(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-24
(45)【発行日】2023-04-03
(54)【発明の名称】鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
B62J 37/00 20060101AFI20230327BHJP
B62J 35/00 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
B62J37/00 B
B62J35/00 C
B62J37/00 Z
(21)【出願番号】P 2018207565
(22)【出願日】2018-11-02
【審査請求日】2021-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100144200
【氏名又は名称】奥西 祐之
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】石井 宏志
(72)【発明者】
【氏名】秋田 浩平
(72)【発明者】
【氏名】水川 照章
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-67275(JP,A)
【文献】特開2014-51148(JP,A)
【文献】特開2015-110381(JP,A)
【文献】国際公開第2018/015898(WO,A1)
【文献】特開2007-15468(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101920744(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 37/00
B62J 35/00
F02M 35/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転姿勢の乗員が乗車する運転者シートと、
前記運転者シートよりも前方に配置されて、前後方向に延びる燃料タンクと、
長手方向が設定される長尺状に形成されており、前記燃料タンク内で生じた蒸発燃料が導入されて、内部に備えた吸着材に吸着されて貯留される、キャニスタと
を備え、
前記燃料タンクは、車幅方向中央部において、底部が上方に隆起して前後方向に延びており、この下側を車体フレームが前後に通過する隆起部が形成されており、
前記キャニスタは、長手方向を前後方向に向けた姿勢で前記燃料タンクの下側に配置されており、全体が車両側面視で前記燃料タンクにより覆われており、
前記キャニスタは、車両側面視で、前記隆起部の上面よりも低く
、且つ、前記車体フレームの上面よりも低いことを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項2】
燃料タンクは、前後方向中間部分において車幅方向外側に膨出した膨出部を備えており、該膨出部から前後方向両側に向かって車幅方向における寸法が小さくなるように形成されており、
平面視で、前記キャニスタは、少なくとも一部が前記膨出部に配置されている、
請求項
1に記載の鞍乗型車両。
【請求項3】
前記キャニスタは、長手方向の端面に蒸発燃料の出入口を備えている、
請求項1
又は2に記載の鞍乗型車両。
【請求項4】
前記キャニスタから内燃機関への蒸発燃料の流動を制御するパージバルブを更に備え、
前記パージバルブは、前記キャニスタに対して前後方向に隣接して、前記燃料タンクの下側に配置されている、
請求項1~
3のいずれか1つに記載の鞍乗型車両。
【請求項5】
前記キャニスタは、前記吸着材に貯留した蒸発燃料が液化してなる液化燃料が、大気中へ放出される大気開放口を備えており、
前記大気開放口から放出された前記液化燃料を、車両に設定される排出位置に導くキャッチトレーを更に備えている、
請求項1~
4のいずれか1つに記載の鞍乗型車両。
【請求項6】
前記キャッチトレーは、前記キャニスタに接続される配管の少なくとも1つを支持する配管支持部を備えている、
請求項
5に記載の鞍乗型車両。
【請求項7】
前記キャニスタは、前記燃料タンクの底部に取り付けられたブラケットに、弾性バンドによって係止されている、
請求項1~
6のいずれか1つに記載の鞍乗型車両。
【請求項8】
前記鞍乗型車両は、
操舵軸を回動可能に支持するヘッドパイプと、該ヘッドパイプから前後方向に延びる車体フレームと、
車幅方向の一方側に設けられており、駐車時に車体を車幅方向の一方側に傾斜した傾斜状態で支持するサイドスタンドと
を更に備えており、
前記燃料タンクは、車体フレームに跨がって鞍型に構成されており、
上面視で、前記燃料タンクのうち前記車体フレームに対して車幅方向の一方側の領域に前記キャニスタが配置されており、前記燃料タンクのうち前記車体フレームに対して車幅方向の他方側の領域に燃料ポンプが配置されており、
前記燃料ポンプは、前記車体フレームに対して、前記サイドスタンドが位置する側に配置されている、
請求項1~
7のいずれか1つに記載の鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料タンクに収容された燃料が当該燃料タンク内で蒸発して生じる蒸発燃料を、吸着して貯留するキャニスタを、備えた鞍乗型車両が知られている。従来、鞍乗型車両においては、キャニスタは、運転者シートの下方に配置されたり、サイドカウルとフレームとの間に配置されたりしている。また、特許文献1には、自動二輪車において、キャニスタが、燃料タンクの下面側に形成された開口孔を介して燃料タンク内に差し込まれるように配置された構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の構造によれば、燃料タンクの下面とキャニスタとの間にシール構造を構成する必要があるので、燃料タンクの構造が複雑化しやすくコストが増大しやすい。
【0005】
本発明は、コスト増大を抑制しつつキャニスタの搭載性を向上させることができる鞍乗型車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は次のように構成したことを特徴とする。
【0007】
本発明に係る鞍乗型車両は、運転姿勢の乗員が乗車する運転者シートと、前記運転者シートよりも前方に配置されて、前後方向に延びる燃料タンクと、長手方向が設定される長尺状に形成されており、前記燃料タンク内で生じた蒸発燃料が導入されて、内部に備えた吸着材に吸着されて貯留される、キャニスタとを備え、前記燃料タンクは、車幅方向中央部において、底部が上方に隆起して前後方向に延びており、この下側を車体フレームが前後に通過する隆起部が形成されており、前記キャニスタは、長手方向を前後方向に向けた姿勢で前記燃料タンクの下側に配置されており、全体が車両側面視で前記燃料タンクにより覆われており、前記キャニスタは、車両側面視で、前記隆起部の上面よりも低く、且つ、前記車体フレームの上面よりも低い。
【0008】
本発明によれば、キャニスタは、燃料タンクに沿って前後方向に延びているので、キャニスタの上下方向における寸法が小さく構成され、燃料タンクの下側に配置しやすい。これによって、燃料タンクの底部を、キャニスタを搭載するために上方へ底上げする底上げ量が低減するので、燃料タンクの底面の成形が容易化される。この結果、燃料タンクの製造コストを低減できる。
【0009】
また、キャニスタを燃料タンクに近接して配置できるので、燃料タンクとキャニスタとを接続するキャニスタ配管を短く構成できる。これによって、耐油性、耐熱性が要求されるため高価になりがちなキャニスタ配管のコストを低減できる。
【0010】
さらに、車両側面視で、キャニスタは燃料タンクにより覆われているので、別途部材を設けることなくキャニスタを燃料タンクにより保護できる。よって、コスト増大を抑制しつつ、キャニスタの搭載性を向上させることができる。
【0011】
本発明において、上記構成に加え、次のような構成を備えることができる。
【0013】
(b)燃料タンクは、前後方向中間部分において車幅方向外側に膨出した膨出部を備えており、該膨出部から前後方向両側に向かって車幅方向における寸法が小さくなるように形成されており、
平面視で、前記キャニスタは、少なくとも一部が前記膨出部に配置されている。
【0014】
(c)前記キャニスタは、長手方向の端面に蒸発燃料の出入口を備えている。
【0015】
(d)前記キャニスタから内燃機関への蒸発燃料の流動を制御するパージバルブを更に備え、前記パージバルブは、前記キャニスタに対して前後方向に隣接して、前記燃料タンクの下側に配置されている。
【0016】
(e)前記キャニスタは、前記吸着材に貯留した蒸発燃料が液化してなる液化燃料が、大気中へ放出される大気開放口を備えており、前記大気開放口から放出された前記液化燃料を、車両に設定される排出位置に導くキャッチトレーを更に備えている。
【0017】
(f)構成(e)を有し、前記キャッチトレーは、前記キャニスタに接続される配管の少なくとも1つを支持する配管支持部を備えている。
【0018】
(g)前記キャニスタは、前記燃料タンクの底部に取り付けられたブラケットに、弾性バンドによって係止されている。
【0019】
(h)前記鞍乗型車両は、操舵軸を回動可能に支持するヘッドパイプと、該ヘッドパイプから前後方向に延びる車体フレームと、車幅方向の一方側に設けられており、駐車時に車体を車幅方向の一方側に傾斜した傾斜状態で支持するサイドスタンドとを更に備えており、前記燃料タンクは、車体フレームに跨がって鞍型に構成されており、上面視で、前記燃料タンクのうち前記車体フレームに対して車幅方向の一方側の領域に前記キャニスタが配置されており、前記燃料タンクのうち前記車体フレームに対して車幅方向の他方側の領域に燃料ポンプが配置されており、前記燃料ポンプは、前記車体フレームに対して、前記サイドスタンドが位置する側に配置されている。
【0021】
前記構成(b)によれば、キャニスタを、平面視で燃料タンクにオーバーラップするように配置しやすい。
【0022】
前記構成(c)によれば、キャニスタの蒸発燃料の出入口に接続される配管を、燃料タンクに沿って前後方向に配索しやすい。これによって、上記配管を、平面視で燃料タンクから車幅方向外側に露出することを抑制しつつ、燃料タンクの底部に配索しやすい。また、上記配管を、上下方向において、キャニスタと燃料タンクとの間に配索する必要がないので、燃料タンクの底部の底上げ量を低減できる。
【0023】
前記構成(d)によれば、パージバルブをキャニスタに近接させて配置できるので、キャニスタとパージバルブとを接続するキャニスタ出口配管が短く構成される。これによって、耐油性、耐熱性等が要求されるため高価になりがちなパージホースのコストを低減できる。さらに、別途部材を設けることなく、パージバルブを、燃料タンクによって保護できる。
【0024】
前記構成(e)によれば、キャニスタから漏出した蒸発燃料を、キャニスタの配置によらずに車両に予め設定された排出位置に導くことができるので、キャニスタの配置の自由度を向上できる。
【0025】
前記構成(f)によれば、別途部材を設けることなく、配管の少なくとも1つをキャッチトレーに支持できる。
【0026】
前記構成(g)によれば、キャニスタを、燃料タンクとの干渉を回避させつつ、燃料タンクの下側に隣接させて弾性支持できる。
【0027】
前記構成(h)によれば、車体をサイドスタンドにより車幅方向に傾斜した状態で支持させた駐車状態で、燃料ポンプは車幅方向のうち傾斜した側に位置することになる。これよって、鞍型に構成された燃料タンクであっても、駐車状態において燃料を燃料ポンプ側に導きやすい。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る鞍乗型車両によれば、コスト増大を抑制しつつキャニスタの搭載性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の一実施形態に係る自動二輪車の左側面図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、本発明の一実施形態に係る自動二輪車1(鞍乗型車両)の左側面図である。本実施形態で用いる方向の概念は、自動二輪車1に乗車した運転者から見た方向の概念と一致するものとして説明する。
【0031】
[自動二輪車の全体構成]
図1に示すように、自動二輪車1は前輪2と後輪3とを備える。前輪2は略上下方向に延びるフロントフォーク4の下部に回転自在に支持されている。フロントフォーク4は、その上端部に設けられたアッパーブラケット5と、アッパーブラケット5の下方に設けられたアンダーブラケット6とを介して、操舵軸7に支持されている。操舵軸7は、ヘッドパイプ8によって回動可能に支持されている。
【0032】
アッパーブラケット5には、左右に延びるハンドルバー9が取り付けられている。運転者によるハンドルバー9の左右への揺動操作によって、操舵軸7を回転軸として、前輪2が操舵される。
【0033】
車体フレーム10は、ヘッドパイプ8から後方に延びる上側フレーム部材11と、ヘッドパイプ8から下方に延びて下端部が後方に延びる下側フレーム部材12と、上側フレーム部材11の後端部と下側フレーム部材12の後端部とを連結する後側フレーム部材13を有している。
【0034】
エンジン20は、車体フレーム10内の空間に搭載されている。具体的には、エンジン20は、上側フレーム部材11と、下側フレーム部材12と、後側フレーム部材13とにより囲まれている。エンジン20は、クランクケース21、シリンダ22、シリンダヘッド23を下方から順に備えている。シリンダヘッドの前面の排気ポートに排気管24が接続されている。シリンダヘッド23の後面の吸気ポートに吸気管27を介してスロットルボディ25が接続されている。スロットルボディ25の後側には吸気ボックス26が接続されている。
【0035】
上側フレーム部材11の後側よりに、これを左右に跨がるように運転姿勢の乗員が乗車する運転者シート15が設けられている。運転者シート15の前側に燃料タンク30が配置されている。下側フレーム部材12の下部には、サイドスタンド14が設けられている。サイドスタンド14は、駐車時に自動二輪車1を車両左側が下方に傾斜した傾斜状態で支持する。燃料タンク30は、エンジン20の上方に位置している。
【0036】
ここで、自動二輪車1は、カウルを備えていないネイキッドタイプの車両として構成されており、エンジン20の周囲が車体外側に露出している。具体的には、エンジン20の車幅方向側面及び排気管24が、車幅方向外側に露出している。すなわち、側面視において、エンジン20の車幅方向側面及び排気管24が視認可能となっている。走行風によってエンジン20の周囲の空気が入れ換えられ、これによってエンジン20の周囲の温度上昇が防止されている。エンジン20は、シリンダ22及びシリンダヘッド23それぞれに放熱用のフィン22a、23aが形成されている。エンジン20は、走行風により冷却されると共にフィン22a,23aを介して放熱される、空冷式エンジンとして構成されている。
【0037】
図2は燃料タンク30の周辺を拡大して示す平面図であり、
図3は
図2のIII-III線に沿った前後方向に直交する断面である。
図2及び
図3に示すように、燃料タンク30の底部には、上側フレーム部材11を挟んで一方側である右側にキャニスタ50が設けられ、他方側である左側に燃料ポンプ16が設けられている。したがって、燃料ポンプ16及びキャニスタ50は、燃料タンク30の底部において、上側フレーム部材11の左右両側に振り分けてコンパクトに配置されている。燃料ポンプ16及びキャニスタ50は、エンジン20の上方に位置している。
【0038】
[燃料タンク]
図2に示すように、燃料タンク30は、車体平面視において、左右対称に形成されている。燃料タンク30の車幅方向中心は、車体の車幅方向中心と一致する。燃料タンク30の車幅方向中心位置であって、燃料タンク30の下方領域には、上側フレーム部材11が位置している。燃料タンク30は、細長く形成され、長手方向が前後方向に延びている。本実施形態では、燃料タンク30の長手方向は、上側フレーム部材11に沿って延びている。
【0039】
図3に示すように、燃料タンク30は、前後方向に延びており、上側フレーム部材11に対して上方に膨出した金属製のタンク外板31と、タンク外板31の下側開口部を塞ぐ金属製のタンク底板32とを有し、これらが周縁部において互いに溶接により接合されて構成されている。
【0040】
図2に示すように、タンク外板31は、前後方向中間部分に位置しておりタンク外板31のうちで車幅方向寸法が最も大きい部分を含んでいる外板膨出部31aと、この前側及び後側において車幅方向内側へ湾曲する外板前部31b及び外板後部31cとを有している。外板膨出部31aは、外板前部31b及び外板後部31cに比して左右方向外側に膨出している。タンク外板31は、外板膨出部31aから前後方向両側に進むにつれて左右方向の寸法が小さくなるティアドロップ形状に形成されている。具体的には、外板膨出部31aは、燃料タンク30の前側よりに位置している。したがって、外板前部31bは外板後部31cに比して、急角度で車幅方向内側に向かって湾曲しており、外板前部31bの曲率半径R1は外板後部31cの曲率半径R2より小さい。
【0041】
図3に示すように、タンク外板31は、前後方向に垂直な断面形状として、下方に開口した略U字状に形成されている。タンク外板31の下端部には、上下軸を一周、すなわち周縁部を一周する外板周縁部31eが形成されている。
図4は
図2のIV-IV線に沿った燃料タンク30の右側より位置における車幅方向に直交する断面図である。
図4に示すように、外板周縁部31eは、車体側面視において、水平又は略水平に延びている。
【0042】
図3に示すように、タンク外板31の頂部には、給油口31dが形成されている。給油口31dにタンクキャップ33が着脱自在に取り付けられている。給油口31dは燃料タンク30の頂部に位置している。給油口31dの周囲には、燃料タンク30に収容された燃料が蒸発して生じる蒸発燃料が溜まる気相部34が構成される。
【0043】
図3に示すように、タンク底板32は、前後方向に垂直な断面形状として、下方に開口した略U字状に形成されている。タンク底板32は、上下軸を一周、すなわち周縁部を一周する底板周縁部32aと、底板周縁部32aの上部から内側に延びており底板周縁部32aの内側を上下方向に隔てる底壁部32bとを有している。
【0044】
底壁部32bには、車幅方向中央部において残余の部分に比して上方に隆起する隆起部36が形成されている。燃料タンク30は、隆起部36において、上側フレーム部材11を左右に跨いでおり、上側フレーム部材11の上面及び側面を覆っている。換言すれば、上側フレーム部材11は、隆起部36の下方を前後方向に通過している。
図4に示すように、隆起部36は、燃料タンク30にわたって前後方向に延びている。
【0045】
図3及び
図4に示すように、底壁部32には、隆起部36を挟んだ両側において燃料タンク30の後部において略水平に延びる左右一対の非取付面部37と、隆起部36の左側において非取付面部37の前側に段落ち面38aを介して一段下がったポンプ取付面部38と、隆起部36の右側において非取付面部37の前側に段上げ面39a(
図5参照)を介して一段上がったキャニスタ取付面部39とが形成されている。
【0046】
図5は、燃料タンク30を下方から見た斜視図であり、燃料ポンプ16と、後述するキャニスタブラケット60とが併せて示されている。
図5に示すように、隆起部36を挟んで右側に位置する非取付面部37は、左側に位置する非取付面部37よりも、前後方向に短い。換言すると、キャニスタ取付面部39は、ポンプ取付面部38に比して、後端位置が後側に位置しており前後方向に長い。タンク底板32は、ポンプ取付面部38、非取付面部37、キャニスタ取付面部39の順で段階的に高くなる。側面視で、非取付面部37、ポンプ取付面部38及びキャニスタ取付面部39はそれぞれ、隆起部36の上面36aより低い。
【0047】
図3に示すように、隆起部36は、前後方向に直交する断面形状が下方に開口した逆U字状断面に形成されている。
図4に示すように、隆起部36は、上側フレーム部材11に沿って前後方向に延びており、上面36aが後方に向かって次第に低くなるように下方に傾斜した方向に延びている。したがって、隆起部36は、前側ほど残余の部分に対する隆起量が大きい。
【0048】
タンク外板31の外板周縁部31eとタンク底板32の底板周縁部32aとが溶接されている。これによって、タンク外板31とタンク外板32との間に密閉されてなる燃料タンク30の燃料収容空間が形成されている。底板周縁部32aとこのタンク外側に位置するタンク外板31の外板周縁部31eとによって、これらの間に燃料が収容される容積部が形成されたタンク側部43が構成されている。タンク側部43の下端、すなわち底板周縁部32aと外板周縁部31eとの接合部は、非取付面部37、ポンプ取付面部38及びキャニスタ取付面部39より低い。
【0049】
図4に示すように、右側の非取付面部37には、タンク側蒸発燃料出口41とタンク側水出口42とが設けられている。タンク側蒸発燃料出口41及びタンク側水出口42は、非取付面部37を上下方向に貫通して下方に突出するニップルにより構成されている。換言すれば、タンク側蒸発燃料出口41及びタンク側水出口42は、キャニスタ50よりも後方に設けられている。燃料タンク30内には、気相部34とタンク側蒸発燃料出口41とを接続しこれらを連通させるタンク側蒸発燃料排出配管45と、給油口31dの周囲とタンク側水出口42とを接続しこれらを連通させるタンク側水排出管46とが、配索されている。タンク側水排出管46によれば、給油口31dの周囲の液体(例えば給油口31dから零れた燃料、タンクキャップ33と燃料タンク30との間から侵入した水等)が、燃料タンク30の下方に排出される。
【0050】
図3及び
図5に示すように、ポンプ取付面部38には、上下方向に貫通したポンプ開口38bが形成されている。また、ポンプ開口38bの後側にバッフルプレート44が設けられている。バッフルプレート44は、段落ち面38aに連続して設けられ、所定の左右方向における幅を有して上下方向に延びており、燃料タンク30内のうち隆起部36の左側の領域を前後方向に隔てる。
【0051】
[燃料ポンプ]
図3に示すように、燃料ポンプ16は、上下方向に延びる円筒状のポンプ本体16aと、この下端部に設けられたフランジ部16bとを有している。
図5を併せて参照して、燃料ポンプ16は、ポンプ本体16aがポンプ開口38bに下方から挿通されると共に、フランジ部16bがポンプ取付面部38に下方から締着されている。
【0052】
上述したように、ポンプ開口38bの後側には、バッフルプレート44が設けられている。バッフルプレート44によって、制動時において燃料タンク30内を前方に移動した燃料をバッフルプレート44の前側に保持しやすく、さらに加速時において燃料ポンプ16の周辺に貯留された燃料の後方への移動を抑制しやすい。よって、燃料タンク30内に貯留された燃料をバッフルプレート44によってポンプ取付面部38上に貯めやすい。
【0053】
上述したように、ポンプ取付面部38は非取付面部37及びキャニスタ取付面部39より下方に位置しているので、ポンプ取付面部38には燃料が集まりやすい。したがって、燃料ポンプ16は、燃料タンク30のうち最下面に設けられており、燃料が溜まりやすいポンプ取付面部38に取り付けられているので、燃料が効率的に導入される。
【0054】
[キャニスタ]
図3及び
図4に示すように、キャニスタ50は、燃料タンク30内で蒸発して生じる蒸発燃料を吸着する吸着材51を内部に備えた樹脂製のキャニスタケース52を有している。キャニスタケース52は、長手方向が設定される長尺状に形成されており、該長手方向を前後方向に向けた姿勢で、キャニスタブラケット60を介して、タンク底板32のキャニスタ取付面部39の下側に支持されている。キャニスタ50は、前後方向に直交する断面形状が、上下方向の寸法が左右方向の寸法より短い矩形状に構成されており、略一様断面で前後方向に延びている。
【0055】
キャニスタケース52の後端面52aには、燃料タンク30から蒸発燃料が導入されるキャニスタ入口部53と、キャニスタから蒸発燃料が排出されるキャニスタ出口部54とが設けられている。キャニスタ入口部53及びキャニスタ出口部54は、後端面52aを前後方向に貫通して後方へ延びるニップルにより構成されている。
図4に示すように、キャニスタ入口部53は、タンク側蒸発燃料出口41にキャニスタ入口配管55を介して接続されており、燃料タンク30内で生じた蒸発燃料が導入されるようになっている。キャニスタ入口配管55は耐油性及び耐熱性を有するホースにより構成されている。
【0056】
キャニスタ50の前部には、キャニスタ50からエンジン20への蒸発燃料の流動を制御するパージバルブ70が設けられている。パージバルブ70は、バルブブラケット71を介して、キャニスタブラケット60に固定されている。
【0057】
バルブブラケット71は、側面視前方に開口したコ字状断面に形成されており、上下方向に延びておりキャニスタブラケット60に取り付けられる基部71aと、基部71aの上縁部から屈曲して前方に延びる上面部71bと、基部71aの下縁部から屈曲して前方に延びる下面部71cとを有している。上面部71bには、パージバルブ70が下方から締着されている。下面部71cには、後述するキャッチトレー80が締着されている。
【0058】
図6は、キャニスタ50の周辺を下方から見た斜視図である。
図6を併せて参照して、パージバルブ70は、後方に向かって下方に傾斜した方向に突出する、バルブ入口部72(
図4参照)とバルブ出口部73(
図6参照)とを有している。バルブ入口部72及びバルブ出口部73は、ニップルにより構成されている。パージバルブ70は、制御装置(不図示)によってバルブ入口部72とバルブ出口部73との間の連通が制御される電磁弁として構成されている。
【0059】
バルブ入口部72は、キャニスタ出口部54にキャニスタ出口配管56を介して接続されており、キャニスタケース52に貯留された蒸発燃料が導入されるようになっている。バルブ出口部73は、スロットルボディの下流側に位置する吸気管27(
図1参照)にパージ配管74を介して接続されている。キャニスタ出口配管56及びパージ配管74は、キャニスタ50の下側において、車幅方向に並んで前後方向に延びている。
【0060】
したがって、エンジン20の作動時において吸気管27内に負圧が生じているときに、制御装置がパージバルブ70を開弁制御することによって、バルブ入口部72とバルブ出口部73とが連通する。これによって、燃料タンク30から排出されてキャニスタ50内に吸着された蒸発燃料が、パージバルブ70を介して吸気管27に吸い込まれて、エンジン20の燃焼室に導入されて燃焼されるので、大気中への蒸散が抑制されている。
【0061】
図6に示すように、キャニスタケース52の底面52bには、上下方向に貫通した大気開放口52cが形成されている。大気開放口52cには、キャニスタケース52に貯留された蒸発燃料のうち、液化してなる液化燃料が、所定量を超えて溜まった場合に、外部へ放出されるようになっている。大気開放口52cは、車両に搭載された状態で、シリンダヘッド23の上方後側より且つ排気管24の後方、すなわち排気管24の直上を避けた位置に設けられている。
【0062】
キャニスタケース52の下方には、キャニスタケース52の大気開放口52cに対向位置しており、ここから漏出した燃料が滴下するキャッチトレー80が設けられている。
【0063】
[キャニスタブラケット]
図5に示すように、キャニスタブラケット60は、タンク底板32のキャニスタ取付面部39に固着された平面視矩形状の基部61と、基部61の前縁部から屈曲されて下方に延びる前面部62と、基部61の後縁部から屈曲されて下方に延びる後面部63と、基部61の左右両縁部それぞれにおいて屈曲されて下方に延びる左右一対の側面部64とを一体的に有している。
【0064】
前面部62には、バルブブラケット71の基部71aが前側から締着されるようになっている。後面部63は、下端部に屈曲して後方に延びる後方延在部63aを備えている。後方延在部63aに下側からキャッチトレー80が締着されるようになっている。左右一対の側面部64はそれぞれ、前後一対に設けられており、下端部が外側へU字状に湾曲されたフック部64aが形成されている。
【0065】
図3に示すように、フック部64aには、リング65を介して弾性バンド66が取り付けられている。具体的には、弾性バンド66は、両端部において左右のフック部64aにリング65を介して取り付けられた一対の連結部66aと、両連結部66aの間を長手方向に延びておりこれらを接続する左右延在部66bとを有している。弾性バンド66は、左右延在部66bにおいてキャニスタ50の底面52bを下方から上方へ弾性的に支持している。これによって、キャニスタ50は、基部61を介して、キャニスタ取付面部39の下側に弾性バンド66により係止されている。
【0066】
図3に示すように、キャニスタブラケット60は、ここに係止されるキャニスタ50に対して、左右の側面部64が側面52dに若干の隙間を介して対向している。また、
図4に示すように、キャニスタブラケット60は、前面部62が前端面52eに若干の隙間を介して対向しており、後面部63が後端面52aに若干の隙間を介して対向している。これによって、キャニスタ50が、キャニスタブラケット60に対して、前後方向及び左右方向に位置決めされている。よって、キャニスタブラケット60の前面部62、後面部63、側面部64は、キャニスタ50の前後位置及び左右位置を位置決めする位置決め壁部としても作用する。
【0067】
[キャッチトレー]
図7は、キャッチトレー80を上方から見た斜視図である。キャッチトレー80は、樹脂製であって、上方に開口した箱状に構成されている。キャッチトレー80は、キャニスタ50の下方において水平に延びる底面部81と、底面部81の前縁部から上方に延びる前面部82と、底面部81の後縁部から上方に延びる後面部83と、底面部81の右縁部から上方に延びる右側面部84と、底面部81の左縁部から上方に延びる左側面部85とを有している。
【0068】
底面部81は、前後方向に長い矩形状に形成されている。キャッチトレー80は上下方向における高さが左右方向における幅よりも短く、左右方向における幅は前後方向における長さよりも短い。
【0069】
図2に示すように、底面部81は、少なくともキャニスタ50の全体に対して下方から対向して位置しており、キャニスタ50よりも一回り大きい。
図4に示すように、前面部82及び後面部83は、キャニスタ50に対して前後方向に対向して位置している。また、右側面部84は、キャニスタに対して右側から対向して位置している。
【0070】
図6を併せて参照して、底面部81の後側右側部には、キャニスタ出口配管56及びパージ配管74を支持する配管支持部86が、下方に突出するように一体的に形成されている。配管支持部86は、後面視L字状に形成されたL字状規制部86aと、L字状規制部86aの前後に離間して位置しており底面部81から下方に延びる前後一対の側方規制部86b(
図4参照)とを有している。
【0071】
キャニスタ出口配管56及びパージ配管74は、上下方向において、底面部81と、L字状規制部86aのうち左右方向に延在する部分との間に位置しており、左右方向においてL字状規制部86aのうち上下方向に延在する部分と側方規制部86bとの間に位置している。したがって、キャニスタ出口配管56及びパージ配管74は、キャニスタ50の下方において、底面部81と配管支持部86とによって、上下方向及び左右方向における位置が規制されている。
【0072】
前面部82の左端部には、上縁部から前方に延びる前方延在部82aが一体的に形成されている。後面部83の右端部には、上端部から後方に延びる後方延在部83aが一体的に形成されている。キャッチトレー80は、対角状に設けられた前方延在部82a及び後方延在部83aを介して、バルブブラケット71の下面部71c及びキャニスタブラケット60の後方延在部63aそれぞれに対して、下方から締着されている。したがって、別途部材を設けることなく、キャッチトレー80をキャニスタブラケット60及びバルブブラケット71を利用して取り付けることができる。
【0073】
図6に示すように、底面部81の左側部には、下方に溝状に凹設されて前後方向に延びる溝部87が一体的に形成されている。溝部87は、上方に開口したU字状に形成されており、底面部81の前後方向にわたって形成されている。溝部87は後方に向かって下方に傾斜した方向に延びており、後端部が、前後方向において、エンジン20の上方後側より且つ排気管24の後方、すなわち排気管24の直上を避けた位置に位置している。
【0074】
なお、
図4に示す車両側面視で、キャニスタ50、キャニスタ入口配管55、キャニスタ出口配管56、パージバルブ70、パージ配管74のうち少なくとも前半部分、キャニスタブラケット60、バルブブラケット71、及びキャッチトレー80は全て、タンク側部43の下縁部(
図4において2点鎖線で示している)よりも上方に位置している。換言すれば、これらのキャニスタ50に関連する部材が全て、側方から燃料タンク30(タンク側部43)により覆われている。
【0075】
[燃料タンク内で生じた蒸発燃料について]
燃料タンク30内で生じた蒸発燃料は、まず燃料タンクの頂部に位置する気相部34に溜まる。次いで、蒸発燃料は、気相部34からタンク側蒸発燃料排出配管45を介して、タンク側蒸発燃料出口41を通して燃料タンク30から排出される。燃料タンク30から排出された蒸発燃料は、キャニスタ入口配管55を介して、キャニスタ50のキャニスタ入口部53に導入される。
【0076】
キャニスタ入口部53からキャニスタ50に導入された蒸発燃料は、吸着材51に吸着されてキャニスタ50内に貯留される。エンジン20が作動中であって吸気管27が負圧となる状態でパージバルブ70が制御装置(不図示)によって開弁制御される。この結果、キャニスタ50内に吸着されて貯留されている蒸発燃料がキャニスタ出口配管56を介してパージバルブ70のバルブ入口部72に導入されると共に、バルブ出口部73から排出されてパージ配管74を介して吸気管27に導入される。
【0077】
吸気管27に導入された蒸発燃料は、エンジン20の吸気ポートから燃焼室に吸い込まれて燃焼される。これによって、燃料タンク30で生じた蒸発燃料の大気中への蒸散が防止されるようになっている。
【0078】
また、キャニスタ50に貯留された蒸発燃料のうち液化した燃料が、所定量を超えて溜まった場合に、キャニスタ50の底面52bに形成された大気開放口52cを介して下方へ漏出するようになっている。キャニスタ50から漏出した燃料は、下方に位置するキャッチトレー80の底面部81に滴下し、その後、溝部87に至ると共に、溝部87に沿って後方に案内されて最終的に、溝部87の後端面から下方に滴下する。
【0079】
溝部87の後端面は、エンジン20の上方後側より且つ排気管24の後方、すなわち排気管24の直上を避けた位置に位置しているので、滴下した燃料の排気管24への付着が防止されている。
【0080】
以上説明した鞍乗型車両によれば、以下の効果を発揮できる。
【0081】
(1)キャニスタ50は、燃料タンク30に沿って前後方向に延びているので、キャニスタ50の上下方向における寸法が小さく構成され、燃料タンク30の下側に配置しやすい。これによって、タンク底板32を、キャニスタ50を搭載するために上方へ底上げする底上げ量が低減するので、タンク底板32の成形が容易化される。この結果、燃料タンク30の製造コストを低減できる。
【0082】
また、キャニスタ50を燃料タンク30に近接して配置できるので、燃料タンク30とキャニスタ50とを接続するキャニスタ入口配管55を短く構成できる。これによって、耐油性、耐熱性が要求されるため高価になりがちなキャニスタ入口配管55のコストを低減できる。
【0083】
さらに、車両側面視で、キャニスタ50は燃料タンク30により覆われているので、別途部材を設けることなくキャニスタ50を燃料タンク30により保護できる。よって、コスト増大を抑制しつつ、キャニスタ50の搭載性を向上させることができる。また、キャニスタを側方から覆うための意匠部品を新たに設ける必要がなく、部品点数の削減が計れる。
【0084】
なお、キャニスタ50は、前後方向に直交する断面形状が、上下寸法に対して、車幅方向寸法が大きい矩形状に形成されている。さらに、キャニスタ50の車幅方向内側面が、キャニスタ取付面部39よりも隆起部36側に突出している。これによって、キャニスタ50の搭載領域を形成するべく、タンク底板32のキャニスタ取付面部39を上方に底上げする底上げ量が低減されるので、燃料タンク30の下方にキャニスタ50を搭載したことによる、燃料タンク30のタンク容量の減少を抑制しやすい。
【0085】
(2)車両側面視で、キャニスタ50は、隆起部36の上面36aよりも低く、全体が隆起部36に対してオーバーラップして配置されている。換言すれば、キャニスタ50は、隆起部36のうち、キャニスタ50の上下幅よりも高い領域に配置されている。これによって、キャニスタ50を配置するためにタンク底板32に上方へ底上げされたキャニスタ取付面部39を形成しつつも、キャニスタ取付面部39の影響を抑制しつつ、燃料を、燃料タンク30の後方部で隆起部36を跨いで車幅方向反対側へ流れやすくして燃料ポンプ16へ導きやすい。
【0086】
(3)平面視で、キャニスタ50の少なくとも一部が燃料タンク30の外板膨出部31aに位置しているので、キャニスタ50を、燃料タンク30にオーバーラップするように配置しやすい。
【0087】
(4)キャニスタ50の後端面52aにキャニスタ入口部53及びキャニスタ出口部54が設けられているので、これら出入口部53,54に接続されるキャニスタ入口配管55及びキャニスタ出口配管56を、燃料タンク30に沿って前後方向に配索しやすい。これによって、キャニスタ入口配管55及びキャニスタ出口配管56を、平面視で燃料タンク30から車幅方向外側に露出することを抑制しつつ、燃料タンク30の底部に配索しやすい。また、キャニスタ入口配管55及びキャニスタ出口配管56を、上下方向において、キャニスタ50と燃料タンク30との間に配索する必要がないので、タンク底板32の底上げ量を低減できる。
【0088】
(5)パージバルブ70がキャニスタ50の前側に隣接して配置しており、互いに近接させて配置できるので、キャニスタ50とパージバルブ70とを接続するキャニスタ出口配管56が短く構成される。これによって、耐油性、耐熱性等が要求されるため高価になりがちなキャニスタ出口配管56のコストを低減できる。さらに、パージバルブ70はタンク側部43の下縁よりも上方に位置しているので、別途部材を設けることなく、パージバルブ70を、燃料タンク30によって保護できる。
【0089】
(6)キャニスタ50から大気開放口52cを介して漏出した燃料を、キャッチトレー80で受け止めると共に、溝部87を介して、キャニスタ50の配置によらずに車両に予め設定された排出位置に導くことができるので、キャニスタ50の配置の自由度を向上できる。すなわち、キャッチトレー80が設けられることで、燃料がキャニスタから漏出したとしても、滴下位置をキャニスタが取り付けられた位置とは異なる位置に設定することができるので、美観を損なう部分への燃料の滴下を防ぐことができる。
【0090】
(7)キャッチトレー80には配管支持部86が設けられているので、別途部材を設けることなく、キャニスタ出口配管56及びパージ配管74をキャッチトレー80に支持できる。
【0091】
(8)キャニスタ50は、タンク底板32に取り付けられたキャニスタブラケット60を介して弾性バンド66により形成されているので、キャニスタ50を、燃料タンク30との干渉を回避させつつ、燃料タンク30の下側に隣接させて弾性支持できる。
【0092】
(9)燃料ポンプ16は、燃料タンク30のうち隆起部36を挟んだ左側に配置されている。一方、サイドスタンド14は、自動二輪車1の駐車状態で、車体を左側に傾斜させて支持するようになっている。したがって、車体をサイドスタンド14により左側に傾斜した状態で支持させた駐車状態で、燃料ポンプ16は車幅方向のうち傾斜した側に位置することになる。これよって、鞍型に構成された燃料タンク30であっても、駐車状態において燃料を燃料ポンプ16側に導きやすい。
【0093】
(10)パージバルブ70が、キャニスタ50の前方に配置されているので、パージバルブ70がキャニスタ50の後方に配置される場合に比して、パージバルブ70を、後方に向かって下方に傾斜している隆起部36の上面36aよりも下方に配設しやすい。また、タンク底板32のキャニスタ50の後方に、パージバルブ70を配設するための空間を形成する必要がないので、キャニスタ50の後方におけるタンク底板32の底上げを抑制して、燃料ポンプ16へ燃料を導入させやすい。
【0094】
(11)キャニスタ50は、キャッチトレー80によって下方から覆われているので、キャニスタ50が外観上目立ち難い。よって、キャニスタ50を搭載したことによる車両の美観性の低下が抑制される。
【0095】
(12)キャッチトレー80は、キャニスタ50の下面を覆うように配置されているので、キャニスタ50は、たとえ、弾性バンド66による係止が外れたとしてもキャッチトレー80上に受け止められてキャニスタ50の脱落が防止される。したがって、キャッチトレー80は、キャニスタ50の落下防止としても作用する。
【0096】
(13)車両側面視で、キャニスタ50、キャニスタ入口配管55、キャニスタ出口配管56、パージバルブ70、パージ配管74のうち少なくとも前半部分、キャニスタブラケット60、バルブブラケット71、及びキャッチトレー80は全て、タンク側部43の下縁部よりも上方に位置している。したがって、これらの部品が、タンク側部43によって側方から覆われているので、外観上目立ち難く美観性の悪化が抑制されると共に、別途部材を設けることを要せずにタンク側部43により保護できる。
【0097】
(14)自動二輪車1は、ネイキッドタイプであり、エンジン20を覆うカウルを備えていない。したがって、キャニスタ50の周囲へ走行風を導入させやすい。これによって、キャニスタ50の温度上昇を抑制できる。
【0098】
(15)燃料タンク30は、タンク底板32の底壁部32bにおいて、非取付面37よりもキャニスタ取付面39が情報に位置している。これによって、キャニスタ50の下端が、燃料タンク30の下端から下方に露出することを防止しやすい。また、ポンプ取付面38は、キャニスタ取付面39よりも下方に位置している。これによって、キャニスタ50を燃料タンク30の下側に配置するにあたって、燃料充填可能量の低下を抑制できる。
【0099】
(16)キャニスタ50は、上面が矩形状に形成されており、タンク底板32のキャニスタ取付面39に対して平行に延びている。これによって、キャニスタ50の上面とキャニスタ取付面39との間の隙間を、全面にわたって小さく形成しやすい。
【0100】
(17)キャニスタ50は、タンク外板31のうちで車幅方向に最も大きくなる部分に配置されている。これによって、キャニスタ50を、車幅方向外側に寄せて配置しやすい。同様に、キャニスタ50は、タンク外板31のうちで曲率半径が最も大きくなる部分に配置されているので、キャニスタ50をタンク外板31に近接させて配置したうえで、キャニスタ50とタンク外板31との間にできる車幅方向の隙間を小さくしやすい。
【0101】
(18)キャニスタ50は長手方向が前後方向に沿うように配置されている。これによって、タンク底板32の絞り量(底板周縁部32aから底板部32bの上下方向寸法差)を抑えることができるので、燃料タンク30として形成しやすくすることができる。
【0102】
燃料タンク30のタンク底板32に、キャニスタ50及びパージバルブ70用のキャニスタブラケット60を固定することで、上側フレーム部材11からブラケットを延設する場合に比べて、構造を単純化することができるとともに美観が向上する。
【0103】
上記実施形態では、パージバルブ70がキャニスタ50の前方に配置されている場合を例にとって説明したが、これに限らない。すなわち、パージバルブ70がキャニスタ50の後方に配置されていてもよい。この場合、キャニスタ出口配管56を、キャニスタ50を前後方向に横断するように配索する必要がなく短縮でき、キャニスタ出口配管56のコストを低減できる。
【0104】
また、上記実施形態では、キャニスタ50の後端面52aにキャニスタ入口部53及びキャニスタ出口部54を設けた場合を例にとって説明したが、これに限らない。すなわち、キャニスタ50の前端面に、キャニスタ入口部53及びキャニスタ出口部54を設けてもよい。
【0105】
また、上記実施形態では、キャニスタ50は、弾性バンド66を介してキャニスタブラケット60に係止されている場合を例にとって説明したが、これに限らない。すなわち、キャニスタ50の固定方法として任意の方法を採用することができ、例えば燃料タンクに締着してもよく、このほかキャッチトレー80により支持するようにしてもよい。
【0106】
また、上記実施形態では、燃料ポンプ16は、ポンプ本体16aが燃料タンク30に対して下方から差し込まれる場合を例にとって説明したが、これに限らない。すなわち、ポンプ本体16aが燃料タンク30の外部に設けられてもよく、この場合でも、燃料ポンプ16は、隆起部36を挟んでキャニスタ50とは反対側に配置される。
【0107】
また、上記実施形態では、上側フレーム部材11の左側に燃料ポンプ16が配置され、右側にキャニスタ50が配置されている場合を例にとって説明したが、これに限らない。すなわち、上側フレーム部材11の左側にキャニスタ50を配置し、右側に燃料ポンプ16を配置してもよい。
【0108】
また、上記実施形態では、ネイキッドタイプの自動二輪車を例にとって説明したが、これに限らない。すなわち、レーサータイプ、モトクロスタイプ、アメリカンタイプ、クルーザータイプ等の、フルカウル又はハーフカウルを備えた鞍乗型車両にも適用することができる。
【0109】
また、上記実施形態では、燃料タンク30の下方に上側フレーム部材11が配置される場合を例にとって説明したが、これに限らない。すなわち、燃料タンクの下方に上側フレーム部材11が通過しないフレームの鞍乗型車両にも適用することができる。
【0110】
なお、本発明は、以上の実施形態に示すものに限らず、特許請求の範囲に記載された本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、各種変形及び変更を行うことも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0111】
以上のように、本発明に係る鞍乗り型車両によれば、コスト増大を抑制しつつキャニスタの搭載性を向上させることができるので、この種の製造技術分野において好適に実施される可能性がある。
【符号の説明】
【0112】
1 自動二輪車
11 上側フレーム部材
16 燃料ポンプ
20 エンジン
30 燃料タンク
36 隆起部
41 タンク側蒸発燃料出口
50 キャニスタ
60 キャニスタブラケット
66 弾性バンド
70 パージバルブ
71 バルブブラケット
74 パージ配管
80 キャッチトレー