IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ クレオ・メディカル・リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許-電気手術装置の絶縁装置 図1
  • 特許-電気手術装置の絶縁装置 図2
  • 特許-電気手術装置の絶縁装置 図3
  • 特許-電気手術装置の絶縁装置 図4
  • 特許-電気手術装置の絶縁装置 図5
  • 特許-電気手術装置の絶縁装置 図6
  • 特許-電気手術装置の絶縁装置 図7
  • 特許-電気手術装置の絶縁装置 図8
  • 特許-電気手術装置の絶縁装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-24
(45)【発行日】2023-04-03
(54)【発明の名称】電気手術装置の絶縁装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/12 20060101AFI20230327BHJP
   A61B 18/18 20060101ALI20230327BHJP
   H01P 5/18 20060101ALI20230327BHJP
   H01P 5/103 20060101ALI20230327BHJP
   H01P 1/213 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
A61B18/12
A61B18/18 100
H01P5/18 N
H01P5/103 B
H01P1/213 G
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020504669
(86)(22)【出願日】2018-08-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-05
(86)【国際出願番号】 EP2018072153
(87)【国際公開番号】W WO2019034708
(87)【国際公開日】2019-02-21
【審査請求日】2021-08-11
(31)【優先権主張番号】1713174.9
(32)【優先日】2017-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】512008495
【氏名又は名称】クレオ・メディカル・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CREO MEDICAL LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハンコック,クリストファー・ポール
(72)【発明者】
【氏名】ホワイト,マルコム
【審査官】菊地 康彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-530172(JP,A)
【文献】特表2016-538962(JP,A)
【文献】米国特許第05434548(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/12-18/18
H01P 5/08-5/107
H01P 5/22
H01P 1/213
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の入力、第2の入力および出力を有し、前記第1の入力は第1周波数を有する無線周波(RF)電磁(EM)放射をRFチャネルから受信するように接続可能であり、前記第2の入力前記第1周波数よりも高い第2周波数を有するマイクロ波EM放射をマイクロ波チャネルから受信するように接続可能であり、前記出力は前記RF EM放射と前記マイクロ波EM放射を共通信号経路に伝送するための前記第1の入力及び前記第2の入力と通信する、結合回路と、
前記マイクロ波チャネルを前記RF EM放射から分離するために前記結合回路に接続された導波路アイソレータと、
を備えるアイソレータ・ダイプレクサ複合型デバイスであって、
前記導波路アイソレータは、
導電性入力部(102)と、
導電性出力部(106)と、
前記入力部(102)と嵌合する第1の端部、及び前記出力部(106)と嵌合する第2の端部を有する導電性中間部(104)と、
前記入力部(102)と前記中間部(104)との間に配置された第1のDC絶縁バリア(127)と、
前記中間部(104)と前記出力部(106)との間に配置された第2のDC絶縁バリア(127)と、を備え
前記入力部(102)、前記中間部(104)、及び前記出力部(106)は共に導波路空洞を囲み、
前記結合回路の前記出力は、信号導体と接地導体を含み、
前記第1のDC絶縁バリア(127)及び前記第2のDC絶縁バリア(127)は、前記結合回路からの前記出力の前記接地導体と前記導波路アイソレータの前記導電性入力部(102)との間に一対の直列接続容量性構造をもたらし、
前記一対の直列接続容量性構造は、前記第1および前記第2のDC絶縁バリアを越えるRF EMエネルギーの結合と前記導波路アイソレータからのマイクロ波EMエネルギーの漏出を抑制するように配置される、
前記アイソレータ・ダイプレクサ複合型デバイス(100)。
【請求項2】
前記入力部(102)、前記中間部(104)及び前記出力部(106)が、長手方向に沿って順に配置され、
前記中間部(104)は、前記第1のDC絶縁バリアにおいて前記長手方向の前記入力部(102)と重なり、
前記中間部(104)は、前記第2のDC絶縁バリアにおいて前記長手方向の前記出力部(106)と重なる、
請求項1に記載のアイソレータ・ダイプレクサ複合型デバイス(100)
【請求項3】
共通信号経路に接続された前記出力には、前記導波路アイソレータの前記出力部(106)に取り付けられた出力プローブが含まれ、
前記出力プローブは、前記導波路アイソレータに延びて前記導波路から前記マイクロ波EMエネルギーを結合する第1結合導体を有し、
前記第2の入力は、前記導波路アイソレータの前記入力部(102)に取り付けられた入力プローブを含み、
前記入力プローブは、前記マイクロ波EMエネルギーを前記空洞に結合するために前記導波路アイソレータ内に延びる第2の結合導体を有し、
前記第1の結合導体及び前記第2の結合導体は、前記長手方向に直交する方向に延びる、
請求項2に記載のアイソレータ・ダイプレクサ複合型デバイス(100)
【請求項4】
前記第1の結合導体は、第1の方向から前記導波路空洞内に延びており、前記第2の結合導体は前記第1の方向とは反対の第2の方向から前記導波路空洞内に延びている、請求項3に記載のアイソレータ・ダイプレクサ複合型デバイス(100)
【請求項5】
前記第1の入力は、前記導波路アイソレータに取り付けられたRFコネクタ(132)を含み、
前記RFコネクタは、前記導波路空洞内に延びて前記出力プローブの前記結合導体(140)に電気的に接触する信号導体を有し、
前記信号導体は、前記長手方向に延び、
前記信号導体は、前記信号導体の電位と前記導波路アイソレータ内の前記マイクロ波EMエネルギーの電位と実質的に合わせる長さによって前記導波路空洞内に延びるように配置される、
請求項3または4に記載のアイソレータ・ダイプレクサ複合型デバイス(100)
【請求項6】
前記RFコネクタが、前記出力部(106)に接続され、前記RFコネクタの前記信号導体を介して前記マイクロ波EMエネルギーが前記導波路アイソレータから漏出するのを阻止するように構成された同軸フィルタを備える、請求項5に記載のアイソレータ・ダイプレクサ複合型デバイス(100)
【請求項7】
前記同軸フィルタが2つのセクションのリエントラント型同軸フィルタを含む、請求項5に記載のアイソレータ・ダイプレクサ複合型デバイス(100)
【請求項8】
前記導波路アイソレータが、前記長手方向に沿って前記導波路空洞に調整可能に挿入可能な複数の同調スタブを備える、請求項2~7のいずれか一項に記載のアイソレータ・ダイプレクサ複合型デバイス(100)
【請求項9】
前記複数の調整スタブが、前記入力部(102)の長手方向の端面を通して挿入可能な第1の調整スタブと、前記出力部(106)の長手方向の端面を通して挿入可能な第2の調整スタブとを含む、請求項8に記載のアイソレータ・ダイプレクサ複合型デバイス(100)
【請求項10】
前記第1のDC絶縁バリアにおいて前記入力部(102)と前記中間部(104)との間に配置された絶縁層を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載のアイソレータ・ダイプレクサ複合型デバイス(100)
【請求項11】
前記第2のDC絶縁バリアにおいて前記出力部(106)と前記中間部(104)との間に配置された絶縁層を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載のアイソレータ・ダイプレクサ複合型デバイス(100)
【請求項12】
前記導波路空洞が円筒形である、請求項1~11のいずれか1項に記載のアイソレータ・ダイプレクサ複合型デバイス(100)
【請求項13】
生体組織の切除のための電気外科装置であって、
第1の周波数を有するRF電磁(EM)放射を生成する無線周波数(RF)信号発生器と、
前記第1の周波数よりも高い第2の周波数を有するマイクロ波EM放射を生成するマイクロ波信号発生器と、
前記RF EM放射及び前記マイクロ波EM放射をその遠位端から別々にまたは同時に送出するように構成されたプローブと、
前記RF EM放射と前記マイクロ波EM放射を前記プローブに伝送するための給電構造であって、前記プローブを前記RF信号発生器に接続するRFチャネルと、前記プローブを前記マイクロ波信号発生器に接続するマイクロ波チャネルとを備える前記給電構造と、
を備え、
前記RFチャネルと前記マイクロ波チャネルは、それぞれ前記RF信号発生器と前記マイクロ波信号発生器から物理的に分離した信号経路を備え、
前記給電構造は、請求項1から12のいずれか1項に記載のアイソレータ・ダイプレクサデバイス(100)を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波エネルギーを使用して生体組織を治療する電気外科装置に関する。特に、本発明は、組織を切徐するための無線周波数(RF)エネルギーを生成できる外科用装置に関する。これは、止血のためにマイクロ波周波数エネルギーも送出する外科用装置の一部として使用することができる(すなわち、血液凝固を促進することにより、壊れた血管を密閉する)。
【背景技術】
【0002】
外科的切除は、ヒトまたは動物の体内から臓器の一部を除去する手段である。そのような臓器は高度に血管性のことがある。組織が切徐(分割または切断)されるとき、細動脈と呼ばれる小さな血管が損傷または破裂する。最初の出血の後に、凝固カスケードが続き、血液が血餅に変化して、出血した箇所を塞ぐことを試みる。手術中に患者が失う血液を極力少なくすることが望ましいため、出血のない切徐をもたらすことを試みて、様々なデバイスが開発されてきた。また、内視鏡での処置の場合、血液の流れが術者の視界を覆う可能性があり、そうなると処置を終了させて、代わりに別の方法、例えば開腹手術を使用する必要性が生じてくる可能性もあるため、出血が発生したり、極力早くまたは適切な方法で対処がなされなかったりすることは、望ましいことではない。
【0003】
電気外科発生器は、開腹手術及び腹腔鏡の処置で使用するために、病院の手術室全体に普及しており、内視鏡検査室にも徐々に存在するようになってきている。内視鏡での処置では通常、電気外科用付属品は内視鏡内部の腔部を経て挿入される。腹腔鏡手術の同等のアクセスチャネルについて考えてみると、このような腔部は、相対的にボアが狭くて全長が長い。肥満患者の場合、外科用付属品の長さはハンドルからRFチップまで全長300mmであるが、腹腔鏡の場合、同等の距離は2500mmを超える場合がある。
【0004】
鋭い刃の代わりに無線周波数(RF)エネルギーを使用して生体組織を切徐することが知られている。RFエネルギーを使用して切徐する方法は、電流が組織マトリックスを通るときに(細胞のイオン成分と細胞間電解質により促される)、組織を横切る電子の流れに対するインピーダンスが熱を発生させるという原理を使用して作動する。RF電圧が組織マトリックスに印加されると、組織の水分を蒸発させるのに十分な熱が細胞内で生成される。この乾燥作用を増強させる結果として、特に、組織を通る電流経路全体の中で最も高い電流密度を有する器具のRF放射領域(本明細書ではRFブレードと呼ぶ)に隣接していると、RFブレードの切徐ポールに隣接する組織は、ブレードとの直接的な接触を失う。そのとき、印加された電圧が、結果としてイオン化するこの空隙全体にほぼ完全に現れ、組織と比較して非常に高い体積抵抗率を備えるプラズマを形成する。この分化は、RFブレードの切徐ポールと組織の間の電気回路を完成させたプラズマへ印加されたエネルギーを集中させるため、重要である。十分遅くプラズマに入るいずれの揮発性物質も気化し、そのため、プラズマが組織を切り裂く知覚がある。
【0005】
GB 2 486 343は、RF及びマイクロ波エネルギーの両方を送出して生体組織を治療する電気外科装置用の制御システムを開示している。プローブに送出されるRFエネルギーとマイクロ波エネルギー両方のエネルギー送出プロファイルが、プローブに伝送されるRFエネルギーのサンプリングされた電圧と電流の情報、及びプローブとの間で伝送をやりとりされるマイクロ波エネルギーの順方向及び反射の電力情報のサンプリングに基づいて設定されている。
【0006】
GB 2 522 533は、生体組織を治療するための無線周波数(RF)エネルギー及びマイクロ波エネルギーを生成するように構成された電気外科発生器用の分離回路を開示している。絶縁回路は、マイクロ波チャネルと信号結合器の間の接合部に調整可能な導波路アイソレータを備え、信号結合器の接地導体と導波路アイソレータの導電入力部との間に容量性構造を含めることができ、RFエネルギーの結合及びマイクロ波エネルギーの漏出を抑制する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
最も一般的には、本発明は、別個の供給源から得られた無線周波数(RF)電磁(EM)エネルギー及びマイクロ波EMエネルギーを共通信号経路を介してプローブに供給するためのアイソレータ・ダイプレクサ複合型デバイスを提供する。本発明は、高耐電圧(例えば10kV超)を提供しながら、マイクロ波チャネルとRFチャネルを互いに分離するために、必要なすべてのコンポーネントを単一ユニットに結合する。
【0008】
本発明は、GB 2 522 533に開示された構造を改善したものであり、分離バリアを越える容量結合の低減を補助する導波路アイソレータと一体に形成された複数の直列接続の容量性構造に、必要な分離を提供することによる。
【0009】
本発明によれば、アイソレータ・ダイプレクサ複合型デバイスであって、第1周波数を有する無線周波(RF)電磁(EM)放射をRFチャネルから受信するように接続可能な第1の入力、マイクロ波チャネルからの第1周波数よりも高い第2周波数を有するマイクロ波EM放射を受信するように接続可能な第2の入力、及びRF EM放射とマイクロ波EM放射を共通信号経路に伝送するための第1及び第2の入力と通信する出力を有する結合回路、及びマイクロ波チャネルをRF EM放射から分離するために接続された導波路アイソレータであって、導電性入力部、導電性出力部、入力部と嵌合する第1の端部、及び出力部と嵌合する第2の端部を有する導電性中間部、入力部と中間部の間に配置された第1のDC絶縁バリア、及び中間部と出力部の間に配置された第2のDC絶縁バリアを含む導波路アイソレータを含み、入力部、中間部、及び出力部は共に導波路空洞を囲み、結合回路からの出力は、信号導体と接地導体を含み、第1のDC絶縁バリア及び第2のDC絶縁バリアは、結合回路からの出力の接地導体と導波路アイソレータの導電性入力部との間に一対の直列接続容量性構造をもたらし、容量性構造はRF EMエネルギーの結合とマイクロ波EMエネルギーの漏出を抑制するように配置される、アイソレータ・ダイプレクサ複合型デバイスが提供される。
【0010】
導波路アイソレータ自体の構造内に直列に接続された複数の(好ましくは一対の)容量性要素を設けることにより、出力へのマイクロ波の伝送を妨げたり、許容できないレベルのマイクロ波放射または漏出を許容したりすることなく、全体の静電容量を減らすことができる。
【0011】
入力部、中間部及び出力部が、長手方向に沿って順に配置でき、中間部は、入力部と長手方向において第1のDC分離バリアで重なり、中間部は、第2のDC分離バリアで長手方向において出力部と重なり合う。これらの重なり合う領域は、2つの容量性セクションを備える。中間部は、2つの容量性セクションが、中間部のマイクロ波周波数で半ガイド波長の倍数またはその周辺にて離間して、セクション間の接合部の直径の変化によるマイクロ波エネルギーの反射がキャンセルされるのを確実にするように配置されている。中間部と入力部と出力部との間の長手方向の重なりの範囲は、各々一対のスペーサ要素によって制限されてもよい。これは、中間部と入力部の間に取り付けられた第1のスペーサ要素と、中間部と出力部の間に取り付けられた第2のスペーサ要素とすることができる。スペーサは、入力部及び出力部に形成された凹部内に取り付けられて、中間部の向かい合った端部に当接するようにしてもよい。スペーサ要素は、Delrin(登録商標)またはポリ塩化ビニル(PVC)などの絶縁プラスチックから形成されてもよい。導波路が円筒形である場合、スペーサ要素はそれぞれ、導波路アイソレータの入力部または出力部の一方の遠位端上に取り付けられた環状スリーブを備えてもよい。スリーブの外面は、入力部と出力部の外面と同一平面上にあってよい。
【0012】
内側部及び外側部と中間部のそれぞれの部分との間の重なりの長手方向の長さは、マイクロ波周波数で奇数の四分の一波長周囲(通常は四分の一波長)であることが好ましい。
【0013】
絶縁層は、各重複領域、すなわち、第1のDC分離バリアの入力部と中間部との間、及び第2のDC分離バリアの出力部と中間部との間に配置されてもよい。共通の絶縁層が提供されてもよい。すなわち、1つの絶縁層が、例えば中間部の下またはそれを通って重なり合う領域の間に延びてもよい。
【0014】
絶縁層は、マイクロ波の漏出を最小限にするために可能な限り薄くなるように選択される厚さ(例えば、導波路が円筒形である場合の半径方向の厚さ)を有し得る。一対の容量性構造を設けることにより、静電容量を不要なレベルに増加させることなく、この層を薄くすることができる。
【0015】
共通信号経路に接続された出力は、導波路アイソレータの出力部に取り付けられた出力プローブを含む場合がある。出力プローブは、そこからマイクロ波EMエネルギーを結合するために導波路アイソレータ内に延びる第1の結合導体を有してもよい。同様に、第2の入力は、導波路アイソレータの入力部に取り付けられた入力プローブを含んでもよい。入力プローブは、マイクロ波EMエネルギーを空洞に結合するために導波路アイソレータ内に延びる第2の結合導体を備えていてもよい。第1の結合導体及び第2の結合導体は、長手方向に直交する方向に延びていてもよい。一例では、第1の結合導体及び第2の結合導体は、反対方向から導波路空洞内に延びることができる。
【0016】
第1の入力は、導波路アイソレータに取り付けられたRFコネクタを含み得る。RFコネクタは、出力プローブの結合導体に電気的に接触するために導波路空洞内に延びる信号導体を有してもよい。信号導体は、長手方向に延びていてもよく、導波路アイソレータ内のマイクロ波EMエネルギーの等電位と実質的に位置合わせするように配置されていてもよい。このように信号導体を位置合わせすることは、RFコネクタに漏れる可能性のあるマイクロ波EMエネルギーの量が最小限に抑えられることを意味する。
【0017】
しかし、漏出に対するさらなる障壁として、RFコネクタは、出力部に接続され、RFコネクタの信号導体を介してマイクロ波EMエネルギーが導波路アイソレータから漏れるのを抑制するように構成された同軸フィルタを備えてもよい。同軸フィルタは、2つのセクションのリエントラント型同軸フィルタを備えてもよい。
【0018】
導波路アイソレータは、調整可能なインピーダンスを備えてもよい。例えば、それは、長手方向に沿って導波路空洞に調整可能に挿入可能な複数の調整スタブを備えてもよい。複数の調整スタブは、入力部の端面を通して挿入可能な第1の調整スタブと、出力部の端面を通して挿入可能な第2の調整スタブとを備えてもよい。導波路空洞が円筒形の場合、調整スタブは円筒の軸にあることがある。
【0019】
別の態様では、本発明は、生体組織の切除のための電気外科装置であって、第1の周波数を有するRF電磁(EM)放射を生成するための無線周波数(RF)信号発生器;第1の周波数よりも高い第2の周波数を有するマイクロ波EM放射を生成するためのマイクロ波信号発生器;RF EM放射及びマイクロ波EM放射をその遠位端から別々にまたは同時に送出するように配置されたプローブ;及びRF EM放射とマイクロ波EM放射をプローブに伝送するための給電構造であって、プローブをRF信号発生器に接続するためのRFチャネルと、プローブをマイクロ波信号発生器に接続するためのマイクロ波チャネルとを備える給電構造を備え、RFチャネルとマイクロ波チャネルは、それぞれRF信号発生器とマイクロ波信号発生器から物理的に分離した信号経路を備え、給電構造は、アイソレータ・ダイプレクサデバイスであって、RFチャネルからRF EM放射を受信するように接続された第1の入力、マイクロ波チャネルからマイクロ波EM放射を受信するように接続された第2の入力、及びRF EM放射及びマイクロ波EM放射を共通信号経路に沿ってプローブへ伝送するための第1及び第2の入力と通信する出力を有する結合回路、及びマイクロ波チャネルをRF EM放射から分離するために接続された導波路アイソレータであって、導電性入力部、導電性出力部、入力部と嵌合する第1の端部、及び出力部と嵌合する第2の端部を有する導電性中間部、入力部と中間部の間に配置された第1のDC絶縁バリア、及び中間部と出力部の間に配置された第2のDC絶縁バリアを含む導波路アイソレータを備えるアイソレータ・ダイプレクサデバイスを含み、入力部、中間部、及び出力部は共に導波路空洞を囲み、結合回路からの出力は、信号導体と接地導体を含み、第1のDC絶縁バリア及び第2のDC絶縁バリアは、結合回路からの出力の接地導体と、導波路アイソレータの導電性入力部との間に、一対の直列接続の容量性構造を備え、容量性構造はRF EMエネルギーの結合及びマイクロ波EMエネルギーの漏出を抑制するように配置される、電気外科装置を提供することができる。
【0020】
本発明のこの態様は、図1の電気外科装置400を参照して以下に説明する構成要素のいずれかまたはすべて(個別または任意の組み合わせ)と組み合わせることができる。例えば、RFチャネル及びマイクロ波チャネルは、以下で各々説明するRFチャネル及びマイクロ波チャネルのいずれかまたはすべての構成要素を含み得る。マイクロ波チャネルは、マイクロ波チャネルの反射信号を順方向信号から分離するためのサーキュレータを含んでもよい。別の実施形態では、同じ目的で方向性結合器を使用してもよい。実際には、サーキュレータまたは方向性結合器は不完全な分離を示し、ひいては検出器で実際に受信される反射信号に影響を及ぼす。アイソレータ・ダイプレクサデバイスは、この不完全な分離を補償するとともに、導波路アイソレータのリターンロスと伝送を最適化できる調整可能なインピーダンスを備えてもよい。
【0021】
装置は、組織の切徐と凝固を同時にするためのエネルギーを供給するように構成することができ(例えば、ミックスモードまたはブレンドモード)、独立して操作することができ、それによりRF及びマイクロ波エネルギーが手作業での使用者の制御下で(例えば、フットスイッチペダルの操作に基づいて)、またはRF及び/またはマイクロ波チャネルからの測定された位相及び/または大きさの情報に基づいて自動的に、プローブに送出される。このシステムを使用して、組織のアブレーションと切徐を行うことができる。マイクロ波とRFエネルギーが同時に供給される場合、それぞれの発生器に戻されるRFとマイクロ波エネルギーのいずれかまたは両方を高電力または低電力で使用して、エネルギー送出プロファイルを制御できる。この場合、エネルギー送出フォーマットがパルス化されているオフの時間中に測定を行うことが望ましい場合がある。
【0022】
プローブの遠位端は、第2導体から空間的に分離された第1導体を含む双極放出構造を備えてもよく、第1及び第2導体は、それぞれ伝導によって及びRF EM放射を伝送するアクティブ及びリターン電極として、またマイクロ波EMエネルギーの放射を促進するアンテナまたはトランスとして作動するよう配置される。したがって、システムは、RFエネルギーの局所的なリターン経路を提供するように構成できる。例えば、RFエネルギーは、伝導体を分離する組織を通して伝導することで通ることができ、または、プラズマが伝導体の近くで生成されて、局所リターン経路を提供することができる。RFでの組織の切徐は、第1導体と第2導体を分離する固定の誘電材料によって生成され得る。この場合誘電材料の厚さは薄く、つまり1mm未満であり、誘電率は高く、つまり空気の誘電率よりも大きくなる。
【0023】
本発明は、胃腸(GI)処置、例えば、腸のポリープを取り除くため、すなわち内視鏡的粘膜下切除に特に適している可能性がある。本発明はまた、正確な内視鏡的処置、すなわち正確な内視鏡的切除に役立ち、耳、鼻、及び喉の処置ならびに肝切除に使用され得る。
【0024】
本明細書で使用されている「導電性」という用語は、文脈がそうでないと指示しない限り、電気を伝導する性質を意味するために使用される。
【0025】
第1周波数は、10kHzから300MHzの範囲の安定した固定の周波数であってもよく、第2周波数は、300MHzから100GHzの範囲の安定した固定の周波数であってもよい。第1周波数は、エネルギーが神経刺激を引き起こすのを防ぐのに十分高く、エネルギーが組織のブランチングまたは不必要な熱のマージンまたは組織構造の損傷を引き起こすのを防ぐのに十分低くすべきである。第1周波数の好ましいスポット周波数には、100kHz、250kHz、400kHz、500kHz、1MHz、5MHzのいずれか1つ以上が含まれる。第2周波数の好ましいスポット周波数には、915mHz、2.45GHz、5.8GHz、14.5GHz、24GHzが含まれる。好ましくは、第2周波数は、第1周波数よりも少なくとも一桁(すなわち、少なくとも10倍)高い。
【0026】
本発明の実施形態は、添付の図面を参照しながら以下で詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明を使用することができる電気外科装置の全体的な概略システム図である。
図2】電気外科装置で使用できる分離回路の公知の例の概略図である。
図3】本発明の実施形態である複合型アイソレータ・ダイプレクサの導電性構成要素の概略的な切欠図である。
図4】本発明の実施形態である複合型アイソレータ・ダイプレクサにおける絶縁部品の概略的な切欠図である。
図5】本発明の実施形態である複合型アイソレータ・ダイプレクサ用のRFダイプレクサ構成の概略的な切欠図である。
図6】本発明の実施形態である複合型アイソレータ・ダイプレクサのシミュレーションモデルの切欠図である。
図7】本発明の実施形態である複合型アイソレータ・ダイプレクサのシミュレーションモデルを使用して得られた透過及び反射パラメータの予測を示すグラフである。
図8】本発明の実施形態である複合型アイソレータ・ダイプレクサのRFポートに取り付けられたマイクロ波フィルタのシミュレーションモデルの切欠図である。
図9図8のシミュレーションモデルを使用して得られたマイクロ波フィルタの透過及び反射パラメータの予測を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、電気外科装置400の概略図を示している。GB2486343号に開示されているようなものであり、これは本発明を理解するのに有用である。本装置は、RFチャネルとマイクロ波チャネルを備えている。RFチャネルは、生体組織の治療(例えば、切除または乾燥)に適した電力レベルでRF周波数電磁信号を生成及び制御するためのコンポーネントを含む。マイクロ波チャネルは、生体組織の治療(例えば、凝固またはアブレーション)に適した電力レベルでマイクロ波周波数電磁信号を生成及び制御するためのコンポーネントを含んでいる。
【0029】
マイクロ波チャネルは、マイクロ波周波数源402とそれに続く電力スプリッタ424(例えば、3dB電力スプリッタ)を有し、これは、供給源402からの信号を2つの分岐に分割する。電力スプリッタ424からの1つの分岐は、マイクロ波チャネルを形成し、それは制御信号V10を介してコントローラ406によって制御される可変減衰器404、及び制御信号V11を介してコントローラ406によって制御される信号変調器408を含む電力制御モジュールと、治療に適した電力レベルでプローブ420から送出するための順方向マイクロ波EM放射を生成するため駆動増幅器410及び電力増幅器412を含む増幅器モジュールを含む。増幅器モジュールの後、マイクロ波チャネルは、第1ポートと第2ポートの間の経路に沿って供給源からプローブにマイクロ波EMエネルギーを送出するように接続されたサーキュレータ416、サーキュレータ416の第1ポートの順方向結合器414、及びサーキュレータ416の第3ポートにある反射結合器418を含むマイクロ波信号結合モジュール(マイクロ波信号検出器の一部を形成)に続く。反射結合器を通った後、第3ポートからのマイクロ波EMエネルギーは電力ダンプ負荷422に吸収される。マイクロ波信号結合モジュールは、順方向結合信号または検出用の反射結合信号のいずれかをヘテロダイン受信機に接続するための制御信号V12を介して、コントローラ406によって操作されるスイッチ415も含む。
【0030】
パワースプリッタ424からの他の分岐は、測定チャネルを形成する。測定チャネルはマイクロ波チャネルのラインアップをバイパスし、したがって、プローブから低電力信号を送出するように配置されている。制御信号V13を介してコントローラ406によって制御される一次チャネル選択スイッチ426は、プローブに送出するためにマイクロ波チャネルまたは測定チャネルのいずれかから信号を選択するように動作可能である。高帯域通過フィルタ427は、一次チャネル選択スイッチ426とプローブ420との間に接続され、低周波RF信号からマイクロ波信号発生器を保護する。
【0031】
測定チャネルには、プローブから反射された電力の位相と大きさを検出するように配置されたコンポーネントが含まれる。それは、プローブの遠位端に存在する生体組織などの物質に関する情報を生成できる。測定チャネルは、第1ポートと第2ポートとの間の経路に沿って供給源402からプローブにマイクロ波EMエネルギーを送出するように接続されたサーキュレータ428を備える。プローブから返された反射信号は、サーキュレータ428の第3ポートに向けられる。サーキュレータ428は、正確な測定を容易にするために、順方向信号と反射信号の分離を実現するために使用される。ただし、サーキュレータはその第1ポートと第3ポートを完全には分離しないため、つまり順方向信号の一部が第3ポートに侵入して反射信号に干渉する場合があるため、キャリアキャンセル回路を使用して、(順方向結合器430からの)順方向信号の一部を(導入結合器432を介して)第3ポートから出てくる信号に導入し戻す。キャリアキャンセル回路は、第1ポートから第3ポートに入り込んでそれを相殺するいずれかの信号と導入部分の位相が180°ずれることを確実にする位相調整器434を含む。キャリアキャンセル回路は、信号減衰器436も含み、導入部分の大きさがいずれかの入り込む信号と同じであることを確実にする。
【0032】
順方向信号のいずれかのドリフトを補償するために、測定チャネルに順方向結合器438が設けられる。順方向結合器438の結合出力とサーキュレータ428の第3ポートからの反射信号はスイッチ440のそれぞれの入力端子に接続され、それは制御信号V14を介してコントローラ406によって動作し、結合順方向信号または検出用のヘテロダイン受信機への反射信号を接続する。
【0033】
スイッチ440の出力(すなわち、測定チャネルからの出力)及びスイッチ415の出力(すなわち、マイクロ波チャネルからの出力)は、二次チャネル選択スイッチ442のそれぞれの入力端子に接続され、それは制御信号V15を介して一次チャネル選択スイッチと連動してコントローラ406により動作可能で、測定チャネルがプローブにエネルギーを供給しているときに測定チャネルの出力がヘテロダイン受信機に接続され、またマイクロ波チャネルがプローブにエネルギーを供給しているときにマイクロ波チャネルの出力がヘテロダイン受信機に接続されることを確実にする。
【0034】
ヘテロダイン受信機は、二次チャネル選択スイッチ442による信号出力から位相と大きさの情報を抽出するために使用される。このシステムには単一のヘテロダイン受信機が示されているが、必要に応じて、信号がコントローラに入力される前に、供給源の周波数を2回ミキシングする2つのヘテロダイン受信機(2つの局所発振器とミキサを含む)を用いることができる。ヘテロダイン受信機は、局所発振器444と、二次チャネル選択スイッチ442による信号出力をミキシングするためのミキサ448とを含む。局所発振器信号の周波数は、ミキサ448からの出力がコントローラ406において受信するのに相応しい中間周波数にあるように選択される。局所発振器444及びコントローラ406を高周波数マイクロ波信号から保護するために、帯域通過フィルタ446、450が設けられている。
【0035】
コントローラ406は、ヘテロダイン受信機の出力を受信し、マイクロ波または測定チャネルの順方向及び/または反射信号の位相及び大きさを示す情報をそれから決定(例えば抽出)する。この情報を使用して、マイクロ波チャネルでの高出力マイクロ波EM放射またはRFチャネルでの高出力RF EM放射の送出を制御できる。上述のように、使用者は、ユーザインターフェース452を介してコントローラ406と対話することができる。
【0036】
図1に示されるRFチャネルは、制御信号V16を介してコントローラ406により制御されるゲートドライバ456に接続されたRF周波数源454を含む。ゲートドライバ456は、ハーフブリッジ構成であるRF増幅器458に動作信号を供給する。ハーフブリッジ構成のドレイン電圧は、可変DC電源460を介して制御可能である。出力トランス462は、生成されたRF信号を、プローブ420に送出するためのラインに転送する。ローパス、バンドパス、バンドストップまたはノッチフィルター464は、RF信号発生器を無線周波マイクロ波信号から保護するために、そのラインに接続されている。
【0037】
変流器466がRFチャネル上に接続されて、組織の負荷に送出される電流を測定する。分圧器468(出力トランスから取得することができる)を使用して、電圧を測定する。分圧器468及び変流器466からの出力信号(すなわち、電圧及び電流を示す電圧出力)は、それぞれのバッファ増幅器470、472及び電圧クランプツェナーダイオード474、476、478、480によって調整された後、コントローラ406に直接接続される(図1に信号B及びCとして表示)。
【0038】
また、位相情報を得るために、電圧及び電流信号(B及びC)は位相比較器482(例えばEXORゲート)に接続され、その出力電圧はRC回路484によって統合されて電圧出力(図1のAに示す)を生じ、それは電圧波形と電流波形の位相差に比例する。この電圧出力(信号A)は、コントローラ406に直接接続されている。
【0039】
マイクロ波/測定チャネル及びRFチャネルは、両方のタイプの信号をケーブルアセンブリ116に沿って別々にまたは同時にプローブ420に伝達する信号結合器114に接続され、そこから患者の生体組織に送出(例えば放射)される。
【0040】
導波路アイソレータ(図示せず)は、マイクロ波チャネルと信号結合器の間の接合部に設けられてもよい。導波路アイソレータは、3つの機能、つまり(i)非常に高いマイクロ波電力(例えば、10Wを超える電力)が通るのを可能にする、(ii)RF電力が通るのを阻害する、(iii)高い耐電圧(例えば10kV超)をかけるということを実行するように構成できる。容量性構造(DCブレークとしても知られている)も、導波路アイソレータに(例えば、内部に)または隣接して設けることができる。容量性構造の目的は、絶縁バリアを越える容量結合を低減することである。
【0041】
図2は、GB 2 522 533に開示されているような絶縁回路の概略図である。これはまた、本発明を理解するのに有用である。分離回路は、RF信号発生器218からのRF EM放射とマイクロ波信号発生器220からのプローブへのマイクロ波放射を伝送するための給電構造の一部を形成する。プローブ(図示せず)は、ハウジング226に設けられた出力ポート228に接続可能である。絶縁スリーブ229がハウジングの出力ポート228に設けられ、出力ポート228に接続される浮遊コンポーネントにハウジングの被接地ケーシングを繋げるべく電流が進むのを阻止する。
【0042】
給電構造は、RF EM放射を伝送するためのRF信号経路212、214を有するRFチャネルと、マイクロ波EM放射を伝送するためのマイクロ波信号経路210を有するマイクロ波チャネルとを含む。RF EM放射とマイクロ波放射の信号経路は、物理的に互いに分離されている。RF信号発生器は、変圧器216を介してRF信号経路212、214に接続されている。変圧器216の二次コイル(すなわち、装置のプローブ側)は浮遊しているため、患者とRF信号発生器218の間に直流経路はない。これは、RF信号経路212、214の信号導体212と接地導体214の両方が浮遊していることを意味する。
【0043】
絶縁回路は導波路アイソレータ600を含み、その絶縁ギャップが必要なレベルのDCの絶縁をもたらすように構成され、一方でギャップでのマイクロ波エネルギーの漏れを防ぐためにマイクロ波エネルギーの周波数で十分に低い容量性リアクタンスも有する。ギャップは、0.6mm以上、例えば0.75mmであってもよい。チューブの直径がRF周波数で各プローブと直列で非常に大きなインダクタンスを生成するため、RFエネルギーはアイソレータの両端間で結合できない。
【0044】
分離回路は、導波路アイソレータ600と統合された結合回路を備えている。RF信号を伝送する信号導体212と接地導体214は、同軸RFコネクタ602(RFフィード)に接続され、RF信号を導波路アイソレータ600に導入する。そこから出力ポート232からプローブに向けて伝送される。
【0045】
絶縁ギャップ603は、RF信号が入力ポート230に結合して戻るのを防ぐように配置される。導波路アイソレータ内に内側導電性ロッドを慎重に配置することにより、マイクロ波エネルギーがRFコネクタ602に結合するのを防ぐ。
【0046】
調整ユニットは、コンポーネントのラインアップのリターンロスを低減するために、導波路アイソレータ600に組み込まれている。調整ユニットは、空洞の本体に調整可能に挿入、例えばねじ込むことができる3つのスタブ231を含む。
【0047】
加えて、RFチャネルは、制御信号Cの制御下で動作可能な調整可能なリアクタンス217を有し、発生器で使用される異なる長さのケーブルから生じる静電容量の変化に対応(例えば補償)する。調整可能なリアクタンス217は、RFチャネルと分路または直列に接続されたスイッチ式または電子的に調整可能なコンデンサまたはインダクタの1つまたは複数を含むことができる。
【0048】
強化版複合型アイソレータ・ダイプレクサ
本発明は、図2を参照して上述した分離回路を改善する複合型アイソレータ・ダイプレクサを提供する。本発明の実施形態は、大きく異なる周波数、例えば5.8GHz及び400kHzでRF波形及びマイクロ波の波形を生成する電気外科発生器での使用に適した複合型アイソレータ・ダイプレクサを提供し、共通の供給ラインから受け取ったエネルギーを使用して電気外科器具が様々な形態の治療を施せるようにし得る。
【0049】
複合型アイソレータ・ダイプレクサの実施形態は、図3図5を参照して以下に説明される。次いで、シミュレーション(例えば、CSTシミュレーションソフトウェアを使用して)により得られたその性能の側面が、図6図9を参照して説明される。
【0050】
複合型アイソレータ・ダイプレクサは、損傷を引き起こす可能性のある高電圧RFがマイクロ波供給源に到達するのを防ぎ、マイクロ波電力がケーブルに沿って、放射するRF供給源に到達するのを防ぐよう動作する。いずれの場合も、漏れはまた発電電力の浪費につながり、それは回避する必要がある。
【0051】
複合型アイソレータ・ダイプレクサは、マイクロ波源をプローブに接続する内部導体と外部導体の両方にDCブレークがある導波路アイソレータを備える。DCブレークは、プローブへのマイクロ波の伝送を妨害したり、DCブレークを介したマイクロ波の放射を可能にしたりすることなく、高電圧RFがマイクロ波源に到達するのを防ぐように動作する。
【0052】
導波路アイソレータを単独で使用する場合、外部導体のDCブレークの静電容量が効率的な動作には大きすぎる場合がある。この問題は、マイクロ波の伝送を妨げたり放射を可能にしたりすることなく、直列の静電容量を外部導体に効果的に接続するために、導波路アイソレータに加えて、または導波路アイソレータ内に統合される同軸アイソレータを設けることで対処される。
【0053】
図3は、本発明の実施形態である複合型アイソレータ・ダイプレクサ100の概略的な切欠図である。複合型アイソレータ・ダイプレクサは、縦軸に沿う円筒導波路アイソレータを含む。
【0054】
図3には、アイソレータの導電性要素のみが描かれている。
複合型アイソレータ・ダイプレクサ100の円筒導波路アイソレータは、カラー104によって分離された一対のエンドキャップ102、106から形成される。
【0055】
導波路アイソレータは、入力ポート112でマイクロ波フィードを受け取るように配置された入力エンドキャップ102によって形成された入力端を有する。入力ポート112は、入力エンドキャップ102の周側壁に配置される。入力ポート112は、同軸ケーブルを受け入れるように適合されており、接続される同軸ケーブル(図示せず)の内部導体が、導波路アイソレータによって画定された円筒状空間に放射状に延びることができるように、エンドキャップの周壁を通る通路を備えている。円筒状の空間は、絶縁誘電材料(例えば、空気)で満たされていてもよい。
【0056】
導波路アイソレータは、出力ポート116を介して出力ラインに接続可能な出力エンドキャップ106によって形成される出力端を有する。出力ポート116は、出力エンドキャップ106の円周側壁に配置される。出力ポート116は、同軸ケーブルを受け入れるように適合され、エンドキャップの円周壁を通る通路を備え、接続された同軸ケーブル(図示せず)の内部導体が導波路アイソレータによって画定された円筒空間内に半径方向に延びることを可能にする。以下により詳細に説明するように、内部導体は、出力ポート116に接続された同軸ケーブルにRF信号を転送するためのRFダイプレクサ構造の一部を形成してもよい。したがって、円筒形の導波路空洞に突き出た同軸ケーブルの内部導体は、空洞内の誘電材料によって互いに絶縁される。
【0057】
この例では、入力ポート112と出力ポート116は、導波路によって形成される円筒の反対側にある。これは、他のコンポーネントへの接続に適合させるのに役立ち得るが、必須ではない。例えば、以下で説明するシミュレーションでは、入力ポートと出力ポートは円筒の同じ側にある。
【0058】
入力エンドキャップ102及び出力エンドキャップ106は、1つの閉じた軸端部と1つの開いた軸端部とを有する円筒形要素である。エンドキャップ102、106は、それらの軸が整列され、それらの開いた軸方向端部が互いに面するように配置される。入力エンドキャップ102は、入力ポート112に接続された同軸ケーブルの外部導体と電気通信するように構成される。出力エンドキャップ106は、出力ポート116に接続された同軸ケーブルの外部導体と電気通信するように構成される。エンドキャップ102、106は、円筒の軸に沿って互いに物理的に分離されている。分離は、導電性カラー104と、入力エンドキャップ102及び出力エンドキャップ106の開口端に形成された対応する円周凹部108、110にそれぞれ着座する一対の絶縁スペーサ126、128(図4参照)によって維持される。
【0059】
カラー104は、円筒形導波路の空洞を完成させるために、エンドキャップ102、106の開いた軸方向端部間の軸方向ギャップに重なる。エンドキャップを互いに絶縁するため(したがって、接続されている同軸ケーブルの外部導体を分離するため)、絶縁層127(図4参照)が両方のエンドキャップの遠位部の外面の周りに配置され、エンドキャップ102、106の外面と、それらが重なり合う領域のカラー104の内面との間の円周方向のギャップに誘電性(電気的絶縁性)バリアを設けるようにする。
【0060】
これが配置されると、導波路アイソレータは、円筒の軸に沿って直列に配置された2つの絶縁部分を含む。第1の絶縁部分は、入力エンドキャップ102とカラー104との間の重なりで生じる。第2の絶縁部分は、出力エンドキャップ106とカラー104との間の重なりで生じる。この構造により、2つのエンドキャップ間の静電容量が低減でき、構造の静電容量が、絶縁部が1つだけの場合よりも小さくなるようにする。空洞の端部にある鋭い隅が、波が通るのに対し高いインピーダンスを生成するため、ガイドから結合されたほとんどの電力が反射されるため、静電容量の減少はマイクロ波漏出の意味ある増加に至らない。
【0061】
絶縁層127は、任意の適切な材料によって設けられてもよい。一例では、絶縁層127は、複数(例えば、2、3、またはそれ以上)の巻きのKapton(登録商標)フィルムを含むことができる。フィルム材料は、3.4の誘電率及び0.002の散逸率を有し得る。フィルムは、0.005mmの厚さを有してもよく、絶縁層に適切な厚さを設けるために複数の巻きを使用してもよい。他の例では、絶縁層は、例えばエンドキャップ102、106とカラー104の間に着座するワッシャーに似ている管状要素であってよい。2つの絶縁ギャップが直列であるため、どちらも必要な電圧に耐えることができるため、絶縁体に1つのピンホールが存在しても断熱の故障が生じない。このため、絶縁体は、複数の層を備えたコイル状(巻かれた)誘電体シートか、1つの層を備えたチューブのいずれかであり得る。
【0062】
絶縁スペーサ126、128はそれぞれ、剛性の絶縁リング、例えば、Delrin(登録商標)プラスチックまたはポリ塩化ビニル(PVC)製の絶縁リングを含むことができる。スペーサは、オーバーラップ領域の正確な長さを画定するために選択された軸方向の長さを備えている場合がある(それぞれ個別のチョークと見なすことができる)。
【0063】
上述のように、絶縁層127は、エンドキャップ102、106の外面とカラー104の内面とが重なる領域にある、これらの間の周方向のギャップに配置されている。ギャップの平均直径は41.05mm、半径方向の厚さは0.15mmであってよい。絶縁層127の誘電材料で部分的または完全に満たされ得る各ギャップの静電容量は、約110pFであり得る。これは、直列の2つのギャップが約55pFの静電容量を提供することを意味する。
【0064】
エンドキャップ102、106の各々は、その閉じた軸方向端部に形成された貫通孔を有する。貫通孔は、円筒の軸に関して互いに対称的に配置され得る。この例では、貫通孔は円筒の軸にある。したがって、入力エンドキャップ102は、その閉じた軸方向端部の中心に形成された貫通孔114を有する。出力エンドキャップ106は、その閉じた軸方向端部の中心に形成された貫通孔118を有する。貫通孔114、118は、導電性のピンまたはネジ要素を受け入れるように配置され、それらは、調整することを可能にする、つまり複合型アイソレータ・ダイプレクサの挿入の損失とリターンロスを最適化することを可能にするように、選択的かつ制御可能に空洞に挿入可能である。
【0065】
図3に示す例では、出力エンドキャップには3つの追加の穴120、122、124がある。これらの穴はダイプレクサ機能に関連している。これは図5にてさらに詳細に示されている。
【0066】
図5は、出力エンドキャップ106の切欠図を示す。同軸ケーブル142は、適切なコネクタ138を使用して出力ポート116に接続される。同軸ケーブル142の内部導体140は、空洞内に突出する。内部導体140は、同軸ケーブルから空洞内に延びる同軸ケーブルの長さの一部について、誘電材料141によって依然として囲まれている。
【0067】
デバイスのダイプレクサ機能は、出力エンドキャップ106の閉じた端面の穴120に垂直にRF接続要素132を導入することによってもたらされる。穴120は、出力同軸ケーブルの内部導体140と一直線に並んでおり、そのため、その長さの途中で内部導体140と接触する。中心導体に沿って正しい距離で接触するようにRF接続要素132が挿入される場合、マイクロ波電力はRF接続要素132に結合されない。この接続はマイクロ波コネクタとの整合にわずかに影響するが、マイクロ波エネルギーに対する良好な整合は、内部導体140の長さを変更することで回復できる。
【0068】
RF接続ライン132は、コネクタ本体130によって出力エンドキャップ106に接続され、それは出力エンドキャップ106の閉口した端部面に形成された一対の穴122、124にそれぞれ収容される一対のネジ134、136によって出力エンドキャップ106に固定される。コネクタ本体130は、マイクロ波エネルギーを遮断するためのマイクロ波フィルタ131を備える。この例では、マイクロ波フィルタ131は、出力エンドキャップの端部に接続された円筒形同軸フィルタである。円筒形同軸フィルタは、2つのセクションのリエントラント型同軸フィルタ、例えば、5.8GHz付近の周波数を強く除去するように設計されてもよい。マイクロ波フィルタ131は、出力エンドキャップ106の内側端壁からそのような距離に配置され、そのためマイクロ波周波数でRF接続要素132が端壁に対して短絡しているように見え、マイクロ波エネルギーがRF接続要素132を介して出るのを防ぐようにしている。
【0069】
RF信号(例えば、図2に示される入力ライン212、214から)は、RF接続要素132の遠位端133とフィルタの導電性本体130との間に加えられ、フィルタは次に、出力エンドキャップ106の外面に電気的に接続される。必要に応じて、RF信号の接続は標準の同軸コネクタで行うことができる。
【0070】
RF接続要素132は、出力同軸ケーブル(マイクロ波コネクタの形態を取り得る)の内部導体140に接触するように延びる。RF接続要素132は、内部導体140にはんだ付けされてもよい。
【0071】
RF接続要素132は、例えばPTFEなどで作られている絶縁チューブ146(図8参照)によって、出力部及び他の導電性フィルタの部分から絶縁されている。RF接続要素132は、剛性のピンの構造であってもよい。一例では、RF接続要素132及び絶縁チューブ146は、短い長さの半剛性同軸ケーブルから外側の銅ジャケットを剥ぎ取ることによって構築してもよい。
【0072】
図6は、本発明の実施形態である複合型アイソレータ・ダイプレクサのシミュレーションモデルの切欠図である。すでに説明した特徴には同じ参照番号が付けられており、再度説明することはしない。明確にするために、3つのコネクタピン132、140、154及び2つの調整要素150、152を除いて、図6は、複合型アイソレータ・ダイプレクサの誘電性(すなわち電気絶縁)コンポーネントのみを示している。これらの誘電性コンポーネントは、導波路空洞内部の空気148と、マイクロ波フィルタ内部の空気144を含む。それらはまた、上述の誘電体スペーサ126、128及び絶縁層127を含む。シミュレーションは、図3及び図5を参照して上で論じた導電性コンポーネントも存在していたことに基づいて実行した。
【0073】
デバイスには3つのポートがある。ポート1は、RF/マイクロ波を結合する出力ポートである。ポート2はRF接続ライン132で、400kHzのRFエネルギーを導入する。ポート3はマイクロ波入口ポートで、マイクロ波エネルギーを導入する(例えば、好ましい例では5.8GHzで)。シミュレーションは、円筒の同じ側にある両方のマイクロ波ポート(ポート1及びポート3)で実行された。
【0074】
図7は、4.8GHzと6.8GHzの間で図6の複合型アイソレータ・ダイプレクサのシミュレーションモデルを使用して得られた透過及び反射パラメータの予測を示すグラフである。グラフに挿入した表は、5.8GHzでの各パラメータの値を示している。
【0075】
ライン180、182は、入力ポートと出力ポートからRFポート(S21、S23)への結合が5.78GHz~5.82GHzの範囲で-60dBより小さいことを示している。
【0076】
ライン186は、入力ポート(S33)での整合が5.8GHzで-20dBに近いことを示している。
【0077】
ライン188は、出力ポート(S11)での整合も5.8GHzで-20dBに近いことを示している。
【0078】
ライン184は、入力ポートと出力ポート(S31、S13)間の損失が5.8GHzで-0.19dBであることを示している。
【0079】
図8は、RFポートに取り付けられたマイクロ波フィルタ131のシミュレーションモデルの切欠図である。フィルタは円筒形である。RF接続要素132は、円筒の軸に沿って延びる。RF接続要素132は、例えばPTFE製の絶縁スリーブ146によって囲まれている。フィルタ131は、マイクロ波エネルギーが通るのを抑制または防止するためのチョークとして機能する、一対の軸方向に分離された、空気で満たされた空洞144を画定する導電性本体130(図8では明瞭性のため省いたが図3に示している)を含む。5.8GHzでは、空気で満たされた各空洞は、同軸伝送ラインからその閉じた端部まで、4分の1の波長である。4分の1波長の空洞は、5.8GHz信号が通るのを妨げる同軸伝送線の外部導体に開回路を備える。空洞の間隔は、それぞれが他方の効果を強化するように配置される。400kHzでは、フィルタに効果がないため、RF信号の入力は妨げられない。
【0080】
図9は、3GHzから8.5GHzまでの、図8のシミュレーションモデルを使用して得られたマイクロ波フィルタの透過及び反射パラメータの予測を示すグラフである。
【0081】
ライン160はフィルタを通る透過を示し(S12)、一方ライン162はフィルタからの反射を示す(S22)。S21とS11のラインは、S12とS22のラインと同じである。
【0082】
5.8GHzでは、予測される挿入の損失は非常に高く(-49.5dB)、反射の損失は非常に低くなる(-0.0102dB)。この能力は、両端に50Ωの負荷がある場合である。実際には、両端でより高いインピーダンス負荷が発生する可能性があるため、実際の能力はシミュレーションとわずかに異なる。例えば、ディップの形状と周波数は、両端の正確な位置に応じて変動することが可能であり、余分なインピーダンスの不整合のために挿入の損失が高くなることがある。
【0083】
次の説明で、上記で説明した複合型アイソレータ・ダイプレクサの実際の例で実行した測定結果をまとめている。
【0084】
図6で説明したように、ポート3(入力)とポート1(出力)の間で、5.6GHz~6GHzの周波数の範囲で測定が行われた。対象の測定値は、反射(S33)、透過(S13)、及び5.8GHz(マイクロ波エネルギーの好適の周波数)での損失であった。
【0085】
マイクロ波コネクタを使用して、同軸ケーブルを入力ポートと出力ポートに接続した。この例では、コネクタはAmphenol P/N 172224のバージョンのコンポーネントに適合している。これらのコネクタは、誘電体を導波路の空洞に1mm突出するように切断し、突出ピン(上記の内部導体)をコネクタフランジから20mm延びるように切断することで適合した。好適のピンの長さは17.5mmの範囲であると予想され、そのためこの手法は過度に長いピンをもたらす。これは、必要に応じてトリミングすることができる。
【0086】
これをセットアップし、各エンドキャップのネジ調整器を調整することにより、-34dBのリターンロスと-0.5dBの挿入の損失を取得することができた。
【0087】
導波路の両側にマイクロ波ポートを備えたデバイスで、実験を繰り返した。このシナリオでは、動作が大幅に異なることが判明した。これは、導波路において伝搬できる基本的なTE01モードが、円筒の同じ側または両側にあるコネクタ間での結合に違いを示さないようにすべきであるため、カットオフされた高次のモードが結合に重要な役割を果たしていることを意味する。それにもかかわらず、本発明の構成により、良好な性能を成し遂げるべく複合型アイソレータ・ダイプレクサを調整することが依然として可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9