(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-24
(45)【発行日】2023-04-03
(54)【発明の名称】使用済み紙おむつの回収方法
(51)【国際特許分類】
B09B 5/00 20060101AFI20230327BHJP
B09B 3/70 20220101ALI20230327BHJP
B65F 1/00 20060101ALI20230327BHJP
B65F 5/00 20060101ALI20230327BHJP
D21B 1/34 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
B09B5/00 Z
B09B3/70
B65F1/00 J
B65F5/00
D21B1/34
(21)【出願番号】P 2017156626
(22)【出願日】2017-08-14
【審査請求日】2019-04-01
【審判番号】
【審判請求日】2021-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】507394639
【氏名又は名称】株式会社サムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阪田 勇
(72)【発明者】
【氏名】岡野 公美
(72)【発明者】
【氏名】鴨沢 卓郎
(72)【発明者】
【氏名】阪田 乾仁
(72)【発明者】
【氏名】秋元 安紀
(72)【発明者】
【氏名】上田 孝之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康夫
(72)【発明者】
【氏名】阪田 光子
【合議体】
【審判長】里村 利光
【審判官】清水 康司
【審判官】川口 聖司
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-225645(JP,A)
【文献】特開2013-132600(JP,A)
【文献】登録実用新案第3087610(JP,U)
【文献】特開2013-56768(JP,A)
【文献】特開平10-147385(JP,A)
【文献】特開2006-289154(JP,A)
【文献】特表2009-502455(JP,A)
【文献】特開昭63-236538(JP,A)
【文献】特開2007-209576(JP,A)
【文献】特開2001-204806(JP,A)
【文献】特許第3378204(JP,B2)
【文献】“福岡都市圏紙おむつリサイクルシステム検討委員会報告書”,[online],[令和4年5月11日検索],インターネット<URL:https://www.recycle-ken.or.jp/activite/document/01_honbun_all.pdf>
【文献】土田大輔 外3名,“福岡都市圏における介護施設,医療施設および保育施設からの使用済み紙おむつ発生量の推計”,廃棄物資源循環学会論文誌,2017年28巻,p.76-86
【文献】“廃棄物資源循環学会論文誌 28巻”,[online],[令和4年5月11日検索],インターネット<URL:https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jjsmcwm/28/0/_contents/-char/ja>
【文献】“使用済紙おむつ 完結型マテリアルリサイクル 取組提案 SDGsへの貢献を目指して”,[online],トータルケア・システム株式会社,[令和4年5月11日検索],インターネット<URL:http://www.env.go.jp/recycle/omutu_setumei_2.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B3/00-3/80,5/00
B65F1/00-1/16,5/00
D21B1/12-1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済み紙おむつを回収し、該使用済み紙おむつからパルプを回収する使用済み紙おむつの回収方法であって、
防水性、密封性、抗菌性を有し、一般廃棄物、雨水と触れることなく
前記使用済み紙おむつを回収す
る紙おむつ回収袋であって、前記使用済み紙おむつを収容する回収袋部分と、前記回収袋部分の開口を密閉する密封蓋部分とによって形成され、当該密封蓋部分に取っ手が形成された前記紙おむつ回収袋に
前記使用済み紙おむつを集積して、一般廃棄物と分別された状態で、
一般家庭からの使用済み紙おむつはごみ集積所からごみ処理場又は自治体の専用集積所に集積された後に紙おむつ回収処理業者に回収され、
病院、老人ホーム等の施設からの使用済み紙おむつは使用済み紙おむつ置き場から紙おむつ回収処理業者に回収され、
回収された使用済み紙おむつを、分解水とともに、紙おむつを分解可能な分離機内に投入して、分解水内に溶解したパルプを、分解水内から回収することを特徴とする使用済み紙おむつの回収方法。
【請求項2】
使用済み紙おむつを回収し、該使用済み紙おむつからパルプを回収する使用済み紙おむつの回収方法であって、
防水性、密封性、抗菌性を有し、一般廃棄物、雨水と触れることなく
前記使用済み紙おむつを回収す
る回収ボックスであって、前記使用済み紙おむつを収容するボックス本体と、前記ボックス本体の開口部を密封する密封蓋とによって構成され、前記密封蓋が、前記ボックス本体の開口部の周壁を外周から覆う蓋によって構成された前記回収ボックスに
前記使用済み紙おむつを集積して、一般廃棄物と分別された状態で、
一般家庭からの使用済み紙おむつはごみ集積所からごみ処理場又は自治体の専用集積所に集積された後に紙おむつ回収処理業者に回収され、
病院、老人ホーム等の施設からの使用済み紙おむつは使用済み紙おむつ置き場から紙おむつ回収処理業者に回収され、
回収された使用済み紙おむつを、分解水とともに、紙おむつを分解可能な分離機内に投入して、分解水内に溶解したパルプを、分解水内から回収することを特徴とする使用済み紙おむつの回収方法。
【請求項3】
使用済み紙おむつを回収し、該使用済み紙おむつからパルプを回収する使用済み紙おむつの回収方法であって、
防水性、密封性、抗菌性を有する紙おむつ回収袋
であって、前記使用済み紙おむつを収容する回収袋部分と、前記回収袋部分の開口を密閉する密封蓋部分とによって形成され、当該密封蓋部分に取っ手が形成された前記紙おむつ回収袋に前記使用済み紙おむつが収容された状態で、当該紙おむつ回収袋を、防水性、密封性、抗菌性を有する回収ボックスに一般廃棄物、雨水と触れることな
く集積して、一般廃棄物と分別された状態で、
一般家庭からの使用済み紙おむつはごみ集積所からごみ処理場又は自治体の専用集積所に集積された後に紙おむつ回収処理業者に回収され、
病院、老人ホーム等の施設からの使用済み紙おむつは使用済み紙おむつ置き場から紙おむつ回収処理業者に回収され、
回収された使用済み紙おむつを、分解水とともに、紙おむつを分解可能な分離機内に投入して、分解水内に溶解したパルプを、分解水内から回収することを特徴とする使用済み紙おむつの回収方法。
【請求項4】
使用済み紙おむつを回収し、該使用済み紙おむつからパルプを回収する使用済み紙おむつの回収方法であって、
防水性、密封性、抗菌性を有する紙おむつ回収袋に前記使用済み紙おむつが収容された状態で、当該紙おむつ回収袋を、防水性、密封性、抗菌性を有する回収ボックス
であって、前記使用済み紙おむつを収容するボックス本体と、前記ボックス本体の開口部を密封する密封蓋とによって構成され、前記密封蓋が、前記ボックス本体の開口部の周壁を外周から覆う蓋によって構成された前記回収ボックスに一般廃棄物、雨水と触れることな
く集積して、一般廃棄物と分別された状態で、
一般家庭からの使用済み紙おむつはごみ集積所からごみ処理場又は自治体の専用集積所に集積された後に紙おむつ回収処理業者に回収され、
病院、老人ホーム等の施設からの使用済み紙おむつは使用済み紙おむつ置き場から紙おむつ回収処理業者に回収され、
回収された使用済み紙おむつを、分解水とともに、紙おむつを分解可能な分離機内に投入して、分解水内に溶解したパルプを、分解水内から回収することを特徴とする使用済み紙おむつの回収方法。
【請求項5】
前記分離機は、分解水により使用済み紙おむつをパルプとプラスチックに分解し、パルプが熔解した分解水を前記分離機から取り出して、
前記分離機から取り出した分解水からパルプ回収装置によりパルプを回収することを特徴とする請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載の使用済み紙おむつの回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病院や老人ホーム、一般家庭で使用された使用済み紙おむつを回収し、回収した使用済み紙おむつからパルプを回収する使用済み紙おむつの回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、一般家庭や病院、老人ホーム等では、使い捨てのおむつとして紙製のおむつが使用されている。この紙製のおむつは、パルプ等からなる吸収体と、吸収体が吸収した水分を保持する高分子吸収体(高分子ポリマー)と、これらを包む防水材(プラスチック)などの素材から構成されている。
【0003】
使用した後の使用済みの紙おむつは、現状では大部分が一般廃棄物として処理(処分)されている。使用済み紙おむつをそのまま一般廃棄物として、例えば焼却処分すると燃焼後に有害物質が生成されたり、地中に埋め立て処分すると感染物質等により土壌が悪化する可能性がある。
【0004】
このため、衛生的、環境的な観点から、使用済み紙おむつを素材ごとに分解し、リサイクルできる素材、焼却処分や廃棄する素材に分けて処理する使用済み紙おむつの処理装置が特許文献1、2、3において提案されている。同文献1、2、3にて提案されている使用済み紙おむつの処理装置では、回転するドラム内で、使用済み紙おむつを処理液と混合させることで、パルプ、高分子ポリマー、プラスチックの素材に分解している。そして、各素材の中でリサイクル出来る素材、例えばパルプは回収されて再利用し、プラスチックは焼却処分している。
【0005】
上記使用済み紙おむつの処理装置では、パルプ、高分子ポリマー、プラスチックに分離・解体する場合、プラスチックをドラム内に残したまま、汚物と高分子ポリマーとパルプを処理液中に散在させて、この処理液を濾過する。これによりパルプと高分子ポリマーを回転ドラム内に残して、汚物を含んだ処理液を下水処理施設側へ排出している。しかし、汚物を含んだ消毒後の処理液中には、多くのパルプが残存している。
【0006】
使用済み紙おむつを分離・解体した後の処理液中に残存している多くのパルプを回収するパルプ回収装置として特許文献4で提案されている。このパルプ回収装置は、裁断または破砕した使用済み紙おむつを反応槽、溶解分離機を用いてビニールとそれ以外の原液(パルプ溶解液)に分離し、このパルプ溶解液中からポリマー除去装置を用いてポリマーを除去している。また、ポリマーを除去したパルプ溶解液中から異物除去装置によって異物を除去し、異物が除去されたパルプ溶解液をパルプ洗浄槽を用いて洗浄する。そして、洗浄されたパルプ溶解液を成型乾燥機により脱水して成型乾燥してパルプを回収している。
【0007】
このように、使用済み紙おむつは、資源ごみとしてのパルプを多く含んでおり、使用済み紙おむつに含まれるパルプを回収し、回収したパルプを例えば紙おむつや他の紙製品としてリサイクルすることは、環境的な観点から好ましく、使用済み紙おむつを一般廃棄物として処理することがなくなるので、衛生的な観点から好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第3895081号公報
【文献】特許第3597492号公報
【文献】特許第3569260号公報
【文献】特開2013-132600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、現状、一般家庭では、使用済み紙おむつは、生ゴミ等と一緒に、各自治体で決められた分別用のごみ袋にまとめられ、地域の自治会あるいは自治体等により決められた屋外のごみ集積所に集積されている。この場合、一般家庭において使用済み紙おむつを生ゴミ等の水分を含んだものと一緒に分別用の袋にまとめられると、使用済み紙おむつの高分子ポリマーは生ゴミ等の水分を吸収する。このため、水分を吸収した分だけ使用済み紙おむつの嵩が増えてしまい、全体としてゴミの量が増加してしまう。
【0010】
さらに、屋外のゴミ集積所に集められた状態で分別用の袋が破けているような場合、雨水等が分別用の袋内に入り、この雨水等の水分を使用済み紙おむつの高分子ポリマーが吸収して吸収した水分の量だけ紙おむつの嵩が増えてしまう。また、収集された使用済み紙おむつは清掃工場のごみピットに入れられるが、ここでは火災対策、防臭対策、害虫発生防止のため水を含む防虫剤、防臭剤が噴霧されている。これらの水分を使用済み紙おむつのポリマーが吸収してしまう。
【0011】
このように、使用済み紙おむつの高分子ポリマーが尿以外の水分を吸収して重量や嵩が増えると、焼却炉内で焼却する際に、水分によって焼却炉の温度が低下してしまう。このため、焼却炉の燃焼温度を維持しようとすると余分に燃料を消費してしまう。また、水分を多く吸収している高分子ポリマーを燃焼させるため炉内温度を高温にすると焼却炉を傷めてしまう。さらに使用済み紙おむつの嵩が大きくなるとゴミ全体の量が増えることになるため、焼却炉の大型化につながる。
【0012】
また、大型の焼却炉は発電している事例が多く、炉内を高温に保つため、水分の多い使用済み紙おむつを焼却する際は、重油やガスなどの補助燃料を用いないと炉内温度を一定に保てないことから、余分なエネルギーの投入、化石燃料の無駄遣いをしている。また、使用済み紙おむつが大量の水分を保有してしまうと完全燃焼できなくなり、焼却残さが多く発生してしまう。
【0013】
そこで、本発明は、使用済み紙おむつを焼却や埋め立てによって処理することなく、かつ余分な水分を吸収することのない状態の使用済み紙おむつを集積・回収し、回収した使用済み紙おむつからパルプを回収することができる使用済み紙おむつの回収方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の第1の態様は、使用済み紙おむつを回収し、該使用済み紙おむつからパルプを回収する使用済み紙おむつの回収方法であって、
防水性、密封性、抗菌性を有し、一般廃棄物、雨水と触れることなく前記使用済み紙おむつを回収する紙おむつ回収袋であって、前記使用済み紙おむつを収容する回収袋部分と、前記回収袋部分の開口を密閉する密封蓋部分とによって形成され、当該密封蓋部分に取っ手が形成された前記紙おむつ回収袋に前記使用済み紙おむつを集積して、一般廃棄物と分別された状態で、
一般家庭からの使用済み紙おむつはごみ集積所からごみ処理場又は自治体の専用集積所に集積された後に紙おむつ回収処理業者に回収され、
病院、老人ホーム等の施設からの使用済み紙おむつは使用済み紙おむつ置き場から紙おむつ回収処理業者に回収され、
回収された使用済み紙おむつを、分解水とともに、紙おむつを分解可能な分離機内に投入して、分解水内に溶解したパルプを、分解水内から回収することを特徴とする。
【0015】
本発明の第2の態様としては、使用済み紙おむつを回収し、該使用済み紙おむつからパルプを回収する使用済み紙おむつの回収方法であって、
防水性、密封性、抗菌性を有し、一般廃棄物、雨水と触れることなく前記使用済み紙おむつを回収する回収ボックスであって、前記使用済み紙おむつを収容するボックス本体と、前記ボックス本体の開口部を密封する密封蓋とによって構成され、前記密封蓋が、前記ボックス本体の開口部の周壁を外周から覆う蓋によって構成された前記回収ボックスに前記使用済み紙おむつを集積して、一般廃棄物と分別された状態で、
一般家庭からの使用済み紙おむつはごみ集積所からごみ処理場又は自治体の専用集積所に集積された後に紙おむつ回収処理業者に回収され、
病院、老人ホーム等の施設からの使用済み紙おむつは使用済み紙おむつ置き場から紙おむつ回収処理業者に回収され、
回収された使用済み紙おむつを、分解水とともに、紙おむつを分解可能な分離機内に投入して、分解水内に溶解したパルプを、分解水内から回収することを特徴とする。
本発明の第3の態様としては、使用済み紙おむつを回収し、該使用済み紙おむつからパルプを回収する使用済み紙おむつの回収方法であって、
防水性、密封性、抗菌性を有する紙おむつ回収袋であって、前記使用済み紙おむつを収容する回収袋部分と、前記回収袋部分の開口を密閉する密封蓋部分とによって形成され、当該密封蓋部分に取っ手が形成された前記紙おむつ回収袋に前記使用済み紙おむつが収容された状態で、当該紙おむつ回収袋を、防水性、密封性、抗菌性を有する回収ボックスに一般廃棄物、雨水と触れることなく集積して、一般廃棄物と分別された状態で、
一般家庭からの使用済み紙おむつはごみ集積所からごみ処理場又は自治体の専用集積所に集積された後に紙おむつ回収処理業者に回収され、
病院、老人ホーム等の施設からの使用済み紙おむつは使用済み紙おむつ置き場から紙おむつ回収処理業者に回収され、
回収された使用済み紙おむつを、分解水とともに、紙おむつを分解可能な分離機内に投入して、分解水内に溶解したパルプを、分解水内から回収することを特徴とする。
本発明の第4の態様としては、使用済み紙おむつを回収し、該使用済み紙おむつからパルプを回収する使用済み紙おむつの回収方法であって、
防水性、密封性、抗菌性を有する紙おむつ回収袋に前記使用済み紙おむつが収容された状態で、当該紙おむつ回収袋を、防水性、密封性、抗菌性を有する回収ボックスであって、前記使用済み紙おむつを収容するボックス本体と、前記ボックス本体の開口部を密封する密封蓋とによって構成され、前記密封蓋が、前記ボックス本体の開口部の周壁を外周から覆う蓋によって構成された前記回収ボックスに一般廃棄物、雨水と触れることなく集積して、一般廃棄物と分別された状態で、
一般家庭からの使用済み紙おむつはごみ集積所からごみ処理場又は自治体の専用集積所に集積された後に紙おむつ回収処理業者に回収され、
病院、老人ホーム等の施設からの使用済み紙おむつは使用済み紙おむつ置き場から紙おむつ回収処理業者に回収され、
回収された使用済み紙おむつを、分解水とともに、紙おむつを分解可能な分離機内に投入して、分解水内に溶解したパルプを、分解水内から回収することを特徴とする。
本発明の第5の態様としては、前記分離機は、分解水により使用済み紙おむつをパルプとプラスチックに分解し、パルプが熔解した分解水を前記分離機から取り出して、分離機から取り出した分解水からパルプ回収装置によりパルプを回収することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、防水性、密封性、抗菌性を有する紙おむつ回収容器によって使用済み紙おむつを回収し、回収した使用済み紙おむつを分離機によって素材ごとに分離し、パルプを回収するので、使用済み紙おむつを焼却処理や埋め立てによって処理することなく、かつ余分な水分を吸収することのない状態の使用済み紙おむつを集積・回収することができ、回収した使用済み紙おむつからパルプを回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る使用済み紙おむつの回収方法を用いた一般家庭におけるごみの回収方法を示す説明図。
【
図2】
図2は、使用済み紙おむつを回収する際に用いる紙おむつ回収袋の例を示す斜視図。
【
図3】
図3は、使用済み紙おむつを回収する際に用いる紙おむつ回収ボックスの例を示す斜視図。
【
図4】
図4は、本発明の実施の形態に係る使用済み紙おむつの回収方法を用いた集合住宅におけるごみの回収方法を示す説明図。
【
図5】
図5は、本発明の実施の形態に係る使用済み紙おむつの回収方法を用いた病院、老人ホーム等の施設におけるごみの回収方法を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態に係る使用済み紙おむつの回収方法について説明する。本発明の実施の形態に係る使用済み紙おむつの回収方法は、使用済み紙おむつを回収し、この使用済み紙おむつからパルプを回収する。
【0019】
本実施の形態に係る使用済み紙おむつの回収方法は、防水性、密封性、抗菌性を有する紙おむつ回収容器としての紙おむつ回収袋に集積され、一般廃棄物と分別された状態の使用済み紙おむつを、分解水とともに、紙おむつを分解可能な分離機内に投入して、分解水内に溶解したパルプを、分解水内から回収する。
【0020】
また、分離機は、分解水により使用済み紙おむつをパルプとプラスチックに分解する。この分離機からパルプが溶解した分解水を取り出して、分解水からパルプ回収装置によりパルプを回収する。
【0021】
以下、使用済み紙おむつの回収方法を用いた一般家庭、集合住宅、病院、老人ホーム等のごみの回収方法について、
図1~
図5を用いて説明する。
図1に示すように、一般家庭から出るごみは、生ゴミ等の可燃ごみ1、ガラスや金属等の不燃ごみ2、ペットボトル3、使用済み紙おむつ4、近年資源ごみとなってきている食用油等の資源ごみ5がある。これらの可燃ごみ1、不燃ごみ2、ペットボトル3、資源ごみ5は、地域によって定められたそれぞれ所定のごみ袋にまとめられる。可燃ごみ1は可燃ごみ用ごみ袋6に、不燃ごみ2は不燃ごみ用ごみ袋7に、ペットボトル3は資源ごみ用ごみ袋8に、資源ごみ5は資源ごみ用ごみ袋8にまとめられる。
【0022】
そして、可燃ごみ用ごみ袋6、不燃ごみ用ごみ袋7、資源ごみ用ごみ袋8は、地域によって定められたごみ集積所9に各家庭から出され集積される。この場合、曜日ごとに決められた日に、可燃ごみ用袋6、不燃ごみ用袋7、資源ごみ用ごみ袋8をごみ集積所9に集積する。また、本実施の形態では、使用済み紙おむつ4は、定められたおむつ回収袋10内に各家庭内でまとめられ、決められた曜日にごみ集積所9に集積する。
【0023】
各家庭で使用済み紙おむつ4を廃棄するためのおむつ回収袋10は、
図2に示すように、回収袋部分11と、この回収袋部分11の開口を密閉する密封蓋部分12とで形成されている。このおむつ回収袋10は、防水性、密封性、抗菌性を有しており、一般家庭で、生ゴミ等の可燃ごみ2、つまり一般廃棄物と分別された状態でまとめられ、おむつ回収袋10ごとごみ集積所9に集積される。
【0024】
したがって、おむつ回収袋10内に集められた使用済み紙おむつ4は、生ゴミ等の他の水分を含むものから分別されて回収されるので、使用済み紙おむつは尿等以外の余分な水分を高分子ポリマーが吸収することがない。これにより、使用済み紙おむつ4の嵩が増えることがなく,全体としてのごみの量が増えることがない。
【0025】
なお、各家庭で使用済み紙おむつ4を廃棄するためのおむつ回収袋10に代えて、
図3に示すように、おむつ回収ボックス13でも良い。このおむつ回収ボックス13は、上方が開口したボックス本体14と、ボックス本体14の開口部を密封する密封蓋15とで形成されている。このおむつ回収ボックス13は、防水性、密封性、抗菌性を有しており、一般家庭で、生ゴミ等の可燃ごみ、つまり一般廃棄物と分別された状態でまとめられる。そして、おむつ回収ボックス13ごとごみ集積所9、あるいは自治体で決めた専用集積所16に集積される。
【0026】
また、使用済み紙おむつ4は、
図2で示すおむつ回収袋10に入れた状態で、おむつ回収袋10を
図3で示すおむつ回収ボックス13内に入れても良い。この場合には、使用済み紙おむつ4をより密封状態とすることができるので、衛生的で、臭気も外部に漏れることがない。
【0027】
ごみ集積所9に集められた、可燃ごみ1、不燃ごみ2、ペットボトル3、資源ごみ5、使用済み紙おむつ4は、ごみ回収業者によって回収され、ごみ処理場17へ搬送される。ごみ処理場17では、可燃ごみ1はごみ焼却炉内で高温で燃焼されて焼却処分され、不燃ごみ2は、例えばガラス類はガラス専門のリサイクル業者22に引き取られ、金属は、金属専門のリサイクル業者22に引き取られる。また、資源ごみ5も、それぞれ専門のリサイクル業者22に引き取られて処分される。なお、自治体によっては、びん、缶が資源ごみに分類されることもある。
【0028】
さらに、使用済み紙おむつ4は、おむつ回収袋10内にまとめられて密封された状態で、紙おむつ回収・処理業者18に引き取られる。使用済み紙おむつ回収・処理業者18は、使用済み紙おむつの処理施設19に使用済み紙おむつ4を搬送し、使用済み紙おむつ4を分離機20によって、分解水により溶解する。これにより、使用済み紙おむつは、おむつを構成する各素材(パルプ、プラスチック、その他)ごとに分離され、分解水中に溶解しているパルプ33がパルプ回収装置21によって回収される。この場合、紙おむつ回収処理業者18は、おむつ回収袋10内から使用済み紙おむつ4を取り出して、その重量を計測し、所定の重量の使用済み紙おむつ4を分離機20に投入する。また、使用済み紙おむつ4が取り出された後のおむつ回収袋10は、内部を殺菌・洗浄したあとに再利用する。
【0029】
なお、資源ごみ5は、自治体の専用の集積所16に集められた後に、専門のリサイクル業者22に引き取られるようにしても良い。また、使用済み紙おむつ4がまとめられたおむつ回収袋10を、一般ごみの集積所に集積させずに、自治体の専用の集積所16に集めるようにしても良い。この場合には、紙おむつ回収処理業者18は、この専用の集積所16から使用済み紙おむつ4をおむつ回収袋10ごと回収し、使用済み紙おむつの処理施設19に搬送する。また、使用済み紙おむつ4は、生ゴミ等の一般廃棄物から分別され、おむつ回収袋10が防水性を有しているので、余分な水分を使用済み紙おむつ4が吸収することなく、使用済み紙おむつの処理施設19に搬送される。
【0030】
また、マンション、アパート等では、
図4に示すように、マンションやアパート等の集合住宅に設置されたごみ集積所23には、可燃ごみ置き場24、不燃ごみ置き場25、資源ごみ置き場26が設置されている。本実施の形態では、使用済み紙おむつ置き場27が設置されている。
【0031】
そして、集合住宅の各家庭から出るごみは、可燃ごみ置き場24、不燃ごみ置き場25、資源ごみ置き場26、使用済み紙おむつ置き場27に集積される。ごみ集積所23に集積された可燃ごみ1、不燃ごみ2、使用済み紙おむつ4は、一般家庭からでるごみの回収と同様に、ごみ回収業者によってごみ処理場17へ搬送される。資源ごみ5は、リサイクル業者22によって引き取られる。
【0032】
また、使用済み紙おむつ置き場27に集積された使用済み紙おむつ4は、
図2、
図3で示すおむつ回収袋10又はおむつ回収ボックス13に入れられて使用済み紙おむつ置き場27に集積される。この使用済み紙おむつ置き場27に集積された使用済み紙おむつ4は、ごみ処理場17から、紙おむつ回収処理業者18によって使用済み紙おむつの処理施設19に運ばれる。使用済み紙おむつの処理施設19では、分離機20で、分解水により溶解することによって、おむつを構成する各素材(パルプ、プラスチック、その他)ごとに分離し、分解水中に溶解しているパルプ33をパルプ回収装置21によって回収する。
【0033】
また、病院や老人ホーム等の施設では、
図5に示すように、施設内に、ごみ置き場28が設置されており、このごみ置き場28には、可燃ごみ置き場29、不燃ごみ置き場30、資源ごみ置き場31が設けられている。施設内で集められた可燃ごみ1は、可燃ごみ置き場29へ、不燃ごみ2は不燃ごみ置き場30へ、ペットボトル3は、資源ごみ置き場31へ資源ごみ5は資源ごみ置き場31へ集積される。この場合、ペットボトル3は不燃ごみ用ごみ袋7等にまとめられて資源ごみ置き場31に集積される。また、使用済み紙おむつ4は、
図2,
図3で示すおむつ回収袋10又はおむつ回収ボックス13に入れられて使用済み紙おむつ置き場32に集積される。
【0034】
そして、可燃ごみ置き場29の可燃ごみ1、不燃ごみ置き場30の不燃ごみ2は、ごみ回収業者によってごみ処理場17に搬送される。資源ごみ置き場31の資源ごみ3、5は、リサイクル業者22によって引き取られる。また、使用済み紙おむつ置き場32に集積された使用済み紙おむつ4は、紙おむつ回収処理業者18によって使用済み紙おむつの処理施設19に運ばれる。そして、使用済み紙おむつの処理施設19の分離機20で、分解水により溶解することによって、おむつを構成する各素材(パルプ、プラスチック、その他)ごとに分離され、分解水中に溶解しているパルプ33がパルプ回収装置21によって回収される。
【0035】
以上説明したように、本実施の形態の使用済み紙おむつの回収方法によれば、使用済み紙おむつ4を焼却や埋め立てによって処理することなく、かつ余分な水分を吸収することのない状態の使用済み紙おむつを集積・回収し、回収した使用済み紙おむつからパルプ33を回収することができる。
【0036】
また、本実施の形態の使用済み紙おむつの回収方法によれば、一般家庭から出る使用済み紙おむつ4、集合住宅の各家庭から出る使用済み紙おむつ4、病院や老人ホーム等の施設から出る使用済み紙おむつ4は、いずれも防水性、密封性、抗菌性を有する紙おむつ回収袋10または回収ボックス13に集積され、生ゴミ等の一般廃棄物と分別された状態で回収されるので、生ゴミ等から余分な水分を吸収することがない。これにより、ごみの嵩を増やすことがなく、全体としてゴミの量を低減することが可能となる。
【0037】
また、本実施の形態の使用済み紙おむつの回収方法によれば、防水性、密封性、抗菌性を有する紙おむつ回収袋10又はおむつ回収ボックス13に集積され、生ゴミ等の一般廃棄物と分別された状態の使用済み紙おむつを回収するので、例えば、使用済み紙おむつ4を焼却処分しなければならない場合でも、余分な水分によって焼却炉内の燃焼温度が下がることがないので、焼却炉内で燃焼させるために余分な燃料が不要になる。さらに、余分な水分を吸収した使用済み紙おむつを回収することがないので、焼却炉の損傷を抑制することが可能となる。
【0038】
ここで、使用済み紙おむつが生ゴミ等の水分を含んだ一般廃棄物と一緒に可燃ごみとして処理される場合について説明する。一般家庭において使用済み紙おむつ4を生ゴミ等の水分を含んだゴミと一緒に分別用の袋にまとめられると、使用済み紙おむつ4の高分子ポリマーは生ゴミ等の水分を含んだゴミから水分を吸収する。余分な水分を吸収すると水分を吸収した分だけ紙おむつの嵩が増えてしまい、全体としてゴミの量が増加してしまう。
【0039】
また、屋外のゴミ集積所に集められた状態で分別用の袋が破けているような場合、雨水等が分別用の袋内に入り、この雨水を使用済み紙おむつの高分子ポリマーが吸収して、吸収した水分の量だけ紙おむつの嵩が増えて、全体としてゴミの用が増加してしまう。
【0040】
例えば、水分を含まない状態の紙おむつの重さは約40gであり、1回の尿を吸収すると約270gになる。この270gの重さの状態から上記のように生ゴミや雨水等の水分を吸収すると約450g、更に水分を吸収すると最大で2000gの重さになる。このため、使用済み紙おむつが廃棄されるまでの間に最大に水分を吸収すると、元の重さの約50倍の重量になり、大きさ(嵩)も大きくなる。
【0041】
一つの使用済み紙おむつの場合、最大で約50倍に重量が増え,嵩も増えるとすると、現状紙おむつが全国で約80億枚使用されているので、使用済み紙おむつが余分な水分を吸収することによって毎日、相当量のゴミが増えていることになる。
【0042】
このように、使用済み紙おむつの高分子ポリマーが尿以外の水分を吸収して重量や嵩が増えると、例えば、使用済み紙おむつ4を焼却しなければならない場合に、水分によって焼却炉の温度が低下してしまうため、焼却炉の燃焼温度を維持しようとすると余分に燃料を消費してしまう。また、焼却炉を傷めてしまう。さらに、使用済み紙おむつの嵩が大きくなるとゴミ全体の量が増えることになるため、焼却炉の大型化につながる。
【0043】
さらに、埋め立てによって処分する場合には、経年変化で高分子ポリマーが分解して吸収している水分が地中に漏れ出すと、地中に尿とともに尿によって汚れた水分が地中に拡散するので、土壌汚染の問題や、地下水の汚染の問題が生じる。
【0044】
また、病院や老人ホームなどの施設から回収された使用済み紙おむつにおいても、不用意に水分を含むもの、例えばモップや雑巾等と一緒にしておくと余分な水分を吸収してしまい、その分ゴミの量が増加して、上記のような問題が生じる。
【0045】
本実施の形態の使用済み紙おむつの回収方法では、一般家庭や集合住宅の各家庭、病院や老人ホーム等の施設から出る使用済み紙おむつを、ペットボトルや他の資源ごみの回収の方法と同様に一般廃棄物と分別回収し、最終的にパルプ33を回収して、このパルプ33をリサイクルすることにより、使用済み紙おむつを資源ごみとして扱うことができる。しかも、最終的にパルプ33を回収して、このパルプ33を例えば、段ボールの材料や、再生紙おむつの材料、おむつ回収袋10、おむつ回収ボックス13の材料として用いることで社会全体のごみの量を大幅に低減することができる。
【0046】
このように、使用済み紙おむつ4を防水性、密封性、抗菌性を有したおむつ回収袋10やおむつ回収ボックス13によって回収することで、全体としてごみの量を大幅に低減することができ、しかも、このように回収した使用済み紙おむつ4からパルプを回収することで、このパルプ33をリサイクルすることができる。
【0047】
また、使用済み紙おむつ4を分解してパルプ33をリサイクルすることができ、使用済み紙おむつ4を焼却されずに済めば、残った可燃物は生ゴミなどに限られ、わざわざ大型の焼却炉を建設しなくともよくなる。
【0048】
上述の通り、本発明の実施の形態を開示したが、当業者によって本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が請求項に含まれることが意図されている。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明に係る使用済み紙おむつの回収方法は、使用済み紙おむつ以外に、高分子ポリマーによって尿等の汚物を吸収させる衛生用品、例えば生理用ナプキン、尿取りパッド等を回収し、処理する際にも利用可能である。
【符号の説明】
【0050】
4 使用済み紙おむつ
10 おむつ回収袋
20 分離機
21 パルプ回収装置