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  • 特許-内視鏡用高周波ナイフ装置 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-24
(45)【発行日】2023-04-03
(54)【発明の名称】内視鏡用高周波ナイフ装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20230327BHJP
【FI】
A61B18/14
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019141412
(22)【出願日】2019-07-31
(65)【公開番号】P2021023415
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】503468972
【氏名又は名称】小林 真
(74)【代理人】
【識別番号】100160370
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 鈴
(72)【発明者】
【氏名】小林 真
【審査官】槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-113924(JP,A)
【文献】特開2002-301088(JP,A)
【文献】特表2018-510026(JP,A)
【文献】特開2009-066252(JP,A)
【文献】特表2008-520398(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0328435(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/12-18/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端側から先端側に向かって延びる長尺円筒状の内皮シースと該内皮シースの先端に取り付けられた円筒状のナイフ部と前記内皮シースが貫通する長尺状の外皮シースと前記内皮シース及びナイフ部を貫通して該ナイフ部の先端内部に取り付けられる長尺状且つ導電性の操作ワイヤとを含む内装部材と、
前記操作ワイヤを牽引することにより前記内装部材先端のナイフ部を湾曲操作するワイヤ操作部及び前記外皮シースの先端から前記内皮シースを進退自在に突出させる外皮シース操作部を含む外装部材と、を備える内視鏡用高周波ナイフ装置であって、
前記ナイフ部が、先端を閉じ、絶縁コーティングされた直線状の円筒状であって、該円筒状の閉じた先端に所定のクリアランスをもって貫通された前記操作ワイヤの先端を接続し、先端側の所定範囲外周の一部に円周方向に欠いた複数のすり割りを刻設していることを特徴とする内視鏡用高周波ナイフ装置。
【請求項2】
前記ナイフ部のすり割りが、円筒約半周以上の均等深さで均等間隔に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡用高周波ナイフ装置。
【請求項3】
前記ナイフ部のすり割りが、円筒約半周以上の均等深さであって、均等幅及び均等間隔且つ円周直径に対して向かい合う方向に交互に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の内視鏡用高周波ナイフ装置。
【請求項4】
前記ナイフ部のすり割りが、所定幅の円環状のリングと先端側の帽子部の円周一端を接合して形成されていることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の内視鏡用高周波ナイフ装置。
【請求項5】
前記ナイフ部が真円筒状のステンレス鋼であって、貫通する前記操作ワイヤと内壁との間隔であるクリアランスが操作ワイヤ径に対して20%以上30%以下に設定されていることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の内視鏡用高周波ナイフ装置。
【請求項6】
前記ナイフ部が真円筒状のステンレス鋼であって、前記操作ワイヤの先端が前記筒状の閉じた先端のすり割りを設けた方向に偏心して接続されていることを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の内視鏡用高周波ナイフ装置。
【請求項7】
前記ナイフ部を貫通する前記操作ワイヤが、回転追従性が大きなトルクワイヤに比べて高張力のハイテンションワイヤにより構成されることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の内視鏡用高周波ナイフ装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体腔内に挿入され、体腔内の粘膜下層の病変部を切開するための内視鏡用高周波ナイフ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に食道、胃、大腸等の粘膜を切除する内視鏡的粘膜切除術(EMR)及び内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)は、一般に、病変部の切除範囲にマーキングを施すマーキング工程と、マーキングを施した粘膜下層に内視鏡用注射具を用いて生理食塩水や薬液等(以下、単に液体とも言う)を注入して粘膜下層を浮かせた状態とする局注工程と、マーキングに従って粘膜病変部の周囲を切開して剥離する切開・剥離工程と、剥離時に発生した出血を止血する止血工程を順次施術することによって行われ、切開・剥離工程においては、高周波電流を印加することによって病変を切開する高周波ナイフ装置(高周波メス装置)が使用される。
【0003】
従来技術による高周波ナイフ装置が記載された文献としては、下記の特許文献1が挙げられ、この特許文献1には、可撓性シースと、可撓性シースの先端に嵌入された先端部材と、可撓性シース内部に挿通されたワイヤと、該ワイヤが可撓性シース内で進退されることによって可撓性シースの先端面からの突出量が変化するロッド状のナイフ部と、ワイヤを介して先端部材及びナイフ部に高周波電流を流すための高周波電源を接続可能な接点部とを備え、前記ナイフ部が、その最も先端から所定量後退した位置に、該ナイフの側面から突出する先端側が先細り形状の突起部材を有し、ワイヤと共に後退されると、突起部材が先端部材に当接してナイフ部の先端部分が該先端部材の先端面から所定量突出した位置で停止することにより、ナイフ部の全長が長くなるのを抑えつつ切開回数の増加も抑える技術が記載されている。
【0004】
また、他の従来技術による高周波ナイフ装置が記載された文献としては、下記の特許文献2が挙げられ、この特許文献2には、処置具本体の基端側から先端側に亘って形成された直線円筒状の第1の管路と、処置具本体の先端側に設けられ、第1の管路を介して流体の供給を受けたときに膨張する膨張部(バルーン)と、該膨張部(バルーン)を貫通して先端から突出する局注用液体を注入するための粘膜下局注針の針部と、該該膨張部(バルーン)を貫通して高周波電流の印加により生体組織の切開・凝固を行うための高周波ナイフとを備え、前記粘膜下局注針の針部から液体を注入して患部粘膜下層を浮かせた状態とした後、湾曲した第1の管路から高周波ナイフを突出させて所定の大きさの挿入口Hを開口し、この開口した挿入口Hから膨張部(バルーン)12を患部内に挿入し、この挿入した膨張部(バルーン)12を挿入口Hから挿入して拡張させることによって、粘膜下層Wを膨張時の圧力により剥離させる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-123995号公報
【文献】特許第4716787号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の特許文献1に記載の内視鏡用高周波ナイフ装置は、図6に示す如く、直線硬質のナイフ部49を内視鏡装置を用いて遠隔的に病変部Xの周囲に予め施したマーキングに上部側から突き当てるため、ナイフ部49の先端が粘膜下層Wを貫通して筋層W1まで突き当てて傷つける可能性があるという不具合があった。また、特許文献1に記載の直線硬質のナイフ部49は患部に対して横方向に移動させて切開を行うものであるが、切開を行う際の引っかかり部分がないために滑って目的外位置を傷つけてしまうことや、施術開始位置を特定するのが困難であるという課題もあった。
【0007】
また、特許文献2に記載の技術は、湾曲した第1の管路を貫通してから高周波ナイフを突出させて膨張部(バルーン)挿入用の挿入口Hを開口し、この開口した挿入口Hから膨張部(バルーン)を挿入乃至膨張させることにより粘膜下層Wを膨張時の圧力により剥離させるものであり、挿入口Hの開口と膨張部(バルーン)の挿入及び膨張を行わなければならず施術が煩雑になると共に、先端に処置具を貫通する膨張部(バルーン)を必要とするため構造が複雑になるという不具合があった。
【0008】
このような課題に鑑みて、本発明は、簡素な構成でナイフ部が目的部位以外に突き刺さることを防止した安全な内視鏡用高周波ナイフ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために本発明は、基端側から先端側に向かって延びる長尺円筒状の内皮シースと該内皮シースの先端に取り付けられた円筒状のナイフ部と前記内皮シースが貫通する長尺状の外皮シースと前記内皮シース及びナイフ部を貫通して該ナイフ部の先端内部に取り付けられる長尺状且つ導電性の操作ワイヤとを含む内装部材と、前記操作ワイヤを牽引することにより前記内装部材先端のナイフ部を湾曲操作するワイヤ操作部及び前記外皮シースの先端から前記内皮シースを進退自在に突出させる外皮シース操作部を含む外装部材と、を備える内視鏡用高周波ナイフ装置であって、前記ナイフ部が、先端を閉じ、絶縁コーティングされた直線状の円筒状であって、該円筒状の閉じた先端に所定のクリアランスをもって貫通された前記操作ワイヤの先端を接続し、先端側の所定範囲外周の一部に円周方向に欠いた複数のすり割りを刻設していることを第1の特徴とする。
【0010】
また本発明は、前記第1の特徴の内視鏡用高周波ナイフ装置において、前記ナイフ部のすり割りが、円筒約半周以上の均等深さで均等間隔に配置されていることを第2の特徴とし、前記第1又は2の特徴の内視鏡用高周波ナイフ装置において、前記ナイフ部のすり割りが、円筒約半周以上の均等深さであって、均等幅及び均等間隔且つ円周直径に対して向かい合う方向に交互に配置されていることを第3の特徴とし、前記いずれかの特徴の内視鏡用高周波ナイフ装置において、前記ナイフ部のすり割りが、所定幅の円環状のリングと先端側の帽子部の円周一端を接合して形成されていることを第4の特徴とし、前記いずれかの特徴の内視鏡用高周波ナイフ装置において、前記ナイフ部が真円筒状のステンレス鋼であって、貫通する前記操作ワイヤと内壁との間隔であるクリアランスが操作ワイヤ径に対して20%以上30%以下に設定されていることを第5の特徴とし、前記いずれかの特徴の内視鏡用高周波ナイフ装置において、前記ナイフ部が真円筒状のステンレス鋼であって、前記操作ワイヤの先端が前記筒状の閉じた先端のすり割りを設けた方向に偏心して接続されていることを第6の特徴とし、前記いずれかの特徴の内視鏡用高周波ナイフ装置において、前記ナイフ部を貫通する前記操作ワイヤが、回転追従性が大きなトルクワイヤに比べて高張力のハイテンションワイヤにより構成されることを第7の特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明による内視鏡用高周波ナイフ装置は、ナイフ部を、先端を閉じた直線状の円筒状であって、該円筒状の閉じた先端に所定のクリアランスをもって貫通された導電性の操作ワイヤの先端を接続し、先端側の所定範囲外周の一部に円周方向に複数のすり割りを刻設して構成したことによって、簡素な構成でナイフ部が目的部位以外に突き刺さることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】本発明の一実施例による内視鏡用高周波ナイフ装置の概略構造を説明するための図。
図1B】本実施例による内視鏡用高周波ナイフ装置の構成部位を説明するための図。
図2】本実施例による内視鏡用高周波ナイフ装置のワイヤ操作部を説明するための図。
図3】本実施例による内視鏡用高周波ナイフ装置のワイヤ及びシース構造を説明するための図。
図4A】本実施例による内視鏡用高周波ナイフ装置のナイフ部を説明するための図。
図4B】本発明の他実施例による内視鏡用高周波ナイフ装置のナイフ部を説明するための図。
図5】本実施例による内視鏡用高周波ナイフ装置の施術を説明するための図。
図6】従来技術による内視鏡用高周波ナイフ装置の施術を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明による内視鏡用高周波ナイフ装置の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。
[第1実施例]
[全体構造]
【0014】
本発明の第1実施形態による内視鏡用高周波ナイフ装置は、図示しない内視鏡のチャネル内に挿入され、体腔内の粘膜下層の病変部を切開するものであって、図1Bに示す如く、基端側から先端側に向かって延びる長尺状の内皮シース3と該内皮シース3の先端に取り付けられた円筒状のナイフ部40と前記内皮シース3を貫通させる長尺状の外皮シース2と前記内皮シース3及びナイフ部40を貫通してナイフ部40の先端内部に取り付けられる長尺状の操作ワイヤ5とを含む内装部材30と、内被シース3の基端側が取り付けられると共に操作ワイヤ5を牽引して内装部材30先端のナイフ部40を湾曲操作するワイヤ操作部10及び外皮シース2の先端から内皮シース3を突没させる外皮シース操作部11を含む外装部材50とを備える。なお、本出願においては、図1Aのナイフ部40に向かう方向を先端側、把持部10gに向かう方向を基端側と呼ぶ。
【0015】
本実施例によるワイヤ操作部10は、図1A図1B及び図2に示す如く、操作者が片手で把持するための円環状の把持部10gと、該把持部10gから先端側に向かって平行に延び先端側が結合される2本のレール部10eと、前記2本のレール部10eに沿って進退自在にスライドするスライダ10aとを備える。該スライダ10aは、図2に示す如く、内部を貫通する操作ワイヤ5を固定するための固定ネジ10cと、この固定した操作ワイヤ5に高周波電流を印加するためのコネクタである電極部10dとを備え、操作者の親指を把持部10gに掛け、人差し指及び中指でスライダ10aを挟んでレール部10eに沿って進退させることによって操作ワイヤ5を先端方向に対して進退させるように構成されている。
【0016】
前記外皮シース操作部11は、外皮シース2の基端側に取り付けられて内皮シース3及び操作ワイヤ5を貫通させると共に外皮シース2内に洗浄液等の液体を供給するための注入口11fを備え、内被シース3に対して前後に進退することによって、外皮シース2の先端側から内皮シース3を出し入れ自在に構成されている。
【0017】
前記内装部材30は、長尺状の一部を省略した外観を示す図3(a)及び断面を示す図3(b)に示す如く、平行板をコイル状に巻成した長尺円筒状の平線コイルから成る外皮シース2(例えば、外径1.5mm、内径0.9mm)と、該外皮シース2内に装填されて先端側から進退自在に突出自在な可撓性の内皮シース3(例えば、長さ約350mm、外径0.86mm、内径0.65mm)と、内皮シース3を貫通する操作ワイヤ5(例えば、外径0.35mm)と、前記内皮シース3の先端側に取り付けられ、操作ワイヤ5の基端側への牽引により先端が湾曲するナイフ部40(例えば、長さ約50mm、外径0.86mm,内径0.65mm)とを備え、操作ワイヤ5の先端部がナイフ部40の先端内壁に溶着等により接続するように構成される。本実施例によるナイフ部40は、例えば40MHzの高周波電流が印加されること(表皮効果)により、生体組織に供給する電流密度を高くして接触した生体組織の微細な切開や凝固を行うことができ、筒状部分は絶縁コーティングされ、操作ワイヤ5のみが通電可能であることにより、先端の湾曲部分やすり割り部分以外が接した生体組織の焼灼を防ぐことができる。
【0018】
なお、図3(b)に示した内装部材30は、理解を容易にするために一部構成を省略して図示しており、実際の構造においては、内皮シース3とナイフ部40とを接続する接続部位や外皮シース2を外皮シース操作部11に取り付ける接続部位を用いることがあり、これら接続部位にシース外壁及び内壁に嵌合する複数の円環状パイプを結合部材として使用しても良く、本出願においては前述の接続部位等を含んで1つの内皮シース又は外皮シースと呼ぶ。
【0019】
また、本実施例における操作ワイヤ5は、導電性のステンレス鋼(SUS304)の金属の細線を撚り合わせた撚り線から成り、回転追従性が大きなトルクワイヤにより1本の操作ワイヤ5を形成する例を説明するが、この操作ワイヤ5は、スライダ10aに取り付けられる先端側から内皮シース3の先端側未満までをステンレス鋼(SUS304)のトルクワイヤとし、このトルクワイヤの先端側からナイフ部40の先端の溶着までをトルクワイヤと比較して細径及び高張力のハイテンションワイヤ(WHTワイヤ)とするように複数本のワイヤにより形成しても良く、本出願においては、複数種のワイヤを接合したものであっても1つの操作ワイヤと呼ぶ。なお、ハイテンションワイヤとは熱処理等によって強度及び張力がトルクワイヤと比較して20%~25%程度高められたワイヤを言う。
【0020】
このように構成された内視鏡用高周波ナイフ装置は、図1Bに示す内装部材30の後端側の操作ワイヤ5の端部を外皮シース操作部11の先端側から差し込み、ワイヤ操作部10の先端側から通してスライダ10aに固定ネジ10cを用いて固定し、内皮シース3の後端側をワイヤ操作部10の先端側に固定すると共に、外皮シース2の後端側を外皮シース操作部11に挿入して固定することによって組み立てられる。この組立によって本実施例による内視鏡用高周波ナイフ装置は、外皮シース操作部11を進退操作することにより内皮シース3先端のナイフ部40を外皮シース2の先端部から出し入れ自在に構成すると共に、ワイヤ操作部10のスライダ10aをスライド操作することによって内皮シース3先端に取り付けたナイフ部40の先端を湾曲自在に構成する。
【0021】
前記ナイフ部40は、図3右側並びに外観を表す図4A(a)及び断面を表す図4A(b)に示す如く、先端側外周の一部に円周方向に複数のすり割り40aが刻設され、例えば、先端を閉じた長さが約30mmの(真円)円筒状のステンレス鋼(SUS304)であって(外径1.5mm、内径0.9mm、厚さ0.3mm)、円筒状に内壁に対し操作ワイヤ5が図4A(c)に示す如くクリアランスZ(0.15mm:[内径0.65mm-ワイヤ径0.35mm]/2)をもって貫通され、操作ワイヤ5の先端側が端部に接続され、すり割り40aは、円筒約半周以上の均等深さ(例えば、2/3程度)であって、均等幅(例えば、0.4mm)及び均等間隔(例えば、2mm毎)且つ矩形状に複数設けられている。
【0022】
この様に構成されたナイフ部40は、操作ワイヤ5が基端側に牽引されることにより円筒状のステンレス鋼が複数のすり割り40aにより僅かに湾曲することができると共に、操作ワイヤ5に高周波電流を印加することによって複数のすり割り40aを通して接触した生体組織の切開や凝固を行うことができる。特に本実施例によるナイフ部40は、円筒状のステンレス鋼に操作ワイヤ5が内壁と所定のクリアランスZ(操作ワイヤ径に対して23%)をもって配置されているため、操作ワイヤ5が牽引された際に該操作ワイヤ5が図4A(c)に示す如くクリアランスZの寸法内で湾曲し、円筒状のステンレス鋼を剛性に抗して湾曲することができる。前記ナイフ部40の内径と操作ワイヤ5の外径差によるクリアランスZは、本実施例では操作ワイヤ径に対して0.15mmで23%([内径0.65mm-ワイヤ径0.35mm]/2)の例を説明したが、20%以上が好適と考えられ、ステンレス鋼の厚さや剛性を考慮すると30%以下程度(内径に対して操作ワイヤ径が1/3程度)であると想定される。
【0023】
本実施例によるナイフ部40は、円筒状のステンレス鋼先端の中心位置に操作ワイヤ5を溶接するものであるが、例えば操作ワイヤ5の溶接位置をすり割りを設けた方向に偏心して溶接することにより中心位置溶接に比べて小さい力で湾曲することができ、また、円筒状のステンレス鋼を真円ではなく、すり割り方向に長い楕円形とすることにより真円に比べて小さい力で湾曲することができる。また、本実施例においては、すり割りの間隔を2mmとする例を説明したが、他の間隔であっても良く、すり割り間隔を短くすることにより曲量を大きくすることができる。
【0024】
このように構成された本実施例による内視鏡用高周波ナイフ装置は、図5(a)に示す如く、ナイフ部40を内視鏡装置を用いて遠隔的に病変部Xの周囲に予め施したマーキングに上部側から粘膜Nに突き当てる際、ナイフ部40の先端を操作ワイヤ5を牽引して湾曲させることにより、図5(b)に示す如く、ナイフ部40の先端を粘膜下層Wに上方向から挿入する際に湾曲した先端に沿って粘膜下層Wに侵入し、粘膜下層Wを貫通して筋層W1まで突き当てることを防止することができ、更に、湾曲した状態で患部に引っ掛けて切開を行うことができるため切開施術を容易にすることができる。また、本実施例による内視鏡用高周波ナイフ装置は、粘膜下層Wに上方向から挿入させた後、直線状に戻した状態で患部の切開や凝固を行っても良い。
【0025】
特に本実施例による内視鏡用高周波ナイフ装置は、従来技術によるナイフ部が硬質直線状又は硬質L字形等の固定された形状であったのに対し、ナイフ部40を複数のすり割りを刻設した硬質(ステンレス鋼)の先端を閉じた直線円筒と、この直線円筒をクリアランスをもって貫通して先端部に固定された操作ワイヤ(例えば、導電性のステンレス鋼の金属の細線を撚り合わせた撚り線から成るトルクワイヤ又はハイテンションワイヤ)とから構成し、操作ワイヤを牽引することによって直線状のナイフ部を簡素な構成で容易に湾曲することができ、ナイフ部が目的部位以外に突き刺さることを防止することができる。
また、本実施例による内視鏡用高周波ナイフ装置は、ナイフ部40のすり割り部以外を絶縁コーティングしているため、目的とする切開部分以外の生体組織を誤って傷つけることを防止することができる。
【0026】
なお、前述の実施例においては、ナイフ部40の先端部に、円筒約半周以上の均等深さ(例えば、2/3程度)であって、均等幅(例えば、0.4mm)及び均等間隔(例えば、2mm毎)且つ矩形状にすり割り40aを複数設けた例を説明したが、本発明のナイフ部は前述の実施例に限られるものではなく、例えば図4B(a)~(d)に示す如く、くさび状のすり割り41aを円筒約半周以上の均等深さで均等間隔に配置したナイフ部41、円筒約半周以上の均等深さであって、均等幅及び均等間隔且つ円周直径に対して向かい合う方向に交互に刻設したすり割り42aを配置したナイフ部42、指定幅の円環状のリング43aと先端側の帽子部43cの円周一側端を接合部43bにより長手方向に接合して形成したナイフ部43、係止部44aを挟んで刻設された2つの長尺状のすり割り44bを有するナイフ部44等の如く、複数のすり割り部を設けた他形状であっても良い。また、本発明の更なる発展例としては図4B(e)に示す如く、ナイフ部の先端側に1つの長尺状のすり割り部45bを設け、比較的長い寸法の操作ワイヤ5を電極として露出したナイフ部45を構成しても良い。
【0027】
また、前述の実施例においてはナイフ部の形状を図4A及び図4Bに例示したが、本発明によるナイフ部の形状は図示したものに限られるものではなく、すり割り幅及び深さを一定ではなく、変化させても良く、例えば、中央近辺のすり割り部の幅を他に比べて広くすることにより中央近傍の曲がり角度を大きくすることができ、先端側のすり割り部の幅を他に比べて広くすることにより先端側の曲がり角度を大きくすることができる。
【符号の説明】
【0028】
2 外皮シース、3 内皮シース、4 ナイフ部、5 操作ワイヤ、
10 ワイヤ操作部、10a スライダ、10g 把持部、10c 固定ネジ、
10d 電極部、10e レール部、10f レール結合部、
11 外皮シース操作部、11f 注入口、30 内装部材、
40 ナイフ部、すり40a 割り、50 外装部材
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6