(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-24
(45)【発行日】2023-04-03
(54)【発明の名称】保持装置および保持方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20230327BHJP
B23Q 3/08 20060101ALN20230327BHJP
【FI】
H01L21/68 P
H01L21/68 N
H01L21/68 R
B23Q3/08 A
(21)【出願番号】P 2018213534
(22)【出願日】2018-11-14
【審査請求日】2021-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 孝之
【審査官】三浦 みちる
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-226607(JP,A)
【文献】特開2012-238847(JP,A)
【文献】特開平10-128634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
B23Q 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持対象物を保持可能な保持面に保持部を有する複数の保持手段と、
前記複数の保持手段を相対移動させる移動手段とを備え、
前記複数の保持手段は、互いの保持面が隣接するように配置され、
前記移動手段は、前記保持手段の向きを
保持面同士が隣接するように保持面内で変更して保持対象物に対する前記保持部の位置を変更することを特徴とする保持装置。
【請求項2】
保持対象物を保持可能な保持面に保持部を有する複数の保持手段と、
前記複数の保持手段を相対移動させる移動手段とを備えた保持装置で保持対象物を保持する保持方法であって、
前記複数の保持手段は、互いの保持面が隣接するように配置され、
前記移動手段で前記保持手段の向きを
保持面同士が隣接するように保持面内で変更して保持対象物に対する前記保持部の位置を変更することを特徴とする保持方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持装置および保持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被保持面の形状が異なる保持対象物を選択的に保持可能な保持面を有する保持装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたチャックテーブル1(保持装置)は、保持面に複数の吸引部2、3a、3b、4(保持部)を有する1つの枠体10(保持手段)で保持対象物を保持するので、吸引力(保持力)を付与する保持部の数が保持対象物の被保持面の形状に応じて多くなり、保持力を付与するためのエネルギー消費が増加するという不都合がある。
【0005】
本発明の目的は、被保持面の形状が異なる保持対象物を選択的に保持することができ、保持力を付与するためのエネルギー消費が増加することを抑制することができる保持装置および保持方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、請求項に記載した構成を採用した。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、保持手段の向きを保持面内で変更して保持対象物に対する保持部の位置を変更するので、保持力を付与する保持部の数が保持対象物の被保持面の形状に応じて多くなることを防止して、被保持面の形状が異なる保持対象物を選択的に保持することができ、保持力を付与するためのエネルギー消費が増加することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る保持装置の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、本実施形態におけるX軸、Y軸、Z軸は、それぞれが直交する関係にあり、X軸およびY軸は、所定平面内の軸とし、Z軸は、前記所定平面に直交する軸とする。さらに、本実施形態では、Y軸と平行な
図1の手前方向から観た場合を基準とし、方向を示した場合、「上」がZ軸の矢印方向で「下」がその逆方向、「左」がX軸の矢印方向で「右」がその逆方向、「前」がY軸と平行な
図1中手前方向で「後」がその逆方向とする。
【0010】
図1において、保持装置EAは、保持対象物を保持可能な保持面12に保持部11を有する2つの保持手段10と、2つの保持手段10を相対移動させる移動手段20とを備えている。
【0011】
保持手段10は、保持面12を有するテーブル13と、配管14Aを介して保持部11に接続された減圧ポンプや真空エジェクタ等の減圧手段14とを備え、円形状の被保持面を有する保持対象物としての半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」ともいう)WF1と、ウエハWF1の直径と同じ長さの1辺を有する正方形状の被保持面を有する保持対象物としての基板WF2とを、保持面12で選択的に保持可能になっている。
保持部11は、半円形状の円弧部11Aと、円弧部11Aの端部を結ぶ1つの直線部11Bとを備え、ウエハWF1を2分割した形状とされている。
【0012】
移動手段20は、複数の駆動機器としての直動モータ21と、各直動モータ21の出力軸21Aに支持され、出力軸22Aでテーブル13をそれぞれ支持する複数の駆動機器としての回動モータ22とを備えている。
【0013】
以上の保持装置EAの動作を説明する。
先ず、
図1(A)、(B)中実線で示す初期位置に各部材が配置された保持装置EAにおいて、ウエハWF1を保持面12で保持するときは、保持装置EAの使用者(以下、単に「使用者」という)または、多関節ロボットやベルトコンベア等の図示しない搬送手段が、同図中二点鎖線で示すように、ウエハWF1を保持面12上の所定の位置に載置する。すると、保持手段10が減圧手段14を駆動し、保持部11でのウエハWF1の吸着保持を開始する。この際、ウエハWF1の被保持面の円周部を保持部11で吸着保持することができる。
【0014】
次いで、ウエハWF1に接着シートを貼付するシート貼付手段やウエハWF1から接着シートを剥離するシート剥離手段等の図示しない処理手段によって、ウエハWF1に所定の処理が施されると、保持手段10が減圧手段14の駆動を停止し、保持部11でのウエハWF1の吸着保持を解除する。その後、使用者または図示しない搬送手段がウエハWF1を次工程に搬送し、以降上記同様の動作が繰り返される。
【0015】
一方、基板WF2を保持面12で保持するときは、移動手段20が直動モータ21および回動モータ22を駆動し、
図1(B)中二点鎖線で示すように、一方のテーブル13を上昇させて180度回転させた後、当該一方のテーブル13を下降させる。次いで、移動手段20が直動モータ21および回動モータ22を駆動し、上記と同様の要領で他方のテーブル13を上昇させて180度回転させた後、当該他方のテーブル13を下降させ、
図1(C)に示すように、円弧部11A同士を対向させた状態にする。これにより、移動手段20は、保持手段10の向きを保持面12内で変更して保持対象物に対する保持部11の位置を変更する。
【0016】
そして、使用者または図示しない搬送手段が、
図1(C)中二点鎖線で示すように、基板WF2を保持面12上の所定の位置に載置すると、保持手段10が減圧手段14を駆動し、保持部11での基板WF2の吸着保持を開始する。この際、基板WF2の被保持面の角部を保持部11で吸着保持することができる。次いで、図示しない処理手段によって基板WF2に所定の処理が施されると、保持手段10が減圧手段14の駆動を停止し、保持面12でのウエハWF1の吸着保持を解除する。その後、使用者または図示しない搬送手段が基板WF2を次工程に搬送し、以降上記同様の動作が繰り返される。
【0017】
以上のような実施形態によれば、保持手段10の向きを保持面12内で変更して保持対象物に対する保持部11の位置を変更するので、保持力を付与する保持部11の数が保持対象物の被保持面の形状に応じて多くなることを防止して、被保持面の形状が異なるウエハWF1および基板WF2を選択的に保持することができ、保持力を付与するためのエネルギー消費が増加することを抑制することができる。
【0018】
以上のように、本発明を実施するための最良の構成、方法等は、前記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。また、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれる。
【0019】
例えば、保持装置EAは、
図2(A)に示すように、4つの保持手段10Aを有する構成でもよく、保持手段10Aは、保持部15が設けられたテーブル13Aを有し、保持部15は、4分の1の円形状の円弧部15Aと、一方の端部が円弧部15Aに連接し、他方の端部同士が結合した2つの直線部15Bとを備え、ウエハWF1を4分割した形状とされている。保持手段10Aで基板WF2を保持するときは、移動手段20が、
図2(B)に示すように、4つのテーブル13Aのそれぞれを180度回転させてもよいし、
図2(C)に示すように、2つのテーブル13Aを180度回転させ、2つのテーブル13Aを90度回転させてもよいし、1つまたは3つのテーブル13Aを180度回転させ、残りのテーブル13Aを90度回転させてもよい。
保持装置EAは、
図2(D)に示すように、1つの保持手段10と、2つの保持手段10Aとを有する構成でもよい。保持手段10、10Aで基板WF2を保持するときは、移動手段20が、テーブル13、13Aをそれぞれ180度回転させてもよいし、テーブル13を180度回転させ、テーブル13Aを90度回転させてもよい。
保持装置EAは、
図2(E)、(F)に示すように、テーブル13Bの三角形状の保持面12Bに半円形状の保持部11を有する2つの保持手段10Bを備え、ウエハWF1や平行四辺形状の被保持面を有する図示しない保持対象物を選択的に保持する構成であってもよい。
保持装置EAは、
図3(A)、(B)に示すように、テーブル13Bの三角形状の保持面12Bに円形状の保持部16を有する2つの保持手段10Cで、長さの異なる長方形状の被保持面を有する保持対象物WF3、WF4を選択的に保持するものであってもよいし、
図3(C)、(D)に示すように、テーブル13の長方形状の保持面12に長方形状の保持部17を有する2つの保持手段10Dで、円形状の被保持面を有する保持対象物WF5と、環状の被保持面を有する保持対象物WF6とを選択的に保持するものであってもよい。
保持装置EAは、保護対象物を研磨する研磨装置や研削する研削装置、保護対象物に接着シートを貼付するシート貼付装置、保持対象物に貼付された接着シートを保持対象物から剥離するシート剥離装置、保持対象物を位置決めする位置決め装置、保持対象物に紫外線や熱等のエネルギー線を照射する照射装置等に採用されてもよい。
【0020】
保持手段10、10Aは、
図3(E)に示すように、保持部11が設けられた半円形状のテーブル13Cを採用してもよいし、
図3(F)に示すように、保持部15が設けられた4分の1の円形状のテーブル13Dを採用してもよく、保持面12が保持部11、15を含む大きさであれば、円形状、三角形状等の任意の形状のテーブル13、13Aを採用してもよい。
保持手段10、10A、10Bは、ウエハWF1にオリエンテーションフラットやノッチが設けられている場合のように、切欠部を有する保持対象物を保持する場合、保持部11、15を保持対象物の外形に沿った形状の第1保持部と、当該第1保持部に連接する第2保持部とに区画する区画部を備えていてもよい。
保持手段10、10A、10B、10C、10Dは、クーロン力、接着剤、粘着剤、磁力、ベルヌーイ吸着等で保持力を付与してもよく、この場合、各保持部11、15、16、17に電極、接着剤、粘着剤、磁石、吸引孔等を設けてもよい。
減圧手段14は、複数の保持手段10、10A、10B、10C、10Dで共用されてもよいし、保持手段10、10A、10B、10C、10Dごとに独立して設けられてもよい。
【0021】
移動手段20は、テーブル13、13A、13B、13C、13Dを上昇させた状態で、他のテーブル13、13A、13B、13C、13Dを上昇させずに回転させてもよい。
移動手段20は、
図3(G)に示すように、複数の回動モータ22と、各回動モータ22を別々のスライダ23Aで支持する駆動機器としてのリニアモータ23とを備え、リニアモータ23でテーブル13を左右方向に移動させてから、回動モータ22でテーブル13を回転させてもよい。
【0022】
接着シートおよび保持対象物の材質、種別、形状等は、特に限定されることはない。例えば、接着シートは、円形、楕円形、三角形や四角形等の多角形、その他の形状であってもよいし、感圧接着性、感熱接着性等の接着形態のものであってもよく、感熱接着性の接着シートが採用された場合は、当該接着シートを加熱する適宜なコイルヒータやヒートパイプ等の加熱側等の加熱手段を設けるといった適宜な方法で接着されればよい。また、このような接着シートは、例えば、接着剤層だけの単層のもの、基材シートと接着剤層との間に中間層を有するもの、基材シートの上面にカバー層を有する等3層以上のもの、更には、基材シートを接着剤層から剥離することのできる所謂両面接着シートのようなものであってもよく、両面接着シートは、単層又は複層の中間層を有するものや、中間層のない単層又は複層のものであってよい。また、保持対象物としては、例えば、食品、樹脂容器、シリコン半導体ウエハや化合物半導体ウエハ等の半導体ウエハ、回路基板、光ディスク等の情報記録基板、ガラス板、鋼板、陶器、木板または樹脂板等、任意の形態の部材や物品なども対象とすることができる。なお、接着シートを機能的、用途的な読み方に換え、例えば、情報記載用ラベル、装飾用ラベル、保護シート、ダイシングテープ、ダイアタッチフィルム、ダイボンディングテープ、記録層形成樹脂シート等の任意の形状の任意のシート、フィルム、テープ等を前述のような任意の保持対象物に貼付することができる。
【0023】
本発明における手段および工程は、それら手段および工程について説明した動作、機能または工程を果たすことができる限りなんら限定されることはなく、まして、前記実施形態で示した単なる一実施形態の構成物や工程に全く限定されることはない。例えば、保持手段は、保持対象物を保持可能な保持面に保持部を有するものであれば、出願当初の技術常識に照らし合わせ、その技術範囲内のものであればなんら限定されることはない(他の手段および工程についての説明は省略する)。
また、前記実施形態における駆動機器は、回動モータ、直動モータ、リニアモータ、単軸ロボット、多関節ロボット等の電動機器、エアシリンダ、油圧シリンダ、ロッドレスシリンダおよびロータリシリンダ等のアクチュエータ等を採用することができる上、それらを直接的又は間接的に組み合せたものを採用することもできる(実施形態で例示したものと重複するものもある)。
【符号の説明】
【0024】
EA…保持装置
10、10A、10B、10C、10D…保持手段
11、15、16、17…保持部
11A、15A…円弧部
11B、15B…直線部
12…保持面
20…移動手段
WF1…ウエハ(保持対象物)
WF2…基板(保持対象物)