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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-24
(45)【発行日】2023-04-03
(54)【発明の名称】チュウゴクオオサンショウウオ軟骨製剤
(51)【国際特許分類】
   C08B 37/08 20060101AFI20230327BHJP
   C07K 7/06 20060101ALI20230327BHJP
   C07K 7/08 20060101ALI20230327BHJP
   C07K 1/12 20060101ALN20230327BHJP
   A61K 35/65 20150101ALN20230327BHJP
   A61K 38/08 20190101ALN20230327BHJP
   A61K 38/10 20060101ALN20230327BHJP
   A61K 31/726 20060101ALN20230327BHJP
   A61P 19/06 20060101ALN20230327BHJP
【FI】
C08B37/08 Z
C07K7/06 ZNA
C07K7/08
C07K1/12
A61K35/65
A61K38/08
A61K38/10
A61K31/726
A61P19/06
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020508999
(86)(22)【出願日】2018-07-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-05
(86)【国際出願番号】 CN2018094613
(87)【国際公開番号】W WO2019033869
(87)【国際公開日】2019-02-21
【審査請求日】2020-10-23
(31)【優先権主張番号】201710696668.8
(32)【優先日】2017-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】513322718
【氏名又は名称】清華大学
【氏名又は名称原語表記】Tsinghua University
【住所又は居所原語表記】No.1,Tsinghua Yuan,Haidian District, Beijing,100084,P.R.China
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】▲シイン▼新会
(72)【発明者】
【氏名】王怡
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼▲チュウ▼
(72)【発明者】
【氏名】▲蘇▼楠
【審査官】進士 千尋
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104448040(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102676349(CN,A)
【文献】特開2016-113382(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B 37/08
C07K 7/06
C07K 7/08
C07K 1/12
A61K 35/65
A61K 38/08
A61K 38/10
A61K 31/726
A61P 19/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チュウゴクオオサンショウウオコンドロイチン硫酸、及び軟骨ポリペプチド粗抽出物を含み、前記軟骨ポリペプチド粗抽出物は、アミノ酸配列TGPLGPSPGP(配列番号 1)、HDLPLPLPE(配列番号 2)、DNLPPLPK(配列番号 3)及びVPSGPLGPEGPR(配列番号 4)のうちの1種類又は複数種類を含む、チュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物。
【請求項2】
前記チュウゴクオオサンショウウオコンドロイチン硫酸は、非硫酸化二糖(CS-O)、C6位硫酸化二糖(CS-C)、及びC4位硫酸化二糖(CS-A)を含有する、請求項1に記載のチュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物。
【請求項3】
前記チュウゴクオオサンショウウオコンドロイチン硫酸は、非硫酸化二糖(CS-O)、C6位硫酸化二糖(CS-C)、及びC4位硫酸化二糖(CS-A)からなる、請求項1に記載のチュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物。
【請求項4】
前記チュウゴクオオサンショウウオコンドロイチン硫酸の重量平均分子量(Mw)が、40kDa以上である、請求項1に記載のチュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物。
【請求項5】
前記チュウゴクオオサンショウウオコンドロイチン硫酸の重量平均分子量(Mw)が、45kDa以上である、請求項1に記載のチュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物。
【請求項6】
前記チュウゴクオオサンショウウオコンドロイチン硫酸は、チュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物の全量の15質量%~30質量%を占め、前記軟骨ポリペプチド粗抽出物は、チュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物の全量の70質量%~85質量%を占める、請求項1に記載のチュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物。
【請求項7】
チュウゴクオオサンショウウオから軟骨を取得することと、
取得した軟骨にプロテアーゼにより加水分解を行うことと、
プロテアーゼにより加水分解した後の上澄みを得て、それを乾燥させることと、を含む、請求項1に記載のチュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物を製造する方法。
【請求項8】
軟骨ポリペプチドのアミノ酸配列は、TGPLGPSPGP(配列番号 1)、HDLPLPLPE(配列番号 2)、DNLPPLPK(配列番号 3)及びVPSGPLGPEGPR(配列番号4)のうちの1種類又は複数種類である、ことを特徴とする軟骨ポリペプチド。
【請求項9】
XOD酵素阻害活性を有する、請求項8に記載の軟骨ポリペプチド。
【請求項10】
尿酸低下活性を有する、請求項8に記載の軟骨ポリペプチド。
【請求項11】
チュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物のアルコール可溶性成分である、ことを特徴とする請求項8に記載の軟骨ポリペプチド。
【請求項12】
ュウゴクオオサンショウウオから軟骨を取得することと、
取得した軟骨にプロテアーゼにより加水分解を行うことと、
プロテアーゼにより加水分解した後の上澄みを得て、それを乾燥させることと、
プロテアーゼにより加水分解した後の上澄み又はその乾燥物をアルコール沈殿することと、
上澄みを得ることと、を含む、請求項11に記載の軟骨ポリペプチドを製造する方法。
【請求項13】
前記プロテアーゼはアルカリプロテアーゼである、請求項7又12に記載の方法。
【請求項14】
前記アルカリプロテアーゼは2709プロテアーゼであり、pH9~11の条件下でプロテアーゼにより加水分解を行う、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チュウゴクオオサンショウウオ軟骨製剤及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
軟骨には、糖タンパク質、ポリペプチド、低分子タンパク質、多糖が豊富に含まれており、研究によれば、特定の動物由来の軟骨抽出物には、優れた抗腫瘍、抗血管新生、免疫調節、抗関節炎などの活性がある。その中でも、サメ軟骨製剤(Shark CartilagePreparation、SCP)は、関連研究が特に多く、栄養補助食品として世界中非常に人気がある。しかし、サメ軟骨市場の発展に伴い、サメの漁獲量が増加し、最近数十年で自然界のサメの個体数が急激に減少し、いくつかの種類のサメが絶滅危惧種になっている。したがって、サメ軟骨の使用は持続不可能である。
現在市販されている軟骨製剤は、主にサメの軟骨に由来するものである。サメ軟骨市場の発展に伴い、サメの漁獲量が増加し、最近数十年で自然界のサメの個体数が激減し、いくつかの種類のサメが絶滅危惧種になっている。したがって、サメ軟骨の使用は持続不可能である。
【発明の概要】
【0003】
中国固有の希少動物であるチュウゴクチュウゴクオオサンショウウオ(Andrias davidianus)は、食用及び薬用としての価値が高く、開発と利用の潜在力が大きい。野生チュウゴクオオサンショウウオは国の二級保護水生動物であるが、過去20年でチュウゴクオオサンショウウオの人工飼育及び繁殖技術は徐々に成熟し、チュウゴクオオサンショウウオ産業は急速に発展し、陝西省、湖南省、河南省、四川省などの複数の省や地域では、大規模なチュウゴクオオサンショウウオ養殖産業と市場が形成されており、それは、チュウゴクオオサンショウウオ軟骨を使用して医薬品及びヘルスケアの価値を有する製品を抽出するために持続可能な生物学的資源を提供し、また、チュウゴクオオサンショウウオ軟骨製剤の開発は、チュウゴクオオサンショウウオ産業の高価値化への発展にも寄与する。
【0004】
具体的には、本発明は以下に関する。
1.チュウゴクオオサンショウウオコンドロイチン硫酸、及び軟骨ポリペプチド粗抽出物を含むチュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物。
2.前記チュウゴクオオサンショウウオコンドロイチン硫酸は非硫酸化二糖(CS-O)、C6位硫酸化二糖(CS-C)、及びC4位硫酸化二糖(CS-A)を含有する項1に記載のチュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物。
3.前記チュウゴクオオサンショウウオコンドロイチン硫酸は非硫酸化二糖(CS-O)、C6位硫酸化二糖(CS-C)、及びC4位硫酸化二糖(CS-A)からなる項1又は2に記載のチュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物。
4.前記チュウゴクオオサンショウウオコンドロイチン硫酸の重量平均分子量(Mw)が、40kDa以上、好ましくは45kDa以上、より好ましくは48kDa以上、最も好ましくは49.2kDaである項1~3のいずれか1項に記載のチュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物。
5.前記軟骨ポリペプチド粗抽出物はTGPLGPSPGP(配列番号 1)、HDLPLPLPE(配列番号 2)、DNLPPLPK(配列番号 3)及びVPSGPLGPEGPR(配列番号4)のうちの1種類又は複数種類を含む項1~4のいずれか1項に記載のチュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物。
6.前記チュウゴクオオサンショウウオコンドロイチン硫酸は、チュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物の全量の15質量%~30質量%を占め、前記軟骨ポリペプチド粗抽出物は、チュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物の全量の70質量%~85質量%を占める項1~5のいずれか1項に記載のチュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物。
7.チュウゴクオオサンショウウオから軟骨を取得することと、
取得した軟骨にプロテアーゼにより加水分解を行うことと、
プロテアーゼにより加水分解した後の上澄みを得て、それを乾燥させることと、を含む方法によって得られる項1~6のいずれか1項に記載のチュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物。
8.軟骨ポリペプチド粗抽出物であり、且つTGPLGPSPGP(配列番号 1)、HDLPLPLPE(配列番号 2)、DNLPPLPK(配列番号 3)及びVPSGPLGPEGPR(配列番号4)のうちの1種類又は複数種類を含むチュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物のアルコール可溶性成分。
9.チュウゴクオオサンショウウオから軟骨を取得することと、
取得した軟骨にプロテアーゼにより加水分解を行うことと、
プロテアーゼにより加水分解した後の上澄みを得て、それを乾燥させることと、
プロテアーゼにより加水分解した後の上澄み又はその乾燥物をアルコール沈殿することと、
上澄みを得ることと、を含む方法によって得られる項8に記載のアルコール可溶性成分。
10.尿酸低下活性を有する項8又は9に記載のアルコール可溶性成分。
11.TGPLGPSPGP(配列番号 1)、HDLPLPLPE(配列番号 2)、DNLPPLPK(配列番号3)及びVPSGPLGPEGPR(配列番号 4)のうちの1種類又は複数種類である、ことを特徴とする軟骨ポリペプチド。
12.XOD酵素阻害活性を有する項11に記載の軟骨ポリペプチド。
13.尿酸低下活性を有する項11に記載の軟骨ポリペプチド。
14.非硫酸化二糖(CS-O)、C6位硫酸化二糖(CS-C)、及びC4位硫酸化二糖(CS-A)を含有するチュウゴクオオサンショウウオコンドロイチン硫酸を含むチュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物のアルコール沈殿成分。
15.前記チュウゴクオオサンショウウオコンドロイチン硫酸は非硫酸化二糖(CS-O)、C6位硫酸化二糖(CS-C)、及びC4位硫酸化二糖(CS-A)からなる項14に記載のチュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物のアルコール沈殿成分。
16.前記チュウゴクオオサンショウウオコンドロイチン硫酸の重量平均分子量(Mw)が、40kDa以上、好ましくは45kDa以上、より好ましくは48kDa以上、最も好ましくは49.2kDaである項14又は15に記載のチュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物のアルコール沈殿成分。
17.チュウゴクオオサンショウウオから軟骨を取得することと、
取得した軟骨にプロテアーゼにより加水分解を行うことと、
プロテアーゼにより加水分解した後の上澄みを得て、それを乾燥させることと、
プロテアーゼにより加水分解した後の上澄み又はその乾燥物をアルコール沈殿することと、
沈殿画分を得ることと、を含む方法によって得られる項14~16のいずれか1項に記載のチュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物のアルコール沈殿成分。
18.尿酸を低下させる、又は高尿酸血症又は痛風を治療する医薬品を調製するための、項1~7のいずれか1項に記載のチュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物、項8~10のいずれか1項に記載のチュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物のアルコール可溶性成分、又は項11~13のいずれか1項に記載の軟骨ポリペプチドの使用。
19.尿酸低減、又は高尿酸血症又は痛風の治療のための、項1~7のいずれか1項に記載のチュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物、項8~10のいずれか1項に記載のチュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物のアルコール可溶性成分、又は項11~13のいずれか1項に記載の軟骨ポリペプチドの使用。
20.チュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物の取得方法であって、
チュウゴクオオサンショウウオから軟骨を取得することと、
取得した軟骨にプロテアーゼにより加水分解を行うことと、
プロテアーゼにより加水分解した後の上澄みを得て、それを乾燥させることと、を含む取得方法。
21.前記プロテアーゼはアルカリプロテアーゼであり、pH 9~11の条件下でプロテアーゼ加水分解を行う項20に記載の方法。
22.チュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物のアルコール可溶性成分の取得方法であって、
チュウゴクオオサンショウウオから軟骨を取得することと、
取得した軟骨にプロテアーゼにより加水分解を行うことと、
プロテアーゼにより加水分解した後の上澄みを得て、それを乾燥させることと、
プロテアーゼにより加水分解した後の上澄み又はその乾燥物をアルコール沈殿することと、
上澄みを得ることと、を含む取得方法。
23.前記プロテアーゼはアルカリプロテアーゼであり、pH 9~11の条件下でプロテアーゼにより加水分解を行う項22に記載の方法。

24.チュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物のアルコール沈殿成分の取得方法であって、
チュウゴクオオサンショウウオから軟骨を取得することと、
取得した軟骨にプロテアーゼにより加水分解を行うことと、
プロテアーゼにより加水分解した後の上澄みを得て、それを乾燥させることと、
プロテアーゼにより加水分解した後の上澄み又はその乾燥物をアルコール沈殿することと、
沈殿画分を取得することと、を含む取得方法。
25.前記プロテアーゼはアルカリプロテアーゼであり、pH 9~11の条件下でプロテアーゼにより加水分解を行う項24に記載の方法。
26.前記アルカリプロテアーゼは2709プロテアーゼである項21、23又は25のいずれか1項に記載の方法。
27.アルコール沈殿の操作では、エタノールの質量濃度が50%-90%である項22~26のいずれか1項に記載の方法。
28.アルコール沈殿の操作では、エタノールの質量濃度が70%である項27に記載の方法。
29.尿酸を低下させる、又は高尿酸血症又は痛風を治療する方法であって、
項1~7のいずれか1項に記載のチュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物、項8~10のいずれか1項に記載のチュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物のアルコール可溶性成分、又は項11~13のいずれか1項に記載の軟骨ポリペプチドを、それを必要とする被験者に投与することを含む方法。
【発明の効果】
【0005】
本発明に係るチュウゴクオオサンショウウオ軟骨製剤は、チュウゴクオオサンショウウオ軟骨のプロテアーゼによる加水分解などの方法により得られるポリペプチド系物質又はチュウゴクオオサンショウウオコンドロイチン硫酸とポリペプチドの組成物であり、抗腫瘍、抗血管新生、抗炎症、抗酸化、免疫力強化、抗骨粗鬆症、抗リウマチ、尿酸低減、抗痛風などの活性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明に係るチュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物は、チュウゴクオオサンショウウオコンドロイチン硫酸、及び軟骨ポリペプチド粗抽出物を含む。
【0007】
前記チュウゴクオオサンショウウオコンドロイチン硫酸は、チュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物の全量の15質量%~30質量%、好ましくは18質量%~26質量%を占め、前記軟骨ポリペプチド粗抽出物は、チュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物の全量の70質量%~85質量%、好ましくは74質量%~82質量%を占める。
【0008】
なお、チュウゴクオオサンショウウオコンドロイチン硫酸は、非硫酸化二糖(CS-O)、C6位硫酸化二糖(CS-C)、及びC4位硫酸化二糖(CS-A)を含有し、好ましくは非硫酸化二糖(CS-O)、C6位硫酸化二糖(CS-C)、及びC4位硫酸化二糖(CS-A)からなる。
【0009】
本発明に係るチュウゴクオオサンショウウオ軟骨製剤の調製過程は、以下のとおりである。
チュウゴクオオサンショウウオから軟骨を取得する。
プロテアーゼによる加水分解:1種類又は複数種類のプロテアーゼ、たとえば、コラゲナーゼ、アルカリプロテアーゼ、プロナーゼ、トリプシン又はパパインなど、好ましくはアルカリプロテアーゼを用いて、適切な条件下で、チュウゴクオオサンショウウオ軟骨を加水分解させ、所定時間後、加熱して昇温してプロテアーゼを不活性化させる。
分離:反応させた溶液を静置して沈殿(又は遠心分離、ろ過など)させて、上澄みを得る。
乾燥:自然乾燥(又は凍結乾燥、回転蒸発など)させて上澄み中の水分を除去させると、所望のチュウゴクオオサンショウウオコンドロイチン硫酸と軟骨ポリペプチドの組成物を得て、本発明ではこの組成物をGSCPと略することもある。
分離ステップで得られた上澄み液又は乾燥ステップで得られた組成物にエタノール又はエタノール溶液を加えてアルコール沈殿(最終溶液中のエタノール含有量が50%~90%である)を行い、上澄みを得て乾燥させ、ポリペプチドを主成分とする所望のアルコール可溶性成分を得て、本発明ではこのアルコール可溶性成分をGSCP2ということもある。
さらに分析したところ、アルコール可溶性成分は、尿酸低下活性を有するポリペプチドTGPLGPSPGP(配列番号 1)、HDLPLPLPE(配列番号 2)、DNLPPLPK(配列番号 3)及びVPSGPLGPEGPR(配列番号4)を含む。アルコール沈殿成分の組成は、チュウゴクオオサンショウウオコンドロイチン硫酸(ADCS)を主とする。
【0010】
本発明は、
チュウゴクオオサンショウウオから軟骨を取得することと、
取得した軟骨にプロテアーゼにより加水分解を行うことと、
プロテアーゼにより加水分解した後の上澄みを得て、それを乾燥させることと、を含む方法によって得られることを特徴とするチュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物に関する。
【0011】
さらに、本発明は、チュウゴクオオサンショウウオコンドロイチン硫酸、及び軟骨ポリペプチド粗抽出物を含むことを特徴とするチュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物に関する。
【0012】
本発明のプロテアーゼは、好ましくはアルカリプロテアーゼ、さらに好ましくは2709プロテアーゼである。
【0013】
さらに、本発明は、チュウゴクオオサンショウウオコンドロイチン硫酸の重量平均分子量(Mw)が49.2kDaであることを特徴とするチュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物に関する。
【0014】
さらに、本発明は、軟骨ポリペプチド粗抽出物がTGPLGPSPGP(配列番号 1)、HDLPLPLPE(配列番号 2)、DNLPPLPK(配列番号 3)及びVPSGPLGPEGPR(配列番号4)のうちの1種類又は複数種類を含むことを特徴とするチュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物に関する。
【0015】
本発明は、
チュウゴクオオサンショウウオから軟骨を取得することと、
取得した軟骨にプロテアーゼにより加水分解を行うことと、
プロテアーゼにより加水分解した後の上澄みを得て、それを乾燥させることと、を含むことを特徴とするチュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物の調製方法に関する。
【0016】
本発明は、
チュウゴクオオサンショウウオから軟骨を取得することと、
取得した軟骨にプロテアーゼにより加水分解を行うことと、
プロテアーゼにより加水分解した後の上澄みを得て、それを乾燥させることと、
プロテアーゼにより加水分解した後の上澄み又はその乾燥物をアルコール沈殿することと、
上澄みを得ることと、を含む方法によって得られることを特徴とするチュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物のアルコール可溶性成分に関する。
【0017】
さらに、本発明は、軟骨ポリペプチド粗抽出物であることを特徴とするチュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物のアルコール可溶性成分に関する。
【0018】
さらに、本発明は、TGPLGPSPGP(配列番号 1)、HDLPLPLPE(配列番号 2)、DNLPPLPK(配列番号 3)及びVPSGPLGPEGPR(配列番号4)のうちの1種類又は複数種類を含むことを特徴とするチュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物のアルコール可溶性成分に関する。
【0019】
本発明は、
チュウゴクオオサンショウウオから軟骨を取得することと、
取得した軟骨にプロテアーゼにより加水分解を行うことと、
プロテアーゼにより加水分解した後の上澄みを得て、それを乾燥させることと、
プロテアーゼにより加水分解した後の上澄み又はその乾燥物をアルコール沈殿することと、
上澄みを得ることと、を含む、ことを特徴とするチュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物のアルコール可溶性成分の調製方法に関する。
【0020】
本発明は、TGPLGPSPGP(配列番号 1)、HDLPLPLPE(配列番号 2)、DNLPPLPK(配列番号 3)及びVPSGPLGPEGPR(配列番号4)のうちの1種類又は複数種類であることを特徴とする軟骨ポリペプチドに関する。
【0021】
即ち、本発明の軟骨ポリペプチドは、TGPLGPSPGP(配列番号 1)、HDLPLPLPE(配列番号 2)、DNLPPLPK(配列番号 3)、VPSGPLGPEGPR(配列番号 4)、及びこれらの任意の混合物、たとえば、TGPLGPSPGP(配列番号 1)とHDLPLPLPE(配列番号 2)の混合物、TGPLGPSPGP(配列番号 1)とDNLPPLPK(配列番号 3)の混合物、TGPLGPSPGP(配列番号 1)とVPSGPLGPEGPR(配列番号4)の混合物、HDLPLPLPE(配列番号 2)とDNLPPLPK(配列番号 3)の混合物、HDLPLPLPE(配列番号 2)とVPSGPLGPEGPR(配列番号4)の混合物、DNLPPLPK(配列番号 3)とVPSGPLGPEGPR(配列番号 4)の混合物、TGPLGPSPGP(配列番号 1)、HDLPLPLPE(配列番号 2)及びDNLPPLPK(配列番号 3)の混合物、HDLPLPLPE(配列番号 2)、DNLPPLPK(配列番号 3)及びVPSGPLGPEGPR(配列番号4)の混合物、TGPLGPSPGP(配列番号 1)、HDLPLPLPE(配列番号 2)及びVPSGPLGPEGPR(配列番号 4)の混合物、HDLPLPLPE(配列番号2)、DNLPPLPK(配列番号 3)及びVPSGPLGPEGPR(配列番号 4)の混合物、TGPLGPSPGP(配列番号 1)、HDLPLPLPE(配列番号 2)、DNLPPLPK(配列番号 3)及びVPSGPLGPEGPR(配列番号 4)の混合物であってもよい。
【0022】
さらに、本発明は、XOD酵素阻害活性を有することを特徴とする軟骨ポリペプチドに関する。
【0023】
さらに、本発明は、尿酸低下活性を有することを特徴とする軟骨ポリペプチドに関する。
【0024】
本発明は、
チュウゴクオオサンショウウオから軟骨を取得することと、
取得した軟骨にプロテアーゼにより加水分解を行うことと、
プロテアーゼにより加水分解した後の上澄みを得て、それを乾燥させることと、
プロテアーゼにより加水分解した後の上澄み又はその乾燥物をアルコール沈殿することと、
沈殿画分を得ることと、を含む方法によって得られる、ことを特徴とするチュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物のアルコール沈殿成分に関する。
【0025】
さらに、本発明は、チュウゴクオオサンショウウオコンドロイチン硫酸を含むことを特徴とするチュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物のアルコール沈殿成分に関する。
【0026】
さらに、本発明は、チュウゴクオオサンショウウオコンドロイチン硫酸の重量平均分子量(Mw)が49.2kDaであることを特徴とするチュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物のアルコール沈殿成分に関する。
【0027】
本発明は、
チュウゴクオオサンショウウオから軟骨を取得することと、
取得した軟骨にプロテアーゼにより加水分解を行うことと、
プロテアーゼにより加水分解した後の上澄みを得て、それを乾燥させることと、
プロテアーゼにより加水分解した後の上澄み又はその乾燥物をアルコール沈殿することと、
沈殿画分を得ることと、を含む、ことを特徴とするチュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物のアルコール沈殿成分の調製方法に関する。
【0028】
本発明に係るチュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物又はチュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物のアルコール可溶性成分又は軟骨ポリペプチド、たとえばTGPLGPSPGP(配列番号 1)、HDLPLPLPE(配列番号 2)、DNLPPLPK(配列番号 3)又はzVPSGPLGPEGPR(配列番号 4)は、XOD酵素阻害活性を有する。
【0029】
さらに、本発明は、尿酸を低下させる、又は高尿酸血症を治療する医薬品の調製における、チュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物の使用に関する。
【0030】
さらに、本発明は、尿酸低減又は高尿酸血症の治療における、チュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物の使用に関する。
【0031】
さらに、本発明は、痛風を治療する医薬品の調製における、チュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物の使用に関する。
【0032】
さらに、本発明は、痛風治療におけるチュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物の使用に関する。
【0033】
さらに、本発明は、尿酸を低下させる、又は高尿酸血症を治療する医薬品の調製における、チュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物のアルコール可溶性成分の使用に関する。
【0034】
さらに、本発明は、尿酸低減又は高尿酸血症治療における、チュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物のアルコール可溶性成分の使用に関する。
【0035】
さらに、本発明は、痛風を治療する医薬品の調製における、チュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物のアルコール可溶性成分の使用に関する。
【0036】
さらに、本発明は、痛風治療におけるチュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物のアルコール可溶性成分の使用に関する。
【0037】
さらに、本発明は、尿酸を低下させる、又は高尿酸血症を治療する医薬品の調製における、軟骨ポリペプチド、たとえばTGPLGPSPGP(配列番号 1)、HDLPLPLPE(配列番号 2)、DNLPPLPK(配列番号 3)又はVPSGPLGPEGPR(配列番号 4)の使用に関する。
【0038】
さらに、本発明は、尿酸低減又は高尿酸血症治療における、軟骨ポリペプチド、たとえばTGPLGPSPGP(配列番号 1)、HDLPLPLPE(配列番号 2)、DNLPPLPK(配列番号 3)又はVPSGPLGPEGPR(配列番号 4)の使用に関する。
【0039】
さらに、本発明は、痛風を治療する医薬品の調製における、軟骨ポリペプチド、たとえばTGPLGPSPGP(配列番号 1)、HDLPLPLPE(配列番号 2)、DNLPPLPK(配列番号 3)又はVPSGPLGPEGPR(配列番号 4)の使用に関する。
【0040】
さらに、本発明は、治療痛風における、軟骨ポリペプチド、たとえばTGPLGPSPGP(配列番号 1)、HDLPLPLPE(配列番号 2)、DNLPPLPK(配列番号 3)又はVPSGPLGPEGPR(配列番号 4)の使用に関する。
【0041】
したがって、本発明のチュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物及びそのアルコール可溶性成分は、尿酸を低下させる、又は高尿酸血症又は痛風を治療する作用を有する軟骨ポリペプチドを含む。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1図1はGSCP成分のセルロースアセテート膜電気泳動(HA:ヒアルロン酸;CS:コンドロイチン硫酸;HP:ヘパリン)を示す。
図2図2はADCS、サメコンドロイチン硫酸(SCS)及び牛コンドロイチン硫酸(BCS)のHPGPCスペクトルを示す。
図3図3はSAX-HPLCスペクトル及び二糖組成を示す。(a) ADCS;(b) BCS;(c) SCS。
図4図4はADCSのH-NMRスペクトルを示す。
図5図5はトータルイオンクロマトグラムを示す。
図6図6はMALDI-TOF-MS分析結果を示す。
図7図7はXOD酵素活性検出結果を示す。
図8図8は高性能高尿酸血症動物モデルを用いた尿酸低減の評価効果を示す。(a)血中尿酸含有量;(b)肝臓XOD酵素活性。
【0043】
実施例
実施例1 チュウゴクオオサンショウウオ軟骨製剤の調製
切断された軟骨付きのチュウゴクオオサンショウウオ肉を浄水に入れて、加熱して1h沸騰させ、チュウゴクオオサンショウウオ軟骨20gを分離し、軟骨を500mlビーカーに入れて、水200ml、2709プロテアーゼ(北京東華強盛生物公司製、バチルス・リケニフォルミス由来)2gを加え、pH9.5、50℃で8h加水分解し、90℃で10分間加熱して、プロテアーゼを不活性化させ、10000rpmで10min遠心分離して上澄みを取り、48h真空凍結乾燥して、固体粉末10.6gとして、チュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物(即ちGSCP)を得た。チュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物5gを、75%エタノール20mlに加えて十分に混合し、3000rpmで5分間遠心分離して上澄みを取り、60℃オーブンに入れて6hかけてアルコールを除去した後、48h凍結乾燥させ、アルコール可溶性成分3.5g(即ちGSCP2)を得た。沈殿画分を乾燥させて、チュウゴクオオサンショウウオコンドロイチン硫酸1.2g(即ちADCS)を得た。アルコール沈殿画分は、質量分率として25.5%、アルコール可溶性画分は質量分率として74.5%を占めた。
【0044】
実施例2 チュウゴクオオサンショウウオ軟骨製剤の調製
軟骨を調製するためのチュウゴクオオサンショウウオ(3.2kg)を分離して、きれいに洗浄して、湿重量100gのチュウゴクオオサンショウウオ軟骨を得て、軟骨を小さく切ってホモジナイザーを用いてホモジネートし、ホモジネートした軟骨を2%の酢酸ナトリウムを含有する溶液500mLに懸濁させ、1MのNaOHでpHを10.0±0.5の範囲に調整し、次に、2709アルカリプロテアーゼ6gを加えて加熱しながら撹拌し、30minおきに1MのNaOHを用いてpHを10.0±0.5の範囲に調整し、軟骨組織が完全に消化されるまで、約6hかけて50℃で反応させ、次に、反応液を100℃に加熱して10min保温してプロテアーゼを不活性化させた。反応液を室温に冷却した後、5,000×gで15min遠心分離して上澄みを得て、チュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物(GSCP)溶液を得た。上澄みにその体積に対して3倍の無水エタノールを加えて、4℃で一晩静置し、5,000×gで15min遠心分離して沈殿を収集し、沈殿を脱イオン水100mLに溶解した後、アルコール沈殿の操作を繰り返して沈殿を得て、その後、沈殿を脱イオン水100mLに溶解して、カットオフ分子量7kDaの透析バッグを使用して24h透析し、その後、凍結乾燥させて精製済みのチュウゴクオオサンショウウオコンドロイチン硫酸4.4gを得た。2回のアルコール沈殿の操作による上澄み液を収集して、回転蒸発して濃縮させた後、凍結乾燥させてチュウゴクオオサンショウウオ軟骨ポリペプチドを主な組成としたアルコール可溶性成分19.0gを得た。アルコール沈殿画分は質量分率として18.8%、アルコール可溶性画分は質量分率として81.2%を占めた。
【0045】
実施例3 セルロースアセテート膜電気泳動による実施例1で得られたGSCP成分のグリコサミノグリカンの組成の分析
セルロースアセテート薄膜(7cm*9cm)を電極バッファー(0.1mol/Lピリジン、0.47mol/Lギ酸、pH3.0)にて十分に30分間浸透し、取り出して余分なバッファーを吸い捨てて、ピペットを用いてセルロースアセテート薄膜の一端に試料を加え(10mg/ml GSCP)、2mg/mlヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ヘパリンのサンプルを対照として、DYCP-38C型横型電気泳動装置において定電流6mAで30分間電気泳動し、染色液(0.5%アルシアンブルー、2%酢酸)にて30分間染色し、次に、リンス液(2%酢酸)で、1回に20分間、3~5回繰り返してリンスし、リンスしたセルロースアセテート薄膜を可視光で観察し、結果を図1に示した。図1は、GSCPサンプルにコンドロイチン硫酸が多く含まれていることを示す。
【0046】
実施例4 チュウゴクオオサンショウウオコンドロイチン硫酸のキャラクタリゼーション
前記と同様に、湿重量3.2kgの飼育チュウゴクオオサンショウウオから湿重量100gの軟骨を分離し、その乾湿比(W/D、5.34)で、CS抽出により乾重量18.7gの軟骨を得た。抽出、分離、精製して凍結乾燥させ、実験にADCSサンプル4.4gを得た。HPGPC、SAX-HPLCによりADCS及び市販品として入手したBCS、SCSの純度、分子量分布、二糖組成、電荷密度を分析し、結果を表1に示した。ADCSの純度は98.7%であり、チュウゴクオオサンショウウオ軟骨から抽出されたADCSの収率は23.2%(乾重量/乾重量)であった。
【0047】
【表1】
【0048】
HPGPCによりCSの分子量分布を分析したところ、図2に示されるクロマトグラムのように、3種類のCSサンプルは、分散係数がすべて1.5よりも小さく、分子量分布が集中している。ADCSの重量平均分子量(Mw)は、49.2kDaであり、水生動物であるサメ由来のSCSの75.8kDaよりも低く、陸生動物である牛由来のBCSの34.4kDaよりも高かった。
【0049】
ChonABCで完全に分解した後、SAX-HPLCによってCSの二糖組成を分析し、結果を図3に示した。ADCSには、14.6%の非硫酸化二糖CS-O、60.9%のC6位硫酸化二糖CS-C、及び24.5%のC4位硫酸化二糖CS-Aが含まれているが、二重硫酸化二糖CS-Dが含まなかった。さらに、表1から明らかなように、ADCSの二糖組成は、BCS、SCSとは明らかな差異があった。サメ由来のCSは、CS-Cの含有量が高いため、通常、SCSをCSCと呼び、実験結果から明らかなように、ADCS中のCS-Cの含有量は60%以上と高く、サメ由来のSCSよりも高かった。さらに、ADCSでは、非硫酸化二糖単位CS-Oの含有量もBCS及びSCS中のCS-Oの含有量よりも高く、且つ、SCSに比べて、ADCSには、二重硫酸化二糖単位が含まれておらず、このため、ADCSの電荷密度(0.85)もBCS(0.95)及びSCS(1.17)よりも低かった。さらに、同様に両生動物の軟骨から抽出されたCS、ADCSの二糖組成も従来の文献(Mathews M B, Hinds L D. Acid mucopolysaccharides of frog cartilage in thyroxine-induced metamorphosis[J]. Biochimica Et Biophysica Acta, 1963, 74(2): 198)により報告されたカエル由来のCS(40% CS-O、40% CS-A、20% CS-C)とは明らかな差異があった。
【0050】
ADCSのH-NMRスペクトル分析結果を図4に示した。CS核磁気分析の文献報告(Mucci A, Schenetti L, Volpi N. Hand 13 C nuclear magnetic resonance identificationand characterization of components of chondroitin sulfates of various origin[J]. 2000, 41: 37-45)と組み合わせて核磁気気共鳴スペクトルを分析したところ、1.9-2.1ppmでの1組の重なり合うピークが、未硫酸化及び硫酸化のGalNAc構造メチル中のH原子の信号ピークに帰属し、4.18ppm及び4.70ppmでの信号ピークが、それぞれCS-C中のGalNAc6SのC6位H原子及びCS-A中のGalNAc4SのC4位のH原子に帰属し、4.46ppmでの信号ピークが、GlcUA及びGalNAc中のC1位のH原子に帰属し、3.32ppm、3.54ppm及び3.69ppmでの信号ピークが、それぞれGlcUAのC2、C3及びC4/C5位のH原子に帰属した。
【0051】
分析した結果、チュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物に対してアルコール沈殿の操作及び透析精製を行って、純度98%以上のADCSを得た。HPGPCで分析したところ、ADCSの分子量が49.2kDaであった。ChonABC酵素で完全に分解した後、SAX-HPLCにより分析した結果、ADCS二糖の組成は、14.6% CS-O、60.9% CS-C及び24.5% CS-Aであり、牛由来のBCS及びサメ由来のSCSとは明らかな差異があった。
【0052】
実施例5 チュウゴクオオサンショウウオ軟骨酵素分解抽出物GSCP及びアルコール可溶性成分GSCP2のアミノ酸組成、ポリペプチド分子量分布、タンパク質シーケンシング
分析1:GSCPのアミノ酸組成の分析は、北京農業生物検測センターに依頼した。
【0053】
一、試料情報
試料タイプ:生物試料
保管条件:-20℃
試料の数:7個
検出内容:50種類の加水分解アミノ酸含有量の検出
【0054】
二、器械及び試薬の情報
使用される技術:質量分析-同位体内部標準
使用器械:液体クロマトグラフィー-四重極イオントラップ型タンデム質量分析計HPLC-MS/MS Q-TRAP
器械型番:HPLC- MS/MS(Ultimate3000 - API 3200 Q TRAP)
アミノ酸キット:API 45AAキット;メタノール、ヘキサンニトリルはすべてfisherから購入した。
【0055】
三、試料前処理
酸加水分解処理(固体試料:浸漬-ホモジネート-遠心分離)
(1)試料100ulに水400ul、濃塩酸500ulを加えて、均一に混合して窒素ガスを導入して保護し、110℃でシールして、高温で21時間消化した。
(2)消化液を取り出して、遠心分離して上澄みを取り、窒素ガス50ulで吹いて乾燥させ、水1mlを加えて再溶解した。
誘導化処理
(1)再溶解液40μLを試験管内に入れて、スルホサリチル酸10μLを加え、30秒ボルテックスさせ、13200rpmで4分間遠心分離した。
(2)上層液体10μLを別の試験管に入れた。標識バッファー40μLを加えて、ボルテックスさせて均一に混合して、回転遠心を行った。
(3)上層液体10μLを別の試験管に入れた。各々のサンプル管に希釈したaTRAQ試薬5μLを加えて、ボルテックスさせて均一に混合して、回転遠心を行った。
(4)室温で少なくとも30分間インキュベートした。サンプル管にヒドロキシルアミン5μLを加えて、ボルテックスさせて均一に混合して、回転遠心を行った。
(5)それぞれのサンプル管に内部標準物質32μLを加えて、ボルテックスさせて均一に混合して、回転遠心を行った。検出時まで保存した。
【0056】
四、実験パラメータ
(1)液相条件:
クロマトグラフィーカラム:MSLab HP-C18(150*4.6mm 5um)
移動相:A:水+0.1%ギ酸 B:アセトニトリル+0.1%ギ酸
流速:0.8ml/min
カラム温度:50℃
注入量:3ul
液相分析勾配:
【表A】
(2)質量分析条件:
イオン源: +ESIエレクトロスプレーイオン源、陽イオンモード
走査方式:MRM多重反応モニタリング
CUR:20(カーテンガス)
CAD: Medium(衝突ガス)
IS: +5500V(スプレー電圧)
TEM:500℃(霧化温度)
GS1:55 psi(霧化ガス)
GS2: 60 psi(補助ガス)
DP: 35v(デクラスタリング電圧)
EP:10 (注入電圧)
CE:30 (衝突エネルギー)
CXP:5.0 (衝撃室注入電圧)
【0057】
五、実験データ
(1)トータルイオンクロマトグラム
トータルイオンクロマトグラムは図5に示された。
(2)検出結果は、表2に示された。
【0058】
【表2】
【0059】
分析2:アルコール可溶性画分GSCP2ポリペプチドの分子量分布、タンパク質のシーケンシング
アルコール可溶性画分は、明らかな尿酸低下活性を有し、ゲルサイズ排除クロマトグラフィー及び逆相分取クロマトグラフィーによりさらに精製されて、XOD酵素の活性に対して明らかな阻害作用を有する成分となり、それについてポリペプチド分子量及び配列を分析し、その方法及び結果を以下に示した。
【0060】
ポリペプチドサンプルの分子量及び配列分析は、清華大学生物医学試験センターに依頼し、分子量の分析には、マトリックス支援レーザー脱離イオン化-飛行時間型質量分析計MALDI-TOF-TOF 4800Plus(米国ABI社製)が使用され、ポリペプチド配列の分析には、OrbiTrap Fusion LUMOS液体クロマトグラフィー質量分析計(米国Thermo Fisher社製)が使用された。
MALDI-TOF-MS分析結果を図6に示した。分析結果から明らかなように、サンプルポリペプチド質量電荷比(m/z)は100-3000の範囲であり、且つ、2つのサンプルはすべてm/zが739及び1162の位置では強いピークを有した。
【0061】
高速液体クロマトグラフィー-エレクトロスプレーイオン化/質量分析計(LC-ESI-MS/MS)によってサンプルを分析し、データ非依存性解析(DIA)手段を用いてポリペプチドのアミノ酸配列を分析し、得られた4つの主なポリペプチド配列を表3に示し、それぞれS1、S2、S3、S4と命名して人工合成した。
【0062】
【表3】
【0063】
実施例6 酵素分解抽出物GSCP及びアルコール可溶性成分GSCP2の尿酸低下活性
【0064】
分析1:
XODは、キサンチンの酸化を触媒して尿酸とスーパーオキシドアニオンを生成し、活性酸素の主な由来の1種でありながら、ヌクレオチド代謝の重要な酵素の1つであり、主に哺乳動物の心臓、肺、肝臓などの組織に分布しており、XOD酵素活性阻害モデルにより、潜在的な尿酸低減用医薬品をスクリーニングして評価することができた。
試薬:XOD酵素(Sigma社製、牛乳由来)、XOD酵素活性検出キット(南京建成社から購入う)。
【0065】
キサンチンオキシダーゼ(XOD)は、キサンチンの酸化を触媒して、生成した尿酸は、295nmに特異的吸収を有し、分光光度法により生成物を測定すると、酵素活性をキャラクタリゼーションすることができた。XOD酵素活性検出キットの取扱書に従ってXOD酵素活性検出を行い、結果を図7に示した。図7の結果から明らかなように、GSCPは、XOD阻害活性を有し、且つ用量依存性を有し、GSCPの濃度が40mg/mlであるときの阻害活性が最大であり、1/2又は1/5濃度に希釈された後の阻害活性もその分減少した。
【0066】
また、図7から明らかなように、GSCP中の含有量が高いADCSはXOD阻害活性を有さなかった。このことから、XOD阻害酵素活性を有する成分がGSCP中のポリペプチド成分、即ちGSCP2成分であることが推定された。
【0067】
阻害剤がない場合のXOD酵素活性を100%とし、人工合成した尿酸低下活性を有するペプチド及び陽性医薬品であるアロプリノールのXOD酵素活性阻害の効果を比較し、結果を表4に示した(表中の濃度は反応系でのサンプルの最終濃度である)。
【0068】
【表4】
【0069】
XOD酵素活性阻害実験によって半数阻害濃度(IC50)を算出して比較し、表5に示した。
【0070】
【表5】
【0071】
合成ポリペプチドS1、S2、S3、S4は、それぞれ3.2mg/mL、110μg/mL、60μg/mL、60μg/mLでは、XODに対する半数阻害濃度に達した。実験した結果、同様な反応系では、GSCP2は、5.2mg/mLでは、XODに対する半数阻害濃度に達し、さらに、アロプリノールは、0.26μg/mLでは、XODに対する半数阻害濃度に達し、濃度30μg/mLであっても、XODはまだ約10%の酵素活性を維持し、一方、S2、S3、S4濃度が半数阻害濃度の3倍である場合、XOD酵素活性は完全に阻害され、このことから、人工合成した活性ポリペプチドは、アロプリノールと異なるXOD酵素活性阻害メカニズムを有することが推定された。
【0072】
分析2:
急性高尿酸血症マウスモデル:実験では、正常群、モデル群、陽性医薬品群(アロプリノール、百霊威、2mg/ml)、ADCS群(20mg/ml)、GSCP群(40mg/ml)に分けて、1群あたりマウス10匹とし、連続的に7日間強制経口投与し(20ml/kg、正常群及びモデル群には超純水を投与)、強制経口投与してから7日後、15mg/mlオテラシルカリウム(生工生物社製)及び10mg/mlヒポキサンチン(sigma)懸濁液0.5mlを1hかけて腹腔内注射してモデリングし、モデリング1h後、血液及び肝臓を取り、血中尿酸レベル及び肝臓のキサンチンオキシダーゼ活性を測定し、結果を図8に示した。
【0073】
ヒポキサンチンは、尿酸を生成するための前駆体物質であり、オテラシルカリウムはウリカーゼの阻害剤である。オテラシルカリウム及びヒポキサンチンを腹腔内注射すると、マウスの血中尿酸レベルが明らかに上昇し、それは、高尿酸血症マウスモデルの作成に成功したことを示した。モデル群に比べて、陽性医薬品であるアロプリノール群のマウスの血中尿酸レベルが0に近く、GSCP群の血中尿酸レベルも低レベルであり、GSCPは、経口投与されると、優れた尿酸低下活性を示した。肝臓XOD酵素活性の検出結果には、アロプリノール群及びGSCP群のXOD活性がモデル群のそれよりも低く、それは、GSCPが肝臓XOD活性を阻害することで尿酸低減作用を発揮できることを示した。2群のデータの結果から明らかなように、ADCSでは尿酸低減作用を発揮し得る有効成分は、コンドロイチン硫酸であはなく、尿酸低下活性を有する成分がGSCP中のポリペプチド成分、即ちGSCP2成分であることが推定された。
【0074】
以上は、本発明の原理だけを示したが、本発明の範囲は、本明細書に記載の例示的なものに制限されず、既知の等同物及び将来開発される等同物を含むことを意図する。また、なお、本発明の技術的原理を逸脱することなく、いくつかの改良及び修正を行うことができ、これら改良及び修正も本発明の範囲であるとみなされるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8