(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-24
(45)【発行日】2023-04-03
(54)【発明の名称】弾性環状体の供給装置
(51)【国際特許分類】
B65G 47/14 20060101AFI20230327BHJP
【FI】
B65G47/14 T
B65G47/14 J
(21)【出願番号】P 2022078734
(22)【出願日】2022-05-12
【審査請求日】2022-12-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518153346
【氏名又は名称】株式会社ウエーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】弁理士法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】白子 善久
(72)【発明者】
【氏名】白子 なおみ
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-193433(JP,A)
【文献】特開2001-122429(JP,A)
【文献】特開2010-202328(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 47/00-47/20
B65G 27/00-27/34
B65G 11/00-11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性環状体が投入されるホッパと、
前記ホッパから落下する弾性環状体を斜め下方に案内する供給シュートと、
前記供給シュートを揺動させる揺動装置とを備え、
前記供給シュートは、内部を通過する弾性環状体との間に摩擦力を生じさせる滑り止めシートにより形成された筒状部を備える弾性環状体の供給装置。
【請求項2】
前記供給シュートは、前記筒状部を変形可能に支持する樋状のシュート本体を更に備える請求項1に記載の弾性環状体の供給装置。
【請求項3】
前記供給シュートは、前記筒状部の基端側に配置された先細部を更に備え、
前記先細部は、前記滑り止めシートにより前記筒状部と一体的に形成されており、上部が開放されて、左右の側壁間の幅が先端に向けて徐々に幅狭となる先細状に形成されている請求項1に記載の弾性環状体の供給装置。
【請求項4】
前記ホッパから落下する弾性環状体を前記供給シュートに向けて押し出す押出装置を更に備える請求項1に記載の弾性環状体の供給装置。
【請求項5】
前記揺動装置は、前記供給シュートを左右方向に揺動させる左右揺動機構と、前記供給シュートを上下方向に揺動させる上下揺動機構とを備える請求項1に記載の弾性環状体の供給装置。
【請求項6】
前記弾性環状体は、ヘアゴムである請求項1に記載の弾性環状体の供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘアゴム等の弾性環状体を供給するための弾性環状体の供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
髪をまとめるのに使用される環状のヘアゴムは、ホッパ等に複数投入すると、互いに付着し易いために個々に分離して供給できないおそれがあるため、例えば、計数センサを利用して所定の個数ずつ自動で台紙にセットしたり、袋詰めしたりすることが困難である。
【0003】
塊状にまとまった弾性環状体を個々に分離して搬送する装置として、特許文献1には、リング状製品を整列状態で搬送し、フックを有する回転板を回転させることにより、搬送方向先端部のリング状製品にフックを係合させて1個ずつ取り出す装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された装置は、リング状製品の向き等によってはフックを確実に係合させることが困難な場合があり、搬送効率が低下し易い一方、搬送効率を高めるために回転板を高速で回転させると、リング状製品が損傷し易いという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、複数の弾性環状体を効率良く分離して供給することができる弾性環状体の供給装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の前記目的は、弾性環状体が投入されるホッパと、前記ホッパから落下する弾性環状体を斜め下方に案内する供給シュートと、前記供給シュートを揺動させる揺動装置とを備え、前記供給シュートは、内部を通過する弾性環状体との間に摩擦力を生じさせる滑り止めシートにより形成された筒状部を備える弾性環状体の供給装置により達成される。
【0008】
この弾性環状体の供給装置において、前記供給シュートは、前記筒状部を変形可能に支持する樋状のシュート本体を更に備えることが好ましい。
【0009】
前記供給シュートは、前記筒状部の基端側に配置された先細部を更に備えることが好ましく、前記先細部は、前記滑り止めシートにより前記筒状部と一体的に形成されており、上部が開放されて、左右の側壁間の幅が先端に向けて徐々に幅狭となる先細状に形成されていることが好ましい。
【0010】
前記ホッパから落下する弾性環状体を前記供給シュートに向けて押し出す押出装置を更に備えることが好ましい。
【0011】
前記揺動装置は、前記供給シュートを左右方向に揺動させる左右揺動機構と、前記供給シュートを上下方向に揺動させる上下揺動機構とを備えることが好ましい。
【0012】
前記弾性環状体は、ヘアゴムであることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の弾性環状体の供給装置によれば、複数の弾性環状体を効率良く分離して供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る弾性環状体の供給装置の斜視図である。
【
図2】
図1に示す弾性環状体の供給装置の正面図である。
【
図3】
図1に示す弾性環状体の供給装置の要部を拡大して示す斜視図である。
【
図4】
図1に示す弾性環状体の供給装置の要部の作動状態を説明するための図である。
【
図5】
図4の他の作動状態を説明するための図である。
【
図6】
図1に示す弾性環状体の供給装置の他の要部の作動状態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
図1は、 本発明の一実施形態に係る弾性環状体の供給装置(以下、単に「供給装置」という)の斜視図であり、
図2は、この供給装置の正面図である。
図1および
図2に示すように、供給装置1は、ホッパ10と、供給シュート20と、揺動装置30と、押出装置40とを備えており、これらは基台2に支持されている。
【0016】
ホッパ10は、四角錐台状であり、上部に投入口11が形成され、下部に排出口12が形成されており、基台2の上部に設けられた上板3に支持されている。ホッパ10の投入口11には、ヘアゴム等の弾性環状体Rが投入され、排出口12から上板3の開口を介して、押出装置40の上部に落下する。
【0017】
押出装置40は、ホッパ10の直下に配置された固定テーブル41と、固定テーブル41の上面を摺動する第1のスライドテーブル42と、第1のスライドテーブル42の上面を摺動する第2のスライドテーブル43とを備えている。第1のスライドテーブル42および第2のスライドテーブル43は、エアシリンダ等からなる駆動部44,45によって個別に駆動され、供給シュート20に向けてそれぞれ進退可能とされている。
【0018】
供給シュート20は、揺動装置30に傾斜状態で支持される樋状のシュート本体21と、シュート本体21の内部に配置された筒状部22および先細部23と、シュート本体21の基端側の上部に固定されたテーパ部24とを備えており、弾性環状体Rを斜め下方に案内して、シュート本体21の先端部25から外部に供給する。シュート本体21は、筒状部22および先細部23を確実に支持できるように、硬質の材料により形成されることが好ましい。シュート本体21の傾斜は、揺動装置30の作動により塊状の弾性環状体Rが徐々に分散しながら移動するのに適した傾斜角度であることが好ましい。より具体的には、揺動板34を水平面に対して3~5度(例えば3度)傾斜させ、シュート本体21の底部を揺動板34に対して15~20度(例えば18度)傾斜させる等して、シュート本体21を水平面に対して18~25度傾斜させることが好ましい。
【0019】
筒状部22および先細部23は、弾性環状体Rとの間に摩擦力を生じさせる滑り止めシートにより形成されている。滑り止めシートの材質は必ずしも限定されないが、シリコーン樹脂や塩化ビニル樹脂等のように弾性環状体Rに対する摩擦力が大きい材料であることが好ましく、この摩擦力は、弾性環状体R同士の間に作用する摩擦力よりも大きいことが好ましい。弾性環状体Rとの間に作用する摩擦力を高めるため、滑り止めシートには、格子状、線状、ドット状等の凸部が形成されていることが好ましい。筒状部22および先細部23は、下部の一部のみがシュート本体21の内面に固定されることで、シュート本体21に変形可能に支持されることが好ましい。
【0020】
筒状部22は、シュート本体21の先端側に配置されており、滑り止めシートの縁部同士を粘着テープ等の留め具22aにより固定することで、シュート本体21の幅よりも幅狭の偏平筒状に形成されている。先細部23は、シュート本体21内で筒状部22の基端側に配置され、滑り止めシートの縁部同士を留めずに上部を開放することで、左右の側壁間の幅が先端に向けて徐々に幅狭となる先細状に形成されている。本実施形態の筒状部22および先細部23は、単一の滑り止めシートにより一体的に形成しているが、別体であってもよい。テーパ部24は、先細の角筒状に形成されており、先端部が先細部23に向けて開口するように配置されている。
【0021】
揺動装置30は、基台2の下部に設けられた下板4に支持されており、下板4の下面側に固定された減速機付きモータからなる駆動部31と、駆動部31の駆動により支軸32の周りに一体的に揺動するロッド33および揺動板34と、揺動板34の上面から起立する支持脚35とを備えている。支持脚35の上端は、シュート本体21の基端部に固定されている。
【0022】
図3は、揺動装置30の要部を示す斜視図である。
図2および
図3に示すように、駆動部31の回転軸31aは、クランクアーム31bを介して、ロッド33に形成された長孔33aに係合しており、クランクアーム31bの回転によりロッド33および揺動板34が揺動する。揺動中心となる支軸32は、鉛直方向に対して若干傾斜しており、供給シュート20を左右方向に揺動させる左右揺動機構30aを構成する。
【0023】
下板4の上面には、上方に凸となるカム面36aを有するカム36が設けられている。また、揺動板34の下面には、カム面36aを転動するカムフォロワ37が設けられている。カム36およびカムフォロワ37は、供給シュート20を上下方向に揺動させる上下揺動機構30bを構成する。なお、カム面36aとカムフォロワ37との接触状態は、ロッド33に対して揺動板34を回動軸38周りに回動して固定することで、適宜調整することができる。
【0024】
次に、上記の構成を備える供給装置1の作動を説明する。
図4(a)は、押出装置40の一作動状態を示す斜視図であり、
図4(b)は、
図4(a)の作動状態に対応する正面図である。
図4(a)に示すように、複数の弾性環状体Rをホッパ10に投入すると、押出装置40の第1のスライドテーブル42および第2のスライドテーブル43の上面に、弾性環状体Rが弾性変形により絡まる等して、まとまった状態で落下する。この状態から、第2のスライドテーブル43を
図4(a)および(b)の矢示方向に前進させると、
図5(a)および(b)に示すように、第1のスライドテーブル42上の弾性環状体Rが、第2のスライドテーブル43の前面によって前方に押し出される。
【0025】
第1のスライドテーブル42は、第2のスライドテーブル43とは異なるタイミングで進退駆動するように制御され、
図5(a)および(b)に示す状態から第1のスライドテーブル42を矢示方向に後退させると、第1のスライドテーブル42上の弾性環状体Rが固定テーブル41上に落下する。こうして、第1のスライドテーブル42および第2のスライドテーブル43を互いに独立して繰り返し往復動させることにより、第1のスライドテーブル42および第2のスライドテーブル43の上面にある弾性環状体Rが、固定テーブル41上に落下し、第1のスライドテーブル42の前面により前方に押し出されて、テーパ部24内に供給される。
【0026】
押出装置40は、弾性環状体Rがヘアゴム等のように比較的大きく互いに絡まり易い場合に特に有効であり、弾性環状体Rを供給シュート20に確実に供給することができる。但し、弾性環状体Rの大きさや形状、材質等によっては、ホッパ10から供給シュート20に弾性環状体Rを直接供給することも可能であり、この場合は押出装置40は不要である。
【0027】
テーパ部24に供給された弾性環状体Rは、揺動装置30の作動により左右方向および上下方向に揺動されることで、シュート本体21の傾斜に沿って徐々に移動する。
【0028】
図6は、供給シュート20を先端側から見た図である。
図6(a)に示す状態から、駆動部31の回転駆動により揺動板34が右方向に移動すると、カムフォロワ37がカム面36aに沿って転動することで揺動板34が上昇し、
図6(b)に示す状態になる。この状態から、揺動板34が右方向に更に移動すると、カムフォロワ37がカム面36aに沿って転動することで揺動板34が下降し、
図6(c)に示す状態になる。このように、揺動装置30は、揺動板34に支持された供給シュート20を左右方向および上下方向に揺動させることで、供給シュート20を通過する弾性環状体Rを、上下方向および左右方向に振動させながら移動させる。
【0029】
先細部23は、左右の側壁によって弾性環状体Rを倒伏させることで、弾性環状体Rの姿勢を揃えて積層状態で移動させる。先細部23は、最下層の弾性環状体Rとの間で大きな摩擦力が作用する一方、上部が開放されていることで、積層状態の弾性環状体R間で滑りが生じ易くなり、弾性環状体Rが適度に分散された状態で筒状部22に案内される。
【0030】
筒状部22を移動する弾性環状体Rは、中央部を通過する弾性環状体Rが、筒状部22との摩擦抵抗を受けずにスムーズに移動するため、筒状部22との間で摩擦力が生じる周縁部の弾性環状体Rとの間で速度差が生じる。これにより、弾性環状体Rを筒状部22の内部で更に分散させることができるため、弾性環状体Rを効率良く分離して、先端部25から次工程に供給することができる。例えば、供給シュート20の先端部25からベルトコンベアに弾性環状体Rを1つずつ供給することで、計数センサによる計数を容易且つ正確に行うことができ、台紙へのセットや袋詰め等の歩留まりを高めることができる。
【0031】
筒状部22は、本実施形態のように変形可能であることが好ましく、弾性環状体Rの詰まりを防止しつつ、筒状部22内での弾性環状体Rの分散を促すことができる。筒状部22のみで弾性環状体Rを確実に分離できる場合には、先細部23やテーパ部24を備えない構成であってもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 弾性環状体の供給装置
10 ホッパ
20 供給シュート
22 筒状部
23 先細部
30 揺動装置
30a 左右揺動機構
30b 上下揺動機構
40 押出装置
R 弾性環状体
【要約】
【課題】 複数の弾性環状体を効率良く分離して供給することができる弾性環状体の供給装置を提供する。
【解決手段】 弾性環状体Rが投入されるホッパ10と、ホッパ10から落下する弾性環状体Rを斜め下方に案内する供給シュート20と、供給シュート20を揺動させる揺動装置30とを備え、供給シュート20は、内部を通過する弾性環状体Rとの間に摩擦力を生じさせる滑り止めシートにより形成された筒状部22を備える弾性環状体の供給装置1である。
【選択図】
図1