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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-24
(45)【発行日】2023-04-03
(54)【発明の名称】保護カバーおよび運搬台車
(51)【国際特許分類】
   B62B 5/00 20060101AFI20230327BHJP
   B62B 3/02 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
B62B5/00 E
B62B3/02 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019209190
(22)【出願日】2019-11-19
(65)【公開番号】P2021079834
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100158067
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 基
(74)【代理人】
【識別番号】100147854
【弁理士】
【氏名又は名称】多賀 久直
(72)【発明者】
【氏名】川島 崇志
【審査官】谷川 啓亮
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3165264(JP,U)
【文献】特開平11-139317(JP,A)
【文献】特開2011-68362(JP,A)
【文献】特開2007-45456(JP,A)
【文献】特開2015-199516(JP,A)
【文献】実開昭61-100671(JP,U)
【文献】特開2019-18781(JP,A)
【文献】特開2013-233970(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 1/00 - 19/04
B65D 1/00 - 90/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱状体にして使用される保護カバーであって、
前記箱状体における後面を構成する後壁部と、
前記後壁部に繋げて設けられ、前記箱状体における側面を構成する使用姿勢から該後壁部の内側に重なるように折り畳んだ収納姿勢に姿勢変位可能な横壁部と、
前記箱状体における天井面を構成する上壁部と、を備え、
前記横壁部は、
後縁が前記後壁部の側縁に繋がる外装部と、
上縁が前記上壁部の側縁に繋がると共に、前記外装部の上縁後端から前側に向かうにつれて下方傾斜するヒンジ部を介して該外装部に繋がるように設けられた内装部と、を有し、
前記内装部は、前記外装部の内側に重なって前記上壁部が天井面を構成するように支持する第1姿勢と、前記ヒンジ部で該外装部から離れるように折れ曲がって該上壁部を前記後壁部の内側に重なるように折り畳む第2姿勢とに姿勢変位可能に構成されている
ことを特徴とする保護カバー。
【請求項2】
前記外装部と前記内装部との間には、前記第1姿勢にある該内装部を該外装部に対して着脱可能に保持する保持手段が設けられている請求項1記載の保護カバー。
【請求項3】
前記内装部の上部には、該内装部を補強する補強部が設けられている請求項1または2記載の保護カバー。
【請求項4】
上縁が前記上壁部の前縁に繋がると共に側縁が前記横壁部の前縁に繋がって前記箱状体の前面開口を塞ぐ状態と、該横壁部から取り外して前記前面開口を開放する状態とに変更可能に構成された前壁部と、
前記箱状体における底面を構成する下壁部と、を備え、
前記後壁部、前記横壁部、前記上壁部、前記前壁部および前記下壁部は、何れも断熱構造である請求項1~3の何れか一項に記載の保護カバー。
【請求項5】
請求項1~4の何れか一項に記載の保護カバーが設置された運搬台車であって、
前記後壁部が内側に重ねて取り付けられる後枠部と、
前記横壁部が内側に重ねて取り付けられる横枠部と、を備え、
前記横枠部は、前記横壁部を取り付けたまま、前記後壁部が取り付けられた前記後枠部の内側に重なるように姿勢変位可能である
ことを特徴とする運搬台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内部に収納した物品を保護する保護カバーおよびこの保護カバーが取り付けられた運搬台車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な運搬台車には、底パネルの後縁および両側縁の3辺に対応して、背面パネルおよび側面パネルが立てて設けられている。このような運搬台車は、使用しない場合、底パネルをはね上げて、側面パネルを背面パネルの前側に重ねるように折り畳んだ状態にすることで、複数の運搬台車を互いに重ね合わせてコンパクトに収納する、所謂ネスティングができるようになっている。
【0003】
運搬台車には、台車で運搬する物品を冷やした状態で保つため、保冷カバーが取り付けられる(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。保冷カバーは、上下左右および前後の6面の壁を有する箱状体であり、底板を底パネルに載置して、後壁を運搬台車の背面パネルに取り付けると共に左右の側壁を側面パネルにそれぞれ取り付けて設置される。そして、保冷カバーは、開閉可能な前壁をはね上げて前面開口を開放して、物品の出し入れを行うようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開昭61-100671号公報
【文献】特開平11-139317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の保冷カバーは、折り畳む場合、まず前壁を側壁に接続すると共に上壁を側壁に接続していたファスナーを開いて、前壁および上壁を側壁から切り離して後壁に重ねる。次に、側壁を運搬台車の側面パネルから取り外した後に、側壁を折り予定線で折り畳むことで下壁を後壁に重ねている。特許文献1の保冷カバーは、前壁の側縁から上壁の側縁にかけて延びるファスナーを外すために、運搬台車の横側にまわり込まなくてはならず、運搬台車の前面側からだけで折り畳み作業を行うことができない。また、特許文献1の保冷カバーは、側面パネルに側壁を取り付けたまま折り畳むことはできず、側面パネルから側壁を取り外す手間がかかってしまう。特許文献2の保冷カバーは、折り畳む場合、まず前壁を上壁に重ねて、側壁を運搬台車の側面パネルから取り外した後に、側壁を折り予定線で折り畳むことで下壁および上壁を後壁に重ねている。このように、特許文献2の保冷カバーは、側面パネルに側壁を取り付けたまま折り畳むことはできず、側面パネルから側壁を取り外す手間がかかってしまう。特許文献1および特許文献2の何れも、保冷カバーの折り畳みの作業性に難がある。
【0006】
本発明は、従来の技術に係る前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、折り畳みを行い易い保護カバーおよびこの保護カバーが取り付けられた運搬台車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本発明に係る保護カバーは、
箱状体にして使用される保護カバーであって、
前記箱状体における後面を構成する後壁部と、
前記後壁部に繋げて設けられ、前記箱状体における側面を構成する使用姿勢から該後壁部の内側に重なるように折り畳んだ収納姿勢に姿勢変位可能な横壁部と、
前記箱状体における天井面を構成する上壁部と、を備え、
前記横壁部は、
後縁が前記後壁部の側縁に繋がる外装部と、
上縁が前記上壁部の側縁に繋がると共に、前記外装部の上縁後端から前側に向かうにつれて下方傾斜するヒンジ部を介して該外装部に繋がるように設けられた内装部と、を有し、
前記内装部は、前記外装部の内側に重なって前記上壁部が天井面を構成するように支持する第1姿勢と、前記ヒンジ部で該外装部から離れるように折れ曲がって該上壁部を前記後壁部の内側に重なるように折り畳む第2姿勢とに姿勢変位可能に構成されていることを要旨とする。
【0008】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本発明に係る運搬台車は、
本発明に係る保護カバーが設置された運搬台車であって、
前記後壁部が内側に重ねて取り付けられる後枠部と、
前記横壁部が内側に重ねて取り付けられる横枠部と、を備え、
前記横枠部は、前記横壁部を取り付けたまま、前記後壁部が取り付けられた前記後枠部の内側に重なるように姿勢変位可能であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る保護カバーによれば、折り畳みを行い易い。
本発明に係る運搬台車によれば、保護カバーの折り畳みを行い易いので、ネスティング作業の手間を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施例に係る保護カバーが装着された運搬台車を示す正面図である。
図2】実施例の保護カバーが装着された運搬台車を示す側面図である。
図3】実施例の保護カバーが装着された運搬台車を示す背面図である。
図4】実施例の横壁部の上部構造を説明する模式図であり、内装部が第1姿勢にある。なお、前壁部は省略している。
図5】実施例の横壁部の上部構造を説明する模式図であり、内装部が第2姿勢にある。
図6】実施例の横壁部の上部構造を模式的に説明する断面図である。
図7】実施例の取付手段を示す模式図である。
図8】実施例の保護カバーを使用状態から収納状態にする過程を示す説明図であり、前壁部を折り畳んだ状態にある。なお、(a)は正面であり、(b)は側断面である。
図9】実施例の保護カバーを使用状態から収納状態にする過程を示す説明図であり、内装部および上壁部を折り畳むと共に下壁部を折り畳んだ状態にある。なお、(a)は正面であり、(b)は側断面である。
図10】収納状態にある実施例の保護カバーを示す正面図であり、運搬台車がネスティング可能な状態にある。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明に係る保護カバーおよび運搬台車につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。
【実施例
【0012】
図1図3に示すように、実施例に係る運搬台車10には、実施例に係る保護カバー20が取り付けられている。運搬台車10は、後枠部12と、この後枠部12の側縁のそれぞれにヒンジ接続された一対の横枠部14,14と、後縁が後枠部12の下縁にヒンジ接続された台部16とを備えている。後枠部12および横枠部14は、棒状体を組み合わせて構成されている。運搬台車10は、台部16を対向配置した横枠部14,14の間に架け渡した状態で使用される。なお、運搬台車10は、後枠部12および横枠部14の底部にキャスター18を備えている。運搬台車10は、使用しない場合、台部16を後縁のヒンジを支点として後枠部12の前側に重ねるように起立させると共に(図9参照)、一対の横枠部14,14のうちの片方を後縁のヒンジを支点として後枠部12および台部16の前側に重ねるように折り畳み可能である(図10参照)。そして、平面視で「L」字状になるように折り畳んだ運搬台車10同士を重ね合わせて配置するネスティングを行うことで、収納スペースを抑えた状態で複数の運搬台車10を保管できるようになっている。
【0013】
図1図3に示すように、実施例に係る保護カバー20は、壁部22~30を箱状体に構成した状態で内部に物品を収納可能となり、この状態(使用状態という。)で使用される。保護カバー20は、箱状体における後面を構成する後壁部22と、箱状体における側面を構成する横壁部24と、箱状体における上面を構成する上壁部26と、箱状体における前面を構成する前壁部28と、箱状体における下面を構成する下壁部30とを備えている。なお、左右の横壁部24,24は、構成が同じである。保護カバー20は、下壁部30を台部16に載置して、後壁部22を後枠部12の内側に重ねて取り付けると共に、横壁部24を横枠部14の内側に重ねて取り付けて、運搬台車10の内側に設置される。そして、保護カバー20は、開閉可能に構成された前壁部28を開いて、前部開口から物品を出し入れするようになっている。
【0014】
各壁部22~30は、アルミ蒸着プラスチックシートなど、可撓性、断熱性や遮光性などの所要の機能を有するシート材の縫製物を本体として基本的に構成される。壁部22~30は、隣り合う壁部同士を繋げる場合、シート材を直接または間接的に縫製により組み合わせることで接続している。実施例の壁部22~30は、2枚のシート材を重ね合わせて構成され、プラスチック段ボール等の補強板や断熱材を壁部22~30に配置する場合、2枚のシート材の間に封入している。実施例では、後壁部22、横壁部24、上壁部26、前壁部28および下壁部30の何れもが、アルミ蒸着プラスチックシートから構成した断熱構造であり、保護カバー20を保冷や保温用途に使用可能になっている。
【0015】
保護カバー20は、後壁部22の側縁と横壁部24の後縁とが繋がっており(図5参照)、この接続部分をヒンジとして、後壁部22と横壁部24とを相対的に姿勢変位可能である。このように、横壁部24は、箱状体における側面を構成する使用姿勢(図1図3参照)から後壁部22の内側に重なるように折り畳んだ収納姿勢(図10参照)に姿勢変位可能になっている。保護カバー20は、後壁部22の上縁と上壁部26の後縁とが繋がっており(図9(b)参照)、この接続部分をヒンジとして、後壁部22と上壁部26とを相対的に姿勢変位可能である。保護カバー20は、後壁部22の下縁と下壁部30の後縁とが繋がっており(図9(b)参照)、この接続部分をヒンジとして、後壁部22と下壁部30とを相対的に姿勢変位可能である。下壁部30は、横壁部24および前壁部28と独立している。保護カバー20は、上壁部26の前縁と前壁部28の上縁とが繋がっており(図8(b)参照)、この接続部分をヒンジとして、上壁部26と前壁部28とを相対的に姿勢変位可能である。前壁部28は、側縁が横壁部24の前縁に繋がって箱状体の前面開口を塞ぐ状態と、横壁部24から取り外して前記前面開口を開放する状態とに変更可能に構成されている。
【0016】
図1に示すように、保護カバー20は、横壁部24の前縁と前壁部28の側縁との間に着脱手段32が設けられている。保護カバー20は、横壁部24と前壁部28とを着脱手段32で接続して前面開口を閉じたり、着脱手段32による接続を解除して、前壁部28をはね上げて前面開口を開いたりすることが可能である。着脱手段32としては、線ファスナーまたは面ファスナーなどのファスナーや、磁石と磁性体との組み合わせによるものや、スナップボタンなどの係止具や、その他の構成を採用可能であり、実施例では、線ファスナーを用いている。
【0017】
図4図6に示すように、横壁部24の上部は、互いに分離可能に構成された外装部34と内装部36との2枚の壁からなる二重構造になっており、横壁部24の二重構造部分よりも下側が、1枚の壁からなる一重構造になっている。外装部34は、後縁が後壁部22の側縁に繋がる一方で、上縁が上壁部26の側縁から分離している。内装部36は、上縁が上壁部26の側縁に繋がる一方で、後縁が後壁部22の側縁から分離している。外装部34と内装部36とは、外装部34の上端後縁から前側へ向かうにつれて下方傾斜するように延びるヒンジ部38を介して繋がっている。内装部36は、ヒンジ部38を斜辺とする直角三角形状に形成されている。
【0018】
内装部36は、外装部34の内側に重なって上壁部26が天井面を構成するように支持する第1姿勢で、箱状体における側面の上部内面を構成するようになっている(図4図6および図8参照)。また、内装部36は、ヒンジ部38で外装部34から離れるように折れ曲がって上壁部26を後壁部22の内側に重なるように折り畳む第2姿勢(図5および図9参照)へ第1姿勢から姿勢変位可能に構成されている。横壁部24は、第1姿勢と第2姿勢との間で姿勢変位可能な内装部36が第2姿勢にあるとき、内装部36が該横壁部24における一重部分の内側に重なり、上部が外装部34だけで構成される。
【0019】
図6に示すように、外装部34の内面側を構成するシート材と、第1姿勢にある内装部36の外面側を構成するシート材とを、同一のものとしたり(実施例)、または2枚のものを繋げたりしてある。また、第1姿勢にある内装部36の内面側を構成するシート材と、横壁部24における一重部分の内面側を構成するシート材とを、同一のものとしたり(実施例)、または2枚のものを繋げたりしてある。更に、外装部34の外面側を構成するシート材と、横壁部24における一重部分を構成するシート材とを、同一のものとしたり(実施例)、または2枚のものを繋げたりしてある。第1姿勢にある内装部36の外面側のシート材がヒンジ部38で折れ曲がって、外装部34の内面側のシート材に連なり、このとき内装部36の内面側のシート材が、横壁部24における一重部分の内面側を構成するシート材に直線的に連なる。第2姿勢にある内装部36の外面側のシート材が、外装部34の内面側のシート材に直線的に連なり、このとき内装部36の内面側のシート材が、ヒンジ部38で折れ曲がって、横壁部24における一重部分の内面側を構成するシート材に連なる。実施例の横壁部24は、着脱手段32を構成する線ファスナーが、内装部36の前縁から横壁部24における一重部分の前縁にかけて設けられている。
【0020】
図6に示すように、ヒンジ部38は、折り曲げ可能な柔軟性を有するシート材で構成される。ヒンジ部38は、外装部34および内装部36の間で互いに連なるシート材と、内装部36および横壁部24の一重部分の間で互いに連なるシート材とのうち、折り曲げ側と伸ばす側を切り替えることで、内装部36の姿勢変位を許容する。ヒンジ部38は、外装部34の上縁後端から前側へ向かうにつれて、45°以上の傾斜角度で下方傾斜するように形成するとよく、より好ましくは45°である。ヒンジ部38の傾斜角度が45°以上であると、内装部36の第2姿勢への姿勢変位によって上壁部26を後壁部22の内面に沿わせて適切に畳むことができるので好ましい。内装部36を、ヒンジ部38を斜辺とする二等辺三角形状に形成することで、第1姿勢にある内装部36における上壁部26との接続部分を、外装部34の上縁に合わせることができる(図4参照)。また、第2姿勢にある内装部36における上壁部26との接続部分を、後壁部22に沿うように配置可能であるので、上壁部26を後壁部22の内面に沿わせて重ねることができるので好ましい(図5参照)。
【0021】
図4および図6に示すように、外装部34と内装部36との間には、第1姿勢にある内装部36を外装部34に対して着脱可能に保持する保持手段40が設けられている。保持手段40としては、面ファスナーなどのファスナーや、磁石と磁性体との組み合わせによるものや、スナップボタンなどの係止具や、その他の構成を採用可能であり、実施例では、面ファスナーを用いている。保持手段40の一方は、外装部34の内面前部に該外縁部の前縁に沿って設けられると共に、外装部34の内面上部に該外装部34の上縁に沿って設けられている。また、保持手段40の他方は、第1姿勢にある内装部36の外面において前記保持手段40の一方に合わせた位置に設けられている。
【0022】
図4および図6に示すように、内装部36の上部には、内装部36を補強する補強部42が設けられている。補強部42は、内装部36における上壁部26との接続部分近傍に設けられ、実施例では、第1姿勢にある内装部36の上部に該内装部36の上縁(上壁部26との接続部分)に沿わせて設置されている。補強部42は、プラダンと呼ばれる段ボール風プラスチック板などのプラスチック板や、硬質発泡体などの発泡体など、内装部36を構成するシート材よりも剛性が高いものを用いるとよい。なお、補強部42は、内装部36の内外面を構成する2枚のシート材の間に配置されている(図6参照)。
【0023】
図3に示すように、後壁部22は、上部に設けられた取付手段44によって、運搬台車10の後枠部12に対して着脱可能に取り付けられている。同様に、図2に示すように、横壁部24の外装部34は、上部に設けられた取付手段44によって、運搬台車10の横枠部14に対して着脱可能に取り付けられている。図7に示すように、取付手段44は、後壁部22(横壁部24の外装部34)の外面に固定され、プラスチック板などからなる取付プレート46と、この取付プレート46に一端が固定された接続ベルト48と、接続ベルト48に保持された取付フック50とを備えている。接続ベルト48は、取付プレート46に固定された一端側に他端側が重なるように折り返して面ファスナー48aで互いに接続することで、環状にすることが可能である。取付フック50は、根元部を環状にした接続ベルト48に通して接続されて、鉤状の先端部を、後枠部12(横枠部14)の上縁を構成する棒状体に引っ掛けるようになっている。
【0024】
図2および図3に示すように、実施例の保護カバー20は、後壁部22(横壁部24の外装部34)が、後枠部12(横枠部14)から吊り下げるようにして取り付けられる。取付手段44は、面ファスナー48aの接続位置を調節することで、環状にした接続ベルト48の長さを簡単に変更することができ、運搬台車10の高さに応じて保護カバー20を適切な位置に取り付けることができる。また、取付フック50は、接続ベルト48から簡単に取り外すことができ、後枠部12(横枠部14)の棒状体に外形や大きさに合わせた取付フック50に適宜交換することができる。なお、図1および図2に示す符号52は、横枠部14の前縁を構成する棒状体を環状に囲った後に面ファスナーで開放端を接続することで、横壁部24を横枠部14に取り付け可能な取付ベルトである。
【0025】
保護カバー20を、箱状体とした使用状態から折り畳んで収納状態にする場合を説明する。まず、横壁部24の前縁と前壁部28の側縁とを接続している着脱手段32を、保護カバー20の前側からの作業によって接続解除する。保護カバー20の前側からの作業によって、前壁部28を上壁部26に繋がる上縁で折り曲げることで、前壁部28を上壁部26の内側(下面)に沿わせて面ファスナー等の接続手段54でくっつける(図8参照)。この際、前壁部28における上壁部26の前後寸法よりも長い余長部分を折り曲げて、後壁部22の内側(前面)に沿わせて垂れ下げる(図8(b)参照)。
【0026】
次に、保護カバー20の前側からの作業によって、外装部34と内装部36とを接続している保持手段40の接続を解除する。保護カバー20の前側からの作業によって、第1姿勢にある内装部36をヒンジ部38で斜め後側へ折り返して、内装部36を横壁部24における一重部分の内側に重ねるように配置して、内装部36を第2姿勢にする(図5および図9(b)参照)。内装部36を第1姿勢から第2姿勢に折り返すことに伴って、内装部36と繋がっている上壁部26も後壁部22と繋がる後縁で折れ曲がって下方へ向けて姿勢変位し、後壁部22に沿って垂れ下がる前壁部28の余長部分の内側に重なるように、上壁部26が配置される(図9参照)。このように、取付手段44や取付ベルト52を運搬台車10から取り外すことなく、保護カバー20の前側からの作業だけで、前壁部28および上壁部26を後壁部22の内側に重なるように折り畳むことができる。
【0027】
次に、保護カバー20の前側からの作業によって、運搬台車10の台部16を後枠部12に繋がる後縁を支点としてはね上げることで、台部16に載っている下壁部30も後壁部22に繋がる後縁で折り曲げられる。これにより、下壁部30が、後壁部22の内側に沿わせて配置されると共に、はね上げた台部16によって立ち上げられた下壁部30が台部16で内側から支えられる(図9(b)参照)。
【0028】
次に、運搬台車10の横枠部14の一方を、運搬台車10(保護カバー20)の前側からの作業によって、後枠部12に繋がる後縁で折り曲げることで、横枠部14と共に使用姿勢にあった横壁部24が後壁部22に繋がる後縁で折れ曲がって収納姿勢になる(図10参照)。そして、横壁部24および横枠部14が、後壁部22の内側に沿って折り畳まれた前壁部28、上壁部26および下壁部30の内側(前側)に重なるように折り畳まれることで、運搬台車10および保護カバー20がネスティング可能な状態になる。なお、保護カバー20を収納状態から使用状態に戻す場合は、前述した使用状態から収納状態にする手順を逆に行えばよい。
【0029】
前述したように保護カバー20は、前壁部28の折り畳み、内装部36と共に行う上壁部26の折り畳み、下壁部30の折り畳みおよび一方の横壁部24の折り畳みを、何れも前側から行うことができる。このように保護カバー20は、該保護カバー20の前側の一方からの作業だけによって、使用状態の箱状体から収納状態に折り畳むことができる。同様に、保護カバー20は、該保護カバー20の前側の一方からの作業だけによって、折り畳んだ収納状態から使用状態の箱状体に組み立てることができる。従って、保護カバー20は、折り畳むまたは組み立てるために、保護カバー20の横側に回り込むなど、他方面からアクセスする必要はないので、折り畳み易くかつ組み立て易く、作業性を向上することができる。
【0030】
保護カバー20は、横壁部24の上部が、上壁部26から切り離された外装部34と、上壁部26に繋がる内装部36との二重構造である。これにより、第1姿勢にある内装部36を外装部34から取り外して内側に折り返すことで、外装部34を立てた姿勢で残したまま、上壁部26および上壁部26に繋がった前壁部28を後壁部22に沿って折り畳むことができる。また、保護カバー20は、内装部36が外装部34と別体であるので、外装部34に設けられた取付手段44を運搬台車10から取り外すことなく、内装部36を第1姿勢から第2姿勢にしたり、第2姿勢から第1姿勢にしたりすることができる。従って、保護カバー20は、横枠部14からの横壁部24の取り外しあるいは横壁部24の横枠部14への取り付けを必要としないので、折り畳み易くかつ組み立て易く、作業性を向上することができる。しかも、保護カバー20は、使用状態と収納状態との間の変更作業の際に、内装部36を除く横壁部24の大部分が取付手段44を介して運搬台車10に支持されているので、変更作業の作業負荷を軽減することができる。例えば、横枠部14の姿勢変位に併せて、横枠部14に取り付けたままで横壁部24を使用姿勢と収納姿勢との間で姿勢変位でき、変更作業の作業負荷を軽減することができる。保護カバー20は、上壁部26と横壁部24の内装部36とが繋がっており、上壁部26と横壁部24との間に隙間がなく断熱性に優れているので、保冷や保温性能が良好である。
【0031】
外装部34と内装部36との間には、第1姿勢にある内装部36を外装部34に対して着脱可能に保持する保持手段40が設けられている。保持手段40の接続を解除することで、内装部36を外装部34から簡単に取り外すことができ、内装部36を外装部34と独立して姿勢変位させることができる。また、保持手段40の接続によって、内装部36を外装部34に対して簡単に取り付けることができる。このように、内装部36の折り畳みおよび組み立て作業性を向上できる。そして、取付手段44を介して横枠部14に保持された外装部34で支持された内装部36によって、上壁部26を支えることができる。
【0032】
内装部36の上部には、内装部36を補強する補強部42が設けられている。内装部36は、上部に補強部42があることで、第1姿勢とした際に姿勢を維持し易くなり、上縁が繋がる上壁部26を適切に支えることができる。また、補強部42と保持手段40とを重なるように配置すれば、保持手段40を接続または接続解除するときに補強部42が支えになって、内装部36の着脱を容易にすることができる。
【0033】
保護カバー20は、使用状態の箱状体の6面を構成する壁部22~30が何れも断熱構造であるので、内部の温度維持に優れており、保冷や保温などの用途に適している。
【0034】
前述したように保護カバー20は、前側からの作業だけで折り畳むあるいは組み立てが可能であるから、運搬台車10を折り畳むあるいは組み立てるとき、前側からの作業だけで足りる。また、保護カバー20は、運搬台車10から取付手段44および取付ベルト52を取り外すことなく、運搬台車10の折り畳みあるいは組み立てを許容する。このように、前述した保護カバー20が設置された運搬台車10は、保護カバー20の折り畳み・組み立てを行い易いので、ネスティングの作業性に優れている。
【0035】
(変更例)
前述した構成に限らず、例えば以下のようにしてもよい。
(1)保護カバーは、断熱構造ではなく、内部に収納した物品を埃や日光等から守る構造であってもよい。
(2)保護カバーを使用状態と収納状態との間で変更する際に取付手段を取り外す必要はないので、取付手段を、保護カバーの形態変更作業を行う前面側に近い横壁部の前側だけでなく、横壁部の後側にも設定すること可能である。このように、保護カバーは、横壁部を運搬台車の横枠部に対して前後に離した複数箇所で取り付けることで、運搬台車の走行時に振動が加わっても横壁部を安定させることができる。
【符号の説明】
【0036】
10 運搬台車,12 後枠部,14 横枠部,20 保護カバー,22 後壁部,
24 横壁部,26 上壁部,28 前壁部,30 下壁部,34 外装部,
36 内装部,40 保持手段,42 補強部
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