(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-24
(45)【発行日】2023-04-03
(54)【発明の名称】油脂用増粘剤
(51)【国際特許分類】
A23D 9/013 20060101AFI20230327BHJP
【FI】
A23D9/013
(21)【出願番号】P 2018188982
(22)【出願日】2018-10-04
【審査請求日】2021-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】390028897
【氏名又は名称】阪本薬品工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】堀切 千尋
(72)【発明者】
【氏名】緒方 健一
(72)【発明者】
【氏名】村井 卓也
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-106935(JP,A)
【文献】特開2008-125358(JP,A)
【文献】特開2013-176312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D
C11B
C11C
C09K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリグリセリン脂肪酸エステル(1)から1種以上、及び、ポリグリセリン脂肪酸エステル(2)から1種以上含有することを特徴とする油脂用増粘剤であって、
ポリグリセリン脂肪酸エステル(1)は、ポリグリセリンの平均重合度が2~10であり、構成脂肪酸として下記成分A~Cの全てを含有し、且つ、エステル化率が30~100%であることを特徴とする油脂用増粘剤。
成分A:ベヘン酸
成分B:炭素数12~18の飽和脂肪酸からなる群より選ばれる1種以上
成分C:炭素数8~10の飽和脂肪酸、及び、炭素数18~22の不飽和脂肪酸からなる群より選ばれる1種以上
ポリグリセリン脂肪酸エステル(2)は、ポリグリセリンの平均重合度が1~10であり、構成脂肪酸中のベヘン酸のモル比率が0.6~1.0であり、且つ、エステル化率が25~100%である(但し、ポリグリセリン脂肪酸エステル(1)を除く)ことを特徴とする油脂用増粘剤。
【請求項2】
ポリグリセリン脂肪酸エステル(1’)から1種以上、及び、ポリグリセリン脂肪酸エステル(2’)から1種以上含有することを特徴とする油脂用増粘剤であって、
ポリグリセリン脂肪酸エステル(1’)は、ポリグリセリンの平均重合度が10であり、構成脂肪酸として下記成分A’~C’の全てを含有し、且つ、エステル化率が30~100%であって、
成分A’:ベヘン酸
成分B’:炭素数12~18の飽和脂肪酸からなる群より選ばれる1種以上
成分C’:炭素数18~22の不飽和脂肪酸からなる群より選ばれる1種以上
ポリグリセリン脂肪酸エステル(2’)は、ポリグリセリンの平均重合度が2~10であり、構成脂肪酸中のベヘン酸のモル比率が0.6~1.0であり、且つ、エステル化率が25~50%である(但し、前記ポリグリセリン脂肪酸エステル(1
’)を除く)ことを特徴とする油脂用増粘剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油脂用増粘剤に関する。
【背景技術】
【0002】
液状油脂は、エステル交換や水素添加により増粘、固化された後、加工油脂製品に使用されている。このようにして改質された油脂は、油脂中の不飽和脂肪酸が飽和脂肪酸となり、融点が上昇することから、口溶けの悪化が懸念されている。また、水素添加によりシス型の不飽和脂肪酸がトランス型の不飽和脂肪酸となり、健康に悪影響を及ぼすリスクが問題視されている。
このような油脂の改質を必要とせず液状油脂を増粘、固化することを目的として、これまでにポリグリセリン脂肪酸エステルを添加する方法が開示されている。
【0003】
特許文献1には、ベヘン酸を主要構成脂肪酸とし、エステル化度を50%以上としたポリグリセリン脂肪酸エステルを添加して液状油脂を増粘することが開示されている。また、特許文献2~3には、特定の脂肪酸組成、モル比、ポリグリセリン重合度及びエステル化度を有したポリグリセリン脂肪酸エステルが増粘効果に優れることが開示されている。特許文献1~3に記載されているポリグリセリン脂肪酸エステルは、油脂に添加した後、20℃まで冷却することにより、油脂の改質を必要とせず液状油脂を増粘、固化することが可能である。
【0004】
油脂が増粘、固化して形成されるゲルの耐熱性を高めると、高い温度帯でもゲルの形状を維持することが可能となり、保存や流通時の安定性が向上する。そのため、液状油脂を増粘、固化させた食品を製造する際、より高温度帯で増粘、固化することが望ましい。特許文献1~3に記載されているポリグリセリン脂肪酸エステルは油脂の固化や硬さの調整を目的に用いられているものの、油脂の増粘、固化する温度帯が低く、満足できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-069912号公報
【文献】特開2007-106935号公報
【文献】特開2012-082236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、より高温度帯で油脂を増粘、固化させる油脂用増粘剤を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者が鋭意研究を重ねた結果、油脂用増粘剤として特定のポリグリセリンと特定の脂肪酸から構成されるポリグリセリン脂肪酸エステルを用いることで、上記課題が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明の第1は、ポリグリセリン脂肪酸エステル(1)を含有することを特徴とする油脂用増粘剤であって、
ポリグリセリン脂肪酸エステル(1)は、ポリグリセリンの平均重合度が2~10であり、構成脂肪酸として下記成分A~Cを含有し、且つ、エステル化率が30~100%であることを特徴とする油脂用増粘剤に関する。
成分A:ベヘン酸
成分B:炭素数12~18の飽和脂肪酸からなる群より選ばれる1種以上
成分C:炭素数8~10の飽和脂肪酸、及び、炭素数18~22の不飽和脂肪酸からなる群より選ばれる1種以上。
本発明の第2は、前記ポリグリセリン脂肪酸エステル(1)を2種以上含有することを特徴とする本発明の第1に記載の油脂用増粘剤に関する。
本発明の第3は、前記ポリグリセリン脂肪酸エステル(1)から1種以上、及び、ポリグリセリン脂肪酸エステル(2)から1種以上含有することを特徴とする油脂用増粘剤であって、
ポリグリセリン脂肪酸エステル(2)は、ポリグリセリンの平均重合度が1~10であり、構成脂肪酸中のベヘン酸のモル比率が0.6~1.0であり、且つ、エステル化率が25~100%である(但し、ポリグリセリン脂肪酸エステル(1)を除く)ことを特徴とする本発明の第1に記載の油脂用増粘剤に関する。
本発明の第4は、ポリグリセリン脂肪酸エステル(1’)から1種以上、及び、ポリグリセリン脂肪酸エステル(2’)から1種以上含有することを特徴とする油脂用増粘剤であって、
ポリグリセリン脂肪酸エステル(1’)は、ポリグリセリンの平均重合度が10であり、構成脂肪酸として下記成分A’~C’の全てを含有し、且つ、エステル化率が30~100%であって、
成分A’:ベヘン酸
成分B’:炭素数12~18の飽和脂肪酸からなる群より選ばれる1種以上
成分C’:炭素数18~22の不飽和脂肪酸からなる群より選ばれる1種以上
ポリグリセリン脂肪酸エステル(2’)は、ポリグリセリンの平均重合度が2~10であり、構成脂肪酸中のベヘン酸のモル比率が0.6~1.0であり、且つ、エステル化率が25~50%である(但し、前記ポリグリセリン脂肪酸エステル(1)を除く)ことを特徴とする油脂用増粘剤に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の油脂用増粘剤は、少量の添加でも従来の増粘剤に比べて高温度帯で油脂を増粘させることが可能である。そして、高い温度帯でもゲルの形状を維持できるため、保存や流通時の安定性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】無添加、実施例4、比較例2の油脂の65℃から25℃までの粘度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明を詳細に説明する。本発明の範囲はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で変更等が加えられた形態も本発明に属する。なお、範囲を表す「~」は上限と下限を含むものである。
【0012】
本発明に係るポリグリセリン脂肪酸エステル(1)を構成するポリグリセリンの平均重合度は、2~10であり、好ましくは6~10であり、最も好ましくは10である。ここで、平均重合度は、末端基分析法による水酸基価から算出されるポリグリセリンの平均重合度(n)である。詳しくは、次式(式1)及び(式2)から平均重合度が算出される。
(式1)分子量=74n+18
(式2)水酸基価=56110(n+2)/分子量
上記(式2)中の水酸基価とは、ポリグリセリンに含まれる水酸基数の大小の指標となる数値であり、1gのポリグリセリンに含まれる遊離ヒドロキシル基をアセチル化するために必要な酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数をいう。水酸化カリウムのミリグラム数は、社団法人日本油化学会編纂、「日本油化学会制定、基準油脂分析試験法2013年度版」に準じて算出される。
【0013】
本発明に係るポリグリセリン脂肪酸エステル(1)は、構成脂肪酸として以下の成分A~Cの全てを含有する。成分Aとしてはベヘン酸、成分Bとしては炭素数12~18の飽和脂肪酸からなる群より選ばれる1種以上、成分Cとしては炭素数8~10の飽和脂肪酸、または、炭素数18~22の不飽和脂肪酸からなる群より選ばれる1種以上である。成分Cは炭素数18~22の不飽和脂肪酸からなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0014】
上記成分A~Cの脂肪酸は、この炭素数および飽和または不飽和の条件に当てはまるものであれば特に限定されるものでないが、主として直鎖脂肪酸が選択される。炭素数12~18の飽和脂肪酸には、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等、炭素数8~10の飽和脂肪酸には、カプリル酸、カプリン酸、炭素数18~22の不飽和脂肪酸には、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エルカ酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸等が挙げられる。
【0015】
本発明に係るポリグリセリン脂肪酸エステル(1)のエステル化率は、30~100%であり、好ましくは40~80%である。ここで、エステル化率とは、末端基分析法による水酸基価から算出されるポリグリセリンの平均重合度(n)、このポリグリセリンが有する水酸基数(n+2)、ポリグリセリンに付加している脂肪酸のモル数(M)としたとき、
(式3)エステル化率(%)=(M/(n+2))×100
で算出される値である。
【0016】
本発明に係るポリグリセリン脂肪酸エステル(1)のうち、ポリグリセリンの平均重合度が10であり、構成脂肪酸である成分Cが炭素数18~22の不飽和脂肪酸からなる群より選ばれる1種以上であるものがより好ましく、この条件を満たすものをポリグリセリン脂肪酸エステル(1’)と表記する。
【0017】
また、本発明の油脂用増粘剤はポリグリセリン脂肪酸エステル(1)の他にポリグリセリン脂肪酸エステル(2)を併用することができる。
【0018】
本発明に係るポリグリセリン脂肪酸エステル(2)を構成するポリグリセリンの平均重合度は、1~10であり、好ましくは2~10である。ここでの平均重合度は、前述の(式1)及び(式2)から算出される。
【0019】
本発明に係るポリグリセリン脂肪酸エステル(2)は、構成脂肪酸としてベヘン酸を必須成分とし、構成脂肪酸中のベヘン酸のモル比率は0.6~1.0である(但し、ポリグリセリン脂肪酸エステル(1)に該当するものを除く)。
【0020】
本発明に係るポリグリセリン脂肪酸エステル(2)のエステル化率は、25~100%であり、好ましくは25~50%である。ここでエステル化率は前述の(式3)から算出される値である。
【0021】
本発明に係るポリグリセリン脂肪酸エステル(2)のうち、ポリグリセリンの平均重合度が2~10であり、構成脂肪酸中のベヘン酸のモル比率が0.6~1.0であり、且つ、エステル化率が25~50%のものがより好ましく、この条件を満たすものをポリグリセリン脂肪酸エステル(2’)と表記する。
【0022】
本発明に係るポリグリセリン脂肪酸エステルは、公知のエステル化反応により製造することができる。例えば、脂肪酸とポリグリセリンとを水酸化ナトリウム等のアルカリ触媒の存在下におけるエステル化反応により製造することができる。
【0023】
本発明の油脂用増粘剤は、ポリグリセリン脂肪酸エステル(1)を1種以上含有するものであり、ポリグリセリン脂肪酸エステル(1)から2種以上、又は、ポリグリセリン脂肪酸エステル(1)から1種以上とポリグリセリン脂肪酸エステル(2)から1種以上を含有することが好ましく、ポリグリセリン脂肪酸エステル(1’)から1種以上とポリグリセリン脂肪酸エステル(2’)から1種以上を含有することがより好ましい。
【0024】
ポリグリセリン脂肪酸エステル(1)とポリグリセリン脂肪酸エステル(2)を併用する場合、ポリグリセリン脂肪酸エステル全量に対してポリグリセリン脂肪酸エステル(1)の配合比が0.5~0.75であることが好ましい。
【0025】
本発明に係るポリグリセリン脂肪酸エステルで粘性を高めることができる油脂は、液状油脂のみならず半固体状乃至は固体状の油脂も対象となる。対象となる油脂は、限定されるものではないが、例えば、大豆油、ナタネ油、コーン油、ゴマ油、シソ油、亜麻仁油、落花生油、紅花油、高オレイン酸紅花油、綿実油、ぶどう種子油、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、かぼちゃ種子油、クルミ油、椿油、茶実油、エゴマ油、オリーブ油、米油、米糠油、小麦胚芽油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、カカオ脂、サフラワー油、ひまわり油等の植物油脂や、牛脂、ラード、鶏脂、乳脂、魚油、アザラシ油等の動物油脂、藻類油等がある。また、対象となる油脂が、エステル交換した油脂、硬化油、油脂の構成油脂を分別した分別油、混合油であっても良く、水素添加された油脂であっても良い。
【0026】
更に、粘性を高める対象となる油脂には、ジグリセライド及び/又はモノグリセライドが含有または調合されているものであっても良い。また、油脂には、ステロールやステロールエステル等が任意に含有されていても良い。
【0027】
ポリグリセリン脂肪酸エステルを液状油脂に添加して含有させる場合、含有量を増量して、液状油脂を固化させることが可能であり、固化した油脂に更に添加して、硬度を高めることも可能である。つまり、本実施形態のポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量の増減によって調整可能な油脂の粘度範囲は、広範囲であり、油脂の硬さを広く調整できるため、多種多様な食品に適用することができる。ポリグリセリン脂肪酸エステルを油脂に添加する場合、ポリグリセリン脂肪酸エステルを70℃以上に加熱した油脂に添加し、その後油脂を適宜に攪拌して油脂中にポリグリセリン脂肪酸エステルを溶解する。その後、油脂を冷却することにより、増粘化した油脂が得られる。
【0028】
ポリグリセリン脂肪酸エステルを油脂に添加して含有させる量は、含有量の増加と共に油脂の粘性が高められるので、目的とする粘度に応じて定められる。通常、ポリグリセリン脂肪酸エステルと液状油脂との総重量におけるポリグリセリン脂肪酸エステルの重量濃度は0.1~10重量%であり、好ましくは1~10重量%であり、最も好ましくは2~10重量%である。
【0029】
ポリグリセリン脂肪酸エステルが添加された油脂は、たとえ液状成分を含有する半固体乃至は固体の油脂であっても、液状成分が染み出す油脂の分離が抑えられているので、口溶け性の良いものとなる。また、液状から固化された油脂は、常温で半固体または固体の油脂が有している可塑性、展延性、稠蜜性、ショートニング性などの物理的性質、酸化安定性等が付与されており、食品に使用することが可能である。また、水素添加による改質を行なっていない液状油脂の増粘化が実行されたものは、トランス型不飽和脂肪酸の増加の問題も生じることがない。
【0030】
上記本実施形態の油脂は、ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量が少量であるので、食品の風味の悪化が抑えられる。この油脂が適用される食品は、従来からの油脂からなる食品と同様、炒め油、離型油、コーティング油などの調理用油、マーガリン、ショートニング、クリーム、冷菓等の加工油脂、パン、ドーナツ、パイ、クッキー、ケーキ、マフィン、ケーキミックス、パスタ、麺類等の小麦粉製品、チョコレート、キャンディ、ムース、チューインガム、スナック類、和菓子、米菓子、デザート菓子等の菓子製品、加工乳、乳飲料、ヨーグルト類、乳酸菌飲料、チーズ、アイスクリーム、クリーム等の乳製品、マヨネーズ、ドレッシング、ホワイトソース、タルタルソース、味噌、醤油等の調味料、ハム、ソーセージ、ミートボール、ハンバーグ等の畜肉加工品、かまぼこ、ちくわ等の水産練り製品、スープ、カレー、シチュー、マーボ豆腐の素、どんぶりの素等の即席食品類、ジャム・マーマレード類、缶詰、栄養補助食品、特定保健用食品などに使用することができる。また、チルド食品、冷凍食品、インスタント食品、レトルト食品に使用することもできる。
【0031】
以下に実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、実施例に限定されるものではない。尚、合成例、実施例および比較例において、平均重合度が10のポリグリセリンに阪本薬品工業株式会社製「ポリグリセリン#750」を、平均重合度が6のポリグリセリンに阪本薬品工業株式会社製「ポリグリセリン#500」を、平均重合度が4のポリグリセリンに阪本薬品工業株式会社製「ポリグリセリン#310」を、平均重合度が2のポリグリセリンに阪本薬品工業株式会社製「ジグリセリンS」を使用した。
【0032】
<合成例1>
平均重合度が2のポリグリセリン100gとベヘン酸307.2gを反応容器に入れ、水酸化ナトリウムによるアルカリ性及び窒素気流下、250℃で反応させ、エステル化率38%のポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。
【0033】
<合成例2>
平均重合度が6のポリグリセリン100gとベヘン酸134.6gを反応容器に入れ、水酸化ナトリウムによるアルカリ性及び窒素気流下、250℃で反応させ、エステル化率28%のポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。
【0034】
<合成例3>
平均重合度が6のポリグリセリン100gとベヘン酸153.0gを反応容器に入れ、水酸化ナトリウムによるアルカリ性及び窒素気流下、250℃で反応させ、エステル化率31%のポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。
【0035】
<合成例4>
平均重合度が6のポリグリセリン100gとベヘン酸183.6gを反応容器に入れ、水酸化ナトリウムによるアルカリ性及び窒素気流下、250℃で反応させ、エステル化率38%のポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。
【0036】
<合成例5>
平均重合度が6のポリグリセリン100gとベヘン酸306.0gを反応容器に入れ、水酸化ナトリウムによるアルカリ性及び窒素気流下、250℃で反応させ、エステル化率63%のポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。
【0037】
<合成例6>
平均重合度が2のポリグリセリン100gとステアリン酸136.9g、オレイン酸135.9g、ベヘン酸491.6gからなる混合脂肪酸を反応容器に入れ、水酸化ナトリウムによるアルカリ性及び窒素気流下、250℃で反応させ、エステル化率100%のポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。
【0038】
<合成例7>
平均重合度が6のポリグリセリン100gとステアリン酸81.8g、オレイン酸81.2g、ベヘン酸293.8gからなる混合脂肪酸を反応容器に入れ、水酸化ナトリウムによるアルカリ性及び窒素気流下、250℃で反応させ、エステル化率100%のポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。
【0039】
<合成例8>
平均重合度が10のポリグリセリン100gとステアリン酸27.3g、オレイン酸27.1g、ベヘン酸97.9gからなる混合脂肪酸を反応容器に入れ、水酸化ナトリウムによるアルカリ性及び窒素気流下、250℃で反応させ、エステル化率33%のポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。
【0040】
<合成例9>
平均重合度が10のポリグリセリン100gとステアリン酸34.1g、オレイン酸33.8g、ベヘン酸122.4gからなる混合脂肪酸を反応容器に入れ、水酸化ナトリウムによるアルカリ性及び窒素気流下、250℃で反応させ、エステル化率42%のポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。
【0041】
<合成例10>
平均重合度が10のポリグリセリン100gとステアリン酸40.9g、オレイン酸40.6g、ベヘン酸146.9gからなる混合脂肪酸を反応容器に入れ、水酸化ナトリウムによるアルカリ性及び窒素気流下、250℃で反応させ、エステル化率50%のポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。
【0042】
<合成例11>
平均重合度が10のポリグリセリン100gとステアリン酸54.5g、オレイン酸54.1g、ベヘン酸195.8gからなる混合脂肪酸を反応容器に入れ、水酸化ナトリウムによるアルカリ性及び窒素気流下、250℃で反応させ、エステル化率67%のポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。
【0043】
<合成例12>
平均重合度が10のポリグリセリン100gとステアリン酸81.8g、オレイン酸81.2g、ベヘン酸293.8gからなる混合脂肪酸を反応容器に入れ、水酸化ナトリウムによるアルカリ性及び窒素気流下、250℃で反応させ、エステル化率100%のポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。
【0044】
<合成例13>
平均重合度が10のポリグリセリン100gとステアリン酸40.9g、オレイン酸40.6g、ベヘン酸391.7gからなる混合脂肪酸を反応容器に入れ、水酸化ナトリウムによるアルカリ性及び窒素気流下、250℃で反応させ、エステル化率100%のポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。
【0045】
<合成例14>
平均重合度が10のポリグリセリン100gとラウリン酸57.6g、ステアリン酸81.8g、ベヘン酸293.8gからなる混合脂肪酸を反応容器に入れ、水酸化ナトリウムによるアルカリ性及び窒素気流下、250℃で反応させ、エステル化率100%のポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。
【0046】
<合成例15>
平均重合度が10のポリグリセリン100gとステアリン酸81.8g、ベヘン酸293.8g、エルカ酸97.3gからなる混合脂肪酸を反応容器に入れ、水酸化ナトリウムによるアルカリ性及び窒素気流下、250℃で反応させ、エステル化率100%のポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。
【0047】
合成例1~15のポリグリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸、ポリグリセリンの平均重合度、エステル化率を表1に示した。なお、表1中、モル比率はポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の全モル量に対する各構成脂肪酸の比率である。
【0048】
【0049】
[試験例1]
油脂用増粘剤として、合成例1~15のポリグリセリン脂肪酸エステル、市販のグリセリンモノステアリン酸エステル(1G1S)、グリセリンモノベヘン酸エステル(1G1B)、太陽化学株式会社製「TAISET50」を表2に示す組合せで用いた。なお、配合比は重量比である。
80℃に加熱した試料容器内のキャノーラ油に表2に記載の油脂用増粘剤を添加し、均一に溶解させて、油脂用増粘剤を2重量%含有させた油脂を調製した。70℃に調温したE型粘度計(Brookfield社)のカップ内に試料を0.5mL注入し、25s-1の速度でせん断を付与しながら1℃/minで25℃まで冷却し、25℃に到達するまでの粘度を測定した。スピンドルはCP-40を使用した。無添加のキャノーラ油の25℃における粘度を上回った温度を増粘開始温度とし、試験例1の増粘開始温度を下記表2に示す。
【0050】
【0051】
表2に示す通り、ポリグリセリン脂肪酸エステル(1)を油脂用増粘剤として用いた実施例1~18の増粘開始温度は40℃以上であった。そして、ポリグリセリン脂肪酸エステル(1)を2種以上、ポリグリセリン脂肪酸エステル(1)とポリグリセリン脂肪酸エステル(2)を併用した実施例2~8、10~18の増粘開始温度は45℃以上となり、ポリグリセリン脂肪酸エステル(1)を含有しない比較例1、2に比べて高い温度帯で増粘することが明らかとなった。
【0052】
[試験例2]
油脂用増粘剤として、合成例1~15のポリグリセリン脂肪酸エステルを表3に示す組合せで用いた。なお、配合比は重量比である。
80℃に加熱した試料容器内のキャノーラ油に、表3に記載の油脂用増粘剤を添加し、均一に溶解させて、油脂用増粘剤を2重量%含有させた油脂を調製した。70℃に調温したE型粘度計(Brookfield社)のカップ内に試料を0.5mL注入し、25s-1の速度でせん断を付与しながら1℃/minで25℃まで冷却し、25℃に到達するまでの粘度を測定した。スピンドルはCP-40を使用した。
【0053】
実施例19~23、比較例3の40℃における粘度を下記表3に示す。
【0054】
【0055】
表3に示すとおり、本発明のポリグリセリン脂肪酸エステル(1)を含有する実施例19~23は、ポリグリセリン脂肪酸エステル(2)を単独で使用した比較例3に比べて40℃での粘度が高かった。中でも、ポリグリセリン脂肪酸エステル(1’)とポリグリセリン脂肪酸エステル(2’)を併用した実施例19~21は40℃での粘度が100mPa・s以上となり、高温度帯での増粘効果が極めて優れていることが明らかとなった。