(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-24
(45)【発行日】2023-04-03
(54)【発明の名称】回転機器
(51)【国際特許分類】
H02K 5/00 20060101AFI20230327BHJP
【FI】
H02K5/00 A
(21)【出願番号】P 2018243704
(22)【出願日】2018-12-26
【審査請求日】2021-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】松野 武
(72)【発明者】
【氏名】北川 智之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 柊史
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-147284(JP,A)
【文献】特開平06-189486(JP,A)
【文献】特開2013-004617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/00
H02K 5/22
H02K 7/116
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の片及び本体を有するホルダと、
前記一対の片に挟まれたモータと、
前記一対の片に挟まれたモータを収容するハウジングと、を備え、
前記ハウジングには押さえ部が設けられており、
前記押さえ部により、前記モータを挟む前記一対の片が前記モータ側に押さえられて
おり、
前記ホルダには前記一対の片とは逆方向に延びる一対の爪が設けられており、
前記一対の爪は前記モータに接続される配線基板を保持している、回転機器。
【請求項2】
前記押さえ部により、前記一対の片は互いに近づく方向に押されている、請求項1に記載の回転機器。
【請求項3】
前記一対の片が、前記モータの外周面から内部に向けて当該モータを挟み込む、請求項1または2に記載の回転機器。
【請求項4】
前記一対の片が、前記一対の片の長手方向において、前記モータの幅が最大幅となる位置で接触する中間接触部と、前記最大幅となる位置とは異なる位置で前記モータと接触する端部側接触部と、を有する、請求項1~3のいずれかに記載の回転機器。
【請求項5】
前記一対の片のうち、一方の片から他方の片に向かう方向において、前記端部側接触部は、前記モータの外周面に向かって突出した突出部となっている、請求項4に記載の回転機器。
【請求項6】
前記配線基板の外縁に切り欠きが形成され、該切り欠きが前記爪で保持される、請求項
1~5に記載の回転機器。
【請求項7】
筐体を備え、
前記筐体は、前記ハウジングと、当該ハウジングの開口を覆うカバーと、を備え、
前記カバーには、前記爪を前記縁に近づける方向に付勢する突出部が設けられている、
請求項
1~6に記載の回転機器。
【請求項8】
前記配線基板の縁が、対向する第1の部分と第2の部分とを有し、
前記爪が、二股に分かれた一対の片を有し、
前記爪が有する一対の片が、前記第1の部分及び前記第2の部分にそれぞれ接触し、
前記カバーの突出部が、前記爪が有する一対の片の間に配置されている、請求項
7に記載の回転機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータを備え、各種機器に回転駆動力を供給する回転機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種機器に回転駆動力を供給するために、数多くのモータが用いられている。モータは、電気部品であるため、水分や砂塵を嫌う。しかし、屋外で使用される車の電装品等、その使用環境によっては、水分や砂塵を遠ざけることが困難な場合があり、そのような使用環境用には、密閉容器にモータを収容した状態で用いられる。
【0003】
モータは、駆動力を発生することから、ハウジングにしっかりと固定することが求められる。しかし、密閉容器では、取り付けのための貫通孔をハウジングに設けることができないため、取り付けが煩雑になったり、取り付けのためのスペースが必要になったりしてしまう。例えば、金属などの帯状の押さえ部材をモータに巻き付けてその端部をねじ止めしようとすると、そのねじ止めのためのスペースが必要になるほか、その作業も煩雑となり、高コスト化してしまう。
【0004】
また、モータに予めフランジを設けておき、当該フランジをねじ止めしようとすれば、やはりねじ止めのためのスペースが依然として必要であり、作業の簡略化も十分ではない。このように、モータをハウジングにしっかり取り付けようとすると、密閉容器の小型化が実現しづらくなるほか、特別な加工が必要になったり、取り付けのための部品点数が多くなったりして、組み立ての煩雑化を招き、高コスト化してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、スペースを要さず、簡単な構造でありながら、モータがハウジングにしっかり取り付けられた回転機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、以下の本発明により解決される。即ち、本発明の回転機器は、一対の片及び本体を有するホルダと、前記一対の片に挟まれたモータと、前記一対の片に挟まれたモータを収容するハウジングと、を備え、前記ハウジングには押さえ部が設けられており、前記押さえ部により、前記モータを挟む前記一対の片が前記モータ側に押さえられている。
【0008】
前記押さえ部により、前記一対の片は互いに近づく方向に押されていることが好ましい。
また、前記一対の片が、前記モータの外周面から内部に向けて当該モータを挟み込むことが好ましい。
【0009】
前記一対の片としては、前記一対の片の長手方向において、前記モータの幅が最大幅となる位置で接触する中間接触部と、前記最大幅となる位置とは異なる位置で前記モータと接触する端部側接触部と、を有することが好ましく、この場合に、前記一対の片のうち、一方の片から他方の片に向かう方向において、前記端部側接触部は、前記モータの外周面に向かって突出した突出部となっていることが好ましい。
【0010】
一方、本発明の回転機器においては、配線基板を備え、前記ホルダに、前記配線基板の縁を保持する爪が設けられていることが好ましい。
この場合に、前記配線基板の外縁に切り欠きが形成され、該切り欠きが前記爪で保持されることが好ましい。
【0011】
また、この場合には、筐体を備え、前記筐体は、前記ハウジングと、当該ハウジングの開口を覆うカバーと、を備え、前記カバーには、前記爪を前記縁に近づける方向に付勢する突出部が設けられていることが好ましい。
具体的には、前記配線基板の縁が、対向する第1の部分と第2の部分とを有し、前記爪が、二股に分かれた一対の片を有し、前記爪が有する一対の片が、前記第1の部分及び前記第2の部分にそれぞれ接触し、前記カバーの突出部が、前記爪が有する一対の片の間に配置されているものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一例である実施形態にかかる回転機器の斜視図である。
【
図2】本発明の一例である実施形態にかかる回転機器の分解斜視図である。
【
図3】実施形態にかかる回転機器において用いたホルダの拡大斜視図である。
【
図4】実施形態にかかる回転機器からホルダとモータのみを抜き出した拡大正面図である。
【
図5】実施形態にかかる回転機器において用いたハウジングの斜視図である。
【
図6】実施形態にかかる回転機器の内、モータを保持したホルダがハウジング内に組み込まれた状態を示す上面図である。
【
図8】実施形態にかかる回転機器の内、ホルダ、配線基板及びカバーの位置関係を示す分解斜視図である。
【
図9】本発明の一例である実施形態にかかる回転機器の断面図(
図1におけるB-B断面図)である。
【
図10】本発明の一例である実施形態にかかる回転機器の断面図(
図1におけるC-C断面図)である。
【
図11】実施形態にかかる回転機器において用いたホルダの拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一例である実施形態にかかる回転機器の斜視図であり、
図2は、分解斜視図である。なお、
図2において、ハウジング4内に収容される部品の一部については、本発明の構成と直接関わりが無いため、図示が省略されている(以降の図面においても同様)。実際には、モータ3の回転駆動力を減速する減速ギア群等が収容されて、外部に所望の回転駆動力が取り出せるようになっている。
【0014】
回転機器1は、一面が開口したハウジング4と、その開口を覆うように組み合わされるカバー5とで構成される密閉容器内に、モータ3が収容されてなるものである。本実施形態では、モータ3を保持するためにホルダ2を用いているとともに、このホルダ2が、配線基板6をも保持している。
【0015】
また、モータ3は、配線基板6を介して給電されるとともに電気的に制御されて、所望の回転数が制御されるようになっている。ハウジング4には、この配線基板に給電や電気信号を伝えるためのワイヤハーネス(電線、不図示)を導入するための接続口42が設けられている。配線基板6には、端子となる孔部61が複数形成され、ワイヤハーネスの先端に取り付けられたコネクタ(不図示)とプレスフィットさせることで、外部電源乃至外部制御装置と電気接続されている。
【0016】
図3に、ホルダ2の拡大斜視図を示す。また、
図4に、ホルダ2によってモータ3を保持した状態を示すための、回転機器1からホルダ2とモータ3のみを抜き出した拡大正面図を示す。
ホルダ2は、樹脂製で、一対の片(以下、保持片と呼称する)21,21及び一端21x側における一対の保持片21,21の一部分が連結される本体22を有する。本体22は硬質であるが、一対の保持片21,21は弾性を有しており、互いに近接又は離間するようになっている。
【0017】
一対の保持片21,21は、本体22に連結する一端21xから平板状に延在する梁部211と、他端21yで断面が円弧状にせり出す突出部212と、を備える。突出部21は、一対の保持片21,21のうち、一方の保持片21から他方の保持片21に向かう方向において、梁部211からモータ3の外周面に向かって突出している。
図4に示されるように、平板状の梁部211では、やや他端21y寄りの位置で、モータ3と接触している(この接触している位置を「中間接触部21a」と称する。)。
【0018】
この中間接触部21aでは、モータ3の回転軸の軸方向(
図4の紙面に対する鉛直方向)に対して垂直の方向から、モータ3のハウジングの外周面を(即ち、保持片21の延在方向においてモータ3の幅が最大幅となる位置で)一対の保持片21,21により挟み込んでいる。一対の保持片21,21が、モータ3の回転軸の軸方向に対して、垂直の方向からモータ3を挟み込んでいるので、モータ3の回転運動や振動を一対の保持片21,21で効率的に抑え込むことができ、駆動するモータ3を安定的に保持することができる。
【0019】
また、
図4に示されるように、内側(モータ3のハウジングの外周面)に向けて突出する突出部212では、その頂部(モータ3の幅が最大となる、最もせり出した位置)よりも一端21x寄りの位置で、モータ3と接触している。この突出部212のうち、一端21x寄りの位置で、モータ3と接触している部分が、端部側接触部(以下、「他端側接触部」と称する。)21bとなる。すなわち、他端側接触部21bは、モータ3の幅が最大となる位置とは異なる、ハウジング4の底部側の位置で接触している。よって、ホルダ2は、中間接触部21a及び他端側接触部21bで抱え込むようにモータ3を保持している。
【0020】
本体22の延在方向中央部には、モータ3の外周面に対応した曲面状の窪み221が形成され、この窪み221にモータ3の外周面が嵌合することでモータ3が位置決めされ、一対の保持片21,21の弾性力と相俟って、ホルダ2が安定的にモータ3を保持している。
【0021】
ホルダ2でモータ3を保持しようとする場合には、
図2に示す両者の位置関係から、ホルダ2をそのまま相対的に近づけて行き、突出部212がモータ3の外周面に接触してもそのまま両者を近づけて行くと、一対の保持片21,21がその弾性により広がって、突出部212がモータ3の外径を通り越すと今度は狭まって、モータ3の外周面が、窪み221に嵌合しつつ、中間接触部21a及び他端側接触部21bと接触して、最終的にモータ3がホルダ2に保持される。
【0022】
なお、ホルダ2をモータ3の回転軸の軸方向から近づけて行き、窪み221、梁部211及び突出部212で形成されるモータ3の保持領域に、そのまま挿し込むようにして、ホルダ2でモータ3を保持させても構わない。
以上のようにして、
図4に示すように、ホルダ2がモータ3を保持した状態となる。
【0023】
図5に、ハウジング4の内部を斜め上方から見た斜視図を示す。ハウジング4は、上部が開口した箱型の容器であり、モータ3を保持したホルダ2は、一対の保持片21,21の他端21y側が、ハウジング4の底部41に向けて配置されるように、ハウジング4内に組み込まれる。
【0024】
より詳しく説明すると、ハウジング4の底部41からカバー5に向けて垂直方向に立ち上がる、対向する2つの内壁面45のそれぞれには、一対の溝43が設けられており、一対の保持片21,21の外側面をスライドさせながら嵌入させることで、モータ3を保持したホルダ2がハウジング4内に組み込まれる。そして、後述するように、ホルダ2の本体22側の一部分が、ハウジング4の底部41に向けて押さえ込まれることで、モータ3を保持したホルダ2がハウジング4内に固定される。
【0025】
図6は、モータ3を保持したホルダ2がハウジング4内に組み込まれた状態を示す上面図であり、
図7はそのA-A断面図である。
図6及び
図7に示されるように、一対の保持片21,21の外側面が、ハウジング4の内壁面45の内の一対の溝43を構成する溝壁面43aによって規制され、一対の保持片21,21の他端21yが互いに離れる方向に広がるのが押さえられる。即ち、一対の溝43が、本発明に言う「押さえ部」を構成する。
【0026】
したがって、組み込まれたホルダ2は、一対の保持片21,21の他端21yが離間する方向に広がってしまうのが押さえられ、一対の保持片21,21がモータ3の外周面からモータ3の内部に向けてモータ3を挟み込み、モータ3がしっかりと保持された状態が維持される。即ち、少ない部品点数で、スペースを要さず、しかも簡単な構造で、一対の保持片21,21が押さえ部(一対の溝43)によりモータ3側に向かって(互いに近づく方向に)押されて、モータ3をしっかりと保持することができる。
【0027】
特に、本実施形態では、モータ3の外径と接触する中間接触部21aよりも他端21y側で、中間接触部21aよりモータ3側にせり出している他端側接触部21bで抱え込むようにモータ3を保持しており、この状態が「押さえ部」を構成する一対の溝43により保持されるため、モータ3をよりしっかりと保持することができる。
【0028】
また、本実施形態においては、一対の溝43を構成するハウジング4の溝壁面43aには、底部41からカバー5に向けて垂直方向にリブ44が設けられている。リブ44は、
図5では一方しか見えていないが、一対の溝43の両方に設けられている。このリブ44は、底部41からカバー5に向けて垂直方向に一定の長さまでは、溝壁面43aから同一の高さで突出しているが、その後底部41から離れるにしたがって高さが漸次低くなり、溝43の途中で無くなるようにリブ44の端面が斜めに形成されている。
【0029】
リブ44は、一対の保持片21,21の他端側の一部分を外側から付勢する。即ち、リブ44が設けられていることで、本実施形態における「押さえ部」は、一対の保持片21,21の他端を互いに近づける方向に付勢する。したがって、モータ3がホルダ2によって、よりしっかりと保持された状態となる。
【0030】
また、底部41から離れたリブ44の端部の端面が、既述のように斜めに形成されているため、モータ3を保持したホルダ2を、一対の保持片21,21の外側面を一対の溝43にスライドさせながら嵌入させる際に、リブ44の端部でスムーズに圧入される。したがって、圧入状態でありながら、モータ3を保持したホルダ2をハウジング4内に組み込むことが容易となる。
【0031】
図3や
図4に示されるように、ホルダ2の本体22には、配線基板6を保持する一対の爪(以下、保持爪と呼称する)23,23が設けられている。一対の保持爪23,23は、本体22を起点として、一対の保持片21,21とは逆方向に延びている。また、一対の保持爪23,23のそれぞれが、本体22からすぐに二股に分かれて、一対の片(以下、保持爪片と呼称する)23a,23a’となっている。
【0032】
一対の保持爪片23a,23a’は、一対の保持片21,21のうち一方の保持片21から他方の保持片21に向かう方向とは垂直方向(保持片21の幅方向)に、先端部が離間した状態で並んで位置している。本実施形態の例では、一対の保持爪片23a,23a’は、基端部の本体22近傍で二股に分かれているが、もう少し先端側で分かれていても構わない。一対の保持爪片23a,23a’のそれぞれの先端部には、お互いに背を向けた方向に突出する一対の突起(以下、保持突起と呼称する)23b,23b’が設けられている。
【0033】
図8は、ホルダ2により配線基板6がカバー5に固定される状態の位置関係を示す分解斜視図である。配線基板6は、矩形状で、対向する辺の外縁に半円弧状の一対の切り欠き61,61が形成されている。この一対の切り欠き61,61に、それぞれ、一対の保持爪23,23が嵌合する。
なお、本発明において、配線基板の外縁という時の「外縁」は、配線基板を平面視した際の外形形状における外側の縁を指すものとし、配線基板に貫通孔を設けた場合の開口の縁は含まない。
【0034】
一対の切り欠き61,61の半円弧の両端には、対向する領域61a,61aを有し、その領域61a,61aに一対の保持爪片23a,23a’が接触する。これら対向する領域61a,61aは、配線基板6の縁における、対向し合う第1の部分と第2の部分となる。
なお、一対の切り欠き61,61を設けるのではなく、例えば、配線基板に貫通孔を設け、当該貫通孔に一対の保持爪片を挿入して嵌合させても構わない。この場合、当該貫通孔の開口の縁が、本発明に言う、保持爪で保持する配線基板の「縁」に相当し、そのうちの一対の保持爪片と接触する領域が、本発明に言う「対向する第1の部分と第2の部分」に相当する。
【0035】
また、配線基板6は、保持爪23の一対の保持突起23b,23b’と、本体22の上面(一対の保持爪23,23が設けられた側の面)222との間に、厚み方向が挟まれた状態となる。
【0036】
この状態で、
図2に示すように、ハウジング4とカバー5との間に、配線基板6、ホルダ2及びモータ3を挟んで、ハウジング4の開口をカバー5で覆うようにして固定する。両者の固定は、ハウジング4の開口近傍の外周に設けられた6個(
図6参照)の突起(以下、係止突起と呼称する)46が、カバー5の対応箇所に設けられた6個(
図8参照)の孔部(以下、係止孔と呼称する)51にそれぞれ嵌合することで成される。
【0037】
ハウジング4にカバー5が固定されると、間に挟み込まれた配線基板6、ホルダ2及びモータ3が押さえ込まれた状態となる。そのため、既述のように、ホルダ2の本体22側が、ハウジング4の底部41に向けて押さえ込まれ、モータ3を保持したホルダ2がハウジング4内に固定される。また、配線基板6についても、ホルダ2によりカバー5に固定される。
【0038】
図9は、以上のようにして組み立てられた回転機器1のB-B断面図(
図1参照。
図6においても、B-B断面の該当箇所を図示している。)である。また、
図10は、同様に回転機器1のC-C断面図(
図1参照。
図6においても、C-C断面の該当箇所を図示している。)である。さらに、
図11は、カバー5の天井部53が見える角度から見た斜視図である。
図11における下方側が、
図1における斜め左下方向である。
【0039】
ハウジング4の底部41とカバー5の天井部53とが対向し、両者によって筐体が構成される。ハウジング4とカバー5との間には、パッキン7が介在し、両者で構成される筐体の密閉性が確保されている。なお、
図6には、ハウジング4の他にパッキン7も描かれている。
【0040】
カバー5の天井部53には、一対の突出部(以下、付勢突起と呼称する)52が立設している。この付勢突起52は、
図10を見ればわかるように、一対の保持爪片23a,23a’の間に楔状に嵌入するように構成されている。なお、
図9においては、付勢突起52の部分での断面が描かれているため、保持爪片23a’の手前に付勢突起52が位置しているのがわかる。
【0041】
一対の保持爪片23a,23a’は、その外側が、既述の通り、切り欠き61の対向する領域61a,61aに接触しており、その先端部における両者間の間隙に付勢突起52が楔様に嵌入すると、両者間の間隙はさらに広がる方向に付勢され、即ち、配線基板6の縁である領域61a,61aへの付勢力が増す。なお、本発明において「楔様に」というときは、付勢突起の形状が楔形状であることは要さず、一対の保持爪片の間隙に圧入してその間隙を広げる楔の機能を発揮する態様を示す意味である。
【0042】
また、一対の保持爪片23a,23a’ のそれぞれの先端部には一対の保持突起23b,23b’が設けられており、一対の保持爪片23a,23a’の間隙が広がると、保持突起23b,23b’が本体22の上面222に押し下げられるように作用するため、配線基板6の厚み方向からの付勢力も強化される。
【0043】
以上のように、カバー5に設けられた付勢突起52の作用により、配線基板6がしっかりと保持される。
なお、保持爪片23a,23a’に一対の保持突起23b,23b’が設けられていなくても、付勢突起52が保持爪片23a,23a’を配線基板6の縁に付勢する作用により、配線基板6を保持する作用は奏されるが、一対の保持突起23b,23b’の作用によって、よりしっかりと保持することができる。
【0044】
このように、本実施形態の回転機器1によれば、モータ3のみならず配線基板6をも、少ない部品点数で、ハウジング4及びカバー5からなる密閉容器(筐体)内に、スペースを要さず、しかも簡単な構造でしっかりと保持することができる。
【0045】
以上、本発明の回転機器について、好ましい実施形態を挙げて説明したが、本発明の回転機器は上記実施形態の構成に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、ハウジング4とカバー5とで構成される筐体が密閉容器である例を挙げて説明しているが、本発明においては、この筐体は、密閉容器でなくても構わない。密閉ではない通常の容器であったとしても、モータや配線基板を、少ない部品点数で、少なくともハウジングを備える筐体内に、スペースを要さず、しかも簡単な構造でしっかりと保持することができる。
【0046】
また、上記実施形態においては、ホルダ2を利用して、ハウジング4とカバー5とで構成される筐体に、モータ3と配線基板6を保持させる構成を例に挙げて説明したが、どちらか一方のみを保持させる構成であっても、その保持させるモータ乃至配線基板をしっかりと保持させる効果が奏される。
【0047】
また、上記実施形態においては、組み立て方として、ホルダ2にモータ3を保持させてハウジング4に取り付け、その後配線基板6を取り付けてカバー5をハウジング4に取り付ける順序で説明したが、組み立てる順序はこれに限定されない。例えば、ハウジング4にモータ3を載置して、これにホルダ2を押さえ込むようにしてホルダ2でハウジング4にモータ3を固定してもよいし、カバー5への配線基板6の取り付けをハウジング4へのモータ3の取り付けより先に行っても構わない。
その他、以下に、いくつかの変形例を挙げる。
【0048】
上記実施形態において、押さえ部としては、溝43内の溝壁面43aにリブ44が形成された例を挙げているが、溝43だけで一対の保持片21,21の他端側21yが互いに離れる方向に広がるのを押さえる作用が奏されるので、リブ44が形成されていなくても構わない。勿論、リブ44が形成されていることで、一対の保持片21,21の他端側21yを互いに近づける方向に付勢する作用が奏されるため、本実施形態の構成の方が好ましい。
【0049】
上記実施形態において、押さえ部としての一対の保持片21,21は、モータ3の回転軸の軸方向に対して垂直の方向から、モータ3の外径を挟み込んでいるが、モータの形状によっては、他の方向から保持できる場合があり、本発明においては、そのような方向から保持するようにしても構わない。勿論、本実施形態の如き方向から保持することで、モータ3の回転運動や振動を効率的に抑え込むことができる。
【0050】
また、上記実施形態において、一対の保持片21,21は、中間接触部21aと他端側接触部21bとが離れた位置でモータ3の外周と接触しているが、例えば、一対の保持片のモータとの接触部(面で接触する場合の接触面、及び、線で接触する場合の接触線)がモータの外周に対応した形状となっていて、連続的に接触して、中間接触部と他端側接触部とが連続していても構わない。
【0051】
この場合に、押さえ部についても、一対の保持片に対応した形状とすることが望ましい。即ち、一対の保持片のモータとの接触部とは反対側も曲面乃至曲線状になっている場合には、それに対応した曲面乃至曲線状の押さえ部とすることが好ましく、本実施形態と同様の平面状(または直線状)になっている場合には、本実施形態と同様、平面状の押さえ部とすることが好ましい。いずれの構成においても、本実施形態と同様にリブを設けることは有効であり、好ましい。
その他、中間接触部及び他端側接触部以外にモータとの接触部を有していても構わない。
【0052】
上記実施形態において、ホルダ2に設けられる保持爪23としては、一対の保持爪23,23のそれぞれが中間で二股に分かれた一対の保持爪片23a,23a’で構成され、一方の保持爪23だけでも配線基板6の保持力を有する構成を挙げて説明したが、本発明においてはこれに限定されない。
【0053】
例えば、一対の保持爪が、対向する長尺上の板状体の先端部が、対向する側に鉤状に曲げられ、その両者間に配線基板を縁で保持するように配しても構わない。この場合には、カバーの天井部に、一対の保持爪を配線基板の縁に近づける方向に付勢する付勢突起を設けることが好ましい。このような付勢突起を設けることで、配線基板をしっかりと保持することができる。
【0054】
なお、この場合に配線基板の外縁には、本実施形態の切り欠き61の如き切り欠きを設けてもよいし、設けなくてもよい。切り欠きを設けた場合には、当該切り欠きに一対の保持爪が位置するようにして、その縁を保持すればよいし、切り欠きを設けない場合には、配線基板の直線状の外縁をそのまま保持すればよい。配線基板の位置決めが容易である点で、前者が好ましい。また、この場合に、配線基板に一対の貫通孔を設けて、当該一対の貫通孔に一対の保持爪を嵌挿させても構わない。
【0055】
その他、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の回転機器を適宜改変することができる。かかる改変によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0056】
1…回転機器、2…ホルダ、21…保持片(片)、21a…中間接触部、21b…他端側接触部(端部側接触部)、211…梁部、212…突出部、22…本体、221…窪み、222…上面、23…保持爪(爪)、23a,23a’…保持爪片(片)、23b,23b’…保持突起(突起)、3…モータ、4…ハウジング、41…底部、42…接続口、43…溝(押さえ部)、44…リブ(押さえ部)、45…内壁面、46…係止突起(突起)、5…カバー、51…係止孔(孔部)、52付勢突起(突出部)、6…配線基板、61…切り欠き、61a…領域、7…パッキン