IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 保土谷化学工業株式会社の特許一覧 ▶ エスエフシー カンパニー リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許-有機エレクトロルミネッセンス素子 図1
  • 特許-有機エレクトロルミネッセンス素子 図2
  • 特許-有機エレクトロルミネッセンス素子 図3
  • 特許-有機エレクトロルミネッセンス素子 図4
  • 特許-有機エレクトロルミネッセンス素子 図5
  • 特許-有機エレクトロルミネッセンス素子 図6
  • 特許-有機エレクトロルミネッセンス素子 図7
  • 特許-有機エレクトロルミネッセンス素子 図8
  • 特許-有機エレクトロルミネッセンス素子 図9
  • 特許-有機エレクトロルミネッセンス素子 図10
  • 特許-有機エレクトロルミネッセンス素子 図11
  • 特許-有機エレクトロルミネッセンス素子 図12
  • 特許-有機エレクトロルミネッセンス素子 図13
  • 特許-有機エレクトロルミネッセンス素子 図14
  • 特許-有機エレクトロルミネッセンス素子 図15
  • 特許-有機エレクトロルミネッセンス素子 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-24
(45)【発行日】2023-04-03
(54)【発明の名称】有機エレクトロルミネッセンス素子
(51)【国際特許分類】
   H10K 85/60 20230101AFI20230327BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20230327BHJP
   H10K 50/12 20230101ALI20230327BHJP
   H10K 50/15 20230101ALI20230327BHJP
   H10K 50/16 20230101ALI20230327BHJP
   H10K 85/30 20230101ALI20230327BHJP
   H10K 101/10 20230101ALN20230327BHJP
【FI】
H10K85/60
C09K11/06 660
C09K11/06 690
H10K50/12
H10K50/15
H10K50/16
H10K85/30
H10K101:10
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019543724
(86)(22)【出願日】2018-09-21
(86)【国際出願番号】 JP2018034990
(87)【国際公開番号】W WO2019059334
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2021-06-22
(31)【優先権主張番号】P 2017183655
(32)【優先日】2017-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005315
【氏名又は名称】保土谷化学工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507074834
【氏名又は名称】エスエフシー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】平山 雄太
(72)【発明者】
【氏名】山本 剛史
(72)【発明者】
【氏名】駿河 和行
(72)【発明者】
【氏名】イ セジン
(72)【発明者】
【氏名】イ ウンギュ
(72)【発明者】
【氏名】シン ボンギ
【審査官】辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-047442(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0007476(KR,A)
【文献】国際公開第2017/073594(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/111270(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/122813(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0236976(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 85/60
C09K 11/06
H10K 50/12
H10K 50/15
H10K 50/16
H10K 85/30
H10K 101/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも陽極、正孔輸送層、発光層、電子輸送層及び陰極をこの順に有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記正孔輸送層が下記一般式(1)で表されるアリールアミン化合物を含有し、前記発光層が下記一般式(2)で表される縮合環構造を有する複素環化合物もしくは下記一般式(3)で表される縮合環構造を有する複素環化合物を含有することを特徴とする
有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化1】
(1)
(式中、Ar~Arは相互に同一でも異なってもよく、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表す。Ar~Arは水素原子を表す。n1は0、1または2を表す。)
【化2】
(2)
(式中、Aは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素の2価基、置換もしくは無置換の芳香族複素環の2価基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族の2価基、または単結合を表す。Arは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表す。R~Rは相互に同一でも異なってもよく、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基、または芳香族炭化水素基、芳香族複素環基もしくは縮合多環芳香族基から選ばれる基によって置換されたジ置換アミノ基を表す。R~Rのそれぞれの基同士が単結合で環を形成してもよく、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。R~Rは、R~Rが結合しているベンゼン環と、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、硫黄原子、またはモノアリールアミノ基の連結基を介して互いに結合して環を形成してもよい。R~Rは相互に同一でも異なってもよく、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基、または芳香族炭化水素基、芳香族複素環基もしくは縮合多環芳香族基から選ばれる基によって置換されたジ置換アミノ基を表す。R~Rのそれぞれの基同士が単結合で環を形成してもよく、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。R~Rは、R~Rが結合しているベンゼン環と、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、硫黄原子、またはモノアリールアミノ基の連結基を介して互いに結合して環を形成してもよい。RとR10は相互に同一でも異なってもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表す。RとR10のそれぞれの基同士が単結合で環を形成してもよく、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。前記一般式(2)で表される縮合環構造を有する複素環化合物は、下記一般式(2a)、(2b)、(2c)、(2d)、または(2e)で表される縮合環構造を有する複素環化合物から選択される。)
【化3】
(3)
(式中、Aは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素の2価基、置換もしくは無置換の芳香族複素環の2価基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族の2価基、または単結合を表す。Ar10は置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表す。R11~R14は相互に同一でも異なってもよく、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基、または芳香族炭化水素基、芳香族複素環基もしくは縮合多環芳香族基から選ばれる基によって置換されたジ置換アミノ基を表す。R11~R14のそれぞれの基同士が単結合で環を形成してもよく、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。R11~R14は、R11~R14が結合しているベンゼン環と、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、硫黄原子、またはモノアリールアミノ基の連結基を介して互いに結合して環を形成してもよい。R15~R18は相互に同一でも異なってもよく、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基、または芳香族炭化水素基、芳香族複素環基もしくは縮合多環芳香族基から選ばれる基によって置換されたジ置換アミノ基を表す。R15~R18のそれぞれの基同士が単結合で環を形成してもよく、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。R15~R18は、R15~R18が結合しているベンゼン環と、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、硫黄原子、またはモノアリールアミノ基の連結基を介して互いに結合して環を形成してもよい。前記一般式(3)で表される縮合環構造を有する複素環化合物は、下記一般式(3a-1)、(3a-2)、(3a-3)、(3a-4)、または(3b-1)で表される縮合環構造を有する複素環化合物から選択される。)
【化4】
(2a)
【化5】
(2b)
【化6】
(2c)
【化7】
(2d)
【化8】
(2e)
(前記一般式(2a)、(2b)、(2c)、(2d)、または(2e)中、Xは置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、硫黄原子、またはモノアリールアミノ基を表し、Ar 、R ~R 、R 、R 10 は、前記一般式()で示した通りの意味を表す。)
【化9】
(3a-1)
【化10】
(3a-2)
【化11】
(3a-3)
【化12】
(3a-4)
【化13】
(3b-1)
(前記一般式(3a-1)、(3a-2)、(3a-3)、(3a-4)、または(3b-1)中、Xは置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、硫黄原子、またはモノアリールアミノ基を表し、Ar10、R11~R18は、前記一般式(3)で示した通りの意味を表す。)
【請求項2】
前記アリールアミン化合物が下記一般式(1a)で表されることを特徴とする請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化14】
(1a)
(式中、Ar~Arは相互に同一でも異なってもよく、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表す。Ar~Arは相互に同一でも異なってもよく、水素原子、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表す。n1は0、1または2を表す。ここで、ArとArは、単結合で環を形成してもよく、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。ArまたはArは、ArAr-N基が結合しているベンゼン環と、単結合で環を形成してもよく、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。)
【請求項3】
前記正孔輸送層が第一正孔輸送層および第二正孔輸送層の2層構造であって、該第一正孔輸送層が前記一般式(1)で表されるアリールアミン化合物を含有することを特徴とする、
請求項1または2記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
前記正孔輸送層が第一正孔輸送層および第二正孔輸送層の2層構造であって、該第二正孔輸送層、または前記第一正孔輸送層と発光層との間に配置された積層膜のうちの少なくとも一層に、前記一般式(1)で表されるアリールアミン化合物を含有することを特徴とする、
請求項1または2記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
前記電子輸送層が、下記一般式(4)で表されるピリミジン環構造を有する化合物を含有することを特徴とする、
請求項1~4のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化15】
(4)
(式中、Ar11は、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表す。Ar12、Ar13は同一でも異なっていてもよく、水素原子、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表す。Ar14は、置換もしくは無置換の芳香族複素環基を表す。R19~R22は、同一でも異なってもよく、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、トリフルオロメチル基、炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表す。ここで、Ar12とAr13は同時に水素原子となることはないものとする。)
【請求項6】
前記発光層が、赤色の発光材料を含有することを特徴とする、
請求項1~5のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
前記発光層が、燐光性の発光材料を含有することを特徴とする、
請求項1~5のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
前記燐光性の発光材料がイリジウムまたは白金を含む金属錯体である、
請求項7記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の表示装置に好適な自発光素子である有機エレクトロルミネッセンス素子に関するものであリ、詳しくは特定のアリールアミン化合物と特定のベンゾアゾール環構造を有する化合物を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子と呼ぶことがある。)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は自己発光性素子であるため、液晶素子にくらべて明るく視認性に優れ、鮮明な表示が可能であることから、活発な研究がなされてきた。
【0003】
1987年にイーストマン・コダック社のC.W.Tangらは各種の役割を各材料に分担した積層構造素子を開発することにより有機材料を用いた有機EL素子を実用的なものにした。彼らは電子を輸送することのできる蛍光体と正孔を輸送することのできる有機物とを積層し、両方の電荷を蛍光体の層の中に注入して発光させることにより、10V以下の電圧で1000cd/m以上の高輝度が得られるようになった(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0004】
現在まで、有機EL素子の実用化のために多くの改良がなされ、積層構造の各種の役割をさらに細分化して、基板上に順次に、陽極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、陰極を設けた電界発光素子によって高効率と耐久性が達成されるようになってきた(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
また、発光効率の更なる向上を目的として三重項励起子の利用が試みられ、燐光発光性化合物の利用が検討されている(例えば、非特許文献2参照)。
そして、熱活性化遅延蛍光(TADF)による発光を利用する素子も開発されている。2011年に九州大学の安達らは、熱活性化遅延蛍光材料を用いた素子によって5.3%の外部量子効率を実現させた。(例えば、非特許文献3参照)
【0006】
発光層は、一般的にホスト材料と称される電荷輸送性の化合物に、蛍光性化合物や燐光発光性化合物または遅延蛍光を放射する材料をドープして作製することもできる。前記非特許文献に記載されているように、有機EL素子における有機材料の選択は、その素子の効率や耐久性など諸特性に大きな影響を与える。(例えば、非特許文献2参照)
【0007】
有機EL素子は両電極から注入された電荷が発光層で再結合して発光が得られる。高発光効率を得るには、正孔、電子の両電荷の発光層への効率の良い受け渡しや、発光層に注入される両電荷のバランス、生成した励起子の閉じ込めなどが重要となる。正孔輸送層から発光層への正孔注入性を高め、発光層から正孔輸送層への電子の漏れを防ぐ正孔輸送層の電子阻止性を高めると、発光層内での正孔と電子が再結合する確率が向上し、効率よく励起子を生成させることができる。更にこの発光層内で生成した励起子を輸送層に漏らさず、発光層に閉じ込めることで高発光効率を得ることができる。そのため、正孔輸送材料の果たす役割は重要であり、正孔注入性が高く、正孔の移動度が大きく、電子阻止性が高く、さらには電子に対する耐久性が高い正孔輸送材料が求められている。
【0008】
また、素子の寿命に関しては材料の耐熱性やアモルファス性も重要である。耐熱性が低い材料では、素子駆動時に生じる熱により、低い温度でも熱分解が起こり、材料が劣化する。アモルファス性が低い材料では、短い時間でも薄膜の結晶化が起こり、素子が劣化してしまう。そのため使用する材料には耐熱性が高く、アモルファス性が良好な性質が求められる。
【0009】
これまで有機EL素子に用いられてきた正孔輸送材料としては、N,N'-ジフェニル-N,N'-ジ(α-ナフチル)ベンジジン(NPD)や種々の芳香族アミン誘導体が知られていた(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。NPDは良好な正孔輸送能力を持っているが、耐熱性の指標となるガラス転移点(Tg)が96℃と低く、高温条件下では結晶化による素子特性の低下が起こってしまう(例えば、非特許文献4参照)。また、前記特許文献に記載の芳香族アミン誘導体の中には、正孔の移動度が10-3cm/Vs以上と優れた移動度を有する化合物が知られているが(例えば、特許文献1および特許文献2参照)、電子阻止性が不十分であるため、電子の一部が発光層を通り抜けてしまい、発光効率の向上が期待できないなど、更なる高効率化のため、より電子阻止性が高く、薄膜がより安定で耐熱性の高い材料が求められていた。また、耐久性の高い芳香族アミン誘導体の報告があるが(例えば、特許文献3参照)、電子写真感光体に用いられる電荷輸送材料として用いたもので、有機EL素子として用いた例はなかった。
【0010】
耐熱性や正孔注入性などの特性を改良した化合物として、置換カルバゾール構造を有するアリールアミン化合物が提案されているが(例えば、特許文献4および特許文献5参照)、これらの化合物を正孔注入層または正孔輸送層に用いた素子では、耐熱性や発光効率などの改良はされているものの、未だ十分とはいえず、さらなる低駆動電圧化や、さらなる高発光効率化が求められている。
【0011】
有機EL素子の素子特性の改善や素子作製の歩留まり向上のために、正孔および電子の注入・輸送性能、薄膜の安定性や耐久性に優れた材料を組み合わせることで、正孔および電子が高効率で再結合できる、発光効率が高く、駆動電圧が低く、長寿命な素子が求められている。
【0012】
また、有機EL素子の素子特性を改善させるために、正孔および電子の注入・輸送性能、薄膜の安定性や耐久性に優れた材料を組み合わせることで、キャリアバランスのとれた高効率、低駆動電圧、長寿命な素子が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特開平8-048656号公報
【文献】特許第3194657号公報
【文献】特許第4943840号公報
【文献】特開2006-151979号公報
【文献】国際公開第2008/062636号
【文献】国際公開第2014/009310号
【文献】特表2014-513064号公報
【文献】韓国公開特許10-2013-0060157号公報
【非特許文献】
【0014】
【文献】応用物理学会第9回講習会予稿集55~61ページ(2001)
【文献】応用物理学会第9回講習会予稿集23~31ページ(2001)
【文献】Appl.Phys.Let.,98,083302(2011)
【文献】有機EL討論会第三回例会予稿集13~14ページ(2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、高発光効率、高耐久性の有機EL素子用の材料として、正孔および電子の注入・輸送性能、電子阻止能力、薄膜状態での安定性、耐久性等に優れた有機EL素子用の各種材料を、それぞれの材料が有する特性が効果的に発現できるように組み合わせることで、(1)発光効率および電力効率が高く、(2)発光開始電圧が低く、(3)実用駆動電圧が低く、(4)特に長寿命である有機EL素子を提供することにある。
【0016】
本発明が提供しようとする有機EL素子が具備すべき物理的な特性としては、(1)発光効率および電力効率が高いこと、(2)発光開始電圧が低いこと、(3)実用駆動電圧が低いこと、特に、(4)長寿命であることをあげることができる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
そこで本発明者らは上記の目的を達成するために、アリールアミン系材料が、正孔の注入・輸送能力、薄膜の安定性および耐久性に優れていること、縮合環構造を有する複素環化合物の発光効率が優れていることに着目した。特定のアリールアミン化合物と特定の構造を有する縮合環構造を有する複素環化合物を選択して、発光層へ成功を効率よく注入・輸送できるようにし、発光層の材料の特性に合ったキャリアバランスが取れるように、正孔輸送材料と発光層の材料を組み合わせた種々の有機EL素子を作製し、素子の特性評価を鋭意行った。また、ピリミジン環構造を有する複素環化合物が電子注入および輸送能力、薄膜の安定性や耐久性に優れていることに着目し、特定のピリミジン構造を有する化合物を選択して、発光層への電子の注入・輸送効率を高め、キャリアバランスがさらに発光層の材料の特性に合うよう、正孔輸送材料、発光層の材料および電子輸送材料を組み合わせた種々の有機EL素子を作製し、素子の特性評価を鋭意行った。その結果、本発明を完成するに至った
【0018】
すなわち本発明によれば、以下の有機EL素子が提供される。
【0019】
[1]少なくとも陽極、正孔輸送層、発光層、電子輸送層及び陰極をこの順に有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記正孔輸送層が下記一般式(1)で表されるアリールアミン化合物を含有し、前記発光層が下記一般式(2)で表される縮合環構造を有する複素環化合物もしくは下記一般式(3)で表される縮合環構造を有する複素環化合物を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0020】
【化1】
(1)
【0021】
(式中、Ar~Arは相互に同一でも異なってもよく、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表す。Ar~Arは相互に同一でも異なってもよく、水素原子、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表す。n1は0、1または2を表す。ここで、ArとArは、単結合で環を形成してもよく、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。ArまたはArはArAr-N基が結合しているベンゼン環と、単結合で環を形成してもよく、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。)
【0022】
【化2】
(2)
【0023】
(式中、Aは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素の2価基、置換もしくは無置換の芳香族複素環の2価基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族の2価基、または単結合を表す。Arは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表す。R~Rは相互に同一でも異なってもよく、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基、または芳香族炭化水素基、芳香族複素環基もしくは縮合多環芳香族基から選ばれる基によって置換されたジ置換アミノ基を表す。R~Rのそれぞれの基同士が単結合で環を形成してもよく、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。R~Rは、R~Rが結合しているベンゼン環と、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、硫黄原子、またはモノアリールアミノ基の連結基を介して互いに結合して環を形成してもよい。R~Rは相互に同一でも異なってもよく、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基、または芳香族炭化水素基、芳香族複素環基もしくは縮合多環芳香族基から選ばれる基によって置換されたジ置換アミノ基を表す。R~Rのそれぞれの基同士が単結合で環を形成してもよく、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。R~Rは、R~Rが結合しているベンゼン環と、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、硫黄原子、またはモノアリールアミノ基の連結基を介して互いに結合して環を形成してもよい。RとR10は相互に同一でも異なってもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表す。RとR10のそれぞれの基同士が単結合で環を形成してもよく、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。)
【0024】
【化3】
(3)
【0025】
(式中、Aは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素の2価基、置換もしくは無置換の芳香族複素環の2価基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族の2価基、または単結合を表す。Ar10は置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表す。R11~R14は相互に同一でも異なってもよく、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基、または芳香族炭化水素基、芳香族複素環基もしくは縮合多環芳香族基から選ばれる基によって置換されたジ置換アミノ基を表す。R11~R14のそれぞれの基同士が単結合で環を形成してもよく、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。R11~R14は、R11~R14が結合しているベンゼン環と、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、硫黄原子、またはモノアリールアミノ基の連結基を介して互いに結合して環を形成してもよい。R15~R18は相互に同一でも異なってもよく、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基、または芳香族炭化水素基、芳香族複素環基もしくは縮合多環芳香族基から選ばれる基によって置換されたジ置換アミノ基を表す。R15~R18のそれぞれの基同士が単結合で環を形成してもよく、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。R15~R18は、R15~R18が結合しているベンゼン環と、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、硫黄原子、モノアリールアミノ基の連結基を介して互いに結合して環を形成してもよい。)
【0026】
[2]前記アリールアミン化合物が下記一般式(1a)で表されることを特徴とする上記[1]記載の有機EL素子。
【0027】
【化4】
(1a)
【0028】
(式中、Ar~Arは相互に同一でも異なってもよく、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表す。Ar~Arは相互に同一でも異なってもよく、水素原子、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表す。n1は0、1または2を表す。ここで、ArとArは、単結合で環を形成してもよく、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。ArまたはArは、ArAr-N基が結合しているベンゼン環と、単結合で環を形成してもよく、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。)
【0029】
[3]前記正孔輸送層が第一正孔輸送層および第二正孔輸送層の2層構造であって、該第一正孔輸送層が前記一般式(1)で表されるアリールアミン化合物を含有することを特徴とする、上記[1]または[2]記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0030】
[4]前記正孔輸送層が第一正孔輸送層および第二正孔輸送層の2層構造であって、該第二正孔輸送層、または前記第一正孔輸送層と発光層との間に配置された積層膜のうちの少なくとも一層に、前記一般式(1)で表されるアリールアミン化合物を含有することを特徴とする、上記[1]または[2]記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0031】
[5]前記電子輸送層が、下記一般式(4)で表されるピリミジン環構造を有する化合物を含有することを特徴とする、上記[1]~[4]のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0032】
【化5】
(4)
【0033】
(式中、Ar11は、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表す。Ar12、Ar13は同一でも異なっていてもよく、水素原子、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表す。Ar14は、置換もしくは無置換の芳香族複素環基を表す。R19~R22は、同一でも異なってもよく水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、トリフルオロメチル基、炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表す。ここで、Ar12とAr13は同時に水素原子となることはないものとする。)
【0034】
[6]前記発光層が、赤色の発光材料を含有することを特徴とする、上記[1]~[5]のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0035】
[7]前記発光層が、燐光性の発光材料を含有することを特徴とする、上記[1]~[5]のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0036】
[8]前記した燐光性の発光材料がイリジウムまたは白金を含む金属錯体である、上記[6]または[7]記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【発明の効果】
【0037】
本発明の有機EL素子は、正孔の注入・輸送の役割を効果的に発現できる特定のアリールアミン化合物を選択し、特定の縮合環構造を有する複素環化合物を選択したことにより、発光層へ正孔を効率よく注入・輸送でき、高発光効率、低駆動電圧、長寿命の有機EL素子を実現することができる。また、特定の縮合環構造を有する複素環化合物の特性に合ったキャリアバランスが取れるように特定の電子輸送材料と組み合わせ、高効率、低駆動電圧であって、特に長寿命の有機EL素子を実現することができる。さらに正孔輸送層を第一正孔輸送層と第二正孔輸送層の2層構造とした場合において、特性の構造を有する二種類のアリールアミン化合物を、キャリアバランスや材料の特性を考慮しながら組み合わせることで、さらなる長寿命の有機EL素子を実現することができる。
本発明によれば、従来の有機EL素子の発光効率および駆動電圧、そして耐久性を改良することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の一般式(1)で表されるアリールアミン化合物である、化合物1-1~化合物1-15を示す図である。
図2】本発明の一般式(1)で表されるアリールアミン化合物である、化合物1-16~化合物1-30を示す図である。
図3】本発明の一般式(1)で表されるアリールアミン化合物である、化合物1-31~化合物1-44を示す図である。
図4】本発明の一般式(2)で表される縮合環構造を有する複素環化合物である、化合物2-1~化合物2-15を示す図である。
図5】本発明の一般式(3)で表される縮合環構造を有する複素環化合物である、化合物3-1~化合物3-15を示す図である。
図6】本発明の一般式(3)で表される縮合環構造を有する複素環化合物である、化合物3-16~化合物3-23を示す図である。
図7】本発明の一般式(4)で表されるピリミジン環化合物である、化合物4-1~化合物4-15を示す図である。
図8】本発明の一般式(4)で表されるピリミジン環化合物である、化合物4-16~化合物4-30を示す図である。
図9】本発明の一般式(4)で表されるピリミジン環化合物である、化合物4-31~化合物4-45を示す図である。
図10】本発明の一般式(4)で表されるピリミジン環化合物である、化合物4-46~化合物4-60を示す図である。
図11】本発明の一般式(4)で表されるピリミジン環化合物である、化合物4-61~化合物4-75を示す図である。
図12】本発明の一般式(4)で表されるピリミジン環化合物である、化合物4-76~化合物4-90を示す図である。
図13】本発明の一般式(4)で表されるピリミジン環化合物である、化合物4-91~化合物4-105を示す図である。
図14】本発明の一般式(4)で表されるピリミジン環化合物である、化合物4-106~化合物4-117を示す図である。
図15】本発明の一般式(4)で表されるピリミジン環化合物である、化合物4-118~化合物4-126を示す図である。
図16】実施例8~13、比較例1~4の有機EL素子構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
一般式(1)、(1a)中のAr~Arで表される「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」における「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」または「縮合多環芳香族基」としては、具体的に、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、フリル基、ピロリル基、チエニル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、ナフチリジニル基、フェナントロリニル基、アクリジニル基、およびカルボリニル基などをあげることができる。
ここで、ArとArは、単結合で環を形成してもよく、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。ArまたはArは、ArAr-N基が結合しているベンゼン環と、単結合で環を形成してもよく、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。
【0040】
一般式(1)、(1a)中のAr~Arで表される「置換芳香族炭化水素基」、「置換芳香族複素環基」または「置換縮合多環芳香族基」における「置換基」としては、具体的に、重水素原子、シアノ基、ニトロ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基などの炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基;メチルオキシ基、エチルオキシ基、プロピルオキシ基などの炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;フェニルオキシ基、トリルオキシ基などのアリールオキシ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基などのアリールアルキルオキシ基;フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基などの芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基;ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、カルボリニル基などの芳香族複素環基;スチリル基、ナフチルビニル基などのアリールビニル基;アセチル基、ベンゾイル基などのアシル基のような基をあげることができ、これらの置換基は、さらに前記例示した置換基が置換していても良い。また、これらの置換基同士が単結合で環を形成していてもよく、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成していてもよい。
【0041】
一般式(2)中のAで表される、「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素の2価基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環の2価基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族の2価基」における「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族」の「芳香族炭化水素」、「芳香族複素環」または「縮合多環芳香族」としては、具体的に、ベンゼン、ビフェニル、ターフェニル、テトラキスフェニル、スチレン、ナフタレン、アントラセン、アセナフタレン、フルオレン、フェナントレン、インダン、ピレン、トリフェニレン、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、ピロール、フラン、チオフェン、キノリン、イソキノリン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドリン、カルバゾール、カルボリン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、キノキサリン、ベンゾイミダゾール、ピラゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、ナフチリジン、フェナントロリン、アクリジンなどをあげることができる。
そして、一般式(2)中のAで表される「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素の2価基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環の2価基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族の2価基」は、上記「芳香族炭化水素」、「芳香族複素環」または「縮合多環芳香族」から水素原子を2個取り除いてできる2価基を表す。
また、これらの2価基は置換基を有していてよく、置換基として、一般式(1)、(1a)中のAr~Arで表される「置換芳香族炭化水素基」、「置換芳香族複素環基」または「置換縮合多環芳香族基」における「置換基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0042】
一般式(2)中のArで表される「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」における「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」または「縮合多環芳香族基」としては、一般式(1)中のAr~Arで表される「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」における「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」または「縮合多環芳香族基」に関して示したものと同様のものをあげることができる。
また、これらの基は置換基を有していてよく、置換基として、一般式(1)、(1a)中のAr~Arで表される「置換芳香族炭化水素基」、「置換芳香族複素環基」または「置換縮合多環芳香族基」における「置換基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0043】
一般式(2)中のR~Rで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基」または「置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」における「炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基」または「炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」としては、具体的に、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、2-ブテニル基などをあげることができ、これらの基同士が単結合で環を形成してもよく、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよく、これらの基(R~R)とこれらの基(R~R)が直接結合しているベンゼン環とで、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、硫黄原子、またはモノアリールアミノ基などの連結基を介して互いに結合して環を形成してもよい。
【0044】
一般式(2)中のR~Rで表される「置換基を有する炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有する炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基」または「置換基を有する炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」における「置換基」としては、具体的に、重水素原子、シアノ基、ニトロ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;メチルオキシ基、エチルオキシ基、プロピルオキシ基などの炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;フェニルオキシ基、トリルオキシ基などのアリールオキシ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基などのアリールアルキルオキシ基;フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基などの芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基;ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、カルボリニル基などの芳香族複素環基;ジフェニルアミノ基、ジナフチルアミノ基などの芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基で置換されたジ置換アミノ基;ジピリジルアミノ基、ジチエニルアミノ基などの芳香族複素環基で置換されたジ置換アミノ基;芳香族炭化水素基、縮合多環芳香族基または芳香族複素環基から選択される置換基で置換されたジ置換アミノ基のような基をあげることができ、これらの置換基はさらに、前記例示した置換基が置換していても良い。また、これらの置換基同士が単結合で環を形成してもよく、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成していてもよい。
【0045】
一般式(2)中のR~Rで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基」または「置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基」における「炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基」または「炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基」としては、具体的に、メチルオキシ基、エチルオキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基、1-アダマンチルオキシ基、2-アダマンチルオキシ基などをあげることができる。これらの基同士が単結合で環を形成してもよく、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよく、これらの基(R~R)とこれらの基(R~R)が直接結合しているベンゼン環とで、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、硫黄原子、またはモノアリールアミノ基などの連結基を介して互いに結合して環を形成してもよい。
また、これらの基は置換基を有していてよく、置換基として、一般式(2)中のR~Rで表される「置換基を有する炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有する炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基」または「置換基を有する炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」における「置換基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0046】
一般式(2)中のR~Rで表される「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」における「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」または「縮合多環芳香族基」としては、一般式(1)、(1a)中のAr~Arで表される「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」における「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」または「縮合多環芳香族基」に関して示したものと同様のものをあげることができる。これらの基同士が単結合で環を形成してもよく、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよく、これらの基(R~R)とこれらの基(R~R)が直接結合しているベンゼン環とで、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、硫黄原子、またはモノアリールアミノ基などの連結基を介して互いに結合して環を形成してもよい。
また、これらの基は置換基を有していてよく、置換基として、一般式(1)、(1a)中のAr~Arで表される「置換芳香族炭化水素基」、「置換芳香族複素環基」または「置換縮合多環芳香族基」における「置換基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0047】
一般式(2)中のR~Rで表される「置換もしくは無置換のアリールオキシ基」における「アリールオキシ基」としては、具体的に、フェニルオキシ基、ビフェニリルオキシ基、ターフェニリルオキシ基、ナフチルオキシ基、アントラセニルオキシ基、フェナントレニルオキシ基、フルオレニルオキシ基、インデニルオキシ基、ピレニルオキシ基、ペリレニルオキシ基などをあげることができる。これらの基同士が単結合で環を形成してもよく、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよく、これらの基(R~R)とこれらの基(R~R)が直接結合しているベンゼン環とで、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、硫黄原子、またはモノアリールアミノ基などの連結基を介して互いに結合して環を形成してもよい。
また、これらの基は置換基を有していてよく、置換基として、一般式(1)、(1a)中のAr~Arで表される「置換芳香族炭化水素基」、「置換芳香族複素環基」または「置換縮合多環芳香族基」における「置換基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0048】
一般式(2)中のR~Rで表される「芳香族炭化水素基、芳香族複素環基もしくは縮合多環芳香族基から選ばれる基によって置換されたジ置換アミノ基」における「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」または「縮合多環芳香族基」としては、一般式(1)、(1a)中のAr~Arで表される「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」における「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」または「縮合多環芳香族基」に関して示したものと同様のものをあげることができる。
また、これらの基は置換基を有していてよく、置換基として、一般式(1)、(1a)中のAr~Arで表される「置換芳香族炭化水素基」、「置換芳香族複素環基」または「置換縮合多環芳香族基」における「置換基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
一般式(2)中のR~Rで表される「芳香族炭化水素基、芳香族複素環基もしくは縮合多環芳香族基から選ばれる基によって置換されたジ置換アミノ基」は、これらの基(R~R)同士が、これらの基(R~R)が有する「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」または「縮合多環芳香族基」を介しつつ、単結合で環を形成してもよく、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよく、これらの基(R~R)とこれらの基(R~R)が直接結合しているベンゼン環とで、これらの基(R~R)が有する「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」または「縮合多環芳香族基」を介しつつ、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、硫黄原子、またはモノアリールアミノ基などの連結基を介して互いに結合して環を形成してもよい。
【0049】
一般式(2)中のR、R10で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」における「炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」としては、一般式(2)中のR~Rで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」における「炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」に関して示したものと同様のものをあげることができる。これらの基同士が単結合で環を形成してもよく、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。
また、これらの基は置換基を有していてよく、置換基として、一般式(2)中のR~Rで表される「置換基を有する炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有する炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基」または「置換基を有する炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」おける「置換基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0050】
一般式(2)中のR、R10で表される「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」における「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」または「縮合多環芳香族基」としては、一般式(1)、(1a)中のAr~Arで表される「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」における「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」または「縮合多環芳香族基」に関して示したものと同様のものをあげることができる。これらの基同士が単結合で環を形成してもよく、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。
また、これらの基は置換基を有していてよく、置換基として、一般式(1)、(1a)中のAr~Arで表される「置換芳香族炭化水素基」、「置換芳香族複素環基」または「置換縮合多環芳香族基」における「置換基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0051】
一般式(2)中の連結基「モノアリールアミノ基」における「アリール基」としては、一般式(1)、(1a)中のAr~Arで表される「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」における「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」または「縮合多環芳香族基」に関して示したものと同様のものをあげることができる。
また、これら基は置換基を有していてよく、置換基として、一般式(1)、(1a)中のAr~Arで表される「置換芳香族炭化水素基」、「置換芳香族複素環基」または「置換縮合多環芳香族基」における「置換基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0052】
一般式(3)中のAで表される、「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素の2価基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環の2価基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族の2価基」としては、一般式(2)中のAで表される、「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素の2価基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環の2価基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族の2価基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0053】
一般式(3)中のAr10で表される「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」としては、一般式(2)中のArで表される「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0054】
一般式(3)中のR11~R18で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基」または「置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」としては、一般式(2)中のR~Rで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基」または「置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0055】
一般式(3)中のR11~R18で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基」または「置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基」としては、一般式(2)中のR~Rで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基」または「置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0056】
一般式(3)中のR11~R18で表される「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」としては、一般式(2)中のR~Rで表される「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0057】
一般式(3)中のR11~R18で表される「置換もしくは無置換のアリールオキシ基」としては、一般式(2)中のR~Rで表される「置換もしくは無置換のアリールオキシ基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0058】
一般式(3)中のR11~R18で表される「芳香族炭化水素基、芳香族複素環基もしくは縮合多環芳香族基から選ばれる基によって置換されたジ置換アミノ基」としては、一般式(2)中のR~Rで表される「芳香族炭化水素基、芳香族複素環基もしくは縮合多環芳香族基から選ばれる基によって置換されたジ置換アミノ基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0059】
一般式(3)中の連結基「モノアリールアミノ基」における「アリール基」としては、一般式(2)中の連結基「モノアリールアミノ基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0060】
一般式(4)中のAr11、Ar12、Ar13で表される、「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」における「芳香族炭化水素基」または「縮合多環芳香族基」としては、具体的に、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、テトラキスフェニル基、スチリル基、ナフチル基、アントラセニル基、アセナフテニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基のような基をあげることができる。
また、これらの基は置換基を有していてよく、置換基として、前記一般式(1)、(1a)中のAr~Arで表される「置換芳香族炭化水素基」、「置換芳香族複素環基」または「置換縮合多環芳香族基」における「置換基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0061】
一般式(4)中のAr14で表される、「置換もしくは無置換の芳香族複素環基」における「芳香族複素環基」としては、具体的に、トリアジニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、フリル基、ピロリル基、チエニル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、ナフチリジニル基、フェナントロリニル基、アクリジニル基、カルボリニル基のような基をあげることができる。
また、これらの基は置換基を有していてよく、置換基として、前記一般式(1)、(1a)中のAr~Arで表される「置換芳香族炭化水素基」、「置換芳香族複素環基」または「置換縮合多環芳香族基」における「置換基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0062】
一般式(4)中のR19~R22で表される、「炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」としては、具体的に、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、2-メチルプロピル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、3-メチルブチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、iso-ヘキシル基およびtert-ヘキシル基をあげることができる。
【0063】
一般式(4)中のR19~R22で表される、「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」における「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」または「縮合多環芳香族基」としては、具体的に、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、テトラキスフェニル基、スチリル基、ナフチル基、アントラセニル基、アセナフテニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、トリアジニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、フリル基、ピロリル基、チエニル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、ナフチリジニル基、フェナントロリニル基、アクリジニル基、カルボリニル基のような基をあげることができる。
また、これらの基は置換基を有していてよく、置換基として、前記一般式(1)、(1a)中のAr~Arで表される「置換芳香族炭化水素基」、「置換芳香族複素環基」または「置換縮合多環芳香族基」における「置換基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0064】
一般式(1)、(1a)において、Ar~Arで表される「置換芳香族炭化水素基」、「置換芳香族複素環基」または「置換縮合多環芳香族基」における「置換基」としては、重水素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」が好ましく、重水素原子、フェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基、ビニル基がより好ましい。また、これらの基同士が単結合を介して互いに結合して縮合芳香環を形成する態様も好ましい。
一般式(1)、(1a)において、n1は0または1~2を表すが、n1が0の時は、2つのジアリールアミノベンゼン環が直接(単結合で)結合していることを示し、n1が1の時は、2つのジアリールアミノベンゼン環が1個のフェニレン基を介して結合していることを示し、n1が2の時は、2つのジアリールアミノベンゼン環が2個のフェニレン基(ビフェニレン基)を介して結合していることを示す。
一般式(1)、(1a)において、n1は0であること、すなわち2つのジアリールアミノベンゼン環が直接(単結合で)結合していることが好ましい。
一般式(1)、(1a)において、ArまたはArがArAr-N基(Ar、Arとそれらが結合する窒素原子からなるジアリールアミノ基)が結合しているベンゼン環と、単結合で環を形成する態様や、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成する態様も好ましい。この場合のベンゼン環における結合位置としては、ArAr-N基と隣接する位置が好ましい。
【0065】
一般式(2)中のAとしては、「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素の2価基」、「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族の2価基」、または単結合が好ましく、ベンゼン、ビフェニル、もしくはナフタレンから水素原子を2個取り除いてできる2価基、または単結合がより好ましく、ベンゼンから水素原子を2個取り除いてできる2価基、もしく単結合が特に好ましい。
一般式(2)中のArとしては、フェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基、もしくは「芳香族複素環基」が好ましく、「芳香族複素環基」の中では、トリアジニル基、キナゾリニル基、ナフトピリミジニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピリドピリミジニル基、ナフチリジニル基、ピリジル基、キノリル基、イソキノリル基が特に好ましい。
【0066】
一般式(2)において、R~Rの隣り合うふたつが「炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」、「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」もしくは「縮合多環芳香族基」であって、隣り合うふたつの基(R~R)が単結合を介して互いに結合して、R~Rが結合しているベンゼン環と共に縮合環を形成する態様が好ましい。この場合の「炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」、「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」もしくは「縮合多環芳香族基」としては、ビニル基、フェニル基が好ましく、R~Rが結合しているベンゼン環と共にナフタレン環、フェナントレン環もしくはトリフェニレン環を形成する態様が好ましい。
一般式(2)において、R~Rのいずれかひとつが「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」もしくは「縮合多環芳香族基」であって、R~Rが結合しているベンゼン環と、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、硫黄原子、またはモノアリールアミノ基などの連結基を介して互いに結合して環を形成する態様が好ましい。この場合の「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」もしくは「縮合多環芳香族基」としては、フェニル基、インデニル基、インドリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基が好ましく、R~Rが結合しているベンゼン環と共にフルオレン環、カルバゾール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、インデノインドール環、インデノベンゾフラン環、インデノベンゾチオフェン環、ベンゾフロインドール環、ベンゾチエノインドール環、インドロインドール環を形成する態様が好ましい。
以上のように、一般式(2)で表される縮合環構造を有する複素環化合物の中で、R~Rがこれらの基同士で互いに結合して環を形成する態様、または、R~RとR~Rが結合しているベンゼン環とが、互いに結合して環を形成する態様として、下記一般式(2a)、(2b)、(2c)、(2d)もしくは(2e)で表される態様が好ましく用いられる。
【0067】
【化6】
(2a)
【0068】
(式中、Xは置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、硫黄原子、またはモノアリールアミノ基を表し、Ar、R~R、R、R10は、前記一般式(2)で示した通りの意味を表す。)
【0069】
【化7】
(2b)
【0070】
(式中、Xは置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、硫黄原子、またはモノアリールアミノ基を表し、Ar、R~R、R、R10は、前記一般式(2)で示した通りの意味を表す。)
【0071】
【化8】
(2c)
【0072】
(式中、Xは置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、硫黄原子、またはモノアリールアミノ基を表し、Ar、R~R、R、R10は、前記一般式(2)で示した通りの意味を表す。)
【0073】
【化9】
(2d)
【0074】
(式中、Xは置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、硫黄原子、またはモノアリールアミノ基を表し、Ar、R~R、R、R10は、前記一般式(2)で示した通りの意味を表す。)
【0075】
【化10】
(2e)
【0076】
(式中、Xは置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、硫黄原子、またはモノアリールアミノ基を表し、Ar、R~R、R、R10は、前記一般式(2)で示した通りの意味を表す。)
【0077】
一般式(2)において、R~Rの隣り合うふたつ、もしくはすべてがビニル基であって、隣り合うふたつのビニル基が単結合を介して互いに結合して縮合環を形成する態様、すなわち、R~Rが結合しているベンゼン環と共にナフタレン環、もしくはフェナントレン環を形成する態様も好ましい。
一般式(2)中のR、R10としては、「炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」が好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0078】
一般式(3)中のAとしては、「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素の2価基」、「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族の2価基」、または単結合が好ましく、ベンゼン、ビフェニル、もしくはナフタレンから水素原子を2個取り除いてできる2価基、または単結合がより好ましく、ベンゼンから水素原子を2個取り除いてできる2価基、または単結合が特に好ましい。
一般式(3)中のAr10としては、フェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基、もしくは「芳香族複素環基」が好ましく、「芳香族複素環基」の中では、トリアジニル基、キナゾリニル基、ナフトピリミジニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピリドピリミジニル基、ナフチリジニル基、ピリジル基、キノリル基、イソキノリル基が特に好ましい。
【0079】
一般式(3)において、R11~R14の隣り合うふたつが「炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」、「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」もしくは「縮合多環芳香族基」であって、隣り合うふたつの基(R11~R14)が単結合を介して互いに結合して、R11~R14が結合しているベンゼン環と共に縮合環を形成する態様が好ましい。この場合の「炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」、「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」もしくは「縮合多環芳香族基」としては、ビニル基、フェニル基が好ましく、R11~R14が結合しているベンゼン環と共にナフタレン環、フェナントレン環もしくはトリフェニレン環を形成する態様が好ましい。
一般式(3)において、R11~R14のいずれかひとつが「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」もしくは「縮合多環芳香族基」であって、R11~R14が結合しているベンゼン環と、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、硫黄原子、またはモノアリールアミノ基などの連結基を介して互いに結合して環を形成する態様が好ましい。この場合の「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」もしくは「縮合多環芳香族基」としては、フェニル基、インデニル基、インドリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基が好ましく、R11~R14が結合しているベンゼン環と共にフルオレン環、カルバゾール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、インデノインドール環、インデノベンゾフラン環、インデノベンゾチオフェン環、ベンゾフロインドール環、ベンゾチエノインドール環、インドロインドール環を形成する態様が好ましい。
以上のような、R11~R14とR11~R14が結合しているベンゼン環とが、互いに結合して環を形成する態様として、下記一般式(3a-1)、(3a-2)、(3a-3)、(3a-4)もしくは(3b-1)で表される態様が好ましい。
【0080】
【化11】
(3a-1)
【0081】
(式中、Xは置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、硫黄原子、またはモノアリールアミノ基を表し、Ar10、R11~R18は、前記一般式(3)で示した通りの意味を表す。)
【0082】
【化12】
(3a-2)
【0083】
(式中、Xは置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、硫黄原子、またはモノアリールアミノ基を表し、Ar10、R11~R18は、前記一般式(3)で示した通りの意味を表す。)
【0084】
【化13】
(3a-3)
【0085】
(式中、Xは置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、硫黄原子、またはモノアリールアミノ基を表し、Ar10、R11~R18は、前記一般式(3)で示した通りの意味を表す。)
【0086】
【化14】
(3a-4)
【0087】
(式中、Xは置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、硫黄原子、またはモノアリールアミノ基を表し、Ar10、R11~R18は、前記一般式(3)で示した通りの意味を表す。)
【0088】
【化15】
(3b-1)
【0089】
(式中、Xは置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、硫黄原子、またはモノアリールアミノ基を表し、Ar10、R11~R18は、前記一般式(3)で示した通りの意味を表す。)
【0090】
一般式(3)において、R15~R18の隣り合うふたつ、もしくはすべてがビニル基であって、隣り合うふたつのビニル基が単結合を介して互いに結合して縮合環を形成する態様、すなわち、R15~R18が結合しているベンゼン環と共にナフタレン環、もしくはフェナントレン環を形成する態様も好ましい。
一般式(3)において、R15~R18のいずれかひとつが「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」もしくは「縮合多環芳香族基」である態様も好ましく、この場合、R15~R18のいずれかひとつが、フルオレニル基、カルバゾリル基、ジベンゾフラニル基、もしくはジベンゾチエニル基から選ばれる基であることが好ましく、R16がフルオレニル基、カルバゾリル基、ジベンゾフラニル基、もしくはジベンゾチエニル基であって、R15、R17およびR18が水素原子であることがより好ましい。
【0091】
一般式(4)中のAr11としては、フェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基、アセナフテニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基が好ましく、フェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ピレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基がより好ましい。ここで、フェニル基は置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を置換基として有していることが好ましく、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ピレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基から選ばれる置換基を有していることがより好ましい。
一般式(4)中のAr12としては、置換基を有するフェニル基が好ましく、この場合の置換基としては、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニル基などの芳香族炭化水素基、ナフチル基、アントラセニル基、アセナフテニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基などの縮合多環芳香族基が好ましく、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ピレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基がより好ましい。
一般式(4)中のAr13としては、置換基を有するフェニル基が好ましく、この場合の置換基としては、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニル基などの芳香族炭化水素基、ナフチル基、アントラセニル基、アセナフテニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基などの縮合多環芳香族基が好ましく、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ピレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基がより好ましい。
一般式(4)において、Ar11とAr12が同一ではないことが、薄膜の安定性の観点から好ましい。ここで、Ar11とAr12が同一ではない場合とは、異なる置換基であってもよいし、あるいは、異なる置換位置であってもよい。
一般式(4)において、Ar12とAr13は同一の基であってもよいが、分子全体の対称性がよくなることによって結晶化し易くなる恐れがあり、薄膜の安定性の観点から、Ar15とAr16は異なる基であることが好ましく、Ar12とAr13が同時に水素原子とはなることはないものとする。
一般式(4)において、Ar12とAr13の一方が水素原子であることが好ましい。
【0092】
一般式(4)中のAr14としては、トリアジニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピロリル基、キノリル基、イソキノリル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ナフチリジニル基、フェナントロリニル基、アクリジニル基、カルボリニル基などの含窒素複素環基が好ましく、トリアジニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、キノリル基、イソキノリル基、インドリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ナフチリジニル基、フェナントロリニル基、アクリジニル基がより好ましく、ピリジル基、ピリミジニル基、キノリル基、イソキノリル基、インドリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、フェナントロリニル基、アクリジニル基が特に好ましい。
一般式(4)において、ベンゼン環におけるAr14の結合位置は、ピリミジン環との結合位置に対し、メタ位であることが、薄膜の安定性の観点から好ましい。
【0093】
一般式(4)で表されるピリミジン環構造を有する化合物としては、置換基の結合様式の異なる、下記一般式(4a)、一般式(4b)で表されるピリミジン環構造を有する化合物がある。
【0094】
【化16】
(4a)
【0095】
(式中、Ar11、Ar12、Ar13、Ar14、R19~R22は、前記一般式(4)で示した通りの意味を表す。)
【0096】
【化17】
(4b)
【0097】
(式中、Ar11、Ar12、Ar13、Ar14、R19~R22は、前記一般式(4)で示した通りの意味を表す。)
【0098】
本発明の有機EL素子に好適に用いられる、前記一般式(1)、一般式(1a)で表されるアリールアミン化合物は、有機EL素子の正孔注入層または正孔輸送層の構成材料として使用することができる。正孔の移動度が高く正孔注入層または正孔輸送層の材料として好ましい化合物である。また、電子阻止性能が高く、正孔輸送層を第一正孔輸送層と第二正孔輸送層の2層構造とした場合の第二正孔輸送層の材料としても好ましい化合物である。
【0099】
本発明の有機EL素子に好適に用いられる、前記一般式(2)で表される縮合環構造を有する複素環化合物および前記一般式(3)で表される縮合環構造を有する複素環化合物は、有機EL素子の発光層の構成材料として使用することができる。従来の材料に比べて発光効率に優れ、発光層のホスト材料、特に燐光性の発光材料を含有する発光層のホスト材料として、好ましい化合物である。
【0100】
本発明の有機EL素子に好適に用いられる、前記一般式(4)で表される、ピリミジン環構造を有する化合物は、有機EL素子の電子輸送層の構成材料として使用することができる。
前記一般式(4)で表される、ピリミジン環構造を有する化合物は、電子注入および輸送能力に優れており、さらに薄膜の安定性や耐久性に優れ、電子輸送層の材料として好ましい化合物である。
【0101】
本発明の有機EL素子は、正孔の注入・輸送性能、薄膜の安定性や耐久性に優れた有機EL素子用の材料を、キャリアバランスを考慮しながら組み合わせているため、従来の有機EL素子に比べて、陽極から正孔輸送層への正孔輸送効率が向上することによって、低駆動電圧を維持しつつ、発光効率が向上すると共に、有機EL素子の耐久性を向上させることができる。
低駆動電圧、高発光効率、かつ長寿命の有機EL素子を実現することが可能となった。
【0102】
本発明の有機EL素子に好適に用いられる、前記一般式(1)で表されるアリールアミン化合物の中で、好ましい化合物1-1~化合物1-44の具体例を図1~3に示すが、これらの化合物に限定されるものではない。
【0103】
本発明の有機EL素子に好適に用いられる、前記一般式(2)で表される縮合環構造を有する複素環化合物の中で、好ましい化合物2-1~化合物2-15の具体例を図4に示すが、これらの化合物に限定されるものではない。
【0104】
本発明の有機EL素子に好適に用いられる、前記一般式(3)で表される縮合環構造を有する複素環化合物の中で、好ましい化合物3-1~化合物3-23の具体例を図5,6に示すが、これらの化合物に限定されるものではない。
【0105】
尚、上述した縮合環構造を有する複素環化合物は、それ自体公知の方法に準じて合成することができる(例えば、特許文献7参照)。
【0106】
本発明の有機EL素子に好適に用いられる、前記一般式(4)で表されるピリミジン環化合物の中で、好ましい化合物4-1~化合物4-126の具体例を図7~14に示すが、これらの化合物に限定されるものではない。
【0107】
尚、上述したピリミジン環構造を有する化合物は、それ自体公知の方法に準じて合成することができる(例えば、特許文献8参照)。
【0108】
一般式(1)、(1a)で表される化合物の精製はカラムクロマトグラフによる精製、シリカゲル、活性炭、活性白土などによる吸着精製、溶媒による再結晶や晶析法などによって行い、最終的には、昇華精製などによる精製を行った。化合物の同定は、NMR分析によって行った。物性値として、融点、ガラス転移点(Tg)と仕事関数の測定を行った。融点は蒸着性の指標となるものであり、ガラス転移点(Tg)は薄膜状態の安定性の指標となり、仕事関数は正孔輸送性の指標となるものである。
その他、本発明の有機EL素子に用いられる化合物は、カラムクロマトグラフによる精製、シリカゲル、活性炭、活性白土等による吸着精製、溶媒による再結晶や昌析法などによって精製を行った後、最後に昇華精製法によって精製したものを用いた。
【0109】
融点とガラス転移点(Tg)は、粉体を用いて高感度示走査熱量計(ブルカー・エイエックスエス製、DSC3100SA)によって測定した。
【0110】
仕事関数は、ITO基板の上に100nmの薄膜を作製して、イオン化ポテンシャル測定装置(住友重機械工業株式会社製、PYS-202)によって求めた。
【0111】
本発明の有機EL素子の構造としては、基板上に順次に、陽極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層及び陰極からなるもの、また、発光層と電子輸送層の間に正孔阻止層を有するものがあげられる。これらの多層構造においては有機層を何層か省略あるいは兼ねることが可能であり、例えば正孔注入層と正孔輸送層を兼ねた構成とすること、電子注入層と電子輸送層を兼ねた構成とすること、などもできる。また、同一の機能を有する有機層を2層以上積層した構成とすることが可能であり、正孔輸送層を2層積層した構成、発光層を2層積層した構成、電子輸送層を2層積層した構成、などもできる。本発明の有機EL素子の構造として、正孔輸送層が第一正孔輸送層と第二正孔輸送層の2層が積層した構成とすることも好ましい。第二正孔輸送層は電子阻止層としての機能も有するものが好ましい。
【0112】
本発明の有機EL素子の陽極としては、ITOや金のような仕事関数の大きな電極材料が用いられる。
【0113】
本発明の有機EL素子の正孔輸送層としては、前記一般式(1)、(1a)で表されるアリールアミン化合物のほか、スターバースト型のトリフェニルアミン誘導体、種々のトリフェニルアミン4量体などの材料;銅フタロシアニンに代表されるポルフィリン化合物;ヘキサシアノアザトリフェニレンのようなアクセプター性の複素環化合物や塗布型の高分子材料、などを用いることができる。これらは、単独で成膜しても良いが、他の材料とともに混合して成膜した単層として使用しても良く、単独で成膜した層同士、混合して成膜した層同士、または単独で成膜した層と混合して成膜した層の積層構造としても良い。これらの材料は蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
【0114】
また、正孔注入層あるいは正孔輸送層において、該層に通常使用される材料に対し、さらにトリスブロモフェニルアミンヘキサクロルアンチモン、ラジアレン誘導体(例えば、特許文献6参照)などをPドーピングしたものや、TPDなどのベンジジン誘導体の構造をその部分構造に有する高分子化合物などを用いることができる。
【0115】
本発明の有機EL素子の正孔輸送層として、前記一般式(1)、(1a)で表されるアリールアミン化合物のほか、N,N'-ジフェニル-N,N'-ジ(m-トリル)ベンジジン(TPD)、N,N'-ジフェニル-N,N'-ジ(α-ナフチル)ベンジジン(NPD)、N,N,N',N'-テトラビフェニリルベンジジンなどのベンジジン誘導体、1,1-ビス[4-(ジ-4-トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(TAPC)などの、分子中にトリフェニルアミン構造を2個、単結合またはヘテロ原子を含まない2価基で連結した構造を有するアリールアミン化合物、分子中にトリフェニルアミン構造を4個単結合またはヘテロ原子を含まない2価基で連結した構造を有するアリールアミン化合物、種々のトリフェニルアミン3量体などを用いることができる。これらは、単独で成膜しても良いが、他の材料とともに混合して成膜した単層として使用しても良く、単独で成膜した層同士、混合して成膜した層同士、または単独で成膜した層と混合して成膜した層の積層構造としても良い。また、正孔の注入・輸送層として、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)/ポリ(スチレンスルフォネート)(PSS)などの塗布型の高分子材料を用いることができる。これらの材料は蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
【0116】
本発明の有機EL素子において正孔輸送層が第一正孔輸送層および第二正孔輸送層の2層が積層した場合における、第二正孔輸送層では前記一般式(1)、(1a)で表されるアリールアミン化合物のほか、分子中にトリフェニルアミン構造を4個、単結合またはヘテロ原子を含まない2価基で連結した構造を有するアリールアミン化合物、分子中にトリフェニルアミン構造を2個、単結合またはヘテロ原子を含まない2価基で連結した構造を有するアリールアミン化合物、4,4',4''-トリ(N-カルバゾリル)トリフェニルアミン(TCTA)、9,9-ビス[4-(カルバゾール-9-イル)フェニル]フルオレン、1,3-ビス(カルバゾール-9-イル)ベンゼン(mCP)、2,2-ビス(4-カルバゾール-9-イルフェニル)アダマンタン(Ad-Cz)などのカルバゾール誘導体、9-[4-(カルバゾール-9-イル)フェニル]-9-[4-(トリフェニルシリル)フェニル]-9H-フルオレンに代表されるトリフェニルシリル基とトリアリールアミン構造を有する化合物などの電子阻止作用を有する化合物を用いることができる。これらは、単独で成膜しても良いが、他の材料とともに混合して成膜した単層として使用しても良く、単独で成膜した層同士、混合して成膜した層同士、または単独で成膜した層と混合して成膜した層の積層構造としても良い。これらの材料は蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
【0117】
本発明の有機EL素子の発光層としては、前記一般式(2)で表される縮合環構造を有する複素環化合物、前記一般式(3)で表される縮合環構造を有する複素環化合物のほか、Alqをはじめとするキノリノール誘導体の金属錯体などの各種の金属錯体、アントラセン誘導体、ビススチリルベンゼン誘導体、ピレン誘導体、オキサゾール誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体などを用いることができる。また、発光層をホスト材料とドーパント材料とで構成しても良く、ホスト材料としては、前記一般式(2)で表される縮合環構造を有する複素環化合物、前記一般式(3)で表される縮合環構造を有する複素環化合物のほか、前記発光材料に加え、チアゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ポリジアルキルフルオレン誘導体などを用いることができる。またドーパント材料としては、キナクリドン、クマリン、ルブレン、ペリレン、ピレン、およびそれらの誘導体、ベンゾピラン誘導体、インデノフェナントレン誘導体、ローダミン誘導体、アミノスチリル誘導体などを用いることができる。これらは、単独で成膜しても良いが、他の材料とともに混合して成膜した単層として使用しても良く、単独で成膜した層同士、混合して成膜した層同士、または単独で成膜した層と混合して成膜した層の積層構造としても良い。
本発明の有機EL素子の発光層としては、前記一般式(2)で表される縮合環構造を有する複素環化合物、または前記一般式(3)で表される縮合環構造を有する複素環化合物をホスト材料として用いることが好ましい。
【0118】
また、発光材料として燐光発光体を使用することが好ましい。燐光発光体としては、イリジウムや白金などの金属錯体の燐光発光体を使用することができる。Ir(ppy)などの緑色の燐光発光体、FIrpic、FIr6などの青色の燐光発光体、BtpIr(acac)などの赤色の燐光発光体などが用いられ、このときのホスト材料としては前記一般式(2)で表される縮合環構造を有する複素環化合物、前記一般式(3)で表される縮合環構造を有する複素環化合物のほか、正孔注入・輸送性のホスト材料として4,4'-ジ(N-カルバゾリル)ビフェニル(CBP)やTCTA、mCPなどのカルバゾール誘導体などを用いることができる。電子輸送性のホスト材料として、p-ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン(UGH2)や2,2',2''-(1,3,5-フェニレン)-トリス(1-フェニル-1H-ベンズイミダゾール)(TPBI)などを用いることができ、高性能の有機EL素子を作製することができる。
【0119】
燐光性の発光材料のホスト材料へのドープは濃度消光を避けるため、発光層全体に対して1~30重量パーセントの範囲で、共蒸着によってドープすることが好ましい。
【0120】
また、発光材料としてPIC-TRZ、CC2TA、PXZ-TRZ、4CzIPNなどのCDCB誘導体などの遅延蛍光を放射する材料を使用することも可能である。(例えば、非特許文献3参照)
【0121】
これらの材料は蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
【0122】
本発明の有機EL素子における正孔阻止層として、バソクプロイン(BCP)などのフェナントロリン誘導体や、アルミニウム(III)ビス(2-メチル-8-キノリナート)-4-フェニルフェノレート(BAlq)などのキノリノール誘導体の金属錯体の他、各種の希土類錯体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、オキサジアゾール誘導体など、正孔阻止作用を有する化合物を用いることができる。これらの材料は電子輸送層の材料を兼ねてもよい。これらは、単独で成膜しても良いが、他の材料とともに混合して成膜した単層として使用しても良く、単独で成膜した層同士、混合して成膜した層同士、または単独で成膜した層と混合して成膜した層の積層構造としても良い。これらの材料は蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
【0123】
本発明の有機EL素子の電子輸送層として、前記一般式(4)で表されるピリミジン環構造を有する化合物が好ましく用いられる。これらは、単独で成膜しても良いが、他の電子輸送性の材料とともに混合して成膜した単層として使用しても良く、単独で成膜した層同士、混合して成膜した層同士、または単独で成膜した層と混合して成膜した層の積層構造としても良い。これらの材料は蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
【0124】
前記一般式(4)で表されるピリミジン環構造を有する化合物と混合もしくは同時に使用できる、電子輸送性の材料としては、Alq、BAlqをはじめとするキノリノール誘導体の金属錯体、各種金属錯体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、アントラセン誘導体、カルボジイミド誘導体、キノキサリン誘導体、ピリドインドール誘導体、フェナントロリン誘導体、シロール誘導体などをあげることができる。
【0125】
本発明の有機EL素子の電子注入層として、フッ化リチウム、フッ化セシウムなどのアルカリ金属塩、フッ化マグネシウムなどのアルカリ土類金属塩、酸化アルミニウムなどの金属酸化物、あるいはイッテルビウム(Yb)、サマリウム(Sm)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、セシウム(Cs)などの金属などを用いることができるが、電子輸送層と陰極の好ましい選択においては、これを省略することができる。
【0126】
本発明の有機EL素子の陰極として、アルミニウムのような仕事関数の低い電極材料や、マグネシウム銀合金、マグネシウムインジウム合金、アルミニウムマグネシウム合金のような、より仕事関数の低い合金が電極材料として用いられる。
【0127】
以下、本発明の実施の形態について、実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0128】
<4-{(9,9-ジメチルフルオレン-2-イル)-(ビフェニル-4-イル)アミノ}-4'-(ビフェニル-4-イル-フェニルアミノ)-2-フェニル-ビフェニル(化合物1-7)の合成>
窒素置換した反応容器に、(9,9-ジメチルフルオレン-2-イル)-(ビフェニル-4-イル)-(6-ブロモビフェニル-3-イル)アミン10.0g、4-{(ビフェニル-4-イル)-フェニルアミノ}フェニルボロン酸7.9g、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)0.60g、炭酸カリウム5.0g、トルエン80ml、エタノール40ml、水30mlを加えて加熱し、100℃で一晩撹拌した。冷却し、分液操作により有機層を採取した後、濃縮し、カラムクロマトグラフ(担体:シリカゲル、溶離液:ジクロロメタン/ヘプタン)によって精製することにより、4-{(9,9-ジメチルフルオレン-2-イル)-(ビフェニル-4-イル)アミノ}-4'-(ビフェニル-4-イル-フェニルアミノ)-2-フェニル-ビフェニル(化合物1-7)の白色粉体8.30g(収率49%)を得た。
【0129】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
H-NMR(CDCl)で以下の48個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=7.72-7.60(2H)、7.59-7.52(2H)、7.51-7.10(35)、7.09-6.90(3H)、1.56(6H)。
【0130】
【化18】
(1-7)
【実施例2】
【0131】
<4-{(9,9-ジメチルフルオレン-2-イル)-(ビフェニル-4-イル)アミノ}-4'-(ジフェニルアミノ)-2-フェニル-ビフェニル(化合物1-11)の合成>
実施例1において、4-{(ビフェニル-4-イル)-フェニルアミノ}フェニルボロン酸に代えて、4-(ジフェニルアミノ)フェニルボロン酸を用いて同様の条件で反応を行うことによって4-{(9,9-ジメチルフルオレン-2-イル)-(ビフェニル-4-イル)アミノ}-4'-(ジフェニルアミノ)-2-フェニル-ビフェニル(化合物1-11)の白色粉体11.5g(収率75%)を得た。
【0132】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
H-NMR(CDCl)で以下の44個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=7.71-7.64(4H)、7.58-7.56(2H)、7.49-6.94(32)、1.51(6H)。
【0133】
【化19】
(1-11)
【実施例3】
【0134】
<4-{(9,9-ジメチルフルオレン-2-イル)-フェニルアミノ}-4'-(ビフェニル-4-イル-フェニルアミノ)-2-フェニル-ビフェニル(化合物1-14)の合成>
実施例1において、(9,9-ジメチルフルオレン-2-イル)-(ビフェニル-4-イル)-(6-ブロモビフェニル-3-イル)アミンに代えて、(9,9-ジメチルフルオレン-2-イル)-フェニル-(6-ブロモビフェニル-3-イル)アミンを用い、同様の条件で反応を行うことによって4-{(9,9-ジメチルフルオレン-2-イル)-フェニルアミノ}-4'-(ビフェニル-4-イル-フェニルアミノ)-2-フェニル-ビフェニル(化合物1-14)の白色粉体10.2g(収率69%)を得た。
【0135】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
H-NMR(CDCl)で以下の44個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=7.69-7.59(4H)、7.48-7.42(4H)、7.37-6.98(30)、1.49(6H)。
【0136】
【化20】
(1-14)
【実施例4】
【0137】
一般式(1)で表されるアリールアミン化合物について、高感度示差走査熱量計(ブルカー・エイエックスエス製、DSC3100SA)によって融点とガラス転移点を測定した。
融点 ガラス転移点
実施例1の化合物 観測されず 125℃
実施例2の化合物 観測されず 117℃
実施例3の化合物 観測されず 114℃
【0138】
一般式(1)で表されるアリールアミン化合物は100℃以上のガラス転移点を有しており、薄膜状態が安定であることを示すものである。
【実施例5】
【0139】
一般式(1)で表されるアリールアミン化合物を用いて、ITO基板の上に膜厚100nmの蒸着膜を作製して、イオン化ポテンシャル測定装置(住友重機械工業株式会社製、PYS-202型)で仕事関数を測定した。
仕事関数
実施例1の化合物 5.57eV
実施例2の化合物 5.62eV
実施例3の化合物 5.59eV
【0140】
一般式(1)で表されるアリールアミン化合物はNPD、TPDなどの一般的な正孔輸送材料がもつ仕事関数5.4eVと比較して、好適なエネルギー準位を示しており、良好な正孔輸送能力を有していることが分かる。
【実施例6】
【0141】
<7,7-ジメチル-12-(4-フェニルベンゾ[h]キナゾリン-2-イル)-7,12-ジヒドロベンゾ[4,5]チエノ[3,2-g]インデノ[1,2-b]インドール(化合物2-2)の合成>
窒素置換した反応容器に、7,7-ジメチル-7,12-ジヒドロベンゾ[4,5]チエノ[3,2-g]インデノ[1,2-b]インドール4.9g、2-クロロ-4-フェニルベンゾ[h]キナゾリン5.7g、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム0.3g、トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフルオロボレート0.4g、tert-ブトキシナトリウム4.0g、キシレン74mlを加えて加熱し、12時間還流撹拌した。室温まで冷却した後、酢酸エチル、水を加え、分液操作によって有機層を採取した。有機層を濃縮し、カラムクロマトグラフによる精製を行うことによって、7,7-ジメチル-12-(4-フェニルベンゾ[h]キナゾリン-2-イル)-7,12-ジヒドロベンゾ[4,5]チエノ[3,2-g]インデノ[1,2-b]インドール(化合物2-2)の粉体3.2g(収率38%)を得た。
【0142】
【化21】
(2-2)
【実施例7】
【0143】
<12,12-ジメチル-1-(4-フェニルキナゾリン-2-イル)-1,12-ジヒドロインデノ[1',2':4,5]チエノ[2,3-a]カルバゾール(化合物3-14)の合成>
窒素置換した反応容器に、12,12-ジメチル-1,12-ジヒドロインデノ[1',2':4,5]チエノ[2,3-a]カルバゾール4.9g、2-クロロ-4-フェニルキナゾリン5.7g、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム0.3g、トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフルオロボレート0.4g、tert-ブトキシナトリウム4.0g、キシレン74mlを加えて加熱し、12時間還流撹拌した。室温まで冷却した後、酢酸エチル、水を加え、分液操作によって有機層を採取した。有機層を濃縮し、カラムクロマトグラフによる精製を行うことによって、12,12-ジメチル-1-(4-フェニルキナゾリン-2-イル)-1,12-ジヒドロインデノ[1',2':4,5]チエノ[2,3-a]カルバゾール(化合物3-14)の粉体6.3g(収率44%)を得た。
【0144】
【化22】
(3-14)
【実施例8】
【0145】
有機EL素子は、図16に示すように、ガラス基板1上に透明陽極2としてITO電極をあらかじめ形成したものの上に、正孔注入層3、正孔輸送層4、発光層5、電子輸送層6、電子注入層7、陰極(アルミニウム電極)8の順に蒸着して作製した。
【0146】
具体的には、膜厚150nmのITOを成膜したガラス基板1をイソプロピルアルコール中にて超音波洗浄を20分間行った後、200℃に加熱したホットプレート上にて10分間乾燥を行った。その後、UVオゾン処理を15分間行った後、このITO付きガラス基板を真空蒸着機内に取り付け、0.001Pa以下まで減圧した。続いて、透明陽極2を覆うように正孔注入層3として、下記構造式の電子アクセプター(Acceptor-1)と実施例1の化合物(1-7)を、蒸着速度比が(Acceptor-1):化合物(1-7)=3:97となる蒸着速度で二元蒸着を行い、膜厚10nmとなるように形成した。この正孔注入層3の上に、正孔輸送層4として実施例1の化合物(1-7)を膜厚50nmとなるように形成した。この正孔輸送層4の上に、発光層5として下記構造式の化合物(EMD-1)と実施例10の化合物(2-2)を、蒸着速度比が(EMD-1):(2-2)=5:95となる蒸着速度で二元蒸着を行い、膜厚20nmとなるように形成した。この発光層5の上に、電子輸送層6として下記構造式のピリジン環構造を有する化合物(4-125)と下記構造式の化合物(ETM-1)を、蒸着速度比がピリジン環構造を有する化合物(4-125):(ETM-1)=50:50となる蒸着速度で二元蒸着を行い、膜厚30nmとなるように形成した。この電子輸送層6の上に、電子注入層7としてフッ化リチウムを膜厚1nmとなるように形成した。最後に、アルミニウムを100nm蒸着して陰極8を形成した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行った。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【0147】
【化23】
(Acceptor-1)
【0148】
【化24】
(1-7)
【0149】
【化25】
(EMD-1)
【0150】
【化26】
(2-2)
【0151】
【化27】
(4-125)
【0152】
【化28】
(ETM-1)
【実施例9】
【0153】
実施例8において、正孔注入層3及び正孔輸送層4の材料として実施例1の化合物(1-7)に代えて実施例2の化合物(1-11)を用いた以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行なった。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【0154】
【化29】
(1-11)
【実施例10】
【0155】
実施例8において、正孔注入層3及び正孔輸送層4の材料として実施例1の化合物(1-7)に代えて実施例3の化合物(1-14)を用いた以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行なった。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【0156】
【化30】
(1-14)
【実施例11】
【0157】
実施例8において、発光層5の材料として実施例6の化合物(2-2)に代えて実施例7の化合物(3-14)を蒸着速度比が(EMD-1):(3-14)=5:95となる蒸着速度で二元蒸着を行い、膜厚20nmとなるように形成した以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行なった。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【0158】
【化31】
(3-14)
【実施例12】
【0159】
実施例8において、正孔注入層3及び正孔輸送層4の材料として実施例1の化合物(1-7)に代えて実施例2の化合物(1-11)を用いて、かつ発光層5の材料として実施例6の化合物(2-2)に代えて実施例7の化合物(3-14)を蒸着速度比が(EMD-1):(3-14)=5:95となる蒸着速度で二元蒸着を行い、膜厚20nmとなるように形成した以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行なった。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【実施例13】
【0160】
実施例8において、正孔注入層3及び正孔輸送層4の材料として実施例1の化合物(1-7)に代えて実施例3の化合物(1-14)を用いて、かつ発光層5の材料として実施例6の化合物(2-2)に代えて実施例7の化合物(3-14)を蒸着速度比が(EMD-1):(3-14)=5:95となる蒸着速度で二元蒸着を行い、膜厚20nmとなるように形成した以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行なった。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【0161】
[比較例1]
比較のために、実施例8において、正孔注入層3及び正孔輸送層4の材料として実施例1の化合物(1-7)に代えて下記構造式の化合物(HTM-1)を用いた以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行った。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【0162】
【化32】
(HTM-1)
【0163】
[比較例2]
比較のために、実施例8において、正孔注入層3及び正孔輸送層4の材料として実施例1の化合物(1-7)に代えて上記構造式の化合物(HTM-1)を用いて、かつ発光層5の材料として実施例6の化合物(2-2)に代えて実施例7の化合物(3-14)を蒸着速度比が(EMD-1):(3-14)=5:95となる蒸着速度で二元蒸着を行い、膜厚20nmとなるように形成した以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行った。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【0164】
[比較例3]
比較のために、実施例8において、正孔注入層3及び正孔輸送層4の材料として実施例1の化合物(1-7)に代えて下記構造式の化合物(HTM-2)を用いた以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行った。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【0165】
【化33】
(HTM-2)
【0166】
[比較例4]
比較のために、実施例8において、正孔注入層3及び正孔輸送層4の材料として実施例1の化合物(1-7)に代えて上記構造式の化合物(HTM-2)を用いて、かつ発光層5の材料として実施例6の化合物(2-2)に代えて実施例7の化合物(3-14)を蒸着速度比が(EMD-1):(3-14)=5:95となる蒸着速度で二元蒸着を行い、膜厚20nmとなるように形成した以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行った。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【0167】
実施例8~13および比較例1~4で作製した有機EL素子を用いて、素子寿命を測定した結果を表1にまとめて示した。素子寿命は、発光開始時の発光輝度(初期輝度)を7000cd/mとして定電流駆動を行った時、発光輝度が6790cd/m(初期輝度を100%とした時の97%に相当:97%減衰)に減衰するまでの時間として測定した。
【0168】
【表1】
【0169】
表1に示す様に、発光層の材料が同じ組合せである実施例8~10と比較例1および3との比較において、電流密度10mA/cmの電流を流したときの発光効率は、比較例1および3の有機EL素子の24.58~25.77cd/Aに対し、実施例8~10の有機EL素子では27.20~27.32cd/Aといずれも高効率であった。また、電力効率においても、比較例1および3の有機EL素子の18.09~19.84lm/Wに対し、実施例8~10の有機EL素子では21.62~21.91lm/Wといずれも高効率であった。一方、素子寿命(97%減衰)においては、比較例1および3の有機EL素子の113~154時間に対し、実施例8~10の有機EL素子では224~237時間と大きく長寿命化していることが分かる。
【0170】
表1に示す様に、発光層の材料が同じ組合せである実施例11~13と比較例2および4との比較において、電流密度10mA/cmの電流を流したときの発光効率は、比較例2および4の有機EL素子の23.80~25.71cd/Aに対し、実施例11~13の有機EL素子では27.75~28.00cd/Aといずれも高効率であった。また、電力効率においても比較例2および4の有機EL素子の17.53~19.46lm/Wに対し、実施例11~13の有機EL素子では21.67~22.14lm/Wといずれも高効率であった。一方、素子寿命(97%減衰)においては、比較例2および4の有機EL素子の117~173時間に対し、実施例11~13の有機EL素子では262~298時間と大きく長寿命化していることが分かる。
【0171】
本発明の有機EL素子は、特定の構造を有するアリールアミン化合物と特定の縮合環構造を有する複素環化合物(および特定のアントラセン環構造を有する化合物)を組み合わせることによって、有機EL素子内部のキャリアバランスを改善し、さらに発光材料の特性に合ったキャリアバランスとなるように組み合わせているので、従来の有機EL素子と比較して、高発光効率であって、かつ長寿命の有機EL素子を実現できることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0172】
本発明の、特定のアリールアミン化合物と縮合環構造を有する複素環化合物を有する化合物を組み合わせた有機EL素子は、発光効率が向上するとともに、有機EL素子の耐久性を改善させることができ、例えば、家庭電化製品や照明の用途への展開が可能となった。
【符号の説明】
【0173】
1 ガラス基板
2 透明陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 電子輸送層
7 電子注入層
8 陰極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16