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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-24
(45)【発行日】2023-04-03
(54)【発明の名称】電池システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20230327BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20230327BHJP
   G01R 15/18 20060101ALI20230327BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20230327BHJP
   B60L 58/12 20190101ALI20230327BHJP
   G01R 31/3828 20190101ALI20230327BHJP
【FI】
H02J7/00 X
H02J7/00 P
B60L3/00 S
G01R15/18 C
H01M10/48 P
B60L58/12
G01R31/3828
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019013879
(22)【出願日】2019-01-30
(65)【公開番号】P2020124027
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104949
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100074354
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康弘
(72)【発明者】
【氏名】中野 慎也
(72)【発明者】
【氏名】小山 勝稔
【審査官】大濱 伸也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2004/034074(WO,A1)
【文献】特開2003-032801(JP,A)
【文献】特開2015-082948(JP,A)
【文献】特開2016-021845(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
H01M 10/42-10/48
B60L 1/00-3/12
B60L 7/00-13/00
B60L 15/00-58/40
G01R 15/18
G01R 31/36-31/396
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用バッテリと、
前記走行用バッテリに接続してなるモータを含む負荷と、
前記走行用バッテリに接続されて、前記負荷の充放電電流である内部電流を検出する第1の電流センサと、
前記走行用バッテリに接続される外部電源からの外部電流であって、最大電流と平均電流の両方が内部電流よりも大きい外部電流を検出する第2の電流センサと、
前記第1の電流センサと前記第2の電流センサで検出する検出値から前記走行用バッテリの残容量を演算する演算回路と、
を備え、
前記走行用バッテリには、
前記第1の電流センサと前記負荷とを直列に接続してなる内部回路と、
前記第2の電流センサと前記外部電源とが直列に接続される外部回路とが並列に接続され、
前記第2の電流センサが、外部電源に接続される充電端子と外部電源との間に接続されてなり、
前記演算回路が、
前記第1の電流センサで検出する内部電流と、
前記第2の電流センサで検出する外部電流の両方で、前記走行用バッテリの残容量を演算することを特徴とする電池システム。
【請求項2】
走行用バッテリと、
前記走行用バッテリに接続してなるモータを含む負荷と、
前記走行用バッテリに接続されて、前記負荷の充放電電流である内部電流を検出する第1の電流センサと、
前記走行用バッテリに接続される外部電源からの外部電流であって、最大電流と平均電流の両方が内部電流よりも大きい外部電流を検出する第2の電流センサと、
前記第1の電流センサと前記第2の電流センサで検出する検出値から前記走行用バッテリの残容量を演算する演算回路と、
を備え、
前記走行用バッテリには、
記第1の電流センサと前記負荷とを直列に接続してなる内部回路と、
前記第2の電流センサと前記外部電源とが直列に接続される外部回路とが並列に接続され、
前記第2の電流センサが、外部電源に接続される充電端子と前記走行用バッテリとの間に接続されてなり、
前記演算回路が、
前記第1の電流センサで検出する内部電流と、
前記第2の電流センサで検出する外部電流の両方で、前記走行用バッテリの残容量を演算することを特徴とする電池システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載する電池システムであって、
前記第1の電流センサが、前記走行用バッテリと直列に接続してなるシャント抵抗器を備えることを特徴とする電池システム。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載する電池システムであって、
前記第2の電流センサが、フラックスゲート方式の電流センサであることを特徴とする電池システム。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれかに記載する電池システムであって、
前記第2の電流センサが、磁気比例式又は磁気平衡式の電流センサであることを特徴とする電池システム。
【請求項6】
請求項に記載する電池システムであって、
前記第2の電流センサが、前記第1の電流センサの前記シャント抵抗器よりも電気抵抗の小さいシャント抵抗器であることを特徴とする電池システム。
【請求項7】
請求項1ないしのいずれかに記載する電池システムであって、
前記第2の電流センサが電流を検出する検出範囲が、前記第1の電流センサの検出範囲の2倍以上であることを特徴とする電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行用バッテリでモータを駆動する電動車両に外部電源を接続して充電する電池システムであって、とくに電気自動車やプラグインハイブリッドカー等の電動車両に設けた充電端子に外部電源を接続して充電する電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電動車両は、外部電源を接続して走行用バッテリを充電できる。外部電源は、充電時間を短縮するために大電流で走行用バッテリを急速充電する。電動車両は、走行用バッテリの過充電や過放電を防止するために、残容量を検出しながら充放電している。バッテリの充電量は、電流と時間の積に比例するので、短時間で急速充電するために、外部電源は大電流で充電する。とくに、電気自動車の走行用バッテリは、充電容量が大きいので、短時間で急速充電するためには極めて大きな電流で充電する必要がある。
【0003】
さらに、バッテリは、充放電されて変動する残容量を正確に演算して設定範囲に維持することが極めて大切である。過充電や過放電によるバッテリの劣化を防止しながら、安全性を確保することが要求されるからである。また、電気自動車にあっては、残容量を正確に演算して、走行可能な距離をドライバーに正確に表示することも大切である。バッテリの残容量は、充電する電流と、放電する電流を積算して演算される。充電量は、充電電流を積算して演算され、放電量は放電電流を積算して演算される。残容量は、充電電流と放電電流を減算して演算されるので、演算する残容量の正確さは、検出できる充放電電流の精度に左右される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-217276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
走行用バッテリは、モータに電力を供給して放電され、回生制動と外部電源で充電される。回生制動は、車両を減速するエネルギーで発電機を回転してバッテリを充電する。外部電源は、車両に設けた充電端子に接続されてバッテリを充電する。外部電源による充電電流は、放電電流や回生制動の充電電流に比較して極めて大きい。車両のバッテリシステムは、走行用バッテリの充放電電流を検出する電流検出器を備える。電流検出器は、モータの放電電流と、回生制動及び外部電源の充電電流を検出するために最大測定電流を相当に大きく、たとえば、1000Aを越える極めて大電流とする必要がある。大電流まで検出できる電流検出器は、車両の通常の走行状態における電流、例えば数A~数十Aの電流の検出誤差が大きくなる。電流検出器は、電流を積分してバッテリの残容量を演算するので、電流の検出誤差は累積されて残容量の誤差を次第に大きくする原因となる。
【0006】
本発明は、さらに、以上の欠点を解消することを目的として開発されたもので、本発明の目的の一つは、モータの放電電流及び回生制動の充電電流と、外部電源からの充電電流を高い精度で検出して、バッテリの残容量を正確に演算できる電池システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の電池システムは、走行用バッテリ1と、走行用バッテリ1に接続してなるモータ21を含む負荷20と、走行用バッテリ1に接続されて、負荷20の充放電電流である内部電流を検出する第1の電流センサ2と、走行用バッテリ1に接続される外部電源30からの外部電流であって、最大電流と平均電流の両方が内部電流よりも大きい外部電流を検出する第2の電流センサ4と、第1の電流センサ2と第2の電流センサ4で検出する検出値から走行用バッテリ1の残容量を演算する演算回路6とを備えている。走行用バッテリ1には、第1の電流センサ2と負荷20とを直列に接続してなる内部回路3と、第2の電流センサ4と外部電源30とが直列に接続される外部回路5とが並列に接続されており、第2の電流センサが、外部電源に接続される充電端子と外部電源との間に接続され、あるいは、外部電源に接続される充電端子と走行用バッテリとの間に接続されている。演算回路6が、第1の電流センサ2で検出する内部電流と、第2の電流センサ4で検出する外部電流の両方で、走行用バッテリ1の残容量を演算している。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電池システムは、モータの放電電流及び回生制動の充電電流と、外部電源からの充電電流を高い精度で検出して、バッテリの残容量を正確に演算できる特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る電動車両の電池システムのブロック図である。
図2】電流センサの一例を示す概略構成図である。
図3】本発明の他の実施形態に係る電動車両の電池システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて本発明を詳細に説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、及びそれらの用語を含む別の用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が制限されるものではない。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一もしくは同等の部分又は部材を示す。
さらに以下に示す実施形態は、本発明の技術思想の具体例を示すものであって、本発明を以下に限定するものではない。また、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また、一の実施の形態、実施例において説明する内容は、他の実施の形態、実施例にも適用可能である。また、図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張していることがある。
【0011】
本発明の第1の発明にかかる電池システムは、走行用バッテリに接続されて、走行モータの電流を検出する第1の電流センサと、走行用バッテリに接続されて走行用バッテリを充電する外部電源の電流を検出する第2の電流センサと、第1の電流センサと第2の電流センサで検出する検出値から残容量を演算する演算回路とを備え、走行用バッテリには、第1の電流センサと走行モータとを直列に接続してなる内部回路と、第2の電流センサと外部電源とを直列に接続している外部回路とを並列に接続しており、演算回路は、第1の電流センサで検出する検出値と、第2の電流センサで検出する検出値の両方で、走行用バッテリの残容量を演算する。
【0012】
以上の電池システムは、モータに供給する放電電流と、回生制動で発生する充電電流である内部回路の電流を第1の電流センサで検出し、外部電源から供給される外部回路の充電電流を第2の電流センサで検出する。内部回路の電流は外部回路の電流よりも小さいので、第1の電流センサは検出する最大電流を小さくでき、放電電流と回生電流の両方を正確に検出して、変動するバッテリの残容量を正確に検出できる。内部回路よりも大電流の外部回路の電流は、第2の電流センサが検出する電流の最大電流を大きくして、大電流を正確に検出できる。以上の電池システムは、車両が走行して変動するバッテリの残容量の変化を、高精度な電流検出で正確に演算しながら、外部電源で充電される大きな充電電流をも正確に検出できる特徴がある。車両は、加速と減速を頻繁に繰り返して走行するので、加速時の放電電流と、減速時の回生電流は大幅に変動し、しかも短時間に頻繁に変動するので、変動する電流を正確に検出できない状態では、変動する残容量を高い精度で演算できない。残容量が電流の積算値で演算されるので、電流誤差が累積して残容量を狂わせるからである。車両の走行状態にあっては、第1の電流センサが高い精度で電流を検出して、変動するバッテリの残容量を正確に演算できる。このことは、走行状態において、走行可能な距離を正確に演算できる特徴を実現し、また、過充電や過放電によるバッテリの劣化を防止でき、さらにバッテリの安全性を向上できる特徴を実現する。さらに、バッテリが、外部電源から大電流で急速充電される状態においては、第2の電流センサで大きな充電電流を正確に検出して、外部電源が充電する状態での過充電を有効に阻止して、高い安全性を確保しながら、過充電によるバッテリの劣化を抑制できる特徴も実現する。
【0013】
本発明の第2の発明にかかる電池システムは、第1の発明において、第1の電流センサをシャント抵抗器としている。
【0014】
以上の電池システムは、第1の電流センサをシャント抵抗器とするので、電流センサを小さくし、また簡単な機構で低コスト化を実現しながら正確に電流を検出できる特徴がある。シャント抵抗器は、流れる電流の二乗に比例して電力損失とジュール熱が大きくなるので、大電流を検出する状態では電力損失と発熱が大きくなる。したがって、シャント抵抗器は、電気抵抗を1mΩ、検出電流を400Aとすると、電力損失は16Wと極めて大きく、またジュール熱による発熱量が大きくなって短時間に急速に温度上昇するが、第1の電流センサは、モータに供給する放電電流と、回生電流のみを検出して、外部電源によるバッテリの充電電流を検出しないので、検出する電流の平均値は外部電源の充電電流に比較して極めて小さい。車両の走行状態でモータに供給する放電電流は、加速時には瞬間的には大電流となるが、平均電流は外部電源の充電電流よりも極めて小さい。また、回生電流は瞬時的に大きくなっても、車両の減速時間が極めて短いので、回生電流の平均値は極めて小さくなる。したがって、シャント抵抗器の平均的な電力損失と発熱量は相当に小さい。したがって、第1の電流センサは、車両走行時の電流を正確に検出しながら、電力損失と発熱量を小さくして、効率よく、しかも温度上昇を少なくして電流を検出できる。また、第2の電流センサは、外部電源の充電電流を検出するが、外部電源は短時間で急速充電する必要から充電電流を小さくするタイミングが少なく、常に大きな電流で充電をするので、大電流の検出に適した電流センサを使用することができ、また、シャント抵抗器で検出する電流センサにあっては、シャント抵抗器の電気抵抗を小さくして、電力損失とジュール熱による発熱量を小さくできる。
【0015】
本発明の第3の発明にかかる電池システムは、第1の発明又は第2の発明において、第2の電流センサをフラックスゲート方式の電流センサとしている。
【0016】
この電池システムは、第2の電流センサをフラックスゲート方式の電流センサとするので、バッテリと直列にシャント抵抗器を接続する必要がなく、シャント抵抗器による電力損失とジュール熱による発熱を皆無にしながら、大電流を正確に検出できる特徴がある。
【0017】
本発明の第4の発明にかかる電池システムは、第1の発明又は第2の発明において、第2の電流センサを、ホール素子を使用する磁気比例式又は磁気平衡式の電流センサとしている。
【0018】
この電池システムは、第2の電流センサを、ホール素子を使用する磁気比例式又は磁気平衡式の電流センサとするので、バッテリと直列にシャント抵抗器を接続する必要がなく、シャント抵抗器による電力損失とジュール熱による発熱を皆無にしながら、大電流を検出できる特徴がある。
【0019】
本発明の第5の発明にかかる電池システムは、第2の発明において、第2の電流センサを第1の電流センサのシャント抵抗器よりも電気抵抗の小さいシャント抵抗器としている。
【0020】
以上の電池システムは、第2の電流センサのシャント抵抗器の電気抵抗を小さくするので、大電流を検出しながら電力損失と発熱量を小さくできる特徴がある。
【0021】
本発明の第6の発明にかかる電池システムは、第1の発明ないし第5の発明のいずれかにおいて、第2の電流センサを、外部電源に接続する充電端子と走行用バッテリとの間に接続している。
【0022】
以上の電池システムは、第2の電流センサを、充電端子と走行用バッテリの間に接続するので、第1の電流センサを電動車両に搭載して、第2の電流センサからの信号を車両側で演算してバッテリの残容量を演算できる。
【0023】
本発明の第7の発明にかかる電池システムは、第1の発明ないし第5の発明のいずれかにおいて、第2の電流センサを、外部電源に接続される充電端子と外部電源との間に接続している。
【0024】
以上の電池システムは、第2の電流センサを充電端子と外部電源との間に接続するので、第2の電流センサを車両側に配置することなく、外部に配置するので、第2の電流センサに、検出精度の高い大型の電流センサを使用することができる。
【0025】
本発明の第8の発明にかかる電池システムは、第1の発明ないし第7の発明のいずれかにおいて、第2の電流センサが電流を検出する検出範囲を、第1の電流センサの検出範囲の2倍以上としている。
【0026】
以上の電池システムは、第2の電流センサの検出範囲を第1の電流センサの2倍以上とするので、第2の電流センサで外部電源がバッテリを充電する大電流を正確に検出しながら、第1の電流センサの検出範囲を小さくして、車両走行時の電流を正確に検出できる特徴がある。
【0027】
(実施態様1)
以下の電池システムは、主として電気自動車に使用されるが、外部電源に接続して走行用バッテリを充電する全ての電動車両、たとえば、プラグインハイブリッドカー等にも使用できる。
【0028】
図1のブロック図に示す電動車両110の電池システム100は、走行用バッテリ1と、走行用バッテリ1に接続しているモータ21を含む負荷20と、走行用バッテリ1に接続している負荷20の充放電電流である内部電流を検出する第1の電流センサ2と、走行用バッテリ1が外部から充電するために外部電源30に接続される状態で、外部電源30からの充電電流である外部電流を検出する第2の電流センサ4と、第1の電流センサ2と第2の電流センサ4で検出する検出値から走行用バッテリ1の残容量を演算する演算回路6とを備える。走行用バッテリ1は、外部電源30で充電される状態では、第1の電流センサ2と負荷20とを直列に接続してなる内部回路3と、第2の電流センサ4と外部電源30とを直列に接続している外部回路5とが並列に接続される。演算回路6は、第1の電流センサ2で検出する内部電流と、第2の電流センサ4で検出する外部電流の両方で、走行用バッテリ1の残容量を演算する。
【0029】
走行用バッテリ1の負荷20は、モータ21と発電機22で、モータ21で放電され、発電機22で充電される。発電機22は、車両の回生制動で充電する。モータ21は発電機22に併用することもできる。モータ21を発電機22に併用する電動車両は、回生制動時にモータ21を発電機22として走行用バッテリ1を充電することができる。プラグインハイブリッドカーや発電専用のエンジンを搭載する電動車両は、エンジンで発電機22を駆動して走行用バッテリ1を充電することができる。走行用バッテリ1は、負荷20としてモータ21と発電機22を接続しているので、内部電流は、モータ21で放電される電流と、発電機22で充電される充電電流である。
【0030】
第1の電流センサ2は、走行用バッテリ1と負荷20との間に接続されて、車両の内部電流を検出する。第1の電流センサ2は、シャント抵抗器8を備える電流センサが適している。シャント抵抗器8の電流センサは、小形化して電流を正確に検出できる特徴がある。この電流センサは、走行用バッテリ1と直列に接続しているシャント抵抗器8の両端の発生電圧を検出して、シャント抵抗器8に流れる電流を検出する。第1の電流センサ2は、シャント抵抗器8の両端の電圧を増幅するアンプ9を備え、アンプ9で増幅された検出電圧を演算回路6に出力する。
【0031】
シャント抵抗器8は、電流の二乗と電気抵抗の積に比例するジュール熱が発生する。シャント抵抗器8の温度上昇は、電気抵抗を変化させて測定誤差の原因となる。シャント抵抗器8は、電気抵抗を温度で補正して電流を検出しているが、温度上昇を小さくして、温度補正による誤差を小さくでき、またシャント抵抗器8が過熱されることで発生する種々の弊害も防止できる。さらに、シャント抵抗器8は、電流と電気抵抗の積に比例して無駄に電力を消費する。シャント抵抗器8は、電気抵抗の二乗に比例して発熱量が増加し、また電気抵抗に比例して電力損失が増加するので、電気抵抗を小さくして正確に電流を検出することが要求される。このことから、シャント抵抗器8の電気抵抗は、検出する最大電流を考慮して可能な限り小さく設定される。
【0032】
第1の電流センサ2は、走行用バッテリ1の内部電流を検出する。電動車両の内部電流の最大値を数百Aとする電池システムにあっては、シャント抵抗器8の電気抵抗を好ましくは0.1mΩとして、内部抵抗による発熱量と電力損失を小さくできる。ただ、シャント抵抗器8の電気抵抗は、検出する電流の精度や最大電流を考慮して最適値に設定されるので、以上の電気抵抗よりも小さく、あるいは大きく設定することもできる。0.1mΩのシャント抵抗器8は、100Aの電流を検出して発生電圧は10mVとなる。アンプは発生電圧を増幅して、演算回路6に出力する。アンプで増幅された発生電圧は、高いS/N比を維持しながら演算回路6に入力される。車両の通常の走行状態において、走行用バッテリ1の内部電流の平均値は、一般的には数十A程度である。電気抵抗を0.1mΩとするシャント抵抗器8は、流れる電流が100Aの状態で、電力損失は1Wと極めて小さく、ジュール熱による発熱量も小さくできる。
【0033】
第2の電流センサ4は、車両の充電端子7に外部電源30を接続して走行用バッテリ1を充電する外部電流を検出する。図1において、外部回路5は、外部電源30と第2の電流センサ4の直列回路である。電池システム100は、走行用バッテリ1に、内部回路3と外部回路5を並列に接続して、第1の電流センサ2では内部電流のみを検出して外部電流を検出せず、第2の電流センサ4は、外部電流のみを検出して内部電流を検出しない。外部電流は内部電流よりも、平均値と最大電流の両方が極めて大きい。内部電流は車両の走行状態で変動して平均値は最大電流よりも相当に小さくなるが、外部電源30は走行用バッテリ1を短時間で急速充電することから、一定の大電流で走行用バッテリ1を充電するので、最大電流と平均電流の両方が極めて大きく、例えば1000A程度からこの電流値を越える値に設定されることがある。外部電源30は、走行用バッテリ1の充電電流、すなわち外部電流を大きくして充電時間を短縮できるので、外部電源30と走行用バッテリ1の電気的な性能を考慮して、可能な限り大きく設定される。
【0034】
第2の電流センサ4は、大電流を検出しながら電力損失を小さく、ジュール熱による発熱量も小さくするために、第1の電流センサ2とは異なるセンサが使用される。第2の電流センサ4は、好ましくは、フラックスゲート方式の電流センサを使用する。フラックスゲート方式の電流センサの原理図を図2に示す。この図のフラックスゲート電流センサ11は、対向する狭い隙間を設けた磁気コア12と、磁気コア12の隙間12Aに配置している一次コイル13と、磁気コア12に巻いた二次コイル14と、一次コイル13に誘導される検出信号で二次コイル14を励起して、二次コイル14の発生磁束で磁気コア12の磁束を打ち消すコントロール回路15と、二次コイル14に流れる電流を検出して、リード線16の電流を演算する電流検出回路17とを備えている。リード線16に電流が流れると、アンペールの法則により磁界が発生する。発生する磁界は、リード線16の周囲に配置している磁気コア12に誘導される。したがって、磁気コア12には電流に比例した磁界が発生する。一次コイル13は、磁気コア12の磁界を検出し、磁界で誘導される信号をコントロール回路15に入力する。コントロール回路15は、磁気コア12の磁界を打ち消すように二次コイル14を励起する。リード線16の電流が大きいほど、磁気コア12の磁界も強くなるので、強い磁界を打ち消すために、二次コイル14の励磁電流も大きくなる。すなわち、二次コイル14の電流は、リード線16の電流に対応する電流となるので、電流検出回路17は、二次コイル14の電流を検出してリード線16の電流を検出できる。
【0035】
フラックスゲート方式の電流センサは、シャント抵抗器8のようにジュール熱による発熱がなく、少ない発熱量で大電流を検出できる特徴がある。第2の電流センサ4は、フラックスゲート方式の電流センサのみでなく、磁気比例式、又は磁気平衡式の電流センサも使用できる。磁気比例式の電流センサは、磁気コアの隙間にホール素子を配置し、隙間の磁界をホール素子で検出して、磁気コアに挿通するリード線の電流を検出する。磁気平衡式の電流センサは、フラックスゲート方式の電流センサの一次コイルをホール素子とするもので、ホール素子で磁気コアの磁束を検出して、二次コイルに流す電流をコントロールする。二次コイルは、ホール素子が検出する磁界を打ち消すように二次コイルを励起するので、二次コイルの電流を検出して、リード線の電流を検出する。
【0036】
さらに、第2の電流センサ4には、シャント抵抗器の電流センサも使用できる。ただ、第2の電流センサ4が検出する外部電流は、第1の電流センサ2が検出する内部電流よりも大きいので、電力損失とジュール熱を小さくするために、第1の電流センサのシャント抵抗器よりも電気抵抗を小さく、好ましくは、第1の電流センサのシャント抵抗器の電気抵抗の1/2以下、さらに好ましくは、1/3以下とする。第2の電流センサのシャント抵抗器は、電気抵抗が小さすぎると電流の検出精度が低下するので、シャント抵抗器の電気抵抗は、たとえば、0.01mΩよりも大きくすることが望ましい。
【0037】
図1の電池システム100は、第2の電流センサ4を電動車両110の外部に設けている。第2の電流センサ4は、電動車両110の充電端子7に接続する外部電源30側に設けている。この図の電池システム100は、電動車両10の充電端子7に、第2の電流センサ4と外部電源30とを直列に接続して充電端子7に接続している。この電池システム100は、第2の電流センサ4を電動車両110の外部に接続するので、外部電源30を接続して走行用バッテリ1を充電する状態で、第2の電流センサ4からの信号を信号端子18を介して電動車両110の演算回路6に伝送している。この電池システム100は、第2の電流センサ4を電動車両110の外部に配置するので、電動車両110には第2の電流センサ4を設ける必要がない。外部に配置する第2の電流センサ4は、小型化の要求がなく、大型で高精度の電流センサを使用して、外部電流を正確に検出できる特徴がある。
【0038】
図3のブロック図に示す電動車両210の電池システム200は、第2の電流センサ4を電動車両210側に設けている。この図の電池システム200は、電動車両210の充電端子7に、外部電源30を接続して、走行用バッテリ1を充電する。この電池システム100は、第2の電流センサ4を電動車両210に配置するので、第2の電流センサ4の信号を電動車両210に伝送する信号端子を設ける必要がなく、第2の電流センサ4の信号をノイズの影響を少なくして、高いS/N比で演算回路6に入力して、外部電流を安定して正確に検出できる特徴がある。
【0039】
さらに、以上の演算回路6は、第1の電流センサ2と第2の電流センサ4から入力される電流信号を演算して、走行用バッテリ1の残容量を演算する。演算回路6は、第1の電流センサ2と第2の電流センサ4から入力される充電電流と放電電流の積算値から走行用バッテリ1の残容量を演算する。すなわち、充電電流の積算値を加算し、放電電流の積算値を減算して変動する走行用バッテリ1の残容量を演算する。演算回路6は、走行状態においては、第1の電流センサ2から入力される電流値を演算して、走行用バッテリ1の残容量を演算する。電動車両110、210は、演算される走行用バッテリ1の残容量で、走行用バッテリ1の過充電や過放電を防止するように充電電流と放電電流をコントロールして車両を走行させる。
【0040】
電動車両110、210は、走行用バッテリ1の残容量から走行用バッテリ1の充電電流と放電電流をコントロールして車両を走行させるバッテリコントロールユニット(図示せず)を備える。バッテリコントロールユニットは、走行用バッテリ1の過充電や過放電によって電気性能が低下しないように、また走行用バッテリ1の寿命を長くするために、所定の残容量となるように充放電の電流を制御する。
【0041】
電動車両110、210は、充電位置に移動し、充電端子7に外部電源30を接続して走行用バッテリ1を充電する。この状態において、第2の電流センサ4が走行用バッテリ1の充電電流、すなわち外部電流を検出する。演算回路6は、第2の電流センサ4で検出される外部電流を演算して走行用バッテリ1の残容量を演算する。走行用バッテリ1が設定された残容量まで充電されると、バッテリコントロールユニットは、充電端子7と走行用バッテリ1との間に接続している充電スイッチ19をオフに切り換えて充電を停止する。バッテリコントロールユニットは、走行用バッテリ1の残容量が予め設定している閾値よりも小さくなると、充電スイッチ19をオンに切り換えて、外部電源30で充電される状態とする。
【0042】
以上の電池システム100、200は、プラグインハイブリッドカーや電気自動車等の電動車両に外部電源30を接続するシステムとして使用されるが、プラグインハイブリッドカーは、エンジンとモータの両方で走行する。プラグインハイブリッドカーは、走行用のエンジンとモータと、モータに電力を供給する走行用バッテリと、走行用バッテリを充電する発電機とを備えている。走行用バッテリは、DC/ACインバータを介してモータと発電機に接続される。プラグインハイブリッドカーは、走行用バッテリを充放電しながらモータとエンジンの両方で走行する。モータは、走行用バッテリから電力が供給されて車輪を駆動する。発電機は、エンジンで駆動され、あるいは車両にブレーキをかけるときの回生制動で駆動されて、走行用バッテリを回生電流で充電する。プラグインハイブリッドカーは、外部電源を接続して走行用バッテリを残容量が設定値となるまで充電する。
【0043】
また、モータのみで走行する電気自動車等の電動車両に使用される電池システム100、200は、外部電源30で走行用バッテリ1を充電する。電気自動車は、走行用バッテリと、走行用バッテリから電力を供給する走行用のモータと、回生制動時の回生電流で走行用バッテリを充電する発電機とを備えている。モータは、走行用バッテリから電力が供給されて車両を走行させる。電気自動車に搭載している発電機は、回生制動のエネルギーで駆動されて、走行用バッテリを回生電流で充電する。走行用バッテリは、DC/ACインバータを介してモータと発電機に接続されて、走行用バッテリからモータに電力を供給し、発電機からは回生電流を走行用バッテリに供給して走行用バッテリを充電する。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明に係る電池システムは、プラグインハイブリッドカーや電気自動車等の電動車両に外部電源を接続して走行用バッテリを充電する電池システムとして好適に利用できる。
【符号の説明】
【0045】
100、200…電池システム
110、210…電動車両
1…走行用バッテリ
2…第1の電流センサ
3…内部回路
4…第2の電流センサ
5…外部回路
6…演算回路
7…充電端子
8…シャント抵抗器
9…アンプ
11…フラックスゲート電流センサ
12…磁気コア
12A…隙間
13…一次コイル
14…二次コイル
15…コントロール回路
16…リード線
17…電流検出回路
18…信号端子
19…充電スイッチ
20…負荷
21…モータ
22…発電機
30…外部電源
図1
図2
図3