(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-24
(45)【発行日】2023-04-03
(54)【発明の名称】草刈り機
(51)【国際特許分類】
A01D 34/78 20060101AFI20230327BHJP
A01D 34/64 20060101ALI20230327BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
A01D34/78 Z
A01D34/64 A
B60L15/20 J
(21)【出願番号】P 2020188355
(22)【出願日】2020-11-11
【審査請求日】2022-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】710001030
【氏名又は名称】株式会社ユニック
(74)【代理人】
【識別番号】100114638
【氏名又は名称】中野 寛也
(72)【発明者】
【氏名】竹内 幹夫
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/097683(WO,A1)
【文献】特開2014-117026(JP,A)
【文献】特開2018-085907(JP,A)
【文献】特開2012-187026(JP,A)
【文献】米国特許第5937622(US,A)
【文献】特許第6763210(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 34/78
A01D 34/64
B60L 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
草刈り刃を回転させるための草刈りモータおよび自走用の走行駆動モータを備えた草刈り機であって、
前記走行駆動モータにより駆動される無限軌道を構成するクローラベルトと、
前記草刈りモータおよび前記走行駆動モータに電力を供給するバッテリと、
このバッテリの電流値を測定する電流センサと、
ユーザによる前記草刈りモータの目標回転数および消費電力の設定入力を受け付け、設定された前記草刈りモータの目標回転数を維持するとともに、前記電流センサにより測定した前記バッテリの電流値を用いて、草の量の増減に伴う前記草刈りモータの負荷変動に応じて変化する実使用電力値を求め、求めた実使用電力値と前記消費電力の設定値との差分から、前記走行駆動モータの新たな目標回転数を得ることにより、前記実使用電力値が前記消費電力の設定値の範囲内になるように走行速度を制御する制御部と
を備えたことを特徴とする草刈り機。
【請求項2】
前記制御部は、
前記実使用電力値と前記消費電力の設定値との差分が、前記走行駆動モータの目標回転数の新旧の値の差分に比例することを示す関係式により、前記走行駆動モータの新たな目標回転数を算出する構成とされている
ことを特徴とする請求項1に記載の草刈り機。
【請求項3】
前記制御部は、
ユーザによる前記草刈りモータの目標回転数および前記消費電力の設定値に加え、前記走行駆動モータの最高回転数の設定入力も受け付け、
前記実使用電力値と前記消費電力の設定値との差分から得られた前記走行駆動モータの新たな目標回転数が、設定された前記走行駆動モータの最高回転数を超えるときには、前記走行駆動モータの新たな目標回転数を、前記走行駆動モータの最高回転数とする構成とされている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の草刈り機。
【請求項4】
同時に回転する左右2つの草刈り刃群を備え、
これらの草刈り刃群の各々は、回転中心から放射状に配置された4枚以上の偶数枚の前記草刈り刃により構成され、これらの偶数枚の前記草刈り刃には、異なる高さ位置に配置される上側の草刈り刃と下側の草刈り刃とがあり、前記草刈り刃群の各々は、前記上側の草刈り刃と前記下側の草刈り刃とを等しい刃間角度で交互に配置して構成され、
1つの前記草刈りモータの回転を左右2つの前記草刈り刃群に伝達する際に左右2つの前記草刈り刃群が互いに反対方向に回転するように伝達する左右反転分割の回転伝達を行うとともに、前進から後進、または後進から前進への進行方向の切換に応じて左右2つの前記草刈り刃群のそれぞれの回転方向を正転状態から逆転状態、または逆転状態から正転状態へ反転させる左右反転分割機構を備え、
この左右反転分割機構は、
右側の前記草刈り刃群を構成する前記上側の草刈り刃の切っ先部分と、左側の前記草刈り刃群を構成する前記下側の草刈り刃の切っ先部分とが重なる第1のオーバーラップ状態を形成するとともに、この第1のオーバーラップ状態から、左右2つの前記草刈り刃群を互いに同時に前記刃間角度だけ正転または反転させることにより、右側の前記草刈り刃群を構成する前記下側の草刈り刃の切っ先部分と、左側の前記草刈り刃群を構成する前記上側の草刈り刃の切っ先部分とが重なる第2のオーバーラップ状態を形成し、これらの2つのオーバーラップ状態を交互に繰り返す構成とされている
ことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の草刈り機。
【請求項5】
前記草刈り刃群の各々は、前記刃間角度を90度として配置された4枚の前記草刈り刃により構成され、
これらの4枚の前記草刈り刃のうちの180度をなす2枚の前記上側の草刈り刃は、連続する1枚の板状部材で形成されるとともに、180度をなす2枚の前記下側の草刈り刃も、連続する1枚の板状部材で形成され、前記草刈り刃群の各々は、これらの同形状の2枚の板状部材のうちの一方を表裏反転させた状態で2枚の板状部材を十字状に結合して形成されている
ことを特徴とする請求項4に記載の草刈り機。
【請求項6】
前記クローラベルトは、
駆動用車輪およびガイド車輪を含む複数の車輪に巻き掛けされた可撓性を有するベルト基部と、このベルト基部の外周側に取り付けられた多数のゴム製のスパイク状のブロックとを含んで構成され、
前記ブロックは、
前記ベルト基部への取付面に対して垂直な全ての断面の形状が滑らかな線で描かれた凸状になる3次元の凸状部と、
この凸状部を頂上部またはその近傍部分から斜めに切って形成されて接地状態での走行方向前方の面をなす前方斜面と、
前記凸状部の頂上部から左右方向に離れた位置を垂直または略垂直に切り込んで形成した左右の横滑りブロック面とを備えて構成されている
ことを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の草刈り機。
【請求項7】
前記凸状部の頂上部から左右方向に離れた位置を垂直または略垂直に切り込んで形成した左右の前記横滑りブロック面は、第1の横滑りブロック面であり、
前記ブロックは、
前記凸状部、前記前方斜面、および左右の前記第1の横滑りブロック面に加え、前記第1の横滑りブロック面と交差する状態で前記ベルト基部への取付面と平行または略平行に形成された左右の中間棚面と、これらの中間棚面よりも更に左右の端部寄りの位置に垂直または略垂直に形成した左右の第2の横滑りブロック面とを備えて構成されている
ことを特徴とする請求項6に記載の草刈り機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、草刈り刃を回転させるための草刈りモータおよび自走用の走行駆動モータを備えた草刈り機に係り、例えば、傾斜地や荒れ地等の様々な地面に生えた草を刈る場合に利用できる。
【背景技術】
【0002】
一般に、草刈りモータおよび走行駆動モータを備えた自走式の草刈り機では、草の量が増えれば、草刈りモータの負荷が増大し、草刈りモータで消費される電力が大きくなり、走行駆動モータの回転数を上げて車両の走行速度を上げれば、走行駆動モータで消費される電力が大きくなる。従って、走行中の実使用電力値は、時々刻々と変化するので、バッテリの残量変化の正確な予測は困難であり、バッテリを満タンにした状態からの作業可能時間は不明であった。
【0003】
なお、本願において、リアルタイムで取得した瞬間的なデータを取り扱う際に、電力値や、電力の設定値等のように「値」の文字を付してデータを呼ぶときは、単に電力という場合と同様であり、ワット(W)やキロワット(kW)といったパワーの単位のデータを意味する。従って、電力を時間積分した電力量のように「量」の文字を付したワット時(Wh)やキロワット時(kWh)といった仕事の単位のデータのことではない。但し、瞬間的なデータを取り扱っていない場合は、電力(パワー)と電力量(仕事、エネルギ)とを略同等な意味で使用することがある。
【0004】
上記のような草刈り等の作業用および走行駆動用のモータを備えた自走式の作業機としては、作業部を駆動する作業モータと、車輪を駆動する走行モータと、作業モータおよび走行モータを駆動制御する制御装置とを有し、制御装置により、作業モータの回転速度を一定に制御するとともに、走行モータの回転速度を作業モータに加わる負荷の増加または作業モータの回転速度の低下に応じて低下させるように制御する作業機が知られている(特許文献1参照)。
【0005】
また、バッテリの残量に着目した制御を行う電動作業機が知られている(特許文献2参照)。この電動作業機では、バッテリの残量が少ないときには走行速度が低速になるので、バッテリの残量が少ない場合に走行モータの電力使用量が低下するため、作業モータに供給可能な電力が増加し、作業時間が増加する。
【0006】
さらに、走行操作部から指示されたモータの回転速度を、作業部にかかる負荷の変動に基づき変速する作業機が知られている(特許文献3参照)。この作業機では、負荷が大きい場合に速度を遅くすることで、単位時間当たりに処理する作業対象の量を減らすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2018-85907号公報
【文献】特開2018-85949号公報
【文献】再表2019-97683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述した特許文献1~3に記載された作業機では、走行速度の制御を行っているが、走行中の実使用電力値が時々刻々と変化することに変わりはない。このため、バッテリの消費速度(減り方の速さ)や残量変化の正確な予測は困難であり、バッテリを満タンにした状態からの作業可能時間は不明であった。これは、草刈り規模に応じた設備投資を行う上で、不確定要素が多く、投資規模が大きくなるという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、バッテリの消費速度や残量変化、およびバッテリを満タンにした状態からの作業可能時間やバッテリ交換時期の予測が可能な草刈り機を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、総電力を一定にする制御を行って前記目的を達成するものである。具体的には、次のような構成である。
【0011】
すなわち、本発明は、草刈り刃を回転させるための草刈りモータおよび自走用の走行駆動モータを備えた草刈り機であって、
走行駆動モータにより駆動される無限軌道を構成するクローラベルトと、
草刈りモータおよび走行駆動モータに電力を供給するバッテリと、
このバッテリの電流値を測定する電流センサと、
ユーザによる草刈りモータの目標回転数および消費電力の設定入力を受け付け、設定された草刈りモータの目標回転数を維持するとともに、電流センサにより測定したバッテリの電流値を用いて、草の量の増減に伴う草刈りモータの負荷変動に応じて変化する実使用電力値を求め、求めた実使用電力値と消費電力の設定値との差分から、走行駆動モータの新たな目標回転数を得ることにより、実使用電力値が消費電力の設定値の範囲内になるように走行速度を制御する制御部と
を備えたことを特徴とするものである。
【0012】
このような本発明の草刈り機においては、草の量の増減に伴い、草刈りモータの負荷変動が生じた際に、草刈りモータで消費される電力と、走行駆動モータで消費される電力とを合計した総電力が一定になるように、走行駆動モータの回転数の制御、つまり走行速度の制御を行う。このため、作業中における総電力が一定になるので、バッテリの消費速度や残量変化、およびバッテリを満タンにした状態からの作業可能時間やバッテリ交換時期の予測が可能となり、これらにより前記目的が達成される。
【0013】
なお、前述した特許文献1~3に記載された作業機は、総電力を一定にする制御ではないので、本発明の制御方法とは異なる。
【0014】
また、上述した草刈り機において、
制御部は、
実使用電力値と消費電力の設定値との差分が、走行駆動モータの目標回転数の新旧の値の差分に比例することを示す関係式により、走行駆動モータの新たな目標回転数を算出する構成とされていることが望ましい。
【0015】
このように比例の関係式を用いた制御を行う構成とした場合には、走行駆動モータの新たな目標回転数を容易に算出することが可能となる。
【0016】
さらに、前述した草刈り機において、
制御部は、
ユーザによる草刈りモータの目標回転数および消費電力の設定値に加え、走行駆動モータの最高回転数の設定入力も受け付け、
実使用電力値と消費電力の設定値との差分から得られた走行駆動モータの新たな目標回転数が、設定された走行駆動モータの最高回転数を超えるときには、走行駆動モータの新たな目標回転数を、走行駆動モータの最高回転数とする構成とされていることが望ましい。
【0017】
このように走行駆動モータの最高回転数を用いた制御を行う構成とした場合には、より一層適切な走行速度の制御を行うことが可能となる。すなわち、草の量が少なければ、草刈りモータで消費される電力が小さくなるので、走行駆動モータで消費される電力を大きくすることができ、走行駆動モータの目標回転数を上げることも可能となるが、その場合でも、設定された走行駆動モータの最高回転数を上限値とすることで、走行速度が過大になることを未然に防止することができる。そして、この場合、走行駆動モータで消費される電力が低く抑えられることになり、総電力は下がるので、バッテリが長持ちする方向への変化となることから、ユーザに不都合は生じない。
【0018】
<草刈り刃の詳細構成>
【0019】
また、以上に述べた草刈り機において、
同時に回転する左右2つの草刈り刃群を備え、
これらの草刈り刃群の各々は、回転中心から放射状に配置された4枚以上の偶数枚の草刈り刃により構成され、これらの偶数枚の草刈り刃には、異なる高さ位置に配置される上側の草刈り刃と下側の草刈り刃とがあり、草刈り刃群の各々は、上側の草刈り刃と下側の草刈り刃とを等しい刃間角度で交互に配置して構成され、
1つの草刈りモータの回転を左右2つの草刈り刃群に伝達する際に左右2つの草刈り刃群が互いに反対方向に回転するように伝達する左右反転分割の回転伝達を行うとともに、前進から後進、または後進から前進への進行方向の切換に応じて左右2つの草刈り刃群のそれぞれの回転方向を正転状態から逆転状態、または逆転状態から正転状態へ反転させる左右反転分割機構を備え、
この左右反転分割機構は、
右側の草刈り刃群を構成する上側の草刈り刃の切っ先部分と、左側の草刈り刃群を構成する下側の草刈り刃の切っ先部分とが重なる第1のオーバーラップ状態を形成するとともに、この第1のオーバーラップ状態から、左右2つの草刈り刃群を互いに同時に刃間角度だけ正転または反転させることにより、右側の草刈り刃群を構成する下側の草刈り刃の切っ先部分と、左側の草刈り刃群を構成する上側の草刈り刃の切っ先部分とが重なる第2のオーバーラップ状態を形成し、これらの2つのオーバーラップ状態を交互に繰り返す構成とされていることが望ましい。
【0020】
このように異なる高さ位置に配置された上側および下側の偶数枚の草刈り刃を備えた左右2つの草刈り刃群を1つの草刈りモータにより反対方向に同時に回転させる構成とした場合には、草刈り作業を効率的に行うことができる。また、左右反転分割機構により、前進から後進、または後進から前進への進行方向の切換に応じて左右2つの草刈り刃群のそれぞれの回転方向を正転状態から逆転状態、または逆転状態から正転状態へ反転させることができるので、斜面で草刈り機自体の方向を反転させることなく、スイッチバック方式で前進・後進を切り換えて効率的な草刈り作業を行うことができる。
【0021】
さらに、上述した草刈り機において、
草刈り刃群の各々は、刃間角度を90度として配置された4枚の草刈り刃により構成され、
これらの4枚の草刈り刃のうちの180度をなす2枚の上側の草刈り刃は、連続する1枚の板状部材で形成されるとともに、180度をなす2枚の下側の草刈り刃も、連続する1枚の板状部材で形成され、草刈り刃群の各々は、これらの同形状の2枚の板状部材のうちの一方を表裏反転させた状態で2枚の板状部材を十字状に結合して形成されていることが望ましい。
【0022】
このように同形状の2枚の板状部材のうちの一方を表裏反転させた状態で2枚の板状部材を十字状に結合して4枚の草刈り刃を備えた草刈り刃群を構成した場合には、左右2つの草刈り刃群を容易に製造することができる。
【0023】
<クローラベルトを構成するブロックの詳細構成>
【0024】
また、以上に述べた草刈り機において、
クローラベルトは、
駆動用車輪およびガイド車輪を含む複数の車輪に巻き掛けされた可撓性を有するベルト基部と、このベルト基部の外周側に取り付けられた多数のゴム製のスパイク状のブロックとを含んで構成され、
ブロックは、
ベルト基部への取付面に対して垂直な全ての断面の形状が滑らかな線で描かれた凸状になる3次元の凸状部と、
この凸状部を頂上部またはその近傍部分から斜めに切って形成されて接地状態での走行方向前方の面をなす前方斜面と、
凸状部の頂上部から左右方向に離れた位置を垂直または略垂直に切り込んで形成した左右の横滑りブロック面とを備えて構成されていることが望ましい。
【0025】
このようにクローラベルトに3次元の凸状部を有する多数のゴム製のスパイク状のブロックを設けた構成とした場合には、凸状部により、地面との点接触が実現され、静かで安定した走行が可能となるうえ、左右の横滑りブロック面により、傾斜地での草刈り作業を行う際における草刈り機の横滑りを防止することが可能となる。
【0026】
さらに、上述した草刈り機において、
凸状部の頂上部から左右方向に離れた位置を垂直または略垂直に切り込んで形成した左右の横滑りブロック面は、第1の横滑りブロック面であり、
ブロックは、
凸状部、前方斜面、および左右の第1の横滑りブロック面に加え、第1の横滑りブロック面と交差する状態でベルト基部への取付面と平行または略平行に形成された左右の中間棚面と、これらの中間棚面よりも更に左右の端部寄りの位置に垂直または略垂直に形成した左右の第2の横滑りブロック面とを備えて構成されていることが望ましい。
【0027】
このようにブロックを中間棚面および第2の横滑りブロック面を備えた構成とした場合には、傾斜地での草刈り作業を行う際における草刈り機の横滑りの防止効果を、より一層高めることが可能となる。
【発明の効果】
【0028】
以上に述べたように本発明によれば、草刈り作業中における総電力が一定になる制御を行うので、バッテリの消費速度や残量変化、およびバッテリを満タンにした状態からの作業可能時間の予測を行うことができるという効果がある。これにより、時間(あるいは、1日)当たりで必要な充電設備の能力、必要なバッテリの容量、予備バッテリ数等を決定することができ、必要な草刈り機の規模に対して、最小の構成でシステムを構築することが可能となる。これは、太陽光発電所等の大規模な草刈りが必要な施設での草刈り設備運用、草刈り請負事業での設備投資を最小限にできるという効果がある。
また、自動による草刈り機を構築するうえでも、バッテリ交換間隔を一定にすることができ、運用が容易になるという効果が見込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の一実施形態の草刈り機の全体斜視図。
【
図2】前記実施形態の草刈り機を底面側から見た状態の全体斜視図。
【
図6】前記実施形態のブロックを接地状態での走行方向後方から見た図。
【
図7】前記実施形態のクローラベルトの接地ラインを示す図。
【
図8】前記実施形態のブロックをベルト基部側から見た図。
【
図12】前記実施形態の草刈り刃群および左右反転分割機構の構成図。
【
図13】前記実施形態の草刈り刃群および左右反転分割機構の斜視図。
【
図14】前記実施形態の草刈り刃群の回転方向の説明図。
【
図15】前記実施形態の草刈り刃のオーバーラップ状態を示す説明図。
【
図18】前記実施形態の制御の流れを示すフローチャートの図。
【
図19】前記実施形態の制御に関連するデータの変化を示すグラフの図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1および
図2には、本実施形態の草刈り機10の全体構成が示されている。
図3には、クローラベルト30A,30Bの構成が示され、
図4~
図11には、ブロック40の構成が示されている。また、
図12~
図15は、草刈り刃61A~64A,61B~64Bに関連する説明図であり、
図16~
図19は、制御に関連する説明図である。
【0031】
<草刈り機10の全体構成>
【0032】
図1および
図2において、草刈り機10は、その骨格を形成するフレーム11(11A,11B,11C,11D,11E,11F,11G,11H,11J,11K,11L,11M)と、フレーム11に取り付けられて草刈り機10の上部を覆うカバー12と、カバー12の内側でフレーム11に取り付けられたボックス状の各種機器の収納部13と、自走用の右側の走行駆動モータ20Aおよび左側の走行駆動モータ20Bと、これらの走行駆動モータ20A,20Bによりそれぞれ駆動される無限軌道を構成する右側のクローラベルト30Aおよび左側のクローラベルト30Bとを備えている。
【0033】
なお、ここでの右側や左側とは、走行方向前方(前進時の進行方向)を向いた草刈り機10自身から見た場合の右側や左側である。また、本願において、草刈り機10の進行方向につき、単に「走行方向」というときは、車両全体の前進時の進行方向のみを意味し、「バック走行方向」(後進時(後退時)の進行方向)を含まないものとする。
【0034】
図3において、クローラベルト30A,30Bは、複数の車輪、すなわち
図3中の2点鎖線で示された駆動用車輪21および複数(本実施形態では、一例として8個)のガイド車輪22に巻き掛けされた(外接する状態で掛け渡された)可撓性を有するベルト基部31と、このベルト基部31の外周側に並べて取り付けられた多数のゴム製のスパイク状のブロック40とを含んで構成されている。なお、本願のクローラベルト30A,30Bやその構成部品であるブロック40は、例えば、電動車いす、悪路で利用する運搬車両、探索調査車両等のような草刈り機10以外の走行装置(走行車両)にも用いることができる。
【0035】
駆動用車輪21は、本実施形態では、スプロケットであり、走行駆動モータ20A,20Bにより回転駆動される。ベルト基部31は、本実施形態では、金属製のチェーンであり、このチェーンが、駆動用車輪21を構成するスプロケットに巻き掛けされて回るようになっている。多数のブロック40の各々は、チェーンの構成部品に取り付けられている。
【0036】
図1および
図2において、左右の車輪(駆動用車輪21および複数のガイド車輪22)は、それぞれ垂直に配置された板状の車輪取付部材25により内側および外側の両側から挟まれる状態で車輪取付部材25に固定されている。そして、右側の車輪が固定された車輪取付部材25は、フレーム11(フレーム11B,11Eの交差部)に対してサスペンション26を介して取り付けられ、左側の車輪が固定された車輪取付部材25は、フレーム11(フレーム11C,11Fの交差部)に対してサスペンション26を介して取り付けられ、これにより、左右に設けられた接地圧の高いクローラベルト30B,30Aによる左右独立のサスペンション26を備えた走行駆動機構が構成されている。
【0037】
また、草刈り機10は、右側の草刈り刃群60Aおよび左側の草刈り刃群60Bと、これらの2つの草刈り刃群60A,60Bを同時に回転させる1つの草刈りモータ70と、2つの草刈り刃群60A,60Bをまとめて収納する収納部71と、2つの草刈り刃群60A,60Bの回転方向が互いに反対方向になるように1つの草刈りモータ70の回転(前進時の正転状態または後進時の逆転状態)を2つの草刈り刃群60A,60Bに同時に伝達する左右反転分割機構72(
図12、
図13、
図16参照)と、この左右反転分割機構72の収納部73とを備え、これらにより、草刈り機構部74(
図16参照)が構成されている。
【0038】
収納部71の下側(地面側)は、刈った草が下に落ちるように開口状態となっている。また、収納部71の前方および後方の開口部には、ゴム製等の可撓性を有する膜状部材71A,71Bが設けられ、地面にある石や砂利、あるいは刈った草が飛散しないようになっている。さらに、収納部71の前方の開口部の左右両端には、前方に生えている草を取り込むための板状の誘導部材71Cが斜めに設けられている。
【0039】
さらに、草刈り機10は、左右2つの草刈り刃群60A,60Bの地面からの高さ位置を調整するための刈高調整モータ80と、この刈高調整モータ80の回転により伸縮駆動されるシリンダ81と、フレーム11に固定された左右の板状の案内部材82と、収納部71の外側に固定された左右の接続部材83とを備えている。各案内部材82には、斜めの細長い直線状の案内孔84(案内溝でもよい)が設けられ、これらの案内孔84により、各案内部材82に対して各接続部材83が2点支持の状態でスライド自在に係合するようになっている。従って、刈高調整モータ80が回転し、シリンダ81が伸縮すると、左右の案内部材82の案内孔84に案内されて左右の接続部材83が姿勢を保持しながら上下にスライドし、草刈り機構部74の全体(2つの草刈り刃群60A,60B、草刈りモータ70、収納部71、左右反転分割機構72、および収納部73を含む。)が水平の姿勢を保持しながら上下動するようになっており、これらにより、刈高MH(
図15に示すように、地面から下側の草刈り刃の下面までの高さ寸法)を調整する刈高調整機構85(
図16参照)が構成されている。
【0040】
なお、刈高MHの範囲は、例えば、20~100mm等である。この際、案内部材82の案内孔84は斜めに設けられているので、草刈り刃群60A,60Bが下方に移動したときには、刈高MHが小さくなるとともに、草刈り刃群60A,60Bが前方に突き出る状態となり、一方、草刈り刃群60A,60Bが上方に移動したときには、刈高MHが大きくなるとともに、草刈り刃群60A,60Bが後方へ引っ込む状態となる。このため、狭く、かつ、高さの余裕もない場所に草が生えている場合には、その狭い空間に収納部71(2つの草刈り刃群60A,60Bを含む。)を突っ込んだ状態で草刈り作業を行うことができる。
【0041】
また、草刈り機10には、カバー12の外側の後方位置に、車両の姿勢に余裕があるか否か、または余裕の程度を示すインジケータ90が設けられている。なお、インジケータ90の設置位置は、この位置に限らず、遠隔操作を行っているユーザが見やすい位置であればよい。
【0042】
後述する車両コントローラ140(
図17参照)に内蔵された3DGセンサ111(3軸加速度センサ)により重力加速度を測定し、傾斜地を走行中の車両の傾斜に伴って重力加速度ベクトルについての車両の上下方向(車両が傾斜している場合は鉛直方向ではない。)の成分値および車両の左右方向(車両が傾斜している場合は水平方向ではない。)の成分値が変化するので、その変化を捉えて車両の姿勢(傾斜の大きさ)が計算され、予め設定された閾値との比較で、姿勢の余裕の有無または余裕の程度が判断され、その判断結果がインジケータ90に出力されるようになっている。
【0043】
<クローラベルト30A,30Bを構成するブロック40の詳細構成>
【0044】
図4~
図6において、ブロック40は、本実施形態では左右対称の形状を有し、ベルト基部31への取付面49に対して垂直な全ての断面の形状が滑らかな線で描かれた凸状になる3次元の凸状部41を備えている。つまり、凸状部41は、3次元的な山形の形状を有している。凸状を描く滑らかな線は、本実施形態では、一例として、円とするが、これに限らず、例えば、楕円や2次曲線等でもよく、あるいは、円、楕円、2次曲線等を連結した線でもよい。従って、
図5、
図10、
図11のように、右側または左側から見た場合の凸状部41の輪郭形状も、
図6、
図9のように、ベルト基部31に沿う方向から見た場合(ブロック40が接地状態にあるときの走行方向の前方または後方から見た場合)の凸状部41の輪郭形状も、いずれも滑らかな線(本実施形態では、一例として、円である)で描かれた凸状である。
【0045】
また、
図5に示すように、ブロック40は、凸状部41を頂上部の位置P1またはその近傍部分(P2の位置等)から斜めに切って形成された前方斜面42を備えている。この前方斜面42は、平面であり、ブロック40が接地状態となったときの走行方向前方の面をなす。本実施形態では、
図5に示すように、頂上部の位置P1ではなく、P1よりも走行方向前方の位置P2から切り込んで前方斜面42が形成され、このP2が、曲面である凸状部41の表面41Aと、平面である前方斜面42とが交差して形成された凸状部41の前方端縁(曲線)の中央位置(左右の中央位置)となっている。
【0046】
従って、ブロック40の接地点は、仮に、接地面が非常に硬い路面であり、かつ、走行停止中であり、かつ、ブロック40自体が全く弾性変形しなければ、頂上部の位置P1となる。しかし、実際には、草刈り機10の走行面(ブロック40の接地面)は、通常は草の生えた地面であるから、舗装された路面等に比べれば柔らかく、かつ、ベルト基部31は可撓性を有し、さらに、ブロック40自体もゴム製で弾性部材であるので、事実上、P2の位置(凸状部41の前方端縁の中央位置)が、ブロック40の接地点となる。なお、凸状部41の頂上部の位置P1から切り込んで前方斜面42を形成してもよく、あるいは、P1よりも走行方向後方の位置から切り込んで前方斜面42を形成してもよく、いずれの場合でも、それらの前方斜面42と凸状部41の表面41Aとが交差して形成される凸状部41の前方端縁の中央位置が、ブロック40の接地点となる。
【0047】
また、ブロック40の前方斜面42の反対側には、ベルト基部31への取付面49に対して垂直または略垂直に形成された後方面43が設けられている。この後方面43は、平面であり、ブロック40が接地状態となったときの走行方向後方の面をなす。
図4~
図6中のP3の位置が、曲面である凸状部41の表面41Aと、平面である後方面43とが交差して形成された凸状部41の後方端縁(曲線)の中央位置(左右の中央位置)となっている。
【0048】
さらに、
図6に示すように、ブロック40は、凸状部41の頂上部の位置P1から左右方向に離れた位置P6,P7を垂直または略垂直に切り込んで形成した右側および左側の第1の横滑りブロック面44を備えている。これらの第1の横滑りブロック面44は、厳密に言えば、平面ではなく、
図4および
図5に示すように、鈍角をなす2つの面44A,44Bと、これらの面44A,44Bの交差部分を覆うように面44A,44Bに跨って設けられた掛渡面44Cとを含んで構成されている。しかし、車両全体の横滑りを防止するという機能面からすると、略平面と考えてよい。そして、曲面である凸状部41の表面41Aと、右側の第1の横滑りブロック面44とが交差する部分(
図4、
図6中のP6)が、凸状部41の右側端縁となり、曲面である凸状部41の表面41Aと、左側の第1の横滑りブロック面44とが交差する部分(
図4、
図6中のP7)が、凸状部41の左側端縁となる。なお、左右は、車両自身から見た場合の左右であるため、
図6の紙面上では、P6(右側端縁)は左側に、P7(左側端縁)は右側に記載されている。
【0049】
また、ブロック40は、第1の横滑りブロック面44と交差する状態でベルト基部31への取付面49と平行または略平行に形成された左右の中間棚面45(平面)と、これらの中間棚面45よりも左右の端部寄りの位置に斜めに形成された左右の端部斜面46(平面)と、これらの端部斜面46よりも更に左右の端部寄りの位置に垂直または略垂直に形成された左右の第2の横滑りブロック面47(平面)とを備えている。
【0050】
図7において、ベルト基部31に並べて取り付けられた多数のブロック40の各接地点(P2の位置)を結んだ線が、クローラベルト30A,30Bの接地ラインとなる。また、多数のブロック40の各々の第1の横滑りブロック面44は、一平面上に配置されることになり、同様に、多数のブロック40の各々の第2の横滑りブロック面44も、一平面上に配置されることになる。
【0051】
図8~
図11に示すように、ブロック40は、ゴム製であり、例えば冷間圧延鋼板(SPCCプレート)等の鋼板による心材50をインサートし、ゴム加硫成型を行って製造されている。ゴムの材質としては、例えば、NR(天然ゴム)、CR(クロロプレンゴム)等を採用することができる。ゴムの硬度は、雪道、泥道での走行性能を考慮すると、スタッドレスタイヤと同様に、60程度であることが好ましい。すなわち、自動車用タイヤの硬度が60~70程度であるため、その範囲のうちの柔らかい方の60程度が好ましい。
【0052】
心材50は、後方面43側の端部が、凸状部41の表面41Aに向かう方向に曲げられている。心材50には、ブロック40をベルト基部31に取り付けるためのボルト用の複数(本実施形態では2個)のネジ穴51(ネジ径は、例えば4mm等)が設けられている。このネジ穴51は、心材50を貫通してゴムの部分まで設けられ、深さは、例えば6mm等である。
【0053】
図5における凸状部41の表面41Aの曲率半径は、例えば、Rx=45mm等である。この曲率半径Rxの中心位置は、本実施形態では、厚み方向の中央位置(後方面43から寸法D4の位置)ではなく、後方面43から寸法D3(D3<D4)の位置となっている。従って、
図5における凸状部41の頂上部の位置P1は、後方面43から寸法D3(D3<D4)の位置であるから、本実施形態では、頂上部の位置P1は、P4の位置(厚み方向の中央位置)よりも走行方向後方の位置(後方面43寄りの位置)である。例えば、厚み寸法D1=23mm、D2=13mm、D3=9.7mm、D4(
図8、
図10、
図11参照)=D1×0.5=11.5mmとすると、
図5における凸状部41の頂上部の位置P1は、後方面43から9.7mmの位置であり、凸状部41の前方端縁の位置P2は、後方面43から13mmの位置であり、厚み方向の中央位置P4は、後方面43から11.5mmの位置である。なお、凸状部41の頂上部の位置P1を、厚み方向の中央位置P4と一致させてもよく(P1=P4)、凸状部41の前方端縁の位置P2を、頂上部の位置P1に一致させるか(P1=P2)、または、厚み方向の中央位置P4に一致させてもよく(P2=P4)、あるいは、これらの3つの位置P1,P2,P4を一致させてもよい(P1=P2=P4)。
【0054】
また、
図5において、最もベルト基部31寄りの底面48からの高さ寸法H1は、第2の横滑りブロック面47の高さ寸法であり、例えば、H1=7.2mm等である。底面48から中間棚面45までの高さ寸法H2は、例えば、H2=13mm等である。底面48から曲率半径Rxの中心位置までの高さ寸法H3は、例えば、H3=18.6mm等である。
【0055】
図6において、ベルト基部31への取付面49から中間棚面45までの高さ寸法H4は、例えば、H4=11mm等であり、底面48から取付面49までの高さ寸法H5は、H5=2mm等である。第1の横滑りブロック面44の高さ寸法H6は、例えば、H6=7.13mm等であり、本実施形態では、第2の横滑りブロック面47の高さ寸法H1(例えば7.2mm)と略同じとされている。但し、第1、第2の横滑りブロック面44,47の高さ寸法H6,H1は、必ずしも同じまたは略同じ寸法にする必要はない。また、第1の横滑りブロック面44と中間棚面45とが交差する隅部のR1(半径1mm)を入れると、H7=8.13mm等となる。
【0056】
ここで、第1、第2の横滑りブロック面44,47は、垂直または略垂直に立った壁であり、車両全体の横滑りを防ぐという観点から、この壁で、草や土がしっかりと引っ掛かるようになっていればよい。仮に壁がないとすると、草や土が引っ掛からないので、横滑りを生じることになる。従って、クローラベルト30A,30Bで踏んだ草の茎を確実に引っ掛けるには、草の茎の直径以上の壁の高さがあればよい。しかし、少なくとも草の茎の半径以上の壁の高さがあれば草が逃げずに引っ掛かる可能性が高くなるので、ある程度効果的な横滑り防止機能を発揮することができる。茎の直径が10mm程度ぐらいまでの草を刈ることを想定する場合は、草の茎の半径は5mm程度ぐらいまでとなるため、壁の高さ、すなわち第1、第2の横滑りブロック面44,47の高さ寸法H6,H1は、6mm以上であることが好ましい。
【0057】
ブロック40の形状としては、第1、第2の横滑りブロック面44,47が階段状に形成されていることに特徴がある。すなわち、凸状部41の頂上部を山頂に見立てて上方に向けて置いた場合に、左右両側から階段を上っていくような形状になっていることに特徴がある。仮に、自動車用タイヤのトレッドパターンのように溝を掘った場合(凸状部41の表面41Aから内側に向かう溝を設けた場合)には、草や土を引っ掛けにくい状態となるので、横滑り防止効果は期待できない。なぜなら、6mm以上の深さの溝を掘ったとしても、その溝に草の茎が入らなければ、横滑り防止効果は得られず、また、たまたま溝に草の茎が入ったとしても、今度は出にくくなり、溝が目詰まりを起こして横滑り防止機能が低下してしまうからである。これに対し、本願のブロック40は、階段状になっているので、溝の場合とは異なり、右側の第1の横滑りブロック面44よりも右側の空間は開放されていて、かつ、左側の第1の横滑りブロック面44よりも左側の空間も開放されている。同様に、右側の第2の横滑りブロック面47よりも右側の空間は開放されていて、かつ、左側の第2の横滑りブロック面47よりも左側の空間も開放されている。開放されているというのは、草刈り機10自身による構造物がなく、何も障害物がないという意味である。これにより、草や土を引っ掛けやすくなっている。また、第2の横滑りブロック面47の設置が省略され、第1の横滑りブロック面44だけの設置であったとしても、右側の第1の横滑りブロック面44の右側空間が開放されていて、かつ、左側の第1の横滑りブロック面44の左側空間も開放されていれば、横滑り防止効果は発揮される。
【0058】
さらに、
図6において、ブロック40の左右方向の幅寸法W1は、例えば、W1=66mm等である。凸状部41の右側端縁の位置P6から左側端縁の位置P7までの幅寸法W2は、左右の第1の横滑りブロック面44間の距離であり、例えば、W2=36mm等である。取付面49の幅寸法W3は、例えば、W3=36mm等である。
【0059】
図8において、複数(本実施形態では2個)のネジ穴51は、厚み方向中央位置に設けられている。従って、D4=D1×0.5であり、例えば、D4=11.5mm等である。2つのネジ穴51間の距離W4は、例えば、W4=25.4mm等であり、W5=16mm等である。
【0060】
図9における凸状部41の表面41Aの曲率半径は、例えば、Ry=29mm等である。この曲率半径Ryの中心位置は、取付面49から高さ寸法H8の位置であり、例えば、H8=4mm等である。
図9は、
図8のA-A断面であるから、厚み方向中央位置(
図5中のP4の位置)の断面である。
【0061】
図10および
図11において、心材50は、ネジ穴51が設けられた厚み方向中央位置(後方面43から寸法D4の位置)から後方面43側へ寸法D5の位置、前方斜面42側へ寸法D6の位置まで挿入されている。例えば、D4=11.5mm、D5=8.7mm、D6=7.5mm等である。心材50の屈曲部の高さ寸法H9は、例えば、H9=8.2mm等である。
【0062】
<草刈り刃の詳細構成>
【0063】
図12および
図13において、草刈り機構部74の左右反転分割機構72は、草刈りモータ70と同軸で草刈りモータ70により回転駆動されるギア72Aと、このギア72Aと噛み合って草刈りモータ70の回転方向とは反対方向に回転するギア72Bと、ギア72Aと同軸で回転するスプロケット72Cと、ギア72Bと同軸で回転するスプロケット72Dと、スプロケット72Cの回転を伝達するチェーン72Eと、スプロケット72Dの回転を伝達するチェーン72Fと、チェーン72Eからの回転伝達を受けて左側の草刈り刃群60Bを同軸で回転させるスプロケット72Gと、チェーン72Fからの回転伝達を受けて右側の草刈り刃群60Aを同軸で回転させるスプロケット72Hと、チェーン72Eの撓みを調整するアイドラ72Jと、チェーン72Fの撓みを調整するアイドラ72Kとを含んで構成されている。左右で対になる構成部品の歯数や直径は同じであり(但し、チェーン72E,72Fの長さは異なる。)、これにより正確な左右反転分割の回転伝達を実現している。
【0064】
図13に示すように、右側の草刈り刃群60Aは、回転中心から放射状に配置された4枚以上の偶数枚(本実施形態では4枚)の草刈り刃61A,62A、63A,64Aを備えて構成され、同様に、左側の草刈り刃群60Bも、回転中心から放射状に配置された同じ枚数(本実施形態では4枚)の草刈り刃61B,62B、63B,64Bを備えて構成されている。なお、右側の刃にはAを付した符号を使用し、左側の刃にはBを付した符号を使用している。ここでの右側および左側は、車両自身から見た場合の右側および左側であるから、
図12の紙面上では,Aが左側に記載され、Bが右側に記載されている。
【0065】
右側の草刈り刃群60Aを構成する4枚以上の偶数枚(本実施形態では4枚)の草刈り刃61A,62A、63A,64Aのうち、半数に相当する草刈り刃62A,64Aが、上側の高さ位置(車両自身から見た場合の上側)に配置される上側の草刈り刃であり、残りの半数の草刈り刃61A,63Aが、下側の高さ位置に配置される下側の草刈り刃である。同様に、左側の草刈り刃群60Bを構成する4枚以上の偶数枚(本実施形態では4枚)の草刈り刃61B,62B、63B,64Bのうち、半数に相当する草刈り刃61B,63Bが、上側の草刈り刃であり、残りの半数の草刈り刃62B,64Bが、下側の草刈り刃である。
【0066】
このように右側および左側の草刈り刃群60A,60Bのいずれも、上側の草刈り刃と、下側の草刈り刃とが、交互に配置されている。それぞれの草刈り刃同士のなす角度(刃間角度)は等しい。従って、本実施形態では、4枚であるため、刃間角度は90度である。
【0067】
右側の草刈り刃群60Aでは、4枚の草刈り刃61A~64Aのうち、180度をなす2枚の上側の草刈り刃62A,64Aは、連続する1枚の板状部材で形成されるとともに、180度をなす2枚の下側の草刈り刃61A,63Aも、連続する1枚の板状部材で形成されている。同様に、左側の草刈り刃群60Bでは、4枚の草刈り刃61B~64Bのうち、180度をなす2枚の上側の草刈り刃61B,63Bは、連続する1枚の板状部材で形成されるとともに、180度をなす2枚の下側の草刈り刃62B,64Bも、連続する1枚の板状部材で形成されている。
【0068】
そして、右側および左側の草刈り刃群60A,60Bのいずれも、同形状の2枚の板状部材のうちの一方を表裏反転させた状態で2枚の板状部材を十字状に結合して形成されている。従って、例えば、2枚の上側の草刈り刃62A,64Aを構成する板状部材と、2枚の下側の草刈り刃61A,63Aを構成する板状部材とは、同形状のものである。これにより、製造の容易化が図られている。
【0069】
図12に示すように、2枚の草刈り刃を構成する板状部材は、本実施形態では、回転中心から見て2か所(
図12中のQ1点、Q2点)で折り曲げられている。上側の草刈り刃を構成する板状部材は、回転中心寄りのQ1点で上方へ折り曲げられ、その外側のQ2点で水平に戻されている。一方、下側の草刈り刃を構成する板状部材は、上述したように表裏反転させた状態であるから、回転中心寄りのQ1点で下方へ折り曲げられ、その外側のQ2点で水平に戻されている。これにより、右側の草刈り刃群60Aの下側の草刈り刃と、左側の草刈り刃群60Bの上側の草刈り刃とがオーバーラップする際、あるいは、右側の草刈り刃群60Aの上側の草刈り刃と、左側の草刈り刃群60Bの下側の草刈り刃とがオーバーラップする際の隙間寸法G(
図12、
図15参照)を適切な寸法に設定している。なお、隙間寸法Gは、例えば、G=5mmであり、オーバーラップする部分の寸法L(
図12参照)は、例えば、L=16mmである。このオーバーラップにより、上下の草刈り刃で草を挟み込んで粉砕するようになっている。
【0070】
また、刃先(Edge)の形成部Eは、Q2点よりも外側の水平部分に設けられている。そして、草刈り刃の回転には、後述するように、車両が前進する走行時の正転状態と、車両が後進(後退)するバック走行時の逆転状態とがあるので、刃先の形成部Eは、回転前方および回転後方の双方の端部に設けられ、正逆の反転により、どちらの刃先も回転前方の刃先になり得るようになっている。従って、本実施形態では、2枚の草刈り刃を構成する1つの板状部材につき、刃先の形成部Eが、4か所設けられている(
図13参照)。また、
図15に示すように、刃先の形成部Eにおける刃面は、上側の草刈り刃については、下面側に設けられ、下側の草刈り刃については、上面側に設けられている。なお、隙間寸法Gを調整し、刃面を上面側および下面側の双方に設けて刃先を形成してもよい。
【0071】
図14において、右側および左側の草刈り刃群60A,60Bは、左右反転分割機構72(
図12、
図13参照)により、常に、互いに反対方向に同じ回転速度(絶対値)で回転するようになっている。すなわち、草刈り機10が前進する走行時における正転状態の場合も、草刈り機10が後進(後退)するバック走行時における逆転状態の場合も、常に、互いに反対方向に回転し、かつ、回転速度の絶対値は同じである。なお、
図14において草刈り刃に施されたハッチングは、断面を示すものではなく、上側と下側の草刈り刃の区別を付けやすくするために記載したものである。
【0072】
図14の左上には、草刈り機10が前進する走行時における正転状態が示されている。右側の草刈り刃群60Aを構成する下側の草刈り刃61Aと、左側の草刈り刃群60Bを構成する上側の草刈り刃61Bとがオーバーラップする状態となっている。なお、
図14は、下方(地面側)から見た場合の記載であるため、上下は逆になっている。右側および左側の草刈り刃群60A,60Bは、互いに反対方向に回転するが、進行方向の前方に生えている草を巻き込むように回転する。
【0073】
図14の左上の正転状態の回転方向を維持しながら、右側および左側の草刈り刃群60A,60Bの双方を1/8回転(45度回転)させると、
図14の右上のようになる。また、前進・後進を切り換え、右側および左側の草刈り刃群60A,60Bの双方の回転方向をそれぞれ反転させると、
図14の左下のバック走行時における逆転状態となる。このバック走行時においても、進行方向(後進時の進行方向であるから、バック走行方向)の前方に生えている草を巻き込むように回転するのは、正転状態のときと同様である。また、
図14の左下の逆転状態の回転方向を維持しながら、右側および左側の草刈り刃群60A,60Bの双方を1/8回転(45度回転)させると、
図14の右下のようになる。
【0074】
上述したように、草刈り機10が前進する走行時における正転状態の場合も、草刈り機10が後進(後退)するバック走行時における逆転状態の場合も、右側および左側の草刈り刃群60A,60Bは、進行方向の前方に生えている草を巻き込むように回転するので、
図15に示すように、上側および下側の草刈り刃のオーバーラップした部分は、同じ方向に移動することになる。
【0075】
以上より、左右反転分割機構72は、1つの草刈りモータ70の回転駆動により、右側の草刈り刃群60Aを構成する上側の草刈り刃の切っ先部分と、左側の草刈り刃群60Bを構成する下側の草刈り刃の切っ先部分とが重なる第1のオーバーラップ状態を形成するとともに、この第1のオーバーラップ状態から、左右2つの草刈り刃群を互いに同時に刃間角度(本実施形態では、90度)だけ正転または反転させることにより、右側の草刈り刃群60Aを構成する下側の草刈り刃の切っ先部分と、左側の草刈り刃群60Bを構成する上側の草刈り刃の切っ先部分とが重なる第2のオーバーラップ状態を形成し、これらの2つのオーバーラップ状態を交互に繰り返す構成とされている。
【0076】
<走行速度の制御の詳細>
【0077】
図16において、草刈り機10は、ユーザが遠隔操作するためのリモートコントローラ100と、このリモートコントローラ100からの信号を受信する受信部110と、3軸加速度を測定する3DGセンサ111と、草刈り機10の各種制御を行う制御部120と、草刈り機10に電力を供給するバッテリモジュール130とを備えている。受信部110、3DGセンサ111、制御部120、バッテリモジュール130は、収納部13(
図1、
図2参照)に収納されている。
【0078】
図17において、草刈り機10は、リモートコントローラ100によるユーザの操作に従って車両全体を制御する車両コントローラ140と、右側の走行駆動モータ20A用のモータドライバ150と、左側の走行駆動モータ20B用のモータドライバ160と、草刈りモータ70用のモータドライバ170と、充電器180とを備えている。
【0079】
車両コントローラ140は、マイクロコントローラ(チップ数は任意である。)により構成され、この車両コントローラ140には、受信回路からなる受信部110と、3DGセンサ111と、車両制御部141とが内蔵されている。車両制御部141は、演算処理部と、データを記憶する記憶部(メモリ)とを含んで構成され、受信部110で受信した信号、3DGセンサ111で測定した加速度データ、およびバッテリモジュール130で測定されたバッテリの電流や電圧のデータに基づき、車両全体の制御を行う。
【0080】
図16および
図17において、リモートコントローラ100には、電源のON/OFFボタンと、刈高MH(
図15参照)を調整(Up/Down)する刈高調整ボタンと、草刈力(草刈りモータ70の回転数)を調整(Up/Down)する草刈力調整ボタンと、作業能力(電力)を調整(Up/Down)する作業能力調整ボタンと、草刈り機10を前進(FWD)させる前進ボタンと、草刈り機10を後進(REV)させる後進ボタンと、草刈り機10を右方向(→)に進ませる右ボタンと、草刈り機10を左方向(←)に進ませる左ボタンと、走行速度(走行駆動モータ20A,20Bの最高回転数)を調整(Up/Down)する走行速度調整ボタンとが設けられている。
【0081】
図16において、制御部120は、走行制御部121と、草刈り制御部122と、姿勢監視制御部123とを含んで構成されている。
【0082】
走行制御部121は、車両コントローラ140内の車両制御部141(
図17参照)と、走行制御モータ20A,20B用のモータドライバ150,160(
図17参照)とにより構成され、走行に関する制御を実行する。具体的には、ユーザの操作によりリモートコントローラ100から送信されてきて受信部110で受信した消費電力の設定値(Pc)、走行駆動モータ20A,20Bの最高回転数(Rmax)、および前進・後進の別を示す信号についての受付処理およびメモリへの記憶を行う。また、走行制御部121は、走行駆動モータ20A,20Bの回転数および回転方向の制御を行う(
図18参照)。なお、回転方向は、ユーザによる前進・後進の別を示す信号で定まる。また、ユーザによる右ボタンや左ボタンの操作も走行制御に反映されるが、本願の制御内容には直接に関係しないので、記載を省略する。
【0083】
草刈り制御部122は、車両コントローラ140内の車両制御部141(
図17参照)と、草刈りモータ70用のモータドライバ170(
図17参照)とにより構成され、草刈り作業に関する制御を実行する。具体的には、ユーザの操作によりリモートコントローラ100から送信されてきて受信部110で受信した草刈りモータ70の目標回転数(Rmc)、刈高(MH)の設定信号、前進・後進の別を示す信号についての受付処理およびメモリへの記憶を行う。なお、前進・後進の別を示す信号についての受付処理およびメモリへの記憶は、上記の走行制御部121の説明でも記載しているが、同じ処理を重複して実行するわけではなく、双方の制御に関連するので、草刈り制御部122についても記載している。すなわち、前進から後進へ、または後進から前進への切換が行われると、草刈りモータ70の回転も、正転状態から逆転状態へ、または逆転状態から正転状態への切換が行われる。また、草刈り制御部122は、草刈りモータ70の回転数および回転方向の制御も行う(
図18参照)。回転方向は、上述したように、前進・後進の別を示す信号で定まり、走行制御部121による制御とリンクしている。さらに、草刈り制御部122は、刈高調整も行う。この刈高調整では、ユーザによる刈高(MH)の設定信号に応じ、刈高調整モータ80を駆動し、刈高調整機構85により右側および左側の草刈り刃群60A,60Bの高さ位置の調整を行う。
【0084】
姿勢監視制御部123は、車両コントローラ140内の車両制御部141(
図17参照)により構成され、車両姿勢の監視制御を実行する。具体的には、車両コントローラ140に内蔵された3DGセンサ111(3軸加速度センサ)により測定された重力加速度の成分値を用いて、車両(草刈り機10の全体)の姿勢を判断し、すなわち傾斜角度を計算し、計算して得られた傾斜角度と、予め設定された閾値との比較を行い、車両の姿勢に余裕があるか否か、または余裕の程度を判断し、その判断結果をインジケータ90で出力する。インジケータ90の出力は、危険であるか否かを判断し、危険な場合に、例えば、赤色点灯または赤色点滅を行ったり、あるいは、危険なし、やや危険、非常に危険等のように、段階的な判断を行い、その判断結果を、例えば、緑色、黄色、赤色等による点灯や点滅を行って知らせてもよい。これにより、草刈り作業を行う接地面(地面)が傾斜面になっている場合に、草刈り可能な傾斜に対して余裕が低下したときに、インジケータ90の出力により、その状況をユーザに知らせることができる。このため、ユーザが、草刈り機10の本体から離れた場所でリモートコントローラ100を操作する場合でも、安全に操作することができる。なお、インジケータ90の出力に加え、音声による危険報知を行ってもよい。また、判断結果を示す信号をリモートコントローラ100へ送信し、インジケータ90による出力に相当する出力や、音声報知を、リモートコントローラ100で行ってもよい。
【0085】
図17において、バッテリモジュール130は、バッテリマネジメントシステム(BMS)131と、電流センサ132と、バッテリセル133と、充電用コンタクタ134と、放電用コンタクタ135とを備えている。バッテリマネジメントシステム(BMS)131は、電流センサ132で測定したバッテリ電流(バッテリセル133から放電用コンタクタ135へ流れる放電電流)、バッテリセル133で測定された各セル電圧から得られるバッテリ電圧、およびバッテリの残容量(SOC)等を、車両コントローラ140内の車両制御部141に送る。充電用コンタクタ134は、充電器180からバッテリセル133に流れる電流の開閉制御を行い、放電用コンタクタ135は、バッテリセル133から各モータドライバ150,160,170に流れる電流の開閉制御を行う。充電器180は、家庭用電源に繋ぐものでよい。
【0086】
右側の走行駆動モータ20A用のモータドライバ150および左側の走行駆動モータ20B用のモータドライバ160は、走行駆動モータ20A,20Bの目標回転数の維持のためのPWM・Duty(PWMデューティ)制御を行うものである。PWM(Pulse Width Modulation)はパルス幅変調であり、PWM制御は、パルスのオンとオフを繰り返し切り換えることで出力される電力を制御する。すなわち、走行駆動モータ20A,20Bの目標回転数と実回転数との差分をPWM変換してスイッチング回路に入力し、スイッチング回路からの出力で走行駆動モータ20A,20Bを回転させ、走行駆動モータ20A,20Bの新たな実回転数をフィードバックし、再び、目標回転数と実回転数との差分を求め、PWM変換してスイッチング回路に入力するというフィードバック制御を行う。スイッチング回路には、放電用コンタクタ135を経由して電力の供給が行われる。走行駆動モータ20A,20Bは、例えば、ブラシレスDCモータである。目標回転数と実回転数との差分をPWM変換する際には、前進・後進の切換に応じた回転方向指示信号も加味される。
【0087】
草刈りモータ70用のモータドライバ170も同様であり、草刈りモータ70の目標回転数の維持のためのPWM・Duty制御を行うものである。すなわち、草刈りモータ70の目標回転数と実回転数との差分をPWM変換してスイッチング回路に入力し、スイッチング回路からの出力で草刈りモータ70を回転させ、草刈りモータ70の新たな実回転数をフィードバックし、再び、目標回転数と実回転数との差分を求め、PWM変換してスイッチング回路に入力するというフィードバック制御を行う。スイッチング回路には、放電用コンタクタ135を経由して電力の供給が行われる。草刈りモータ70は、例えば、ブラシレスDCモータである。目標回転数と実回転数との差分をPWM変換する際には、前進・後進の切換に伴う正転状態・逆転状態の切換に応じた回転方向指示信号も加味される。
【0088】
図18には、制御(走行制御部121および草刈り制御部122による制御)の流れがフローチャートで示されている。
図18において、先ず、ユーザは、リモートコントローラ100を操作し、草刈力(草刈りモータ70の回転数(Rmc))、作業能力(消費電力(Pc))、走行速度(走行駆動モータ20A,20Bの最高回転数(Rmax))を入力する(ステップS1)。
【0089】
次に、リモートコントローラ100から車両コントローラ140内の受信部110に対し、ユーザにより入力された信号やデータが無線送信されるので、これらの信号やデータを受信部110で受信して車両コントローラ140内の車両制御部141で受け付け、メモリ(揮発性メモリでも、不揮発性メモリでもよい。)に記憶させる。これにより、作業能力の設定、すなわち消費電力(Pc)の設定、および走行駆動モータ20A,20Bの最高回転数(Rmax)の設定が行われるとともに(ステップS2)、草刈りモータ70の回転数(Rmc)の設定が行われる(ステップS3)。
【0090】
続いて、車両コントローラ140内の車両制御部141は、設定された草刈りモータ70の回転数(Rmc)を目標回転数として草刈りモータ70用のモータドライバ170(
図17参照)に出力する(ステップS4)。
【0091】
それから、草刈りモータ70用のモータドライバ170において、草刈りモータ70の設定された目標回転数(Rmc)の維持のためのPWM・Duty制御が行われる(ステップS5)。この際、草の量の変化等により、草刈りモータ70の負荷が変動し、草刈りモータ70で消費される電力が変化する。すなわち、草刈りモータ70用のモータドライバ170内のスイッチング回路に供給される電力が変化する(電圧が一定であれば、電流が変化する)。例えば、草の量が増えれば、草刈りモータ70の負荷が増大し、草刈りモータ70で消費される電力が大きくなる、すなわちスイッチング回路に供給される電力が大きくなる。一方、草の量が減れば、草刈りモータ70の負荷が減り、草刈りモータ70で消費される電力が小さくなる、すなわちスイッチング回路に供給される電力が小さくなる。
【0092】
そして、バッテリモジュール130において、電流センサ132により、バッテリ電流Ir(バッテリセル133から放電用コンタクタ135へ流れる放電電流)の測定が行われるとともに(ステップS6)、バッテリセル133で測定された各セル電圧からバッテリ電圧BVrが得られるので(ステップS7)、バッテリマネジメントシステム(BMS)131は、これらのバッテリ電流Irおよびバッテリ電圧BVrを、車両コントローラ140内の車両制御部141に送る。
【0093】
続いて、車両コントローラ140内の車両制御部141は、バッテリ電流Irおよびバッテリ電圧BVrを用いて、実使用電力値Prの算出を行う(ステップS8)。この算出処理は、Pr=Ir×BVrという式で行われる。
【0094】
それから、車両制御部141は、実使用電力値Prと、消費電力の設定値Pcとの差分(Pd)の算出を行う(ステップS9)。この算出処理は、Pd=Pr-Pcという式で行われる。
【0095】
その後、車両制御部141は、走行駆動モータ20A,20Bの新たな目標回転数Rt(n+1)の算出を行う(ステップS10)。この算出処理は、Rt(n+1)=Rt(n)-K×Pdという式で行われる。ここで、Kは、比例定数であり、実使用電力値Prと消費電力の設定値Pcとの差分Pdが、走行駆動モータ20A,20Bの目標回転数の新旧の値の差分(Rt(n+1)-Rt(n))に比例することを示す関係式となっている。この比例定数Kは、実験により求めたものである。なお、このように比例の関係式ではなく、2次以上の関数による関係式としてもよく、あるいは、対応関係をテーブル(車両制御部141のメモリに記憶させたテーブル)を用いて定めてもよい。
【0096】
但し、ステップS10において、Rt(n+1)>Rmaxのときは、Rt(n+1)=Rmaxとする。すなわち、実使用電力値Prと消費電力の設定値Pcとの差分Pdから得られた走行駆動モータ20A,20Bの新たな目標回転数Rt(n+1)が、設定された走行駆動モータ20A,20Bの最高回転数Rmaxを超えるときには、新たな目標回転数Rt(n+1)を、最高回転数Rmaxとする。
【0097】
例えば、草の量が増えて、草刈りモータ70の負荷が増大し、草刈りモータ70で消費される電力が大きくなれば、すなわちスイッチング回路に供給される電力が大きくなれば、バッテリ電流Irが大きくなり、実使用電力値Prが大きくなる。従って、実使用電力値Prと消費電力の設定値Pcとの差分Pd=Pr-Pcは、プラスの値になるので、比例定数Kをプラスの値で定めていれば、「-K×Pd」は、マイナスの値になるため、新たな目標回転数Rt(n+1)は、前回の目標回転数Rt(n)よりも小さくなり、走行速度を下げる方向の修正が行われる。
【0098】
続いて、車両制御部141は、Rt(n+1)を目標回転数として走行駆動モータ20A,20B用のモータドライバ150,160に出力する(ステップS11)。
【0099】
それから、走行駆動モータ20A,20B用のモータドライバ150,160において、走行駆動モータ20A,20Bの目標回転数の維持のためのPWM・Duty制御が行われる(ステップS12)。この際、走行駆動モータ20A,20Bの負荷が変動すると、走行駆動モータ20A,20Bで消費される電力が変化する。すなわち、走行駆動モータ20A,20B用のモータドライバ150,160内のスイッチング回路に供給される電力が変化する(電圧が一定であれば、電流が変化する)。従って、この電力の変化(電流の変化)は、前述したステップS6,S7の処理に反映される。
【0100】
図19は、以上に述べた
図18の制御に関連するデータの変化を示すグラフである。草刈り刃の回転数および総電力を、ユーザによる設定値として一定とする。このとき、草の量(草刈りモータ70の負荷)が増えると、草刈りモータ70の電力が増え、走行速度(走行駆動モータ20A,20Bの回転数)が下がり、走行駆動モータ20A,20Bの電力が減っていることがわかる。
【0101】
<本実施形態の効果>
【0102】
このような本実施形態によれば、次のような効果がある。すなわち、草刈り機10では、草の量の増減に伴い、草刈りモータ70の負荷変動が生じた際に、草刈りモータ70で消費される電力と、走行駆動モータ20A,20Bで消費される電力とを合計した総電力が一定になるように、走行駆動モータ20A,20Bの回転数の制御、つまり走行速度の制御を行う。このため、作業中における総電力が一定になるので、バッテリの消費速度や残量変化、バッテリを満タンにした状態からの作業可能時間、あるいはバッテリ交換時期を予想しながら草刈り作業を行うことができる。
【0103】
また、車両制御部141は、比例の関係式を用いた制御を行うので(
図18のステップS10参照)、走行駆動モータ20A,20Bの新たな目標回転数Rt(n+1)を容易に算出することができる。
【0104】
さらに、上記の制御(
図18のステップS10の処理)では、実使用電力値Prと消費電力の設定値Pcとの差分Pdから得られた走行駆動モータ20A,20Bの新たな目標回転数Rt(n+1)が、設定された走行駆動モータ20A,20Bの最高回転数Rmaxを超えるときには、新たな目標回転数Rt(n+1)を、最高回転数Rmaxとするので、より一層適切な走行速度の制御を行うことができる。すなわち、草の量が少なければ、草刈りモータ70で消費される電力が小さくなるので、走行駆動モータ20A,20Bで消費される電力を大きくすることができ、走行駆動モータ20A,20Bの目標回転数を上げることも可能となるが、その場合でも、設定された走行駆動モータ20A,20Bの最高回転数Rmaxを上限値とすることで、走行速度が過大になることを未然に防止することができる。そして、この場合、走行駆動モータ20A,20Bで消費される電力が低く抑えられることになり、総電力は下がるので、バッテリが長持ちする方向への変化となることから、ユーザに不都合は生じない。
【0105】
また、草刈り機構部74は、異なる高さ位置に配置された上側および下側の偶数枚(本実施形態では、4枚)の草刈り刃を備えた右側および左側の2つの草刈り刃群60A,60Bを1つの草刈りモータ70により反対方向に同時に回転させる構成とされているので、草刈り作業を効率的に行うことができる。また、左右反転分割機構72により、前進から後進、または後進から前進への進行方向の切換に応じて2つの草刈り刃群60A,60Bのそれぞれの回転方向を正転状態から逆転状態、または逆転状態から正転状態へ反転させることができるので、斜面で草刈り機10自体の方向を反転させることなく、スイッチバック方式で前進・後進を切り換えて効率的な草刈り作業を行うことができる。
【0106】
さらに、同形状の2枚の板状部材のうちの一方を表裏反転させた状態で2枚の板状部材を十字状に結合することにより、4枚の草刈り刃61A~64A,61B~64Bを備えた草刈り刃群60A,60Bを形成しているので、草刈り刃群60A,60Bを容易に製造することができる。
【0107】
また、クローラベルト30A,30Bは、3次元の凸状部41を有する多数のゴム製のスパイク状のブロック40を含んで構成されているので、凸状部41により、地面との点接触が実現され、静かで安定した走行を行うことができる。
【0108】
さらに、ブロック40には、第1、第2の横滑りブロック面44,47が、左右両側に設けられているので、傾斜地での草刈り作業を行う際における草刈り機10の横滑りを防止することができる。従って、スイッチバック方式による前進・後進の切換を実現した効果と相まって、傾斜によるずり落ちが無く、安全かつ簡単な操作で、効率的に草刈り作業を行うことができる。
【0109】
また、草刈り機10には、インジケータ90が設けられているので、ユーザが、草刈り機10の本体から離れた場所でリモートコントローラ100を操作する場合でも、安全に操作することができる。
【0110】
さらに、草刈り機10は、刈高調整機構85を備えているので、状況に応じた草刈り作業を行うことができるうえ、狭い場所でも、草刈り刃群60A,60Bを前方に突き出して草刈り作業を行うことができる。
【0111】
また、草刈り刃の回転駆動は、電動の草刈りモータ70により行うとともに、バッテリモジュール130には、放電用コンタクタ135が設けられているので、その駆動電流を監視することにより、石などの硬い物体に草刈り刃が当たったときに瞬時に駆動を停止することができる。
【0112】
<変形の形態>
【0113】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲内での変形等は本発明に含まれるものである。
【0114】
例えば、前記実施形態では、4枚の草刈り刃61A~64A,61B~64Bを備えた草刈り刃群60A,60Bとされていたが、
図20に示すように、例えば、6枚の草刈り刃を備えた草刈り刃群260A,260B(刃間角度=60度)としてもよく、要するに、4枚以上の偶数枚の草刈り刃を備えた草刈り刃群であればよい。
【0115】
また、前記実施形態では、ブロック40は左右対称の形状とされていたが、
図21に示すように、非対称の形状のブロック340A,340Bとしてもよい。この際、前記実施形態よりも接地ラインを外寄りにする場合には、
図21のように、右側のクローラベルト330A(不図示)を構成するブロック340Aおよび左側のクローラベルト330B(不図示)を構成するブロック340Bを配置すればよいが、前記実施形態よりも接地ラインを内寄りにしてもよい。
【0116】
さらに、前記実施形態では、ブロック40は、第1、第2の横滑りブロック面44,47を備えていたが、第3、第4、…の横滑りブロック面を設け、3段以上の階段状にしてもよい。この際、それぞれの横滑りブロック面の高さ寸法は、6mm以上であることが好ましい。また、右側の横滑りブロック面の右側空間、および左側の横滑りブロック面の左側空間は、開放されていることが前提である。
【産業上の利用可能性】
【0117】
以上のように、本発明の草刈り機は、例えば、傾斜地や荒れ地等の様々な地面に生えた草を刈る場合に用いるのに適している。
【符号の説明】
【0118】
10 草刈り機
20A,20B 走行駆動モータ
30A,30B クローラベルト
31 ベルト基部
40,340A,340B ブロック
41 凸状部
42 前方斜面
44 第1の横滑りブロック面
45 中間棚面
47 第2の横滑りブロック面
49 取付面
60A,60B,260A,260B 草刈り刃群
61A~64A,61B~64B 草刈り刃
70 草刈りモータ
72 左右反転分割機構
120 制御部
130 バッテリモジュール
132 電流センサ
141 制御部を構成する車両コントローラ内の車両制御部
150,160,170 制御部を構成するモータドライバ