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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-24
(45)【発行日】2023-04-03
(54)【発明の名称】紙幣処理装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 11/24 20190101AFI20230327BHJP
   G07D 11/10 20190101ALI20230327BHJP
   B65H 15/00 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
G07D11/24
G07D11/10
B65H15/00 F
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019097180
(22)【出願日】2019-05-23
(65)【公開番号】P2020191020
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2021-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000001432
【氏名又は名称】グローリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】隅田 忍
(72)【発明者】
【氏名】服部 憲一
(72)【発明者】
【氏名】舟橋 築
(72)【発明者】
【氏名】向田 雅幸
(72)【発明者】
【氏名】長谷 淳史
【審査官】小島 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-174422(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙幣を収納する収納部と、
前記紙幣を識別する識別部と、
前記識別部が、前記収納部から繰り出した紙幣の少なくとも計数を行うと共に、計数した前記紙幣を前記収納部に収納する精査処理を実行する制御部と、
前記紙幣を反転させる反転機構と、前記反転機構を迂回するバイパスとを有しかつ、前記紙幣を選択的に反転させる反転部と、を備え、
前記制御部は、前記精査処理の実行時に、第1精査処理、又は、第2精査処理を選択的に実行し、
前記制御部は、前記第1精査処理時には、前記識別部の識別結果に応じて前記紙幣を選択的に反転し、前記収納部に収納する紙幣の表裏及び天地の少なくとも一方を揃え、
前記制御部は、前記第2精査処理時には、前記紙幣を、前記識別部の識別結果に関わらず前記バイパスを通過させ、前記収納部に収納し、
前記制御部は、前記精査処理を予約に従って実行する場合には、前記第2精査処理を実行する紙幣処理装置。
【請求項2】
紙幣を収納する収納部と、
前記紙幣を識別する識別部と、
前記識別部が、前記収納部から繰り出した紙幣の少なくとも計数を行うと共に、計数した前記紙幣を前記収納部に収納する精査処理を実行する制御部と、
前記紙幣を反転させる反転機構と、前記反転機構を迂回するバイパスとを有しかつ、前記紙幣を選択的に反転させる反転部と、を備え、
前記制御部は、前記精査処理の実行時に、第1精査処理、又は、第2精査処理を選択的に実行し、
前記制御部は、前記第1精査処理時には、前記識別部の識別結果に応じて前記紙幣を選択的に反転し、前記収納部に収納する紙幣の表裏及び天地の少なくとも一方を揃え、
前記制御部は、前記第2精査処理時には、前記紙幣を、前記識別部の識別結果に関わらず前記バイパスを通過させ、前記収納部に収納し、
前記制御部は、前記精査処理の実行が遠隔で指示された場合は、前記第2精査処理を実行る紙幣処理装置。
【請求項3】
紙幣を収納する収納部と、
前記紙幣を識別する識別部と、
前記識別部が、前記収納部から繰り出した紙幣の少なくとも計数を行うと共に、計数した前記紙幣を前記収納部に収納する精査処理を実行する制御部と、
前記紙幣を反転させる反転機構と、前記反転機構を迂回するバイパスとを有しかつ、前記紙幣を選択的に反転させる反転部と、
人を検知する人感センサと、を備え、
前記制御部は、前記精査処理の実行時に、第1精査処理、又は、第2精査処理を選択的に実行し、
前記制御部は、前記第1精査処理時には、前記識別部の識別結果に応じて前記紙幣を選択的に反転し、前記収納部に収納する紙幣の表裏及び天地の少なくとも一方を揃え、
前記制御部は、前記第2精査処理時には、前記紙幣を、前記識別部の識別結果に関わらず前記バイパスを通過させ、前記収納部に収納し、
前記制御部は、前記精査処理の実行時に、前記人感センサが人を検知していない場合は、前記第2精査処理を実行する紙幣処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第2精査処理を実行した場合は、前記紙幣の表裏及び天地を揃えていない旨を出力する請求項1~3のいずれか1項に記載の紙幣処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記収納部に収納している紙幣の揃えに関する情報を出力する請求項1~4のいずれか1項に記載の紙幣処理装置。
【請求項6】
紙幣を収納する収納部と、
前記紙幣を識別する識別部と、
前記識別部が、前記収納部から繰り出した紙幣の少なくとも計数を行うと共に、計数した前記紙幣を前記収納部に収納する精査処理を実行する制御部と、を備え、
前記収納部は、金種別に紙幣を収納する金種別収納部と、前記金種別収納部に収納しない紙幣を収納する一括収納部とを有し、
前記制御部は、前記精査処理の実行時に、第1精査処理、又は、第2精査処理を選択的に実行し、
前記制御部は、前記第1精査処理時には、前記金種別収納部及び前記一括収納部それぞれの精査処理を実行し、
前記制御部は、前記第2精査処理時には、前記金種別収納部の精査処理を実行し、前記一括収納部の精査処理を実行しない紙幣処理装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記精査処理を予約に従って実行する場合には、前記第2精査処理を実行する請求項に記載の紙幣処理装置。
【請求項8】
前記制御部は、操作者の指示に従って、前記第1精査処理又は前記第2精査処理を実行する請求項6又は7に記載の紙幣処理装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記精査処理の実行が遠隔で指示された場合は、前記第2精査処理を実行する請求項6~8のいずれか1項に記載の紙幣処理装置。
【請求項10】
人を検知する人感センサを備え、
前記制御部は、前記精査処理の実行時に、前記人感センサが人を検知していない場合は、前記第2精査処理を実行する請求項6~9のいずれか1項に記載の紙幣処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する技術は、紙幣処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、紙幣処理装置が記載されている。紙幣処理装置は、紙幣を収納する収納部と、紙幣の識別を行う識別部とを備えている。紙幣処理装置はさらに、紙幣の天地及び表裏を反転するスイッチバック方式の第1反転部と、紙幣の搬送幅方向の向きを反転するスパイラル方式の第2反転部とを備えている。紙幣処理装置は、第1反転部及び第2反転部によって、紙幣の天地及び表裏の両方を揃えることができる。
【0003】
特許文献1の紙幣処理装置は精査処理を行う。精査処理時には、収納部から繰り出した紙幣の少なくとも計数を識別部が行うと共に、計数した紙幣を収納部に収納する。特許文献1には、精査処理を実行する際に、識別部が識別をした紙幣の向きに応じて、紙幣を選択的に反転させることにより、収納部に収納する紙幣の向きを揃えることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-174422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、精査処理は、収納部に収納している紙幣を繰り出しかつ、繰り出した紙幣を収納部へ再度収納するため、収納部に収納している紙幣の枚数が多いと、時間がかかる。また、紙幣処理装置の収納部の数が増えると、精査処理に要する時間はさらに長くなる。精査処理の実行中は紙幣処理装置を使用することができない。そこで、紙幣処理装置が設置されている金融機関の営業店舗等においては、例えば夜間等の、業務を行わない時間帯に、紙幣処理装置が精査処理を自動的に実行する場合がある。
【0006】
ところが、精査処理を実行している最中に、例えば紙幣の詰まり等の、搬送エラーが発生してしまうと、紙幣処理装置は精査処理を中止する。操作者が搬送エラーを解除しなければ、精査処理を再開することができない。前述したように、夜間等の、周囲に人が存在しない環境下で紙幣処理装置が精査処理を実行している最中に、搬送エラーが発生してしまうと、操作者が出勤をする翌朝まで搬送エラーを解除することができない。
【0007】
この場合、操作者が出勤をした翌朝に、操作者が搬送エラーを解除すると共に、精査処理を再開する。前述したように、精査処理の実行には長時間を要するため、店舗の営業開始が遅れる等、業務の遂行に支障が生じる恐れもある。
【0008】
ここに開示する技術は、精査処理を滞りなく完了させる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ここに開示する技術は、紙幣処理装置に関する。紙幣処理装置は、
紙幣を収納する収納部と、
前記紙幣を識別する識別部と、
前記識別部が、前記収納部から繰り出した紙幣の少なくとも計数を行うと共に、計数した前記紙幣を前記収納部に収納する精査処理を実行する制御部と、
前記紙幣を反転させる反転機構と、前記反転機構を迂回するバイパスとを有しかつ、前記紙幣を選択的に反転させる反転部と、を備え、
前記制御部は、前記精査処理の実行時に、第1精査処理、又は、第2精査処理を選択的に実行し、
前記制御部は、前記第1精査処理時には、前記識別部の識別結果に応じて前記紙幣を選択的に反転し、前記収納部に収納する紙幣の表裏及び天地の少なくとも一方を揃え、
前記制御部は、前記第2精査処理時には、前記紙幣を、前記識別部の識別結果に関わらず前記バイパスを通過させ、前記収納部に収納し、
前記制御部は、前記精査処理を予約に従って実行する場合には、前記第2精査処理を実行する。
【0010】
ここに開示する紙幣処理装置は、
紙幣を収納する収納部と、
前記紙幣を識別する識別部と、
前記識別部が、前記収納部から繰り出した紙幣の少なくとも計数を行うと共に、計数した前記紙幣を前記収納部に収納する精査処理を実行する制御部と、
前記紙幣を反転させる反転機構と、前記反転機構を迂回するバイパスとを有しかつ、前記紙幣を選択的に反転させる反転部と、を備え、
前記制御部は、前記精査処理の実行時に、第1精査処理、又は、第2精査処理を選択的に実行し、
前記制御部は、前記第1精査処理時には、前記識別部の識別結果に応じて前記紙幣を選択的に反転し、前記収納部に収納する紙幣の表裏及び天地の少なくとも一方を揃え、
前記制御部は、前記第2精査処理時には、前記紙幣を、前記識別部の識別結果に関わらず前記バイパスを通過させ、前記収納部に収納し、
前記制御部は、前記精査処理の実行が遠隔で指示された場合は、前記第2精査処理を実行する。
【0011】
ここに開示する紙幣処理装置は、
紙幣を収納する収納部と、
前記紙幣を識別する識別部と、
前記識別部が、前記収納部から繰り出した紙幣の少なくとも計数を行うと共に、計数した前記紙幣を前記収納部に収納する精査処理を実行する制御部と、
前記紙幣を反転させる反転機構と、前記反転機構を迂回するバイパスとを有しかつ、前記紙幣を選択的に反転させる反転部と、
人を検知する人感センサと、を備え、
前記制御部は、前記精査処理の実行時に、第1精査処理、又は、第2精査処理を選択的に実行し、
前記制御部は、前記第1精査処理時には、前記識別部の識別結果に応じて前記紙幣を選択的に反転し、前記収納部に収納する紙幣の表裏及び天地の少なくとも一方を揃え、
前記制御部は、前記第2精査処理時には、前記紙幣を、前記識別部の識別結果に関わらず前記バイパスを通過させ、前記収納部に収納し、
前記制御部は、前記精査処理の実行時に、前記人感センサが人を検知していない場合は、前記第2精査処理を実行する。
【0012】
紙幣がバイパスを通過する第2精査処理の実行時は、搬送エラーが発生し難い。搬送エラーが発生し難いため、精査処理が滞りなく完了する。
【0013】
前記制御部は、前記第2精査処理を実行した場合は、前記紙幣の表裏及び天地を揃えていない旨を出力する、としてもよい。
【0014】
前記制御部は、前記収納部に収納している紙幣の揃えに関する情報を出力する、としてもよい。
【0015】
操作者は、収納部に収納している紙幣の状態を知ることができる。
【0016】
ここに開示する紙幣処理装置は、
紙幣を収納する収納部と、
前記紙幣を識別する識別部と、
前記識別部が、前記収納部から繰り出した紙幣の少なくとも計数を行うと共に、計数した前記紙幣を前記収納部に収納する精査処理を実行する制御部と、を備え、
前記収納部は、金種別に紙幣を収納する金種別収納部と、前記金種別収納部に収納しない紙幣を収納する一括収納部とを有し、
前記制御部は、前記精査処理の実行時に、第1精査処理、又は、第2精査処理を選択的に実行し、
前記制御部は、前記第1精査処理時には、前記金種別収納部及び前記一括収納部それぞれの精査処理を実行し、
前記制御部は、前記第2精査処理時には、前記金種別収納部の精査処理を実行し、前記一括収納部の精査処理を実行しない。
【0017】
一括収納部を精査処理の対象から外すことによって、第2精査処理の実行時に搬送エラーが発生し難くなる。精査処理が滞りなく完了する。
【0018】
前記制御部は、前記精査処理を予約に従って実行する場合には、前記第2精査処理を実行する、としてもよい。
【0019】
予約に従って精査処理を自動的に実行する場合、紙幣処理装置は、無人で精査処理を行う可能性が高い。紙幣処理装置は、第2精査処理を実行することが好ましい。
【0020】
前記制御部は、操作者の指示に従って、前記第1精査処理又は前記第2精査処理を実行する、としてもよい。
【0021】
前記制御部は、前記精査処理の実行が遠隔で指示された場合は、前記第2精査処理を実行する、としてもよい。
【0022】
精査処理を遠隔指示により実行する場合、紙幣処理装置は、無人で精査処理を行う可能性が高い。紙幣処理装置は、第2精査処理を実行することが好ましい。
【0023】
紙幣処理装置は、人を検知する人感センサを備え、
前記制御部は、前記精査処理の実行時に、前記人感センサが人を検知していない場合は、前記第2精査処理を実行する、としてもよい。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、前記の紙幣処理装置によると、精査処理を滞りなく完了させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、貨幣処理装置の外観を示す斜視図である。
図2図2は、貨幣処理装置の構成を例示するブロック図である。
図3図3は、バラ紙幣処理ユニットの内部構成を例示する図である。
図4図4は、紙幣の天地方向及び左右方向を説明する図である。
図5図5は、紙幣の表裏及び天地の両方を揃えるときの、スイッチバック反転部及びスパイラル反転部の動作を説明する図である。
図6図6は、入金処理時及び出金処理時の紙幣の搬送経路を説明する図である。
図7図7の左図は、第1精査処理時の紙幣の搬送経路、右図は、第2精査処理時の紙幣の搬送経路を説明する図である。
図8図8は、自動精査の実行に関する処理の手順を説明するフローチャートである。
図9図9の上図は、精査処理に関する設定画面を例示する図であり、中図は、自動精査の完了時に表示される画面を例示する図であり、下図は、収納部内の紙幣の揃え状態に関する表示画面を例示する図である。
図10図10は、夜間精査に関する設定画面を例示する図である。
図11図11は、紙幣を収納部へ手装填した後の精査処理の実行を促す画面から、精査処理の実行中に至る画面の遷移を例示する図である。
図12図12は、収納部内の紙幣が揃っていない場合の、出金処理時の紙幣の搬送経路を説明する図である。
図13図13は、バラ紙幣処理ユニットの内部ユニットの引き出し構成を概略的に例示する図である。
図14図14は、スパイラル反転部を概略的に例示する斜視図である。
図15図15は、スパイラル反転部の、バイパスを開放した状態を概略的に例示する斜視図である。
図16図16は、スパイラル反転部の、反転機構を開放した状態を概略的に例示する斜視図である。
図17図17は、図3とは異なる紙幣処理装置の内部構成を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、紙幣処理装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の説明は、紙幣処理装置の一例である。図1及び図2は、紙幣処理装置を含む貨幣処理装置1の構成例を示している。
【0027】
(貨幣処理装置の全体構成)
図1は、貨幣処理装置1の外観を示している。図2は、貨幣処理装置1の構成を示すブロック図である。貨幣処理装置1は、例えば銀行等の金融機関の営業店舗に設置されかつ、入金処理及び出金処理を含む各種の処理を実行する出納機である。尚、貨幣処理装置1は、金融機関に設置することには限定されない。
【0028】
貨幣処理装置1は、紙幣処理装置としてのバラ紙幣処理ユニット100、帯封紙幣処理ユニット200、バラ硬貨処理ユニット300、包装硬貨処理ユニット400、損貨・記念貨処理ユニット500、有価媒体処理ユニット600、及び、貨幣保管ユニット700、及び、これらの各処理ユニット100~700を統合制御する制御部8を含んで構成されている。
【0029】
バラ紙幣処理ユニット100は、入金口に投入されたバラ紙幣を、ユニット内の収納部に収納する入金処理、及び、収納部に収納しているバラ紙幣を、出金口に払い出す出金処理を行う。バラ紙幣処理ユニット100の構成は、後述する。
【0030】
帯封紙幣処理ユニット200は、所定枚数(例えば100枚)の紙幣を、帯封紙によって一つに束ねた帯封紙幣を作成しかつ、帯封紙幣をユニット内に収納する処理を行うと共に、収納している帯封紙幣を、ユニット外に出金する処理を行う。帯封紙幣処理ユニット200とバラ紙幣処理ユニット100とは、隣り合っている。
【0031】
バラ硬貨処理ユニット300は、入金口に投入されたバラ硬貨を、ユニット内の収納部に収納する入金処理、及び、収納部に収納しているバラ硬貨を、出金口に払い出す出金処理を行う。
【0032】
包装硬貨処理ユニット400は、所定枚数(例えば50枚)の硬貨を円筒形状に包装した包装硬貨を作成しかつ、包装硬貨をユニット内に収納する処理を行うと共に、収納している包装硬貨を、ユニット外に出金する処理を行う。包装硬貨処理ユニット400とバラ硬貨処理ユニット300とは、隣り合っている。
【0033】
損貨・記念貨処理ユニット500は、傷みや汚れがひどいため、バラ硬貨処理ユニット300で処理することができないバラ硬貨(つまり、損貨)、及び、バラ硬貨処理ユニット300が処理対象としていない記念硬貨等をユニット内に収納する入金処理を行う。損貨・記念貨処理ユニット500は、有価媒体処理ユニット600の上面に配置されている。
【0034】
有価媒体処理ユニット600は、傷みや汚れがひどいため、バラ紙幣処理ユニット100で処理することができないバラ紙幣(つまり、損券)、及び、バラ紙幣処理ユニット100が処理対象としていない小切手等の有価媒体をユニット内に収納する入金処理を行う。
【0035】
貨幣保管ユニット700は、紙幣や硬貨、又は、有価証券類等を保管する収納ドロワを複数備えている。操作者は、収納ドロワを開閉することによって、収納ドロワに紙幣等を収納したり、収納ドロワから紙幣等を取り出したりすることができる。
【0036】
制御部8は、バラ紙幣処理ユニット100、帯封紙幣処理ユニット200、バラ硬貨処理ユニット300、包装硬貨処理ユニット400、損貨・記念貨処理ユニット500、有価媒体処理ユニット600、貨幣保管ユニット700を制御することによって、銀行の営業店舗における貨幣の出入の管理を行う。貨幣処理装置1は、当該貨幣処理装置1に収納されている紙幣及び硬貨だけでなく、営業店舗の金庫に保管している貨幣の在高、及び、手持ち管理の貨幣の在高の管理も行う。制御部8は、タイマー81を有している。詳細は後述するが、制御部8は、指定した時刻が経過した時に処理を開始するタイマー予約、及び、指定された日にちや曜日及び/又は時間帯に処理を開始する日時予約、に従って処理を行う場合に、タイマー81を用いる。
【0037】
貨幣処理装置1はまた、第一ターミナル部41、第二ターミナル部42、プリンタ50、及び、記憶部51を備えている。
【0038】
第一ターミナル部41は、包装硬貨処理ユニット400の上面に配置されており、第二ターミナル部42は、帯封紙幣処理ユニット200の上面に配置されている。第一ターミナル部41及び第二ターミナル部42は同じ構成を有している。第一ターミナル部41及び第二ターミナル部42はそれぞれ、例えばタッチパネル式の表示操作部を有し、操作者に向けて情報を表示すると共に、操作者の操作を受け付ける。表示操作部は、表示を行う表示部と、操作者の操作を受け付ける操作部とに分けてもよい。第一ターミナル部41及び第二ターミナル部42はまた、操作者の認証を行うために、カード情報を読み取るカードリーダを有している。
【0039】
プリンタ50は、例えば感熱式プリンタや、インクジェットプリンタによって構成される。プリンタ50は、取引を行う毎に伝票の印刷をしたり、各種のジャーナルの印刷を行ったりする。プリンタ50は、バラ紙幣処理ユニット100の上面と、バラ硬貨処理ユニット300の上面とのそれぞれに配置されている。
【0040】
記憶部51は、例えばハードディスクドライブや、不揮発性メモリによって構成されている。記憶部51は、貨幣処理装置1において収納している紙幣及び硬貨の在高情報を記憶している。記憶部51はまた、貨幣処理装置1が行った取引の情報を記憶している。
【0041】
貨幣処理装置1は、第一ターミナル部41及び/又は第二ターミナル部42を介してネットワーク61に接続されている。ネットワーク61には、例えば管理コンピュータ62が接続されている。管理コンピュータ62は、貨幣処理装置1を遠隔で管理する装置である。操作者は、管理コンピュータ62を通じて、遠隔で貨幣処理装置1を操作することができる。
【0042】
貨幣処理装置1はまた、人感センサ52を備えている。人感センサ52は、貨幣処理装置1の近くに人が居ることを検知し、制御部8に検知信号を出力する。
【0043】
(バラ紙幣処理ユニットの構成)
図3は、バラ紙幣処理ユニット100の構成を例示している。バラ紙幣処理ユニット100には、バラ紙幣を出金するための出金口101とバラ紙幣を入金するための入金口102が設けられている。
【0044】
バラ紙幣処理ユニット100は、入金部103と、入金リジェクト部104と、出金部105と、出金リジェクト部106と、搬送部107と、入金識別部108と、出金識別部109と、スイッチバック反転部110と、スパイラル反転部111と、四つの収納部112と、四つの一時保留部113と、二つの集積部114と、運搬部115と、を備えている。
【0045】
入金部103は、入金口102につながっている。操作者は、入金口102を通じて入金部103にバラ紙幣を投入する。入金部103は、繰出機構103aを備えている。繰出機構103aは、入金部103に投入されたバラ紙幣を一枚ずつ繰り出す。
【0046】
入金リジェクト部104は、入金識別部108によってリジェクト紙幣と識別された紙幣を受け取る。入金リジェクト部104は、入金口102につながっている。操作者は、入金口102を通じて入金リジェクト部104からバラ紙幣を取り出すことができる。
【0047】
出金部105は、収納部112から繰り出された紙幣を受け取る。出金部105は、出金口101につながっている。操作者は、出金口101を通じて出金部105からバラ紙幣を取り出すことができる。出金リジェクト部106は、主に、出金識別部109によりリジェクト紙幣と識別された紙幣を受け取る。
【0048】
搬送部107は、ベルト機構、ローラー機構等により構成されている。搬送部107は、入金部103から収納部112(正確には、後述の一時保留部113)までをつなぐ入金搬送路116と、収納部112から出金部105までをつなぐ出金搬送路117と、入金搬送路116と出金搬送路117とをつなぐ循環搬送路118及びバイパス路119と、入金リジェクト搬送路120と、二つの集積搬送路121と、出金リジェクト搬送路122と、を含んでいる。
【0049】
循環搬送路118は、出金搬送路117におけるスパイラル反転部111と集積部114との間と、入金搬送路116における入金識別部108とスイッチバック反転部110との間とをつないでいる。バイパス路119は、入金搬送路116の先端から分岐して、出金搬送路117における集積部114の上流に接続されている。入金リジェクト搬送路120は、入金搬送路116から分岐して、入金リジェクト部104に接続されている。二つの集積搬送路121はそれぞれ、出金搬送路117から分岐して、集積部114に接続されている。出金リジェクト搬送路122は、出金搬送路117から分岐して、出金リジェクト部106に接続されている。
【0050】
バラ紙幣処理ユニット100は、図4に示すように長方形状である紙幣BNを、長手の縁を前にして搬送路に沿って搬送する。搬送部107は、紙幣を一枚一枚、間隔を空けて、各搬送路に沿って搬送する。
【0051】
入金識別部108は、入金搬送路116に配設されている。より詳細に、入金識別部108は、入金搬送路116において、入金部103と、循環搬送路118の接続位置との間に配設されている。入金識別部108は、紙幣の金種、真偽、表裏、向き、正損、新旧、搬送状態等を識別する。
【0052】
出金識別部109は、出金搬送路117に配設されている。より詳細に、出金識別部109は、出金搬送路117において、収納部112と、スパイラル反転部111との間に配設されている。出金識別部109は、紙幣の金種、真偽、表裏、向き、正損、新旧、搬送状態等を識別する。出金識別部109は、識別部の一例である。
【0053】
ここで、入金識別部108及び出金識別部109が識別を行う紙幣の方向について説明をする。紙幣の方向は、紙幣の表裏と向きとの組み合わせによって、A方向、B方向、C方向及びD方向の四つの方向に定まる。紙幣の天地方向は、図4に示すように、紙幣BNに描かれた肖像画を基準とした上下の方向である。紙幣の左右方向は、天地方向に直交する方向である。長手の縁を前にして搬送される紙幣において、天地方向は、搬送方向に一致する。左右方向は、搬送方向に直交する。尚、以下の説明において、搬送方向に直交する方向を、搬送幅方向と呼ぶ場合がある。
【0054】
図5に示すように、A方向は、紙幣が表向きでかつ、搬送方向に対して紙幣の天地方向が従う方向である。B方向は、紙幣が表向きでかつ、搬送方向に対して紙幣の天地方向が逆らう方向である。C方向は、紙幣が裏向きでかつ、搬送方向に対して紙幣の天地方向が逆らう方向である。D方向は、紙幣が裏向きでかつ、搬送方向に対して紙幣の天地方向が従う方向である。
【0055】
スイッチバック反転部110は、入金搬送路116における、循環搬送路118の接続箇所よりも下流に配置されている。スイッチバック反転部110は、入金識別部108の識別結果に応じて、紙幣の表裏及び天地方向の両方を、選択的に反転する。スイッチバック反転部110は、反転部の一例である。スイッチバック反転部110は、紙幣の表裏及び天地方向を反転させるスイッチバック方式の反転パス110a(つまり、反転機構)と、紙幣の表裏及び天地方向を反転することなく通過させるバイパス110bと、を有している。
【0056】
反転パス110aを通過した紙幣は、搬送幅方向の向きを変えずに、紙幣の表裏と搬送方向の向き(つまり、天地方向の向き)との両方が反転する。スイッチバック反転部110は、入金識別部108の識別結果に応じて、表裏及び天地方向の向きを反転する必要がある紙幣は、反転パス110aを通過させ、表裏及び天地方向の向きを反転する必要がない紙幣は、バイパス110bを通過させる。
【0057】
スパイラル反転部111は、出金搬送路117において、出金識別部109よりも下流かつ、循環搬送路118の接続箇所よりも上流に設けられている。スパイラル反転部111は、紙幣の搬送幅方向の向きを、選択的に反転する。スパイラル反転部111は、反転部の一例である。スパイラル反転部111は、紙幣の搬送幅方向の向きを反転させる反転パス111aと、紙幣の搬送幅方向の向きを反転することなく通過させるバイパス111bと、を有している。反転パス111aには、紙幣を反転する反転機構111cが配設されている。バイパス111bには、バイパス路119が接続されている。反転機構111cは、この構成例では、紙幣の搬送方向に沿って伸びる軸回りに、紙幣を回転させる、いわゆるスパイラル方式に構成されている。反転機構111cは、紙幣の搬送方向に直交する搬送幅方向(つまり、紙幣の左右方向)の向きと、紙幣の表裏との両方を反転することができる。スパイラル反転部111は、スイッチバック反転部110とは機能が相違する。反転機構111cの構成の詳細は省略するが、スパイラル方式の反転機構111cは、公知の様々な構成を採用することができる。
【0058】
スパイラル反転部111は、出金識別部109の識別結果に応じて、左右方向の向きを反転する必要がある紙幣は、反転パス111aを通過させ、左右方向の向きを反転する必要がない紙幣は、バイパス111bを通過させる。反転機構111cの下流において、反転パス111aとバイパス111bとは合流する。このバラ紙幣処理ユニット100は、スイッチバック反転部110とスパイラル反転部111との二種類の反転部を備えることにより、紙幣の表裏及び天地方向の向きの両方を揃えることができる。
【0059】
ここで、図5に示すフローを参照しながら、紙幣の表裏及び天地方向の向きを揃えるための、スイッチバック反転部110及びスパイラル反転部111の動作について説明する。ここでは、入金部103から取り込まれた紙幣がスイッチバック反転部110を通過した後、収納部112に収納される入金処理、及び、収納部112から繰り出された紙幣がスパイラル反転部111を通過した後、出金部105に投出される出金処理が行われる例において、スイッチバック反転部110及びスパイラル反転部111の動作を説明する。尚、以下の説明においては、スイッチバック反転部110及びスパイラル反転部111によって、紙幣をA方向に揃えるとする。但し、紙幣の揃えの向きは、A方向に限らず、B方向、C方向及びD方向のいずれであってもよい。
【0060】
入金部103が繰り出した紙幣は、入金識別部108によって識別される。入金識別部108の識別結果による紙幣の方向に応じて、図5のプロセスは、ステップS41~S44に進む。つまり、紙幣がA方向であるときに、プロセスはステップS41に進み、紙幣がB方向であるときに、プロセスはステップS42に進み、紙幣がC方向であるときに、プロセスはステップS43に進み、紙幣がD方向であるときに、プロセスはステップS44に進む。
【0061】
ステップS51~S54は、スイッチバック反転部110における反転動作に係る。ステップS41に続くステップS51においては、紙幣を反転させる必要がないため、スイッチバック反転部110は、紙幣を通過させる。つまり、紙幣は、バイパス110bを通過する。紙幣の方向はA方向のままである(ステップS61参照)。ステップS42に続くステップS52において、スイッチバック反転部110は、紙幣を反転させる。つまり、紙幣は、反転パス110aを通過する。これにより、紙幣の表裏及び天地方向の向きの両方が反転し、紙幣の方向はB方向からD方向になる(ステップS62参照)。ステップS43に続くステップS53において、スイッチバック反転部110は、紙幣を反転させる。これにより、紙幣の方向はC方向からA方向になる(ステップS63参照)。ステップS44に続くステップS54において、スイッチバック反転部110は、紙幣を通過させる。紙幣の方向はD方向のままである(ステップS64参照)。スイッチバック反転部110は、紙幣の天地を揃えている。つまり、スイッチバック反転部110を通過した紙幣の方向は、特定の方向を向いている。スイッチバック反転部110を通過した紙幣は、収納部112に収納される。収納部112は、特定の方向を向いた紙幣を収納している。
【0062】
収納部112が繰り出した紙幣は、出金識別部109によって識別される。図5のプロセスは、ステップS51、S52、S53、及びS54に対応して、ステップS61、S62、S63、及びS64に分かれる。紙幣は、前述したように、A方向又はD方向である。
【0063】
ステップS71~74は、スパイラル反転部111における反転動作に係る。ステップS61に続くステップS71においては、紙幣を反転させる必要がないため、スパイラル反転部111は、紙幣を通過させる。つまり、紙幣は、バイパス111bを通過する。紙幣の方向はA方向のままである。ステップS62に続くステップS72において、スパイラル反転部111は、紙幣を反転させる。つまり、紙幣は、反転パス111aを通過する。これにより、紙幣の表裏及び左右方向の向きの両方が反転し、紙幣の方向はD方向からA方向になる。ステップS63に続くステップS73において、スパイラル反転部111は、紙幣を通過させる。これにより、紙幣の方向はA方向のままになる。ステップS64に続くステップS74において、スパイラル反転部111は、紙幣を反転させる。紙幣の方向はD方向からA方向になる。こうして、紙幣の方向は全てA方向に揃う。
【0064】
収納部112は、入金された紙幣を金種別に収納するために利用される。たとえば、四つの収納部112のそれぞれに対し、図3の左から右の順に、一括、一万円、5千円、及び、千円の金種が割り当てられている。収納部112内には、紙幣が上下に積まれるように収納される。収納部112には、その天面に紙幣の入口が形成され、その底面に紙幣の出口が形成される。収納部112には、その底面側に繰出部112aが設けられている。繰出部112aは、収納部112内の紙幣を、一枚ずつ出金搬送路117に繰り出すことができる。収納部112は、先に入れた紙幣を先に出す、いわゆる先入れ先出しに構成されている。尚、一括収納部112には、対応する金種別の収納部112に収納できないオーバーフロー紙幣や、金種を識別できるものの払出しには適さない損傷紙幣(損券)や、搬送異常の紙幣や、対応する収納部112が設けられていない2千円紙幣等が収納される。
【0065】
一時保留部113は、対応する収納部112の上方に配置される。一時保留部113は、収納部112に収納される紙幣を、その収納前に一時的に収納する。四つの一時保留部113には、入金搬送路116が分岐して接続されている。一時保留部113に収納された紙幣は、対応する収納部112へ送られる。一時保留部113はまた、手動で、バラ紙幣処理ユニット100の外に引き出すことができる。操作者は、一時保留部113に収納されている紙幣を手で取り出すことができる。
【0066】
各集積部114は、所定の帯封枚数(通常は、100枚)となるまで、紙幣を集積する。運搬部115は、一対のアームを備えている。運搬部115は、集積部114に集積されているバラ紙幣を、一対のアームで挟んで集積部114内から取り出し、帯封紙幣処理ユニット200へ運搬する。
【0067】
(バラ紙幣処理ユニットにおける各種処理)
以下、バラ紙幣処理ユニット100において行われる、入金処理、出金処理、及び、精査処理の各処理について、順に説明をする。
【0068】
(入金処理)
入金処理を行うときに、操作者は、バラ紙幣処理ユニット100の入金部103に入金対象のバラ紙幣を投入する。図6の黒矢印は、紙幣の搬送経路を示している。操作者が入金処理の実行を指示する操作を行うと、入金部103の繰出機構103aは、紙幣を一枚ずつ繰り出す。搬送部107は、紙幣を一枚ずつ、入金搬送路116に沿って搬送する。
【0069】
入金識別部108は、紙幣の識別を行う。スイッチバック反転部110は、入金識別部108の識別結果に基づいて、反転が必要な紙幣を選択的に反転させる。スイッチバック反転部110は、前述したように、紙幣の天地を揃える。搬送部107は、スイッチバック反転部110を通過した紙幣を、金種に対応する一時保留部113へ搬送する。損券やオーバーフロー紙幣は、混合金種の収納部112に対応する一時保留部113へ搬送される。一時保留部113は、紙幣を収納する。尚、入金識別部108がリジェクト紙幣と識別した紙幣は、搬送部107によって、入金リジェクト搬送路120を通じて、入金リジェクト部104へ搬送される。
【0070】
投入された紙幣を入金部103が全て繰り出すと共に、その計数結果に対し操作者が承認操作を行うと、一時保留部113は紙幣を収納部112へ送り、収納部112は紙幣を収納する。こうして、入金処理が終了する。収納部112内では、所定の方向の紙幣が積み重なっている。前述の通り、出金時等に紙幣の向きをA方向に揃えるのであれば、収納部112内には、A方向又はD方向の紙幣が積み重なっている。
【0071】
(出金処理)
図6の白矢印は、出金処理時の紙幣の搬送経路を示している。操作者が出金処理の実行を指示する操作を行うと、出金対象の紙幣を収納している収納部112の繰出部112aは、収納部112から紙幣を一枚ずつ繰り出す。搬送部107は、出金搬送路117に沿って、紙幣を一枚ずつ搬送する。出金識別部109は、紙幣の識別を行う。スパイラル反転部111は、反転が必要な紙幣を選択的に反転させる。これにより、スパイラル反転部111を通過した紙幣は、表裏及び天地の両方が揃っている。搬送部107はその後、紙幣を、出金搬送路117を通じて、出金部105へ搬送する。こうして、表裏及び天地の両方が揃った紙幣を、出金部105に投出することができる。尚、帯封して出金する場合、搬送部107は、紙幣を集積部114へ搬送する。出金対象の紙幣が全て出金部105へ投出されると、出金処理が終了する。尚、出金識別部109がリジェクト紙幣と識別した紙幣は、搬送部107によって、出金リジェクト部106へ搬送される。
【0072】
(精査処理)
精査処理は、収納部112に収納している紙幣を繰り出して、出金識別部109が識別をした後、当該紙幣を収納部112に再収納をする処理である。精査処理を実行することにより、バラ紙幣処理ユニット100に収納している紙幣の在高を確定することができる。
【0073】
このバラ紙幣処理ユニット100は、精査処理として第1精査処理と第2精査処理との二種類の精査処理を選択的に実行することができる。
【0074】
第1精査処理は、精査処理の最中に、スパイラル反転部111が、必要に応じて紙幣の反転を行うことにより、収納部112に収納する紙幣の天地及び表裏の両方を揃えることができる精査処理である。収納部112に収納する紙幣の天地及び表裏を、予め揃えておくことによって、出金処理等の実行時に、紙幣の反転が不要になり、処理に要する時間を短縮することができると共に、反転中にジャム等の搬送エラーが発生してしまうことを抑制することができる。
【0075】
図7の左図は、第1精査処理時の紙幣の搬送経路を例示している。同図に黒矢印で示すように、精査対象の収納部112の繰出部112aは、収納部112から紙幣を繰り出す。搬送部107は、収納部112から繰り出された紙幣を、出金搬送路117に沿って出金識別部109へ搬送する。出金識別部109は、紙幣の識別を行う。スパイラル反転部111は、反転が必要な紙幣を選択的に反転させる。つまり、反転が必要な紙幣は反転パス111a及び反転機構111cを通過し、反転が不要な紙幣はバイパス111bを通過する。スパイラル反転部111を通過した紙幣は、表裏及び天地の両方が揃っている。搬送部107はその後、紙幣を、循環搬送路118からスイッチバック反転部110へ搬送する。紙幣の表裏及び天地の両方が揃っているため、スイッチバック反転部110は紙幣を反転しない。全ての紙幣は、バイパス110bを通過する。搬送部107はその後、紙幣を繰り出した収納部112と同じ収納部112の一時保留部113へ、紙幣を搬送する。収納部112から全ての紙幣を繰り出しかつ、繰り出した全ての紙幣を収納部112へ再収納すると、第1精査処理が完了する。尚、出金識別部109がリジェクト紙幣であると識別したリジェクト紙幣は、出金リジェクト部106へ搬送される。精査処理の完了後、操作者は、出金リジェクト部106の紙幣を手で取りだす。
【0076】
第2精査処理は、第1精査処理に対して、スパイラル反転部111の反転処理を省略した精査処理である。スパイラル反転部111の反転機構111cは、紙幣の搬送幅方向の向きを反転させるために、紙幣をひねりながら搬送する。そのため、反転機構111cでは、紙幣のジャムが発生しやすい。第2精査処理において、全ての紙幣は、スパイラル反転部111のバイパス111bを通過し、反転機構111cを通過しないため、第1精査処理と比べて、搬送エラーが発生し難い。
【0077】
図7の右図は、第2精査処理時の紙幣の搬送経路を例示している。同図に黒矢印で示すように、精査対象の収納部112の繰出部112aは、収納部112から紙幣を繰り出す。搬送部107は、収納部112から繰り出された紙幣を、出金搬送路117に沿って出金識別部109へ搬送する。出金識別部109は、紙幣の識別(つまり、計数)を行う。スパイラル反転部111は、識別結果に関わらず、全ての紙幣を、バイパス111bを通過させる。第2精査処理時は、スパイラル反転部111を通過した紙幣は、表裏及び天地の両方が揃っているとは限らない。搬送部107はその後、紙幣を、循環搬送路118、及び、スイッチバック反転部110を介して、紙幣を繰り出した収納部112と同じ収納部112の一時保留部113へ紙幣を搬送する。収納部112から全ての紙幣を繰り出しかつ、繰り出した全ての紙幣を収納部112へ再収納すると、第2精査処理が完了する。尚、第二精査処理時も、出金識別部109がリジェクト紙幣であると識別したリジェクト紙幣は、出金リジェクト部106へ搬送される。
【0078】
図8は、制御部8が実行する、精査処理に関する手順を説明するフローチャートである。先ず、スタート後のステップS1で、制御部8は、精査処理を実施するか否かを判断する。精査処理は、様々な条件に従って、実施される。具体的には、(a)操作者が、第一ターミナル部41又は第二ターミナル部42を操作することにより、精査処理の実施を指示した場合、(b)操作者が、例えば管理コンピュータ62を操作することにより、精査処理の実施を遠隔で指示した場合、(c)操作者がタイマー予約を事前に設定しておき、当該タイマー予約の開始時刻に至った場合、(d)操作者が日時予約を事前に設定しておき、当該日時予約で指定された開始タイミングに至った場合、に、制御部8は、精査処理を開始する。ステップS1の判断がNOの場合、プロセスはステップS1を繰り返し、ステップS1の判断がYESの場合、プロセスはステップS2に進む。
【0079】
ステップS2において制御部8は、精査時にスパイラル反転を実施しない事前の設定があるか否かを判断する。つまり、当該バラ紙幣処理ユニット100は、第1精査処理及び第2精査処理の内、第1精査処理を実施せずに、第2精査処理のみを実施するよう設定されているか否かを、制御部8は判断する。この事前設定は、例えば貨幣処理装置1の設置時に、初期設定として設定される場合が考えられる。尚、事前設定は初期設定に限らない。事前の設定がある場合、ステップS2の判断がYESであり、プロセスはステップS7に進み、事前の設定がない場合、ステップS2の判断がNOであり、プロセスはステップS3に進む。
【0080】
ステップS3において制御部8は、精査処理として、第1精査を実施するか、第2精査を実施するかを判断する。制御部8は、様々な条件に基づいて、ステップS3の判断を行う。具体的に制御部8は、以下のような判断をする。
【0081】
(1)操作者の選択操作に従って、第1精査を実施するか、第2精査を実施するかを判断する。操作者は、精査処理の実施を指示する際に、第1精査を実施するか、第2精査を実施するかを選択する。操作者はまた、タイマー予約を設定する際、及び、日時予約を設定する際に、第1精査を実施するか、第2精査を実施するかを選択する。
【0082】
例えば図9の上図は、操作者が、第1精査処理と第2精査処理との選択を行うための画面D1を例示している。この画面D1の「通常精査」は、日中に、有人で精査処理を行う場合に対応する。「夜間精査」は、夜中に、無人で精査処理を行う場合に対応する。尚、操作者が第一ターミナル部41又は第二ターミナル部42を操作することによって、通常精査が行われる場合もあるし、操作者が第一ターミナル部41又は第二ターミナル部42を操作することによって、夜間精査が行われる場合もある。また、タイマー予約又は日時予約によって、通常精査が行われる場合もあるし、夜間精査が行われる場合もある。
【0083】
図例では、「通常精査」は「反転有り」、つまり、必要に応じてスパイラル反転を行う第1精査処理が設定され、「夜間精査」は「反転無し」、つまり、スパイラル反転を行わない第2精査処理が設定されている。制御部8は、こうした操作者が設定した事項に基づいて、第1精査を実施するか、第2精査を実施するかを判断する。
【0084】
(2)精査処理を実施する時刻に基づき、精査処理を夜中(例えば営業時間外)に行う場合、制御部8は、第2精査処理を実施すると判断し、精査処理を日中(例えば営業時間内)に行う場合、制御部8は、第1精査処理を実施すると判断する。精査処理中に搬送エラーが発生すると、制御部8は装置を停止し、操作者がエラーを解除しなければ、バラ紙幣処理ユニット100は処理を再開することができない。精査処理を夜中に行う場合、無人で精査処理を行うと予想されるため、搬送エラーが発生し難い第2精査処理を実施することにより、精査処理が滞りなく完了する可能性が高まる。一方、精査処理を日中に行う場合、有人で精査処理を行うと予想されるため、搬送エラーが発生しても、エラーを解除して処理を再開することができる。第1精査処理を実施することにより、収納部112に収納する紙幣の表裏及び天地の両方を揃えることができる。
【0085】
(3)精査処理を実施する日にちに基づき、精査処理を休業日に行う場合、制御部8は、第2精査処理を実施すると判断し、精査処理を営業日に行う場合、制御部8は、第1精査処理を実施すると判断する。前記と同様に、無人で精査処理を行うと予想される場合は、搬送エラーが発生し難い第2精査処理を実施することにより、精査処理が滞りなく完了する可能性が高まる。有人で精査処理を行うと予想される場合は、第1精査処理を実施することにより、収納部112に収納する紙幣の表裏及び天地の両方を揃えることができる。
【0086】
(4)操作者の遠隔操作により、又は、タイマー予約若しくは日時予約により、精査処理を実行する場合は、制御部8は、第2精査処理を実施すると判断し、操作者が第一ターミナル部41又は第二ターミナル部42を操作することにより、精査処理を実行する場合は、制御部8は、第1精査処理を実施すると判断する。無人で精査処理を行うと予想される場合は、搬送エラーが発生し難い第2精査処理を実施することにより、精査処理が滞りなく完了する可能性が高まる。有人で精査処理を行うと予想される場合は、第1精査処理を実施することにより、収納部112に収納する紙幣の表裏及び天地の両方を揃えることができる。
【0087】
(5)人感センサ52の検知信号に基づき、人感センサ52が人を感知していない場合は、制御部8は第2精査処理を実施すると判断し、人感センサ52が人を感知している場合は、制御部8は第1精査処理を実施すると判断する。
【0088】
続くステップS4で、ステップS3の判断に基づき、第1精査処理を実施する場合、プロセスは、ステップS4からステップS5に進み、第2精査処理を実施する場合、プロセスは、ステップS4からステップS7に進む。
【0089】
ステップS5において制御部8は、前述したように、紙幣の識別結果に応じて、反転が必要な紙幣は反転機構111cを通過させる。続くステップS6において、制御部8は精査処理が完了したか否かを判断する。NOであればプロセスはステップS5に戻り、第1精査処理を継続する。YESであればプロセスは終了する。
【0090】
一方、ステップS7において制御部8は、紙幣を、紙幣の識別結果に関わらず、バイパス111bを通過させることにより、全ての紙幣を反転させない。続くステップS8において、制御部8は精査処理が完了したか否かを判断する。NOであればプロセスはステップS7に戻り、第2精査処理を継続する。YESであればプロセスは終了する。第2精査処理時は、ジャム等による搬送エラーが発生し難いため、精査処理を滞りなく完了させることができる。
【0091】
尚、第1精査処理の実施時及び第2精査処理の実施時のいずれの時も、ジャム等による搬送エラーが発生した場合、制御部8はバラ紙幣処理ユニット100を停止する。制御部8はまた、第2精査処理の実行時であれば、例えばネットワーク61を通じて、予め設定されている通知先に、搬送エラーによりバラ紙幣処理ユニット100が停止した旨を通知する。具体的に制御部8は、管理センターに設置された端末や、担当者の携帯端末に、停止したバラ紙幣処理ユニット100の設置店舗、当該バラ紙幣処理ユニット100の号機、及び、搬送エラーが発生した部位等の情報を通知する。通知を受けた担当者は、即座に、又は、翌朝に現地に赴いて、エラーを解除し、精査処理を再開させる。制御部8は、第1搬送エラーの発生が、第1精査処理の実行時であれば、例えば第一ターミナル部41又は第二ターミナル部42を通じて、搬送エラーが発生した旨を報知する。
【0092】
図9の中図は、予約等に基づく自動精査としての第2精査処理が完了した後に、第一ターミナル部41又は第二ターミナル部42に表示される画面D2を例示している。前述したように、第2精査処理を実行した場合、収納部112に収納している紙幣の表裏又は天地は揃っていない可能性がある。操作者にその旨を通知することにより、操作者は、収納部112内の紙幣の揃え状態を把握することができる。
【0093】
図9の下図は、第一ターミナル部41又は第二ターミナル部42に表示される画面D3を例示している。この画面D3は、バラ紙幣処理ユニット100の四つの収納部112それぞれに収納されている紙幣について、表裏及び/又は天地が揃っておらず、反転が必要な紙幣の割合を示している。操作者は、当該画面D3の参考情報を見て、表裏及び/又は天地が揃っていない紙幣が多い場合は、次回の精査処理の実施時に、紙幣の表裏及び天地を揃えない第2精査処理ではなく、紙幣の表裏及び天地を揃える第1精査処理を選択するといった措置を採ることができる。
【0094】
(精査処理の別の構成例)
前述したように、無人で精査処理を実行している場合に、搬送エラーが発生してしまうと、精査処理が完了しないため、例えば翌朝の業務をスムースに開始することができない恐れがある。そのため、無人で精査処理を実行する場合は特に、搬送エラーの発生を極力抑制したい。
【0095】
バラ紙幣処理ユニット100の四つの収納部112の内、一括収納部112には、前述したように、損券が収納されると共に、搬送異常の紙幣、例えば紙幣同士の間隔が狭くなった紙幣も、一括収納部112に収納される場合がある。そのため、一括収納部112に収納されている紙幣は、他の金種別の収納部112に収納されている紙幣よりも搬送エラーが発生しやすい。
【0096】
そこで、このバラ紙幣処理ユニット100は、一括収納部112を、精査対象に含めるか、精査対象外にするかを、選択可能に構成されている。図10は、精査処理の設定画面D4を例示している。この設定画面D4は、夜間に実行する自動精査処理時の設定画面である。夜間に実行する精査処理は、主にタイマー予約又は日時予約によって実施される。
【0097】
設定画面D4は、「一括収納部対象」と「一括収納部対象外」との二つの選択肢を表示している。操作者は、「一括収納部対象」又は「一括収納部対象外」を選択する。制御部8は、操作者が設定した内容に従って、夜間に精査処理を実行する場合、一括収納部を含む全ての収納部112について精査処理を実行するか、一括収納部以外の金種別の収納部112についてのみ精査処理を実行するか、を切り替える。一括収納部を含む全ての収納部112について精査処理を実行することは、第1精査処理に対応し、一括収納部を含まない金種別の収納部112についてのみ精査処理を実行することは、第2精査処理に対応する。一括収納部を含まない金種別の収納部112についてのみ精査処理を実行すると、搬送エラーが発生し難いため、精査処理を滞りなく完了させることができる。
【0098】
夜間に実行する精査処理において、一括収納部112を対象外に設定した場合、操作者は、例えば翌朝に、一括収納部112の精査処理のみを実行すると共に、必要に応じて出金リジェクト部に集積されているリジェクト紙幣を、手で取り出す。
【0099】
尚、一括収納部112を精査対象に含める第1精査処理と、一括収納部112を精査対象に含めない第2精査処理との切り替えは、前述した、紙幣を必要に応じて反転させる第1精査処理と、紙幣を必要に応じて反転させる第2精査処理との切り替えに準じて行うことができる(前述した(1)~(5)を参照)。また、一括収納部112を精査対象に含める第1精査処理と、一括収納部112を精査対象に含めない第2精査処理との切り替えは、紙幣を必要に応じて反転させる第1精査処理と、紙幣を必要に応じて反転させる第2精査処理との切り替えと組み合わせて実行することが可能である。
【0100】
(手装填後の精査処理)
バラ紙幣処理ユニット100が、前述した入金処理、出金処理及び精査処理等の各種の処理を実行している最中に搬送エラーが発生すると、操作者が、エラーの原因となった紙幣を装置内から手で取り出すと共に、取り出した紙幣を収納部112へ手で装填する場合がある。このときに、操作者は、紙幣の表裏及び天地が揃うように、収納部112へ装填するとは限らない。スイッチバック反転部110を通過した後で収納部112に収納された紙幣は、図5に示すように、A方向又はD方向であるため、A方向又はD方向となるように収納部112へ手で装填をすれば、出金処理時等には、スパイラル反転部111が紙幣の反転を行うことにより、全ての紙幣をA方向に揃えることが可能である。しかしながら、B方向又はC方向となるように収納部112へ手で装填してしまうと、出金処理時等に、スパイラル反転部111が紙幣の反転を行っても、全ての紙幣をA方向に揃えることができない。
【0101】
そこで、収納部112へ紙幣が手で装填された場合に、バラ紙幣処理ユニット100は、収納部112に収納する紙幣の方向を揃えることを兼ねて、精査処理を行うよう構成されている。
【0102】
図11の上図は、収納部112へ紙幣が手で装填された後、第一ターミナル部41又は第二ターミナル部42に表示される案内画面D5を例示している。案内画面D5は、操作者が精査処理を実行するか否かを選択するボタンを表示している。操作者が「実行する」を選択すると、精査処理が実行される。操作者が「スキップ」を選択すると、精査処理が実行されない。精査処理の実行には時間がかかり、精査処理の実行中は他の処理を実行することができない。精査処理の実行をスキップする選択肢を設けることによって、操作者の利便性を向上させることができる。尚、案内画面D5を表示せずに、制御部8は、精査処理を自動的に実施してもよい。
【0103】
図11の下図は、精査処理の実行が選択されて、精査処理を実行している最中の画面D6を例示している。操作者は、必要に応じて画面D6のボタンを選択することにより、実行中の精査処理を中断することができる。
【0104】
この時の精査処理は、図7の左図に準じて行われる。前述したように、スパイラル反転部111は、出金識別部109の識別結果に応じて、反転が必要な紙幣は反転機構111cを通過させ、反転が不要な紙幣はバイパス111bを通過させる。また、搬送部107は、その後、紙幣をスイッチバック反転部110へ搬送するが、スイッチバック反転部110は、前記とは異なり、反転が必要な紙幣は反転パス110aを通過させ、反転が不要な紙幣はバイパス110bを通過させる。こうすることで、収納部112に収納する紙幣の表裏及び天地の両方を揃えることができる。
【0105】
図12は、前記の精査処理をスキップすることによって、収納部112に集積している紙幣の向きが揃っていない状態で、出金処理を行う場合の、紙幣の搬送経路を例示している。同図に白矢印で示すように、収納部112の繰出部112aが繰り出した紙幣は、出金識別部109の識別結果に応じて、A方向、B方向及びC方向の紙幣は、バイパス111bを通過させる一方、D方向の紙幣は、反転機構111cを通過させることにより、A方向に反転させる。そして、搬送部107は、A方向の紙幣を、出金搬送路117を通じて出金口101、又は、集積部114へ搬送し、B方向及びC方向の紙幣を、黒矢印で示すように、循環搬送路118を通じてスイッチバック反転部110へ搬送する。スイッチバック反転部110は、B方向及びC方向の紙幣を共に反転させることによって、D方向及びA方向にし、収納部112へ収納する。こうして、表裏及び天地の揃った紙幣を出金部105、又は、帯封紙幣処理ユニット200へ搬送することができると共に、収納部112に収納している紙幣を、A方向又はD方向にすることができる。つまり、次回以降の出金処理時に、収納部112から繰り出した紙幣は、スパイラル反転部111を通過すれば、全てA方向に揃えることができる。
【0106】
尚、出金処理のうち、金融機関の店舗内において利用する紙幣を出金するための、いわゆる回金出金処理においては、紙幣の向きを揃える必要性に乏しいため、全ての紙幣をスパイラル反転部111のバイパス111bを通過させた上で、出金部105、又は、集積部114へ搬送してもよい。こうすることで、回金出金時の所要時間を短縮することができる。
【0107】
(スパイラル反転部のエラー解除構成)
前述したように、スパイラル反転部111は、紙幣のジャムが発生しやすい。そこで、紙幣のジャムが発生した場合でも、操作者が紙幣を取り出しやすいように、スパイラル反転部111は構成されている。
【0108】
図13は、バラ紙幣処理ユニット100の構成を概略的に描いている。バラ紙幣処理ユニット100は、筐体1001と、筐体1001内に収納されているユニット1002とを備えている。ユニット1002は、詳細な図示は省略するが、前述したスイッチバック反転部110、収納部112、出金識別部109を含んでいると共に、スパイラル反転部111を有している。
【0109】
ユニット1002は、筐体1001の前から前方に引き出すことが可能に構成されている。搬送エラーが発生した場合、操作者は、ユニット1002を筐体1001から引き出す。
【0110】
スパイラル反転部111は、上下方向に長い縦長の形状を有している。スパイラル反転部111は、ユニット1002の後部において、ユニット1002に対し、軸1003を中心に回転可能に取り付けられている。軸1003は、スパイラル反転部111の上下方向の中間に位置している。縦長のスパイラル反転部111は、軸1003を中心に90°回転させることにより、図13に一点鎖線で示すように、横向きに倒すことができる。横向きに倒したスパイラル反転部111の一部は、ユニット1002を引き出すことによって空になった筐体1001内に位置している。スパイラル反転部111は、引き出したユニット1002の後部に位置していて、そのままでは、装置の前側に位置する操作者からは見にくいものの、横向きに倒すことによって、操作者は、スパイラル反転部111を見やすくなる。
【0111】
図14は、スパイラル反転部111を概略的に示す斜視図である。スパイラル反転部11の前面下部には、紙幣の入口111dが形成されている。入口111dから中に入った紙幣は、反転パス111a又はバイパス111bに分岐される。スパイラル反転部111の上面には、紙幣の出口111eが形成されている。反転パス111a又はバイパス111bを通過した紙幣は、出口111eから出てくる。
【0112】
図15に概略的に示すように、スパイラル反転部111を横向きに倒した状態で、スパイラル反転部111の上部に位置する第1部材111fを上に跳ね上げると、バイパス111bを開放することができる。図13に白抜きの矢印で示すように、第1部材111fを上に跳ね上げたときに、操作者は、バラ紙幣処理ユニット100の前方から、開放されたバイパス111bに手を入れやすい。操作者は、バイパス111bに詰まった紙幣を、容易に取り出すことができる。
【0113】
また、図16に概略的に示すように、スパイラル反転部111を横向きに倒した状態で、第1部材111fと共に、第二部材111gを上に跳ね上げると、反転機構111cを含む反転パス111aを開放することができる。前記と同様に、操作者は、バラ紙幣処理ユニット100の前方から、開放された反転パス111a及び反転機構111cに手を入れやすい。操作者は、反転パス111a又は反転機構111cに詰まった紙幣を、容易に取り出すことができる。
【0114】
また、スパイラル反転部111を横向きに倒して、反転パス111a及び反転機構111c、又は、バイパス111bを上向きに開放するため、詰まっていた紙幣が、筐体1001の内部等へ落下してしまうことを防止することができる。操作者は、詰まっていた紙幣を容易に取り出すことができる。
【0115】
(紙幣処理装置の他の構成例)
図17は、紙幣処理装置の他の構成例を示している。図17の紙幣処理装置1000において、図3のバラ紙幣処理ユニット100と同じ構成要素には、同じ符号を付している。紙幣処理装置1000では、入金部103と識別部108との間に、スイッチバック反転部110が配設されている。紙幣処理装置1000ではまた、識別部108と収納部112との間に、スパイラル反転部111が配設されている。入金処理時に、収納部112に収納される紙幣は、識別部108の識別結果に応じて、スパイラル反転部111によって、A方向又はC方向に揃えられる。
【0116】
出金処理時に、収納部112から繰り出されたA方向又はC方向の紙幣のうち、A方向の紙幣は、スイッチバック反転部110のバイパス110bを通過し、C方向の紙幣は、反転パス110aを通過することによって、A方向に反転される。こうして、紙幣処理装置1000は、表裏及び天地が揃った紙幣を出金部105へ出金することができる。
【0117】
第1精査処理時に、スパイラル反転部111は、収納部112から繰り出した紙幣を全て、バイパス111bを通過させると共に、スイッチバック反転部110は、反転が必要な紙幣は反転パス110aを通過させ、反転が不要な紙幣はバイパス110bを通過させる。スイッチバック反転部110を通過した紙幣は、カセット1110に収納される。収納部112から全ての紙幣が繰り出されかつ、全ての紙幣がカセット1110に収納されれば、カセット1110に収納した紙幣を繰り出して、元の収納部112に再収納する。尚、前記とは逆に、収納部112からカセット1110への搬送途中で、紙幣の反転を行わずに、カセット1110から収納部112への搬送途中で、スイッチバック反転部110が紙幣の反転を行ってもよい。
【0118】
第2精査処理時に、収納部112から繰り出した紙幣は全て、スパイラル反転部111のバイパス111bを通過すると共に、全ての紙幣は、スイッチバック反転部110のバイパス110bを通過する。スイッチバック反転部110を通過した紙幣は、カセット1110に収納され、全ての紙幣がカセット1110に収納されれば、カセット1110に収納した紙幣を繰り出して、元の収納部112に再収納する。
【0119】
この構成の紙幣処理装置1000も、第1精査処理及び第2精査処理を選択的に実行することにより、精査処理時の搬送エラーの発生を抑制することができる。
【0120】
また、紙幣処理装置1000において、第1精査処理時には、一括収納部112を含む全ての収納部112を精査対象とし、第2精査処理時には、一括収納部112を精査対象から外してもよい。
【0121】
(他の実施形態)
尚、前記の説明では、第1精査処理及び第2精査処理のそれぞれにおいて、繰り出した収納部と同じ収納部に紙幣を再収納していたが、繰り出した収納部とは別の収納部に、紙幣を収納してもよい。つまり、図3に示すバラ紙幣処理ユニット100では、繰り出した収納部112とは別の収納部112の一時保留部113に、紙幣を収納し、別の収納部112に収納している紙幣を繰り出した後、一時保留部113に収納していた紙幣を、当該収納部112に収納すればよい。
【0122】
また、図17に示す紙幣処理装置1000では、第1収納部112から繰り出した紙幣をカセット1110に収納した後、次の第2収納部112から繰り出した紙幣を、第1収納部112に収納し、さらに第3収納部112から繰り出した紙幣を、第2収納部112に収納した後、カセット1110に収納していた紙幣を、第3収納部112に再収納すればよい。
【0123】
尚、紙幣処理装置としてのバラ紙幣処理ユニット100は、前述した構成に限らない。例えばバラ紙幣処理ユニット100のスイッチバック反転部110と、スパイラル反転部111との配設位置を入れ替えてもよい。この場合、第1精査処理時に制御部8は、出金識別部109の識別結果に応じて、反転が必要な紙幣は、反転パス110aを通過させ、反転が不要な紙幣は、バイパス110bを通過させる一方、第2精査処理に制御部8は、出金識別部109の識別結果に関わらず、全ての紙幣を、バイパス110bを通過させればよい。
【0124】
紙幣処理装置1000においても、スイッチバック反転部110と、スパイラル反転部111との配設位置を入れ替えてもよい。
【0125】
また、第2精査処理時に、制御部8は、全ての紙幣を、バイパス111bを通過させる一方で、表裏及び天地を揃えるために反転が必要な紙幣を、元の収納部112ではなく、出金リジェクト部106に搬送してもよい。この場合、第2精査処理の終了後、操作者は、出金リジェクト部106に集積している紙幣を手で取り出し、向きを揃えて収納部112に再収納することができる。尚、反転が必要な紙幣の枚数が少ない場合に限って、当該紙幣を出金リジェクト部106に搬送してもよい。
【0126】
尚、バラ紙幣処理ユニット100、及び、紙幣処理装置1000における二種類の反転部は、スイッチバック方式の反転部及びスパイラル方式の反転部の組み合わせに限定されない。紙幣の表裏及び天地の両方を揃えることができる組み合わせであれば、二種類の反転部は、様々な方式の反転部を組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0127】
100 バラ紙幣処理ユニット(紙幣処理装置)
1000 紙幣処理装置
110 スイッチバック反転部(反転部)
110a 反転パス(反転機構)
110b バイパス
111 スパイラル反転部(反転部)
111b バイパス
111c 反転機構
112 収納部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17