(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-24
(45)【発行日】2023-04-03
(54)【発明の名称】浸漬型加熱ヒータ
(51)【国際特許分類】
H05B 3/44 20060101AFI20230327BHJP
H05B 3/64 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
H05B3/44
H05B3/64
(21)【出願番号】P 2022149964
(22)【出願日】2022-09-21
【審査請求日】2022-09-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391003727
【氏名又は名称】株式会社トウネツ
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】望月 城也太
【審査官】杉浦 貴之
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-113398(JP,U)
【文献】特開2011-029028(JP,A)
【文献】特開2011-029029(JP,A)
【文献】特表2008-545947(JP,A)
【文献】特表2021-506075(JP,A)
【文献】特表2007-529087(JP,A)
【文献】特開昭61-142685(JP,A)
【文献】実開昭59-026895(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/40-3/58
H05B 3/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱ヒータユニットを有する浸漬型加熱ヒータにおいて、
前記加熱ヒータユニットは、有底保護管内に挿入され、溶融金属中に浸漬状態で使用されるものであって、
前記加熱ヒータユニットは、基端側から先端側に向かう往き加熱線と、これに接続される先端側から基端側に戻る帰り加熱線と、
前記加熱ヒータユニットの長手方向に間隔を置いて複数設けられたヒータ碍子と、を備えており、
前記ヒータ碍子はそれぞれは、前記往き加熱線及び前記帰り加熱線が単独で挿通する挿通孔を有し、
前記往き加熱線及び前記帰り加熱線の一方の加熱線は、前記加熱ヒータユニットの中心から半径方向の外側に位置して外側加熱線を構成し、他方の加熱線は前記加熱ヒータユニットの中心から半径方向の内側に位置して内側加熱線を構成しており、
前記外側加熱線の外径が前記内側加熱線の外径よりも小さい、
ことを特徴とする浸漬型加熱ヒータ。
【請求項2】
前記往き加熱線と、前記帰り加熱線とは、直接的に又は短接続線が介在させられて溶接により接続されている請求項1記載の浸漬型加熱ヒータ。
【請求項3】
前記ヒータ碍子の前記挿通孔は、前記加熱ヒータユニットの中心から半径方向の外側に位置する外側挿通孔と、内側に位置する内側挿通孔とを有し、
前記外側加熱線が前記外側挿通孔を挿通し、前記内側加熱線が前記内側挿通孔を挿通している、
請求項1又は2記載の浸漬型加熱ヒータ。
【請求項4】
前記ヒータ碍子の挿通孔は、前記加熱ヒータユニットの中心から半径方向の外側に環状の位置において周方向に間隔を置いて形成された2以上の外側挿通孔と、前記加熱ヒータユニットの中心から半径方向の内側に環状の位置において周方向に間隔を置いて形成された2以上の内側挿通孔とを有し、
前記外側加熱線が前記外側挿通孔を挿通し、前記内側加熱線が前記内側挿通孔を挿通している、
請求項1又は2記載の浸漬型加熱ヒータ。
【請求項5】
前記ヒータ碍子の挿通孔は、前記加熱ヒータユニットの中心から半径方向の外側の外側挿通孔と内側の内側挿通孔とを有し、
前記加熱ヒータユニットは、基端側から先端側に向かう往き加熱線と、先端側から基端側に戻る帰り加熱線と、が相互に接続され、複数回の往き帰りを繰り返しながら、第1のリード棒及び第2のリード棒を介して電源に接続され、
前記外側加熱線が前記外側挿通孔を挿通し、前記内側加熱線が前記内側挿通孔を挿通している、
請求項1又は2に記載の浸漬型加熱ヒータ。
【請求項6】
複数の前記ヒータ碍子は、中央突部と、その一方側において一体的に半径方向に張り出す鍔部とを有し、
前記鍔部から中央突部に向かう凹部が形成され、
一方の前記ヒータ碍子の前記中央突部が、他方の前記ヒータ碍子の前記凹部に嵌入し、一方の前記ヒータ碍子と他方の前記ヒータ碍子とが連結されている請求項1記載の浸漬型加熱ヒータ。
【請求項7】
前記外側加熱線と前記内側加熱線とは材料が相違する請求項1記載の浸漬型加熱ヒータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融金属中に浸漬状態で使用される浸漬型加熱ヒータに関する。
【背景技術】
【0002】
近来、地球温暖化の原因となるCO2などの温室効果ガスの排出を防ぐために、石油や石炭などの化石燃料から脱却する脱炭素化の研究開発が各分野で進められており、各企業は、燃焼により生成されるCO2の排出量を低減すべく、脱炭素化への対応が求められている。
アルミニウム溶湯などの溶融金属を加熱する分野においては、従来、加熱手段としてガスなどを燃焼する加熱バーナが使用されていたが、上記の脱炭素化への対応を考慮して、他の加熱手段として、浸漬型ヒータが検討され始めている。
【0003】
浸漬型ヒータは、溶融金属(例えばアルミニウム溶湯)を加熱するためにタンクまたは容器の中に設置される、有底保護管に挿入された電気を用いる加熱ヒータであり、加熱ヒータを金属溶湯保持炉内で溶融金属中に浸漬し、溶融金属を直接加熱して保温する。
この方式は、温度制御性が高く、溶湯品質を高めることができ、エネルギー消費やコストを削減できる。
【0004】
加熱ヒータとして、次のようなものが知られている。
特許文献1には、基端から先端に向かって延び、先端側で折り返されて再び基端側に戻る加熱線の折返し形態からなる二重線部が複数セットしたものが記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、加熱ヒータの断面の半径方向外側の加熱線と内側の加熱線が折返し形態で連結している二重線部が複数セットしたものが記載されている。
これらの文献では、加熱線の折返し形態からなる二重線部がU字形状をなしていることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4402743号公報
【文献】実開昭61-113398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
加熱バーナと比較して、電気を用いる加熱ヒータは、CO2の排出量をより低減でき、脱炭素化に向けての対応の点で優れている。
しかしながら、加熱出力が小さいという課題がある。
【0008】
本発明の主たる課題は、CO2の排出量の低減に寄与する浸漬型加熱ヒータにおいて、加熱出力を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段の態様は次のとおりである。
加熱ヒータユニットを有する浸漬型加熱ヒータにおいて、
前記加熱ヒータユニットは、有底保護管内に挿入され、溶融金属中に浸漬状態で使用されるものであって、
前記加熱ヒータユニットは、基端側から先端側に向かう往き加熱線と、これに接続される先端側から基端側に戻る帰り加熱線と、
前記加熱ヒータユニットの長手方向に間隔を置いて複数設けられたヒータ碍子と、を備えており、
前記ヒータ碍子はそれぞれは、前記往き加熱線及び前記帰り加熱線が単独で挿通する挿通孔を有し、
前記往き加熱線及び前記帰り加熱線の一方の加熱線は、前記加熱ヒータユニットの中心から半径方向の外側に位置して外側加熱線を構成し、他方の加熱線は前記加熱ヒータユニットの中心から半径方向の内側に位置して内側加熱線を構成しており、
前記外側加熱線の外径が前記内側加熱線の外径よりも小さい、
ことを特徴とする浸漬型加熱ヒータ。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、CO2の排出量の低減に寄与する浸漬型加熱ヒータにおいて、加熱出力を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態の浸漬型加熱ヒータの一例を示す平面図である。
【
図2】実施の形態の加熱ヒータユニットの一例を示す平面図である。
【
図3】実施の形態の加熱ヒータユニットの正面図である。
【
図6A】加熱線がない状態における
図3の6-6線矢視図である。
【
図6B】加熱線が存在する状態における
図3の6-6線矢視図である。
【
図15】実験に供した加熱ヒータユニットの写真である。
【
図16】実験に供した加熱ヒータユニットの写真である。
【
図17】実験に供した加熱ヒータユニットの写真である。
【
図18】実験に供した加熱ヒータユニットの写真である。
【
図19】実験における加熱ヒータの設置状態の炉の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明を実施するための形態を説明する。なお、この実施の形態は本発明の一例であり、本発明の範囲は本実施の形態の範囲に限定されず、特許請求の範囲の記載のみによって明らかにされる。
【0013】
(実施の形態)
浸漬型加熱ヒータ10は、加熱ヒータユニット30を有する。
この加熱ヒータユニット30は有底保護管20内に挿入され、溶融金属(例えばアルミニウム溶湯)中に浸漬状態で使用されるものである。
浸漬型加熱ヒータ10は、周囲及び底部を有する有底保護管20と、この有底保護管20内に挿入された加熱ヒータユニット30とを有する。
浸漬型加熱ヒータ10は、溶融金属(例えばアルミニウム溶湯)を加熱するために、溶融すべき金属中に浸漬状態で使用される。
【0014】
加熱ヒータユニット30は、基端側から先端側に向かう複数本の往き加熱線と、これに接続される先端側から基端側に戻る複数本の帰り加熱線とを有する。往き加熱線と帰り加熱線とは、適宜の位置で、例えば加熱ヒータユニット30の先端側、あるいは基端側で接続され(電気的に接続され)、一本の長い抵抗加熱線として配置されている。
【0015】
各加熱線を短絡を生じさせることなく平行に保持するために、ヒータ碍子41が設けられている。
ヒータ碍子41は、加熱ヒータユニット30の長手方向に間隔を置いて複数(例えば15個)設けられている。
【0016】
ヒータ碍子41はそれぞれは、往き加熱線及び帰り加熱線が単独で挿通する挿通孔41A、41Bを有している。
【0017】
往き加熱線及び帰り加熱線の一方の加熱線は、加熱ヒータユニット30の中心から半径方向の外側に位置して配置され、外側加熱線42Aを構成している。
【0018】
往き加熱線及び帰り加熱線の他方の加熱線は、加熱ヒータユニット30の中心から半径方向の内側に位置して配置され、内側加熱線42Bを構成している。
【0019】
加熱ヒータユニット30の外側に位置する外側加熱線42Aの外径は、加熱ヒータユニット30の内側に位置する内側加熱線42Bの外径より小さく形成されている。
換言すれば、外側加熱線42Aの断面積は、内側加熱線42Bの断面積より小さい。
図6B及び
図11には、外側加熱線42Aと内側加熱線42Bとの外径の大小関係を誇張して図示してある。
【0020】
実施の形態においては、基端側から先端側に向かう往き加熱線と、先端側から基端側に戻る帰り加熱線とが接続されており、一本の長い抵抗加熱線として配置されているので、加熱ヒータユニット30の長さに対し、発熱量が高いものとなる。
【0021】
しかも、加熱ヒータユニット30の中心から半径方向の外側に外側加熱線42Aを、内側に内側加熱線42Bを有するので、加熱ヒータユニットの外周部のみに加熱線を配置する場合に比較して、加熱ヒータユニット30の断面積当たりの加熱線の配置密度を高めることができる。
【0022】
断面円形の加熱線の機械的強度は、円の断面係数の大きさに直接的に関係する。円の断面係数Zは、円の直径dと、Z=πd3/32なる関係にある。
したがって、断面円形の加熱線は円の直径(外径)が大きくなると、3乗の割合で機械的強度が高くなる。
【0023】
断面円形の加熱線の電気抵抗値は、円の断面積が小さいほど高くなり、円の直径dの2乗に反比例して高くなる。
【0024】
しかるに、実施の形態においては、外側加熱線42Aの断面積(外径)は、内側加熱線42Bの断面積(外径)より小さい。
したがって、外側加熱線42Aの発熱量は、内側加熱線42Bの発熱量より大きい。このことは、加熱ヒータユニット30の外側で大きな発熱が生じ、効率的に有底保護管20に対する放熱が行われることを意味している。その結果、溶融金属を効率的に加熱することができる(加熱出力が高まる。)。
一方、内側では小さい発熱が生じることを意味する。この内側で生じた発熱は、外径が小さい外側加熱線間の(外側加熱線と内側加熱線との外径が同じ場合における隙間に比較して)大きな隙間から有底保護管20に対する放熱が行われるので、内側での発熱の籠もり量が少ないものとなる。
【0025】
また、内側加熱線42Bの機械的強度(例えば、曲げ強度、耐歪み性、加熱に伴う耐断線に関する強度など)が外側加熱線42Aの機械的強度より高い。
加熱ヒータユニット30全体としては、外側加熱線42A及び内側加熱線42B全体として曲がりなどがなく平行状態を保ち、ヒータ碍子41に保持されている条件が必要となる。
しかるに実施の形態においては、内側加熱線42Bの機械的強度が高く、外側加熱線42Aの機械的強度が低い。
【0026】
このように実施の形態においては、CO2の排出量の低減に寄与する浸漬型加熱ヒータを使用するに際して、外側加熱線42A及び内側加熱線42B全体としての、曲がりなどがなく平行状態を保ち、ヒータ碍子41に保持できるとともに、加熱出力を高めることができる。
【0027】
外側加熱線42Aの外径/内側加熱線42Bの外径の比は、0.95~0.60が望ましい。より好ましくは0.93~0.80とすることができる。
【0028】
往き加熱線と、帰り加熱線とは、直接的に溶接により接続する、あるいは短接続線(図示せず)を介在させて溶接により接続することができる。実施の形態では、
図7及び
図18に示すように、外側加熱線42Aと内側加熱線42Bとを、直接に溶接により接続してある。
【0029】
ヒータ碍子41の挿通孔は、加熱ヒータユニット30の中心から半径方向の外側に位置する外側挿通孔41Aと、内側に位置する内側挿通孔41Bとを有している。
外側加熱線42Aが外側挿通孔41Aを挿通し、内側加熱線42Bが内側挿通孔41Bを挿通しており、外側加熱線42A及び内側加熱線42Bが、ヒータ碍子41によって、相互に接触して短絡することなく、平行状態に保持されている。
【0030】
ヒータ碍子41の挿通孔は、実施の形態では、加熱ヒータユニット30の中心から半径方向の外側に環状の位置において周方向に間隔を置いて形成された2以上、図示の形態では20個の外側挿通孔41Aと、加熱ヒータユニット30の中心から半径方向の内側に環状の位置において周方向に間隔を置いて形成された2以上、図示の形態では20個の内側挿通孔41Bとを有している。
なお、
図6Aに示すように、ヒータ碍子41の中心から半径方向の中心部の環状の位置において周方向に間隔を置いて中心部貫通孔41Cが形成されている。ヒータ碍子41に中心部貫通孔41Cを形成することで、ヒータ碍子41自体の重量を軽くし強度を保ちつつ、ヒータ碍子41の熱容量を低減して放熱させることができる。また、浸漬型加熱ヒータ10の長さを通常よりも短くした上で加熱出力を維持する必要がある場合には、加熱ヒータ一本の長い抵抗加熱線が上記の外側挿通孔41Aと内側挿通孔41Bだけでは挿通できない(足りない)ときに中心部貫通孔41Cを使用することもできる。
【0031】
複数のヒータ碍子41は、例えば
図8に示すように、先端側に先窄まりの中央突部41Dと、その一方側において一体的に半径方向に張り出す鍔部41Eとを有し、鍔部41Eから中央突部41Dに向かう凹部41aが形成されている。
一方のヒータ碍子41の中央突部41Dが、ヒータ碍子41の凹部41aに嵌入し、一方のヒータ碍子41と他方のヒータ碍子41とが連結されている。
図示の形態では、鍔部41Eから中央突部41Dを貫通する貫通孔41Fが形成され、貫通孔41Fの入口部分に凹部41aが形成されている。
後述するように、ヒータ碍子41はセラミックスであることが多い。ヒータ碍子41に貫通孔41Fを形成することで、セラミックスの肉厚を均一にすることで強度を保ちつつ、ヒータ碍子41の熱容量を低減して放熱させることができる。また、浸漬型加熱ヒータ10内部の温度を測定する場合に、貫通孔41Fに熱電対を挿入することもできる。
【0032】
外側加熱線42Aと内側加熱線42Bとは相互に接続され、複数回の往き帰りを繰り返しながら、導通する一本の加熱線が構成されている。
図11に示されているように、両端部は、それぞれ外側加熱線42Aよりも内側加熱線42Bの方が長い。その両端部の内側加熱線42Bが、
図1~
図3に示されている第1のリード棒45及び第2のリード棒46を介して電源(図示せず)に接続されている。
両端部の内側加熱線42Bとリード棒45及び第2のリード棒46とは、直接的に溶接により接続する、あるいは短接続線(図示せず)を介在させて溶接により接続することができる。実施の形態では、
図16に示すように、両端部の内側加熱線42Bとリード棒45及び第2のリード棒46とを短接続線を介在させて溶接により接続してある。
【0033】
電気的に導通する一本の加熱線を構成するために、
図6A、
図6B、
図12~
図14に示すように渡り線48A、48B、48Cが設けられ、一本の加熱線の両端が、第1のリード棒45及び第2のリード棒46に接続されている。
【0034】
かかる浸漬型加熱ヒータは、対象の溶融炉又は保持炉内に設置され、有底保護管20を介して溶融金属(例えばアルミニウム溶湯)の加熱に利用される。
【0035】
外側加熱線42A及び内側加熱線42Bの先端部及び基端部には、例えば
図9及び
図10に示す形態の適宜の枚数の平碍子43が設けられている。平碍子43には、加熱ヒータユニット30の中心から半径方向の外側に位置する外側挿通孔43Aと、内側に位置する内側挿通孔43Bとを有している。
外側加熱線42Aが外側挿通孔43Aを挿通し、内側加熱線42Bが内側挿通孔43Bを挿通しており、外側加熱線42A及び内側加熱線42Bが、平碍子43によって、相互に接触して短絡することなく、平行状態に保持されている。
実施の形態では、先端部の平碍子43は一枚、基端部の平碍子43は、
図1~では二枚重ねたものが2対、
図2~
図3では二枚、後述の実験例1に係る加熱ヒータユニットを示す
図15~
図17の写真上では、二枚重ねたものが2対設けられている。
【0036】
第1のリード棒45及び第2のリード棒46に対しては、ヘミット板44が設けられ、ナット47により固定されている。
【0037】
外側加熱線42Aと内側加熱線42Bとは、同一の材質もの、例えばカンタル(登録商標)AF(フェライト系の鉄・クロム・アルミ合金(FeCrAl合金))を使用できる。渡り線48A、48B、48Cについても同様である。
他方、異なる材質相違するものを接続させたものも使用できる。異なる材質の組み合わせとしては、鉄-クロム系(特に、鉄-クロム-アルミニウム系)と、ニッケル-クロム系の組み合わせを挙げることができる。
例えば、内側加熱線42Bは、発熱量を抑えるニッケル-クロム系の電熱線(最高温度1000~1150℃)とし、外側加熱線42Aは、発熱量を上げる鉄-クロム-アルミニウム系の電熱線(最高温度1400℃)とすることができる。
【0038】
ヒータ碍子41は、ラジアント碍子ともいい、非導電性で、かつ耐火・耐熱性の碍子である。例えば、ヒータ碍子41は、セラミックスであるムライト(3Al2O3・2SiO2(酸化アルミニウムと二酸化ケイ素の化合物))からなる。
平碍子43についても、同様の材質のものを使用できる。
【0039】
ヘミット板44は、例えば電気絶縁用セメント板としても使用可能な高強度セメント系断熱板である。熱伝導率が低いため、基端側からの外部への熱の放出を防止できる。
【0040】
有底保護管20の材質としては、耐熱性を有するように公知の無機物の焼結体(例えば、ファインセラミックス製)を使用できる。
有底保護管20の形状としては、例えばほぼ円柱筒状であり、一方は開放端とされ、他方は閉じられて、底部とされている。
使用に際しては、有底保護管20の開放端から加熱ヒータユニット30が挿入される。
【0041】
浸漬型加熱ヒータにおける外部への放熱効率の向上を確認するため、以下の実験を行った。
(実験例1)
図15~
図18は、作成した加熱ヒータユニットの写真である。
【0042】
実験例1の加熱ヒータユニット30は、表1に示したものであり、外側加熱線の外径を4.5mm、内側部加熱線の外径を5mmとし、各加熱線の材料はカンタル社製の「カンタルAF」を使用した。
加熱ヒータユニット30の全長は、リード棒の端部から1073.5mmとした。
次に、
図19に示すように、外径155mm、内径135mm、全長830mmのファインセラミックス製の有底保護管20内に前記加熱ヒータユニット30を組み込んで、加熱ヒータを作成した。
【0043】
【0044】
なお、加熱ヒータユニット30を前記有底保護管20内に組み込む際、加熱ヒータユニット30の外側加熱線と有底保護管20の内壁との距離を、
図19に示すように炉底側では約5mm、炉底側の逆側の天板側では約40mmそれぞれ離して設置した。また、直径105mmのヘミット板44と円盤状の平碍子43の間の空間を断熱層とするためガラスウールを詰めた。
【0045】
また、天板側の加熱ヒータユニット30と有底保護管20との間の空間にTcチューブ内に挿入されたK熱電対をヘミット板44から約550mmの位置に設置した。この際、加熱ヒータユニット30の外側加熱線とK熱電対との距離を約10mmとした。
【0046】
(比較例)
この比較例は従来品であり、加熱ヒータユニットの外側加熱線及び内側加熱線の各外径は5mmと同じ外径とし、各材料はカンタル社製のカンタルAFを使用し、その他は実験例1と同じ仕様とした。
【0047】
まず、2室型低圧鋳造用保持炉(株式会社トウネツ製「定湯面式LP用2槽炉」)の保持室に前記実験例1に係る加熱ヒータを設置した。
前記保持炉は、高さ800mm炉壁でアルミニウム溶湯を1,000kg収容できるものである。炉底から有底保護管20までの距離を100mmの位置に各加熱ヒータを水平方向に設置した(いわゆる横浸漬型ヒータとして設置した)。
その後、保持炉内に約680℃のアルミニウム溶湯を満量まで入れた。出力電力15kWで各加熱ヒータを加熱し、保持室の前記K熱電対の温度が約730℃になった時点から800℃付近まで昇温するまでの時間を測定した。
同様に、前記2室型低圧鋳造用保持炉の保持室に比較例を設置した。その他は実験例1と同じ条件で行い測定を実施した。
【0048】
実験例1と比較例の結果をグラフにまとめた(
図20を参照されたい。)。
実験例1では、240秒で800℃に達したが、比較例では240秒で約795℃であり、その後も実験を継続しても800℃に達することはなかった。
すなわち、実験例1は、比較例の従来品と比べ、加熱ヒータ外部への放熱効率が向上していることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の浸漬型加熱ヒータは、例えば、アルミニウム溶湯などの溶融金属を加熱する分野において利用可能性がある。
【符号の説明】
【0050】
10…浸漬型加熱ヒータ、20…有底保護管、30…加熱ヒータユニット、40…加熱線、41…ヒータ碍子、41A…外側挿通孔、41B…内側挿通孔、41C…中央突部、41D…鍔部、42A…外側加熱線、42B…内側加熱線、43…平碍子、43A…外側挿通孔、43B…内側挿通孔、44…ヘミット板、46…リード棒、48A,48B,48C…渡り線。
【要約】
【課題】脱CO
2の排出量の低減に寄与する浸漬型加熱ヒータにおいて、加熱出力を高める。
【解決手段】加熱ヒータユニット30は、基端側から先端側に向かう往き加熱線と、これに接続される先端側から基端側に戻る帰り加熱線と、前記加熱ヒータユニット30の長手方向に間隔を置いて複数設けられたヒータ碍子41と、を備えており、前記加熱ヒータユニット30は、中心から半径方向の外側に位置する外側加熱線42A、内側に位置する内側加熱線42Bを有し、前記外側加熱線42Aの外径が前記内側加熱線42Bの外径よりも小さい、
【選択図】
図6A