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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-24
(45)【発行日】2023-04-03
(54)【発明の名称】山留壁築造工法
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/20 20060101AFI20230327BHJP
【FI】
E02D5/20 102
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019113353
(22)【出願日】2019-06-19
(65)【公開番号】P2020204222
(43)【公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】390002233
【氏名又は名称】ケミカルグラウト株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】509134569
【氏名又は名称】友弘エコロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000431
【氏名又は名称】弁理士法人高橋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小河 宗之
(72)【発明者】
【氏名】島村 淳
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 陽介
(72)【発明者】
【氏名】弘瀬 友一朗
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-331837(JP,A)
【文献】特開昭61-031521(JP,A)
【文献】特開平09-228365(JP,A)
【文献】特開2000-248542(JP,A)
【文献】特開2005-068995(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/00-5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
後行パネルの長手方向両端部を除く領域に芯材を建て込む第1の芯材建込み工程と、
芯材で仕切られた掘削溝の各領域にトレミー管を建て込むトレミー管建込み工程と、
前記トレミー管から充填材を打設する充填材打設工程と、
充填材打設工程の後、後行パネルの長手方向両端の領域に芯材を建て込む第2の芯材建込み工程を有することを特徴とする山留壁築造工法。
【請求項2】
後行パネルの長手方向両端部において移動する清掃機と干渉する領域を除く領域に芯材を建て込む第1の芯材建込み工程と、
第1の芯材建込み工程の後、後行パネルの長手方向両端部を清掃機で洗浄する洗浄工程と、
洗浄工程の後、芯材で仕切られた掘削溝の各領域にトレミー管を建て込むトレミー管建込み工程と、
前記トレミー管から充填材を打設する充填材打設工程と、
充填材打設工程の後、前記移動する清掃機と干渉する領域に芯材を建て込む第2の芯材建込み工程を有することを特徴とする山留壁築造工法。
【請求項3】
後行パネルの長手方向両端部において移動する清掃機と干渉する領域を除く領域に芯材を建て込む第1の芯材建込み工程と、
第1の芯材建込み工程の後、芯材で仕切られた掘削溝の各領域にトレミー管を建て込むトレミー管建込み工程と、
当該トレミー管から充填材を打設する充填材打設工程と、
充填材打設工程の後、後行パネルの長手方向両端部を清掃機で洗浄する洗浄工程と、
洗浄工程の後、前記移動する清掃機と干渉する領域に芯材を建て込む第2の芯材建込み工程を有することを特徴とする山留壁築造工法。
【請求項4】
後行パネルの長手方向両端部において移動する清掃機と干渉する領域を除く領域に芯材を建て込む第1の芯材建込み工程と、
第1の芯材建込み工程の後、芯材で仕切られた掘削溝の各領域にトレミー管を建て込むトレミー管建込み工程と、
トレミー管建込み工程の後、後行パネルの長手方向両端部を清掃機で洗浄する洗浄工程と、
前記トレミー管から充填材を打設する充填材打設工程と、
充填材打設工程の後、後行パネルの長手方向両端の領域に芯材を建て込む第2の芯材建込み工程を有することを特徴とする山留壁築造工法。
【請求項5】
後行パネルの長手方向両端部において移動する清掃機と干渉する領域を除く領域に芯材を建て込む第1の芯材建込み工程と、
第1の芯材建込み工程の後、芯材で仕切られた掘削溝の各領域にトレミー管を建て込むトレミー管建込み工程と、
当該トレミー管から充填材を打設しながら、充填材が打設された深度方向の領域における後行パネルの長手方向両端部を清掃機で洗浄する打設及び洗浄工程と、
打設及び洗浄工程の後、前記移動する清掃機と干渉する領域に芯材を建て込む第2の芯材建込み工程を有することを特徴とする山留壁築造工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は山留壁の築造に関する。特に、施工現場の原位置土とセメントを混合したソイルモルタルや、セメントと安定液の混合物を用いる山留壁築造工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術における山留壁の築造工法としては、
パネルを築造するべき領域を掘削し、安定液を充填した掘削溝内に芯材を建て込んだ後にトレミー管を建て込み、充填材(ソイルモルタルやセメントベントナイト等)を打設する「先建込み方式」方式と、
パネルを築造するべき領域を掘削し、安定液を充填した掘削溝内にトレミー管を建て込み、充填材を打設した後に芯材を建て込む「後建込み方式」方式、
が存在する。
ここで、掘削溝内に充填された安定液は充填材よりも比重が小さいので、充填材を打設する際に掘削溝から排出される。
【0003】
図14は「先建込み方式」において掘削された領域に芯材1を建て込んだ状態を示しており、芯材1がI形鋼で、一つのパネル10Bに例えば5本の芯材1を建て込む場合を示している。
図14においては、5本の芯材1が掘削溝Hを(掘削溝の長手方向について)6分割しており、6分割された各領域にそれぞれトレミー管2を建て込んでいる。芯材1が隣接する長手方向の領域へ充填材が流入するのを阻害するため、掘削溝全体に充填材を打設するには、芯材1で区切られた6つの領域の各々にトレミー管2を建て込み、芯材1で区切られた6つの領域の各々に充填材を打設しなければならない。そのため、従来の「先建込み方式」では、充填材の打設工程において多大な労力及びコストが要求されるという問題点が存在する。
一方、充填材の打設後に芯材1を建て込む「後建込み方式」では、トレミー管を建て込んで充填材を打設した後に長時間を経過すると、打設された充填材が硬化(固化)して芯材1を建て込むことが出来なくなってしまう。従来の「後建込み方式」では、充填材が硬化して芯材1が建て込めないという事態を防止するために、高価な遅延剤を充填材に混合する必要がある。しかし、遅延剤は高価であり、遅延剤を使用することにより山留壁築造のコストが増加してしまう。
【0004】
ここで、山留壁の様な連続壁を築造するに際しては、図15で示す様に、先ず複数の先行パネル10Aを相互に連続しない様に(断続的に)築造し、その後、先行パネル10Aの間の領域に後行パネル10Bを築造して、地中連続壁を築造している。
その際に、先行パネル10Aと後行パネル10Bの接続箇所を確実に止水して地中連続壁の品質を向上するため、後行パネル10Bを築造するため先行パネル10A間の領域を掘削する際には、後行パネル10Bの長手方向両端部、すなわち先行パネル10Aとの接続箇所については、先行パネル10Aの端部と重複(オーバーラップ)して切削し、切削箇所を清掃機械で洗浄した後、「先建込み方式」であれば芯材1を建て込み、「後建込み方式」であれば充填材を打設する。
この際、建込み工程と充填材の打設工程を施工するためには、「先建込み方式」であっても「後建込み方式」であっても、長時間(通常、1つの後行パネル10Bについて丸一日)が必要になるので、その間に、清掃機械で洗浄した切削面(先行パネル10Aと後行パネル10Bとの接続部:先行パネル10Aにおける後行パネル10B側端部)に所謂「マッドケーキ」が生成してしまう。マッドケーキが生成した状態で充填材を打設して後行パネル10Bを築造すると、先行パネル10Aと後行パネル10Bとの接続箇所における強度及び止水性が低下し、山留壁の品質が低下してしまう恐れがある
【0005】
その他の従来技術として、先行パネルと後行パネルの接合部における隙間の土砂を凍結して、当該隙間を止水する技術が提案されている(特許文献1参照)。しかし、係る従来技術(特許文献1)では、上述した様な問題点を解消することは意図していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平9-279571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、従来技術の「先建込み方式」と「後建込み方式」における問題を解消し、先行パネルと後行パネルとの接続箇所における強度及び止水性が低下することがない様な山留壁築造工法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の山留壁築造工法は、
後行パネル(10B)の長手方向両端部を除く領域(長手方向中央側の領域)に芯材(1-1:第1の芯材)を建て込む第1の芯材建込み工程と、
芯材(第1の芯材1-1)で仕切られた掘削溝(H)の各領域にトレミー管(2)を建て込むトレミー管建込み工程と、
前記トレミー管(2)から充填材(C:ソイルモルタルやセメントベントナイト等)を打設する充填材打設工程と、
充填材打設工程の後、後行パネル(10B)の長手方向両端部に芯材(1-2:第2の芯材)を建て込む第2の芯材建込み工程を有することを特徴としている。
本明細書において、「第1の芯材(1-1)」、「第2の芯材(1-2)」を包括的に「芯材(1)」と表現する場合があり、「第1の芯材1-1」、「第2の芯材1-2」を包括的に「芯材1」と表現する場合がある。或いは、従来技術で用いられる芯材を「芯材1」と表現する場合がある。ここで、第1の芯材(1-1)、第2の芯材(1-2)は実質的に同一であるが、異なる材質、異なる形状等にとすることも可能である。実質的に同一な芯材を「第1の芯材(1-1)」、「第1の芯材1-1」、「第2の芯材(1-2)」、「第2の芯材1-2」と表現するのは、両者の明確化のためである。
【0009】
また本発明の山留壁築造工法は、
後行パネル(10B)の長手方向両端部において移動する清掃機(3)と干渉する領域を除く領域(長手方向中央側の領域)に芯材(1-1:第1の芯材)を建て込む第1の芯材建込み工程と、
第1の芯材建込み工程の後、後行パネル(10B)の長手方向両端部を清掃機(3)で洗浄する洗浄工程と、
洗浄工程の後、芯材(第1の芯材1-1)で仕切られた掘削溝(H)の各領域にトレミー管(2)を建て込むトレミー管建込み工程と、
前記トレミー管(2)から充填材(C:ソイルモルタルやセメントベントナイト等)を打設する充填材打設工程と、
充填材打設工程の後、前記移動する清掃機(3)と干渉する領域(後行パネル10Bの長手方向両端部)に芯材(1-2:第2の芯材)を建て込む第2の芯材建込み工程を有することを特徴としている。
【0010】
さらに本発明の山留壁築造工法は、
後行パネル(10B)の長手方向両端部において移動する清掃機(3)と干渉する領域を除く領域(長手方向中央側の領域)に芯材(第1の芯材1-1)を建て込む第1の芯材建込み工程と、
第1の芯材建込み工程の後、芯材(第1の芯材1-1)で仕切られた掘削溝(H)の各領域にトレミー管(2)を建て込むトレミー管建込み工程と、
当該トレミー管(2)から充填材(C)を打設する充填材打設工程と、
充填材打設工程の後、後行パネル(10B)の長手方向両端部を清掃機(3)で洗浄する洗浄工程と、
洗浄工程の後、前記移動する清掃機(3)と干渉する領域(後行パネル10Bの長手方向両端部)に芯材(第2の芯材1-2)を建て込む第2の芯材建込み工程を有することを特徴としている。
【0011】
そして本発明の山留壁築造工法は、
後行パネル(10B)の長手方向両端部において移動する清掃機(3)と干渉する領域を除く領域(長手方向中央側の領域)に芯材(第1の芯材1-1)を建て込む第1の芯材建込み工程と、
第1の芯材建込み工程の後、芯材(第1の芯材1-1)で仕切られた掘削溝(H)の各領域にトレミー管(2)を建て込むトレミー管建込み工程と、
トレミー管建込み工程の後、後行パネル(10B)の長手方向両端部を清掃機(3)で洗浄する洗浄工程と、
前記トレミー管(2)から充填材(C:ソイルモルタルやセメントベントナイト等)を打設する充填材打設工程と、
充填材打設工程の後、後行パネル(10B)の長手方向両端部に芯材(1-2:第2の芯材)を建て込む第2の芯材建込み工程を有することを特徴としている。
【0012】
それに加えて本発明の山留壁築造工法は、
後行パネル(10B)の長手方向両端部において移動する清掃機(3)と干渉する領域を除く領域(長手方向中央側の領域)に芯材(第1の芯材1-1)を建て込む第1の芯材建込み工程と、
第1の芯材建込み工程の後、芯材(第1の芯材1-1)で仕切られた掘削溝(H)の各領域にトレミー管(2)を建て込むトレミー管建込み工程と、
当該トレミー管(2)から充填材(C:ソイルモルタルやセメントベントナイト等)を打設しながら、充填材(C)が打設された深度方向の領域における後行パネル(10B)の長手方向両端部を清掃機(3)で洗浄する打設及び洗浄工程と、
打設及び洗浄工程の後、前記移動する清掃機(3)と干渉する領域(後行パネル10Bの長手方向両端部)に芯材(第2の芯材1-2)を建て込む第2の芯材建込み工程を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
上述の構成を具備する本発明によれば、充填材(C)の打設後における芯材(1)の建込みは、移動する清掃機(3)と干渉する領域(後行パネル10Bの長手方向両端部)に建て込まれる芯材(第1の芯材1-1)の本数のみであり、従来の「後建込み方式」に比較して建て込まれる本数が少ないので(例えば2本のみ)、充填材(C)の打設後、芯材(1)の建込み完了までの時間が短縮され、芯材(1)の建込み中に充填材(C)が硬化することが抑制される。
そのため、充填材(C)中に遅延剤を混入する必要が無く、高価な遅延剤を使用する必要が無いため施工コストの増加が防止される。
また、本発明では、建て込むべきトレミー管(2)の本数が、従来の「先建込み方式」に比較して、移動する清掃機(3)と干渉する領域の数だけ(少なくとも2本は)少なくなるので、従来の「先建込み方式」に比較して、トレミー管建込み等の充填材打設作業に費やされる労力及びコストが軽減される。
【0014】
ここで、芯材(1)の建込み工程と充填材の打設工程を施工するためには、「先建込み方式」であっても「後建込み方式」であっても、長時間(通常、1つの後行パネル10Bについて丸一日)が必要になるので、その間に、清掃機械で洗浄した切削面(先行パネル10Aと後行パネル10Bとの接続部:先行パネル10Aにおける後行パネル10B側端部)に所謂「マッドケーキ」が生成してしまう。マッドケーキが生成した状態で充填材を打設して後行パネル(10B)を築造すると、先行パネル(10A)と後行パネル(10B)との接続箇所における強度及び止水性が低下し、山留壁の品質が低下してしまう恐れがある。
本発明において、掘削溝長手方向中央の領域(清掃機3と干渉しない領域)にのみ芯材(第1の芯材1-1)を建て込んだ後に清掃機械で洗浄すれば、洗浄後に建て込むべき芯材(第2の芯材1-2)の本数も、トレミー菅(2)の本数も、(従来の「先建込み方式」に比較して)少なく、洗浄後、充填材(C)の打設が完了するまでの時間が短縮されるので、前記「マッドケーキ」の発生が抑制される。そのため、先行パネル(10A)と後行パネル(10B)の接続箇所の品質が低下することがなく、築造される山留壁の強度及び止水性も低下せず、その品質が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態の工程図であって、掘削溝の中央領域に芯材(第1の芯材)を建て込む工程を示す図である。
図2】第1実施形態の工程図であって、掘削溝の両端部を清掃機で洗浄する工程を示す図である。
図3】第1実施形態の工程図であって、掘削溝に充填材を打設する工程を示す図である。
図4】第1実施形態の工程図であって、掘削溝の両端近傍に芯材(第2の芯材)を建て込む工程を示す図である。
図5】第1実施形態の作業手順を示すフローチャートである。
図6】本発明の第2実施形態の工程図であって、掘削溝の中央領域に芯材(第1の芯材)を建て込む工程を示す図である。
図7】第2実施形態の工程図であって、芯材(第1の芯材)で仕切られた領域の各々にトレミー管を建て込み、充填材を打設する工程を示す図である。
図8】第2実施形態の工程図であって、充填材を打設した後、掘削溝の両端部を清掃機で洗浄する工程を示す図である。
図9】第2実施形態の工程図であって、掘削溝の両端近傍に芯材(第2の芯材)を建て込む工程を示す図である。
図10】第2実施形態の作業手順を示すフローチャートである。
図11】第2実施形態の変形例の工程図であって、充填材を打設しながら掘削溝の両端部を清掃機で洗浄する工程を示す図である。
図12】第2実施形態の作業手順の変形例を示すフローチャートである。
図13】第3実施形態の作業手順を示すフローチャートである。
図14】従来の「先建込み方式」における問題点を示す説明図である。
図15】従来の山留壁築造工法の概要を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図示の実施形態において、図14と同様に、建て込まれる芯材1-1,1-2はI形鋼であり、一つのパネルに合計5本の芯材1が建て込まれる場合を例示する。図示の実施形態において、第1の芯材1-1、第2の芯材1-2を包括的に芯材1と表現する場合がある。或いは、従来技術で用いられる芯材を「芯材1」と表現する場合がある。ここで、第1の芯材1-1、第2の芯材1-2は同一の材質、形状を有しているが、第1の芯材1-1、第2の芯材1-2を異なる材質及び/又は異なる形状とすることも可能である。同一の材質、形状の芯材を「第1の芯材1-1」、「第2の芯材1-2」と表現するのは、明確化のためである。
符号及び説明の重複を避けるため、図示の実施形態では同様な部材に同様な符号を付してある。
最初に図1図5を参照して、本発明の第1実施形態に係る山留壁築造工法について説明する。
図1で示す様に、先行パネル(10A:図1では図示せず)に挟まれた領域(後行パネル10Bに相当する空間:以下、「後行パネル」と記載)に掘削溝Hを掘削する。掘削溝Hを掘削する工程は、図5では示されていない。ここで、図1では明示されていないが、掘削溝H内には安定液(例えばベントナイト溶液)が充填されている。
掘削溝Hを掘削した後、清掃機3(図2参照)と干渉しない空間(掘削溝Hの長手方向中央側の領域)に、第1の芯材1-1(図2では3本)を建て込む(第1の芯材建込み工程:図5のステップS1)。
【0017】
図2で示す清掃機3は、深度方向(図2の紙面と垂直な方向)に移動し、後行パネル10B(掘削溝H)の長手方向(図1の左右方向)両端部端面を洗浄する。図1においては、清掃機3が端面を洗浄する際に第1の芯材1-1と干渉しない様に、掘削溝H(後行パネル10B)の長手方向両端の領域AEL及びAERの長手方向寸法、すなわち掘削溝Hの端部と図1の工程で建て込まれる第1の芯材1-1との距離が設定される。
図1の工程で建て込まれる第1の芯材1-1の本数は、例えば、「最終的に後行パネル10Bに建て込まれる芯材1の総本数-2本」であり、そのため、図1の工程では3本の第1の芯材1-1が建て込まれた状態が例示されている。
ここで、上記式における「-2本」は、第1の芯材建込み工程では建て込まれない第2の芯材1-2の本数である。図示の実施形態では、掘削溝H(後行パネル10B)の長手方向両端の領域AEL及びAERには、各々1本ずつ第2の芯材1-2が建て込まれており、第1実施形態では領域AEL及びAERには後述する図4の工程で第2の芯材1-2が建て込まれる。図1図3の工程では建て込まれていない2本の第2の芯材1-2は、図1では破線で表示されている。なお、領域AEL及びAERの各々に建て込まれる第2の芯材1-2の本数は1本に限定される訳ではなく、2本以上の第2の芯材1-2が、領域AEL及びAERの各々に建て込まれる場合も存在する。
【0018】
次に図2で示す様に、後行パネル10Bの長手方向両端部(図2における符号EL及びERで示す部分)を、清掃機3で洗浄する(洗浄工程:図5のステップS2)。
清掃機3は、例えばブラシタイプでも、噴流タイプでも良い。
洗浄工程の後、図3に示す様に、第1の芯材1-1で仕切られた後行パネル10B(掘削溝H)の各領域にトレミー管2を建て込む(トレミー管建込み工程)。
図3で示す様に、第1実施形態では第1の芯材1-1により掘削溝Hは4つの領域に仕切られており、長手方向両端側の2領域は中央側の2領域に比較して面積(断面積)が大きい。
図3で示す様に、第1の芯材1-1で仕切られた4つの領域の各々にトレミー管2を建て込むが、図14に示す従来の「先建込み方式」に比較して、両端の領域AEL、AERに建て込まれていない第2の芯材1-2の本数(図3では図示せず:図示の実施形態では2本)だけ、トレミー管2を建て込む本数を少なくすることが出来る。
【0019】
トレミー管2を建て込んだ後、トレミー管2から第1の芯材1-1で仕切られた4つの領域に充填材C(ソイルモルタルやセメントベントナイト等)を打設する(充填材打設工程)。充填材Cが打設された状態はハッチングを付して図示する。ここで図3では、充填材Cが打設された状態が示されている。図5において、トレミー管2を建て込む工程及び充填材Cを打設する工程をステップS3で示す。
トレミー管2による充填材Cの打設に際しては、充填材Cを打設しながら、トレミー管2を断続的に引き上げる。図1の工程で掘削溝Hに充填された安定液は、図3の工程で充填材Cが打設される際に、打設された充填材Cにより掘削溝Hの下方から押し出され、掘削溝Hから排出される。
【0020】
充填材Cを打設した後、図4で示す様に、掘削溝H或いは後行パネル10Bの長手方向(図1図4の左右方向)両端の領域AEL及びAER(図1の工程で第1の芯材1-1を建て込まなかった領域:清掃機3が移動すると干渉する領域)に第2の芯材1-2を建て込む(第2の芯材建込み工程:図5のステップS4)。
図示の実施形態では、図4の第2の芯材建込み工程において、領域AEL、領域AERでそれぞれ1本ずつ、合計2本の第2の芯材1-2を建て込む。第2の芯材建込み工程で建て込む第2の芯材1-2は、図1の第1の芯材建込み工程で建て込まれた第1の芯材1-1と同一の芯材である。図1で建て込まれた第1の芯材1-1と区別をするため、図4では、第2の芯材建込み工程で建て込まれる第2の芯材1-2を太線で表示している。
【0021】
図1図5の第1実施形態によれば、充填材Cの打設後における第2の芯材1-2の建込み(第2の芯材建込み工程)は、後行パネル10Bの長手方向両端の領域AEL及びAERにおける芯材の建込みのみが行われる。換言すれば、充填材Cの打設後には、清掃機3が移動する際に干渉する領域に建て込まれる第2の芯材1-2のみが建て込まれ、図示の例では合計2本のみが建て込まれる。そのため、従来の「後建込み方式」で充填材Cの打設後に建て込まれる本数(図14の例では5本)に比較して(充填材Cの打設後に建て込まれる本数)少ないので、充填材Cの打設後、第2の芯材1-2の建込み中に充填材Cが硬化してしまう恐れが少ない。
したがって、充填材C中に遅延剤を入れる必要が無く、高価な遅延剤を使用する必要が無い分、施工コストが抑制される。
また第1実施形態では、建て込むべきトレミー管2の本数が、従来の「先建込み方式」(図14参照)に比較して、領域AEL及びAERの2つの領域(移動する清掃機3と干渉する領域の数)の分(図示の例では2本)だけ少なくなる。そのため、従来の「先建込み方式」に比較して、トレミー管建込み等の充填材打設作業に費やされる施工時間、労力が軽減され、施工コストが低減する。
【0022】
さらに第1実施形態によれば、清掃機3による洗浄後は、掘削溝Hの長手方向両端の領域(清掃機3と干渉する領域)のみに第2の芯材1-2を建て込めば良く(図示の例では合計2本のみ)、また、建て込むべきトミー菅2の本数も従来の「先建込み方式」に比較して(図示の例では2本)少ない。
そのため、従来の「先建込み方式」に比較して、清掃機3による洗浄後、全ての芯材1の建込みが完了し(第2の芯材1-2の建込みが完了し)充填材打設が完了するまでの時間が、清掃機3と干渉しない領域(掘削溝Hの中央の領域)に第1の芯材1-1を建て込む時間(図1図4では3本の第1の芯材1-1を建て込む時間)の分だけ短縮される。清掃機3による洗浄後の時間が短縮されるため、所謂「マッドケーキ」の発生が抑制され、先行パネル10Aと後行パネル10Bの接続箇所の品質は低下せず、強度及び止水性も低下せず、山留壁の品質が向上する。
【0023】
次に、図6図10を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。
第2実施形態では、先ず図6で示す工程を行うが、図6で示す工程は、第1実施形態における図1で示す工程と同様である。すなわち、先行パネル(図6では図示せず)に挟まれた領域(後行パネル10Bに相当する空間)に掘削溝Hを掘削し(図示せず)、掘削溝H内に安定液(図示せず)を充填する。
掘削溝Hを掘削した後、図6で示す様に、清掃機3と干渉しない空間(後行パネル10B或いは掘削溝Hの長手方向中央側の領域)に第1の芯材1-1を建て込む(第1の芯材建込み工程:図10のステップS11)。第1の芯材1-1は、掘削溝Hの長手方向中央側の領域において(図6では3本)建て込まれるが、掘削溝H(後行パネル10B)の長手方向両端の領域AEL及びAERには、図6の工程では第1の芯材1-1は建て込まれない。
図6の工程では掘削溝H或いは後行パネル10Bの長手方向両端の領域には第1の芯材1-1は建て込まれず、後述する図9の工程で当該領域に2本の第2の芯材1-2建て込まれる。当該2本の第2の芯材1-2は図1では破線で表示されている。
【0024】
次に、図7で示す様に、第1の芯材1-1で仕切られた後行パネル10B(掘削溝H)の各領域にトレミー管2を建て込む(トレミー管建込み工程)。図7図14とを比較すれば明らかな様に、長手方向両端の領域AEL及びAERに第2の芯材1-2を建て込まない分だけ、トレミー管2を建て込む本数が少なくて済む。
さらに図7において、トレミー管2を建て込んだ後、第1の芯材1-1で仕切られた4つの領域にトレミー管2から充填材C(ソイルモルタルやセメントベントナイト等)を打設する(充填材打設工程)。第1実施形態と同様に、トレミー管2は、充填材Cを打設しながら、断続的に引き上げられる。図10において、トレミー管2を建て込む工程と、充填材Cを打設する工程は、ステップS12で示す。
【0025】
図7の工程で充填材Cを打設した後、図8で示す様に、後行パネル10Bの長手方向(図8の左右方向)両端面EL及びERを清掃機3で洗浄する(洗浄工程:図10のステップS13)。
図8の洗浄工程の後、図9で示す様に、後行パネル10Bの長手方向(図9の左右方向)両端の領域AEL及びAER(清掃機3が洗浄のため移動する領域:清掃機3と干渉する領域)に第2の芯材1-2を建て込む(第2の芯材建込み工程:図10のステップS14)。
図9の第2の芯材建込み工程では、領域AEL、領域AERでそれぞれ1本ずつ、合計2本の第2の芯材1-2が建て込まれる。
【0026】
図6図10に示す本発明の第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に、充填材Cの打設後は、後行パネル10Bの長手方向両端の領域AEL及びAERに各1本ずつ第2の芯材1-2を建て込めば良く、従来の「後建込み方式」に比較して充填材Cの打設後に建て込むべき芯材1の本数が少ない。そのため、第2の芯材1-2の建込みの最中に充填材Cが硬化して、第2の芯材1-2が建て込めなくなる恐れが少なく、充填材C中に遅延剤を入れる必要が無く、高価な遅延剤を使用する必要が無い。そのため、施工コストが抑制される。
また、第2実施形態においても、充填材Cの打設に際して建て込むべきトレミー管2の本数が、長手方向両端の領域AEL及びAERに建て込まれる第2の芯材1-2の本数(第2実施形態では例えば2本)だけ、従来の「先建込み方式」に比較して少ないので、トレミー管建込み等の充填材打設作業に費やされる施工時間、労力が軽減される。
【0027】
さらに、上述した様に、清掃機3による洗浄後に第2の芯材1-2を建て込む工程では、長手方向両端の領域AEL及びAERにのみ第2の芯材1-2を建て込めば良く(例えば2本の第2の芯材1-2のみを建て込めば良く)、また建て込むべきトレミー菅2の本数も、従来の「先建込み方式」に比較して、少なくとも、長手方向両端の領域AEL及びAERに建て込む第2の芯材1-2の本数(例えば2本)分だけ少ない。
そのため、清掃機3による洗浄後、充填材打設までの時間が短縮され、マッドケーキが発生し難くなり、先行パネル10Aと後行パネル10Bの接続箇所の強度及び止水性が低下せず、山留壁の品質が向上する。
図6図10の2実施形態におけるその他の構成及び作用効果については、図1図5の第1実施形態と同様である。
【0028】
図7図8を参照して説明した様に、第2実施形態では、充填材Cを打設した後に清掃機3で掘削溝H(後行パネル10Bの)の長手方向両端を洗浄する。
それに対して、図11図12で示す第2実施形態の変形例では、充填材Cの打設と後行パネル10Bの両端部の洗浄を並行して行う。
図11図12で示す変形例の施工に際しては、先ず、第1実施形態、第2実施形態と同様、第1の芯材建込み工程(第1実施形態の図1の工程、第2実施形態の図6の工程:図12のステップS21)を実行する。そして第2実施形態と同様に、トレミー管建込み工程(図7)を実行する(図12のステップS22)。
ここで、図11図12の変形例では、領域AEL及びAERにおけるトレミー管2の建込み位置は、清掃機3とトレミー管2とが干渉しない様に、領域AEL及びAERにおける長手方向中央側の位置にしている。
【0029】
トレミー管2を建て込んだ後、図11で示す様に、トレミー管2から充填材C(ソイルモルタルやセメントベントナイト等)を打設しながら、清掃機3により、充填材Cが打設されている深度方向領域の後行パネル10Bの両端部EL、ERを洗浄する(打設及び洗浄工程:図12のステップS23)。
ここで、トレミー管2から充填材Cを打設するのは後行パネル10Bの深度方向における領域の全てではなく、一部の領域である。そして、トレミー管2から充填材Cを打設すると共に、充填材Cが打設されている深度方向の一部領域における後行パネル10Bの長手方向両端部EL、ERを、清掃機3で洗浄する。
そして打設及び洗浄工程は、例えば山留壁の深度方向における一部領域毎に実行され、充填材Cの打設と清掃機3による洗浄が深度方向全領域に亘って行われるまで繰り返されている。換言すれば、充填材Cの打設及び清掃機3による洗浄を、深度方向領域の一部ずつ並行して行い、深度方向領域の全領域に充填材を充填し且つ長手方向両端部EL、ERを洗浄する(図12のステップS24がNoのループ)。
【0030】
図11で示す打設及び洗浄工程の後(図12のステップS24がYes)、第1実施形態、第2実施形態と同様に、後行パネル10Bの長手方向両端の領域AEL及びAERに第2の芯材1-2を建て込む(第2の芯材建込み工程:第1実施形態の図4の工程、第2実施形態の図9の工程:図12のステップS25)。
図11図12に示す第2実施形態の変形例においては、図11に示す打設及び洗浄工程により充填材Cの打設と清掃機3による後行パネル10Bの両端部EL、ERの洗浄を同時に(並行して)実行するので、パネル10の深度が深い施工においても適用可能である。
図11図12で示す第2実施形態の変形例におけるその他の構成及び作用効果は、図6図10の第2実施形態と同様である。
【0031】
ここで、どの様な施工現場であっても第1実施形態、第2実施形態の何れも施工可能であるが、例えば、山留壁の深度が20mより浅いと第1実施形態、深度が20m以上だと第2実施形態、という様に使い分けることも可能である。
また、例えば、土とセメントを混合したソイルモルタルを使用する場合には第1実施形態、セメントと安定液の混合物を用いる泥水固化壁ならば第2実施形態、と使い分けることも可能である。
【0032】
図13を参照して、本発明の第3実施形態を説明する。
図1図5の第1実施形態では、掘削溝の長手方向両端面を清掃機3により洗浄してからトレミー管2を建て込んで充填材Cを打設したが、第3実施形態では、トレミー管2を建て込んだ後、充填材Cを打設する前に、清掃機3により洗浄している。
第3実施形態において、先ず、先行パネルに挟まれた領域(後行パネルに相当する空間)に掘削溝を掘削し、掘削溝内に安定液(図示せず)を充填する(図13では図示せず)。そして掘削溝に第1の芯材1-1を建て込み(図13のステップS31)、第1の芯材1-1で仕切られた各領域にトレミー管2を建て込む(ステップS32)。そして、充填材Cを打設する以前の段階で(ステップS34以前に)長手方向両端面を清掃機3により洗浄する(ステップS33)。
その後、充填材Cを打設(ステップS34)し、第2の芯材1-2を掘削溝両端の領域に建て込む(ステップS35)。
【0033】
図13の第3実施形態では、トレミー管2を建て込んだ(ステップS32)後、充填材Cを打設する以前の段階で(ステップS34以前に)長手方向両端面を清掃機3により洗浄する(ステップS33)ので、洗浄工程で生じた各種異物(いわゆる「くず」)をトレミー管2により吸引して掘削溝外に排出することが出来る。その結果、後行パネルには洗浄工程で生じた各種異物が包含され難くなり、築造された壁の品質が向上する。
図13の第3実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、図1図12の各実施形態と同様である。
【0034】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
【符号の説明】
【0035】
1・・・芯材
1-1・・・第1の芯材
1-2・・・第2の芯材
2・・・トレミー管
3・・・清掃機
10A・・・先行パネル
10B・・・後行パネル
C・・・充填材
H・・・掘削溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15