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特許7250524ソルガムの遺伝子形質転換を改善する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-24
(45)【発行日】2023-04-03
(54)【発明の名称】ソルガムの遺伝子形質転換を改善する方法
(51)【国際特許分類】
   A01H 4/00 20060101AFI20230327BHJP
   A01H 1/00 20060101ALI20230327BHJP
   A01H 5/00 20180101ALI20230327BHJP
   A01H 6/46 20180101ALI20230327BHJP
   C12N 5/04 20060101ALI20230327BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230327BHJP
   C12N 15/82 20060101ALN20230327BHJP
   C12N 15/65 20060101ALN20230327BHJP
   C12Q 1/6876 20180101ALN20230327BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALN20230327BHJP
【FI】
A01H4/00
A01H1/00 A
A01H5/00 A
A01H6/46
C12N5/04
C12N5/10
C12N15/82 Z ZNA
C12N15/65 Z
C12Q1/6876 Z
C12Q1/686 Z
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2018564307
(86)(22)【出願日】2017-05-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-07-25
(86)【国際出願番号】 AU2017050459
(87)【国際公開番号】W WO2017210719
(87)【国際公開日】2017-12-14
【審査請求日】2020-05-15
(31)【優先権主張番号】2016902278
(32)【優先日】2016-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】317002869
【氏名又は名称】コモンウェルス サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ オーガナイゼーション
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】シュリーニバス ベライド
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ ロバートソン ペトリー
(72)【発明者】
【氏名】スリンダー パル シン
【審査官】原 大樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06686513(US,B1)
【文献】国際公開第2010/011175(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/094421(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0133938(US,A1)
【文献】International Journal of Plant Production,2008年,Vol.2, No.1,p.1-14
【文献】Development of a transformation system for sorghum (Sorghum bicolor L.),A thesis submitted for the degree of Doctor of Philosophy at the Queensland University of Technology,Chapter 3, 6,2011年,p. 26-50, 106-133
【文献】Asian Journal of Plant Science and Research,2014年,Vol.4, No.3,p.14-21
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01H
C12N
C12Q
MEDLINE/BIOSIS/EMBASE/CAplus(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソルガムの分化胚形成カルス(DEC)組織を調製する方法であって、
前記方法は、ソルガムから分離された未熟胚(IE)を、前記IEからDEC組織を生産するに足る充分な時間及び条件下でカルス誘導培地(CIM)において培養することを含み、
前記CIMは、1種以上のオーキシン、1種以上のサイトカイニン、及び酸化褐変を低減する1種以上の薬剤が補充された、植物細胞の培養に適した基本培地を含み、前記酸化褐変を低減する1種以上の薬剤は、0.5mg/L~2.0mg/Lの濃度でリポ酸を含み、そして、前記DEC組織は、前記分離された未熟胚を用いた形質転換プロセスにおける外因性ポリヌクレオチドのいずれかの導入の前に生産される、方法。
【請求項2】
前記CIMは、下記特徴:
(i)前記1種以上のオーキシンは、インドール-3-酢酸(IAA)、4-クロロインドール-3-酢酸、フェニル酢酸、インドール-3-酪酸(IBA)、1-ナフタレン酢酸(NAA)、2-ナフトキシ酢酸、4-クロロフェノキシ酢酸、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)、2,4,5-トリクロロフェノキシ酢酸、2,3,5-トリヨード安息香酸、ピクロラム、及びこれらのいずれか1つの塩形態からなる群より選ばれる;
(ii)前記1種以上のオーキシンは、0.1mg/L~5mg/L、0.1mg/L~3mg/L、0.3mg/L~2mg/L、又は0.5mg/L~1mg/Lの濃度で前記CIM中に存在する;
(iii)前記1種以上のサイトカイニンは、ベンジルアミノプリン(BAP)、ゼアチン、カイネチン、2IP、ゼアチンリボシド、ジフェニル尿素、及びチジアズロン(TDZ)からなる群より選ばれる;
(iv)前記1種以上のサイトカイニンは、0.01mg/L~2mg/L、0.1mg/L~2mg/L、0.5mg/L~2mg/L、0.5mg/L~1mg/L、又は0.5mg/Lの濃度で前記CIM中に存在する;
(v)前記1種以上のオーキシン及び前記1種以上のサイトカイニンは、前記IEからの前記DECの生産及び/又は維持を行うに足る充分な互いの相対量で前記CIM中に存在する;及び
(vi)前記1種以上のオーキシン及び前記1種以上のサイトカイニンは、1.25:1、1.5:1、1.75:1、2:1、2.25:1、2.5:1、2.75:1、又は3:1の重量比(オーキシン:サイトカイニン)で前記CIM中に存在する;
の1つ以上又は全部を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記CIMは、メラトニン、2-アミノイダン(aminoidan)-2-ホスホン酸、アスコルビン酸、アルファトコフェロール、3,5-ジブチル-4-ヒドロキシトルエン(BHT)、システイン、亜セレン酸塩、ポリビニルポリピロリドン(PVPP)、ジチオスレイトール(DTT)、フェノキサン(phenoxane)、硝酸銀、クエン酸塩、グルタチオン、フィチン酸、ノルジヒドログアヤレチン酸(NDGA)、及び活性炭からなる群より選ばれる、酸化褐変を低減する1種以上の薬剤をさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記CIMは、0.5mg/L~2.0mg/L、又は1mg/Lの濃度のリポ酸を含み、そして/あるいは、
前記CIMは、下記:
(i)0.2g/L~2g/L、0.5g/L~1.5g/L、0.7g/L~1g/L、又は0.8g/Lの濃度のペプトン;
(ii)硫酸銅、塩化銅、硝酸銅、グルコン酸銅、又は酢酸銅の形態をした銅;
(iii)銅が存在する場合、前記銅は、0.1mg/L~5mg/L、0.3mg/L~3mg/L、0.5mg/L~1.5mg/L、0.7mg/L~1mg/L、又は0.8mg/Lの濃度で存在する;及び/又は
(iv)浸透圧剤;
の1つ以上又は全部をさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
遺伝子改変ソルガム細胞を生産する方法であって、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法によりソルガムの分化胚形成カルス(DEC)組織を調製することと、1つ以上の核酸を前記DEC組織に導入することを含む、方法。
【請求項6】
遺伝子改変ソルガム植物又はその再生部分を生産する方法であって、順に下記:
(a)請求項5に記載の方法を実施することと;
(b)培養により前記DEC組織からシュート形成が誘発されるように、前記1つ以上の核酸が導入された前記DEC組織を単一培地上又は一連の培地上で培養することにより、1つ以上の遺伝子改変シュートを生産することと;
(c)ステップ(b)の前記遺伝子改変シュートから1つ以上の遺伝子改変ソルガム植物を生産することにより、前記遺伝子改変ソルガム植物を生産することと;
(d)任意に、ステップ(c)の前記遺伝子改変植物から再生部分を取得することと;
を含む、方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、ステップ(b)におけるDEC組織の培養が、前記1つ以上の核酸が導入されたDEC組織100個当たり少なくとも35個の遺伝子改変シュートの効率で前記DEC組織からシュート形成を誘導し、これにより、遺伝子改変シュートを生産する、方法。
【請求項8】
前記1つ以上の核酸のうちの少なくとも1つは選択マーカー遺伝子を含み、ステップ(b)は、前記選択マーカー遺伝子が導入された単一又は複数の組織を選択することを含む、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(b)の単一又は複数の前記ソルガム組織の培養に使われる前記単一培地又は前記一連の培地のうちの少なくとも1つは、請求項3又は4に定義されるCIMを含む、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記1つ以上の核酸を導入した後、単一又は複数の前記ソルガム組織をそれぞれ2つ以上の部分に分割することをさらに含む、請求項6~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(b)における前記一連の培地のうちの1つ以上はL-システイン及び/又はアスコルビン酸を含む、請求項6~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも35%又は少なくとも40%の遺伝子改変効率が得られる、請求項6~11のいずれか一項に記載の方法であって、前記遺伝子改変効率は、ステップ(b)で生産される遺伝子改変シュートの数を、ステップ(a)で用いるDEC組織又はソルガム組織の数に対する百分率で表したものである、方法。
【請求項13】
分離された未熟胚(IE)からのソルガムの分化胚形成カルス(DEC)組織の調製のための培地であって、前記培地は、1種以上のオーキシン、1種以上のサイトカイニン、及び酸化褐変を低減する1種以上の薬剤が補充された、植物細胞の培養に適した基本培地を含み、酸化褐変を低減する前記1種以上の薬剤は、0.5mg/L~2.0mg/Lの濃度で前記培地中に存在するリポ酸を含み、前記1種以上のオーキシン及び前記1種以上のサイトカイニンは、培養時に前記IEから前記DECを生産するに足る充分な互いの相対量で前記培地中に存在し、そして、前記DEC組織は、前記分離された未熟胚を用いた形質転換プロセスにおける外因性ポリヌクレオチドのいずれかの導入の前に生産される、培地。
【請求項14】
下記特徴:
(i)前記1種以上のオーキシンは、インドール-3-酢酸(IAA)、4-クロロインドール-3-酢酸、フェニル酢酸、インドール-3-酪酸(IBA)、1-ナフタレン酢酸(NAA)、2-ナフトキシ酢酸、4-クロロフェノキシ酢酸、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)、2,4,5-トリクロロフェノキシ酢酸、2,3,5-トリヨード安息香酸、ピクロラム、及びこれらのいずれか1つの塩形態からなる群より選択される;
(ii)前記1種以上のオーキシンは、0.1mg/L~5mg/L、0.1mg/L~3mg/L、0.3mg/L~2mg/L、0.5mg/L~1mg/L、又は1mg/Lの濃度で存在する;
(iii)前記1種以上のサイトカイニンは、ベンジルアミノプリン(BAP)、ゼアチン、カイネチン、2IP、ゼアチンリボシド、ジフェニル尿素、及びチジアズロン(TDZ)からなる群より選択される;
(iv)前記1種以上のサイトカイニンは、0.01mg/L~2mg/L、0.1mg/L~2mg/L、0.5mg/L~2mg/L、0.5mg/L~1mg/L、又は0.5mg/Lの濃度で存在する;及び
(v)前記1種以上のオーキシン及び前記1種以上のサイトカイニンは、1.25:1、1.5:1、1.75:1、2:1、2.25:1、2.5:1、2.75:1、又は3:1の重量比(オーキシン:サイトカイニン)で培地中に存在する;
の1つ以上又は全部を有する、請求項13に記載の培地。
【請求項15】
前記酸化褐変を低減する1種以上の薬剤は、メラトニン、2-アミノイダン(aminoidan)-2-ホスホン酸、アスコルビン酸、アルファトコフェロール、3,5-ジブチル-4-ヒドロキシトルエン(BHT)、システイン、亜セレン酸塩、ポリビニルポリピロリドン(PVPP)、ジチオスレイトール(DTT)、フェノキサン(phenoxane)、硝酸銀、クエン酸塩、グルタチオン、フィチン酸、ノルジヒドログアヤレチン酸(NDGA)、及び活性炭からなる群より選ばれる薬剤を含む、請求項13又は14に記載の培地。
【請求項16】
0.5mg/L~2.0mg/L、又は1mg/Lの濃度のリポ酸、及び/又は
下記:
(i)0.2g/L~2g/L、0.5g/L~1.5g/L、0.7g/L~1g/L、又は0.8g/Lの濃度のペプトン;
(ii)硫酸銅、塩化銅、硝酸銅、グルコン酸銅、又は酢酸銅の形態の銅;
(iii)銅が存在する場合、前記銅は、0.1mg/L~5mg/L、0.3mg/L~3mg/L、0.5mg/L~1.5mg/L、0.7mg/L~1mg/L、又は0.8mg/Lの濃度で存在する;
(iv)浸透圧剤;
(v)4g/L~5g/Lの濃度のMS培地と、1mg/Lの濃度の2,4-Dと、0.5mg/Lの濃度のBAPと、1mg/Lの濃度のリポ酸;
の1つ以上又は全部を含み、そして/あるいは
下記:
(vi)0.5g/L~1g/Lの濃度のL-プロリン;
(vii)0.5g/L~1g/Lの濃度のペプトン;
(viii)100mg/L~200mg/Lの濃度のミオイノシトール;
(ix)0.5g/L~1g/Lの濃度の硫酸銅;
(x)10g/L~50g/Lの濃度のマルトース;及び
(xi)6g/L~12g/Lの濃度の寒天;
の1つ以上又は全部をさらに含む、請求項13~15のいずれか1項に記載の培地。
【請求項17】
ソルガムの分化胚形成カルス(DEC)組織をさらに含む、請求項13~16のいずれか1項に記載の培地。
【請求項18】
前記DEC組織は、少なくとも35%の効率で遺伝子改変されることが可能である、請求項17に記載の培地。
【請求項19】
培地においてソルガムの分化胚形成カルス(DEC)組織を維持する方法であって、前記方法は、前記DEC組織が生産された時から最長12カ月間、請求項13~18のいずれか1項に記載の培地で前記DEC組織を維持することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願データ)
本出願は、2016年6月10日に出願されたオーストラリア特許仮出願第2016902278号の優先権を主張するものであり、その内容の全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、効率的な植物再生及びソルガムの遺伝子形質転換に関する。
【背景技術】
【0003】
ソルガムは、食物、飼料、飼草、バイオエネルギー等の多くの用途で生育される重要な穀物である。ソルガムは、広範な温度範囲と気候条件で生育可能な多用途作物であり、他の穀類と比べて干ばつと土壌毒性に対する耐性が高い。グルテン感受性に苦しむ顧客(セリアック病等)に提供する適切なグルテンフリーの代替穀物を市場が模索する中、食糧としてのソルガムグレインの利用及び関心が高まっている。
【0004】
代謝学及びゲノム学が進歩すると共に、ソルガムから同定される遺伝子と調節エレメントが増加する中、ソルガムの有益な生産、利用に遺伝子工学を応用する可能性も高まっている(Venkatesh et al., 2015)。しかしながら、ソルガムは従来、組織培養と形質転換には困難な作物と考えられてきた(Grootboom et al., 2010)。その理由は、細胞培養液におけるフェノール化合物の蓄積(Gurel et al., 2009)、モデル遺伝子型の欠如、再生頻度の低さ、継代培養による再生ポテンシャルの減少(Visarada and Kishore, 2015)といった要因にある。したがって、高効率で包括的な形質転換系をソルガムで実現するのは未だ困難であるため(Liu et al., 2015)、この重要作物の遺伝子操作の可能性は限定されている。
【0005】
ソルガムを含むトランスジェニック植物の生産に従来利用されている主なアプローチとして、微粒子銃とアグロバクテリウム媒介形質転換の2つがある。ソルガムの遺伝子形質転換の最初の成功例は、Casas et al. (1993)により報告された。この報告では、植物組織としての未熟胚に微粒子銃が使用され、打ち込み先の胚1個当たり形質転換体0.08%という形質転換率を達成した。その後、組織培養条件その他のパラメータの最適化を含むいくつかの修正が加えられ(Able et al., 2001; Tadesee et al., 2003; Masheswari et al., 2010)、胚1個当たり1~7%の範囲の形質転換効率が得られた。その後Liu and Godwin (2012)が、ソルガム変種TX430の未熟胚を使用し培地成分を最適化することにより、以前に発表された方法に比べて大きく改善したことを報告した。ソルガムのアグロバクテリウム媒介形質転換の最初の成功例は、Zhao et al. (2000)により報告された。
【0006】
この最初の成功報告以降、ソルガムのアグロバクテリウム媒介形質転換プロトコルの修正や改善がいくつか発表された。中でも、Howe et al. (2006)とShridhar et al. (2010)の報告では、それぞれ、胚1個当たりの形質転換率4.5%と4.28%を達成した。近年では、Wu et al. (2014)が、未熟胚にスーパーバイナリーベクター(Ishida et al., 1996)を使用し、かつ培地を改変することにより、ソルガムのアグロバクテリウム媒介形質転換率が向上したことを報告した。しかしながら、組織培養方法の最適化が横ばい状態に達したと見られることから、研究者らは現在、組織培養に頼らない別のソルガム形質転換手法(例えば、Li et al. (2016)に記載の手法)を指向している。このような広範な最適化努力と形質転換改善の報告にもよらず、ソルガムは、形質転換率の面で他の穀類に遅れを取っており、今もなお扱いにくく形質転換が困難な植物と考えられている。Visarada and Kishore (2015)による当技術分野の概説では、ソルガムは、細胞形質転換とそれに続く再生が未だ極めて複雑であると結論付けている。
【0007】
微粒子銃又はアグロバクテリウム法によるソルガム遺伝子形質転換の成功に向けて様々な組織外植片が使われたが、中でも未熟胚は、成熟種子由来の外植片(シュート頂など)と比べて正に選ばれた外植片であり、これまでに報告されている形質転換効率改善プロトコルはすべて、未熟胚を使用している(Liu et al., 2012, 2014、Wu et al., 2014)。Zhao et al. (2000)も、胚の源がソルガム形質転換効率に非常に大きく影響することを統計的に示している。
【0008】
ソルガム植物の形質転換効率を改善するさらなる方法、及びソルガムの形質転換効率の改善に使用可能な、さらなる組織外植片と培地が求められている。
【発明の概要】
【0009】
本発明者らは、ソルガムから分離した未熟胚から誘導される分化胚形成カルス(DEC:differentiating embryogenic callus)組織が、ソルガム形質転換に使用する外植片の柔軟な選択肢となる可能性があり、DEC組織は環境要因から独立し、形質転換効率の改善に使用できると認識しており、本発明は、部分的にこの認識に基づいている。
【0010】
したがって、一例において、本開示は、ソルガムの分化胚形成カルス(DEC)組織を調製する方法を提供する。この方法は、ソルガムから分離された未熟胚(IE)を、カルス誘導培地(CIM)において、IEからDEC組織を生産するに足る充分な時間及び条件下で培養することを含み、このCIMは、1種以上のオーキシン、1種以上のサイトカイニン、及び酸化褐変を低減する1種以上の薬剤が補充された、植物細胞の培養に適した基本培地を含む。
【0011】
一例では、IEはソルガム・ビコロ(Sorghum bicolor)の一品種に由来する。例えば、IEは、ソルガム・ビコロのスイートソルガム品種に由来してよい。例えば、IEは、グレインソルガム品種に由来してよい。一例では、IEは、IEsCS3541、M91051、SRN39、Shanqui red、IS8260、IS4225、Tx430、P898012、P954035、PP290からなる群より選択されるソルガム系統に由来してよい。一例では、IEは、Tx430と命名されたソルガム系列に由来してよい。一例では、IEは、IEsCS3541と命名されたソルガム系列に由来してよい。一例では、IEは、M91051と命名されたソルガム系列に由来してよい。一例では、IEは、SRN39と命名されたソルガム系列に由来してよい。一例では、IEは、Shanqui redと命名されたソルガム系列に由来していてよい。一例では、IEは、IS8260と命名されたソルガム系列に由来してよい。一例では、IEは、IS4225と命名されたソルガム系列に由来してよい。一例では、IEは、P898012と命名されたソルガム系列に由来してよい。一例では、IEは、P954035と命名されたソルガム系列に由来してよい。一例では、IEは、PP290と命名されたソルガム系列に由来してよい。
【0012】
一例では、上記CIMは、酸化褐変を低減する1種以上の薬剤を含み、この1種以上の薬剤は、リポ酸、メラトニン、2-アミノイダン(aminoidan)-2-ホスホン酸、アスコルビン酸、アルファトコフェロール、3,5-ジブチル-4-ヒドロキシトルエン(BHT)、システイン、亜セレン酸塩、ポリビニルポリピロリドン(PVPP)、ジチオスレイトール(DTT)、フェノキサン(phenoxane)、硝酸銀、クエン酸塩、グルタチオン、フィチン酸、ノルジヒドログアヤレチン酸(NDGA)、及び活性炭からなる群より選択される。
【0013】
一例では、酸化褐変を低減する上記1種以上の薬剤は、約0.1mg/L~約5mg/L、約0.5g/L~約5g/L、約1g/L~約5g/L、又は約1g/Lの濃度でCIM中に存在する。
【0014】
一例では、上記CIMは、1種以上のオーキシンを含み、この1種以上のオーキシンは、インドール-3-酢酸(IAA)、4-クロロインドール-3-酢酸、フェニル酢酸、インドール-3-酪酸(IBA)、1-ナフタレン酢酸(NAA)、2-ナフトキシ酢酸、4-クロロフェノキシ酢酸、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)、2,4,5-トリクロロフェノキシ酢酸、2,3,5-トリヨード安息香酸、ピクロラム、及びこれらのいずれか1つの塩形態からなる群より選択される。
【0015】
一例では、上記1種以上のオーキシンは、約0.1mg/L~約5mg/L、約0.1mg/L~約3mg/L、約0.3mg/L~約2mg/L、又は約0.5mg/L~約1mg/Lの濃度でCIM中に存在する。
【0016】
一例では、上記1種以上のサイトカイニンは、ベンジルアミノプリン(BAP)、ゼアチン、カイネチン、2IP、ゼアチンリボシド、ジフェニル尿素、及びチジアズロン(TDZ)からなる群より選択される。
【0017】
一例では、上記1種以上のサイトカイニンは、約0.01mg/L~約2mg/L、約0.1mg/L~約2mg/L、約0.5mg/L~約2mg/L、約0.5mg/L~約1mg/L、又は約0.5mg/Lの濃度でCIM中に存在する。
【0018】
一例では、上記1種以上のオーキシン及び上記1種以上のサイトカイニンは、IEからのDECの生産及び/又は維持を行うに足る充分な互いの相対量でCIM中に存在する。
【0019】
一例では、上記1種以上のオーキシン及び上記1種以上のサイトカイニンは、約1.25:1、約1.5:1、約1.75:1、約2:1、約2.25:1、約2.5:1、約2.75:1、又は約3:1の重量比(オーキシン:サイトカイニン)でCIM中に存在する。
【0020】
好ましい一例では、上記CIMは、α-リポ酸等のリポ酸を含む。特に好ましい一例では、上記CIMは、約0.5mg/L~約2.0mg/L、又は約1mg/Lの濃度のリポ酸を含む。例えば、CIMは、約1mg/Lの濃度のリポ酸を含む。
【0021】
一例では、上記CIMはペプトンを含む。例えば、上記CIMは、約0.2g/L~約2g/L、約0.5g/L~約1.5g/L、約0.7g/L~約1g/L、又は約0.8g/Lの濃度のペプトンを含む。一例では、上記CIMは、約1mg/Lの濃度のリポ酸(α-リポ酸等)を含む。
【0022】
一例では、上記CIMは銅を含む。例えば、銅が存在する場合、硫酸銅、塩化銅、硝酸銅、グルコン酸銅、又は酢酸銅の形態で銅が提供されてよい。例えば、銅が存在する場合、約0.1mg/L~約5mg/L、約0.3mg/L~約3mg/L、約0.5mg/L~約1.5mg/L、約0.7mg/L~約1mg/L、又は約0.8mg/Lの濃度で銅が存在する。一例では、銅は、濃度約0.8mg/Lの硫酸銅の形態で提供される。
【0023】
一例では、上記CIMは浸透圧剤を含む。
【0024】
一例では、上記方法は、DEC組織を生産するに足る充分な時間、薄明条件下でIEを培養することを含む。例えば、上記IEの培養は、約10μmol s-1-2~約55μmol s-1-2、約30μmol s-1-2~約50μmol s-1-2、又は約45μmol s-1-2~約50μmol s-1-2の光強度を有する薄明条件下で行ってよい。
【0025】
好ましくは、上記光は白色光、すなわち白色光スペクトルに対応する波長で発せられる光である。
【0026】
一例では、上記方法は、約12h~約20h、約14h~約18h、又は約16hの明期でIEを培養することを含む。好ましくは、明期は16hである。
【0027】
一例では、DEC組織を生産するに足る充分な時間とは、少なくとも約2週間~約6週間、約3週間~約5週間、又は約4週間である。
【0028】
一例では、上記方法は、DEC組織を新鮮なCIMに移すことと、この新鮮なCIMにおいてDEC組織を培養することとを含む、少なくとも1回の継代培養ステップを含む。
【0029】
少なくとも1回の継代培養ステップを含む一例では、この少なくとも1回の継代培養ステップは、新鮮なCIMに移されたDEC組織を、当該DEC組織の生産に使われた条件と実質的に同一の条件で培養することを含む。
【0030】
一例では、上記方法は、2~4週間おきに上記継代培養ステップを繰り返してDEC組織を維持することを含む。
【0031】
一例では、上記方法は、IEからDEC組織が生産された時から少なくとも4ヶ月間、少なくとも5ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、少なくとも7ヶ月間、少なくとも8ヶ月間、及び/又は最長12ヶ月間、DEC組織を維持する目的で、上記継代培養ステップを繰り返すことを含む。
【0032】
別の一例では、上記方法の結果として、未熟胚からのカルス誘導率が少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、又は少なくとも75%となる。
【0033】
本開示は、遺伝子改変ソルガム細胞を生産する方法も提供する。この方法は、1つ以上の核酸をソルガムの分化胚形成カルス(DEC)組織に導入することを含む。
【0034】
一例では、上記方法は、少なくとも40%、少なくとも45%、又は約40%~約50%の平均形質転換率を有する。形質転換率とは、DEC組織1個当たりに再生された形質転換植物体の数を百分率で表したものを意味する。
本開示は、遺伝子改変ソルガム植物又はその再生部分を生産する方法も提供する。この方法は、順に、
(a)1つ以上の核酸をソルガムの分化胚形成カルス(DEC)組織に導入することにより、遺伝子改変ソルガム細胞、好ましくはグレインソルガム細胞を生産することと;
(b)培養によりDEC組織からシュート形成が誘発されるように、上記1つ以上の核酸が導入されたDEC組織を単一培地上又は一連の培地上で培養することにより、1つ以上の遺伝子改変シュートを生産することと;
(c)ステップ(b)の遺伝子改変シュートから1つ以上の遺伝子改変ソルガム植物を生産することにより、遺伝子改変ソルガム植物を生産することと;
(d)任意に、ステップ(c)の上記遺伝子改変植物から再生部分を取得することと
を含む。
【0035】
本開示は、遺伝子改変されたソルガム植物又はその再生部分、好ましくは、グレインソルガム植物又はその一部分を生産する方法も提供する。この方法は、順に、
(a)ソルガム組織の集団に1つ以上の核酸を導入することと;
(b)上記1つ以上の核酸が導入されたソルガム組織100個当たり少なくとも35個の遺伝子改変シュートの効率で培養により上記ソルガム組織からシュート形成が誘導されるように、上記1つ以上の核酸が導入されたソルガム組織を単一培地上又は一連の培地上で培養することにより、遺伝子改変シュートを生産することと;
(c)ステップ(b)の上記遺伝子改変シュートから1つ以上の遺伝子改変ソルガム植物を生産することにより、上記遺伝子改変ソルガム植物を生産することと;
(d)任意に、ステップ(c)の上記遺伝子改変植物から再生部分を取得することと;
を含む。
【0036】
遺伝子改変ソルガム細胞を生産する上記方法の一例では、上記1つ以上の核酸のうちの少なくとも1つが選択マーカー遺伝子を含み、上記ステップ(b)は、この選択マーカー遺伝子が導入された組織を選択することを含む。
【0037】
一例では、上記1つ以上の核酸は、バクテリア媒介形質転換、マイクロプロジェクタイル媒介形質転換、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、ポリエチレングリコール(PEG)誘導融合、又はリポソーム媒介移動によりソルガム組織に導入される。
【0038】
一例では、バクテリア媒介形質転換に使われるバクテリアは、アグロバクテリウム菌種、リゾビウム菌種、アルファルファ根粒菌、ミヤコグサ根粒菌、大腸菌、シゲラ・フレックスネリ、ネズミチフス菌、リステリア菌、仮性結核菌、及び腸炎エルシニアからなる群より選択される。
【0039】
一例では、上記核酸は、アグロバクテリウム媒介形質転換によりDEC組織に導入される。
【0040】
一例では、上記核酸は、マイクロプロジェクタイル媒介形質転換によりDEC組織に導入される。
【0041】
一例では、上記核酸は、選択マーカーをコードするポリヌクレオチドを含み、上記1つ以上の選択ステップは、この選択マーカーの発現の検出に基づいて形質転換DEC組織を選択することを含む。
【0042】
一例では、上記選択マーカーは、形質転換体により発現可能な蛍光マーカー又は生物発光マーカーであり、上記1つ以上の選択ステップは、蛍光マーカー又は生物発光マーカーを発現する形質転換DEC組織又は当該DEC組織から成長した植物組織を選択することを含む。
【0043】
一例では、上記蛍光マーカー又は生物発光マーカーは、緑色蛍光タンパク質(GFP)、GFPの青色蛍光変異体(BFP)、GFPのシアン蛍光変異体(CFP)、GFPの黄色蛍光変異体(YFP)、強化GFP(EGFP)、強化CFP(ECFP)、強化YFP(EYFP)、GFPS65T、Emerald、Topaz、GFPuv、不安定化EGFP(dEGFP)、不安定化ECFP(dECFP)、不安定化EYFP(dEYFP)、HcRed、t-HcRed、DsRed、DsRed2、t-dimer2、t-dimer2(12)、mRFP1、pocilloporin、Renilla GFP、Monster GFP、paGFP、カエデタンパク質、フィコビリタンパク質、ルシフェラーゼ、又はこれらのいずれか1つの生物活性変異体若しくは断片の発現形態から選択される。
【0044】
一例では、上記核酸のうちの1つは、形質変換体に抗生物質耐性を与える選択マーカーをコードするポリヌクレオチドを含み、上記1つ以上の選択ステップは、対応する抗生物質の存在下で形質転換DEC組織又は当該DEC組織から成長した植物組織を培養することを含む。例えば、選択マーカーをコードする上記ポリヌクレオチドは、ハイグロマイシン、グルホシネート、カナマイシン、又はホスフィノトリシンに対する抗生物質耐性を与える。
【0045】
一例では、上記核酸は、形質変換体に除草剤抵抗性を与える選択マーカーをコードするポリヌクレオチドを含み、上記1つ以上の選択ステップは、対応する除草剤の存在下で形質転換DEC組織又は当該DEC組織から成長した植物組織を培養することを含む。例えば、選択マーカーをコードする上記ポリヌクレオチドは、グリホサート、グルホシネート、又はビアラホスに対する除草剤抵抗性を与える。
【0046】
一例では、上記核酸は、代謝物質の存在下で形質変換体に選択優位性(例えば増殖優位性)を与えるポジティブ選択マーカーをコードするポリヌクレオチドを含み、上記1つ以上の選択ステップは、ポジティブ選択マーカーの対応する代謝物質の存在下で形質転換DEC組織又は当該DEC組織から成長した植物組織を培養することを含む。例えば、代謝物質の存在下で形質変換体に選択的増殖優位性を与える選択マーカーをコードするポリヌクレオチドは、トレヘラーゼ(trehelase)遺伝子、β-グルコロニダーゼ(glucoronidase)(GUS)遺伝子、又はホスホマンノースイソメラーゼ(PMI)遺伝子である。
【0047】
一例では、上記ステップ(b)のソルガム組織の培養に使われる上記単一培地又は一連の培地のうちの少なくとも1つは、本明細書で定義されるCIMを含む。
【0048】
一例では、遺伝子改変ソルガム植物を生産する上記方法のステップ(b)は、上記一連の培地のうちの1つ以上において薄明条件下でソルガム組織を培養し、次いで、この薄明条件より高い強度の光条件下で、さらなる一連の培地の1つ以上において当該ソルガム組織を培養することを含む。
【0049】
一例では、上記薄明条件は、約10μmol s-1-2~約55μmol s-1-2、約30μmol s-1-2~約50μmol s-1-2、又は約45μmol s-1-2~約50μmol s-1-2の光強度を特徴とする。好ましい一例では、上記薄明条件は、約30μmol m-2sec-1~約45μmol m-2sec-1の強度で照射される白色光を含む。
【0050】
一例では、上記薄明条件より高い強度の光条件は、約55μmol s-1-2~約90μmol s-1-2、約60μmol s-1-2~約85μmol s-1-2、又は約65μmol s-1-2~約80μmol s-1-2の光強度を特徴とする。
【0051】
約30μmol m-2sec-1~約45μmol m-2sec-1の強度で照射される白色光が薄明条件に含まれる一例によれば、上記さらなる培地で行われる組織培養は、約65μmol s-1-2~約80μmol s-1-2の強度を有する白色光の下で行われる。
【0052】
一例では、上記方法のステップ(b)の培養は、約12h~約20h、約14h~約18h、又は約16hの明期で行われる。好ましくは、上記方法のステップ(b)の培養は16hの明期で行われる。
【0053】
一例では、上記単一培地、又は上記一連の培地の各培地におけるソルガム組織の培養は、それぞれ独立して、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約5週間、又は約6週間行われる。
【0054】
一例では、遺伝子改変ソルガム植物を生産する上記方法は、上記1つ以上の核酸を導入した後、各ソルガム組織を2つ以上の部分に分割することをさらに含む。
【0055】
一例では、上記方法のステップ(b)における上記一連の培地のうちの1つ以上は、L-システイン及び/又はアスコルビン酸を含む。一例では、CIMは、L-システイン及び/又はアスコルビン酸を含む。
【0056】
本開示において、遺伝子改変ソルガム植物(好ましくはグレインソルガム植物)を生産する方法も提供され、この場合、遺伝子改変効率は少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、又は少なくとも約90%であり、遺伝子改変効率とは、ステップ(b)で生産された遺伝子改変シュートの数を、ステップ(a)で用いたDEC組織又はソルガム組織の数に対する百分率で表したものである。例えば、遺伝子改変ソルガム植物を生産する方法とは、本明細書で前述した方法である。
【0057】
一例では、遺伝子改変ソルガム植物又はその再生部分を生産する上記方法は、
(i)ソルガムのDEC組織を取得すること;
(ii)本開示の方法により生産されたDEC組織を取得すること;又は
(iii)本開示の方法を実施することによりソルガムのDEC組織を生産すること;
をさらに含む。
【0058】
本開示は、遺伝子改変ソルガム植物(好ましくはグレインソルガム植物)の子孫を生産する方法も提供する。この方法は、本開示の方法を用いて生産した遺伝子改変ソルガム植物の自殖又は交雑により子孫植物を生産することを含む。
【0059】
一例では、遺伝子改変ソルガム植物の子孫を生産する上記方法は、
(i)子孫植物をスクリーニングして、遺伝子改変の有無又は遺伝子改変により与えられる表現型の有無を検査することと;
(ii)遺伝子改変を含む子孫植物、及び/又は遺伝子改変により与えられる表現型を示す子孫植物を選択することにより、1つ以上の遺伝子改変ソルガム植物を生産することとをさらに含む。
【0060】
本開示は、本開示の方法を用いて生産される遺伝子改変ソルガム植物、その子孫又は一部、好ましくは、グレイン植物、その子孫又は一部を提供する。この場合、上記ソルガム植物、その子孫又は一部は、本開示の方法により導入された遺伝子改変を含む。例えば、その一部とは、遺伝子改変を有するソルガムの器官、組織、又は細胞である。好ましい一例では、上記植物の一部は、種子、葉、茎からなる群より選択される。
【0061】
本開示は、ソルガムの分化胚形成カルス(DEC)組織の調製での使用に適した培地も提供する。この培地は、1種以上のオーキシン、1種以上のサイトカイニン、及び酸化褐変を低減する1種以上の薬剤が補充された、植物細胞の培養に適した基本培地を含み、酸化褐変を低減する上記1種以上の薬剤は、ソルガム組織の酸化褐変を防止又は低減するに足る充分な濃度で培地中に存在し、上記1種以上のオーキシン及び上記1種以上のサイトカイニンは、培養時にIEからDECを生産するに足る充分な互いの相対量で培地中に存在する。
【0062】
一例では、酸化褐変を低減する上記1種以上の薬剤は、リポ酸、メラトニン、2-アミノイダン(aminoidan)-2-ホスホン酸、アスコルビン酸、アルファトコフェロール、3,5-ジブチル-4-ヒドロキシトルエン(BHT)、システイン、亜セレン酸塩、ポリビニルポリピロリドン(PVPP)、ジチオスレイトール(DTT)、フェノキサン(phenoxane)、硝酸銀、クエン酸塩、グルタチオン、フィチン酸、ノルジヒドログアヤレチン酸(NDGA)、及び活性炭からなる群より選択される。好ましくは、酸化褐変を低減する薬剤は、α-リポ酸等のリポ酸である。
【0063】
一例では、酸化褐変を低減する上記1種以上の薬剤は、約0.1mg/L~約10mg/L、約0.5g/L~約5g/L、約1g/L~約5g/L、又は約1g/Lの濃度で存在する。好ましくは、酸化褐変を低減する上記1種以上の薬剤は、約1mg/Lの濃度で存在する。
【0064】
一例では、上記1種以上のオーキシンは、インドール-3-酢酸(IAA)、4-クロロインドール-3-酢酸、フェニル酢酸、インドール-3-酪酸(IBA)、1-ナフタレン酢酸(NAA)、2-ナフトキシ酢酸、4-クロロフェノキシ酢酸、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)、2,4,5-トリクロロフェノキシ酢酸、2,3,5-トリヨード安息香酸、ピクロラム、及びこれらのいずれか1つの塩形態からなる群より選択される。好ましくは、上記オーキシンは2,4-Dである。
【0065】
一例では、上記1種以上のオーキシンは、約0.1mg/L~約5mg/L、約0.1mg/L~約3mg/L、約0.3mg/L~約2mg/L、約0.5mg/L~約1mg/L、又は約1mg/Lの濃度で存在する。好ましくは、上記1種以上のオーキシンは、約1mg/Lの濃度で存在する。
【0066】
一例では、上記1種以上のサイトカイニンは、ベンジルアミノプリン(BAP)、ゼアチン、カイネチン、2IP、ゼアチンリボシド、ジフェニル尿素、及びチジアズロン(TDZ)からなる群より選択される。好ましい一例では、上記サイトカイニンはBAPである。
【0067】
一例では、上記1種以上のサイトカイニンは、約0.01mg/L~約2mg/L、約0.1mg/L~約2mg/L、約0.5mg/L~約2mg/L、約0.5mg/L~約1mg/L、又は約0.5mg/Lの濃度で存在する。好ましくは、上記1種以上のサイトカイニンは、約0.5mg/Lの濃度で存在する。
【0068】
一例では、上記1種以上のオーキシン及び上記1種以上のサイトカイニンは、約1.25:1、約1.5:1、約1.75:1、約2:1、約2.25:1、約2.5:1、約2.75:1、又は約3:1の重量比(オーキシン:サイトカイニン)で培地中に存在する。
【0069】
一例では、酸化褐変を低減する上記薬剤はα-リポ酸等のリポ酸であり、このリポ酸は、約0.5mg/L~約2.0mg/L、又は約1mg/Lの濃度で培地中に存在する。好ましくは、α-リポ酸等の上記リポ酸は、約1mg/Lの濃度で培地中に存在する。
【0070】
一例では、上記培地はペプトンを含む。例えば、このペプトンは、約0.2g/L~約2g/L、約0.5g/L~約1.5g/L、約0.7g/L~約1g/L、又は約0.8g/Lの濃度で存在する。一例では、ペプトンは、約0.8g/Lの濃度で培地中に存在する。
【0071】
一例では、上記培地は銅源を含む。例えば、上記培地は、硫酸銅、塩化銅、硝酸銅、グルコン酸銅、又は酢酸銅を含む。
【0072】
一例では、上記培地は、約0.1mg/L~約5mg/L、約0.3mg/L~約3mg/L、約0.5mg/L~約1.5mg/L、約0.7mg/L~約1mg/L、又は約0.8mg/Lの濃度の銅を含む。
【0073】
一例では、上記培地は浸透圧剤を含む。
【0074】
一例では、上記培地は、寒天等の凝固剤を含む。
【0075】
一例では、基本培地はMS培地である。
【0076】
一例では、ソルガムのDEC組織の生産に適した培地は、約4g/L~約5g/Lの濃度のMS培地と、約1mg/Lの濃度の2,4-Dと、約0.5mg/Lの濃度のBAPと、約1mg/Lの濃度のリポ酸とを含む。加えて、上記培地は、約0.5g/L~約1g/Lの濃度のL-プロリン、約0.5g/L~約1g/Lの濃度のペプトン、約100mg/L~約200mg/Lの濃度のミオイノシトール、約0.5g/L~約1g/Lの濃度の硫酸銅、約10g/L~約50g/Lの濃度のマルトース、及び約6g/L~約12g/Lの濃度の寒天のうちの1つ以上又は全部を含んでよい。
【0077】
一例では、上記培地は、DEC組織の生産に適したpHを有する。例えば、上記培地は、約pH5.0~約pH6.0のpHを有する。
【0078】
本開示において、ソルガムのDEC組織を(例えば本明細書に記載の方法で)調製する際に用いる培地として、本明細書に記載の培地も提供される。
【0079】
本開示は、少なくとも35%の効率での遺伝子改変が可能な、ソルガムの分化胚形成カルス(DEC)組織も提供する。一例では、上記DEC組織は、少なくとも40%の効率での遺伝子改変が可能である。一例では、上記DEC組織は、少なくとも45%の効率での遺伝子改変が可能である。一例では、上記DEC組織は、少なくとも50%の効率での遺伝子改変が可能である。一例では、上記DEC組織は、少なくとも55%の効率での遺伝子改変が可能である。一例では、上記DEC組織は、少なくとも60%の効率での遺伝子改変が可能である。一例では、上記DEC組織は、少なくとも65%の効率での遺伝子改変が可能である。一例では、上記DEC組織は、少なくとも70%の効率での遺伝子改変が可能である。一例では、上記DEC組織は、少なくとも75%の効率での遺伝子改変が可能である。一例では、上記DEC組織は、少なくとも80%の効率での遺伝子改変が可能である。一例では、上記DEC組織は、少なくとも85%の効率での遺伝子改変が可能である。一例では、上記DEC組織は、少なくとも90%の効率での遺伝子改変が可能である。
【0080】
一例では、遺伝子改変効率は、本明細書に開示される方法に従って、DEC組織を用いて遺伝子改変ソルガム植物の生産方法を実施することと、遺伝子改変効率を計算することとにより決定される。
【0081】
一例では、上記DEC組織は、本明細書で開示される、DEC細胞の生産に適した培地において生産及び/又は提供される。
【0082】
別段の具体的な記載がない限り、本明細書に記載のいずれの実施形態も、他の実施形態に準用されるものと解釈される。
【0083】
本明細書に記載される具体的な実施形態及び実施例は、単なる例示を意図したものであり、本開示の範囲は、これらの実施形態及び実施例に限定されない。機能的に等価の産物、組成物、及び方法は、本明細書に記載されている本発明の範囲に明確に含まれる。
【0084】
特に別段の記載があるか文脈上別の意味に解する必要がある場合を除き、本明細書全体を通じて、単一のステップ、構成物、ステップ群、又は構成物群への言及は、1つ及び複数(すなわち1つ以上)のこれらのステップ、構成物、ステップ群、又は構成物群を包含するものと解釈される。
【0085】
以下、非限定的な下記実施例により本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0086】
図1】ソルガムの未熟胚から生じたDEC組織及び植物再生を示す図である。(A)胚から形成開始したカルス(3週齢)、(C)節状構造を有する胚形成カルス(8週齢未満)、(B)と(D)SIMとSRMにLAを含まない状態のシュート誘導と、LAを含む状態のシュート誘導。
図2】ソルガムの各種週齢のカルス系列から再生した植物の葉組織から抽出した核酸、及びソルガムのWT実生の葉組織から抽出した核酸のヒストグラムを示す図である。(A)3週齢植物から生じたWT葉組織、(B)CL9:24月齢DEC組織、(C)CL10:12月齢DEC組織、(D)CL11:6月齢DEC組織、(E)CL12:6月齢DEC組織、(F)CL13:5月齢DEC組織。
図3】ソルガムDEC組織の打ち込みに使われるプラスミドを模式的に示した図である。(A)pUbi-BAR、(B)pBSV003。
図4】打ち込み後のDEC組織を選択培地において切断し培養する方法を示すフロー図である。
図5】ランダムに選択した系列におけるNptII導入遺伝子のPCR検出結果を示す図である。レーン(左から右):「M」=1kb plus DNAラダー、レーン2~18=導入遺伝子、「P」=プラスミドDNA、「WT」=WT TX430 DNA、「NC」=水(対照)。
図6】トランスジェニックソルガム植物の選択と再生を示す図である。(A)CIM+G25上の非形質転換(対照)カルス、(B)CIM+G25上の形質転換カルス、(C)と(D)形質転換カルスから再生されたシュート、(E)PCRで確認されたトランスジェニック植物(植物生育チャンバー内)。
図7】デジタルドロップレットPCRで解析された、31の独立したT0トランスジェニック植物におけるNpt-II遺伝子のコピー数を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0087】
(一般的手法及び定義)
別段の具体的な定義がない限り、本明細書で使用するすべての技術用語及び科学用語は、当業者(例えば、細胞培養、植物形質転換、分子遺伝学、タンパク質化学、生化学の分野の当業者)に一般に理解されているものと同一の意味を有すると解釈される。
【0088】
別段の指示がない限り、本発明で利用される組換えタンパク質、細胞培養、及び免疫学的手法は、当業者に周知の標準の手順である。このような手法は、例えば以下の情報源における文献全体に渡って記載され説明されている:J. Perbal, A Practical Guide to Molecular Cloning, John Wiley and Sons (1984), J. Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbour Laboratory Press (1989), T.A. Brown (editor), Essential Molecular Biology: A Practical Approach, Volumes 1 and 2, IRL Press (1991), D.M. Glover and B.D. Hames (editors), DNA Cloning: A Practical Approach, Volumes 1-4, IRL Press (1995 and 1996), and F.M. Ausubel et al. (editors), Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates and Wiley-Interscience (1988)(現在までのすべての最新版を含む)。
【0089】
用語「及び/又は」、例えば「X及び/又はY」は、「X及びY」と「X又はY」のどちらかを意味するものと理解され、両方又はいずれか一方の意味の明示的な裏付けを提供するものと解釈される。
【0090】
本明細書で使用する「約」という用語は、指定された値の±10%、より好ましくは±5%、より好ましくは±1%を表す。ただし、これに反する旨が記載されている場合を除く。
【0091】
本明細書を通じて、「含む」(comprise)という用語、あるいは「含む」(comprises)、「含んでいる」(comprising)等の変形は、記載されている要素、整数、若しくはステップ、又は要素群、整数群、若しくはステップ群が含まれることを含意するが、他の要素、整数、若しくはステップ、又は他の要素群、整数群、若しくはステップ群を排除することは含意しないものと理解される。
【0092】
本開示は概してソルガムに関するものであり、特に、ソルガムを遺伝子改変するための方法及び物質に関する。本明細書で使用する「ソルガム」という用語は、広い葉と、密集した末端部の穀粒の房を支える長く強い茎とを有する、多くの種からなる一年生穀草の属をいう。本明細書に開示する方法、組織、及び培地は、ソルガム・ビコロ(Sorghum bicolor)、ソルガム・ハレペンセ(Sorghum halepense)、ソルガム・アルマム(Sorghum almum)、スーダングラス(Sorghum sudanense)、ソルガム・プロピンキューム(Sorghum propinquum)等、ソルガムの任意の種で使用できることが企図されている。ソルガム・ビコロは、ソルガムの主要栽培種であり、グレインソルガム、スイートソルガム、グラスソルガム、ブルームコーンなど多くの種類が認知されている。本教示では、これらの種類すべてが企図されている。特定の一実施形態によれば、ソルガムは、グレインソルガム又はスイートソルガムである。さらに、本明細書に開示する方法、組織、及び培地は、ソルガムの任意の系列及び変種(CS3541、M91051、SRN39、Shanqui red、IS8260、IS4225、Tx430、P898012、P954035、PP290等の公知系列を含むが、これらに限定されない)で使用できることが企図されている。
【0093】
(ソルガムのDEC組織を生産する方法)
本明細書で論じているように、未熟胚はこれまで、ソルガムの形質転換のための外植片として一番の選択肢であった。外植片として未熟胚を使用した場合の、ソルガムの形質転換率を阻む要因の1つは、組織培養液に急速にフェノール化合物が生成されることである。外植片として未熟胚を用いた場合の別の不利な点は、未熟胚を絶え間なく供給するために母株の栽植を継続させる必要があることである。わずか数日しか開花しないため、この作業は困難であり、最適な胚を回収する時期が短くなる。この方式に要する労力とコストに加えて、ドナー植物の生理的条件も胚の品質に影響を与え、その結果、形質転換細胞からのカルス形成開始の頻度に影響することがある。本発明者らは、ソルガムから分離した未熟胚から誘導される分化胚形成カルス(DEC)組織に関して、特にDEC組織は環境要因から独立しているので、DEC組織が、ソルガム形質転換に使用する外植片の柔軟な選択肢となる可能性があると認識しており、本開示は、部分的にこの認識に基づいている。本明細書に記載の通り、本発明者らは、DEC組織をソルガム形質転換の外植片として使用した場合に、未熟胚を使用する場合と比べて形質転換効率を改善できることを実証した。
【0094】
よって一例では、本開示は、ソルガムの分化胚形成カルス(DEC)組織を調製する方法に関する。本明細書で使用する「分化胚形成カルス組織」、「DEC組織」という用語は、胚形成能及び器官形成能を維持した分化細胞の節状構造を含む組織を意味するものと解釈される。「分化胚形成カルス組織」すなわち「DEC組織」を構成する要素として、カルス細胞、節状構造と粒状構造を形成する細胞、(未分化細胞群である)カルスと節状構造との間の発生経路の途中にある中間細胞、及び/又は初期段階(球状)の体細胞胚からなる細胞集団が含まれ得る。本明細書で使用する「胚形成能を維持する」細胞という語は、胚形成プロセス、すなわち、体細胞胚から生じるか配偶子から生じるかによらず、シュートと根とが(逐次的でなく)協調的に一緒に発生するプロセスを経ることが可能な細胞を意味するものと理解される。本明細書で使用する「器官形成能を維持する」細胞という語は、器官形成プロセス、すなわち、成長点中心からシュートと根が逐次的に発生するプロセスを経ることが可能な細胞を意味するものと理解される。「器官形成」プロセスとは、未分化細胞を発育中植物における完全な器官(シュート、葉、根など)へと形質転換させる一連の組織化され統合されたプロセスを含むものと理解される。器官形成領域の細胞群は、分化発育を経て器官原基を形成する。器官形成は、当該器官の最終的特性が達成されるまで継続される。
【0095】
一例では、DEC組織を生産する上記方法は、ソルガムから分離し取得した未熟胚(IE)を、カルス誘導培地(CIM)において、IEからDEC組織を生産するに足る充分な時間及び条件下で培養することを含み、このCIMは、1種以上のオーキシン、1種以上のサイトカイニン、及び(ソルガム組織等の)酸化褐変を低減する1種以上の薬剤が補充された、植物細胞の培養に適した基本培地を含む。一例では、基本培地はMS培地である。
【0096】
本明細書で使用する「未熟胚」、「IE」という用語、又はこれらの変化形は、受粉後の成熟過程にあるが、発芽してソルガム植物となる能力はまだ持っていない未熟種子(すなわちソルガムの未熟種子)の胚を指し、発育初期段階の胚(すなわち子葉前の胚)及び発育中間段階の胚(すなわち、まだ完全には生育していない子葉又は胚軸を有する胚)を含む。
【0097】
本明細書で使用する「酸化褐変を低減する薬剤」という用語又は類似の語は、培養下のソルガム組織からポリフェノールが生成される結果、当該薬剤が存在しない培養下で発生することになるソルガム酸化褐変レベルと比較して、培養下のソルガム組織の酸化褐変を防止、抑制、又は他の方法で酸化褐変レベルを低下させる化合物を意味するものと理解される。植物組織の酸化褐変を抑制し、かつ本開示の方法及び培地での使用に適した化合物とは、当業者に対して公知であり、本明細書に記載されている化合物である。例えば、酸化褐変を低減する上記1種以上の薬剤は、リポ酸、メラトニン、2-アミノイダン(aminoidan)-2-ホスホン酸、アスコルビン酸、アルファトコフェロール、3,5-ジブチル-4-ヒドロキシトルエン(BHT)、システイン、亜セレン酸塩、ポリビニルポリピロリドン(PVPP)、ジチオスレイトール(DTT)、フェノキサン(phenoxane)、硝酸銀、クエン酸塩、グルタチオン、フィチン酸、ノルジヒドログアヤレチン酸(NDGA)、及び活性炭からなる群より選択される。好ましい一例では、CIMは、ソルガム組織の酸化褐変を低減する薬剤として、α-リポ酸等のリポ酸を含む。
【0098】
好ましくは、酸化褐変を低減する上記1種以上の薬剤は、当該化合物が存在しない培養下で発生するソルガム組織の酸化褐変レベルと比較して、培養下のソルガム組織の酸化褐変レベルを、例えば少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%だけ低減させるに足る充分な量でCIMに含まれる。一例では、酸化褐変を低減する上記1種以上の薬剤は、培養下のソルガム組織の酸化褐変を実質的に抑制又は防止するに足る充分な量で存在する。例えば、CIMは、ソルガム組織の酸化褐変を低減する上記1種以上の薬剤を、約0.1mg/L~約5mg/L、約0.5g/L~約5g/L、約1g/L~約5g/L、又は約1g/Lの濃度で含んでよい。一例では、CIMは、ソルガム組織の酸化褐変を低減する上記1種以上の薬剤を、約0.5mg/L~約2.0mg/L、又は約1mg/Lの濃度で含んでよい。一例では、CIMは、α-リポ酸等のリポ酸を約0.5mg/L~約2.0mg/Lの濃度(例えば約1mg/Lの濃度)で含んでよい。
【0099】
本明細書で使用する「オーキシン」という用語は、細胞の伸長と分割、維管束組織の分化、果実の形成、不定根の形成、エチレンの生成を刺激し、(高濃度で)脱分化を誘導(カルス形成)する植物成長調節化合物の一種をいう。本開示の方法及び培地での使用に適したオーキシンは、当業者に対して公知であり、本明細書に記載されている。例えば、好適なオーキシンは、インドール-3-酢酸(IAA)、4-クロロインドール-3-酢酸、フェニル酢酸、インドール-3-酪酸(IBA)、1-ナフタレン酢酸(NAA)、2-ナフトキシ酢酸、4-クロロフェノキシ酢酸、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)、2,4,5-トリクロロフェノキシ酢酸、2,3,5-トリヨード安息香酸、ピクロラム、及びこれらのいずれか1つの塩形態からなる群より選択され得る。
【0100】
好ましくは、ソルガム組織の胚形成能及び器官形成能を維持しながら、細胞分化を誘導し、かつ/又は刺激するに足る充分な量のオーキシン1種以上がCIMに含まれる。例えば、CIMは、約0.1mg/L~約5mg/L、約0.1mg/L~約3mg/L、約0.3mg/L~約2mg/L、又は約0.5mg/L~約1mg/Lの濃度のオーキシンを含んでよい。一例では、CIMは、約1mg/Lの濃度の2,4-Dを含む。
【0101】
本明細書で使用する「サイトカイニン」という用語は、細胞の分割、子葉の伸長、及び側芽の成長を刺激する植物成長調節化合物の一種をいう。サイトカイニンは、切断葉の老化を遅らせ、(本明細書に記載の)オーキシンと組み合わされた場合、根とシュートの形成に影響を及ぼし得る。本開示の方法及び培地での使用に適したサイトカイニンは、当業者に対して公知であり、本明細書に記載されている。例えば、CIMに含める好適なサイトカイニンとして、ベンジルアミノプリン(BAP)、ゼアチン、カイネチン、2IP、ゼアチンリボシド、ジフェニル尿素、及びチジアズロン(TDZ)からなる群より選択してよい。
【0102】
好ましくは、ソルガム組織の細胞分裂を誘導及び/又は刺激するに足る充分な量のオーキシン1種以上がCIMに含まれる。例えば、CIMは、約0.01mg/L~約2mg/L、約0.1mg/L~約2mg/L、約0.5mg/L~約2mg/L、約0.5mg/L~約1mg/L、又は約0.5mg/Lの濃度の1種以上のサイトカイニンを含んでよい。一例では、CIMは、約0.5mg/Lの濃度のBAPを含む。
【0103】
当業者であれば、ソルガム組織が系統立った構造へと実質的に分化するのを阻止しながら、胚形成能と器官形成能を維持する分化細胞の節状構造の成長を誘導、刺激するに足る充分な相対量のオーキシンとサイトカイニンを含むように、「カルス誘導培地」(CIM)が調製されることを理解するであろう。一例では、上記1種以上のオーキシン及び上記1種以上のサイトカイニンは、約1.25:1、約1.5:1、約1.75:1、約2:1、約2.25:1、約2.5:1、約2.75:1、又は約3:1の重量比(オーキシン:サイトカイニン)でCIM中に存在する。
【0104】
本開示の方法でDEC組織を生産する上で有用なCIMの特に好ましい例では、実施例1の表1に記載のCIMと実質的に同一濃度のオーキシン、サイトカイニン、及び酸化褐変抑制剤を含む。これに代替又は追加して、本開示の方法でDEC組織を生産する上で有用なCIMは、実施例1の表1に記載のCIMと同一のオーキシン、サイトカイニン、及び酸化褐変抑制剤を含む。本開示の方法でDEC組織を生産する上で有用なCIMの特に好ましい一例は、実施例1の表1に記載されている。したがって、本開示の方法でDEC組織を生産する上で有用なCIMは、表1に記載のCIMの酸化褐変抑制剤、オーキシン、及びサイトカイニンを含んでよく、酸化褐変抑制剤、オーキシン、及びサイトカイニンのうちの1つ以上が、表1に記載のCIMと同一の濃度で存在してもよい。本開示の方法でDEC組織を生産する上で有用なCIMは、表1に記載のCIMの他の構成要素のうちの1つ以上又は全部をさらに含んでよく、その濃度は、表1に記載のCIMと同一の濃度であってもよい。
【0105】
一例では、CIMは、約0.5mg/Lの濃度のBAP、約1mg/Lの濃度の2,4-D、及び約1mg/Lの濃度のリポ酸(例えばα-リポ酸)を含む。
【0106】
本開示の方法に用いるCIMは、植物組織培養に有用であることが知られている1つ以上の他の成分(多量養素、微量栄養素、ビタミン、アミノ酸、又は窒素補充源、炭素源、未定義の有機補助剤、凝固剤など)を含んでよい。一例では、本開示のCIMは、(オーキシン、サイトカイニン、酸化褐変抑制剤の他に)ペプトン、銅源、浸透圧剤、及び/又は凝固剤を含む。
【0107】
例えば、窒素源、ビタミン、及び/又はアミノ酸として、CIMにペプトンが含まれていてよい。一例では、約0.2g/L~約2g/L、約0.5g/L~約1.5g/L、約0.7g/L~約1g/L、又は約0.8g/Lの濃度のペプトンが本開示のCIMに含まれる。一例では、ペプトンは、約0.8g/Lの濃度でCIM中に存在する。
【0108】
植物では、ある酵素経路(例えばリグニン合成に関与する酵素経路)の活性化に銅が必要とされる。銅は、光合成や植物呼吸でも必要とされ、炭水化物とタンパク質の植物代謝を支援する。したがって、一例では、本開示の方法において使用するCIMに銅源が含まれていてよい。例えば、CIMは、硫酸銅、塩化銅、硝酸銅、グルコン酸銅、又は酢酸銅の形態で銅を含んでよい。CIMにおいて、約0.1mg/L~約5mg/L、約0.3mg/L~約3mg/L、約0.5mg/L~約1.5mg/L、約0.7mg/L~約1mg/L、又は約0.8mg/Lの濃度の銅が存在してよい。
【0109】
CIMは、浸透圧剤を含んでいてもよい。植物細胞培養での使用に適した浸透圧剤は当技術分野において公知であり、本明細書に記載のCIMで使用することが企図されている。例えば、本開示のCIMに含まれる浸透圧剤は、ミオイノシトール、スクロース、マンニトール、グリセロール、ソルビトール、及びマルトースから選択されてよい。
【0110】
植物細胞培地に有用な凝固剤は当技術分野において公知であり(寒天等)、本明細書に記載のCIMでも使用することが企図されている。
【0111】
本開示の方法でDEC組織を生産する上で有用なCIMの特に好ましい一例は、実施例1の表1に記載されている。したがって、本開示の方法でDEC組織を生産する上で有用なCIMは、表1に記載のCIMの酸化褐変抑制剤、オーキシン、及びサイトカイニンを含んでよく、酸化褐変抑制剤、オーキシン、及びサイトカイニンのうちの1つ以上が、表1に記載のCIMと同一の濃度で存在してもよい。本開示の方法でDEC組織を生産する上で有用なCIMは、表1に記載のCIMの他の構成要素のうちの1つ以上又は全部をさらに含んでよく、その濃度は、表1に記載のCIMと同一の濃度であってもよい。
【0112】
一例では、本明細書に記載のDEC組織を生産する方法は、ソルガムから取得したIEを、薄明条件下で、当該IEからDEC組織を生産するのに充分な時間、CIMにおいて培養することを含む。本明細書で使用する用語「薄明条件」とは、約10μmol m-2sec-1~約55μmol m-2sec-1の強度で照射される光(例えば白色光)を含む条件をいう。
【0113】
一例によれば、本開示の方法は、約10μmol s-1-2~約55μmol s-1-2、約30μmol s-1-2~約50μmol s-1-2、又は約45μmol s-1-2~約50μmol s-1-2の光強度を有する薄明条件下でIEを培養することを含む。特定の一例では、IEを培養してDEC組織を生産するのに用いる薄明条件は、約30μmol m-2sec-1~約45μmol m-2sec-1の強度で照射される白色光を含む。
【0114】
本明細書に記載の通り、ソルガムから取得したIEの培養は、当該IEからDEC組織を生産するに足る充分な時間行われることが予期されている。当業者であれば、植物又は植物組織(特に緑色組織)の成長は、組織培養期間だけでなく明期の影響も受けることを理解するであろう。本明細書で使用する用語「明期」は、植物又は組織(例えばソルガム植物又はソルガム組織)が24時間中に受ける光露出の時間を意味するものと理解される。
【0115】
上記の各例において、薄明条件下の培養は、約12h~約20時間、約14h~約18時間、又は約14h~約16時間の明期で行うことが企図されている。例えば、薄明条件下の培養は、約12h、約14h、約16h、約18h、又は約20hの明期で行ってよい。好ましい一例では、本開示の方法による薄明条件下の培養は、約14h~約16時間(例えば16h)の明期で行われる。本明細書の任意の例において、IEからDEC組織を生産するに足る充分な時間とは、少なくとも約2週間~約6週間、約3週間~約5週間、又は約4週間である。
【0116】
本明細書に記載の方法でDEC組織が得られた後は、ソルガムの新鮮なDEC組織集団を維持するため、1つ以上の継代培養ステップが発生してよいことが企図されている。継代培養ステップの実施によりDEC組織の1つ以上の集団を維持する利点の1つは、一年の中で、開花したソルガム植物から未熟胚を取得するのが困難な時期を含め、新鮮なDEC組織を継続的に供給できることである。
【0117】
したがって、本明細書に記載のDEC組織の生産方法は、1つ以上の継代培養ステップを含んでよい。本明細書で使用する「継代培養」という用語は、組織又は細胞の一部を既存の培養物から新鮮な培地を格納した新規培養容器に移し、当該組織又は細胞の培養を再開するプロセスをいう。継代培養の各一巡を細胞又は組織の「継代」と称する場合がある。よって、細胞又は組織を継代培養した場合、当該細胞又は組織が「継代された」と称することもできる。
【0118】
本明細書に記載の方法によれば、上記1つ以上の継代培養ステップは、本明細書に記載の方法で取得したDEC組織を、新鮮なCIMを格納した別の培養容器に移すことと、継代培養物を、IEからDEC組織を生産した時と実質的に同一の条件に曝露することとを含んでよい。一例によれば、2~4週間おきに継代培養ステップを実施してDEC組織を維持する。例えば、約2週間おきにDEC組織を継代培養してよい。例えば、約3週間おきにDEC組織を継代培養してよい。例えば、約4週間おきにDEC組織を継代培養してよい。DEC組織の生産方法に1つ以上の継代培養ステップが含まれる上記のいずれかの例によれば、IEからDEC組織が生産された時から少なくとも4ヶ月間、少なくとも5ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、少なくとも7ヶ月間、少なくとも8ヶ月間、及び/又は最長12ヶ月間、DEC組織を維持する目的で、上記継代培養ステップを繰り返してよい。この点に関連して、本開示の方法は、継代培養を実施することにより、生産したDEC組織を最長6ヶ月間又は6ヶ月超の間維持できるという利点がある。
【0119】
(ソルガムを遺伝子改変する方法)
本明細書中で記載するように、ソルガムの形質転換用外植体として使用する場合、本開示のDEC組織は、未熟胚を形質転換のための外植体組織として使用する場合に達成されるよりも改善された形質転換効率を達成することができる。
【0120】
したがって、本開示のさらなる態様は、1つ以上の核酸をソルガムのDEC組織の細胞に導入することを含む、遺伝子改変されたソルガム細胞を生産する方法に関する。
【0121】
本開示はまた、遺伝子改変されたソルガム植物又はその再生部分を生産する方法であって:
(a)本明細書中で記載するように1つ以上のDEC組織に関して遺伝子改変されたソルガム細胞を生産する方法を実施することと;
(b)培養によりDEC組織からシュート形成が誘発されるように、1つ以上の核酸が導入されたDEC組織を単一培地上又は一連の培地上で培養することにより、1つ以上の遺伝子改変シュートを生産することと;
(c)ステップ(b)の遺伝子改変シュートから1つ以上の遺伝子改変ソルガム植物を生産することにより、遺伝子改変ソルガム植物を生産することと;
(d)任意に、ステップ(c)の遺伝子改変植物から再生部分を取得することと;
をこの順で含む方法にも関する。
【0122】
本開示はまた、遺伝子改変されたソルガム植物又はその再生部分を生産する方法であって:
(a)ソルガム組織の集団に1つ以上の核酸を導入することと;
(b)1つ以上の核酸が導入されたソルガム組織100個当たり少なくとも35個の遺伝子改変シュートの効率で培養によりソルガム組織からシュート形成が誘導されるように、1つ以上の核酸が導入されたソルガム組織を単一培地上又は一連の培地上で培養することにより、遺伝子改変シュートを生産することと;
(c)ステップ(b)の遺伝子改変シュートから1つ以上の遺伝子改変ソルガム植物を生産することにより、遺伝子改変ソルガム植物を生産することと;
(d)任意に、ステップ(c)の遺伝子改変植物から再生部分を取得することと;
をこの順で含む方法にも関する。
【0123】
一例では、1つ以上の核酸が導入された100のソルガム組織あたり少なくとも40の遺伝子改変されたシュートの効率が達成される。一例では、1つ以上の核酸が導入された100のソルガム組織あたり少なくとも45の遺伝子改変されたシュートの効率が達成される。一例では、1つ以上の核酸が導入された100のソルガム組織あたり少なくとも50の遺伝子改変されたシュートの効率が達成される。一例では、1つ以上の核酸が導入された100のソルガム組織あたり少なくとも55の遺伝子改変されたシュートの効率が達成される。一例では、1つ以上の核酸が導入された100のソルガム組織あたり少なくとも60の遺伝子改変されたシュートの効率が達成される。一例では、1つ以上の核酸が導入された100のソルガム組織あたり少なくとも65の遺伝子改変されたシュートの効率が達成される。一例では、1つ以上の核酸が導入された100のソルガム組織あたり少なくとも70の遺伝子改変されたシュートの効率が達成される。一例では、1つ以上の核酸が導入された100のソルガム組織あたり少なくとも75の遺伝子改変されたシュートの効率が達成される。一例では、1つ以上の核酸が導入された100のソルガム組織あたり少なくとも80の遺伝子改変されたシュートの効率が達成される。一例では、1つ以上の核酸が導入された100のソルガム組織あたり少なくとも85の遺伝子改変されたシュートの効率が達成される。一例では、1つ以上の核酸が導入された100のソルガム組織あたり少なくとも90の遺伝子改変されたシュートの効率が達成される。
【0124】
本明細書中で用いる場合、本明細書中で記載するようなソルガム細胞、組織、シュート又は植物の関連での「遺伝子改変された」という用語は、ソルガム細胞、組織、シュート又は植物であって、それらの遺伝子材料、すなわちDNAが、例えばDNAの付加、DNAの欠失又はDNAの置換によって変更されているものを指す。いくつかの例において、本明細書中で記載される方法に従って「遺伝子改変」されたソルガム細胞、組織、シュート又は植物は、例えば優良系統又は遺伝的に異なる集団由来の好ましい遺伝子変異体などの野生型ソルガム植物、変種又は栽培品種で見られる遺伝子(又はその部分)を含むように改変される。別の例では、本明細書中で記載される方法に従って「遺伝子改変」されたソルガム細胞、組織、シュート又は植物は、野生型ソルガム植物、変種又は栽培品種では見られない遺伝子構築物(「導入遺伝子」)又は他の異種性ポリヌクレオチドを含むように改変される。導入遺伝子又は異種ポリヌクレオチドの導入によって「遺伝子改変」されたソルガム細胞、組織又は植物は、「トランスジェニック」と称する場合がある。本明細書中で言及される「導入遺伝子」は、バイオテクノロジーの技術分野における通常の意味を有し、組換えDNA又はRNAテクノロジーによって産生又は変更され、細胞に導入された遺伝子配列を含む。
【0125】
本開示の遺伝子改変された植物の関連での「再生部分」という用語は、ソルガム植物を生じることができる生殖部分、例えば、種子又は胚を指す。本明細書中で用いる場合、「種子」という用語は、収穫期を迎えたか、又は植物から収穫されたかのいずれか、例えば、典型的には田畑から商業的に収穫される植物の「成熟種子」、あるいは受精後かつ種子休眠が確立される前で収穫前の植物に存在する「熟成中の種子」を指す。
【0126】
核酸の関連で用いられる場合、「導入する」という語は、核酸がDEC組織又はソルガム組織の細胞の内部に侵入するような方法でソルガムDEC組織又はソルガム組織に核酸を提示することを意味する。本開示の方法を使用して1つよりも多い核酸を導入する場合、これらの核酸は、単一の核酸構築物の一部として、又は別の核酸構築物として組み立てることができ、そして同一又は異なる形質転換ベクター上に配置することができる。したがって、複数の核酸を、単一の形質転換イベントで、別の形質転換イベントで、又は、例えば育種プロトコルの一部として、DEC組織に導入することができる。
【0127】
「形質転換」という語は、本明細書中で用いられる場合、DEC組織又は他のソルガム組織外植体の細胞に核酸を導入することを指す。細胞の形質転換は安定的又は一時的であり得る。
【0128】
1つ以上の核酸を、DEC組織又は他のソルガム組織外植体の細胞に、当該技術分野で公知の任意の手段によって導入することができる。核酸の細胞への直接送達のための4つの一般的方法、すなわち、(1)化学的方法(Graham et al.、1973)、(2)物理的方法、例えばマイクロインジェクション(Capecchi、1980)、電気穿孔(例えば、国際公開第87/06614号パンフレット、米国特許第5,472,869号明細書、米国特許第5,384,253号明細書、国際公開第92/09696号パンフレット及び国際公開第93/21335号パンフレットを参照のこと)、ならびに遺伝子銃(例えば、米国特許第4,945,050号明細書及び米国特許第5,141,131号明細書を参照のこと)、(3)ウイルスベクター(Clapp,1993;Lu et al.、1993;Eglitis et al.、1988)、ならびに(4)受容体媒介メカニズム(Curiel et al.、1992、Wagner et al.、1992)が記載されている。
【0129】
使用し得る加速法としては、例えばマイクロプロジェクタイルボンバードメントなどが挙げられる。1つ以上の核酸をDEC組織の細胞、又は他のソルガム組織外植体の細胞へ送達する方法の一例はマイクロプロジェクタイルボンバードメントである。この方法は、Yang et al.、Particle Bombardment Technology for Gene Transfer, Oxford Press, Oxford, England(1994)によって概説されている。核酸でコーティングすることができ、推進力によって細胞に送達することができる非生物学的粒子(マイクロプロジェクタイル)。例示的な粒子としては、タングステン、金、白金及び同種のものから構成されるものが挙げられる。マイクロプロジェクタイルボンバードメントの特別な利点は、単子葉植物を再現性よく形質転換する有効な手段であることに加えて、プロトプラストの単離も、アグロバクテリウム(Agrobacterium)感染に対する感受性も必要でないことである。加速によってトウモロコシ(Zea mays)細胞にDNAを送達するための方法の事例的実施形態は、懸濁液中で培養されたコーン細胞で覆われたフィルター表面上に、ステンレス鋼又はNytexスクリーンなどのスクリーンを通してDNAでコーティングされた粒子を推進するために使用できる微粒子銃α-粒子送達系である。本発明での使用に適した粒子送達系は、Bio-Rad Laboratoriesから入手可能なヘリウム加速PDS-1000/He銃である。
【0130】
ボンバードメントのために、懸濁液中の細胞をフィルター上で濃縮してもよい。衝突させる細胞を含むフィルターを、マイクロプロジェクタイル停止板下の適切な距離に配置する。必要に応じて、銃と衝突させる細胞との間に1つ以上のスクリーンも配置される。
【0131】
別法として、ソルガムDEC組織又は他のソルガム組織外植体を固体培地上に配置してもよい。衝突させる細胞をマイクロプロジェクタイル停止板より下の適切な距離に配置する。必要に応じて、加速装置と衝突させる細胞との間に1つ以上のスクリーンも配置される。本明細書中に記載する技術の使用により、マーカー遺伝子を一時的に発現する細胞の最大1000又はそれ以上のフォーカスを得ることができる。衝突後48時間で外因性遺伝子産物を発現するフォーカス内の細胞の数は、多くの場合、1~10、平均1~3の範囲である。
【0132】
衝撃形質転換において、プレ衝撃培養条件及び衝撃パラメータを最適化して最大数の安定な形質転換体を生産することができる。衝撃に関する物理的パラメータ及び生物学的パラメータのどちらもこのテクノロジーにおいて重要である。物理的要因は、DNA/マイクロプロジェクタイル沈殿物又はマクロもしくはマイクロプロジェクタイルのいずれかの飛行及び速度に影響を及ぼすものを操作することが関与するものである。生物学的要因は、衝撃前及び直後の細胞の操作、衝撃に関連する外傷の軽減を支援するための標的細胞の浸透圧調整に関与する全てのステップ、そして直線化DNA又はインタクトなスーパーコイルプラスミドなどの形質転換DNAの性質も包含する。
【0133】
別の代替例において、色素体は安定して形質転換することができる。高等植物における色素体形質転換について開示された方法には、選択マーカーを含むDNAのパーティクルガン送達及び相同組換えによるDNAの色素体ゲノムへのターゲティングが含まれる(米国特許第5,451,513号明細書、米国特許第5,545,818号明細書、米国特許第5,877,402号明細書、米国特許第5,932479号明細書及び国際公開第99/05265号パンフレット)。
【0134】
したがって、条件を充分に最適化するために小規模研究における衝撃パラメータの様々な態様を調節することが望まれる場合があることが想定される。間隙距離、飛行距離、組織距離、及びヘリウム圧力などの物理的パラメータを調節することが特に望まれる場合がある。レシピエント細胞の生理学的状態に影響を及ぼし、したがって、形質転換及び組込み効率に影響を及ぼし得る状態を改変することによって外傷減少係数を最小限に抑えることもできる。例えば、レシピエント細胞の浸透圧状態(osmotic state)、組織水和及び継代培養状態又は細胞周期を最適の形質転換のために調節することができる。他のルーチン調節の実施は、本開示に照らせば当業者にはわかるであろう。
【0135】
DNAは全植物組織に導入することができ、それによってプロトプラストからのインタクト植物の再生の必要性を回避することができるので、アグロバクテリウム媒介移行は核酸を植物細胞に導入するための広く応用できる系である。DNAを植物細胞に購入するためのアグロバクテリウム媒介植物組込みベクターの使用は当該技術分野で周知である(例えば、米国特許第5,177,010号明細書、米国特許第5,104,310号明細書、米国特許第5,004,863号明細書、米国特許第5,159,135号明細書を参照のこと)。さらに、T-DNAの組込みは、再編成をほとんどもたらさない比較的正確なプロセスである。導入されるDNAの領域は、ボーダー配列によって規定され、介在DNAは、通常、植物ゲノムに挿入される。
【0136】
現代のアグロバクテリウム形質転換ベクターは、アグロバクテリウムと同様にE.coliにおいて複製が可能であり、記載されているような便利な操作を可能にする(Klee et al.、In: Plant DNA Infectious Agents, Hohn and Schell, eds., Springer-Verlag, New York, pp. 179-203 (1985)。さらに、アグロバクテリウム媒介遺伝子導入用のベクターにおける技術的進歩によって、ベクターにおける遺伝子及び制限部位の配置が改善され、様々なポリペプチドをコードする遺伝子を発現できるベクターの作製が容易になってきた。記載されたベクターは、挿入されたポリペプチドをコードする遺伝子の直接発現のためのプロモーターとポリアデニル化部位によって挟まれた便利なマルチリンカー領域を有し、本発明の目的に適している。加えて、武装(armed)及び非武装(disarmed)Ti遺伝子の両方を含むアグロバクテリウムを形質転換のために使用することができる。
【0137】
アグロバクテリウム形質転換法を用いて形成される遺伝子改変された植物又は組織は、典型的には1つの染色体上に単一の遺伝子座を含む。そのようなトランスジェニック植物は、付加された核酸についてヘミ接合性であるということができる。さらに好ましいのは、付加された核酸、すなわち、染色体対の各染色体上の同じ座の1つの核酸についてヘミ接合性である遺伝子改変された植物である。ホモ接合型遺伝子改変植物は、単一の付加された核酸を含む独立した分離個体の遺伝子改変された植物を性的交配(自殖)させ、生じた種子の一部を発芽させ、そして結果として得られた植物を関心対象の核酸について分析することによって得ることができる。
【0138】
好ましい例では、本開示の方法を用いてDEC組織又はソルガム組織に導入される1つ以上の核酸は安定して導入される。
【0139】
本明細書中で用いる場合、「安定して導入する」又は「安定して導入された」という語は、ソルガム細胞に導入される核酸に関連して、導入された核酸がソルガム細胞のゲノムに安定して組み込まれ、したがって、前記細胞が核酸で安定して形質転換されることを意味する。本明細書中で用いる場合、「安定な形質転換」又は「安定して形質転換された」という語は、核酸が細胞に導入され、そして細胞のゲノムに組み込まれることを意味する。したがって、組み込まれた核酸は、それらの子孫によって、さらに詳細には複数の継続的世代の子孫によって受け継がれることができる。本明細書中で言及される場合、「ゲノム」という語は、核及び色素体ゲノムを包含し、したがって、核酸の、例えば葉緑体ゲノムへの組込みを包含する。本明細書中で使用される安定な形質転換は、例えばミニ染色体として染色体外に維持される核酸も指す可能性がある。
【0140】
DEC組織、又は他のソルガム外植体から産生された遺伝子改変されたソルガム植物であって、そのゲノムに本開示の方法を用いて核酸が組み込まれたものは、「生殖系列が安定的に形質転換されたソルガム植物」と称する場合がある。
【0141】
本明細書中で用いられる「核酸」とは、例えば、DNA、RNA又はオリゴヌクレオチドなどのポリヌクレオチドを意味すると理解されるべきである。DEC組織又はソルガム組織に導入された1つ以上の核酸は、ソルガム植物中の核酸における特定のポリヌクレオチド配列の発現を行うことができる1つ以上の核酸構築物、例えば発現カセット中に存在する可能性があり、それによってコードされるタンパク質又はポリペプチドの適切な発現及び翻訳に必要とされるポリヌクレオチド配列及び/又は1つ以上の他の調節エレメントに機能的に連結したプロモーターを概して含む。
【0142】
好ましくは、DEC組織又はソルガム組織に導入された1つ以上の核酸は、少なくとも1つの関心対象の遺伝子を含み得る。関心対象の遺伝子は、遺伝子改変されたソルガム植物又は組織又はその再生部分におけるタンパク質の活性の内因性レベルを増減させることができるか、あるいはソルガム植物、組織又はその再生部分に新しいタンパク質を導入することができる。例えば、関心対象の遺伝子は、収率を増加させる、強化された動物及び/又はヒト栄養を与える、除草剤耐性(例えば、グリホセート耐性又はグルホシネート耐性)を付与する、炭水化物生合成又は改変に影響を及ぼす(例えば、デンプン分枝酵素、デンプン脱分枝酵素、デンプンシンターゼ、ADP-グルコースホスホリラーゼ)、脂肪酸生合成又は改変に関与する(例えば、デサチュラーゼ、エロンガーゼ、ヒドロキシラーゼ、エポキシダーゼ、コンジュガーゼ、アセチラーゼ、TAGアセンブリ)、昆虫耐性を付与する(例えば、Bacillus thuringiensisの結晶毒素タンパク質)、ウイルス耐性を付与する(例えば、ウイルスコートタンパク質);真菌耐性を付与する(例えば、キチナーゼ、β-1,3-グルカナーゼ、モリシン関連ペプチド又はフィトアレキシン)、スクロース代謝を変更する(例えば、インベルターゼ又はスクロールシンターゼ)、減少したアレルギー誘発性を付与する、消化性を増大させる、環境ストレス耐性を付与する、線虫耐性を付与する、医薬(例えば、抗生物質、抗体、二次代謝産物、医薬ペプチド又はワクチン)をコードする遺伝子である、工業用酵素をコードする遺伝子である、あるいはソルガム植物又はその部分のバイオ燃料としての使用を増大させる、タンパク質又は機能的ポリヌクレオチドをコードすることができる。
【0143】
別の例では、方法は、少なくとも核酸(複数可)を導入することを含むことが想定され、少なくとも2つの核酸は、標的遺伝子変異誘導用のクラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)/Cas系に関連する座である。
【0144】
CRISPR系は、Casエンドヌクレアーゼ及び必要なcrRNA成分を発現するプラスミドの同時送達によって植物細胞に対してポータブル(portable)であり得る。Casエンドヌクレアーゼをニッカーゼに変換して、DNA修復のメカニズムに対してさらなる制御を提供することができる(Cong et al.、2013)。
【0145】
CRISPR座は、最初にE.coliで認識された、異なった種類の散在型の短い反復配列(SSR)である(Ishino et al.、1987;Nakata et al.、1989)。類似の散在型SSRがHaloferax mediterranei、Streptococcus pyogenes、Anabaena、及びMycobacterium tuberculosisで特定されている(Groenen et al.、1993;Hoe et al.、1999;Masepohl et al.、1996;Mojica et al.、1995)。
【0146】
CRISPR座は、短い規則的間隔の反復配列(short regularly spaced repeat)(SRSR)と称される反復配列の構造が他のSSRとは異なる(Janssen et al.、2002; Mojica et al.、2000)。反復配列は、一定の長さを有する独特の介在配列によって常に規則的に離間された、クラスターで存在する短いエレメントである(Mojica et al.、2000)。反復配列は菌株間で高度に保存されているが、散在型反復配列の数とスペーサー領域の配列は、菌株間で異なる(van Embden et al.、2000)。
【0147】
CRISPR座の共通の構造特性は、Jansen et al.(2002)で、(i)所与の座内で配列の変動が全く又はほとんどない、複数の短い直列反復配列の存在、(ii)同様のサイズの反復配列間の非反復スペーサー配列の存在、(iii)複数のCRISPR座を有するほとんどの種における数百塩基対の共通のリーダー配列の存在、(iv)座内に長いオープンリーディングフレームが存在しないこと、そして(v)1つ以上のcas遺伝子の存在として記載されている。
【0148】
CRISPRは、典型的には11bpまでの内部及び末端逆方向反復配列を含む24~40bpの短い部分的パリンドローム配列である。単離された要素が検出されているが、それらは概して独特の介在する20~58bp配列によって離間された反復単位のクラスター(ゲノムあたり最大約20又はそれ以上)で配置されている。CRISPRは、所与のゲノム内で概して同種であって、それらのほとんどは同一である。しかしながら、例えば、古細菌においては異種性の例がある(Mojica et al.、2000)。
【0149】
本明細書中で用いる場合、「cas遺伝子」という語は、概して隣接CRISPR座に関連して結合するか又は近くにあるか又は近接している1つ以上のcas遺伝子を指す。Casタンパク質ファミリーの包括的レビューはHaft et al.(2005)で提示されている。所与のCRISPR座でのcas遺伝子の数は種間で異なり得る。
【0150】
したがって、CRISPR系の座が本開示の方法を用いてDEC組織又はソルガム組織に形質転換される実施形態は、ソルガム植物のCRISPR媒介遺伝子編集を可能にすることが企図される。
【0151】
形質転換体の同定又は選択を容易にするために、1つ以上の核酸は、望ましくは「選択マーカー遺伝子」を含み得る。したがって、本明細書中で記載する遺伝子改変されたソルガム細胞又は植物を生産する方法は、1つ以上の核酸で形質転換された組織又は植物の選択を含み得る。
【0152】
選択マーカー遺伝子は、本明細書中で記載するように、関心対象の遺伝子とともに核酸構築物内に含まれ得る。しかしながら、これらは同じ核酸構築物中に提供される必要はなく、選択マーカー遺伝子は、関心対象の遺伝子を含む核酸とは別に提供することができ、例えば別の核酸構築物であってもよい。
【0153】
「選択マーカー遺伝子」とは、マーカー遺伝子を発現する細胞又は組織に異なる表現型を付与し、したがって、そのような形質転換された細胞又は組織を、そのマーカーを有さない細胞又は組織から区別することを可能にする遺伝子を意味する。選択マーカー遺伝子は、「選択」の基礎となり得る特質を付与する。例えば、選択マーカー遺伝子は、選択剤(例えば、除草剤、抗生物質、放射線、熱、又は形質転換されていない細胞に対して損傷を与える他の処理)に対して耐性を付与し得る。核酸(複数可)が選択剤に対する耐性を付与する選択マーカー遺伝子を含む例によると、方法は、核酸(複数可)が導入されたDEC組織又はソルガム組織(又はそれ由来のソルガム植物)を対応する選択剤に曝露することを含む。
【0154】
代替的に、又は付加的に、1つ以上の核酸は、特定の代謝産物(例えば、トレハロース遺伝子、β-グルコロニダーゼ(GUS)遺伝子又はホスホマンノースイソメラーゼ(PMI)遺伝子)の存在下で形質転換体に成長優位性を付与する選択マーカー遺伝子を含み得る。核酸(複数可)が、特定の代謝産物の存在下で成長優位性を形質転換体に付与する選択マーカー遺伝子を含む例によると、方法は、核酸(複数可)が対応する代謝産物の存在下で導入されたDEC組織又はソルガム組織を培養することを含む。
【0155】
あるいは、選択マーカー遺伝子は、観察又は試験、すなわち、「スクリーニング」によって同定することができる特質(例えば、β-グルクロニダーゼ、ルシフェラーゼ、GFP又は非形質転換細胞中に存在しない他の酵素活性)を付与する「スクリーンニング可能なマーカー遺伝子」(又はレポーター遺伝子)であり得る。核酸(複数可)がスクリーニング可能なマーカー遺伝子を含む例によると、当該方法は、核酸(複数可)が導入されたDEC組織又はソルガム組織を培養し、そして(例えば、観察可能な表現型に基づいて)スクリーニング可能なマーカー遺伝子を発現する組織又はそれから産生されるソルガム植物を選択することを含む。
【0156】
本明細書中で記載する場合、マーカー遺伝子及び関心対象の遺伝子は、同じ核酸構築物に連結されているか又は同じ核酸構築物中に提供されている必要はない。さらに、マーカーの実際の選択は、本開示の方法で用いられるDEC組織又はソルガム組織と組み合わせて機能的(すなわち、選択的)である限り、重要ではない。選択マーカー遺伝子の例に関するさらなる説明を本明細書中に提示する。
【0157】
一例では、本明細書中で記載される方法における使用に適した選択マーカーは蛍光又は生物発光マーカーであり得る。蛍光又は生物発光マーカーの例としては、緑色蛍光タンパク質(GFP)、GFPの青色蛍光変異体(BFP)、GFPのシアン蛍光変異体(CFP)、GFPの黄色蛍光変異体(YFP)、高感度GFP(EGFP)、高感度CFP(ECFP)、高感度YFP(EYFP)、GFPS65T、エメラルド、トパーズ、GFPuv、不安定EGFP(dEGFP)、不安定ECFP(dECFP)、不安定EYFP(dEYFP)、HcRed、t-HcRed、DsRed、DsRed2、t-ダイマー2、t-ダイマー2(12)、mRFP1、ポシロポリン(pocilloporin)、ウミシイタケGFP、モンスターGFP、paGFP、Kaedeタンパク質、フィコビリタンパク質、ルシフェラーゼ、又は生物学的に活性な変異体又はいずれか1つのフラグメントが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0158】
蛍光タンパク質の非常によく知られた一例には、分子生物学、例えば変異誘発及びキメラタンパク質テクノロジーの適用に起因するクラゲAequorea victoria由来の緑色蛍光タンパク質及び多くの他の変異体(GFP)が含まれる(Tsien、1998)。GFPは、それらの発色団の典型的な成分に基づいて分類され、各クラスは、異なる励起及び発光波長を有し、すなわち、クラス1はフェノールとアニオン性フェノレートとの野生型混合物、クラス2はフェノレートアニオン、クラス3は中性フェノール、クラス4は積層型s-電子系を有するフェノレートアニオン、クラス5はインドール、クラス6はイミダゾール、そしてクラス7はフェニルである。
【0159】
発光系が公知であり、細菌、原生動物、腔腸動物、軟体動物、魚類、ヤスデ、ハエ、真菌、蠕虫、甲殻類、及び甲虫、特にPyrophorus属のコメツキムシならびにPhotinus、Photuris、及びLuciola属のホタルを含む多くの発光生物から単離されている。生物発光を示すさらなる生物は、国際公開第00/024878号パンフレット、国際公開第99/049019号パンフレット及びViviani(2002)に列挙されている。
【0160】
非常によく知られた一例は、特定の生化学物質であるルシフェリン(天然に存在するフルオロフォア)がルシフェラーゼ活性を有する酵素によって酸化されるエネルギー産生化学反応を触媒するルシフェラーゼとして知られるタンパク質のクラスである(Hastings、1996)。細菌、藻類、真菌、昆虫、魚類及び他の海生型の種を含む原核及び真核両方の多種多様な生物はこのようにして光エネルギーを放射することができ、各々は特異的ルシフェラーゼ活性と、他の生物のものとは化学的に異なるルシフェリンとを有する。ルシフェリン/ルシフェラーゼ系は、形態、化学的性質及び機能において非常に多様である。ルシフェラーゼ活性を有する生物発光タンパク質は、したがって、様々な供給源から、又は様々な手段によって得ることができる。ルシフェラーゼ活性を有する生物発光タンパク質の例は、米国特許第5,229,285号明細書、米国特許第5,219,737号明細書、米国特許第5,843,746号明細書、米国特許第5,196,524号明細書、及び米国特許第5,670,356号明細書で見出すことができる。最も広く用いられるルシフェラーゼのうちの2つは、(i)セレンテラジンを基質として使用し、480nmで発光する35kDaのタンパク質であるウミシイタケルシフェラーゼ(R.reniformis由来)(Lorenz et al.、1991);及び(ii)ルシフェリンを基質として使用し、560nmで発光する61kDaのタンパク質であるホタルルシフェラーゼ(Photinus pyralis由来)、(de Wet et al.、1987)である。
【0161】
ガウシア(Gaussia)ルシフェラーゼ(Gaussia princeps由来)が生化学アッセイで使用されてきた(Verhaegen et al.、2002)。ガウシアルシフェラーゼは、急速な反応でセレンテラジンを酸化して470nmでの高照度光の発光をもたらす20kDaのタンパク質である。
【0162】
本開示の方法で有用なルシフェラーゼは、Anachnocampa spからも特徴づけられている(国際公開第2007/019634号パンフレット)。これらの酵素は約59kDaの大きさであり、スペクトルの青色部分内に発光スペクトルを有する発光反応を触媒するATP依存性ルシフェラーゼである。
【0163】
天然に存在するルシフェラーゼの生物学的に活性な変異体、例えばウミシイタケルシフェラーゼ変異体RLuc8を使用することができる(Leoning et al.,2006)。
【0164】
本明細書中で記載される方法で採用することができる別の非ルシフェラーゼ生物発光タンパク質は、好適な基質に対して作用して発光シグナルを生成することができる任意の酵素である。そのような酵素の具体例は、β-ガラクトシダーゼ、ラクタマーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-グルクロニダーゼ及びβ-グルコシダーゼである。これらの酵素の合成発光基質は当該技術分野で周知であり、Tropix Inc.(米国マサチューセッツ州ベッドフォード)などの企業から市販されている。ペルオキシダーゼの一例はHushpulian et al.(2007)によって記載されている。
【0165】
好ましくは、蛍光又は生物発光マーカーは植物細胞から分泌される形態である。植物細胞において発現される場合に本質的に分泌されないならば、分泌を確実にするために最大2つの改変、すなわち、タンパク質を小胞体(ER)に向けるためのN末端シグナル配列の付加及び/又はタンパク質がER中に保持されないことを保証するための、典型的にはC末端でのシグナルの付加を行う必要がある。
【0166】
N末端シグナル配列は当該技術分野で周知であり、限定されるものではないが、ウイルスエンベロープ糖タンパク質シグナルセグメント、Nicotiana nectarinシグナルペプチド(米国特許第5,939,288号)、タバコエクステンシンシグナル、ダイズオレオシン油体結合タンパク質シグナル、Arabidopsis thaliana空胞塩基性(vacuolar basic)キチナーゼシグナルペプチド、及びコングリシニン分泌ペプチドが挙げられる。
【0167】
タンパク質がER中に保持されないことを確実することに関して、各蛍光又は生物発光マーカーは、ERにおいて1回分泌される独自の傾向を有するであろう。例えば、GFPは細胞中に保持される。マーカーがER中に保持される場合、マーカーを標準的技術によって操作して、例えば3~10、又は約4のグリシンをC末端に付加することによって、確実に分泌させることができる。
【0168】
例えば、GFPは通常、植物細胞中に保持されるが、N末端にコングリシニン分泌ペプチドを付加し、C末端に4つのグリシンを付加することによって分泌可能にして、GFPを確実にアポプラストに分泌させた(Nishizawa et al.、2003)。
【0169】
選択マーカー遺伝子が生物発光タンパク質をコードする一例によると、好適な基質が必要とされる。基質は、培養ステップの1つの間に植物組織に提供され得るが、細胞及び/又は組織を分析して細胞及び/又は組織が形質転換されたか否かを判定する場合に少なくとも必要とされる。
【0170】
基質の選択は、生物発光タンパク質によって発生する光の波長及び強度に影響を及ぼし得る。
【0171】
広く知られている基質はセレンテラジンであり、これは刺胞動物、カイアシ類、毛顎類(chaetgnath)、動物、十脚甲殻類(decapod shrimp)、アミ、放散虫及び一部の魚類に存在する(Greer及びSzalay、2002)。例えば、ウミシイタケルシフェラーに関して、セレンテラジン類似体/誘導体が利用可能であり、418~512nmで発光する(Inouye et al.、1997)。セレンテラジン類似体/誘導体(400A、DeepBlueC)は、ウミシイタケルシフェラーゼを用いて400nmにて発光することが記載されている(国際公開第01/46691号パンフレット)。セレンテラジン類似体/誘導体の他の例はEnduRen及びViviRenである。
【0172】
ルシフェリンの別のクラスは、生物発光可能な生物において見出される発光生物色素の一種であり、酵素ルシフェラーゼの存在下で酸化されてオキシルシフェリンと光の形態のエネルギーを生じる。ルシフェリン、すなわち2-(6-ヒドロキシベンゾチアゾール-2-イル)-2-チアゾリン-4-カルボン酸は、最初に、ホタルPhotinus pyralisから単離された。それ以来、様々な形態のルシフェリンが、様々な異なる生物、主に海洋から、例えば魚類及び頭足綱から見いだされ研究されてきた。しかしながら、多くは陸上生物、例えば蠕虫、甲虫及び様々な他の昆虫で同定されている(Day et al.、2004; Viviani, 2002)。
【0173】
ルシフェリンには少なくとも5つの一般型があり、それぞれ化学的に異なり、幅広い異なる補助因子を用いる化学的及び構造的に異なるルシフェラーゼによって触媒される。第一のものは、ホタルルシフェリン、つまりホタルルシフェラーゼの基質であり、これは触媒作用にATPを必要とする(EC1.13.12.7)。第二のものは、細菌性ルシフェリンであり、一部の頭足綱及び魚類においても見いだされ、長鎖アルデヒド及び還元型リン酸リボフラビンからなる。細菌性ルシフェラーゼはFMNH依存性である。第三のものは、渦鞭毛藻類ルシフェリン、つまり夜間の海洋リン光の原因の生物である渦鞭毛藻類(海洋性プランクトン)で見出されるテトラピロールクロロフィル誘導体である。渦鞭毛藻類ルシフェラーゼは渦鞭毛藻類ルシフェリンの酸化を触媒し、3つの同一で触媒的に活性なドメインからなる。第四のものは、イミダゾロピラジン vargulinであり、これはある貝虫類及び深海魚類、例えばPorichthysで見出される。第五のものは、セランテラジン(イミダゾールピラジン)、つまり、放散虫、動物、刺胞動物、頭足綱、カイアシ類、毛顎動物、魚類及びエビで見出されるタンパク質エクオリンの発光体である。
【0174】
細菌性選択マーカーの例は、アンピシリン、エリスロマイシン、クロラムフェニコール、テトラサイクリン又はカナマイシン耐性などの抗生物質耐性を付与するマーカーである。植物形質転換体の選択のための例示的選択マーカーとしては、ハイグロマイシンB耐性をコードするhyg遺伝子;カナマイシン、パロモマイシン、G418に対する耐性を付与するネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(nptII)遺伝子;例えば欧州特許第256223号明細書で記載されているようなグルタチオン由来の除草剤に対する耐性を付与するラット肝臓由来のグルタチオン-S-トランスフェラーゼ遺伝子;例えば国際公開第87/05327号パンフレットで記載されているような、過剰発現によりホスフィノトリシンなどのグルタミンシンセターゼ阻害剤に対する耐性を付与するグルタミンシンセターゼ遺伝子、例えば、欧州特許第275957号明細書で記載されているような選択剤ホスフィノトリシンに対する耐性を付与するStreptomyces viridochromogenes由来のアセチルトランスフェラーゼ遺伝子、例えばHinchee et al.(1988)によって記載されているようなN-ホスホノメチルグリシンに対する耐性を付与する5-エノールシキメート-3-ホスフェートシンターゼ(EPSPS)をコードする遺伝子、例えばWO91/02071で記載されているようなビアラホスに対する耐性を付与するbar遺伝子;ニトリラーゼ遺伝子、例えばブロモキシニルに対する耐性を付与するKlebsiella ozaenae由来のbxn(Stalker et al.、1988);メトトレキサートに対する耐性を付与するジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子(Thillet et al.、1988);イミダゾリノン、スルホニル尿素又は他のALS阻害化学物質に対する耐性を付与する、変異アセトラクテートシンターゼ遺伝子(ALS)(欧州特許154,204号明細書);5-メチルトリプトファンに対する耐性を付与する変異アントラニレートシンターゼ遺伝子;又は除草剤に対する耐性を付与するダラポンデハロゲナーゼ遺伝子が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0175】
除草剤選択マーカーの例は当該技術分野において公知であり、本明細書中で記載する。除草剤選択マーカーの特定例としては、グリホセート、グルホシネート、又はビアラホスに対する除草剤耐性を付与する遺伝子マーカーが挙げられる。
【0176】
特異的代謝産物の存在下で形質転換体に選択的優位性を付与する選択マーカーの例としては、トレハロース-6-ホスフェートシンターゼ(AtTPS1)遺伝子、β-グルコロニダーゼ(GUS)遺伝子及びホスホマンノースイソメラーゼ(PMI)遺伝子が挙げられる。一例では、本開示の方法で用いられる核酸は、PMIをコードする選択マーカー遺伝子を含み、これは、マンノースを代謝する能力を付与する(参照により本明細書中に組み込まれる、米国特許第5,767,378号明細書及び同第5,994,629号明細書)。PMI遺伝子で形質転換された植物細胞は、マンノースのみ又はマンノースとスクロースを含む培地上で成長させることによって選択することができる。
【0177】
1つ以上の核酸は1つ以上の発現ベクターにおいて、一緒に又は別々に提供することができる。本明細書中で用いる場合、発現ベクターは、宿主細胞を形質転換することができ、また1つ以上の特定のポリヌクレオチド分子の発現を行うことができるDNAベクターである。本開示の方法での使用に好ましい発現ベクターは、植物細胞、そして特にソルガム細胞において遺伝子発現を行うことができる。本開示の方法に有用な発現ベクターは、調節配列、例えば転写制御配列、翻訳制御配列、複製起点、及びソルガム組織と適合性であり、ソルガム組織に導入された1つ以上の核酸の発現を制御する他の調節配列を含む。特に、本発明に有用なポリヌクレオチド又はベクターには、転写制御配列が含まれる。転写制御配列は、転写のイニシエーション、伸長、及び停止を制御する配列である。特に重要な転写制御配列は、転写イニシエーションを制御するもの、例えばプロモーター及びエンハンサー配列である。好適な転写制御配列には、本開示の形質転換されたソルガム細胞において機能し得る任意の転写制御配列が含まれる。典型的には、使用される調節配列の選択は、標的生物、例えば関心対象の植物及び/又は標的器官又は組織に依存する。そのような調節配列は、植物もしくは植物ウイルスなどの任意の真核生物から得ることができるか、又は化学的に合成することができる。ソルガムにおいて使用するためのそのような転写制御配列の変種は当業者には知られている。特に好ましい転写制御配列は、植物又はその部分の使用に応じて、構成的又は段階及び/もしくは組織特異的のいずれかで、転写を行うのに活性なプロモーターである。
【0178】
植物細胞の安定なトランスフェクション又はトランスジェニック植物の確立に適した多くのベクターが、例えば、Pouwels et al.、Cloning Vectors: A Laboratory Manual, 1985, supp. 1987;Weissbach and Weissbach, Methods for Plant Molecular Biology, Academic Press, 1989;及びGelvin et al.,Plant Molecular Biology Manual, Kluwer Academic Publishers, 1990に記載されている。典型的には、植物発現ベクターは、例えば、5’及び3’調節配列ならびに優勢な選択マーカーの転写制御下で1つ以上のクローンされた植物遺伝子を含む。そのような植物発現ベクターはまた、プロモーター調節領域(例えば、誘導型もしくは構成型、環境的もしくは発生学的に調節された、又は細胞もしくは組織特異的発現を制御する調節領域)、転写イニシエーション開始部位、リボソーム結合部位、RNAプロセシングシグナル、転写終結点、及び/又はポリアデニル化シグナルも含み得る。
【0179】
本明細書中で記載するように、遺伝子改変されたソルガム植物又はその再生部分を生産する方法は、1つ以上の核酸が導入されたDEC組織(複数可)又はソルガム組織(複数可)を培地、又は一連の培地上で培養して、前記培養がDEC組織(複数可)からのシュート形成を誘導し、それによって1つ以上の遺伝子改変されたシュートを生産するステップを含む。典型的には、形質転換された植物外植体からのシュートの再生は、一連のステップにおいて一連の培地上で組織外植体を培養することを含み、一連の培地の各々は、植物細胞成長調節化合物を、そのステップの目的、例えば、シュート誘導及び伸長、シュート成長、ならびに発根を達成するために充分な量で含む。したがって、本開示の方法は、根を有するシュートの産生を含む1つ以上の遺伝子改変されたシュートを生産するために、1つ以上の核酸が導入された組織(複数可)を一連の培地上で培養することを想定する。
【0180】
一例では、組織(複数可)を培養し、それによって遺伝子改変されたシュートを生産するために使用される一連の培地の少なくとも1つは、DEC組織を生産する関連で本明細書において記載するカルス誘導培地(CIM)であり得る。例えば、CIM培地は、組織(複数可)の形質転換中及び核酸(複数可)の導入後の静止期の間に組織(複数可)を培養するために使用することができる。形質転換された組織についての選択を含む方法の実施形態にしたがって、選択剤を所望の時間でCIMに添加することができる。別法として、組織(複数可)を、選択剤を含む新鮮なCIMに移し、形質転換された組織(複数可)、すなわち遺伝子改変された組織(複数可)についての選択を可能にするために充分な期間培養してもよい。
【0181】
本開示の方法において遺伝子改変されたソルガム植物を生産するために有用であるCIMの特に好ましい例は、実施例4の表6に記載されている。したがって、本開示の方法において遺伝子改変されたソルガム植物を生産するために有用であるCIMは、表6に記載するような、酸化褐変を低減するための薬剤、オーキシン及びサイトカイニンを含み得、任意選択的に、酸化褐変を低減するための薬剤、オーキシン及びサイトカイニンの任意の1つ以上は表6に記載するCIMと同じ濃度で存在する。本開示の方法において遺伝子改変されたソルガム植物を生産するために有用であるCIMは、表6に記載するCIMの他の構成要素の任意の1つ以上又は全部を、任意選択的に、表6中に記載するCIMと同じ濃度でさらに含み得る。
【0182】
本開示の方法において組織(複数可)を培養するために使用される一連の培地は、シュートバッドの形成を誘導するために適した培地、すなわち、シュート誘導培地(SIM)も含み得る。したがって、本開示の方法は、遺伝子改変された組織(複数可)をCIMからSIMへと移し、組織(複数可)からのシュートバッドの成長を誘導するために充分な期間培養することを含み得る。一例では、SIMは、オーキシン及びサイトカイニンが形質転換された組織(複数可)からのシュートバッドの成長を誘導及び/又は刺激するために充分な相対量で存在することを除いて、本明細書中で記載するCIMと実質的に類似した配合を有する。例えば、SIMは、CIM中に存在するものと比べて低濃度のオーキシンと高濃度のサイトカイニンを含み得る。一例では、SIMは、BAPを約1.0mg/Lの濃度で、2,4-Dを約0.5mg/Lの濃度で、リポ酸、例えばα-リポ酸を約1mg/Lの濃度で含み得る。本開示の方法において遺伝子改変されたソルガム植物を生産するために有用であるSIMの特に好ましい例は、実施例4の表6で記載されている。したがって、本開示の方法において遺伝子改変されたソルガム植物を生産するために有用であるSIMは、表6に記載するようなSIMの酸化褐変を低減するための薬剤、オーキシン及びサイトカイニンを含み得、任意選択的に、酸化褐変を低減するための薬剤、オーキシン及びサイトカイニンのいずれか1つ以上は表6に記載されているSIMと同じ濃度で存在する。本開示の方法において遺伝子改変されたソルガム植物を生産するために有用なCIMは、表6に記載するSIMの他の構成要素のいずれか1つ以上又は全部を、任意選択的に、表6で記載するSIMと同じ濃度でさらに含み得る。
【0183】
本開示の方法において組織(複数可)を培養するために用いられる一連の培地はまた、シュートの成長/再生を誘導するために適した培地、すなわち、シュート再生培地(SRM)も含み得る。したがって、SIM中で充分な時間の後、方法は、遺伝子改変された組織(複数可)をSIMからSRMへ移し、シュートの伸長及び成長に充分な時間組織を培養することを含み得る。これは、発生中のシュートを形質転換された組織外植体から切除し、そして発生中のシュートを成長/伸長のためにSRMに移すことを含み得る。一例では、SRMは、オーキシンが存在しないか又は培地中のサイトカイニンの量に比べて非常に少量で存在することを除いて、SIMと実質的に類似した配合を有する。また、SRMにとって、SIMと比べて高濃度のサイトカイニンを含んで、シュート成長及び伸長を刺激することが望ましい場合もある。一例では、SRMは、BAPを約1.0mg/Lの濃度で、そしてリポ酸、例えばα-リポ酸を約1mg/Lの濃度で、そして任意選択的にさらなるサイトカイニン化合物、例えばTDZを約0.5mg/Lの濃度で含み得る。本開示の方法において遺伝子改変されたソルガム植物を生産するために有用なSRMの特に好ましい例は、実施例4の表6で記載されている。したがって、本開示の方法において遺伝子改変されたソルガム植物を生産するために有用なSRMは、表6に記載されている酸化褐変を低減するための薬剤及びSRMのサイトカイニン(複数可)を含み得、任意選択的に酸化褐変を低減するための薬剤及びサイトカイニンのいずれか1つ以上は、表6で記載するSRMと同じ濃度で存在する。本開示の方法において遺伝子改変されたソルガム植物を生産するために有用であるCRMは、表6で記載されているSRMの他の構成要素のいずれか1つ以上又は全部を、任意選択的に表6に記載するSIMと同じ濃度でさらに含み得る。
【0184】
SRM中で充分な長さの時間の後、遺伝子改変されたシュートを、根誘導培地(RIM)として本明細書中の実施例で記載する発根培地に移して、シュートからの根成長を誘導することができる。これは、組織外植体から発生したシュートを切除し、そして発生したシュートを根誘導及び成長のためにRIMに移すことを含み得る。好ましくは、発根培地は、当該技術分野で公知のように、根誘導ホルモンを含有する。シュートが根を発生したら、それを小植物と呼ぶ場合がある。
【0185】
方法はまた、小植物を硬化させるために充分な環境条件に遺伝子改変された小植物を供するさらなる任意のステップも含み得る。本明細書中で用いる場合、「硬化させる(hardenもしくはhardening)」という語又は類似のものは、正常な環境成長条件、例えば土壌中で小植物を準備するプロセスを指す。
【0186】
一連の培地を用いて組織(複数可)を培養する場合、本明細書中で記載する培養ステップのいずれか1つ以上は、例えば、組織(複数化)を各培地から同じ種類の新鮮な培地を含む培養容器へと移しかえることによって、必要に応じて繰り返してもよい。
【0187】
本開示の方法において組織(複数可)を培養するためにCIMを使用する任意の例に従って、CIMはアスコルビン酸及び/又はL-システインをさらに含んでもよい。例えば、CIMは、アスコルビン酸を含み得る。例えば、CIMはL-システインを含み得る。例えば、CIMは、アスコルビン酸及びL-システインを含み得る。本明細書中の実施例5及び表7で示すように、アスコルビン酸及び/又はL-システインをCIMに添加することで形質転換効率が改善された。
【0188】
本明細書中で開示する方法に従って遺伝子改変されたシュートの産生で使用するための例示的培地は、実施例4の表6で提供されている。この点に関して、本開示の方法において遺伝子改変されたソルガム植物を生産するために使用した一連の培地は、実施例4の表6で記載する培地の1つ以上又は全部を含むことが想定される。しかしながら、当業者には、それらの培地中のある構成要素を、方法の成果を著しく改変することなく変えることができることは理解されるであろう。
【0189】
前記例の各々において、遺伝子改変されたソルガム植物を生産する方法は、ソルガム組織(複数可)を一連の培地の1つ以上の上で薄明条件下にて培養し、続いてソルガム組織(複数可)を一連のさらなる培地の1つ以上の上で、薄明条件よりも高い強度を有する光条件下にて培養することを含み得る。例えば、方法は、組織(複数可)をCIM中、薄明条件下で培養し、続いて組織(複数可)を、本明細書中で記載するCIM、SIM及び/又はSRMのいずれか1つ以上において、薄明条件よりも高い強度を有する光条件下で培養することを含み得る。薄明条件は、約10μmols-1-2~約55μmols-1-2、又は約30μmols-1-2~約50μmols-1-2、又は約45μmols-1-2~約50μmols-1-2の光強度を有し得る。好ましい一例において、薄明条件は、約30μmolm-2sec-1~約45μmolm-2sec-1の強度で照射された白色光を含む。薄明条件よりも高い強度を有する光条件は、約55μmols-1-2~約90μmols-1-2、約60μmols-1-2~約85μmols-1-2、又は約65μmols-1-2~約80μmols-1-2の光強度を有し得る。薄明条件が、約30μmolm-2sec-1~約45μmolm-2sec-1の強度で照射した白色光を含む例によると、その後の組織(複数可)の培養は、約65μmols-1-2~約80μmols-1-2の強度を有する白色光下で行う。
【0190】
前記例の各々において、各光条件下での組織(複数可)の培養は、約12時間~約20時間、約14時間~約18時間、又は約14時間~約16時間の明期で行うことが想定される。例えば、組織(複数可)の各光条件下での培養は、約12時間、約14時間、約16時間、約18時間、又は約20時間の明期で行うことができる。好ましい例では、組織(複数可)の培養は、約14時間~約16時間、例えば16時間の明期で行う。
【0191】
本明細書の任意の例に従って、培地上、又は一連の培地中の各培地上でのソルガム組織(複数可)の培養は、独立して、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約5週間、又は約6週間起こる。当業者には、培地又は培地の各々での培養の長さが、明期及び得ようとするソルガムシュートの長さに応じて変わり得ることは理解されるであろう。
【0192】
特定の一例において、遺伝子改変されたソルガム植物を生産する方法のステップ(b)での組織(複数可)の培養は、
(i)本明細書中で記載するようなCIM中、約30μmolm-2sec-1~約45μmolm-2sec-1の強度で照射された白色光を含む薄明条件下、約16時間の明期で約3~5週間、任意選択的に選択剤の存在下で組織(複数可)を培養し、
(ii)(i)からの組織(複数可)を本明細書中で記載するようなSIMへ移し、約65μmols-1-2~約80μmols-1-2の強度で照射された白色光を含む光条件下、約16時間の明期で約2週間、任意選択的に選択剤の存在下で培養し、そして
(iii)(ii)からの組織(複数可)を本明細書中で記載するようなSRMへと移し、約65μmols-1-2~約80μmols-1-2の強度で照射された白色光を含む光条件下、約16時間の明期で約2週間、任意選択的に選択剤の存在下で培養し、それによって1つ以上の遺伝子改変されたシュートを生産することを含む。
【0193】
前記例の各々において、組織(複数可)の培養は、ソルガム外植体を再生してソルガムシュートを生産するために適したある温度、又は一連の温度で行うことが想定される。適切な温度は当業者にはわかっているであろう。例えば、培養は24±2℃の温度で実施することができる。
【0194】
さらに、本明細書中で記載する遺伝子改変されたソルガム植物を生産する方法は、1つ以上の核酸の導入後に、ソルガム組織(複数可)を、各々2つ又はそれ以上の部分に分割するさらなるステップを含んでもよい,好ましくは、ソルガム組織(複数可)の分割は、シュートバッドが組織(複数可)から出現する前に行う。
【0195】
形質転換された外植体からの植物の再生、発生、及び培養のプロセスは、概して当該技術分野で公知である(Weissbach et al.、In: Methods for Plant Molecular Biology, Academic Press, San Diego, Calif., (1988))。この再生及び成長プロセスは、典型的には、形質転換された細胞又は組織の選択、胚発生の通常の段階から根付いた小植物段階を経た、それらの個別化された細胞又は組織の培養のステップを含む。結果として得られた遺伝子改変された根付いたシュートを、その後、土壌などの適切な植物成長培地中に植える。
【0196】
再生された遺伝子改変されたソルガム植物を自家受粉させて、ホモ接合の遺伝子改変されたソルガム植物を提供することができる。別の方法では、遺伝子改変されたソルガム植物から得られた花粉を農学的に重要な系列の種子から成長させた植物と交配してもよい。反対に、これらの重要な系列の植物からの花粉を使用して、本開示の方法を用いて産生された遺伝子改変されたソルガム植物を受粉させる。所望の核酸(外来又はその反対)を含む、本開示の方法によって産生された遺伝子改変された植物を当業者に周知の方法を用いて培養してもよい。
【0197】
本発明者らは、本開示の方法を用いたソルガムのDEC組織の形質転換が、少なくとも35%の形質転換効率、例えば少なくとも40%の質転換効率、少なくとも45%の質転換効率、少なくとも50%の質転換効率、少なくとも55%の形質転換効率、少なくとも60%の形質転換効率、少なくとも65%の形質転換効率、少なくとも70%の形質転換効率、少なくとも75%の形質転換効率、少なくとも80%の形質転換効率、少なくとも85%の形質転換効率、又は少なくとも90%の形質転換効率を達成することを示した。このように、本発明者らは、本明細書中で記載される方法を使用してDEC組織から産生される遺伝子改変されたソルガム植物は、少なくとも35%の遺伝子改変効率、例えば、少なくとも40%の形質転換効率、少なくとも45%の遺伝子改変効率、少なくとも50%の遺伝子改変効率、少なくとも55%の遺伝子改変効率、少なくとも60%の遺伝子改変効率、少なくとも65%の遺伝子改変効率、少なくとも70%の遺伝子改変効率、少なくとも75%の遺伝子改変効率、少なくとも80%の遺伝子改変効率、少なくとも85%の遺伝子改変効率、又は少なくとも90%の遺伝子改変効率で得ることができることを示し、遺伝子改変効率は、ステップ(a)で使用したDEC組織の数のパーセンテージとしての方法のステップ(b)で産生した遺伝子改変されたシュートの数として表される。
【0198】
したがって、一例では、本開示の方法は、少なくとも35%又は少なくとも40%の遺伝子改変効率が得られる遺伝子改変されたソルガム植物の産生を含む。本明細書中で用いる場合、「遺伝子改変効率」という語は、例えば、形質転換中に核酸が導入された組織の数のパーセンテージとして表した、本開示の方法を用いて核酸が導入されたソルガム組織から産生された遺伝子改変されたシュートの数を指す。
【0199】
当該技術分野で公知の任意の方法を用いて形質転換効率(及び遺伝子改変効率)を決定することができる。例えば、遺伝子改変効率は、本開示の方法を用いてソルガム組織に導入された1つ以上の核酸の存在を検出することによって判定することができる。一例では、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅又はサザンブロット分析は、当業者に公知の方法を用いて実施することができる。ソルガム組織に導入された1つ以上の核酸の発現産物は、産物の性質によって様々な方法のいずれかで検出することができ、ウェスタンブロット及び酵素アッセイを含む。形質転換はまた、当該技術分野で周知の直接配列決定及び/又はハイブリダイゼーションプロトコルによって検出することもできる。タンパク質発現を定量化するため、及び異なる植物組織における複製を検出するために有用な1つの特定の方法は、GUSなどのレポーター遺伝子を使用することである。一例では、形質転換効率は、組織当たりの蛍光又は生物発光マーカーフォーカスの数を算出することによって決定される。一旦、遺伝子改変された植物が得られたら、それらを成長させて、所望の表現型を有する植物組織又は部分を生産することができる。前記方法の各々は、遺伝子改変されたソルガム組織又は植物を同定するための本明細書中での使用のため、また本開示の方法及びDEC組織を使用して形質転換効率(及び遺伝子改変効率)を決定するために企図される。そのような方法はまた、核酸の形質転換が一時的であるか、又は安定であるかを判定するのにも有用であり得る。
【0200】
本開示はまた、遺伝子改変されたソルガム植物の子孫を生産する方法も提供し、この方法は、本明細書中で記載される方法を使用して産生された遺伝子改変ソルガム植物を自殖又は交雑し、それによって子孫植物を生産することを含む。
【0201】
本明細書中で用いる場合、「自殖」、「自家受精」「自家受粉」という語又はその変形は、同じ個体由来の雄性及び雌性配偶子の融合を意味する。したがって、本開示の文脈で、自殖とは、本明細書中で記載される方法によって産生される遺伝子改変されたソルガム植物からの雄性及び雌性配偶子の融合を指す。
【0202】
本明細書中で用いる場合、「交雑」、「他家受粉」又はその変形は、2つの異なる植物間の交配を意味する。したがって、本開示の文脈では、交雑とは、本明細書中で記載される方法によって産生された遺伝子改変ソルガム植物と別のソルガム植物との交雑を指す。
【0203】
本明細書中で用いる場合、「子孫」又は「子孫植物」又は類似の語は、本開示の方法を用いて産生された遺伝子改変されたソルガム植物の子孫を含む。「子孫」という語は、「直接的子孫」及び「間接的子孫」を包含することが意図される。本明細書中で用いる場合、「直接的子孫」という語は、本開示の方法によって産生される遺伝子改変されたソルガム植物の種子(又は、場合によっては他の組織)由来であり、直接の次の世代のものであるソルガム植物を指す。例えば、所与の系統について、T2植物はT1植物の直接的子孫である。本明細書中で用いる場合、「間接的子孫」は、本開示の方法によって産生される遺伝子改変されたソルガム植物の直接的子孫の種子(又は他の組織)由来であるか、又はその系統の次の世代の種子(又は他の組織)由来のソルガム植物を指し、例えば、T3植物はT1植物の間接的子孫である。
【0204】
一例では、遺伝子改変されたソルガム植物の子孫を生産する方法は、以下のステップ、すなわち、
(i)遺伝子改変又は遺伝子改変によって付与された表現型の存在について子孫植物をスクリーニングするステップと、
(ii)遺伝子改変を含む、及び/又は遺伝子改変によって付与された表現系を示す子孫植物を選択し、それによって1つ以上の遺伝子改変されたソルガム植物を生産するステップと
をさらに含む。
【0205】
(遺伝子改変されたソルガム)
本開示はまた、本明細書中で記載される方法によって産生される遺伝子改変されたソルガム植物又はその部分も提供する。「植物」という語は、本明細書中で名詞として用いられる場合、植物全体を指すが、形容詞として用いられる場合、植物中に存在するか、植物から得られるか、植物から誘導されるか、又は植物に関連する任意の物質、例えば植物器官(例えば、葉、茎、根、花)、単細胞(例えば、花粉)、種子、植物細胞などを指す。「植物部分」という語は、前記植物部分が本開示の方法によって導入される遺伝子改変を含む限り、例えば、根又は茎、根、花器官又は構造、花粉、種子、種子部分、例えば、胚、内胚乳、胚盤又は種子コート、植物組織、例えば、維管束組織、細胞及びその子孫などの植物構造を含む、植物DNAを含むすべての植物部分を指す。
【0206】
「種子」及び「グレイン」という語は、本明細書中では交換可能に用いられる。「グレイン」とは、収穫されたグレイン又は依然として植物上にあるが、収穫の準備ができているグレインなどの成熟グレインを指すが、文脈によって、吸水又は発芽後のグレインも指す場合がある。成熟グレイン又は種子は、通常、約18~20%未満の含水量を有する。本明細書中で用いられる「発生中の種子」とは、受精又は開花後の植物の生殖構造において見出される成熟前の種子を指すが、植物から単離された成熟前のそのような種子も指す可能性がある。
【0207】
好ましい例では、遺伝子改変されたソルガム植物は、導入されたあらゆる核酸についてホモ接合であり、したがって、その子孫は所望の表現型について分離されない。遺伝子改変されたソルガム植物はまた、導入された核酸(複数可)についてヘテロ接合であり得、好ましくは、ハイブリッド種子から成長させたF1子孫において、例えば導入された核酸(複数可)について一様にヘテロ接合である。そのような植物は、当該技術分野で周知の、ハイブリッド強勢などの利点をもたらし得る。
【0208】
一例では、本開示の遺伝子改変されたソルガム植物は、畑で、好ましくは少なくとも1,000又は1,000,000の実質的に同じ植物の集団として、又は少なくとも1ヘクタールの面積で栽培される。栽植密度は、植物種、植物品種、気候、土壌状態、肥料割合及び当該技術分野で公知の他の要因によって異なる。植物は、当該技術分野で公知のように収穫され、植物の刈り取り(swathing)、乾燥及び/又は刈り取り(reaping)、それに続いて植物材料を脱穀及び/又は選別して、多くの場合、もみ殻の形態である植物部分の残りから種子を分離することを含む。別法として、種子は、遺伝子改変されたソルガム植物から畑で単一のプロセスで、すなわち組み合わせて収穫することができる。
【0209】
(分化胚形成カルス(DEC)組織)
少なくとも35%の効率で遺伝子改変され得るソルガムのDEC組織も提供する。一例では、DEC組織は、少なくとも40%の効率で遺伝子改変され得る。一例では、DEC組織は、少なくとも45%の効率で遺伝子改変され得る。一例では、DEC組織は、少なくとも50%の効率で遺伝子改変され得る。一例では、DEC組織は、少なくとも55%の効率で遺伝子改変され得る。一例では、DEC組織は、少なくとも60%の効率で遺伝子改変され得る。一例では、DEC組織は、少なくとも65%の効率で遺伝子改変され得る。一例では、DEC組織は、少なくとも70%の効率で遺伝子改変され得る。一例では、DEC組織は、少なくとも75%の効率で遺伝子改変され得る。一例では、DEC組織は、少なくとも80%の効率で遺伝子改変され得る。一例では、DEC組織は、少なくとも85%の効率で遺伝子改変され得る。一例では、DEC組織は、少なくとも90%の効率で遺伝子改変され得る。DEC組織が遺伝子改変され得る効率は、例えば、形質転換の間に核酸が導入された組織の数のパーセンテージとして表した、核酸が形質転換されたDEC組織から産生された遺伝子改変されたシュートの数として算出される。別の方法で表すと、DEC組織は、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、又は少なくとも約90%の形質転換効率にて1つ以上の核酸で形質転換することができる。形質転換の効率を決定する場合、DEC組織は、本開示の方法を用いて遺伝子改変することができ、その後又はその間に、形質転換の効率が決定される。
【0210】
代替的に、又は付加的に、DEC組織は本開示の方法を使用して生産することができる。
【0211】
好ましくは、DEC組織は緑色組織である。
【0212】
一例では、DEC組織は、本明細書中で記載する培地、すなわちDEC組織を生産する方法での使用について記載された培地で産生及び/又は提供することができる。
【0213】
(培地)
本開示はまたソルガムの分化胚形成カルス(DEC)組織を調製するために好適な培地も提供する。カルス誘導培地(CIM)は、DEC組織を生産する方法の関連で既に記載し、そのCIMの特徴は、特に別段の指定がない限り、記載した培地の以下の例の各々に準用する解釈されるべきである。
【0214】
一例では、ソルガムのDEC組織の調製で使用するのに好適な培地は、1つ以上のオーキシン、1つ以上のサイトカイニン及び酸化褐変を低減する1つ以上の薬剤を追加した植物細胞を概要するために好適な基本培地を含み、この場合、酸化褐変を低減する1つ以上の薬剤は、培地中、ソルガム組織の酸化褐変を防止又は低減するために充分な濃度で存在し、1つ以上のオーキシン及び1つ以上のサイトカイニンは、培養中にIEからDECを生産するために充分な互いに対して相対的な量で培地中に存在する。
【0215】
一例では、酸化褐変を低減する1つ以上の薬剤は、リポ酸、メラトニン、2-アミノイダン-2-ホスホン酸、アスコルビン酸、α-トコフェロール、3,5-ジブチル-4-ヒドロキシトルエン(BHT)、システイン、亜セレン酸塩、ポリビニルピロリドン(PVPP)、ジチオトレイトール(DTT)、フェノキサン、硝酸銀、クエン酸塩、グルタチオン、フィチン酸、ノルジヒドログアヤレチン酸(NDGA)、及び活性炭からなる群から選択される。代替的に、又は付加的に、酸化褐変を低減する1つ以上の薬剤は、約0.1mg/L~約10mg/L、約0.5g/L~約5g/L、約1g/L~約5g/L、又は約1g/Lの濃度で存在する。
【0216】
一例では、1つ以上のオーキシンは、インドール-3-酢酸(IAA)、4-クロロインドール-3-酢酸、フェニル酢酸、インドール-3-酪酸(IBA)、1-ナフタレン酢酸(NAA)、2-ナフトキシ酢酸、4-クロロフェノキシ酢酸、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)、2,4,5-トリクロロフェノキシ酢酸、2,3,5-トリヨード安息香酸、ピクロラム、及びそれらのいずれか1つの塩形態からなる群から選択される。代替的に、又は付加的に、1つ以上のオーキシンは、約0.1mg/L~約5mg/L、約0.1mg/L~約3mg/L、約0.3mg/L~約2mg/L、約0.5mg/L~約1mg/L又は約1mg/Lの濃度で存在する。
【0217】
一例では、1つ以上のサイトカイニンは、ベンジルアミノプリン(BAP)、ゼアチン、キネチン、2IP、ゼアチンリボシド、ジフェニル尿素及びチアジアズロン(TDZ)からなる群から選択される。代替的に、又は付加的に、1つ以上のサイトカイニンは、約0.01mg/L~約2mg/L、約0.1mg/L~約2mg/L、約0.5mg/L~約2mg/L、約0.5mg/L~約1mg/L、又は約0.5mg/Lの濃度で存在する。
【0218】
一例では、培地は、ソルガム組織を組織化構造へ実質的に分化させることなく胚形成及び器官形成可能性を維持する分化細胞の節状構造の成長を誘導し刺激するために充分な相対量でオーキシン及びサイトカイニンを含むように配合される。一例では、1つ以上のオーキシン及び1つ以上のサイトカイニンは、培地中、約1.25:1、約1.5:1、約1.75:1、約2:1、約2.25:1、約2.5:1、約2.75:1、又は約3:1の重量比(オーキシン:サイトカイニン)で存在する。
【0219】
酸化褐変を低減する薬剤がリポ酸、例えばα-リポ酸である好ましい例では。例えば、リポ酸は、約0.5mg/L~約2.0mg/L、又は約1mg/Lの濃度で存在し得る。
【0220】
ソルガムのDEC組織を生産するために適した培地は、多量栄養素、微量栄養素、ビタミン、アミノ酸又は窒素サプリメント、炭素源(複数可)、未定義の有機サプリメント、及び凝固剤の供給源を含む、植物組織培養において有用であることが知られている1つ以上の他の構成要素をさらに含み得る。一例では、培地は、(オーキシン、サイトカイニン及び酸化褐変低減剤に加えて)、ペプトン、銅源、浸透圧剤及び/又は凝固剤を含む。
【0221】
例えば、ペプトンは、培地中に窒素、ビタミン及び/又はアミノ酸の供給源として含まれ得る。一例では、培地は、ペプトンを、約0.2g/L~約2g/L、約0.5g/L~約1.5g/L、約0.7g/L~約1g/L、又は約0.8g/Lの濃度で含む。一例では、ペプトンは培地中に約0.8g/Lの濃度で存在する。
【0222】
本開示の培地は銅源も含み得る。例えば、培地は、硫酸銅、塩化銅、硝酸銅、グルコン酸銅、又は酢酸銅を含み得る。銅は、培地中、約0.1mg/L~約5mg/L、約0.3mg/L~約3mg/L、約0.5mg/L~約1.5mg/L、約0.7mg/L~約1mg/L、又は約0.8mg/Lの濃度で存在し得る。
【0223】
本明細書中で記載する培地は浸透圧剤を含み得る。植物細胞培養で使用するための好適な浸透圧剤は、当該技術分野で公知であり、本明細書中で記載する培地での使用のために企図される。例えば、本開示の培地に含めるための浸透圧剤(osmotic)は、ミオイノシトール、スクロース、マンニトール、グリセロール、ソルビトール及びマルトースから選択することができる。
【0224】
植物細胞培地において有用な凝固剤は当該技術分野において公知であり、例えば寒天であり、また、本開示の培地に含めることが企図される。
【0225】
一例では、基礎培地はMS培地である。
【0226】
ソルガムのDEC組織の産生で使用するために適した例示的培地は、約4g/L~約5g/Lの濃度のMS培地、約1mg/Lの濃度の2,4-D、約0.5mg/Lの濃度のBAP及び約1mg/Lの濃度のリポ酸を含む。加えて、培地は、約0.5g/L~約1g/Lの濃度のL-プロリン、約0.5g/L~約1g/Lの濃度のペプトン、約100mg/L~約200mg/Lの濃度のミオイノシトール、約0.5g/L~約1g/Lの濃度の硫酸銅、約10g/L~約50g/Lの濃度のマルトース、及び約6g/L~約12g/Lの濃度の寒天のうちの1つ以上又は全部を含み得る。
【0227】
培地は、好ましくはDEC組織を生産するために好適なpHを有する。例えば、培地はおよそpH5.0~およそpH6.0のpHを有し得る。
【0228】
DEC組織を生産するために有用な培地の特に好ましい例は、実施例1の表1に記載され、本明細書中で企図される。
【0229】
本明細書の任意の例で記載する培地は、例えば、本明細書中で記載される方法でソルガムのDEC組織を調製するために使用する場合。
【実施例
【0230】
実施例1.Sorghum bicolor LのDEC組織の調製
(植物材料)
近交系栽培品種TX-430(Miller 1984)のグレインソルガムの植物を、植物成長チャンバー(Conviron、PGC-20 flex)中、28±1℃の「日中」温度及び20±1℃の「夜間」温度にて、16時間の明期で、900~1000LUXの「日中」の光強度にて成長させた。円錐花序を開花前に白色半透明の紙袋で被覆した。未熟胚を開花の12~15日後の円錐花序から収穫した。円錐花序を水で数回洗浄し、均一なサイズの発生中の種子を単離し、0.1%Tween-20と混合した20%の市販の漂白剤で15~20分間表面滅菌した。それらを次に滅菌蒸留水で3回、それぞれ20分間洗浄し、層流フード中で、乾燥状態でブロットした。1.4~2.5mmの範囲の長さの未熟胚(IE)を層流フード中で無菌的に単離し、緑色再生組織の調製のための出発組織として使用した。
【0231】
(基本培地)
本研究で使用した培地は、MS(Murashige及びSkoog、1962)に基づき、PhytoTechnology Laboratories(M519)から供給された。培地のpHは、121℃で15分間の滅菌前に5.8に調節した。感熱性植物成長調節剤及び他の添加剤、例えば硫酸銅(CuSO4)、リポ酸、l-システイン、アスコルビン酸、TDZ及びジェネテシン(G418、Sigma-選択剤として使用)をろ過滅菌(0.2μm)し、培地を約55℃に冷却した場合、滅菌後に培地に添加した。形質転換及び植物再生の様々な段階で使用した培地を表1にまとめた。
【0232】
(培養法及び材料)
1.4から2.5mmに及ぶ長さの単離されたIEを様々な組成のカルス誘導培地(CIM)上に、それらの胚盤が上向きで配置した。カルス品質及び未熟胚からの誘導頻度を改善するために修飾されたCIM、ならびにカルス再生培地は、特に別段の記載がない限り、α-リポ酸(1~5mg/l)、メラトニン(5~10mg/l)及び2-アミノイダン-2-ホスホン酸HCl(1~2mg/l)を含んでいた。緑色組織の発生のために、未熟胚を、24±2℃の組織培養室中で約45~50μmols-1-2の蛍光の下でインキュベートした(16h/日)。3日の培養後、未熟胚の根及びシュートポールを無菌的に分離し、同じ培地(CIM)上に再接種し、上記と同じ条件下で維持した。それらを2週間おきに6週間、カルスを2~3mm片に刻むことによって継代培養し、同じ培地(CIM)上に再接種し、上記と同じ条件下で維持し、その後、組織培養をカルス品質、カルス誘導効率及び形質転換効率について評価した。カルス誘導頻度は、接種した未熟胚の総数に対する、得られたカルスの数(約5mm)をパーセンテージとして算出した。
【0233】
CIM上で最初の3~4週間でIEから開始したカルスはほとんど胚形成し、ゆっくりと分化して淡緑色から濃緑色の節状構造を有する胚形成カルスになった。形質転換用の外植体として使用するために、緑色節状構造を有する胚形成カルスを、2週間ごとに最高6か月又はそれ以上継代培養することによって、同じ培地(CIM)上で選択し維持した。組織が実際にカルス細胞と節状構造及び粒状構造を形成する細胞と本発明者らがカルス(未分化細胞である)と節状構造との間のどこかの発達経路上にあると理解している中間細胞との混合物であっても、この組織は胚形成及び器官形成可能性を維持する分化細胞の節状構造を形成するため、この種類の組織を本明細書中では「分化胚形成カルス」組織又は「DEC」組織と称する。場合によって、組織は初期段階(球状)体細胞胚を含んでいた。
【0234】
CIM上で6週間後、直径約4~7mmのいくつかの均一な緑色DEC組織をシュート誘導培地(SIM)に移し、器官形成を開始するためにさらに2~3週間培養した。シュートバッドを誘導した組織を次いでシュート再生培地(SRM)に移し、再度、2~3週間培養した。異なる時期(イニシエーションから2~6か月)のDEC組織の再生可能性もまた、異なる濃度のBAP(0.5~1.0mg/l)及びTDZ(0.5~1.0mg/l)を含むSRM培地上で試験した。シュートの数を計数し、そして再生頻度(すなわち、シュート/DEC組織の数)をSRM上での3週間の培養後に算出した(SIM及びSRM上での培養を含めて合計約5週間の培養)。長さ約2~3cmの各シュートをシュート成長(SOG)培地に移し、さらに2~3週間培養した。充分に発達したシュート(長さ4~5cm)を慎重にクラスターから分離し、根誘導培地(RIM)に移し、そして3~4週間培養した。シュート誘導が植物再生を完了するために、50~60μmols-1-2(16h/日)の蛍光を24±2℃の組織培養室中で使用した。多数(多くの場合15~20)の健康そうにみえる根を有するシュート(長さ約8cm)を土壌に移し、28±1℃のPC2温室中で成熟するまで成長させた。カルス誘導から未熟胚から誘導された緑色組織からの植物再生までの植物形質転換の異なる段階について最適化された培地組成を表1に提示する。
【0235】
【表1】
【0236】
実施例2 DEC組織誘導頻度及び品質に対するα-リポ酸の効果
長さ1.4から2.5mmまで及ぶIEのセットで、各セットが1つの円錐花序から単離されたものを無菌的に単離し、実施例1で記載するようなCIM培地上で培養した。一部のセットはα-リポ酸(LA、1mg/l又は5mg/l)を添加して培養し、この薬剤の効果を判定するために、他のものは添加せずに培養した。
【0237】
2週間おきに同じ培地上での継代培養を含む6週間の培養後、DEC組織誘導頻度及び品質を評価した。データを表2に提示する。LAを含むCIM上で培養した小さな未熟胚(1.5~2mm)は、LAを含まないCIMと比較して、より高いDEC組織誘導頻度(p<0.01で有意)を有し、節状構造の品質が改善され、これらは粒状カルスとより少ない節状構造とを有する白色又は淡黄色である傾向にある。この文脈で、改善された品質とは、節状構造の外観であって、その色が淡緑色から褐色がかっているというよりもむしろ濃緑色であって、改善された健康状態と約50%の球状段階組織の体細胞胚を発生し始めた組織の相対量を示す外観を指す。同様の改善傾向は、LAの存在下で培養した場合に出発物質としてより大きな未熟胚(>2mm)について観察されたが、これは統計的に有意ではなかった(p=0.1)。LAなしで培養した未熟胚(1.4~2mmすなわち>2mm)からのカルスは、LAを含むCIMと比較して節状構造が少なく、球状段階胚も少ない傾向があった(表2)。1mg/mlと比べてより高濃度のLA(5mg/l)を用いて有意なさらなる改善は観察されなかった。
【0238】
【表2】

値は平均±標準偏差(SD)として報告された値である。*p<0.013で有意。**有意でない。
【0239】
実施例3 DEC組織収率に対するα-リポ酸の効果
長さが1.4から2.5mmまで及ぶ45のIE(各々15×3レプリカ)を無菌的に単離し、実施例2において上記したようなLA(1mg/ml)を添加したか又は添加しないCIM培地上で培養した。
【0240】
4~12週間の培養の後、得られたDEC組織の数を計数した。データを表3に提示する。LAを含むCIM上で12週間にて得られたDEC組織片(約5mm)の数は、LAを含まないCIMを使用したのと比較するとほぼ二倍であった。さらに、LAを含むCIM上で得られたDEC組織の品質は、LAを含まない培地の使用と比較すると改善された。
【0241】
【表3】
【0242】
実施例4 再生効率及びシュート/DEC組織の数に対するα-リポ酸の効果
LAを添加したか又は添加していないCIM培地上で誘導した、各々、節状構造を有する均一なすぐに使える高品質の緑色DEC組織(約5mm)を、LAを含むか又は含まないシュート誘導培地(SIM)に移し、さらに2~3週間培養した。誘導したシュートバッドを有する組織を次いでLAを含むか又は含まないシュート再生培地(SRM)に移し、再度2週間培養した。異なる時期(イニシエーションから2~6か月)の緑色組織の再生可能性を、異なる濃度のBAP(0.5~1.0mg/l)及びTDZ(0.5~1.0mg/l)を含むSRM培地上で試験した。シュートバッドを含む組織を、LAを含むか又は含まないホルモン不含培地(SOG)上で再度培養した。シュートの数をSRM上での2週間の培養後に計数し、再生頻度(シュート/DEC組織の数)を算出した。
【0243】
BAPとTDZとの組み合わせを有するシュート再生培地の使用は、BAPのみの使用と比較して優れていた。異なる時期のDEC組織のシュート/DEC組織の再生頻度及び数を表4に提示する。SIM及びSRM培地中にLAがないと、組織が熟成するにつれてシュート/DEC組織の再生頻度及び数はゆっくりと減少した。しかしながら、LAが両培地中に含まれている場合、シュート/DEC組織の再生頻度及び数は、異なる時期のDEC組織ほど減少しなかった。SIM及びSRM中LAの有無で培養したソルガムのDEC組織の世代及び未熟胚からの植物再生を図1に示す。
【0244】
【表4】

値は平均±標準偏差(SD)として報告された値である。シュート/カルス(calls)の数の計算において、列の異なる文字は有意である(P<0.05)。*P=0.004で有意。**P=<0.001で有意。
【0245】
実施例5 異なるカルス系統からの再生小植物のDNA含有量
この実験では、異なるカルス系列(5か月~2年)から再生された小植物の相対的DNA含有量を、フローサイトメトリー(FCM)を用いて決定した。
【0246】
異なる時期のDEC組織(未熟胚からの誘導の時点から18か月、12か月、9か月、6か月など)及びWT(種子から育てた植物)からの再生ソルガム植物間の倍数性レベルの変動を、Partec PAIIフローサイトメーターを用いて決定した。WT及び再生植物からの若葉組織50mgを、ペトリ皿中の1mlのGalbraiths緩衝液(45mM MgCl2、20mM MOPS、30mM クエン酸ナトリウム 0.1%(v/v)Triton X-100、1M NaOHを用いてpHを7に調節)中で剃刀を用いて小片に刻んだ。各サンプルのホモジネートを、ピペットを用いて数回混合し、その後、核懸濁液を、38μMナイロン布を通して1.5mlのエッペンドルフチューブ中にろ過し、そして1000rpmで2.5分間遠心分離した。各サンプルについて約800μlの上清を除去すると200μlのホモジネートが残り、これに10μlのヨウ化プロピジウム溶液(1mg/ml、Sigma)を添加した。ヨウ化プロピジウムを含むホモジネートをフローサイトメーターチューブに移し、室温で1時間インキュベートし、分析した。
【0247】
WT種子を、異なる時期のカルス系列からの2つの独立して選択された再生物(regenerate)中の相対的DNA含有量を決定するために分析のための対照として使用した。2C DNA含有量を、内部標準及びサンプルの両方のG1ピークの蛍光強度値に基づいて算出した。未知サンプルの倍数性レベル及びDNA含有量を次のようにして算出した:
【0248】
倍数性核DNA含有量=サンプルピークの平均位置/標準の標準ピークの平均位置×標準のDNA含有量。
【0249】
ソルガムの核2C DNA含有量は1.74と考えられる(Chae et al.2013)。
【0250】
FCMにより、ほぼすべての植物が二倍体であり、DNA含有量はWT種子に匹敵することが明らかになった(表5)。WTと再生系列との間のDNA含有量における差は、ワンウェイANOVAによると統計的に有意でなかった(p=0.19)。異なるカルス系列からのWT及び再生植物のG2/G1比は2.0未満であり、WT及び再生植物の間でこの比に有意差はなかった。DEC組織からのWT及び再生植物からの葉の相対的核DNA含有量のヒストグラムは異なるG0/G1ピークを示さなかった(図2)。
【0251】
6か月以上にわたって維持された場合に他のソルガム組織培養方法とは異なって、DEC組織を調製するために使用した方法は、それらのDNA含有量において組織に悪影響を及ぼさず、したがって倍数性に悪影響を及ぼさなかったと結論づけられた。DEC組織法は、したがって、表現型的に正常なトランスジェニックソルガム植物及び植物部分を生産する可能性がより高かった。
【0252】
【表5】

a各処理は、2つの植物と2つの複製を含んでいた。多重対比較法を用いて平均を比較し、p=0.19で有意に異ならないことが判明した。
【0253】
実施例6 形質転換された組織についての選択剤としてのジェネテシン
遺伝子構築物が細胞に導入されていなかったので、培養及び再生条件について実施例2~4に記載した実験は、形質転換された細胞についての選択剤を使用しなかった。再生可能なDEC組織/体細胞胚を使用する形質転換法を開発する次の段階として、DEC組織/体細胞胚のジェネテシンに対する感受性を判定した。
【0254】
1mg/lのLAを含むCIM上で培養した後に生じた、6週令の均一で健常な緑色DEC組織で約5mmのサイズであって、いくつかの体細胞胚を含むものを使用して実験を実施した。使用したジェネテシンレベルは、それぞれ、0、15、25、35及び45mg/Lであった。プレートあたり3回の反復で、各々15の緑色DEC組織片を、試験するジェネテシンの各濃度について使用した。組織を6週間培養し、同じジェネテシン濃度を含む同じ培地上に2週間ごとに継代培養した。
【0255】
6週間の培養後、生き残った緑色DEC組織の数を計数した。データを表6に提示する。
【0256】
DEC組織(約5mm)は培養の3週間以内に選択的カルス誘導培地(ジェネテシンを含むCIM)上でジェネテシンストレス症状を示し始めた。培地中にジェネテシンを含まないDEC組織(G0)は、カルスの損失なしに継続した細胞増殖と健常な成長を示した。異なる濃度のジェネテシン(15、25、35及び45mg/l)を含むCIM培地上で8週間後に、DEC組織は差次的な成長応答を示した。G25及び35mg/Lを含むCIM上で8週間後に、ほとんどのカルスは暗褐色に変色し、生存の兆候はなかった。死亡斑を有して生き残ったカルスはほとんどなかった(2~6)。これに基づいて、25mg/lの最終濃度でのジェネテシンをカルス誘導培地中で3サイクル(それぞれ2週間)使用し、次にシュート誘導培地中で1サイクルの間30mg/lまで増加させた(表6)。CIM及びSIM中の異なる濃度のジェネテシンは、非形質転換カルスからのシュート再生の防止に最適であった。
【0257】
【表6】
【0258】
実施例7 緑色再生DEC組織の粒子衝撃
植物細胞における発現のために設計されたuidA(GUS)及びbar遺伝子を含む遺伝子ベクターを得た。uidA遺伝子は、トウモロコシポリユビキチンプロモーター(pUbi)及びAgrobacterium tumefaciensオクトピンシンターゼポリアデニル化/ターミネーター(ocs3’)配列の調節制御下にあった。プロモーターとタンパク質コーディング領域との間の配列は、Ubi遺伝子の5’UTRと最初のイントロンとを含んでいた。uidAレポーター遺伝子はまた、そのタンパク質コーディング領域内に、アグロバクテリウムにおける機能的GUSタンパク質の翻訳を防止するトウゴマカタラーゼ遺伝子からのイントロンを含み、それによって、接種した植物組織におけるバックグラウンドGUS遺伝子発現を低減した。したがって、任意のGUS発現は植物細胞におけるuidA遺伝子の発現による。bar遺伝子もまた、pUbiプロモーターの調節制御下にあり、アグロバクテリウムノパリンシンターゼ3’調節配列(nos3’)で終端していた(Richardsom et al.、2014)。uidA/barベクターを図3Aに概略的に示す。uidA/barベクターを実験で最初に使用して、ソルガムDEC組織における一時的遺伝子発現が検出された。
【0259】
pUbiプロモーターの制御下にありnos3’領域で終端している、抗生物質ジェネテシンに対する耐性を提供するネオマイシンホスホトランスフェラーゼII(NptII)をコードする遺伝子を含む別の二元プラスミド(pBSV003)(図3B)も、実験用に入手し、安定な形質転換を達成した。
【0260】
Zymopure(商標)Maxiprepキット(USA)を製造業者の指示に従って使用してプラスミドDNAを単離した。
【0261】
前記実施例で記載した方法を用いて産生し、イニシエーションから6週間~6か月間培養した、均一で健常な緑色再生DEC組織(4~5mmのサイズ)を、プラスミドを用いたマイクロプロジェクタイル媒介形質転換(衝撃)に使用した。約15の均一な緑色DEC組織(各々4~5mm)を、CIM浸透圧培地(表7)を含むペトリ皿(直径15×90mm)の中央に置き、ボンバードメントに先立って約4時間暗所にてインキュベートした。PDS-1000He装置(Biorad、カリフォルニア州ハーキュリーズ)を用いてLiu et al.(2014)によって記載されているようにしてボンバードメントを実施した。簡単に言うと、プラスミドDNA(1μg/μl)を0.6μm金粒子上に沈着させ、1350psiの大気放出板を26~27Hgの真空で使用してヘリウム圧力で加速した。ボンバードメント後、DEC組織を同じ浸透圧培地上で一夜保持し、翌朝、プレ選択培地に移し、さらに3~4日間インキュベートした。衝撃を受けたカルスを、約95~100μmols-1-2(16h/日)の蛍光下で、24±1℃に設定した組織培養室中でインキュベートした。
【0262】
【表7】
【0263】
実施例8 ボンバードメント後組織の回収及び遺伝子発現に対するL-システイン及びアスコルビン酸の効果
実施例7においてNptII(抗生物質ジェネテシンに対する耐性を提供する)をコードする選択マーカーを有する遺伝子ベクタープラスミドで衝撃を受けさせた緑色DEC組織をCIM-PS培地(表7のとおり)に、抗酸化剤としての2つの化合物、L-システイン(50mg/l)及びアスコルビン酸(15mg/l)を添加して又は添加せずに、任意の選択の3~4日前に移した。プレ選択培地中にこれらの抗酸化剤を添加しないと、衝撃組織の多くは褐変し、一部はかなり暗い褐色で、多くはさらに成長する能力を喪失した。プレ選択培地(L-システイン及びアスコルビン酸を含むか又は含まない)上で3~4日後、衝撃組織をGUS染色に付し、顕微鏡下で観察して明確な青色(GUS陽性)スポットを計数した。強力なGUS遺伝子発現がすべての衝撃DEC組織において観察され、少なくとも15フォーカス/カルスであった。プレ選択培地中に2つの抗酸化剤を含めることで、GUS遺伝子の一時的発現(表8)によって示されるように、形質転換効率がさらに改善された(少なくとも20フォーカス/カルス)。システイン及びアスコルビン酸を含むCIMで培養したDEC組織中で観察されるGUSフォーカスの平均数は、27GUSフォーカス/カルス付近であり、明確なGUS陽性スポットがクラスター化するよりもむしろ組織全体にわたって観察された(5~7mm)。これに加えて、複数のシュートが1つのDEC組織から再生され、例えばジェネテシンで選択された組織から再生され、単一のDEC外植体から複数のイベントを得ることができる修飾された選択手順の評価を容易にする。これを調査するために、衝撃を受けた組織の一部をほぼ2等分(図4に示すとおり)し、実施例9で後述するように培養した。
【0264】
【表8】

値は平均±標準偏差(SD)として報告された値である。*有意でない(p=0.083);**有意(p=0.039)。
【0265】
実施例9 最適化条件を用いたトランスジェニック植物の選択及び再生
ボンバードメント後及び3~4日の選択剤(ジェネテシン)を含まないプレ選択培地上での培養後、実施例8からの衝撃組織は4~5mmから約6~7mmまでサイズが増大した。これらの組織を、25mg/lのジェネテシンを含む選択的培地CIM/G25に移し、さらに4週間(2サイクル)培養した。組織あたりより多くの形質転換体が得られるかどうかを調べることを試みて、組織の一部をほぼ等しい大きさに2等分し、一方、他のものは分割しなかった(図4)。推定トランスジェニック植物を再生するために、組織のすべてを表7で記載する培地上で培養し、維持した。
【0266】
植物は、これらの培地上で成長させることにより効率的に再生された。各衝撃組織及びそれから得られたシュートを継代培養し、各群について形質転換効率を別々に算出するために維持した。正の形質転換が、シュートサンプルから単離された植物ゲノムDNA上でのPCRによって確認され、選択マーカー遺伝子の存在を示した。トランスジェニックソルガムの選択及び形質転換を図6に示す。形質転換体の数を入力DEC組織当たりで算出した。すなわち、形質転換効率(TE%)を再生された独立イベントの数/衝撃を受けた外植体の合計数x100として算出した。形質転換効率についてのデータを表9に提示する。
【0267】
1つの選択された分割カルスからより多くのシュート(>5)が得られたが、すべてのシュートは同じカルスのクローンであると考えられた。1つの衝撃構築物の分割組織から得られた平均形質転換効率は46%付近であり、これを非分割組織についての27%の形質転換効率と比較することができる。衝撃組織を分割した場合に得られる形質転換効率は、Liu及びGodwin(2012)によって未熟胚を使用したTX430において以前に報告された形質転換効率と比較して2倍付近であった。
【0268】
2つに分割した組織から再生したトランスジェニック植物の数は、分割されなかった組織と比べて有意に増加しなかった。これは、形質転換の複数のフォーカスに起因して、単一の衝撃組織から複数のシュートの回収を提供する。
【0269】
【表9】
【0270】
実施例10 T0形質転換体の分子分析
実施例7においてpBSV003で衝撃を受けさせた20のランダムに選択された推定形質転換体からのDNAをPCR分析に供して、NptIIプライマーを用いてNptII遺伝子の存在を確認した。植物はすべて形態学的に正常な雄性及び雌性、稔性、及び産生された種子であった。
【0271】
ゲノムDNAを、Mieog et al.(2013)によって記載されているようにして若干の変更を加えて推定トランスジェニックシュートの若葉から単離した。手短に言うと、凍結乾燥した葉組織(1cm2)を、96ウェルプレートの個々のウェル中にてステンレス鋼ボールベアリングでtissuelyser-II(Qiagen)を使用して粉砕した。375μlのDNA抽出緩衝液(0.1M Tris-HCl pH8.0、0.05M EDTA pH8.0、1.25%SDS)を粉砕した組織の各々に添加した。混合物を次に65℃で1時間インキュベートし、その後、187μlの6M酢酸アンモニウムを添加し、サンプルを4℃でさらに30分間インキュベートした。サンプルを次に3000rpmで30分間室温にて遠心分離した。340μlの上清を各サンプルから回収し、DNAの沈殿のために各ウェル中に220μlのイソプロパノールを含む新しい96ウェルプレートに移した。DNAを70%エタノールで1回すすぎ、短時間乾燥させ、そして220μlの滅菌蒸留水中に溶解させ、そして4℃で一夜放置した。NptII遺伝子の存在を確認するために、NPTII-F:5’-ATGATTGAACAAGATGGATTG-3’(配列番号1)及びNPTII-R:5’-GCTATGTCCTGATAGCGGTCC-3’(配列番号2)プライマーを使用し、PCR分析を推定トランスジェニックシュートのゲノムDNAに関して実施した。PCRの熱サイクルプロファイルは:94℃で15分間の初期変性、94℃で60秒、56℃で30秒、72℃で1分、そして最終的に72℃で10分の35サイクル。増幅産物を1%w/vアガロースゲル上、TAE緩衝液中でサイズ分画した。ゲル電気泳動を80ボルトで40分間実施した後、DNAバンドをBioRad QuantiOne UVトランスイルミネーター及びソフトウェアで可視化した。
【0272】
全ての推定形質転換体はNptII導入遺伝子に対して陽性であり、遺伝子の内部セグメントからの推定750bpアンプリコン(図7)を伴っていた。WTのDNAにおいて、バンドは検出されなかった。全ての推定形質転換体においてNptII導入遺伝子が存在することは、ジェネテシン選択がDEC組織にとって好適かつ有効であることを示した。
【0273】
導入遺伝子コピー数を次に、2つのプライマーセットを用いたddPCRによって分析し、プライマーセットの一方はNptII(導入遺伝子)を標的とし、他方はソルガムにおいて2つのコピーとして存在していた内因性参照遺伝子ENOL-2(Xue et al.、2014)を標的とするように設計された。導入遺伝子コピー数は、NptII選択マーカー及びソルガムENOL-2参照遺伝子に対して特異的な表10に記載するプライマー及びプローブ(Xue et al.、2014)を用いてDigital Droplet PCR(Katarzyna et al.、2016)によって決定した。BamH1及びEcoR1で消化したゲノムDNAを25μlのPCR反応あたり20ng~120ngのDNAの濃度でddPCRマスターミックスに添加した。反応におけるSigmaプライマー及びIDTプローブの最終濃度は、それぞれ400nM及び200nMであった。Droplet Generator QX200(Bio-Rad、オーストラリア)を製造業者の指示に従って使用して、液滴を生成した。40μlの油エマルジョン中液滴を96ウェルプレートに移し、C1000 Thermal Cycler(Bio-Rad、オーストラリア)中にロードした。PCR熱サイクルプログラムは、95℃で10分間、94℃で30秒間と59℃で1分間とそれに続いて98℃で10分間、各ステップで2.5℃/sのランピングの40サイクルからなっていた。増幅後、プレートを個々の液滴中のアンプリコンの検出のためにQX100 Droplet Reader(Bio-Rad, Australia)にロードした。データ分析は、Quantaソフトソフトウェア(バージョン1.7.4.0917;Bio-Rad、オーストラリア)を使用して実施した。
【0274】
【表10】
【0275】
導入遺伝子のコピー数における変動は、ランダムに選択された31の独立したT0イベントにおいて参照及び導入遺伝子の濃度を算出することによって決定した。31のトランスジェニックイベントのうち8つは2コピー未満(22.5%)を示し、およそ26%のイベントは二倍体ゲノムあたり2~3コピーを示した。残りのトランスジェニックイベント(48.3%)は二倍体ゲノムあたり3コピー超を含むことが予想された(図5)。
【0276】
本発明者らは、DEC組織を使用する形質転換法が、形態学的に正常な稔性ソルガム植物を産出し、再生された植物集団において非トランスジェニック植物が検出されない、効率的で比較的迅速な方法を提供したと結論づけた。導入遺伝子は、子孫植物において受け継がれ、導入遺伝子がソルガムゲノムに組み込まれることを示す。
【0277】
実施例10 緑色再生DEC組織のアグロバクテリウム媒介形質転換
前記実施例で記載した方法を用いて産生した、イニシエーションから6週間~6か月培養した均一で健常な緑色再生DEC組織(4~5mmのサイズ)をアグロバクテリウム媒介形質転換のために使用する。
【0278】
アグロバクテリウム媒介形質転換を使用した緑色再生DEC組織の形質転換のために遺伝子ベクターを使用する。遺伝子ベクターは植物細胞における発現用に設計されたuidA(GUS)及びbar遺伝子を含む。uidA遺伝子は、トウモロコシポリユビキチンプロモーター(pUbi)及びAgrobacterium tumefaciensオクトピンシンターゼポリアデニル化/ターミネーター(ocs3’)配列の調節制御下にある。プロモーターとタンパク質コーディング領域との間の配列は、Ubi遺伝子の5’UTR及び最初のイントロンを含む。uidAレポーター遺伝子はまた、そのタンパク質コーディング領域内に、アグロバクテリウムにおける機能的GUSタンパク質の翻訳を防止し、それによって接種した植物組織におけるバックグラウンドGUS遺伝子発現を低減するトウゴマカタラーゼ遺伝子由来のイントロンを含む。したがって、任意のGUS発現は、植物細胞におけるuidA遺伝子の発現に起因するものである。bar遺伝子はまた、pUbiプロモーターの調節制御下にあり、アグロバクテリウムノパリンシンターゼ3’調節配列(nos3’)で終端している。
【0279】
好適なAgrobacterium tumefaciens菌株、例えばLazo et al.(1991)で記載されているようなAGL1を得、遺伝子ベクターを熱ショック法によりAgrobacterium tumefaciens菌株に導入する。
【0280】
遺伝子構造を有するアグロバクテリウム培養物を好適な培地、例えばLB培地中、アグロバクテリウム接種菌液を生産するために適切な条件下で成長させ、その後、均一で健常な緑色再生DEC組織をアグロバクテリウム接種菌液で感染させる。感染したDEC組織を滅菌ろ紙上にブロットして、過剰なアグロバクテリウムを除去し、任意選択的に抗酸化剤を追加した共培養培地に移し、暗所で約22~24℃にて2~4日間インキュベートする。インキュベーション後、DEC組織を適切な薬剤で処理してアグロバクテリウムを殺滅し、滅菌水中で洗浄し、適切な培地に移し、成長させる。4~6週間後、シュートを切除し、シュート伸長培地上で培養し、その後、適切なアッセイを用いて推定トランスジェニックシュートを次に検出する。
【0281】
本開示の広い一般的範囲から逸脱することなく、前述の実施形態に対して数多くの変更及び/又は改変を加え得ることは当業者には理解されるであろう。したがって、本実施形態はあらゆる点で事例的かつ非制限的であると理解されるべきである。
【0282】
本明細書中で検討及び/又は参照する全ての刊行物は、その全体が本明細書に援用される。
【0283】
本明細書に含まれる文献、行為、物質、装置、文献などのあらゆる議論は、単に本発明の文脈を提供する目的のためである。これらのあらゆるものが、本願が主張する優先日以前に存在していたために先行技術の基礎の一部をなすか又は本発明に関連する分野における一般常識であったことを認めると解釈されるべきではない。
【0284】
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図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図7
【配列表】
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