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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-24
(45)【発行日】2023-04-03
(54)【発明の名称】耳管開放症のステント
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/958 20130101AFI20230327BHJP
   A61F 2/966 20130101ALI20230327BHJP
   A61F 2/89 20130101ALI20230327BHJP
【FI】
A61F2/958
A61F2/966
A61F2/89
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018161121
(22)【出願日】2018-08-30
(65)【公開番号】P2019042504
(43)【公開日】2019-03-22
【審査請求日】2021-07-20
(31)【優先権主張番号】15/692,361
(32)【優先日】2017-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516389190
【氏名又は名称】アクラレント インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Acclarent, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ドン・キュー・ゴ-ヅ
(72)【発明者】
【氏名】ジェットミア・パルシ
(72)【発明者】
【氏名】ケタン・ピー・ムニ
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0305943(US,A1)
【文献】特表2013-515591(JP,A)
【文献】特表2016-527051(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/958
A61F 2/966
A61F 2/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の開放耳管(ET)内に制限を設けるためのシステムであって、
(a)シャフト及びその間に延在するルーメンを含むガイドカテーテルであって、前記ガイドカテーテルは、前記ガイドカテーテルが前記患者の頭部内に挿入されるとき前記ET内の開口部へのアクセスを提供するように構成された遠位端を更に含む、ガイドカテーテルと、
(b)シャフトを含む器具と、
(c)非拡張状態と拡張状態との間で径方向に拡張及び後退するように構成された本体を含むインサートと、を備え、前記器具が、前記インサートを前記ET内で解放するように動作可能であり、前記インサートが、前記非拡張状態にあるとき前記ガイドカテーテルの前記ルーメン内に受容されるようなサイズ及び形状であり、
前記インサートが、前記拡張状態から前記非拡張状態に弾性的に付勢されるように構成され、
前記インサートが、前記本体と前記ETとの間の接触時に前記インサートを前記ETに確実に係合するように構成された固着機構を更に含み、
前記インサートが、前記ET内で前記拡張状態から前記非拡張状態に移行した後に前記ETの有効径を低減するように構成されている、
システム。
【請求項2】
前記器具が、拡張可能部材を更に含み、前記インサートが、前記拡張可能部材によって前記本体に印加される径方向外向きの力に応答して前記拡張状態に拡張するように構成されている、請求項に記載のシステム。
【請求項3】
前記インサートは、前記インサートが前記非拡張状態にあるとき前記拡張可能部材を受容するようなサイズ及び構成である、請求項に記載のシステム。
【請求項4】
前記インサートが、前記拡張可能部材に解放可能に固定されている、請求項に記載のシステム。
【請求項5】
前記本体が、複数の長手方向ストラットを含み、前記ストラットは、各ストラットが別のストラットに隣接し、それによってメッシュパターンを形成するように、ループ状に組み立てられている、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記固着機構が、前記本体に沿って位置決めされている、請求項に記載のシステム。
【請求項7】
前記固着機構が、前記本体の外側表面に沿って組織結合コーティングを含む、請求項に記載のシステム。
【請求項8】
前記インサートが、生分解性材料で形成されており、前記インサートが、前記ET内で所定の持続時間後に溶解するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記インサートが、前記本体を柔軟に拡張するように動作可能な弾性材料で形成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記インサートが、前記拡張状態に向けて弾性的に付勢され、前記ガイドカテーテルが、前記非拡張状態に前記インサートを拘束するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記本体が、前記拡張状態に径方向に拡張されるとき長手方向に収縮するように構成されている、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記インサートが、前記本体内に延在する複数の通路を含み、前記通路が、前記本体を貫通する流体連通を可能にするように構成されている、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
前記器具が、プッシャを更に含み、前記プッシャは、前記ガイドカテーテルと前記プッシャとの間の長手方向の相対移動に応答して前記インサートを前記ガイドカテーテルの外に追いやるように動作可能である、請求項10に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
図1図2を参照すると、耳(10)は、外耳(12)、中耳(14)、及び内耳(16)の3つの部分に分けられる。外耳(12)は、音を集め、その音を外耳道(20)の内側端部(24)に位置する鼓膜(tympanic membrane)(22)(鼓膜(eardrum)とも呼ばれる)に向かわせる、耳介(18)及び外耳道(20)からなる。中耳(14)は、外耳(12)と内耳(16)との間に位置し、耳(10)と副鼻腔との間の均圧弁としての役割を果たす耳管(Eustachian tube、ET)(26)によって、咽喉の奥へと接続されている。ET(26)は、咽喉(32)の鼻咽頭部(30)にある咽頭口(28)で終端する。鼓膜(22)に加えて、中耳(14)はまた、槌骨(34)(ツチ骨)、砧骨(36)(キヌタ骨)、及び鐙骨(38)(アブミ骨)という3つの小さい耳骨(小骨)からなる。これらの骨(34、36、38)は、音の振動を内耳(16)へと伝導し、それによって、外耳(12)の耳道(20)内における音の振動を内耳(16)内の流体波へと転換する、変換器として作用する。これらの流体波はいくつかの神経終末(40)を刺激し、それらが次いで音エネルギーを脳へと伝導し、音エネルギーが脳で解釈される。
【0002】
ET(26)は、中耳(14)を、鼻の奥にある口蓋の真上の上咽頭部分である鼻咽頭(30)と接続する、長さ3.8cm(1.5インチ)の狭いチャネルである。ET(26)は、通常は空気で満たされている中耳(14)に対する均圧弁として機能する。適切に機能すると、ET(26)は、嚥下又は欠伸に応答して周期的に(約3分毎に1回)何分の1秒かの間、開く。そうすることによって、空気が中耳(14)の中に進入して、中耳内層(粘膜)によって吸収されていた空気と入れ替わるか、又は高度変化時に起こる圧変化を均等にすることができる。ET(26)のこの周期的な開閉に干渉するものがあると、難聴又は他の耳の症状が生じることがある。
【0003】
ET(26)の閉塞又は閉鎖は、中耳(14)における負圧をもたらし、鼓膜(22)の退縮(吸い込み)を伴う。成人の場合、これは通常、なんらかの耳の不快感、閉鎖感、又は圧力感を伴い、軽度の難聴及び耳鳴り(耳鳴)をもたらすことがある。子どもの場合は、症状がないこともある。閉塞が長引いた場合、中耳(14)の粘膜から体液が滲み出して、漿液性中耳炎と呼ばれる症状(中耳内の滲出液)を引き起こすことがある。これは、子どもでは上気道感染に関連して頻繁に起こることがあり、この疾病に関連する難聴の主な原因となることがある。
【0004】
ET(26)が閉鎖すると、身体が中耳(14)から空気を吸収して、内膜及び鼓膜(22)を内側に引っ張って痛みを引き起こす傾向がある、真空状態をもたらすことがある。次に、身体がその真空をより多量の体液と置き換えることがあり、それによって痛みは軽減しやすいが、患者は耳(10)の中に膨満感を覚える場合がある。最後に、体液が感染する恐れがあり、それが痛み、疾患、及び一時的な聴力損失に結び付く場合がある。内耳(14)が罹患した場合、患者は、回転又は旋回する感覚(目眩)を感じることがある。
【0005】
中耳(14)及びET(26)の制限又は閉鎖を治療するための方法としては、その開示内容が参照により本明細書に組み込まれる、2010年10月28日公開の「Method and System for Treating Target Tissue within the ET」と題する、米国特許公開第2010/0274188号、その開示内容が参照により本明細書に組み込まれる、2013年10月17日公開の「Method and System for Eustachian Tube Dilation」と題する米国特許出願公開第2013/0274715号、並びに、その開示内容が参照により本明細書に組み込まれる、「Vent Cap for a Eustachian Tube Dilation System」と題する2015年12月31日公開の米国特許出願公開第2015/0374963号に開示されているものが挙げられる。
【0006】
いくつかの場合、ET(26)は、制限若しくは閉鎖されているというよりも、適切に閉じることができない場合があり、又はET(26)は、開放された後に閉鎖するまで長時間かかり、ET(26)は、実質的に開放状態にとどまる。これは、ET(26)及び中耳(14)の周りの上部気道圧の変動を引き起こすことによって患者に悪影響を及ぼすことがある。いくつかの患者において、開放ET(26)は、乾燥洞の感覚、身体活動に伴う呼吸速度の増大、通常より高い音量の知覚、及び/又は他の望ましくない結果を引き起こすことがある。したがって、開放ET(26)の治療の一形態を提供することが望ましい場合がある。このような治療は、ET(26)を完全に閉じることなくET(26)に対してある程度の通気及び排水を依然として提供することが更に望ましい場合がある。
【0007】
様々な外科用器具が作成され使用されてきたが、添付の特許請求の範囲に記載する本発明を、本発明者らに先立って作成した者も使用した者もいないと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本明細書は、本技術を具体的に指摘し、かつ明確にその権利を特許請求する、特許請求の範囲により完結するが、本技術は、以下の特定の実施例の説明を添付図面と併せ読むことでより良く理解されるものと考えられ、図面において同様の参照符号は同じ要素を特定する。
図1】内耳、中耳、及び外耳部分、並びに中耳を咽喉の鼻咽頭部と接続する耳管を示す、ヒトの耳の断面図を示す。
図2図1に例示される耳管の咽頭口を含む、図1に例示される咽喉の鼻咽頭部を示す、ヒトの頭部の断面図を示す。
図3A図5Aの拡開(dilation)カテーテルを位置決めするために使用され得る、例示的なガイドカテーテルの側面図を示す。
図3B図3Aの線3B-3Bに沿った図3Aのガイドカテーテルの断面図を示す。
図4図3Aに示されるガイドカテーテルの遠位端の拡大図を示す。
図5A図3Aのガイドカテーテルと共に使用され得るバルーン拡開カテーテルを示す側面図を示す。
図5B図6の線5B-5Bに沿った図5Aに示されるバルーン拡開カテーテルの断面図を示す。
図6図5Aに示されるバルーン拡開カテーテルの遠位端の拡大図を示す。
図7】収縮状態にある例示的なステントの斜視図を示す。
図8】拡張状態にある図7のステントの斜視図を示す。
図9A】患者の耳管に対して位置決めされている図3Aのガイドカテーテル及び図5Aのバルーン拡開カテーテルの断面図を示し、バルーン拡開カテーテルの遠位端に図7のステントが取り付けられ、ステントは、収縮状態にある。
図9B図9Aの耳管に対して位置決めされている図3Aのガイドカテーテル及び図5Aのバルーン拡開カテーテルの断面図を示し、バルーン拡開カテーテルの遠位端に図7のステントが取り付けられ、ステントは、拡張状態にある。
図10A図9Aの耳管中の図5Aのバルーン拡開カテーテルの断面側面図を示し、拡張器は、図7のステントを耳管内に摺動自在に位置決めするように収縮状態にある。
図10B図9Aの耳管から退避する図5Aのバルーン拡開カテーテルの断面側面図を示し、拡張器は、図7のステントを耳管の内壁に固定するように膨張状態に拡張した後、収縮状態にある。
図10C図9Aの耳管の断面側面図を示し、図5Aのバルーン拡開カテーテルは、除去され、図7のステントは、収縮状態に戻され、それによって耳管の内壁を内向きに引っ張る。
図11】拡張状態にある、耳管の内壁に固着された図7のステントの斜視図を示す。
図12】拡張状態にある例示的な耳管プラグの斜視図を示す。
図13】収縮状態にある図12の耳管プラグの斜視図を示す。
図14】近位端及び遠位端に沿って複数の細孔を含む例示的な代替の耳管プラグの斜視図を示し、耳管プラグは拡張状態にある。
図15】収縮状態にある図14の耳管プラグの斜視図を示す。
図16A】シースが耳管内を摺動可能に前進している耳管の断面側面図を示し、シースは、図12又は図14の耳管プラグをシース内に含み、耳管プラグは、拡開カテーテルにより収縮状態に制限されている。
図16B図16Aの耳管の断面側面図を示し、耳管プラグは、シースから遠位に前進し、耳管プラグは、依然として収縮状態にある。
図16C図16Aの耳管の断面側面図を示し、耳管プラグは、シース内から解放され、拡張状態にあり、シースは、摺動自在に後退されている。
図17A】シースが耳管内を滑動可能に前進している耳管の断面図を示し、シースは、図12又は図14の耳管プラグをシース内に含み、耳管プラグは、拡開カテーテルにより収縮状態に制限されている。
図17B図17Aの耳管の断面図を示し、シースは、摺動可能に後退し、かつ、耳管プラグがシース内から露出している。
図17C図17Aの耳管の断面図を示し、耳管プラグは、シース内から解放され、拡張状態にあり、シースは、摺動自在に後退されている。
【0009】
図面は、いかなる方式でも限定することを意図しておらず、本発明の種々の実施形態は、図面に必ずしも描写されていないものを含め、他の様々な方式で実施し得ることが考えられる。本明細書に組み込まれ、その一部をなす添付図面は、本発明のいくつかの態様を図示したものであり、本説明文と共に本発明の原理を説明する役割を果たすものである。しかしながら、本発明が示される正確な配置に限定されない点は理解される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の詳細な説明は、図面を参照しながら読まれるべきものであり、異なる図面における同様の要素には同一の番号が付けられている。図面は、必ずしも縮尺どおりではなく、説明目的のみのために例示的な実施例を図示するものであり、本発明の範囲を制限しようとするものではない。詳細な説明は、本発明の原理を限定ではなく一例として例証するものである。この説明により、当業者が本発明を作成し使用することが明確に可能になり、本発明を実施するための最良の形態と現在考えられるものを含む、本発明のいくつかの実施例、適応例、変形例、代替例、並びに使用例が説明される。
【0011】
本明細書で使用するとき、任意の数値又は範囲に関する「約」若しくは「およそ」という用語は、構成要素の部分又は集合が、本明細書に記載されるようなその意図される目的に沿って機能することを可能にする、好適な寸法の許容誤差を示す。
【0012】
I.例示的な耳管カテーテルシステム
長期間にわたって開放状態にあるET(26)を治療するために実施され得る治療の一例としては、図3A図6に例が示されているガイドカテーテル(100)及びバルーン拡開カテーテル(200)を用いて配備されたインプラントでET(26)の壁にアクセス及び接触するというものが挙げられる。本実施例のガイドカテーテル(100)は、近位端(104)と、遠位端(106)と、それらの間のルーメン(108)とを有する、細長い管状シャフト(102)を含む。ガイドカテーテル(100)は、咽頭口(28)などのET(26)の開口部へのアクセスを容易にする、任意の好適な長さ、直径、屈曲角、及びカテーテル(100)の長さに沿った屈曲部の位置を有し得る。いくつかの実施例では、ガイドカテーテル(100)は、約8cm~約20cm、又はより詳細には約10cm~約15cm、又はより詳細には約11cmの長さを有してもよい。
【0013】
図3Bは、ガイドカテーテル(100)の細長い管状シャフト(102)の断面図である。図で分かるように、シャフト(102)は、外側シャフトチューブ(110)と、内側シャフトチューブ(112)と、ルーメン(108)とを有する。外側シャフトチューブ(110)は、ステンレス鋼などの剛性材料で構築されてもよく、内側シャフトチューブ(112)は、ナイロン及び更にはPTFEライナーを含むがそれらに限定されないポリマー材料など、より可撓性の材料で構築されてもよい。ルーメン(108)は、ET(26)を治療するためにバルーン拡開カテーテル(200)をルーメン(108)に簡単に挿入することができるように、約2mm~3mm、好ましくは約2.5mm~約2.6mmの直径を有する。ガイドカテーテル(100)とバルーンカテーテル(200)の組み合わせは、片手作業用に設計されたコンパクトシステムであってもよい。「コンパクト」とは、ガイドカテーテルの屈曲部の遠位側にあるガイドカテーテルシャフトの長さが、約0.5~約2.0cm、いくつかの変形形態では約1~約2cm、いくつかの変形形態では約1cmであることを意図する。コンパクト化によって、以下に記載されるように、システムの位置決めの可視化に役立つために使用され得る内視鏡(60)などの他の器具との干渉を低減するのに役立ち得る。
【0014】
ガイドカテーテル(100)の遠位部分(120)が、図4の拡大図に示されている。ガイドカテーテル(100)の遠位部分(120)は、咽頭口(28)を介してET(26)内へとアクセスするのを容易にするため、約45度~約65度、より好ましくは約50度~約60度、特に約55度の角度を有する屈曲部(122)を有してもよい。ガイドカテーテル(100)の遠位部分(120)は、バルーン拡開カテーテル(200)が遠位部分(120)内で見えるように、また遠位部分(120)が細長いシャフト(102)よりも可撓性であるように、ナイロン及びPTFEを含むがそれらに限定されないポリマーなどの透明材料で作られる。ガイドカテーテル(100)の遠位部分(120)の遠位先端(124)は、ET(26)に非外傷的にアクセスできるように、PEBAX(登録商標)(ポリエーテルブロックアミド)で作られ、また可視化アクセスのため、20%の硫酸バリウム又は他の類似の放射線不透過性材料を含有してもよい。
【0015】
再び図3Aを参照すると、ガイドカテーテル(100)の近位部分(130)は、バルーンカテーテルをET(26)に挿入するのを支援する近位ハブ(132)を含む。ハブ(132)は、更に詳細に後述されるように、鼻の中でのガイドカテーテル(100)の安定化、ガイドカテーテル(100)の回転、及びバルーンカテーテル(200)の挿入を容易にするため、大径の近位端(134)と小径の中間区画(136)とを有する。ハブ(132)は、片手での僅かな操作によって挿入、配置、及び回転することができるように、人間工学的に設計されている。
【0016】
本実施例のバルーン拡開カテーテル(200)が図5Aに示されている。本実施例のバルーン拡開カテーテル(200)は、概して、近位端(214)と遠位端(218)とを有する細長いシャフト(202)を含む。バルーン拡開カテーテル(200)は、細長いシャフト(202)の遠位端(218)にあるバルーン(204)を更に含む。バルーン(204)は、ポリマーバルーン(柔軟性、半柔軟性、又は非柔軟性)であってもよい。いくつかの変形形態では、バルーン(204)は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、PEBAX(登録商標)(ポリエーテルブロックアミド)、ナイロンなどであるがそれらに限定されない、好適な非柔軟性材料を含む。バルーンカテーテル(200)は、直径2mm~8mm、又は約5mm~6mm(膨張時)、及び動作時の長さ12mm~24mm(例えば、2mm×12mm、3.5mm×12mm、5mm×16mm、5mm×24mm、6mm×16mm、6mm×20mm、6mm×24mm、7mm×16mm、又は7mm×24mm)のバルーンを含むがこれらに限定されない任意のサイズのバルーンを含み得る。バルーン拡開カテーテル(200)は概して、バルーン(204)に加圧媒体(例えば、生理食塩水)を連通することによってバルーン(204)を膨張/起動させるために、近位に位置した接続(230)を含む。
【0017】
図10A図10Bに示され、更に詳細に後述されるように、バルーン(204)をET(26)内の所望の位置に配置した後、拡張可能ステント(300)と相互作用するようにバルーン(204)を拡張させ、ET(26)を治療してもよい。例えば、ET(26)の開口部領域は咽頭口(28)を含み、拡開カテーテル(200)を前進させて、バルーン(204)を咽頭口(28)内に位置決めしてもよい。拡開カテーテル(200)の位置決めを支援するために内視鏡(60)を使用してもよい。内視鏡(60)を、鼻腔を通して前進させて、拡開カテーテル(200)を観察してもよい。拡開カテーテル(200)のシャフト上にあるマーカー(208)を内視鏡(60)から見て、バルーン(204)の近位端からのマーカー(208)の位置に基づいて、ET(26)の開口部(例えば、咽頭口(28))に対するバルーン(204)の位置を概算することができる。したがって、拡開カテーテル(200)を移動させて、バルーン(204)がET(26)内で拡張する前に、マーカー(208)を所望の位置に配置することができる。
【0018】
バルーン拡開カテーテル(200)は、アクチュエータ(210)を更に含む。アクチュエータ(210)は、近位側(220)と遠位側(222)とを有する。図5Aに示される実施例では、アクチュエータ(210)は接着剤によって細長いシャフト(202)に固定される。アクチュエータ(210)の遠位側にある細長いシャフト(202)の部分(240)は、鼻腔を通してET(26)内へとガイドするのに十分な剛性であり、ステンレス鋼で構築され、ステンレス鋼ハイポチューブを含んでもよい。アクチュエータ(210)の近位側にある細長いシャフト(202)の部分(238)と、部分(240)の遠位側にある部分(250)とは、部分(240)よりも可撓性であり、PEBAX(登録商標)(ポリエーテルブロックアミド)を含むがこれに限定されないポリマー材料で構築されている。このようにして、細長いシャフト(202)の近位部分(238)は、鼻腔を通して前進させたときに上述の内視鏡(60)と干渉しなくなるので、拡開カテーテル(200)を容易に見ることができる。アクチュエータ(210)により、拡開カテーテル(200)を、容易で人間工学的な方法で、ガイドカテーテル(100)を通してET(26)内へと片手で前進させることが可能になる。アクチュエータ(210)は、親指、人差し指、又は複数の指(例えば、人差し指と中指)の組み合わせ、又は親指と人差し指若しくは中指を使用することを含むがそれらに限定されない代替的な方法で、前進又は後退させるのに使用されてもよい。
【0019】
バルーンカテーテル(200)の遠位端(218)は、先端(212)と可撓性のシャフト部分(250)とを更に含み、シャフト部分は、細長いシャフト(202)の遠位端からバルーン(204)の近位端まで延在する、PEBAX(登録商標)(ポリエーテルブロックアミド)を含むがこれに限定されないポリマー材料で構築される。図5Aに示される実施例において、先端(212)は、球状のポリマー製でブルーベリーの実のような形状をした非外傷性の先端であり、長さ約1.5mm~約2mm、外径約2mm~約3mmである。先端(212)の滑らかさ及び丸さは、バルーンカテーテル(200)がET(26)を通って滑らかに滑るのを補助することによって、その前進を促進する。先端(212)は更に、安全止めとして作用する。図1に示されるET(26)の峡部(29)は直径約1mmである。先端(212)の直径は、先端(212)のサイズによって、バルーンカテーテル(200)が峡部(29)を通過して中耳(14)に進入することを防止するように、図5Bの断面図に示されている細長いシャフト(202)の外径(233)よりも大きい。
【0020】
バルーン(204)をET(26)内で位置決めし、拡張状態(例えば、図10Bに示されるような)へと膨張させた後、バルーン(204)は、長期間(例えば、数秒又は数分)の間、拡張状態のままで定位置に保持されてもよい。バルーンカテーテル(200)はまた、1つ又は2つ以上の治療薬又は診断薬などの物質をET(26)に送達してもよい。更に後述されるように、バルーン(204)はまた、バルーン(204)が拡張するとET(26)内へと送達される、拡張可能ステント(300)を搬送してもよい。バルーン拡開カテーテル(200)及びガイドカテーテル(100)は、バルーン(204)を萎ませた/収縮させた後で患者から除去され、ステント(300)をET(26)内に配備されたままにしてもよい。ET(26)は、中耳(14)内の大気圧を均一化するように機能(通常は開閉)を再開し、中耳(14)を不必要な圧力変動と大きな音から保護する。
【0021】
II.耳管の例示的な治療方法
上記のように、いくつかの患者は、長期間にわたって開放状態にとどまるET(26)を有することがあり、これは、様々な理由から好ましくない場合がある。そのために、ステント又は他の装置を患者の開放ET(26)に挿入することが好ましいことがあり、挿入されたステント又は他の装置は、ETの有効サイズを減少させ(26)、それによって障害によって生じる負の影響を軽減することができる。狭い構成を有するがETの(26)の内壁に係合するように外向きに拡張することができるステントを提供することは、拡張されたロッドを患者のET(26)内に強制的に前進させることを回避するために有益となり得る。このとき、ステントは、最初にET(26)に挿入されたときは最小侵襲性であるが、その後拡張してET(26)の内壁に固着され、それによって内壁を内向きに互いに向かって引っ張り、ET(26)のより小さい直径を形成する。ET(26)の有効内径を低減することにより、ET(26)が長期にわたって異常に拡大した状態にあるとき生じる患者の様々な問題が緩和され得る。
【0022】
以下の記述では、ET(26)の有効径を低減するためにET(26)内に配備されるように構成された装置の様々な例を提供する。最終的に、ET(26)の有効内径を長期間にわたってより小さい輪郭に低減させることは、長期にわたって異常に大きい輪郭を維持するET(26)に一般的に関連する問題を患者が体験し続ける可能性を最小化するのに有益であり得る。
【0023】
下記のステント及び/又は耳管プラグは、上記の様々なガイド部材及び拡開カテーテルのいずれか、及び本明細書に記載の様々な参考文献に記載の様々な外科手順のいずれかに容易に組み込まれ得ることが理解されるべきである。本明細書の教示に照らして、下記のステント及び/又は耳管プラグが使用され得る他の好適な方法が、当業者には明らかであろう。
【0024】
A.組織結合コーティングを有する開放耳管ステント
図7図8は、近位開口部(306)と遠位開口部(308)との間に延在する内部表面(302)及び外部表面(304)を含む例示的なステント(300)を示す。より詳細に後述されるように、開口部(306、308)は、物体、例えば拡開カテーテル(200)がその中に受容されるように、ステント(300)の内部表面(302)へのアクセスを提供するように構成される。ステント(300)は、長手方向軸(301)の周りに拡張可能に構成された細長い円筒状の装置である。図7に見られるように、ステント(300)は、ステント(300)がステント(300)の拡張時に収縮状態となるように弾性的に付勢されるように、デフォルトで自然に収縮状態にあるように構成されている。内部表面(302)及び外部表面(304)は、複数のストラット(310)の各ストラット(310)が別のストラット(310)にすぐ隣接し、それによってメッシュ設計又はパターンを形成するように、織物又はループ状の配置の複数の長手方向ストラット(310)を含む。表面(302、304)のメッシュパターンは、ステント(300)の拡張性を収容及び許容するように構成される。すなわち、図8に見られるように、ステント(300)は、複数のストラット(310)の選択的な分離及び延長から、表面(302、304)に沿って径方向に拡張可能に構成されている。このとき、ステント(300)は、内部表面(302)上及びステント(300)内に所定の外向きの力が印加されると拡張状態に延伸されるように動作可能である。
【0025】
内部表面(302)及び外部表面(304)は、ステント(300)が、患者の体内、例えばET(26)内に移植するために収縮状態にある間、拡張可能かつ容易に操作可能であるように、柔軟な構成を有するように構成される。ステント(300)の表面(302、304)は、金属生物吸収性材料で形成されてもよい。また、面(302、304)は、生体適合性ポリマーコーティングで被覆されてもよい。単に例示的な例として、ステント(300)は、Resoloy(登録商標)、MeKo Laster Material Processing(ハノーバー、ドイツ)により製造された生体再吸収性マグネシウム合金で形成されてもよい。あるいは、例えば、ステント(300)をポリ乳酸などの生分解性熱可塑性樹脂で形成されてもよい。いずれの例でも、生体適合性材料から形成されることにより、ステント(300)は、所定の分解時間後に患者の身体内で劣化するように構成される。他の例では、ステント(300)は、ステント(300)を手動で除去する必要があるように、非分解性材料で形成されてもよい。あるいは、ステント(300)が単純に患者の体内にとどまるようにする。
【0026】
ステント(300)は更に、患者の体内への挿入に適した形状記憶及び/又は弾性特性を含む材料から形成される。形状記憶特性を有すると、ステント(300)は、面(302、304)の拡張状態(図8)への選択的な拡張後に、弾性的に付勢されて内向きに変形され、デフォルトの収縮状態(図7)に戻る。このとき、ステント(300)は自然に所定の強度まで元の収縮状態に変形する傾向を有する弾性強度を有し、ステント(300)に介在する拘束力や反力が印加されても収縮状態に戻る。単に例示的な例として、ステント(300)は、形状記憶及び/又は超弾性特性を含むニチノールのような合金で形成してもよい。
【0027】
ステント(300)は更に、ステント(300)が収縮状態にあるときET(26)内に摺動自在に前進することを可能にするような形状及び寸法である。例えば、ステント(300)は、約0.18センチメートル~0.315センチメートル(約0.071インチ~約0.124インチ)(長さ)×約0.016センチメートル~約0.022センチメートル(約0.0063インチ~約0.0085インチ)(幅)のサイズとしてもよい。本明細書の教示に照らして、他の様々な好適な寸法が、当業者には明らかであろう。
【0028】
ステント(300)は更に、外部表面(304)に沿って組織結合コーティング(312)を含む。組織結合コーティング(312)は、組織が外部表面(304)に接触するとステント(300)を隣接する組織に固着するように動作可能である。このように、ステント(300)は、外部表面(304)を隣接する組織に沿って選択的に当接させると隣接する組織に確実に係合するように構成される。あくまで例としてであるが、組織結合コーティング(312)は、イソシアネート、シアノアクリレート、及び/又は他の適切な生体適合性接着剤を含んでもよい。本明細書の教示に照らして、使用され得る他の好適な材料が、当業者には明らかであろう。図示しないが、ステント(300)を隣接する組織に確実に取り付けることができるように、外部表面(304)に沿って他の固着手段又は機構を含んでもよいことが理解されるべきである。例えば、ステント(300)は、ステント(300)をET(26)に固着するように構成された、バーブ又は他の機械的係留特徴を外部表面(304)に沿って含んでもよい。
【0029】
本例の場合、図9Aに見られるように、ガイドカテーテル(100)、拡開カテーテル(200)、及びステント(300)を協働的に使用して、内視鏡(60)を用いて視覚誘導下でET(26)を治療する。使用の際、ガイドカテーテル(100)を鼻孔内へ、鼻腔を通して前進させ、ET(26)内に開口する咽頭口(28)に、その中に、又はその付近に、カテーテル(100)の遠位端を位置決めしてもよい。いくつかの変形形態において、ガイドカテーテル(100)は、患者の口を介して前進され、咽頭口に到達する(28)。いずれの場合も、ガイドカテーテル(100)の遠位端が咽頭口(28)に位置決めされると、誘導線(図示せず)は、拡開カテーテル(200)を通して、ET(26)に向かって、及びその中に摺動可能に前進させ得る。誘導線の遠位端がET(26)内に延びると、拡開カテーテル(200)及びステント(300)は、誘導線に沿ってET(26)内の治療のための所望の位置に、摺動可能に一緒に前進される。特に、ステント(300)は、ステント(300)が拡開カテーテル(200)と一体的にET(26)内に前進するように、拡開カテーテル(200)のバルーン(204)上に位置決めされる。すなわち、バルーン(204)は、ステント(300)の内部表面(302)内に位置決めされる。接着剤及び/又は他の特徴(複数可)を用いて、ステント(300)をバルーン(204)に取り外し可能に固定してもよい。図10Aは、バルーン(204)及びステント(300)がET(26)内に位置し、バルーン(204)が非拡張状態にあり、ステント(300)が収縮状態にあるように位置決めされた拡開カテーテル(200)を示す。
【0030】
いくつかの例では、ガイドカテーテル(100)、拡開カテーテル(200)、及びステント(300)に、鼻孔を通過させ、頭部の同側(同じ側)のET(26)に至らせてもよい。他のいくつかの例では、ガイドカテーテル(100)、拡開カテーテル(200)、及びステント(300)に、鼻孔を通過させ、頭の対側(反対側)のET(26)に至らせてもよい。照明ファイバなどの誘導要素が、ET(26)へのアクセスを支援するのに使用されてもよい。医師/ユーザは、ガイドカテーテル(100)の近位ハブ(132)の径の小さい中間部(136)のいずれか一方の側に人差し指及び中指を置き、次いでアクチュエータ(210)の近位側(220)又はアクチュエータ(210)の両側内に親指を置いてもよく、親指を使用して拡開カテーテル(200)をガイドカテーテル(100)を通して摺動させ、バルーン(204)及びステント(300)をET(26)内に位置決めすることになる。あるいは、ユーザは、ガイドカテーテル(100)の近位ハブ(132)を把持し、アクチュエータ(210)の近位側(220)、又はアクチュエータ(210)の遠位側(222)と近位側(220)との間に置いた人差し指を使用して、拡開カテーテル(200)及びステント(300)を前進させてもよい。
【0031】
大径の先端(212)は、バルーンカテーテル(200)が、峡部(29)を越えて中耳(14)内へと前進するのを防止する。更に、アクチュエータ(210)の遠位側(222)は、ガイドカテーテル(100)の近位端(104)に突き当たるので、拡開カテーテル(200)はそれ以上前進することができない。したがって、アクチュエータ(210)は、拡開カテーテル(200)が峡部(29)を越え、中耳(14)に達するのを防止する。更に、アクチュエータ(210)は、対側側又は同側側からET(26)にアクセスしてもよいように、細長いシャフト(202)に沿って適切な距離に位置決めすることができる。
【0032】
代替実施例では、拡開カテーテル(200)は、誘導線を使用せずに、患者の鼻孔内へと前進される。更に別の代替実施例では、拡開カテーテル(200)は、ガイドカテーテル(100)を使用せずに、患者の鼻孔内へと前進させてもよい。拡開カテーテル(200)のバルーン(204)は、ET(26)内に直接配置してもよく、ステント(300)は、バルーン(204)に取り外し可能に固定される。医師/ユーザは、アクチュエータ(210)の近位側(220)が患者の鼻孔に隣接するまで、拡開カテーテル(200)を前進させてもよい。アクチュエータ(210)の遠位側(222)は、患者の鼻孔に突き当たることがあり、拡開カテーテル(200)はそれ以上前進することができない。アクチュエータ(210)は、カテーテルが峡部(29)を越え、中耳(14)に達するのを防止する。更に、アクチュエータ(210)は、対側側又は同側側からET(26)にアクセスしてもよいように、細長いシャフト(202)に沿って適切な距離に位置決めすることができる。
【0033】
図9Bに最良に見られるように、拡開カテーテル(200)のバルーン(204)が内部表面(302)内に位置すると、バルーン(204)に流体が連通し、それによってバルーン(204)を膨張させ、ステント(300)を収縮状態から拡張状態に拡張する。細長いシャフト(202)は、隣接した二重ルーメン(232、234)の配管を収容する(図5Bを参照)。隣接した二重ルーメンの配管により、ルーメン(232、234)は、互いに隣り合っているが、互いから離間されているものとする。膨張ルーメン(232)は、膨張ポート(230)を通して、水、造影剤、又は生理食塩水で、約0.3~約1.5MPa、又は約0.6~約1.2気圧(約3~約15気圧、又は約6~約12気圧)の圧力まで、バルーン(204)を膨張させるために使用される。注入ルーメン(234)は、近位コネクタ(206)の近位端(216)の注入ポート(236)を介して、任意の水、薬剤の注入、又は更には誘導線の導入を可能にする。
【0034】
膨張ポート(230)がバルーン(204)の膨張のみに使用されることを確実にするために、膨張ポート(230)及び注入ポート(236)は、異なるタイプのコネクタを任意に有してもよい。例えば、注入ポート(236)が雄コネクタである一方で膨張ポート(230)は雌コネクタであってもよく、又はその逆であってもよい。あるいは、注入ポート(236)は右ねじコネクタを有してもよく、膨張ポート(230)は左ねじコネクタを有してもよく、又はその逆であってもよい。
【0035】
図10Bに最良に見られるように、バルーン(204)の膨張によりステント(300)が拡張状態に移行すると、表面(302、304)に沿った複数のストラット(310)が幅広配置で分離され、それによってET(26)の組織側壁(27)に接触する外部表面(304)となる。図11に見られるように、外部表面(304)が組織側壁(27)に当接すると、ステント(300)の外部表面(304)に沿って組織結合コーティング(312)が存在するため、ステント(300)が組織側壁(27)に確実に固着される。このように、バルーン(204)がステント(300)内から引き出されているにもかかわらず、ステント(300)は拡張状態にとどまり、ET(26)の組織側壁(27)に確実に固着されている。
【0036】
外部表面(304)が組織結合コーティング(312)を介してET(26)に確実に固着されると、内部表面(302)間に位置決めされた膨張バルーン(204)が存在しないため、かつステント(300)がステント(300)の弾性的付勢により収縮状態に戻るため、ステント(300)は、徐々に長手方向軸(301)に向かって内向きに後退する。図10Cに見られるように、表面(302、304)に沿った複数のストラット(310)は元の位置に徐々に戻り、ステント(300)は収縮状態に移行する。このとき、外部表面(304)との被覆係合により、組織側壁(27)がステント(300)の長手方向軸(301)に向かって同時に内向きに後退する。このとき、ET(26)の異常に拡大した直径は、収縮状態の面(302、304)の所定の直径に効果的に最小化される。収縮状態の表面(302、304)の所定の直径は、耳管の通常サイズに関する臨床データに従って決定されることが理解されるべきである。これにより、ステント(300)の生体吸収特性に応じて、ET(26)は、所定の期間、より小さい輪郭に閉じられる。
【0037】
ステント(300)がET(26)内に配備されると、ET(26)は実質的に閉じた状態をとるように(ステント(300)により)弾性的に付勢されることが理解されるべきである。それにもかかわらず、ステント(300)がET(26)内に配備された後でさえET(26)が中耳(14)の通気及び排水を依然として提供し得るように、ステント(300)の特性は、通常動作するET(26)に期待されるであろうように、患者が欠伸又は嚥下をするときにET(26)が開くことを依然として可能にし得る。
【0038】
ステント(300)が生分解性又は生体吸収性の材料で形成される変形形態では、ステント(300)は、ET(26)内の瘢痕組織の成長を促進するように更に構成されてもよい。あくまで例としてであるが、瘢痕組織の成長は、ステント(300)上の1つ又は2つ以上のコーティング及び/又はステント(300)の1つ又は2つ以上の構造的特徴によって促進されてもよい。ステント(300)がET(26)内の瘢痕組織の成長を促進する変形形態では、瘢痕組織は、ステント(300)が劣化又は吸収された後にさもなければ開放状態のET(26)に瘢痕組織それ自体が長期的な治療を提供するように、ET(26)内の低減された内径を効果的に維持し得る。
【0039】
B.組織結合コーティングを有する開放耳管プラグ
図12図13は、近位端(404)と遠位端(406)との間に延在する細長いシャフト(402)を含む例示的なプラグ(400)を示す。プラグ(400)は、圧縮可能に構成された長手円筒状の装置である。図12に見られるように、プラグ(400)は、デフォルトで自然に拡張又は拡大状態にあるように構成される。図13に見られるように、プラグ(400)は、プラグ(400)を拡張状態と圧縮状態との間で圧縮可能にすることを可能にする弾性特性を有するシリコーン又は他のエラストマー材料で形成される。すなわち、プラグ(400)は、元の拡張状態(図12)から圧縮状態(図13)に圧縮されると、径方向に圧縮され、軸方向に長くなるように構成される。このとき、プラグ(400)は、圧縮状態にあるとき、細長いシャフト(402)の外部表面上に所定の力を印加するとより小さい輪郭に延伸又は狭細化されるように動作可能である。力の印加を通してプラグ(400)を軸方向に延伸することにより、プラグ(400)は、細長いシャフト(402)の外部表面上に力が発揮され続ける限り、より小さい径方向輪郭を形成及び維持する。
【0040】
図示しないが、プラグ(400)が図13に見られるように自然に狭い構成又は輪郭になる傾向を有するように、プラグ(400)を対向して構成してもよいことが理解されるべきである。この例では、プラグ(400)は、端部(404、406)に沿って圧縮されるとき径方向に拡張し、かつ軸方向に短縮し、それによって図12に示す拡張状態に移行するように構成される。本明細書の教示に照らして、プラグ(400)の他の様々な好適な配置又は関係が、当業者には明らかであろう。
【0041】
いくつかの変形形態では、例示的なプラグ(500)は、図14図15に見られるように、近位端(504)と遠位端(506)との間にプラグ(500)の長手方向の長さに沿って延在する複数の通路(508)を含んでもよい。この例のプラグ(500)は、本明細書に明示的に記載の差を除いて、上記のプラグ(400)と同じように構成され、動作可能であってもよいことが理解されるべきである。通路(508)は、プラグ(500)の長手方向の長さに沿って複数の空ポケットを形成するように構成され、それによってプラグ(500)がその中に含まれる負の空間を有することを可能にする。図15に最良に見られるように、プラグ(500)内に通路(508)が含まれることにより、通路(508)により作成される負空間が実質的に低減されるため、プラグ(500)はより小さな輪郭に圧縮されるように構成される。すなわち、通路(508)は、プラグ(500)を圧縮する際に追加の容易性を提供する。
【0042】
本例では、近位端(504)及び遠位端(506)に沿った通路(508)の端部は円形の形状である。図示しないが、本明細書の教示に照らして当業者には明らかであろうように、通路(508)は様々な好適な形状又は輪郭を含んでもよいことが理解されるべきである。単に例示的な例として、通路(508)は、ハニカム形状を有してもよい。通路(508)は、ET(26)内に位置決めされるとき、プラグ(500)を通して通気及び排水路を提供するように更に構成され、それによってプラグ(500)を貫通する流体連通を可能にする。
【0043】
使用の際、ET(26)内へのステント(300)の設置に関して上述したのと同様に、ガイドカテーテル(100)を鼻孔内へ、鼻腔を通して前進させ、ET(26)内に開口する咽頭口(28)に、その中に、又はその付近にカテーテル(100)の遠位端を位置決めする。ガイドカテーテル(100)の遠位端が咽頭口(28)に位置決めされると、中空シース(480)は、ガイドカテーテル(100)を通して摺動可能に前進される。中空シース(480)は、近位開口部(図示せず)と遠位開口部(484)との間に延在する内部チャネル(482)を含む。中空シース(480)は、内部チャネル(482)内に摺動可能に配設され、その中に含まれるプッシュロッド(490)及びプラグ(400、500)を有する。特に、プラグ(400、500)の遠位端(406、506)が遠位開口部(484)に隣接して位置決めされ、プッシュロッド(490)がプラグ(400、500)の近位端(404、504)に位置決めされるように、プッシュロッド(490)及びプラグ(400、500)が内部チャネル(482)内に位置決めされる。
【0044】
プッシュロッド(490)がプラグ(400、500)の近位端(404、504)に当接すると、プッシュロッド(490)は、プラグ(400、500)が内部チャネル(482)内で近位に並進し、遠位開口部(484)から離れることを確実にする。内部チャネル(482)は、プラグ(400、500)が自然拡張状態にあるときにプラグ(400、500)の直径よりも小さい直径を有し、図16Aに見られるように、プラグ(400、500)が内部チャネル(482)内で狭い状態に圧縮される。すなわち、プラグ(400、500)が内部チャネル(484)内に位置すると、プラグ(400、500)は、中空シース(480)のより小さい輪郭によって細長いシャフト(402、502)上に発揮される径方向の力のため、圧縮状態に制限及び維持される。中空シース(480)は、遠位開口部(484)がプラグ(400、500)を解放するための所望の位置に近接して位置決めされるまで、ET(26)を通して選択的に前進される。図16Bに見られるように、プッシュロッド(490)が内部チャネル(482)内で遠位に並進し、それによってプラグ(400、500)の近位端(404、504)に遭遇する。シース(480)は、プッシュロッド(490)がシース(480)に対して遠位に前進するとき、長手方向に静止したままである。このとき、プラグ(400、500)は、近位端(404、504)が遠位開口部(484)を越えて延在するまで、遠位開口部(484)を通して内部チャネル(482)から押し出される。
【0045】
図16Cに見られるように、プラグ(400、500)が中空シース(480)を越えて遠位に延在すると、プラグ(400、500)は元の拡大状態に弾性的に拡張する。プラグ(400、500)は、中空シース(480)により外部表面(402、502)上に以前発揮された径方向の力が不在なため、拡張することができる。このとき、細長いシャフト(402、502)はET(26)の組織側壁(27)に遭遇するまで拡張し続ける。ET(26)内の組織側壁(27)にプラグ(400、500)が確実に係合すると、ET(26)は、プラグ(400、500)が中に位置決めされていないET(26)の異常に大きい直径と対照的に、より小さい輪郭を効果的にとる。ET(26)内の所望の位置でプラグ(400、500)を中空シース(480)から解放した後、中空シース(480)及びプッシュロッド(490)をET(26)から引き抜き、プラグ(400、500)をET(26)内の適所に残す。プラグ(500)が配備されている場合、通路(508)は、プラグ(500)がET(26)内に位置しているにもかかわらず、プラグ(500)を通して通気及び排水路を提供する。このような通気及び排水路がある場合でさえ、プラグ(500)は、依然としてET(26)の効果的に低減した直径を提供し、それによって開放ET(26)に関連する患者の症状を軽減する。
【0046】
あるいは、いくつかの用途では、中空シース(480)は、図17Aに見られるように、遠位開口部(484)がプラグ(400、500)がET(26)と係合するための所望の位置に位置決めされるまで、ET(26)を通して選択的に前進される。このとき、上述の遠位開口部(484)をプラグ(400、500)が内部チャネル(482)から解放される所望の位置に近接して位置決めする従来の方法とは対照的に、遠位開口部(484)は、プラグ(400、500)がET(26)に係合する位置に選択的に位置決めされる。特に、図17Bに見られるように、中空シース(480)がET(26)内で遠位に抜き取られる一方、プッシュロッド(490)は、適所にしっかり維持され、したがって内部チャネル(482)内に含まれるにもかかわらず中空シース(480)と共に遠位に抜き取られることがない。
【0047】
すなわち、中空シース(480)がET(26)から後退すると、プラグ(400、500)の遠位端(406、506)が遠位開口部(484)を越えて延在するように、プッシュロッド(490)がプラグ(400、500)の近位端(404、504)に連続的に当接して適所に保持される。このとき、プラグ(400、500)は、中空シース(480)が遠位に並進するにつれて内部チャネル(482)から露出する。図17Cは、プラグ(400、500)が内部チャネル(482)内にもはや含まれず、プッシュロッド(490)の遠位端が遠位開口部(484)を通って延び、近位端(404、504)との係合を通してプラグ(400)を所望の位置に維持するように、ET(26)から実質的に後退した中空シース(480)を示す。プラグ(400、500)が内部チャネル(482)内に含まれていないと、プラグ(400、500)は、元の拡大状態に弾性的に拡張する。内部チャネル(482)への閉じ込めを通して細長いシャフト(402、502)の外部表面に以前印加された径方向の力がないため、プラグ(400、500)は、径方向に拡張する。
【0048】
上述したのと同様に、プラグ(400、500)の細長いシャフト(402、502)は、ET(26)の組織側壁(27)に遭遇するまで径方向に拡張する。ET(26)内の組織側壁(27)にプラグ(400)が確実に係合すると、ET(26)は、プラグ(400、500)が中に位置決めされていないET(26)の異常に大きい直径と対照的に、より小さい輪郭を効果的にとる。ET(26)内の所望の場所で中空シース(480)内からプラグ(400、500)を露出させた後、中空シース(480)及びプッシュロッド(490)をET(26)から引き抜き、プラグ(400、500)をET(26)内の適所に残す。
【0049】
III.代表的な組み合わせ
以下の実施例は、本明細書の教示を組み合わせるか又は適用することができる、種々の非網羅的な方法に関する。以下の実施例は、本出願における又は本出願の後の出願におけるどの時点でも提示され得る、いずれの請求項の適用範囲をも限定することを目的としたものではない、と理解すべきである。一切の棄権をも意図するものではない。以下の実施例は、単なる例示の目的で与えられるものにすぎない。本明細書の様々な教示は、その他の多くの方法で構成及び適用が可能であると考えられている。また、いくつかの変形形態では、以下の実施例において言及される特定の特徴を省略してよいことも、考えられる。したがって、本発明者又は本発明者の利益の継承者により、後日、そうである旨が明示的に示されない限り、以下に言及される態様又は特徴のいずれも重要なものとして見なされるべきではない。以下に言及される特徴以外の更なる特徴を含む請求項が本出願において、又は本出願に関連する後の出願において示される場合、これらの更なる特徴は、特許性に関連するいずれかの理由により追加されたものとしても、仮定されるべきではない。
【実施例
【0050】
(実施例1)
患者の開放耳管(ET)内に制約を設けるためのシステムであって、(a)シャフト及びその間に延在するルーメンを含むガイドカテーテルであって、ガイドカテーテルは、ガイドカテーテルが患者の頭部内に挿入されるときET内の開口部へのアクセスを提供するように構成された遠位端を更に含む、ガイドカテーテルと、(b)シャフトを含む器具と、(c)非拡張状態と拡張状態との間で径方向に拡張及び後退するように構成された本体を含むインサートと、を備え、器具が、インサートをET内で解放するように動作可能であり、インサートが、非拡張状態にあるときガイドカテーテルのルーメン内に受容されるようなサイズ及び形状であり、インサートが、ET内で拡張状態から非拡張状態に移行した後又はET内で非拡張状態から拡張状態に移行した後にETの有効径を低減するように構成されている、システム。
【0051】
(実施例2)
インサートが、非拡張状態に弾性的に付勢される、実施例1に記載のシステム。
【0052】
(実施例3)
器具が、拡張可能部材を更に含み、インサートが、拡張可能部材によって本体に印加される径方向外向きの力に応答して拡張状態に拡張するように構成されている、実施例2に記載のシステム。
【0053】
(実施例4)
インサートは、インサートが非拡張状態にあるとき拡張可能部材を受容するようなサイズ及び構成である、実施例3に記載のシステム。
【0054】
(実施例5)
インサートが、拡張可能部材に解放可能に固定されている、実施例3~4のいずれか1つ又は2つ以上に記載のシステム。
【0055】
(実施例6)
本体が、複数の長手方向ストラットを含み、ストラットは、各ストラットが別のストラットに隣接し、それによってメッシュパターンを形成するように、ループ状に組み立てられている、実施例1~5のいずれか1つ又は2つ以上に記載のシステム。
【0056】
(実施例7)
インサートが、本体とETとの間の接触時にインサートをETに確実に取り付けるように構成された固着機構を更に含む、実施例1~6のいずれか1つ又は2つ以上に記載のシステム。
【0057】
(実施例8)
固着機構が、本体に沿って位置決めされている、実施例7に記載のシステム。
【0058】
(実施例9)
固着機構が、本体の外側表面に沿って組織結合コーティングを含む、実施例7~8のいずれか1つ又は2つ以上に記載のシステム。
【0059】
(実施例10)
インサートが、生分解性材料で形成されており、インサートが、ET内で所定の持続時間後に溶解するように構成されている、実施例1~9のいずれか1つ又は2つ以上に記載のシステム。
【0060】
(実施例11)
インサートが、本体を柔軟に拡張するように動作可能な弾性材料で形成されている、実施例1~10のいずれか1つ又は2つ以上に記載のシステム。
【0061】
(実施例12)
インサートが、拡張状態に向けて弾性的に付勢され、ガイドカテーテルが、非拡張状態にインサートを拘束するように構成されている、実施例1又は6~11のいずれか1つ又は2つ以上に記載のシステム。
【0062】
(実施例13)
本体が、拡張状態に径方向に拡張されるとき長手方向に収縮するように構成されている、実施例12に記載のシステム。
【0063】
(実施例14)
インサートが、本体内に延在する複数の通路を含み、通路が、本体を貫通する流体連通を可能にするように構成されている、実施例12~13のいずれか1つ又は2つ以上に記載のシステム。
【0064】
(実施例15)
器具が、プッシャを更に含み、当該プッシャは、ガイドカテーテルとプッシャとの間の長手方向の相対移動に応答してインサートをガイドカテーテルの外に追いやるように動作可能である、実施例12~14のいずれか1つ又は2つ以上に記載のシステム。
【0065】
(実施例16)
患者の開放耳管(ET)内に制約を設けるための装置であって、(a)本体であって、本体が、細長状態から幅広状態に径方向に拡張するように弾性的に付勢され、本体の長手方向の長さは、本体の長手方向の長さが幅広状態と比較すると細長状態においてより長くなるように、幅広状態時に短縮するように構成され、本体は、本体が細長状態にあるときET内に挿入されるようなサイズ及び構成であり、本体は、本体が幅広状態にあるときETの側壁に当たるようなサイズ及び構成である、本体と、(b)本体を貫通して形成された複数の通路と、を備え、本体が、細長状態ではシャフトの内部に受容されるようなサイズ及び構成であり、本体が、幅広状態では通路を通して介してETを貫通する制限された流体連通を提供するように動作可能である、装置。
【0066】
(実施例17)
本体が、生分解性材料で形成されており、本体が、ET内で所定の持続時間後に溶解するように構成されている、実施例16に記載の装置。
【0067】
(実施例18)
インサートを使用して患者の開放耳管(ET)内に制限を設けるための方法であって、インサートが、収縮状態から拡張状態に拡張可能であるように構成された本体を含み、当該方法は、(a)インサートが収縮状態にある間インサートを患者の口腔鼻腔内に向けることと、(b)インサートをETの開口部内に前進させることと、(c)ET内のインサートを所望の目的部位に更に前進させることと、(d)インサートを拡張状態に拡張することと、(e)インサートを介してETの有効径を制限することと、を含む方法。
【0068】
(実施例19)
インサートが、収縮状態に向けて弾性的に付勢されており、向ける、前進させる、及び更に拡張する行為が、拡張可能部材を有する器具を使用して実施され、インサートが、拡張可能部材により搬送され、インサートを拡張する行為が、インサートの弾性的付勢を克服するように拡張可能部材を拡張することを含み、拡張されたインサートが、ETに固定され、ETの有効径を制限する行為が、拡張可能部材を収縮させ、それによってインサートが収縮状態に弾性的に戻ることを可能にすることを含む、実施例18に記載の方法。
【0069】
(実施例20)
インサートが、拡張状態に向けて弾性的に付勢されており、向ける、前進させる、及び更に拡張する行為が、外側シース及び内側ロッドを有する器具を使用して実施され、インサートが、外側シース内に搬送され、インサートを拡張する行為が、外側シースと内側ロッドとの間の長手方向の相対移動を提供し、それによってインサートを外側シースから解放することを含み、ETの有効径を制限する行為は、インサートが拡張状態に弾性的に戻ることにより提供される、実施例18に記載の方法。
【0070】
IV.その他
本明細書に記載の実施例のうちのいずれも、上述のものに加えて又はそれに代えて、様々な他の特徴を含み得る点が理解されるべきである。あくまで例としてであるが、本明細書に記載の実施例のうちのいずれも、参照により本明細書に組み込まれる様々な参考文献のいずれかに開示されている様々な特徴のうちの1つ又は2つ以上を含むこともできる。
【0071】
本明細書に記載された教示、表現、実施形態、実施例などのうちいずれか1つ以上が、本明細書に記載された他の教示、表現、実施形態、実施例などのうちいずれか1つ以上と組み合わされてもよいことが理解されるべきである。したがって、上記の教示、表現、実施形態、実施例などは、互いに対して独立して考慮されるべきではない。本明細書の教示に照らして、本明細書の教示を組み合わせることができる種々の好適な方法が、当業者には直ちに明らかとなろう。このような改変及び変形形態は、「特許請求の範囲」内に含まれるものとする。
【0072】
本明細書に参考として組み込まれると言及されたいかなる特許、公報、又はその他の開示内容も、全体的に又は部分的に、組み込まれた内容が現行の定義、見解、又は本明細書に記載されるその他の開示内容とあくまで矛盾しない範囲でのみ本明細書に組み込まれる、と理解されなければならない。そのようなものであるから、また必要な範囲で、本明細書に明瞭に記載される開示内容は、参考として本明細書に組み込まれているあらゆる矛盾する記載に優先するものとする。現行の定義、見解、又は本明細書に記載されるその他の開示内容と矛盾する任意の内容、又はそれらの部分は本明細書に参考として組み込まれるものとするが、参照内容と現行の開示内容との間に矛盾が生じない範囲においてのみ、参照されるものとする。
【0073】
上記の変形形態は、1回の使用後に廃棄されるように設計されてもよく、又は、それらは複数回使用されるように設計されてもよい。一方又はその両方の場合において、種々の変形形態は、少なくとも1回の使用後に再利用のために再調整されてよい。再調整は、装置の分解工程、それに続く特定の部分の洗浄又は交換工程、及びその後の再組立て工程の、任意の組み合わせを含んでよい。特に、装置のいくつかの変形形態は分解することができ、かつ、装置の任意の数の特定の部品若しくは部分を、任意の組み合わせにて選択的に交換又は取り外してもよい。特定の部品の洗浄及び/又は交換に際して、装置の特定の変形例を、再調整用の施設において、又は手術の直前に使用者により再組み立てして、その後の使用に供することができる。装置の再調整において、分解、洗浄/交換、及び再組立てのための種々の技術を利用することができることを、当業者は理解するであろう。このような技術の使用、及び結果として得られる再調整された装置は、すべて本発明の範囲内にある。
【0074】
実施例のみの目的で、本明細書に記載される変形形態は、手術の前及び/又は後に滅菌されてもよい。1つの滅菌技術では、装置をプラスチック製又はTYVEK製のバックなどの閉鎖及び密封された容器に入れる。次いで、容器及び装置を、γ線、X線、又は高エネルギー電子線などの、容器を透過し得る放射線場に置いてよい。放射線は、装置の表面及び容器内の細菌を死滅させ得る。次に、滅菌された装置を、後の使用のために、滅菌容器中で保管してよい。β線若しくはγ線、エチレンオキシド、又は水蒸気が挙げられるがこれらに限定されない、当該技術分野で周知のその他の任意の技術を用いて、装置を滅菌してもよい。
【0075】
本発明の様々な実施例について図示し記載してきたが、本発明の範囲から逸脱することなく、当業者による適切な改変によって、本明細書に記載された方法及びシステムの更なる適合が実現されてもよい。このような可能な改変のうちのいくつかについて述べたが、その他の改変も当業者には明らかであろう。例えば、上記で論じた実施例、実施形態、幾何学形状、材料、寸法、比率、ステップなどは、例証であって必須のものではない。したがって、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲の観点から考慮されるべきものであり、本明細書及び図面において図示され、説明された構造及び動作の細部に限定されないものとして、理解されたい。
【0076】
〔実施の態様〕
(1) 患者の開放耳管(ET)内に制限を設けるためのシステムであって、
(a)シャフト及びその間に延在するルーメンを含むガイドカテーテルであって、前記ガイドカテーテルは、前記ガイドカテーテルが前記患者の頭部内に挿入されるとき前記ET内の開口部へのアクセスを提供するように構成された遠位端を更に含む、ガイドカテーテルと、
(b)シャフトを含む器具と、
(c)非拡張状態と拡張状態との間で径方向に拡張及び後退するように構成された本体を含むインサートと、を備え、前記器具が、前記インサートを前記ET内で解放するように動作可能であり、前記インサートが、前記非拡張状態にあるとき前記ガイドカテーテルの前記ルーメン内に受容されるようなサイズ及び形状であり、前記インサートが、前記ET内で前記拡張状態から前記非拡張状態に移行した後又は前記ET内で前記非拡張状態から前記拡張状態に移行した後に前記ETの有効径を低減するように構成されている、システム。
(2) 前記インサートが、前記非拡張状態に弾性的に付勢される、実施態様1に記載のシステム。
(3) 前記器具が、拡張可能部材を更に含み、前記インサートが、前記拡張可能部材によって前記本体に印加される径方向外向きの力に応答して前記拡張状態に拡張するように構成されている、実施態様2に記載のシステム。
(4) 前記インサートは、前記インサートが前記非拡張状態にあるとき前記拡張可能部材を受容するようなサイズ及び構成である、実施態様3に記載のシステム。
(5) 前記インサートが、前記拡張可能部材に解放可能に固定されている、実施態様3に記載のシステム。
【0077】
(6) 前記本体が、複数の長手方向ストラットを含み、前記ストラットは、各ストラットが別のストラットに隣接し、それによってメッシュパターンを形成するように、ループ状に組み立てられている、実施態様1に記載のシステム。
(7) 前記インサートが、前記本体と前記ETとの間の接触時に前記インサートを前記ETに確実に取り付けるように構成された固着機構を更に含む、実施態様1に記載のシステム。
(8) 前記固着機構が、前記本体に沿って位置決めされている、実施態様7に記載のシステム。
(9) 前記固着機構が、前記本体の外側表面に沿って組織結合コーティングを含む、実施態様7に記載のシステム。
(10) 前記インサートが、生分解性材料で形成されており、前記インサートが、前記ET内で所定の持続時間後に溶解するように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
【0078】
(11) 前記インサートが、前記本体を柔軟に拡張するように動作可能な弾性材料で形成されている、実施態様1に記載のシステム。
(12) 前記インサートが、前記拡張状態に向けて弾性的に付勢され、前記ガイドカテーテルが、前記非拡張状態に前記インサートを拘束するように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(13) 前記本体が、前記拡張状態に径方向に拡張されるとき長手方向に収縮するように構成されている、実施態様12に記載のシステム。
(14) 前記インサートが、前記本体内に延在する複数の通路を含み、前記通路が、前記本体を貫通する流体連通を可能にするように構成されている、実施態様12に記載のシステム。
(15) 前記器具が、プッシャを更に含み、前記プッシャは、前記ガイドカテーテルと前記プッシャとの間の長手方向の相対移動に応答して前記インサートを前記ガイドカテーテルの外に追いやるように動作可能である、実施態様12に記載のシステム。
【0079】
(16) 患者の開放耳管(ET)内に制限を設けるための装置であって、
(a)本体であって、前記本体が、細長状態から幅広状態に径方向に拡張するように弾性的に付勢され、前記本体の長手方向の長さは、前記本体の前記長手方向の長さが前記幅広状態と比較すると前記細長状態においてより長くなるように、前記幅広状態時に短縮するように構成され、前記本体は、前記本体が前記細長状態にあるときET内に挿入されるようなサイズ及び構成であり、前記本体は、前記本体が前記幅広状態にあるとき前記ETの側壁に当たるようなサイズ及び構成である、本体と、
(b)前記本体を貫通して形成された複数の通路と、を備え、
前記本体が、前記細長状態ではシャフトの内部に受容されるようなサイズ及び構成であり、
前記本体が、前記幅広状態では前記通路を通して介してETを貫通する制限された流体連通を提供するように動作可能である、装置。
(17) 前記本体が、生分解性材料で形成されており、前記本体が、前記ET内で所定の持続時間後に溶解するように構成されている、実施態様16に記載の装置。
(18) インサートを使用して患者の開放耳管(ET)内に制限を設けるための方法であって、前記インサートが、収縮状態から拡張状態に拡張可能であるように構成された本体を含み、前記方法は、
(a)前記インサートが前記収縮状態にある間前記インサートを前記患者の口腔鼻腔内に向けることと、
(b)前記インサートを前記ETの開口部内に前進させることと、
(c)前記ET内の前記インサートを所望の目的部位に更に前進させることと、
(d)前記インサートを前記拡張状態に拡張することと、
(e)前記インサートを介して前記ETの有効径を制限することと、を含む方法。
(19) 前記インサートが、前記収縮状態に向けて弾性的に付勢されており、向ける、前進させる、及び更に拡張する行為が、拡張可能部材を有する器具を使用して実施され、前記インサートが、前記拡張可能部材により搬送され、前記インサートを拡張する行為が、前記インサートの前記弾性的付勢を克服するように拡張可能部材を拡張することを含み、前記拡張されたインサートが、前記ETに固定され、前記ETの前記有効径を制限する行為が、前記拡張可能部材を収縮させ、それによって前記インサートが前記収縮状態に弾性的に戻ることを可能にすることを含む、実施態様18に記載の方法。
(20) 前記インサートが、前記拡張状態に向けて弾性的に付勢されており、向ける、前進させる、及び更に拡張する行為が、外側シース及び内側ロッドを有する器具を使用して実施され、前記インサートが、前記外側シース内に搬送され、前記インサートを拡張する行為が、前記外側シースと前記内側ロッドとの間の長手方向の相対移動を提供し、それによって前記インサートを前記外側シースから解放することを含み、前記ETの前記有効径を制限する行為は、前記インサートが前記拡張状態に弾性的に戻ることにより提供される、実施態様18に記載の方法。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図11
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図16C
図17A
図17B
図17C