(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-24
(45)【発行日】2023-04-03
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング装置及びRFコイル
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20230327BHJP
【FI】
A61B5/055 350
(21)【出願番号】P 2018207396
(22)【出願日】2018-11-02
【審査請求日】2021-09-22
(31)【優先権主張番号】P 2017215820
(32)【優先日】2017-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】福島 正裕
(72)【発明者】
【氏名】冨羽 貞範
(72)【発明者】
【氏名】石井 学
(72)【発明者】
【氏名】今井 聡志
【審査官】下村 一石
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-218753(JP,A)
【文献】特開2000-166895(JP,A)
【文献】特開2012-029734(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0267606(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0335086(US,A1)
【文献】特表2015-532868(JP,A)
【文献】特開2015-039636(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜磁場コイルの内側に配置され、被検体にRF磁場を印加するRFコイルを備え、
前記RFコイルは、
円筒状に形成された支持部材と、
前記支持部材の周方向に沿って間隔を空けて配置され、前記RF磁場を発生させる際に高周波電流が流れる複数のラングであって、当該複数のラングのそれぞれが、細長い矩形状に形成され、前記支持部材の軸方向に沿って配置されて
いる複数のラングとを有し、
前記
複数のラングのうちの少なくとも一つは、
前記細長い矩形状の中に第1の部分及び第2の部分を含み、
前記第1の部分は、前記支持部材の外周面上に配置さ
れ、
前記第2の部分は、前記支持部材の周方向において前記第1の部分と異なる位置に配置され、かつ、前記RFコイルの外周側に配置され
て前記RFコイルによって発生する前記RF磁場を遮蔽するRFシールドに対して、前記支持部材の径方向において前記第1の部分の位置より遠い位置に配置され
ている、
磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
傾斜磁場コイルの内側に配置され、被検体にRF磁場を印加するRFコイルを備え、
前記RFコイルは、
円筒状に形成された支持部材と、
前記支持部材の周方向に沿って間隔を空けて配置され、前記RF磁場を発生させる際に高周波電流が流れる複数のラングであって、当該複数のラングのそれぞれが、細長い矩形状に形成され、前記支持部材の軸方向に沿って配置されて
いる複数のラングとを有し、
前記
複数のラングのうちの少なくとも一つは、
前記細長い矩形状の中に第1の部分及び第2の部分を含み、
前記第1の部分は、前記支持部材の外周面上に配置さ
れ、
前記第2の部分は、前記支持部材の周方向において前記第1の部分と異なる位置に配置され、かつ、前記支持部材の中心軸に対して、前記支持部材の径方向において前記第1の部分の位置より近い位置に配置され
ている、
磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記
複数のラングの少なくとも一つは、前記第2の部分の少なくとも一部が前記支持部材の中に埋設されている、
請求項1又は2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記RFコイルは、前記支持部材の軸方向における両端付近に配置された一対のエンドリングと、当該エンドリングの間を架け渡すように配置され、かつ、前記支持部材の周方向に沿って間隔を空けて配置された
前記複数のラングとを有するバードケージ型コイルで
ある、
請求項1~3のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記RFコイルは、前記支持部材の外周面に配置され、前記
複数のラングの少なくとも一つに接続された回路素子をさらに有する、
請求項1~4のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記
複数のラングの少なくとも一つは、前記第2の部分の少なくとも一部が前記支持部材の内周側に配置されている、
請求項1~5のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記
複数のラングの少なくとも一つは、前記第2の部分の端部が前記支持部材の内周側に配置されている、
請求項6に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
磁気共鳴イメージング装置に備えられ、被検体にRF磁場を印加するRFコイルであって、
円筒状に形成された支持部材と、
前記支持部材の周方向に沿って間隔を空けて配置され、前記RF磁場を発生させる際に高周波電流が流れる複数のラングであって、当該複数のラングのそれぞれが、細長い矩形状に形成され、前記支持部材の軸方向に沿って配置されて
いる複数のラングとを有し、
前記
複数のラングのうちの少なくとも一つは、
前記細長い矩形状の中に第1の部分及び第2の部分を含み、
前記第1の部分は、前記支持部材の外周面上に配置さ
れ、
前記第2の部分は、前記支持部材の周方向において前記第1の部分と異なる位置に配置され、かつ、前記RFコイルの外周側に配置され
て前記RFコイルによって発生する前記RF磁場を遮蔽するRFシールドに対して、前記支持部材の径方向において前記第1の部分の位置より遠い位置に配置され
ている、
RFコイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気共鳴イメージング装置及びRFコイルに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)装置は、静磁場中に配置された被検体にRF磁場を印加し、当該RF磁場の影響により被検体から発生するMR信号に基づいて、各種のMR画像を生成する装置である。かかるMRI装置は、被検体にRF磁場を印加するためのRFコイルを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-166895号公報
【文献】米国特許出願公開第2012/0212225号明細書
【文献】米国特許出願公開第2007/0262777号明細書
【文献】米国特許第6297636号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、RF磁場を発生させるために必要となる電力を低減させることができる磁気共鳴イメージング装置及びRFコイルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置は、被検体にRF磁場を印加するRFコイルを備える。前記RFコイルは、円筒状に形成された支持部材と、前記支持部材の軸方向に沿って配置されており、前記RF磁場を発生させる際に高周波電流が流れる導電部材とを有する。前記導電部材は、前記支持部材の外周面上に配置された第1の部分と、前記RFコイルの外周側に配置されたRFシールドに対して、前記支持部材の径方向において前記第1の部分の位置より遠い位置に配置された第2の部分とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係るRFシールド及び全身用RFコイルを示す斜視図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る全身用RFコイルが有する回路素子を示す断面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係るMRI装置に関連するミラー電流を説明するための図である。
【
図5】
図5は、本実施形態に係る全身用RFコイル及びラングの構成を示す断面図である。
【
図6】
図6は、本実施形態に係るラングの形状の一例を示す断面図である。
【
図7】
図7は、本実施形態に係るラングの形状の他の例を示す断面図である。
【
図8】
図8は、本実施形態に係るラングの形状の他の例を示す断面図である。
【
図9】
図9は、本実施形態に係るラングの形状の他の例を示す断面図である。
【
図10】
図10は、本実施形態に係るラングの形状の他の例を示す断面図である。
【
図11】
図11は、本実施形態に係るラングの形状の他の例を示す断面図である。
【
図12】
図12は、本実施形態に係るラングの形状の他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら、実施形態に係る磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)装置及びRFコイルについて詳細に説明する。
【0008】
(実施形態)
図1は、本実施形態に係るMRI装置100の構成を示す図である。例えば、
図1に示すように、本実施形態に係るMRI装置100は、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源3、全身用RFコイル4、送信回路5、局所用RFコイル6、受信回路7、RFシールド8、架台9、寝台10、入力インタフェース11、ディスプレイ12、記憶回路13、及び、処理回路14~17を備える。
【0009】
静磁場磁石1は、被検体Sが配置される撮像空間に静磁場を発生させる。具体的には、静磁場磁石1は、中空の略円筒状(円筒の中心軸に直交する断面の形状が楕円状となるものを含む)に形成されており、円筒内の空間に静磁場を発生させる。例えば、静磁場磁石1は、略円筒状に形成された冷却容器と、当該冷却容器内に充填された冷却材(例えば、液体ヘリウム等)に浸漬された超伝導磁石等の磁石とを有している。ここで、例えば、静磁場磁石1は、永久磁石を用いて静磁場を発生させるものであってもよい。
【0010】
傾斜磁場コイル2は、静磁場磁石1の内側に配置されており、被検体Sが配置される撮像空間に傾斜磁場を印加する。具体的には、傾斜磁場コイル2は、中空の略円筒状(円筒の中心軸に直交する断面の形状が楕円状となるものを含む)に形成されており、円筒内の空間に、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸の各軸に沿った傾斜磁場を発生させる。ここで、X軸、Y軸及びZ軸は、MRI装置100に固有の装置座標系を構成する。例えば、Z軸は、傾斜磁場コイル2の円筒の軸に一致し、静磁場磁石1によって発生する静磁場の磁束に沿って設定される。また、X軸は、Z軸に直交する水平方向に沿って設定され、Y軸は、Z軸に直交する鉛直方向に沿って設定される。
【0011】
傾斜磁場電源3は、傾斜磁場コイル2に電流を供給することで、傾斜磁場コイル2の内側の空間に、X軸、Y軸及びZ軸それぞれに沿った傾斜磁場を発生させる。このように、傾斜磁場電源3がX軸、Y軸及びZ軸それぞれに沿った傾斜磁場を発生させることによって、リードアウト方向、位相エンコード方向、及びスライス方向それぞれに沿った傾斜磁場を発生させることができる。リードアウト方向、位相エンコード方向、及びスライス方向それぞれに沿った軸は、撮像の対象となるスライス領域又はボリューム領域を規定するための論理座標系を構成する。なお、以下では、リードアウト方向に沿った傾斜磁場をリードアウト傾斜磁場と呼び、位相エンコード方向に沿った傾斜磁場を位相エンコード傾斜磁場と呼び、スライス方向に沿った傾斜磁場をスライス傾斜磁場と呼ぶ。
【0012】
これらの傾斜磁場は、静磁場磁石1によって発生する静磁場に重畳され、MR(Magnetic Resonance(磁気共鳴))信号に空間的な位置情報を付与するために用いられる。具体的には、リードアウト傾斜磁場は、リードアウト方向の位置に応じてMR信号の周波数を変化させることで、MR信号にリードアウト方向に沿った位置情報を付与する。また、位相エンコード傾斜磁場は、位相エンコード方向に沿ってMR信号の位相を変化させることで、MR信号に位相エンコード方向の位置情報を付与する。また、スライス傾斜磁場は、撮像領域がスライス領域の場合には、スライス領域の方向、厚さ、枚数を決めるために用いられ、撮像領域がボリューム領域である場合には、スライス方向の位置に応じてMR信号の位相を変化させることで、MR信号にスライス方向に沿った位置情報を付与する。
【0013】
全身用RFコイル4は、傾斜磁場コイル2の内側に配置されており、被検体Sが配置される撮像空間にRF(Radio Frequency)磁場を印加し、当該RF磁場の影響により被検体Sから発生するMR信号を受信する。具体的には、全身用RFコイル4は、中空の略円筒状(円筒の中心軸に直交する断面の形状が楕円状となるものを含む)に形成されており、円筒内の空間にRF磁場を印加する。また、全身用RFコイル4は、被検体Sから発生するMR信号を受信し、受信したMR信号を受信回路7へ出力する。
【0014】
送信回路5は、ラーモア周波数に対応するRFパルス信号を全身用RFコイル4に出力する。具体的には、送信回路5は、発振回路、位相選択回路、周波数変換回路、振幅変調回路、及び、高周波増幅回路を備える。発振回路は、静磁場中に置かれた対象原子核に固有の共鳴周波数の高周波パルスを発生する。位相選択回路は、発振回路から出力される高周波パルスの位相を選択する。周波数変換回路は、位相選択回路から出力される高周波パルスの周波数を変換する。振幅変調回路は、周波数変換回路から出力される高周波パルスの振幅を例えばsinc関数に従って変調する。高周波増幅回路は、振幅変調回路から出力される高周波パルスを増幅して全身用RFコイル4に出力する。
【0015】
局所用RFコイル6は、被検体Sから発生するMR信号を受信する。具体的には、局所用RFコイル6は、全身用RFコイル4の内側に配置された被検体Sに装着され、全身用RFコイル4によって印加されるRF磁場の影響により被検体Sから発生するMR信号を受信し、受信したMR信号を受信回路7へ出力する。例えば、局所用RFコイル6は、撮像対象の部位ごとに用意された受信コイルであり、頭部用の受信コイルや、頚部用の受信コイル、肩用の受信コイル、胸部用の受信コイル、腹部用の受信コイル、下肢用の受信コイル、脊椎用の受信コイル等である。なお、局所用RFコイル6は、RF磁場を印加する送信機能をさらに有していてもよい。その場合には、局所用RFコイル6は、送信回路5に接続され、送信回路5から出力されるRFパルス信号に基づいて、被検体SにRF磁場を印加する。
【0016】
受信回路7は、全身用RFコイル4又は局所用RFコイル6から出力されるMR信号に基づいてMR信号データを生成し、生成したMR信号データを処理回路15に出力する。例えば、受信回路7は、選択回路、前段増幅回路、位相検波回路、及び、アナログデジタル変換回路を備える。選択回路は、全身用RFコイル4又は局所用RFコイル6から出力されるMR信号を選択的に入力する。前段増幅回路は、選択回路から出力されるMR信号を増幅する。位相検波回路は、前段増幅回路から出力されるMR信号の位相を検波する。アナログデジタル変換回路は、位相検波回路から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換することでMR信号データを生成し、生成したMR信号データを処理回路15に出力する。
【0017】
RFシールド8は、例えば、傾斜磁場コイル2と全身用RFコイル4との間に配置されており、全身用RFコイル4によって発生するRF磁場を遮蔽する。例えば、RFシールド8は、略円筒状(円筒の中心軸に直交する断面の形状が楕円状となるものを含む)に形成されており、傾斜磁場コイル2の内周側の空間に、全身用RFコイル4の外周面を覆うように配置されている。
【0018】
架台9は、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2及び全身用RFコイル4を収容している。具体的には、架台9は、円筒状に形成された中空のボアBを有しており、ボアBを囲むように静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、全身用RFコイル4及びRFシールド8を配置した状態で、それぞれを収容している。ここで、架台9が有するボアBの内側の空間が、被検体Sの撮像が行われる際に被検体Sが配置される撮像空間となる。
【0019】
寝台10は、被検体Sが載置される天板10aを備え、被検体Sの撮像が行われる際に、架台9におけるボアBの内側へ天板10aを挿入する。例えば、寝台10は、長手方向が静磁場磁石1の中心軸と平行になるように設置されている。
【0020】
入力インタフェース11は、操作者から各種指示及び各種情報の入力操作を受け付ける。具体的には、入力インタフェース11は、処理回路17に接続されており、操作者から受け取った入力操作を電気信号へ変換し制御回路へと出力する。例えば、入力インタフェース11は、撮像条件や関心領域(Region Of Interest:ROI)の設定等を行うためのトラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力インタフェース、及び音声入力インタフェース等によって実現される。なお、本明細書において、入力インタフェース11は、マウス、キーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェース11の例に含まれる。
【0021】
ディスプレイ12は、各種情報及び各種画像を表示する。具体的には、ディスプレイ12は、処理回路17に接続されており、処理回路17から送られる各種情報及び各種画像のデータを表示用の電気信号に変換して出力する。例えば、ディスプレイ12は、液晶モニタやCRT(Cathode Ray Tube)モニタ、タッチパネル等によって実現される。
【0022】
記憶回路13は、各種データを記憶する。具体的には、記憶回路13は、MR信号データや画像データを記憶する。例えば、記憶回路13は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子やハードディスク、光ディスク等によって実現される。
【0023】
処理回路14は、寝台制御機能14aを有する。寝台制御機能14aは、寝台10に接続され、制御用の電気信号を寝台10へ出力することで、寝台10の動作を制御する。例えば、寝台制御機能14aは、入力インタフェース11を介して、天板10aを長手方向、上下方向又は左右方向へ移動させる指示を操作者から受け付け、受け付けた指示に従って天板10aを移動するように、寝台10が有する天板10aの駆動機構を動作させる。
【0024】
処理回路15は、実行機能15aを有する。実行機能15aは、処理回路17から出力されるシーケンス実行データに基づいて傾斜磁場電源3、送信回路5及び受信回路7を駆動することで、各種パルスシーケンスを実行する。例えば、実行機能15aは、傾斜磁場電源3、送信回路5及び受信回路7それぞれに入力信号を送信することで、傾斜磁場電源3、送信回路5及び受信回路7を駆動する。
【0025】
ここで、シーケンス実行データは、MR信号データを収集するための手順を示すパルスシーケンスを定義した情報である。具体的には、シーケンス実行データは、傾斜磁場電源3が傾斜磁場コイル2に電流を供給するタイミング及び供給される電流の強さ、送信回路5が全身用RFコイル4に供給するRFパルス信号の強さや供給タイミング、受信回路7がMR信号を検出する検出タイミング等を定義した情報である。
【0026】
そして、実行機能15aは、各種パルスシーケンスを実行した結果として、受信回路7からMR信号データを受信し、受信したMR信号データを記憶回路13に記憶させる。なお、実行機能15aによって受信されたMR信号データの集合は、前述したリードアウト傾斜磁場、位相エンコード傾斜磁場、及びスライス傾斜磁場によって付与された位置情報に応じて2次元又は3次元に配列されることで、k空間を構成するデータとして記憶回路13に記憶される。
【0027】
処理回路16は、画像生成機能16aを有する。画像生成機能16aは、記憶回路13に記憶されたMR信号データに基づいて画像を生成する。具体的には、画像生成機能16aは、実行機能15aによって記憶回路13に記憶されたMR信号データを読み出し、読み出したMR信号データに後処理、すなわち、フーリエ変換等の再構成処理を施すことで画像を生成する。また、画像生成機能16aは、生成した画像の画像データを記憶回路13に記憶させる。
【0028】
処理回路17は、主制御機能17aを有する。主制御機能17aは、MRI装置100が有する各構成要素を制御することで、MRI装置100の全体制御を行う。例えば、主制御機能17aは、入力インタフェース11を介して操作者から撮像条件の入力を受け付ける。そして、主制御機能17aは、受け付けた撮像条件に基づいてシーケンス実行データを生成し、当該シーケンス実行データを処理回路15に送信することで、各種のパルスシーケンスを実行する。また、例えば、主制御機能17aは、操作者からの要求に応じて、記憶回路13から画像データを読み出してディスプレイ12に出力する。
【0029】
ここで、例えば、上述した各処理回路は、それぞれプロセッサによって実現される。その場合に、例えば、各処理回路が有する処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路13に記憶されている。各処理回路は、記憶回路13から各プログラムを読み出して実行することで、各プログラムに対応する機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の各処理回路は、
図1の各処理回路内に示された各機能を有することとなる。
【0030】
また、各処理回路は、複数の独立したプロセッサを組み合わせて構成され、各プロセッサがプログラムを実行することによって各機能を実現するものとしてもよい。また、各処理回路が有する機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。また、各処理回路が有する機能は、回路等のハードウェアとソフトウェアとの混合によって実現されても構わない。
【0031】
以上、本実施形態に係るMRI装置100の全体構成について説明した。このような構成において、本実施形態に係るMRI装置100は、前述したように、被検体SにRF磁場を印加する全身用RFコイル4と、全身用RFコイル4によって発生するRF磁場を遮蔽するRFシールド8とを備えている。
【0032】
図2は、本実施形態に係るRFシールド8及び全身用RFコイル4を示す斜視図である。例えば、
図2の上側に示すように、RFシールド8は、略円筒状(円筒の中心軸に直交する断面の形状が楕円状となるものを含む)に形成されており、全身用RFコイル4の外周面を覆うように配置されている。ここで、RFシールド8は、導電性の材料で形成されており、全身用RFコイル4から発生するRF磁場を減衰させる。例えば、RFシールド8は、銅箔や銀箔、メッシュ加工が施されたステンレス鋼の板(SUSメッシュとも呼ばれる)等の金属で形成されている。
【0033】
また、例えば、
図2の下側に示すように、全身用RFコイル4は、バードケージ型コイルであり、略円筒状に形成された支持部材4aと、一対のエンドリング4bと、複数のラング4cとを有する。また、全身用RFコイル4は、各エンドリング4bに接続された回路素子4dと、各ラング4cに接続された回路素子4eとを有する。
【0034】
支持部材4aは、略円筒状に形成されており、エンドリング4b及びラング4cを支持している。なお、支持部材4aは、ボビンとも呼ばれる。
【0035】
エンドリング4bは、導電性の材料を用いて支持部材4a周りにリング状に形成された導電部材であり、支持部材4aの軸方向における両端付近に配置されている。例えば、エンドリング4bは、銅箔や銀箔等の金属で形成されている。
【0036】
ラング4cは、それぞれ、導電性の材料を用いて細長い矩形状に形成された導電部材であり、エンドリング4bの間を架け渡すように配置され、かつ、支持部材4aの周方向に沿って間隔を空けて配置されている。ここで、ラング4cは、支持部材4aの外周面に当該支持部材4aの軸方向に沿って配置されており、RF磁場を発生させる際に高周波電流が流れる。例えば、ラング4cは、銅箔や銀箔等の金属で形成されている。
【0037】
各エンドリング4bに接続された回路素子4d、及び、各ラング4cに接続された回路素子4eは、それぞれ、支持部材4aの外周面に配置されている。ここで、各回路素子は、全身用RFコイル4の動作を制御するための所定の回路素子である。例えば、各回路素子は、PIN(P-Intrinsic-N Diode)ダイオードやコンデンサ等である。
【0038】
ここで、例えば、
図2に示すように、各ラング4cは、支持部材4aの軸方向に沿って、長手方向の中央付近(
図2に示す破線Aの位置)で2つに分離されており、分離された部分の間隙を架け渡すように回路素子4eが接続されている。
【0039】
図3は、本実施形態に係る全身用RFコイル4が有する回路素子4eを示す断面図である。ここで、
図3は、ラング4cに接続された回路素子4eを示しており、
図2に示した破線Aの位置における全身用RFコイル4の部分的な断面を示している。なお、
図3は、全身用RFコイル4の軸方向に直交する断面を示している。
【0040】
例えば、
図3に示すように、ラング4cに接続された回路素子4eは、支持部材4aの外周面に配置されている。ここで、回路素子4eは、ラング4cにおける分離された部分の間隙を架け渡すように配置された状態で、支持部材4aに固定されている。
【0041】
このように、全身用RFコイル4の周囲にRFシールド8が配置された構成では、全身用RFコイル4のラング4cに高周波電流が流れた際に、それに応じて、RFシールド8にミラー電流が発生することが知られている。そして、このミラー電流によって、RF磁場を発生させるために必要となる電力が増加することがあり得る。
【0042】
図4は、本実施形態に係るMRI装置100に関連するミラー電流を説明するための図である。ここで、
図4は、全身用RFコイル4の軸方向に沿ったRFシールド8の部分的な断面を示している。
【0043】
例えば、
図4に示すように、MRI装置100によって撮像が行われる際には、ラング4cに高周波電流が流れ、それにより発生したRF磁場がRFシールド8を貫くことで、見かけ上はRFシールド8を挟んで当該高周波電流と等距離(
図4に示すD)の位置にミラー電流が発生する。ここで、ミラー電流は、ラング4cに流れる電流とは逆の向きに流れるように発生し、このミラー電流によって、RF磁場を打ち消す磁場が発生する。この結果、撮像が行われる際に、RF磁場を発生させるために必要となる電力が増加することがあり得る。そして、このようにRF磁場を発生させるための電力が増加した場合には、全身用RFコイル4の発熱量が大きくなるため、被検体Sが配置される撮像空間の温度が上昇したり、画像のSNR(Signal Noise Ratio)が低下したりすることもあり得る。
【0044】
このようなことから、本実施形態に係るMRI装置100は、RF磁場を発生させるために必要となる電力を低減させることができるように構成されている。具体的には、本実施形態では、全身用RFコイル4が有するラング4cの少なくとも一部が、支持部材4aの径方向において支持部材4aの外周面より内側に配置されるように構成されている。
【0045】
図5は、本実施形態に係る全身用RFコイル4及びラング4cの構成を示す断面図である。ここで、
図5の左側に示す図は、
図2に示した破線Bの位置を通る全身用RFコイル4の断面を示している。また、
図5の右上側に示す図は、本実施形態の比較例に係るラング40cの断面を示しており、
図5の右下側に示す図は、本実施形態に係るラング4cの断面を示している。なお、
図5は、全身用RFコイル4の軸方向に直交する断面を示しており、ラング4cには、
図5に示す断面に直交する方向に電流が流れることになる。
【0046】
例えば、
図5の右下側に示すように、本実施形態では、支持部材4aの周方向(
図5に示す矢印cの方向)におけるラング4cの両端部が、支持部材4aの径方向(
図5に示す矢印rの方向)において支持部材4aの外周面より内側に所定の距離(
図5に示すΔ)だけ離れた位置に配置されるようにしている。なお、
図5では、全身用RFコイル4が有する複数のラング4cのうちの一つのラング4cを示しているが、本実施形態では、全てのラング4cが同様の構成を有している。
【0047】
すなわち、ラング4cは、支持部材4aの外周面に配置された第1の部分と、全身用RFコイル4の外周側に配置されたRFシールド8に対して、支持部材4aの径方向において第1の部分の位置より遠い位置に配置された第2の部分とを含む。
【0048】
言い換えると、ラング4cは、支持部材4aの外周面に配置された第1の部分と、支持部材4aの中心軸に対して、支持部材4aの径方向において第1の部分の位置より近い位置に配置された第2の部分とを含む。
【0049】
ここで、例えば、ラング4cは、第2の部分の少なくとも一部が支持部材4aの中に埋設されている。
【0050】
このような構成によれば、例えば、
図5の右上側に示すようにラング40cの全体が支持部材4aの外周面上に配置されている場合と比べて、ラング4cが、部分的にRFシールド8から遠い位置に配置されることになる。ここで、通常、電流によって発生する磁場の大きさは、電流が流れる位置からの距離に反比例する。したがって、上述したようにラング4cを部分的にRFシールド8から遠い位置に配置することによって、RFシールド8を貫くRF磁場の大きさを小さくすることができ、ミラー電流を低減させることができる。これにより、本実施形態では、ミラー電流によって発生するRF磁場を打ち消す磁場を減らすことができ、RF磁場を発生させるために必要となる電力を低減させることができるようになる。
【0051】
図6は、本実施形態に係るラング4cの形状の一例を示す断面図である。ここで、
図6における上下方向は、支持部材4aにおける径方向(
図5に示した矢印rの方向)に相当し、
図6における左右方向は、支持部材4aにおける周方向(
図5に示した矢印cの方向)、及び、ラング4cにおける短手方向に相当している。
【0052】
例えば、
図6に示すように、ラング4cは、短手方向における中央部分が、その両側に位置する両端部分より突出した形状に形成され、かつ、中央部分と両端部分とを連結する連結部分が、ラング4cの短手方向に対して略直交するように形成されている。そして、本例では、ラング4cは、短手方向における中央部分が支持部材4aの外周面上に配置され、かつ、両端部分が支持部材4aの内周側に配置されるように、支持部材4aに固定されている。ここで、言い換えると、本例では、ラング4cの両端部分は、支持部材4aにおける回路素子4eが配置された面とは反対側の面に配置されている。
【0053】
なお、
図6に示す例では、ラング4cの両端部分が支持部材4aの内周面から離れた位置に配置されているが、本例に係るラング4cの構成はこれに限られない。例えば、ラング4cの両端部分は、支持部材4aの内周面上に配置されていてもよいし、支持部材4aの内部に埋設されていてもよい。すなわち、本例では、ラング4cの両端部分が支持部材4aの外周面より少しでも内側に配置されていれば、ミラー電流を低減させる効果が得られる。
【0054】
さらに、ラング4cの形状は、
図6に示したものに限られない。
【0055】
図7~12は、本実施形態に係るラング4cの形状の他の例を示す断面図である。ここで、
図7~12における上下方向は、支持部材4aにおける径方向(
図5に示した矢印rの方向)に相当し、
図7~12における左右方向は、支持部材4aにおける周方向(
図5に示した矢印cの方向)、及び、ラング4cにおける短手方向に相当している。
【0056】
例えば、
図7に示すように、ラング4cは、短手方向における両端部分が同一側に湾曲した形状に形成されていてもよい。そして、本例では、ラング4cは、短手方向における中央部分が支持部材4aの外周面上に配置され、かつ、両端部分が支持部材4aの内部に埋設されるように、支持部材4aに固定されている。
【0057】
なお、
図7に示す例では、ラング4cの両端部分の先端部が支持部材4aの内周面から突出しているが、本例に係るラング4cの構成はこれに限られない。例えば、ラング4cの両端部分の先端部は、支持部材4aの内周面から突出せず、支持部材4aの内部に埋設されていてもよい。すなわち、本例では、ラング4cの両端部分が支持部材4aの外周面より少しでも内側に配置されていれば、ミラー電流を低減させる効果が得られる。
【0058】
また、例えば、
図8に示すように、ラング4cは、短手方向に沿った断面の形状が櫛歯状となるように同一側に突出した複数の突出部を有するように形成されていてもよい。そして、本例では、ラング4cは、短手方向の全体にわたって支持部材4aの外周面上に配置され、かつ、各突出部が支持部材4aの内部に配置されるように、支持部材4aに固定されている。
【0059】
なお、
図8に示す例では、ラング4cの各突出部の先端部が支持部材4aの内周面から突出しているが、本例に係るラング4cの構成はこれに限られない。例えば、ラング4cの各突出部は、先端部が支持部材4aの内周面から突出せず、支持部材4aの内部に埋設されていてもよい。すなわち、本例では、ラング4cの各突出部が支持部材4aの外周面より少しでも内側に配置されていれば、ミラー電流を低減させる効果が得られる。
【0060】
また、例えば、
図9に示すように、ラング4cは、短手方向における中央部分が、その両側に位置する両端部分より突出した形状に形成され、かつ、中央部分と両端部分とを連結する連結部分が、ラング4cの短手方向に対して斜めになるように形成されていてもよい。そして、本例では、
図6に示した例と同様に、ラング4cは、短手方向における中央部分が支持部材4aの外周面上に配置され、かつ、両端部分が支持部材4aの内周側に配置されるように、支持部材4aに固定されている。ここで、言い換えると、本例では、ラング4cの両端部分は、支持部材4aにおける回路素子4eが配置された面とは反対側の面に配置されている。
【0061】
なお、
図9では、ラング4cの両端部分が支持部材4aの内周面から離れた位置に配置されているが、本例に係るラング4cの構成はこれに限られない。例えば、ラング4cの両端部分は、支持部材4aの内周面上に配置されていてもよいし、支持部材4aの内部に埋設されていてもよい。すなわち、本例でも、ラング4cの両端部分が支持部材4aの外周面より少しでも内側に配置されていれば、ミラー電流を低減させる効果が得られる。
【0062】
また、例えば、
図10に示すように、ラング4cは、短手方向に沿った断面の形状が波状となるように、短手方向と直交する正逆方向に交互に屈曲した形状に形成されていてもよい。そして、本例では、ラング4cは、両端部分が支持部材4aの内周側に配置され、かつ、両端部分の間にある各屈曲部が、支持部材4aの外周面上と支持部材4aの内周側とに交互に配置されるように、支持部材4aに固定されている。
【0063】
なお、
図10では、ラング4cの両端部分の先端部、及び、支持部材4aの内周側に配置された屈曲部が、それぞれ支持部材4aの内周面から突出しているが、本例に係るラング4cの構成はこれに限られない。例えば、ラング4cの両端部分の先端部、及び、支持部材4aの内周側に配置された屈曲部は、支持部材4aの内周面から突出せず、支持部材4aの内部に埋設されていてもよい。すなわち、本例では、ラング4cの両端部分及び支持部材4aの内周側に配置された屈曲部が支持部材4aの外周面より少しでも内側に配置されていれば、ミラー電流を低減させる効果が得られる。
【0064】
また、例えば、
図11に示すように、ラング4cは、短手方向における中央部分が、支持部材4aの厚さより大きな厚みを有し、かつ、その両側に位置する両端部分より突出した形状に形成されていてもよい。そして、本例では、ラング4cは、短手方向における中央部分の一方の面が支持部材4aの外周面上に配置され、かつ、中央部分の他方の面、及び、短手方向における両端部分が支持部材4aの内周側に配置されるように、支持部材4aに固定されている。ここで、言い換えると、本例では、ラング4cの両端部分は、支持部材4aにおける回路素子4eが配置された面とは反対側の面に配置されている。本例では、ラング4cの短手方向における中央部分が厚く形成されていることによって、回路素子4eが発生する熱を効率よく発散できるようになる。
【0065】
なお、
図11では、ラング4cの両端部分が支持部材4aの内周面から離れた位置に配置されているが、本例に係るラング4cの構成はこれに限られない。例えば、ラング4cの両端部分は、支持部材4aの内周面上に配置されていてもよいし、支持部材4aの内部に埋設されていてもよい。すなわち、本例では、ラング4cの両端部分が支持部材4aの外周面より少しでも内側に配置されていれば、ミラー電流を低減させる効果が得られる。
【0066】
ここで、
図6~11に示した例では、ラング4cの第2の部分の少なくとも一部が、支持部材4aの中に埋設されている場合の例を示したが、実施形態はこれに限られない。例えば、ラング4cの第2の部分の少なくとも一部が、支持部材4aの外周面に形成された溝の中に配置されていてもよい。
【0067】
例えば、
図12に示すように、ラング4cは、短手方向における中央部分が、支持部材4aの外周面上に配置され、その両側に位置する両端部分が、支持部材4aの外周面に形成された溝の底面上に配置される。
図12に示す例では、支持部材4aの溝は、支持部材4aの軸方向に沿って延在し、かつ、支持部材4aの外周面から支持部材4aの径方向に所定の距離(
図12に示すΔ)の深さを有するように形成されている。
【0068】
ここで、
図6~12に示した例では、いずれの例でも、ラング4cの端部が、支持部材4aの外周面より内側に配置されている。ここで、通常、ラング4cのような導電部材に電流が流れる場合には、導電部材の端部で電流密度が高くなる。したがって、
図6~12に例示したように、ラング4cの端部を支持部材4aの外周面より内側に配置することによって、RFシールド8を貫くRF磁場の大きさをより小さくすることができ、ミラー電流をさらに低減させることができるようになる。
【0069】
また、
図6~12に例示した各ラング4cにおいて、支持部材4aの外周面に配置される部分の大きさは、できるだけ小さくしておくのが望ましい。それにより、RFシールド8を貫くRF磁場の大きさを小さくすることができ、ミラー電流を低減させる効果を大きくすることができる。例えば、ラング4cにおける中央部分の大きさは、少なくとも回路素子4eを配置可能な範囲で、できるだけ大きく設定される。
【0070】
また、
図6~12に例示した各ラング4cにおいて、支持部材4aの外周面より内側に配置される部分と支持部材4aの外周面との間の距離(
図6~12に示すΔ)は、できるだけ大きくしておくのが望ましい。それにより、RFシールド8からより離れた位置にラング4cの一部を配置することができ、ミラー電流を低減させる効果を大きくすることができる。例えば、支持部材4aの外周面より内側に配置される部分と支持部材4aの外周面との間の距離は、MRI装置100で要求されるボアBの径を確保できる範囲で、できるだけ大きく設定される。
【0071】
上述したように、本実施形態では、全身用RFコイル4において、ラング4cの少なくとも一部が、支持部材4aの径方向において支持部材4aの外周面より内側に配置されている。これにより、本実施形態では、RFシールド8を貫くRF磁場の大きさを小さくすることができ、ミラー電流を低減させることができる。したがって、本実施形態によれば、ミラー電流によって発生するRF磁場を打ち消す磁場を減らすことができ、RF磁場を発生させるために必要となる電力を低減させることができる。
【0072】
(他の実施形態)
なお、上述した実施形態では、全身用RFコイル4が有する全てのラング4cが同様に構成されている場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、全身用RFコイル4が有する複数のラング4cのうちの一部のラング4cのみが、上述した実施形態で説明した構成を有していてもよい。
【0073】
例えば、上述した実施形態において、全身用RFコイル4は、中心軸に直交する断面の形状が真円状となるように形成されており、かつ、RFシールド8が、中心軸に直交する断面の形状が楕円状となるように形成されていてもよい。その場合には、全身用RFコイル4が有する複数のラング4cのうち、RFシールド8との間の距離が最も近いラング4cのみ、又は、RFシールド8との間の距離が最も近いラング4c及びその周辺に配置されているラング4cのみが、上述した実施形態で説明したラング4cと同様の形状に構成される。ここで、RFシールド8との間の距離が最も近いラング4cは、全身用RFコイル4における長軸(楕円の長軸)上又は長軸の付近に配置されているラング4cである。
【0074】
また、上述した実施形態では、全身用RFコイル4がバードケージ型コイルである場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、全身用RFコイル4は、他の形状を有するコイルであってもよい。
【0075】
例えば、全身用RFコイル4は、TEM(Transverse Electromagnetic)コイルであってもよい。一般的に、TEMコイルでは、円筒状に形成された支持部材における周方向に沿った複数の位置に、軸方向に延伸する導電部材が径方向に二重に配置されて構成されている。そのため、全身用RFコイル4がTEMコイルである場合には、例えば、径方向に二重に配置された導電部材のうちの内側に配置される導電部材が、上述した実施形態で説明したラング4cと同様の形状に構成される。これにより、内側の導電部材によって発生したRF磁場の影響で外側の導電部材に発生するミラー電流を低減させることができる。
【0076】
また、例えば、全身用RFコイル4は、サドル型コイルや、ソレノイド型コイル、スロットレゾネータ型コイル等であってもよい。
【0077】
また、上述した実施形態では、MRI装置100が、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2及び全身用RFコイル4がそれぞれ略円筒状に形成された、いわゆるトンネル型の構成を有する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、MRI装置100は、被検体Sが配置される撮像空間を挟んで対向するように一対の静磁場磁石、一対の傾斜磁場コイル及び一対のRFコイルを配置した、いわゆるオープン型の構成を有していてもよい。
【0078】
いずれの場合でも、支持部材の表面に配置された導電部材の少なくとも一部が、支持部材の厚さ方向において支持部材の表面より内側に配置されるように、RFコイルが構成されていればよい。これにより、支持部材における導電部材が配置された表面と対向する位置にRFシールド等の導電部材が配置されている場合に、RF磁場によって当該導電部材に発生するミラー電流を低減させることができるようになる。
【0079】
なお、上述した各実施形態の説明で用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。ここで、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合には、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。また、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて一つのプロセッサとして構成され、その機能を実現するようにしてもよい。
【0080】
ここで、プロセッサによって実行されるプログラムは、ROM(Read Only Memory)や記憶回路等に予め組み込まれて提供される。なお、このプログラムは、これらの装置にインストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD(Compact Disk)-ROM、FD(Flexible Disk)、CD-R(Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記録されて提供されてもよい。また、このプログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納され、ネットワーク経由でダウンロードされることにより提供又は配布されてもよい。例えば、このプログラムは、上述した各機能部を含むモジュールで構成される。実際のハードウェアとしては、CPUが、ROM等の記憶媒体からプログラムを読み出して実行することにより、各モジュールが主記憶装置上にロードされて、主記憶装置上に生成される。
【0081】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、RF磁場を発生させるために必要となる電力を低減させることができる磁気共鳴イメージング装置及びRFコイルを提供することができる。
【0082】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0083】
100 MRI装置
4 RFコイル
4a 支持部材
4b エンドリング
4c ラング