(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-24
(45)【発行日】2023-04-03
(54)【発明の名称】二酸化炭素固定物含有液の処理装置及び二酸化炭素固定物含有液の処理方法
(51)【国際特許分類】
C02F 9/00 20230101AFI20230327BHJP
C02F 1/10 20230101ALI20230327BHJP
C02F 1/12 20230101ALI20230327BHJP
C02F 1/38 20230101ALI20230327BHJP
C02F 1/44 20230101ALI20230327BHJP
B01D 61/02 20060101ALI20230327BHJP
B01D 61/14 20060101ALI20230327BHJP
B01D 61/58 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
C02F9/00
C02F1/10
C02F1/12
C02F1/38
C02F1/44 A
C02F1/44 D
B01D61/02 500
B01D61/14 500
B01D61/58
(21)【出願番号】P 2022153792
(22)【出願日】2022-09-27
【審査請求日】2022-10-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000206439
【氏名又は名称】大川原化工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【氏名又は名称】小池 成
(74)【代理人】
【識別番号】100132403
【氏名又は名称】永岡 儀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100217102
【氏名又は名称】冨永 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】古川 和邦
(72)【発明者】
【氏名】徐 建華
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-531732(JP,A)
【文献】特表2012-513944(JP,A)
【文献】特開2018-127712(JP,A)
【文献】特開2016-144791(JP,A)
【文献】特開2010-064197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F1/02-38、44、58-64、9/00-20
B01D61/00-71/82
C01F1/00-17/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素が溶け込んだ海水から連続反応器によって連続的に生成される炭酸化合物を含む液体である二酸化炭素固定物含有液を処理するものであり、
前記二酸化炭素固定物含有液を貯蔵する貯蔵タンクと、
前記貯蔵タンクに貯蔵された前記二酸化炭素固定物含有液を濃縮して濃縮液とする濃縮手段と、
前記濃縮液から水分を除去する乾燥手段と、
を備え
、
前記濃縮手段が、遠心分離機を備え、
前記濃縮手段が、前記遠心分離機の前に、前記濃縮液を濃縮する追加濃縮部が配置され、
前記追加濃縮部は、限外ろ過膜及び当該限外ろ過膜の二次側に接続された逆浸透膜を備え、前記逆浸透膜の一次側が前記遠心分離機に接続されている、二酸化炭素固定物含有液の処理装置。
【請求項2】
前記乾燥手段が、噴霧乾燥機または伝熱式乾燥機である、請求項
1に記載の二酸化炭素固定物含有液の処理装置。
【請求項3】
前記乾燥手段が、火力発電所の排ガスを利用したものである、請求項
2に記載の二酸化炭素固定物含有液の処理装置。
【請求項4】
二酸化炭素が溶け込んだ海水から連続反応器によって連続的に生成される炭酸化合物を含む液体である二酸化炭素固定物含有液を処理する方法であり、
前記二酸化炭素固定物含有液を貯蔵タンクに貯蔵する液体貯蔵工程と、
前記貯蔵タンクに貯蔵された前記二酸化炭素固定物含有液を濃縮手段によって濃縮して濃縮液とする液体濃縮工程と、
前記液体濃縮工程で濃縮された前記濃縮液から水分を除去する乾燥工程と、を有
し、
前記液体濃縮工程における前記濃縮手段として、遠心分離機を備えるものを用い、
前記液体濃縮工程における前記濃縮手段として、前記遠心分離機の前に、前記濃縮液を濃縮する追加濃縮部を備えるものを用い、
前記追加濃縮部が、限外ろ過膜及び当該限外ろ過膜の二次側に接続された逆浸透膜を備え、前記逆浸透膜の一次側が前記遠心分離機に接続されているものである、二酸化炭素固定物含有液の処理方法。
【請求項5】
前記乾燥工程において、乾燥手段として噴霧乾燥機または伝熱式乾燥機を用いる、請求項
4に記載の二酸化炭素固定物含有液の処理方法。
【請求項6】
前記乾燥工程において、火力発電所の排ガスを利用して前記濃縮液から水分を除去する、請求項
5に記載の二酸化炭素固定物含有液の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素固定物含有液の処理装置及び二酸化炭素固定物含有液の処理方法に関する。更に詳しくは、大気中に増加している二酸化炭素が溶け込んだ海水から連続反応器によって連続的に生成される炭酸化合物を含む液体の処理装置及び二酸化炭素固定物含有液の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンニュートラル活動として、2021年に米カルフォルニア大学より「シングルステップ炭素隔離貯留(single-step carbon sequestration and storage:sCS2)」が提案された(例えば、非特許文献1参照)。この提案内容は、大気中の二酸化炭素を直接回収するのではなく、海水から二酸化炭素を抽出するというものである。
【0003】
ここで、海水は、単位体積当たりで、大気の約150倍の二酸化炭素を保持している。
【0004】
大気と海は、平衡状態にあるため、海水から二酸化炭素を抽出すれば、大気中の二酸化炭素が海水に溶け込む。そして、海水中に溶け込んだ二酸化炭素を反応器(連続反応器)によって二酸化炭素化合物とし、これを海洋中に戻す。このようにすれば、二酸化炭素化合物は、年月をかけて海洋中の魚などの動物に蓄積されたり、或いは、深海で年月をかけて沈降し海底に堆積して圧縮固化されたりする。上記提案は、このようにして、海水中に溶け込んだ二酸化炭素を反応器によって二酸化炭素化合物とすることで、海水中の二酸化炭素を減少させようというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【文献】ACS Sustainable Chemistry & Engineering(2021,9,1073-1089)「Development of a separation system for CO2 compounds produced in a seawater CO2 extraction reactor.」
【文献】平成30年度 火力原子力発電大会(関西大会)研究発表(平成30年10月25日)「排煙脱硫装置における噴霧乾燥技術を利用した無排水化技術の開発」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、非特許文献1に記載された連続反応器(フローリアクター)を利用する方法によって炭酸塩の作製は可能であるが、作製された炭酸塩を分離抽出せずに海洋に戻した場合、自然の力で海洋中の炭酸塩を分離することになる。一方で、このような方法では長い年月がかかる。また、この長い年月の間に炭酸塩(炭酸化合物)が分解して二酸化炭素を発生させてしまう可能性もある。
【0008】
このようなことから、二酸化炭素が溶け込んだ海水から連続反応器によって連続的に生成される炭酸化合物を含む液体(二酸化炭素固定物含有液)を、連続して大量に処理して、固体物(即ち固形物)と、二酸化炭素を減少させた水(海水、真水等)である残液とを早期に分離することが可能である二酸化炭素固定物含有液の処理装置及び二酸化炭素固定物含有液の処理方法の開発が切望されていた。
【0009】
なお、所定の対象物を処理する技術として、非特許文献2には、火力発電所の排煙脱硫装置から出る排水液の乾燥処理に関するものが記載され、また、特許文献1には、福島第一原子力発電所からの汚染水を処理したALPS処理水を対象物としたものが記載されている。
【0010】
本発明は、上述のような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、二酸化炭素が溶け込んだ海水から連続反応器によって連続的に生成される炭酸化合物を含む液体(二酸化炭素固定物含有液)を、大量に、例えば火力発電所などの排ガスを利用して濃縮し乾燥させ、早期に、固体物は取り出して有効利用できるようにし、更に、二酸化炭素を減少させた大量の水(海水、真水等)である残液を海洋中に戻すことにより、この残液によって海洋中の二酸化炭素濃度を減少させ、結果として地球の大気中に増加している二酸化炭素を減少させることができる二酸化炭素固定物含有液の処理装置及び二酸化炭素固定物含有液の処理方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明により、以下の二酸化炭素固定物含有液の処理装置及び二酸化炭素固定物含有液の処理方法が提供される。
【0012】
[1] 二酸化炭素が溶け込んだ海水から連続反応器によって連続的に生成される炭酸化合物を含む液体である二酸化炭素固定物含有液を処理するものであり、
前記二酸化炭素固定物含有液を貯蔵する貯蔵タンクと、
前記貯蔵タンクに貯蔵された前記二酸化炭素固定物含有液を濃縮して濃縮液とする濃縮手段と、
前記濃縮液から水分を除去する乾燥手段と、
を備え、
前記濃縮手段が、遠心分離機を備え、
前記濃縮手段が、前記遠心分離機の前に、前記濃縮液を濃縮する追加濃縮部が配置され、
前記追加濃縮部は、限外ろ過膜及び当該限外ろ過膜の二次側に接続された逆浸透膜を備え、前記逆浸透膜の一次側が前記遠心分離機に接続されている、二酸化炭素固定物含有液の処理装置。
【0016】
[2] 前記乾燥手段が、噴霧乾燥機または伝熱式乾燥機である、前記[1]に記載の二酸化炭素固定物含有液の処理装置。
【0017】
[3] 前記乾燥手段が、火力発電所の排ガスを利用したものである、前記[2]に記載の二酸化炭素固定物含有液の処理装置。
【0018】
[4] 二酸化炭素が溶け込んだ海水から連続反応器によって連続的に生成される炭酸化合物を含む液体である二酸化炭素固定物含有液を処理する方法であり、
前記二酸化炭素固定物含有液を貯蔵タンクに貯蔵する液体貯蔵工程と、
前記貯蔵タンクに貯蔵された前記二酸化炭素固定物含有液を濃縮手段によって濃縮して濃縮液とする液体濃縮工程と、
前記液体濃縮工程で濃縮された前記濃縮液から水分を除去する乾燥工程と、を有し、
前記液体濃縮工程における前記濃縮手段として、遠心分離機を備えるものを用い、
前記液体濃縮工程における前記濃縮手段として、前記遠心分離機の前に、前記濃縮液を濃縮する追加濃縮部を備えるものを用い、
前記追加濃縮部が、限外ろ過膜及び当該限外ろ過膜の二次側に接続された逆浸透膜を備え、前記逆浸透膜の一次側が前記遠心分離機に接続されているものである、二酸化炭素固定物含有液の処理方法。
【0022】
[5] 前記乾燥工程において、乾燥手段として噴霧乾燥機または伝熱式乾燥機を用いる、前記[4]に記載の二酸化炭素固定物含有液の処理方法。
【0023】
[6] 前記乾燥工程において、火力発電所の排ガスを利用して前記濃縮液から水分を除去する、前記[5]に記載の二酸化炭素固定物含有液の処理方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明の二酸化炭素固定物含有液の処理装置は、二酸化炭素が溶け込んだ海水から連続反応器によって連続的に生成される炭酸化合物を含む液体(二酸化炭素固定物含有液)を、海洋に戻す場合に比べて早期に且つ大量に処理して、当該液体に含まれる炭酸化合物などの固体物を取り出し、更に、二酸化炭素の含有量を減少させた大量の水、即ち、処理後液体(海水、真水)を海洋中に戻すことができるという効果を奏するものである。なお、海洋中に戻された処理後液体は二酸化炭素が溶け込み易く、大気中の二酸化炭素を取り込みその濃度を減少させることができ、その結果として、石油などの化石燃料の消費等に起因して大気中に増加している二酸化炭素を減少させることができる。
【0025】
本発明の二酸化炭素固定物含有液の処理方法によれば、大気中に増加している二酸化炭素を減少させることができるという効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の二酸化炭素固定物含有液の処理装置の一の実施形態を模式的に示す説明図である。
【
図2】連続反応器によって海水を処理し、二酸化炭素固定物含有液と連続反応器排水を排出する態様を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。即ち、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に属することが理解されるべきである。
【0028】
(1)二酸化炭素固定物含有液の処理装置:
本発明の二酸化炭素固定物含有液の処理装置の一の実施形態は、
図1に示す二酸化炭素固定物含有液の処理装置100である。この二酸化炭素固定物含有液の処理装置100は、二酸化炭素が溶け込んだ海水から連続反応器10(
図2参照)によって連続的に生成される「炭酸化合物を含む液体」である二酸化炭素固定物含有液を処理する装置であり、二酸化炭素固定物含有液を貯蔵する貯蔵タンク11と、この貯蔵タンク11に貯蔵された二酸化炭素固定物含有液を濃縮して濃縮液とする濃縮手段20と、濃縮液から水分を除去する乾燥手段30と、を備えるものである。なお、
図2に示すように、連続反応器10からは、二酸化炭素固定物含有液以外に、二酸化炭素濃度が低い液体(連続反応器排水)が排出され、この連続反応器排水は、二酸化炭素濃度が低く、H
2O、NaCl、MgCl
2などを含むものであり海洋に放出することができる。
【0029】
この二酸化炭素固定物含有液の処理装置100は、二酸化炭素が溶け込んだ海水から連続反応器によって連続的に生成される炭酸化合物を含む液体(即ち、本明細書において「二酸化炭素固定物含有液」と記すことがある)を、大量に、例えば火力発電所などの排ガスを利用して濃縮し乾燥させ、固体物は取り出して有効利用できるようにし、更に、二酸化炭素を減少させた(二酸化炭素が極めて少なくなった)大量の水(海水、真水等)である残液を海洋中に戻すことにより、この残液によって海洋中の二酸化炭素濃度を減少させ、結果として地球の大気中に増加している二酸化炭素を減少させることができる。
【0030】
上記の通り、連続反応器(フローリアクター)の稼働と連続して、二酸化炭素固定物含有液を海洋中に戻すことなく固形物である炭酸化合物(以下、「CO2化合物」と記す場合がある)を取り出しつつ、例えば水道水(飲料水や農業用水など)に用いることができる水分を得ることができる。
【0031】
なお、本発明の処理装置を日本の既設の火力発電設備のおよそ全て(650台)に設置した場合、1年間のCO2削減量は1872.2万トンに相当する。これは、2030年度までの日本の全火力発電所のCO2削減合計目標6000万トンの31.2%に相当する。
【0032】
(1-1)貯蔵タンク:
貯蔵タンク11は、二酸化炭素固定物含有液を貯蔵するものである。この貯蔵タンク11は、特に制限はなく従来公知の貯蔵タンクを使用することができるが、海水を含む液体を貯蔵するため、例えば、耐塩性を有するものを用いることができる。
【0033】
また、貯蔵タンクの大きさ(容積)についても特に制限はなく適宜選択することができるが、例えば、100m3程度(例えば、1~10000m3)のものとすることができる。
【0034】
ここで、「二酸化炭素が溶け込んだ海水から連続反応器によって連続的に生成される炭酸化合物を含む液体」である二酸化炭素固定物含有液は、その製造方法について特に制限はなく、例えば、CO2の連続反応システムにおいて得られる炭酸化合物を含む液体である。このCO2の連続反応システムは、海水中のCaイオンと炭酸種イオン(HCO3
-、CO3
2-)とを電気化学処理によって反応させ、炭酸カルシウム(CaCo3)を生成し、この炭酸カルシウム等を含む炭酸化合物を含む液体(二酸化炭素固定物含有液)を作製するものである。なお、海水は、主要成分として、H2O、NaCl、MgCl2、Ca2+、Mg2+、HCO3
-、CO3
2-などを含有するものである。
【0035】
この生成した炭酸カルシウムは、微小粒子(0.1~数μm)のため、その他の成分と分離することは容易ではない。
【0036】
(1-2)濃縮手段:
濃縮手段20は、貯蔵タンク11に貯蔵された液体(二酸化炭素固定物含有液)を濃縮して濃縮液とするものである。この濃縮手段20では、液-液分離を行う。つまり、濃縮手段20は、水分(真水など)と、炭酸化合物を含む濃縮液とに分離する。
【0037】
この濃縮手段20を用いることによって、乾燥手段30における処理効率を向上させることができる。更に、炭酸化合物の回収効率を向上させることができる。より具体的には、乾燥手段の熱効率を4.5倍程度とすることができ、このように熱効率が向上することにより乾燥手段の熱源である火力発電等からの排ガス利用量を78%程度削減させることができる。
【0038】
濃縮手段20は、液体を濃縮することができる限り特に制限はないが、例えば、
図1に示す遠心分離機23などを挙げることができる。遠心分離機23を用いることによって、二酸化炭素固定物含有液を効率よく大量に濃縮処理することができる。
図1では、濃縮された二酸化炭素固定物含有液は、乾燥手段30に送液し、これ以外は海洋に戻している。海洋に戻された液体は、含有する二酸化炭素濃度が低く、海洋による二酸化炭素の吸収に寄与する。
【0039】
更には、本発明においては、濃縮手段20が、遠心分離機23の前に、濃縮液を濃縮する追加濃縮部25を更に配置することがよい。このような追加濃縮部25を設けることによって、二酸化炭素固定物含有液を更に回収効率よく濃縮処理することができる。
【0040】
そして、この追加濃縮部25は、限外ろ過膜21及びこの限外ろ過膜21の二次側(出口側空間)に接続された逆浸透膜22を備え、この逆浸透膜22の一次側(入口側空間、即ち、逆浸透膜22を用いて濃縮された液が存在する側の空間)が遠心分離機23に接続されているものであることがよい。限外ろ過膜21は、
図1に示すように、粗ろ過器などを介して貯蔵タンク11に接続することできる。
【0041】
限外ろ過膜21を備えることによって、炭酸カルシウムのような微小粒子をその他の夾雑物を良好に分離することができ、炭酸化合物の回収効率を更に向上させることができる。また、逆浸透膜22の前に限外ろ過膜21を備え、被処理液中の固形物を除去することで、逆浸透膜22の寿命を延ばすことができる。
【0042】
逆浸透膜22を備えることによって、炭酸化合物の濃度が低い水分(真水など)を得ることができる。また、この逆浸透膜22を通過した水分は、国や地域によっては水道基準(飲料基準)を満たすので水道水としても使用でき、例えば、サウジアラビアなどの砂漠地帯では飲料水として使用できる。水道基準の厳しい日本などでは、飲料水ではなく、農業用水や洗濯水などに利用することができる。
【0043】
(1-3)乾燥手段:
乾燥手段30は、濃縮液から水分を除去し、乾燥された炭酸化合物(粉体)を得るものである。この乾燥手段30は、特に制限はなく従来公知の乾燥手段を採用することができ、例えば、伝熱式乾燥機、噴霧乾燥機などを挙げることができる。これらの中でも、噴霧乾燥機を用いることがよい。この噴霧乾燥機を用いると、より効率よく濃縮液を乾燥させることができる。具体的には、伝熱式乾燥機は、1台当たりの処理液量が少ないため大量に処理をしようとすると、複数台を用意する必要があるが、噴霧乾燥機を用いると、大容量の乾燥が可能であり、1台で効率良く乾燥させることができる。更に、火力発電所などの排ガスを熱源として利用することができ、資源を有効に活用し地球環境に配慮することができる。
【0044】
伝熱式乾燥機としては、従来公知の伝熱式乾燥機を適宜採用することができる。
【0045】
噴霧乾燥機としては、従来公知の噴霧乾燥機を適宜採用することができる。
【0046】
乾燥手段30は、固-液分離を行うものである。つまり、濃縮液中のCO
2化合物は、乾燥されて固形物(粉体)として回収され、濃縮液中の水分は、水蒸気になり、大気中に排ガスとして放出される(
図1参照)。
【0047】
なお、乾燥手段30に使用する熱源としては、特に制限はないが、例えば、火力発電所やごみ発電所などの高温排ガスを利用することができる。特に火力発電所の排ガスを利用することができる(
図1参照)。このような熱源を利用することで、乾燥手段30から無用な二酸化炭素が発生することを防止することができ、地球環境に配慮することができる。
【0048】
(1-4)その他の機器:
本発明の二酸化炭素固定物含有液の処理装置は、
図1に示す粗ろ過器41などのその他の機器を更に備えていてもよい。粗ろ過器41は、例えば、貯蔵タンク11と濃縮手段20との間に配置することができる。粗ろ過器41によって、二酸化炭素固定物含有液中の固形物(雑固形物)を取り除き、海水とCO
2化合物の混合物にする。
図1では、粗ろ過器41の後に、チェックフィルタ43を備えている。また、粗ろ過器41の前には、ろ過ポンプ51が配置され、遠心分離機23と噴霧乾燥機31の前にそれぞれポンプ(高圧ポンプ)53が配置されている。なお、粗ろ過器41とチェックフィルタ43は、限外ろ過膜21と逆浸透膜22を備える1つの装置であるものを用いることができる。つまり、遠心分離機23の前に配置する追加濃縮部25としては、粗ろ過器41、チェックフィルタ43、限外ろ過膜21、及び逆浸透膜22を備える1つの装置を用いることができる。
【0049】
(2)本発明の処理装置の使用方法(二酸化炭素固定物含有液の処理方法):
本発明の二酸化炭素固定物含有液の処理方法は、二酸化炭素が溶け込んだ海水から連続反応器によって連続的に生成される炭酸化合物を含む液体である二酸化炭素固定物含有液を処理する方法であり、二酸化炭素固定物含有液を貯蔵タンクに貯蔵する液体貯蔵工程と、貯蔵タンクに貯蔵された二酸化炭素固定物含有液を濃縮手段によって濃縮して濃縮液とする液体濃縮工程と、液体濃縮工程で濃縮された濃縮液から水分を除去する乾燥工程と、を有するものである。本発明の二酸化炭素固定物含有液の処理方法は、本発明の二酸化炭素固定物含有液の処理装置を用いたものとすることができる。
【0050】
このような処理方法によれば、石油などの化石燃料の消費等に起因して大気中に増加している二酸化炭素を減少させることができる。
【0051】
(2-1)液体貯蔵工程:
液体貯蔵工程は、二酸化炭素が溶け込んだ海水から連続反応器によって連続的に生成される「炭酸化合物を含む液体」である二酸化炭素固定物含有液を貯蔵タンク11(
図1参照)に貯蔵する工程である。この二酸化炭素固定物含有液は、上述した本発明の二酸化炭素固定物含有液の処理装置で説明したものと同様のものである。なお、連続反応器から排出される上記二酸化炭素固定物含有液を上記貯蔵タンクに直接供給してもよいし、一旦別のタンクに貯めた後、上記貯蔵タンクに供給してもよい。
【0052】
貯蔵タンクの大きさは、上述した本発明の二酸化炭素固定物含有液の処理装置で説明したものと同様のものとすることができる。
【0053】
(2-2)液体濃縮工程:
液体濃縮工程は、貯蔵タンク11に貯蔵された二酸化炭素固定物含有液を濃縮手段20(
図1参照)によって濃縮して濃縮液とする工程である。本工程では、濃縮により生じた水分(真水)を得ることができ、この水分は、例えば水道水(飲料水や農業用水など)などとして利用することができる。
【0054】
なお、濃縮液の重量濃度の範囲は、10~50質量%とすることができるが、噴霧乾燥機に供給する際には約38質量%程度(例えば、30~45質量%)に濃縮することが望ましい。このような程度に濃縮することによって、乾燥工程への供給がし易く、乾燥効率も良くなる。
【0055】
濃縮手段20は、上述した本発明の二酸化炭素固定物含有液の処理装置で説明したものと同様のものである。即ち、以下の遠心分離機23(
図1参照)、追加濃縮部25(
図1参照)などを挙げることができる。
【0056】
上述したように、本工程における濃縮手段として、遠心分離機を備えるものを用いることができる。遠心分離機23を用いることによって、二酸化炭素固定物含有液を効率よく大量に濃縮処理することができる。
【0057】
更に、本工程における濃縮手段20として、遠心分離機23の前に、濃縮液を濃縮する追加濃縮部25を備えるものを用いることができる。
【0058】
そして、追加濃縮部25が、
図1に示すように、限外ろ過膜21及びこの限外ろ過膜21の二次側(出口側空間)に接続された逆浸透膜22を備え、この逆浸透膜の一次側(入口側空間、即ち、逆浸透膜22を用いて濃縮された液が存在する側の空間)が遠心分離機23に接続されているものであることがよい。
【0059】
(2-3)乾燥工程:
乾燥工程は、液体濃縮工程で濃縮された濃縮液から水分を除去する工程である。本工程によって、乾燥した炭酸化合物(粉体)を得ることができる。このように、二酸化炭素を粉体状の炭酸化合物として処理することによって、二酸化炭素を良好に固定することができる。
【0060】
本工程において濃縮液から水分を除去する手段である乾燥手段30(
図1参照)に使用する熱源としては、特に制限はないが、例えば、火力発電所やごみ発電所などの高温排ガスを挙げることができる。特に火力発電所の排ガスを挙げることができる。このような熱源を利用することで、乾燥工程で無用な二酸化炭素が発生することを防止することができ、地球環境に配慮することができる。乾燥手段30としては、噴霧乾燥機や伝熱式乾燥機を用いることができ、その際、上記の通り、熱源として火力発電所やごみ発電所などの高温排ガスを用いることができる。乾燥手段30としては、噴霧乾燥機を用いることがよい。噴霧乾燥機を用いると、より効率よく濃縮液を乾燥させることができる。
【実施例】
【0061】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例及び比較例に限定されるものではない。
【0062】
(実施例1)
まず、温室効果ガス世界資料センター(WDCGC)によると、2020年の世界の大気中のCO2平均濃度は413.2ppmである。そして、大気1m3中にCO2が0.000413Nm3含まれる。更に、海水は、大気の約150倍のCO2を含んでいると言われている。このようなことから、1m3海水中に、0.000413×150倍=0.062Nm3(62L)のCO2量、即ち、重量に換算すると、62L×44g/mol÷22.4L/mol=121.8gである。つまり、海水1m3中のCO2重量=121.8gである。
【0063】
次に、CO2連続反応器(二酸化炭素が溶け込んだ海水から連続的に炭酸化合物を含む液体を生成する反応器)での反応率を(CaOは100%、CO2のみの反応率が約80%)とし、平均90%とすると、海水1m3中の反応したCO2重量=「121.8g」×0.9=109.6g/m3である。そして、CaCO3=100g/mol、CO2=44g/molであるから、109.6g/m3÷44g/mol×100g/mol=249.1g/m3である。
【0064】
更に、海水の比重は、25℃で約1.026ton/m3であるから、海水1m3=1,026,000g中に249.1gのCaCO3が生成されることになる。
【0065】
そこで、本発明の二酸化炭素固定物含有液の処理装置を用いたシミュレーション結果を表1、表2に示す。
【0066】
【0067】
【0068】
実施例1で使用した、限外ろ過膜及び逆浸透膜を備える装置(濃縮手段)について以下に示す。当該装置として、水処理エース株式会社製のSD-FD1-RX(特)型を1台使用した。この装置は以下の条件で運転した。
濃縮前量 108,473kg/h
濃縮後 真水 41,762kg/h
濃縮後 濃縮水 66,711kg/h
濃度 12.7%
全乾物分 8,473kg/h
動力 135kw
【0069】
実施例1で使用した遠心分離機(濃縮手段)について以下に示す。当該装置として、巴工業株式会社製のPTM350(特)型を1台使用した。この装置は以下の条件で運転した。
濃縮前量 66,711kg/h
濃縮後 濃縮水 22,239kg/h
濃度 38.1%
全乾物分 8,473kg/h
動力 37kw
【0070】
実施例1で使用した噴霧乾燥機(乾燥手段)について以下に示す。当該装置として、大川原化工機社製のONT-78(特)型スプレードライヤーを1台使用した。この装置は以下の条件で運転した。
乾燥室内径: 7.8m
原料液量: 22,239kg/h
水分蒸発量: 13,766kg/h
乾燥CaCO3量: 8,473kg/h
乾燥必要排ガス量: 371,736m3/h(350℃)
必要動力: 合計210kw
(微粒化用155kw+原液供給ポンプ55kw)
【0071】
(比較例1)
濃縮手段を用いない場合、乾燥手段における熱効率が悪くなる。その結果、乾燥手段における熱源に必要なエネルギー量が大きくなる。また、炭酸化合物の回収効率が十分でなくなる。逆に言えば、濃縮手段を備えることによって、乾燥手段における熱効率を4.5倍程度とすることができ、火力発電等からの排ガス利用量を78%程度削減させることができる。
【0072】
以上から分かるように、本発明の二酸化炭素固定物含有液の処理装置及び処理方法によれば、二酸化炭素が溶け込んだ海水から連続反応器によって連続的に生成される炭酸化合物を含む液体(二酸化炭素固定物含有液)を、大量にかつ海洋に戻す場合に比べて早期に処理して、当該液体に含まれる炭酸化合物などの固体物を取り出しつつ、二酸化炭素の含有量を減少させた大量の水(海水、真水等)を得ることができることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の二酸化炭素固定物含有液の処理装置は、二酸化炭素が溶け込んだ海水から連続反応器によって連続的に生成される炭酸化合物を含む液体を早期かつ大量に処理する処理装置として利用することができる。本発明の二酸化炭素固定物含有液の処理方法は、二酸化炭素が溶け込んだ海水から連続反応器によって連続的に生成される炭酸化合物を含む液体を早期かつ大量に処理する方法として採用することができる。
【符号の説明】
【0074】
10:連続反応器、11:貯蔵タンク、20:濃縮手段、21:限外ろ過膜、22:逆浸透膜、23:遠心分離機、25:追加濃縮部、30:乾燥手段、31:噴霧乾燥機、41:粗ろ過器、43:チェックフィルタ、51:ろ過ポンプ、53:高圧ポンプ、100:二酸化炭素固定物含有液の処理装置。
【要約】
【課題】二酸化炭素が溶け込んだ海水から連続反応器によって連続的に生成される炭酸化合物を含む液体である二酸化炭素固定物含有液を、早期かつ大量に処理して、当該二酸化炭素固定物含有液に含まれる炭酸化合物などの固体物を取り出しつつ、二酸化炭素の含有量を減少させた大量の水(海水、真水等)を得ることができる、二酸化炭素固定物含有液の処理装置を提供する。
【解決手段】
二酸化炭素が溶け込んだ海水から連続反応器によって連続的に生成される炭酸化合物を含む液体である二酸化炭素固定物含有液を処理するものであり、二酸化炭素固定物含有液を貯蔵する貯蔵タンク11と、この貯蔵タンク11に貯蔵された二酸化炭素固定物含有液を濃縮して濃縮液とする濃縮手段20と、濃縮液から水分を除去する乾燥手段30と、を備える、二酸化炭素固定物含有液の処理装置100。
【選択図】
図1