IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 未来工業株式会社の特許一覧

特許7250645貫通孔カバー、および貫通孔への筒状部設置構造
<>
  • 特許-貫通孔カバー、および貫通孔への筒状部設置構造 図1
  • 特許-貫通孔カバー、および貫通孔への筒状部設置構造 図2
  • 特許-貫通孔カバー、および貫通孔への筒状部設置構造 図3
  • 特許-貫通孔カバー、および貫通孔への筒状部設置構造 図4
  • 特許-貫通孔カバー、および貫通孔への筒状部設置構造 図5
  • 特許-貫通孔カバー、および貫通孔への筒状部設置構造 図6
  • 特許-貫通孔カバー、および貫通孔への筒状部設置構造 図7
  • 特許-貫通孔カバー、および貫通孔への筒状部設置構造 図8
  • 特許-貫通孔カバー、および貫通孔への筒状部設置構造 図9
  • 特許-貫通孔カバー、および貫通孔への筒状部設置構造 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-24
(45)【発行日】2023-04-03
(54)【発明の名称】貫通孔カバー、および貫通孔への筒状部設置構造
(51)【国際特許分類】
   F16L 5/02 20060101AFI20230327BHJP
   H02G 3/22 20060101ALI20230327BHJP
   E04B 2/56 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
F16L5/02 D
H02G3/22
E04B2/56 605K
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019151339
(22)【出願日】2019-08-21
(65)【公開番号】P2021032288
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079968
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 光司
(72)【発明者】
【氏名】中村 敦
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-13124(JP,A)
【文献】特開2012-13125(JP,A)
【文献】特開2011-144512(JP,A)
【文献】特開2004-353787(JP,A)
【文献】特開2014-7893(JP,A)
【文献】特開2013-87828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 5/02
H02G 3/22
E04B 2/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の貫通孔部分に設置される貫通孔カバーであって、
前記構造物に、前記貫通孔の一方側から固定される固定部と、前記貫通孔の内周面との間に隙間をあけて対向する対向面を外周に有する筒状部とを備え、
前記筒状部には、前記一方側とは反対の他方側の外周部から前記貫通孔の内周面に向けて突出する、環状体が設けられ、
前記固定部と前記筒状部とは繋がって設けられるとともに、それら固定部と筒状部との間に、前記隙間に前記一方側からパテを充填するための開口部が設けられている、貫通孔カバー。
【請求項2】
前記環状体が設けられた前記筒状部と前記固定部と前記開口部とを有するカバー本体と、そのカバー本体に前記一方側から固定されて前記開口部を前記一方側から覆う覆い部材とを備える、請求項1に記載の貫通孔カバー。
【請求項3】
前記隙間に充填されるパテと前記環状体との接触を阻止するように、前記環状体の、前記一方側の面に配される、接触阻止部材を備え、
前記接触阻止部材は、パテに対して非接着性能を有する、請求項1または2に記載の貫通孔カバー。
【請求項4】
前記固定部は、前記貫通孔の前記一方側の孔周縁と対向して、その孔周縁に固定される、フランジ部からなる、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の貫通孔カバー。
【請求項5】
前記筒状部の内側には、配線・配管材が通る通孔が設けられる、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の貫通孔カバー。
【請求項6】
構造物の貫通孔に筒状部を設置する、貫通孔への筒状部設置構造であって、
前記筒状部が、その外周に有する対向面が前記貫通孔の内周面との間に隙間をあけて対向するように、前記貫通孔に配置されており、
前記筒状部と繋がって設けられた固定部が、前記貫通孔の一方側の孔周縁と対向して、その孔周縁に固定されており、
前記筒状部には、前記一方側とは反対の他方側の外周部から前記貫通孔の内周面に向けて突出する、環状体が設けられ、また、
前記固定部と前記筒状部との間に、前記隙間に前記一方側からパテを充填するための開口部が設けられ、
前記環状体の、前記一方側の面に、パテに対して非接着性能を有する接触阻止部材が配され、前記隙間にパテが充填されて、前記接触阻止部材が、その充填されたパテと前記環状体との接触を阻止し、その充填されたパテは、前記貫通孔の内周面と前記対向面との二面接着となっている、貫通孔への筒状部設置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、貫通孔の内周面との間にパテが充填される、貫通孔カバー、および貫通孔への筒状部設置構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の壁の貫通孔部分に設置される貫通孔カバーがあった(例えば、特許文献1参照)。図10に示すように、この貫通孔カバー32は、建物の壁31を貫通する貫通孔31aの屋外側に設置されるものであって、壁31の屋外側の壁面31bに当接するフランジ33と、フランジ33の裏面から突出して貫通孔31aに嵌合するガイド筒部34と、そのガイド筒部34よりも小径であってガイド筒部34よりも突出する筒状の充填空間形成部35とを備えていた。そこで、この充填空間形成部35と貫通孔31aの内周面との間が、コーキング材36の充填空間となって、その充填空間に、壁裏側からコーキング材36が充填された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-13124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記従来の貫通孔カバー32にあっては、その貫通孔カバー32を設置するのが壁31の屋外側であるのに対し、コーキング材36(パテ)を壁裏側から充填する必要があり、その充填作業がやりにくかった。
【0005】
この発明は、上記した従来の欠点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、貫通孔内へのパテの充填作業を容易に行うことができる、貫通孔カバー、および貫通孔への筒状部設置構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る貫通孔カバー、および貫通孔への筒状部設置構造は、前記目的を達成するために、次の構成からなる。すなわち、
請求項1に記載の発明に係る貫通孔カバーは、構造物の貫通孔部分に設置される貫通孔カバーであって、前記構造物に、前記貫通孔の一方側から固定される固定部と、前記貫通孔の内周面との間に隙間をあけて対向する対向面を外周に有する筒状部とを備える。ここで、前記筒状部には、前記一方側とは反対の他方側の外周部から前記貫通孔の内周面に向けて突出する、環状体が設けられる。そして、前記固定部と前記筒状部とは繋がって設けられるとともに、それら固定部と筒状部との間に、前記隙間に前記一方側からパテを充填するための開口部が設けられている。
【0007】
この貫通孔カバーによると、筒状部と繋がって設けられた固定部が、貫通孔の一方側から構造物に固定される。筒状部は、その外周に有する対向面が、貫通孔の内周面との間に隙間をあけて対向する。そして、固定部と筒状部との間に、前記一方側から前記隙間にパテを充填するための開口部が設けられており、パテは、前記一方側からその開口部を通って前記隙間に充填される。こうして、パテは、貫通孔の一方側である、固定部を固定する側、つまり、この貫通孔カバーを設置する側と同じ側から充填されることから、その充填作業を容易に行うことができる。また、筒状部には、他方側に環状体が設けられており、前記隙間に充填されたパテは、この環状体によってそれ以上の進入が阻止される。
【0008】
また、請求項2に記載の発明に係る貫通孔カバーは、請求項1に記載の貫通孔カバーにおいて、前記環状体が設けられた前記筒状部と前記固定部と前記開口部とを有するカバー本体と、そのカバー本体に前記一方側から固定されて前記開口部を前記一方側から覆う覆い部材とを備える。
【0009】
また、請求項3に記載の発明に係る貫通孔カバーは、請求項1または2に記載の貫通孔カバーにおいて、前記隙間に充填されるパテと前記環状体との接触を阻止するように、前記環状体の、前記一方側の面に配される、接触阻止部材を備える。ここで、前記接触阻止部材は、パテに対して非接着性能を有する。環状体の一方の面に配される接触阻止部材が、パテに対して非接着性能を有することから、充填されたパテは、貫通孔の内周面と筒状部の対向面との二面接着となる。このため、筒状部に荷重や振動がかかったときに、パテは、底面が接着されていないことから、筒状部にかかる荷重や振動を効果的に吸収し、貫通孔の内周面や筒状部の対向面との接着が剥がれにくくなる。
【0010】
また、請求項4に記載の発明に係る貫通孔カバーは、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の貫通孔カバーにおいて、前記固定部は、前記貫通孔の前記一方側の孔周縁と対向して、その孔周縁に固定される、フランジ部からなる。
【0011】
また、請求項5に記載の発明に係る貫通孔カバーは、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の貫通孔カバーにおいて、前記筒状部の内側には、配線・配管材が通る通孔が設けられる。
【0012】
また、請求項6に記載の発明に係る貫通孔への筒状部設置構造は、構造物の貫通孔に筒状部を設置する、貫通孔への筒状部設置構造であって、前記筒状部が、その外周に有する対向面が前記貫通孔の内周面との間に隙間をあけて対向するように、前記貫通孔に配置されている。そして、前記筒状部と繋がって設けられた固定部が、前記貫通孔の一方側の孔周縁と対向して、その孔周縁に固定されている。ここで、前記筒状部には、前記一方側とは反対の他方側の外周部から前記貫通孔の内周面に向けて突出する、環状体が設けられ、また、前記固定部と前記筒状部との間に、前記隙間に前記一方側からパテを充填するための開口部が設けられている。そこで、前記環状体の、前記一方側の面に、パテに対して非接着性能を有する接触阻止部材が配され、前記隙間にパテが充填されて、前記接触阻止部材が、その充填されたパテと前記環状体との接触を阻止し、その充填されたパテは、前記貫通孔の内周面と前記対向面との二面接着となっている。
【0013】
この貫通孔への筒状部設置構造によると、筒状部と繋がって設けられた固定部が、貫通孔の一方側の孔周縁に固定される。筒状部は、その外周に有する対向面が、貫通孔の内周面との間に隙間をあけて対向する。そして、固定部と筒状部との間に、前記一方側から前記隙間にパテを充填するための開口部が設けられており、パテは、前記一方側からその開口部を通って前記隙間に充填される。こうして、パテは、貫通孔の一方側である、固定部を固定する側、つまり、筒状部を設置する側と同じ側から充填されることから、その充填作業を容易に行うことができる。また、筒状部には、他方側に環状体が設けられており、前記隙間に充填されたパテは、この環状体によってそれ以上の進入が阻止される。そして、環状体の一方の面に配される接触阻止部材が、パテに対して非接着性能を有することから、充填されたパテは、貫通孔の内周面と筒状部の対向面との二面接着となる。このため、筒状部に荷重や振動がかかったときに、パテは、底面が接着されていないことから、筒状部にかかる荷重や振動を効果的に吸収し、貫通孔の内周面や筒状部の対向面との接着が剥がれにくくなる。
【発明の効果】
【0014】
この発明に係る貫通孔カバー、および貫通孔への筒状部設置構造によれば、パテは、固定部を固定する側と同じ側から充填されることから、その充填作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】この発明の一実施の形態の、接触阻止部材付きのカバー本体の、斜め正面からの斜視図である。
図2】同じく、接触阻止部材付きのカバー本体の、斜め背面からの斜視図である。
図3】同じく、接触阻止部材付きのカバー本体の正面図である。
図4】同じく、図3におけるA-A線による断面図である。
図5】同じく、接触阻止部材付きのカバー本体を壁の貫通孔部分に設置した、正面図である。
図6】同じく、図5におけるB-B線による断面図である。
図7】同じく、接触阻止部材の斜視図である。
図8】同じく、図5に示す接触阻止部材付きのカバー本体に、覆い部材と保持体とを組み付けた、正面図である。
図9】同じく、図8におけるC-C線による断面図である。
図10】従来の貫通孔カバーを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明に係る貫通孔カバー、および貫通孔への筒状部設置構造を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1図9は、本発明の一実施の形態を示す。図中符号1は、構造物としての建物の壁を示す。1aは、前記壁1を貫通する貫通孔を示す。2は、配線・配管材(配線材または配管材)を示す。3は、前記配線・配管材2を収容して保護する保護管を示す。4は、壁1の貫通孔1a部分に設置される貫通孔カバーを示す。5は、貫通孔1aへの筒状部設置構造を示す。
【0018】
貫通孔カバー4は、壁1に、貫通孔1aの一方側P1から固定される固定部6と、筒状部7とを備える。筒状部7は、貫通孔1aの内周面との間に隙間Qをあけて対向する対向面7aを外周に有する。この筒状部7には、前記一方側P1とは反対の他方側P2の外周部から貫通孔1aの内周面に向けて突出する、環状体としての環状のリブ7bが設けられている。そして、固定部6と筒状部7とは繋がって設けられるとともに、それら固定部6と筒状部7との間に、前記隙間Qに前記一方側P1からパテ11を充填するための開口部8が設けられている。
【0019】
詳細には、貫通孔カバー4は、カバー本体4aと覆い部材9とを備えている。そこで、カバー本体4aは、前述したリブ7bが設けられた筒状部7と固定部6と開口部8とを有する。そして、覆い部材9は、カバー本体4aに前記一方側P1から固定されて開口部8を前記一方側P1から覆う。
【0020】
また、貫通孔カバー4は、パテ11に対して非接着性能を有する接触阻止部材10を備える。この接触阻止部材10は、前記隙間Qに充填されるパテ11と前記リブ7bとの接触を阻止するように、リブ7bの、前記一方側P1の面に配される。
【0021】
具体的には、壁1は、建物の屋外に面する壁(外壁)である。ここで、カバー本体4aにおける固定部6は、貫通孔1aの前記一方側P1の孔周縁(つまり、前記一方側P1の壁面1bであって、詳しくは、壁1の屋外側の壁面)と対向して、その孔周縁に固定される、矩形状の外縁を備えたフランジ部からなる。そして、前記筒状部7の内側には、配線・配管材2が通る通孔12が設けられる。すなわち、この貫通孔カバー4は、配線・配管材2(図示実施の形態においては、配管材であって、例えば湯水が流れる通水管)を引き出すための引き出しカバーであり、壁1を貫通して配線・配管材2が通される貫通孔1aを、前記一方側P1(図示実施の形態においては、屋外側)において覆うものである。
【0022】
カバー本体4aは、例えば合成樹脂製であって、前記固定部6を備える第1カバー本体4bと、前記筒状部7を備える第2カバー本体4cとが、接着とか超音波溶着等により一体化して形成されている。
【0023】
第1カバー本体4bにおいては、前記固定部6は、内側が開口した方形板状に形成され、この固定部6の四隅に、カバー本体4a(貫通孔カバー4)を壁1に取付固定するための取付孔6aがあけられている。すなわち、この取付孔6aを通って壁1にねじ込まれるビス等の固着具21により、カバー本体4a(貫通孔カバー4)は、壁1に固定される。この第1カバー本体4bは、前記固定部6の他に、その固定部6の内側に間隔を置いて位置する円環状のリング部13と、固定部6とリング部13とを繋ぐ複数の渡し部14、14とを備える。
【0024】
第2カバー本体4cは、筒状部7の他に、筒状部7の内側を前記一方側P1において覆う前面板15と、外筒16と、内側が前記通孔12となる内筒17とを、備えている。外筒16は、斜め上前方を向くように前面板15から突出して形成され、前側は開口するが、後ろ側には、底板16aが設けられている。そして、外筒16には、その先端部外周に鍔16bが設けられ、下部に水抜き孔16cが設けられている。内筒17は、外筒16の底板16aから、斜め上前方に突出して形成され、両端が開口している。図示実施の形態においては、外筒16は、断面横長に形成され、内筒17は、断面円形であって、外筒16内に横に並ぶようにして二つ設けられる。そこで、内筒17には、配線・配管材2が挿入され、外筒16内において内筒17の外周には、保護管3が嵌められる(図9参照)。また、前面板15には、後述する固着具22がねじ込まれるねじ込み部15aが設けられる。図示実施の形態においては、このねじ込み部15aは、前面板15に突出形成されたU字状の突起部15bの内側からなっている。
【0025】
そこで、第1カバー本体4bと第2カバー本体4cとは、第1カバー本体4bが第2カバー本体4cを取り囲むように位置し、第1カバー本体4bのリング部13と第2カバー本体4cの筒状部7との間で例えば接着される。こうして、第1カバー本体4bと第2カバー本体4cとは一体化され、これにより、リング部13が、筒状部7の一部となって、固定部6と筒状部7とが、渡し部14を介して繋がり、固定部6とリング部13(つまり、筒状部7)との間の、渡し部14を除く部分が、前記開口部8となる。
【0026】
覆い部材9は、例えば合成樹脂製であって、環状に形成されて前記開口部8を覆う覆い部材本体9aと、その覆い部材本体9aの内側の下部部分に、その覆い部材本体9aと一体となって設けられた取付部9bとを備える。ここで、取付部9bには、ビス等の固着具22が通される孔9cがあけられており、その孔9cを通ってカバー本体4a(詳しくは、前面板15に設けられたねじ込み部15a)にねじ込まれる固着具22により、覆い部材9は、カバー本体4aに固定される。
【0027】
接触阻止部材10は、例えばポリオレフィン系樹脂からなるシートであって、環状に形成されている。この接触阻止部材10は、筒状部7の外周に嵌められ、うら面が、前記リブ7bに当接し、おもて面が、前記隙間Qの底面を形成する。なお、接触阻止部材10を筒状部7の外周に嵌めるにあたっては、第2カバー本体4c単体の状態で筒状部7の外周に、接触阻止部材10を嵌め、その後に、第2カバー本体4cと第1カバー本体4bとを、例えば接着により一体化する。
【0028】
また、貫通孔カバー4は、内筒17の外周に嵌められた保護管3を保持する保持体18を備える。この保持体18は、図8および図9に示すように、外筒16の先端に取り付けられるものであって、横長の環状に形成され、その内周には、外筒16の鍔16bに係合する係合溝18aと、保護管3に係合する係合凸部18bとが設けられている。詳細には、保護管3は、凹凸が長手方向に繰り返される波付管であって、係合凸部18bは、横に並ぶ二つの前記内筒17、17を取り囲むようにして、左右両側に円弧状の先端ラインを形成するように内側方向に突き出て、各保護管3の凹部3aに係合する。また、保持体18は、二つに(詳しくは、上下の二つに)分割された分割体18c、18cからなり、それら分割体18c、18cが、外筒16および保護管3を挟むようにして組み付けられて、両分割体18c、18cがビス等の固着具23により固定される。この際、係合溝18aが、外筒16の鍔16bに係合することで、この保持体18は、外筒16に取り付けられる。そして、係合凸部18bが、保護管3の凹部3aに係合することで、保護管3を抜止め状態に保持する。
【0029】
ところで、図5および図6、ならびに図8および図9は、カバー本体4aあるいは貫通孔カバー4を壁1の貫通孔1a部分に設置した状態を示すが、同時に、貫通孔1aへの筒状部設置構造5を示している。この筒状部設置構造5は、壁1(構造物)の貫通孔1aに筒状部7を設置する、貫通孔1aへの筒状部設置構造であって、筒状部7が、その外周に有する対向面7aが貫通孔1aの内周面との間に隙間Qをあけて対向するように、貫通孔1aに配置されている。そして、筒状部7と繋がって設けられた固定部6が、貫通孔1aの一方側P1の孔周縁と対向して、その孔周縁に固定されている。ここで、筒状部7には、前記一方側P1とは反対の他方側P2の外周部から貫通孔1aの内周面に向けて突出する、環状体としての環状のリブ7bが設けられ、固定部6と筒状部7との間に、前記隙間Qに前記一方側P1からパテ11を充填するための開口部8が設けられている。
【0030】
そこで、リブ7bの、前記一方側P1の面に、パテ11に対して非接着性能を有する接触阻止部材10が配され、前記隙間Qにパテ11が充填されて、接触阻止部材10が、その充填されたパテ11とリブ7bとの接触を阻止し、その充填されたパテ11は、貫通孔1aの内周面と対向面7aとの二面接着となる。
【0031】
次に、以上の構成からなる貫通孔カバー4、および貫通孔1aへの筒状部設置構造5の作用効果について説明する。この貫通孔カバー4とか筒状部設置構造5によると、筒状部7と繋がって設けられた固定部6が、貫通孔1aの一方側P1から壁1(詳しくは、貫通孔1aの一方側P1の孔周縁)に固定される。筒状部7は、その外周に有する対向面7aが、貫通孔1aの内周面との間に隙間Qをあけて対向する。そして、固定部6と筒状部7との間に、前記一方側P1から前記隙間Qにパテ11を充填するための開口部8が設けられており、パテ11は、前記一方側P1からその開口部8を通って隙間Qに充填される。こうして、パテ11は、貫通孔1aの一方側P1である、固定部6を固定する側、つまり、この貫通孔カバー4とか筒状部7を設置する側と同じ側から充填されることから、その充填作業を容易に行うことができる。
【0032】
また、筒状部7には、他方側P2に環状のリブ7bが設けられており、隙間Qに充填されたパテ11は、このリブ7bによってそれ以上の進入が阻止される。
【0033】
また、リブ7bの一方の面に配される接触阻止部材10が、パテ11に対して非接着性能を有することから、充填されたパテ11は、貫通孔1aの内周面と筒状部7の対向面7aとの二面接着となる。このため、筒状部7に荷重や振動がかかったときに、パテ11は、底面が接着されていないことから、筒状部7にかかる荷重や振動を効果的に吸収し、貫通孔1aの内周面や筒状部7の対向面7aとの接着が剥がれにくくなる。
【0034】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるわけではなく、その他種々の変更が可能である。例えば、建物の壁1は、外壁等の立壁に限らず、底壁とか天壁等であってもよく、また、構造物は、建物の壁1以外に、広く、建造物や設置物等の各構成部であってもよい。
【0035】
また、貫通孔カバー4は、覆い部材9とか接触阻止部材10を備えるが、これら覆い部材9と接触阻止部材10のいずれか一方、あるいは両方は、無くてもよい。
【0036】
また、環状体は、筒状部7の周方向に連続するように設けられていなくてもよい。すなわち、図示実施例では、環状体としての環状のリブ7bが、筒状部7の周方向に連続している例を示したが、筒状部7の周方向に非連続となって並ぶ複数の小リブによって、環状のリブ7bを形成してもよい。また、このように、環状体を、周方向に非連続に並ぶ複数の小リブによって形成し、かつ、接触阻止部材10を設けない場合には、複数の小リブの間は、選択するパテ11の粘性を考慮して、そのパテ11が他方側P2に漏れ出ない程度に狭くするのが望ましい。また、環状体は、筒状部7と別体に設けてもよく、例えば、接触阻止部材10を設けた場合には、その接触阻止部材10が、環状体を構成しているとも言える。
【0037】
また、固定部6は、フランジ部からなって、貫通孔1aの一方側P1の孔周縁(壁面1b)と対向して、その孔周縁(壁面1b)に固定されるが、このとき、固定部6と孔周縁(壁面1b)との間に、パッキン等が介在してもよい。
【0038】
また、固定部6は、矩形状の外縁を備えたものに限られず、円形その他の形状からなる外縁を備えたフランジ部からなるものであってもよい。
【0039】
また、固定部6は、フランジ部からならなくても、貫通孔1aの内周面に固定されるものであってもよい。
【0040】
また、貫通孔カバー4は、配線・配管材2が通る通孔12が設けられて、配線・配管材2を引き出すための引き出しカバーとなっているが、通孔12が設けられず、単に、貫通孔1a全体を覆うものであってもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 壁(構造物)
1a 貫通孔
2 配線・配管材
4 貫通孔カバー
5 筒状部設置構造
6 固定部
7 筒状部
7a 対向面
7b リブ(環状体)
8 開口部
9 覆い部材
10 接触阻止部材
11 パテ
12 通孔
P1 一方側
P2 他方側
Q 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10