(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-24
(45)【発行日】2023-04-03
(54)【発明の名称】基板収容部材を備える化学機械的な研磨装置用のキャリアヘッド
(51)【国際特許分類】
B24B 37/30 20120101AFI20230327BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
B24B37/30 E
H01L21/304 622K
(21)【出願番号】P 2018546706
(86)(22)【出願日】2017-03-09
(86)【国際出願番号】 KR2017002606
(87)【国際公開番号】W WO2017171262
(87)【国際公開日】2017-10-05
【審査請求日】2020-03-06
(31)【優先権主張番号】10-2016-0039976
(32)【優先日】2016-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518311809
【氏名又は名称】カン,ジューン モ
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】カン,ジューン モ
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-054854(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0010186(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0309275(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/00 - 37/34
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板収容部材を備える化学機械的な研磨装置用のキャリアヘッドであって、
ベースと、基板を収容する外部面及び前記外部面の反対側の内部面を有する底板と、前記底板の周縁から高さ方向に延びる外周部と、前記外周部の外側から枝分かれして前記ベースの下部に連結される緊締部及び前記外周部の内側から枝分かれしている接触部を備える基板収容部材と
前記ベースの下部に連結されて前記接触部との接触面を提供する接触対応構造と、
前記接触部が流体の圧力により前記接触対応構造に密着されることにより、前記緊締部及び前記接触部を壁として形成される外周部加圧チャンバと、
を備えるが、
前記外周部加圧チャンバ内の流体の圧力が前記外周部の内側面に作用する流体の圧力よりも大きいときには、前記外周部加圧チャンバ内の流体が前記外周部の内側面に向かって流れることが抑えられるのに対し、前記外周部の内側面に作用する流体の圧力が前記外周部加圧チャンバ内の流体の圧力よりも大きいときには、前記外周部の内側面に作用する流体が前記外周部加圧チャンバ内に流れるようになっていることを特徴とするキャリアヘッド。
【請求項2】
前記ベースの下部に連結されるフラップ上部と、前記フラップ上部から下側に向かって延びるフラップ側部及び前記フラップ側部の下端から内側向きに延びるフラップ下部を有する接触フラップをさらに備えるが、
前記接触フラップは、開放された構造を有して、前記外周部の内側に隣り合いて前記フラップ側部が前記接触対応構造と接触し、前記フラップ下部は前記外周部と隣り合う底板と接触することにより、前記接触フラップ内側から前記外周部加圧チャンバに向かっての流体の流れを抑えるようになっていることを特徴とする請求項1に記載のキャリアヘッド。
【請求項3】
前記外周部の内側に隣り合い、前記ベースの下部に連結されて独立して流体を供給されて膨張するが、外側方向の膨張は前記接触対応構造により抑えられ、内側方向の膨張は前記ベースに連結された障壁構造により抑えられて前記底板の所定の領域と接触することにより、圧力が印加可能なブラダをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のキャリア
ヘッド。
【請求項4】
前記ブラダの内側に隣り合い、前記ベースの下部に連結されるフラップ上部と、前記フラップ上部から下側に向かって延びるフラップ側部及び前記フラップ側部の下端から内側向きに延びるフラップ下部を有する接触フラップをさらに備えるが、
前記接触フラップは、開放された構造を有して、前記フラップ側部が前記障壁構造に接触し、前記フラップ下部は前記ブラダと隣り合う底板と接触することにより、前記接触フラップ内側から前記ブラダに向かっての流体の流れを抑えるようになっていることを特徴とする請求項3に記載のキャリアヘッド。
【請求項5】
基板収容部材を備える化学機械的な研磨装置用のキャリアヘッドであって、
ベースと、
基板を収容する外部面及び前記外部面の反対側の内部面を有する底板と、前記底板の周縁から高さ方向に延びる外周部と、前記外周部の外側から枝分かれして前記ベースの下部に連結される緊締部及び前記外周部の内側から枝分かれしている接触部を備えるが、前記外周部と前記内部面とが出会う角部に突出構造が形成されたことを特徴とする基板収容部材と、
前記ベースの下部に連結されて前記接触部との接触面を提供する接触対応構造と、
前記接触部が流体の圧力により前記接触対応構造に密着されることにより前記緊締部及び前記接触部を壁として形成される外周部加圧チャンバと、
を備えるが、
前記外周部加圧チャンバ内の流体の圧力が前記外周部の内側面に作用する流体の圧力よりも大きいときには、前記外周部加圧チャンバ内の流体が前記外周部の内側面に向かって流れることが抑えられるのに対し、前記外周部の内側面に作用する流体の圧力が前記外周部加圧チャンバ内の流体の圧力よりも大きいときには、前記外周部の内側面に作用する流体が前記外周部加圧チャンバ内に流れるようになっていることを特徴とするキャリアヘッド。
【請求項6】
前記ベースの下部に連結されるフラップ上部、前記フラップ上部から下側に向かって延びるフラップ側部及び前記フラップ側部の下端から内側向きに延びるフラップ下部を有する接触フラップをさらに備えるが、
前記接触フラップは、開放された構造を有して、前記外周部の内側に隣り合って前記フラップ側部が前記接触対応構造と接触し、前記フラップ下部は前記突出構造と接触することにより前記接触フラップ内側から前記外周部加圧チャンバに向かっての流体の流れを抑えるようになっていることを特徴とする請求項5に記載のキャリアヘッド。
【請求項7】
前記外周部の内側に隣り合い、前記ベースの下部に連結されて独立して流体を供給されて膨張するが、外側方向の膨張は前記接触対応構造により抑えられ、内側方向の膨張は前記ベースに連結された障壁構造により抑えられ、前記突出構造と接触することにより、圧力が印加可能なブラダをさらに備えることを特徴とする請求項5に記載のキャリアヘッド。
【請求項8】
前記ブラダの内側に隣り合い、前記ベースの下部に連結されるフラップ上部と、前記フラップ上部から下側に向かって延びるフラップ側部及び前記フラップ側部の下端から内側向きに延びるフラップ下部を有する接触フラップをさらに備えるが、
前記接触フラップは、開放された構造を有して、前記フラップ側部が前記障壁構造に接触し、前記フラップ下部は前記ブラダと隣り合う底板と接触することにより、前記接触フラップ内側から前記ブラダに向かっての流体の流れを抑えるようになっていることを特徴とする請求項7に記載のキャリアヘッド。
【請求項9】
接触対応構造を備えた化学機械的な研磨装置用のキャリアヘッドの基板収容部材であって、
基板を収容する外部面及び前記外部面の反対側の内部面を有する底板と、
前記底板の周縁から高さ方向に延びる外周部と、
前記外周部の外側から枝分かれしている緊締部と、
前記外周部の内側から枝分かれしている接触部と、
を備え
、
前記接触部は、前記接触対応構造と接触をなすように、底板に対する垂直方向を基準として0°より大きく90°より小さい値を有し、内側に傾いたことを特徴とする基板収容部材。
【請求項10】
接触対応構造を備えた化学機械的な研磨装置用のキャリアヘッドの基板収容部材であって、
基板を収容する外部面及び前記外部面の反対側の内部面を有する底板と、
前記底板の周縁から高さ方向に延びる外周部と、
前記外周部の外側から枝分かれしている緊締部と、
前記接触対応構造と接触をなすように、前記外周部の内側から枝分かれしている接触部と、
前記外周部と前記内部面とが出会う角部に形成された突出構造と、
前記突出構造の表面から内側向きに延びる収容補助フラップと、
を備えること
を特徴とする基板収容部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学機械的研磨装置に係り、さらに詳しくは、研磨行程に際して基板に研磨圧力を印加する基板収容部材を備えるキャリアヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体やガラス基板の製造及び集積回路の製造工程に当たって、所定の段階に基板の表面を研磨(polishing)したり、基板の表面を平坦化(planarization)したりする必要性が高まりつつある。このような必要性により、化学機械的な研磨(Chemical Mechanical Polishing;CMP)工程が広く用いられている。
【0003】
基板の化学機械的な研磨は、一般的に、プラテン(platen)の上に研磨パッド(pad)を取り付け、キャリアヘッド(carrier head)と呼ばれる基板収容機構に基板を装着した後、スラリーを研磨パッドに塗布しながらプラテン及びキャリアヘッドを同時に回転させて研磨パッドと基板との間の摩擦を引き起こすことにより行われる。
【0004】
キャリアヘッドは、回転軸から動力を伝達され、キャリアヘッドの構成に必要な部品を収容する空間を与えるベース(base)と、ベースの下部に連結されて基板を収容して回転させる基板収容部材及び研磨工程の間に基板の側面を支持することにより基板の離脱を防ぐリテーニングリング(retaining ring)などから構成されている。研磨に際して、基板は、基板収容部材を介して研磨圧力を印加されるため、基板収容部材の構造に応じて基板の研磨均一度が大きく影響を受ける。とりわけ、基板の周縁(edge)の不連続特性により周縁領域及びこれと隣り合う領域において良好な研磨均一度が得られ難いため、これらの領域において圧力の制御を精度よく行う必要がある。
【0005】
図1は、従来のキャリアヘッド(米国特許第6,857,945号公報)の断面を概略的に示す。キャリアヘッドは、ベースアセンブリ10、40、42と、基板50を収容し、且つ、加圧するメンブレイン30と、リテーニングリング20と、を備える。ここで、メンブレインの外周部32は、基板50の周縁を加圧することになるが、このためには、最外郭のチャンバC1に流体の圧力を印加して外周部32を基板50に向かって押し付けなければならない。このとき、第1の外郭フラップ(flap)33及び第2の外郭フラップ34の厚いへり(リム)部分33’、34’をベース10及びクランプ40、42で固定して最外郭のチャンバC1を封止(シール)することにより、チャンバC1内の流体の圧力を維持する。
【0006】
このように、外周部の加圧に必要なチャンバを構成するフラップを全て固定しなければならない場合、それぞれのフラップの固定に必要なクランプが必要であり、しかも、これらのクランプの固定に必要な作業空間が必要である。この理由から、外周部を垂直に加圧するためにチャンバの大きさを減らしたり形状を変えたりするのに限界があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述したような従来の技術の問題を解消するために案出されたものであり、その目的は、化学機械的な研磨に当たって、基板の周縁領域及びこれと隣り合う領域を精度よく加圧することのできる基板収容部材を備える化学機械的な研磨装置用のキャリアヘッドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するための本発明の実施形態による基板収容部材を備える化学機械的な研磨装置用のキャリアヘッドは、ベースと、基板を収容する外部面及び前記外部面の反対側の内部面を有する底板と、前記底板の周縁から高さ方向に延びる外周部と、前記外周部の外側から枝分かれして前記ベースの下部に連結される緊締部及び前記外周部の内側から枝分かれしている接触部を備える基板収容部材と、前記ベースの下部に連結されて前記接触部との接触面を提供する接触対応構造と、前記接触部が流体の圧力により前記接触対応構造に密着されることにより、前記緊締部及び前記接触部を壁として形成される外周部加圧チャンバと、を備えるが、前記外周部加圧チャンバ内の流体の圧力が前記外周部の内側面に作用する流体の圧力よりも大きいときには、前記外周部加圧チャンバ内の流体が前記外周部の内側面に向かって流れることが抑えられるのに対し、前記外周部の内側面に作用する流体の圧力が前記外周部加圧チャンバ内の流体の圧力よりも大きいときには、前記外周部の内側面に作用する流体が前記外周部加圧チャンバ内に流れるようになっていることを特徴とする。
【0010】
本発明の他の実施形態による基板収容部材を備える化学機械的な研磨装置用のキャリアヘッドは、ベースと、基板を収容する外部面及び前記外部面の反対側の内部面を有する底板と、前記底板の周縁から高さ方向に延びる外周部と、前記外周部の外側から枝分かれして前記ベースの下部に連結される緊締部及び前記外周部の内側から枝分かれしている接触部を備えるが、前記外周部と前記内部面とが出会う角部に突出構造が形成されたことを特徴とする基板収容部材と、前記ベースの下部に連結されて前記接触部との接触面を提供する接触対応構造と、前記接触部が流体の圧力により前記接触対応構造に密着されることにより前記緊締部及び前記接触部を壁として形成される外周部加圧チャンバと、を備えるが、前記外周部加圧チャンバ内の流体の圧力が前記外周部の内側面に作用する流体の圧力よりも大きいときには、前記外周部加圧チャンバ内の流体が前記外周部の内側面に向かって流れることが抑えられるのに対し、前記外周部の内側面に作用する流体の圧力が前記外周部加圧チャンバ内の流体の圧力よりも大きいときには、前記外周部の内側面に作用する流体が前記外周部加圧チャンバ内に流れるようになっていることを特徴とする。
【0011】
本発明の実施形態による化学機械的な研磨装置用のキャリアヘッドの基板収容部材は、基板を収容する外部面及び前記外部面の反対側の内部面を有する底板と、前記底板の周縁から高さ方向に延びる外周部と、前記外周部の外側から枝分かれしている緊締部と、前記外周部の内側から枝分かれしている接触部と、を備える。
【0012】
本発明の他の実施形態による化学機械的な研磨装置用のキャリアヘッドの基板収容部材は、基板を収容する外部面及び前記外部面の反対側の内部面を有する底板と、前記底板の周縁から高さ方向に延びる外周部と、前記外周部の外側から枝分かれしている緊締部と、前記外周部の内側から枝分かれしている接触部と、を備えるが、前記外周部と前記内部面とが出会う角部に突出構造が形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の基板収容部材を備える化学機械的な研磨装置用のキャリアヘッドは、研磨工程に当たって基板の周縁領域及びこれと隣り合う領域を精度よく加圧することにより、研磨均一度の制御を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】従来のキャリアヘッドを概略的に示す断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態による化学機械的な研磨装置用のキャリアヘッドの断面図である。
【
図3】他の実施形態による基板収容部材を装着したキャリアヘッドの断面図である。
【
図4】流体の圧力による接触部の作用を説明する断面図である。
【
図5】外周部の内側面に作用する流体の圧力P2が接触部に作用する外周部加圧チャンバ内の流体の圧力P1よりも大きい場合を示す断面図である。
【
図7】接触部の曲げ(bending)を説明するための部分断面図である。
【
図8】接触部の位置を説明するための部分断面図である。
【
図9】基板収容部材の他の実施形態を示す部分断面図である。
【
図10】基板収容部材の他の実施形態を示す部分断面図である。
【
図11】基板収容部材のさらに他の実施形態を示す部分断面図である。
【
図12】基板収容部材さらに他の実施形態を示す部分断面図である。
【
図13】接触部のさらに他の例を示す部分断面図である。
【
図14】基板収容部材のさらに他の実施形態を示す断面図である。
【
図15】基板収容部材のさらに他の実施形態を示す断面図である。
【
図16】上述した基板収容部材が円形プレートを収容した状態を示す断面図である。
【
図17】本発明のさらに他の実施形態による基板収容部材を示す断面図である。
【
図18】上述した基板収容部材が円形プレートを収容した状態を示す断面図である。
【
図19】固定フラップの他の実施形態を示す基板収容部材の断面図である。
【
図20】接触フラップを備えるキャリアヘッドの断面図である。
【
図21】接触フラップの一例を示す斜視断面図である。
【
図22】接触フラップの動作を説明するための断面図である。
【
図23】ブラダを備えるキャリアヘッドの断面図である。
【
図24】ブラダの他の実施形態を示すキャリアヘッドの断面図である。
【
図25】ブラダ及び接触フラップを両方とも備えるキャリアヘッドの断面図である。
【
図26】本発明の他の実施形態による基板収容部材を装着したキャリアヘッドの断面図である。
【
図27】(a)は、突出構造がある場合、Zone 1及びZone 2の圧力がそれぞれP1及びP2であることを示すキャリアヘッドの部分断面図である。(b)は、Zone 1の圧力P1及びZone 2の圧力P2が基板の位置に応じて印加される度合いを示すグラフである。(c)は、基板が最終的に受ける圧力を示すグラフである。
【
図28】(a)は、突出構造がない場合、各Zoneの圧力を示すキャリアヘッドの部分断面図である。(b)は、突出構造がない場合、基板が受ける圧力を説明するためのグラフである。(c)は、突出構造がない場合、基板が受ける圧力を説明するためのグラフである。
【
図29】突出構造の他の実施形態を示す断面図である。
【
図30】突出構造のさらに他の実施形態を示す断面図である。
【
図31】突出構造のさらに他の実施形態を示す断面図である。
【
図32】突出構造のさらに他の実施形態を示す断面図である。
【
図33】本発明のさらに他の実施形態による基板収容部材を示す断面図である。
【
図34】基板収容部材の底板に底板を貫通する貫通孔が形成されていることを示す断面図である。
【
図35】突出構造が形成された基板収容部材及び接触フラップを備えるキャリアヘッドの断面図である。
【
図36】突出構造が形成された基板収容部材及びブラダを備えるキャリアヘッドの断面図である。
【
図37】ブラダ及び接触フラップを両方とも備えるキャリアヘッドの断面図である。
【
図38】複数のブラダを備えるキャリアヘッドの実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面に基づいて、本発明による好適な実施形態を説明することにより、本発明を詳細に説明する。しかしながら、本発明は、以下に開示される実施形態に何等限定されるものではなく、異なる種々の形態に具体化され、実施形態は、通常の知識を有する者に発明の範囲を完全に知らせるために提供されるものである。図中、構成要素は、説明のしやすさのためにその大きさが誇張されていてもよい。
【0016】
明細書の全般に亘って、基板収容部材などのある構成要素が他の構成要素の「下部に」連結されると言及するときには、前記ある構成要素が直接的に他の構成要素の「下部」と接触して連結されるか、あるいは、これらの間に介在されるさらに他の構成要素が存在してある構成要素はさらに他の構成要素に連結されると解釈されてもよい。これに対し、ある構成要素が他の構成要素に「直接的に下部に」連結されると言及するときには、これらの間に介在される他の構成要素が存在しないと解釈される。同じ符号は、同じ要素を意味する。なお、「上部に」又は「上に」及び「下部に」又は「下に」などの相対的な用語は、図面において図解されるように、他の要素に対するある要素の関係を記述するために使用可能である。相対的な用語は、図面において描かれる方向に加えて要素の他の方向を含むことを意図すると理解されてもよい。例えば、図中の構成要素がひっくり返されれば、他の要素の上部の面の上に存在すると描かれる要素は、前記他の要素の下部の面の上に方向を有することになる。このため、例として挙げた「上部に」という用語は、図面の特定の方向に依存して「上部に」及び「下部に」の方向を両方とも含んでいてもよい。
【0017】
図2は、本発明の一実施形態による基板収容部材600を備える化学機械的な研磨装置用のキャリアヘッド900の断面図である。キャリアヘッド900は、回転軸110から動力を伝達されるベース(base)100を基本として構成されている。まず、直接的にベース100の下部にリテーニングリング(retaining ring)120が装着されるが、リテーニングリング120は、研磨工程の間に基板(図示せず)の離脱を防ぐ役割を果たす。同様に、前記ベース100の下部に連結されてリテーニングリング120の内側に基板収容部材600が装着される。
【0018】
基板収容部材600は、底板610と、外周部620と、緊締部650及び接触部670を備える。底板610は、外部面612及び内部面614により画成される二つの面を備えており、底板610の大きさ及び形状は、大体研磨される基板(図示せず)の大きさ及び形状による。例えば、基板が300mmのウェーハであれば、底板610の形状は円形であり、直径は300mm内外であってもよい。外部面612は、基板を受け入れて搬送するのに必要な基板収容面となり、内部面614は、前記外部面612の反対側の表面であって、流体の圧力が印加される面である。
【0019】
外周部620は、底板610の周縁から高さ方向に延びる部位である。
図2においては、外周部620が底板610に垂直な形状であるが、外周部620が底板610と必ずしも垂直である必要はなく、底板610に対して垂直成分を含んで延びてベース100との連結に必要な空間を提供すればよい。
【0020】
緊締部650は、外周部620の外側から枝分かれしてベース100の下部に連結される部位であって、フラップ(flap)状であることが好ましく、封止(シール)を強固にするために先端部にOリング(O-ring)構造652を形成してもよい。接触部670は、外周部620の内側から枝分かれしてベース100の下部に連結された接触対応構造500と接触する部位である。接触部670は、緊締部650とは異なり、先端が接触対応構造500や他の構成要素に固定される必要がない。このため、接触部670の固定に必要なクランプなどの部材が不要であり、ボルトを締め付けるなどのクランプの固定作業に必要なキャリアヘッド内の作業空間を考慮しなくてもよい。
【0021】
接触対応構造500は、ベース100の下部に連結され、
図2に示すように、突出した形状を呈してもよい。接触対応構造500は、基板収容部材600の接触部670が当接する接触面を提供する。接触対応構造500は、力を受けても変形し難いように、プラスチック、アルミニウム合金又は鉄合金のように実質的に剛性の物質からなることが好ましい。
【0022】
流体通路210を介して供給された流体が緊締部650と接触部670との間において接触部670を加圧すれば、接触部670は、接触対応構造500に密着することになり、これにより、接触部670と接触対応構造500との間に流体が抜け出ることが抑えられる。緊締部650と接触部670との間の流体はまた、外周部620にも作用して外周部620を下方に加圧することになる。このため、緊締部650及び接触部670を壁とする外周部加圧チャンバ200が画成されるが、
図2の場合には、緊締部650及び接触部670に加えて、接触対応構造500及びベース100が外周部加圧チャンバ200をくるりと取り囲んだ壁となる。キャリアヘッド900を構成する要素の形状に応じて、外周部加圧チャンバ200の壁全体を構成する要素が異なるが、緊締部650及び接触部670は、常に外周部加圧チャンバ200の壁を構成する要素となる。外周部加圧チャンバ200は、流体通路210を介して供給される流体を閉じ込めることにより、所定の圧力を維持し、これは、研磨工程の間に外周部620を介して基板(図示せず)に印加される。流体としては気体を採用することが好ましく、空気や窒素を用いることもできる。隣の底板加圧チャンバ300もまた、流体通路310を介して流体を供給されて底板610を介して基板(図示せず)に研磨圧力を印加する。
【0023】
図3は、他の実施形態の基板収容部材602を装着したキャリアヘッド900の断面図である。基板収容部材602の緊締部656は、外周部620の外側から枝分かれして先端がキャリアヘッド900の中心側である内側方向に向く。先端658は、連結部材522と接触対応構造520により緊締された後、ベース100の下部に連結される。接触部670は、外周部620の内側から枝分かれして接触対応構造520と接触することになる。このように、緊締部656は、キャリアヘッド900の中心側を向いてもよく、且つ、
図2に示すように、キャリアヘッド900の外側である外側方向を向いてもよい。このように、本発明においては、緊締部が色々な方向を向いてもよいが、図面の単純化のために、以降の図面においては、
図2に示すように、緊締部650が外側方向を向く基板収容部材のみを例にとって説明する。
図4は、流体の圧力による接触部670の作用を説明する断面図であり、ここで、外周部加圧チャンバ200の圧力がP1であり、底板加圧チャンバ300の圧力がP2である。すると、接触部670の外側面672(外周部加圧チャンバを基準としては内側であるが、基板収容部材の中心の反対方向を向いているため、外側面であると定義する)にP1の圧力が作用し、外周部620の内側面622及びこれと接している接触部670の内側面674(外周部加圧チャンバを基準としては外側であるが、基板収容部材の中心方向を向いているため、内側面であると定義する)にP2の圧力が作用する。P1がP2よりも大きいとき、つまり、外周部加圧チャンバ200内の流体の圧力が外周部の内側面622に作用する流体の圧力よりも大きいとき、接触部670に作用する純圧力(net pressure)が接触対応構造500向きに作用するため、接触部670を接触対応構造500に密着させる。これにより、外周部加圧チャンバ200の圧力P1の方がさらに大きくても、外周部加圧チャンバ200内の流体が外周部620の内側面622に向かって流れることが抑えられる。
【0024】
図5は、外周部620の内側面622に作用する流体の圧力P2が接触部670に作用する外周部加圧チャンバ200内の流体の圧力P1よりも大きい場合を示す。この場合、接触部670に作用する純圧力(net pressure)は、接触部670を接触対応構造500から離す方向に作用するため、接触部670と接触対応構造500との間に隙間230が生じ、この隙間230を介して、矢印にて示すように、外周部620の内側面622に作用する流体が外周部加圧チャンバ200に流れることができる。
【0025】
このため、本発明の実施形態による基板収容部材を備える化学機械的な研磨装置用のキャリアヘッド900は、ベース100と、基板を収容する外部面612及び前記外部面の反対側の内部面614を有する底板610と、前記底板610の周縁から高さ方向に延びる外周部620と、前記外周部620の外側から枝分かれして前記ベース100の下部に連結される緊締部650及び前記外周部620の内側から枝分かれしている接触部670を備える基板収容部材600と、前記ベース100の下部に連結されて前記接触部670との接触面を提供する接触対応構造500と、前記接触部670が流体の圧力により前記接触対応構造500に密着されることにより、前記緊締部650及び前記接触部670を壁として形成される外周部加圧チャンバ200と、を備えるが、前記外周部加圧チャンバ200内の流体の圧力が前記外周部620の内側面622に作用する流体の圧力よりも大きいときには前記外周部加圧チャンバ200内の流体が前記外周部620の内側面622に向かって流れることが抑えられるが、前記外周部620の内側面622に作用する流体の圧力が前記外周部加圧チャンバ200内の流体の圧力よりも大きいときには、前記外周部620の内側面622に作用する流体が前記外周部加圧チャンバ200内に流れるようになっていることを特徴とする。
【0026】
図6は、上述した基板収容部材600の斜視断面図である。基板収容部材600は、同図に示すように、全体が同じ材料からなってもよく、このときに用いられる好適な材質としては、可撓性材料が挙げられる。可撓性材料としては、ゴムを用いることができ、好ましくは、シリコンゴムやエチレンプロピレンゴムなどの耐水性及び耐化学性に優れたゴムを用いることができる。可撓性材料からなる基板収容部材600は、成形法により製作されてもよい。底板610は、円形を帯び、厚さは、0.5mm~2mmの値を有してもよく、外周部610の幅Wは、1mm~10mmの値を有してもよい。また、図示はしないが、基板収容部材600の底板610及び外周部620は、硬度が大きい(例えば、Shore A硬度値が70である)ゴムから成形され、緊締部650及び接触部670は、硬度が小さい(例えば、Shore A硬度値が40である)ゴムから成形されてもよい。緊締部650の先端は、同図に示すように、外側向き(基板収容部材の中心から遠ざかる向き)を、又は図示はしないが、内側、上側又は下側の向きを指し示してもよいのに対し、接触部670の先端は、上内側向きを向いて(上側向き成分及び基板収容部材の中心を向く内側向き成分を併せ持つ方向を向いて)いることが好ましい。接触部670の先端が水平方向を指せば、接触部670が接触対応構造500の外側に嵌入し難く、垂直方向であれば、接触対応構造650と強固な接触を行い難い。接触部670の傾斜度は、垂直方向を基準として、これから傾いた角度φと定義することができるが、垂直である場合にはφが0°であり、
図6に示すように、接触部670が上内側を向くと、φは0°と90°との間の値を有し、水平であれば、φは90°である。接触対応構造への円滑な嵌入及び嵌入後の強固な接触を図るために、φは、2°~45°の値を有することが好ましい。
【0027】
図7は、接触部670の曲げ(bending)を説明するための部分断面図である。基板収容部材600がベースに組み付けられていない状態では、接触部670が、同図に示すように全体的に真っ直ぐに伸ばされる。基板収容部材600が、上記の
図2に示すように、ベース100に緊締されるとき、接触部670は、矢印の方向に曲げられて接触対応構造500の外側に嵌入する。3次元的に見ると、接触部670の円形の周縁が拡張されて円筒状の接触対応構造500が拡張された周縁内に嵌入するのである。嵌入後に負けられた状態(点線にて示す)で接触対応構造500と接触され続けるが、このとき、元の状態に戻ろうとする力のために接触がさらに一層強固になる。
【0028】
このため、本発明の実施形態による化学機械的研磨装置用のキャリアヘッドの基板収容部材600は、基板を収容する外部面612及び前記外部面612の反対側の内部面614を有する底板610と、前記底板610の周縁から高さ方向に延びる外周部620と、前記外周部620の外側から枝分かれしている緊締部650と、前記外周部620の内側から枝分かれしている接触部670と、を備える。
【0029】
図8は、接触部670の位置を説明するための部分断面図である。接触部670は、外周部620の内側から枝分かれするが、同図に示すように、外周部620の内側面622及び接触部670の内側面678が途切れることなくつながることなく、外周部620の上部面623が露出されてもよい。同様に、図示はしないが、緊締部650もまた、外周部620の最外側ではない部分から枝分かれしてもよい。つまり、緊締部650及び接触部670が枝分かれする外周部620の内側及び外側は、外周部620中央を境界として相対的な意味に過ぎず、必ずしも外周部620の最内側及び最外側を意味するわけではない。
【0030】
図9及び
図10は、基板収容部材600の他の実施形態を示す部分断面図であり、接触部670’、670’’が曲げ率をもって上内側を向くことを示している。まず、
図9に示すように、接触部670’は、内側に湾曲した形状を呈してもよく、且つ、
図10に示すように、接触部670’’は、外側に湾曲した形状を呈してもよい。
図11及び
図12は、基板収容部材600のさらに他の実施形態を示す部分断面図であり、それぞれ異なる形状の接触部を示している。まず、
図11に示すように、接触部680は、外周部620の内側と連結されて略垂直を呈するガイド部分684と、ガイド部分684から上内側向きに延びる密着部分686と、を備える。ガイド部分684の内径D1は、嵌入する接触対応構造(図示せず)の外径よりも僅かに大きいため、接触対応構造が外周部620の下端まで下がるときに引っ掛からないようにすることが好ましい。密着部分686は、上内側向きに延びるため、嵌入後に円筒状の接触対応構造(図示せず)を締め付けて強固な接触を行う。
図12は、密着部分686’がガイド部分684から上内側向きに延びた後に内側に曲げられた場合を示す。このように、密着部分686’が曲げられれば、嵌入後に元の状態に戻ろうとする力がさらに一層強くなる。しかしながら、密着部分686’の先端は、前記密着部分686’が延出しているガイド部分684の高さ(図面にHにて示す)よりも上に位置することが好ましいが、これは、嵌入に際して密着部分686’とガイド部分684とが重なり合うことを防ぐためである。
【0031】
図13は、接触部のさらに他の例を示す部分断面図であり、密着部分688の厚さがガイド部分684の厚さよりも薄い接触部682を示している。このように、密着部分688がガイド部分684よりも薄ければ、同図に示すように、密着部分688の傾斜角をさらに大きくできる。薄い密着部分688の厚さは、ガイド部分684の厚さよりも0.2倍~0.6倍の値を有してもよい。また、図示はしないが、上述した
図12と同様に、薄い密着部分がガイド部分684から上内側向きに延びた後に内側に曲げられることもあるが、このときにも、薄い密着部分の先端は、前記薄い密着部分が延出しているガイド部分の高さ(図面にHにて示す)よりも上に位置することが好ましい。
【0032】
図14は、基板収容部材600のさらに他の実施形態を示す断面図であり、外周部の内側面622に収容補助構造としての溝624が形成されたことを示す。溝624に金属又はプラスチックのように実質的に剛性の物質からなる環状リングや円形プレートを嵌入してもよい。溝624の周りよりも僅かに大きい周りを有する環状リングや円形プレートを溝624に嵌入すれば、垂れ下がる虞のある底板610を張架することができる。以上においては、一つの溝624のみが形成される場合を例として挙げたが、一つ以上の溝が形成されてもよい。
図15は、基板収容部材600のさらに他の実施形態を示す断面図であり、基板収容部材600は、接触部670と底板610との間の外周部の内側面622から内側向きに延びる収容補助フラップ(flap)626を備えている。収容補助フラップ626は、基板収容部材600と同じ物質から成形され、板状のリング状を呈し、基板収容部材600と同時に成形されることが好ましい。収容補助フラップ626の延びた長さqは、5mm~20mmの値を、且つ、厚さは、0.3mm~1mmの値を有してもよい。収容補助フラップ626の先端には、緊締を強固にするためのOリング構造627が形成されてもよい。
図16は、上述した
図15の基板収容部材600が円形プレート590を収容した状態を示す断面図である。円形プレート590は、プラスチックや金属のように十分な剛性を有する物質から製作されることが好ましい。円形プレート590は、底板610と収容補助フラップ626との間に嵌入した後、クランプ594がボルト(図示せず)により円形プレート590と緊締されることにより基板収容部材600に固定されてもよい。このとき、外周部620の内径よりも僅かに大きい直径を有する円形プレート590を収容することにより、底板610の垂れ下がりを防ぐことができる。なお、円形プレート590に孔592を形成して流体が底板610に自由に作用できるようにすることが好ましい。
図16には、円形プレート590が収容された場合を示しているが、プレートの代わりに環状リングが嵌入してもよい。
【0033】
図17は、本発明のさらに他の実施形態による基板収容部材600を示す断面図であり、内部面614から高さ方向に固定フラップ640が延びている。固定フラップ640は、内部面614と連結されて高さ方向に延びる第1の部分642と、第1の部分642の先端から側方向に延びる第2の部分644と、からなってもよい。固定フラップ640は、全体的に環状を呈し、先端には緊締を強固にするためのOリング構造645が形成されてもよい。固定フラップ640は、基板収容部材600と同じ材質から成形されることが好ましく、基板収容部材600と同時に成形されてもよい。
【0034】
図18は、上述した
図17の基板収容部材600が円形プレート596を収容した状態を示す断面図である。円形プレート596は、底板610と固定フラップ640との間に嵌入した後、クランプ598がボルト(図示せず)により円形プレート596に緊締されることにより基板収容部材600に固定されてもよい。次いで、クランプ598をベース(図示せず)の下部に連結することにより、基板収容部材600の中央領域が強固にベース(図示せず)に装着可能になる。
図19は、固定フラップ646、648の他の実施形態を示す基板収容部材600の断面図であり、内部固定フラップ646及び内部固定フラップ646の外郭の外部固定フラップ648がそれぞれ内部面614から高さ方向に延びている。図示はしないが、環状のプレートを内部固定フラップ646と外部固定フラップ648との間に嵌入させた後、クランプで固定することにより、基板収容部材600に強固さを与えることができる。このように、底板610の中央領域だけではなく、他の領域にも固定フラップが形成されてもよく、図示はしないが、中央領域及び外郭領域の両方ともに複数の固定フラップが形成されてもよい。
図20は、接触フラップ(flap)700を備えるキャリアヘッド900の断面図である。接触フラップ700は、外周部加圧チャンバ200に流体が流れ込むことを抑えるための部材である。接触フラップ700のフラップ上部730は、同図に示すように、接触対応構造530とクランプ532により緊締されることにより、ベース100の下部に連結される。図示はしないが、フラップ上部730は、ベース100の下部に直接的に連結されてもよい。フラップ上部730からフラップ側部720が下方に延び、フラップ側部720の下端からフラップ下部710が内側向きに延びる。接触フラップ700は、外周部620の内側に、つまり、外周部620が接触フラップ700を囲繞する形状に、隣設されて、フラップ下部710は、底板610のうち外周部620と隣り合う領域と接触する。
【0035】
図21は、接触フラップ700の一例を示す斜視断面図である。接触フラップ700は、全体的に環状を呈し、片側の断面を見ると、逆「コ」字状を呈してもよい。フラップ上部730には、封止し易くするためにOリング構造732が形成されてもよい。接触フラップ700は、開放された構造を有して、フラップ上部730がベース100の下部に連結されても単独で流体を閉じ込めるチャンバ(chamber)を形成することはできず、基板収容部材600と組み合わせてチャンバを形成してもよい。接触フラップ700は、可撓性材料から成形されることが好ましく、可撓性材料としては、ゴムを用いることができ、このゴムの例としては、シリコンゴム、クロロプレンゴム又はエチレンプロピレンゴムなどが挙げられる。Oリング構造732を除く接触フラップ700の厚さは、0.3mm~2mmの値を有してもよい。
【0036】
図22は、接触フラップ700の動作を説明するための断面図である。まず、上記の
図5に示すように、接触フラップがない場合、底板加圧チャンバ300の圧力が外周部加圧チャンバ200の圧力よりも大きければ、底板加圧チャンバ300内の流体が外周部加圧チャンバ200に流れ込み続けることができる。しかしながら、
図22に示すように、接触フラップ700が外周部620の内側に隣設されれば、接触フラップ700の内側から(つまり、底面加圧チャンバ300から)外周部加圧チャンバ200に向かっての流体の流れを抑えるため、流体が外周部加圧チャンバ200に流れ込み続けることができない。これは、接触フラップ700の内側の流体が、直線の矢印にて示すように、接触フラップ700に作用するとき、フラップ側部720の膨張が接触対応構造530との接触により止められ、フラップ下部710は、底板610と接触して流体が抜け出る隙間を無くすからである。接触フラップ700を設けると、接触フラップ700と外周部620との間に中間領域302が形成されるが、中間領域302には、独立して流体が供給されないため、外周部加圧チャンバ200や底板加圧チャンバ300とは異なり、流体の圧力を調節し難い。このため、接触フラップ700は、できる限り外周部620の近くに設けられて、中間領域302により加圧される底板610の領域が最小化されることが好ましい。接触対応構造530と底板610との間の隙間を介して接触フラップ700が部分的に膨張することにより、中間領域302の圧力が高くなって流体が外周部加圧チャンバ200に向かって流れることができるが、部分的な膨張が停止されれば、流体の流れも止まることになる。
【0037】
図23は、ブラダ800を備えるキャリアヘッド900の断面図である。ブラダ800は、底板610の所定の領域を独立して加圧するための部材であり、外周部620の内側に隣り合って配置される。ブラダ800は、流体通路410を介して独立して流体を供給されてブラダチャンバ400を形成し、ブラダチャンバ400が膨張してブラダ800の下面部810が基板収容部材600の底板610と接触することにより圧力を印加する。ブラダ800は、全体的に環状を呈してもよく、上部に二つの固定部830が外側に延びていて、接触対応構造510とクランプの役割を果たす障壁構造540によりベース100の下部に連結される。接触対応構造510及び障壁構造540は、ブラダ800の連結だけではなく、ブラダ800の膨張に際してブラダ800の側面部820と接触してブラダ800の側方向の膨張を抑える役割を果たす。より具体的に、接触対応構造510は、ブラダ800の外側方向の膨張を抑え、障壁構造540は、ブラダ800の内側方向の膨張を抑える。このため、ブラダ800は、接触対応構造510及び障壁構造540により画成される底板610の所定の領域と接触して圧力を印加することになる。ブラダ800は、可撓性材料から成形されることが好ましい。可撓性材料としては、ゴムを用いることができ、このゴムとしては、シリコンゴム、クロロプレンゴム又はエチレンプロピレンゴムなどが挙げられる。
【0038】
図24は、ブラダ860の他の実施形態を示すキャリアヘッド900の断面図である。同図に示すように、ブラダ860の固定部880がブラダ860の内部に向かって延びて第1のクランプ552と第2のクランプ554により緊締され、第1のクランプ552が再び障壁構造550に緊締されることにより、ブラダ860はベース100の下部に連結される。ブラダ860は、流体通路412を介して流体を供給されてブラダチャンバ402を形成し、ブラダチャンバ402が膨張して基板収容部材600の底板610と接触することにより圧力を印加する。障壁構造550は、ブラダ860の側方向の膨張を抑える役割及び接触部670が接触する接触対応構造の役割を同時に果たす。
【0039】
図25は、ブラダ800及び接触フラップ760を両方とも備えるキャリアヘッド900の断面図である。同図に示すように、底板610の所定の領域を独立して加圧するために、ブラダ800が外周部620の内側に隣り合ってベース100の下部に連結され、次いで、ブラダ800の内側にブラダ800の外部のうち底板610の中心方向に隣り合って接触フラップ760のフラップ上部790が第1のフラップクランプ560と第2のフラップクランプ562によりベース100の下部に連結される。フラップ上部790からフラップ側部780が下方に延び、フラップ側部780の下端からフラップ下部770が内側向きに延びる。接触フラップ760は、同図に示すように、開放された構造を有して、フラップ下部770が底板610と接触してはじめて、流体を閉じ込めることができる。より具体的に説明すれば、接触フラップ760の内側の流体が接触フラップ760に作用するとき、フラップ側部780が障壁構造540と接触しながら側方向の膨張が抑えられ、フラップ下部770は、ブラダ800と隣り合う底板610と接触することにより、流体が抜け出る隙間を無くすため、接触フラップ760の内側からブラダ800に向かっての流体の流れを抑える。
【0040】
図26は、本発明の他の実施形態による基板収容部材604を装着したキャリアヘッドの断面図であり、基板収容部材の外周部620と内部面614とが出会う角部に突出構造630が形成されている。このため、3次元的に見ると、突出構造630は、外周部620と同様に環状を呈する。突出構造630は、基板収容部材604と同じ材質から成形されることが好ましく、基板収容部材604の成形と同時に成形されてもよい。同図に示すように、突出構造630は、側面632及び上面634を有するステップ(step)状を呈してもよい。このとき、高さhは、3mm~15mmの値を、且つ、幅sは、4mm~20mmの値を有してもよい。
【0041】
図27及び
図28は、突出構造630の圧力分散機能を説明するための断面図である。まず、キャリアヘッド900の部分断面図である
図27(a)を参照すると、Zone 1にて示す外周部加圧チャンバ200にP1の圧力が印加され、Zone 2にて示す底板加圧チャンバ300にP2の圧力が印加される。これらの圧力は、底板610と、外周部620及び突出構造630を介して基板50に印加される。突出構造630は、角部において底板610が厚くなった形状でもあり、又は角部において外周部620が厚くなった形状でもある。このため、突出構造630は、底板610及び外周部620の特性を共有する。これを
図27(b)及び
図27(c)に示したが、まず、外周部加圧チャンバ200の圧力P1が、幅がwである外周部620の上部に印加されれば、この圧力P1は、基板50に向かって下降しながら隣の突出構造630に分散される。その結果、基板50の位置に応じて、外周部加圧チャンバ200から受ける圧力は、
図27(b)のグラフZ1 Effectのように変わる。同様に、底板加圧チャンバ300の圧力P2が、幅がsである突出構造の上面634に印加されれば、このP2は、基板50に向かって下降しながら隣の外周部620に分散される。その結果、基板50の位置に応じて、底板加圧チャンバ300から受ける圧力は、
図27(b)のグラフZ2 Effectのように変わる。したがって、基板50が最終的に受ける圧力は、基板50に及ぼす全ての圧力を加算した値であるため、
図27(c)のグラフZ1+Z2 Effectのように変わる。ここで、突出構造630により、基板50が受ける圧力は、外周部加圧チャンバ200であるZone 1から底板加圧チャンバ300であるZone 2へと変わるときに急変しないことが分かる。すなわち、突出構造630により、Zone 1及びZone 2の影響を同時に受ける領域が拡張されて圧力の変化が緩やかに起こる。これに対し、突出構造がない場合には、
図28に示すように、圧力P1及びP2が基板50に伝わるときに分散される量が非常に少ない。このため、基板50が受ける圧力は、Zone 1からZone 2へと変わるときに急変する。
【0042】
このため、本発明の他の実施形態による基板収容部材を備える化学機械的な研磨装置用のキャリアヘッド900は、ベース100と、基板を収容する外部面612及び前記外部面612の反対側の内部面614を有する底板610と、前記底板610の周縁から高さ方向に延びる外周部620と、前記外周部620の外側から枝分かれして前記ベース100の下部に連結される緊締部650と、前記外周部620の内側から枝分かれしている接触部670と、を備えるが、前記外周部620と前記内部面614とが出会う角部に突出構造630が形成されたことを特徴とする基板収容部材604と、前記ベース100の下部に連結されて前記接触部670との接触面を提供する接触対応構造500と、前記接触部670が流体の圧力により前記接触対応構造500に密着されることにより、前記緊締部650及び前記接触部670を壁として形成される外周部加圧チャンバ200と、を備えるが、前記外周部加圧チャンバ200内の流体の圧力が前記外周部620の内側面622に作用する流体の圧力よりも大きいときには、前記外周部加圧チャンバ200内の流体が前記外周部620の内側面622に向かって流れることが抑えられるのに対し、前記外周部620の内側面622に作用する流体の圧力が前記外周部加圧チャンバ200内の流体の圧力よりも大きいときには、前記外周部620の内側面622に作用する流体が前記外周部加圧チャンバ200内に流れるようになっていることを特徴とする。
【0043】
図29は、突出構造630の他の実施形態を示す断面図であり、突出構造側面632’が傾いている。このように、突出構造630の側面632’は、必ずしも底面610に対して垂直である必要はなく、垂直を基準として左右45°内に傾いていてもよい。なお、図示はしないが、側面632’は曲面を含んでいてもよい。同様に、突出構造の上面634もまた、外周部620に対して必ずしも垂直である必要はない。
【0044】
図30は、突出構造631のさらに他の実施形態を示す断面図であり、突出構造631の表面633が曲面状を呈している。この場合、突出構造631の側面及び上面を仕切り難いため、単一の表面633により突出構造631の形状が規定され、突出構造631の高さ及び幅は、角部において突出部631がそれぞれ外周部620及び底板610と出会う個所までの距離であると定義してもよい。
図31は、突出構造のさらに他の実施形態を示す断面図であり、突出構造630の表面である側面632に凹凸構造としての溝636が形成されている。溝636が形成されれば、金属製又はプラスチック製の環状リングや円形プレート(図示せず)を嵌入してもよい。溝636の周りよりも僅かに大きい周りを有する環状リングや円形プレートを溝636に嵌入させると、垂れ下がる虞のある底板610を張架することができる。以上においては、側面632に形成された一つの溝636を例にとって説明したが、側面632だけではなく、上面634又は
図20に示す曲面の表面633にリングやプレートを支持可能な凹凸構造としての溝や突起が一つ以上形成されてもよい。
【0045】
図32は、突出構造のさらに他の実施形態を示す断面図であり、突出構造の側面632から内側向きに延びる収容補助フラップ(flap)638が形成されている。収容補助フラップ638は、基板収容部材604と同じ物質から成形され、板状のリング状を呈し、基板収容部材604の成形と同時に成形されることが好ましい。収容補助フラップ638の延びた長さqは、5mm~20mmの値を有してもよく、厚さは、0.3mm~1mmの値を有してもよい。フラップの先端には、緊締を強固にするためのOリング構造639が形成されてもよい。収容補助フラップ638は、円形のプレートや環状リング(図示せず)を収容して固定する役割を果たす。図示はしないが、収容補助フラップは、突出構造の上面又は曲面の表面からも内側に延びてもよい。
【0046】
このため、本発明の他の実施形態による化学機械的な研磨装置用のキャリアヘッドの基板収容部材604は、基板を収容する外部面612及び前記外部面612の反対側の内部面614を有する底板610と、前記底板610の周縁から高さ方向に延びる外周部620と、前記外周部620の外側から枝分かれしている緊締部650と、前記外周部620の内側から枝分かれしている接触部670と、を備えるが、前記外周部620と前記内部面614とが出会う角部に突出構造630が形成されたことを特徴とする。
【0047】
図33は、本発明のさらに他の実施形態による基板収容部材604を示す断面図であり、内部面614から高さ方向に固定フラップ640が延びている。固定フラップ640は、基板収容部材604と同じ材質から成形されることが好ましく、基板収容部材604の成形と同時に成形されてもよい。
【0048】
図34は、基板収容部材604の底板610に底板を貫通する貫通孔616が形成されていることを示す断面図である。貫通孔616は、円形であることが好ましく、直径は、5mm~30mmの値を有してもよい。貫通孔616を介して流体の圧力又は真空が直接的に基板(図示せず)に作用してもよい。図面には、底板610の中心に一つの貫通孔616のみが形成された場合が示されているが、底板610には複数の貫通孔が形成されてもよく、異なる直径を有してもよい。
【0049】
図35は、突出構造630’が形成された基板収容部材604及び接触フラップ702を備えるキャリアヘッド900の断面図である。接触フラップ702のフラップ上部730は、接触対応構造530とクランプ532によりベース100の下部に連結され、フラップ上部730からフラップ側部722が下方に延び、フラップ側部722の下端からフラップ下部712が内側向きに延びる。接触フラップ702は開放された構造を有して、外周部620の内側に隣り合って底板加圧チャンバ300に圧力が印加されれば、フラップ側部722が接触対応構造530と接触し、フラップ下部712は突出構造630’と接触することにより、接触フラップ702内側から、すなわち、底板加圧チャンバ300から、外周部加圧チャンバ200に向かっての流体の流れを抑えることになる。
【0050】
図36は、突出構造630’が形成された基板収容部材604及びブラダ802を備えるキャリアヘッド900の断面図である。ブラダ802は、外周部620の内側に隣り合い、接触対応構造510と障壁構造540によりベース100の下部に連結されて、流体通路410を介して独立して流体を供給されれば、膨張することになる。このとき、外側方向の膨張は接触対応構造510により、且つ、内側方向の膨張は障壁構造540により抑えられる。このような膨張を引き起こす流体の圧力は、ブラダ802と接触する突出構造630’にそのまま印加される。突出構造630’により、ブラダ802の側面部822の長さ及び下面部812の幅が
図23に示すブラダ800の場合よりも減少することができる。
【0051】
図37は、ブラダ802及び接触フラップ760を両方とも備えるキャリアヘッド900の断面図である。接触フラップ760は、
図36に示すブラダ802の内側にブラダ802の外部のうち底板610の中心方向に隣り合い、接触フラップ760のフラップ上部790が第1のフラップクランプ560と第2のフラップクランプ562によりベース100の下部に連結される。フラップ上部790からフラップ側部780が下方に延び、フラップ側部780の下端からフラップ下部770が内側向きに延びる。接触フラップ760は、開放された構造を有して、底板加圧チャンバ300に圧力が印加されれば、フラップ側部780が障壁構造540と接触し、フラップ下部770は、ブラダ802と隣り合う底板610と接触することにより、接触フラップ760の内側から、すなわち、底板加圧チャンバ300から、ブラダ802に向かっての流体の流れを抑えることになる。
【0052】
図38は、複数のブラダ802、864を備えるキャリアヘッド900の実施形態を示す断面図である。ブラダ802、804は、それぞれ流体通路410、412を介して独立して流体を供給されて膨張することができる。まず、外周部620の内側に隣り合って固定部832がブラダ802の外部に向かって延びた第1のブラダ802がベース100の下部に連結されて、外側方向の膨張は接触対応構造510により、且つ、内側方向の膨張は障壁構造550により抑えられる。このような膨張を引き起こす流体の圧力は、ブラダ802と接触する突出構造630’に印加される。次いで、第1のブラダ802の内側に隣り合って固定部884が内部に向かって延びた第2のブラダ864がベース100の下部に連結されて、内側及び外側方向の膨張が障壁構造550により抑えられて前記底板610の所定の領域と接触することにより、圧力を印加することになる。
【0053】
発明の実施のための形態は、上述した「発明を実施するための形態」の欄において十分に説明されたため、これについての詳細な説明を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0054】
半導体やガラス基板の製造及び集積回路の製造に当たって必要な化学機械的な研磨工程に利用可能である。