(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-24
(45)【発行日】2023-04-03
(54)【発明の名称】報知音検出装置および報知音検出方法
(51)【国際特許分類】
G10L 25/51 20130101AFI20230327BHJP
G10L 25/18 20130101ALI20230327BHJP
G10L 25/21 20130101ALI20230327BHJP
【FI】
G10L25/51
G10L25/18
G10L25/21
(21)【出願番号】P 2019116637
(22)【出願日】2019-06-24
【審査請求日】2022-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】594009302
【氏名又は名称】日本キャステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】IAT弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】冨士野 新一
【審査官】山下 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-027972(JP,A)
【文献】国際公開第2007/023660(WO,A1)
【文献】特開2015-206974(JP,A)
【文献】特開2016-095434(JP,A)
【文献】特開2013-171131(JP,A)
【文献】特開2005-77875(JP,A)
【文献】織田修平他,聴覚障害者支援を目的とした報知音の振動呈示による伝達方法とその有効性の検証,電子情報通信学会技術研究報告,2004年10月,Vol.104,No.386,pp.41-46
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10L 25/00-25/93,15/00-17/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された音響信号に含まれる報知音を検出する報知音検出装置であって、
入力された音響信号を所定の周波数比からなる周波数に分離する周波数解析部と、
分離された周波数のうちで、そのパワー値が所定の閾値を超えた最大である周波数を選択するピーク判定部と、
前記ピーク判定部の出力に基づいて報知音であるかを判定する報知音判定部と
を有し、
前記報知音判定部は、
前記ピーク判定部が選択した周波数が第一の時間連続して現れたかを判定する短時間判定部と、
前記短時間判定部で判定した第一の時間連続して現れた回数が前記第一の時間より長い第二の時間に所定の頻度現れたことを判定する長時間判定部と
を有する、
ことを特徴とする報知音検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の報知音検出装置であって、
前記周波数解析部は、離散フーリエ解析を行って、前記音響信号を所定の周波数比の音階の周波数に分離する
ことを特徴とする報知音検出装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の報知音検出装置であって、
前記短時間判定部は、前記ピーク判定部が選択した周波数の信号が第一の時間連続して現れたときは「連続して現れた旨」を出力する判定手段を備え、
前記長時間判定部は、前記短時間判定部の出力を記憶し、前記短時間判定部の「連続して現れた旨」の出力が前記第二の時間内に所定の頻度に達すると報知音の検出出力を行う判定手段を備えた、
ことを特徴とする報知音検出装置。
【請求項4】
入力された音響信号に含まれる報知音を検出する報知音検出方法であって、
入力された音響信号を所定の周波数比からなる周波数に分離する周波数解析ステップと、
前記周波数解析ステップで、分離された周波数のうちで、そのパワー値が所定の閾値を超えた最大の周波数を選択するピーク判定ステップと、
前記ピーク判定ステップの出力に基づいて報知音であるかを判定する報知音判定ステップと
を有し、
前記報知音判定ステップは、
前記ピーク判定部が選択した周波数が第一の時間連続して現れたかを判定する短時間判定ステップと、
前記短時間判定ステップで判定した第一の時間連続して現れた回数が前記第一の時間より長い第二の時間に所定の頻度現れたことを判定する長時間判定ステップと
を有する、
ことを特徴とする報知音検出方法。
【請求項5】
請求項4に記載の報知音検出方法であって、
前記周波数解析ステップは、離散フーリエ解析を行って、前記音響信号を所定の周波数比の音階の周波数に分離する
ことを特徴とする報知音検出方法。
【請求項6】
請求項4または5に記載の報知音検出方法であって、
前記短時間判定ステップは、前記ピーク判定ステップが選択した周波数の信号が第一の時間連続して現れたときは「連続して現れた旨」を出力し、
前記長時間判定ステップは、前記短時間判定ステップの出力を記憶し、前記短時間判定ステップの「連続して現れた旨」の出力が前記第二の時間内に所定の頻度に達すると報知音の検出出力を行う、
ことを特徴とする報知音検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、報知音検出装置および報知音検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭や職場には種々の装置があり、それぞれ装置固有の音の報知音(通知音)を出す。例えば、玄関チャイムであれば、訪問者がボタンを押すことで「ピンポーン」というチャイム音が室内で鳴り、訪問者がきたことがわかる。また、風呂が沸けば、特有の音が鳴って人に知らせることができる。これらの音は健常者であればそれを知ることができるが、聴覚に障害がある者は知ることが難しい。特に火災警報器などの警報音は、聴覚障害者が気がつかないときは問題となる。
聴覚障害者に対して警報音等が鳴ったことを腕時計の振動あるいは光などで知らせる技術が提案されており、そのために警報音などの報知音を検出する発明が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-095434号公報
【文献】特開2015-206974号公報
【文献】特開2013-171131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1、2に記載の報知音検出装置は、入力された音響信号をFFT(高速フーリエ変換 Fast Fourier Transform)で周波数スペクトルに変換して、周波数スペクトルから対数パワースペクトルを計算し、この対数パワースペクトルを重み付けケプストラムに変換し、変換された重み付けケプストラムに基づいて、ピーク数を求め、ピーク数、ピーク周波数に基づいて、報知音であるかないかを判定する。また、判定した報知音をあらかじめ設定した報知音のパターンと比較して、どの装置の報知音であるかを判定する。
この特許文献1、2に記載された報知音検出装置では、音声信号の処理に用いられる技術のように、複雑な音声処理を行う情報処理が必要であって、大容量のメモリや高い演算機能をもつCPU等を必要とするので装置が高価なものとなる。また、既存の報知音のパターンと比較して、報知音を判定するので、報知音のパターンを収集記憶して比較する必要があり、装置が高価なものになりやすい。
【0005】
また、特許文献3には、入力された音響信号を周波数信号に変換し、最も高いエネルギ(パワー値)を有するピークスペクトルを抽出し、このピークスペクトルが指定時間持続している場合に報知音であると判定する技術が記載されている。
この特許文献3の技術は、一つの周波数であるピークスペクトルが指定時間連続しているときに報知音と認識するため、一つのピークスペクトルが連続するサイレンのような連続音での報知音を検出するには適するが、玄関チャイム等の音の周波数が段階的に変化するチャイム音のような報知音を検出することには適しない。
【0006】
本発明は、上述の従来技術の課題を解決するもので、小容量のメモリや低廉なCPUという安価なリソースと簡単なアルゴリズムで報知音の検出が可能であって、あらかじめ、既存の報知音のパターンを記憶する必要がなく、小容量のメモリや低廉なCPUで報知音の検出が可能な報知音検出装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の側面は、入力された音響信号に含まれる報知音を検出する報知音検出装置であって、入力された音響信号を所定の周波数比からなる周波数に分離する周波数解析部と、分離された周波数のうちで、そのパワー値が所定の閾値を超えた最大である周波数を選択するピーク判定部と、ピーク判定部の出力に基づいて報知音であるかを判定する報知音判定部とを有し、報知音判定部は、ピーク判定部が選択した周波数が第一の時間連続して現れたかを判定する短時間判定部と、短時間判定部で判定した第一の時間連続して現れた回数が第一の時間より長い第二の時間に所定の頻度現れたことを判定する長時間判定部とを有する、ことを特徴とする。
【0008】
なお、周波数解析部は、離散フーリエ解析を行って、音響信号を所定の周波数比の音階の周波数に分離することが好ましい。
【0009】
また、短時間判定部は、ピーク判定部が選択した周波数の信号が第一の時間連続して現れたときは「連続して現れた旨」を出力する判定手段を備え、長時間判定部は、短時間判定部の出力を記憶し、短時間判定部の「連続して現れた旨」の出力が第二の時間内に所定の頻度に達すると報知音の検出出力を行う判定手段を備えたことが好ましい。
【0010】
本発明の他の側面は、入力された音響信号に含まれる報知音を検出する報知音検出方法であって、入力された音響信号を所定の周波数比からなる周波数に分離する周波数解析ステップと、周波数解析ステップで、分離された周波数のうちで、そのパワー値が所定の閾値を超えた最大の周波数を選択するピーク判定ステップと、ピーク判定ステップの出力に基づいて報知音であるかを判定する報知音判定ステップとを有し、報知音判定ステップは、ピーク判定ステップが選択した周波数が第一の時間連続して現れたかを判定する短時間判定ステップと、短時間判定ステップで判定した第一の時間連続して現れた回数が第一の時間より長い第二の時間に所定の頻度現れたことを判定する長時間判定ステップとを有する、ことを特徴とする。
【0011】
なお、周波数解析ステップは、離散フーリエ解析を行って、音響信号を所定の周波数比の音階の周波数に分離することが好ましい。
【0012】
また、短時間判定ステップは、ピーク判定ステップが選択した周波数の信号が第一の時間連続して現れたときは「連続して現れた旨」を出力し、長時間判定ステップは、短時間判定ステップの出力を記憶し、短時間判定ステップの「連続して現れた旨」の出力が第二の時間内に所定の頻度に達すると報知音の検出出力を行う、ことができる。
【発明の効果】
【0013】
報知音の判定は、ピーク周波数が連続して現れたのが所定の頻度で生じたかで判定するため、少ないメモリと低廉なCPUと、簡単なアルゴリズムによって報知音検出が可能であって、安価な装置で実現できる。また、報知音のパターンを記憶する必要もないので、安価な報知音検出装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第一の実施の形態の報知音検出装置の構成を示す図である。
【
図2】実施の形態の周波数解析部を説明する図である。
【
図3】実施の形態のピーク判定部を説明する図である。
【
図4】実施の形態の報知音判定部を説明する図である。
【
図5】報知音と雑音の時間と発生する周波数との関係を説明する図である。
【
図6】短時間判定部の判定動作を説明する図である。
【
図7】長時間判定部の判定動作を説明する図である。
【
図8】実施の形態の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の第一実施の形態の報知音検出装置10の構成を示す図であり、本実施の形態の報知音検出装置10は、入力された環境からの音響信号をディジタル信号に変換するA/D変換部11と、ディジタル信号に変換された音響信号を周波数解析して等比の周波数である音階の周波数に分離する周波数解析部12と、周波数解析された音響信号のうち、そのパワー値が所定の設定値を超えた周波数で最大のパワー値であるピーク周波数を選択するピーク判定部13と、ピーク判定部13が出力したピーク周波数の現れ方から当該音響信号が報知音であるか否かを判定出力する報知音判定部14とを備えている。
【0016】
図2は、実施の形態の周波数解析部12を説明する図である。周波数解析部12は、A/D変換部11でディジタル信号に変換された音響信号を適当なブロックに分けてバンドパスフィルタによって分離することで、所定の周波数比(等比の周波数)となる周波数に分離する機能を有する。この周波数の例として、音階であるドレミファソラシドなどの音階になる周波数に分離する。
例えば、音階は、次の式で表される。
f=A
4×2
n/12
但しnは整数である。
A
4 は、一般的に440Hzが用いられているため、周波数解析部の分離する周波数としては、・・・ 391.995Hz(fG4)、415.305Hz(fG#4)、440.000Hz(fA4)、466.164Hz(fA♯4)、493.883Hz(fB4)・・・のように、隣り合う周波数が等比となる周波数にバンドパスフィルタを通過させる。周波数解析部12での、バンドパスフィルタとしての動作は、ディジタルフィルタとして機能させる離散フーリエ変換(DFT)で実現できる。
この音階の周波数に分離された音響信号は後段のピーク判定部13に出力される。
【0017】
図3は、実施の形態のピーク判定部13の構成を示すものである。ピーク判定部13は、周波数解析部12で分離された音階の周波数のパワー値から、そのパワー値が所定の閾値を上回っており、かつ、音として所定の範囲の周波数である最大のパワー値を有する周波数を選択するピーク値選択部131を有する。以下ピーク値選択部131で選択された周波数をピーク周波数という。
所定の範囲とは、パワーの最大値となる周波数が高い周波数である、例えば1kHz以上である高音や、あるいは100Hzを下回る低音を除いて、報知音として使用される範囲の周波数に限定するものである。JISなどの報知音のガイドラインでは、1kHz以上あるいは100Hz以下の周波数は、報知音の中心周波数として使用が想定されていないので、所定範囲を超える高音、低音は、報知音として除外する。また、閾値は、通常人の耳に報知音として聞こえる程度のパワー値を有する音を選択するためであり、パラメータとして設定することができる。そして、閾値を上回る周波数が複数ある場合は、最大のパワー値を有する周波数の音を一つだけ選択出力する。
ピーク値選択部131は、入力された複数の周波数のパワー値を設定された閾値と比較し、さらに複数の周波数のパワー値を比較するCPUの比較機能を用いることで実現できる。
【0018】
図4は、報知音判定部14の構成を示すものであり、報知音判定部14は、短時間判定部141と長時間判定部142とを有し、ピーク判定部13が判定したピーク周波数について短時間判定と長時間判定を行って、両者の判定結果で報知音であると判定する。
短時間判定は、ピーク周波数が安定して出ていることを判定するものであり、例えば、72ms間、ピーク周波数が連続して現れているかを判定する。
一方、長時間判定は、ピーク周波数が短時間(例えば72ms)連続したことが、どの程度の頻度で現れているかを判定して、報知音であるかを判定するものである。機械の出す報知音は、「ピーンポーン」、「ピコ、ピコ」というようにその音階が変化しながら連続して発するものがあるので、このような音階が変化しながら連続する報知音を短時間判定と長時間判定とを組み合わせることで判定することができる。
【0019】
図5を参照して、報知音の検出原理を説明する。
図5(a)は、音階が変化する報知音について、(b)は雑音など報知音でない音についてピークの周波数の出現の様子を、横軸を時間、縦軸を周波数で表したものである。
報知音は、ピーク周波数は、時間で変化しても、その変化は、周期的であって、また、ピーク周波数は一定時間連続しているのに対して、雑音などの音は、ピーク周波数が、ランダムに現れており、また、その持続時間も一定時間継続するというものではない。
また、人の音声も、ピーク周波数が一定時間継続することは少ないものであり、報知音のように、ピーク周波数が比較的長い時間連続するというものではないので、ピーク周波数が連続する報知音と区別することができる。例えば、「アー」という音が会話中で長く維持されることは少なく、会話では、常に音声のピーク周波数は移動しており、報知音と区別することができる。さらに、楽器が出す音楽音は、音階を伴う音であるけれども、音階の変化が報知音と異なり、同じピーク周波数の連続が少ない音であるから、ピーク周波数が連続する報知音と区別することができる。
【0020】
図6に短時間判定部141での短時間判定の構成例を示す。短時間判定部141は、9個のシフトレジスタに、サンプリングごとにピーク周波数が現れている場合は、「1」を、現れていない場合には、「0」を入れて、所定の個数(所定の時間)、「1」が連続した場合に、短時間判定が「1」の出力を、連続しない場合には、「0」の出力を出す、シフトレジスタの機能で実現できる。
例えば、ピーク周波数選択部131が出力したピーク周波数を8msごとにサンプリングし、ピーク周波数が現れておれば、「1」をシフトレジスタに入れ、サンプリングごとにその値をシフトしていく。ピーク周波数が検出できない場合には、シフトレジスタに「0」を入れる。8msごとのサンプリングの結果を9回シフトレジスタに入れて、9回、すなわち、72msの間シフトレジスタの値が「1」で連続しているかをみる。連続している場合は、連続したことを示す「1」を出力し、シフトレジスタの中身を全て「0」にリセットする。一つでも「0」があり、連続していない場合は、「0」を出力する。
これにより、ピーク周波数が、72ms連続して現れたことを検出できる。
【0021】
図7に長時間判定部142での長時間判定の構成例を示す。長時間判定部142は、256個のシフトレジスタを備えており、このシフトレジスタに、短時間判定部141の出力のピーク周波数が72ms間連続したか否かの出力を格納していく。そして、256個、すなわち、8ms×256個、2.05sに、短時間、ピーク周波数が連続した回数が何回あったかによって、報知音が発生したかを判定する。
例えば、2.05sのうち、10回、短時間判定部141の出力「1」が現れていたら、報知音が発生したと判定する。
このように、短時間判定部141の判定と、長時間判定部142の判定とから、報知音が発生したことを判定できる。
【0022】
図8は、上述の報知音の判定動作を表すフローチャートである。
まず、選択されたピーク周波数をサンプリングして、パワー値を検出して、パワー値が、閾値を超えていれば、短時間判定部141のシフトレジスタに「1」を入れる(ステップS1)。次の8ms後に、同じピーク周波数のパワー値が閾値を超えていれば、短時間判定部142のシフトレジスタに「1」を入れ、前の「1」をシフトする。同じピーク周波数のパワー値が閾値を超えない場合、あるいは、ピーク周波数選択部131において、ピーク周波数が変わってしまい、前回のピーク周波数と同じ周波数ではなくなった場合は、ピーク周波数を検出してないとして、シフトレジスタには、「0」を入れ、前回の「1」をシフトする。この「0」を入れるときは、同じピーク周波数が検出できないときであるから、音階が変化してピーク周波数が変わってしまったときだけでなく、音響信号が小さくなって、ピーク周波数のパワー値が閾値を下回ったときを含む。
【0023】
そして、8msごとに、シフトレジスタの全部の値を読み出して、シフトレジスタ内のデータが全て「1」か否かを判定する。全部が「1」であれば、短時間判定の出力として、「1」を出力すると共にシフトレジスタ内を「0」にリセットする、一つでも「0」があれば、「0」を出力する(ステップS2)。一つでも「0」がある場合には、シフトレジスタをリセットすることはない。
このようにピーク周波数が9個連続したときに、「1」を出力するので、72msの間ピーク周波数が連続したことを短時間判定することができる。ピーク周波数を8msごとのサンプリングで検出できないときは、その都度、短時間判定の判定結果として、「0」が出力される。
【0024】
8msごとの短時間判定の出力は、長時間判定部142のシフトレジスタに順に入力され(ステップS3)、2.05sの期間に、短時間判定部141の出力「1」が所定の頻度で現れたかが判定される(ステップS4)。この判定は、256個のレジスタ内に、「1」がどの頻度(割合)で現れたかで判定され、ステップS4では、256のうち、10個、短時間判定部141の出力が「1」であれば、報知音であったと判定し、報知音出力を出す(ステップS5)。
この例では、長時間判定部142のシフトレジスタには、8msごとの短時間判定部141の出力が入力されるので、72ms、連続した場合のみ、「1」が入力され、「1」になった後、最短でもシフトレジスタは、9個後でなければ、「1」にならない。
【0025】
ここで、サイレンや火災報知機の警報音のように、連続して、同一のピーク周波数が現れる場合には、最初から、短時間判定部の出力は、10回目ごとに、「1」が現れ、短い期間、例えば、720ms連続した場合は、報知音を検出したとして、報知音検出出力を行うことができる。したがって、このときは、2.05sの約3分の1、0.72sで報知音の検出を行うことができることになる。
また、報知音が音階を変化し、また間欠する音であれば、シフトレジスタには、短時間判定の「1」が全て連続することはなくても、「1」の現れる回数が、2.05s中に所定回数現れることになるから、256個のシフトレジスタ内の「1」の数をカウントすることで、報知音であることを検出できる。
【0026】
(効果の説明)
報知音であるかないかの判定は、シフトレジスタとそのレジスタ内のデータのカウントを行う動作で実現できるので、少ないメモリ量と少ない演算量で判定動作を行うことができる。これにより、安価なハードウェアで報知音検出装置を実現できる。
【0027】
周波数解析部では、音階に相当する所定の周波数のみ抽出するバンドパスフィルタによって、報知音を構成している等比の音階の周波数に分離するので、機械が出している報知音の周波数を容易に抽出することができる。離散フーリエ変換を用いたバンドパスフィルタであると、抽出する周波数は、任意に決定できるが、FFTによるフーリエ変換であると、等比の周波数比になる音階の周波数とは微妙に異なるので、音階の周波数を抽出するには、周波数幅を細かくする必要があって、演算機能として高い機能を有する演算装置が必要となる。本実施の形態での音階の周波数に抽出すれば、狙いの周波数部分を抽出するのに、高い演算機能を要求されない利点がある。
【0028】
短時間で変化するようなメロディ音であっても、短時間判定では、「1」が連続して、変化の途中に音と音が開いていても、短時間判定と長時間判定とを組み合わせることで、メロディ音を検出することができる。
また、和音を含むメロディ音であっても、機械が発生する音であって、各音(周波数)のバランスは一定であり、最大パワー値は安定しているので、ピーク周波数が移り変わっても、その連続性を判定することで報知音であることを検出することができる。
【0029】
本発明の実施の形態では、パワー値が最大のピーク周波数が連続しているかを判定する短時間判定と、短時間判定の結果、ピーク周波数の連続したことが所定頻度現れているかを判定する長時間判定とで、報知音検出を行うため、簡単なアルゴリズムと少ないリソースで報知音検出が可能である。また、報知音のパターンとの一致をみるようなパターン認識を行わないため、報知音のパターンを取得して記憶し、パターンを比較する処理のような複雑な処理を必要としない。
【0030】
本発明では、報知音を検出したら報知音の検出したことを振動や光で知らせることができる。このため、聴覚障害者であっても、来訪者がきたこと、風呂が沸いたとかなど、機械音による報知を知ることができる。また、報知音検出装置に通信装置を組み合わせることで、報知音の検出を遠隔地であっても知らせることができる。このため、例えば、炊飯器や風呂をタイマで設定しておけば、利用者の携帯端末に帰宅前に炊飯が完了したことや、風呂が沸いたことを知らせるようなこともできる。
【0031】
(変形例)
上述の説明では、短時間判定部141で、ピーク判定部13が出力するピーク周波数とパワー値(最大)を8msごとにサンプリングして、閾値を上回るかを判定するものとして説明したが、ピーク判定部13で、8msごとにサンプリングして、閾値を超えた最大のピーク周波数を検出したときは、「1」を、検出しなかったときは、「0」を出力して、短時間判定部141では、ピーク判定部13の出力「1」が所定回数連続して現れたかをカウントするようにしてもよい。
上述の短時間判定部141は、シフトレジスタに、8msごとのサンプリングで、閾値を上回るピーク周波数を検出したときは、シフトレジスタに「1」を入れ、順次サンプリングごとにシフトして、72msごとに、シフトレジスタが全て「1」であるかを判定することで、72msの間、ピーク周波数が連続して現れたかを判定することで説明したが、シフトレジスタを用いることなく、ピーク周波数が連続して安定して現れたかを判定することが可能である。また、サンプリング周波数、ピーク周波数が連続していることの判定時間は、上述の例に限られず、検出したい報知音により自由に設定できる。
【0032】
また、上述の実施の形態では、短時間判定部141は、8msごとのサンプリングで、シフトレジスタ内が連続して「1」があるかないかを判定して、「1」か、「0」を出力する動作で説明したが、72msごとに「1」か「0」かを判定して、「1」か「0」かを出力するようにしてもよい。この場合には、長時間判定部142のシフトレジスタへの「1」か「0」の入力が72msごとになる。
【0033】
短時間判定は、報知音の特徴である、あるピーク周波数が安定して現れているかを検出するためのものであるから、他の方法であっても、報知音の周波数が安定して現れていることを検出できるものであればよい。例えば、ピーク判定部13の出力をサンプリングして同じピーク周波数が現れたら、メモリに記録し、72msごとにメモリの内容を判定して、72ms間連続していれば、長時間判定部142へ連続して現れた旨を出力し、72msのうちに、ピーク周波数が変化したり、閾値を下回ったときは、そこで、連続しなくなったと判定して、次の72msの連続性を判定する処理に移ってもよい。
この場合、長時間判定部142への出力は、72msごとに出力されなくてもよく、ピーク周波数が72ms連続した場合だけ短時間判定部141のピーク周波数の連続性の出力が現れるようにしてもよい。長時間判定部142側のカウントにより、2.05s間にピーク周波数が連続して現れた頻度をカウントすればよいので、長時間判定部142で、その時間内に現れる短時間判定部141のピーク周波数の連続性の出力の頻度が判定できるから、報知音を判定することは可能である。
【0034】
また、短時間判定部141では、シフトレジスタではなく、閾値を超えたピーク周波数があれば(有効である)、カウンタを「+1」、閾値を超えたピーク周波数がない場合(無効)は、カウンタを「0」に戻す操作をして、9回のサンプリングで、カウンタが「9」であれば、連続した旨の出力、「9」でなければ、連続しない旨の出力をするようにしてもよい。さらに、長時間判定部142もシフトレジスタではなく、カウンタで構成し、短時間判定部141の出力が連続した旨の出力であれば「+1」、非連続の出力であれば、「-1」として、カウンタのカウント数が設定した頻度の閾値を超えた場合に、報知音を検出したとしてもよい。
【0035】
上記実施の形態の説明では、長時間判定部142での判定基準の頻度は、2.05sのうち、ピーク周波数の連続して現れたのが0.72s程度であればよいものとしたが、短時間判定でピーク周波数が安定して出ている頻度は少ないので、長時間判定の判定基準は、報知音に応じて自由に設定できる。
【符号の説明】
【0036】
10 報知音検出装置
11 A/D変換部
12 周波数解析部
13 ピーク判定部
131 ピーク周波数選択部
14 報知音判定部
141 短時間判定部
142 長時間判定部
1411、1421 シフトレジスタ