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  • 特許-水素製造方法及び水素製造装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-24
(45)【発行日】2023-04-03
(54)【発明の名称】水素製造方法及び水素製造装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/08 20060101AFI20230327BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20230327BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20230327BHJP
【FI】
C01B3/08 Z
C25B1/04
C25B9/00 A
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019116713
(22)【出願日】2019-06-24
(65)【公開番号】P2021001097
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-04-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516047979
【氏名又は名称】山本 泰弘
(73)【特許権者】
【識別番号】516047980
【氏名又は名称】高橋 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100080654
【弁理士】
【氏名又は名称】土橋 博司
(72)【発明者】
【氏名】山本 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】高橋 剛
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-121826(JP,A)
【文献】国際公開第2009/008330(WO,A1)
【文献】特開2001-031401(JP,A)
【文献】特開2018-039710(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/00 - 3/58
C25B 1/04
C25B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料水として、日本の飲料水としての水道水規格及び、その他の水は浄水器で濾過した水、海水や汚れの酷い水、硬水、軟水を問わずRO膜にて純水にした水を使用するか、またそれらの水にミネラルを添加した水を使用し、該原料水を天然鉱石または人工鉱石、あるいは天然鉱石および人工鉱石に通過させた改質した水と、
鉄、ニッケル、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、スズのいずれかからなる金属と、
前記鉄、ニッケル、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、スズのいずれかからなる金属を収容するための反応容器と、
前記反応容器に前記鉄、ニッケル、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、スズのいずれかからなる金属を投入するためのカートリッジ式の金属投入手段と、
からなる水素の製造装置において、
前記金属投入手段から前記反応容器内に投入された前記鉄、ニッケル、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、スズのいずれかからなる金属は、前記改質した水と接触して水素発生後に酸化物粉体になり、前記鉄、ニッケル、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、スズのいずれかからなる金属は変化を遂げるようにした水素の製造装置であって、変化した金属酸化物粉体をカートリッジ内で分離し、回収可能な状態で取り出すことを可能とした水素の製造装置であって、
前記反応容器は、該反応容器内の圧力が上昇し、6気圧以上の圧力が反応容器内にかかった時は、反応スピードが抑えられるようにしたことを特徴とする水素の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改質した水と鉄、ニッケル、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、スズなどイオン化傾向の強い金属から水素を発生させるための水素製造方法及び水素製造装置に関するものである
【背景技術】
【0002】
燃料ガスとして水素を使用することは従来から知られている。
そしてそのための水素を製造する製造方法としては多くの発明が提供されている。
例えば、a.水100%を熱分解して水素を得る方法や、b.硫酸を熱分解し、ヨウ素水を用いて水素を取り出すIS法(Iodine-Sulfe)法等が知られている。
前記b.IS法は、ブンゼン反応工程と、ヨウ化水素濃縮分解行程と、硫酸濃縮分解行程による3つの行程を経て、水から水素と酸素とを分解して取り出すものである(特開2005-41764号公報、特許文献1参照)。
その他に、c.金属亜鉛とマグネタイトと水とを反応させ、反応生成物として水素を発生させる水の分解方法が知られている(特開2001-270701号公報、特許文献2)。
【0003】
さらに、d.アルミニウムやマグネシウムと水とを接触させることで、水素を発生させる水素の製造方法も知られている(特開2007-290888号公報、特許文献3)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-41764号公報
【文献】特開2001-270701号公報
【文献】特開2007-290888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のa.水100%を熱分解して水素を得る方法では、水は水素と酸素との結びつきが強いため、理論上3,000℃~5,000℃の温度を与えないと、水素と酸素に分解しないと言われている。3,000℃以上の温度で水を熱分解して水素を得る方法では、3,000℃以上の高温を得る実質的な方法が得られないことや、そのような高温状態の空間を外界から保つための設備を安価に作れないことや、高温の空間内に連続的に水を供給する手段が考えられないこと等、多くの問題を含んでいることから、水の熱分解による水素の生成は実現には至っていない。
【0006】
また、b.特許文献1に示すIS法では、900℃程度の高熱を必要とするため、熱源として高温ガス炉等を用いなければならない。この高温ガス炉は製造コストが高く、しかも3つの工程を経て水素を製造することになり、水素を製造するためのコストが非常に高いものとなっていた。
【0007】
さらに、c.特許文献2に示す水の分解方法では、金属亜鉛とマグネタイトとを600℃で水蒸気と反応させることで水素を製造するものであり、600℃の水蒸気を作るための加熱手段を備えなければならない。
【0008】
d.特許文献3に示す水素の製造方法では、水としてpHが4~10の不凍水を使用するもので、0℃以下でも水素を発生させるものである。この特許文献3では、アルミニウムと水との反応によって水素を発生させるが、0℃以下の低温で反応を行なうことから、低温では水素を大量に発生させることはできず、高い経済効率で水素を発生させることができない。
【0009】
本発明は、改質した水と鉄、ニッケル、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、スズとを接触させることで水素を製造することができる水素の製造方法と、改質した水と鉄、ニッケル、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、スズ(以下、イオン化傾向の強い金属という)とを接触させることで低温かつ、自身の反応熱を利用し、外部からのエネルギーを極力使用せず、低エネルギーで効率良く水素を製造するための水素製造装置とを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の水素の製造方法は、水は日本の飲料水としての水道水規格及び、その他の水は浄水器で濾過した水、海水や汚れの酷い水、硬水、軟水を問わずRO膜などにて純水にした水を用いる。またそれらの水にミネラルを添加した水などを条件にした水を使用する。その後に天然鉱石または人工鉱石、あるいは天然鉱石および人工鉱石に通過させることによって生成するものを改質した水とし、改質した水とイオン化傾向の強い金属とを反応容器内に入れて反応容器内で接触させた状態で反応容器内の温度を1℃以上かつ改質した水の沸点未満とすることで、改質した水とイオン化傾向の強い金属とを反応させて水素を発生させることを特徴とするものである。
【0011】
本発明は、イオン化傾向の強い金属を粉末またはインゴット状、粒状、あらゆる形の粉体とし、反応容器内の温度を1℃以上かつ改質した水の沸点未満にして水素を発生させる。改質した水は酸性(酸性の改質した水)又はアルカリ性(アルカリ性の改質した水)とする。そして、該反応容器内の酸性又はアルカリ性の特殊な水に新たなイオン化傾向の強い金属からなる粉末またはインゴット状、粒状、あらゆる形の粉体を供給することで、加熱手段による加熱無しに前記反応容器内の温度を1℃以上かつ改質した水の沸点未満の間に保持して水素を発生させることを特徴とするものである。
【0012】
本発明は、反応容器内の温度が1℃以上で80℃未満の場合に、反応容器内の温度を加熱手段及び電気分解によって継続的に上昇させることをも特徴とするものである。
【0013】
本発明は、改質した水を生成するための天然鉱石として、黄鉄鉱、白鉄鉱、辰砂、方鉛鉱、斑銅鉱、ハロゲン化鉱物、蛍石、氷晶石、トルマリン、黒曜石、マグネシウム、方解石、ウレキサイト(テレビ石)、コールマン石、硼砂、ハウライト、石膏、重晶石、天青石、燐灰ウラン石、カルノー石、錦石、黒砂金石、麦飯石、バドガシュタイン鉱石、石英等を用い、その粒径としては種類に応じて1~5mm、5~10mm、10~20mm、20~40mm、30~50mmとすることが挙げられる。また改質した水を生成するための人工鉱石としては、テラヘルツ鉱石等が挙げられる。人工鉱石を用いる場合には、人工鉱石以外の物質としてシリカ、アルミニウム、鉄、カルシウム、亜鉛、クロム、マンガン、ジルコニウム、ストロンチウム、ステンレス、銀等からなる少なくとも1種類の金属を混合させたことをも特徴とするものである。また天然鉱石の他、天然鉱石より抽出出来るミネラルを添加することも有効である。例えば腐食花崗岩などから抽出するミネラルを使用する。添加ミネラル成分及び添加する個体の物質の例として以下の、カルシウム、リン、ケイ素、マグネシウム、ナトリウム、セレン、亜鉛、バナジウム、ゲルマニウム、ニッケル、マンガン、モリブデン、銅、タングステン、コバルト、リチウム、バリウム、鉄、カリウム、アルミニウム、ルビジウム、チタンなどが挙げられる。本発明は、前記改質した水100重量部に対して、イオン化傾向の強い金属を3重量部以上、望ましくは15重量部以上配合することを特徴とするものである。さらに本発明は、前記イオン化傾向の強い金属の重量部を10~40重量部以上とすることをも特徴とするものである。
【0014】
本発明は、改質した水に酸性物質又は、アルカリ性物質を加える。例えば代表的なもので、酸性物質では硫酸が挙げられる。そしてアルカリ性物質では水酸化ナトリウムが挙げられる。酸性の水溶液を用意するものも、アルカリ性の水溶液を用意するものも、同じ手順になる。次はアルカリ性の水溶液を用意する手順である。水酸化ナトリウムを加えた水酸化ナトリウム水溶液を用意し、反応容器内でイオン化傾向の強い金属と接触させることを特徴とするものである。
本発明は、反応容器の外部からの熱を加える加熱手段を用いずに、水酸化ナトリウム水溶液とイオン化傾向の強い金属との反応熱のみによって反応容器内の温度を25℃以上にすることを特徴とするものである。
本発明は、酸性の希硫酸水溶液や水酸化ナトリウム水溶液と前記イオン化傾向の強い金属との反応熱によって反応容器内の温度を25℃以上にすることを特徴とするものである。
そして本発明は、酸性では、例えば硫酸を使用した場合は、希釈してその濃度を0.1%以上とし、アルカリ性では水酸化ナトリウム水溶液における水酸化ナトリウムの濃度を0.1%以上とすることを特徴とするものである。
本発明は、硫酸水溶液の濃度範囲を0.1%~15%とすることを特徴とし、アルカリ性の場合の事例は、水酸化ナトリウム水溶液における水酸化ナトリウムの濃度を0.1%~3%とすることを特徴とするものである。
【0015】
本発明は、反応容器にて改質した水とイオン化傾向の強い金属とを接触させるために、イオン化傾向の強い金属を収容するための反応容器と、反応容器にイオン化傾向の強い金属を投入するための金属投入手段を備え、前記イオン化傾向の強い金属投入手段から反応容器内に投入されたイオン化傾向の強い金属は、水素発生後に酸化物粉体になり、イオン化傾向の強い金属は変化を遂げる。なお投入するイオン化傾向の強い金属はその形をカートリッジ式にし、前記反応容器内で安易に交換出来る装置であること、また変化された金属酸化物粉体は、カートリッジ内で分離し、回収可能な状態で取り出すことができる装置であることを特徴とするものである。
【0016】
また本発明は、反応容器の底に前記イオン化傾向の強い金属を投入し、その金属類の最上位よりも前記酸性あるいはアルカリ性水溶液の液面を上位とすることを特徴とするものである。また、イオン化傾向の強い金属と接触する水は、タンク内に静止する状態で投入するばかりでなく、流れる状態で接触させることも出来る。固定されたイオン化傾向の強い金属に水を連続的に接触させる方法も挙げられる。反対に水の中にイオン化傾向の強い金属を連続的に接触させて任意の状態で反応を連続的に行うことができる。そうすることで、反応を止めたり、反応をスタートさせたりと、繰り返して任意の時間でその反応を行うことができる。また、この反応容器内の圧力が6気圧に達することで、反応が抑えられて反応しにくくなることも特徴である。反応容器内から水素が発生し、水素が反応容器内から移動できない時に、反応容器内は圧力が上昇する。このときに6気圧以上の圧力が反応容器内にかかった時は、反応スピードが抑えられる傾向にあるのが特徴である。この改質した水とイオン化傾向の強い金属は、反応を促進させるため、同時に改質した水内のタンクに電極を設けて、電気分解による水素発生を同時に行うことが可能になる。電極のほか、イオン化傾向の強い金属も反応して、電気を帯びた金属からと改質した水から水素が大量に発生する。電極は、電極棒や電極板を用いることができ、その素材としては、ステンレス、銅、チタンなどが挙げられる。この時に、水素と酸素と水が亜臨界点の状態に似た動きをする水である改質した水が入り混じり、水素濃度を任意で高めたり、酸水素ガスを生成することも出来る。これは酸水素ガス(HHO)の状態のガス物質であり、それはブラウンガスとも呼ばれている。
【発明の効果】
【0017】
本発明の水素の製造方法の請求項1で使用する材料は、市販品ともいえるものが多く容易に準備できるものと改質した水との2種類の材料のみを用いるものであり、それらを反応容器内の温度を1℃以上にすることで水素を発生させるものである。本発明では、材料として化学剤やアルミニウム以外の金属を主要材料としなくても、イオン化傾向の強い金属と改質した水のみを用いて、非常に安価なコストで水素を製造することができる。また、天然のミネラルを主成分としたものを使うことにより安全で体に害のない物質だけで安全に構成されるのも特徴である。
【0018】
本発明で使用する改質した水は、ヒドロキシルイオン(H32-)や水酸化イオン(OH+)や水素イオン(H+)等の水素原子を大量に含んでいるものである。使用するイオン化傾向の強い金属は電極両性元素であることから、改質した水が25℃以上の温度になると金属に多くのプラスの電極とマイナスの電極が現れ、そのプラスの電極とマイナスの電極が微弱電流を発生して反応容器内の改質した水の電気分解(イオン反応)を促進させ、改質した水から水素を大量に発生させると推測される。さらに、改質した水から水素を発生させる時間が長いので、大量の水素を発生することができる。それは、本発明は、改質した水に含まれる代表的な状態としてヒドロキシルイオン(H32-)によって、イオン化傾向の強い金属の表面に膜が張るのを遅らせる効果があるのではないかと推測される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】この発明の水素の製造方法に適用される水素の製造装置の概略構造平面図である。
図2】この発明の水素の製造方法に適用される水素の製造装置の概略構造立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明の水素の製造方法について、図面を参照して説明する。
図1および図2はこの発明の水素の製造方法に使用される水素の製造装置を示すものである。
図1および図2に示す水素の製造装置の構造図において、主要な反応槽11にはアルミニウムのカートリッジ12が保持され、また原水(改質した水)11aが注水されて前記カートリッジ12は原水11a中に浸漬されている。また反応槽11上部の蓋11bには触媒フィーダー13が設置され、水酸化ナトリウム水溶液からなる触媒が適宜タイミングないし分量で反応槽11内に注入されるようになっている。
また原水11aのレベルは常時計測され、常にアルミニウムのカートリッジ12が原水11a内に保持されるよう補充される。また反応槽11内の気圧が高まり過ぎた場合にはガスの圧力を逃がすよう、適宜位置にリリーフ弁14が付設されている。
また、前記主要な反応槽11に隣接して第2反応槽18が設置されており、各反応槽11,12で発生した水素ガスは、分離タンク15に送られて水素ガスのみが取り出され、反応によって生じる圧力と同じ圧で、真空状態の貯留タンク17に保存できる。
必要に応じて水素ガスは、コンプレッサ16等で加圧した状態で貯留タンク17に送り込むこともできる。
20は全体を制御する制御盤である。
【0021】
本発明において、改質した水とイオン化傾向の強い金属とを反応容器内で接触させて水素を発生させる場合、反応容器の加熱温度は1℃以上かつ改質した水の沸点未満であるため、大気圧の下での反応容器の加熱で済ませることができる。大気圧の下での加熱であるので、従来の水の熱分解のような3,000℃~5,000℃に昇温しなければならないような特別な装置を必要とせずに、安価で簡単な装置で水素を発生させることができる。なお、加熱手段を使用して反応容器内のイオン化傾向の強い金属と改質した水とを加熱する場合には、水と使用するイオン化傾向の強い金属との接触の停止及び、加熱の停止によって、水素の発生を停止することができる。よって、水素の発生と停止とを速やかに行なうことが可能となり、水素を燃料として使用する種々の装置に応用することができる。
【0022】
改質した水とイオン化傾向の強い金属とを入れた反応容器を一旦25℃以上に加熱して水素を発生させた後の改質した水に、新たなイオン化傾向の強い同じ金属を接触させれば(反応容器内に入れれば)、水素を発生した後の改質した水と新たな同じ金属との接触によって、加熱手段で加熱しなくても、反応容器内の温度は25℃以上に保持され、水素が継続して発生する。このように加熱手段を用いなくても水素を継続して発生するので、加熱にかかる燃料コストを省くことができる。これは、中性またはアルカリ性の改質した水はイオン化傾向の強い金属と反応して水素を一部発生した後、改質した水はアルカリ性となり、加熱手段による加熱をしなくても、この反応容器内のアルカリ性の改質した水が新たに加えた同じ金属と反応して、反応容器内の温度は25℃以上に保持され、水素が継続して発生する。なお、イオン化傾向の強い金属を粉末とした場合に、発生する水素の量が大幅に増加すること及び短時間で多く反応をする。よって反応終了時間も早い。金属表面積が多く改質した水との接点が多いからである。
【0023】
反応容器にイオン化傾向の強い金属を入れ、改質した水、又は硫酸水溶液又は水酸化ナトリウム水溶液でイオン化傾向の強い金属の最上位を覆う。即ち、イオン化傾向の強い金属を改質した水や硫酸水溶液又は水酸化ナトリウム水溶液の中に浸漬させるようにすれば、改質した水に含まれるヒドロキシルイオン(H32-)によって、イオン化傾向の強い金属の表面への酸化被膜の発生を遅らせることができ、水素の発生時間を長くすることができる。
【0024】
改質した水のみに代えて、改質した水に水酸化ナトリウムを混合した水酸化ナトリウム水溶液を用いても良い。又は改質した水に硫酸を希釈した硫酸水溶液を用いても良い。例えば改質した水に水酸化ナトリウムを混合した水酸化ナトリウム水溶液を用いた場合には、水酸化ナトリウム水溶液とイオン化傾向の強い金属を反応容器内で接触させることで反応熱が発生する。その反応熱は自己昇温によって反応容器内の温度を1~25℃にすることができ、反応容器の外部から熱を加える加熱手段を用いなくても、反応容器内に水素を発生させることができる。イオン化傾向の強い金属と水酸化ナトリウム水溶液とによる反応熱によって、反応容器内の温度が上昇し、水素がより大量に発生する25℃から80℃になるので、大量に水素を発生させたい場合にも適応することができる。
従来の反応容器の外部から熱を加える加熱手段の温度は600℃~5,000℃であり、高価な設備を必要としたが、本発明では反応容器の外部からの熱を加える加熱手段を省略でき、改質した水に水酸化ナトリウムを加えた水酸化ナトリウム水溶液又は硫酸を希釈した硫酸水溶液とイオン化傾向の強い金属を使用するものであり、低コストで水素を製造することができる。
【0025】
本発明は、反応熱による自己昇温によって水素を発生させるものであり、反応容器の外部からの火や電気による熱を加える加熱手段を用いないものであるので、この水素発生方法に係る装置を自動車等に搭載することが可能となる。
この発生する水素の純度は非常に高いものである。通常の水素ボンベの水素濃度は、88%~95%程度である。本発明における発生させた水素はその純度が、98%~100%に及ぶ。また、本発明装置は、水素の湿潤度を自在に調整出来ることを特徴とするものである。湿潤度は、0.5%~5%程度と考えられる。また、そのことから湿潤度が影響して、通常の水素を燃焼させるよりも、より高温で燃焼させる事が出来ることを特徴とする。
また湿潤度を高めることにより、燃料電池へ本水素を投入すると燃料電池に対する酸素と結合し発電力を高める効果もある。乾燥した水素より湿潤度が高い方が、燃料電池内における電解液膜に対する反応が良くより低温で発電しやすい特徴を持つことから、本発明の水素は燃料電池に対しても有効率が高い水素といえる。
【0026】
本発明の水素の製造方法において、改質した水に水酸化ナトリウムを混合した水酸化ナトリウム水溶液又は硫酸を混合し希釈した硫酸水溶液を用いることによって、改質した水のみの場合と比べて、水素の発生量を増加させるとともに、酸素の発生量を大幅に減少させることができる。酸素の発生比率を限りなく低くした場合には、水素と酸素を含む気体から酸素を分離する方法を簡単なものとすることができ、水素を製造するコストを低減することができる。
【0027】
本発明の水素発生装置では、加熱手段を用いなくてもイオン化傾向の強い金属と接触させるだけで水素を発生するアルカリ性又は酸性の改質した水を用いる。イオン化傾向の強い金属と接触させるだけで水素を発生する水としては、改質した水とイオン化傾向の強い金属とを接触させて、一旦25℃から80℃に加熱して水素を発生した後の水(アルカリ性又は酸性となっている)か、特殊な水と硫酸を混合した硫酸水溶液と水酸化ナトリウムを混合した水酸化ナトリウム水溶液かのいずれかを用いる事が代表的な例だが、その他の酸性及びアルカリ性の水溶液とも反応をさせる事が出来る。酸性又はアルカリ性の改質した水とイオン化傾向の強い金属とを収容するための反応容器内に、金属を載せるための載置部材(カートリッジ)を収容し、その載置部材を反応容器内の底面より上方となるよう反応容器内に配置する。載置部材の上の金属は、アルカリ性の改質した水と反応することによって溶けて酸化物に変化する。酸性の改質した水と反応することによって溶けた水酸化物に変化する。
【符号の説明】
【0028】
11 主要な反応槽
11a 原水
11b 蓋
12 カートリッジ
13 触媒フィーダー
14 リリーフ弁
15 分離タンク
16 コンプレッサ
17 貯留タンク
18 第2反応槽
20 制御盤
図1
図2