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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-24
(45)【発行日】2023-04-03
(54)【発明の名称】物品測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01G 11/00 20060101AFI20230327BHJP
   B07C 5/24 20060101ALI20230327BHJP
   G01G 9/00 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
G01G11/00 E
B07C5/24
G01G9/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018195843
(22)【出願日】2018-10-17
(65)【公開番号】P2019200193
(43)【公開日】2019-11-21
【審査請求日】2021-10-05
(31)【優先権主張番号】P 2018090755
(32)【優先日】2018-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】田中 修
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-517721(JP,A)
【文献】国際公開第2017/196281(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/017751(WO,A1)
【文献】特開昭63-212641(JP,A)
【文献】特開2017-073454(JP,A)
【文献】特開平11-031738(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01G 11/00-11/20,9/00,
G01L 1/00-1/26,5/00-5/28,25/00
B07C 1/00-99/00,
B65G 15/30-15/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力で光学特性が変化する材料によって少なくとも一部が構成され物品(A)を載置して搬送する搬送部(2,12,22)と、
前記搬送部の前記光学特性を計測する計測部(3)と、
前記計測部の計測結果を変換テーブルのデータを用いて圧力を表す数値に変換し、該数値に基づく演算により物品の質量を測定する制御部(4,14,24)と、
を具備し、
前記制御部は、前記搬送部を駆動し、前記搬送部に前記物品が載置されていないときに前記計測部が計測した前記搬送部の光学特性を背景データとして取得し、前記搬送部に加わる張力の影響を減算することにより、前記物品の質量を補正することを特徴とする物品測定装置(1,11,21)。
【請求項2】
前記制御部(4,14,24)は、前記計測部(3)が計測した光学特性の変化に基づいて、前記搬送部(2,12,22)の上にある物品(A)に対応する独立領域を認識することを特徴とする請求項1に記載の物品測定装置(1,11,21)。
【請求項3】
圧力で光学特性が変化する材料によって少なくとも一部が構成され物品(A)が載置されるベルト(6)と、前記ベルトを駆動して物品を搬送するローラ(15,15a)とを有する搬送部(12)と、
前記ベルト下面に向けられて、前記光学特性を撮像する光学計測部としてのカメラ(3)と、
前記ベルトを駆動し、前記カメラにより撮像されたカラー画像を受け取って、変換テーブルのデータを用いて該カラー画像のピクセルごとに色を圧力値に変換し、該圧力値に基づく演算により、前記ベルトに前記物品が載置されていないときに前記ベルトに加わる張力の影響を示す背景データを取得し、前記ベルトに前記物品が載置されているときに前記背景データを減算することにより物品の質量を補正する制御部(14)と、
を具備することを特徴とする物品測定装置(11)。
【請求項4】
前記搬送部(2,12,22)によって搬送されている物品(A)を前記搬送部の外に移動させる移動手段を有し、
前記制御部(4,14,24)は測定した物品の質量に基づいて前記移動手段を制御することにより物品の選別を行わせることを特徴とする請求項1乃至の何れか一つに記載の物品測定装置(1,11,21)。
【請求項5】
前記搬送部(2)は、物品(A)を搬送する搬送方向についての弾性が相対的に大きく、前記搬送方向以外の方向についての弾性が相対的に小さいベルト(16a,16b,16c)を有していることを特徴とする請求項1または2に記載の物品測定装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力によって特性が変化する材料で構成された搬送部によって物品を搬送しながら、物品の圧力による搬送部の特性の変化を計測して物品の重量等を測定する物品測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には物品選別装置の発明が開示されている。この物品選別装置1は、同一高さに揃えて並べられた複数の搬送手段3と、各搬送手段3ごとに設けられた計量装置4と、各搬送手段3ごとに設けられて通過位置Aと待避位置Bと排除位置Cの何れかに選択的に設定される選別手段5と、共通の制御手段10を備えている。各搬送手段3は、供給された同一ロットに属する物品Wを搬送する。全搬送手段3の物品Wが合格である場合には全選別手段5を通過位置Aに設定する。少なくとも一の搬送手段3の物品Wが不合格の場合には当該選別手段を排除位置Cに設定し、他の選別手段を待避位置Bに設定する。この発明によれば、後段には全数良品が揃った場合のみ物品が供給され、良品と不良品の混在がなくなることが期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-187513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された物品選別装置によれば、物品を搬送する搬送手段が計量装置の上に搭載されており、物品の重量は、当該物品を搬送している搬送手段とともに計測される。このため、一つの搬送手段及び計量装置によって重量を測定できる物品は1個だけであり、2個以上の物品が同じ搬送手段で搬送されている場合には、個々の物品ごとに重量を測定することはできなかった。従って、多数の物品の重量を効率的に計測するためには、搬送手段及び計量装置の組を多数並べて配置する構造が必要となるため、設備が大型化し、製造コスト及び維持コストが高額になるという問題があった。
【0005】
本発明は、以上説明した従来の技術における課題に鑑みてなされたものであり、複数の物品を同時に搬送しながら個々の物品ごとに測定を行うことができる構成の簡易な物品測定装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載された物品測定装置1,11,21は、
圧力で光学特性が変化する材料によって少なくとも一部が構成され物品Aを載置して搬送する搬送部2,12,22と、
前記搬送部2,12,22の特性を計測する計測部3と、
前記計測部3の計測結果を変換テーブルのデータを用いて圧力を表す数値に変換し、該数値に基づく演算により物品Aの状態を測定する制御部4,14,24と、
を具備し、
前記制御部4,14,24は、前記搬送部2,12,22を駆動し、前記搬送部2,12,22に前記物品Aが載置されていないときに前記計測部3が計測した前記搬送部2,12,22の光学特性を背景データとして取得し、前記搬送部2,12,22に加わる張力の影響を減算することにより、前記物品Aの質量を補正することを特徴としている。
【0009】
請求項に記載された物品測定装置1,11,21は、請求項1に記載の物品測定装置1,11,21において、
前記計測部3が計測した光学特性の変化に基づいて、前記搬送部2,12,22の上にある物品Aに対応する独立領域を認識することを特徴としている。
【0010】
請求項に記載された物品測定装置11は、
圧力で光学特性が変化する材料によって少なくとも一部が構成され物品Aが載置されるベルト6と、前記ベルト6を駆動して物品Aを搬送するローラ15,15aとを有する搬送部12と、
前記ベルト6下面に向けられて、前記光学特性を撮像する光学計測部としてのカメラ3と、
前記ベルト6を駆動し、前記カメラ3により撮像されたカラー画像を受け取って、変換テーブルのデータを用いて該カラー画像のピクセルごとに色を圧力値に変換し、該圧力値に基づく演算により、前記ベルト6に前記物品Aが載置されていないときに前記ベルト6に加わる張力の影響を示す背景データを取得し、前記ベルト6に前記物品Aが載置されているときに前記背景データを減算することにより物品Aの質量を補正する制御部14と、
を具備することを特徴としている。
【0011】
求項に記載された物品測定装置1,11,21は、請求項1乃至の何れか一つに記載の物品測定装置1,11,21において、
前記搬送部2,12,22によって搬送されている物品Aを前記搬送部2,12,22の外に移動させる移動手段を有し、
前記制御部4,14,24は測定した物品Aの質量に基づいて前記移動手段を制御することにより物品の選別を行わせることを特徴としている。
【0012】
請求項に記載された物品測定装置1は、請求項1または2に記載の物品測定装置1,11,21において、
前記搬送部2が、物品Aを搬送する搬送方向についての弾性が相対的に大きく、前記搬送方向以外の方向についての弾性が相対的に小さいベルト16a,16b,16cを有していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載された物品測定装置によれば、搬送部に物品を載置して搬送すると、搬送部のうち、物品に接している光学部分の特性が物品の圧力に応じて変化する。この搬送部の光学特性の変化を計測部が計測し、その計測結果に基づいて演算部が演算を行うことにより、物品の質量を測定することができる。従って、複数の物品が同時に搬送部に載置されて搬送された場合には、各物品に接している搬送部の各部分が、各物品の圧力に応じてそれぞれ光学特性を変化させるので、計測部は各部分ごとに光学特性の変化を計測でき、制御部は各物品ごとの質量を測定することができる。また、搬送部に物品が載置されていないときに計測部が計測した搬送部の光学特性を背景データとして取得し、これを用いて補正演算を行うことにより、搬送部の搬送力によってベルトの色が変化している場合であっても、物品の重量によるベルトの色の変化のみに基づいて物品の重量を演算することができる。
【0016】
請求項に記載された物品測定装置によれば、搬送部の上に載置された複数の物品を各独立領域の識別により個別に認識することができ、これに基づいて行う各物品ごとの状態の測定を確実かつ容易に行うことができる。
【0017】
請求項に記載された物品測定装置によれば、複数の物品が同時にベルトに載置され、ローラの駆動により搬送されている状態では、各物品に接しているベルトの各部分は、各物品の圧力に応じて光学特性が変化している。カメラがベルトの前記光学特性を撮像すれば、ベルトの各部分ごとの前記光学特性がカラー画像として取得されるので、制御部は、カメラ3により撮像されたカラー画像を受け取って、変換テーブルのデータを用いて該カラー画像のピクセルごとに色を圧力値に変換し、該圧力値に基づく演算を行い、ベルトに載置された複数の物品の質量を、物品ごとに同時に測定することができる。また、搬送部に物品が載置されていないときに計測部が計測した搬送部の光学特性を背景データとして取得し、これを用いて補正演算を行うことにより、搬送部の搬送力によってベルトの色が変化している場合であっても、物品の重量によるベルトの色の変化のみに基づいて物品の重量を演算することができる。
【0018】
求項に記載された物品測定装置によれば、測定した物品の質量に基づいて搬送部に載置されて搬送されている物品を搬送部外に移動して選別することができる。このような移動手段を一体に組み込んだ物品測定装置によれば、測定機能しかない物品測定装置の後段に選別機能を備えた追加装置をオプションとして後付け設置する場合に比べて全体の設置面積や機長がコンパクトになり、製造コストも安価になるという効果がある。
【0019】
請求項に記載された物品測定装置によれば、ベルトは搬送方向については変形しにくいが、それ以外の方向については比較的容易に変形するため、前記物品測定装置による計測時に搬送部の搬送力によってベルトの光学特性が変化することは避けられる反面、搬送している物品の重量に対しては敏感に光学特性が変化するため、物品の重量によるベルトの光学特性の変化のみに基づいて物品の重量を正確に計測することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態である物品測定装置の正面図である。
図2】本発明の第1実施形態である物品測定装置の動作フローチャートである。
図3】本発明の第1実施形態である物品測定装置によって物品を搬送している状態を示す図であって、上図は平面図、下図は正面図である。
図4】本発明の第1実施形態である物品測定装置において、物品を搬送している搬送部のベルトをカメラで撮像して得た画像を示す図である。
図5】本発明の第1実施形態である物品測定装置の制御部が有する制御用データとしての変換テーブルをグラフの形態にて示す図であって、搬送部のベルトが備える圧力と色(波長)の特性を示す図である。
図6】本発明の第1実施形態である物品測定装置において、物品を搬送している搬送部のベルトの画像を、搬送部のベルトを構成する材料における圧力と色(波長)の変換テーブルで変換して得た圧力分布図である。
図7】本発明の第1実施形態である物品測定装置において、物品を搬送している状態を示す平面図と、物品を搬送しているベルトの底面をカメラで撮像した画像を示す図の組合せを、時間の経過順に分図(a),(b),(c)として配置した図である。
図8】本発明の第2実施形態である物品測定装置の正面図である。
図9】本発明の第3実施形態である物品測定装置の正面図である。
図10】本発明の第4実施形態におけるベルトの第1例の構造を透視して示す斜視図である。
図11】本発明の第4実施形態におけるベルトの第2例の構造を透視して示す斜視図である。
図12】本発明の第4実施形態におけるベルトの第3例の構造を透視して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態に係る物品測定装置は、圧力で特性が変化する材料の上に物品を載せ、当該材料の特性の変化により物品の状態を測定するための装置である。ここで、物品の圧力で変化する材料の特性とは、光学特性や形状等の物理特性が挙げられる。また、測定しようとする物品の状態とは、例えば質量や個数を示すが、本実施形態の範囲で検出可能な属性であればこれらに限定するものではない。また、ここで個数とは、独立性のある物品が複数存在している場合の当該個数と、独立性のある物品Aが破損して複数の破片に分かれた場合の破片の個数の両方を意味するものとする。
【0022】
1.第1実施形態(図1図7
第1実施形態に係る物品測定装置1を図1図7を参照して具体的に説明する。
まず図1を参照して物品測定装置1の構成を説明する。
図1に示すように、物品測定装置1は、被測定対象である物品Aを搬送する搬送部2と、搬送部2に向けられた光学計測部としてのカメラ3と、搬送部2及びカメラ3を含む装置系の全体を統括して制御する制御部4とを有している。
【0023】
図1に示すように、搬送部2は、複数のローラ5(図示では4本)と、複数のローラ5に掛け回された連続長体である無端状のベルトを有している。ローラ5の一つはモータ7に連結された駆動ローラ5aである。後述する制御部4がモータ7を駆動すると、駆動ローラ5がベルト6を図示時計回り方向に循環して回動し、ベルト6に載置された物品Aは所定の搬送方向F(図中右方向)に搬送される。
【0024】
本実施形態のベルト6は、その少なくとも一部分が、圧力により特性が変化する材料で構成されている。詳細は後述するが、物品Aをベルト6に載置して搬送すると、物品Aからの圧力でベルト6の特性が変化するため、その画像をカメラ3で捉えて制御部4で処理することにより、物品Aの質量や個数等の状態を測定することができる。
【0025】
このような目的を達成できる材料としては、変化する特性の種類、当該特性が変化する物理的な原理等によって分類される種々の材料が含まれる。本実施形態のベルト6は、特に圧力に対してクロミズムを示す材料、すなわちピエゾクロミック材料(piezochromic materials)から構成される。
【0026】
クロミズム (chromism) とは、物質の光学特性、すなわち光物性(光の透過量、反射光の波長・色など)が外部からの刺激によって可逆的に変化する現象をさす。多くの場合、クロミズムは分子のπ軌道やd 軌道の電子状態が変化するために引き起こされる。クロミック材料は天然にも存在しており、また目的とする色変化を示すように分子設計された人工物質も多く合成されている。クロミズムを起こす原因としては、熱・光・電気・溶媒和・圧力などが知られているが、本実施形態に好適に使用されるクロミック材料は、上述した通り圧力を原因としてクロミズムを起こすピエゾクロミック材料である。
【0027】
以下に、本実施形態で使用可能なピエゾクロミック材料(1)~(3)を例示する。なお、ピエゾクロミック材料以外の圧力で特性が変化する材料の例は、「4.その他の実施形態」の項で説明する。
【0028】
(1)圧力で発光色が変わるピエゾクロミック材料
外部から与えられる圧力に反応して発光色が変わり、圧力が無くなると退色して元の発光色に戻る可逆的な変化を見せる物質、ビス-2,4,5-トリアリールイミダゾールのトリアリールイミダゾールダイマー、ビス-テトラアリールピロール、ビアントロン、キサンチリデンアントロン、ジキサンチレン、ヘリアントロン、CuMo1-x Wx O4 を有するピエゾクロミック化合物、又はこれらの2又はそれ以上の組み合わせ等を使用することができる。
【0029】
また、微細な橙赤色の結晶として得られるインドリノスピロベンゾチオピラン誘導体を使用することができる。この物質は適度な圧力を加えると鮮やかな濃青色に変わってそのままの状態を保ち、可視光にさらすと元の橙色に戻る。従って、このような材料を採用する場合は、カメラ3による計測が終了して物品Aがベルト6から排出された後、次の物品Aを載置する前に、ベルト6の特性が変化した部分を変化前の状態に戻す手段が必要になる。この材料の場合はベルト6に可視光線を照射するライト等の設備を設ければよい。
【0030】
(2)圧力で発光するピエゾクロミック材料
蛍光色素として知られるピレンに水素結合部位となる四つのアミド側鎖を導入した化合物を使用することができる。この材料は、明確なX線回折パターンを示す白色固体であり、紫外光(365nm)照射下で強く青色に発光する水素結合支配のカラム状秩序構造をとるが、これに圧力を加えると分子配列が乱れた準安定相となり発光は緑に変化し、X線回折ピークは消失する。続いてこれを加熱するとカラム状秩序構造が再生し青色発光が回復する。この材料のアミド側鎖をエステルやカルボン酸に置き換えることで、発光色や感圧性の異なる超分子が得られる。この材料を使用する場合には、特性が変化したベルト6の部分を変化前の状態に戻すための手段が必要になる。この材料の場合はベルト6を加熱するヒータ等の設備を設ければよい。
【0031】
(3)圧力で反射光のスペクトルが変わるピエゾクロミック材料
外部から与えられる圧力に反応して反射光のスペクトルが変わり、圧力が無くなると元に戻る可逆的な変化を見せる物質、例えばTiO2 /SiO2 等の弾性誘電体を使用することができる。
【0032】
以上説明したように、本実施形態のベルト6には種々のピエゾクロミック材料が使用可能である。しかしながら、ベルト6を構成する材料の全量がこのようなピエゾクロミック材料である必要は必ずしもなく、このような材料を少なくとも一部分として備えていればよい。なお、本実施形態のベルト6は、圧力によって色が可逆的に変化し、圧力を除去すれば直ちに色が元に戻る材料を含むものとして説明する。
【0033】
本実施形態のベルト6の製造方法の一例を説明する。まず芯材として、所望の長さ、所望の太さのポリエステル等の樹脂製の糸を用意する。この糸を複数本並べて帯状に配置する。次に、液体状の樹脂に前述したピエゾクロミック材料を分散させた原料を用意する。原料に用いる液体状の樹脂は、固化後に搬送用ベルト6としての弾性を顕すような物質であればよく、例えばウレタン等が好適である。並べた複数本の糸に、液状の前記原料を塗布し、乾燥させる。乾燥後、裏側から前記原料を塗り重ねる。この塗布と乾燥の工程を表裏両面から複数回行う。これによって、糸を芯材とした所望の長さ及び厚さの帯状体が得られる。この帯状体の両端を繋いで無端状とすれば、ベルト6となる。ベルト6の厚さは、搬送しようとする物品Aの質量やローラ5間隔等にもよるが、例えば1~5mm程度とする。
【0034】
本実施形態のベルト6の製造方法の他の例を説明する。ベルト6の形状に対応した浅い皿状の型の中に、複数本の前記糸を所定間隔で帯状に並べ、型の底から若干浮かせて配置する。この型の中に、前記糸が隠れる程度に前記原料を流し込み、固化、乾燥させる。その後の工程は上に述べた通りである。
【0035】
図1に示すように、物品Aを載せて移動する上側のベルト6の下側には、カメラ3が上向きに配置されている。カメラ3はベルト6の下面に向けられており、ベルト6の下面の略全域をカラーで撮像することができる。物品Aをベルト6に載せて搬送すると、ベルト6は物品Aから加えられる圧力によって色が変化するので、物品Aが載置された部分だけが周囲と異なる色となる。カメラ3は、物品Aに接触して色が変化しているベルト6の一部分を含むベルト6の全体をカメラ3で捉え、ベルト6の全体画像として制御部4に送る。カメラ3は、ベルト6の上に物品Aが載置されて搬送されている搬送期間中にベルト6の下面を撮像するが、搬送期間内に1回だけ撮像してもよいし、複数回撮像してもよい。
【0036】
図1に示すように、制御部4は、モータ7を制御する他、カメラ3の撮像タイミングを制御し、またカメラ3が撮像した画像の情報を取得して後述するような手順で必要な演算を行い、物品Aの質量及び個数を測定する。
【0037】
図1に示すように、物品測定装置1の搬送部2の上流側と下流側には、それぞれベルト式の搬送装置8、9が設けられており、物品測定装置1の搬送部2に物品Aを搬入し、物品測定装置1で測定された物品Aを搬送部2から搬出することができる。なお、物品測定装置1の上流側と下流側にどのような装置または工程が存在するかは限定しない。例えば、上流側には、物品測定装置1で測定される物品Aの製造装置または製造工程を置き、下流側には、物品測定装置1で測定された結果を踏まえて当該物品Aの選別等を行う装置または工程を置くことができる。
【0038】
次に図1図7を参照して物品測定装置1の作用を説明する。
図1に示すように、前工程から搬送されてきた物品Aが、物品測定装置1の搬送部2のベルト6に載せられると、図2に示すように、制御部4は、搬入された物品Aが撮像に適した位置にきた適当なタイミングでカメラ3を制御し、ベルト6の下面のカラー画像を撮像させる(S1)。当該カラー画像は制御部4に送られる。ここでは、物品Aまたは物品Aの群ごとに一つのカラー画像を取得するものとする。
【0039】
図3は、図2のS1に対応する図であって、ベルト6の下面のカラー画像をカメラ3が撮像している状態を示している。この例示では、ベルト6の上に物品Aが2個載置されて搬送されている。
【0040】
図4は、図2のS1に対応する図であって、カメラ3が撮像したベルト6の下面のカラー画像をモノクロ画像の図面で示している。実際のカラー画像では、画面を区画するピクセルごとに、相対的に圧力の高い部分が赤寄りの長波長色で示され、相対的に圧力の低い部分が青寄りの短波長色で示されている。
【0041】
図2に示すように、カメラ3から送られたベルト6のカラー画像を受け取った制御部4は、図5に示す色(波長)と圧力の関係を示す変換テーブルのデータを用いて、画像中の各ピクセルごとに色を圧力に変換する(S2)。
【0042】
図6は、図2のS2に対応する図であって、制御部4が、図4に示すベルト6の下面の画像と、図5に示す変換テーブルとから演算して取得したベルト6の下面の圧力分布図である。図3及び図4と比較すると分かるように、ベルト6の範囲内で、物品Aが載置されている部分に対応するピクセルは1以上の圧力に変換されており、物品Aの存在しない部分は圧力が0となっている。なお、図6において圧力を表す数値は相対値である。また0~5の段階分けは例示にすぎず、より多段階の数値で表示されるより精密な圧力分布図を求めてもよい。
【0043】
図2に示すように、制御部4は、図6に示した圧力分布図から、圧力値が1以上の独立領域(塊)を認識し、これをベルト6上の物品Aと判断する(S3)。このような制御部4による独立領域(塊)の認識によって、ベルト6上には2個の物品Aが存在することが測定される。この測定結果を蓄積していくことにより、測定した物品Aの個数をカウントすることができる。
【0044】
なお、このような判断を行うためのデータ解析手法としてはブロブ解析を利用することができる。ブロブ解析は、2値化処理された画像において同じ濃度を持った画素の集合体(ブロブ(Blob))を認識することにより、画像上の対象物の数、面積(ピクセル単位)、長さや周囲長(ピクセル単位)、位置、形状的な特徴等を検出する解析手法である。本実施形態の場合、図6に示す圧力分布図を示すデータを0と1以上の2つの圧力値で2値化処理し、その結果得られた画像に基づいてブロブ解析を行うことができる。
【0045】
図2に示すように、制御部4は、図6に示した圧力分布図において、認識した独立領域(塊)ごとに、各独立領域内に含まれる全ピクセルの各圧力値を積分し、これを各独立領域に対応する各物品Aの質量として算出する(S4)。
【0046】
なお、図3、4、6の例では、物品Aが不定形であることを想定しており、物品Aの大小に基づく判定は行っていない。しかしながら、これとは逆に、形状及び質量が比較的狭い誤差範囲内に揃った物品A群を測定する場合には、形状と質量に適当な閾値を設定することにより、1画面内に撮像された物品Aの個数とそれぞれの質量から、物品Aが破損して複数に分裂したか否かを判定することができる。これによって破損した不良品を検出することができる。正常品については、前述した通り質量や個数を測定することができる。
【0047】
図7は、第1実施形態の物品測定装置1において、物品Aを搬送している状態を示す平面図(図3の上図に相当)と、物品Aを搬送しているベルト6の底面をカメラ3で撮像した画像(図4に相当)を示す図の組合せを、時間の経過順に古い方から分図(a)、(b)、(c)として配置したものである。
【0048】
搬送手段と計量装置が連結された物品選別装置を「背景技術」の項で説明したが、このような従来の物品選別装置では、搬送による振動が減衰するのを待つ必要から、搬送時間の中で実際に計測に当てられる時間が短くなってしまい、測定は1回しか行えない。しかし、この物品測定装置1によれば、振動等の影響は測定に影響を与えないため、ベルト6によって搬送している時間の全体を測定時間に当てることができる。
【0049】
搬送部2が物品Aを搬送する時間のなかで、図7(a)、(b)、(c)の各時点において各物品Aごとに測定を行う。取得した3つの画像の中で、各物品Aの形状の同一性から、対応する物品Aを同定する。そして、各物品Aごとに、3つの測定結果を用いた平均化演算を行って外乱ノイズを低減し、各物品Aの質量を測定する。この手法によれば、前記従来技術に比べて、物品Aの質量の測定精度を格段に高めることができる。
【0050】
以上説明したように、物品測定装置1によって物品の重量を測定する場合には、物品を載せたベルトを駆動して移動させる必要があるが、このベルトには搬送方向、すなわちベルトの長手方向に平行な方向の搬送力(張力)が加わる。このため、搬送中には搬送力によってベルトが弾性的に変形し、その光学特性が変化してしまう場合がある。搬送部の搬送力によるベルトの光学特性の変化と、物品の重量によるベルトの光学特性の変化は重なって現れるため、両者を区別することはできず、この光学特性の変化をカメラで捉えて制御部で処理しても、物品の重量を正確に知得することができない場合がある。そこで、搬送部の搬送力によるベルトの光学特性の変化の影響を軽減する2つの手法を説明する。
【0051】
まず、第1の手法を説明する。
1.まず、物品Aを載せていない状態で搬送部2を駆動してベルト6を移動させ、移動しているベルト6の下面のカラー画像をカメラ3で撮像し、背景データを取得する。物品Aを載せていなくとも、搬送部2の搬送力によっては、移動しているベルト6に張力が加わり、色が変化している場合があるので、その影響を示すデータを取得する趣旨である。
【0052】
2.次に、物品Aを載せた状態で搬送部2を駆動してベルト6を移動させ、移動しているベルト6の下面のカラー画像をカメラ3で撮像し、補正前データを得る。この場合、先に示した図4のようなカラー画像(図ではモノクロで示す)が得られる。搬送部2の搬送力によってベルト6に張力が加わり色が変化している場合には、このカラー画像は、搬送力によるベルトの色の変化と、物品の重量によるベルトの色の変化が重なって現れたものとなる。
【0053】
3.次に、補正前データから背景データを減算して補正後データを取得する。この補正後データと、図5に示したテーブルデータを用いて物品Aの重量を演算する。
【0054】
このような補正演算を行うことにより、搬送部2の搬送力によってベルト6の色が変化している場合であっても、物品Aの重量によるベルト6の色の変化のみに基づいて物品Aの重量を演算することができる。
【0055】
次に、第2の手法を説明する。
第1の手法の説明の第1項で示した背景データを第1の手法と同様の方法で予め用意し、当該背景データによって図5に示したテーブルデータを補正しておく。物品Aを載せた状態で搬送部2を駆動してベルト6を移動させ、移動しているベルト6の下面のカラー画像をカメラ3で撮像し、画像データを取得する。そして、この画像データと補正した前記テーブルデータを用いて物品Aの重量を演算する。この第2の手法によっても、第1の手法と同等の効果を得ることができる。
【0056】
この第2の手法において、背景データを予め取得する時期と、当該背景データを用いてテーブルデータを補正する時期は、物品Aの測定の前であればよく、そのタイミングは特に限定しない。例えば、物品測定装置1を製造工場から出荷する前の段階で、当該装置について背景データを取得し、当該装置のテーブルデータを補正しておいてもよい。また、物品測定装置1が出荷されて工場等に設置されて稼働状態になった後は、一日の作業が始まる前の段階で1回だけ行うこととしてもよい。さらに、物品測定装置1により繰り返し行われる物品の測定の度に、当該測定の直前に物品を載せないでベルト6を駆動して背景データを取得し、直ちに当該背景データを用いてテーブルデータを補正するようにしてもよい。このように、背景データを用いたテーブルデータの補正を、毎日1回、又は測定の度に行うこととすれば、物品測定装置1やベルト6の径年変化や測定環境の変化に対応して測定精度をより向上させることができる。
【0057】
以上説明したように、本実施形態の物品測定装置1によれば、ベルト6の上に物品Aを載せて搬送しながら測定するため、複数の物品Aを同時に測定対象とし、各物品Aの質量や個数を同時に測定することができる。また、前段から送り込まれる物品Aの投入タイミングには特に制限がなく、投入間隔が大きくても小さくても、また同時であっても測定に支障はない。このため、従来に比べて物品Aの測定作業効率が格段に向上する。
【0058】
また、本実施形態の物品測定装置1によれば次の様な効果もある。搬送手段と計量装置が一体である従来の物品選別装置等では、測定しようとする物品Aのサイズに応じて大きさの異なる多様な機種を揃えておく必要があった。通常は装置の幅については物品Aのサイズの1.5倍程度までとの制限があり、また複数の物品Aを同時に測定できないことから、装置の長さが物品Aのサイズを大きく越えることは搬送時間がかかりすぎて好ましくないという事情もあった。その結果、長い物品Aには長い搬送手段の装置が適しており、短い物品Aには短い搬送手段の装置が適していることとなり、機種数が増大するという問題があった。ところが、本実施形態の物品測定装置1は、物品Aを搬送するベルト6は相当の面積を有する搬送手段であるため、一機種で長い物品Aにも短い物品Aにも対応できるという効果がある。
【0059】
また、本実施形態の物品測定装置1によれば、ベルト6で物品Aを搬送するため、同一物品Aを連続して取り扱う他の装置に簡単に組み込めるという効果がある。例えば、異物である金属を検知する金属検知装置と、重量測定装置と、NG品を排除する選別機が順に並べられた1ラインを構成している場合を想定する。物品Aは搬送されつつ、金属検知装置と、重量測定装置を通過した後、選別機に至る。ここで、重量測定装置を本実施形態の物品測定装置1とし、しかも搬送部2を上流側の金属検知装置側に延長し、これで金属検知装置の本来の搬送装置を代替するように構成することができる。さらに、後段の選別機側にも延長し、これで選別機の本来の搬送装置を代替することができる。
【0060】
また、搬送手段と計量装置が一体である従来の物品選別装置等では、精密測定を行う計量装置が、モータ等の駆動系を有する搬送手段に支えられている構成であるため、搬送手段には高度な静粛性が求められ、これが装置のコストを上昇させる要因の一つであった。しかし、本実施形態の物品測定装置1は、その測定原理からこのような問題はなく、測定精度のために搬送手段に高度な静粛性が求められることはない。すなわち、質量測定用の特別なコンベアは不要なため、コスト、生産性、保守性を向上させることができる。
【0061】
以上説明した第1実施形態の物品測定装置1は、物品Aの重量等を測定するための装置であって、測定した重量のデータに基づいて物品Aに何らかの処理等を行う機能はもっていなかった。しかしながら、測定した重量等のデータを用いて何らかの処理を行う機能を付加してもよい。例えば、搬送部2のベルト6の上に載置された物品Aをベルト6の外に移動させる移動手段を搬送部2の近傍に設け、測定した重量のデータに基づいて各物品Aを重量別に選別するようにしてもよい。この場合の移動手段としては、ベルト6の表面に沿って往復して揺動し、物品Aを任意の方向に振り分けるアーム状の振り分け装置でもよい。また、エアの噴射で物品Aを任意の方向に移動させるエア噴射装置でもよい。さらに、ベルト6の上方で上下方向及び水平方向の移動が可能な吸着式の移動装置でもよい。さらにまた、搬送部2の近傍に設けられ、ベルト6上の物品Aを掴んでベルト6外の任意の位置に運ぶロボットアームでもよい。また、物品Aを選別する基準として重量を例示したが、個数を基準に選別を行ってもよい。例えば、1ロットに含まれる物品Aの個数が定められている場合において、1ロットを構成する複数の物品Aを搬送部2で搬送し、制御部4が測定した物品Aの個数に基づいてロットとしての合格、不合格を判定し、不合格の場合は搬送部2の外の所定位置に全物品Aを移動(排出)させるようにしてもよい。従来は搬送部2の後段に移動手段を設けることしかできなかったため、移動手段によって物品Aが移動させられたことを確認するためには、別の検出手段を用意する必要があった。本実施形態においてこのように搬送部2の中に移動手段を設けると、物品Aが移動させられた直後に重量や個数を再測定することができるため、別の検出手段を用意することなく、物品Aが移動させられたことを確認することができるという効果がある。
【0062】
2.第2実施形態(図8
本発明の第2実施形態を図8を参照して具体的に説明する。
第2実施形態の物品測定装置11は、搬送部12の構成が第1実施形態と相違する。図8に示すように、この搬送部12は、複数のローラ15(図示では4本)と、複数のローラ15に掛け回された連続長体である無限軌道10を有している。ローラ15の一つはモータ7に連結された駆動ローラ15aである。
【0063】
第2実施形態の無限軌道10は、剛性を有する複数の履板11を互いに回動可能に1列に連結するとともに、列の始端と終端を繋いで全体としてループ状とした部材である。各履板11は、少なくとも物品Aと接触する部分が、圧力により特性が変化する材料で構成されている。この材料は第1実施形態と同一であり、ピエゾクロミック材料(piezochromic materials)である。
【0064】
本実施形態の無限軌道10の製造方法の一例を説明する。まず無限軌道10を構成する履板11の基材として、所望のサイズの透明な樹脂板を必要な枚数だけ用意する当該樹脂板の厚さは第1実施形態のベルト6よりも大きいものとする。これらの樹脂板の表面となる側に、前述したピエゾクロミック材料の層を形成する。具体的には、樹脂板の表面に、ピエゾクロミック材料の層を任意の手段で固着生成させてもよいし、液体状の樹脂に前述したピエゾクロミック材料を分散させた液体状の原料を塗布してもよい。原料に用いる液体状の樹脂としては、例えばウレタン等が好適である。前記原料の塗布及び乾燥の工程は、樹脂板の表面に必要な厚さが得られるまで繰り返し行う。このようにして得られた履板11で無限軌道10を構成する。
【0065】
第1実施形態と同様、物品Aを無限軌道10に載置して搬送すると、物品Aからの圧力で無限軌道10の各履板11の表面に設けられたピエゾクロミック材料の層の色が変化する。その画像は無限軌道10の下面側からカメラ3で撮像できる。これを制御部14で処理することにより、物品Aの質量や個数等の状態を測定することができる。
【0066】
第2実施形態のローラ15は、第1実施形態のローラ5よりも径が大きい。これは、無限軌道10を構成する各履板11が適切な状態でローラ15に接触し、ローラ15aのトルクが無限軌道10に必要な駆動力を与えることができるようにするためである。その他の構成及び作用効果等は第1実施形態と同様であり、説明の重複を避けるため第1実施形態の説明を援用する。
【0067】
3.第3実施形態(図9
本発明の第3実施形態を図9を参照して具体的に説明する。
第3実施形態の物品測定装置21は、搬送部22の構成及びカメラ3の台数及び配置等が第1実施形態及び第2実施形態と相違する。図9に示すように、この搬送部22は、2本のローラ5と、これらローラ5に掛け回された連続長体であるベルト26を有している。一方のローラはモータ7に連結された駆動ローラ5aである。
【0068】
第3実施形態のベルト26は、その少なくとも一部分が、圧力によって形状が可逆的に変化する材料である低反発性弾性フォームで構成されている。低反発性弾性フォームは、圧力により圧縮されて形状が変化し、圧縮の後に圧力を取り除くと、ゆっくりと元に戻る性質を有する材料である。低反発性弾性フォームは、軟質ウレタンフォームの一種であり、特殊な分子構造に設計され、弾性を抑え、粘性を向上させた材料であって、ヒステリシスロス率(JIS K 6400-2)の大きい衝撃吸収性材料としての性質も備えている。
【0069】
低反発弾性フォームは、ポリオールとポリイソシアネ―トを主成分として発泡剤、整泡剤、触媒等を撹拌混合して発泡したものであり、必要に応じて着色剤や難燃剤等の添加剤を添加してもよい。低反発弾性フォームは、原料であるポリオールの構造等に特徴があり、また圧縮後にゆっくりと復元する性質を持ち、エネルギー吸収性能を高めるために、粘弾性的にポリウレタン樹脂組成を変性したものである。
【0070】
本実施形態のベルト26を構成する材料の全量を低反発弾性フォームで構成する必要は必ずしもなく、このような材料を少なくとも一部分、例えば別材料のベルト基体の表面側(物品Aが載置される側)に必要な厚さだけ設ければよい。
【0071】
図9に示すように、搬送部22の下流側の端部の下側には、駆動用のローラ5aに巻装されているベルト26の表面に向けて、2台のカメラ3が異なる位置に配置されている。2台のカメラ3はベルト26の同じ位置を撮像する。
【0072】
物品Aをベルト26に載せて搬送すると、ベルト26は物品Aから加えられる圧力によって凹む。物品Aが後段に搬出された直後、ベルト26の駆動に伴って、まだ形状が回復していない凹部が、2台のカメラ3の写野に入ってくる。2台のカメラ3は、凹部を互いに異なる角度で撮像する。制御部24は、視差を有する2台のカメラ3で得られた凹部の2つの画像を合成することにより、凹部の立体的な形状、すなわち凹部の深さ及び面積等を知得することができる。低反発弾性フォームに加わる圧力と、これにより生じる凹部の深さとの間には所定の関係がある。制御部24は、この関係を示すデータを有しており、知得した凹部の深さから加わった圧力を求め、圧力と凹部の面積から、凹部を生成した物品Aの質量を演算する。ベルト26に生じた凹部は、ベルト26が循環して再び物品Aを載せる位置に戻るまでに形状が回復する。
【0073】
第3実施形態の第1の変形例を説明する。この変形例の搬送部22は第3実施形態と同一であるが、カメラ3は1台である。1台のカメラ3は搬送部22の下流側の端部の下側に配置されている。また、カメラ3とは異なる位置に、カメラ3が撮像するベルト26の下流側の端部に基準光を照射する基準照明部が設けられている。基準照明部は、明暗の格子状パターンである基準光をベルト26に照射する。基準光の格子状パターンは同一の正方形で構成されている。
【0074】
物品Aが後段に搬出された直後、ベルト26の駆動に伴って、まだ形状が回復していない凹部が、基準光照明部から照射されている基準光の中に入ってくる。基準光の格子状パターンは同一の正方形で構成されるが、凹部及びその周辺では、表面の形状に応じて格子状パターンが歪んでいる。制御部24は、この格子状パターンの歪みから撮像されたベルト26の表面の形状を解析し、凹部の面積及び深さを演算する。低反発弾性フォームに加わる圧力と、これにより生じる凹部の深さとの間には所定の関係がある。制御部24は、この特性を予めデータとして有しており、知得した凹部の深さから加わった圧力を求め、圧力と凹部の面積から、凹部を生成した物品Aの質量を演算する。ベルト26に生じた凹部は、ベルト26が循環して再び物品Aを載せる位置に戻るまでに形状が回復する。
【0075】
第3実施形態の第2の変形例を説明する。この変形例の搬送部22は第3実施形態と同一であるが、カメラ3はなく、搬送部22の下流側の端部の上側に1台の変位測定装置が配置されている。変位測定装置は、物品Aの表面に対して光を照射する光源と、物品Aの表面からの反射光を受光するセンサとを有する。センサは、配列された複数の受光素子を有し、物品Aの表面で反射された光を受光し、その強さを示す測定値を出力する。この変位測定装置及び制御部24によれば、搬送部22の最下流部に至った物品Aの上面を走査して三角測量を行い、ベルト26の凹部により沈み込んだ物品Aの上面の変位により生じるセンサ上の受光位置に基づき、ベルト26の凹部の深さを測定することができる。
第3実施形態及びその変形例におけるその他の構成及び作用効果等は第1実施形態と同様であり、説明の重複を避けるため第1実施形態の説明を援用する。
【0076】
4.第4実施形態
本発明の第4実施形態を図10図12を参照して具体的に説明する。
第4実施形態は、第1実施形態の物品測定装置1の改良に関するものである。図1を参照して先に説明したように、第1実施形態の物品測定装置1は、複数のローラ5,5aに無端状のベルト6を掛け回してなる搬送部2を有しており、このベルト6の少なくとも一部分を圧力で光学特性が変化する材料で構成し、搬送中に物品Aからの圧力で変化したベルト6の光学特性をカメラ3で捉えることにより、物品Aの質量や個数等の状態を測定している。
【0077】
ところが、物品Aを測定するため、物品Aを載せたベルト6を駆動して移動させると、このベルト6には搬送方向、すなわちベルト6の長手方向に平行な方向の搬送力(張力)が加わるため、この搬送力によってベルト6が弾性的に変形し、その光学特性を変化させてしまうことがある。ベルト6に載せられた物品Aは、その重量によってベルト6の光学特性を変化させているが、搬送部2の搬送力によるベルト6の光学特性の変化と、物品Aの重量によるベルト6の光学特性の変化は重なって現れるため、両者を区別することはできず、この光学特性の変化をカメラ3で捉えて制御部4で処理しても、物品Aの重量を正確に知得することができない場合がある。
【0078】
そこで、搬送部2の搬送力によるベルト6の光学特性の変化が無視できる範囲を越えており、上述のような課題が存在する場合に、これを解決する改良技術として提示するのが第4実施形態の物品測定装置である。この物品測定装置の外見上の構造は図1に示した第1実施形態の物品測定装置1と同一であるが、ベルトの構造が第1実施形態とは異なっている。第4実施形態の物品測定装置のベルトは、搬送方向、すなわちベルトの長手方向に平行な方向の搬送力が加わっても変形しにくく、搬送力による特性の変化は無視できる程度であるが、搬送方向と交差する方向(例えば搬送方向と直交する幅方向)の力が加わると変形しやすく、物品の重量によって光学特性が変化する作用効果を適切に得ることができる構造となっている。以下、第4実施形態の第1例から第3例の3種類のベルトについて説明する。
【0079】
図10は、第1例のベルト16aの構造を透視して示す斜視図であり、長体状のベルト16aの一部分を切断して表示したものであって、実際には相当の長さを有するベルト16aの一端と他端を接続して無端状のベルトとして使用する。第1例のベルト16aは、芯材として縦糸17と横糸18を有している。縦糸17は、長手方向に平行であり、長手方向と直交する幅方向に所定間隔をおいて複数本(図示例では6本)が配置されている。横糸18は、幅方向に平行であり、長手方向に所定間隔をおいて複数本が配置されている。横糸18の本数はベルトの長手方向の全長により決まる。横糸18は、幅方向に並んだ複数本の縦糸17の上側と下側に1本ずつ交互に係止しているが、隣り合う横糸18と横糸18は、同一の縦糸17に対して上側と下側の異なる位置で係止する構造となっており、縦糸17と横糸18によって繊維状の構造が構成されている。
【0080】
縦糸17と横糸18の素材は特に限定しないが、取り扱いや加工の容易度、価格等の観点から適宜に選択した樹脂製の線材や金属製のワイヤ等を利用することができ、例えば樹脂であれば芳香族ポリアミド系樹脂などの線材が好適に利用可能である。縦糸17と横糸18に同一の材料を使用する場合、図10に示すように、縦糸17を相対的に太く設定し、横糸18を相対的に細く設定することにより、搬送方向については相対的に変形しにくい(弾性が小さい)が、幅方向については相対的に変形しやすい(弾性が大きい)構造とすることができる。縦糸17と横糸18を同じ太さとし、縦糸17を変形しにくい(弾性が小さい)材料で構成し、横糸18を変形しやすい(弾性が大きい)材料で構成することにより、ベルト16aに同様の機能を付与することもできる。このような縦糸17と横糸18の弾性、強度乃至変形し易さの設定は、搬送部の搬送力に応じて定めればよい。
【0081】
組み合わせた縦糸17と横糸18からなる芯材の全体をゴム材料や樹脂材料の内部に包み込んで図10に部分図として示すような薄型・長体状の帯体とし、その図示しない帯状の全体の一端と他端を結合して無端状とすれば、搬送部に装着するベルト16aが得られる。芯材を包む樹脂材料としては、第1実施形態と同様、例えばウレタン等の液体状の樹脂に前述したピエゾクロミック材料を分散させた材料が使用可能である。製造工程や寸法等も第1実施形態と同様である。
【0082】
第1例のベルト16aによれば、搬送方向について搬送部の搬送力が加わっても、相対的に強度の高い縦糸17があるためにベルト16aは搬送方向については実質的に変形せず、搬送力による光学特性の変化は生じない。しかし、幅方向の強さは、相対的に強度の低い横糸18が担うため、ベルト16aは幅方向については物品の重量によって変形して光学特性が変化する。このため、搬送中にベルト16aに現れた光学特性の変化は物品の重量由来のもののみと考えられ、その光学特性の変化に基づいて物品の重量を正確に測定することができる。
【0083】
図11は、第2例のベルト16bの構造を示す図であり、その表示態様は第1例と同様である。第2例のベルト16bは、芯材として複数本(図示例では6本)の縦糸17のみを有し、横糸18はない。縦糸17及び縦糸17を包み込む材料、製法については第1例と同様である。
【0084】
第2例のベルト16bによれば、搬送方向について搬送部の搬送力が加わっても、縦糸17があるためにベルト16bは搬送方向については実質的に変形せず、搬送力による光学特性の変化は生じない。しかし、幅方向の強さは、樹脂材又はゴム材のみが担うため、ベルト16bは幅方向については物品の重量によって変形して光学特性が変化する。このため、搬送中にベルト16bに現れた光学特性の変化は物品の重量由来のもののみと考えられ、その光学特性の変化に基づいて物品の重量を正確に測定することができる。
【0085】
図12は、第3例のベルト16cの構造を示す図であり、その表示態様は第1例と同様である。第3例のベルト16cは、第1例及び第2例とは異なり、芯材を持たない。その全体が第1例で用いたような樹脂材料又はゴム材料等から構成されているが、その弾性は搬送部の搬送力によって実質的に変形しないような値であるものとする。そして、その表面には、搬送方向に平行な複数本(図示例では6本)の溝19が、幅方向に所定間隔をおいて形成されている。図示の例では溝はベルト16cの片面に形成されているが、1本置きに表面と裏面に形成してもよい。
【0086】
第3例のベルト16cによれば、ベルト16cを構成する搬送方向について搬送部の搬送力が加わっても、ベルト16cを構成する材料の弾性が小さいため、ベルト16cは搬送方向については実質的に変形せず、搬送力による光学特性の変化は生じない。しかし、幅方向については、搬送方向を長手方向とし、幅方向に並んだ複数本の溝19によって変形し易くなっているため、ベルト16cは幅方向については物品の重量によって変形して光学特性が変化する。このため、搬送中にベルト16cに現れた光学特性の変化は物品の重量由来のもののみと考えられ、その光学特性の変化に基づいて物品の重量を正確に測定することができる。
【0087】
以上説明したように、複数のローラ5,5aに掛け回したベルト6の少なくとも一部を圧力で特性が変化する材料によって構成し、当該ベルト6に物品を載置して搬送する搬送部2と、搬送部2の特性を計測する計測部(カメラ3)と、計測部(カメラ3)の計測結果に基づく演算により物品の状態を測定する制御部4とを備えた物品測定装置において、前記ベルト6を、前述した第1例~第3例のように、搬送方向についての弾性が相対的に大きく、搬送方向以外の方向についての弾性が相対的に小さいベルト16a,16b,16cで構成することができる。このような構成とすれば、ベルト16a,16b,16cは搬送方向については変形しにくいが、それ以外の方向については比較的容易に変形するため、前記物品測定装置による計測時に搬送部2の搬送力によってベルト16a,16b,16cの光学特性が変化することは避けられる反面、搬送している物品の重量に対しては敏感に光学特性が変化するため、物品の重量によるベルト16a,16b,16cの光学特性の変化のみに基づいて物品の重量を正確に計測することができる。
【0088】
5.その他の実施形態
実施形態の搬送部の少なくとも一部を構成する材料の他の例について説明する。
実施形態の搬送部の一部として、光弾性効果を有する材料が使用できる。光弾性効果とは、ガラスやプラスチックなどの透明な物体に外力を加えると光学的異方性を示し、これによって物体内部で複屈折が生じる現象をいう。光弾性効果を利用して応力を測定する方法を光弾性法という。外観的には図8と同様の構成において、光弾性効果を有する材料からなる履板11で構成した無限軌道10によって物品Aを搬送する。物品Aを載せた履板11は、載せた物品Aの質量を受けて発生した応力により、複屈折位相差が生じ、その表面に干渉縞を生じる。これをカメラ3で撮像し、制御部14が画像解析を行って物品Aの質量を測定する。
【0089】
実施形態の搬送部の一部として、全可視波長領域でブラッグ反射を示し、コレステリック結晶由来の反射特性を示し、セルロース液晶エラストマーのようなゴム弾性を備えた材料を用いることができる。外観的には図1と同様の構成において、このような材料を用いて構成したベルト6で物品Aを搬送する。搬送部2のベルト6のうち、載置した物品Aによって圧力が加えられた部分だけが、反射光が赤色から短波長側(青緑色)へと可逆的に変化する。これをカメラ3で撮像し、この材料の色と圧力の変換テーブルを有する制御部4が、第1実施形態と同様の演算を行って物品Aの質量を測定する。
【0090】
実施形態の搬送部に使用可能な材料としては、以上説明した各材料の他、さらに、圧力で反射光の色が変化する圧力センシングゴム、圧力で光の偏向度が変化する液晶、圧力で特定の反射色が変化する塗料又はインク等を挙げることができる。
【0091】
以上説明した実施形態において、物品Aの圧力で変化する材料の物理特性の一つとして光学特性を挙げたが、当該光学特性に関係する光とは具体的には可視光であった。しかしながら、当該光学特性を可視光に限る理由はなく、対応する必要な検出手段を設けることにより、物品Aの圧力で電磁波特性が変化する材料も実施形態の搬送部を構成する材料として使用することができる。
【0092】
以上説明した各実施形態では、搬送部の搬送方式としてベルト式や無限軌道式を例示したが、搬送方式はこれらに限らない。例えば、圧力で特性が変化する材料によって構成した搬送トレイに物品Aを載せ、搬送トレイを別途設けた搬送機構によって移動させる搬送部でもよい。要するに、物品Aが接触する部分に圧力で特性が変化する材料を用いており、当該物品Aをその状態で搬送できる機構であればよい。
また、以上説明した実施形態では、搬送部の特性を計測する計測部としては、特性が光学特性である場合の一例としてカメラを採用したが、光学特性の計測部はカメラに限らず、ラインセンサなどのその他の光学データ取得手段でもよい。さらに、計測すべき搬送部の特性が形状である場合には、カメラのほか、超音波センサ等によって計測を行うこともできる。このように、計測部の計測原理は、計測すべき搬送部の特性に応じて任意に採択することができる。
【符号の説明】
【0093】
1,11,21…物品測定装置
2,12,22…搬送部
3…光学計測部としてのカメラ
4,14,24…制御部
5,15…ローラ
5a,15a…駆動ローラ
6,26,16a,16b,16c…連続長体としてのベルト
10…連続長体としての無限軌道
11…無限軌道を構成する履板
A…物品
F…搬送方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12