(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-24
(45)【発行日】2023-04-03
(54)【発明の名称】ドリップバッグ
(51)【国際特許分類】
A47J 31/06 20060101AFI20230327BHJP
A47J 31/02 20060101ALI20230327BHJP
B65D 85/804 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
A47J31/06 160
A47J31/02
B65D85/804 100
(21)【出願番号】P 2019105435
(22)【出願日】2019-06-05
【審査請求日】2022-03-07
(31)【優先権主張番号】P 2018151347
(32)【優先日】2018-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 大紀商事株式会社が、平成30年6月19日に特願2019-105435号の
図1Aに記載のドリップバッグを、大紀商事株式会社K-4工場から出荷した。
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】396015057
【氏名又は名称】大紀商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000224
【氏名又は名称】弁理士法人田治米国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】星野 宏充
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏彰
(72)【発明者】
【氏名】角谷 亜希子
【審査官】松井 裕典
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-146932(JP,A)
【文献】特開2004-24763(JP,A)
【文献】特開2012-90775(JP,A)
【文献】実開昭58-154161(JP,U)
【文献】国際公開第2014/091568(WO,A1)
【文献】特開2010-110335(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第1050257(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 31/00-31/60
B65D 67/00-79/02
B65D 81/18-81/30
B65D 81/38
B65D 85/50-85/52
B65D 85/72-85/84
B65D 85/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部が開口する袋本体、及び袋本体の対向する2面の外表面に設けられた掛止部材を有するドリップバッグであって、
袋本体は通水濾過性シートから形成され、
掛止部材は薄板状材料から形成され、
袋本体の対向する各面の外表面において、掛止部材は、袋本体の開口縁部に沿って設けられた引き起こし不能の上部帯状部、
上部帯状部の下側で、袋本体の幅方向の中心線の両側にそれぞれ形成された一対の掛止部、
一対の掛止部の下側に設けられた引き起こし不能の中央貼着部、及び
一対の掛止部の、袋本体の側辺側の端部を中央貼着部の下側で連続させる連結部を有し、
各掛止部は、前記中心線側の端部が袋本体上に固定されて袋本体の側辺側から引き起こし可能であり、
中央貼着部は、前記中心線の両側に斜め折れ線を有し、該斜め折れ線と前記中心線との距離が、該斜め折れ線の上端に比して下端が大きいドリップバッグ。
【請求項2】
袋本体の対向する各面の外表面において、掛止部材は、掛止部よりも袋本体側辺側に、上部帯状部から下方に延設された補強部を有する請求項1記載のドリップバッグ。
【請求項3】
一対の掛止部の前記中心線側の端部が、その上端が上部帯状部と連続し、下端が中央貼着部と連続していることにより袋本体に固定されている請求項1又は2記載のドリップバッグ。
【請求項4】
一方の掛止部の前記中心線側の端部から他方の掛止部の前記中心線側の端部にかけての領域が袋本体に貼着されていない請求項3記載のドリップバッグ。
【請求項5】
一対の掛止部の前記中心線側の端部に折れ線を有する請求項1~4のいずれかに記載のドリップバッグ。
【請求項6】
一対の掛止部の下辺の袋本体側辺側に凹部が形成されている請求項1~5のいずれかに記載のドリップバッグ。
【請求項7】
上部帯状部の前記中心線の両側に上下方向の折れ線を有する請求項1~6のいずれかに記載のドリップバッグ。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載のドリップバッグの袋本体に抽出材料が充填されており、袋本体の上部に易開裂線が形成されているドリップバッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カップ等の容器の上部に掛止することにより、容易にドリップ式でコーヒー、紅茶、緑茶、漢方薬等の抽出液を得られるようにするドリップバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、手軽に本格的なコーヒーを楽しむことを可能とするコーヒーの入れ方として、ペーパードリップ方式が広く普及している。このペーパードリップ方式では、通常、数杯分のコーヒーが一度に抽出される。
【0003】
一方、近年、一人暮らしをする者が多くなり、また、核家族化や出生率の低下等により一家族の構成人数も少なくなっている。そのため、従来の数杯分のコーヒーを抽出することが基本とされているペーパードリップ方式に代えて、一杯分のコーヒーの抽出を手軽に行えるようにすることを目的とした、使い捨てのドリップバッグが種々の製品形態で市場に出回っている。
【0004】
このようなドリップバッグのうち生産性に優れたものとして、上端部が開口する袋本体の対向する2面の外表面に、薄板状材料からなる掛止部材が貼着されており、その掛止部材が袋本体から引き起こし可能な掛止部を有し、掛止部でドリップバッグがカップに掛止されるようにしたものがある。より具体的には、掛止部の下側が袋本体に固定され、掛止部が、袋本体の上辺側から引き起こされるようにしたもの(特許文献1)、掛止部の袋本体中心側が袋本体に固定され、掛止部が袋本体側辺側から引き起こされるようにしたもの(特許文献2、3)などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許4079041号公報
【文献】特許4652000号公報
【文献】特開2015-146932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献2、3に記載のドリップバッグのように、掛止部が袋本体側辺側から引き起こされるようにしたものは、特許文献1に記載のドリップバッグのように掛止部が袋本体上辺側から引き起こされるようにしたものに比して横長の袋本体に適合し、袋本体の開口形状を広くすることができる。
【0007】
しかしながら、袋本体を横長に形成して袋本体に広い開口形状を確保すると、ドリップバッグをカップに掛止した状態でカップ内が見づらくなり、ドリップバッグへの注湯時にカップ内の湯量がわかりにくくなる。
【0008】
これに対し、本発明は、袋本体の表裏に、薄板状材料から形成された掛止部材が貼着され、該掛止部材が、袋本体から引き起こし可能な掛止部を有するドリップバッグにおいて、袋本体に広い開口形状を確保し、かつドリップバッグをカップに掛止した状態でカップ内を見やすくすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、袋本体の表裏に、薄板状材料から形成された掛止部材を貼着したドリップバッグにおいて、掛止部材に、袋本体側辺側から引き起こされる掛止部を設けると共に、その掛止部の下方に、特定の折れ線を有する中央貼着部を設けると、ドリップバッグをカップに掛止した状態でカップの側壁と中央貼着部との間隙が広がり、カップ内が見やすくなることを想到し、本発明を完成した。
【0010】
即ち、本発明は、上部が開口する袋本体、及び袋本体の対向する2面の外表面に設けられた掛止部材を有するドリップバッグであって、
袋本体は通水濾過性シートから形成され、
掛止部材は薄板状材料から形成され、
袋本体の対向する各面の外表面において、掛止部材は、袋本体の開口縁部に沿って設けられた引き起こし不能の上部帯状部、
上部帯状部の下側で、袋本体の幅方向の中心線の両側にそれぞれ形成された一対の掛止部、
一対の掛止部の下側に設けられた引き起こし不能の中央貼着部、及び
一対の掛止部の、袋本体の側辺側の端部を中央貼着部の下側で連続させる連結部を有し、各掛止部は、前記中心線側の端部が袋本体上に固定されて袋本体の側辺側から引き起こし可能であり、
中央貼着部は、前記中心線の両側に斜め折れ線を有し、該斜め折れ線と前記中心線との距離が、該斜め折れ線の上端に比して下端が大きいドリップバッグを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のドリップバッグによれば、袋本体の対向する2面の各外表面において、袋本体の幅方向の中心線の両側に設けられている一対の掛止部は、それぞれが袋本体の側辺側から引き起こし可能であり、袋本体中心線側の端部が袋本体上に固定されているので、掛止部の袋本体中心線側の端部は、掛止部の袋本体の側辺側が引き起こされるときの軸になる。このため、掛止部材を横長に(即ち、袋本体の幅方向に長く)形成することにより、袋本体をカップに掛止させるために掛止部に必要とされる袋本体幅方向の長さを十分に確保することができる。また、掛止部材を横長に形成することにより該掛止部材で支持される袋本体も横長に形成することができるので、袋本体の開口形状を大きくすることができる。このため、ドリップバッグを用いて抽出液を得るときには、ドリップバッグへの注湯が容易となる。
【0012】
さらに、このドリップバッグの中央貼着部には、袋本体の幅方向の中心線の両側に斜め折れ線が形成されているので、ドリップバッグをカップに掛止した状態で、前記中心線の両側の斜め折れ線で挟まれた領域の面が斜め下向きに傾く。これにより、ドリップバッグをカップに掛止させた状態で、カップの開口面がドリップバッグによって広く覆われても、カップの側壁とドリップバッグの中央貼着部との隙間が広がり、この隙間を通してカップ内を見ることができる。したがって、ドリップバッグへの注湯時に湯量を確認することが可能となる。
【0013】
加えて、このドリップバッグによれば、袋本体の対向する2面の各外表面において、一対の掛止部の、袋本体の側辺側の下端が中央貼着部の下側の連結部で連続しているので、ドリップバッグをカップに掛止させた状態では、カップに掛止している掛止部の下端が連結部に引き寄せられ、それにより掛止部が僅かにねじられて引き起こしの軸の下端が該軸の上端よりもカップの開口壁側に引っ張られ、前記中心線の両側の斜め折れ線で挟まれた領域の面がより一層斜め下向きに傾き易くなる。この効果は、特に開口径の大きいカップで顕著となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1A】
図1Aは、実施例のドリップバッグ1Aの未開封状態の平面図である。
【
図1B】
図1Bは、実施例のドリップバッグ1Aの開口過程を示す斜視図である。
【
図1C】
図1Cは、実施例のドリップバッグ1Aをカップに掛止した状態の斜視図である。
【
図1D】
図1Dは、実施例のドリップバッグ1Aをカップに掛止した状態の側面図である。
【
図2】
図2は、実施例のドリップバッグ1Aの製造に使用するドリップバッグ製造用シートの平面図である。
【
図3】
図3は、実施例のドリップバッグ1Aの製造方法の説明図である。
【
図4A】
図4Aは、実施例のドリップバッグ1Bの未開封状態の平面図である。
【
図4B】
図4Bは、実施例のドリップバッグ1Bの開口過程を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、実施例のドリップバッグ1Cの未開封状態の平面図である。
【
図6A】
図6Aは、実施例のドリップバッグ1Dの未開封状態の平面図である。
【
図6B】
図6Bは、実施例のドリップバッグ1Dの開口過程を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、実施例のドリップバッグ1Eの未開封状態の平面図である。
【
図8A】
図8Aは、比較例のドリップバッグ1Xの未開封状態の平面図である。
【
図8B】
図8Bは、比較例のドリップバッグ1Xをカップに掛止した状態の斜視図である。
【
図8C】
図8Cは、実施例のドリップバッグ1Xをカップに掛止した状態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明を具体的に説明する。なお、各図中、同一符号は同一又は同等の構成要素を表している。
【0016】
(ドリップバッグの全体構造)
図1Aは、本発明の一実施例のドリップバッグ1Aの未開封状態の平面図であり、
図1Bはこのドリップバッグ1Aの開口過程の斜視図であり、
図1C及び
図1Dはこのドリップバッグ1Aをカップ100に掛止させた状態の斜視図及び側面図である。このドリップバッグ1Aは、袋本体10と袋本体10の対向する2面の外表面(即ち、袋本体10の表裏の面)に設けられた一対の掛止部材20で形成されている。掛止部材20は、後述するように、上部帯状部21と、袋本体10から引き起こし可能な掛止部23と、袋本体10から引き起こし不能の中央貼着部25を有し、中央貼着部25には左右一対の斜め折れ線B1a、B1bが形成されている。なお、
図1Aにおいて、斜線で塗りつぶした部分は、掛止部材20と袋本体10との貼着領域である。
【0017】
(袋本体)
袋本体10は、通水濾過性シートから形成され、その内部には抽出材料としてコーヒー粉が充填されている。
【0018】
袋本体10を形成する通水濾過性シートとしては、所定量のコーヒー粉を充填し、注湯した場合にコーヒーの浸出が可能であるものを種々使用することができる。一般に、浸出用シートとしては、例えば、ポリエステル、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ビニロン等の合成繊維、レーヨン等の半合成繊維、コウゾ、ミツマタ等の天然繊維の単独又は複合繊維からなる織布あるいは不織布、マニラ麻、木材パルプ、ポリプロピレン繊維等からなる混抄紙等、ティーバッグ原紙等の紙類が知られており、本発明においてもこれらを使用することができるが、ドリップバッグの使用後の廃棄性の点から、通水濾過性シート材料には生分解性繊維を含有させることが好ましい。生分解性繊維としては、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート等を挙げることができる。
【0019】
袋本体10は、上辺11a、下辺11b及び一方の側辺11cがシールされ、他方の側辺11dが通水濾過性シートの折山で輪になった矩形の平袋であり、対向する2面を有している。
【0020】
袋本体10の正味の平面寸法は、ドリップバッグを掛止するカップ又は容器の大きさに応じて適宜設定することができる。例えば、市販のコーヒーカップで、ドリップバッグの袋本体として使用できる大きさにすればよい。
【0021】
(掛止部材)
掛止部材20は、板紙、プラスチックシート等の薄板状材料の打ち抜きにより形成されている。この薄板状材料も、ドリップバッグ1Aの使用後の廃棄性の点から、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート等の生分解性材料から形成したものが好ましい。
【0022】
袋本体10の表裏に設けられている各掛止部材20は、袋本体10の開口縁部に沿って設けられた引き起こし不能の上部帯状部21、上部帯状部21の下側(袋底部側)で、袋本体10の幅方向の中心線Aの両側にそれぞれ形成された左右一対の掛止部23(23a、23b)、掛止部23の下側に設けられた引き起こし不能の中央貼着部25を有している。
【0023】
左右一対の掛止部23(23a、23b)は、それぞれ、中心線A側の端部が袋本体上に固定されて袋本体の側辺側から引き起こし可能となっている。より具体的には、一方の掛止部23aの中心線A側の端部から他方の掛止部23bの中心線A側の端部にかけての領域(以降、この領域を中間部24ともいう)の上端が上部帯状部21と連続し、下端が中央貼着部25と連続することで中間部24が袋本体10から引き起こし不能となっており、この中間部24が引き起こし不能となることで左右一対の掛止部23の中心線A側の端部が袋本体10上に固定されている。中間部24は、袋本体10に貼着されておらず、袋本体から浮いている。このように、本発明において、掛止部23の中心線A側の端部が袋本体10上に固定されているとは、この部分が袋本体10から引き起こし不能であれば袋本体10に貼着されていなくてもよい。一方、各掛止部23a、23bの袋本体の側辺側はL字型に屈曲し、カップに掛止できる形状となっている。
【0024】
また、本実施例では、各掛止部23a、23bの中心線A側の端部、即ち、各掛止部23a、23bと中間部24との境界部分に折れ線B2が形成されている。したがって、
図1Bに示すように、掛止部23(23a、23b)を袋本体の側辺11c、11d側から引き起こすと、折れ線B2が引き起こしの軸となり、掛止部23の引き起こし形状が安定する。したがって、掛止部23をカップ100に掛けた後、掛止部23がカップ100から外れにくくなる。
【0025】
左右一対の掛止部23の下辺(中央貼着部25の上辺と対向する辺)の袋本体側辺11c、11d側には凹部26が形成されている(
図1A)。これにより、ドリップバッグ1Aをカップ100に掛止した場合に、掛止部23の凹部26にカップ100の側壁の上縁部が入り、ドリップバッグ1Aのカップ100への掛止状態が安定する。袋本体上下方向の凹部26の深さh1は、ドリップバッグ1Aをカップに掛止したときにカップ内に垂下させる袋本体10の深さ(言い換えると、カップに注湯した湯に袋本体をどの程度の深さで浸漬させるか)に応じて適宜定める。一方、掛止部23の前記中心線A側の袋本体上下方向の長さh2は、カップに掛止させたドリップバッグ1Aの安定性の点から適宜定める。
【0026】
一対の掛止部23の袋本体側辺11c、11d側の端部同士は、弧状に湾曲した帯状の連結部27を介して中央貼着部25の下側で連続しており、中央貼着部25が左右一対の掛止部23と連結部27で囲まれている。袋本体10の表裏の各面において一対の掛止部23の端部が連結部27で連続していることにより、ドリップバッグ1Aをカップ100に掛止させた状態では、カップ100に掛止している掛止部23の下端が連結部27に引き寄せられ、それにより掛止部23に僅かにねじれが生じ、掛止部23の引き起こしの軸となる折れ線B2の下端が該軸の上端よりもカップの開口壁側に引っ張られる。これにより、ドリップバッグ1Aをカップ100に掛止させた状態で、斜め折れ線B1a、B1bで挟まれた領域25aの面が下向きに傾くという本発明の効果を、連結部27が無い場合に比してより得やすくなる。この効果は、特に開口径の大きいカップで顕著となる。
【0027】
また、左右一対の掛止部23よりも袋本体側辺11c、11d側には、上部帯状部21から下方に延設された補強部28が設けられている。本発明において補強部28は必要に応じて設けられる。即ち、袋本体10を開口後、掛止部23をカップに掛けるために袋本体10の表裏の掛止部23を互いに反対方向に引っ張ったときに、補強部28を設けることで袋本体10の表裏方向の開きが抑制されるので、開口径の小さいカップにも掛止部23を掛けやすくなる。また、補強部28を設けることで袋本体10の開口形状を柱状に安定させることができる。
【0028】
中央貼着部25は袋本体10から引き起こし不能に設けられ、前記中心線Aの両側に一対の斜め折れ線B1a、B1bを有している。斜め折れ線B1a、B1bは、それぞれ中心線Aの片側に存在し、好ましくは中央貼着部25の上辺から下辺まで、中央貼着部25を斜めに縦断するように形成される。斜め折れ線B1a、B1bと前記中心線Aとの距離は、該斜め折れ線B1a、B1bの上端に比して下端が大きい。これにより、後述するようにドリップバッグ1Aの袋本体10を開口し、ドリップバッグ1Aをカップ100に掛止すると、中心線Aの両側の斜め折れ線B1a、B1bで挟まれた領域25aが斜め下向きとなるように傾き、中央貼着部25とカップ100の壁面との間隙が広がり、該間隙を通してカップ100内を見ることが可能となる(
図1D)。これに対し、中央貼着部25に、中心線Aの両側に中心線Aと平行に袋本体の上下方向に折れ線を設けてもその折れ線で挟まれた領域はドリップバッグをカップに掛止しても下向きに傾かず、上述の効果を得ることはできない。
【0029】
この領域25aが斜め下向きとなる効果を得やすくするため、斜め折れ線B1a、B1bの上端B1a-u、B1b-uは、掛止部23の凹部26よりも中心線A側にあることが好ましく、中心線A上にあってもよい。また、破線B1a’、B1b’で示したように、斜め折れ線B1a、B1bの下方への延長線が補強部28と交差せず、かつ袋本体10の下辺11bと交差するように斜め折れ線B1a、B1bを形成することが好ましい。これに対し、斜め折れ線B1a、B1bの延長線が補強部28と交差すると、補強部28が屈曲しにくいことから、領域25aが斜め下向きとなる効果を得にくくなる。また、破線B1a’’、B1b’’で示したように斜め折れ線B1a、B1bの延長線が袋本体の側辺11c、11dと交差すると、その交差部分よりも下側で袋本体10が開きにくくなる。さらに、領域25aが斜め下を向きやすくするため、補強部28の有無に関わらず、斜め折れ線B1a、B1bと中心線Aとのなす角度が好ましくは5度以上、より好ましくは10度以上となるようにすることが好ましい。また、領域25aの幅が狭すぎると斜め下向きとなる領域も狭くなり、ドリップバッグ1Aをカップ100に掛止した場合にカップ100内を見やすくなる効果が小さくなることから、斜め折れ線B1a、B1bの下端B1a-b、B1b-bは、中央貼着部25の幅を4等分に分割した場合に、中心線Aから中央貼着部25の1/4幅より外側の範囲C2にすることが好ましい。
【0030】
なお、本発明のドリップバッグにおいて凹部26の無い態様では、斜め折れ線B1a、B1bの上端B1a-u、B1b-uは、中央貼着部25の幅を4等分に分割した場合に、中心線Aから中央貼着部25の1/4幅以内の範囲C1とすることが好ましい。またこの場合に斜め折れ線B1a、B1bの下端B1a-b、B1b-bは、凹部26を有する前述の態様と同様とすることができる。
【0031】
本発明において斜め折れ線B1a、B1bは必ずしも直線に限られず、また、斜め折れ線B1a、B1bは中心線Aの両側にそれぞれ1本以上あればよく、必ずしも一対に限られない。
【0032】
また、本発明において折れ線は、ドリップバッグをカップに掛止した場合に折れ曲がればよく、ミシン目、ハーフカット、筋押し等により形成することができる。
図1Aに示したドリップバッグ1Aでは、斜め折れ線B1a、B1bは切れ線のみで形成されていてもよい。斜め折れ線B1a、B1bで分割された中央貼着部25が、それぞれ下地の袋本体10と貼着されているので、切れ線で囲まれた領域が袋本体10から脱落することはない。
【0033】
袋本体10の表裏の上部帯状部21は、袋本体10から引き起こし不能に設けられている。また、上部帯状部21は袋本体10の側辺のうち輪になっている側辺11d側の端部で連続している。この連続により、後述するようにドリップバッグ製造用シート40の製造に際して掛止部材20を通水濾過性シート41に貼着するときに、精確に所定の位置に貼着することが容易となり、袋本体10の表裏の掛止部材20の位置がズレることを防止できる。
【0034】
上部帯状部21には、前記中心線Aの両側に、好ましくは袋本体10の幅を略3等分する位置に上下方向の折れ線B3が形成されている。また、上部帯状部21の上側にはミシン目等の易開裂線29を介して切除部30が延設されている。
【0035】
(ドリップバッグの使用方法)
ドリップバッグ1Aの使用方法としては、まず、易開裂線29で切除部30を切り取ることにより、袋本体10の上端部も切り取り、袋本体10を開口する。次に、連結部27を把持して掛止部23(23a、23b)を引き起こし(
図1B)、袋本体10の表裏の掛止部23を互いに反対方向に引っ張り、掛止部23をカップ100に掛止する。このとき、掛止部23の凹部26にカップ100の側壁の上縁が入り、また、連結部27でカップ100の側壁が押さえられ、ドリップバッグ1Aのカップ100への掛止状態が安定する(
図1C)。さらに、この掛止状態では、中央貼着部25が斜め折れ線B1a、B1bで屈曲し、中央貼着部25のうち斜め折れ線B1a、B1bで挟まれた領域25aが斜め下向きに傾く。したがって、
図1Dに示すように、この領域25aとカップ100の側壁との間隙が広がり、カップ100を斜め上方から見た場合に、視線Xがカップ100の内に達する。よって、袋本体10を開口し、カップ100に掛止したドリップバッグ1Aに注湯するときに、カップ100内の湯量がわかり、注湯量を適量に調節することが容易となる。特に、このドリップバッグ1Aでは、中間部24が袋本体10に貼着されていないので、中間部24は袋本体10から浮き上がり、撓むことができる。このため、領域25aが斜め下向きに傾くときの屈曲の基点P(
図1C、
図1D)は、一対の掛止部23の中心線A側の下端同士を結んだラインよりも上側となり、また、中間部24が袋本体10に貼着されている場合よりも、カップ100の開口壁側に突出した位置となる。これにより領域25aの鉛直方向に対する傾きは、中間部24が袋本体10に貼着されている場合よりも大きくなり、視線Xでカップ100内の湯量を見ることがさらに容易になる。
【0036】
これに対し、
図8Aに示すドリップバッグ1Xのように、中央貼着部25に斜め折れ線B1a、B1bが形成されていないと、袋本体10を開口し、掛止部23を引き起こし、カップ100に掛止しても(
図8B)、
図8Cに示すように、中央貼着部25の面が略鉛直に立っているため、注湯時の視線Xが中央貼着部25で遮られ、カップ100内の湯量がわからない。このため、注湯時にカップ100から湯が溢れてしまう場合があり、また、注湯後にカップ100からドリップバッグ1Xを外してみると、注湯量が少なすぎたために再度ドリップバッグ1Xをカップ100に掛止して注湯を行うことを余儀なくされるといった問題が生じる。
【0037】
また、斜め折れ線B1a、B1bの上端と中心線Aとの距離が、下端と中心線Aとの距離よりも大きくなるように斜め折れ線B1a、B1bが傾いていると(図示せず)、斜め折れ線B1a、B1bで挟まれた領域25aの面が斜め上向きになりやすく、注湯時のカップ100内を見る視線Xが、
図8Cに示した状態よりもさらに遮られてしまう。
【0038】
(ドリップバッグの製造方法)
ドリップバッグ1Aの製造方法としては、まず、
図2に示すように、長尺の通水濾過性シート41に掛止部材20を所定間隔で並べて貼着したドリップバッグ製造用シート40を用意する。このドリップバッグ1Aによれば、袋本体10の表裏の掛止部材20が連続しているため、この貼着時に表裏の掛止部材20同士で貼着位置がずれることがなく、長尺の通水濾過性シート41に掛止部材20を精確に所定間隔で貼着することができる。なお、同図において、隣り合う二点鎖線で挟まれた領域が、ドリップバッグ一個分の製造に使用される領域となる。
【0039】
次に、ドリップバッグ製造用シート40を自動包装充填機にかけ、
図3に示すようにドリップバッグ製造用シート40の長手方向の両側辺を重ね合わせるように二つ折りにし、その長手方向の側辺同士を溶着(縦シール)することにより筒状体を形成する。筒状体の短手方向の溶着(横シール)と袋本体10内への内容物の充填を交互に繰り返すことによりドリップバッグ1Aの袋本体10が上下に繋がったドリップバッグを製造し、これを切り離して個々のドリップバッグ1Aを得る。あるいは、袋本体10の上辺11aと下辺11bの溶着時にそれらの溶断も同時に行い、個々に切り離されたドリップバッグ1Aを連続的に製造する。
【0040】
(変形態様)
本発明のドリップバッグは、上述のドリップバッグ1Aの他にも種々の態様をとることができる。
【0041】
例えば、
図4Aに示したドリップバッグ1Bのように、中央貼着部25に形成する斜め折れ線B1a、B1bの上端を、袋本体幅方向の中心線A側の掛止部23の縁辺(折れ線B2)と中央貼着部25との交点とすることができる。これにより、斜め折れ線B1a、B1bと中心線Aとがなす角度θa、θbが大きくなるので、斜め折れ線B1a、B1bで挟まれた領域25aが扇形に近づいてより一層斜め下向きに傾きやすくなり(
図4B)、注湯時のカップ内の観察がさらに容易となる。
【0042】
図5に示したドリップバッグ1Cは、
図1Aに示したドリップバッグ1Aに対して補強部28を省略し、中間部24が袋本体10に貼着されている。中間部24を袋本体10に貼着することにより、掛止部23の安定性を高めることができる。また、この態様では中間部24が上部帯状部21と連続せず、中央貼着部25とも連続していない。
【0043】
補強部28が無いドリップバッグ1Cでは、斜め折れ線B1a、B1bの延長線が袋本体の側辺11c、11dと交差せず、袋本体10の下辺11bと交差するように斜め折れ線B1a、B1bを形成することが好ましい。なお、
図5に示したドリップバッグ1Cは掛止部23に凹部26を有するが、本発明のドリップバッグでは、凹部26と補強部28の双方とも省略してもよく、この場合にも斜め折線B1a、B1bは、補強部28が無く凹部26を有する上述のドリップバッグ1Cと同様に形成することが好ましい。
【0044】
図6Aに示したドリップバッグ1Dは、
図1Aに示したドリップバッグ1Aに対し、左右一対の掛止部23の中心線A側の端部の折れ線B2を省略したものである。折れ線B2が形成されていなくても、
図6Bに示したように掛止部23は引き起こすことができる。
【0045】
図7に示したドリップバッグ1Eは、
図5に示したドリップバッグ1Cにおいて、左右一対の掛止部23の中心線A側の端部の折れ線B2を省略したものである。
【0046】
このように、本発明では袋本体10を開口させるために種々の態様をとることができる。
【0047】
以上、袋本体10にコーヒー粉を充填したドリップバッグについて説明したが、本発明のドリップバッグの袋本体10に充填する抽出材料はコーヒー粉に限らない。紅茶、緑茶等の茶葉、漢方薬等を充填してもよい。
【0048】
また、本発明のドリップバッグは、上述した種々のドリップバッグにおいて、抽出材料を充填せず、袋本体10の上辺11aが開口している空袋として構成してもよい。これにより、ドリップバッグのユーザーが好みの抽出材料を袋本体に充填し、抽出液を得ることが可能となる。
【符号の説明】
【0049】
1A、1B、1C、1D、1E ドリップバッグ
10 袋本体
11a 上辺
11b 下辺
11c、11d 側辺
20 掛止部材
21 上部帯状部
23、23a、23b 掛止部
24 中間部
25 中央貼着部
25a 斜め折れ線で挟まれた領域
26 凹部
27 連結部
28 補強部
29 易開裂線
30 切除部
40 ドリップバッグ製造用シート
41 通水濾過性シート
100 カップ
A 中心線
B1a、B1b 斜め折れ線
B1a-b、B1b-b 斜め折れ線の下端
B1a-u、B1b-u 斜め折れ線の上端
B2、B3 折れ線
C1、C2 範囲
X 視線