(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-24
(45)【発行日】2023-04-03
(54)【発明の名称】毛細管駆動型流体システムの計量機構およびそのための方法
(51)【国際特許分類】
G01N 35/08 20060101AFI20230327BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
G01N35/08 A
G01N37/00 101
(21)【出願番号】P 2019557390
(86)(22)【出願日】2018-04-19
(86)【国際出願番号】 EP2018060070
(87)【国際公開番号】W WO2018197337
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2021-03-09
(32)【優先日】2017-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519155413
【氏名又は名称】ミダイアグノスティクス・エヌブイ
【氏名又は名称原語表記】miDiagnostics NV
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ、ベンジャミン
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-058112(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0249641(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/08
G01N 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の体積のサンプル流体を計量するための毛細管駆動型流体システムにおける機構(100)であって、
サンプル流体を受け取るように構成されたサンプル貯槽(SR)と、
前記サンプル貯槽(SR)と流体連通し、第1の毛細管のトリガ弁(V1)において終結する第2のチャネル(C2)と第2の毛細管のトリガ弁(V2)において終結する第3のチャネル(C3)とに分岐する、第1のチャネル(C1)と、ここで、前記第2のチャネル(C2)および前記第3のチャネル(C3)がともに所定の容積を有し、前記第1のチャネル(C1)が、前記第2のチャネル(C2)と前記第3のチャネル(C3)とを前記所定の体積のサンプル流体で満たすために、毛細管力を使用して、前記サンプル貯槽(SR)からサンプル流体を吸い出すように構成されているものであり、
前記第2のチャネル(C2)と前記第3のチャネル(C3)とがサンプル流体で満たされた後に前記サンプル貯槽(SR)を空にするように構成された毛細管ポンプ(CP1)と、
バッファ流体を受け取るように構成されたバッファ貯槽(BR)と、
第4のチャネル(C4)と、ここで、前記第2の毛細管のトリガ弁(V2)が前記第4のチャネル(C4)を介して前記バッファ貯槽(BR)に対して流体的に接続されており、前記第4のチャネル(C4)が、前記サンプル貯槽(SR)が空になった後に毛細管力を使用して前記バッファ貯槽(BR)からバッファ流体を吸い出し、前記第4のチャネル(C4)のバッファ流体が前記第2の毛細管のトリガ弁(V2)に到達するとき前記第2の毛細管のトリガ弁(V2)を開くように構成されていることにより、前記第4のチャネル(C4)と、前記第3のチャネル(C3)と、前記第2のチャネル(C2)とを含む流体経路が、前記バッファ貯槽(BR)から前記第1の毛細管のトリガ弁(V1)まで開かれるものであり、
前記第1の毛細管のトリガ弁(V1)を前記バッファ貯槽(BR)に対して流体的に接続する第1の流体回路(T1)を備える第1の制御回路(T1)であって、ここで、前記第1の流体回路(T1)が、前記バッファ貯槽(BR)からバッファ流体を吸い出して、バッファ流体が前記第1の毛細管のトリガ弁(V1)に到達するとき前記第1の毛細管のトリガ弁(V1)を開くように構成されており、前記サンプル貯槽(SR)が空になった後に前記第1の毛細管のトリガ弁(V1)を開くことにより、流体経路に毛細管駆動の流れを生じさせ、それによって、前記第2のチャネル(C2)および前記第3のチャネル(C3)における前記所定の体積のサンプル流体を、前記第1の毛細管のトリガ弁(V1)を通して流出させるように構成されている第1の制御回路(T1)と、
を備える機構。
【請求項2】
第3の毛細管のトリガ弁(V3)と、ここで、前記第3の毛細管のトリガ弁(V3)は、前記バッファ貯槽(BR)から吸い出されたバッファ流体が前記第4のチャネル(C4)に入る前に前記第3の毛細管のトリガ弁(V3)を通過するように、前記第4のチャネル(C4)に対して流体的に接続されるものであり、
前記サンプル貯槽(SR)が空になった後に前記第3の毛細管のトリガ弁(V3)を開くように構成された第2の制御回路(T2)と、
をさらに備える、請求項
1に記載の機構。
【請求項3】
前記第2の制御回路が、前記第3の毛細管のトリガ弁(V2)を前記バッファ貯槽に対して流体的に接続する第2の流体回路(T2)を備え、前記第2の流体回路(T2)が、前記バッファ貯槽(BR)からバッファ流体を吸い出して、バッファ流体が前記第3の毛細管のトリガ弁(V3)に到達するとき前記第3の毛細管のトリガ弁(V3)を開くように構成されている、請求項
2に記載の機構。
【請求項4】
前記第1の制御回路(T1)および前記第2の制御回路(T2)のうち少なくとも1つが、前記第1の毛細管のトリガ弁(V1)および前記第2の毛細管のトリガ弁(V2)のうちの少なくとも1つに対して電気制御信号を配送するように構成されており、前記第1の毛細管のトリガ弁(V1)および前記第2の毛細管のトリガ弁(V2)のうち少なくとも1つが、前記電気制御信号を受け取ると開くように構成されている、請求項
2に記載の機構。
【請求項5】
前記第1の制御回路(T1)が、前記第2の毛細管のトリガ弁(V2)が開くのと同時に、または開いた後に、前記第1の毛細管のトリガ弁(V1)を開くように構成されている、請求項
2~
4のいずれか一項に記載の機構。
【請求項6】
前記第1のチャネル(C1)が、前記サンプル貯槽からサンプル流体を直接吸い出すように前記サンプル貯槽(SR)に対して流体的に接続されており、前記毛細管ポンプ(CP1)が、第1の流れ抵抗器(R1)を介して前記サンプル貯槽(SR)に対して流体的に接続されており、前記第1の流れ抵抗器(R1)の流体抵抗が、前記第2のチャネル(C2)と前記第3のチャネル(C3)とがサンプル流体で満たされた後に前記サンプル貯槽(SR)が空になるように、前記サンプル貯槽(SR)から前記毛細管ポンプ(CP1)への流量を制御するように選択されている、請求項1~
5のいずれか一項に記載の機構。
【請求項7】
前記第1のチャネル(C1)よりも毛細管圧が低い第5のチャネル(C5)をさらに備え、前記第1のチャネル(C1)が前記第5のチャネル(C5)を通じて前記サンプル貯槽(SR)から流体を吸い出すように構成されるように、前記第1のチャネル(C1)が前記第5のチャネル(C5)に対する分岐として構成されており、前記毛細管ポンプ(CP1)が、前記第5のチャネル(C5)を含む経路を介して前記サンプル貯槽(SR)に対して流体的に接続されており、前記第2のチャネル(C2)と前記第3のチャネル(C3)とがサンプル流体で満たされた後に前記毛細管ポンプ(CP1)が前記第5のチャネル(C5)を通じて前記サンプル貯槽(SR)を空にするように構成されるように、前記第5のチャネル(C5)が流れ絞り機構(R’)を含む、請求項1~
5のいずれか一項に記載の機構。
【請求項8】
前記サンプル流体および/または前記バッファ流体の内部で混合された気体が前記機構から流出することを可能にすることなどのために、前記サンプル流体および/または前記バッファ流体が前記機構の周囲と少なくとも部分的に気体連通している、請求項1~
7のいずれか一項に記載の機構。
【請求項9】
周囲との前記気体連通が気体透過性シートを介して生じる、請求項
8に記載の機構。
【請求項10】
周囲との前記気体連通が、前記第1の毛細管のトリガ弁(V1)および前記第2の毛細管のトリガ弁(V2)のうちの1つまたは複数に対して流体的に接続された1つまたは複数のさらなる弁(V5、V6)を介して生じ、前記1つまたは複数のさらなる弁(V5、V6)が、気体は通すが液体は阻止するように構成されている、請求項
9に記載の機構。
【請求項11】
前記第1の毛細管のトリガ弁(V1)を通って流れ出る前記所定の体積のサンプル流体が、第4の毛細管のトリガ弁(V4)において終結する第6のチャネル(C6)によって受け取られ、前記第4の毛細管のトリガ弁(V4)が、希釈されたサンプル流体を生成するように、前記第6のチャネル(C6)から受け取られる前記所定の体積のサンプル流体を、前記バッファ貯槽(BR)から第2の流れ抵抗器(R2)を通して受け取られるバッファ流体で希釈するように構成されており、
前記第4のチャネル(C4)が第3の流れ抵抗器(R3)を備え、
前記第6のチャネル(C6)から受け取られるサンプル流体の流量と、前記バッファ貯槽(BR)から受け取られる前記バッファ流体の流量との間の比が、前記第2の流れ抵抗器(R2)の抵抗および前記第3の流れ抵抗器(R3)の抵抗によって少なくとも部分的に決定される、請求項1~1
0のいずれか一項に記載の機構。
【請求項12】
希釈されたサンプル流体を混合するように構成されて第4の毛細管のトリガ弁(V4)の出力に対して流体的に接続されたミキサ(MX1)と、
前記ミキサ(MX1)を通る前記希釈されたサンプル流体の流量を維持するように構成されて前記ミキサ(MX1)と流体連通するさらなる毛細管ポンプ(CP2)と
をさらに備える、請求項
7に記載の機構。
【請求項13】
所定の体積のサンプル流体を計量するための方法であって、
サンプル貯槽(SR)にサンプル流体を追加するステップ(S102)と、
第1のチャネル(C1)が、前記第1のチャネル(C1)の分岐である、第2のチャネル(C2)と第3のチャネル(C3)とを所定の体積のサンプル流体で満たすために、毛細管力を使用して前記サンプル貯槽からサンプル流体を吸い出すように、前記第1のチャネル(C1)を、前記サンプル貯槽と流体連通するように設定するステップ(S104)と、ここで、前記第2のチャネル(C2)が第1の毛細管のトリガ弁(V1)において終結し、前記第3のチャネル(C3)が第2の毛細管のトリガ弁(V2)において終結するものであり、
前記第2のチャネル(C2)と前記第3のチャネル(C3)とが前記所定の体積のサンプル流体で満たされた後に、毛細管ポンプ(CP1)を使用してサンプル流体を除去することにより、前記サンプル貯槽(SR)を空にするステップ(S106)と、
前記サンプル貯槽(SR)が空になった後に、第4のチャネル(C4)を介してバッファ流体で満たされたバッファ貯槽(BR)と流体連通している前記第2の毛細管のトリガ弁(V2)を、前記第4のチャネル(C4)が、毛細管力を使用して前記バッファ貯槽(BR)からバッファ流体を吸い出して、前記第4のチャネル(C4)のバッファ流体が前記第2の毛細管のトリガ弁(V2)に到達するとき前記第2の毛細管のトリガ弁(V2)を開くことにより、前記第4のチャネル(C4)と、前記第3のチャネル(C3)と、前記第2のチャネル(C2)とを含む流体経路が、前記バッファ貯槽(BR)から前記第1の毛細管のトリガ弁(V1)まで開かれるように設定するステップ(S108)と、
第1の制御回路(T1)によって前記第1の毛細管のトリガ弁(V1)を開くステップ(S110)と、ここで、このステップによって前記流体経路において毛細管駆動の流れが生じ、それによって前記第2のチャネル(C2)および前記第3のチャネル(C3)における前記所定の体積のサンプル流体を、前記第1の毛細管のトリガ弁(V1)を通して流出させるものである、
を備える方法。
【請求項14】
請求項1~1
2のいずれか一項に記載の機構を備える診断デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
例示的実施形態は、所定の体積のサンプル流体を計量するための毛細管駆動型流体システムの機構と、そのための方法とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
微少流体技術は、少量の、一般的にはサブミリメートルの規模まで幾何学的に抑制された流体の挙動と、正確な制御および操作とを扱うものである。微少流体技術に基づく技術は、たとえばインクジェットプリンタヘッドと、ラブオンチップ技術の範囲内のDNAチップとに使用される。微少流体技術の用途では、流体は、一般的には動かされ、混合され、分離され、またはそうでなく処理される。多くの用途においてパッシブな流体制御が使用される。これは、サブミリメートルのチューブの内部で生じる毛細管力を利用することによって実現され得る。いわゆる毛細管駆動型流体システムを念入りに設計することにより、流体の制御と操作とを遂行することが可能になり得る。
【0003】
毛細管駆動型流体システムは、流体サンプルの体積を計量するかまたは正確に測定するのに有効であり得る。そのような用途の1つには、処理された血液サンプルの体積が正確に知られる必要のある血液細胞の区別または計数がある。比較的大量の血液(>10mL)がサンプル貯槽に追加されるシステムでは、血液細胞組織の正確な統計を得るために必要とされるのは微量(<10μL)でしかないため、血液の全体のサンプルを処理するのは望ましくないであろう。したがって、微少流体技術のシステムでは、サンプル貯槽から血液の既知量を処理用に測定する必要がある。毛細管駆動型微少流体技術のシステムでは、大抵の既存の毛細管ベースの弁技術は、一旦始動してしまうと流体流れを遮断することまたは閉鎖することが不可能であるため、計量は難易度が高い。したがって、サンプル貯槽から、過剰なサンプルがシステムに流れ込むのを防止するために流れを遮断することによって流体の計量された体積が簡単に抽出されることは、あり得ない。よって、毛細管駆動型流体システムにおいて所定の体積のサンプル流体を正確に計量することを可能にし得る改善された機構が必要である。
【発明の概要】
【0004】
例示的実施形態は、毛細管駆動型流体システムを使用して所定の体積のサンプル流体の正確な計量を可能にする機構を提供するものである。この機構は、所定の容積を有する当初は空の空間をサンプル流体で満たすことを可能にする。そこで、この機構は、計量されたサンプル流体が毛細管力によって空間から吸い出されるとき空間を満たすバッファ流体を用いて、計量されたサンプル流体を空間から除去することを可能にする。次いで、計量されたサンプル流体は、バッファ流体の一部分とともに、たとえばサンプル流体の特性の測定を可能にするための診断システムなどの2次システムに入ってよい。
【0005】
上記の特徴および利点に加えて追加の特徴および利点は、添付図面を参照しながら本明細書で説明されるいくつかの実施形態の以下の例示の非限定的で詳細な説明によって一層よく理解されるはずであり、図面では同一の参照数字は類似の要素に関して使用されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本開示の実施形態による毛細管駆動型流体システムの機構の概略回路図。
【
図2】本開示の実施形態による機構を使用して所定の体積のサンプル流体を計量するための方法の流れ図。
【
図3】本開示の実施形態による毛細管駆動型流体システムの機構の概略回路図。
【
図4】本開示の実施形態による毛細管駆動型流体システムの機構の概略回路図。
【
図5】本開示の実施形態による毛細管駆動型流体システムの機構の概略回路図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
目的は、所定の体積のサンプル流体を計量するための毛細管駆動型流体システムの改善された機構を提供することである。
【0008】
第1の態様によれば、これらおよび他の問題は、所定の体積のサンプル流体を計量するための毛細管駆動型流体システムの機構によって全面的または少なくとも部分的に解決され、この機構は、サンプル流体を受け取るように構成されたサンプル貯槽と、サンプル貯槽と流体連通し、第1の弁において終結する第2のチャネルと第2の弁において終結する第3のチャネルとに分岐する第1のチャネルと、ここにおいて、第2のチャネルおよび第3のチャネルはともに所定の容積を有し、第1のチャネルは、第2のチャネルと第3のチャネルとを所定の体積のサンプル流体で満たすために、毛細管力を使用して、サンプル貯槽からサンプル流体を吸い出すように構成されている、第2のチャネルと第3のチャネルとがサンプル流体で満たされた後に、サンプル貯槽を空にするように構成された毛細管ポンプと、バッファ流体を受け取るように構成されたバッファ貯槽と、第4のチャネルと、ここにおいて、第2の弁が、第4のチャネルを介してバッファ貯槽に対して流体的に接続されており、第4のチャネルが、サンプル貯槽が空になった後に毛細管力を使用してバッファ貯槽からバッファ流体を吸い出し、第4のチャネルのバッファ流体が第2の弁に到達するとき第2の弁を開くように構成されていることにより、第4のチャネルと、第3のチャネルと、第2のチャネルとを含む流体経路が、バッファ貯槽から第1の弁まで開かれる、サンプル貯槽が空になった後に第1の弁を開くことによって前記流体経路に毛細管駆動の流れを生じさせることにより第1の弁を通して第2のチャネルおよび第3のチャネルの中の所定の体積のサンプル流体を流出させるように構成された第1の制御回路とを備える。
【0009】
この機構は、複数のステップが所定のタイミングシーケンスで遂行されることを可能にすることにより、サンプル流体の正確な計量を達成するものである。最初のステップは、当初は空の所定の容積の空間をサンプル流体で完全に満たすためのものである。この空間が第2のチャネルと第3のチャネルとを構成する。したがって、所定の容積は、第2のチャネルと第3のチャネルとを結合した容積になる。次のステップは、毛細管力が計量されたサンプル流体を空間から吸い込んでいる間に、空間を満たすバッファ流体を用いて、計量されたサンプル流体の空間からの除去を可能にすることである。次いで、計量されたサンプル流体は、バッファ流体の一部分とともに、たとえばサンプル流体の特性の測定を可能にするための診断システムなどの2次システムに入ってよい。機構が作動するためには、以下でさらに詳述されるように複数の付加手順も必要とされる。
【0010】
提案された機構は、サンプル流体の正確な計量がアクティブな制御なしで達成されることを可能にするので有利である。これによって、この機構は、制御ユニットおよび/または外部電源を含まずに動作可能であり得るので簡単になる。したがって、この機構は、現場において使用されることを意図されたハンドヘルドデバイスにおいて有効であり得る。各ステップは、流体移動が所定のやり方で生じることを可能にするなど、機構を念入りに設計することによって、互いに異なる時間において起動されることが可能にされてよい。そこで、流体は、予定時間において流体システムの所定位置に到達するように構成され得る。前記位置において、流体は、たとえば流体システムの新規の流体経路を開通させることにより、機構が動作するやり方を変更することを可能にするためなど、弁を作動させるようにさらに構成され得る。この機構は、もっぱらこの機構のチャネルの中の流体に作用する毛細管力を用い、既存の微少流体技術の弁技術を使用して動作され得るものである。具体的には、本開示は、微少流体技術の弁を備える微少流体技術のシステムを使用して、いかなる弁も閉じる必要なく、サンプルの体積を正確に計量するやり方を提供するものである。
【0011】
サンプル流体は、この機構を使用して計量されるべき任意の流体として理解されたい。サンプル流体は、サンプル流体における置換分の濃度を測定することなど、その特性のうち1つまたは複数の点からサンプル流体を特徴づけることの前に、準備のステップとして計量されてよい。サンプル流体はたとえば血液でよい。あるいは、サンプル流体は液状の化合物でよい。また、サンプル流体は、たとえば液体の中で分散したパウダーなど固液の混合でよい。
【0012】
バッファ流体は、計量されたサンプル流体が毛細管力によって空間から吸い出されるとき空間を満たすのに適切な任意の流体として理解されたい。バッファ流体は、たとえば、水に溶かされた塩化ナトリウム(NaCl)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS:phosphate buffered saline)溶液であってよい。
【0013】
場合によっては、バッファ流体はサンプル流体と反応する流体でよい。例示のシステムは、測定される必要のある検体を含有しているサンプル流体から成り得、バッファ流体は、検体に結合されたときには蛍光を強く発し、そうでなければ弱く発する蛍光性の分子を含有している。サンプル流体とバッファ流体を混合した後に、サンプルの計量された体積の中にどれだけの検体が含有されているかを確かめるために蛍光強度が測定され得る。
【0014】
一実施形態によれば、第1の制御回路は、第1の弁をバッファ貯槽に流体的に接続する第1の流体回路を備え、第1の流体回路は、バッファ貯槽からバッファ流体を吸い出して、バッファ流体が第1の弁に到達するとき第1の弁を開くように構成されている。この実施形態のための適切な弁技術の一例には毛細管のトリガ弁があり、この弁は、形状の急激な変化による液体-蒸気の境界面の進出を止めて液体のさらなる湿潤を防止し、流体制御回路によって、液体-蒸気境界面の、形状の急激な変化を通り越す進出を再開するように作動される。第1の弁を開くために流体回路を使用すると、簡単なやり方で機構が作製され得るので有利であり得る。具体的には、たとえば電子回路および/または電気機械技術などの別の技術に基づく制御回路および/またはシステムを導入する必要性はない。この機構は、代わりに、純粋に微少流体技術に基づく回路によって実現され得る。
【0015】
一実施形態によれば、この機構は、第3の弁と、第3の弁が、バッファ貯槽から吸い出されたバッファ流体が第4のチャネルに入る前に第3の弁を通過するように、第4のチャネルに対して流体的に接続される、サンプル貯槽が空になった後に第3の弁を開くように構成された第2の制御回路とをさらに備える。第3の弁を導入すると、この機構のタイミングの改善された制御が可能になり得る。具体的には、バッファ流体が、バッファ貯槽にいつでも投与され得る。次いで、バッファ流体は、第4のチャネルを満たすことが可能とされるが、第3の弁を越えることはできない。次いで、選択的に第3の弁を開くことにより、適切な時間にバッファ流体が導入される。
【0016】
一実施形態によれば、第2の制御回路は、第3の弁をバッファ貯槽に流体的に接続する第2の流体回路を備え、第2の流体回路は、バッファ貯槽からバッファ流体を吸い出して、バッファ流体が第3の弁に到達するとき第3の弁を開くように構成されている。第2の制御回路は第3の弁を制御するために使用される。これは、第3の弁が第2の制御回路によって開かれ得ることを意味する。第1の制御回路に関して、第2の流体回路を使用することの利点は、機構が純粋に微少流体技術に基づく回路によって実現され得るので解決策が簡単になることである。
【0017】
一実施形態によれば、第1の制御回路および第2の制御回路のうち少なくとも1つが、第1の弁および第2の弁のうち少なくとも1つに電気制御信号を配送するように構成されており、ここにおいて、第1の弁および第2の弁のうち少なくとも1つが電気信号を受け取ると開くように構成されている。一例として、弁技術は、毛細管を電気的に停止させるものであり得る。弁は、形状の急激な変化によって進む液体-蒸気境界面を停止させ、液体によるさらなる湿潤を防止する。次いで、静電力によって、液体-蒸気境界面を、形状の急激な変化を通り越して進める電極を使用することにより、流体が作動され、液体-蒸気境界面が弁のさらに下流へ進むことが可能になる。この代替実施形態ではタイミングを調節することが可能になるので、いくつかの用途にとって有利であり得る。純粋に微少流体技術のシステムは、ほとんどの場合所定の設計を有し、このことは、具体的には、一旦機構が設計されたら遅延タイミングなどを調節するのは不可能であることを意味する。
【0018】
一実施形態によれば、第1の制御回路は、第2の弁を開くのと同時に、または開いた後に、第1の弁を開くように構成されている。第2の弁と同時に第1の弁を開くと、第2のチャネルおよび第3のチャネル中のサンプル流体が第3の弁から流れ出ることが可能になり得る。あるいは、第1の弁から下流のシステムを、第2の弁を作動させる前にバッファ流体で満たすことを可能にするために、第1の弁は第2の弁の後に開かれてよい。
【0019】
一実施形態によれば、第1のチャネルは、サンプル貯槽からサンプル流体を直接吸い出すように、サンプル貯槽に対して流体的に接続されており、ここにおいて、毛細管ポンプは、第1の流れ抵抗器を介して、サンプル貯槽に対して流体的に接続されており、ここにおいて、第1の流れ抵抗器の流体抵抗は、第2のチャネルと第3のチャネルとがサンプル流体で満たされた後にサンプル貯槽が空になるように、サンプル貯槽から毛細管ポンプへの流量を制御するように選択されている。サンプル貯槽と毛細管ポンプの間を常に流体接続することにより、追加の弁などが不要になるので、機構をさらに簡単にすることができる。第1の流れ抵抗器は、サンプル貯槽が、あまりに速く、すなわち計量チャネル(第2のチャネルおよび第3のチャネル)がサンプル流体で満たされる前に、空にならないように流量を制御することを可能にするので、有利であり得る。
【0020】
一実施形態によれば、機構は、第1のチャネルよりも毛細管圧が低い第5のチャネルをさらに備え、ここにおいて、第1のチャネルは、サンプル貯槽から第5のチャネルを通して流体を吸い出すように構成されるように、第5のチャネルに対する分岐として構成されており、ここにおいて、毛細管ポンプは、第5のチャネルを含む経路を介してサンプル貯槽に対して流体的に接続されており、第5のチャネルは、毛細管ポンプが第2のチャネルおよび第3のチャネルがサンプル流体で満たされた後に第5のチャネルを通じてサンプル貯槽を空にするように構成されるように、流れ絞り機構を含む。この代替実施形態は、第2のチャネルおよび第3のチャネルが完全に満たされる前に、毛細管ポンプによってサンプル貯槽が空になる、不正確な計量をもたらす状況のリスクを低減し得るので有利であり得る。加えて、この代替実施形態は、サンプルバッファに対する2重の接続を使用する必要なく所望の機能性をもたらし、したがって幾何学的レイアウトが簡単になり得る。
【0021】
この機構は、様々な異なる方法を使用して製作され得る。可能性の1つには、シリコン微細加工技術を使用するものがある。そのような技術を使用すると、チップ上に完全な微少流体技術の機構を形成することが可能になり、したがってラブオンチップ解決策が可能になる。2段階のディープリアクティブイオンエッチングプロセスが使用され得る。そのようなプロセスを使用すると、信頼できる毛細管の弁構造を生成するために有益な2つの異なる深さのチャネルを形成することが可能になり得る。チャネルの上面または全体の機構は、上蓋が開いているかまたは閉じられているかのいずれかでよい。具体的には、一実施形態によれば、サンプル流体および/またはバッファ流体の内部で混合された気体が機構から流出することを可能にすることなどのために、サンプル流体および/またはバッファ流体は機構の環境と少なくとも部分的に気体連通している。これは、気体がシステムに閉じ込められない設計が可能になるので、有利であり得る。そのような設計は、開いた流体工学設計であり得る。具体的には、一実施形態によれば、環境との気体連通は気体透過性シートを介して生じる。したがって、上蓋は、液体ではなく気体の流れを可能にする気体透過性シートでよい。気体透過性シートの場合には、接触角は、毛細管の弁の初期故障の原因となるようなあまり小さいものでないのがよい。開いた流体のシートまたは気体透過性シートは、液体-蒸気境界面がデバイスを通って進むとき、空気を閉じ込めずに、気体が逃げることを可能にする。
【0022】
一実施形態によれば、環境との気体連通は、第1の弁および第2の弁のうちの1つまたは複数に対して流体的に接続された1つまたは複数のさらなる弁を介して生じ、前記1つまたは複数のさらなる弁は、気体は通すが液体は阻止するように構成されている。1つまたは複数のさらなる弁の各々が、排気口に対して流体的にさらに接続されてよい。これにより、弁を通過した気体がシステムから出ることが可能になり得る。これは、開いた流体の設計がそれほど優れた代替形態ではない場合には有利であり得る。液体-蒸気境界面の接触角は、毛細管の弁の初期故障の原因となるほど小さくするべきでない。したがって、前記1つまたは複数のさらなる弁は、液体が近づくとき気体が逃げることを許すように構成されなければならない。
【0023】
一実施形態によれば、第1の弁を通って流出する所定の体積のサンプル流体は、第4の弁において終結する第6のチャネルによって受け取られ、ここにおいて、第4の弁は、希釈されたサンプル流体を生成するように、第6のチャネルから受け取られる所定の体積のサンプル流体を、バッファ貯槽から第2の流れ抵抗器を通して受け取られるバッファ流体で希釈するように構成されており、ここにおいて、第4のチャネルは第3の流れ抵抗器を備え、ここにおいて、第6のチャネルから受け取られるサンプル流体の流量と、バッファ貯槽から受け取られるバッファ流体の流量との間の比は、第2の流れ抵抗器の抵抗および第3の流れ抵抗器の抵抗によって少なくとも部分的に決定される。これは、所定のサンプル流体を希釈された形態で出力することが可能になるので有利であり得、ここにおいて希釈率は既知であり得る。これは、細胞計数を遂行するときなど、希釈されていないサンプル流体における細胞個数濃度が、正確な読取り値をもたらすには大きすぎる可能性があるいくつかの用途にとって有益であり得る。
【0024】
この実施形態では、サンプル貯槽のサンプル流体とバッファ貯槽のバッファ流体との間の混合比率は、すべての他のチャネルの抵抗が無視できると想定して、主として抵抗体素子R2およびR3の抵抗によって決定される。流れ抵抗器は、上記で開示されたものと異なって構成されてよい。具体的には、第3の流れ抵抗器は、たとえば第6のチャネルにおいて第1の弁の下流に構成されてよい。そのような場合には、サンプル流体および/またはバッファ流体の粘度も希釈率に影響を与え得る。
【0025】
一実施形態によれば、この機構は、希釈されたサンプル流体を混合するように構成されて第4の弁の出力に対して流体的に接続されたミキサと、ミキサを通る希釈されたサンプル流体の流量を維持するように構成されてミキサと流体連通するさらなる毛細管ポンプとをさらに備える。ミキサを使用することにより、サンプル流体とバッファ流体を均質的に混合するのをさらに支援する。これは、細胞計数を遂行するときなど、いくつかの用途にとって有益であり得、ここにおいて、混合が不均一であると、正確な読取り値をもたらすためには細胞個数濃度が大きすぎる局所領域が生じる恐れがある。
【0026】
具体的には、この機構は、ミキサからの希釈されたサンプル流体出力が計数検知器を通ってさらなる毛細管ポンプに向けて移送されるように、ミキサの出力と、さらなる毛細管ポンプとに対して流体的に接続された計数検知器をさらに備え得る。そのような計数検知器の一例には細胞計数検知器がある。細胞計数検知器は、たとえば希釈された血液サンプルの中に存在する赤血球をカウントするように構成され得る。
【0027】
第2の態様によれば、所定の体積のサンプル流体を計量するための方法が提供され、この方法は、
- サンプル貯槽にサンプル流体を追加するステップと、
- 第1のチャネルが、第1のチャネルの分岐である第2のチャネルと第3のチャネルとを所定の体積のサンプル流体で満たすために毛細管力を使用してサンプル貯槽からサンプル流体を吸い出すように、第1のチャネルをサンプル貯槽と流体連通するように設定するステップと、ここにおいて、第2のチャネルは第1の弁において終結し、第3のチャネルは第2の弁において終結する、
- 第2のチャネルと第3のチャネルとが所定の体積のサンプル流体で満たされた後に、毛細管ポンプを使用してサンプル流体を除去することにより、サンプル貯槽を空にするステップと、
- サンプル貯槽が空になった後に、第4のチャネルを介してバッファ流体で満たされたバッファ貯槽と流体連通している第2の弁を、第4のチャネルが、毛細管力を使用してバッファ貯槽からバッファ流体を吸い出して、第4のチャネルのバッファ流体が第2の弁に到達するとき第2の弁を開くことにより、第4のチャネルと、第3のチャネルと、第2のチャネルとを含む流体経路が、バッファ貯槽から第1の弁まで開かれる、ように設定するステップと、
- 第1の制御回路によって第1の弁を開くステップと、それによって前記流体経路に毛細管駆動の流れが生じ、それによって、第2のチャネルおよび第3のチャネルにおける所定の体積のサンプル流体が第1の弁を通って流れ出る、を備える。
【0028】
第3の態様によれば、第1の態様による機構を備える診断デバイスが提供される。たとえば、第1の態様の機構は、診断のための携帯用デバイスとともに使用可能なカートリッジにおいて実施され得る。
【0029】
第2の態様のおよび第3の態様の効果および特徴は、第1の態様に関連して上記で説明されたものと大半が類似である。第1の態様に関連して言及された実施形態は、第2の態様および第3の態様と大半が互換性がある。発明概念は、明示的に別様に明言されなければ、特徴のすべての可能な組合せに関することがさらに注目される。
【0030】
次に、様々な実施形態が、添付図面を参照しながら以下でより十分に説明される。しかしながら、発明概念は、様々な形態で具現され得、本明細書で説明された実施形態に限定されるように解釈されるべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、徹底性および完全性のために提供され、当業者に対して発明概念の範囲を完全に伝達するものである。
【0031】
図1を参照して、所定の体積のサンプル流体を計量するための毛細管駆動型流体システムの機構100が、ここで詳細に説明される。この機構は、一般的にはチャネル、空洞などのエッチングされた構造を有するチップの一部分でよい。
【0032】
機構100は、サンプル流体を受け取るように構成されたサンプル貯槽SRを備える。サンプル流体は、たとえば患者からの血液でよい。しかしながら、サンプル流体は、液状の化合物、液体の中に分散した粉末など、任意の種類の対象となる流体でよい。
【0033】
機構100は、サンプル貯槽SRと流体連通している第1のチャネルC1をさらに備える。第1のチャネルC1は、第2のチャネルC2と第3のチャネルC3とに分岐する。第2のチャネルC2は第1の弁V1において終結し、第3のチャネルC3は第2の弁V2において終結する。第2のチャネルC2および第3のチャネルC3はともに所定の容積を有する。言い換えれば、この機構は、サンプル流体の体積を、サンプル流体の第2のチャネルC2の容積と第3のチャネルC3の容積の合計として計量することができるはずである。これは、チャネルC2とC3とが一旦設計されると、計量される体積(すなわち所定の体積)が固定されることを意味する。
【0034】
第1のチャネルC1は、第2のチャネルC2と第3のチャネルC3とを所定の体積のサンプル流体で満たすために、毛細管力を使用して、サンプル貯槽SRからサンプル流体を吸い出すように構成されている。
【0035】
機構100は、第2のチャネルC2と第3のチャネルC3とがサンプル流体で満たされた後にサンプル貯槽SRを空にするように構成された毛細管ポンプCP1をさらに備える。毛細管ポンプは様々なやり方で実現され得る。簡単な毛細管ポンプは、特定の場合に変位される必要のある液体の体積を収容するための十分な容積を有するマイクロチャネルである。別の簡単な毛細管ポンプは、用途に適合するための十分な容量を有する一方で十分な毛細管力を生成するために、ポスト、ピラー、パックされたビード、または何か他の多孔質構造で満たされ得る空洞である。毛細管ポンプの毛細管圧は、より小さい平行なマイクロチャネルを使用することによって増加され得る。
【0036】
この実施形態では、第1のチャネルC1は、サンプル貯槽からサンプル流体を直接吸い出すように、サンプル貯槽SRに対して流体的に接続されている。その上、毛細管ポンプCP1は、第1の流れ抵抗器R1を介して、サンプル貯槽SRに対して流体的に接続されている。第1の流れ抵抗器R1の流体抵抗は、第2のチャネルC2と第3のチャネルC3とがサンプル流体で満たされた後にサンプル貯槽SRが空になるように、サンプル貯槽SRから毛細管ポンプCP1への流量を制御するように選択されている。言い換えれば、第1の流れ抵抗器R1は、サンプル流体が第2のチャネルC2および第3のチャネルC3の計量された容積を完全に満たすための十分な時間が与えられた後に、サンプル流体が吸い出されてサンプル貯槽SRが空になるように設計されている。
【0037】
機構100は、バッファ流体を受け取るように構成されたバッファ貯槽BRをさらに備える。この実施形態では、バッファ流体がバッファ貯槽に追加されるのは、サンプル流体が吸い出されてサンプル貯槽が空になった後でなければならない。バッファ流体は、たとえばリン酸緩衝生理食塩水(PBS:phosphate buffered saline)溶液でよい。
【0038】
機構100は第4のチャネルC4をさらに備える。第4のチャネルC4は、第2の弁V2が第4のチャネルC4を介してバッファ貯槽BRに対して流体的に接続されるように構成されている。したがって、第4のチャネルC4は、サンプル貯槽SRが空になった後に、毛細管力を使用してバッファ貯槽BRからバッファ流体を吸い出すように構成されている。第4のチャネルC4は、第4のチャネルC4の中のバッファ流体が第2の弁V2に到達するとき第2の弁V2を開くようにさらに構成されている。第2の弁V2が開くと、流体経路が開くことが可能になる。流体経路は、第4のチャネルC4と、第3のチャネルC3と、第2のチャネルC2とを含む。流体経路はバッファ貯槽BRから第1の弁V1まで開かれる。
【0039】
機構100は、サンプル貯槽SRが空になった後に第1の弁V1を開くように構成された第1の制御回路T1をさらに備える。これは、流体経路に毛細管駆動の流れが生じることを可能にし、それによって第2のチャネルC2および第3のチャネルC3の中の所定の体積のサンプル流体が第1の弁V1を通って流れ出る。第1の制御回路は、第1の弁V1をバッファ貯槽BRに対して流体的に接続する第1の流体回路T1の形態でよい。第1の流体回路T1は、バッファ貯槽BRからバッファ流体を吸い出して、バッファ流体が第1の弁V1に到達するとき第1の弁V1を開くように構成されている。第1の流体回路は、バッファ貯槽BRを第1の弁V1に対して流体的に接続する1つまたは複数のさらなるチャネルでよい。第2のチャネルC2および第3のチャネルC3における計量された体積を希釈するのが望ましくない場合には、第1の流体回路の抵抗をチャネルC2と、C3と、C4との結合の抵抗よりもはるかに大きくする。
【0040】
機構のタイミングは以下のように作用する。第2のチャネルC2と第3のチャネルC3とがサンプル流体で満たされ、サンプル貯槽SRの残りのサンプル流体が毛細管ポンプCP1によって完全に吸い出された後に、第1の弁V1と第2の弁V2とが開かれる。サンプル貯槽を空にするプロセスは、サンプル貯槽SRの中のサンプル流体の全体量が毛細管ポンプCP1に流れ込むのに必要な時間に依拠するので、流れ抵抗器R1に依拠するプロセスとなる。よって、各ステップが望ましいタイミングシーケンスに従って生じ得るように、この機構は、システムの部品の各々が他の部品の流体搬送速度に関連した流体搬送速度をもたらすように、システムの2つ以上の部品の念入りな設計を必要とし得ることが理解される。第2のチャネルC2および第3のチャネルC3の中の所定の体積のサンプル流体は、第1の弁V1を通って流れ出ることが一旦可能になると、第6のチャネルC6に入る。第6のチャネルC6は、計量されたサンプル流体を受け取るように構成された外部システムに対して流体的に接続されてよい。そのような外部システムは、たとえばサンプル流体の濃度またはサンプル流体における置換基の濃度などのサンプル流体の特性を決定するように構成された計測デバイスでよい。
【0041】
本明細書で説明された(第1の弁V1および第2の弁V2などの)弁は、一般に異なる種類のものでよい。しかしながら、この実施形態では、これらの弁は、微少流体技術の弁、いわゆる毛細管のトリガ弁であり、これは、個別の制御入力を通って弁に入る制御流体によって到達されるとき、主要な入力を通って弁に入る流体の通路のために開くように構成されている。
【0042】
次に、所定の体積のサンプル流体を計量するための方法が、
図1と、
図2の流れ図とを参照しながらさらに説明される。しかしながら、この方法は、本明細書で開示された機構の任意の他の実施形態に対して同様にうまく適用可能であることを理解されたい。
【0043】
第1のステップS102において、サンプル貯槽SRにサンプル流体が追加される。サンプル流体はたとえば血液でよい。
【0044】
第2のステップS104において、第1のチャネルC1がサンプル貯槽SRと流体連通するように設定される。そうする際、第1のチャネルC1は、第1のチャネルC1の分岐である、第2のチャネルC2と第3のチャネルC3とを所定の体積のサンプル流体で満たすために、毛細管力を使用してサンプル貯槽SRからサンプル流体を吸い出すことになる。この段階では第1の弁V1および第2の弁V2が閉じており、それによって、サンプル流体は、それぞれ第1の弁V1および第2の弁V2に到達すると一旦停止する。
【0045】
機構100については、第1のステップS102においてサンプル貯槽SRにサンプル流体を追加した結果として、第2のステップS104が当然起こり得ることに留意されたい。代替実施形態については、第2のステップは、たとえば弁を開くことまたは類似のことによってアクティブに実行されなくてはならないことがある。
【0046】
第3のステップS106において、サンプル貯槽SRは、毛細管ポンプCP1を使用してサンプル流体を除去することによって空にされる。第3のステップS106は、
図2の破線によって示されるように第2のステップS104と並行して進行し得る。たとえば、
図1を参照して、毛細管ポンプCP1は、第2のチャネルC2と第3のチャネルC3とが第1のチャネルC1を通じてサンプル流体で満たされるのと同時に、毛細管力によって、サンプル貯槽から流れ抵抗器R1を通してサンプル流体を除去してよい。その場合、毛細管ポンプCP1への流体抵抗R1は、サンプル貯槽SRがあまりに速く空になることがないように選択されるべきであり、すなわち、流体抵抗は、サンプル貯槽が空になる前に計量チャネルC2およびC3が完全に満たされるように、十分に大きくなくてはならない。サンプル貯槽SRを空にするための
図5の設定が使用されるときなどの他の実施形態では、ステップS104およびS106は、毛細管ポンプCP1がサンプル貯槽SRを空にするのを開始する前に計量チャネルC2およびC3が満たされるという点で、むしろ逐次的である。
【0047】
毛細管ポンプCP1によってサンプル貯槽SRが空にされた後に、第4のステップS108が起動される。第4のステップS108において、第2の弁V2がバッファ貯槽BRと流体連通するように設定され、バッファ貯槽BRは第4のチャネルC4を通じてバッファ流体で満たされる。そうする際、第4のチャネルC4は、毛細管力を使用してバッファ貯槽BRからバッファ流体を吸い出し始め、第4のチャネルC4の中のバッファ流体が第2の弁V2に到達するとき第2の弁V2を開く。したがって、この段階において、この機構のバッファ貯槽BRから第1の弁V1まで、低抵抗の新規の流体経路が開かれる。新規の流体経路は、第4のチャネルC4と、第3のチャネルC3と、第2のチャネルC2とを含む。
【0048】
機構100に関して、第2の弁V2は、バッファ貯槽BRと常に流体連通していることに留意されたい。したがって、第4のステップS108は、特定の時間においてバッファ貯槽BRにバッファ流体を追加することによって起動されなくてはならないことがある。これは、第2の弁V2がバッファ貯槽BRと流体連通するように設定されて、バッファ貯槽BRが第4のチャネルC4を通じてバッファ流体で満たされるのを保証することになる。代替実施形態については、第2のステップは、
図3~
図6に対して関連して説明されるように、たとえばさらなる弁を作動させることによってアクティブに実行され得る。そのような場合には、バッファ貯槽BRの中にはバッファ流体が常に存在し得る。
【0049】
第5のステップS110において、第1の制御回路T1によって第1の弁V1が開かれる。そうする際、新しく開かれた流体経路C4-C3-C2において毛細管駆動の流れが生じる。この段階において、計量された体積のサンプル流体が毛細管力によってチャネルC6へ吸い出されるので、バッファ貯槽BRからのバッファ流体が、計量チャネルC3およびC2におけるサンプル流体を置換することになる。そのように、第2のチャネルC2および第3のチャネルC3の中の所定の体積のサンプル流体が第1の弁V1を通って流れ出る。第2のチャネルC2および第3のチャネルC3はバッファ流体によって補充され、一方、所定の体積のサンプル流体は毛細管のシステムのさらに下流に輸送される。
【0050】
タイミングを制御すると、サンプル流体が第2のチャネルC2と第3のチャネルC3に到達してこれらを満たし、サンプル貯槽SRが空になるまで、第2の弁V2が開かないように、機構の動作を制御することが可能になる。そうしないと、結局は、追加のサンプル流体がサンプル貯槽SRから第1のチャネルC1を通って吸い出され、第1の弁V1を通って流れ出るという状況に至り得る。言い換えれば、計量チャネルC2とC3とが満たされ、サンプル貯槽SRが空になるまでは、弁V1とV2のどちらも開かれてはならない。弁V2を開くことに対する弁V1を開くことの代替のタイミングが使用されてよい。しかしながら、好ましくは、制御回路は、第1の弁V1を、第2の弁V2と同時に、またはV2の後に開くように構成される。
【0051】
図1の実施形態では、計量プロセスを開始するときにはバッファ貯槽BRが空になっているのが実用上望ましいので、第2の弁V2を開くことはバッファ流体によって制御される。一旦、サンプル流体が第2のチャネルC2と第3のチャネルC3とを成功裡に満たし、毛細管ポンプCP1によってサンプル流体が吸い出されてサンプル貯槽SRが空になると、バッファ貯槽BRにバッファ流体が与えられてよく、それによって、バッファ流体は、第4のチャネルC4の中の毛細管駆動の流れによって第2の弁V2に到達することが可能になり得る。
【0052】
しかしながら、他の実施形態では、バッファ流体が第2の弁V2に到達する時間をアクティブに制御する手段を追加すれば、タイミング制御が改善され得る。そのような仕組みを備える一実施形態が
図3に示されている。
図3の機構200は、バッファ貯槽BRから吸い出されたバッファ流体が第4のチャネルC4に入る前に第3の弁V3を通過するように、第4のチャネルC4に対して流体的に接続された第3の弁V3をさらに備えるという点で機構100とは異なる。機構200は、サンプル貯槽SRが空になった後に第3の弁V3を開くように構成された第2の制御回路T2をさらに備える。
【0053】
同様に、第1の制御回路T1に関して、機構200の第2の制御回路は第2の流体回路T2を備え得る。第2の流体回路T2は、バッファ貯槽BRに対して第3の弁V3を流体的に接続する。第2の流体回路T2は、バッファ貯槽BRからバッファ流体を吸い出して、バッファ流体が第3の弁V3に到達するとき第3の弁V3を開くように構成されている。第2の流体回路T2は、バッファ貯槽BRを第3の弁V3に対して流体的に接続する1つまたは複数のさらなるチャネルでよい。
【0054】
次に、第2の制御回路T2によって第3の弁V3を開くタイミングが論じられる。好ましくは、サンプル貯槽SRが空になるまで、第2の弁V2は開かれなくてよい。正確なタイミングは、バッファ流体がバッファ貯槽BRから第3の弁V3まではるばる到達するのに要する時間が、サンプル貯槽SRからサンプル流体が吸い出されて空にされた後に第2の弁V2を開くことを可能にするのに十分なものとなるように、第2の流体回路T2を念入りに設計することによって達成され得る。第1の制御回路T1は、第2の弁V2が開くのと同時に、または開いた後に、第1の弁V1を開くように構成されてよい。以前に言及されたように、これは、機構の様々な部品における流体の流れ速度が、意図されたように機構を作動させるための特定のやり方で互いに関連するように、機構の様々な部品が設計されなければならないことを意味する。具体的には、これは異なる流路長さ、異なるチャネル断面などを使用することによって実現され得る。
【0055】
図1および
図3の実施形態では、第1の制御回路T1および第2の制御回路T2は微少流体技術のチャネルであった。したがって、第1の弁V1および第3の弁V3は、それぞれ第1の弁V1および第3の弁V3に到達するバッファ流体によって制御され、すなわち微少流体技術の毛細管トリガ弁である。あるいは、第1の弁V1および第3の弁V3の開放は電気的に制御されてよい。より詳細には、第1の制御回路T1および第2の制御回路T2のうち少なくとも1つが、第1の弁V1および第2の弁V2のうち少なくとも1つに電気制御信号を配送するように構成されてよく、ここにおいて、この第1の弁V1および第2の弁V2のうち少なくとも1つの弁は電気信号を受け取ると開くように構成されている。この目的のために、この機構は、第1の弁V1および/または第3の弁V3に対して電気的に結合された、たとえばマイクロコントローラの形態のコントローラをさらに備え得る。これは、第1の弁V1および第3の弁V3が別のタイプの微少流体技術の弁でもよいことを意味する。電磁力または静電力、導電性高分子材料の膨張などに基づく、異なる電気作動の弁機構が存在する。コントローラは
図3における要素210として示されているが、本明細書で示された任意の他の機構100、200、300、400、500にも、もちろん同様に含まれ得る。マイクロコントローラは、機構100、200、300、400、500と同一の流体チップに組み込まれ得るか、または個別のシリコンチップであり得るかのいずれかである。センサはまた、マイクロコントローラに対する入力として働くように、機構100、200、300、400、500のシリコン流体チップに組み込まれてよく、マイクロコントローラは、センサ入力に応答して弁V1および/またはV3を作動させる。たとえば、センサは、チップの特定の区域に液体があるとき感知し得、マイクロコントローラはその信号に応答して弁を作動させることができる。センサは、キャパシタンスセンサ、インピーダンスセンサ、光学センサ、または他のセンサのいずれかであり得る。
【0056】
この機構は、様々な異なる方法を使用して製作され得る。可能性の1つには、シリコン微細加工技術を使用するものがある。2段階のディープリアクティブイオンエッチングプロセスが使用され得る。そのようなプロセスを使用すると、信頼できる毛細管の弁構造を生成するために2つの異なる深さのチャネルを形成することが可能になり得る。全体の機構のチャネルの上面は、開いたものでよく、または上蓋で閉じられてもよい。具体的には、
図1の実施形態および
図3の実施形態によれば、サンプル流体および/またはバッファ流体の内部に閉じ込められた気体が機構100、200から流出することを可能にすることなどのために、サンプル流体および/またはバッファ流体は機構100、200の環境と少なくとも部分的に気体連通している。たとえば、上面は気体透過性シートによって覆われてよい。気体透過性シートは、気体を逃がすが液体は逃がさない上蓋を形成する。接触角は、毛細管の弁の初期故障の原因となるほど小さくしないのがよい。開いた流体のシートまたは気体透過性シートは、液体-蒸気境界面がチャネルを通って進むとき、空気を閉じ込めず、気体が逃げることを可能にする。
【0057】
あるいは気密上蓋が使用され得る。そのような場合に気体が逃げることを可能にするために、代わりに1つまたは複数の排気口が使用され得る。
図4は、そのような仕組みを利用する機構300を示す。機構300は、第2の弁V2に対して流体的に接続されたさらなる弁V5を介して環境との気体連通が生じる点で機構200とは異なる。さらなる弁V5は、気体が通ることを許す一方で液体を阻止する。過剰空気は排気口を通って環境へ通気される。そのような排気口は、たとえば小さいノズルまたは穴であり得る。
【0058】
図1、
図3および
図4に示された機構の実施形態は、個別の分岐を通じてサンプル貯槽と流体的に連絡する毛細管ポンプCP1に頼るものである。
図5は、毛細管ポンプCP1と第1のチャネルC1が、むしろサンプル貯槽に対する共通の接続を有する機構400を示す。機構400は、第1のチャネルC1にサンプル流体が与えられるやり方においてのみ機構300と異なることに留意されたい。第1のチャネルC1に流体を与えるこの代替のやり方は、もちろん
図1の機構100および
図3の機構200においても実施され得るものである。
【0059】
機構400は、第1のチャネルC1、第2のチャネルC2、および第3のチャネルC3よりも毛細管圧が低い第5のチャネルC5をさらに備える。第1のチャネルC1は第5のチャネルC5に対する分岐として構成されている。したがって、第1のチャネルC1は、使用において、サンプル貯槽SRから第5のチャネルC5を通じて流体を吸い出すように構成されている。毛細管ポンプCP1は、第2のチャネルC2と第3のチャネルC3とがサンプル流体で満たされた後に第5のチャネルC5を通じてサンプル貯槽SRを空にするように構成されるように、流れ絞り機構R’を含んでいる第5のチャネルC5を含む経路を通じてサンプル貯槽SRに対して流体的に接続されている。毛細管ポンプCP1の毛細管圧は、サンプル貯槽SRが空になった後に、液体を吸引して抵抗器R’とチャネルC5とを乾燥させるのに十分なものに設計されるべきである。弁V7は、弁V1およびV2が一旦作動されると液体がサンプル計量チャネルC2およびC3からチャネルC1を通ってチャネルC5へ逆流するのを防止するための、一方向の毛細管停止弁として機能する。一方向の毛細管停止弁V7は、流体がチャネルC5からチャネルC1へ制限なく流れることを許すが、チャネルC5を乾燥させるときには、流体がチャネルC1を通ってチャネルC5へ逆流するのを毛細管力によって防止する。
【0060】
使用するとき、機構400は以下のように動作する。サンプルが、サンプル貯槽SRに追加され、流れ絞り機構R’を通って第5のチャネルC5へ吸い込まれる。流れ絞り機構R’は、たとえば、その長さが流体抵抗の原因となる流体チャネルの形態でよい。流れ絞り機構R’は、流れが制限される、第5のチャネルC5に対するオリフィスの形態でもよい。流れ絞り機構R’は、第5のチャネルC5自体に含まれることも可能である。たとえば、第5のチャネルC5は、相当な長さに設計され得ることによって流れ絞り機構として働く。第5のチャネルC5は、一般的には、機構400の他のチャネルよりも大きなチャネル断面を有する。チャネル断面がより大きければ毛細管圧はより低くなり、その結果、チャネルの内部の流体にかかる力がより小さくなる。第1のチャネルC1は第5のチャネルC5よりも毛細管圧が高く、しかも流れ絞り機構R’の抵抗があるので、毛管流れは、第5のチャネルC5を満たし続けるのではなく第1のチャネルC1を優先的に満たす。
【0061】
流れは、第1のチャネルC1を満たした後に、第2のチャネルC2と第3のチャネルC3に分かれる。チャネルC2およびC3は、毛細管圧が第5のチャネルC5よりも高くなるように設計されており、その結果、毛細管駆動の流れは、第1のチャネルC1を満たした後に、液体-蒸気境界面が第1の弁V1と第2の弁V2とに到達するまで、第2のチャネルC2と第3のチャネルC3とを満たし続ける。毛細管の境界面が第1の弁V1と第2の弁V2とに一旦到達すると、サンプル流体の流れは、第1のチャネルC1と、第2のチャネルC2と、第3のチャネルC3とから成る分岐の中を進行するのを停止する。代わりに、サンプル流体の流れは、第5のチャネルC5が満たされて毛細管の境界面が毛細管ポンプCP1に到達するまで、第5のチャネルC5において再出発することになる。その一方で、バッファ貯槽BRにバッファ流体が追加される。毛細管力が、バッファ流体を第2のチャネルC2に吸い込む。第2のチャネルC2が満たされた後に、流れは第3の弁V3において停止する。第1の制御回路T1および第2の制御回路T2の機能は、機構300のものと同一である。第2の制御回路は第2の流体回路T2でよく、第3の弁V3を開くように構成されている。次いで、バッファ流体は第4のチャネルC4に入って第2の弁V2を開く。バッファ流体はさらなる弁V5に到達するまで流れて、そこで停止する。第1の制御回路は第1の流体回路T1でよく、第1の弁V1を開くように構成されている。第1の弁V1が一旦開かれると、計量された体積(すなわち第2のチャネルC2および第3のチャネルC3)のサンプル流体は、毛細管力によって、機構400を外部システムに接続するように構成された第6のチャネルC6に吸い込まれる。サンプル流体が第1の弁V1を通って第6のチャネルC6に移動されるとき、第2のチャネルC2と第3のチャネルC3とがバッファ流体によって再び満たされる。
【0062】
いくつかの用途については、サンプル流体を希釈するのが有益であり得る。そのような用途はたとえば血球計算であり得、その場合、希釈されていないサンプルは濃すぎるため、個々の血液細胞をカウントすることができない。希釈はサンプル計量の後に実行されてよいが、有利には計量プロセスのサブステップとして実行され得る。
図6は、サンプル流体の計量と希釈の両方が可能な機構500を示す。機構500は
図4に示された機構300に基づくものであり、どちらの実施形態でも計量は同様に実行される。
【0063】
機構500では、第1の弁V1を通って流出する所定の体積のサンプル流体は、第4の弁V4において終結する第6のチャネルC6によって受け取られる。第4の弁V4は、希釈されたサンプル流体を生成するように、第6のチャネルC6から受け取られる所定の体積のサンプル流体を、バッファ貯槽BRから第2の流れ抵抗器R2を通して受け取られるバッファ流体で希釈するように構成されている。第4のチャネルC3は第3の流れ抵抗器R3を備える。この構成によって、第6のチャネルC6から受け取られるサンプル流体の流量と、バッファ貯槽BRから受け取られるバッファ流体の流量との間の比は、第2の流れ抵抗器R2の抵抗および第3の流れ抵抗器R3の抵抗によって少なくとも部分的に決定される。したがって、サンプル貯槽のサンプル流体とバッファ貯槽のバッファ流体との間の混合比率は、すべての他のチャネルの抵抗が無視できると想定して、主として第2の流れ抵抗器R2および第3の流れ抵抗器R3の抵抗によって決定される。
【0064】
機構500は、希釈されたサンプル流体を混合するように構成されて第4の弁V4の出力に対して流体的に接続されたミキサMX1をさらに備える。実際には、様々な異なるミキサは、平行積層ミキサ、ヘリンボンミキサ、または蛇行チャネルなどとして実施され得る。毛管流れ用途に関しては、蛇行チャネルは、気泡を閉じ込めることに対するその弾力性および設計の簡単さのために、望ましいものであり得る。蛇行チャネルミキサのチャネル幅は、高速の拡散を可能にするために十分に小さくするべきであり、一方チャネル長は、流体流れを完全に混合するように十分にとるべきである。
【0065】
機構500は、検知チャネルC9を通じてミキサMX1と流体連通しているさらなる毛細管ポンプCP2をさらに備え、さらなる毛細管ポンプは、検知チャネルC9を通る希釈されたサンプル流体の流量を維持するように構成されている。ミキサMX1は、最終結果が均質の溶液となるように、サンプル流体をバッファ流体と混合するように設計されている。検知チャネルC9は、たとえば血液細胞の計数といった対象の量の測定を可能にするように設計されている。計数は、光学的に、電気的に、または他の手段によって遂行され得る。さらなる毛細管ポンプCP2は、分析するのに必要な時間期間にわたって流量を維持する。
【0066】
機構500は、関連する排気口を有する任意選択の弁V6をさらに備える。この排気口は、ミキサMX1の液圧抵抗が大きく(>1016Pa*s/m3)、空気がMX1と毛細管ポンプCP2とを通って逃げるのが困難な場合に必要とされることがある。実際には、毛細管ポンプCP1およびCP2は、一般的には大気へ排気孔をつけられることに留意されたい。しかしながら、ミキサMX1の液圧抵抗が小さい場合には、弁V6および関連する排気口は省略され得る。
【0067】
第4の弁V4は、2つの流体を混合するように構成されているが、たとえば第1の弁V1に使用されたものと同一の弁タイプでよいことを理解されたい。たとえば、弁タイプは、毛細管のトリガ弁タイプなど微少流体技術の弁タイプでよい。
【0068】
実際には、毛細管のトリガ弁を使用すると、第1の弁V1は、主入力からの液体と制御入力からの液体とを混合することも可能になる。混合の程度は、2つの入力における流体抵抗によって制御される。具体的には、第1の弁V1に関して、制御入力は一般的には主入力と比較してかなり大きい流体抵抗を有する(すなわち、接続するチャネルが比較的長い、および/または断面が比較的小さい)。これは、バッファ流体とサンプル流体の間の混合が無視できることを保証する。しかしながら、第4の弁V4については、入力チャネルにおける流体抵抗が類似であり、したがってサンプル流体とバッファ流体はどちらも弁を通ることができる。
【0069】
本明細書で説明された実施形態は前述の例に限定されない。様々な代替形態、修正形態、および等価物が使用され得る。たとえば、さらなる弁が含まれてよく、機構のタイミング制御をさらに改善する。その上、代替の弁技術が使用されてもよい。したがって、本開示は、本明細書で説明された特定の形態に限定されるべきではない。本開示は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定され、上記で言及されたもの以外の実施形態が、特許請求の範囲内で同様に可能である。
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載の事項を、そのまま、付記しておく。
[1] 所定の体積のサンプル流体を計量するための毛細管駆動型流体システムにおける機構(100)であって、
サンプル流体を受け取るように構成されたサンプル貯槽(SR)と、
前記サンプル貯槽(SR)と流体連通し、第1の弁(V1)において終結する第2のチャネル(C2)と第2の弁(V2)において終結する第3のチャネル(C3)とに分岐する、第1のチャネル(C1)と、ここで、前記第2のチャネル(C2)および前記第3のチャネル(C3)がともに所定の容積を有し、前記第1のチャネル(C1)が、前記第2のチャネル(C2)と前記第3のチャネル(C3)とを前記所定の体積のサンプル流体で満たすために、毛細管力を使用して、前記サンプル貯槽(SR)からサンプル流体を吸い出すように構成されているものであり、
前記第2のチャネル(C2)と前記第3のチャネル(C3)とがサンプル流体で満たされた後に前記サンプル貯槽(SR)を空にするように構成された毛細管ポンプ(CP1)と、
バッファ流体を受け取るように構成されたバッファ貯槽(BR)と、
第4のチャネル(C4)と、ここで、前記第2の弁(V2)が前記第4のチャネル(C4)を介して前記バッファ貯槽(BR)に対して流体的に接続されており、前記第4のチャネル(C4)が、前記サンプル貯槽(SR)が空になった後に毛細管力を使用して前記バッファ貯槽(BR)からバッファ流体を吸い出し、前記第4のチャネル(C4)のバッファ流体が前記第2の弁(V2)に到達するとき前記第2の弁(V2)を開くように構成されていることにより、前記第4のチャネル(C4)と、前記第3のチャネル(C3)と、前記第2のチャネル(C2)とを含む流体経路が、前記バッファ貯槽(BR)から前記第1の弁(V1)まで開かれるものであり、
前記サンプル貯槽(SR)が空になった後に前記第1の弁(V1)を開くことにより、流体経路に毛細管駆動の流れを生じさせ、それによって、前記第2のチャネル(C2)および前記第3のチャネル(C3)における前記所定の体積のサンプル流体を、前記第1の弁(V1)を通して流出させるように構成された第1の制御回路(T1)と
を備える機構。
[2] 前記第1の制御回路が、前記第1の弁(V1)を前記バッファ貯槽(BR)に対して流体的に接続する第1の流体回路(T1)を備え、前記第1の流体回路(T1)が、前記バッファ貯槽(BR)からバッファ流体を吸い出して、バッファ流体が前記第1の弁(V1)に到達するとき前記第1の弁(V1)を開くように構成されている、[1]に記載の機構。
[3] 第3の弁(V3)と、ここで、前記第3の弁(V3)は、前記バッファ貯槽(BR)から吸い出されたバッファ流体が前記第4のチャネル(C4)に入る前に前記第3の弁(V3)を通過するように、前記第4のチャネル(C4)に対して流体的に接続されるものであり、
前記サンプル貯槽(SR)が空になった後に前記第3の弁(V3)を開くように構成された第2の制御回路(T2)と、
をさらに備える、[1]または[2]に記載の機構。
[4] 前記第2の制御回路が、前記第3の弁(V2)を前記バッファ貯槽に対して流体的に接続する第2の流体回路(T2)を備え、前記第2の流体回路(T2)が、前記バッファ貯槽(BR)からバッファ流体を吸い出して、バッファ流体が前記第3の弁(V3)に到達するとき前記第3の弁(V3)を開くように構成されている、[3]に記載の機構。
[5] 前記第1の制御回路(T1)および前記第2の制御回路(T2)のうち少なくとも1つが、前記第1の弁(V1)および前記第2の弁(V2)のうちの少なくとも1つに対して電気制御信号を配送するように構成されており、前記第1の弁(V1)および前記第2の弁(V2)のうち少なくとも1つが、前記電気制御信号を受け取ると開くように構成されている、[3]に記載の機構。
[6] 前記第1の制御回路(T1)が、前記第2の弁(V2)が開くのと同時に、または開いた後に、前記第1の弁(V1)を開くように構成されている、[3]~[5]のいずれか一項に記載の機構。
[7] 前記第1のチャネル(C1)が、前記サンプル貯槽からサンプル流体を直接吸い出すように前記サンプル貯槽(SR)に対して流体的に接続されており、前記毛細管ポンプ(CP1)が、第1の流れ抵抗器(R1)を介して前記サンプル貯槽(SR)に対して流体的に接続されており、前記第1の流れ抵抗器(R1)の流体抵抗が、前記第2のチャネル(C2)と前記第3のチャネル(C3)とがサンプル流体で満たされた後に前記サンプル貯槽(SR)が空になるように、前記サンプル貯槽(SR)から前記毛細管ポンプ(CP1)への流量を制御するように選択されている、[1]~[6]のいずれか一項に記載の機構。
[8] 前記第1のチャネル(C1)よりも毛細管圧が低い第5のチャネル(C5)をさらに備え、前記第1のチャネル(C1)が前記第5のチャネル(C5)を通じて前記サンプル貯槽(SR)から流体を吸い出すように構成されるように、前記第1のチャネル(C1)が前記第5のチャネル(C5)に対する分岐として構成されており、前記毛細管ポンプ(CP1)が、前記第5のチャネル(C5)を含む経路を介して前記サンプル貯槽(SR)に対して流体的に接続されており、前記第2のチャネル(C2)と前記第3のチャネル(C3)とがサンプル流体で満たされた後に前記毛細管ポンプ(CP1)が前記第5のチャネル(C5)を通じて前記サンプル貯槽(SR)を空にするように構成されるように、前記第5のチャネル(C5)が流れ絞り機構(R’)を含む、[1]~[6]のいずれか一項に記載の機構。
[9] 前記サンプル流体および/または前記バッファ流体の内部で混合された気体が前記機構から流出することを可能にすることなどのために、前記サンプル流体および/または前記バッファ流体が前記機構の周囲と少なくとも部分的に気体連通している、[1]~[8]のいずれか一項に記載の機構。
[10] 周囲との前記気体連通が気体透過性シートを介して生じる、[9]に記載の機構。
[11] 周囲との前記気体連通が、前記第1の弁(V1)および前記第2の弁(V2)のうちの1つまたは複数に対して流体的に接続された1つまたは複数のさらなる弁(V5、V6)を介して生じ、前記1つまたは複数のさらなる弁(V5、V6)が、気体は通すが液体は阻止するように構成されている、[10]に記載の機構。
[12] 前記第1の弁(V1)を通って流れ出る前記所定の体積のサンプル流体が、第4の弁(V4)において終結する第6のチャネル(C6)によって受け取られ、前記第4の弁(V4)が、希釈されたサンプル流体を生成するように、前記第6のチャネル(C6)から受け取られる前記所定の体積のサンプル流体を、前記バッファ貯槽(BR)から第2の流れ抵抗器(R2)を通して受け取られるバッファ流体で希釈するように構成されており、 前記第4のチャネル(C4)が第3の流れ抵抗器(R3)を備え、
前記第6のチャネル(C6)から受け取られるサンプル流体の流量と、前記バッファ貯槽(BR)から受け取られる前記バッファ流体の流量との間の比が、前記第2の流れ抵抗器(R2)の抵抗および前記第3の流れ抵抗器(R3)の抵抗によって少なくとも部分的に決定される、[1]~[11]のいずれか一項に記載の機構。
[13] 希釈されたサンプル流体を混合するように構成されて第4の弁(V4)の出力に対して流体的に接続されたミキサ(MX1)と、
前記ミキサ(MX1)を通る前記希釈されたサンプル流体の流量を維持するように構成されて前記ミキサ(MX1)と流体連通するさらなる毛細管ポンプ(CP2)と
をさらに備える、[8]に記載の機構。
[14] 所定の体積のサンプル流体を計量するための方法であって、
サンプル貯槽(SR)にサンプル流体を追加するステップ(S102)と、
第1のチャネル(C1)が、前記第1のチャネル(C1)の分岐である、第2のチャネル(C2)と第3のチャネル(C3)とを所定の体積のサンプル流体で満たすために、毛細管力を使用して前記サンプル貯槽からサンプル流体を吸い出すように、前記第1のチャネル(C1)を、前記サンプル貯槽と流体連通するように設定するステップ(S104)と、ここで、前記第2のチャネル(C2)が第1の弁(V1)において終結し、前記第3のチャネル(C3)が第2の弁(V2)において終結するものであり、
前記第2のチャネル(C2)と前記第3のチャネル(C3)とが前記所定の体積のサンプル流体で満たされた後に、毛細管ポンプ(CP1)を使用してサンプル流体を除去することにより、前記サンプル貯槽(SR)を空にするステップ(S106)と、
前記サンプル貯槽(SR)が空になった後に、第4のチャネル(C4)を介してバッファ流体で満たされたバッファ貯槽(BR)と流体連通している前記第2の弁(V2)を、前記第4のチャネル(C4)が、毛細管力を使用して前記バッファ貯槽(BR)からバッファ流体を吸い出して、前記第4のチャネル(C4)のバッファ流体が前記第2の弁(V2)に到達するとき前記第2の弁(V2)を開くことにより、前記第4のチャネル(C4)と、前記第3のチャネル(C3)と、前記第2のチャネル(C2)とを含む流体経路が、前記バッファ貯槽(BR)から前記第1の弁(V1)まで開かれる、ように設定するステップ(S108)と、
第1の制御回路(T1)によって前記第1の弁(V1)を開くステップ(S110)と、ここで、このステップによって前記流体経路において毛細管駆動の流れが生じ、それによって前記第2のチャネル(C2)および前記第3のチャネル(C3)における前記所定の体積のサンプル流体を、前記第1の弁(V1)を通して流出させるものである、
を備える方法。
[15] [1]~[13]のいずれか一項に記載の機構を備える診断デバイス。