(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-24
(45)【発行日】2023-04-03
(54)【発明の名称】シートキャパシタ及びバッテリー
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20230327BHJP
H01G 4/12 20060101ALI20230327BHJP
H01G 4/38 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
H01G4/30 201D
H01G4/30 201L
H01G4/30 311D
H01G4/12
H01G4/38 B
(21)【出願番号】P 2022177833
(22)【出願日】2022-11-07
【審査請求日】2022-11-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522434059
【氏名又は名称】株式会社アクアライン
(74)【代理人】
【識別番号】100104569
【氏名又は名称】大西 正夫
(72)【発明者】
【氏名】川上 亮
【審査官】木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-179923(JP,A)
【文献】特開2007-013105(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0006393(US,A1)
【文献】特開平10-097945(JP,A)
【文献】特開昭58-023114(JP,A)
【文献】特表2013-545291(JP,A)
【文献】特開2006-179925(JP,A)
【文献】国際公開第2010/137522(WO,A1)
【文献】特開平01-151218(JP,A)
【文献】特開2021-093410(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/30
H01G 4/12
H01G 4/38
H01G 4/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1,第2の電極と、第1,第2の電極の間に挟まれた誘電体とを有したキャパシタであって、第1の電極としての第1の電極シートと、前記誘電体としての誘電体シートと、第2の電極としての第2の電極シートとを互いに重ね合わせて接着材により貼着され
ており、第1,第2の電極シートの面上には、前記誘電体シートとの境界面に集電層が各々作成され、前記集電層は、集電層構成部材が導電性接着剤又は金属混入バインダーにより第1,第2の電極シートの面上に各々固着され、前記集電層構成部材は、多孔質絶縁体に吸着された金属微粒子であり、当該多孔質絶縁体の粒子が前記導電性接着剤又は金属混入バインダーとともに第1,第2の電極シートの面上に各々塗布して固着されたシートキャパシタ。
【請求項2】
請求項1のシートキャパシタと、前記キャパシタにおける第1,第2の電極シートに各々電気接続される第1,第2の外部端子とを備えたバッテリー。
【請求項3】
第1,第2の電極と、第1,第2の電極の間に挟まれた誘電体とを有したキャパシタを備え、当該キャパシタに電力を充放電するバッテリーにおいて、第1,第2の電極の面上には、前記誘電体との境界面に集電層が各々作成されており、前記集電層は、集電層構成部材が導電性接着剤又は金属混入バインダーにより第1,第2の電極の表面上に各々固着されており、前記集電層構成部材は、多孔質絶縁体に吸着された金属微粒子であり、当該多孔質絶縁体の粒子が前記導電性接着剤又は金属混入バインダーとともに第1,第2の電極の表面上に各々塗布して固着されたバッテリー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子機器等のバッテリーとして広く使用可能なシートキャパシタ及びバッテリーに関する。
【背景技術】
【0002】
キャパシタはリチウムイオン電池等の化学反応を伴う二次電池に比べると電気容量が小さいと言えるが、急速な充放電が可能であることに加えて繰り返し使用による性能低下が非常に小さいという特徴を有している。このようなキャパシタの電気容量を大きくする技術の一つとして、キャパシタの電極表面上に電極実効面積を大きくするための集電層を形成するという提案がある(特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6903276号公報
【文献】特許第6903277号公報
【文献】実用新案登録第3216923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来例による場合、キャパシタを製造するのに大掛かりな半導体製造装置の利用が必要であり、この点で製造上の低コスト化を図ることが困難である。電気容量の大きなキャパシタについては種々多様な技術の組み合わせにより開発されると予想されるものの、製造上の低コスト化を図ることは非常に困難であると言える。また、このような問題が解消されない限り、キャパシタがバッテリーとして広く利用されることはないと考えられる。
【0005】
本発明は上記背景の下で創作されたものであって、その目的とするところは、製造上の低コスト化を図ることが可能なシートキャパシタ及びバッテリーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るシートキャパシタは、第1,第2の電極と、第1,第2の電極の間に挟まれた誘電体とを有したキャパシタであって、第1の電極としての第1の電極シートと、前記誘電体としての誘電体シートと、第2の電極としての第2の電極シートとを互いに重ね合わせて接着材により貼着されており、第1,第2の電極シートの面上には、前記誘電体シートとの境界面に集電層が各々作成され、前記集電層は、集電層構成部材が導電性接着剤又は金属混入バインダーにより第1,第2の電極シートの面上に各々固着され、前記集電層構成部材は、多孔質絶縁体に吸着された金属微粒子であり、当該多孔質絶縁体の粒子が前記導電性接着剤又は金属混入バインダーとともに第1,第2の電極シートの面上に各々塗布して固着されている。
【0007】
上記構成のシートキャパシタによる場合、電極シートと誘電体シートとが接着剤で貼り合わされた構成になっていることから、印刷機械技術を専ら利用して容易に製造することが可能になる。また、従来とは異なり大掛かりな半導体製造装置の利用が必要にならず、この点で製造上の低コスト化を図ることが可能になる。
【0009】
また、第1,第2の電極シートに集電層が作成された構成になっていることから、電極表面上の実効面積が大きくなり、これに伴って、電気容量が大きくなる。よって、キャパシタの高性能化及び低コスト化を図ることが可能になる。
【0011】
更に、印刷機械技術を専ら利用して集電層が作成可能になっていることから、この点で製造上の低コスト化を一層図ることが可能になる。よって、キャパシタの高性能化及び低コストを一層図ることが可能になり、ひいては、キャパシタがバッテリーとして広く利用されることになる。
【0013】
特に、多数の金属微粒子が三次元的に且つ間隔を空けて第1,第2の電極シートの面上にわたって広く配置されることから、電極表面上の実効面積が一層大きくなり、これに伴って、電気容量が一層大きくなる。しかも集電層の作成が依然として容易である。よって、キャパシタの高性能化及び低コストを一層図ることが可能になる。
【0014】
本発明に係るバッテリーは、上記シートキャパシタと、同キャパシタにおける第1,第2の電極シートに各々電気接続される第1,第2の外部端子とを備えている。
【0015】
上記構成のバッテリーによる場合、上記シートキャパシタを用いた構成になっていることから、バッテリーの大容量化、低コスト化及び小型軽量化を図ることができ、これに伴って利用範囲が拡大される。
【0016】
本発明に係る他のバッテリーは、第1,第2の電極と、第1,第2の電極の間に挟まれた誘電体とを有したキャパシタを備え、当該キャパシタに電力を充放電するバッテリーであって、第1,第2の電極の面上には、前記誘電体との境界面に集電層が各々作成されており、前記集電層は、集電層構成部材が導電性接着剤又は金属混入バインダーにより第1,第2の電極の表面上に各々固着されており、前記集電層構成部材は、多孔質絶縁体に吸着された金属微粒子であり、当該多孔質絶縁体の粒子が前記導電性接着剤又は金属混入バインダーとともに第1,第2の電極の表面上に各々塗布して固着されたものになっている。
【0017】
上記構成のバッテリーによる場合、集電層を有する構成になっていることから、電極表面上の実効面積が大きくなり、これに伴って、電気容量が大きくなる。しかも印刷機械技術を専ら利用して集電層が作成可能になっていることから、この点で製造上の低コスト化を図ることが可能になる。よって、バッテリーの高性能化及び低コストを図ることが可能になる。
【0019】
また、多数の導電性微粒子が三次元的に且つ間隔を開けて第1,第2の電極シートの面上にわたって広く配置されることから、電極表面上の実効面積が一層大きくなり、これに伴って、電気容量が一層大きくなる。しかも集電層の作成が依然として容易である。よって、バッテリーの高性能化及び低コストを一層図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態に係るシートキャパシタ等の概略斜視図であって、その分解斜視図を併せて示した図である。
【
図2】(a)は
図1中C-C線概略断面図、(b)は
図2(a)中D部概略拡大図、(c)は多孔質セラミックの粒子を示した模式図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るシートキャパシタの製造方法を説明するための図であって、シートキャパシタ製造装置の前段部を示した概略構成図である。
【
図4】前記シートキャパシタ製造装置の中段部を示した概略構成図である。
【
図5】前記シートキャパシタ製造装置の後段部を示した概略構成図である。
【
図6】本発明の変形例に係るシートキャパシタの斜視図である。
【
図7】本発明の実施形態に係るバッテリーの概略構成図である。
【
図8】本発明の変形例に係るバッテリーの概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0024】
本実施形態に係るシートキャパシタAは、
図1及び
図2に示されているように、第1の電極シート10(下記他の発明においては第1の電極と称する)と、第2の電極シート20(下記他の発明においては第2の電極と称する)と、第1,第2の電極シート10,20の間に挟まれた誘電体シート30(下記他の発明においては誘電体と称する。)とを有したフィルム状のキャパシタである。第1の電極シート10と、誘電体シート30と、第2の電極シート20とは互いに重ね合わせて接着材により貼着されている。また、第1,第2の電極シート10,20の面上には、第1,第2の外装フィルム40,50が各々重ね合わせて接着材により貼着されている。以下、各部を詳細に説明する。
【0025】
なお、説明の都合上、シートキャパシタAのうち、第1,第2の外装フィルム40,50を除いた部分をキャパシタA1と称することにする。
【0026】
第1の電極シート10については、キャパシタの容量に見合った厚みの金属泊箔(例えば、銅箔又はニッケル箔等)を用いている。第1の電極シート10の表面上には、誘電体シート30との境界面に
図2に示されているように集電層11が作成されている。なお、
図2中の第1、第2の電極シート10、20等の厚みは、図面作成上の都合により正確に示されていない。
【0027】
集電層11については、キャパシタの電極実効面積を大きくしてその電気容量を大きくするための周知技術(例えば、特許文献1~3参照)を利用して作成されたものである。本案例では、集電層構成部材1111は多孔質セラミック111に吸着された金属微粒子であって、導電性接着剤112により第1の電極シート10の面上に均一に塗布して固着されている。
【0028】
図2(b),(c)には多孔質セラミック111の粒子を模式的に示している。多孔質セラミック111は、ナノオーダーの微細孔が外表面に多数有したシリカ(SiO
2)を用いている(多孔質性シリカの製法については特許第5978479号公報等参照)。集電層構成部材1111は、第1の電極シート10と同一素材の金属微粒子であって、粒子径が200~2000nm程度になっている。本案例では周知の真空吸着法等により多孔質セラミック111の表面上に多数存在する微細孔に吸着されている。このような多孔質セラミック111の固体を粉砕して得られた粒子を導電性接着剤112に混入し、第1の電極シート10の表面上に均一に塗布して固着させる。その結果、多数の集電層構成部材1111が三次元的に且つ隣り合う微粒子同士の間隔が確保された状態で第1の電極シート10の面上にわたって広く配置されることになる。集電層11は上記した集電層構成部材1111等により構成されている。なお、集電層11における集電層構成部材1111の混入量、導電性接着剤112の材質等については、集電層11として要求される電気的特性等に応じたものにすると良い。
【0029】
導電性接着剤112については、集電層構成部材1111等の塗布及び固着を容易に行うためと、集電層構成部材1111と第1の電極シート10との間の電気的接続を行うために使用されている。このような用途に適することに加えて低価格なものを入手することは困難を共なうことが多い。その場合は導電性接着剤の代わりに金属混入バインダーを用いると良い。金属混入バインダーは、所定の導電性を得るために金属微粒子が必要量混入されたバインダーであって、ここでは柔軟・密着性を有し、雰囲気を選ばずに500℃程度の低温で分解するアクリル樹脂等を主成分としたバインダーに、第1の電極シート10と同一素材の金属微粒子を混入したものを用いることが考えられる。その場合、導電性接着剤とは異なり、バインダーに混入させる金属微粒子の材質を第1の電極シート10に合わせ込むことが容易になる。
【0030】
このような集電層11の作成方法については、後述するシートキャパシタAの製造方法の中で説明する。
【0031】
なお、第2の電極シート20及びその表面に作成された集電層21については、第1の電極シート10及び集電層11と同一構成であることから、その説明は省略するものとする。
【0032】
誘電体シート30については、
図2に示されているように、キャパシタの耐電圧に見合った厚みを有した誘電体のシートである。本実施例では、誘電体シート30と同一素材で且つ約半分の厚みである半シート31とこれと同一の半シート32とを重ね合わせて接着材により貼着されたものであり、具体的にはチタン酸バリウム等のシートである市販品を用いている。半シート同士を接着する接着材については、誘電体シート30の素材の誘電率に近い電気的特性を有するものを使用すると良い。また、半シート31と集電層11とを接着する接着材については、接着対象の材質に応じたものを使用すると良い。
【0033】
第1の外装フィルム40については、使用用途等に見合った厚みを有した絶縁体のシートである。本実施例では、樹脂製のシートの市販品を用いている。第1の外装フィルム40と第1の電極シート10との面同士を貼着するための接着材については、接着対象の材質に応じたものを使用すると良い。
【0034】
なお、第2の外装フィルム50については、第1の外装フィルム40と同一構成であることから、その説明は省略するものとする。
【0035】
このような構成のシートキャパシタAを
図3乃至
図5に示されているシートキャパシタ製造装置を用いて製造している。以下、シートキャパシタAの製造方法について説明する。
【0036】
図3中100は、所定長さでロール状に巻かれた第1の電極シート10の基材を示している。なお、電極シート20の基材を図中100’として示している。図中300は、所定長さでロール状に巻かれた半シート31の基材を示している。なお、半シート32の基材を図中300’として示している。
【0037】
図3中αは多孔質セラミック111の粒子が均一に混入された導電性接着剤112であって硬化前のものを示しており、ロールコーター1に接着材αとして供給される。図中βは、第1の電極シート10(又は第2の電極シート20)と半シート31(又は半シート32)とを貼着するための接着材であって硬化前のものを示しており、粘着ロール3に接着材βとして供給される。
【0038】
まず、
図3に示すように、基材100の表面上に、ロールコーター1により接着剤αが均一に塗布され、この塗布面がヒーター等の加熱装置2により加熱される。すると、基材100の面上に多孔質セラミック111の粒子が導電性接着剤112とともに固着される。集電層11はこのようにして第1の電極シート10の面上に作成される。なお、加熱装置2については基材100の表面上に塗布された余分な導電性接着材112を飛ばして電気抵抗等を小さくするに適した加熱温度にすると良い。導電性接着剤の代わりに上記した金属混入バインダーを用いる場合についても上記と同様であって、加熱装置2の加熱によりバインダーを硬化させるとともに余分なバインダーを飛ばすと良い。
【0039】
その後、基材100の表面上に粘着ロール3により接着材βを均一に塗布し、圧着ローラ4により基材100の表面と基材300の表面とを重ね合わせて接着材βにより貼着させる。これをロール状に巻かれたものが基材400である。
【0040】
即ち、基材400は、第1の電極シート10の面上に半シート31が貼着され、それが所定長さ有するものである。また、基材400’は、第2の電極シート20の面上に半シート32が貼着され、それが所定長さ有するものである。
【0041】
基材400’についても基材400と同様に作成される。即ち、基材400’は、基材100’の表面上に多孔質セラミック111の粒子が導電性接着剤112とともに固着され、その後、基材300’が貼着されて作成される(これにより第1,第2の電極シート10,20の面上に誘電体シート30の半シート31,32が各々重ね合わされて接着材βにより貼着されることになる。)。
【0042】
なお、基材400,400’についてはアニール炉を使用して加熱し、半シート31,32の素材を結晶化してその誘電率を大きくする処理を行っている。
【0043】
図4中γは、第1の電極シート10の面上の半シート31と第2の電極シート20の面上の半シート32とを貼着するための接着材であって粘着ロール5に接着剤γとして供給される。
【0044】
上記のようにして作成された基材400及び基材400’を用いて基材500を作成する。即ち、
図4に示すように、基材400’の表面上(半シート32の表面上に相当)に粘着ロール5により接着材γを均一に塗布し、圧着ローラ6により基材400’の表面(半シート32の表面に相当)と基材400の表面(半シート31の表面に相当)とを重ね合わせて接着材γにより貼着させる(これにより、第1の電極シート10と第2の電極シート20との間に誘電体シート30を配設されることになる。)。これがロール状に巻かれたものが基材500である。このようにして作成され、ロール状に巻かれたものがキャパシタA1の基材となる。
【0045】
図5中600は、所定長さでロール状に巻かれた第1の外装フィルム40の基材を示している。図中700は、所定長さでロール状に巻かれた第2の外装フィルム50の基材を示している。
【0046】
図5中εは、キャパシタA1の一方面に第1の外装フィルム40を、キャパシタA1の他方面に第2の外装フィルム50を各々貼着するための接着材であって粘着ロール7,8に接着材εとして各々供給される。
【0047】
上記のようにして作成された基材500と、別に用意された基材600,700とを用いて基材800を作成する。即ち、
図5に示すように、基材500の各面上に粘着ロール7,8により接着材εを各々均一に塗布し、圧着ローラ9により基材500の各面上と基材600,700の各面とを位置合わせしつつ各々重ね合わせて接着材εにより貼着させる。これをロール状に巻かれたものが基材800である。これは、所定長さでロール状に巻かれたシートキャパシタAの基材となる。
【0048】
上記のような流れで作成された基材800を所定長さで図外の切断装置を用いて切断すると、
図1に示されたシートキャパシタAが得られる。このようなシートキャパシタAを二次電池であるバッテリーとして利用する場合、第1,第2の電極シート10,20に正極用/負極用の外部端子を各々電気接続することが必要になる。ただ、第1,第2の電極シート10,20の表面が第1,第2の外装フィルム40,50に各々覆われていることから、外部端子に至るまでの電気接続の構成が複雑になり易い。この点を改良した変形例に係るシートキャパシタA’を
図6を参照して説明する。
【0049】
シートキャパシタA’は、シートキャパシタAと同様の構成であるが、第1,第2の外装フィルム40,50の面上に電極露出用の開口41,51が各々形成されている点のみ相違している。即ち、開口41,51を通じて第1,第2の電極シート10,20の表面の一部が露出するようになっている。
【0050】
このようなシートキャパシタA’に適したバッテリーBの実施形態を
図7を参照して説明する。
【0051】
バッテリーBは、ケース内に配設されたシートキャパシタA’と、同ケース外表面に配設され且つシートキャパシタA’の第1、第2の電極シート10,20に各々電気接続される外部端子900,900とを備え、シートキャパシタA’に電力を充放電する構成になっている。シートキャパシタA’と外部端子900,900との間の電気接続は、シートキャパシタA’の第1、第2の電極シート10,20の表面上に付勢接触する弾性接触片910,910と図外のリード線を通じて行われる。
【0052】
なお、シートキャパシタA’はキャパシタA1を多層にした形態についても適用可能である。この場合、キャパシタA1の複数が直列接続となり高電圧化が容易となる。一方、キャパシタA1の複数を並列接続して大容量化する場合、次のようなバッテリーB’を使用すると良い。
【0053】
変形例に係るバッテリーB’を
図8を参照して説明する。
【0054】
バッテリーB’は、複数重ね合せて配置されたシートキャパシタAと、一端面が開放された断面コ字状の絶縁性直方体であってシートキャパシタAの両端側に各々装着された樹脂製等のエンドキャップ1000,1000と、エンドキャップ1000の他端面の中央部に外向きに固着されたネジ状の外部端子1100,1100とを備える。エンドキャップ1000の内側には、シートキャパシタAの両端部が装着された状態で第1、第2の電極シート10,20の端部に各々接触可能な内部電極1200,1200が設けられている。各シートキャパシタAと外部端子1100との間の電気接続は、内部電極1200と図外の接続ラインを通じて行われる。
【0055】
上記した構成のシートキャパシタA(又はA’)による場合、集電層11,21を有することから電気容量が大きく、この点で高性能化を図ることが可能になる。また、集電層11,21を含めて、印刷機械技術を専ら利用して容易に製造することができる点で低コスト化を図ることが可能になる。更に、構成がシンプルであり薄型で小型軽量化を図ることが可能になる。よって、シートキャパシタA等をバッテリーとして使用した場合、上記と同様のメリットがある。その特徴から、例えば、パソコンのバックアップ電池、自動車,自転車、ドローン等のバッテリーの他、再生可能エネルギー発電によるバッテリー等に適用される。加えて、薄型小型軽量である点で新たな用途への適用も期待される。例えば、パソコンのカバーに入れ込んだり、電子機器等のケース又はソーラーパネルのハウジングの厚み部分にシートキャパシタ等を入れ込んだり、リュック、バッグ又は衣服等に入れ込む等の形態が考えられる。
【0056】
なお、バッテリーB(又はB’)においては、シートキャパシタA(又はA’)を備え、第1の電極シート10と、誘電体シート30と、第2の電極シート20とが重ね合わされ接着材により貼着されていたが、かかる特徴を有していないキャパシタを備えたバッテリーの形態であっても良い。このような他の発明に係るバッテリーを
図1及び
図2を借りて説明する。
【0057】
同バッテリーに備えられたキャパシタA”は、第1,第2の電極10,20と、第1,第2の電極10,20の間に挟まれた誘電体30とを有し、第1,第2の電極10,20の表面上には、誘電体30との境界面に集電層11,21が各々作成されている。集電層11は、集電層構成部材1111が導電性接着剤112により第1の電極10の表面上に固着されている。集電層構成部材1111は、多孔質絶縁体としての多孔質セラミック111に吸着された金属微粒子であり、多孔質セラミック111の粒子が導電性接着剤112とともに第1の電極10の表面上に塗布して固着されている。第1,第2の電極10,20の表面上への多孔質セラミック111及び導電性接着剤112の塗布方法については、シートキャパシタAの場合と同様にコーターロール等を用いて行うと良い。集電層21についても集電層11と同様の構成になっている。
【0058】
上記構成のバッテリーによる場合、第1,第2の電極10,20の表面上に集電層11,21が作成された構成になっていることから、電極表面上の実効面積が大きくなり、これに伴って電気容量が大きくなる。しかも印刷機械技術を専ら利用して集電層11,21が作成可能になっていることから、この点で製造上の低コスト化を図ることが可能になる。よって、バッテリーの高性能化及び低コストを図ることが可能になる。
【0059】
なお、本発明に係るシートキャパシタ及びバッテリーは上記実施形態に限定されず、例えば、電極シートについては、材質等が問われることがなく、外面に金属がコーティングされた樹脂製フィルム等を用いても良い。誘電体シートについては、材質等が問われることがない。また、外装フィルムを省略した形態でも良い。第1,2の電極シートと誘電体シートとを互いに重ね合わせて接着材により貼着する方法については、シートの種類等に応じたものを採用すると良い。各シートを接着する接着材についても各シートの材質等に応じたものを用いると良い。シートキャパシタはバッテリーだけの利用に止まらずコンデンサとしての利用もあり、その場合には円筒状等の形状にしても良い。
【0060】
集電層については、集電層構成部材の材質や作成方法が問われない。例えば、多孔質樹脂等に金属微粒子を吸着させ導電性接着材等により第1,第2の電極シートの面上に固着させる形態の他、多孔質絶縁体の表面上の微細孔の内壁面に金属膜を集電層構成部材として形成する形態であっても良い。また、第1,第2の電極シートではなく誘電体シートの面上の境界面に作成しても良い。この場合についても集電層構成部材と第1,第2の電極シートとの間が導電性接着材等を通じて電気的に接続される。金属微粒子については材質が問われず同粒子表面のみを金属膜で覆う形態でも良く、第1,第2の電極シートの面上にスパッタリング等により各々形成する形態でも良い。
【0061】
本発明に係るバッテリーは上記実施形態に限定されず、キャパシタの構成、その数及び接続方法、外装フィルムの有無、外部端子の形状等が問われることがない。第1、第2の電極、同電極等の面上に作成する集電層については上記シートキャパシタの場合と同様に設計変更しても良い。また、通常の乾電池の規格に沿った形状及び大きさにしても良い。
【符号の説明】
【0062】
A シートキャパシタ
10:第1の電極シート
11:集電層
111 多孔質セラミック
1111 集電層構成部材
112 導電性接着材
20:第2の電極シート
21:集電層
30:誘電体シート
B バッテリー
【要約】 (修正有)
【課題】製造上の低コスト化を図ることが可能なシートキャパシタ及びバッテリー並びにシートキャパシタの製造方法を提供する。
【解決手段】シートキャパシタAは、第1の電極シート10及び第2の電極シート20と誘電体シート30とが各々互いに重ね合わせて接着材により貼着されている。第1の電極シート10と第2の電極シート20の各面上には、電極の実効面積を大きくするための集電層11、21が各々作成されている。集電層11の集電層構成部材1111は、多孔質セラミック111に吸着された金属微粒子であり、多孔質セラミック111の粒子が導電性接着剤112とともに第1の電極シート10の面上に各々塗布して固着されている。集電層21についても同様である。
【選択図】
図2