(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-24
(45)【発行日】2023-04-03
(54)【発明の名称】センサ
(51)【国際特許分類】
G01R 15/16 20060101AFI20230327BHJP
【FI】
G01R15/16
(21)【出願番号】P 2019103740
(22)【出願日】2019-06-03
【審査請求日】2022-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104787
【氏名又は名称】酒井 伸司
(72)【発明者】
【氏名】笠井 真
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-204963(JP,A)
【文献】特開2000-292452(JP,A)
【文献】特開2002-303638(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/16
G01R 15/06
G01R 1/06
G01R 1/20
G01R 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状に形成された電極保持部と、
前記電極保持部に挿入された状態で当該電極保持部によって保持されると共に被覆電線の導線に対して当該被覆電線の絶縁被覆を介して近接させられて当該導線と容量結合させられる電極と、
前記電極を保持した状態の前記電極保持部を挿入可能な筒状に形成されると共に周壁の一部が切り欠かれた切欠きに前記被覆電線を挿入可能に構成された電線挿入部とを備え、
前記電線挿入部に対する前記電極保持部の相対的な移動によって当該電線挿入部および当該電極保持部の筒長方向に沿って当該電線挿入部に対して当該電極保持部が相対的に移動させられて、当該電線挿入部に挿入された前記被覆電線に対して当該電極保持部によって保持された前記電極を接近させる接近方向、および当該被覆電線から当該電極を離間させる離間方向に当該電極を移動可能に構成されると共に、前記導線に対して容量結合させられた前記電極を介して前記被覆電線についての被検出量を当該導線に対して非接触の状態で検出可能に構成されたセンサであって、
前記電極保持部および前記電線挿入部の間に配設されて当該電極保持部に対する前記筒長方向への相対的な移動が可能な状態で当該電線挿入部に固定されると共に、当該電極保持部に対して当該電線挿入部が予め規定された位置まで前記離間方向へ相対的に移動させられたときに当該電極保持部の周面に設けられている移動規制用凸部に当接して当該電極保持部に対する当該電線挿入部の当該離間方向への相対的な移動を規制する移動規制用部材を備えているセンサ。
【請求項2】
前記移動規制用部材は、環状に形成されると共に前記電線挿入部内に圧入されて当該電線挿入部に固定されている請求項1記載のセンサ。
【請求項3】
前記電極保持部は、前記移動規制用凸部が1つだけ設けられ、
前記移動規制用部材は、C字状に形成されると共に、当該移動規制用部材の周方向における一端部と他端部との間の隙間における当該周方向の長さが、前記電線挿入部に圧入されていない状態において前記電極保持部の周方向に沿った前記移動規制用凸部の長さ以上となり、かつ当該電線挿入部に圧入された状態において当該電極保持部の周方向に沿った当該移動規制用凸部の長さを下回るように弾性変形可能に構成されている請求項2記載のセンサ。
【請求項4】
前記電線挿入部は、前記筒長方向の一端部が前記電極保持部および前記移動規制用部材を挿入可能に開口され、かつ当該筒長方向の他端部が閉塞されると共に、当該電線挿入部の内面において前記電極保持部によって保持された前記電極の先端面と対向させられる対向面が当該電線挿入部の筒径方向において前記切欠きにおける前記他端部の側の内縁部の一部と一直線状に連続するように形成された電線接触部が設けられている請求項1から3のいずれかに記載のセンサ。
【請求項5】
前記電線挿入部は、前記切欠きにおける前記他端部の側の当該電線挿入部の周方向に沿った開口幅が前記一端部から前記他端部に向かうほど狭くなるように当該切欠きにおける当該他端部の側が円弧状に形成されると共に、当該切欠きの前記内縁部における前記他端部の側の頂部に前記電線接触部が設けられている請求項4記載のセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆電線についての被検出量を被覆電線の導線に非接触の状態で検出可能なセンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のセンサとして、出願人は、被覆電線に供給されている電圧を被覆電線の芯線(導線)に対して非接触の状態で検出可能な電圧センサを下記の先行出願において開示している。
【0003】
この電圧センサは、電圧の検出時に被覆電線の絶縁被覆を介して芯線と容量結合させられる電極を有する電極部と、電極部を挿入可能な円筒状に形成されて電極部と一体化されたねじ部(以下、電極部における電極以外の構成要素およびねじ部で構成された要素を「電極保持部」ともいう)と、電極保持部を嵌入可能な円筒状に形成されると共に被覆電線を挿入可能な挿入部(以下、「切欠き」ともいう)が設けられた支持部(以下、「電線挿入部」ともいう)と、電極保持部に対する電線挿入部の相対的な回動を規制するロックナットとを備えている。この場合、この電圧センサでは、電極保持部の外周面に雄ネジが形成されると共に、電線挿入部の内周面に電極保持部の雄ネジを螺合可能な雌ネジが形成されている。
【0004】
この電圧センサを使用した電圧の検出に際しては、被覆電線に電圧センサを装着する。具体的には、電線挿入部の切欠きに被覆電線を挿入した後に、雄ネジにロックナットを螺合させた電極保持部を電線挿入部の基端部側から電線挿入部内にねじ込む。この際には、電線挿入部に対する電極保持部の回動(ねじ込み)に伴い、電極保持部によって保持されている電極が電極保持部と共に電線挿入部の先端部側に向けて移動させられる。これにより、電線挿入部(切欠き)に挿入されている被覆電線の絶縁被覆に電極の先端面が当接させられる。また、雌ネジに対して雄ネジがさらにねじ込まれて電極保持部が電線挿入部の先端部側に向かってさらに移動させられたときには、被覆電線(絶縁被覆)に対して電極の先端面が押し付けられる。これにより、電線挿入部における切欠きの縁部と電極の先端面との間に被覆電線が挟み込まれた状態となる。
【0005】
次いで、電極保持部(雄ネジ)に対してロックナットを回動させて電線挿入部の基端部にロックナットを押し付けることにより、電線挿入部に対する電極保持部の相対的な回動(緩み)を規制する。以上により、被覆電線への電圧センサの装着が完了する。続いて、電圧センサの基端部に配設されているコネクタに接続ケーブルを接続することによって電圧センサを測定装置に接続する。この後、測定装置の操作部を操作して測定処理を実行させることにより、電圧センサを介して被覆電線の電圧が検出されて電圧値が測定される。
【0006】
一方、電圧の検出が完了したときには、被覆電線から電圧センサを取り外す。具体的には、まず、電圧センサから接続ケーブルを取り外す。次いで、電極保持部(雄ネジ)に対して装着時とは逆向きにロックナットを回動させて電線挿入部の基端部からロックナットを離間させることにより、電線挿入部に対する電極保持部の回動規制を解除する。続いて、電線挿入部に対して装着時とは逆向きに電極保持部を回動させる。この際には、電線挿入部に対する電極保持部の回動に伴い、電極保持部によって保持されている電極が電極保持部と共に電線挿入部の基端部側に向けて移動させられ、電線挿入部に挿入させられている被覆電線から電極の先端面が離間した状態となる。この後、電線挿入部の切欠きから被覆電線を離脱させることにより、取外し作業が完了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2018-204963号公報(第7-16頁、第1-14図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、出願人が開示している電圧センサには、以下のような改善すべき課題が存在する。具体的には、出願人が開示している電圧センサでは、電線挿入部に対して電極保持部をねじ込むことによって被覆電線に対して電極を押し付けると共に、電線挿入部に対して電極保持部を逆向きに回動させることによって被覆電線から電極を離間させる構成が採用されている。この場合、この電圧センサでは、電線挿入部に設けられた雌ネジと電極保持部に設けられた雄ネジとの螺合によって電線挿入部と電極保持部とが一体化した状態が維持される構成が採用されている。
【0009】
したがって、この電圧センサでは、電線挿入部に対して電極保持部をねじ込んだ時とは逆向きに回動させて電線挿入部の雌ネジに対する電極保持部の雄ネジの螺合を解除することで電線挿入部と電極保持部とが分離した状態となる。この場合、電線挿入部に対して電極保持部をどの程度回動させたときに雌ネジに対する雄ネジの螺合が解除されるかを正確に把握するのは困難となっている。したがって、例えば被覆電線に対する着脱作業時に電線挿入部に対して電極保持部を回動させ過ぎて電線挿入部と電極保持部とが作業者の意に反して分離したときに、電線挿入部、または電極保持部を落下させてしまうおそれがある。このため、この点を改善するのが好ましい。
【0010】
本発明は、かかる改善すべき課題に鑑みてなされたものであり、電極保持部および電線挿入部の意図しない分離を回避し得るセンサを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成すべく請求項1記載のセンサは、筒状に形成された電極保持部と、前記電極保持部に挿入された状態で当該電極保持部によって保持されると共に被覆電線の導線に対して当該被覆電線の絶縁被覆を介して近接させられて当該導線と容量結合させられる電極と、前記電極を保持した状態の前記電極保持部を挿入可能な筒状に形成されると共に周壁の一部が切り欠かれた切欠きに前記被覆電線を挿入可能に構成された電線挿入部とを備え、前記電線挿入部に対する前記電極保持部の相対的な移動によって当該電線挿入部および当該電極保持部の筒長方向に沿って当該電線挿入部に対して当該電極保持部が相対的に移動させられて、当該電線挿入部に挿入された前記被覆電線に対して当該電極保持部によって保持された前記電極を接近させる接近方向、および当該被覆電線から当該電極を離間させる離間方向に当該電極を移動可能に構成されると共に、前記導線に対して容量結合させられた前記電極を介して前記被覆電線についての被検出量を当該導線に対して非接触の状態で検出可能に構成されたセンサであって、前記電極保持部および前記電線挿入部の間に配設されて当該電極保持部に対する前記筒長方向への相対的な移動が可能な状態で当該電線挿入部に固定されると共に、当該電極保持部に対して当該電線挿入部が予め規定された位置まで前記離間方向へ相対的に移動させられたときに当該電極保持部の周面に設けられている移動規制用凸部に当接して当該電極保持部に対する当該電線挿入部の当該離間方向への相対的な移動を規制する移動規制用部材を備えている。
【0012】
請求項2記載のセンサは、請求項1記載のセンサにおいて、前記移動規制用部材は、環状に形成されると共に前記電線挿入部内に圧入されて当該電線挿入部に固定されている。
【0013】
請求項3記載のセンサは、請求項2記載のセンサにおいて、前記電極保持部は、前記移動規制用凸部が1つだけ設けられ、前記移動規制用部材は、C字状に形成されると共に、当該移動規制用部材の周方向における一端部と他端部との間の隙間における当該周方向の長さが、前記電線挿入部に圧入されていない状態において前記電極保持部の周方向に沿った前記移動規制用凸部の長さ以上となり、かつ当該電線挿入部に圧入された状態において当該電極保持部の周方向に沿った当該移動規制用凸部の長さを下回るように弾性変形可能に構成されている。
【0014】
請求項4記載のセンサは、請求項1から3のいずれかに記載のセンサにおいて、前記電線挿入部は、前記筒長方向の一端部が前記電極保持部および前記移動規制用部材を挿入可能に開口され、かつ当該筒長方向の他端部が閉塞されると共に、当該電線挿入部の内面において前記電極保持部によって保持された前記電極の先端面と対向させられる対向面が当該電線挿入部の筒径方向において前記切欠きにおける前記他端部の側の内縁部の一部と一直線状に連続するように形成された電線接触部が設けられている。
【0015】
請求項5記載のセンサは、請求項4記載のセンサにおいて、前記電線挿入部は、前記切欠きにおける前記他端部の側の当該電線挿入部の周方向に沿った開口幅が前記一端部から前記他端部に向かうほど狭くなるように当該切欠きにおける当該他端部の側が円弧状に形成されると共に、当該切欠きの前記内縁部における前記他端部の側の頂部に前記電線接触部が設けられている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載のセンサでは、電極保持部および電線挿入部の間に配設されて電極保持部に対する筒長方向への相対的な移動が可能な状態で電線挿入部に固定されると共に、電極保持部に対して電線挿入部が予め規定された位置まで離間方向へ相対的に移動させられたときに電極保持部の周面に設けられている移動規制用凸部に当接して電極保持部に対する電線挿入部の離間方向への相対的な移動を規制する移動規制用部材を備えている。
【0017】
したがって、請求項1記載のセンサによれば、電線挿入部に固定されている移動規制用部材に移動規制用凸部が当接したときに、電極保持部に対する電線挿入部のさらなる移動が規制されるため、電線挿入部に電極保持部が挿入された状態を維持させて、電極保持部および電線挿入部の意図しない分離を好適に回避することができる。これにより、電極保持部および電線挿入部の分離に起因するいずれかの落下を確実に回避することができる。
【0018】
請求項2記載のセンサによれば、移動規制用部材を環状に形成すると共に電線挿入部内に圧入して電線挿入部に固定したことにより、接着やネジ止めなどの固定方法で固定する構成とは異なり、電線挿入部に対して移動規制用部材を容易に固定することができるため、その製造コストを十分に低減することができる。
【0019】
請求項3記載のセンサでは、電極保持部が、移動規制用凸部が1つだけ設けられ、移動規制用部材が、C字状に形成されると共に、移動規制用部材の周方向における一端部と他端部との間の隙間における周方向の長さが、電線挿入部に圧入されていない状態において電極保持部の周方向に沿った移動規制用凸部の長さ以上となり、かつ電線挿入部に圧入された状態において電極保持部の周方向に沿った移動規制用凸部の長さを下回るように弾性変形可能に構成されている。
【0020】
したがって、請求項3記載のセンサによれば、組立てに際して、移動規制用部材の周方向における一端部および他端部の間の隙間を移動規制用凸部が通過するように電極保持部に対して移動規制用部材を相対的に移動させて移動規制用部材を電極保持部における移動規制用凸部よりも基端部側に位置させ、その後に、移動規制用凸部に対して電極保持部の筒長方向に移動規制用部材の隙間が存在しない状態となるように移動規制用部材を回動させた状態で、電線挿入部に電極保持部を挿入して移動規制用部材を電線挿入部内に固定することで、移動規制用部材を確実かつ容易に電線挿入部内に固定することができると共に、電極保持部に対して電線挿入部を離間方向へ相対的に移動させた際に移動規制用凸部を移動規制用部材に対して確実に当接させて電極保持部および電線挿入部の意図しない分離を確実に回避することができる。
【0021】
請求項4記載のセンサでは、電線挿入部が、筒長方向の一端部が電極保持部および移動規制用部材を挿入可能に開口され、かつ筒長方向の他端部が閉塞されると共に、電線挿入部の内面において電極保持部によって保持された電極の先端面と対向させられる対向面が電線挿入部の筒径方向において切欠きにおける他端部の側の内縁部の一部と一直線状に連続するように形成されて電線接触部が設けられている。
【0022】
したがって、請求項4記載のセンサによれば、電線挿入部における切欠きの内縁部および対向面と、電極における先端部の先端面との間に挟み込まれた被覆電線において、弾性復帰が困難な程度に絶縁被覆が変形したり、断線(導線の接断)が生じたりする事態を招くことなく、電線挿入部と電極との間に被覆電線が挟み込まれた状態とすることができるため、被覆電線を傷付けることなく確実に保持する(被覆電線に対してセンサを確実に装着する)ことができる。
【0023】
請求項5記載のセンサによれば、切欠きにおける他端部の側の電線挿入部の周方向に沿った開口幅が一端部から他端部に向かうほど狭くなるように切欠きにおける他端部の側を円弧状に形成すると共に、切欠きの内縁部における他端部の側の頂部に電線接触部を設けて電線挿入部を構成したことにより、切欠き内に挿入した被覆電線を確実に電線接触部に対して接触させた状態とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図6】電線挿入部4における先端部側の外観斜視図である。
【
図7】電線挿入部4の切欠き32a内に被覆電線Xを挿入した状態の電圧センサ1の断面図である。
【
図8】
図7に示す状態から電線挿入部4に対して電極保持部3を矢印B1の向きに移動させた状態の断面図である。
【
図9】被覆電線Xに対して電極2が押し付けられ、かつ係合部E3,E4が係合させられた状態について説明するための断面図である。
【
図10】
図9に示す状態から電線挿入部4に対して電極保持部3の筒状部13を矢印B1の向きにさらに移動させた状態の断面図である。
【
図11】筒状部13に対して操作用ノブ21を矢印B2の向きに移動させた状態の断面図である。
【
図12】他の実施の形態に係る電圧センサ1Aの断面図である。
【
図13】他の実施の形態に係る電圧センサ1Aの電極保持部3A(電極2)、電線挿入部4Aおよびストッパ5を分離させた状態の断面図である。
【
図14】他の実施の形態に係る電圧センサ1Aの他の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、センサの実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0026】
図1,2に示す電圧センサ1は、「センサ」の一例であって、導線(芯線)が絶縁被覆で覆われて絶縁された被覆電線X(「被覆電線」の一例:
図7参照)に供給されている電圧(「被覆電線についての被検出量」の一例)を被覆電線Xの導線に対して非接触の状態で検出可能に構成されている。この電圧センサ1は、
図1~4に示すように、電極2、電極保持部3、電線挿入部4およびストッパ5を備え、検出対象の被覆電線Xに装着可能に(被覆電線Xを挿入可能に)構成されると共に、図示しない測定装置に信号ケーブル6を介して接続可能に構成されている。
【0027】
電極2は、「電極」の一例であって、
図7に示すように、導電性を有する金属材料で柱状(本例では円柱状)に形成され、後述するように電線挿入部4に挿入された被覆電線Xに先端部2a(先端面S2:
図5参照)が押し付けられた状態で、被覆電線Xの絶縁被覆を介して被覆電線Xの導線と容量結合させられる。この電極2は、
図5に示すように、電極保持部3における後述の保持部本体11から先端部2a(先端面S2)が露出するように保持部本体11に挿通させられて保持部本体11と一体化されると共に、
図7に示すように、保持部本体11内において信号ケーブル6が基端部2bに接続されている。
【0028】
電極保持部3は、「電極保持部」の一例であって、全体として筒状(本例では、円筒状)に形成されている。この電極保持部3は、
図3~5,7に示すように、保持部本体11、絶縁体12a,12b(
図7参照)、筒状部13、コイルスプリング14、操作用ノブ21およびコイルスプリング22を備えている。保持部本体11は、一例として、導電性を有する金属材料で電極2を挿通可能な筒状(円筒状)に形成されている。この保持部本体11には、後述するようにコイルスプリング14の一端部が当接させられる凸部11aが長手方向の中央部に形成されると共に、保持部本体11に対する筒状部13の移動を制限するためのストッパ15(スナップリング)を嵌入可能な溝部11b(
図7等参照)が長手方向の後端部に形成されている。
【0029】
また、保持部本体11には、後述するように電線挿入部4に設けられたスリット32c(
図3,5,7等参照)への係合が可能な凸部11cが設けられている。これにより、本例の保持部本体11は、電線挿入部4に対する筒長方向への相対的な移動が許容された状態で電線挿入部4に対する相対的な回動が規制される。また、本例の電圧センサ1(保持部本体11)では、上記の凸部11cが「移動規制用凸部」として機能し、後述するように電線挿入部4に固定されたストッパ5に当接させられることで電線挿入部4に対する保持部本体11(電極保持部3)の移動が規制される構成が採用されている。この場合、本例の電極保持部3(保持部本体11)では、「移動規制用凸部」としての機能を有する凸部11cが1つだけ設けられている。また、
図1~4,7に示すように、保持部本体11の後端部には、信号ケーブル6の屈曲を防止するためのブッシュ6aが取り付けられている。
【0030】
絶縁体12a,12bは、電極2および保持部本体11を相互に絶縁しつつ保持部本体11に対して電極2を保持可能に筒状(円筒状)に形成されている。この場合、本例の電圧センサ1では、
図7に示すように、絶縁体12a,12bによって保持部本体11内に電極2を保持することで、電極2、保持部本体11および絶縁体12a,12bが一体化された状態となっている。
【0031】
筒状部13は、
図3,4に示すように、保持部本体11を挿通可能な筒状(円筒状)に形成されると共に、
図7に示すように、保持部本体11に対する筒長方向への相対的な移動、および保持部本体11に対する相対的な回動が許容された状態で保持部本体11に装着されている。この筒状部13には、
図3,4,7に示すように、電線挿入部4の内周面に形成されている後述の雌ネジ32bに螺合可能な雄ネジ13aが外周面に形成されると共に、
図3,4に示すように、後述のコイルスプリング22の一端部が当接させられるストッパ23(スナップリング)を嵌入可能な溝部13bが形成されている。
【0032】
これにより、本例の電圧センサ1では、後述するように、電線挿入部4に対する筒状部13の相対的な回動によって電線挿入部4および電極保持部3(保持部本体11および筒状部13等)の筒長方向に沿って筒状部13が相対的に移動させられて、筒状部13と共に保持部本体11および電極2が電線挿入部4に対して移動させられ、電線挿入部4に挿入された被覆電線Xに対して電極2を接近させる接近方向、および被覆電線Xから電極2を離間させる離間方向に電極2を移動させることが可能となっている。
【0033】
また、本例の電圧センサ1における筒状部13は、
図7等に示すように、上記の雄ネジ13aが形成されている部位の外径が電線挿入部4において雌ネジ32bが形成されている部位の内径と同程度となるように(雌ネジ32bに対して雄ネジ13aを螺合可能となるように)形成されると共に、その他の部位の外径が雄ネジ13aの形成部位の外径よりも小径となるように形成されている。これにより、本例の筒状部13では、外周面における雄ネジ13aの形成部位とその他の部位との間に段部が生じており、後述するように、この外周面の段部に操作用ノブ21の凸部21aが当接して筒状部13に対する操作用ノブ21の筒長方向に沿った移動が制限される。
【0034】
さらに、
図3,4に示すように、筒状部13の外周面における上記の雄ネジ13aの形成部位以外の部位には、この筒状部13に対する操作用ノブ21の相対的な回動を規制可能に平面部13c,13cが設けられている。また、本例の筒状部13では、
図7に示すように、上記の雄ネジ13aの形成部位以外の部位の内径が保持部本体11の外径と同程度(僅かに大径)となるように形成されると共に、雄ネジ13aの形成部位の内径が保持部本体11の外径よりも大径でコイルスプリング14を挿入可能な内径となるように形成されている。これにより、本例の筒状部13では、内周面における雄ネジ13aの形成部位とその他の部位との間にも段部が生じており、後述するように、この内周面の段部にコイルスプリング14の一端部が当接させられる。
【0035】
コイルスプリング14は、
図7に示すように、一端部が保持部本体11の凸部11aに当接すると共に他端部が保持部本体11に装着された筒状部13における内周面の段部に当接するように保持部本体11と筒状部13との間に配設され、その弾性復元力(伸長方向への付勢力)によって筒状部13に対して保持部本体11を矢印B1の向きに付勢する。
【0036】
操作用ノブ21は、
図3,4に示すように、筒状部13を挿通可能な筒状(円筒状)に形成されると共に、筒状部13に対する筒長方向への相対的な移動が許容され、かつ筒状部13に対する相対的な回動が規制された状態で筒状部13に装着されている。この操作用ノブ21は、後述するように被覆電線Xに対して電圧センサ1を装着するとき、および被覆電線Xから電圧センサ1を取り外すときには、電線挿入部4や保持部本体11に対して筒状部13を相対的に回動させるための操作用部材として機能すると共に、被覆電線Xに対して電圧センサ1を装着した状態においては、電線挿入部4や保持部本体11に対して筒状部13が相対的に回動するのを規制するための回動規制部材として機能する。
【0037】
具体的には、
図3,4,7に示すように、操作用ノブ21は、筒状部13における外周面の段部に当接可能な内径の凸部21aが内周面に形成されると共に、この凸部21aの形成部位における内側形状(開口形状)が、筒状部13における雄ネジ13aの形成部位以外の部位の外形と同形の非正円形に形成されて、これにより、筒状部13に対する相対的な回動が規制されている。また、
図3,7に示すように、操作用ノブ21において電線挿入部4に当接させられる当接部F3(先端部側の端面)には、後述するように電線挿入部4において操作用ノブ21に当接させられる当接部F4(後端部側の端面)に設けられた係合部E4に係合可能な係合部E3が設けられている。
【0038】
コイルスプリング22は、
図7に示すように、一端部が筒状部13に装着された操作用ノブ21の凸部21aに当接すると共に他端部が筒状部13の溝部13bに嵌入されたストッパ23に当接するように筒状部13と操作用ノブ21との間に配設され、その弾性復元力(伸長方向への付勢力)によって筒状部13に対して操作用ノブ21を矢印B1の向きに付勢する。
【0039】
電線挿入部4は、「電線挿入部」の一例であって、
図3,4,7に示すように、一例として、ステンレス鋼で筒状(本例では円筒状)に形成されている。この電線挿入部4は、「周壁」を構成する筒状部31の基端部が開口されて(「筒長方向の一端部が開口され」との構成の一例)電極保持部3を嵌入可能に構成されると共に、筒状部31の先端部が閉塞されている(「筒長方向の他端部が閉塞され」との構成の一例)。
【0040】
また、電線挿入部4は、
図3~7に示すように、筒状部31の一部が切り欠かれて形成された側面視L字状の切欠き32a(「切欠き」の一例)が設けられて、この切欠き32aに被覆電線Xを挿入可能に構成されている。この場合、本例の電圧センサ1における電線挿入部4では、
図5に示すように、切欠き32aにおける先端部側(「電線挿入部の他端部の側」:同図における左側)の電線挿入部4の周方向に沿った開口幅(同図における上下方向の開口幅)が基端部から先端部に向かうほど狭くなるように(「電線挿入部の一端部から他端部に向かうほど狭くなるように」との構成の一例)切欠き32aにおける先端部側が円弧状に形成されている。
【0041】
また、本例の電線挿入部4では、
図5,6に示すように、電線挿入部4の内面において電極保持部3によって保持された電極2の先端面S2と対向させられる対向面S4が電線挿入部4の筒径方向において切欠き32aにおける先端部側の内縁部の一部と一直線状に連続するように形成されて(本例では、側面視において対向面S4が切欠き32aの内縁部と正接するように形成されて)、切欠き32aに挿入された被覆電線Xが電線挿入部4に対して径方向に沿って一直線状に接する電線接触部Pxが設けられている。この場合、この電線挿入部4では、切欠き32aの内縁部における先端部側の頂部Ppに電線接触部Pxが設けられている。
【0042】
さらに、電線挿入部4における筒状部31は、その内周面に雌ネジ32bが形成されて電極保持部3(筒状部13)の雄ネジ13aを螺合させることができるように構成されている。この場合、本例の電圧センサ1では、電極保持部3における筒状部13の雄ネジ13a、および電線挿入部4(筒状部31)の雌ネジ32bが正ネジで構成されている。また、筒状部31には、前述のように保持部本体11に設けられた凸部11cが係合可能なスリット32cが設けられている。さらに、
図4,7に示すように、電線挿入部4(筒状部31)において電極保持部3が当接させられる当接部F4(後端部側の端面)には、前述のように電極保持部3において電線挿入部4に当接させられる当接部F3に設けられた係合部E3に係合可能な係合部E4が設けられている。
【0043】
この場合、
図3,4,7に示すように、電線挿入部4の係合部E4は、電線挿入部4の周方向に沿って当接部F4に等間隔で形成された複数の凸部を備えて構成されている。また、電極保持部3における操作用ノブ21の係合部E3は、電線挿入部4の周方向において隣接する凸部の間の凹部にそれぞれ係合可能に筒状部13の周方向に沿って当接部F3に等間隔で形成された複数の凸部を備え、周方向において隣接する各凸部の間の各凹部に電線挿入部4における係合部E4の各凸部がそれぞれ係合可能に構成されている。これにより、本例の電圧センサ1では、係合部E3,E4が互いに係合させられることで電線挿入部4に対する操作用ノブ21の相対的な回動が規制されると共に、係合部E3,E4の係合が解除されることで電線挿入部4に対する操作用ノブ21の相対的な回動が許容される。
【0044】
さらに、本例の電圧センサ1では、前述したように、電線挿入部4(筒状部31)の雌ネジ32bに筒状部13の雄ネジ13aが螺合させられると共に、コイルスプリング22の弾性復元力(伸長方向への付勢力)によって筒状部13に対して操作用ノブ21が「接近方向(矢印B1の向き)」で付勢されている。
【0045】
また、本例の電圧センサ1では、前述したように、筒状部13の外周面における雄ネジ13aの形成部位とその他の部位との間に段部が生じており、この外周面の段部に操作用ノブ21の凸部21aが当接して筒状部13に対する操作用ノブ21の矢印B1の向きへの移動が制限されている。これにより、本例の電圧センサ1では、
図7に示すように、電線挿入部4に挿入された被覆電線Xの絶縁被覆に対して電極保持部3によって保持された電極2が接しない「非接触位置」に保持部本体11が位置しているときに、保持部本体11に対する筒状部13の「接近方向(矢印B1の向き)」への移動が規制されて当接部F4から当接部F3を離間させた状態が維持される。
【0046】
ストッパ5は、「移動規制用部材」の一例であって、
図3,4に示すように、ステンレス鋼、リン青銅およびベリリウム銅などのばね用鋼材で全体としてC字状(「環状」の一例)に形成されて、
図7に示すように、筒状部31内に圧入されて電線挿入部4に固定されている。このストッパ5は、電極保持部3および電線挿入部4の間に配設されて電極保持部3に対する筒長方向への相対的な移動が可能な状態で電線挿入部4に固定されると共に、電極保持部3に対して電線挿入部4が「予め規定された位置」まで「離間方向(矢印B1の向き)」へ移動させられたときに電極保持部3における保持部本体11の周面に設けられている前述の凸部11cに当接して電極保持部3に対する電線挿入部4の「離間方向(矢印B1の向き)」へ移動を規制可能に構成されている。
【0047】
具体的には、本例の電圧センサ1におけるストッパ5は、電線挿入部4に圧入されていない状態における外径が電線挿入部4における筒状部31の内径よりも僅かに大きく、かつ、電線挿入部4に圧入された状態(圧入によって縮径された状態)における内径が電極保持部3における保持部本体11の外径よりも僅かに大きくなるような大きさに形成されている。また、ストッパ5は、ストッパ5の周方向における一端部と他端部との間の隙間における周方向の長さが、電線挿入部4に圧入されていない状態において電極保持部3の保持部本体11における周方向に沿った凸部11cの長さ以上となり、かつ電線挿入部4に圧入された状態において保持部本体11における周方向に沿った凸部11cの長さを下回るように弾性変形可能に構成されている。
【0048】
この電圧センサ1の組立てに際しては、まず、電極2および絶縁体12a,12bを保持部本体11内に挿入してこれらを一体化させると共に、電極2の基端部2bに信号ケーブル6の芯線を半田付けして電極2に信号ケーブル6を固定する。また、筒状部13の基端部側から操作用ノブ21およびコイルスプリング22を装着した後に、筒状部13の溝部13bにストッパ23を嵌入して操作用ノブ21およびコイルスプリング22の筒状部13からの離脱を規制する。次いで、保持部本体11の基端部側からコイルスプリング14および筒状部13をこの順で装着した後に、保持部本体11の溝部11bにストッパ15を嵌入してコイルスプリング14および筒状部13の保持部本体11からの離脱を規制する。
【0049】
続いて、信号ケーブル6を挿通させたブッシュ6aを保持部本体11の基端部に固定すると共に、保持部本体11に対してストッパ5を装着する。この場合、保持部本体11に対するストッパ5の装着時には、まず、保持部本体11の先端部にストッパ5を取り付け、次いで、ストッパ5の周方向における一端部および他端部の間の隙間を凸部11cが通過するように保持部本体11に対してストッパ5を相対的に移動させることにより、凸部11a,11cの間にストッパ5を位置させる。続いて、保持部本体11に対してストッパ5を180度回動させ、凸部11cに対して保持部本体11の筒長方向にストッパ5の隙間が存在しない状態とする。
【0050】
次いで、電線挿入部4における基端部側の開口部から保持部本体11の先端部を挿入し、電線挿入部4に対して保持部本体11を各図の矢印B1の向きで押し込む。この際に、保持部本体11の凸部11a,11cの間に位置させられているストッパ5が電線挿入部4における筒状部31の基端部に接した状態から電線挿入部4に対して保持部本体11をさらに押し込んだときには、ストッパ5が縮径方向で弾性変形して筒状部31内に進入させられる。
【0051】
また、電線挿入部4に対して保持部本体11をさらに押し込んで電線挿入部4におけるスリット32cの後端に凸部11cが位置したときには、電線挿入部4に対して保持部本体11を相対的に回動させることによって凸部11cがスリット32c内に進入可能な状態とする。さらに、凸部11cをスリット32c内に進入させた状態から電線挿入部4に対して保持部本体11をさらに押し込むことにより、電線挿入部4の後端部に筒状部13の先端部が当接したときには、電線挿入部4に対して操作用ノブ21を矢印A1の向きに回動させることで電線挿入部4に対して筒状部13を回動させ、雌ネジ32bに対して筒状部13の雄ネジ13aを螺合させる。この際に、保持部本体11の先端部に装着されているストッパ5は、保持部本体11の凸部11aに押されるようにして筒状部13内を先端部に向けて移動させられる。
【0052】
次いで、一例として、電線挿入部4に対して操作用ノブ21を矢印A1の向きで回動させることにより、操作用ノブ21と共に筒状部13を電線挿入部4に対して矢印A1の向きに回動させる。これにより、雌ネジ32bに対して雄ネジ13aが螺合させられている筒状部13が電線挿入部4に対して矢印B1の向きに移動させられると共に、筒状部13が装着されている保持部本体11が筒状部13と共に電線挿入部4に対して矢印B1の向きに移動させられる。この結果、保持部本体11と一体化されている電極2や保持部本体11に装着されているストッパ5が電線挿入部4に対して矢印B1の向きに移動させられる。
【0053】
なお、上記のような電線挿入部4に対する操作用ノブ21の回動操作時には、後述するように、電極保持部3(操作用ノブ21)の当接部F3(係合部E3における各凸部の突端)が電線挿入部4の当接部F4(係合部E4における各凸部の突端)に接した状態以降、コイルスプリング22の弾性変形によって筒状部13に対して操作用ノブ21がスライドさせられて、係合部E3,E4の係合および係合解除が繰り返されるが、この動作については後に詳細に説明する。
【0054】
また、電線挿入部4に対する操作用ノブ21の矢印A1の向きへの回動によって、電極保持部3が電線挿入部4の最も奥側(最も先端部側)まで移動させられたとき(本例の電圧センサ1では、電極保持部3によって保持された電極2の先端面S2が電線挿入部4の対向面S4に接する位置まで移動させられたとき)には、電線挿入部4に対する保持部本体11の移動に伴い、凸部11aに押されるようにして筒状部13内を先端部に向けて移動させられたストッパ5が、電線挿入部4内の固定位置(
図7~11におけるストッパ5の位置)に位置させられる(電線挿入部4内にストッパ5を圧入した状態の一例)。これにより、ストッパ5の弾性復帰力によって電線挿入部4の内側にストッパ5が固定された状態となる。以上により、電圧センサ1の組立てが完了する。
【0055】
一方、この電圧センサ1を使用して被覆電線Xの導線に印加されている電圧を検出して電圧値を測定する際には、電圧センサ1を被覆電線Xに装着する。この際に、
図1,2に示すように、被覆電線Xに対して非装着状態の電圧センサ1において電極2の先端部や保持部本体11における先端部側が電線挿入部4における切欠き32aの形成部位に位置した状態(保持部本体11の周面を切欠き32aから視認できる状態)となっているときには、電極2や保持部本体11の先端部を電線挿入部4の筒状部31内に収容する。具体的には、一例として、電線挿入部4に対して操作用ノブ21を矢印A2の向きで回動させる。なお、電極2や保持部本体11の先端部が電線挿入部4の切欠き32aに位置した状態においては、電線挿入部4の係合部E4に電極保持部3(操作用ノブ21)の係合部E3が係合させられて電線挿入部4に対する操作用ノブ21の回動が規制されるため、この係合部E3,E4の係合を解除する操作が必要となるが、この解除操作については、後に詳細に説明する。
【0056】
また、上記のように操作用ノブ21が矢印A2の向きに回動させられたときには、筒状部13が操作用ノブ21と共に電線挿入部4に対して矢印A2の向きに回動させられる。これにより、雌ネジ32bに対して雄ネジ13aが螺合させられている筒状部13が電線挿入部4に対して矢印B2の向きに移動させられると共に、筒状部13が装着されている保持部本体11が筒状部13と共に電線挿入部4に対して矢印B2の向きに移動させられる結果、保持部本体11と一体化されている電極2が電線挿入部4に対して矢印B2の向きに移動させられる。この結果、
図7に示すように、電極2および保持部本体11の先端部が電線挿入部4の筒状部31内に収容された状態(保持部本体11の周面を視認できない状態)となる。
【0057】
この場合、本例の電圧センサ1では、上記のように電極2および保持部本体11の先端部が電線挿入部4の筒状部31内に収容された状態において、電線挿入部4内に固定されているストッパ5の端面に保持部本体11の凸部11cが当接した状態となるように構成されている。これにより、この電圧センサ1では、ストッパ5が固定されている電線挿入部4に対する保持部本体11の矢印B2の向きへのさらなる移動が規制されるため、電線挿入部4に対して保持部本体11をどの程度移動させたかを把握していなくても、保持部本体11に装着された筒状部13の雄ネジ13aと電線挿入部4の内面に形成された雌ネジ32bとが螺合した状態、すなわち、電極保持部3(保持部本体11および筒状部13等)と電線挿入部4とが一体化した状態が維持される。したがって、この電圧センサ1では、電極保持部3および電線挿入部4の意図しない分離に起因するいずれかの落下が好適に回避される。
【0058】
次いで、電線挿入部4の切欠き32aに被覆電線Xを挿入した後に、被覆電線Xの絶縁被覆に電極2を当接させて電極2を被覆電線Xの導線と容量結合させる。具体的には、一例として、電線挿入部4に挿入されている被覆電線Xの捩れを回避するために、電線挿入部4に対して操作用ノブ21を矢印A1の向きで回動させる。この際には、前述したように、筒状部13の外周面に設けられた段部に操作用ノブ21の凸部21aが当接させられて電極保持部3(操作用ノブ21)の当接部F3が電線挿入部4の当接部F4から離間した状態(すなわち、係合部E4に対する係合部E3の係合が解除された状態)となっているため、電線挿入部4に対して操作用ノブ21をスムースに回動させることが可能となっている。
【0059】
また、上記のように操作用ノブ21が矢印A1の向きに回動させられたときには、筒状部13が操作用ノブ21と共に電線挿入部4に対して矢印A1の向きに回動させられる。この際には、
図8に示すように、雌ネジ32bに対して雄ネジ13aが螺合させられている筒状部13が電線挿入部4に対して矢印B1の向きに移動させられると共に、筒状部13が装着されている保持部本体11が筒状部13と共に電線挿入部4に対して矢印B1の向きに移動させられる結果、保持部本体11と一体化されている電極2が電線挿入部4に対して矢印B1の向きに移動させられる。これにより、電極保持部3(操作用ノブ21)の当接部F3(係合部E3における各凸部の突端)が電線挿入部4の当接部F4(係合部E4における各凸部の突端)に接した状態となる。
【0060】
また、電線挿入部4に対して操作用ノブ21を矢印A1の向きにさらに回動させたときには、電線挿入部4に対する筒状部13の矢印B1の向きへの移動に伴い、電線挿入部4の係合部E4に対する電極保持部3(操作用ノブ21)の係合部E3の係合の度合い(すなわち、係合部E4の凹部に対する係合部E3の凸部の進入の度合い)、および係合部E3に対する係合部E4の係合の度合い(すなわち、係合部E3の凹部に対する係合部E4の凸部の進入の度合い)が徐々に大きくなる。
【0061】
この場合、係合部E4の凹部に係合部E3の凸部が進入し、かつ係合部E3の凹部に係合部E4の凸部が進入した状態で電線挿入部4に対して操作用ノブ21を回動させるためには、各凸部の進入量に応じて、電線挿入部4に対して操作用ノブ21を矢印B2の向きにコイルスプリング22の付勢力に抗して移動させる必要がある。このため、係合部E3,E4の係合の度合いが強くなるのに応じて、電線挿入部4に対して操作用ノブ21を回動させるのに要する力が徐々に大きくなる(操作抵抗が徐々に大きくなる)。
【0062】
しかしながら、本例の電圧センサ1では、係合部E3,E4が係合している状態において電線挿入部4に対して操作用ノブ21を矢印A1の向きに回動させるのに要する力よりも矢印A2の向きに回動させるのに要する力が大きくなるように(言い換えれば、矢印A2の向きに回動させるのに要する力よりも矢印A1の向きに回動させるのに要する力が小さくなるように)係合部E3,E4の各凸部および各凹部がそれぞれ形成されている。したがって、それほど大きな操作力を加えることなく、電線挿入部4に対して操作用ノブ21を矢印A1の向きに回動させることが可能となっている。
【0063】
また、上記のような電線挿入部4に対する操作用ノブ21の矢印A1の向きへの回動に伴って筒状部13が電線挿入部4に対して矢印B1の向きへさらに移動させられることにより、電極2が保持部本体11および筒状部13と共に矢印B1の向きに移動させられて、
図9に示すように、電極2が被覆電線Xの絶縁被覆に接した状態となる。次いで、
図10に示すように、電線挿入部4に対して操作用ノブ21を矢印A1の向きにさらに回動させることで電線挿入部4に対して電極2を矢印B1の向きにさらに移動させて、被覆電線Xに対して電極2の先端部2aを十分な押付け力で押し付けた状態とする。
【0064】
この場合、
図9に示すように被覆電線Xの絶縁被覆に電極2が接した状態から、操作用ノブ21の矢印A2の向きへの回動に伴って筒状部13が矢印B1の向きに移動させられたときには、被覆電線Xに対する電極2の矢印B1の向きへの押付け力の増加に伴い、筒状部13に対して保持部本体11を矢印B1の向きに付勢しているコイルスプリング14が徐々に縮長させられる。この結果、電極2と一体化されている保持部本体11が筒状部13に対して矢印B2の向きへ相対的に後退させられる結果、被覆電線Xに対して電極2が過剰に大きな力で押し付けられた状態となるのが好適に回避される。
【0065】
また、本例の電圧センサ1では、前述したように、電線挿入部4の内面における対向面S4が電線挿入部4の筒径方向において切欠き32aにおける先端部側の内縁部の一部と一直線状に連続するように形成されて電線接触部Pxが電線挿入部4に設けられている。これにより、電線挿入部4における切欠き32aの内縁部および対向面S4と、電極2における先端部2aの先端面S2との間に挟み込まれた被覆電線Xにおいて、弾性復帰が困難な程度に絶縁被覆が変形したり、断線(導線の接断)が生じたりする事態を招くことなく、電線挿入部4と電極2との間に被覆電線Xが挟み込まれた状態とすることができる。以上により、被覆電線Xの導線に対して電極2が好適状態で容量結合され、被覆電線Xに対する電圧センサ1の装着が完了する。
【0066】
この場合、電圧センサ1への装着が完了したときには、係合部E4の各凹部に係合部E3の各凸部が十分に進入し、かつ係合部E3の各凹部に係合部E4の各凸部が十分に進入した状態で係合部E3,E4が係合した状態となり、電線挿入部4に対する操作用ノブ21の回動が規制された状態となる。これにより、電線挿入部4に対する操作用ノブ21の回動に伴って電線挿入部4に対して電極2、保持部本体11および筒状部13が矢印B2の向きで移動する事態、すなわち、被覆電線Xに対する電極2の押付け力が低下する事態が好適に回避される。続いて、信号ケーブル6を測定装置に接続することで測定装置に電圧センサ1を接続した後に、測定装置の図示しない操作部を操作することにより、測定処理を開始させる。なお、この種のセンサを使用した電圧の測定方法については当業者間において公知のため、詳細な説明を省略する。
【0067】
一方、被覆電線Xについての測定処理を再び実行する必要がなくなったときには、被覆電線Xから電圧センサ1を取り外す。この際には、
図11に示すように、電線挿入部4に螺合させられている筒状部13に対してコイルスプリング22の付勢力に抗して操作用ノブ21を矢印B2の向きに移動させる(前述した「解除操作」の例)。これにより、係合部E3,E4の係合が解除されて、操作用ノブ21および筒状部13の電線挿入部4に対する回動規制が解除される。
【0068】
次いで、操作用ノブ21を矢印B2の向きに移動させた状態(コイルスプリング22を押し縮めた状態)を維持しつつ、電線挿入部4に対して操作用ノブ21を矢印A2の向きに回動させる。この際には、筒状部13が操作用ノブ21と共に電線挿入部4に対して矢印A2の向きに回動させられる。これにより、雌ネジ32bに対して雄ネジ13aが螺合させられている筒状部13が電線挿入部4に対して矢印B2の向きに移動させられると共に、筒状部13が装着されている保持部本体11が筒状部13と共に電線挿入部4に対して矢印B2の向きに移動させられる結果、保持部本体11と一体化されている電極2が電線挿入部4に対して矢印B2の向きに移動させられる。
【0069】
引き続き、電線挿入部4に対して操作用ノブ21を矢印A2の向きへ十分に回動させることにより、
図8に示すように、電極2が被覆電線X(絶縁被覆)から離間させられる。また、電線挿入部4に対して操作用ノブ21を矢印A2の向きへさらに回動させることにより、
図7に示すように、電極2および保持部本体11の先端部が電線挿入部4の筒状部31内に収容された状態となり、かつ凸部11cが電線挿入部4内のストッパ5に当接して電線挿入部4に対する保持部本体11のさらなる移動が規制され、電極保持部3および電線挿入部4の分離が規制される。このような状態において、切欠き32a内の被覆電線Xを電線挿入部4の外に位置させるようにして、被覆電線Xおよび/または電圧センサ1を移動させる。以上により、被覆電線Xからの電圧センサ1の取り外しが完了する。
【0070】
このように、この電圧センサ1では、電極保持部3および電線挿入部4の間に配設されて電極保持部3に対する「筒長方向」への相対的な移動が可能な状態で電線挿入部4に固定されると共に、電極保持部3に対して電線挿入部4が予め規定された位置まで「離間方向」へ相対的に移動させられたときに電極保持部3の周面に設けられている凸部11cに当接して電極保持部3に対する電線挿入部4の「離間方向」への相対的な移動を規制するストッパ5を備えている。
【0071】
したがって、この電圧センサ1によれば、電線挿入部4に固定されているストッパ5に凸部11cが当接したときに、電極保持部3に対する電線挿入部4のさらなる移動が規制されるため、電線挿入部4に電極保持部3が挿入された状態を維持させて、電極保持部3および電線挿入部4の意図しない分離を好適に回避することができる。これにより、電極保持部3および電線挿入部4の分離に起因するいずれかの落下を確実に回避することができる。
【0072】
また、この電圧センサ1によれば、ストッパ5を環状に形成すると共に電線挿入部4内に圧入して電線挿入部4に固定したことにより、接着やネジ止めなどの固定方法で固定する構成とは異なり、電線挿入部4に対してストッパ5を容易に固定することができるため、その製造コストを十分に低減することができる。
【0073】
さらに、この電圧センサ1では、電極保持部3が、「移動規制用凸部」としての機能を有する凸部(本例では、凸部11c)が1つだけ設けられ、ストッパ5が、C字状に形成されると共に、ストッパ5の周方向における一端部と他端部との間の隙間における周方向の長さが、電線挿入部4に圧入されていない状態において電極保持部3(保持部本体11)の周方向に沿った凸部11cの長さ以上となり、かつ電線挿入部4に圧入された状態において電極保持部3(保持部本体11)の周方向に沿った凸部11cの長さを下回るように弾性変形可能に構成されている。
【0074】
したがって、この電圧センサ1によれば、組立てに際して、ストッパ5の周方向における一端部および他端部の間の隙間を凸部11cが通過するように保持部本体11に対してストッパ5を相対的に移動させてストッパ5を電極保持部3(保持部本体11)における凸部11cよりも基端部側に位置させ、その後に、凸部11cに対して電極保持部3(保持部本体11)の筒長方向にストッパ5の隙間が存在しない状態となるようにストッパ5を回動させた状態で、電線挿入部4に電極保持部3を挿入してストッパ5を電線挿入部4内に固定することで、ストッパ5を確実かつ容易に電線挿入部4内に固定することができると共に、電極保持部3に対して電線挿入部4を「離間方向」へ相対的に移動させた際に凸部11cをストッパ5に対して確実に当接させて電極保持部3および電線挿入部4の意図しない分離を確実に回避することができる。
【0075】
また、この電圧センサ1では、電線挿入部4が、「筒長方向」の一端部が電極保持部3およびストッパ5を挿入可能に開口され、かつ「筒長方向」の他端部が閉塞されると共に、電線挿入部4の内面において電極保持部3によって保持された電極の先端面S2と対向させられる対向面S4が電線挿入部4の筒径方向において切欠きにおける他端部の側の内縁部の一部と一直線状に連続するように形成されて電線接触部Pxが設けられている。
【0076】
したがって、この電圧センサ1によれば、電線挿入部4における切欠き32aの内縁部および対向面S4と、電極2における先端部2aの先端面S2との間に挟み込まれた被覆電線Xにおいて、弾性復帰が困難な程度に絶縁被覆が変形したり、断線(導線の接断)が生じたりする事態を招くことなく、電線挿入部4と電極2との間に被覆電線Xが挟み込まれた状態とすることができるため、被覆電線Xを傷付けることなく確実に保持する(被覆電線Xに対して電圧センサ1を確実に装着する)ことができる。
【0077】
さらに、この電圧センサ1によれば、切欠きにおける他端部の側の電線挿入部4の「周方向」に沿った開口幅が一端部から他端部に向かうほど狭くなるように切欠きにおける他端部の側を円弧状に形成すると共に、切欠きの内縁部における他端部の側の頂部Ppに電線接触部Pxを設けて電線挿入部4を構成したことにより、切欠き32a内に挿入した被覆電線Xを確実に電線接触部Pxに対して接触させた状態とすることができる。
【0078】
なお、「センサ」の構成は、上記の電圧センサ1の構成の例に限定されない。例えば、電線挿入部4に対して電極保持部3を「接近方向」および「離間方向」に移動させる際に、電線挿入部4に対する操作用ノブ21の回動操作を行う構成の電圧センサ1を例に挙げて説明したが、このような構成に代えて、「電線挿入部」に対して「電極保持部」を「接近方向」および「離間方向」に相対的にスライドさせる操作によって「被覆電線」に対する装着や取り外しを行うことが可能な構成を採用することもできる。
【0079】
具体的には、
図12~14に示す電圧センサ1Aは、「センサ」の他の一例であって、前述の電圧センサ1における電極保持部3および電線挿入部4に代えて、「電極保持部」の他の一例である電極保持部3A、および「電線挿入部」の他の一例である「電線挿入部4A」を備えて構成されている。なお、この電圧センサ1Aにおいて電圧センサ1の各構成要素と同様の構成要素については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0080】
電極保持部3Aは、一例として、保持部本体51および絶縁体12a,12bを備えている。保持部本体51は、電極2を挿入可能な筒状に形成されると共に、先端部側の外径が電線挿入部4Aにおける先端部側の内径より僅かに小径で、かつ基端部側の外径が電線挿入部4Aにおける基端部側の内径より僅かに小径の筒状(一例として円筒状)に形成されて、筒長方向の中央部に段部51aが設けられている。また、保持部本体51には、前述の電圧センサ1における電極保持部3の保持部本体11と同様に「移動規制用凸部」としての凸部11cが先端部側の周面に形成されている。さらに、保持部本体51には、後述するように電線挿入部4Aに形成されている凸部61aが係合可能な溝部51bが基端部側の周面に形成されている。
【0081】
電線挿入部4Aは、電極保持部3Aの保持部本体51を挿入可能な筒状(本例では円筒状)に形成されている。この電線挿入部4Aは、「周壁」を構成する筒状部61の基端部が開口されて(「筒長方向の一端部が開口され」との構成の他の一例)電極保持部3Aを嵌入可能に構成されると共に、筒状部61の先端部が閉塞されている(「筒長方向の他端部が閉塞され」との構成の他の一例)。また、筒状部61の先端部側には、切欠き32aやスリット32cが設けられている。さらに、筒状部61の基端部側における内周面には、電極保持部3Aの保持部本体51に形成された溝部51bに係合可能な凸部61aが設けられている。また、電線挿入部4Aの筒状部61には、ストッパ5が圧入されて固定されている。
【0082】
この電圧センサ1Aの組立てに際しては、まず、電極2および絶縁体12a,12bを保持部本体51内に挿入してこれらを一体化させる。次いで、電極2の基端部2bに信号ケーブル6の芯線を半田付けして電極2に信号ケーブル6を固定すると共に、信号ケーブル6を挿通させたブッシュ6aを保持部本体51の基端部に固定する。
【0083】
続いて、電線挿入部4Aに対する電極保持部3Aの取り付け、および電線挿入部4A内へのストッパ5の固定を行う。具体的には、まず、保持部本体51の先端部にストッパ5を取り付け、次いで、ストッパ5の周方向における一端部および他端部の間の隙間を凸部11cが通過するように保持部本体51に対してストッパ5を相対的に移動させることにより、凸部11aおよび段部51aの間にストッパ5を位置させる。続いて、保持部本体51に対してストッパ5を180度回動させ、凸部11cに対して保持部本体11の筒長方向にストッパ5の隙間が存在しない状態とする。
【0084】
次いで、電線挿入部4Aにおける基端部側の開口部から保持部本体51の先端部を挿入し、電線挿入部4Aに対して電極保持部3A(保持部本体51)を各図の矢印B1の向きで押し込む。この際に、保持部本体51の凸部11aおよび段部51aの間に位置させられているストッパ5が電線挿入部4Aにおける筒状部61の基端部に接した状態から電線挿入部4Aに対して電極保持部3A(保持部本体51)をさらに押し込んだときには、ストッパ5が縮径方向で弾性変形して筒状部61に進入させられる。また、筒状部61内に進入させられたストッパ5は、電線挿入部4Aに対して電極保持部3A(保持部本体51)がさらに押し込まれた際に、段部51aに押されるようにして筒状部61内を先端部側に向けて移動させられる。
【0085】
続いて、電線挿入部4Aに対して電極保持部3A(保持部本体51)をさらに押し込むことで、電線挿入部4Aにおけるスリット32cの後端に凸部11cが位置したときには、電線挿入部4Aに対して保持部本体51を相対的に回動させて凸部11cがスリット32c内に進入可能な状態とする。
【0086】
また、凸部11cをスリット32c内に進入させた状態から、電線挿入部4Aに対して電極保持部3Aをさらに押し込んだときには、
図14に示すように、保持部本体51の溝部51bに筒状部61の凸部61aが係合した状態となる。この場合、組立て作業時のこの時点では、電線挿入部4Aの切欠き32aに被覆電線Xが挿入されていないが、本例の電圧センサ1Aでは、同図に示すように、電圧の検出対象の被覆電線Xを電極2の先端面S2と電線挿入部4Aの対向面S4との間に挟み込んだ状態(被覆電線Xに電圧センサ1Aを装着した状態)において溝部51bに凸部61aが係合した状態となるように、保持部本体51における溝部51bの形成位置、および筒状部61における凸部61aの形成位置が規定されている。
【0087】
次いで、組立て作業時のこの時点では、一例として、電線挿入部4の対向面S4に電極2の先端面S2が面的に接した状態となるまで電線挿入部4Aに対して電極保持部3(保持部本体51)をさらに押し込む。この際には、段部51aによって押されたストッパ5が電線挿入部4Aの筒状部61内における固定位置(
図12,14におけるストッパ5の位置)に位置させられる(電線挿入部4A内にストッパ5を圧入した状態の一例)。これにより、ストッパ5の弾性復帰力によって電線挿入部4Aの内側にストッパ5が固定された状態となり、電圧センサ1Aの組立てが完了する。
【0088】
一方、この電圧センサ1Aを使用した電圧の検出に際しては被覆電線Xに電圧センサ1Aを装着する。この際に、被覆電線Xに対して非装着状態の電圧センサ1Aにおいて電極2の先端部や保持部本体51における先端部側が電線挿入部4Aにおける切欠き32aの形成部位に位置した状態(保持部本体51の周面を切欠き32aから視認できる状態)となっているときには、電極2や保持部本体51の先端部を電線挿入部4Aの筒状部61内に収容する。具体的には、一例として、各図に示す矢印B2の向きで電線挿入部4Aに対して電極保持部3Aを移動させることにより、保持部本体51と一体化されている電極2を電線挿入部4Aに対して矢印B2の向きに移動させる。これにより、
図12に示すように、電極2および保持部本体51の先端部が電線挿入部4Aの筒状部61内に収容された状態(保持部本体51の周面を視認できない状態)となる。
【0089】
この場合、本例の電圧センサ1Aでは、電極2および保持部本体51の先端部が電線挿入部4Aの筒状部61内に収容された状態において、電線挿入部4A内に固定されているストッパ5の端面に保持部本体51の凸部11cが当接した状態となるように構成されている。これにより、この電圧センサ1Aでは、ストッパ5が固定されている電線挿入部4Aに対する保持部本体51の矢印B2の向きへのさらなる移動が規制されるため、電線挿入部4Aに対して保持部本体51をどの程度移動させたかを把握していなくても、保持部本体51が電線挿入部4の筒状部61に挿入された状態、すなわち、電極保持部3A(保持部本体51)と電線挿入部4A(筒状部61)とが一体化した状態が維持される。したがって、この電圧センサ1Aでは、電極保持部3Aおよび電線挿入部4Aの意図しない分離に起因するいずれかの落下が好適に回避される。
【0090】
次いで、電線挿入部4Aの切欠き32aに被覆電線Xを挿入した後に、被覆電線Xの絶縁被覆に電極2を当接させて電極2を被覆電線Xの導線と容量結合させる。具体的には、一例として、切欠き32aに被覆電線Xが挿入された状態の電線挿入部4Aに対して矢印B1の向きで電極保持部3Aを移動させることにより、保持部本体51と一体化されている電極2を電線挿入部4Aに対して矢印B1の向きに移動させる。この際に、
図14に示すように、被覆電線Xの絶縁被覆が電線挿入部4の対向面S4および電極2の先端面S2の間に挟まれて被覆電線Xに対して対向面S4および先端面S2が十分な押付け力で押し付けられた状態となるまで電線挿入部4Aに対して電極保持部3Aを移動させたときには、電線挿入部4における筒状部61の内周面に形成された凸部61aが電極保持部3における保持部本体51の外周面に形成された溝部51bに係合させられる。これにより、筒状部61に対する保持部本体51の筒長方法に沿った移動、すなわち、電極保持部3Aによって保持された電極2の電線挿入部4Aに対する筒長方法に沿った移動が規制された状態となる。
【0091】
また、本例の電圧センサ1Aでは、前述した電圧センサ1と同様にして、電線挿入部4Aの内面における対向面S4が電線挿入部4Aの筒径方向において切欠き32aにおける先端部側の内縁部の一部と一直線状に連続するように形成され、切欠き32aに挿入された被覆電線Xが電線挿入部4Aに対して径方向に沿って一直線状に接する電線接触部Pxが電線挿入部4Aに設けられている。これにより、電線挿入部4Aにおける切欠き32aの内縁部および対向面S4と、電極2における先端部2aの先端面S2との間に挟み込まれた被覆電線Xにおいて、弾性復帰が困難な程度に絶縁被覆が変形したり、断線(導線の接断)が生じたりする事態を招くことなく、電線挿入部4Aと電極2との間に被覆電線Xが挟み込まれた状態とすることができる。以上により、被覆電線Xの導線に対して電極2が好適状態で容量結合され、被覆電線Xに対する電圧センサ1Aの装着が完了する。
【0092】
続いて、信号ケーブル6を測定装置に接続することで測定装置に電圧センサ1Aを接続した後に、測定装置の図示しない操作部を操作することにより、測定処理を開始させる。なお、この種のセンサを使用した電圧の測定方法については当業者間において公知のため、詳細な説明を省略する。
【0093】
一方、被覆電線Xについての測定処理を再び実行する必要がなくなったときには、被覆電線Xから電圧センサ1Aを取り外す。具体的には、
図14に示す矢印B2の向きで電線挿入部4Aに対して電極保持部3Aを移動させる。この際には、電線挿入部4A(筒状部61)の凸部61aが電極保持部3(保持部本体51)の溝部51bに係合した状態となっているため、十分な力で電線挿入部4Aに対して電極保持部3Aを移動させることで溝部51bに対する凸部61aの係合を解除する。また、電線挿入部4Aに対して電極保持部3Aを矢印B2の向きで移動させたときには、切欠き32aに挿入された被覆電線Xに対して保持部本体51と一体化されている電極2が電線挿入部4Aに対して矢印B2の向きに移動させられる結果、電極2が被覆電線X(絶縁被覆)から離間させられる。
【0094】
さらに、電線挿入部4Aに対して電極保持部3Aを矢印B2の向きへさらに移動させたときには、
図12に示すように、電極2および保持部本体51の先端部が電線挿入部4Aの筒状部61内に収容された状態となり、かつ凸部11cが電線挿入部4A内のストッパ5に当接して電線挿入部4Aに対する保持部本体51のさらなる移動が規制されて電極保持部3Aおよび電線挿入部4Aの分離が規制された状態となる。このような状態において、切欠き32a内の被覆電線Xを電線挿入部4Aの外に位置させるようにして、被覆電線Xおよび/または電圧センサ1Aを移動させる。以上により、被覆電線Xからの電圧センサ1Aの取り外しが完了する。
【0095】
このように、この電圧センサ1Aでは、電極保持部3Aおよび電線挿入部4Aの間に配設されて電極保持部3Aに対する「筒長方向」への相対的な移動が可能な状態で電線挿入部4Aに固定されると共に、電極保持部3Aに対して電線挿入部4Aが予め規定された位置まで「離間方向」へ相対的に移動させられたときに電極保持部3Aの周面に設けられている凸部11cに当接して電極保持部3Aに対する電線挿入部4Aの「離間方向」への相対的な移動を規制するストッパ5を備えている。
【0096】
したがって、この電圧センサ1Aによれば、電線挿入部4Aに固定されているストッパ5に凸部11cが当接したときに、電極保持部3Aに対する電線挿入部4Aのさらなる移動が規制されるため、電線挿入部4Aに電極保持部3Aが挿入された状態を維持させて、電極保持部3Aおよび電線挿入部4Aの意図しない分離を好適に回避することができる。これにより、電極保持部3Aおよび電線挿入部4Aの分離に起因するいずれかの落下を確実に回避することができる。
【0097】
また、この電圧センサ1Aによれば、ストッパ5を環状に形成すると共に電線挿入部4A内に圧入して電線挿入部4Aに固定したことにより、接着やネジ止めなどの固定方法で固定する構成とは異なり、電線挿入部4Aに対してストッパ5を容易に固定することができるため、その製造コストを十分に低減することができる。
【0098】
さらに、この電圧センサ1Aでは、電極保持部3Aが、「移動規制用凸部」としての機能を有する凸部(本例では、凸部11c)が1つだけ設けられ、ストッパ5が、C字状に形成されると共に、ストッパ5の周方向における一端部と他端部との間の隙間における周方向の長さが、電線挿入部4Aに圧入されていない状態において電極保持部3A(保持部本体51)の周方向に沿った凸部11cの長さ以上となり、かつ電線挿入部4Aに圧入された状態において電極保持部3A(保持部本体51)の周方向に沿った凸部11cの長さを下回るように弾性変形可能に構成されている。
【0099】
したがって、この電圧センサ1Aによれば、組立てに際して、ストッパ5の周方向における一端部および他端部の間の隙間を凸部11cが通過するように保持部本体51に対してストッパ5を相対的に移動させてストッパ5を電極保持部3A(保持部本体51)における凸部11cよりも基端部側に位置させ、その後に、凸部11cに対して電極保持部3A(保持部本体51)の筒長方向にストッパ5の隙間が存在しない状態となるようにストッパ5を回動させた状態で、電線挿入部4Aに電極保持部3Aを挿入することでストッパ5を電線挿入部4A内に固定することで、ストッパ5を確実かつ容易に電線挿入部4A内に固定することができると共に、電極保持部3Aに対して電線挿入部4Aを「離間方向」へ相対的に移動させた際に凸部11cをストッパ5に対して確実に当接させて電極保持部3Aおよび電線挿入部4Aの意図しない分離を確実に回避することができる。
【0100】
また、この電圧センサ1Aでは、電線挿入部4Aが、「筒長方向」の一端部が電極保持部3Aおよびストッパ5を挿入可能に開口され、かつ「筒長方向」の他端部が閉塞されると共に、電線挿入部4Aの内面において電極保持部3Aによって保持された電極の先端面S2と対向させられる対向面S4が電線挿入部4Aの筒径方向において切欠きにおける他端部の側の内縁部の一部と一直線状に連続するように形成されて電線接触部Pxが設けられている。
【0101】
したがって、この電圧センサ1Aによれば、電線挿入部4Aにおける切欠き32aの内縁部および対向面S4と、電極2における先端部2aの先端面S2との間に挟み込まれた被覆電線Xにおいて、弾性復帰が困難な程度に絶縁被覆が変形したり、断線(導線の接断)が生じたりする事態を招くことなく、電線挿入部4Aと電極2との間に被覆電線Xが挟み込まれた状態とすることができるため、被覆電線Xを傷付けることなく確実に保持する(被覆電線Xに対して電圧センサ1Aを確実に装着する)ことができる。
【0102】
さらに、この電圧センサ1Aによれば、切欠きにおける他端部の側の電線挿入部4Aの「周方向」に沿った開口幅が一端部から他端部に向かうほど狭くなるように切欠きにおける他端部の側を円弧状に形成すると共に、切欠きの内縁部における他端部の側の頂部Ppに電線接触部Pxを設けて電線挿入部4Aを構成したことにより、切欠き32a内に挿入した被覆電線Xを確実に電線接触部Pxに対して接触させた状態とすることができる。
【0103】
一方、電線挿入部4,4Aに固定した状態において周方向の両端間に隙間が生じるようにC字状に形成したストッパ5を備えた電圧センサ1,1Aを例に挙げて説明したが、「移動規制用部材」の形状はこれに限定されない。例えば、その内径が「電極保持部」の外径と同程度で、その外径が「電線挿入部」の内径と同程度の一対の半環状の部材によって構成した「移動規制用部材」を備えて構成することができる。また、周方向で連続する1つの環状体で構成した「移動規制用部材」を備えて構成することができる。この場合、1つの環状体で構成した「移動規制用部材」を採用する場合には、その内周部に「移動規制用凸部」の通過が可能な凹部を設けることで、前述した電圧センサ1,1Aと同様に、組立てに際して「移動規制用部材」を「電極保持部」に装着した状態で「電極保持部」と共に「電線挿入部」に挿入することで「電線挿入部」に「移動規制用部材」を固定することが可能となる。
【0104】
また、電極保持部3,3Aに凸部11cを1つだけ設けた電圧センサ1,1Aを例に挙げて説明したが、「電極保持部」に周方向に沿って複数の「移動規制用凸部」を設けることもできる。このような構成を採用した場合には、前述のように、一対の半環状の部材によって構成した「移動規制用部材」を採用したり、「移動規制用凸部」の通過が可能な複数の凹部を内周部に設けた1つの環状体で構成した「移動規制用部材」を採用したりすることにより、前述した電圧センサ1,1Aと同様に、組立てに際して「移動規制用部材」を「電極保持部」に装着した状態で「電極保持部」と共に「電線挿入部」に挿入することで「電線挿入部」に「移動規制用部材」を固定することが可能となる。
【0105】
さらに、「電線挿入部」に対する「移動規制用部材」の固定方法は、電線挿入部4,4Aに対するストッパ5の固定方法のような圧入に限定されず、接着やネジ止め等の各種の固定方法で「電線挿入部」に対して「移動規制用部材」を固定することができる。また、切欠き32aの内縁部および電線挿入部4の対向面S4に電線接触部Pxを設けた電線挿入部4,4Aを備えて電圧センサ1,1Aを例に挙げて説明したが、このような「電線接触部」が存在しない「電線挿入部」を備えて構成することもできる。さらに、電線挿入部4,4Aに対する電極保持部3,3Aの回動を規制可能にスリット32cに嵌合させられる凸部11cを「移動規制用凸部」として備えた構成を例に挙げて説明したが、「移動規制用凸部」としての機能以外の機能を備えない専用の凸部を「移動規制用凸部」として「電極保持部」に設けることもできる。
【0106】
加えて、被覆電線Xの電圧を「被検出量」として検出する際に使用可能な電圧センサ1,1Aの構成を例に挙げて説明したが、電圧以外の任意の電気的パラメータを「被検出量」として検出可能な「センサ」において電圧センサ1,1A等と同様の構成を採用することもできる(図示せず)。
【符号の説明】
【0107】
1,1A 電圧センサ
2 電極
3,3A 電極保持部
4,4A 電線挿入部
5,23 ストッパ
11,51 保持部本体
11a,11c,21a,61a 凸部
11b,13b,51b 溝部
12a,12b 絶縁体
13,31,43,61 筒状部
13a 雄ネジ
13c 平面部
14,22 コイルスプリング
15 ストッパ
21 操作用ノブ
32a 切欠き
32b 雌ネジ
32c スリット
43a 操作部
51a 段部
Pp 頂部
Px 電線接触部
S2 先端面
S4 対向面
X 被覆電線