラムでオン/オフして、電流を緩やかに上昇、降下することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
過電流耐量の大きなIGBTを並列に用いて、大電流直流ハイブリッド遮断装置を提供する。さらにその直列接続で高電圧大電流のハイブリッド遮断装置とする。アーク無しに遮断するのみでなく投入時にも半導体スイッチを制御して突入電流を回避することができる。
【符号の説明】
【0030】
1:金属接点(a接点)
2:補助接点(b接点)
3:連動機構
4: IGBT
5:エミッタ抵抗Re(分流抵抗)
6: ゲート抵抗Rg
7:CRサージアブソーバ
8:バリスタ
9:ゲート制御回路
10:コンデンサ
11:抵抗Rs
12:逆圧保護ダイオード(Diode2)
13:逆流防止ダイオード(Diode1)
14:絶縁電圧源
15:出力電流制限抵抗
【要約】
【課題】直流電流を金属接点と複数のIGBTを並列接続したハイブリッドスイッチで投入電流を減流制御し、アークなしに電流を遮断する。
【解決手段】金属接点1の電流を開極時のアーク電圧で並列のIGBT4に転流して、補助接点2の信号でIGBT4で電流を遮断するが、並列接続した各IGBT4のエミッタにエミッタ抵抗5を直列接続して、ゲート電圧に負帰還させることで並列IGBT4の電流分流を補正し、投入時もIGBT4のゲートをPWM制御して突入電流を減流する。
【選択図】
図1