(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-24
(45)【発行日】2023-04-03
(54)【発明の名称】反射型マスクブランク、反射型マスク、及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 1/24 20120101AFI20230327BHJP
G03F 1/58 20120101ALI20230327BHJP
C23C 14/06 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
G03F1/24
G03F1/58
C23C14/06 N
(21)【出願番号】P 2018244406
(22)【出願日】2018-12-27
【審査請求日】2021-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】池邊 洋平
【審査官】田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-046370(JP,A)
【文献】特開2002-280291(JP,A)
【文献】特開2010-080659(JP,A)
【文献】特開2009-046770(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0260288(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0157177(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00-1/86
C23C 14/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板上に形成されたEUV光を反射する多層反射膜と、前記多層反射膜の上に形成された積層膜とを含む反射型マスクブランクであって、
前記積層膜は、第1の層と、該第1の層の上に形成された第2の層とを含み、前記EUV光に対する絶対反射率が2.5%以下であり、
前記第1の層は、前記EUV光の位相をシフトさせる位相シフト膜を含み、
前記第2の層は、光学干渉を利用して前記積層膜の絶対反射率を2.5%以下に低減させる干渉層からな
り、
前記干渉層の膜厚が1nm以上20nm以下であり、屈折率nが0.85以上0.96以下である、反射型マスクブランク。
【請求項2】
基板と、前記基板上に形成されたEUV光を反射する多層反射膜と、前記多層反射膜の上に形成された積層膜とを含む反射型マスクブランクであって、
前記積層膜は、第1の層と、該第1の層の上に形成された第2の層とを含み、前記EUV光に対する絶対反射率が2.5%以下であり、
前記第1の層は、前記EUV光の位相をシフトさせる位相シフト膜を含み、
前記第2の層は、光学干渉を利用して前記積層膜の絶対反射率を2.5%以下に低減させる干渉層からなり、
前記干渉層は、ルテニウム(Ru)を含む材料からなる、反射型マスクブランク。
【請求項3】
基板と、前記基板上に形成されたEUV光を反射する多層反射膜と、前記多層反射膜の上に形成された積層膜とを含む反射型マスクブランクであって、
前記積層膜は、第1の層と、該第1の層の上に形成された第2の層とを含み、前記EUV光に対する絶対反射率が2.5%以下であり、
前記第1の層は、前記EUV光の位相をシフトさせる位相シフト膜を含み、
前記第1の層の前記EUV光に対する相対反射率が3%以上40%以下であり、位相差が160~200°である、反射型マスクブランク。
【請求項4】
前記第2の層は、吸光効果を利用して前記積層膜の反射率(絶対反射率)を2.5%以下に低減させる吸収層からなる、請求項
3に記載の反射型マスクブランク。
【請求項5】
前記吸収層の膜厚が5nm以上70nm以下であり、消衰係数kが0.02以上である、請求項
4に記載の反射型マスクブランク。
【請求項6】
前記吸収層は、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、及びニッケル(Ni)からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む材料からなる、請求項
4又は請求項
5に記載の反射型マスクブランク。
【請求項7】
基板と、前記基板上に形成されたEUV光を反射する多層反射膜と、前記多層反射膜の上に形成された積層膜とを含む反射型マスクブランクであって、
前記積層膜は、第1の層と、該第1の層の上に形成された第2の層とを含み、前記EUV光に対する絶対反射率が2.5%以下であり、
前記第1の層は、前記EUV光の位相をシフトさせる位相シフト膜を含み、
前記第2の層は、光学干渉を利用して前記積層膜の絶対反射率を2.5%以下に低減させる干渉層からなり、
前記第1の層の前記EUV光に対する相対反射率が3%以上40%以下であり、位相差が160~200°である
、反射型マスクブランク。
【請求項8】
前記第1の層は、膜厚が5nm以上70nm以下であり、屈折率nが0.85以上0.96以下である、請求項1から請求項
7のうちいずれか1項に記載の反射型マスクブランク。
【請求項9】
前記第1の層は、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、ルテニウム(Ru)、及びクロム(Cr)からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む材料からなる、請求項1から請求項
8のうちいずれか1項に記載の反射型マスクブランク。
【請求項10】
基板と、前記基板上に形成されたEUV光を反射する多層反射膜と、前記多層反射膜の上に形成された積層膜とを含む反射型マスクブランクであって、
前記積層膜は、第1の層と、該第1の層の上に形成された第2の層とを含み、前記EUV光の位相をシフトさせる位相シフト膜であり、
前記第1の層は、前記EUV光に対する絶対反射率が2.5%以下である吸収層を含む、反射型マスクブランク。
【請求項11】
前記第2の層は、光学干渉を利用して前記積層膜によって反射されるEUV光の位相をシフトさせる干渉層からなる、請求項
10に記載の反射型マスクブランク。
【請求項12】
前記第2の層の膜厚が1nm以上20nm以下であり、屈折率nが0.85以上0.96以下である、請求項
10又は請求項
11に記載の反射型マスクブランク。
【請求項13】
前記第2の層は、ルテニウム(Ru)を含む材料からなる、請求項
10から請求項
12のうちいずれか1項に記載の反射型マスクブランク。
【請求項14】
前記第1の層の膜厚が5nm以上70nm以下であり、消衰係数kが0.02以上である、請求項
10から請求項
13のうちいずれか1項に記載の反射型マスクブランク。
【請求項15】
前記第1の層は、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、及びニッケル(Ni)からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む材料からなる、請求項
10から請求項
14のうちいずれか1項に記載の反射型マスクブランク。
【請求項16】
前記積層膜の前記EUV光に対する相対反射率が3%以上40%以下であり、位相差が160~200°である、請求項
10から請求項
15のうちいずれか1項に記載の反射型マスクブランク。
【請求項17】
前記多層反射膜と前記第1の層との間に保護膜を更に有し、
前記保護膜は、ルテニウム(Ru)を含む材料、珪素(Si)及び酸素(O)を含む材料、イットリウム(Y)と酸素(O)を含む材料、及び、クロム(Cr)を含む材料からなる群から選択される少なくとも1種の材料を含む、請求項1から請求項
16のうちのいずれか1項に記載の反射型マスクブランク。
【請求項18】
請求項1から請求項
17のうちいずれか1項に記載の反射型マスクブランクにおける前記積層膜がパターニングされた積層膜パターンを有する、反射型マスク。
【請求項19】
請求項
18に記載の反射型マスクを使用して、半導体基板上に転写パターンを形成する工程を有する、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造などに使用される露光用マスクを製造するための原版である反射型マスクブランク、反射型マスク、及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置製造における露光装置の光源の種類は、波長436nmのg線、同365nmのi線、同248nmのKrFレーザ、同193nmのArFレーザと、波長を徐々に短くしながら進化してきており、より微細なパターン転写を実現するため、波長が13.5nm近傍の極端紫外線 (EUV:Extreme Ultra Violet)を用いたEUVリソグラフィーが開発されている。EUVリソグラフィーでは、EUV光に対して透明な材料が少ないことから、反射型のマスクが用いられる。この反射型マスクでは、低熱膨張基板上に露光光を反射する多層反射膜が形成され、当該多層反射膜を保護するための保護膜の上に、所望の転写用パターンが形成されたマスク構造を基本構造としている。また、転写用パターンの構成から、代表的なものとして、EUV光を十分吸収する比較的厚い吸収体パターンからなるバイナリ型反射マスクと、EUV光を光吸収により減光させ、且つ多層反射膜からの反射光に対してほぼ位相が反転(約180°の位相反転)した反射光を発生させる比較的薄い吸収体パターン(位相シフトパターン)からなる位相シフト型反射マスク(ハーフトーン位相シフト型反射マスク)がある。この位相シフト型反射マスクは、透過型光位相シフトマスクと同様に、位相シフト効果によって高い転写光学像コントラストが得られるので解像度向上効果がある。また、位相シフト型反射マスクの吸収体パターン(位相シフトパターン)の膜厚が薄いことから、精度良く微細な位相シフトパターンを形成できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-080659号公報
【文献】特開2004-207593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、位相シフト膜(位相シフトパターン)の相対反射率は、例えば3%~40%であると解像度向上の効果が得られる。ここで、「相対反射率」とは、位相シフトパターンのない部分での多層反射膜(保護膜付きの多層反射膜を含む)から反射されるEUV光の反射率を100%としたときの、位相シフトパターンから反射されるEUV光の反射率である。
【0005】
また、一般に、位相シフト膜の露光に与える効果は、高反射率を有するものほど顕著になる。位相シフト膜の露光に与える効果が大きくなると、パターン転写像のコントラストが高くなるため、解像度が向上し、半導体装置を製造する際のスループットが向上する。
【0006】
しかし、位相シフト膜の反射率が高くなると、位相シフト膜からの反射光の光量が大きくなるため、パターン転写時に本来であれば感光されるべきではない領域のレジスト膜が感光されてしまう。この場合、所望とするパターンを被転写体に正確に転写することが困難であるという問題があった。
【0007】
また、半導体装置を製造する際には、レジスト膜が形成された1枚の被転写体(シリコンウェーハ等)に対して、同じフォトマスクを用いて、位置をずらしながら、複数回露光を行う。しかし、位相シフト膜の反射率が高くなると、位相シフト膜からの反射光の光量が大きくなるため、1回の露光によって、パターンを転写すべき領域だけでなく、その領域に隣接する他の領域のレジスト膜が感光されてしまう。この場合、隣接する2つの領域の境界部付近のレジスト膜は複数回露光されてしまうことになるため、その境界部付近のレジスト膜が感光されてしまい、所望とするパターンを被転写体に正確に転写することが困難であるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記の問題に鑑み、パターンを被転写体に正確に転写することが可能な反射型マスクブランク、反射型マスク、及び半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
(構成1)
基板と、前記基板上に形成されたEUV光を反射する多層反射膜と、前記多層反射膜の上に形成された積層膜とを含む反射型マスクブランクであって、
前記積層膜は、第1の層と、該第1の層の上に形成された第2の層とを含み、前記EUV光に対する絶対反射率が2.5%以下であり、
前記第1の層は、前記EUV光の位相をシフトさせる位相シフト膜を含む、反射型マスクブランク。
【0010】
(構成2)
前記第2の層は、光学干渉を利用して前記積層膜の絶対反射率を2.5%以下に低減させる干渉層からなる、構成1に記載の反射型マスクブランク。
【0011】
(構成3)
前記干渉層の膜厚が1nm以上20nm以下であり、屈折率nが0.85以上0.96以下である、構成2に記載の反射型マスクブランク。
【0012】
(構成4)
前記干渉層は、ルテニウム(Ru)を含む材料からなる、構成2又は構成3に記載の反射型マスクブランク。
【0013】
(構成5)
前記第2の層は、吸光効果を利用して前記積層膜の絶対反射率を2.5%以下に低減させる吸収層からなる、構成1に記載の反射型マスクブランク。
【0014】
(構成6)
前記吸収層の膜厚が5nm以上70nm以下であり、消衰係数kが0.02以上である、構成5に記載の反射型マスクブランク。
【0015】
(構成7)
前記吸収層は、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、及びニッケル(Ni)からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む材料からなる、構成5又は構成6に記載の反射型マスクブランク。
【0016】
(構成8)
前記第1の層の前記EUV光に対する相対反射率が3%以上40%以下であり、位相差が160~200°である、構成1から構成7のうちいずれかに記載の反射型マスクブランク。
【0017】
(構成9)
前記第1の層は、膜厚が5nm以上70nm以下であり、屈折率nが0.85以上0.96以下である、構成1から構成8のうちいずれかに記載の反射型マスクブランク。
【0018】
(構成10)
前記第1の層は、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、ルテニウム(Ru)、及びクロム(Cr)からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む材料からなる、構成1から構成9のうちいずれかに記載の反射型マスクブランク。
【0019】
(構成11)
基板と、前記基板上に形成されたEUV光を反射する多層反射膜と、前記多層反射膜の上に形成された積層膜とを含む反射型マスクブランクであって、
前記積層膜は、第1の層と、該第1の層の上に形成された第2の層とを含み、前記EUV光の位相をシフトさせる位相シフト膜であり、
前記第1の層は、前記EUV光に対する絶対反射率が2.5%以下である吸収層を含む、反射型マスクブランク。
【0020】
(構成12)
前記第2の層は、光学干渉を利用して前記積層膜によって反射されるEUV光の位相をシフトさせる干渉層からなる、構成11に記載の反射型マスクブランク。
【0021】
(構成13)
前記第2の層の膜厚が1nm以上20nm以下であり、屈折率nが0.85以上0.96以下である、構成11又は構成12に記載の反射型マスクブランク。
【0022】
(構成14)
前記第2の層は、ルテニウム(Ru)を含む材料からなる、構成11から構成13のうちいずれかに記載の反射型マスクブランク。
【0023】
(構成15)
前記第1の層の膜厚が5nm以上70nm以下であり、消衰係数kが0.02以上である、構成11から構成14のうちいずれかに記載の反射型マスクブランク。
【0024】
(構成16)
前記第1の層は、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、及びニッケル(Ni)からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む材料からなる、構成11から構成15のうちいずれかに記載の反射型マスクブランク。
【0025】
(構成17)
前記積層膜の前記EUV光に対する相対反射率が3%以上40%以下であり、位相差が160~200°である、構成11から構成16のうちいずれかに記載の反射型マスクブランク。
【0026】
(構成18)
前記多層反射膜と前記第1の層との間に保護膜を更に有し、
前記保護膜は、ルテニウム(Ru)を含む材料、珪素(Si)及び酸素(O)を含む材料、イットリウム(Y)と酸素(O)を含む材料、及び、クロム(Cr)を含む材料からなる群から選択される少なくとも1種の材料を含む、構成1から構成17のうちのいずれかに記載の反射型マスクブランク。
【0027】
(構成19)
構成1から構成18のうちいずれかに記載の反射型マスクブランクにおける前記積層膜がパターニングされた積層膜パターンを有する、反射型マスク。
【0028】
(構成20)
構成19に記載の反射型マスクを使用して、半導体基板上に転写パターンを形成する工程を有する、半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、パターンを被転写体に正確に転写することが可能な反射型マスクブランク、反射型マスク、及び半導体装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】反射型マスクブランクの要部の断面模式図である。
【
図2】積層膜の態様が(1)の場合における、反射型マスクの製造方法を示す模式図である。
【
図3】積層膜の態様が(2)の場合における、反射型マスクの製造方法を示す模式図である。
【
図5】反射型マスクの平面図及び部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の範囲を何ら制限するものではない。
【0032】
図1は、本実施形態の反射型マスクブランク100の要部の断面模式図である。
図1に示すように、反射型マスクブランク100は、基板10と、基板10の上に形成された多層反射膜12と、多層反射膜12の上に形成された保護膜14と、保護膜14の上に形成された積層膜16とを含む。積層膜16は、保護膜14の上に接するように形成された第1の層18と、第1の層18の上に形成された第2の層20とを含む。一方、基板10の裏面(多層反射膜12が形成された側と反対側の面)には、静電チャック用の裏面導電膜22が形成されている。
【0033】
なお、本明細書において、基板や膜の「上に」とは、その基板や膜の上面に接触する場合だけでなく、その基板や膜の上面に接触しない場合も含む。すなわち、基板や膜の「上に」とは、その基板や膜の上方に新たな膜が形成される場合や、その基板や膜との間に他の膜が介在している場合等を含む。また、「上に」とは、必ずしも鉛直方向における上側を意味するものではない。「上に」とは、基板や膜などの相対的な位置関係を示しているに過ぎない。
【0034】
<基板>
基板10は、EUV光による露光時の熱による転写パターンの歪みを防止するため、0±5ppb/℃の範囲内の低熱膨張係数を有するものが好ましく用いられる。この範囲の低熱膨張係数を有する素材としては、例えば、SiO2-TiO2系ガラス、多成分系ガラスセラミックス等を用いることができる。
【0035】
基板10の転写パターン(後述の位相シフトパターン、吸収層パターン及び/又は積層膜パターン)が形成される側の主表面は、平坦度を高めるために加工されることが好ましい。基板10の主表面の平坦度を高めることによって、パターンの位置精度や転写精度を高めることができる。例えば、EUV露光の場合、基板10の転写パターンが形成される側の主表面の132mm×132mmの領域において、平坦度が0.1μm以下であることが好ましく、更に好ましくは0.05μm以下、特に好ましくは0.03μm以下である。また、転写パターンが形成される側と反対側の主表面(裏面)は、露光装置に静電チャックによって固定される面であって、その142mm×142mmの領域において、平坦度が0.1μm以下、更に好ましくは0.05μm以下、特に好ましくは0.03μm以下である。なお、本明細書において平坦度は、TIR(Total Indicated Reading)で示される表面の反り(変形量)を表す値で、基板表面を基準として最小二乗法で定められる平面を焦平面とし、この焦平面より上にある基板表面の最も高い位置と、焦平面より下にある基板表面の最も低い位置との高低差の絶対値である。
【0036】
EUV露光の場合、基板10の転写パターンが形成される側の主表面の表面粗さは、二乗平均平方根粗さ(Rq)で0.1nm以下であることが好ましい。なお表面粗さは、原子間力顕微鏡で測定することができる。
【0037】
基板10は、その上に形成される膜(多層反射膜12など)の膜応力による変形を防止するために、高い剛性を有しているものが好ましい。特に、65GPa以上の高いヤング率を有しているものが好ましい。
【0038】
<多層反射膜>
多層反射膜12は、屈折率の異なる元素を主成分とする複数の層が周期的に積層された構成を有している。一般的に、多層反射膜12は、高屈折率材料である軽元素又はその化合物の薄膜(高屈折率層)と、低屈折率材料である重元素又はその化合物の薄膜(低屈折率層)とが交互に40~60周期程度積層された多層膜からなる。
多層反射膜12を形成するために、基板10側から高屈折率層と低屈折率層をこの順に複数周期積層してもよい。この場合、1つの(高屈折率層/低屈折率層)の積層構造が、1周期となる。
多層反射膜12を形成するために、基板10側から低屈折率層と高屈折率層をこの順に複数周期積層してもよい。この場合、1つの(低屈折率層/高屈折率層)の積層構造が、1周期となる。
【0039】
なお、多層反射膜12の最上層、すなわち多層反射膜12の基板10と反対側の表面層は、高屈折率層であることが好ましい。基板10側から高屈折率層と低屈折率層をこの順に積層する場合は、最上層が低屈折率層となる。しかし、低屈折率層が多層反射膜12の表面である場合、低屈折率層が容易に酸化されることで多層反射膜の表面の反射率が減少してしまうので、その低屈折率層の上に高屈折率層を形成することが好ましい。一方、基板10側から低屈折率層と高屈折率層をこの順に積層する場合は、最上層が高屈折率層となる。その場合は、最上層の高屈折率層が、多層反射膜12の表面となる。
【0040】
本実施形態において、高屈折率層は、Siを含む層であってもよい。高屈折率層は、Si単体を含んでもよく、Si化合物を含んでもよい。Si化合物は、Siと、B、C、N、及びOからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含んでもよい。Siを含む層を高屈折率層として使用することによって、EUV光の反射率に優れた多層反射膜が得られる。
【0041】
本実施形態において、低屈折率層は、Mo、Ru、Rh、及びPtからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含む層、あるいは、Mo、Ru、Rh、及びPtからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含む合金を含む層であってもよい。
【0042】
例えば、波長13~14nmのEUV光のための多層反射膜12としては、好ましくは、Mo膜とSi膜を交互に40~60周期程度積層したMo/Si多層膜を用いることができる。その他に、EUV光の領域で使用される多層反射膜として、例えば、Ru/Si周期多層膜、Mo/Be周期多層膜、Mo化合物/Si化合物周期多層膜、Si/Nb周期多層膜、Si/Mo/Ru周期多層膜、Si/Mo/Ru/Mo周期多層膜、Si/Ru/Mo/Ru周期多層膜などを用いることができる。露光波長を考慮して、多層反射膜の材料を選択することができる。
【0043】
このような多層反射膜12の単独での反射率は、例えば65%以上である。多層反射膜12の反射率の上限は、例えば73%である。なお、多層反射膜12に含まれる層の厚み及び周期は、ブラッグの法則を満たすように選択することができる。
【0044】
多層反射膜12は、公知の方法によって形成できる。多層反射膜12は、例えば、イオンビームスパッタ法により形成できる。
【0045】
例えば、多層反射膜12がMo/Si多層膜である場合、イオンビームスパッタ法により、Moターゲットを用いて、厚さ3nm程度のMo膜を基板12の上に形成する。次に、Siターゲットを用いて、厚さ4nm程度のSi膜を形成する。このような操作を繰り返すことによって、Mo/Si膜が40~60周期積層した多層反射膜12を形成することができる。このとき、多層反射膜12の基板10と反対側の表面層は、Siを含む層(Si膜)である。1周期のMo/Si膜の厚みは、7nmとなる。
【0046】
<保護膜>
後述する反射型マスク200の製造工程におけるドライエッチング及び洗浄から多層反射膜12を保護するために、多層反射膜12の上に、又は多層反射膜12の表面に接するように保護膜14を形成することができる。また、保護膜14は、電子線(EB)を用いた転写パターンの黒欠陥修正の際に、多層反射膜12を保護する機能も有している。ここで、
図1では、保護膜14が1層の場合を示しているが、保護膜14が2層以上の積層構造を有してもよい。保護膜14は、第1の層18をパターニングする際に使用するエッチャントや洗浄液に対して耐性を有する材料で形成されることが好ましい。多層反射膜12の上に保護膜14が形成されることにより、反射型マスク200を製造する際の多層反射膜12の表面へのダメージを抑制することができる。その結果、多層反射膜12のEUV光に対する反射率特性が良好となる。このような効果を得るために、保護膜14の厚みは、1nm以上20nmであることが好ましい。
【0047】
本実施形態の反射型マスクブランク100では、保護膜14の材料として、保護膜14の上に形成される第1の層18をパターニングするためのドライエッチングに用いられるエッチングガスに対して、耐性のある材料を使用することができる。第1の層18が複数の層で形成される場合には、第1の層18に接する保護膜14(保護膜14が複数層含む場合には、保護膜14の最上層)の材料として、第1の層18を形成する層のうち、第1の層18の最下層(保護膜14に接する層)をパターニングするためのドライエッチングに用いられるエッチングガスに対して、耐性のある材料を使用することができる。保護膜14の材料は、保護膜14に対する第1の層18の最下層のエッチング選択比(第1の層18の最下層のエッチング速度/保護膜14のエッチング速度)が1.5以上、好ましくは3以上となる材料であることが好ましい。
【0048】
例えば、第1の層18の最下層が、ルテニウム(Ru)と、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)及びコバルト(Co)のうち少なくとも1以上の元素とを含む金属を含む材料(所定のRu系材料)や、ルテニウム(Ru)と、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)及びレニウム(Re)のうち少なくとも1以上の元素とを含む金属を含む材料(所定のRu系材料)からなる薄膜である場合には、塩素系ガス及び酸素ガスの混合ガス、又は酸素ガスを用いたドライエッチングガスにより、第1の層18の最下層をエッチングすることができる。このエッチングガスに対して、耐性を有する保護膜14の材料として、ケイ素(Si)、ケイ素(Si)及び酸素(O)を含む材料、又はケイ素(Si)及び窒素(N)を含む材料などのケイ素系材料を選択することができる。したがって、保護膜14の表面に接する第1の層18の最下層が、所定のRu系材料からなる薄膜の場合には、保護膜14は、上記ケイ素系材料からなることが好ましい。上記ケイ素系材料は、塩素系ガス及び酸素ガスの混合ガス、又は酸素ガスを用いたドライエッチングガスに対して耐性を有し、酸素の含有量が多いほど、耐性は大きい。そのため、保護膜14の材料は、酸化ケイ素(SiOx、1≦x≦2)であることがより好ましく、xが大きい方が更に好ましく、SiO2であることが特に好ましい。
【0049】
また、保護膜14の表面に接する第1の層18の最下層が、タンタル(Ta)を含む材料からなる薄膜である場合には、酸素ガスを含まないハロゲン系ガスを用いたドライエッチングにより、第1の層18の最下層をエッチングすることができる。このエッチングガスに対して耐性を有する保護膜14の材料として、ルテニウム(Ru)を主成分として含む材料を使用することができる。
【0050】
また、保護膜14の表面に接する第1の層18の最下層が、クロム(Cr)を含む材料からなる薄膜である場合には、酸素ガスを含まない塩素系ガス、又は酸素ガスと塩素系ガスとの混合ガスのドライエッチングガスを用いたドライエッチングにより、第1の層18の最下層をエッチングすることができる。このエッチングガスに対して耐性を有する保護膜14の材料として、ルテニウム(Ru)を主成分として含む材料を使用することができる。
【0051】
第1の層18の最下層が、タンタル(Ta)又はクロム(Cr)を含む材料の場合に用いることのできる保護膜14の材料は、上述のように、ルテニウムを主成分として含む材料である。ルテニウムを主成分として含む材料の例として、具体的には、Ru金属単体、Ruにチタン(Ti)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、ホウ素(B)、ランタン(La)、コバルト(Co)、及びレニウム(Re)から選択される少なくとも1種の金属を含有するRu合金、Ru金属、及び、Ru合金に窒素を含む材料を挙げることができる。
【0052】
また、第1の層18の最下層が、タンタル(Ta)又はクロム(Cr)を含む材料で形成される場合、保護膜14の最下層と最上層は、上記のルテニウムを主成分として含む材料で形成することができる。最下層と最上層との間の層は、Ru以外の金属若しくはそれを含む合金で形成することができる。
【0053】
Ru合金のRu含有比率は、50原子%以上100原子%未満、好ましくは80原子%以上100原子%未満、更に好ましくは95原子%以上100原子%未満である。特に、Ru合金のRu含有比率が95原子%以上100原子%未満の場合は、多層反射膜12を構成する元素(ケイ素)の、保護膜14への拡散を抑制することができる。また、EUV光の反射率を十分確保しつつ、マスクの洗浄耐性を向上させることができる。さらに、保護膜14は、第1の層18をエッチング加工する時に、エッチングストッパとして機能する。また、保護膜14は、多層反射膜12の経時変化を防止することができる。
【0054】
保護膜14の材料として、Ruを含む化合物、例えば、RuNb、RuN、及びRuTiから選択される少なくとも1種を含む材料を用いることができる。また、保護膜14の材料として、YとOを含む化合物、例えば、Y2O3を含む材料を用いることができる。また、保護膜14の材料として、Crを含む化合物、例えば、CrNを含む材料を用いることができる。
【0055】
保護膜14の厚みは、保護膜14が多層反射膜12を保護する機能を果たすことができる限り、特に制限されない。EUV光の反射率の観点から、保護膜14の厚みは、好ましくは、1.0nm~8.0nm、より好ましくは、1.5nm~6.0nmである。
【0056】
保護膜14の形成方法としては、公知の方法を用いることができる。保護膜14の形成方法の例として、スパッタリング法及びイオンビームスパッタリング法が挙げられる。
【0057】
反射型マスクブランク100は、さらに、基板10の多層反射膜12が形成されている側とは反対側の主表面上に、裏面導電膜22を有している。裏面導電膜22は、静電チャックによって反射型マスクブランク100を吸着する際に使用される。
【0058】
反射型マスクブランク100は、基板10と多層反射膜12との間に形成された下地膜を備えてもよい。下地膜は、例えば、基板10の表面の平滑性向上の目的で形成される。下地膜は、例えば、欠陥低減、多層反射膜の反射率向上、多層反射膜の応力補正等の目的で形成される。
【0059】
<積層膜>
本実施形態の反射型マスクブランク100は、多層反射膜12(あるいは保護膜14付きの多層反射膜12)の上に形成された積層膜16を有している。積層膜16は、保護膜14に接するように形成された第1の層18と、第1の層18の上に形成された第2の層20を含む積層構造からなる。
【0060】
本実施形態の反射型マスクブランク100において、積層膜16の態様は、以下の2つがある。
(1)第1の層18及び第2の層20を合わせた積層膜16のEUV光に対する絶対反射率が2.5%以下(バイナリ型)であり、かつ、第1の層18(下層)が位相シフト膜として機能(位相シフト型)する。
(2)第1の層18及び第2の層20を合わせた積層膜16が位相シフト膜として機能(位相シフト型)し、かつ、第1の層18(下層)のEUV光に対する絶対反射率が2.5%以下(バイナリ型)である。
【0061】
【0062】
[積層膜の態様が上記(1)の場合]
まず、積層膜16の態様が上記(1)の場合について説明する。
上記(1)の場合には、第1の層18及び第2の層20からなる積層膜16は、EUV光に対する反射率(絶対反射率)が2.5%以下であり、好ましくは2%以下である。ここでいう「絶対反射率」とは、積層膜16から反射されるEUV光の反射率(入射光強度と反射光強度の比)をいう。
【0063】
上記(1)の場合、第1の層18(下層)は、EUV光の位相をシフトさせる位相シフト膜からなる。第1の層18のEUV光に対する反射率(相対反射率)は、3%以上40%以下(絶対反射率:2%~27%)であることが好ましい。ここで、「相対反射率」とは、位相シフトパターン(位相シフト膜)のない部分での多層反射膜12(保護膜14付きの多層反射膜12を含む)から反射されるEUV光の反射率を100%としたときの、位相シフトパターン(位相シフト膜)から反射されるEUV光の反射率である。
【0064】
第1の層18から反射されたEUV光は、第1の層18がエッチング等によって除去されることで露出した多層反射膜12(保護膜14付きの多層反射膜12を含む)から反射されるEUV光に対して、160~200°の位相差を有することが好ましい。すなわち、第1の層18は、EUV光に対して160~200°の位相差を生じさせる位相シフト膜からなることが好ましい。
【0065】
十分な位相シフト効果を得るために、第1の層18は、膜厚が5nm以上70nm以下であることが好ましく、10nm以上50nm以下であることがより好ましい。また、第1の層18は、屈折率nが0.85以上0.96以下であることが好ましく、0.88以上0.96以下であることがより好ましい。
【0066】
第1の層18は、例えば、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、ルテニウム(Ru)、及びチタン(Ti)から選択される少なくとも1種の元素を含む材料からなる。
【0067】
タンタル(Ta)を含む材料の例として、タンタル(Ta)に、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)、ホウ素(B)及び水素(H)から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する材料が挙げられる。これらの中でも、タンタル(Ta)に、窒素(N)を含有する材料が好ましい。このような材料の具体例としては、窒化タンタル(TaN)、酸化窒化タンタル(TaON)、ホウ化窒化タンタル(TaBN)、及びホウ化酸化窒化タンタル(TaBON)等が挙げられる。
【0068】
第1の層18がTa及びNを含む場合、Ta及びNの組成範囲(原子比率)は、3:1~20:1が好ましく、4:1~12:1がより好ましい。
【0069】
クロム(Cr)を含む材料の例として、クロム(Cr)に、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)、ホウ素(B)及び水素(H)から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する材料が挙げられる。これらの中でも、クロム(Cr)に、窒素(N)及び/又は炭素(C)を含有する材料が好ましい。このような材料の具体例としては、窒化クロム(CrN)、酸化窒化クロム(CrON)、炭化クロム(CrC)、酸化炭化クロム(CrOC)、炭化窒化クロム(CrCN)、及び酸化炭化窒化クロム(CrOCN)等が挙げられる。
【0070】
第1の層18がCr及びNを含む場合、Cr及びNの組成範囲(原子比率)は、30:1~3:2が好ましく、20:1~2:1がより好ましい。第1の層18がCr及びCを含む場合、Cr及びCの組成範囲(原子比率)は、5:2~20:1が好ましく、3:1~12:1がより好ましい。
【0071】
ルテニウム(Ru)を含む材料の例として、ルテニウム(Ru)単体、窒化ルテニウム(RuN)、ルテニウム(Ru)と、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)及びレニウム(Re)から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する材料が挙げられる。
【0072】
Ruの屈折率nは、n=0.886(消衰係数k=0.017)であり、高反射率の位相シフト膜の材料として好ましい。しかしながら、RuO等のRu系化合物は、結晶化した構造になりやすく、また加工特性も悪い。すなわち、結晶化した金属の結晶粒子は、位相シフトパターンを形成する際に側壁ラフネスが大きくなりやすい。そのため、所定の位相シフトパターンを形成する際に悪影響を及ぼす場合がある。一方、位相シフト膜の材料の金属がアモルファスである場合には、位相シフトパターンを形成する際の悪影響を低減することができる。Ruに所定の元素(X)を添加することにより、位相シフト膜の材料の金属をアモルファス化するとともに、加工特性を向上させることができる。所定の元素(X)として、Cr、Ni、Co、V、Nb、Mo、W及びReのうち少なくとも1種の元素を選択することができる。
【0073】
なお、Niの屈折率n及び消衰係数kは、n=0.948及びk=0.073である。また、Coは、n=0.933及びk=0.066であり、Crは、n=0.932及びk=0.039である。また、Vの屈折率n及び消衰係数kは、n=0.944及びk=0.025、Nbの屈折率n及び消衰係数kは、n=0.933及びk=0.005、Moの屈折率n及び消衰係数kは、n=0.923及びk=0.007、Wの屈折率n及び消衰係数kは、n=0.933及びk=0.033、Reの屈折率n及び消衰係数kは、n=0.914及びk=0.04である。Ruに所定の元素(X)を添加した二元系の材料(RuCr、RuNi及びRuCo)は、RuTaよりも位相シフト膜の薄膜化が可能である。また、Ni及びCoの方が、Crよりも消衰係数kが大きいため、元素(X)としてNi及び/又はCoを選択した方が、Crを選択するよりも位相シフト膜の薄膜化が可能である。
【0074】
Ruに所定の元素(X)を添加した二元系の材料(RuCr、RuNi及びRuCo)は、RuTaと比べて、加工特性がよい。Taは酸化されると塩素系ガス及び酸素ガスでエッチングが困難である。特に、RuCrは、塩素系ガス及び酸素ガスの混合ガスで容易にエッチングすることが可能であるため、加工特性に優れている。
【0075】
Ruに所定の元素(X)を添加した二元系の材料(RuCr、RuNi及びRuCo)は、アモルファス構造であり、塩素系ガス及び酸素ガスの混合ガスにより、容易にエッチングをすることが可能である。また、これらの材料は、酸素ガスによるエッチングが可能である。三元系の材料(RuCrNi、RuCrCo及びRuNiCo)及び四元系の材料(RuCrNiCo)についても同様であると考えられる。
【0076】
また、上記の二元系の材料の他、RuにV、Nb、Mo、W又はReを添加した二元系の材料(RuV、RuNb、RuMo、RuW及びRuRe)は、RuTaと比べて加工性がよい。RuCrと同様、RuW及びRuMoは、特に加工特性に優れている。
【0077】
また、Ruに所定の元素(X)を添加した二元系の材料(RuV、RuNb、RuMo、RuW及びRuRe)は、アモルファス構造であり、塩素系ガス及び酸素ガスの混合ガスにより、容易にエッチングをすることが可能である。また、これらの材料は、酸素ガスによるエッチングが可能である。三元系の材料及び四元系の材料についても同様であると考えられる。
【0078】
チタン(Ti)を含む材料の例として、タンタル(Ta)及びチタン(Ti)を含むTaTi系材料が挙げられる。TaTi系材料の例として、TaTi合金、並びに、TaTi合金に酸素、窒素、炭素及びホウ素のうち少なくとも一つを含有したTaTi化合物が挙げられる。TaTi化合物の例として、TaTiN、TaTiO、TaTiON、TaTiCON、TaTiB、TaTiBN、TaTiBO、TaTiBON、及びTaTiBCONが挙げられる。
【0079】
第1の層18の上に形成された第2の層20(上層)は、光学干渉を利用して積層膜16の反射率(絶対反射率)を2.5%以下に低減させる干渉層からなる。あるいは、第2の層20(上層)は、吸光効果を利用して積層膜16の反射率(絶対反射率)を2.5%以下に低減させる吸収層からなる。
【0080】
ここでいう「干渉層」は、反射防止層とも呼ばれるものであり、光学干渉を利用して積層膜16の絶対反射率を低減させる層である。第2の層20(干渉層)が1層の場合、第2の層20の表面で反射した光と、積層膜16、保護膜14、第1の層18、及び第2の層20各々の界面から反射した光との光学干渉による打ち消し合いの効果を利用して、積層膜16の絶対反射率を2.5%以下に低減させることができる。第2の層20(干渉層)が複数層で構成される場合、さらに各層の界面からの反射光の光学干渉による打ち消し合いの効果も含めて、積層膜16の絶対反射率を2.5%以下に低減させることができる。なお、光学干渉を利用した反射率低減の原理は公知であり、例えば、特開2002-280291号公報に開示されている。
【0081】
第2の層20が干渉層からなる場合、第2の層20(干渉層)の膜厚は、1nm以上20nm以下であることが好ましく、3nm以上12nm以下がより好ましい。第2の層20(干渉層)の屈折率nは、0.85以上0.96以下であることが好ましく、0.88以上0.96以下であることがより好ましい。
【0082】
第2の層20が干渉層からなる場合、第2の層20は、例えば、Ruを含む材料からなる。Ruを含む材料の例は、上述した第1の層18に用いられるRuを含む材料の例と同様である。
【0083】
第2の層20が吸収層からなる場合、第2の層20(吸収層)の膜厚は、5nm以上70nm以下であることが好ましく、8nm以上55nm以下がより好ましい。第2の層20(吸収層)の消衰係数kは、0.02以上であることが好ましく、0.03以上がより好ましい。さらに、第2の層20(吸収層)の消衰係数kは、0.1以下であることが好ましい。
【0084】
第2の層20が吸収層からなる場合、第2の層20は、例えば、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、及びニッケル(Ni)から選択される少なくとも1種の元素を含む材料からなる。この場合のタンタル(Ta)を含む材料の例は、上述した第1の層18に用いられるタンタル(Ta)を含む材料の例と同様であるが、酸素を含まない方が消衰係数を大きくできるため好ましい。クロム(Cr)を含む材料の例は、上述した第1の層18に用いられるクロム(Cr)を含む材料の例と同様であるが、酸素を含まない方が消衰係数を大きくできるため好ましい。
【0085】
第2の層20が吸収層からなる場合、第2の層20の材料として、コバルト(Co)及びニッケル(Ni)のうち少なくとも1以上の元素に、タングステン(W)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、イットリウム(Y)、リン(P)及びスズ(Sn)のうち少なくとも1以上の元素(X)を添加したCo-X合金、Ni-X合金、CoNi-X合金を用いることができる。添加元素(X)としては、タングステン(W)、タンタル(Ta)及び/又はスズ(Sn)を含むことが好ましく、タンタル(Ta)を含むことがより好ましい。第2の層20の材料が、適切な添加元素(X)を含むことにより、第2の層20を、高い消衰係数(吸収係数)に保ちつつ、適切なエッチング速度に制御することができる。
【0086】
第2の層20の材料として、具体的には、Co単体、Ni単体、CoTa3、CoTa、Co3Ta、NiTa3、NiTa又はNiTa3を好ましく用いることができる。
【0087】
第2の層20の材料は、コバルト(Co)及びニッケル(Ni)の濃度の合計が、10原子%以上であることが好ましく、20原子%以上であることがより好ましい。また、コバルト(Co)及びニッケル(Ni)の濃度の合計が、90原子%以下であることが好ましく、85原子%以下であることがより好ましい。
【0088】
第2の層20の材料がコバルト(Co)を含む場合、コバルト(Co)の濃度は、10原子%以上であることが好ましく、20原子%以上であることがより好ましい。また、コバルト(Co)の濃度が、90原子%以下であることが好ましく、85原子%以下であることがより好ましい。
【0089】
第2の層20の材料がニッケル(Ni)を含む場合、ニッケル(Ni)の濃度は、10原子%以上であることが好ましく、20原子%以上であることがより好ましい。また、ニッケル(Ni)の濃度が、90原子%以下であることが好ましく、85原子%以下であることがより好ましい。
【0090】
添加元素(X)がタンタル(Ta)、タングステン(W)又はスズ(Sn)の場合、タンタル(Ta)、タングステン(W)又はスズ(Sn)の濃度は、10原子%以上であることが好ましく、15原子%以上であることがより好ましい。また、タンタル(Ta)、タングステン(W)又はスズ(Sn)の濃度が、90原子%以下であることが好ましく、80原子%以下であることがより好ましい。
【0091】
Co-X合金の添加元素(X)がTaの場合には、CoとTaとの組成比(Co:Ta)は、9:1~1:9が好ましく、4:1~1:4がより好ましい。CoとTaとの組成比が3:1、1:1及び1:3としたときの各試料に対してX線回折装置(XRD)による分析及び断面TEM観察を行ったところ、すべての試料において、Co及びTa由来のピークがブロードに変化し、アモルファス構造となっていた。
【0092】
また、Ni-X合金の添加元素(X)がTaの場合には、NiとTaとの組成比(Ni:Ta)は、9:1~1:9が好ましく、4:1~1:4がより好ましい。NiとTaとの組成比が3:1、1:1及び1:3としたときの各試料に対してX線回折装置(XRD)による分析及び断面TEM観察を行ったところ、すべての試料において、Ni及びTa由来のピークがブロードに変化し、アモルファス構造となっていた。
【0093】
また、CoNi-X合金の添加元素(X)がTaの場合には、CoNiとTaとの組成比(CoNi:Ta)は、9:1~1:9が好ましく、4:1~1:4がより好ましい。
【0094】
また、Co-X合金、Ni-X合金又はCoNi-X合金は、上記添加元素(X)の他に、屈折率及び消衰係数に大きく影響を与えない範囲で、窒素(N)、酸素(O)、炭素(C)及び/又はホウ素(B)等の他の元素を含んでもよい。
【0095】
[積層膜の態様が上記(2)の場合]
次に、積層膜16の態様が上記(2)の場合について説明する。
上記(2)の場合には、第1の層18及び第2の層20を合わせた積層膜16は、位相シフト膜として機能する。
【0096】
第1の層18及び第2の層20を合わせた積層膜16のEUV光に対する反射率(相対反射率)は、3%以上40%以下であることが好ましい。ここで、「相対反射率」とは、積層膜16のない部分での多層反射膜12(保護膜14付きの多層反射膜12を含む)から反射されるEUV光の反射率を100%としたときの、積層膜16から反射されるEUV光の反射率である。
【0097】
積層膜16から反射されたEUV光は、積層膜16がエッチング等によって除去されることで露出した多層反射膜12(保護膜14付きの多層反射膜12を含む)から反射されるEUV光に対して、160~200°の位相差を有することが好ましい。すなわち、積層膜16は、EUV光に対して160~200°の位相差を生じさせる位相シフト膜からなることが好ましい。
【0098】
第2の層20(上層)は、光学干渉を利用して積層膜16によって反射されるEUV光の位相をシフトさせる干渉層からなることが好ましい。
【0099】
ここでいう「干渉層」は、上述の反射防止層とは逆に、光学干渉を利用して、積層膜16の反射率を高める層である。第2の層20(干渉層)が1層の場合、第2の層20の表面で反射した光と、積層膜16、保護膜14、第1の層18、及び第2の層20各々の界面から反射した光との光学干渉による強め合いの効果を利用して、積層膜16の相対反射率を3%以上40%以下に高めることができる。第2の層20(干渉層)が複数層で構成される場合、さらに各層の界面からの反射光の光学干渉による強め合いの効果も含めて、積層膜16の相対反射率を3%以上40%以下に高めることができる。
【0100】
十分な位相シフト効果を得るために、第2の層20は、膜厚が1nm以上20nm以下であることが好ましく、3nm以上12nm以下がより好ましい。また、第2の層20は、屈折率nが0.85以上0.96以下であることが好ましく、0.88以上0.96以下であることがより好ましい。
【0101】
第2の層20が干渉層からなる場合、第2の層20は、例えば、Ruを含む材料からなる。Ruを含む材料の例は、上述した(1)の場合における、第1の層18に用いられるRuを含む材料の例と同様である。
【0102】
積層膜16の態様が上記(2)の場合には、第1の層18(下層)は、EUV光に対する絶対反射率が2.5%以下(バイナリ型)の吸収層からなる。吸収層の絶対反射率は2%以下がより好ましい。ここでいう「絶対反射率」とは、第1の層18から反射されるEUV光の反射率(入射光強度と反射光強度の比)をいう。
【0103】
第1の層18は、例えば、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、及びニッケル(Ni)から選択される少なくとも1種の元素を含む材料からなる。この場合のタンタル(Ta)を含む材料の例は、上述した(1)の場合における、第1の層18に用いられるタンタル(Ta)を含む材料の例と同様である。クロム(Cr)を含む材料の例は、上述した(1)の場合における、第1の層18に用いられるクロム(Cr)を含む材料の例と同様である。コバルト(Co)を含む材料の例は、上述した(1)の場合における、第1の層18に用いられるコバルト(Co)を含む材料の例と同様である。ニッケル(Ni)を含む材料の例は、上述した(1)の場合における、第1の層18に用いられるニッケル(Ni)を含む材料の例と同様である。
【0104】
なお、上記の説明において、相対反射率と絶対反射率は換算することが可能である。例えば、多層反射膜12(保護膜14を含む)の絶対反射率が68%である場合には、以下の式により、相対反射率と絶対反射率を換算することができる。
相対反射率(%)= 絶対反射率(%) × (100/68)
【0105】
本実施形態の反射型マスクブランク100において、積層膜16の上に、レジスト膜24が形成されてもよい。
図1にはこの態様が示されている。レジスト膜24に電子線描画装置によってパターンを描画及び露光した後、現像工程を経ることによって、レジストパターンを形成することができる。このレジストパターンをマスクとして積層膜16にドライエッチングを行うことによって、積層膜16にパターン(積層膜パターン)を形成することができる。
【0106】
<反射型マスク及びその製造方法>
本実施形態の反射型マスクブランク100を使用して、本実施形態の反射型マスクを製造することができる。以下、反射型マスクの製造方法の例について説明する。
反射型マスクの製造方法についても、積層膜16の態様が上記(1)、(2)の場合を分けて説明する。
【0107】
[積層膜の態様が上記(1)の場合]
積層膜16の態様が上記(1)の場合、第1の層18(下層)は、EUV光の位相を160~200°シフトさせる位相シフト膜からなる。第2の層20(上層)は、光学干渉を利用して積層膜16の反射率(絶対反射率)を2.5%以下に低減させる干渉層からなる。あるいは、第2の層20(上層)は、吸光効果を利用して積層膜16の反射率(絶対反射率)を2.5%以下に低減させる吸収層からなる。以下では、第2の層20が吸収層からなる場合について説明する。
【0108】
図2は、反射型マスク200の製造方法を示す模式図である。
図2に示すように、まず、基板10と、基板10の上に形成された多層反射膜12と、多層反射膜12の上に形成された保護膜14と、保護膜14の上に形成された積層膜16(第1の層18及び第2の層20)とを有する反射型マスクブランク100を準備する(
図2(a))。つぎに、積層膜16の上に、第1のレジスト膜24を形成する(
図2(b))。第1のレジスト膜24に、電子線描画装置によってパターンを描画し、さらに現像・リンス工程を経ることによって、第1のレジストパターン24aを形成する(
図2(c))。
【0109】
第1のレジストパターン24aをマスクとして、第2の層20(上層)をドライエッチングする。これにより、第2の層20の第1のレジストパターン24aによって被覆されていない部分がエッチングされ、吸収層パターン30が形成される(
図2(d))。
【0110】
なお、第2の層20をドライエッチングするためのエッチングガスとしては、第1の層18との間でエッチング選択性のあるエッチングガスを用いればよい。エッチングガスは、第2の層20の材料に応じて、フッ素系ガス及び/又は塩素系ガスを用いることができる。フッ素系ガスとしては、CF4、CHF3、C2F6、C3F6、C4F6、C4F8、CH2F2、CH3F、C3F8、SF6、及びF2等を用いることができる。塩素系ガスとしては、Cl2、SiCl4、CHCl3、CCl4、及びBCl3等を用いることができる。また、フッ素系ガス及び/又は塩素系ガスと、O2とを所定の割合で含む混合ガスを用いることができる。これらのエッチングガスは、必要に応じて、更に、He及び/又はArなどの不活性ガスを含むことができる。
【0111】
吸収層パターン30が形成された後、レジスト剥離液により第1のレジストパターン24aを除去する。第1のレジストパターン24aを除去した後、吸収層パターン30及び第1の層18の上に、第2のレジスト膜26を形成する(
図2(e))。第2のレジスト膜26に、電子線描画装置によってパターンを描画し、さらに現像・リンス工程を経ることによって、第2のレジストパターン26aを形成する(
図2(f))。
【0112】
第2のレジストパターン26aをマスクとして、第1の層18(下層)をドライエッチングする。これにより、第1の層18の、第2のレジストパターン26aによって被覆されていない部分がエッチングされ、位相シフトパターン32が形成される(
図2(g))。
【0113】
なお、第1の層18をドライエッチングするためのエッチングガスとしては、保護膜14との間でエッチング選択性のあるエッチングガスを用いればよい。エッチングガスは、第1の層18の材料に応じて、フッ素系ガス及び/又は塩素系ガスを用いることができる。フッ素系ガスとしては、CF4、CHF3、C2F6、C3F6、C4F6、C4F8、CH2F2、CH3F、C3F8、SF6、及びF2等を用いることができる。塩素系ガスとしては、Cl2、SiCl4、CHCl3、CCl4、及びBCl3等を用いることができる。また、フッ素系ガス及び/又は塩素系ガスと、O2とを所定の割合で含む混合ガスを用いることができる。これらのエッチングガスは、必要に応じて、更に、He及び/又はArなどの不活性ガスを含むことができる。
【0114】
位相シフトパターン32が形成された後、レジスト剥離液により第2のレジストパターン26aを除去する。第2のレジストパターン26aを除去した後、酸性やアルカリ性の水溶液を用いたウェット洗浄工程を経ることによって、本実施形態の反射型マスク200が得られる(
図2(h))。
【0115】
このようにして得られた反射型マスク200は、基板10側から順番に、多層反射膜12、保護膜14、位相シフトパターン32、及び吸収層パターン30が積層された構成を有している。
【0116】
多層反射膜12(保護膜14を含む)が露出している領域34は、EUV光を反射する機能を有している。多層反射膜12(保護膜14を含む)が位相シフトパターン32のみによって覆われている領域36は、位相シフト型の領域であり、パターン転写像のコントラストを高めることができる。多層反射膜12(保護膜14を含む)が位相シフトパターン32及び吸収層パターン30によって覆われている領域38は、バイナリ型の領域であり、位相シフトパターン32からの反射光(漏れ光)によって、被転写体に形成されたレジスト膜が感光されることを防止する機能を有している。
なお、反射型マスク200の製造方法はこれに限られず、先に多層反射膜12(保護膜14を含む)が露出している領域34を形成した後、多層反射膜12(保護膜14を含む)が位相シフトパターン32のみによって覆われている領域36を形成してもよい。
【0117】
[積層膜の態様が上記(2)の場合]
積層膜16の態様が上記(2)の場合、第1の層18及び第2の層20を合わせた積層膜16は、位相シフト膜として機能する。第2の層20(上層)は、光学干渉を利用して積層膜16によって反射されるEUV光の位相を160~200°シフトさせる干渉層からなる。第1の層18(下層)は、EUV光に対する絶対反射率が2.5%以下(バイナリ型)の吸収層からなる。
【0118】
図3は、反射型マスク200の製造方法を示す模式図である。
図3に示すように、まず、基板10と、基板10の上に形成された多層反射膜12と、多層反射膜12の上に形成された保護膜14と、保護膜14の上に形成された積層膜16(第1の層18及び第2の層20)とを有する反射型マスクブランク100を準備する(
図3(a))。つぎに、積層膜16の上に、第1のレジスト膜24を形成する(
図3(b))。第1のレジスト膜24に、電子線描画装置によってパターンを描画し、さらに現像・リンス工程を経ることによって、第1のレジストパターン24aを形成する(
図3(c))。
【0119】
第1のレジストパターン24aをマスクとして、積層膜16(第1の層18及び第2の層20)をドライエッチングする。第1の層18と第2の層20とは、互いの間でエッチング選択性を有するエッチングガスを用いて2段階のエッチングを行う。これにより、積層膜16の第1のレジストパターン24aによって被覆されていない部分がエッチングされ、積層膜パターン40(位相シフトパターン)が形成される(
図3(d))。
【0120】
第1の層18及び第2の層20のエッチングガスは、第1の層18及び第2の層20の材料に応じて、フッ素系ガス及び/又は塩素系ガスを用いることができる。フッ素系ガスとしては、CF4、CHF3、C2F6、C3F6、C4F6、C4F8、CH2F2、CH3F、C3F8、SF6、及びF2等を用いることができる。塩素系ガスとしては、Cl2、SiCl4、CHCl3、CCl4、及びBCl3等を用いることができる。また、フッ素系ガス及び/又は塩素系ガスと、O2とを所定の割合で含む混合ガスを用いることができる。これらのエッチングガスは、必要に応じて、更に、He及び/又はArなどの不活性ガスを含むことができる。
なお、第1の層18をドライエッチングするためのエッチングガスとしては、保護膜14との間でエッチング選択性のあるエッチングガスを用いればよい。
【0121】
積層膜パターン40が形成された後、レジスト剥離液により第1のレジストパターン24aを除去する。第1のレジストパターン24aを除去した後、積層膜パターン40の上に、第2のレジスト膜26を形成する(
図3(e))。第2のレジスト膜26に、電子線描画装置によってパターンを描画し、さらに現像・リンス工程を経ることによって、第2のレジストパターン26aを形成する(
図3(f))。
【0122】
第2のレジストパターン26aをマスクとして、第2の層20(上層)をドライエッチングする。これにより、第2の層20の、第2のレジストパターン26aによって被覆されていない部分がエッチングされ、第2の層20の下にあった第1の層18が露出する。この露出した第1の層18によって、吸収層パターン42が形成される(
図3(g))。
【0123】
なお、第2の層20をドライエッチングするためのエッチングガスとしては、第1の層18との間でエッチング選択性のあるエッチングガスを用いればよい。
【0124】
吸収層パターン42が形成された後、レジスト剥離液により第2のレジストパターン26aを除去する。第2のレジストパターン26aを除去した後、酸性やアルカリ性の水溶液を用いたウェット洗浄工程を経ることによって、本実施形態の反射型マスク200が得られる(
図3(h))。
【0125】
このようにして得られた反射型マスク200は、基板10の上に、多層反射膜12、保護膜14、及び積層膜パターン40が積層された構成を有している。
【0126】
多層反射膜12(保護膜14を含む)が露出している領域44は、EUV光を反射する機能を有している。多層反射膜12(保護膜14を含む)が積層膜パターン40(第1の層18及び第2の層20)によって覆われている領域46は、位相シフト型の領域であり、パターン転写像のコントラストを高めることができる。多層反射膜12(保護膜14を含む)が吸収層パターン42(第1の層18)のみによって覆われている領域48は、バイナリ型の領域であり、積層膜パターン40(位相シフト膜)からの反射光(漏れ光)によって、被転写体に形成されたレジスト膜が感光されることを防止する機能を有している。
なお、反射型マスク200の製造方法はこれに限られず、先に多層反射膜12(保護膜14を含む)が吸収層パターン42のみによって覆われている領域48を形成した後、多層反射膜12(保護膜14を含む)が露出している領域44を形成してもよい。
【0127】
<半導体装置の製造方法>
本実施形態の反射型マスク200を使用したリソグラフィーにより、半導体基板上に転写パターンを形成することができる。この転写パターンは、反射型マスク200のパターンが転写された形状を有している。半導体基板上に反射型マスク200によって転写パターンを形成することによって、半導体装置を製造することができる。
【0128】
図4を用いて、レジスト付き半導体基板56にEUV光によってパターンを転写する方法について説明する。
【0129】
図4は、パターン転写装置50を示している。パターン転写装置50は、レーザープラズマX線源52、反射型マスク200、及び、縮小光学系54等を備えている。縮小光学系54としては、X線反射ミラーが用いられている。
【0130】
反射型マスク200で反射されたパターンは、縮小光学系54により、通常1/4程度に縮小される。例えば、露光波長として13~14nmの波長帯を使用し、光路が真空中になるように予め設定する。このような条件で、レーザープラズマX線源52で発生したEUV光を、反射型マスク200に入射させる。反射型マスク200によって反射された光を、縮小光学系54を介して、レジスト付き半導体基板56上に転写する。
【0131】
反射型マスク200によって反射された光は、縮小光学系54に入射する。縮小光学系54に入射した光は、レジスト付き半導体基板56上のレジスト層に転写パターンを形成する。露光されたレジスト層を現像することによって、レジスト付き半導体基板56上にレジストパターンを形成することができる。レジストパターンをマスクとして半導体基板56をエッチングすることにより、半導体基板上に例えば所定の配線パターンを形成することができる。このような工程及びその他の必要な工程を経ることで、半導体装置が製造される。
【実施例】
【0132】
以下、本発明のさらに具体的な実施例について説明する。
[実施例1]
SiO2-TiO2系のガラス基板(6インチ角、厚さが6.35mm)を準備した。このガラス基板の端面を面取り加工、及び研削加工し、更に酸化セリウム砥粒を含む研磨液で粗研磨処理した。これらの処理を終えたガラス基板を両面研磨装置のキャリアにセットし、研磨液にコロイダルシリカ砥粒を含むアルカリ水溶液を用い、所定の研磨条件で精密研磨を行った。精密研磨終了後、ガラス基板に対し洗浄処理を行った。得られたガラス基板の主表面の表面粗さは、二乗平均平方根粗さ(Rq)で、0.10nm以下であった。得られたガラス基板の主表面の平坦度は、測定領域132mm×132mmにおいて、30nm以下であった。
【0133】
上記のガラス基板の裏面に、以下の条件で、CrNからなる裏面導電膜をマグネトロンスパッタリング法により形成した。
(条件):Crターゲット、Ar+N2ガス雰囲気(Ar:N2=90%:10%)、膜組成(Cr:90原子%、N:10原子%)、膜厚20nm
【0134】
ガラス基板の裏面導電膜が形成された側と反対側の主表面上に、Mo膜/Si膜を周期的に積層することで多層反射膜を形成した。
【0135】
具体的には、MoターゲットとSiターゲットを使用し、イオンビームスパッタリング(Arを使用)により、基板上に、Mo膜及びSi膜を交互に積層した。Mo膜の厚みは、2.8nmである。Si膜の厚みは、4.2nmである。1周期のMo/Si膜の厚みは、7.0nmである。このようなMo/Si膜を、40周期積層し、最後にSi膜を4.0nmの膜厚で成膜し、多層反射膜を形成した。
【0136】
多層反射膜の上に、Ru化合物を含む保護膜を形成した。具体的には、RuNbターゲット(Ru:80原子%、Nb:20原子%)を使用し、Arガス雰囲気にて、DCマグネトロンスパッタリングにより、多層反射膜の上に、RuNb膜からなる保護膜を形成した。保護膜の厚みは、3.5nmであった。
【0137】
次に、DCマグネトロンスパッタリング法により、保護膜の上に、TaTiN膜からなる第1の層を形成した。TaTiN膜は、TaTiターゲットを用いて、ArガスとN2ガスの混合ガス雰囲気にて反応性スパッタリングで、57.3nmの膜厚で成膜した。TaTiN膜の含有比率は、Ta:Ti:N=1:1:1であった。
【0138】
第1の層(TaTiN膜)の波長13.5nmにおける屈折率n、消衰係数(屈折率虚部)kは、それぞれ以下であった。
TaTiN:n=0.937、k=0.030
【0139】
第1の層(TaTiN膜)の相対反射率は9.1%(絶対反射率:6.2%)であり、位相差は178°であった。
【0140】
第1の層の上に、Ruを含む材料によって、第2の層(干渉層)を形成した。具体的には、Ruターゲットを使用し、Arガス雰囲気にて、DCマグネトロンスパッタリングで4.5nmの膜厚となるように成膜した。
【0141】
第1の層及び第2の層を合わせた積層膜の絶対反射率は1.7%(相対反射率:2.5%)であり、位相差は215°であった。
【0142】
以上により、基板の上に、保護膜、多層反射膜、及び積層膜(第1の層及び第2の層)が積層された反射型マスクブランクが得られた。この実施例1の反射型マスクブランクは、積層膜の態様が上記(1)であり、かつ、第2の層が干渉層である反射型マスクブランクである。
【0143】
実施例1の反射型マスクブランクにおいて、
図2に示す方法で後述の反射型マスクを作製した。その際、Ru膜からなる第2の層(上層)は、Cl
2ガス及びO
2ガスを用いたドライエッチングによってエッチングを行った。TaTiN膜からなる第1の層(下層)は、Cl
2ガスを用いたドライエッチングによってエッチングを行った。
【0144】
[実施例2]
実施例2は、保護膜がSiO2膜であり、第1の層(下層)がRuCr膜であり、第2の層(上層)がTaBN膜である積層膜を形成した実施例である。それ以外は、実施例1と同様である。
【0145】
すなわち、実施例2では、上記実施例1と同様に、SiO2-TiO2系ガラス基板の裏面に、CrNからなる裏面導電膜を形成し、反対側の基板の主表面上に、多層反射膜を形成した。
【0146】
次に、Arガス雰囲気中で、SiO2ターゲットを使用したRFスパッタリング法により、多層反射膜の表面に、SiO2膜からなる保護膜を2.5nmの膜厚で成膜した。
【0147】
次に、DCマグネトロンスパッタリング法により、保護膜の上に、RuCr膜からなる第1の層(下層)を形成した。RuCr膜は、RuCrターゲットを用いて、Arガス雰囲気で、32.6nmの膜厚になるように成膜した。RuCr膜の含有比率(原子比)は、Ru:Cr=90:10であった。
【0148】
上記のように形成した第1の層(RuCr膜)の波長13.5nmにおける屈折率n、消衰係数(屈折率虚部)kは、それぞれ以下の通りであった。
RuCr膜:n=0.890、k=0.019
【0149】
上記のように形成した第1の層(RuCr膜)の波長13.5nmにおける相対反射率は19.8%(絶対反射率:13.4%)であり、位相差は179°であった。
【0150】
次に、第1の層の上に、TaBN膜からなる第2の層(上層)を形成した。TaBN膜は、TaB混合焼結ターゲット(Ta:B=80:20、原子比)を用いて、Arガス及びN2ガスの混合ガス雰囲気中で、反応性スパッタリングにより、30.5nmの膜厚になるように成膜した。TaBN膜の組成(原子比)は、Ta:B:N=75:12:13であった。
【0151】
上記のように形成した第2の層(TaBN膜)の波長13.5nmにおける屈折率n、消衰係数(屈折率虚部)kは、それぞれ以下の通りであった。
TaBN膜:n=0.951、k=0.033
【0152】
第1の層及び第2の層を合わせた積層膜の絶対反射率は1.6%(相対反射率:2.4%)であり、位相差は257°であった。
【0153】
以上により、基板の上に、保護膜、多層反射膜、及び積層膜(第1の層及び第2の層)が積層された反射型マスクブランクが得られた。この実施例2の反射型マスクブランクは、積層膜の態様が上記(1)であり、かつ、第2の層が吸収層である反射型マスクブランクである。
【0154】
実施例2の反射型マスクブランクにおいて、
図2に示す方法で後述の反射型マスクを作製した。その際、TaBN膜からなる第2の層(上層)は、Cl
2ガスを用いたドライエッチングによってエッチングを行った。RuCr膜からなる第1の層(下層)は、Cl
2ガス及びO
2ガスを用いたドライエッチングによってエッチングを行った。
【0155】
[実施例3]
実施例3は、第1の層(下層)がTaBN膜であり、第2の層(上層)がRu膜である積層膜を形成した実施例である。それ以外は、実施例1と同様である。
【0156】
すなわち、実施例3では、上記実施例1と同様に、SiO2-TiO2系ガラス基板の裏面に、CrNからなる裏面導電膜を形成し、反対側の基板の主表面上に、多層反射膜を形成し、多層反射膜の上に、Ru化合物を含む保護膜を形成した。
【0157】
次に、保護膜の上に、TaBN膜からなる第1の層(下層)を形成した。TaBN膜は、TaB混合焼結ターゲット(Ta:B=80:20、原子比)を用いて、Arガス及びN2ガスの混合ガス雰囲気中で、反応性スパッタリングにより、54.0nmの膜厚になるように成膜した。TaBN膜の組成(原子比)は、Ta:B:N=75:12:13であった。
【0158】
上記のように形成した第1の層(TaBN膜)の波長13.5nmにおける屈折率n、消衰係数(屈折率虚部)kは、それぞれ以下の通りであった。
TaBN膜:n=0.951、k=0.033
【0159】
上記のように形成した第1の層(TaBN膜)の絶対反射率は2.3%(相対反射率3.4%)であり、位相差は143°であった。
【0160】
次に、第1の層の上に、Ruを含む材料によって、第2の層(干渉層)を形成した。具体的には、Ruターゲットを使用し、Arガス雰囲気にて、DCマグネトロンスパッタリングで4.5nmの膜厚となるように成膜した。
【0161】
第1の層及び第2の層を合わせた積層膜(位相シフト膜)の相対反射率は8.4%(絶対反射率5.7%)であり、位相差は183°であった。
【0162】
以上により、基板の上に、保護膜、多層反射膜、及び積層膜(第1の層及び第2の層)が積層された反射型マスクブランクが得られた。この実施例3の反射型マスクブランクは、積層膜の態様が上記(2)である反射型マスクブランクである。
【0163】
実施例3の反射型マスクブランクにおいて、
図3に示す方法で後述の反射型マスクを作製した。その際、Ru膜からなる第2の層(上層)は、Cl
2ガス及びO
2ガスを用いたドライエッチングによってエッチングを行った。TaBN膜からなる第1の層(下層)は、Cl
2ガスを用いたドライエッチングによってエッチングを行った。
【0164】
[実施例4]
実施例4は、第1の層(下層)がCoTa膜であり、第2の層(上層)がRu膜である積層膜を形成した実施例である。それ以外は、実施例1と同様である。
【0165】
すなわち、実施例4では、上記実施例1と同様に、SiO2-TiO2系ガラス基板の裏面に、CrNからなる裏面導電膜を形成し、反対側の基板の主表面上に、多層反射膜を形成し、多層反射膜の上に、Ru化合物を含む保護膜を形成した。
【0166】
次に、DCマグネトロンスパッタリング法により、保護膜の上に、CoTa膜からなる第1の層を形成した。CoTa膜は、CoTaターゲットを用いて、Arガス雰囲気にて、54.0nmの膜厚で成膜した。CoTa膜の含有比率は、Co:Ta=50:50であった。
【0167】
上記のように形成した第1の層(CoTa膜)の波長13.5nmにおける屈折率n、消衰係数(屈折率虚部)kは、それぞれ以下であった。
CoTa:n=0.950、k=0.047
【0168】
上記のように形成した第1の層(CoTa膜)の絶対反射率は0.8%(相対反射率1.2%)であり、位相差は124°であった。
【0169】
次に、第1の層の上に、Ruを含む材料によって、第2の層(干渉層)を形成した。具体的には、Ruターゲットを使用し、Arガス雰囲気にて、DCマグネトロンスパッタリングで4.5nmの膜厚となるように成膜した。
【0170】
第1の層及び第2の層を合わせた積層膜(位相シフト膜)の相対反射率は4.4%(絶対反射率3.0%)であり、位相差は178°であった。
【0171】
以上により、基板の上に、保護膜、多層反射膜、及び積層膜(第1の層及び第2の層)が積層された反射型マスクブランクが得られた。この実施例4の反射型マスクブランクは、積層膜の態様が上記(2)である反射型マスクブランクである。
【0172】
実施例4の反射型マスクブランクにおいて、
図3に示す方法で後述の反射型マスクを作製した。その際、Ru膜からなる第2の層(上層)は、Cl
2ガス及びO
2ガスを用いたドライエッチングによってエッチングを行った。CoTa膜からなる第1の層(下層)は、Cl
2ガスを用いたドライエッチングによってエッチングを行った。
【0173】
[参考例]
参考例として、Ru膜からなる第2の層(上層)を形成しなかった以外は、実施例1と同様に、反射型マスクブランクを製造した。
【0174】
[反射型マスクブランクの評価]
実施例1~4、及び、参考例の反射型マスクブランクを使用して、
図5に示す反射型マスクを製造した。
【0175】
図5に示すように、反射型マスク200は、複数のコンタクトホール206が密集して形成された領域であるパターン領域202と、そのパターン領域202の周辺の領域である非パターン領域204を有する。非パターン領域204は、絶対反射率2.5%以下のバイナリ型の膜によって被覆されている。
【0176】
すなわち、実施例1及び実施例2の反射型マスクブランクを用いた場合、非パターン領域204は、第1の層及び第2の層(バイナリ型)によって被覆されている。実施例3及び実施例4の反射型マスクブランクを用いた場合、非パターン領域204は、第1の層(バイナリ型)によって被覆されている。
一方、参考例の反射型マスクブランクにおいて、第1の層(下層)は位相シフト膜であり、バイナリ型として機能しない。そのため、参考例の反射型マスクブランクを用いた場合、非パターン領域204は、バイナリ型の膜によって被覆されない。
【0177】
図5の右側の拡大図に示すように、パターン領域202には、複数のコンタクトホール206が所定の間隔で形成されている。それぞれのコンタクトホール206の周囲には、位相シフト領域208が所定の幅で形成されている。位相シフト領域208のさらに外側には、バイナリ領域210が形成されている。
【0178】
コンタクトホール206においては、第1の層及び第2の層がエッチングによって除去されており、多層反射膜(保護膜を含む)が露出している。コンタクトホール206の周囲にある位相シフト領域208は、位相シフト膜によって被覆されている。位相シフト領域208の周囲にあるバイナリ領域210は、バイナリ型の膜によって被覆されている。
【0179】
すなわち、実施例1及び実施例2の反射型マスクブランクを用いた場合、位相シフト領域208は、第1の層(位相シフト膜)によって被覆されている。実施例3及び実施例4の反射型マスクブランクを用いた場合、位相シフト領域208は、第1の層及び第2の層(位相シフト膜)によって被覆されている。参考例の反射型マスクブランクを用いた場合、位相シフト領域208は、第1の層(位相シフト膜)によって被覆されている。
【0180】
また、実施例1及び実施例2の反射型マスクブランクを用いた場合、バイナリ領域210は、第1の層及び第2の層(バイナリ型)によって被覆されている。実施例3及び実施例4の反射型マスクブランクを用いた場合、バイナリ領域210は、第1の層(バイナリ型)によって被覆されている。
一方、参考例の反射型マスクブランクにおいて、第1の層(下層)は位相シフト膜であり、バイナリ型として機能しない。そのため、参考例の反射型マスクブランクを用いた場合、バイナリ領域210を形成することができない。
【0181】
上記のように製造された反射型マスクを用いて、半導体基板上のレジスト膜にパターンを転写した。その後、露光されたレジスト膜を現像することによって、レジストパターンを形成した。レジストパターンをマスクとして半導体基板をエッチングすることにより、半導体基板上に複数のコンタクトホールからなるパターンを形成した。
【0182】
実施例1~実施例4の反射型マスクブランクから製造された反射型マスクを使用して露光を行った場合には、半導体基板上に、複数のコンタクトホールからなるパターンを正確に転写することができた。
【0183】
また、レジスト膜が形成された1枚の半導体基板に対して、同じ反射型マスクを用いて、位置をずらしながら、複数回露光を行った。この場合でも、半導体基板上の、パターンを転写すべき領域に隣接する領域に反射光が漏れることを防止することができた。また、隣接する2つの領域の境界部付近のレジスト膜が、複数回の露光によって感光されてしまうことを防止することができた。
【0184】
一方、参考例の反射型マスクブランクから製造された反射型マスクを使用して露光を行った場合には、半導体基板上に、複数のコンタクトホールからなるパターンを正確に転写することができなかった。これは、位相シフトパターンからの反射光によって、本来であれば感光されるべきではない領域のレジスト膜が感光されてしまい、半導体基板上のレジスト膜にパターンを正確に転写することができなかったことが原因であると推察される。
【0185】
参考例の反射型マスクブランクから製造された反射型マスクにおいて、非パターン領域204は、バイナリ型の膜によって被覆されていない。そのため、1枚の半導体基板に対して位置をずらしながら複数回露光を行った場合には、半導体基板上の、パターンを転写すべき領域に隣接する領域に反射光が漏れてしまい、パターンを正確に転写することができなかった。また、隣接する2つの領域の境界部付近のレジスト膜が、複数回の露光によって感光されてしまうことを防止することができなかった。
【符号の説明】
【0186】
10 基板
12 多層反射膜
14 保護膜
16 積層膜
18 第1の層
20 第2の層
22 裏面導電膜
30 吸収層パターン
32 位相シフトパターン
40 積層膜パターン
42 吸収層パターン
100 反射型マスクブランク
200 反射型マスク