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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-24
(45)【発行日】2023-04-03
(54)【発明の名称】栄養補給欲抑制剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/01 20060101AFI20230327BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20230327BHJP
   A23L 33/20 20160101ALI20230327BHJP
   A23L 33/18 20160101ALI20230327BHJP
   A23J 3/34 20060101ALN20230327BHJP
【FI】
A61K38/01 ZNA
A61P3/04
A23L33/20
A23L33/18
A23J3/34
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021132853
(22)【出願日】2021-08-17
(65)【公開番号】P2023027624
(43)【公開日】2023-03-02
【審査請求日】2021-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】391029336
【氏名又は名称】長田産業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】597065329
【氏名又は名称】学校法人 龍谷大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】石原 健吾
(72)【発明者】
【氏名】小根田 洋史
【審査官】大島 彰公
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-082658(JP,A)
【文献】Bioscience Biotechnology and Biochemistry,2018年,Vol. 82, No. 11,pp. 1992-1999,https://doi.org/10.1080/09168451.2018.1505482
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K、A23L、A61P、A23J
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
麦グルテンの中性プロテアーゼ処理物を有効成分として含有し、
前記中性プロテアーゼ処理物はペプチドを含有し、
前記ペプチドは、小麦グルテン加水分解物の水溶性成分のうち、Sep-Pak C18カートリッジ(Waters社製)に供したときに、10%超~50%のメタノール水溶液により抽出される画分由来のペプチドである、栄養補給欲抑制剤。
【請求項2】
前記栄養補給欲抑制剤が食欲抑制剤である、請求項1に記載の栄養補給欲抑制剤。
【請求項3】
経口投与用である、請求項1または2に記載の栄養補給欲抑制剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栄養補給欲抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
小麦には澱粉及びグルテン等が含まれており、澱粉及びグルテンをそれぞれ分離回収して利用することができる。
【0003】
例えば、特許文献1には、小麦グルテン又は小麦グルテン加水分解物を含む摂食抑制剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-82658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の他に、グルテンの更なる用途開発が望まれている。
【0006】
本発明は、小麦から分離回収したグルテンの新規用途を開発することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上述の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、小麦から分離回収したグルテンを中性プロテアーゼによって加水分解して得られたペプチドが食欲等の栄養補給欲の抑制作用を有することを見出して、本発明を完成するに至った。
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、以下に示す態様を含む。
<1>中性プロテアーゼによる小麦グルテン加水分解物由来のペプチドを有効成分として含有する栄養補給欲抑制剤。
<2>前記ペプチドが小麦グルテン加水分解物の水溶性成分である、<1>に記載の栄養補給欲抑制剤。
<3>前記ペプチドが小麦グルテン加水分解物の水溶性成分のうちの低親水性画分由来のペプチドである、<1>の栄養補給欲抑制剤。
<4>前記栄養補給欲抑制剤が食欲抑制剤である、<1>~<3>のいずれか1つの栄養補給欲抑制剤。
<5>経口投与用である、<1>~<4>のいずれか1つの栄養補給欲抑制剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、小麦から分離回収したグルテンの新規用途を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】小麦グルテンのアミノ酸組成の一例を示す図である。
図2】小麦グルテン加水分解ペプチドの製造工程の一例を示す図である。
図3】小麦グルテン加水分解ペプチドの分析結果を示す図である。
図4】小麦グルテン加水分解ペプチドのSDS-PAGEの結果を示す図である。
図5】小麦グルテン加水分解ペプチドのアレルゲン試験の結果を示す図である。
図6】小麦グルテン加水分解ペプチドのカラム分画品の栄養補給欲調節の評価結果を示す図である。
図7】小麦グルテン加水分解ペプチドのカラム分画品の分析結果を示す図である。
図8】WGH-3をマウスに投与後のリック数の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔栄養補給欲抑制剤〕
本発明の栄養補給欲抑制剤は、小麦グルテン加水分解物由来のペプチドを有効成分として含有する。小麦グルテン加水分解物由来のペプチドは以下、「グルテン分解ペプチド」と略記する場合がある。栄養補給欲の例として、食欲等が挙げられる。
【0012】
(グルテン分解ペプチド)
グルテンは、小麦に含まれるタンパク質であり、グルテニンとグリアジンが会合している。
【0013】
図1には、小麦グルテンのグリアジンのアミノ酸配列の一例を示す。また、小麦グルテンのグリアジン及びグルテニンの一例に含まれるグルタミン(Q)の割合を示す。小麦グルテンのグリアジン及びグルテニンを構成するアミノ酸組成の約30~40%がグルタミン(Q)である。
【0014】
栄養補給欲抑制剤に含まれるグルテン分解ペプチドは、1種類であってもよいし、2種類以上のグルテン分解ペプチドの混合物であってもよい。
【0015】
栄養補給欲の抑制作用を増強させる点等で、グルテン分解ペプチドはグルタミンリッチなペプチドであることが好ましい。本明細書において、グルタミンリッチなペプチドとは、当該ペプチドを構成するアミノ酸残基の総数に対する、グルタミン残基の割合が10%以上100%の範囲内であり、好ましくは30%以上100%以下であるペプチドのことである。
【0016】
グルテン分解ペプチドの分子量は、例えば、300Da以上15KDa以下であってもよく、300Da以上10kDa以下であることが好ましい。
【0017】
グルテン分解ペプチドを得るために、市販のグルテンを加水分解酵素(プロテアーゼ)で加水分解させる。又は、小麦から澱粉を回収することによって得られたグルテンを加水分解させてもよい。本発明の栄養補給欲抑制剤の有効成分であるグルテン分解ペプチドは中性プロテアーゼによって加水分解させる。グルテン分解ペプチドを得るための工程の一例を図2に示す。
【0018】
中性プロテアーゼの例として、微生物由来プロテアーゼ、植物由来プロテアーゼ及び哺乳類由来プロテアーゼ等が挙げられる。加水分解条件(例えば、pH、反応時間及び反応温度、等)は、使用する中性プロテアーゼの種類、基質濃度及び酵素濃度等によって適宜選択することができる。
【0019】
ドウ形成による加水分解抑制が引き起こされないように、中性付近(pH7.0前後)の水に少量のグルテンと中性プロテアーゼをまず投入することが好ましい。そして、残りのグルテンを徐々に投入して、加水分解処理を行うことが好ましい。
【0020】
一例では、中性プロテアーゼは、グルテンの総重量に対して0.1重量%以上で5重量%以下の範囲内で用いる。用いられる中性プロテアーゼの量は、グルテンの総重量に対して、好ましくは0.2重量%以上、より好ましくは0.3重量%以上であり、その上限は、好ましくは2重量%以下、より好ましくは1重量%以下又は0.7重量%以下である。中性の水に投入される少量のグルテンの量は特に限定はされないが、一例では、グルテンの総重量の1%以上で10%以下の範囲内である。少量のグルテンの量は、グルテンの総重量の2%以上であることが好ましい場合があり、3%以上であることがより好ましい場合があり、その上限は7%以下であることが好ましい場合があり、5%以下であることがより好ましい場合がある。
【0021】
グルテンを加水分解して得られたグルテン分解ペプチドは、好ましくは水溶性成分からなるものである。水溶性成分からなるグルテン分解ペプチドは、例えば、グルテンを加水分解した後に、水不溶性成分をろ過等で取り除くことによって得られる。グルテン分解ペプチドは、十分な栄養補給欲抑制作用を発揮させる点等で、活性炭等によって精製しないことが好ましい。逆相クロマトグラフィー及びイオン交換クロマトグラフィー等のクロマトグラフィーを用いて精製する場合、溶離液はメタノール及びエタノール等の低級アルコールと水との混合溶液を用いればよい。低級アルコールとしては、エタノールが好ましい。また、栄養補給欲抑制作用を増強させる点等で、グルテン分解ペプチドは、グルテン加水分解物の水溶性成分のうち低親水性画分由来のペプチド(低親水性を有するペプチド)を含むことが好ましい。本明細書において、「低親水性画分」とは、グルテン加水分解物の水溶性成分を、Sep-Pak C18カートリッジ(Waters社製)に供したときに、10質量%超のメタノールを含有するメタノールと水との混合溶液で溶出する画分を指す。
【0022】
本発明の栄養補給欲抑制剤におけるグルテン分解ペプチドの含有量は、後述する栄養補給欲抑制剤の形態により異なるが、乾燥質量を基準として、1~100質量%であってもよく、2~99質量%であってもよく、5~95質量%であってもよく、10~90質量%であってもよい。
【0023】
本発明の栄養補給欲抑制剤は、穀物である小麦を原料としているので、安全性が高い。また、実施例に示すように、グルテンを加水分解することによってアレルギー源であるグリアジンが消失しているので、アレルギーの観点からも安全である。
【0024】
(栄養補給欲抑制剤のその他の成分及び剤形)
本発明の栄養補給欲抑制剤は、グルテン分解ペプチド以外の他の成分をさらに含んでいてもよい。当該他の成分は特に限定されないが、例えば、薬学的に許容される担体、潤滑剤、保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧調整用の塩類、緩衝剤、着色剤、香味料、甘味料、抗酸化剤、及び粘度調整剤等が挙げられる。また、必要に応じて、公知の栄養補給欲抑制剤を、本発明の栄養補給欲抑制剤の一構成として加えて複合剤を構成してもよい。
【0025】
上記薬学的に許容される担体は、特に限定されないが、担体であって、栄養補給欲抑制作用を阻害せず、かつ、投与対象となるヒト又は動物に対して実質的な悪影響を及ぼさないという性質を備えることが好ましい。
【0026】
上記担体としては、この分野で既報のものを広く使用でき、具体的には、例えば、水、各種塩溶液、アルコール、植物油、ポリエチレングリコール、ゼラチン、ラクトース、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、パラフィン、脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸ジグリセリド、ヒドロキシメチルセルロース、及びポリビニルピロリドン等が挙げられるが、特にこれらに限定されない。担体の種類は、栄養補給欲抑制剤の剤形、及び投与方法等に応じて、適宜選択すればよい。
【0027】
栄養補給欲抑制剤の剤形も特に限定されず、例えば、錠剤、丸剤、散剤、シロップ剤、ドライシロップ剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤及びカプセル剤等の経口剤;坐剤等の経腸製剤;点滴剤;注射剤;等が挙げられ、好ましくは注射剤又は経口投与用の剤形である。例えば、携帯性及び投与の容易さ等の観点では、錠剤及び液剤等の経口投与の剤形が好ましい。
【0028】
本発明の栄養補給欲抑制剤は、特定保健用食品及び栄養機能食品等の保健機能食品;栄養補助食品及び健康補助食品等のサプリメント;飼料;ペットフード;等の食品としても使用することができる。
【0029】
(投与対象)
投与対象は、ヒト又は動物であり、より具体的には、ヒトを含む哺乳類からなる群より選択される何れかである。中でも、哺乳類に対して特に好適に本発明の栄養補給欲抑制剤が適用される投与対象となる哺乳類の種類は特に限定されないが、マウス、ラット、ウサギ、モルモット及びヒトを除く霊長類等の実験動物;イヌ及びネコ等の愛玩動物(ペット);ブタ、ウシ、ヤギ、ヒツジ及びウマ等の家畜;ヒト;が挙げられ、好ましくは家畜又はヒトであり、特に好ましくはヒトである。
【0030】
(栄養補給欲抑制剤の投与方法・用量)
本発明の栄養補給欲抑制剤の投与方法は特に限定されず、経口投与、静脈内又は動脈内への血管内投与、腸内投与といった手法によって全身投与されてもよく、経皮投与、舌下投与といった手法によって局所投与されてもよい。好ましい一つの投与態様では、投与の容易さ等の観点で優れるため、経口投与される。
【0031】
上記栄養補給欲抑制剤の投与量は、投与対象となる上記ヒト又は動物の年齢、性別、体重、症状、投与経路、投与回数、及び投与期間等に応じて適宜設定すればよい。また、必要であれば、栄養補給欲抑制剤を用いたインビボアッセイを事前に行い、過度の実験を要することなく上記投与量を決定することができる。
【0032】
本発明の栄養補給欲抑制剤は栄養補給前に投与されてもよいし、栄養補給中に投与されてもよい。
【0033】
本発明の栄養補給欲抑制剤を摂取することによって、栄養(栄養成分)を補給したいという欲求を抑制させることができる。当該栄養として、単糖類、二糖類、多糖類等の炭水化物(糖質);アミノ酸;タンパク質;脂肪酸;脂質;水分;ミネラル;ビタミン;食物繊維;等が挙げられる。本発明の栄養補給欲抑制剤の摂取によって、1種類又は2種類以上の栄養の補給欲を抑制させることができる。実施例に示すように、本発明の栄養補給欲抑制剤は糖とタンパク質と脂質との組み合わせの補給欲の抑制に効果を奏する。
【0034】
本発明の栄養補給欲抑制剤は、食欲抑制剤としても機能する。食欲抑制剤として使用する場合は食前に投与されてもよい、食間に投与されてもよい。
【0035】
以下に実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明の以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。さらに、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された文献の全てが参考として援用される。
【実施例
【0036】
以下の実施例中、特に記載がない限り、%は質量%を表す。
【0037】
〔実施例1〕小麦グルテン加水分解ペプチドの調製
小麦グルテン(長田産業製、商品名:フメリットA2)を基質として、図2に記載の製造工程にしたがって、水溶性成分からなる小麦グルテン分解ペプチド(以下、「WGH-2」と略記する場合がある)を調製した。プロテアーゼとして、B.subtilis由来中性金属プロテアーゼ(HBI製、商品名:オリエンターゼ90N)を使用した。
【0038】
〔評価例1〕WGH-2の成分分析
WGH-2の成分分析を、一般財団法人日本食品分析センターに依頼して行った。分析結果を図3に示す。図3に示すように、WGH-2に含まれるタンパク質量が77.5%であり、そのうち44%がグルタミン(Q)及びグルタミン酸(E)であった。分析法の性質上、グルタミンとグルタミン酸は区別できない。しかしながら、図1より、親タンパク質である小麦グルテンのアミノ酸組成から、WGH-2の実質大部分がグルタミン(Q)であると考えられる。
【0039】
〔評価例2〕WGH-2のSDS-PAGEによる評価
WGH-2のSDS-PAGEによる評価結果を図4に示す。WGH-2のレーンでは、グルテンが検出されなかったことから、グルテンはSDS-PAGEでは検出できないレベルまでに分解されていることが分かった。
【0040】
〔評価例3〕WGH-2のアレルゲン試験
食物アレルゲン件検出キットである、アレルゲンアイ(登録商標)イムノクロマトシングルステップ(登録商標)(プリマハム製)を使用して、WGH-2の小麦(グリアジン)に対するアレルゲン試験を行った。結果を図5に示す。
【0041】
グルテンでは小麦(グリアジン)に対して陽性であった一方、WGH-2は陰性であった(検出限界:2ppm)。評価例3の結果から、WGH-2に対してグルテンフリーである旨の表示が可能であることが分かった。例えば、欧州及び米国等では、グルテン濃度が20ppm以下である場合、グルテンフリーである旨の表示が可能である。
【0042】
〔評価例4〕WGH-3のカラム分画品の食欲調節効果試験
WGH-2の10kDa膜透過画分(低分子画分)を凍結乾燥させて、WGH-3を得た。Sep-Pak Vac 35 cc (10 g) C18 カートリッジ(Waters社製)に、40mg/mLのWGH-3溶液を10mL/カートリッジになるように添加し、0~50%のMeOH水溶液100mLで溶出させた。溶出液を凍結乾燥し、凍結乾燥物をマウスに1g/10mL/kg(体重)の投与用量でゾンデにより胃内投与を行った。ケージに設置した水溶液(2%スクロース水溶液)入りボトルを舐める(リック)回数を電気的に計測して、栄養補給欲の指標とした。
【0043】
また、凍結乾燥物について以下の条件でHPLC分析を行った。100%の溶離液Aを開始から5分間送液した。そして、開始5分から25分間で50%溶離液A/50%溶離液Bとなるように、溶離液の組成を直線的に変化するように送液した。
<条件>
カラム:TSKgel ODS-80TM(4.6 mm (ID)×15 cm)(東ソー社製)
溶離液A:水(Milli Q water)
溶離液B:MeOH
流速:1.2mL/分
温度:40℃
【0044】
評価結果を図6に示す。図6中、例えば、「WGH 0-10%」は、0~10%のMeOH溶出画分の結果を示す。図6に示すように、Sep-Pak C18カートリッジによる分画において、0~10%のMeOH溶出画分(高親水性画分)では、リック回数が増えて栄養補給欲促進傾向にあることが分かった。0%~10%のMeOH溶出画分はHPLC分析において0~15分に溶出した。一方、10%超~50%のMeOH溶出画分(低親水性画分)では、リック回数が減って栄養補給欲抑制傾向にあることが分かった。10~50%のMeOH溶出画分はHPLC分析において15~35分に溶出した。
【0045】
〔評価例5〕WGH-2のカラム分画品の分析
20mg/mLのWGH-2溶液を、Diaion HP20(SIGMA-ALDRICH社製、bed volume:125 mL)に連続的に供した。そして、溶出液を50mLずつ回収した。回収した溶出液のHPLC分析の結果を図7に示す。HPLCの分析条件は評価例4と同様である。また、WGH-2については評価例4と同様の評価試験を行い、リック回数を計測して、栄養補給欲傾向を評価した。図7に記載した促進傾向および抑制傾向とは、WGH-2について栄養補給欲傾向を評価した結果である。
【0046】
図7に示すように、WGH-2溶液のHPLC分析において、15~35分に溶出された画分(25%超~50%のMeOH溶出画分)において、栄養補給欲抑制傾向にあることが分かった。一方、WGH-2溶液をDiaion HP20に連続的に供して回収した溶出液のHPLC分析では、この栄養補給欲抑制傾向の成分に対応するピークが見られなかった。
【0047】
〔評価例6〕食欲抑制効果の有無の検討
WGH-2の10kDa膜透過画分(低分子画分)であるWGH-3について、食欲抑制効果について検討した。雄性5週齢C57BL6マウス8匹を用いて、ケージに設置した水溶液(2%スクロース、2%アルブミン及び1%イントラリポス含有水溶液)入りボトルを舐める(リック)回数を電気的に計測して、食欲の指標とした。被験試料(WGH-3又は生理食塩水)は、3g/10mL/kg体重の投与用量でゾンデにより胃内投与を行った。コントロールとして生理食塩水を用いた。投与30分後から40分後までの10分間、リック測定装置(メルクエスト社製)にて経時的に累積リック数を測定した。評価結果を図8に示す。
【0048】
図8に示すように、累積リック数を測定した結果、コントロールとして生理食塩水を使用した時に比べて、WGH-3を投与したときに食欲(栄養補給欲)の抑制効果が見られた。一方、2%スクロース、2%アルブミン及び1%イントラポリス含有水溶液に替えて、2%スクロース水溶液で評価を行ったところ、栄養補給欲の促進効果が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、栄養補給欲抑制剤又は食欲抑制剤として利用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8