(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-24
(45)【発行日】2023-04-03
(54)【発明の名称】心臓表面のコンピュータモデルのマーキング
(51)【国際特許分類】
A61B 5/339 20210101AFI20230327BHJP
A61B 5/287 20210101ALI20230327BHJP
A61B 5/347 20210101ALI20230327BHJP
A61B 5/367 20210101ALI20230327BHJP
【FI】
A61B5/339
A61B5/287 200
A61B5/347
A61B5/367 100
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018237016
(22)【出願日】2018-12-19
【審査請求日】2021-11-19
(32)【優先日】2017-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】タミル・アブラハム・イェリン
(72)【発明者】
【氏名】ロイ・ウルマン
【審査官】磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0098055(US,A1)
【文献】特表2012-508079(JP,A)
【文献】WILSON, K. et al.,Mapping of Cardiac Electrophysiology Onto a Dynamic Patient-Specific Heart Model,IEEE Transactions on Medical Imaging,2009年,Vol.28, No.12,pp.1870-1880,DOI:10.1109/TMI.2009.2021429
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/24-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
電気的インタフェースと、
プロセッサであって、
前記電気的インタフェースを介して、対象の心臓内の電極からの心電図信号を受信することと、
前記心臓の表面のコンピュータモデルの座標系における前記電極の位置を確定することと、
前記
電極の確定位置に応答可能に前記モデルの部分を選択することであって
、選択部分には、前記モデルの他の非選択部分が組み入れられるようにする、ことと、
前記非選択部分ではなく前記選択部分がマーキングされて、前記
心電図信号の特性を示すように前記モデルを表示することと、
を行うように構成されているプロセッサと、
を備え
、
前記プロセッサが、
前記確定位置から複数の仮想的な光線を投影することと、
前記光線が前記モデルと交差する点に応答して、前記モデルの前記部分を選択することと、
により、前記モデルの前記部分を選択するよう構成されている、システム。
【請求項2】
前記プロセッサが、前記モデルの前記部分の選択に際し、前記確定位置の前記モデルからの距離の減少関数として、前記選択部分の密度を設定するよう構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記プロセッサが、前記モデルの前記部分の選択に際し、前記確定位置の前記モデルからの距離の増加関数として、前記選択部分の分布を設定するよう構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記
心電図信号が第1の信号であり、前記電極が第1の電極であり、
前記プロセッサが、前記心臓内の第2の電極から第2の心電図信号を受信するよう更に構成されており、
前記プロセッサは、前記モデルの他の部分の少なくとも一部がマーキングされ、前記第2の
心電図信号の前記特性を示すように、前記モデルを表示するよう構成されている、
請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記特性が第1の特性であり、前記プロセッサは、前記モデルの他の部分の少なくとも一部がマーキングされ、前記
心電図信号の第2の特性を示すように、前記モデルを表示するよう構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記プロセッサが、前記モデルの前記選択部分に色が付けられて、前記特性を示すように、前記モデルを表示するよう構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記
心電図信号の前記特性が前記
心電図信号の優位周波数である、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記プロセッサが、前記モデルの前記部分の選択に際し、前記優位周波数における、前記
心電図信号の周波数帯の特徴に応答可能に前記選択部分の密度を設定するよう構成されている、請求項
7に記載のシステム。
【請求項9】
前記プロセッサが、前記モデルの前記部分の選択に際し、前記優位周波数における、前記
心電図信号の周波数帯の特徴に応答可能に前記選択部分の分布を設定するよう構成されている、請求項
7に記載のシステム。
【請求項10】
前記
心電図信号の前記特性が前記
心電図信号の周期長である、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記プロセッサは、前記選択部分の密度が、前記確定位置に最も近い前記モデル上の点からの距離に応じて低下するように、前記モデルの前記部分を選択するよう構成されている、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気解剖学的情報の表示に関する。
【背景技術】
【0002】
一部の電気解剖学的マッピング手順において、1つ又は2つ以上の電極を備えたカテーテルが、心臓内に挿入され、次に、これらの電極を使用して、心臓の表面からの心内心電図(ECG)信号を得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明のいくつかの実施形態により、電気的インタフェース及びプロセッサを含むシステムが提供される。プロセッサは、電気的インタフェースを介して、対象の心臓内の電極からの心電図信号を受信することと、心臓の表面のコンピュータモデルの座標系における電極の位置を確定することと、この確定位置に応答可能にモデルの部分を選択することであって、選択部分には、モデルの他の非選択部分が組み入れられるようにする、ことと、非選択部分ではなく選択部分がマーキングされて、信号の特性を示すようにモデルを表示することと、を行うよう、構成されている。
【0004】
一部の実施形態では、プロセッサは、
確定位置から複数の光線を投影することと、
当該光線がモデルと交差する点に応答して、モデルの当該部分を選択することと、
により、モデルの当該部分を選択するよう構成されている。
【0005】
一部の実施形態では、プロセッサは、モデルの当該部分の選択に際し、確定位置のモデルからの距離の減少関数として、選択部分の密度を設定するよう構成されている。
【0006】
一部の実施形態では、プロセッサは、モデルの当該部分の選択に際し、確定位置のモデルからの距離の増加関数として、選択部分の分布を設定するよう構成されている。
【0007】
一部の実施形態では、
信号は第1の信号であり、電極は第1の電極であり、
プロセッサは、心臓内の第2の電極から第2の心電図信号を受信するよう更に構成されており、
プロセッサは、モデルの他の部分の少なくとも一部がマーキングされ、第2の信号の特性を示すように、モデルを表示するよう構成されている。
【0008】
一部の実施形態では、特性は第1の特性であり、プロセッサは、モデルの他の部分の少なくとも一部がマーキングされ、信号の第2の特性を示すように、モデルを表示するよう構成されている。
【0009】
一部の実施形態では、プロセッサは、モデルの選択部分に色が付けられて、特性を示すように、モデルを表示するよう構成されている。
【0010】
一部の実施形態では、信号の特性は信号の優位周波数である。
【0011】
一部の実施形態では、プロセッサは、モデルの当該部分の選択に際し、優位周波数における、信号の周波数帯の特徴に応答可能に選択部分の密度を設定するよう構成されている。
【0012】
一部の実施形態では、プロセッサは、モデルの当該部分の選択に際し、優位周波数における、信号の周波数帯の特徴に応答可能に選択部分の分布を設定するよう構成されている。
【0013】
一部の実施形態では、信号の特性は信号の周期長である。
【0014】
一部の実施形態では、プロセッサは、選択部分の密度が、確定位置に最も近いモデル上の点からの距離に応じて低下するように、モデルの当該部分を選択するよう構成されている。
【0015】
本発明の一部の実施形態によれば、方法であって、プロセッサにより、対象の心臓内の電極からの心電図信号を受信することと、心臓の表面のコンピュータモデルの座標系における電極の位置を確定することと、確定位置に応答可能にモデルの部分を選択することであって、選択部分には、モデルの他の非選択部分が組み入れられるようにする、ことと、非選択部分ではなく選択部分がマーキングされて信号の特性を示すようモデルを表示することと、を含む方法が更に提供される。
【0016】
本発明は、その実施形態の以下の詳細な説明を図面と併せ読むことによって一層十分な理解がなされるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一部の実施形態による、対象の心臓の表面のコンピュータモデルを表示するためのシステムの概略図である。
【
図2】本発明の一部の実施形態による、心臓の表面のコンピュータモデルのある部分の概略図である。
【
図3】本発明の一部の実施形態による、心臓の表面のコンピュータモデルを表示する技法の概略図である。
【
図4】本発明の一部の実施形態による、心臓の表面のコンピュータモデルを表示する技法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
概説
本明細書に記載されている実施形態は、電気解剖学的情報を表示するための技法を含み、それにより、心臓の表面の解剖学的構造のコンピュータモデルは、色及び/又は他のマーキングにより「スプレー」されて、表面の電気特性を示す。これらの技法により、表面からのECG信号を得る各電極に関して、プロセッサは、表面のモデルの座標系における電極の位置を確定する。次に、プロセッサは、この位置の近傍にあるモデルの一部の部分をマーキングして、優位周波数などの、ECG信号の特性を示す。マーキングした部分の密度及び/又は分布は、信号、及び/又はその部分の位置のさまざまな特徴の、モデルからの電極の位置の距離の関数となり得る。例えば:
(i)マーキングした部分の密度は、モデルからの電極の位置の距離の減少関数となり得る。代替的又は追加的に、マーキングした部分の分布、すなわちマーキングした部分によって少なくとも部分的に網羅されるモデルの表面積の量は、この距離の増加関数となり得る。モデルからの電極の距離の関数としてマーキングした部分の密度及び/又は分布を変えることにより、プロセッサは、この距離の直観的な視覚的表示を医師に提供し、これは、ひいては、必要なECG信号の質に影響を及ぼす(質は、距離の低下につれて向上する)。
(ii)ECG信号の優位周波数を示すモデルにマーキングするとき、マーキングした部分の密度及び/又は分布は、優位周波数の信号の周波数帯の振幅及び/又は幅の増加関数となり得る。こうして、医師は、優位周波数における振幅及び/又は幅の直観的な表示の提供を受ける。
(iii)マーキングされた部分の密度は、電極の位置に最も近いモデル上の点からの距離につれて低下し得る。
【0019】
本明細書に記載されている技法は、特に、2本の電極間に位置する組織の領域を表示する一助となる。例えば、2本の電極は、それぞれ、2つの異なる優位周波数を記録する場合、モデルは、第1の電極に最も近い点における第1の色、第2の電極に最も近い点に第2の色、及び2本の電極間に相互に組み入れられる両方の色が付けられ得る。(この中間領域における1色の、他の色に対する相対的優位性は、それらの個々の優位周波数における2つの周波数帯の最近接点及び/又は個々の振幅のそれぞれからの距離などの、上記の因子のいずれかの関数とすることができる)。これにより、本開示の範囲内にはない他の仮説技法に比べると、心臓表面のより正確な表示が実現する。
【0020】
例えば、1つの仮説技法は、電極間の領域がさまざまな程度の補間で示されるよう、2種の色を補間し得る。例えば、一方の電極が12Hzを記録し、別の電極が18Hzを記録する場合、12Hzは赤色にマッピングされ得、18Hzは青色にマッピングされ得、2本の電極間の領域は、紫色のさまざまな陰影で示され得る。しかし、このような補間は、心臓表面が12Hz~18Hzの間のECG優位周波数を示すことを含むので、誤解を招くおそれがある。対照的に、本発明の実施形態は、紫色でではなく、赤色と青色の両方で中間領域を着色することができ、このことは、この領域は12Hzと18Hzの両方のECG優位周波数を示すのであって、12Hz~18Hzの間の周波数を示すものではないことを示している。
【0021】
本記載は、電気解剖学的マッピング用途に主に関するが、本明細書に記載されている技法は、表面上の別々の点で得られた測定値を、表面上で、外挿することが必要となる任意の好適な用途に使用することができることが留意される。
【0022】
システムの説明
本発明の一部の実施形態による、対象25の心臓24の表面30のコンピュータモデル22を表示するためのシステム20の概略図である、
図1を最初に参照する。
【0023】
図1は、電気解剖学的マッピング手順を実行していることを図示しており、これにより、医師27は、心臓24内のカテーテル29を操縦し、かつ、カテーテルのさまざまな位置に関して、カテーテル29の遠位端部における複数の電極32は、心臓の表面30からの心臓内ECG信号を記録する。通常、カテーテル29は、1つ又は2つ以上の位置センサ(図示せず)を装備しており、こうして、記録されたECG信号はそれぞれ、記録を行った電極32の位置と関係づけることができる。例えば、カテーテル29は、1つ又は2つ以上の電磁位置センサを備えることができ、このセンサは、外部磁場の存在下で、センサの個々の位置によって変化する信号を生成する。代替として、各電極32の位置を追跡するために、プロセッサは、電極と、対象25に外部接続された複数の電極との間のそれぞれのインピーダンスを、さまざまな異なる場所で確定し、次に、これらのインピーダンス間の比を計算することができる。更にもう1つの選択肢として、プロセッサは、その開示が参照により本明細書に組み込まれている、例えば米国特許第8,456,182号に記載されているように、電磁追跡及びインピーダンスに基づく追跡の両方を使用することができる。
【0024】
一部の実施形態では、
図1に示されているとおり、カテーテル29は、その遠位端部に、電極32のバスケット31を備えるバスケットカテーテルである。代替として、カテーテル29は、任意の好適な構成に配置された電極32を備えた、任意の他の好適な形態を有してもよい。
【0025】
システム20は、プロセッサ(PROC)28及びディスプレイ26を備える。ECG信号が得られたときに、信号は、カテーテル29及び電気的インタフェース35(ポート又はソケットなど)を経由して、プロセッサ28に流れる。プロセッサ28は、以下に詳述されているとおり、関連する電極位置情報と共に信号を使用して、モデル22をマーキングして、表面30の電気特性を表示する。マッピング手順中、及び/又はマッピング手順の後に、プロセッサ28は、ディスプレイ26上にモデル22を表示することができる。
【0026】
概して、プロセッサ28は、単一のプロセッサとして具現化されてもよく、又は連携してネットワーク化若しくはクラスター化された一組のプロセッサとして具現化されてもよい。プロセッサ28は、通常、中央処理装置(CPU)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、ハードドライブ若しくはCD ROMドライブなどの不揮発性の二次記憶装置、ネットワークインタフェース、及び/又は周辺デバイスを備えたプログラムされたデジタルコンピューティングデバイスである。ソフトウェアプログラムを含めたプログラムコード、及び/又はデータは、当分野において公知のとおり、CPUによる実行及び処理のためにRAMにロードされ、表示、出力、送信又は格納を目的に結果が生成される。プログラムコード及び/又はデータは、例えば、ネットワークを通じて電子形式でコンピュータにダウンロードされてもよく、あるいは代替的又は追加的に、磁気メモリ、光学メモリ若しくは電子メモリなどの非一過性の有形媒体上に提供及び/又は格納されてもよい。このようなプログラムコード及び/又はデータは、プロセッサに提供されると、本明細書に記載されているタスクを行うように構成された、機械若しくは専用コンピュータを生成する。
【0027】
次に、本発明の一部の実施形態による、プロセッサ28によって表示されるとおり、表面30のモデル22のある部分の概略図である、
図2を参照する。通常、モデル22は、縁部41及び頂点38に沿って互いに隣接する、任意の好適な形状(三角形状など)を有する、タイル40のテッセレーションにより、表面30の解剖学的構造特徴をモデル化している。(実際には、縁部41及び頂点38は、スクリーン上に表示されない)。
【0028】
上記のとおり、
図1を参照すると、プロセッサ28は、電気解剖学的マッピング手順の間に、電極32からECG信号を受信する。これらの信号の受信に加えて、プロセッサ28は、これらの信号のそれぞれのスペクトルを計算する、かつ/又は任意の他の好適な方法で信号を処理し、信号の(及び、こうして信号が得られた組織の)特性を確定する。例えば、プロセッサは、信号の個々の優位周波数、及び/又は信号の個々の周期長を確定することができる。次に、プロセッサは、異なる個々の色又は別のマーキングを示して、各信号の特性を表す。続いて、
図3~
図4を参照して以下に詳述されているとおり、信号の各々に対して、プロセッサは、信号を得た電極の位置に応答可能なようにモデルの部分を選択して、次に、表示されたマーキングを使用して、モデルの選択部分(しかし、いかなる非選択部分でもない)がマーキングされて特性を示すようにモデル22を表示する。
【0029】
例えば、
図2は、第1の電極から受信した第1のECG信号から得られた、第1の周波数帯34a、及び第2の電極から受信した第2のECG信号から得られた、第2の周波数帯34bを示している。プロセッサ28は、帯域34aから、第1の信号がF1の優位周波数を有することを確定し、このプロセッサは、帯域34bから、第2の信号がF2の優位周波数を有することを確定する。(請求項を含めた、本出願の文脈において、「優位周波数」は、関連周波数帯が局所最大値に到達する任意の周波数とすることができる)。したがって、プロセッサは、周波数F1を表すための第1のインジケータ36a及び周波数F2を表すための第2のインジケータ36bを選択する。続いて、プロセッサは、選択部分のそれぞれに、第1のインジケータ36a又は第2のインジケータ36bを重ねることにより、モデル22の選択部分をマーキングする。
【0030】
モデルをマーキングするために使用されるインジケータはそれぞれ、
図2に示されている記号などの任意の好適な記号、及び/又は任意の好適な文字を含むことができる。例えば、
図2に示されている記号を使用する代替として、プロセッサは、例えば、「12」を重ねることにより、モデルの各選択部分を、F1又はF2の値と重ねて、12Hzの優位周波数を示すことができる。もう1つの選択肢として、プロセッサは、周波数F1を示す第1の色、及び周波数F2を示す第2の色を表示することができ、次に、モデルの選択部分の各々が、第1の色又は第2の色のどちらかで色が付けられて、周波数F1又は周波数F2を示すようにモデルを表示する。(プロセッサは、キーを更に表示することができ、これにより、色又はインジケータの各々の意味を表示する)。
【0031】
一部の実施形態では、
図2に示されているとおり、モデル22の選択部分はそれぞれ、個々のタイル40を含む。すなわち、プロセッサは、選択したタイル40のそれぞれの上に、適切なインジケータを色付けする、及び/又は重ね合わせる。代替的又は追加的に、プロセッサは、選択された頂点の各々の上に、適切なインジケータを色付けする、及び/又は重ね合わせることにより、選択した頂点38にマーキングすることができる。
【0032】
概要において上に明記しているとおり、概して、本明細書に記載されている技法を使用して、モデルは、色及び/又は他のマーキングにより「スプレー」され、こうして、マーキングの第1のタイプによりマーキングされたモデルの部分は、マーキングの第2のタイプによりマーキングされたモデルの他の部分に組み入れることができるか、又はまったくマーキングされない。例えば、
図2は、2種のマーカーが互いに組み入れられるモデルの領域33を示している。概要において上記に明記されているとおり、このような方法でのマーカーの組み入れは、補間を使用する他の技法に比べて、組織の電気特性の一層正確な視覚的表示を提供する。
【0033】
本開示の範囲は、電極からの信号を処理することと、リアルタイムで、すなわち、データを採集している手順の間、及び/又はオフラインにして、次いでこの手順を行う間に、それに応答してモデル22にマーキングすることとを含むことが留意される。
【0034】
次に、本発明の一部の実施形態による、モデル22を表示するための技法の概略図である、
図3を参照する。
【0035】
図3の左部分は、心臓の表面30近傍に位置決めした、第1の電極32a及び第2の電極32bを備える、カテーテル29のアームを示している。第1の電極32aは、表面から第1の距離D1にある一方、第2の電極32bは、表面から第2の距離D2にあり、D2はD1より長い。これらの位置では、電極32a及び32bは、表面30からECG信号を得る。
【0036】
上記のとおり、
図1を参照すると、プロセッサ28は、モデル22の座標系中に、各電極の位置を確定する。したがって、
図3の真ん中の部分は、プロセッサにより確定された、モデル22の座標系中の、第1の電極32aの位置L1、及び第2の電極32bの位置L2を示している。
【0037】
電極の位置を確定した後、プロセッサは、
図3の真ん中の部分に更に示されているとおり、確定位置の各々から複数の光線42を投影する。例えば、球の中心として電極の位置を考えると、プロセッサは、角度(θ、φ)の各対に対する異なる個々の光線42を投影することができ、この場合、θ(球座標における極角)は、所与の段階サイズ(例えば、5度又は10度)で0~180度の間を動き、φ(球座標における方位角)は、別の所与の段階サイズ(例えば、5度又は10度)で0~360度を動き、こうして、光線42は、球形状に投影される。
【0038】
投影された光線の各組に関して、プロセッサは、光線がモデルに交差する点44に応答したモデルの部分を選択する。例えば、プロセッサは、光線の少なくとも1つによって照らされた各タイルを選択することができる。(所与のタイルが、異なる個々の電極位置から投影された2つの光線によって照らされる場合、プロセッサは、衝突の「勝者」(“winner” of the collision)として、光線の1つを無作為に選択することができる)。代替として、交差点44の各々について、プロセッサは、交差点に最も近い頂点を選択することができる。
【0039】
モデル22の関連部分の選択に続いて、プロセッサは、電極の各々について、電極用に選択されたモデルの部分がマーキングされて、電極から受信された信号が、優位周波数などの特性を示すよう、モデル22を表示する。例えば、
図3の右側の部分に示されるように、プロセッサは、電極32aの選択部分の各々が、インジケータ36aによりマーキングされ、電極32aからのECGシグナルの特性を示し、電極32bに対する選択部分の各々が、インジケータ36bによりマーキングされて、電極32bからの信号の特性を示すように、モデル22を描写することができる。(簡単にするため、モデル22の解剖学的構造の詳細は、
図3又は
図4に示されていない)。
【0040】
上記の光線による投影技法を使用した結果は、電極の各々に関して、選択された(及びマーキングされた)部分の密度は、電極の確定位置のモデルからの距離の減少関数であるということである。(この「密度」は、例えば、モデル22の表面積の単位あたり、又はディスプレイ26上の面積の単位あたりの選択部分の数として、定量化することができる)。光線投影技法の更なる結果は、選択された(及びマーキングされた)部分の分布は、電極の確定位置のモデルからの距離の増加関数であるということである。(この「分布」は、例えば、モデルの表面に沿った測地距離として、又はディスプレイ26に沿った、電極の位置に最も近いモデル上の点から、この最近接点から最も遠い選択部分までの距離として定量化することができる)。
【0041】
例えば、
図3において、インジケータ36aは、電極32bに対し表面30から電極32aの、より距離が短いことの結果として、インジケータ36bよりも高い密度にある。同様に、インジケータ36aは、より小さな半径R1を有する円によって囲まれる一方、インジケータ36bは、より大きな半径R2を有する円によってしか囲まれていない。
【0042】
上記の特定の例となる技法があるにもかかわらず、本開示の範囲は、モデルからの電極の位置について距離の減少関数として密度を設定するため、及び/又はこの距離の増加関数としての分布を設定するための任意の好適な技法を含むことが留意される。
【0043】
次に、本発明の他の実施形態による、モデル22を表示するための別の技法の概略図である、
図4を参照する。
【0044】
図4は、単一電極が、ECG信号であって、その帯域34cが2つの優位周波数である、第1の優位周波数F3及び第2の優位周波数F4を示す、ECG信号を捕捉するという、シナリオを例示している。これらの2つの優位周波数の特定に対応して、プロセッサは、周波数の各々に対する、2つのインジケータ(又は色)、1つのインジケータ(又は色)を選択する。特定の示された例では、プロセッサは、F3に対してインジケータ36a、及びF4に対してインジケータ36bを選択する。次に、プロセッサは、周波数F3を示すようマーキングされたモデルの部分が、周波数F4を示すようマーキングされたモデルの他の部分に組み入れられるよう、モデル22を表示する。これにより、2つの異なる優位周波数の直観的な視覚的表示を医師に提供する。
【0045】
概して、上記の技法は、2つの異なる周期長などの、ECG信号の2つの異なる特性を、確定する任意のシナリオに適用することができる。言いかえると、電極の近傍におけるモデルのいくつかの部分をマーキングして、第1の特性を示すことができる一方、前者の部分に組み入れられるモデルの他の部分をマーキングして、第2の特性を示すことができる。この技法は、信号の2つ以上の特性が確定される場合にも、同様に適用することができる。
【0046】
図4は、選択された(及びマーキングされた)モデルの部分の密度及び分布は、信号の個々の優位周波数における周波数帯34cの特徴に応答可能に設定され得ることを更に例示している。例えば、優位周波数の各々に関して、選択部分の密度は、優位周波数における周波数帯の振幅の増加関数となり得る。
図4は、より小さな振幅A4を有する周波数F4のマーキング密度よりも高いものとして、より大きな振幅A3を有する周波数F3のマーキング密度を示すことによる、その中の一実施形態を例示している。代替的又は追加的に、分布は、優位周波数における周波数帯の幅の増加関数「f」とすることができる。
図4は、F3における幅W3に対して、F4における帯域のより大きな幅W4の結果として、半径R3によって定量化される、周波数F3の分布よりも大きな半径R4により定量化される、周波数F4の分布を示すことにより、その中の一実施形態を例示している。(幅は、例えば、半値全幅として定量化することができる)。
【0047】
上記の具体的な実施形態にもかかわらず、優位周波数を示すためにマーキングするとき、マーキングの密度及び分布はそれぞれ、優位周波数における振幅の任意の好適な増加関数若しくは減少関数、優位周波数における幅、及び/又は時間領域若しくは周波数領域における信号の任意の他の好適な特徴となり得ることが留意される。同様に、信号の任意の他の特性(周期長など)を示すためにマーキングするとき、密度及び分布の各々は、任意の好適な関数を、時間領域又は周波数領域における、信号の任意の好適な特徴に適用することにより設定することができる。
【0048】
一部の実施形態では、
図4を参照した上記の技法を行うため、プロセッサは、電極の位置に最も近いモデル上の点を最初に見つける。次に、プロセッサは、モデルのある部分がマーキングされる可能性があり得る最近接点からの最大測地距離を計算する。(この距離は、マーキング分布に相当する)。次に、プロセッサは、最近接点の算出距離内のモデルのすべての関連部分にわたって(例えば、タイル又は頂点のすべてにわたって)繰り返し処理を行い、所望のマーキング密度に基づいて、この部分をマーキングするかどうかを決定する。例えば、プロセッサは乱数を生成して、次に、この乱数を所望のマーキング密度の関数である閾値と比較することができる。この比較に対応して、プロセッサは、その部分をマーキングするかどうかを決定することができる。(閾値が所望のマーキング密度の関数となることへの代替として又は追加として、乱数の生成に由来する分布は、所望のマーキング密度の関数となり得る)。
【0049】
例えば、最近接点の算出距離内のモデルの個々の関連部分に関して、プロセッサは、0~1の間の均一な分布から乱数を生成することができる。次に、プロセッサは、この数字が特定の閾値未満になるかどうかを確定することができる。該当する場合、プロセッサは、その部分をマーキングすることができる。そうでない場合、プロセッサは、その部分にマーキングしないようにすることができる。閾値は、より高いマーキング密度に対して1に近くすることができ、より低いマーキング密度に対して0に近くすることができる。代替として、マーキングしたモデルの部分の分布を決定するために、より多くの複雑なアルゴリズムを使用してもよい。
【0050】
信号の特徴に応答可能に密度を設定する代替として又は追加として、密度は、電極の位置に最も近いモデル上の点からの距離と共に低下し得る。
【0051】
本発明が、本明細書上に具体的に示されて記載されたものに限定されない点が、当業者により理解されよう。むしろ、本発明の実施形態の範囲は、本明細書上に記載されているさまざまな特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの両方、並びに上記の説明を一読すると当業者には想起されると思われる、従来技術には存在しない特徴の変更例及び改変例を含む。参照により本特許出願に援用される文献は、これらの援用文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾して定義されている場合には、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の一部とみなすものとする。
【0052】
〔実施の態様〕
(1) システムであって、
電気的インタフェースと、
プロセッサであって、
前記電気的インタフェースを介して、対象の心臓内の電極からの心電図信号を受信することと、
前記心臓の表面のコンピュータモデルの座標系における前記電極の位置を確定することと、
前記確定位置に応答可能に前記モデルの部分を選択することであって、前記選択部分には、前記モデルの他の非選択部分が組み入れられるようにする、ことと、
前記非選択部分ではなく前記選択部分がマーキングされて、前記信号の特性を示すように前記モデルを表示することと、
を行うように構成されているプロセッサと、
を備えた、システム。
(2) 前記プロセッサが、
前記確定位置から複数の光線を投影することと、
前記光線が前記モデルと交差する点に応答して、前記モデルの前記部分を選択することと、
により、前記モデルの前記部分を選択するよう構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(3) 前記プロセッサが、前記モデルの前記部分の選択に際し、前記確定位置の前記モデルからの距離の減少関数として、前記選択部分の密度を設定するよう構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(4) 前記プロセッサが、前記モデルの前記部分の選択に際し、前記確定位置の前記モデルからの距離の増加関数として、前記選択部分の分布を設定するよう構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(5) 前記信号が第1の信号であり、前記電極が第1の電極であり、
前記プロセッサが、前記心臓内の第2の電極から第2の心電図信号を受信するよう更に構成されており、
前記プロセッサは、前記モデルの他の部分の少なくとも一部がマーキングされ、前記第2の信号の前記特性を示すように、前記モデルを表示するよう構成されている、
実施態様1に記載のシステム。
【0053】
(6) 前記特性が第1の特性であり、前記プロセッサは、前記モデルの他の部分の少なくとも一部がマーキングされ、前記信号の第2の特性を示すように、前記モデルを表示するよう構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(7) 前記プロセッサが、前記モデルの前記選択部分に色が付けられて、前記特性を示すように、前記モデルを表示するよう構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(8) 前記信号の前記特性が前記信号の優位周波数である、実施態様1に記載のシステム。
(9) 前記プロセッサが、前記モデルの前記部分の選択に際し、前記優位周波数における、前記信号の周波数帯の特徴に応答可能に前記選択部分の密度を設定するよう構成されている、実施態様8に記載のシステム。
(10) 前記プロセッサが、前記モデルの前記部分の選択に際し、前記優位周波数における、前記信号の周波数帯の特徴に応答可能に前記選択部分の分布を設定するよう構成されている、実施態様8に記載のシステム。
【0054】
(11) 前記信号の前記特性が前記信号の周期長である、実施態様1に記載のシステム。
(12) 前記プロセッサは、前記選択部分の密度が、前記確定位置に最も近い前記モデル上の点からの距離に応じて低下するように、前記モデルの前記部分を選択するよう構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(13) 方法であって、
プロセッサにより、対象の心臓内の電極からの心電図信号を受信することと、
前記心臓の表面のコンピュータモデルの座標系における前記電極の位置を確定することと、
前記確定位置に応答可能に前記モデルの部分を選択することであって、前記選択部分には、前記モデルの他の非選択部分が組み入れられるようにする、ことと、
前記非選択部分ではなく前記選択部分がマーキングされて前記信号の特性を示すよう前記モデルを表示することと、
を含む、方法。
(14) 前記モデルの前記部分を選択することが、
前記確定位置から複数の光線を投影することと、
前記光線が前記モデルと交差する点に応答して、前記モデルの前記部分を選択することと、
を含む、実施態様13に記載の方法。
(15) 前記モデルの前記部分を選択することが、前記確定位置の前記モデルからの距離の減少関数として、前記選択部分の密度を設定することを含む、実施態様13に記載の方法。
【0055】
(16) 前記モデルの前記部分を選択することが、前記確定位置の前記モデルからの距離の増加関数として、前記選択部分の分布を設定することを含む、実施態様13に記載の方法。
(17) 前記信号が第1の信号であり、前記電極が第1の電極であり、
前記方法が、前記心臓内の第2の電極から第2の心電図信号を受信することを更に含み、
前記モデルを表示することは、前記モデルの他の部分の少なくとも一部がマーキングされて、前記第2の信号の前記特性を示すように、前記モデルを表示することを含む、実施態様13に記載の方法。
(18) 前記特性が第1の特性であり、前記モデルを表示することは、前記モデルの他の部分の少なくとも一部がマーキングされて、前記信号の第2の特性を示すよう、前記モデルを表示することを含む、実施態様13に記載の方法。
(19) 前記モデルを表示することが、前記モデルの前記選択部分に色が付けられて前記特性を示すよう、前記モデルを表示することを含む、実施態様13に記載の方法。
(20) 前記信号の前記特性が、前記信号の優位周波数である、実施態様13に記載の方法。
【0056】
(21) 前記モデルの前記部分を選択することが、前記優位周波数における前記信号の周波数帯の特徴に応答可能に、前記選択部分の密度を設定することを含む、実施態様20に記載の方法。
(22) 前記モデルの前記部分を選択することが、前記優位周波数における前記信号の周波数帯の特徴に応答可能に、前記選択部分の分布を設定することを含む、実施態様20に記載の方法。
(23) 前記信号の前記特性が前記信号の周期長である、実施態様13に記載の方法。
(24) 前記モデルの前記部分を選択することは、前記確定位置に最も近い前記モデル上の点からの距離に応じて前記選択部分の密度が低下するように、前記モデルの前記部分を選択することを含む、実施態様13に記載の方法。